(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】挿入排出口、紙葉類挿入排出部、及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20231219BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G07D11/14
B65H5/38
(21)【出願番号】P 2019210992
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆嗣
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-043950(JP,A)
【文献】特開2015-069262(JP,A)
【文献】特開2002-288709(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163341(WO,A1)
【文献】特開2011-108098(JP,A)
【文献】特開2010-122835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/14
B65H 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類が挿入又は排出され
、自装置に設けられる固定の挿入排出口であって、
開口部底面の方が開口部上面よりも突出しており、
前記開口部上面と前記開口部底面とが成す角度は、鋭角であり、
前記開口部底面は、
前方斜め下方向に傾斜している
ことを特徴とする挿入排出口。
【請求項2】
紙葉類が挿入又は排出され
、自装置に設けられる固定の挿入排出口と、該挿入排出口に挿入された前記紙葉類を搬送する搬送路と、該搬送路に挿入された前記紙葉類を検出するセンサとを有する紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口は、開口部底面の方が開口部上面よりも突出しており、
前記開口部上面と前記開口部底面とが成す角度は、鋭角であり、
前記開口部底面は、斜め下方向に傾斜している
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項3】
紙葉類が挿入又は排出される挿入排出口と、該挿入排出口に挿入された前記紙葉類を搬送する搬送路と、該搬送路に挿入された前記紙葉類を検出するセンサとを有する紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口は、開口部底面の方が開口部上面よりも突出しており、
前記開口部上面と前記開口部底面とが成す角度は、鋭角であり、
前記挿入排出口と前記搬送路との間に段差部が形成されており、
前記挿入排出口の開口部上面は、前記搬送路の搬送面と略平行であって、前記搬送路の底面よりも低い
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項4】
請求項3に記載の紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口の開口部上面と前記搬送路の底面との高さの差をhとし、
前記搬送路の上面と下面との間隔をDとし、
前記開口部上面と前記段差部との境界と、前記段差部と前記搬送路の底面との境界との水平距離をL1としたとき、
前記センサは、前記挿入排出口の開口部上面と前記段差部との境界線から水平距離L1((D+h)/h)以上離れている
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項5】
請求項3に記載の紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口の開口部上面と前記搬送路の底面との間に高さの差があり、
前記搬送路の上面と下面との間隔をDとし、
前記挿入排出口に挿入されるICカードの厚みをdとし、
前記開口部上面と前記段差部との境界と、前記段差部と前記搬送路の底面との境界との水平距離をL1としたとき、
前記センサは、前記搬送路の下面と前記段差部との境界線から水平距離(D-d)/sin{tan
-1(d/L1)}以上離れている
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項6】
請求項2に記載の紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口と前記搬送路との間に段差部が形成されており、
前記挿入排出口の開口部上面は、前記搬送路の底面と略同一高さであり、
前記搬送路の上面と下面との間隔をDとし、
前記挿入排出口に挿入されるICカードの厚みをdとし、
前記開口部上面と前記段差部との境界と、前記段差部と前記搬送路の底面との境界との水平距離をL1としたとき、
前記センサは、前記搬送路の下面と前記段差部との境界線から水平距離(D-d)/sin{tan
-1(d/L1)}以上離れている
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載の紙葉類挿入排出部を備えた自動取引装置。
【請求項8】
紙葉類が挿入又は排出され、自装置に設けられる固定の挿入排出口と、前記挿入排出口に挿入された前記紙葉類を搬送する搬送路を備える紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口は、開口部上面と開口部底面と
の成す角度
が鋭角であり、
前記開口部底面は、
前方斜め上方向に傾斜している
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項9】
請求項8に記載の紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口は、前記開口部底面の方が前記開口部上面よりも突出している
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の紙葉類挿入排出部であって、
前記挿入排出口の開口部上面と開口部底面との幅は、前記搬送路の上面と底面の幅よりも広く、
前記挿入排出口の開口部上面と前記搬送路の上面とを接続する接続線と、前記挿入排出口の開口部底面と前記搬送路の底面とを接続する接続線とは、挿入排出方向の位置が異なる
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項11】
紙葉類が挿入又は排出される挿入排出口と、前記挿入排出口に挿入された前記紙葉類を搬送する搬送路と、を備えた紙葉類挿入排出部であって、
前記搬送路は、搬送路上面の端部が水平に延在した延在部上面と、搬送路底面の端部が延在した傾斜部とを形成し、
前記挿入排出口は、前記搬送路上面に平行な平行路と、該平行路と前記搬送路とを接続する傾斜路とを備え、
前記傾斜部と前記傾斜路とは互いに略平行である
ことを特徴とする紙葉類挿入排出部。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11の何れか一項に記載の紙葉類挿入排出部を備えたことを特徴とする自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入排出口、紙葉類挿入排出部、及び自動取引装置に関し、例えば、振込用紙等の帳票を挿入又は排出する紙葉類挿入排出部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automated Teller Machine)等の自動取引装置には、帳票を挿入したり排出したりする帳票挿入口を設けているものがある。この帳票挿入口は、紙幣を投入したり、取り出したりする紙幣投入口やタッチパネルよりも高いところに配設されていることが多い。
【0003】
特許文献1に記載の自動取引装置は、利用者の身長が低い場合に、媒体挿入口の挿入角度を水平方向から下方又は上方に変更することによって、通帳や帳票等の媒体の投入や取り出しを容易にし、利用者の操作性を良くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-43950号公報(要約書、請求項7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自動取引装置は、媒体挿入口を回動させるモータを設けている。つまり、利用者の身長が低いときに、媒体挿入口を下方に向け、身長が高いときには、上方に向ける構造になっている。このような電動機構を設けることなく、媒体挿入口(挿入排出口)の部品のみで、簡易に構成することが好ましい。
【0006】
本発明は、簡易な構成で、利用者の操作性を良くすることができる挿入排出口、紙葉類挿入排出部、及び自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1発明は、紙葉類(20)が挿入又は排出され、自装置に設けられる固定の挿入排出口(9)であって、開口部底面(9b)の方が開口部上面(9a)よりも突出しており、前記開口部上面と前記開口部底面とが成す角度は、鋭角であり、前記開口部底面は、前方斜め下方向に傾斜していることを特徴とする。なお、括弧内の符号や文字は、実施形態において付した符号等であって、本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で、利用者の操作性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の挿入口上面に沿って、帳票が挿入された状態を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部から帳票が排出される状態を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態である自動取引装置の構成図である。
【
図5】本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の挿入口上面に沿って、異物が挿入された状態を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の挿入口底面に沿って、異物が挿入された状態を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部に、薄板の異物が挿入された状態を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態である紙葉類挿入排出部の搬送路内部まで、異物が挿入された状態を示す図である。
【
図9】本発明の第1比較例である紙葉類挿入排出部に、異物が挿入された状態を示す図である。
【
図10】本発明の第2比較例である紙葉類挿入排出部に、異物が挿入された状態を示す図である。
【
図11】本発明の第3実施形態である紙葉類挿入排出部の構成図である。
【
図12】本発明の第4実施形態である紙葉類挿入排出部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
(構成の説明)
図1は、本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の構成図であり、左右方向中央部の断面を示している。
紙葉類挿入排出部50は、自動取引装置100(
図4)の上部前面に配設される部位であり、帳票等の紙葉類20が挿入又は排出される。紙葉類挿入排出部50は、挿入排出口9と、搬送路10と、センサ6と、搬送ローラ7とを備える。挿入排出口9は、前後方向から見て、開口部が形成されている矩形状の樹脂部材である。この開口部は、少なくとも開口部上面9aと、開口部底面9bと、開口部上面9aに連続する上面傾斜部9cと、開口部底面9bに連続する底面水平部9dと、両側の開口部側面9eとを有する。なお、開口部底面9bの両側は、開口部側面9eの前端まで延伸し、両側傾斜面9fが形成されている。
【0012】
開口部上面9aと開口部底面9bとは、略V字状に形成され、後方から前方に進むにしたがって、上下方向の開口幅が拡がっている。また、挿入排出口9の左右方向中央部において、開口部底面9bは、開口部上面9aよりも前方に突出している。このため、挿入排出口9は、紙葉類20を上方から挿入し易い構造である。また、挿入排出口9は、開口部底面9bが水平面に対して傾斜しているので、紙葉類20を下方から挿入し易い構造でもある。上面傾斜部9cと底面水平部9dとは、逆V字状に形成され、前方から後方に進むにしたがって、上下方向の開口幅が拡がっている。
【0013】
搬送路10は、略水平な2枚の金属板で構成されている。上部金属板には、搬送路上面10aと、搬送路上面10aに連続する上面延伸部10cとが形成されている。下部金属板には、搬送路底面10bと、搬送路底面10bに連続する下面傾斜部10dとが形成されている。
【0014】
開口部上面9aは、搬送路10の搬送面と略平行である。開口部上面9aと開口部底面9bとの成す角は、鋭角である。挿入排出口9は、開口部上面9aに連続する上面傾斜部9cが形成され、開口部底面9bに連続する底面水平部9dが形成される。また、搬送路上面10aは、開口部上面9aよりも高く、段差を有している。また、搬送路底面10bは、開口部上面9aよりも高さhだけ高い。つまり、上面傾斜部9cと底面水平部9dと上面延伸部10cと下面傾斜部10dとで段差部11を構成する。
【0015】
ここで、搬送路底面10bと下面傾斜部10dとの境界を境界線Aaとし、開口部上面9aと上面傾斜部9cとの境界を境界線Bとする。つまり、境界線Aaの高さは、境界線Bの高さよりも高さhだけ高い。なお、搬送路上面10aと上面延伸部10cとの境界は、境界線Aaを射影した線とする。
【0016】
(動作の説明)
利用者が斜め下方向から紙葉類20を挿入排出口9に挿入した場合、紙葉類20の先端が搬送路上面10aに当接する。紙葉類20は、曲面状に弾性変形し、搬送路10内を進む。センサ6が紙葉類20の先端を検知すると、搬送ローラ7が回転する。これにより、紙葉類20は、搬送路10内を通過する。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の挿入口上面に沿って、紙葉類が挿入された状態を示す図である。
利用者が水平方向から紙葉類20を挿入排出口9に挿入した場合、紙葉類20の先端が挿入排出口9の奥にある下面傾斜部10dに当接する。これにより、紙葉類20の先端が搬送路上面10aに当接する。当接した紙葉類20は、さらに弾性変形し、搬送路10内を進行する。紙葉類20の先端をセンサ6が検知すると搬送ローラ7が回転する。
【0018】
図3は、本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部から紙葉類が排出される状態を示す図である。
紙葉類20を排出する際は、搬送ローラ7が逆方向に回転する。排出方向に搬送された紙葉類20は、先端が上面傾斜部9cに当接する。紙葉類20は、弾性変形しながら斜め下方向に排出される。
【0019】
図4は、本発明の第1実施形態の自動取引装置の正面図及び側面図である。
図4(a)が正面図であり、
図4(b)が側面図である。
自動取引装置100は、本体筐体1に、前記した紙葉類挿入排出部50と、接客部3と、スキャナ5と、紙葉類挿入排出部50とスキャナ5との間に搬送ローラ7とを備える。接客部3は、タッチパネル式の表示操作部3aと、紙幣や硬貨の入出金口3bとが設けられている。スキャナ5は、紙葉類としての帳票の画像を読み取る光学装置である。
【0020】
本体筐体1の前部は、略水平部1bと略垂直部1aとを有する略L字状に形成されている。略水平部1bには、表示操作部3a及び入出金口3bが設けられており、略垂直部1aには、紙葉類挿入排出部50が設けられている。つまり、紙葉類挿入排出部50及びスキャナ5は、接客部3の上方に配設されている。
【0021】
紙葉類挿入排出部50は、自動取引装置100の底面から高さH(例えば、H≒1.5m)のところに配設されており、身長が低い人や車椅子に乗った身体障害者にとっては、高いところに配設されている。したがって、紙葉類挿入排出部50は、開口部底面9bが傾斜しているので、紙葉類20を下方から挿入し易い構造である(
図1参照)。
【0022】
図5は、本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の挿入口上面に沿って、異物が挿入された状態を示す図である。
異物8は、搬送路10の間隔(D=1.5~2mm)よりも薄い剛体であり、例えば、ICカードである。ICカードの厚みdは、公称値 0.76mm、最小0.68mm、最大0.84mmである(JIS X6301「識別カード-物理的特性」参照)。
【0023】
異物8が開口部上面9aに沿って、略水平に挿入されると、先端下部8aが下面傾斜部10dに当接し、搬送路10まで到達しない。また、異物18が薄板の剛体であったとしても、境界線Aaの高さが境界線Bの高さよりも高いので、薄板の異物18は、段差部11の下面傾斜部10dに当接し、搬送路10まで到達しない。そのため、センサ6は、異物8が挿入されたことを検知しない。
【0024】
図6は、本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部の挿入口底面に沿って、異物が挿入された状態を示す図である。
異物8が開口部底面9bに沿って挿入されると、先端上部8bが段差部11の上面延伸部10cに当接し、搬送路10(搬送路上面10a)まで到達しない。そのため、センサ6は、異物8が挿入されたことを検知しない。
【0025】
図7は、本発明の第1実施形態である紙葉類挿入排出部に、薄板の異物が挿入された状態を示す図である。
異物18は、厚みd≒0の剛体の薄板である。そのため、異物18は、開口部上面9aに沿って挿入されると、搬送路10まで到達する。異物18が搬送路10まで到達すると、異物18の先端が搬送路上面10aに当接する。異物18の先端が搬送路上面10aに当接する線を当接線C1とする。また、異物18と搬送面(搬送路上面10aと搬送路底面10bとの間)とが成す角度をθとする。
【0026】
この状態では、異物18は、搬送路底面10bと下面傾斜部10dとの境界線Aaと、開口部上面9aと上面傾斜部9cとの境界線Bとの双方に当接する。境界線Aaと境界線Bとの水平距離(搬送路10に対して平行な距離)をL1とし、開口部上面9aと搬送路上面10aとの高さの差をh(
図1)とすると、
tanθ=h/L1
である。また、搬送路10の間隔(隙間)をD(例えば、D=1.5~2mm)とすると、境界線Bから当接線C1までの水平距離L3は、
L3=
(D+h)/tanθ=
(D+h)・(L1/h)=L1(
(D+h)/h)
である。つまり、センサ6は、境界線B(開口部上面9aの端部)から水平距離L3=L1(
(D+h)/h)以上離れていることが好ましい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の紙葉類挿入排出部50及びこれを用いた自動取引装置100によれば、紙葉類20を挿入排出口9に挿入する方向は、水平であっても、斜め下方向からであっても構わない。そのため、比較的身長が高い利用者は紙葉類20を水平方向に挿入することができ、子供や背中が曲がったお年寄りなど身長の低い利用者でも、紙葉類20を斜め下方向から挿入することができる。つまり、利用者の操作性が良い。また、紙葉類20を返却する際は、紙葉類20が斜め下方向に返却される。そのため、利用者からは紙葉類20の存在が目立ち、利用者が紙葉類20を取り忘れて立ち去ってしまうことを防止できる。
【0028】
また、剛体の異物8が差し込まれても、異物8は、センサ6まで到達しない。そのため、いたずらをされても、異物8が搬送路10まで取り込まれることが無く、装置(例えば、スキャナ5)の破損を防ぐことができる。
【0029】
(第2実施形態)
前記第1実施形態の紙葉類挿入排出部50の搬送路上面10aは、開口部上面9aよりも高い位置に配設されていたが、開口部上面9aと同一面内に配設されていても構わない。
【0030】
図8は、本発明の第2実施形態である紙葉類挿入排出部の搬送路内部まで、異物が挿入された状態を示す図である。
紙葉類挿入排出部51は、前記第1実施形態の紙葉類挿入排出部50と同様に、挿入排出口9と、搬送路10と、センサ6と、搬送ローラ7(不図示)とを備える。挿入排出口9は、少なくとも開口部上面9aと、開口部底面9bと、開口部側面9eとの面を備える。搬送路10は、少なくとも搬送路上面10aと、搬送路底面10bとを有する。また、上面傾斜部9cと底面水平部9dと上面延伸部10cと下面傾斜部10dとで段差部11を構成する。しかしながら、開口部上面9aの高さと、搬送路底面10bの高さとは一致している点で前記第1実施形態の紙葉類挿入排出部50と異なる。つまり、搬送路底面10b及び下面傾斜部10dの境界線Abと、開口部上面9a及び上面傾斜部9cの境界線Bとは、略同一高さである。
【0031】
図7の薄板と同様に、異物8は、開口部上面9aに沿って挿入されると、先端が搬送路上面10aに当接する。異物8の先端が搬送路上面10aに当接する線を当接線C2とする。搬送路10の間隔(隙間)をDとし、異物8の厚みをdとする。また、異物8と搬送面(搬送路上面10aと搬送路底面10bとの間)とが成す角度をθとする。
【0032】
このとき、搬送路10の間隔Dの内、異物8が占める高さをD2とすると、
D2=d・cosθ
である。θ≒0とすると、D2≒dと近似することができる。
【0033】
また、境界線Abから当接線C2までの水平距離L2は、
L2=D1/sinθ=(D-D2)/sinθ≒(D-d)/sinθ
である。
【0034】
また、異物8は、境界線Abと境界線Bとの双方に当接する。境界線Abと境界線Bとの水平距離(搬送路10に対して平行な距離)をL1とし、境界線Bから境界線Abまでの水平距離をL1とすると、
tanθ=d/L1
である。したがって、
L2≒(D-d)/sin{tan-1(d/L1)}
となる。つまり、センサ6は、境界線Ab(搬送路10の端部)から水平距離L2≒(D-d)/sin{tan-1(d/L1)}以上離れている必要がある。言い換えれば、センサ6の位置は、境界線Bから水平距離L3=(L1+L2)以上離れている必要がある。
【0035】
なお、本実施形態の搬送路上面10aは、簡略化や近似のため、開口部上面9aと略同一面内に配設させた。前記第1実施形態のように、搬送路上面10aを開口部上面9aよりも高さhだけ高い位置に配設していたとしても、センサ6の位置を境界線Ab(搬送路10の端部)から水平距離L2≒(D-d)/sin{tan-1(d/L1)}以上離れさせれば、相当程度の厚みd(例えば、ICカードの厚み)の異物8をセンサ6まで到達させないようにすることができる。
【0036】
(第1比較例)
図9は、本発明の第1比較例である紙葉類挿入排出部に、異物が挿入された状態を示す図である。
紙葉類挿入排出部52は、前記第1実施形態の紙葉類挿入排出部50と同様に、搬送路10と、センサ6と、搬送ローラ7(不図示)とを備え、搬送路10の延長線上にスキャナ5を設けている。しかしながら、紙葉類挿入排出部52は、前記第1実施形態の挿入排出口9(
図1)の代わりに挿入排出口2を設け、段差部11が形成されていない点で相違する。挿入排出口2は、挿入排出口9と異なり、紙葉類20(
図1)を水平に挿入又は排出する断面形状になっている。センサ6及び搬送ローラ7の組合せが挿入排出口2の近傍に配設されている。また、挿入排出口2は、搬送路上面10a及び搬送路底面10bの搬送面と同一面に配設されている。
【0037】
利用者が異物8を挿入排出口2に挿入すると、異物8の先端がセンサ6に到達する。センサ6が異物8を検知すると搬送ローラ7が回転し始める。これにより、異物8は、スキャナ5の下面まで到達し、スキャナ5の読取面を傷つけてしまう。スキャナ5の読取面に傷が付くと、高額なスキャナ5を交換する必要が生じてしまう。
【0038】
しかしながら、前記第1実施形態の紙葉類挿入排出部50であれば、異物8は、段差部11の上面延伸部10c(
図6)や下面傾斜部10d(
図5)に当接し、搬送路10まで到達しない。また、搬送路底面10bは、開口部上面9aよりも高さhだけ高いので、薄板の剛体である異物18(
図7)は、搬送路10まで到達しない。
【0039】
また、前記第2実施形態の紙葉類挿入排出部51(
図8)では、開口部上面9aと搬送路底面10bとが同一面に配設されている。このため、異物8は、搬送路10まで挿入されるが、センサ6が搬送路底面10b及び下面傾斜部10dの境界線Abから水平距離L2≒(D-d)/sin{tan
-1(d/L1)}以上離れていれば、異物8の先端は、センサ6の手前で搬送路上面10aに当接する。
【0040】
(第2比較例)
前記第1比較例の紙葉類挿入排出部52の挿入排出口2は、搬送路上面10a及び搬送路底面10bの搬送面と同一面に配設されていたが、搬送路上面10a及び搬送路底面10bの端部を傾斜させて、搬送面(水平面)と異なる位置に設けても構わない。
【0041】
図10は、本発明の第2比較例である紙葉類挿入排出部に、異物が挿入された状態を示す図である。
紙葉類挿入排出部53は、前記第1比較例の紙葉類挿入排出部52と同様に、挿入排出口2と、搬送路上面10a及び搬送路底面10bからなる搬送路10と、センサ6と、搬送ローラ7(不図示)とを備える。しかしながら、紙葉類挿入排出部53は、搬送路上面10aの端部を延在した上面延在部10eと、搬送路底面10bを延在した底面延在部10fとを設けている。上面延在部10e及び底面延在部10fは、水平面から傾斜しており、その端部に挿入排出口2を配設している。また、上面延在部10e及び底面延在部10fには、センサ6及び搬送ローラ7が配設されている。つまり、上面延在部10e及び底面延在部10fが平行、且つ長い点で、前記第1,2実施形態の段差部11と異なる。
【0042】
紙葉類挿入排出部53では、挿入された異物8は、上面延在部10e及び底面延在部10fを通過し、先端が搬送路上面10aに当接する。このため、異物8は、スキャナ5(
図9)までは到達しないので、スキャナ5の読取面を傷つけることが無い。しかしながら、センサ6及び搬送ローラ7が上面延在部10e及び底面延在部10fに配設されているので、センサ6が異物8を検知し、搬送ローラ7が回転する。これにより、異物8は、搬送ローラ7や上面延在部10e及び底面延在部10fを破損させる恐れがある。
【0043】
(第3実施形態)
前記第1,2実施形態の紙葉類挿入排出部50,51では、紙葉類20を下方から挿入し易いように、開口部底面9bを下方に向けていたが、上方に向けても構わない。
【0044】
図11は、本発明の第3実施形態である紙葉類挿入排出部の構成図である。
紙葉類挿入排出部51は、前記第1実施形態の紙葉類挿入排出部50と同様に、挿入排出口12と、搬送路10と、センサ6と、搬送ローラ7とを備える。挿入排出口12は、少なくとも開口部上面12aと、開口部底面12bとの面を備える。開口部底面12bは、開口部上面12aよりも突出しており、開口部上面12aと平行である。
【0045】
挿入排出口9は、開口部上面9aに連続する上面水平部12cが延在する。また、搬送路10は、搬送路上面10aに延在する上面傾斜部10gと、搬送路底面10bに延在する底面延在部10hとが延在する。挿入排出口12の開口部上面12aと搬送路10の搬送路上面10aとを接続する線を接続線Pとする。また、開口部底面12bと搬送路10の搬送路底面10bとを接続する線を接続線Qとする。接続線Pと接続線Qとは、挿入排出方向の位置が異なる。なお、上面傾斜部10gは、開口部底面12bと平行である。また、上面水平部12cと上面傾斜部10gと底面延在部10hとで、中間部13を構成する。
【0046】
紙葉類挿入排出部54によれば、開口部底面12bが開口部上面12aよりも突出しているので、紙葉類20は、上方から挿入することができる。つまり、紙葉類挿入排出部54は、身長が極めて高い人でも紙葉類20を挿入し易い。また、紙葉類挿入排出部54が接客部3(
図4)と同程度の高さの所、言い換えれば、紙葉類挿入排出部54が比較的低い所に配設されている自動取引装置である場合では、身長が低い人でも、紙葉類20を挿入し易い。
【0047】
上方から挿入された紙葉類20は、開口部上面9a及び開口部底面12bとの間、上面傾斜部10g及び底面延在部10hの間を通過する間に弾性変形しながら、先端が搬送路10に到達する。紙葉類20の先端がセンサ6まで到達すると、搬送ローラ7が回転する。
【0048】
ところで、挿入排出口9に異物8が挿入されると、異物8の先端が底面延在部10hに当接し、搬送路10まで到達しない。したがって、異物8は、センサ6まで到達しないので、搬送ローラ7を回転させない。
【0049】
(第4実施形態)
前記第3実施形態の紙葉類挿入排出部54は、開口部上面9a及び開口部底面12bが搬送路10に対して傾斜していたが、略平行でも構わない。
【0050】
図12は、本発明の第4実施形態である紙葉類挿入排出部の構成図である。
紙葉類挿入排出部55は、挿入排出口14と、搬送路10と、センサ6と、搬送ローラ7とを備える。挿入排出口14は、水平部上面14aと、水平部底面14bと、傾斜部上面14cと、傾斜部底面14dとを備える。水平部上面14aと水平部底面14bとは平行であり、傾斜部上面14cと傾斜部底面14dとは、平行である。
【0051】
搬送路10を構成する搬送路上面10aの端部が水平に延在し、延在部上面13aを形成する。搬送路底面10bの端部が延在し、傾斜部13bを形成する。延在部上面13aは、水平部上面14a及び水平部底面14bと平行である。傾斜部13bは、傾斜部上面14c及び傾斜部底面14dと平行である。
【0052】
紙葉類挿入排出部55において、上方又は水平方向から差し込まれた紙葉類20は、水平部底面14b、傾斜部底面14d、傾斜部13bに沿って、搬送路10に挿入される。一方、異物8が上方から差し込まれると、先端が水平部底面14bに当接する。また、異物8が水平方向に差し込まれると、先端が傾斜部底面14d又は傾斜部13bに当接する。何れにしても、異物8は、搬送路10まで到達しない。
【0053】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記第各実施形態の紙葉類20は、紙の帳票だけでなく、弾性を有したフィルムで形成された帳票を含む。
【符号の説明】
【0054】
1 本体筐体
2 挿入排出口
3 接客部
4 搬送路
6 センサ
7 搬送ローラ
8,18 異物
9 挿入排出口
9a 開口部上面
9b 開口部底面
10 搬送路
10a 搬送路上面
10b 搬送路底面
11 段差部
12 挿入排出口
12a 開口部上面
12b 開口部底面
14 挿入排出口
20 紙葉類
50,51,52,53,54,55 紙葉類挿入排出部
100 自動取引装置