IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図1
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図2
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図3
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図4
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図5
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図6
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図7
  • 特許-タイヤ、金型及びタイヤ製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】タイヤ、金型及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20231219BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20231219BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20231219BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019213472
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021084484
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆太
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001065(JP,A)
【文献】特開2010-100090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤサイド部に標章が設けられたタイヤであって、
前記標章は、前記タイヤサイド部のサイドプロファイル面に交差する向きで突出する輪郭面を含み、
前記輪郭面には、凹凸部が形成されており、
前記標章の頂面は、前記サイドプロファイル面からの高さがタイヤ半径方向又はタイヤ周方向に変化する傾斜面を含む
タイヤ。
【請求項2】
前記凹凸部は、前記サイドプロファイル面に交差する向きに延びる突条を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記突条は、前記サイドプロファイル面から、前記標章の頂面まで延びる、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記突条は、前記輪郭面からの突出高さが0.3mm以上である、請求項2又は3に記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤサイド部に標章が設けられたタイヤを加硫するための金型であって、
前記標章を形成するための窪み部を含み、
前記窪み部は、前記タイヤサイド部を成形する基準面に交差する向きで凹む壁面を含み、
前記壁面には、金型凹凸部が形成されており
前記窪み部の底面は、前記基準面からの深さが前記タイヤのタイヤ半径方向又はタイヤ周方向に変化する傾斜面を含む
金型。
【請求項6】
前記金型凹凸部は、前記基準面に交差する向きに延びる溝を含む、請求項に記載の金型。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の金型を用いて、前記タイヤを加硫成形する、タイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤサイド部に標章を設けたタイヤ、当該タイヤを加硫成形するための金型及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのタイヤサイド部には、タイヤサイズや製造年週等の情報を含む標章が設けられている。例えば、下記特許文献1では、タイヤのサイドウォール面に設けた表示マーク(標章)の外面を凹凸状断面として識別性を高めた空気入りタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-086106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空気入りタイヤにおいて、サイドウォール面より突出する表示マークの位置は、加硫成形時に空気が残留し易く、タイヤの表面にベアが発生し易いという問題があった。このため、標章部分にベアが発生することを抑制し、標章の外観性を向上させることが要望されていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤサイド部に設けられた標章の外観性を向上させ得るタイヤ、当該タイヤを加硫成形するための金型及びタイヤ製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤサイド部に標章が設けられたタイヤであって、前記標章は、前記タイヤサイド部のサイドプロファイル面に交差する向きで突出する輪郭面を含み、前記輪郭面には、凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記凹凸部は、前記サイドプロファイル面に交差する向きに延びる突条を含むのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記突条は、前記サイドプロファイル面から、前記標章の頂面まで延びるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記突条は、前記輪郭面からの突出高さが0.3mm以上であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記標章の頂面は、前記サイドプロファイル面からの高さがタイヤ半径方向又はタイヤ周方向に変化する傾斜面を含むのが望ましい。
【0011】
本発明は、タイヤサイド部に標章が設けられたタイヤを加硫するための金型であって、前記標章を形成するための窪み部を含み、前記窪み部は、前記タイヤサイド部を成形する基準面に交差する向きで凹む壁面を含み、前記壁面には、金型凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の金型において、前記金型凹凸部は、前記基準面に交差する向きに延びる溝を含むのが望ましい。
【0013】
本発明は、上述の金型を用いて、前記タイヤを加硫成形することを特徴とするタイヤ製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤにおいて、標章は、タイヤサイド部のサイドプロファイル面に交差する向きで突出する輪郭面を含み、前記輪郭面には、凹凸部が形成されている。このようなタイヤは、加硫成形時に輪郭面の凹凸部から空気が抜けるので、標章部分に空気が残留することなく、当該標章部分にベアが発生することを抑制し得る。このため、本発明のタイヤは、タイヤサイド部に設けられた標章の外観性を向上させることができる。
【0015】
本発明の金型において、標章を形成するための窪み部を含み、前記窪み部は、タイヤサイド部のサイドプロファイル面に交差する向きで凹む壁面を含み、前記壁面には、金型凹凸部が形成されている。このような金型は、加硫成形時に壁面の金型凹凸部から空気が抜けるので、窪み部に空気が残留することなく、加硫成形されたタイヤの標章部分にベアが発生することを抑制し得る。このため、本発明の金型は、タイヤのタイヤサイド部に設けられた標章の外観性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2】標章を模式的に示す部分斜視図である。
図3】標章を頂面側から視た部分拡大図である。
図4】本発明の金型の一実施形態を示す部分断面図である。
図5】窪み部を基準面側から視た部分拡大図である。
図6】第2の実施形態の標章を模式的に示す部分斜視図である。
図7】第3の実施形態の標章を模式的に示す部分斜視図である。
図8】第4の実施形態の標章を模式的に示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1の正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、乗用車等に装着される空気入りタイヤとして好適に用いられる。なお、タイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤに特定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤやタイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに応用され得る。
【0018】
ここで、「正規状態」とは、タイヤ1が空気入りタイヤの場合、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0019】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るトロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7とを有している。ここで、タイヤ半径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向である。また、タイヤ軸方向は、タイヤ回転軸に平行な方向である。さらに、タイヤ周方向は、タイヤ回転軸を中心とした円周方向であり、タイヤ半径方向及びタイヤ軸方向に垂直な方向である。
【0022】
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカスプライ6Aは、例えば、タイヤ周方向に対して75~90°の角度で配されたカーカスコード(図示省略)を含んでいる。カーカスコードとしては、例えば、芳香族ポリアミド、レーヨン等の有機繊維コードが好適に採用され得る。このようなカーカス6は、タイヤ1の形状を維持することに役立つ。
【0023】
ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ7A、7Bを含んでいる。ベルトプライ7A、7Bは、例えば、タイヤ周方向に対して15~45゜の角度で傾斜して配列されたベルトコード(図示省略)を含んでいる。ベルトコードとしては、例えば、スチール、アラミド、レーヨン等が好適に採用され得る。このようなベルト層7は、トレッド部2の剛性を高め、タイヤ1の耐久性能を向上させることに役立つ。
【0024】
図2は、標章9を模式的に示す部分斜視図である。図2では、抜き勾配等が省略されて記載されている。図1及び図2に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、タイヤサイド部8に標章9が設けられている。本実施形態のタイヤサイド部8は、サイドウォール部3を含んでいる。タイヤサイド部8は、例えば、ビード部4やバットレス部10を含んでいてもよい。ここで、標章9は、文字、記号、図形、模様等を含むものであり、タイヤ1のメーカ名、ブランド名、タイヤサイズ、製造年週等の情報を表示するために好適に用いられる。
【0025】
本実施形態の標章9は、タイヤサイド部8のサイドプロファイル面8aに交差する向きで突出する輪郭面9aを含んでいる。輪郭面9aの少なくとも一部には、凹凸部11が形成されるのが望ましい。本実施形態の輪郭面9aは、その全面に凹凸部11が形成されている。
【0026】
このようなタイヤ1は、加硫成形時に輪郭面9aの凹凸部11から空気が抜けるので、標章9部分に空気が残留することなく、当該標章9部分にベアが発生することを抑制し得る。このため、本実施形態のタイヤ1は、タイヤサイド部8に設けられた標章9の外観性を向上させることができる。
【0027】
より好ましい態様として、標章9は、サイドプロファイル面8aからの突出高さHが0.3~0.8mmである。標章9の突出高さHが0.3mmよりも小さいと、視認性が低下するおそれがある。標章9の突出高さHが0.8mmよりも大きいと、タイヤ1の外観性が低下するおそれがある。
【0028】
図2に示されるように、凹凸部11は、サイドプロファイル面8aに交差する向きに延びる突条12を含むのが望ましい。本実施形態の凹凸部11は、複数の突条12を含んでいる。このような凹凸部11は、加硫成形時にサイドプロファイル面8aに交差する向きに空気を抜くことができ、標章9部分に空気が残留してベアが発生することを抑制することができる。
【0029】
突条12は、サイドプロファイル面8aから、標章9の頂面9bまで延びるのが望ましい。突条12は、例えば、半円柱状に延びている。すなわち、本実施形態では、突条12の断面形状は、半円形状のものが例示されている。突条12の断面形状は、半円形状のものに限定されるものではなく、例えば、半楕円形状のものや多角形状のもの等、金型20(図4に示す)から脱型するときに問題がない形状であれば、種々の形状が適宜採用され得る。このような突条12は、標章9の頂面9b側に滞留する空気を効率よく抜くことに役立つ。
【0030】
図3は、標章9を頂面9b側から視た部分拡大図である。図3に示されるように、標章9の突条12は、好ましくは、輪郭面9aからの突出高さhが0.3mm以上である。突条12の突出高さhが0.3mmよりも小さいと、加硫成形時に効率よく空気が抜けず、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。
【0031】
突条12の幅w1は、好ましくは、0.3~0.8mmである。突条12の幅w1が0.3mmよりも小さいと、加硫成形時に効率よく空気が抜けず、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。突条12の幅w1が0.8mmよりも大きいと、凹凸部11を設けていない場合との差が小さくなり、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。
【0032】
隣接する突条12間の間隔s1は、好ましくは、突条12の幅w1の50%~100%である。突条12間の間隔s1が突条12の幅w1の50%よりも小さいと、凹凸部11を設けていない場合との差が小さくなり、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。突条12間の間隔s1が突条12の幅w1の100%よりも大きいと、空気を抜くために十分な流路を形成することができず、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。
【0033】
図4は、タイヤ1を加硫成形するための金型20を示す部分断面図である。図4に示されるように、本実施形態の金型20は、図1ないし図3に示されたタイヤサイド部8に標章9が設けられたタイヤ1を加硫するためものである。
【0034】
金型20は、例えば、タイヤ1のトレッド部2を形成するための第1モールド21と、サイドウォール部3を形成するための第2モールド22と、ビード部4を形成するための第3モールド23とを含んでいる。第1モールド21、第2モールド22及び第3モールド23は、それぞれ、複数のセグメントから構成されていてもよい。
【0035】
金型20は、加硫成形時の空気を抜くための複数のベントホール24が設けられるのが望ましい。本実施形態では、ベントホール24が、第2モールド22に設けられているものが例示されている。ベントホール24は、加硫成形時に空気を抜くことができ、金型20内に残留した空気によるベアの発生を抑制することができる。
【0036】
一方、ベントホール24は、加硫成形時にゴムが吸い込まれ、加硫成形後のタイヤ1にスピュー(図示省略)を形成させる。このようなスピューは、機械加工等により加硫成形後に容易に除去され得るが、除去後においてもスピュー痕が残るため、タイヤ1の外観性に影響を及ぼすおそれがある。このため、ベントホール24は、加硫成形後のタイヤ1において、目立たない部位に設けられるのが望ましい。
【0037】
本実施形態の金型20は、タイヤ1の標章9を形成するための窪み部25を含んでいる。窪み部25は、例えば、第2モールド22に設けられている。窪み部25は、タイヤ1の標章9の位置に応じて、第1モールド21又は第3モールド23に設けられていてもよい。
【0038】
本実施形態の窪み部25は、タイヤサイド部8を成形する基準面22aに交差する向きで凹む壁面25aを含んでいる。本実施形態の壁面25aには、金型凹凸部26が形成されている。
【0039】
このような金型20は、加硫成形時に壁面25aの金型凹凸部26から空気が抜けるので、窪み部25に空気が残留することなく、標章9部分にベアが発生することを抑制し得る。また、この金型20は、窪み部25にベントホール24を設ける必要がなく、標章9部分にスピュー痕が残るおそれがない。このため、本実施形態の金型20は、タイヤ1のタイヤサイド部8に設けられた標章9の外観性を向上させることができる。
【0040】
図5は、窪み部25を基準面22a側から視た部分拡大図である。図5に示されるように、本実施形態の窪み部25の金型凹凸部26は、基準面22aに交差する向きに延びる溝27を含んでいる。本実施形態の金型凹凸部26は、複数の溝27を含んでいる。このような金型凹凸部26は、加硫成形時に基準面22aに交差する向きに空気を抜くことができ、窪み部25に空気が残留することを抑制することができる。
【0041】
溝27は、基準面22aから、窪み部25の底面25bまで延びるのが望ましい。溝27は、例えば、半円柱状に延びている。すなわち、本実施形態では、溝27の断面形状は、半円形状のものが例示されている。溝27の断面形状は、半円形状のものに限定されるものではなく、例えば、半楕円形状のものや多角形状のもの等、タイヤ1を脱型するときに問題がない形状であれば、種々の形状が適宜採用され得る。このような溝27は、窪み部25の底面25b側に滞留する空気を効率よく抜くことができる。
【0042】
溝27は、好ましくは、壁面25aからの深さdが0.3mm以上である。溝27の深さdが0.3mmよりも小さいと、加硫成形時に効率よく空気が抜けず、窪み部25に空気が残留するおそれがある。
【0043】
溝27の幅w2は、好ましくは、0.3~0.8mmである。溝27の幅w2が0.3mmよりも小さいと、加硫成形時に効率よく空気が抜けず、窪み部25に空気が残留するおそれがある。溝27の幅w2が0.8mmよりも大きいと、金型凹凸部26を設けていない場合との差が小さくなり、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。
【0044】
隣接する溝27間の間隔s2は、好ましくは、溝27の幅w2の50%~100%である。溝27間の間隔s2が溝27の幅w2の50%よりも小さいと、金型凹凸部26を設けていない場合との差が小さくなり、標章9部分のベアの発生を抑制する効果が低減するおそれがある。溝27間の間隔s2が溝27の幅w2の100%よりも大きいと、空気を抜くために十分な流路を形成することができず、窪み部25に空気が残留するおそれがある。
【0045】
図1ないし図5に示されるように、タイヤ1の製造方法としては、例えば、一般的な製造方法が適宜採用される。本実施形態のタイヤ製造方法は、少なくとも金型20を用いて、タイヤ1を加硫成形する工程を含んでいる。このようなタイヤ製造方法は、タイヤサイド部8に標章9が設けられたタイヤ1を、標章9部分にベアやスピュー痕を発生させることなく製造することができる。このため、本実施形態のタイヤ製造方法は、タイヤサイド部8に設けられた標章9の外観性を向上させたタイヤ1を製造することができる。
【0046】
図6は、第2の実施形態の標章30を模式的に示す部分斜視図である。上述の実施形態と同一の構成要素には同一の符号が付され、その説明が省略される。また、図6では、抜き勾配等が省略されて記載されている。
【0047】
図6に示されるように、第2の実施形態の標章30は、上述の標章9と同様に、タイヤ1のタイヤサイド部8に設けられている。第2の実施形態の標章30は、上述の標章9と同様に、タイヤサイド部8のサイドプロファイル面8aに交差する向きで突出する輪郭面30aを含んでいる。輪郭面30aの少なくとも一部には、凹凸部31が形成されるのが望ましい。
【0048】
このようなタイヤ1は、加硫成形時に輪郭面30aの凹凸部31から空気が抜けるので、標章30部分に空気が残留することなく、当該標章30部分にベアが発生することを抑制し得る。このため、第2の実施形態のタイヤ1は、タイヤサイド部8に設けられた標章30の外観性を向上させることができる。
【0049】
凹凸部31は、上述の凹凸部11と同様に、サイドプロファイル面8aに交差する向きに延びる突条32を含むのが望ましい。第2の実施形態の凹凸部31は、複数の突条32を含んでいる。このような凹凸部31は、加硫成形時にサイドプロファイル面8aに交差する向きに空気を抜くことができ、標章30部分に空気が残留してベアが発生することを抑制することができる。
【0050】
第2の実施形態の突条32は、サイドプロファイル面8aから、標章30の頂面30bまで延び、標章30の頂面30bを横断して、反対側の輪郭面30aでサイドプロファイル面8aまで延びている。このような突条32は、加硫成形時に標章30の頂面30b側に滞留する空気を効率よく抜くことができる。また、このような標章30は、頂面30bに設けられた突条32により識別性を向上させることができる。
【0051】
図7は、第3の実施形態の標章40を模式的に示す部分斜視図である。上述の実施形態と同一の構成要素には同一の符号が付され、その説明が省略される。また、図7では、抜き勾配等が省略されて記載されている。
【0052】
図7に示されるように、第3の実施形態の標章40は、上述の標章9と同様に、タイヤ1のタイヤサイド部8に設けられている。第3の実施形態の標章40は、上述の標章9と同様に、タイヤサイド部8のサイドプロファイル面8aに交差する向きで突出する輪郭面40aを含んでいる。輪郭面40aの少なくとも一部には、凹凸部41が形成されるのが望ましい。
【0053】
このようなタイヤ1は、加硫成形時に輪郭面40aの凹凸部41から空気が抜けるので、標章40部分に空気が残留することなく、当該標章40部分にベアが発生することを抑制し得る。このため、第3の実施形態のタイヤ1は、タイヤサイド部8に設けられた標章40の外観性を向上させることができる。
【0054】
凹凸部41は、上述の凹凸部11と同様に、サイドプロファイル面8aに交差する向きに延びる突条42を含むのが望ましい。第3の実施形態の凹凸部41は、複数の突条42を含んでいる。このような凹凸部41は、加硫成形時にサイドプロファイル面8aに交差する向きに空気を抜くことができ、標章40部分に空気が残留してベアが発生することを抑制することができる。
【0055】
第3の実施形態の標章40の頂面40bは、サイドプロファイル面8aからの高さがタイヤ半径方向に変化する傾斜面43を含んでいる。傾斜面43は、例えば、タイヤ半径方向の外側に向けて高さが漸増する第1傾斜面43aと、タイヤ半径方向の外側に向けて高さが漸減する第2傾斜面43bとを含んでいる。このような標章40は、加硫成形時に傾斜面43によりゴムの流れが向上されるとともに、標章40の頂面40b側に滞留する空気を効率よく抜くことができる。また、このような標章40は、第1傾斜面43a及び第2傾斜面43bにより識別性を向上させることができる。
【0056】
図8は、第4の実施形態の標章50を模式的に示す部分斜視図である。上述の実施形態と同一の構成要素には同一の符号が付され、その説明が省略される。また、図8では、抜き勾配等が省略されて記載されている。
【0057】
図8に示されるように、第4の実施形態の標章50は、上述の標章9と同様に、タイヤ1のタイヤサイド部8に設けられている。第4の実施形態の標章50は、上述の標章9と同様に、タイヤサイド部8のサイドプロファイル面8aに交差する向きで突出する輪郭面50aを含んでいる。輪郭面50aの少なくとも一部には、凹凸部51が形成されるのが望ましい。
【0058】
このようなタイヤ1は、加硫成形時に輪郭面50aの凹凸部51から空気が抜けるので、標章50部分に空気が残留することなく、当該標章50部分にベアが発生することを抑制し得る。このため、第4の実施形態のタイヤ1は、タイヤサイド部8に設けられた標章50の外観性を向上させることができる。
【0059】
凹凸部51は、上述の凹凸部11と同様に、サイドプロファイル面8aに交差する向きに延びる突条52を含むのが望ましい。第4の実施形態の凹凸部51は、複数の突条52を含んでいる。このような凹凸部51は、加硫成形時にサイドプロファイル面8aに交差する向きに空気を抜くことができ、標章50部分に空気が残留してベアが発生することを抑制することができる。
【0060】
第4の実施形態の標章50の頂面50bは、サイドプロファイル面8aからの高さがタイヤ周方向に変化する傾斜面53を含んでいる。傾斜面53は、例えば、タイヤ周方向の一方側に向けて高さが漸増する第1傾斜面53aと、タイヤ周方向の一方側に向けて高さが漸減する第2傾斜面53bとを含んでいる。このような標章50は、加硫成形時に傾斜面53によりゴムの流れが向上されるとともに、標章50の頂面50b側に滞留する空気を効率よく抜くことができる。また、このような標章50は、第1傾斜面53a及び第2傾斜面53bにより識別性を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例
【0062】
図2の標章がタイヤサイド部に設けられた実施例1のタイヤと、図6の標章がタイヤサイド部に設けられた実施例2のタイヤと、輪郭面に凹凸部が形成されていない標章がタイヤサイド部に設けられた比較例のタイヤとを加硫成形するための金型が試作された。試作された金型を用いて、同一の加硫条件で試作タイヤが成形され、標章部分に生じたベアの発生率が測定された。各試作タイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下のとおりである。
【0063】
<共通仕様>
タイヤサイズ : 195/65R15
標章の文字数 : 13文字(英字)
標章の突出高さH : 0.6mm
突条の突出高さh(実施例のみ) : 0.3mm
試作本数 : 各1000本
【0064】
<ベア発生率>
それぞれの試作タイヤを加硫成形したときに、標章部分にベアが発生していた本数が測定員の目視により測定され、その発生率が求められた。結果は、以下のとおりである。
【0065】
<テスト結果>
比較例 実施例1 実施例2
ベア発生率 5% 0% 0%
【0066】
テストの結果、比較例のタイヤは標章部分に軽度のベアの発生が一定数確認されたが、実施例のタイヤは標章部分にベアの発生が確認されず、実施例のタイヤは、比較例に対して、タイヤサイド部に設けられた標章の外観性を向上させていることが確認された。
【符号の説明】
【0067】
1 タイヤ
8 タイヤサイド部
8a サイドプロファイル面
9 標章
9a 輪郭面
11 凹凸部
20 金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8