(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ガラスロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 35/00 20060101AFI20231219BHJP
B65H 43/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C03B35/00
B65H43/04
(21)【出願番号】P 2019214273
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】永田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 征也
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 洋平
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530958(JP,A)
【文献】特開2012-96989(JP,A)
【文献】特開2016-113342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B35/00-35/26
C03B17/06
B65H43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって帯状のガラスフィルムを横搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程と、を備えるガラスロールの製造方法において、
前記搬送装置は、
前記横搬送方向に沿って間隔をおいて配置されるとともに、前記ガラスフィルムを支持する第一支持部及び第二支持部と、
前記第一支持部と前記第二支持部との間に設けられる中間搬送領域と、
前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに張力を付与する張力付与部と、
前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに係る幅方向の各端部の状態を測定する検出部と
、
前記検出部によって測定されたデータに基づいて前記ガラスフィルムの前記各端部の長さを算出する制御装置と、を備え、
前記搬送工程は、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに前記張力付与部による張力を付与した状態で、前記検出部によって、前記ガラスフィルムの前記各端部の状態を測定する検査工程を備え
、
前記検査工程では、前記制御装置は、前記検査部によって測定されたデータに基づいて前記ガラスフィルムの前記各端部の前記長さを算出し、その後、前記ガラスフィルムの一方の前記端部の前記長さと前記ガラスフィルムの他方の前記端部の前記長さとの差を算出することを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項2】
前記検出部は、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムの幅方向の一端部との距離を測定する第一検出部と、前記ガラスフィルムの幅方向の他端部との距離を測定する第二検出部とを含む請求項1に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項3】
前記張力付与部は、前記ガラスフィルムを送り出す巻出装置と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取装置とを含む請求項1又は2に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項4】
搬送装置によって帯状のガラスフィルムを横搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程と、を備えるガラスロールの製造方法において、
前記搬送装置は、
前記横搬送方向に沿って間隔をおいて配置されるとともに、前記ガラスフィルムを支持する第一支持部及び第二支持部と、
前記第一支持部と前記第二支持部との間に設けられる中間搬送領域と、
前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに張力を付与する張力付与部と、
前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに係る幅方向の各端部の状態を測定する検出部と、を備え、
前記搬送工程は、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに前記張力付与部による張力を付与した状態で、前記検出部によって、前記ガラスフィルムの前記各端部の状態を測定する検査工程を備え、
前記搬送工程の前に、成形装置によって溶融ガラスを成形することで前記ガラスフィルムを形成する成形工程を備え、
前記張力付与部は、前記ガラスフィルムを固定保持した状態で搬送する固定搬送部と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取装置とを含むことを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項5】
前記固定搬送部は、吸着コンベアを含む請求項4に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項6】
前記搬送装置は、前記中間搬送領域に配置されるとともに、前記ガラスフィルムを搬送する補助搬送装置を備え、
前記検出部は、前記補助搬送装置の上方に配される請求項1から5のいずれか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項7】
前記成形工程において、前記成形装置は、前記検出部によって検出された前記ガラスフィルムの前記各端部の状態に応じて、前記ガラスフィルムに付与する張力を調整する請求項4又は5に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項8】
前記巻取装置は、その巻取力によって前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに張力を付与する請求項3から5のいずれか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ることでガラスロールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しているスマートフォンやタブレット型PC等のモバイル端末は、薄型、軽量であることが求められるため、これらの端末に組み込まれるガラス基板にも薄板化に対する要請が高まっているのが現状である。このような現状の下、フィルム状にまで薄板化(例えば、厚みが300μm以下)されたガラス基板であるガラスフィルムが開発、製造されるに至っている。
【0003】
ガラスフィルムの製造工程には、これの元となるガラスリボンをロール状に巻き取ってガラスロールを製造する工程が含まれる場合がある。例えば特許文献1には、ダウンドロー法によって、溶融ガラスから板状に成形されたガラスリボンを二つのローラ(引き取りローラ)によって引っ張ることで、当該ガラスリボンを連続的に製造し、当該ガラスリボンを巻取装置によって巻き取ることでガラスロールを製造する方法が開示されている(同文献の
図4及び
図6参照)。
【0004】
このガラスロールの製造方法では、ガラスリボンの製造時に発生する、いわゆる弓なり湾曲欠陥を低減するための措置が講じられている。具体的には、同文献の
図6に開示されるように、巻取装置の前には、弓なり湾曲欠陥を測定するための測定装置が配置されている。
【0005】
この測定装置は、ガラスリボンの長手方向において間隔をおいて配置される二対のローラと、当該二対のローラの間に配置される二つの距離センサとを備える。二対のローラは、その間の領域において、ガラスリボンを下方に弛ませた状態で搬送する。二つの距離センサは、弛んだガラスリボンの幅方向における各端部の長さを測定するために、当該各距離センサと当該各端部との距離を測定する。
【0006】
この方法によれば、二つの距離センサによって測定された距離に基づいて、ガラスリボンの一方の端部に係る長さと、他方の端部に係る長さとの差に基づく弓なり湾曲欠陥の程度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のガラスロールの製造方法では、ガラスフィルム(ガラスリボン)の一部を弛ませた状態で距離センサによる測定を行うため、その弛んでいる部分に、搬送中の振動による揺れ等が発生した場合に、正確な測定を行うことができなかった。
【0009】
そこで本発明は、ガラスロールを構成するガラスフィルムにおける幅方向の各端部の状態を精度良く測定することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、搬送装置によって帯状のガラスフィルムを横搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程と、を備えるガラスロールの製造方法において、前記搬送装置は、前記横搬送方向に沿って間隔をおいて配置されるとともに、前記ガラスフィルムを支持する第一支持部及び第二支持部と、前記第一支持部と前記第二支持部との間に設けられる中間搬送領域と、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに張力を付与する張力付与部と、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに係る幅方向の各端部の状態を測定する検出部と、を備え、前記搬送工程は、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに前記張力付与部による張力を付与した状態で、前記検出部によって、前記ガラスフィルムの前記各端部の状態を測定する検査工程を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ガラスフィルムに張力を付与することで、当該ガラスフィルムを安定した姿勢で搬送できる。この状態で検査工程を実行することで、ガラスフィルムにおける幅方向の各端部の状態を検出部によって精度良く測定することが可能になる。
【0012】
前記検出部は、前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムの幅方向の一端部との距離を測定する第一検出部と、前記ガラスフィルムの幅方向の他端部との距離を測定する第二検出部とを含み得る。
【0013】
かかる構成によれば、第一検出部によって測定されたガラスフィルムの一端部の距離に係るデータと、第二検出部によって測定されたガラスフィルムの他端部の距離に係るデータとに基づいて、ガラスフィルムの一端部の長さと他端部との長さを求めることができる。これらの長さの差に基づいて、ガラスフィルム(ガラスロール)の良否を判別することが可能になる。
【0014】
前記張力付与部は、前記ガラスフィルムを送り出す巻出装置と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取装置とを含んでもよい。巻出装置と巻取装置とによってガラスフィルムに張力を付与した状態で検査工程を実行することで、検出部による測定を精度良く行うことが可能になる。
【0015】
本発明に係るガラスロールの製造方法は、前記搬送工程の前に、成形装置によって溶融ガラスを成形することで前記ガラスフィルムを形成する成形工程を備えてもよく、前記張力付与部は、前記ガラスフィルムを固定保持した状態で搬送する固定搬送部と、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取装置とを含み得る。
【0016】
固定搬送部と巻取装置によってガラスフィルムに張力を付与した状態で検査工程を実行することで、成形工程後のガラスフィルムに対し、検出部による測定を精度良く行うことが可能になる。
【0017】
前記固定搬送部は、吸着コンベアを含んでもよい。これにより、ガラスフィルムを搬送しながら、当該ガラスフィルムに張力を好適に付与できる。
【0018】
前記搬送装置は、前記中間搬送領域に配置されるとともに、前記ガラスフィルムを搬送する補助搬送装置を備えてもよく、前記検出部は、前記補助搬送装置の上方に配されてもよい。
【0019】
前記成形工程において、前記成形装置は、前記検出部によって検出された前記ガラスフィルムの前記各端部の状態に応じて、前記ガラスフィルムに付与する張力を調整してもよい。これにより、寸法精度の高いガラスフィルムを製造でき、ひいては高品質なガラスロールを製造できる。
【0020】
また、本発明に係るガラスロールの製造方法において、前記巻取装置は、その巻取力によって前記中間搬送領域を通過する前記ガラスフィルムに張力を付与することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガラスロールを構成するガラスフィルムにおける幅方向の各端部の状態を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るガラスロールの製造方法の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】ガラスロールの製造方法における成形工程を示す正面図である。
【
図3】ガラスロールの製造方法における搬送工程を示す平面図である。
【
図4】搬送工程における検査工程を示す斜視図である。
【
図5】ガラスロールの製造方法における準備工程を示す側面図である。
【
図6】検査工程における測定データの例を示すグラフである。
【
図7】ガラスロールの製造方法における搬送工程の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係るガラスロールの製造方法の一実施形態を示す。
【0024】
図1乃至
図3は、本方法に使用されるガラスロールの製造装置の全体構成を示す。製造装置1は、溶融ガラスから帯状の母材ガラスフィルム(ガラスリボン)G1を成形する成形装置2と、母材ガラスフィルムG1の進行方向を変換する方向変換装置3と、母材ガラスフィルムG1を横搬送方向GXに沿って搬送する横搬送装置4と、母材ガラスフィルムG1の幅方向端部Ga,Gbの不要部分(耳部)を除去してなる製品ガラスフィルムG2をロール状に巻き取ってガラスロールGRを形成する巻取装置5と、各装置2~5に係る各種制御を実行する制御装置6と、を備える。
【0025】
なお、本実施形態において、製品ガラスフィルムG2の厚みは、300μm以下とされ、好ましくは100μm以下とされる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、成形装置2は、上端部にオーバーフロー溝7aが形成された断面視略楔形の成形体7と、成形体7の直下に配置されて、成形体7から溢出した溶融ガラスを表裏両側から挟むエッジローラ8と、エッジローラ8の直下に配備されるアニーラ9とを備える。
【0027】
成形装置2は、成形体7のオーバーフロー溝7aの上方から溢流した溶融ガラスを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させてフィルム状の溶融ガラスを成形する。エッジローラ8は、溶融ガラスの幅方向収縮を規制して所定幅の母材ガラスフィルムG1とする。アニーラ9は、母材ガラスフィルムG1に対して除歪処理を施すためのものである。このアニーラ9は、上下方向複数段に配設されたアニーラローラ10を有する。
【0028】
アニーラ9の下方には、母材ガラスフィルムG1を表裏両側から挟持する支持ローラ11が配設されている。支持ローラ11とエッジローラ8との間、または支持ローラ11と何れか一箇所のアニーラローラ10との間には、母材ガラスフィルムG1を薄肉にすることを助長するための張力が付与されている。
【0029】
方向変換装置3は、母材ガラスフィルムG1の進行方向を縦方向下方から横搬送方向GXへと変換する。方向変換装置3は、支持ローラ11の下方位置に設けられている。方向変換装置3には、母材ガラスフィルムG1を案内する複数のガイドローラ12が湾曲状に配列されている。これらのガイドローラ12は、鉛直方向に搬送される母材ガラスフィルムG1を横方向へと案内する。
【0030】
横搬送装置4は、方向変換装置3の進行方向前方(下流側)に配置される。この横搬送装置4は、第一搬送装置13と、第二搬送装置14と、第三搬送装置15とを有する。第一搬送装置13は、方向変換装置3の下流側に配置されている。第二搬送装置14は、第一搬送装置13の下流側に配置されている。第三搬送装置15は、第二搬送装置14の下流側に配置されている。
【0031】
第一搬送装置13及び第二搬送装置14は、例えばベルトコンベアにより構成されるが、これに限らず、ローラコンベアその他の各種コンベアにより構成されてもよい。第一搬送装置13は、方向変換装置3を通過した母材ガラスフィルムG1を横搬送方向GXに沿って下流側へと連続的に搬送する。
【0032】
図1及び
図3に示すように、第二搬送装置14は、母材ガラスフィルムG1の幅方向端部(耳部)Ga,Gbを非製品部Gcとして切断する切断部16を備える。切断部16は、例えばレーザ割断により母材ガラスフィルムG1を切断するが、この切断態様に限定されない。切断部16は、一対のレーザ照射装置17aと、当該レーザ照射装置17aの下流側に配置される一対の冷却装置17bとを含む。切断部16は、搬送される母材ガラスフィルムG1の所定部位に各レーザ照射装置17aからレーザ光を照射して加熱した後、冷却装置17bから冷媒を放出して当該加熱部位を冷却する。
【0033】
第三搬送装置15は、製品ガラスフィルムG2を横搬送方向GXに沿って搬送する搬送部18と、製品ガラスフィルムG2との距離を測定する検出部19a,19bと、補助搬送装置20と、を備える。
【0034】
搬送部18は、製品ガラスフィルムG2を固定保持した状態で下流側へ搬送する固定搬送部21と、製品ガラスフィルムG2を支持する第一支持部22及び第二支持部23と、を含む。
【0035】
固定搬送部21は、製品ガラスフィルムG2を搬送する他、製品ガラスフィルムG2に張力を付与する張力付与部としても機能する。固定搬送部21は、制御装置6に接続されている。固定搬送部21は、例えばコンベアベルト24を有する吸着コンベアにより構成される。
【0036】
本実施形態において、「固定保持」とは、固定搬送部21による製品ガラスフィルムG2の搬送中に、コンベアベルト24と製品ガラスフィルムG2における搬送中の部位との両者が相対移動しないことを意味する。すなわち、製品ガラスフィルムG2が固定保持された状態において、コンベアベルト24の表面と、当該表面に接触する製品ガラスフィルムG2の下面の一部とは、搬送中に相対移動しない。
【0037】
コンベアベルト24には、当該コンベアベルト24を厚み方向に貫通した多数の吸着用孔(図示省略)が形成されている。また、コンベアベルト24の内周側には、真空ポンプ等と接続された負圧発生装置(図示省略)が配置されている。負圧発生装置は、吸着用孔を介して製品ガラスフィルムG2を吸着するための負圧を発生させる。
【0038】
これにより、コンベアベルト24の表面は、製品ガラスフィルムG2の下面を吸着により固定保持する。コンベアベルト24に吸着された状態の製品ガラスフィルムG2は、当該コンベアベルト24の送り速度と同一の搬送速度の下で、搬送経路の下流側に搬送されていく。なお、コンベアベルト24は、製品ガラスフィルムG2の幅方向における全幅を吸着する構成であってもよいし、幅方向における一部のみを吸着する構成であってもよい。
【0039】
第一支持部22及び第二支持部23は、製品ガラスフィルムG2の下面を支持するローラにより構成される。各支持部22,23は、フリーローラであってもよく、モータ等の駆動装置によって回転駆動されてもよい。第一支持部22と第二支持部23とは、横搬送方向GXにおいて離間されている。第一支持部22は、固定搬送部21の下流側に配置されている。第二支持部23は、第一支持部22の下流側に配置されている。
【0040】
第一支持部22と第二支持部23との間には、張力が付与された製品ガラスフィルムG2を通過させる中間搬送領域MSが形成されている。
【0041】
検出部19a,19bは、中間搬送領域MSにおいて、補助搬送装置20の上方に配置されている。また、検出部19a,19bは、中間搬送領域MSを通過する製品ガラスフィルムG2の上方に位置する。検出部19a,19bは、例えば超音波距離センサにより構成されるが、他の各種距離センサにより構成されてもよい。検出部19a,19bは、製品ガラスフィルムG2の幅方向の一端部Gdとの距離を測定する第一検出部19aと、製品ガラスフィルムG2の幅方向の他端部Geとの距離を測定する第二検出部19bとを含む。
図3及び
図4に示すように、第一検出部19aと第二検出部19bとは、製品ガラスフィルムG2の幅方向(横搬送方向GXに直交する水平方向)において離間されている。各検出部19a,19bは、制御装置6に接続されている。
【0042】
補助搬送装置20は、中間搬送領域MSに配置されている。補助搬送装置20は、製品ガラスフィルムG2の下面に接触可能な補助搬送部25と、補助搬送部25を昇降させる昇降装置26とを備える。補助搬送部25は、例えばベルトコンベアにより構成されるが、この構成に限定されず、他の搬送手段により構成されてもよい。昇降装置26は、ガラスロールGRの製造初期段階において、補助搬送部25を待機位置(
図1参照)から上昇させ、製品ガラスフィルムG2の下面に接触させる。
【0043】
巻取装置5は、第三搬送装置15の下流側に設置されている。巻取装置5は、巻取ローラ27と、この巻取ローラ27を回転駆動するモータ(図示せず)と、巻取ローラ27に保護シートPSを供給する保護シート供給部28とを有する。巻取装置5は、保護シート供給部28から保護シートPSを製品ガラスフィルムG2に重ね合わせつつ、モータにより巻取ローラ27を回転させることで、製品ガラスフィルムG2をロール状に巻き取る。巻き取られた製品ガラスフィルムG2は、ガラスロールGRとして構成される。
【0044】
巻取装置5は、その巻取力によって、第三搬送装置15の中間搬送領域MSを通過する製品ガラスフィルムG2に張力を付与する。すなわち、巻取装置5は、第三搬送装置15の固定搬送部21とともに、製品ガラスフィルムG2に張力を付与する張力付与部としても機能する。
【0045】
制御装置6は、例えばCPU、ROM、RAM、HDD、モニタ、入出力インターフェース等の各種ハードウェアを実装するコンピュータ(例えばPC)を含む。制御装置6は、成形装置2、横搬送装置4及び巻取装置5に対して通信可能に接続されている。
【0046】
制御装置6は、各種の演算を実行する演算処理部と、ガラスロールGRの製造に必要なデータや各種プログラムを記憶する記憶部とを備える。
【0047】
演算処理部は、例えば成形装置2における支持ローラ11の回転速度、および母材ガラスフィルムG1に対する支持ローラ11の押圧力を制御するための演算処理を実行できる。演算処理部は、検出部19a,19bを動作させるための演算処理を実行できる。演算処理部は、検出部19a,19bによって測定されたデータに基づいて、製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geの長さを算出する演算処理を実行できる。さらに、演算処理部は、算出した各端部Gd,Geの長さの差に応じて、成形装置2(支持ローラ11)において母材ガラスフィルムG1に付与される張力を調整するための演算処理を実行できる。
【0048】
記憶部は、成形装置2における支持ローラ11の回転速度、及び支持ローラ11における母材ガラスフィルムG1に対する押圧力(挟持力)を制御するためのプログラム、横搬送装置4における各ガラスフィルムG1,G2の搬送速度を制御するためのプログラム、固定搬送部21による製品ガラスフィルムG2の吸着力、及び巻取装置5における製品ガラスフィルムG2の巻取速度、及び巻取力を制御するためのプログラム等を格納している。
【0049】
また、記憶部は、第三搬送装置15の各検出部19a,19bによって測定されたデータに基づいて、製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geの長さ及びその差を算出するためのプログラムを格納する。この他、記憶部は、第三搬送装置15の各検出部19a,19bによって測定されるデータを保存することができる。
【0050】
以下、上記構成の製造装置1を使用してガラスロールGRを製造する方法について説明する。本方法は、母材ガラスフィルムG1を成形する成形工程と、各ガラスフィルムG1,G2を搬送する搬送工程と、製品ガラスフィルムG2をロール状に巻き取る巻取工程と、を備える。
【0051】
成形工程では、成形装置2における成形体7のオーバーフロー溝7aの上方から溢流した溶融ガラスを両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させて当該溶融ガラスをフィルム状に成形する。この際、溶融ガラスの幅方向収縮をエッジローラ8により規制して所定幅の母材ガラスフィルムG1とする。その後、母材ガラスフィルムG1に対してアニーラ9により除歪処理を施す。母材ガラスフィルムG1は、支持ローラ11によって付与される張力の作用により、所定の厚みに形成される。
【0052】
搬送工程では、成形工程によって成形された母材ガラスフィルムG1の搬送方向を方向変換装置3によって縦方向から横搬送方向GXに変換する。搬送工程では、母材ガラスフィルムG1を第一搬送装置13及び第二搬送装置14によって搬送し、製品ガラスフィルムG2を第二搬送装置14及び第三搬送装置15によって搬送する。
【0053】
搬送工程は、母材ガラスフィルムG1を非製品部Gcと製品ガラスフィルムG2とに分断する切断工程と、製品ガラスフィルムG2を検査する検査工程と、を備える。
【0054】
切断工程では、第二搬送装置14によって母材ガラスフィルムG1を下流側に送りつつ、切断部16において、レーザ照射装置17aからレーザ光を母材ガラスフィルムG1の一部に照射して加熱する。その後、加熱した部位に冷却装置17bによって冷媒を吹き付ける。これにより、母材ガラスフィルムG1に熱応力が生じる。母材ガラスフィルムG1には、予め初期クラックが形成されており、このクラックを熱応力によって進展させる。これにより、母材ガラスフィルムG1から非製品部Gcと製品ガラスフィルムG2とが形成される。
【0055】
なお、ガラスフィルムG1,G2の製造開始時において、製品ガラスフィルムG2の始端部Gfを巻取装置5に連結するための準備工程が実施される。
図5に示すように、この準備工程では、第三搬送装置15における補助搬送装置20が作動している。
【0056】
すなわち、補助搬送装置20は、昇降装置26を作動させ、補助搬送部25を待機位置(
図1参照)から上昇させる。補助搬送部25は、その上面が第一支持部22及び第二支持部23と同じ高さに配置される。これにより、補助搬送部25は、製品ガラスフィルムG2の下面を支持可能な状態となる。
【0057】
第二搬送装置14から搬送される製品ガラスフィルムG2の始端部Gfは、補助搬送部25から第二支持部23へと移動する。始端部Gfは、さらに下流側に搬送され、巻取装置5の巻取ローラ27に連結される。巻取装置5に対する製品ガラスフィルムG2の連結(準備工程)が終了すると、補助搬送装置20は、昇降装置26を作動させて補助搬送部25を待機位置へと下降させる。
【0058】
検査工程では、準備工程後において中間搬送領域MSを通過する製品ガラスフィルムG2に対し、張力付与部(固定搬送部21及び巻取装置5)により、その長手方向に張力が付与される。製品ガラスフィルムG2は、固定搬送部21と巻取装置5とによって引っ張られた状態で、各検出部19a,19bの下方を通過する。
【0059】
第一検出部19a及び第二検出部19bは、各検出部19a,19bと、中間搬送領域MSを通過する製品ガラスフィルムG2の上面との距離(変位)を測定する。測定されたデータは、制御装置6に送信され、記憶部に保存される。
【0060】
制御装置6の演算処理部は、検出部19a,19bによって測定された製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geにおける変位データをグラフ化し、モニタに表示させることができる。
【0061】
図6は、モニタに表示されるグラフの一例を示す。このグラフは、横軸に製品ガラスフィルムG2の搬送距離(m)を示し、縦軸に測定部位における変位(mm)を示す。このグラフは、検出部19a,19bの下方を一定時間通過する製品ガラスフィルムG2に対し、当該製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geと各検出部19a,19bとの距離を測定し、その距離の変化を変位量として示すものである。
【0062】
グラフには、第一検出部19aによって測定された製品ガラスフィルムG2の一端部Gdの変位データが直線状に表示されている。また、グラフには、第二検出部19bによって測定された製品ガラスフィルムG2の他端部Geのデータが折れ線状に表示されている。したがって、このグラフは、製品ガラスフィルムG2の他端部Geが、一端部Gdよりも長いことを示している。また、このグラフでは、製品ガラスフィルムG2の一端部Gdの変位がほぼゼロであるの対し、他端部Geの変位は、マイナスとなっている。これは、製品ガラスフィルムG2の他端部Geが、一端部Gdと比較して、下方に弛んでいることを意味する。
【0063】
また、グラフにおいて、製品ガラスフィルムG2の他端部Geの測定データが折れ線状に表示されるのは、製品ガラスフィルムG2の他端部Geに残存する皺W(
図3及び
図4参照)を第二検出部19bが検出したことを意味する。皺Wは、母材ガラスフィルムG1を製造した場合に、その端部Ga,Gbに現れる。切断部16によって製品ガラスフィルムG2を形成した場合においても、皺Wの一部は、製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geに残存し得る。
【0064】
制御装置6の演算処理部は、第一検出部19a及び第二検出部19bによって測定された変位データ(各検出部19a,19bと製品ガラスフィルムG2の上面との距離に係るデータ)に基づいて、中間搬送領域MSを一定時間通過した製品ガラスフィルムG2における幅方向の各端部Gd,Geの長さを算出する。その後、演算処理部は、製品ガラスフィルムG2における幅方向の一端部Gdの長さと、他端部Geの長さとの差を算出する。
【0065】
演算処理部は、算出した長さの差を、記憶部に保存されている基準値と比較する。演算処理部は、算出した長さの差が基準値を超える場合、この長さの差を低減させるために、成形装置2に制御信号を送信する。成形装置2は、受信した制御信号に基づいて、例えば、支持ローラ11の回転速度、或いは母材ガラスフィルムG1に対する支持ローラ11の押圧力(挟持力)を調整する。
【0066】
なお、搬送工程では、第二搬送装置14と第三搬送装置15(固定搬送部21)との間の領域において、製品ガラスフィルムG2は、弛んだ状態で搬送される(
図1参照)。この場合において、切断部16によって切断されている母材ガラスフィルムG1には張力が作用していない。これにより、母材ガラスフィルムG1の切断部位において、張力の作用による破損を防止できる。
【0067】
巻取工程では、保護シート供給部28から保護シートPSを製品ガラスフィルムG2に供給しつつ、第三搬送装置15によって搬送された製品ガラスフィルムG2を巻取装置5の巻取ローラ27にてロール状に巻き取る。所定長さの製品ガラスフィルムG2を巻取ローラ27により巻き取ることで、ガラスロールGRが完成する。
【0068】
上記のように製造されたガラスロールGRについては、その後、ロールトゥロールによる搬送が実行される場合がある。
図7に示すように、ロールトゥロール搬送では、巻出装置29に装着された第一のガラスロールGR1から製品ガラスフィルムG2を引き出すとともに、巻出装置29から離れた位置に配された巻取装置5によって当該製品ガラスフィルムG2をロール状に巻き取ることで、第二のガラスロールGR2を形成する。
【0069】
ロールトゥロールに係る搬送装置(製造装置)は、上記した巻出装置29および巻取装置5の他、巻出装置29と巻取装置5との間に配置される第一支持部22及び第二支持部23と、第一支持部22と第二支持部23との間の中間搬送領域MSに設けられる検出部19a,19bと、を備える。
【0070】
巻出装置29は、巻出ローラ30と、この巻出ローラ30を回転駆動するモータ(図示せず)と、第一のガラスロールGR1から引き出された保護シートPSを回収する保護シート巻取部31とを備える。巻取装置5は、
図1に係る製造装置1の巻取装置5と同じ構成を有する。
【0071】
検出部19a,19bは、
図1に示す検出部19a,19bと同様に、超音波距離センサ等の距離センサにより構成される。
図4に例示した状態と同様に、第一検出部19a及び第二検出部19bは、製品ガラスフィルムG2の幅方向において間隔をおいて配置される。各検出部19a,19bは、製品ガラスフィルムG2における幅方向の各端部Gd,Geと、当該各検出部19a,19bとの距離(各端部Gd,Geの変位)を測定できる。各検出部19a,19bは、
図1に係る制御装置6に接続されてもよく、独立した制御装置に接続されてもよい。
【0072】
この搬送形態では、製品ガラスフィルムG2を送り出す巻出装置29と、製品ガラスフィルムG2をロール状に巻き取る巻取装置5とによって張力付与部が構成される。
【0073】
この形態における搬送工程では、巻出装置29に装着された第一のガラスロールGR1から製品ガラスフィルムG2及び保護シートPSが引き出される。製品ガラスフィルムG2は、第一支持部22、中間搬送領域MS、第二支持部23を通じて巻取装置5へと搬送される。製品ガラスフィルムG2とともに第一のガラスロールGR1から引き出された保護シートPSは、保護シート巻取部31によって巻き取られる。
【0074】
搬送工程において、中間搬送領域MSを通過する製品ガラスフィルムG2は、巻出装置29と巻取装置5により、その長手方向に沿って引っ張られる。これにより、製品ガラスフィルムG2に張力が付与される。
【0075】
検査工程では、第一検出部19aによって、張力が付与されている製品ガラスフィルムG2の幅方向の一端部Gdと当該第一検出部19aとの距離が測定される。また、第二検出部19bによって、製品ガラスフィルムG2の幅方向の他端部Geと当該第二検出部19bとの距離が測定される。各検出部19a,19bによって測定されたデータは、制御装置に送信される。
【0076】
制御装置の演算処理部は、各検出部19a,19bから受信した測定データに基づいて、中間搬送領域MSを一定時間通過した製品ガラスフィルムG2の幅方向における各端部Gd,Geの長さを算出する。演算処理部は、算出した製品ガラスフィルムG2の一端部Gdの長さと、他端部Geの長さとの差を算出する。演算処理部は、長さの差を記憶部に保存されている基準値と比較する。演算処理部は、長さの差が基準値を超える場合に、第一のガラスロールGR1(又は第二のガラスロールGR2)を不良品と判定する。
【0077】
この形態に係る巻取工程では、第二支持部23を通過した製品ガラスフィルムG2が巻取装置5の巻取ローラ27によってロール状に巻き取られる。この際、製品ガラスフィルムG2には、保護シート供給部28からの保護シートPSが重ねられる。これにより、巻取装置5に第二のガラスロールGR2が形成される。
【0078】
以上説明した本実施形態に係るガラスロールGRの製造方法によれば、検査工程において、製品ガラスフィルムG2に張力を付与した状態で搬送することで、当該製品ガラスフィルムG2を安定した姿勢で支持および搬送できる。これにより、検出部19a,19bによる製品ガラスフィルムG2の幅方向における各端部Gd,Geの状態(長さ)を精度良く測定することができる。
【0079】
本方法では、検査工程によって測定された製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geの長さに係る情報に基づいて、成形装置2における支持ローラ11の制御(フィードバック制御)を実行することで、各端部Gd,Geの長さの差を可及的に小さくすることができる。これにより、寸法精度の高い製品ガラスフィルムG2を製造でき、ひいては高品質のガラスロールGRを製造できる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
上記した
図7の例では、ロールトゥロール搬送によって製品ガラスフィルムG2を搬送しつつ検査工程を実行する例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明に係るガラスロールの製造方法では、この検査工程の前後において、洗浄工程や成膜工程その他の製造関連処理工程を実行できる。
【0082】
上記の実施形態では、オーバーフローダウンドロー法により、母材ガラスフィルムG1を成形する例を示したが、本実施形態の変形例として、スロットダウンドロー法やリドロー法、フロート法等により、母材ガラスフィルムG1を成形してもよい。
【0083】
上記の実施形態では、第三搬送装置15の固定搬送部21を吸着コンベアにより構成した例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。固定搬送部21は、例えば、製品ガラスフィルムG2に張力を付与することが可能なサクションローラ、ニップローラその他の搬送手段により構成されてもよい。
【0084】
上記の実施形態では、製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geの状態を距離センサにより構成される検出部19a,19bによって測定する例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。検出部19a,19bは、製品ガラスフィルムG2の各端部Gd,Geを撮像可能な撮像装置その他の測定装置によって構成されてもよい。また、本発明に係る検出部は、製品ガラスフィルムG2における幅方向の中央部の状態(長さ)を測定する第三検出部を備えても良い。
【符号の説明】
【0085】
2 成形装置
4 横搬送装置
5 巻取装置
19a 第一検出部
19b 第二検出部
20 補助搬送装置
21 固定搬送部
22 第一支持部
23 第二支持部
29 巻出装置
G1 母材ガラスフィルム
G2 製品ガラスフィルム
Gd 製品ガラスフィルムの幅方向の一端部
Ge 製品ガラスフィルムの幅方向の他端部
GR ガラスロール
GR1 第一のガラスロール
GR2 第二のガラスロール
GX 横搬送方向
MS 中間搬送領域