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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 374
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019214306
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085973
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲昭
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-046469(JP,A)
【文献】特開2005-163950(JP,A)
【文献】特開2016-218409(JP,A)
【文献】特開2004-326049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 - 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と、ステアリン酸亜鉛粒子とを含むトナーであって、
前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子を含有し、
前記ステアリン酸亜鉛粒子の体積基準における50%累積径は、3.0μm以上6.0μm以下であり、
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定された前記ステアリン酸亜鉛粒子の体積粒度分布における粒子径1.0μm以下の前記ステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、前記ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下であり、
前記レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定された前記ステアリン酸亜鉛粒子の前記体積粒度分布における粒子径10.0μm以上の前記ステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、前記ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である、トナー。
【請求項2】
前記ステアリン酸亜鉛粒子の量は、前記トナー母粒子100質量部に対して、0.02質量部以上0.50質量部以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.87以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.80以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー粒子は、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定された前記ステアリン酸亜鉛粒子の前記体積粒度分布における粒子径1.0μm以下の前記ステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、前記ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で0.1体積%以上であり、
前記レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定された前記ステアリン酸亜鉛粒子の前記体積粒度分布における粒子径10.0μm以上の前記ステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、前記ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で0.1体積%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、個数平均一次粒子径1.5μm以下の金属石鹸粒子(より具体的には、ステアリン酸亜鉛粒子等)を外添剤粒子として含むトナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-147979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、画像流れ(詳しくは、画像が擦れたように流れてぼやける現象)の発生を抑制しつつ、かぶりの発生を抑制できるトナーを得ることは難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像流れの発生を抑制しつつ、かぶりの発生を抑制できるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトナーは、トナー粒子と、ステアリン酸亜鉛粒子とを含む。前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子を含有する。前記ステアリン酸亜鉛粒子の体積基準における50%累積径は、3.0μm以上6.0μm以下である。粒子径1.0μm以下の前記ステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、前記ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である。粒子径10.0μm以上の前記ステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、前記ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像流れの発生を抑制しつつ、かぶりの発生を抑制できるトナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子及びステアリン酸亜鉛粒子の断面構造の一例を示す図である。
図2】風力分級機の一例を示す部分断面図である。
図3図2に示す風力分級機におけるコアンダブロック及びその周辺部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。まず、本明細書中で使用される用語について説明する。トナーは、トナー粒子及びステアリン酸亜鉛粒子の集合体(例えば、トナー粒子の粉体とステアリン酸亜鉛粒子の粉体とを含む混合粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体、外添剤粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0010】
「体積基準における50%累積径」は、体積基準の粒度分布(体積粒度分布)における、小粒径側からの頻度の累積が50%になる粒子径である。
【0011】
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定した、体積基準のメディアン径(体積基準における50%累積径)である。粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7401F」)及び画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて測定した、100個の一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径(粉体の個数平均一次粒子径)を指す。
【0012】
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電極性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定する。摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0013】
軟化点(Tm)の測定値は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。
【0014】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0015】
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して、2成分現像剤を調製してもよい。
【0016】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子を含有する。本実施形態に係るトナーに含まれるステアリン酸亜鉛粒子の体積基準における50%累積径は、3.0μm以上6.0μm以下である。本実施形態に係るトナーにおいて、粒子径1.0μm以下のステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である。本実施形態に係るトナーにおいて、粒子径10.0μm以上のステアリン酸亜鉛粒子の存在比率は、ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である。
【0017】
以下、ステアリン酸亜鉛粒子の体積基準における50%累積径(単位:μm)を、StD50と記載することがある。ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対する、粒子径1.0μm以下のステアリン酸亜鉛粒子の存在比率(単位:体積%)を、StRD1と記載することがある。ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対する、粒子径10.0μm以上のステアリン酸亜鉛粒子の存在比率(単位:体積%)を、StRD10と記載することがある。StD50、StRD1及びStRD10は、いずれもレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、後述する実施例と同じ測定方法又はそれに準ずる測定方法により測定される。
【0018】
本実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えることにより、画像流れの発生を抑制しつつ、かぶりの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。
【0019】
本実施形態に係るトナーでは、StD50が3.0μm以上であるため、ステアリン酸亜鉛粒子のトナー粒子への付着性が低くなる傾向がある。このため、本実施形態に係るトナーを現像工程に用いると、ステアリン酸亜鉛粒子が、像担持体(例えば感光体ドラム)の表面に相対的に付着しやすくなる。ステアリン酸亜鉛粒子は疎水基(-C1735)を有しているため、ステアリン酸亜鉛粒子が付着した像担持体の表面は、吸湿が抑制される。また、本実施形態に係るトナーでは、StRD1が2.0体積%以下であるため、像担持体の表面の吸湿を抑制するのに十分な量のステアリン酸亜鉛粒子を、像担持体に供給できる。よって、本実施形態に係るトナーによれば、像担持体の表面の吸湿に起因する画像流れの発生を抑制できる。
【0020】
他方、比較的大粒径のステアリン酸亜鉛粒子は、現像工程において像担持体に供給されず、現像装置内に残留する傾向がある。特に、比較的大粒径のステアリン酸亜鉛粒子の存在比率(ステアリン酸亜鉛粒子の全量に対する体積比率)が高い場合、現像装置内に比較的大粒径のステアリン酸亜鉛粒子が残留しやすくなる。現像装置内にステアリン酸亜鉛粒子が残留すると、現像装置内でトナー粒子の帯電量が変動する場合がある。トナー粒子の帯電量が変動すると、形成される画像において、かぶりが発生しやすくなる。これに対し、本実施形態に係るトナーでは、StD50が6.0μm以下である。また、本実施形態に係るトナーでは、StRD10が2.0体積%以下である。このように、本実施形態に係るトナーでは、現像装置内へのステアリン酸亜鉛粒子の残留を抑制できる程度に、StD50の上限及びStRD10の上限が設定されている。よって、本実施形態に係るトナーによれば、かぶりの発生を抑制できる。
【0021】
本実施形態において、画像流れの発生をより抑制するためには、StD50は、4.0μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましい。また、本実施形態において、かぶりの発生をより抑制するためには、StD50は、3.5μm以下であることが好ましく、3.3μm以下であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態において、画像流れの発生をより抑制するためには、ステアリン酸亜鉛粒子の量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.02質量部以上であることが好ましく、0.10質量部以上であることがより好ましく、0.15質量部以上であることが更に好ましい。また、本実施形態において、かぶりの発生をより抑制するためには、ステアリン酸亜鉛粒子の量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.50質量部以下であることが好ましく、0.30質量部以下であることがより好ましく、0.25質量部以下であることが更に好ましい。
【0023】
本実施形態において、トナーの製造コストを低減するためには、StRD1は、0.1体積%以上であることが好ましく、0.4体積%以上であることがより好ましく、0.8体積%以上であることが更に好ましい。同じ理由から、本実施形態において、StRD10は、0.1体積%以上であることが好ましく、0.4体積%以上であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を更に備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を更に備える場合には、トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
【0025】
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、シェル層を備えないトナー粒子であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載することがある)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子が、結着樹脂を含むトナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。シェル層は、樹脂を含む。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散されていてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。
【0026】
本実施形態において、トナー母粒子は、結着樹脂以外に、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を更に含有してもよい。
【0027】
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、参照する図1は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
【0028】
[トナーの構成]
以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナーの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子及びステアリン酸亜鉛粒子の断面構造の一例を示す図である。
【0029】
図1に示されるトナー30は、トナー粒子10の粉体と、ステアリン酸亜鉛粒子20の粉体とを含む。トナー粒子10は、結着樹脂を含むトナー母粒子11と、トナー母粒子11の表面に付着した外添剤12とを備える。ステアリン酸亜鉛粒子20の体積基準における50%累積径は、3.0μm以上6.0μm以下である。粒子径1.0μm以下のステアリン酸亜鉛粒子20の存在比率は、ステアリン酸亜鉛粒子20の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である。粒子径10.0μm以上のステアリン酸亜鉛粒子20の存在比率は、ステアリン酸亜鉛粒子20の全量に対して、体積比率で2.0体積%以下である。
【0030】
ステアリン酸亜鉛粒子20は、トナー母粒子11の表面に付着していてもよく、トナー母粒子11の表面に付着していなくてもよい。
【0031】
画像形成に適したトナー30を得るためには、トナー母粒子11の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
【0032】
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係るトナーの構成の一例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を備えていなくてもよい。ただし、流動性に優れるトナーを得るためには、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を備えていることが好ましい。
【0033】
[トナーの要素]
次に、本実施形態に係るトナーの要素について説明する。まず、トナー粒子に含まれる成分について説明する。
【0034】
{トナー粒子}
(結着樹脂)
トナー母粒子は、例えば全成分の70質量%以上を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナー母粒子全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナー母粒子は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂の全量に対して85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル酸エステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
【0035】
熱可塑性樹脂は、一種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸エステル系モノマー、スチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
【0036】
低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナー母粒子が、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂の全量に対して80質量%以上100質量%以下の割合でポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。ポリエステル樹脂は、一種以上の多価アルコールと一種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するための多価アルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、脂肪族ジオール、ビスフェノール等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するための多価カルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体(より具体的には、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等)を使用してもよい。
【0037】
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール、α,ω-アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール等)、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0038】
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0039】
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0040】
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、1,10-デカンジカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
【0041】
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0042】
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0043】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0044】
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、例えばイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0045】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
【0046】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0047】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0048】
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、耐オフセット性に優れるトナーを得るために使用される。耐オフセット性に優れるトナーを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0049】
離型剤としては、例えば、エステルワックス、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、及びカスターワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(より具体的には、カルナバワックス、ライスワックス等)、及び合成エステルワックスが挙げられる。本実施形態では、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
【0050】
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
【0051】
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性に優れるトナーを得るために使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。
【0052】
トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性(正帯電性)を強めることができる。また、トナー母粒子に負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のアニオン性(負帯電性)を強めることができる。
【0053】
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上の電荷制御剤を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
負帯電性の電荷制御剤の例としては、キレート化合物である有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体、及びこれらの塩からなる群より選択される一種以上が好ましい。
【0055】
帯電安定性に優れるトナーを得るためには、電荷制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0056】
(磁性粉)
トナー母粒子は、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。本実施形態では、一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
【0057】
(外添剤)
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、トナー母粒子の表面に付着した外添剤(外添剤粒子の粉体)を更に備えてもよい。本実施形態では、一種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
【0058】
流動性に優れるトナーを得るためには、外添剤を構成する外添剤粒子としては、無機酸化物粒子が好ましく、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子からなる群より選択される一種以上がより好ましい。
【0059】
流動性に優れるトナーを得るためには、外添剤を構成する外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、5nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0060】
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物からなる群より選ばれる一種以上が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数のヒドロキシ基(-OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、ヒドロキシ基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
【0061】
トナー母粒子からの外添剤の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0062】
{ステアリン酸亜鉛粒子}
次に、ステアリン酸亜鉛粒子について説明する。
【0063】
ステアリン酸亜鉛粒子は、トナー粒子と共に本実施形態に係るトナーを構成する。ステアリン酸亜鉛粒子の製造方法は、特に限定されない。また、本実施形態に係るトナーでは、市販のステアリン酸亜鉛粒子を使用することもできる。なお、ステアリン酸亜鉛粒子は、表面処理(より具体的には、正帯電化処理等)が施されていてもよい。
【0064】
像担持体の表面へのステアリン酸亜鉛粒子の付着性を高めることにより、画像流れの発生をより抑制するためには、ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.87以下であることが好ましく、0.83以下であることがより好ましい。また、像担持体の表面の損傷を抑制するためには、ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.80以上であることが好ましい。なお、ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体を測定対象とし、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法により測定された、粉体中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度である。
【0065】
ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度を上述した好ましい範囲(0.80以上0.87以下)に容易に調整するためには、ステアリン酸亜鉛粒子を湿式法で製造することが好ましい。なお、「湿式法」とは、ステアリン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩と、亜鉛の無機塩とを湿式で反応させることにより、ステアリン酸亜鉛粒子を生成させる方法を指す。ステアリン酸亜鉛粒子の粒子径及び個数平均円形度は、各々、例えば湿式法でステアリン酸亜鉛粒子を製造する際の湿式反応の条件を変更することにより調整できる。
【0066】
画像流れの発生を更に抑制しつつ、かぶりの発生を抑制するためには、体積基準における50%累積径が5.0μm以上6.0μm以下であり、かつ個数平均円形度が0.83以下のステアリン酸亜鉛粒子を使用することが好ましい。
【0067】
ステアリン酸亜鉛粒子の粒度分布の調整方法(詳しくは、StD50、StRD1及びStRD10の調整方法)としては、例えば公知の方法(より具体的には、湿式法等)で製造されたステアリン酸亜鉛粒子の粉体を、分級する方法が挙げられる。ステアリン酸亜鉛粒子の粉体を分級する際は、分級する前に、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体を粉砕してもよい。
【0068】
以下、ステアリン酸亜鉛粒子の粒度分布の調整方法の一例として、図面を参照しながら、コアンダ効果を利用した風力分級機によりステアリン酸亜鉛粒子の粉体を分級する方法について説明する。以下、コアンダ効果を利用した風力分級機を、単に「風力分級機」と記載することがある。
【0069】
参照する図2は、風力分級機の一例を示す部分断面図である。また、参照する図3は、図2に示す風力分級機におけるコアンダブロック及びその周辺部の拡大断面図である。なお、図2及び図3は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
【0070】
図2に示す風力分級機100は、分級室101と、上部壁102と、第1側壁103と、第2側壁104と、第1下部壁105と、第2下部壁106と、コアンダブロック107とを備える。上部壁102、第1側壁103、第2側壁104、第1下部壁105、第2下部壁106、及びコアンダブロック107は、分級室101を囲むように配置されている。
【0071】
上部壁102と第1側壁103との間には、分級室101に開口する第1入気流路108が設けられている。上部壁102と第2側壁104との間には、分級室101に開口する第2入気流路109が設けられている。第2側壁104とコアンダブロック107との間には、分級室101に開口する粉体供給流路110が設けられている。第2下部壁106とコアンダブロック107との間には、分級室101に開口する第1排出流路111が設けられている。第1下部壁105と第2下部壁106との間には、分級室101に開口する第2排出流路112が設けられている。第1側壁103と第1下部壁105との間には、分級室101に開口する第3排出流路113が設けられている。
【0072】
また、上部壁102には、入気エッジ114が設けられている。入気エッジ114は、上部壁102の先端に回動可能に設けられている。入気エッジ114の角度を変更することにより、第1入気流路108からの気体の流入量及び第2入気流路109からの気体の流入量を、それぞれ調整できる。第2下部壁106には、第1分級エッジ115が設けられている。第1分級エッジ115は、第2下部壁106の先端に回動可能に設けられている。第1分級エッジ115の角度を変更することにより、後述するFΔR(図3参照)を調整できる。第1下部壁105には、第2分級エッジ116が設けられている。第2分級エッジ116は、第1下部壁105の先端に回動可能に設けられている。第2分級エッジ116の角度を変更することにより、後述するMΔR(図3参照)を調整できる。
【0073】
次に、風力分級機100を用いて、小粒径粒子121の粉体と中粒径粒子122の粉体と大粒径粒子123の粉体とを含むステアリン酸亜鉛粒子の粉体120を、分級する方法について説明する。なお、小粒径粒子121の粉体、中粒径粒子122の粉体及び大粒径粒子123の粉体は、いずれも所定の粒度分布を有する。
【0074】
まず、所望の粒度分布(詳しくは、StD50、StRD1及びStRD10)が得られるように、第1分級エッジ115の角度及び第2分級エッジ116の角度を変更する。図3に示すように、第1分級エッジ115の角度を変更することにより、コアンダブロック107の円弧107Aを含む扇形の中心Cと第1分級エッジ115の先端とを結ぶ直線上における、第1分級エッジ115の先端からコアンダブロック107までの距離(以下、FΔRと記載する)を調整できる。また、第2分級エッジ116の角度を変更することにより、コアンダブロック107の円弧107Aを含む扇形の中心Cと第2分級エッジ116の先端とを結ぶ直線上における、第2分級エッジ116の先端からコアンダブロック107までの距離(以下、MΔRと記載する)を調整できる。
【0075】
引き続き、図2を参照して、風力分級機100を用いた分級方法について説明する。上述のように第1分級エッジ115の角度及び第2分級エッジ116の角度を変更した後、第1排出流路111、第2排出流路112及び第3排出流路113を介して分級室101内を減圧する。続いて、粉体供給流路110を介してステアリン酸亜鉛粒子の粉体120を分級室101に供給する。これにより、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体120は、コアンダブロック107の作用によるコアンダ効果と、第1入気流路108及び第2入気流路109から流入する気体の作用とにより、湾曲線を描くように移動する。そして、小粒径粒子121は、主に、コアンダブロック107に最も近い第1排出流路111より排出される。また、大粒径粒子123は、主に、コアンダブロック107から最も遠い第3排出流路113より排出される。また、中粒径粒子122は、主に、第1排出流路111と第3排出流路113との間に配置された第2排出流路112より排出される。
【0076】
以下、第1排出流路111より排出された粉体を、F粉と記載することがある。また、第2排出流路112より排出された粉体を、M粉と記載することがある。また、第3排出流路113より排出された粉体を、G粉と記載することがある。上述した分級方法により、F粉、M粉又はG粉として、StD50が3.0μm以上6.0μm以下であり、かつStRD1及びStRD10が、各々2.0体積%以下である粒度分布に調整された粉体を得ることができる。
【0077】
<トナーの製造方法>
次に、上述した実施形態に係るトナーの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るトナーと重複する構成要素については説明を省略する。
【0078】
[トナー母粒子の調製工程]
まず、凝集法又は粉砕法によりトナー母粒子を調製する。
【0079】
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナー母粒子を構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナー母粒子を形成する。
【0080】
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナー母粒子を調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナー母粒子を調製する場合、トナー母粒子の調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナー母粒子の調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナー母粒子の調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
【0081】
混合工程では、結着樹脂と、必要に応じて添加する内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナー母粒子が得られる。
【0082】
[外添工程]
その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、トナー母粒子に外添剤を付着させずに、トナー母粒子をトナー粒子として使用してもよい。こうして、トナー粒子の粉体が得られる。
【0083】
[トナー粒子とステアリン酸亜鉛粒子との混合工程]
続いて、得られたトナー粒子の粉体と、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体とを、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて混合することにより、トナー粒子の粉体とステアリン酸亜鉛粒子の粉体とを含むトナーが得られる。混合工程で使用するステアリン酸亜鉛粒子の粉体は、StD50が3.0μm以上6.0μm以下であり、かつStRD1及びStRD10が、各々2.0体積%以下である粒度分布に調整された粉体である。
【0084】
なお、外添剤を含むトナー粒子を含有するトナーを製造する場合、トナー母粒子の粉体と、外添剤と、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体とを、同時に攪拌しながら混合することにより、トナー粒子の粉体とステアリン酸亜鉛粒子の粉体とを含むトナーを得ることもできる。
【実施例
【0085】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。まず、ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度の測定方法、並びにStD50、StRD1及びStRD10の測定方法について説明する。
【0086】
<ステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度の測定方法>
試料(後述するステアリン酸亜鉛粒子の粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6のいずれか)を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7401F」)により撮影し、得られた画像を画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)により解析した。詳しくは、画像内に存在するステアリン酸亜鉛粒子から無作為に100個の粒子を選択し、それぞれの粒子の円形度(粒子の投影面積と等しい円の周囲長/粒子の周囲長)を計測した。計測された100個の粒子の円形度から個数平均値を算出し、得られた値をステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度とした。
【0087】
<StD50、StRD1及びStRD10の測定方法>
まず、ビーカー(容量100mL)に、エタノール40gと、試料(後述するステアリン酸亜鉛粒子の粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6のいずれか)0.5gとを投入した。次いで、ビーカー中の試料を、超音波洗浄器(アズワン株式会社販売「VS-F100」、発振周波数:50kHz)を用いて、1分間超音波処理し、測定用分散液を得た。次いで、得られた測定用分散液を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)に投入し、上記レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により試料の体積粒度分布を測定した。そして、測定された体積粒度分布から試料のStD50、StRD1及びStRD10を求めた。
【0088】
<ステアリン酸亜鉛粒子の粉体の調製>
以下、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6の調製方法について説明する。なお、以下において、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6を、それぞれ粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6と記載することがある。
【0089】
[粉体PA-1の調製]
湿式法で製造されたステアリン酸亜鉛粒子の粉体(堺化学工業株式会社製「SZ-2000」)を、風力分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて下記分級条件で分級することによりM粉のみを分取し、M粉からなる粉体PA-1を得た。粉体PA-1中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.81であった。なお、粉体PA-1中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、後述する方法でトナーを作製した後、トナーから分離させた粉体PA-1を測定対象として測定した場合も同じ結果が得られた。以下で説明する粉体PA-2~PA-4及びPB-1~PB-6中にそれぞれ含まれるステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度についても同様であった。
【0090】
(分級条件)
投入周波数:24Hz
風量制御:自動制御
インジェクター圧力:0.5MPa
FΔR:8.0mm
MΔR:15.0mm
【0091】
[粉体PA-2の調製]
MΔRを20.0mmに変更したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、M粉からなる粉体PA-2を得た。粉体PA-2中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.82であった。
【0092】
[粉体PA-3の調製]
FΔR及びMΔRを、それぞれ10.0mm及び20.0mmに変更したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、M粉からなる粉体PA-3を得た。粉体PA-3中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.82であった。
【0093】
[粉体PA-4の調製]
MΔRを18.0mmに変更したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、M粉からなる粉体PA-4を得た。粉体PA-4中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.81であった。
【0094】
[粉体PB-1の調製]
FΔRを2.0mmに変更したこと、及びF粉のみを分取したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、F粉からなる粉体PB-1を得た。粉体PB-1中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.82であった。
【0095】
[粉体PB-2の調製]
FΔRを3.5mmに変更したこと、及びF粉のみを分取したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、F粉からなる粉体PB-2を得た。粉体PB-2中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.80であった。
【0096】
[粉体PB-3の調製]
FΔRを5.0mmに変更したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、M粉からなる粉体PB-3を得た。粉体PB-3中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.82であった。
【0097】
[粉体PB-4の調製]
FΔR及びMΔRを、それぞれ10.0mm及び22.0mmに変更したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、M粉からなる粉体PB-4を得た。粉体PB-4中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.81であった。
【0098】
[粉体PB-5の調製]
FΔR及びMΔRを、それぞれ10.0mm及び25.0mmに変更したこと以外は、粉体PA-1の調製と同じ方法で、M粉からなる粉体PB-5を得た。粉体PB-5中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.82であった。
【0099】
[粉体PB-6の準備]
粉体PB-6として、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体(堺化学工業株式会社製「SZ-2000」)を準備した。粉体PB-6は、分級処理を行わなかった。粉体PB-6中のステアリン酸亜鉛粒子の個数平均円形度は、0.80であった。
【0100】
ステアリン酸亜鉛粒子の粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6のそれぞれについて、StD50、StRD1及びStRD10を表1に示す。なお、StD50、StRD1及びStRD10は、後述する方法でトナーを作製した後、トナーから分離させた粉体(粉体PA-1~PA-4及びPB-1~PB-6のいずれか)を測定対象として測定した場合も同じ結果が得られた。
【0101】
【表1】
【0102】
<トナー粒子TAの作製>
[結着樹脂の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、精留塔及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコを温調槽に載置し、このフラスコ内に、1,2-プロパンジオール1200gと、テレフタル酸1700gと、ジオクタン酸錫(II)3gとを投入した。続けて、窒素雰囲気下、温度230℃の条件でフラスコ内容物を15時間反応(詳しくは、縮合反応)させた。続けて、フラスコ内を減圧し、減圧雰囲気(圧力8.0kPa)かつ温度230℃の条件で、反応生成物(ポリエステル樹脂)のTmが所定の温度(90℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、結着樹脂としてのポリエステル樹脂が得られた。得られたポリエステル樹脂は、Tmが90℃であった。
【0103】
[トナー母粒子の調製]
上述の合成方法により得られたポリエステル樹脂80質量部と、離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-3」、成分:エステルワックス)9質量部と、着色剤(三菱ケミカル株式会社製「MA100」、成分:カーボンブラック)9質量部と、正帯電性の電荷制御剤(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P-51」)1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)を用いて回転速度2000rpmで4分間混合した。
【0104】
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度150rpm、シリンダー温度100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、風力分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.7μmのトナー母粒子が得られた。
【0105】
[外添剤の外添]
100質量部のトナー母粒子(上述の調製方法で得られたトナー母粒子)と、1.5質量部の疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA200HS」、個数平均一次粒子径:12nm)と、1.0質量部の導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC-100」、個数平均一次粒子径:350nm)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)に投入した。次いで、上記FMミキサーを用いて、回転速度3000rpmかつジャケット温度20℃の条件で、トナー母粒子と外添剤(疎水性シリカ粒子及び導電性酸化チタン粒子)とを5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤の全量を付着させた。
【0106】
続けて、得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、トナー粒子TAの粉体が得られた。なお、篩別の前後で、トナー粒子TAを構成する成分の組成比は変化しなかった。
【0107】
<トナーの作製>
[トナーTA-1の作製]
上述の作製方法で得られたトナー粒子TAの粉体と、上述の調製方法で得られた粉体PA-1とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)に投入した。粉体PA-1の上記FMミキサーへの投入量は、トナー粒子TAの粉体に含まれるトナー母粒子100質量部に対して、0.20質量部であった。次いで、上記FMミキサーを用いて、回転速度3000rpmかつジャケット温度20℃の条件で、トナー粒子TAの粉体と、粉体PA-1とを5分間混合した。その結果、正帯電性のトナーTA-1が得られた。
【0108】
[トナーTA-2~TA-4及びTB-1~TB-6の作製]
ステアリン酸亜鉛粒子の粉体の種類を、後述する表2に示すとおりとしたこと以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で、正帯電性のトナーTA-2~TA-4及びTB-1~TB-6をそれぞれ作製した。
【0109】
<評価方法>
以下、トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-6の評価方法について説明する。
【0110】
[2成分現像剤の調製]
京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa 3252ci」用キャリア100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-6のいずれか)8質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用の2成分現像剤を調製した。
【0111】
[画像流れ]
評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 3252ci」、像担持体:アモルファスシリコンを含む感光層を備えた感光体ドラム)を使用した。評価対象を含む2成分現像剤(前述の方法で調製した2成分現像剤)を評価機のブラック用現像装置に投入し、評価用トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-6のいずれか)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。次いで、評価機を用いて、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、印字率20%の画像を印刷用紙(A4サイズの普通紙)に3万枚連続で印刷した。次いで、印刷後の評価機を、温度32.5℃かつ湿度80%RHの環境下に12時間静置した。
【0112】
次いで、12時間静置した評価機を用いて、温度32.5℃かつ湿度80%RHの環境下、1枚の印刷用紙(A4サイズの普通紙)の全面にハーフトーン画像(画像濃度:50%)を出力した。次いで、出力した画像を目視で観察し、画像流れの有無を確認した。画像流れが発生した場合、後述するドラムリフレッシュ操作を1回以上6回以下の範囲で行い、再度、ハーフトーン画像(画像濃度:50%)を1枚の印刷用紙(A4サイズの普通紙)に印刷し、画像流れの有無を確認した。印刷結果より、下記判定基準に基づいて判定した。判定がA又はBの場合を「画像流れの発生を抑制できている」と評価し、判定がCの場合を「画像流れの発生を抑制できていない」と評価した。
【0113】
(画像流れの判定基準)
A:1回目の印刷で画像流れが発生しなかった。
B:1回目の印刷で画像流れが発生したが、下記に示すドラムリフレッシュ操作を1回以上6回以下の範囲で行った後、再度印刷した際に画像流れが発生しなかった。
C:1回目の印刷で画像流れが発生し、下記に示すドラムリフレッシュ操作を6回行った後、再度印刷した際にも画像流れが発生した。
【0114】
(ドラムリフレッシュ操作)
ドラムリフレッシュ操作は以下の方法で行った。まず、通紙しない状態で評価機の現像スリーブにトナー層を形成した後、評価機の感光体ドラムを露光して感光体ドラムの全周にわたってソリッド画像用の静電潜像を形成した。次いで、現像スリーブに形成されたトナー層のトナーを感光体ドラムに供給して、感光体ドラムの全周にわたってトナー像(黒色のソリッド画像に対応するトナー像)を形成した。次いで、感光体ドラムを1分間空転させることによって、評価機のクリーナーにより回収されたトナーで感光体ドラムの表面を研磨した。
【0115】
[かぶり]
評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 3252ci」、像担持体:アモルファスシリコンを含む感光層を備えた感光体ドラム)を使用した。評価対象を含む2成分現像剤(前述の方法で調製した2成分現像剤)を評価機のブラック用現像装置に投入し、評価用トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-6のいずれか)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。次いで、評価機を用いて、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、印字率20%の画像を印刷用紙(A4サイズの普通紙)に3万枚連続で印刷した。
【0116】
次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率5%の画像を1枚の印刷用紙(A4サイズの普通紙)に印刷し、評価用画像を得た。得られた評価用画像の空白部の画像濃度(ID)を、反射濃度計(X-Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて測定し、かぶり濃度(FD)を算出した。なお、かぶり濃度(FD)は、上記評価用画像の空白部の画像濃度(ID)からベースペーパー(未印刷紙)の画像濃度(ID)を引いた値に相当する。
【0117】
得られたかぶり濃度(FD)より、下記判定基準に基づいて判定した。判定がAの場合を「かぶりの発生を抑制できている」と評価し、判定がBの場合を「かぶりの発生を抑制できていない」と評価した。
【0118】
(かぶりの判定基準)
A:かぶり濃度(FD)が0.003以下であった。
B:かぶり濃度(FD)が0.003を超えていた。
【0119】
<評価結果>
トナーTA-1~TA-4及びTB-1~TB-6のそれぞれについて、ステアリン酸亜鉛粒子の粉体の種類、画像流れの判定結果、及びかぶりの判定結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
表1及び表2に示すように、トナーTA-1~TA-4では、StD50が3.0μm以上6.0μm以下であり、StRD1が2.0体積%以下であり、StRD10が2.0体積%以下であった。
【0122】
表2に示すように、トナーTA-1~TA-4では、画像流れの判定結果がA又はBであった。よって、トナーTA-1~TA-4は、画像流れの発生を抑制できていた。トナーTA-1~TA-4では、かぶりの判定結果がAであった。よって、トナーTA-1~TA-4は、かぶりの発生を抑制できていた。
【0123】
表1及び表2に示すように、トナーTB-1及びTB-2では、StD50が3.0μm未満であった。トナーTB-5及びTB-6では、StD50が6.0μmを超えていた。トナーTB-1~TB-3及びTB-6では、StRD1が2.0体積%を超えていた。トナーTB-4~TB-6では、StRD10が2.0体積%を超えていた。
【0124】
表2に示すように、トナーTB-1~TB-3及びTB-6では、画像流れの判定結果がCであった。よって、トナーTB-1~TB-3及びTB-6は、画像流れの発生を抑制できていなかった。トナーTB-4~TB-6では、かぶりの判定結果がBであった。よって、トナーTB-4~TB-6は、かぶりの発生を抑制できていなかった。
【0125】
以上の結果から、本発明に係るトナーによれば、画像流れの発生を抑制しつつ、かぶりの発生を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係るトナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
10 :トナー粒子
11 :トナー母粒子
12 :外添剤
20 :ステアリン酸亜鉛粒子
30 :トナー
図1
図2
図3