IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-不整地走行用の二輪車用タイヤ 図1
  • 特許-不整地走行用の二輪車用タイヤ 図2
  • 特許-不整地走行用の二輪車用タイヤ 図3
  • 特許-不整地走行用の二輪車用タイヤ 図4
  • 特許-不整地走行用の二輪車用タイヤ 図5
  • 特許-不整地走行用の二輪車用タイヤ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】不整地走行用の二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20231219BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20231219BHJP
   B60C 11/11 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C5/00 H
B60C11/03 C
B60C11/03 300E
B60C11/11 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019215595
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084554
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】日南 有紀子
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-175305(JP,A)
【文献】特開2012-046078(JP,A)
【文献】特開2018-154241(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093325(WO,A1)
【文献】特開2010-143370(JP,A)
【文献】特開2018-083585(JP,A)
【文献】特開昭63-130409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00
B60C 11/03-11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
トレッド部は、複数のクラウンブロックと、複数のミドルブロックとを含み、
前記ミドルブロックの少なくとも1つは、ミドルブロック本体部と、前記ミドルブロック本体部からタイヤ周方向に突出する2つのミドルフィン部とを含み、
前記クラウンブロックの少なくとも1つは、クラウンブロック本体部と、前記クラウンブロック本体部からタイヤ周方向に突出するクラウンフィン部とを含み、
前記クラウンフィン部は、前記クラウンブロックのタイヤ軸方向の中央部に位置する
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項2】
回転方向が指定され、
前記ミドルフィン部は、前記ミドルブロック本体部の前記回転方向の後着側に位置する、請求項1に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記ミドルフィン部は、前記ミドルブロック本体部のタイヤ軸方向の端部に位置する、請求項1又は2に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記ミドルブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるミドル側壁を有し、
前記ミドルフィン部のタイヤ周方向に延びる側壁は、前記ミドル側壁と連続している、請求項3に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記クラウンブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるクラウン側壁を有し、
前記クラウンフィン部のタイヤ周方向の長さは、前記クラウン側壁のタイヤ周方向の長さの60%~150%である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記ミドルフィン部は、前記クラウンフィン部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複しない部分を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記クラウンブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるクラウン側壁を有し、
前記ミドルブロックは、タイヤ赤道側の端部でタイヤ周方向に延びる側壁を含み、
前記ミドルブロックの前記側壁は、前記クラウン側壁をタイヤ軸方向に平行に延長した領域との重複部を有する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記重複部のタイヤ周方向の長さは、前記ミドルブロックの前記側壁のタイヤ周方向の長さの70%以下である、請求項7に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記ミドルフィン部のタイヤ軸方向の幅は、前記ミドルブロック本体部のタイヤ軸方向の幅の5%~20%である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記ミドルブロックは、2つの前記ミドルフィン部を含み、
前記2つのミドルフィン部のタイヤ軸方向の間隔は、前記ミドルブロック本体部のタイヤ軸方向の幅の15%~90%である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記ミドルブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるミドル側壁を有し、
前記ミドルフィン部のタイヤ周方向の長さは、前記ミドル側壁のタイヤ周方向の長さの60%~130%である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項12】
不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
トレッド部は、複数のクラウンブロックと、複数のミドルブロックとを含み、
前記ミドルブロックの少なくとも1つは、ミドルブロック本体部と、前記ミドルブロック本体部からタイヤ周方向に突出する少なくとも1つのミドルフィン部とを含み、
前記クラウンブロックの少なくとも1つは、クラウンブロック本体部と、前記クラウンブロック本体部からタイヤ周方向に突出するクラウンフィン部とを含み、
前記クラウンブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるクラウン側壁を有し、
前記ミドルブロックは、タイヤ赤道側の端部でタイヤ周方向に延びる側壁を含み、
前記ミドルブロックの前記側壁は、前記クラウン側壁をタイヤ軸方向に平行に延長した領域との重複部を有し、
前記重複部のタイヤ周方向の長さは、前記ミドルブロックの前記側壁のタイヤ周方向の長さの70%以下である、
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行用の二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に複数のクラウンブロック及び複数のミドルブロックが設けられた不整地走行用の二輪車用タイヤが提案されている。前記クラウンブロックは、タイヤの回転方向の後着側に突出する凸部を含んでいる。前記凸部は、クラウンブロックの倒れ込みを抑制してトラクションを高め、かつ、タイヤ周方向のエッジ成分を増加させてスライド方向のグリップを向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4272244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタイヤは、ミドルブロックが接地するようなキャンバー角が与えられた旋回時において、スライド方向(タイヤ軸方向)のグリップの向上が要求されていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、旋回時のスライド方向のグリップを向上し得る不整地走行用の二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不整地走行用の二輪車用タイヤであって、トレッド部は、複数のクラウンブロックと、複数のミドルブロックとを含み、前記ミドルブロックの少なくとも1つは、ミドルブロック本体部と、前記ミドルブロック本体部からタイヤ周方向に突出する少なくとも1つのミドルフィン部とを含む。
【0007】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤは、回転方向が指定され、前記ミドルフィン部は、前記ミドルブロック本体部の前記回転方向の後着側に位置するのが望ましい。
【0008】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルブロックは、前記ミドルフィン部を2つ含むのが望ましい。
【0009】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルフィン部は、前記ミドルブロック本体部のタイヤ軸方向の端部に位置するのが望ましい。
【0010】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるミドル側壁を有し、前記ミドルフィン部のタイヤ周方向に延びる側壁は、前記ミドル側壁と連続しているのが望ましい。
【0011】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記クラウンブロックの少なくとも1つは、クラウンブロック本体部と、前記クラウンブロック本体部からタイヤ周方向に突出するクラウンフィン部とを含むのが望ましい。
【0012】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記クラウンフィン部は、前記クラウンブロックのタイヤ軸方向の中央部に位置するのが望ましい。
【0013】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記クラウンブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるクラウン側壁を有し、前記クラウンフィン部のタイヤ周方向の長さは、前記クラウン側壁のタイヤ周方向の長さの60%~150%であるのが望ましい。
【0014】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルフィン部は、前記クラウンフィン部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複しない部分を含むのが望ましい。
【0015】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記クラウンブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるクラウン側壁を有し、前記ミドルブロックは、タイヤ赤道側の端部でタイヤ周方向に延びる側壁を含み、前記ミドルブロックの前記側壁は、前記クラウン側壁をタイヤ軸方向に平行に延長した領域との重複部を有するのが望ましい。
【0016】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記重複部のタイヤ周方向の長さは、前記ミドルブロックの前記側壁のタイヤ周方向の長さの70%以下であるのが望ましい。
【0017】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルフィン部のタイヤ軸方向の幅は、前記ミドルブロック本体部のタイヤ軸方向の幅の5%~20%であるのが望ましい。
【0018】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルブロックは、2つの前記ミドルフィン部を含み、前記2つのミドルフィン部のタイヤ軸方向の間隔は、前記ミドルブロック本体部のタイヤ軸方向の幅の15%~90%であるのが望ましい。
【0019】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記ミドルブロック本体部は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びるミドル側壁を有し、前記ミドルフィン部のタイヤ周方向の長さは、前記ミドル側壁のタイヤ周方向の長さの60%~130%であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤのミドルブロックの少なくとも1つは、ミドルブロック本体部と、前記ミドルブロック本体部からタイヤ周方向に突出する少なくとも1つのミドルフィン部とを含む。前記ミドルフィン部は、タイヤ周方向のエッジ成分を増大させ、前記ミドルブロックが接地するようなキャンバー角での旋回時において、スライド方向のグリップを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤの一実施形態を示す横断面図である。
図2図1のトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
図3図2のクラウンブロック及びミドルブロックの拡大図である。
図4図2の第2クラウンブロックの拡大図である。
図5】他の実施形態のトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
図6】比較例の不整地走行用の二輪車用タイヤのトレッド部のトレッドパターンを示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す不整地走行用の二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における横断面図が示されている。図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。図1は、図2のA-A線断面図である。
【0023】
「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、例えば、モトクロス競技用のタイヤとして好適に用いられる。本実施形態のタイヤは、例えば、モトクロス車両の後輪用のタイヤとして好適に用いられる。但し、このような態様に限定されるものではない。本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、横断面において、その外面がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0027】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、カーカス6及びトレッド補強層7を具えている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0028】
図2に示されるように、トレッド部2は、例えば、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部3(図1に示す)に、文字又は記号で表示される。
【0029】
トレッド部2は、例えば、クラウン領域Cr、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shに区分されている。
【0030】
クラウン領域Crは、タイヤ赤道Cを中心とする、トレッド展開幅TWeの1/3の幅を有する領域である。ショルダー領域Shは、各トレッド端Teからタイヤ赤道C側にトレッド展開幅TWeの1/6の幅を有する領域である。ミドル領域Miは、クラウン領域Crとショルダー領域Shとの間の領域である。
【0031】
トレッド展開幅TWeは、トレッド部2を平面に展開したときのトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。トレッド端Teは、トレッド部2に配されたブロックの内、最もタイヤ軸方向外側に位置するブロック列に含まれるブロックのタイヤ軸方向外側の端縁を意味する。
【0032】
トレッド部2は、複数のクラウンブロック10と、複数のミドルブロック11とを含む。クラウンブロック10は、踏面の図心がクラウン領域Cr内に位置している。望ましい態様では、クラウンブロック10は、タイヤ赤道C上に設けられている。ミドルブロック11は、踏面の図心がミドル領域Mi内に位置している。
【0033】
図3には、クラウンブロック10及びミドルブロック11の拡大図が示されている。図3に示されるように、ミドルブロック11の少なくとも1つは、ミドルブロック本体部15と、ミドルブロック本体部15からタイヤ周方向に突出する少なくとも1つのミドルフィン部16とを含む。ミドルフィン部16は、タイヤ周方向のエッジ成分を増大させ、ミドルブロック11が接地するようなキャンバー角での旋回時において、スライド方向のグリップを向上させることができる。
【0034】
ミドルブロック本体部15の踏面は、例えば、タイヤ軸方向の長さがタイヤ周方向の長さよりも大きい、横長状である。ミドルブロック本体部15の踏面は、矩形状が望ましい。さらに望ましい態様として、本実施形態のミドルブロック本体部15の踏面は、平行四辺形状である。
【0035】
ミドルブロック本体部15の踏面の横エッジ15bは、例えば、タイヤ赤道C側からトレッド端Te側に向かって、回転方向Rの先着側に傾斜している。前記横エッジ15bのタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~25°である。このようなミドルブロック本体部15は、不整地走行時において、泥や土をタイヤ赤道C側に移動させながらこれらをせん断でき、優れたトラクション性能を発揮する。
【0036】
ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の幅W1は、トレッド展開幅TWe(図2に示され、以下、同様である。)の10%~20%である。ブロックの各部の寸法は、特に断りのない限り、ブロックの踏面で測定されたものである。
【0037】
ミドルブロック11は、例えば、ミドルフィン部16を複数含んでいる。本実施形態のミドルブロック11は、ミドルフィン部16を2つ含んでいる。これにより、スライド方向のグリップがさらに向上する。
【0038】
ミドルフィン部16は、ミドルブロック本体部15の回転方向Rの後着側に位置するのが望ましい。このようなミドルフィン部16は、ミドルブロック本体部15が回転方向Rの後着側に倒れ込むのを防ぎ、トラクション性能を高めるのに役立つ。
【0039】
ミドルフィン部16は、例えば、ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の端部に位置しているのが望ましい。本実施形態では、ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の両側の端部のそれぞれに、ミドルフィン部16が位置している。このようなミドルフィン部16は、ミドルブロック本体部15のタイヤ周方向の倒れ込みを効果的に抑制できる。
【0040】
ミドルフィン部16のタイヤ周方向に延びる側壁16aは、ミドルブロック本体部15のミドル側壁15cと連続しているのが望ましい。これにより、ミドルブロック11の側壁のタイヤ周方向の長さを大きく確保でき、スライド方向のグリップが向上する。なお、ミドル側壁15cは、ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びる側壁である。ミドルフィン部16とミドル側壁15cとの境界は、2つのミドルフィン部16の間の横エッジ15bをその長さ方向に延長した延長線と、ミドルブロック11の側壁との交点である。
【0041】
2つのミドルフィン部16のタイヤ軸方向の間隔L1は、例えば、ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の幅W1の15%~90%であり、望ましくは70%~80%である。これにより、2つのミドルフィン部16の間に泥や土が詰まるのを抑制することができる。
【0042】
ミドルフィン部16のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、30°以下であり、望ましくは15°以下である。さらに望ましい態様として、本実施形態のミドルフィン部16は、タイヤ周方向に平行に延びている。このようなミドルフィン部16は、ミドルブロック本体部15との接続部分を支点としてタイヤ軸方向の両側に変形し、ブロックの周囲に泥や土が保持されるのを抑制できる。このような作用は、土や泥が保持されることでスライド方向のグリップ及びトラクション性能が低下するのを抑制できる。
【0043】
ミドルフィン部16のタイヤ周方向の長さL3は、ミドル側壁15cのタイヤ周方向の長さL2の60%~130%であるのが望ましい。このようなミドルフィン部16は、適度な耐久性を有し、かつ、その変形によって土や泥が保持されるのを抑制できる。
【0044】
同様の観点から、ミドルフィン部16のタイヤ軸方向の幅W2は、ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の幅W1の5%~20%であるのが望ましい。
【0045】
クラウンブロック10の少なくとも1つは、クラウンブロック本体部20と、クラウンブロック本体部20からタイヤ周方向に突出するクラウンフィン部21とを含む。本実施形態のクラウンフィン部21は、クラウンブロック本体部20の回転方向Rの後着側に位置している。このようなクラウンブロック10は、トラクション性能を高めるのに役立つ。
【0046】
クラウンブロック本体部20のタイヤ軸方向の幅W3は、ミドルブロック本体部15のタイヤ軸方向の幅W1よりも大きいのが望ましい。具体的には、クラウンブロック本体部20の前記幅W3は、ミドルブロック本体部15の前記幅W1の150%~180%である。
【0047】
クラウンブロック本体部20の踏面は、タイヤ軸方向の端部でタイヤ周方向に延びる2つのクラウン縦エッジ20aと、回転方向Rの先着側でタイヤ軸方向に延びる先着側エッジ20bと、回転方向Rの後着側でタイヤ軸方向に延びる後着側エッジ20cとを含む。先着側エッジ20bは、互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜エッジ22を含んでいる。2つの傾斜エッジ22は、それぞれ、タイヤ赤道C側から一方又は他方のトレッド端Te側に向かって回転方向Rの先着側に傾斜している。これにより、先着側エッジ20bは、回転方向Rの後着側に凹んでいる。また、2つの傾斜エッジ22の接続部分が、先着側エッジ20bの底部23を形成している。このようなクラウンブロック本体部20は、先着側エッジ20bを含む壁面が多くの土や泥をせん断し、優れたトラクション性能を発揮する。
【0048】
傾斜エッジ22は、例えば、タイヤ軸方向に対して15~25°の角度で傾斜している。傾斜エッジ22は、ミドルブロック本体部15の踏面の横エッジ15bに対して±5°の角度で配されている。本実施形態では、傾斜エッジ22の延長線と、横エッジ15bの延長線とが、クラウンブロック10とミドルブロック11との間の領域で交差する。これにより、クラウンブロック10及びミドルブロック11が協働して優れたトラクション性能を発揮する。
【0049】
クラウンフィン部21は、例えば、クラウンブロック10のタイヤ軸方向の中央部に位置する。本実施形態では、先着側エッジ20bの底部23をタイヤ周方向に平行に延長した領域が、クラウンフィン部21と重複する。
【0050】
ミドルブロック11のタイヤ赤道側の端部でタイヤ周方向に延びる側壁11aは、クラウン側壁20dをタイヤ軸方向に平行に延長した領域との重複部25を有する。なお、クラウン側壁20dは、クラウンブロック本体部20の端部でタイヤ周方向に延びる側壁である。
【0051】
重複部25のタイヤ周方向の長さL5は、ミドルブロック11の前記側壁11aのタイヤ周方向の長さL4の70%以下であり、望ましくは45%~65%である。これにより、ミドルブロック11及びクラウンブロック10が協働して土や泥をせん断し、トラクション性能が向上する。
【0052】
図3に示されるクラウンブロック10は、上述のクラウンフィン部21を1つだけ具えており、他の部分にはクラウンフィン部21を具えていない。これにより、クラウンブロック10の周辺に土や泥が保持されるのを抑制し、スライド方向のグリップを長期に亘って維持できる。
【0053】
クラウンフィン部21のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、30°以下であり、望ましくは15°以下である。さらに望ましい態様として、本実施形態のクラウンフィン部21は、タイヤ周方向に平行に延びている。
【0054】
クラウンフィン部21のタイヤ周方向の長さL7は、クラウン側壁20dのタイヤ周方向の長さL6の50%以上であり、望ましくは60%~150%である。望ましい態様では、クラウンフィン部21の前記長さL7は、ミドルフィン部16のタイヤ周方向の長さL3よりも大きい。具体的には、クラウンフィン部21の前記長さL7は、ミドルフィン部16の前記長さL3の150%~200%である。このようなクラウンフィン部21は、クラウンブロック10の周辺に泥が保持されるのを効果的に抑制することができる。
【0055】
クラウンフィン部21のタイヤ軸方向の幅W4は、ミドルフィン部16のタイヤ軸方向の幅W2よりも大きい。具体的には、クラウンフィン部21の前記幅W4は、ミドルフィン部16の前記幅W2の150%~200%である。このようなクラウンフィン部21は、土や泥をせん断するときに大きなタイヤ軸方向の反力を提供し、スライド方向のグリップをさらに高めることができる。
【0056】
ミドルフィン部16は、クラウンフィン部21をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複しない部分を含む。また、ミドルフィン部16は、クラウンフィン部21をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複する部分も含む。このようなミドルフィン部16及びクラウンフィン部21の配置は、土や泥が保持されるのを抑制するのに役立つ。
【0057】
本実施形態のクラウンブロック10は、先着側エッジ20bから後着側エッジ20cまでの延びる浅溝30を具えている。先着側エッジ20bから延びる第1溝部31と、第1溝部31から両側に分岐する2つの分岐溝部32とを有するY字状に形成される。分岐溝部32の一方は、クラウンフィン部21のタイヤ軸方向の一方側で後着側エッジ20cに連通し、分岐溝部32の他方は、クラウンフィン部21のタイヤ軸方向の他方側で後着側エッジ20cに連通している。このような浅溝30は、クラウンブロック10の踏面が過度に硬直化するのを抑制し、クラウンブロック10の接地性を高めるのに役立つ。
【0058】
図2に示されるように、本実施形態では、上述のクラウンブロック10(以下、第1クラウンブロック10Aという場合がある)と、第1クラウンブロック10Aとはクラウンフィン部21の配置が異なる第2クラウンブロック10Bとがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0059】
図4には、第2クラウンブロック10Bの拡大図が示されている。図4に示されるように、第2クラウンブロック10Bのクラウンフィン部21は、クラウンブロック本体部20のタイヤ軸方向の中央部に位置する主フィン部36と、クラウンブロック本体部20のタイヤ軸方向の端部に位置する副フィン部37とを具えている。第2クラウンブロック10Bは、副フィン部37の構成を除き、上述したクラウンブロック10の構成と実質的に同じである。
【0060】
副フィン部37のタイヤ周方向の長さは、主フィン部36のタイヤ周方向の長さよりも小さい。副フィン部37のタイヤ軸方向の幅は、主フィン部36のタイヤ周方向の長さよりも小さい。このような副フィン部37は、タイヤ周方向に延びるエッジ成分を提供し、かつ、第2クラウンブロック10Bの周辺に土や泥が保持されるのを抑制できる。
【0061】
本実施形態では、上述の第1クラウンブロック10A及び第2クラウンブロック10Bがタイヤ周方向に交互に配されることにより、スライド方向のグリップを高め、かつ、クラウンブロック10の周辺に泥や土が保持されるのを抑制できる。但し、このような態様に限定されるものではなく、図5に示される他の実施形態のように、トレッド部2には、例えば、第1クラウンブロック10Aのみがタイヤ周方向に複数設けられても良い。この場合、グリップの持続性がさらに向上する。
【0062】
図2に示されるように、トレッド部2は、複数のショルダーブロック12を含む。ショルダーブロック12は、踏面の図心がショルダー領域Shに配されている。ショルダーブロック12は、タイヤ周方向の幅がトレッド端Te側からタイヤ赤道C側に向かって漸減しているのが望ましい。このようなショルダーブロック12は、トレッド端Te側の剛性が大きく、操縦安定性を向上させる。
【0063】
ショルダーブロック12の踏面には、例えば、タイヤ周方向に延びるショルダー浅溝38が設けられている。このようなショルダー浅溝38は、タイヤ周方向に延びるエッジ成分を提供し、スライド方向のグリップを向上させる。
【0064】
トレッド部2の各ブロックのゴム硬度は、70度以上であるのが好ましい。ゴム硬度の上限は、ブロック欠け等の観点から90以下が好ましい。なお、前記ゴム硬度は、JIS-K6253に基づきデュロメータータイプAにより、23℃の環境下で測定されたデュロメータA硬さである。
【0065】
以上、本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤの望ましい態様が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0066】
図2の基本パターンを有する不整地走行用の二輪車用の後輪タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図6に示されるように、ミドルブロックaがミドルフィン部を具えていないタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、図2で示されるものと実質的に同じトレッドパターンを有している。各テストタイヤのスライド方向のグリップ及びトラクション性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
使用車両:排気量450cc モトクロス競技車両
タイヤサイズ:120/80-19
リムサイズ:2.15WM
内圧:80kPa
テスト方法は以下の通りである。
【0067】
<スライド方向のグリップ>
上記テスト車両で不整地を走行したときのスライド方向のグリップが、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、スライド方向のグリップが優れていることを示す。
【0068】
<トラクション性能>
上記テスト車両で不整地を走行したときのトラクション性能が、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、トラクション性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0069】
【表1】
【0070】
表1から明らかなように、実施例のタイヤは、スライド方向のグリップが優れていることが確認できた。また、実施例のタイヤは、トラクション性能も優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0071】
2 トレッド部
10 クラウンブロック
11 ミドルブロック
15 ミドルブロック本体部
16 ミドルフィン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6