(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】織物
(51)【国際特許分類】
D03D 15/40 20210101AFI20231219BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20231219BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20231219BHJP
D02J 1/00 20060101ALI20231219BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20231219BHJP
D03D 15/292 20210101ALI20231219BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20231219BHJP
D03D 15/49 20210101ALI20231219BHJP
【FI】
D03D15/40
D02G1/02 B
D02G3/36
D02J1/00 K
D03D15/283
D03D15/292
D03D15/47
D03D15/49
(21)【出願番号】P 2019225124
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武舍 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一考
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-323696(JP,A)
【文献】特開2003-155635(JP,A)
【文献】特開平08-134731(JP,A)
【文献】特開2001-123350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D03D 1/00 - 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部に潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントと易溶出性マルチフィラメントを配し、鞘部には芯部と異なる伸度のポリエステル系マルチフィラメントを配してなる芯鞘構造複合加工糸をタテ糸および/またはヨコ糸に配して易溶出性マルチフィラメントを溶出させることによって、芯鞘構造複合加工糸が中空コイル構造を成す織物。
【請求項2】
前記芯鞘構造複合加工糸は、撚り数が300~3000T/m、かつ撚り係数4000~50000で加撚されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項3】
該織物の明度(L値)が7.0~12.0である請求項1または2に記載の織物。
【請求項4】
芯部に潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントと易溶出性マルチフィラメントを配し、鞘部には芯部と異なる伸度のポリエステル系マルチフィラメントを配して、芯部と鞘部を交絡した後、同時仮撚加工することを特徴とする芯鞘構造複合加工糸の製造方法。
【請求項5】
前記芯鞘構造複合加工糸は、撚り数が300~3000T/m、かつ撚り係数4000~50000で加撚されていることを特徴とする請求項4に記載の芯鞘構造複合加工糸の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3の少なくとも一つに記載の織物で構成された衣料。
【請求項7】
請求項4または5の少なくとも一つに記載の芯鞘構造複合加工糸の製造方法によって得られる芯鞘構造複合加工糸を用いた織物で構成された衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芯鞘構造複合加工糸を用いた織物および芯鞘複合加工糸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォーマル衣料用織物は上品な外観を表現するために、強撚糸を使用して織られておりハリコシ感や厚みを出すため高密度に織られ、ストレッチ性を有するものではなかった。そのため、着心地は硬く、長時間の着用ではきわめて不快であった。このような背景から、フォーマル衣料では上品な外観やハリコシや嵩高性を有し、かつ、ストレッチ性に優れる織物が求められている。
【0003】
特許文献1は合成繊維異収縮混繊糸と易溶出性繊維とを複合した芯鞘構造複合糸を製織し、易溶出性繊維を溶出除去することで嵩高性、ソフト感、ハリコシに優れた織物を提案している。
【0004】
特許文献2は鞘に易溶出性繊維を配した芯鞘構複合造糸を製織し、易溶出性繊維を溶出除去することで透かし意匠が形成された柔らかい風合いの織物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-40545号公報
【文献】特開2018-3193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の織物は嵩高でソフト感に優れるものの、易溶出性繊維の溶出後は残った1種のマルチフィラメントの性能に依存し、強撚糸を用いた記載もないため、一般衣料用途などには適性があっても、フォーマル衣料用途としては不十分なものであった。
【0007】
特許文献2記載の織物は、前記構成により透かし意匠と柔らかい風合いを得ることを目的に提案されており、優れたストレッチ性を得るには問題がある。
【0008】
本発明ではかかる従来技術の背景に鑑み嵩高で且つストレッチ性に優れ、上品な外観と優れたハリコシを有する織物の製造方法およびそれに用いられる複合糸の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。本発明は以下の構成よりなる。
(1)芯部に潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントと易溶出性マルチフィラメントを配し、鞘部には芯部と異なる伸度のポリエステル系マルチフィラメントを配してなる芯鞘構造複合加工糸をタテ糸および/またはヨコ糸に配して易溶出性マルチフィラメントを溶出させることによって、芯鞘構造複合加工糸が中空コイル構造を成す織物。
(2)前記芯鞘構造複合加工糸は、撚り数が300~3000T/m、かつ撚り係数4000~50000で加撚されていることを特徴とする(1)に記載の織物。
(3)該織物の明度(L値)が7.0~12.0である(1)または(2)に記載の織物。
(4)芯部に潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントと易溶出性マルチフィラメントを配し、鞘部には芯部と異なる伸度のポリエステル系マルチフィラメントを配して、芯部と鞘部を交絡した後、同時仮撚加工することを特徴とする芯鞘構造複合加工糸の製造方法。
(5)前記芯鞘構造複合加工糸は、撚り数が300~3000T/m、かつ撚り係数4000~50000で加撚されていることを特徴とする(4)に記載の芯鞘構造複合加工糸の製造方法。
(6)(1)~(3)の少なくとも一つに記載の織物、または(4)または(5)の少なくとも一つに記載の芯鞘構造複合加工糸の製造方法によって得られる芯鞘構造複合加工糸を用いた織物で構成された衣料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空コイル構造を有した複合加工糸により、優れたストレッチ性と嵩高性やハリコシを有する織物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
まず、芯鞘構造複合加工糸の製造方法について説明する。潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントと易溶出性マルチフィラメントを芯糸として供給し、ポリエステル系マルチフィラメントを鞘糸として供給して3種類のマルチフィラメントを交絡し、交絡糸を得る(交絡工程)。
前記交絡方法としては、エアー交絡が好ましく、走行中の3種類のマルチフィラメント糸に、高圧エアーを当てることで、フィラメントを部分的に混じり絡めるインターレース加工を施しインターレース糸としたり、乱流ノズルに供給量の差を付けて供給することでループを形成させるタスラン加工を施しタスラン加工糸としたりすることができる。特に、仮撚り工程の通過性の観点からインターレース加工を施すことが好ましい。
次に、前記交絡糸を仮撚りすることによって、芯鞘構造複合糸を得る(同時仮撚工程)。仮撚りすることにより、鞘糸が芯糸を被覆し適度な嵩高性を得ることができる。交絡工程と同時仮撚工程は連続ラインで行うものであることが好ましく、芯糸として供給する潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントおよび易溶出性マルチフィラメントと、鞘糸として供給するポリエステル系マルチフィラメントの走行速度は同じになるように設定するのが好ましい。このような条件で実施することにより、芯糸と鞘糸の伸度差から糸長差が生じ、芯糸に鞘糸が巻き付く形態となる。糸長差としては、10~40%程度であることが好ましい。
本発明で用いる、潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントとしては、例えば、2成分がサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維や偏心芯鞘型複合繊維が好ましく用いられる。
ここで、前記2成分としては、固有粘度および/またはポリマー種類が互いに異なる2
種成分であればよく特に限定されない。例えば、固有粘度が互いに異なるポリエステル成分同士の組合せ、その酸成分およびジオール成分の少なくとも1方において異なる異種ポリエステル成分同士の組合せなどが例示される。なかでも、固有粘度が互いに異なるポリエチレンテレフタレート同士の組合せ、固有粘度が互いに異なるポリトリメチレンテレフタレート同士の組合せ、固有粘度が互いに異なるポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとの組合せ、固有粘度が互いに異なる、ポリエチレンテレフタレートと、テレフタル酸成分にイソフタル酸もしくは5-ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合させるか、エチレングルコール成分にポリエチレングルコールもしくはポリテトラメチレングリコールを共重合させたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルとの組合せなどが好ましい。さらに嵩高性や反発感、良好なストレッチ性を付与する上で、固有粘度が互いに異なるポリエチレンテレフタレート同士の組合せがより好ましい。
本発明で用いる潜在捲縮を有するポリエステル系マルチフィラメントの総繊度は30~300detxであることが良好な嵩高性やハリコシ、ストレッチ性の点から好ましく、50~200dtexであることがより好ましい。
【0013】
本発明で用いる、製織後に溶出させる易溶出性マルチフィラメントとしては、水やアルカリ性溶液等の液媒で溶出させ得る繊維が好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール系繊維などの水溶性繊維、アルカリ易溶出性ポリエステル繊維、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸およびメトオキシポリオキシエチレングリコールなどの第3成分が共重合されたポリ乳酸系繊維などの易アルカリ溶出性繊維などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、易溶出性マルチフィラメントの総繊度は20~100dtexであることが溶出時の中空コイル構造の発現により得られる良好な嵩高性の点から好ましく、30~90dtexであることがより好ましい。
本発明で鞘糸として用いる、ポリエステル系マルチフィラメントとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、例えば、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸、イソフタル酸、ポリエチレングリコールなどを共重合して得られる繊維、または、これらの共重合体やポリエチレングリコールをブレンドして得られる繊維であっても構わない。これらの繊維は、1種単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、物性に優れ、安価に入手可能なことから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
鞘糸として用いられるポリエステル系マルチフィラメントは芯糸と異なる伸度を有し、鞘糸として150~200%の伸び率を有するものが好ましく用いられる(いわゆるPOYと呼ばれる半延伸糸が好ましく用いられる)。伸び率は、JIS-L-1013(2010) 8.5.1に準拠して測定する。
また、鞘糸は、芯糸の伸度に対し、120~180の伸度差を有することが好ましい。伸度差とは、JIS-L-1013(2010) 8.5.1に準拠して測定される鞘糸の伸び率から、芯糸の伸び率を差し引いた値をいう。
【0014】
また、鞘糸として用いられるポリエステル系マルチフィラメントのフィラメント断面としても特に制限はなく、丸型の他、異型断面であってもよい。異型断面としては、例えば、H字型、X字型、Y字型、W字型、十字型等の多葉断面や、溝が深い三角形や四角形、五角形、六角形といった多角形が挙げられ、いかなる形状であってもよい。なかでも安価に入手可能であることから円形断面であることが好ましい。
【0015】
本発明で用いるポリエステル系マルチフィラメントの総繊度はフォーマルウエア等としての織物厚み、ハリコシの点から30~300dtexであることが好ましく、50~200dtexであることがより好ましい。
【0016】
本発明に係る芯鞘構造複合加工糸は撚糸であることが好ましく、該撚糸の撚り数は、300~3000T/m、かつ撚り係数4000~50000であることが好ましい。700~2500T/m、かつ撚り係数10000~40000で仮撚りされていることがさらに好ましく、より好ましくは1000~2000T/m、かつ撚り係数16000~32000である。上記撚り数、撚り係数を満たすことで、芯鞘構造複合糸の外層品位が優れ、ハリコシ、強撚方向での製織性に優れる。
【0017】
なお、撚り係数Kは下記式で表されるものである。
撚り係数(K)=撚り数(T)×√総繊度(D)
(K:撚り係数、T:単位長さあたりの撚り数(T/m)、D:繊度(dtex)
次に上記芯鞘構造複合加工糸の製造方法で得られる芯鞘構造複合加工糸で構成される織物について説明する。
本発明の織物は、タテ糸および/またはヨコ糸の一部または全部に前記芯鞘構造複合糸が配されており、タテ糸およびヨコ糸の全部に配されていることがより好ましい。
【0018】
本発明の織物の形態としては、特に限定されるものでなく、平、ツイル、サテンおよび平二重、綾二重、タテ二重、バックサテン等の織物が好ましい。なかでもフォーマル衣料としての品位の観点から平二重であることがより好ましい。
【0019】
本発明の織物は、布帛状物であって、帯状物、紐状物など、その構造、形状はいかなるものであっても差し支えない。
【0020】
本発明の織物の染色仕上げは、一般的な工程で行えばよく、例えば連続糊抜き精錬した後、乾燥セット、減量、液流染色機による染色、捺染を行い、撥水剤や深色剤等の仕上げ剤を付与し、仕上げセットを行って仕上げる。いずれの形態の織物も同様の工程が採用され、染色条件は素材に応じたものを選択すれば良い。織物には、フッ素系、シリコン系やパラフィン系の撥水剤の他、柔軟剤、帯電防止剤、吸水剤や抗菌防臭剤等の仕上げ剤が付与されていてもよい。
【0021】
本発明の織物においては、易溶出性マルチフィラメントが溶解除去されることにより、芯鞘構造複合糸が中空コイル構造を形成する。易溶出性マルチフィラメントの溶解除去は例えば上記染色工程において行われる。
【0022】
本発明の織物は、染色仕上げ後の明度L値が7.0~12.0であることが好ましい。この範囲とすることにより、上品な外観が得られる。明度L値は一般的な深色剤を用いた仕上げ加工により達成できる。
【0023】
本発明の織物は、衣料として有用に用いることができる。
【0024】
衣料として、特にジャケット、スラックス、スカートなどのフォーマルウェアとして好ましく用いられる。特に前記明度を満たすことでフォーマル衣料、特にブラックフォーマル衣料として申し分ない上品な外観となる。明度は黒色染料の選択と前記加工糸を強撚して用いることで達成することができる。さらに、深色剤を用いて濃染加工を施すことも好ましい。
【実施例】
【0025】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における性能の評価は、以下の方法に従った。
【0026】
(繊度)
JIS-L-1013(2010) 8.3.1 B法に準拠して測定した。
【0027】
(撚り数)
JIS-L-1013(2010) 7.2.2に準拠して測定した。
【0028】
(織密度)
JIS-L-1096(2010) 8.6.1 A法に準拠して測定した。
【0029】
(目付)
JIS-L-1096(2010) 8.3.2 A法に準拠して測定した。
【0030】
(発色性)
コニカミノルタ製のCM-2600d測色計を用いて、L値を測定した。数値の低いものほど、発色性に優れていることを示す。
【0031】
(織物伸長率)
JIS-L-1096(2010) 8.16.1 B法に準拠して測定した。
【0032】
(嵩高性)
◎良好な嵩高性を有する、○一般的な織物と同等である、×嵩高性に優れない
(外観品位)
◎上品な外観および十分なハリコシがある、○上品な外観または十分なハリコシどちらかを満たす、×外観・風合い共に優れない
(芯糸と鞘糸の伸度差)
JIS-L-1013(2010) 8.5.1に準拠して測定し、鞘糸の伸び率から芯糸の伸び率を差し引いた値を伸度差とした。
【0033】
[実施例1]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、芯糸と鞘糸とを一体に連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、256dtex/84フィラメントの芯鞘構造複合加工糸を製造した。
【0034】
次に、タテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸に撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸を用い、ヨコ糸には上記芯鞘構造複合加工糸に撚り数1300T/mかつ、撚り係数20800の撚りをかけた強撚糸を用いた平二重織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル糸を完全に溶解した。その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである加工布を得た。ヨコ糸に用いた上記芯鞘構造複合糸の断面はアルカリ易溶出ポリエステル繊維が溶解したことで中空コイル構造を成した織物であった。
評価結果は表1に示す。
[実施例2]
芯糸に84dtex/36フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差135の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、芯糸と鞘糸とを一体に連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、256dtex/84フィラメントの芯鞘構造複合加工糸を製造した。
【0035】
次に、タテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸に撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸を用い、ヨコ糸には上記芯鞘構造複合加工糸に撚り数1300T/mかつ、撚り係数20800の撚りをかけた強撚糸を用いた平二重織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル糸を完全に溶解した。その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである加工布を得た。ヨコ糸に用いた上記芯鞘構造複合糸の断面はアルカリ易溶出ポリエステル繊維が溶解したことで中空コイル構造を成した織物であった。
評価結果は表1に示す。
【0036】
[実施例3]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、芯糸と鞘糸とを一体に連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、256dtex/84フィラメントの芯鞘構造複合糸を製造した。
【0037】
次に、タテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸に撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸を用い、ヨコ糸には上記芯鞘構造複合加工糸に撚り数1300T/mかつ、撚り係数20800の撚りをかけた強撚糸を用いてタテ二重織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行った。さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである加工布を得た。ヨコ糸に用いた上記芯鞘構造複合加工糸の断面はアルカリ易溶出ポリエステル繊維が溶解したことで中空コイル構造を成した織物であった。
評価結果は表1に示す。
【0038】
[実施例4]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、芯糸と鞘糸とを一体に連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、256dtex/84フィラメントの芯鞘構造複合加工糸を製造した。
【0039】
次に、タテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸に撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸と、150dtex/48フィラメントのレギュラーポリエステル糸に撚り数1000T/mかつ、撚り係数12250の撚りをかけた強撚糸を用い、ヨコ糸には上記芯鞘構造複合糸に撚り数1300T/mかつ、撚り係数20800の撚りをかけた強撚糸を用いてバックサテンアムンゼン織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行った。さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が163本/2.54cm、ヨコ密度が83本/2.54cmである加工布を得た。ヨコ糸に用いた上記芯鞘構造複合加工糸の断面はアルカリ易溶出ポリエステル繊維が溶解したことで中空コイル構造を成した織物であった。
評価結果は表1に示す。
【0040】
[実施例5]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、芯糸と鞘糸とを一体に連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、256dtex/84フィラメントの芯鞘構造複合加工糸を製造した。
【0041】
次に、タテ糸およびヨコ糸に上記芯鞘構造複合加工糸を撚り数1300T/mかつ、撚り係数20800の撚りをかけた強撚糸として用いて平二重織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行った。さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである加工布を得た。ヨコ糸に用いた上記芯鞘構造複合加工糸の断面はアルカリ易溶出ポリエステル繊維が溶解したことで中空コイル構造を成した織物であった。
評価結果は表1に示す。
得られた加工布は、表1に示す通り嵩高性、ストレッチ性が良好なものであった。
【0042】
[比較例1]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、172dtex/60フィラメントの一般的な芯鞘構造複合糸を製造した。
【0043】
次に、タテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸に撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸を用い、ヨコ糸には上記芯鞘構造複合糸に撚り数1300T/mかつ、撚り係数17050の撚りをかけた強撚糸を用いて平二重織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである一般的なフォーマル衣料に用いられる織物を比較例1とした。
本織物は、織糸の溶出はないので、上記芯鞘構造複合糸が中空コイル構造を成すものではなかった。評価結果は表2に示す。
得られた加工布は、表2に示す通り嵩高性に乏しく、ストレッチ性も優れない、満足できるものではなかった。
【0044】
[比較例2]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、172dtex/60フィラメントの一般的な芯鞘構造複合糸を製造し、さらに、前記芯鞘構造複合糸84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を撚り数1300T/mかつ撚り係数20800で合撚した合撚糸を製造した。
次にタテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸に撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸を用い、ヨコ糸には上記合撚糸を用いて平二重織物を製織した。
次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行ったさらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである加工布を比較例2とした。
本加工布は、アルカリ易溶出ポリエステル糸を合撚しているので、ヨコ糸に用いた上記合撚糸の断面は、溶解処理後に中空コイル構造を成すものではなかった。評価結果は表2に示す。
得られた加工布は、表2に示す通り溶出した部分のシボ感が目立ち、表面品位が優れず、満足できるものではなかった。
【0045】
[比較例3]
芯糸に84dtex/12フィラメントの固有粘度が互いに異なるポリエステルのサイドバイサイド断面糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル糸を配し、鞘糸には芯糸との伸度差140の90dtex/48フィラメントのポリエステル糸を配してインターレース加工した後、芯糸と鞘糸とを一体に連続ラインで糸速400m/分、ベルト速度比1.6、ヒーター温度180℃にて仮撚りすることによって、芯鞘糸長差30%、172dtex/60フィラメントの一般的な芯鞘構造複合糸を製造した。
【0046】
次に、タテ糸には200dtex/60フィラメントのポリエステル複合糸を無撚で用い、ヨコ糸には上記芯鞘構造複合糸を無撚で用いて平二重織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行った。さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が150本/2.54cm、ヨコ密度が76本/2.54cmである加工布を比較例3とした。ヨコ糸に用いた上記芯鞘構造複合糸の断面はアルカリ易溶出ポリエステル繊維が溶解しても中空コイル構造を成す織物ではなかった。
評価結果は表2に示す。
得られた加工布は、表2に示す通り嵩高性や外観・風合いに乏しく、発色性も満足できるものではなかった。
【0047】
【0048】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の織物は上品な外観と優れたハリコシを有し、且つ、優れた嵩高性とストレッチ性を有するので、フォーマルウエア等の衣料を好適に製造することができる。