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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】測定システム、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/06 20060101AFI20231219BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01B7/06 M
B60C19/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019226713
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021096123
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北本 裕規
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060613(JP,A)
【文献】特開昭61-005308(JP,A)
【文献】特開2006-168294(JP,A)
【文献】特開昭58-120480(JP,A)
【文献】特開2014-217953(JP,A)
【文献】特開2017-052432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/06
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードを有するタイヤの内周面を渦電流センサで走査することで前記内周面から前記スチールコードまでの厚さを測定する測定装置を複数備えた測定システムであって、
前記複数の測定装置のうち、前記渦電流センサの走査に必要な前記渦電流センサの位置についてティーチングがなされた1の測定装置から、前記位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記複数の測定装置のうちの他の測定装置へ前記位置情報を送信する送信制御部と、を備え
前記複数の測定装置は、それぞれ、前記タイヤの断面における最大幅位置と赤道線との交点を基準とする測定位置へ前記渦電流センサを移動させ前記タイヤの内周面を走査させるマニピュレータを備え、
前記位置情報は、少なくとも、前記測定位置の基準となる前記交点の位置を示す情報を含む
測定システム。
【請求項2】
前記複数の測定装置は、寸法が異なる複数種類の前記タイヤの測定が可能であり、
前記測定システムは、前記タイヤの種類と前記位置情報とが対応付けて登録されるデータベースを記憶する記憶部をさらに備える
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記送信制御部が送信する前記位置情報を受信し前記他の測定装置へ前記位置情報を与える受信制御部をさらに備え、
前記受信制御部は、オペレータによる前記位置情報の送信を要求するための操作入力に応じて前記位置情報の送信要求を前記送信制御部へ送信し、
前記送信制御部は、前記送信要求の受信に応じて前記位置情報を送信する
請求項1または請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
スチールコードを有するタイヤの内周面を渦電流センサで走査することで前記内周面から前記スチールコードまでの厚さを測定する測定装置を複数備えた測定システムによる測定方法であって、
前記渦電流センサを走査させるために必要な前記渦電流センサの位置を、ティーチングによって前記複数の測定装置のうちの1の測定装置に入力するステップと、
前記1の測定装置から、前記位置を示す位置情報を取得するステップと、
前記複数の測定装置のうちの他の測定装置へ前記位置情報を送信するステップと、
前記位置情報を用いて前記他の測定装置に前記内周面から前記スチールコードまでの厚さを測定させるステップと、を含み、
前記複数の測定装置は、それぞれ、前記タイヤの断面における最大幅位置と赤道線との交点を基準とする測定位置へ前記渦電流センサを移動させ前記タイヤの内周面を走査させるマニピュレータを備え、
前記位置情報は、少なくとも、前記測定位置の基準となる前記交点の位置を示す情報を含む
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを構成する要素のうち、インナーライナーは、タイヤの内周面を構成する。インナーライナーはカーカスの内側に位置し、カーカスと接合される。
カーカスに含まれるコードがスチールコードである場合、インナーライナーが薄ければ、スチールコードがタイヤの内周面に浮き出すことが懸念される。
そこで、インナーライナーの厚さを把握するために、渦電流センサをプローブとして用い、タイヤの内周面からスチールコードまでの厚さを測定することがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
渦電流センサを用いてインナーライナーの厚さを測定する場合、渦電流センサをタイヤの内周面に接触させる必要がある。
特許文献1には、渦電流センサと、渦電流センサを移動させるマニピュレータとを備える測定装置が開示されている。この測定装置は、マニピュレータを動作させることで、渦電流センサをタイヤ内部で移動させてタイヤの内周面に接触させて走査し、測定作業を自動的に行うことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-60613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の測定装置では、インナーライナーの厚さ測定を行うために、ティーチングによってマニピュレータに行わせる動作を予め設定することがある。
上記ティーチングによる動作設定においては、オペレータがマニピュレータを操作し、渦電流センサを用いて測定作業を行う際の動作を実行させることで行われる。
このとき、渦電流センサを測定位置等に移動させ、オペレータがマニピュレータを操作して渦電流センサの位置決めを行う必要がある。
【0006】
しかし、タイヤの内周側は、閉空間になっている上に内周面が黒色であるため、タイヤの内周側で渦電流センサを移動させて所定の位置に精度良く位置決めする作業は困難であり、オペレータの熟練が要求される上に工数を要する。
【0007】
さらに、同じ測定装置を複数台設置する場合、渦電流センサの位置決め及びティーチングを測定装置ごとに行わなければならず、測定装置それぞれの動作設定に時間的なロスが生じ非効率であるという問題を有する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、効率よく動作設定を行うことができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スチールコードを有するタイヤの内周面を渦電流センサで走査することで前記内周面から前記スチールコードまでの厚さを測定する測定装置を複数備えた測定システムであって、前記複数の測定装置のうち、前記渦電流センサの走査に必要な前記渦電流センサの位置についてティーチングがなされた1の測定装置から、前記位置を示す位置情報を取得する取得部と、前記複数の測定装置のうちの他の測定装置へ前記位置情報を送信する送信制御部と、を備える。
【0010】
上記構成の測定システムによれば、渦電流センサの走査に必要な位置を示す位置情報を1の測定装置から取得し、他の測定装置へ送信するので、他の測定装置においては、送信された位置情報を用いて動作設定を行うことができ、渦電流センサの位置決め及びティーチングを行う必要がない。
この結果、他の測定装置の動作設定を効率よく行うことができる。
【0011】
また、上記測定システムにおいて、前記位置情報は、少なくとも、前記タイヤの断面における最大幅位置と赤道線との交点の位置を示す情報を含んでいることが好ましい。
【0012】
また、上記測定システムにおいて、前記複数の測定装置は、寸法が異なる複数種類の前記タイヤの測定が可能であり、前記測定システムは、前記タイヤの種類と前記位置情報とが対応付けて登録されるデータベースを記憶する記憶部をさらに備えていてもよい。
この場合、複数種類のタイヤの位置情報を他の測定装置へ与えることができる。
【0013】
また、上記測定システムにおいて、前記送信制御部が送信する前記位置情報を受信し前記他の測定装置へ前記位置情報を与える受信制御部をさらに備え、前記受信制御部は、オペレータによる前記位置情報の送信を要求するための操作入力に応じて前記位置情報の送信要求を前記送信制御部へ送信し、前記送信制御部は、前記送信要求の受信に応じて前記位置情報を送信してもよい。
この場合、受信制御部が送信制御部へ送信要求を送信することで、他の測定装置に位置情報を与えることができる。
【0014】
また、本発明は、スチールコードを有するタイヤの内周面を渦電流センサで走査することで前記内周面から前記スチールコードまでの厚さを測定する測定装置を複数備えた測定システムによる測定方法であって、前記渦電流センサを走査させるために必要な前記渦電流センサの位置を、ティーチングによって前記複数の測定装置のうちの1の測定装置に入力するステップと、前記1の測定装置から、前記位置を示す位置情報を取得するステップと、前記複数の測定装置のうちの他の測定装置へ前記位置情報を送信するステップと、前記位置情報を用いて前記他の測定装置に前記内周面から前記スチールコードまでの厚さを測定させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、動作設定を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る測定システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、測定装置の構成例を示す図である。
図3図3(a)は、センサの一例を示す図であり、図3(b)は、図3(a)中のb-b線矢視断面図である。
図4図4は、センサによってインナーライナーの厚さを測定する際の態様を説明するための図である。
図5図5は、図2の要部拡大図であり、測定装置に載置されたタイヤと、マニピュレータに固定されたセンサとを示している。
図6図6は、制御装置及び管理装置の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、座標情報データベースの一例を示す図である。
図8図8は、各装置間で行われる座標情報の授受を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔測定システムの全体構成について〕
図1は、実施形態に係る測定システムの全体構成を示す図である。
図1中、測定システム1は、タイヤのインナーライナーの厚さを測定するためのシステムであり、複数のインナーライナー測定装置2と、複数のインナーライナー測定装置(IL測定装置)2に接続された複数の管理装置4とを備える。
【0018】
複数のインナーライナー測定装置2(以下、単に測定装置2ともいう)は、タイヤのインナーライナーの厚さを測定する装置であり、それぞれ比較的距離の離れた別の工場に設置される。
【0019】
複数の管理装置4は、複数の測定装置2に付随して設けられており、複数の測定装置2に通信可能に接続されている。複数の管理装置4は、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークNによって相互に通信可能に接続されている。
複数の管理装置4は、例えば、コンピュータであり、インナーライナー測定装置2(以下、測定装置2ともいう)が行うインナーライナーの厚さ測定を行うために必要な情報等を管理する機能を有する。
【0020】
〔測定装置2の構成について〕
図2は、測定装置2の構成例を示す図である。
測定装置2は、タイヤ100を支持する下架台10と、下架台10の上方に固定された上架台12と、インナーライナーの厚さを測定するためのセンサ14と、センサ14を移動させるためのマニピュレータ16と、制御装置18とを備えている。
下架台10の上面にはボールコンベア10aが多数設けられている。タイヤ100は、ボールコンベア10a上に載置される。よって、タイヤ100は、ボールコンベア10aによって下架台10上を移動自在に支持される。
【0021】
上架台12には、下方向へ向かって延びる複数のローラ20が設けられている。
ローラ20は、タイヤ100のトレッド面101に沿って周方向に等間隔に4本設けられている。ローラ20の側面20aはトレッド面101に接触している。
上架台12及びローラ20は、タイヤ100の位置決めを行う機能を有しており、タイヤ100が下架台10上において予め設定された基準位置となるようにタイヤ100を保持する。
【0022】
ローラ20は、図示しないモータによって駆動され軸中心周りに回転する。4本のローラ20が回転することで、タイヤ100はローラ20によって回転駆動され、基準位置に保持された状態でタイヤ100の中心軸周りに回転する。
【0023】
マニピュレータ16は、下架台10に設けられており、水平レール22と、昇降アーム24と、アーム26とを備える。
アーム26は、昇降アーム24の先端から水平方向に沿って延びている。
アーム26の先端には、センサ14が設けられている。
センサ14は、後述するように、タイヤ100の内周面を転がるローラと、ローラの内部に設けられた渦電流を計測するためのプローブとを備えている。測定装置2は、このセンサ14のローラをタイヤ100の内周面で転走させることでインナーライナーの厚さを測定する。
【0024】
水平レール22は、下架台10に固定されている。水平レール22は、昇降アーム24を水平レール22の長手方向に沿って水平移動可能に支持する。水平レール22の長手方向は、基準位置に保持されたタイヤ100の径方向に沿っている。よって、昇降アーム24は、タイヤ100の径方向に沿って移動可能である。
【0025】
昇降アーム24は、上下方向に移動又は伸縮可能であり、アーム26及びセンサ14を上下方向に移動させることができる。
アーム26は、先端側のヘッド部26aと、基端側の本体部26bと、これらを接続する関節部26cとを有する。
ヘッド部26aの先端にはセンサ14が固定されている。ヘッド部26aは、関節部26cを中心に上下方向に沿って回動可能とされている。よって、アーム26は、センサ14を上方向に向けたり、下方向に向けたりすることができる。また、ヘッド部26aは、ヘッド部26aの長手方向に伸縮可能とされている。
【0026】
マニピュレータ16は、昇降アーム24を動作させるためのアクチュエータ、関節部26cを駆動するための機構、及びヘッド部26aを伸縮させるための機構を備えている。
これら各部の駆動機構は、制御装置18によって制御される。
制御装置18は、前記駆動機構を制御することでマニピュレータ16を動作させ、センサ14を移動させてインナーライナーの厚さの測定を行う。
【0027】
図3(a)は、センサ14の一例を示す図であり、図3(b)は、図3(a)中のb-b線矢視断面図である。
図3(a),(b)に示すように、センサ14は、ローラ30と、プローブ32とを備える。
ローラ30は円筒状であり、ヘッド部26a先端の一対のブラケット26a1に回転自在に設けられている。
ローラ30は、軸方向に並列した一対のディスク部材34と、一対のディスク部材34の間を架け渡すように巻き付けられた保護テープ36とによって構成される。
【0028】
一対のブラケット26a1には、一対のブラケット26a1を繋ぐように支持軸38が固定されている。支持軸38は、一対のボルト40によって一対のブラケット26a1に対して回転しないように固定されている。
一対のディスク部材34は、支持軸38との間に介在する一対の転がり軸受42によって回転自在とされている。これにより、ローラ30は、ブラケット26a1に対して回転自在とされている。
【0029】
プローブ32は、ローラ30の内部に設けられている。プローブ32は、測定対象に渦電流を発生させてその渦電流を検出する渦電流センサである。センサ14は、タイヤ100内のスチールコードに渦電流を発生させ、その渦電流を測定することで、インナーライナーの厚さを測定する。
【0030】
プローブ32は、その先端32aがブラケット26a1の先端方向に向くように設けられている。
また、プローブ32は、支持軸38に固定されている。よって、プローブ32は、ローラ30と独立してブラケット26a1に固定されており、ローラ30が回転しても、プローブ32のブラケット26a1に対する位置及び先端32aの向きは変わらない。
【0031】
図4は、センサ14によってインナーライナーの厚さを測定する際の態様を説明するための図である。
図4では、タイヤ100の断面構造の一部を模式的に示している。タイヤ100は、内部にスチールコード46を含むカーカス48を有する。
センサ14は、タイヤ100の内周面102からスチールコード46までの厚さHを測定する。この厚さHは、タイヤ100の内周面102の一部をなすインナーライナー50の厚さを含む。
【0032】
図4に示すように、センサ14によるインナーライナーの厚さ測定においては、ローラ30をタイヤ100の内周面102に接触させた上でローラ30を転がすことで、内周面102を走査する。
このとき、ローラ30が転走しても、タイヤ100の内周面102に対するプローブ32の位置は変わらない。このため、センサ14は、プローブ32の先端32aとタイヤ100の内周面102との間隔を維持しつつ、スチールコード46の渦電流を測定できる。これにより、センサ14は、安定して精度よくインナーライナーの厚さ測定を行うことができる。
【0033】
なお、プローブ32は、制御装置18によって制御される。また、プローブ32は、測定結果を示す出力を制御装置18へ与える。制御装置18は、プローブ32の出力に基づいてインナーライナーの厚さを示す情報を求めて出力する。
【0034】
〔測定装置2の測定動作及び測定動作に必要な座標について〕
図5は、図2の要部拡大図であり、測定装置2に載置されたタイヤ100と、マニピュレータ16に固定されたセンサ14とを示している。
なお、図5では、タイヤ100の中心軸を含む平面に沿った断面を示しており、タイヤ100の径方向をX方向、軸方向をY方向とする。
【0035】
測定装置2の制御装置18は、マニピュレータ16の昇降アーム24及び関節部26cを制御し、図5に示すX-Y平面上においてセンサ14が固定されたヘッド部26aを移動させることができる。
X-Y平面上には、互いに直交するX方向及びY方向を座標軸とする2次元座標が設定される。制御装置18は、2次元座標によってX-Y平面上の位置を特定しヘッド部26a(センサ14)を移動させて測定動作を行う。
【0036】
制御装置18は、タイヤ100の測定前においては、関節部26cが原点MOに位置するようにマニピュレータ16を動作させる。
原点MOは、前記2次元座標上において設定されたマニピュレータ16の原点である。原点MOは、タイヤ100の中心軸CAと、タイヤ100の側面が接触する下架台10上の基準線SLとが直交する点とされている。
【0037】
制御装置18は、タイヤ100が下架台10に載置され、基準位置に位置決めされると、関節部26cが原点MOから挿入位置点Oへ移動するようにマニピュレータ16を動作させる。
挿入位置点Oは、タイヤ100の赤道面に沿う赤道線CL上の点であり、センサ14をタイヤ100の内周側へ挿入する直前に当該センサ14を一旦待機させるためのマニピュレータ16の位置(挿入直前位置)を定めるための点である。関節部26cが挿入位置点Oに位置している場合、マニピュレータ16は挿入直前位置となる。
図5では、挿入直前位置のマニピュレータ16を示している。
【0038】
その後、制御装置18は、関節部26cが挿入位置点Oから通過点T2を経由して内側点Tへ移動するようにマニピュレータ16を動作させる。
内側点Tは、タイヤ100の最大幅位置を通過する最大幅線MLと、赤道線CLとの交点である。内側点Tは、センサ14をタイヤ100の内周側へ挿入した後に一旦待機させるためのマニピュレータ16の位置(内周側位置)を定めるための点である。関節部26cが内側点Tに位置している場合、マニピュレータ16は内周側位置となる。
マニピュレータ16が内周側位置の場合、ヘッド部26a及びセンサ14はタイヤ100の内周側へ挿入された状態となる。
【0039】
通過点T2は、タイヤ100の軸方向両側の内周端縁の中間点である。通過点T2は、マニピュレータ16が挿入直前位置から内周側位置まで移動するときに関節部26cが通過する点である。関節部26cが通過点T2を通過するようにマニピュレータ16を移動させることで、タイヤ100に接触するのを防止しつつセンサ14をタイヤ100の内周側へ挿入することができる。
【0040】
次いで制御装置18は、関節部26cを動作させることでヘッド部26aを上方向又は下方向へ回動させ、関節部26cが内側点Tから測定位置点A,B,C,Dのいずれかへ移動するようにマニピュレータ16を動作させる。
測定位置点A,B,C,Dは、センサ14を、タイヤ100の内周側の測定点TA,TB,TC,TDに接触させ測定を行わせるためのマニピュレータ16の位置(測定位置)を定めるための点である。関節部26cが測定位置点A,B,C,Dに位置している場合、マニピュレータ16は測定位置となる。
制御装置18は、測定位置点における内周面102の接線に直交する方向に沿うようにヘッド部26aを回動させてセンサ14を測定点に接触させる。
【0041】
例えば、測定点TAを測定する場合、制御装置18は、図5中の破線に示すように、内周側位置に位置するマニピュレータ16のヘッド部26aを上方に90度回動させ、マニピュレータ16を内周側位置から測定位置点Aに対応する測定位置まで移動させる。
さらに、制御装置18は、ヘッド部26aを伸長させてセンサ14を内周面102の測定点TAに接触させる。
次いで、制御装置18は、タイヤ100を回転させることで、内周面102においてセンサ14を転走させ、インナーライナーの厚さ測定を行う。
【0042】
測定点TAにおけるインナーライナーの厚さ測定が終了すると、制御装置18は、他の測定位置にマニピュレータ16を順次移動させ、内周面102の測定点TB,TC,TDにおけるインナーライナーの厚さ測定を行う。
このようにして、測定装置2は、タイヤ100の内周面をセンサ14で走査することでインナーライナーの厚さ測定を行う。
【0043】
制御装置18は、各測定点の測定動作に必要な座標が与えられることで、各測定点の測定動作を実行することができる。
制御装置18は、タイヤ100の内周面102をセンサ14で走査してインナーライナーの厚さ測定を行うために、マニピュレータ16の位置を定めるための挿入位置点O、通過点T2、内側点T、測定位置点A,B,C,Dの座標を必要とする。
【0044】
制御装置18は、挿入位置点O、通過点T2、内側点T、測定位置点A,B,C,Dの座標を数値データとして外部から与えられることで取得することもできるし、オペレータのティーチングによる入力を受け付けることで取得することもできる。
【0045】
挿入位置点O、通過点T2、内側点T、測定位置点A,B,C,Dの座標は、タイヤ100の設計寸法に基づいて計算により求めることができる。しかし、タイヤ100の実際の寸法は、設計寸法と僅かに異なる場合がある。
このため、本実施形態においては、タイヤ100の設計寸法に基づいて得られる各座標の計算値を、さらにタイヤ100の実際の寸法に応じて調整したものを、挿入位置点O、通過点T2、内側点T、測定位置点A,B,C,Dの座標として用いる。
【0046】
挿入位置点O、通過点T2、内側点T、測定位置点A,B,C,Dの座標を得る方法としては、まず、タイヤ100の設計寸法に基づく計算によって各位置の座標(挿入位置点O、通過点T2、内側点T、及び測定位置点A,B,C,Dの座標)の計算値を求め、求められた計算値を制御装置18へ与える。
次いで、計算値に基づいてマニピュレータ16の動作設定を行い、実際にマニピュレータ16に測定動作を実行させる。そして、測定動作させたときのマニピュレータ16(センサ14)と、タイヤ100とが適切な位置関係になるように、マニピュレータ16の位置を微調整して位置決めし、微調整後の位置を制御装置18にティーチングする。マニピュレータ16の位置決めは、各位置それぞれについて行われる。
制御装置18は、ティーチングによって受け付けた位置決めによる各位置を座標として取得し、これら座標をインナーライナーの厚さ測定に用いる。
【0047】
このようにして、各位置の座標は、オペレータによるティーチングによって得られる。
なお、以下の説明では、インナーライナーの厚さ測定に用いる各位置の座標(挿入位置点O、通過点T2、内側点T、及び測定位置点A,B,C,Dの座標)を座標情報(位置情報)ともいう。
【0048】
〔制御装置18及び管理装置4の構成について〕
図6は、制御装置18及び管理装置4の構成例を示すブロック図である。
図6には、複数の測定装置2のうちの1の測定装置2が備える制御装置18(第1制御装置18A)と、第1制御装置18Aに接続された第1管理装置4Aとを示している。
また、図6には、複数の測定装置2のうちの他の測定装置2が備える制御装置18(第2制御装置18B)と、第2制御装置18Bに接続された第2管理装置4Bとを示している。
【0049】
図6中、第1制御装置18Aは、例えば、コンピュータであり、入出力部60Aと、インターフェース(IF)部62Aと、CPU(Central Processing Unit)等からなる処理部64Aと、記憶部66Aとを備える。
入出力部60Aは、例えば、入力デバイスとして、タッチパネル、キーボード、マウス等によって構成され、出力デバイスとして、タッチパネル、モニタ、スピーカ、プリンタ等によって構成される。
IF部62Aは、第1管理装置4Aに接続するためのインターフェース機能を有しており、第1管理装置4Aとの間を通信可能に接続する。
【0050】
記憶部66Aは、メモリやハードディスク等からなるコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体であり、処理部64Aに実行させるためのコンピュータプログラム等が記録されている。処理部64Aは、記憶部66Aに記録された前記コンピュータプログラムを読み出して実行することで、処理部64Aが有する後述の各種機能が実現される。
また、記憶部66Aには、インナーライナーの厚さ測定に用いる各位置の座標を含む座標情報68が記憶されている。
【0051】
処理部64Aは、測定装置2のマニピュレータ16及びセンサ14を制御しタイヤ100のインナーライナーの厚さ測定を実行するための機能や、入出力部60Aを介してティーチングによるオペレータの入力を受け付け、座標情報68を取得する機能を有する。
処理部64Aは、取得した座標情報68を記憶部66Aに記憶させる。
【0052】
また、第2制御装置18Bは、入出力部60Bと、インターフェース(IF)部62Bと、処理部64Bと、記憶部66Bとを備えており、第1制御装置18Aと同様の構成である。
【0053】
図6中、第1管理装置4Aは、IF部70Aと、通信部72Aと、CPU等からなる処理部74Aと、記憶部76Aとを備える。また、第1管理装置4Aは、タッチパネル、キーボード、マウス等によって構成される入力デバイス、及びタッチパネル、モニタ、スピーカ、プリンタ等によって構成される出力デバイスを含む入出力部も備える。
【0054】
IF部70Aは、第1制御装置18Aに接続するためのインターフェース機能を有しており、第1制御装置18Aとの間を通信可能に接続する。
通信部72Aは、有線又は無線LAN等の通信機能を有しており、ネットワークNを介して第2管理装置4B等の他の管理装置4との間で通信を行う機能を有する。
【0055】
記憶部76Aは、メモリやハードディスク等からなるコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体であり、処理部74Aに実行させるためのコンピュータプログラム等が記録されている。処理部74Aは、記憶部76Aに記録された前記コンピュータプログラムを読み出して実行することで、処理部74Aが有する後述の各種機能が実現される。
【0056】
処理部74Aは、取得部80と、送信制御部81とを機能的に有する。
取得部80は、第1制御装置18Aから座標情報68を取得し、座標情報データベース78に登録する機能を有する。
送信制御部81は、座標情報68を第1制御装置18A以外の他の制御装置18である第2制御装置18Bへ送信する機能を有する。
また、記憶部76Aには、座標情報データベース78が記憶されている。
座標情報データベース78は、種類の異なるタイヤ100それぞれの座標情報68が登録されたデータベースである。
【0057】
図7は、座標情報データベース78の一例を示す図である。
図7に示すように、座標情報データベース78には、タイヤ100の種類を示す情報(タイヤ種類)と、座標情報とが対応付けて登録されている。
測定装置2は、寸法が異なる複数種類のタイヤ100のインナーライナーの厚さ測定が可能であり、第1制御装置18Aは、特定の種類のタイヤ100の測定に関するティーチングによる入力を受け付けて取得した座標情報68を、そのタイヤ100の種類を示す情報とともに第1管理装置4Aへ与える。
取得部80は、座標情報68が与えられると、タイヤ100の種類を示す情報と、座標情報68とを対応付けて座標情報データベース78に登録する。
【0058】
図6に戻って、第2管理装置4Bは、IF部70Bと、通信部72Bと、CPU等からなる処理部74Bと、記憶部76Bとを備えており、第1管理装置4Aと同様の構成である。
第2管理装置4Bの処理部74Bは、受信制御部82を機能的に有する。
受信制御部82は、第1管理装置4Aの送信制御部81が送信する座標情報68を受信し、受信した座標情報68を第2制御装置18Bへ与える機能を有する。
なお、本実施形態において、座標情報データベース78を有しているのは、複数の管理装置4のうち、第1管理装置4Aのみであり、第1管理装置4A以外の管理装置4は、座標情報データベース78を有していない。
【0059】
〔座標情報の授受について〕
図8は、各装置間で行われる座標情報の授受を説明するためのシーケンス図である。
図8では、図6にて示した制御装置18A,18B及び管理装置4A,4Bの間で行われる座標情報の授受について説明する。
【0060】
まず、第1制御装置18A(の処理部64A)は、タイヤ100の各位置の座標について、第1制御装置18Aのオペレータのティーチングによる入力を受け付けると(図8中、ステップS1)、座標情報を記憶部66Aに記憶させるとともに、第1管理装置4Aへ与える(図8中、ステップS2)。
第1制御装置18Aは、記憶部66Aに記憶された座標情報を用いて動作設定がなされ、インナーライナーの厚さ測定を実行する(ステップS5)。
【0061】
第1管理装置4A(の取得部80)は、第1制御装置18Aから座標情報が与えられることで座標情報を取得し(図8中、ステップS3)、取得した座標情報を座標情報データベース78へ登録する(図8中、ステップS4)。
【0062】
一方、第2管理装置4B(の処理部74B)は、第2制御装置18Bのオペレータによる座標情報の送信を要求するための操作入力を入出力部から受け付ける機能を有する。
また、第2管理装置4Bは、送信要求の操作入力とともにタイヤ100の種類を示す情報の入力を受け付ける機能を有する。
オペレータは、測定しようとするタイヤ100の種類を示す情報の入力を行うとともに送信要求の操作入力を行うことで、測定しようとするタイヤ100の種類に対応する座標情報を第1管理装置4Aに要求することができる。
【0063】
第2管理装置4Bは、オペレータによる座標情報を要求するための操作入力を受け付けると(図8中、ステップS6)、座標情報の送信を要求するための送信要求を第1管理装置4Aへ送信する(ステップS7)。送信要求には、操作入力とともに受け付けたタイヤ100の種類を示す情報が含められる。
送信要求が与えられた第1管理装置4A(の送信制御部81)は、送信要求に含まれるタイヤ100の種類に対応した座標情報を座標情報データベース78から取得し、第2管理装置4Bへ送信する(図8中、ステップS8)。
第1管理装置4Aからの座標情報を受信した第2管理装置4B(の受信制御部82)は、その座標情報を第2制御装置18Bへ与える(図8中、ステップS9)。
このように、第1管理装置4Aの送信制御部81は、第2制御装置18Bへ座標情報を送信することができる。
【0064】
座標情報が与えられた第2制御装置18Bは、座標情報を記憶部66Bに記憶させる。
第2制御装置18Bは、記憶部66Bに記憶された座標情報を用いて動作設定がなされ、インナーライナーの厚さ測定を実行する(ステップS10)。
【0065】
上記構成の測定システムによれば、渦電流センサの走査に必要な座標情報を1の測定装置である第1制御装置18Aから取得し、他の測定装置である第2制御装置18Bへ送信するので、第2制御装置18Bにおいては、送信された座標情報を用いて動作設定を行うことができ、オペレータの熟練が要求される上に工数を要する作業である位置決め及びティーチングを行う必要がない。
この結果、第2制御装置18Bの動作設定を効率よく行うことができる。
【0066】
また、例えば、ある種類のタイヤ100の測定を行う際に、第2制御装置18Bに座標情報が与えられなければ、第2制御装置18Bの測定装置2においても位置決め及びティーチングを行わなければならない。その上、位置決め作業にはオペレータの熟練が要求されるため、位置決め作業の実行が種々の要因によって制限されるおそれがある。
位置決め作業の実行が制限されると、第2制御装置18Bの測定装置2の動作設定を行うことができないばかりか、第2制御装置18Bの測定装置2における測定作業が停滞してしまい、測定装置2の稼働率を低下させることとなる。
この点、本実施形態では、第2制御装置18Bにおいては位置決め及びティーチングを行う必要がないので、測定装置2の稼働率の稼働率の低下を抑制することもできる。
【0067】
また、本実施形態では、挿入位置点O、通過点T2、内側点T、測定位置点A,B,C,Dの座標を座標情報として、第1管理装置4Aから第2制御装置18Bへ送信する場合を例示したが、座標情報には、少なくとも、内側点Tの座標が含まれていればよい。
座標情報に内側点Tの座標が含まれていれば、内側点Tの座標を基準にして測定に必要な他の位置の座標を求めることができるからである。
【0068】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記実施形態では、第1管理装置4Aが座標情報データベース78を記憶する場合を例示したが、例えば、ネットワークNに接続された管理装置4以外のデータサーバに座標情報データベース78を記憶させてもよい。この場合、第1管理装置4Aの送信制御部81は、送信要求が与えられると、第2制御装置18Bへ向けた座標情報の送信を前記データサーバに実行させる。
【0069】
また、上記実施形態では、第1管理装置4Aの処理部74Aが送信制御部81を有する場合を示したが、例えば、第1制御装置18AがネットワークNに接続されている場合、第1制御装置18Aの処理部64Aが送信制御部81を有していてもよい。
この場合、送信制御部81は、処理部64Aが取得する座標情報を第2制御装置18Bへ送信する。
【0070】
また上記実施形態では、第2管理装置4Bの処理部74Bが受信制御部82を有する場合を示したが、例えば、第2制御装置18BがネットワークNに接続されている場合、第2制御装置18Bの処理部64Bが受信制御部82を有していてもよい。
この場合、第2制御装置18Bが、オペレータによる座標情報の送信を要求するための操作入力を受け付け、送信要求を第1管理装置4Aへ送信する。
【0071】
また、本実施形態では、第1管理装置4Aの処理部74Aが第1制御装置18Aから座標情報を取得し、第2制御装置18Bへ送信する場合を例示したが、座標情報に代えて、マニピュレータ16の各部の動作量をインナーライナーの厚さ測定に用いる各位置を示す位置情報として用いてもよい。
【0072】
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 測定システム
2 インナーライナー測定装置
4 管理装置
4A 第1管理装置
4B 第2管理装置
14 センサ
18 制御装置
18A 第1制御装置
18B 第2制御装置
46 スチールコード
76A 記憶部
78 座標情報データベース
80 取得部
81 送信制御部
82 受信制御部
100 タイヤ
102 内周面
T 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8