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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】紙製包装袋及び紙製包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/14 20060101AFI20231219BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231219BHJP
   B65D 33/22 20060101ALI20231219BHJP
   B31B 70/64 20170101ALI20231219BHJP
【FI】
B65D33/14 Z
B65D65/40 D
B65D33/22
B31B70/64
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019226982
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021095167
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康司
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3062732(JP,U)
【文献】登録実用新案第3210954(JP,U)
【文献】実公昭52-012659(JP,Y1)
【文献】実開昭53-154109(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/14
B65D 65/40
B65D 33/22
B31B 70/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上の所定位置に接着層を印刷した包装紙により形成され、対向する前面部及び背面部を有した紙製包装袋において、前記前面部及び前記背面部の内面上端部を前記接着層により接着した第1接着部と、前記前面部及び前記背面部の上端部を折り返した第1折返し部と、前記第1折返し部を貫通するとともに前記第1折返し部に対向する前記前面部及び前記背面部を貫通する吊下げ用の吊下げ孔とを備えることを特徴とする紙製包装袋。
【請求項2】
前記第1折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に固着されることを特徴とする請求項1に記載の紙製包装袋。
【請求項3】
前記第1折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に配された前記接着層により前記前面部または前記背面部の外面上に接着されることを特徴とする請求項2に記載の紙製包装袋。
【請求項4】
前記第1折返し部に対向する前記前面部と前記背面部とが前記接着層によって接着されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の紙製包装袋。
【請求項5】
前記前面部及び前記背面部の内面下端部を前記接着層により接着した第2接着部と、前記前面部及び前記背面部の下端部を折り返した第2折返し部とを備え、前記第2折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に固着されることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の紙製包装袋。
【請求項6】
前記第2折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に配された前記接着層により前記前面部または前記背面部の外面上に接着されることを特徴とする請求項5に記載の紙製包装袋。
【請求項7】
前記接着層が熱接着性樹脂により形成されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の紙製包装袋。
【請求項8】
紙基材上の両面の所定位置に接着層を印刷された包装紙の巻取体から送り出される包装紙により形成され、対向する前面部及び背面部を有した紙製包装袋の製造方法において、
前記巻取体は、前記紙基材の一方の面に配された前記接着層と、他方の面に配された前記接着層とが巻取り方向に重ならないように形成され、
前記前面部及び前記背面部の内面上端部を前記接着層により接着する工程と、
前記前面部及び前記背面部の上端部を折り返した第1折返し部を前記前面部または前記背面部の外面上の前記接着層により接着する工程と、
前記第1折返し部を貫通するとともに前記第1折返し部に対向する前記前面部及び前記背面部を貫通する吊下げ用の吊下げ孔を形成する工程と、
を備えることを特徴とする紙製包装袋の製造方法。
【請求項9】
前記接着層が熱接着性樹脂により形成されることを特徴とする請求項8に記載の紙製包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊下げ孔を備えた紙製包装袋及びその製造方法に関する。また本発明は、紙製包装袋の製造時に用いられる包装紙の巻取体に関する。
【背景技術】
【0002】
吊下げ孔を備えた従来の包装袋は特許文献1に開示される。この包装袋は包装フィルムによりピロー型に形成され、上下端を熱接着したシール部によって封止される。シール部上には吊り下げ用の吊下げ孔が設けられる。内容物を収納した包装袋は吊下げ孔に陳列用ロッドを挿入して陳列される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-189286号公報(第8頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷の低減のため、紙基材の片面に熱接着性樹脂を設けた包装紙により形成した紙製包装袋が知られている。この紙製包装袋は、熱接着性樹脂を内面側に配して対向する熱接着性樹脂層を熱接着することにより封止される。
【0005】
しかしながら、紙製包装袋の一端部に上記と同様の吊下げ孔を設けて紙製包装袋を陳列した際に、内容物の重量が大きいと紙製包装袋が吊下げ孔から破れる問題があった。
【0006】
本発明は、吊り下げ時の破れを防止できる紙製包装袋、その製造方法及びその製造に用いられる包装紙の巻取体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、紙基材上の所定位置に接着層を印刷した包装紙により形成され、対向する前面部及び背面部を有した紙製包装袋において、前記前面部及び前記背面部の内面上端部を前記接着層により接着した第1接着部と、前記前面部及び前記背面部の上端部を折り返した第1折返し部と、前記第1折返し部を貫通するとともに前記第1折返し部に対向する前記前面部及び前記背面部を貫通する吊下げ用の吊下げ孔とを備えることを特徴としている。
【0008】
また本発明は上記構成の紙製包装袋において、前記第1折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に固着されることを特徴としている。
【0009】
また本発明は上記構成の紙製包装袋において、前記第1折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に配された前記接着層により前記前面部または前記背面部の外面上に接着されることを特徴としている。
【0010】
また本発明は上記構成の紙製包装袋において、前記第1折返し部に対向する前記前面部と前記背面部とが前記接着層によって接着されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は上記構成の紙製包装袋において、前記前面部及び前記背面部の内面下端部を前記接着層により接着した第2接着部と、前記前面部及び前記背面部の下端部を折り返した第2折返し部とを備え、前記第2折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に固着されることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、前記第2折返し部が前記前面部または前記背面部の外面上に配された前記接着層により前記前面部または前記背面部の外面上に接着されることを特徴としている。
【0013】
また本発明は上記構成の紙製包装袋において、前記接着層が熱接着性樹脂により形成されることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、紙基材上の両面の所定位置に接着層を印刷され、紙製包装袋を形成する包装紙の巻取体において、前記紙基材の一方の面に配された前記接着層と、他方の面に配された前記接着層とが巻取り方向に重ならないことを特徴としている。
【0015】
また本発明は上記構成の包装紙の巻取体において、前記接着層が熱接着性樹脂により形成されることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の包装紙の巻取体から送り出される包装紙により形成され、対向する前面部及び背面部を有した紙製包装袋の製造方法において、
前記前面部及び前記背面部の内面上端部を前記接着層により接着する工程と、
前記前面部及び前記背面部の上端部を折り返した第1折返し部を前記前面部または前記背面部の外面上の前記接着層により接着する工程と、
前記第1折返し部を貫通するとともに前記第1折返し部に対向する前記前面部及び前記背面部を貫通する吊下げ用の吊下げ孔を形成する工程と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の紙製包装袋によると、内面上端部を接着された前面部及び背面部の上端部を折り返した第1折返し部上に吊下げ孔を設けたので、吊下げ孔の周囲の強度を高くすることができる。このため、重量の大きい内容物を収納した紙製包装袋を吊り下げた際に紙製包装袋の吊下げ孔からの破れを防止することができる。
【0018】
また本発明の包装紙の巻取体によると、紙基材の一方の面に配された接着層と、他方の面に配された接着層とが巻取り方向に重ならない。このため、内面側を接着して閉じられた紙製包装袋の一部を折り返して外面側に接着し、強度の高い紙製包装袋を実現することができる。この時、巻かれた状態で隣接する包装紙上の接着層が接触しないため、包装紙の接着層による固着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の紙製包装袋を示す正面図
図2】本発明の第1実施形態の紙製包装袋を示す側面断面図
図3】本発明の第1実施形態の紙製包装袋の内容物収納前の状態を示す斜視図
図4】本発明の第1実施形態の紙製包装袋を形成する包装紙を示す断面図
図5】本発明の第1実施形態の紙製包装袋を形成する包装紙の巻取体を示す斜視図
図6】本発明の第1実施形態の紙製包装袋を形成する包装紙の巻取体の変形例を示す斜視図
図7】本発明の第2実施形態の紙製包装袋を示す側面断面図
図8】本発明の第2実施形態の紙製包装袋を形成する包装紙の巻取体を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1図2は第1実施形態の紙製包装袋の概略正面図及び側面断面図を示している。紙製包装袋1は包装紙20(図4参照)により形成され、筒状の胴部5の対向する前面部11と背面部12との間に内容物19を収納する収納部9が設けられる。内容物19は個包装(一次包装)された食品(菓子等)、薬品等から成り、紙製包装袋1は内容物19を二次包装する。
【0021】
紙製包装袋1は背シール部2及び端縁シール部3、4を有したピロー型に形成される。背シール部2は筒状に配した包装紙20の両側端部を接着層24d(図5参照)の熱接着により合掌貼りして形成される。これにより、筒状の胴部5が形成され、背シール部2は胴部5の背面部12上に上下方向に延びて配される。
【0022】
端縁シール部3、4は背シール部2に直交する方向に延び、前面部11及び背面部12の内面を接着して胴部5の上端部及び下端部を閉じる。端縁シール部3は接着層24a(図5参照)から成る接着部13(第1接着部)により前面部11及び背面部12の内面上端部を熱接着して形成される。端縁シール部4は接着層24b(図5参照)から成る接着部14(第2接着部)により前面部11及び背面部12の内面下端部を熱接着して形成される。
【0023】
端縁シール部3、4により上面及び下面が閉じられた紙製包装袋1は上端部及び下端部を折返して折返し部6、7が形成される。折返し部6(第1折返し部)は接着層23a(図5参照)から成る接着部16により背面部12の外面上端部に熱接着される。折返し部7(第2折返し部)は2回折り返され、接着層23b(図5参照)から成る接着部17により背面部12の外面下端部に熱接着される。折返し部7を1回の折返しにより形成してもよい。
【0024】
上方の折返し部6には紙製包装袋1を吊下げるための吊下げ孔8が設けられる。吊下げ孔8は折返し部6を貫通するとともに、折返し部6に対向する前面部11及び背面部12を貫通する。吊下げ孔8に陳列用のロッド(不図示)が挿通され、紙製包装袋1が吊下げて陳列される。
【0025】
紙製包装袋1の上端部の吊下げ孔8の周囲は包装紙20が多重(本実施形態では4重)に配されるため強度が高い。このため、重量の大きい内容物19を収納した紙製包装袋1を吊り下げて陳列した際に紙製包装袋1の吊下げ孔8からの破れを防止することができる。
【0026】
また、折返し部7によって紙製包装袋1の下端部は包装紙20が多重(本実施形態では6重)に配されるため強度が高い。このため、重量の大きい内容物19を収納した紙製包装袋1を吊り下げて陳列した際に紙製包装袋1の底が抜けることを防止できる。
【0027】
図3は内容物19を収納する前の状態の紙製包装袋1の斜視図を示している。包装紙20を背シール部2及び下方の端縁シール部4により袋状に形成された紙製包装袋1内に個包装された内容物19が配される。紙製包装袋1の上面開口部1aは端縁シール部3により熱接着され、収納部9内に内容物19が封入される。そして、紙製包装袋1の上端部及び下端部を折り返して折返し部6、7(図2参照)が形成される。
【0028】
図4は紙製包装袋1を形成する積層体から成る包装紙20の層構成を示す概略断面図である。包装紙20は紙基材22aを有した樹脂塗工紙22の一方の面に印刷層21及び接着層23が配され、他方の面に接着層24が配される。
【0029】
樹脂塗工紙22は紙基材22aの片面にコート層22bを配される。接着層24はコート層22b上に配され、印刷層21は紙基材22aのコート層22bと反対側の面に配される。
【0030】
紙基材22aは特に限定されないが、上質紙、薄模造紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶クラフト紙、重袋クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、白板紙、紙管原紙、ライナー原紙、クレーコート紙、再生紙等を用いることができる。紙基材22aは単層抄きでもよく、多層抄きでもよい。
【0031】
紙基材22aの坪量は35~125g/m2であると好ましい。紙基材22aの坪量が35g/m2よりも小さいと紙製包装袋1が吊下げ孔8から破れ易くなり、125g/m2よりも大きいと袋状に形成することが困難になる。
【0032】
コート層22bは水系樹脂を塗工したコーティング膜から成り、紙基材22a上に水系樹脂の塗工液を塗布して形成される。これにより、コート層22bは水系樹脂膜により形成される。
【0033】
ここで、水系樹脂膜とは、樹脂が水媒体または親水性媒体中に溶解または分散した液が乾燥して得られる樹脂膜である。具体的には、樹脂を媒体に溶解または分散させるための界面活性剤が残存する樹脂膜、樹脂骨格中に親水性の高いカルボン酸やスルホン酸等が含まれて媒体に溶解または分散可能な樹脂で形成される樹脂膜、これらが共存する樹脂膜等が挙げられる。
【0034】
コート層22bを形成する水系樹脂の塗工液は水溶性型でもよく、水分散型(コロイダルディスパージョン型、エマルション型)でもよい。コート層22bを形成する水系樹脂の具体例として、水系アクリルエマルション、水系ポリオレフィンディスパージョン等を挙げることができる。
【0035】
接着層23、24は熱接着性樹脂の印刷塗膜から成り、それぞれ印刷層21上及びコート層22b上に水系の熱接着性樹脂を印刷して形成される。このため、接着層23、24は水系樹脂膜により形成される。
【0036】
これにより、紙基材22aの両面の所定位置に熱接着性樹脂から成る接着層23、24が印刷される。紙基材22aの一方の面に配される接着層23は印刷領域を分割され、接着層23a、23b(図5参照)を有している。紙基材22aの他方の面に配される接着層24は印刷領域を分割され、接着層24a、24b、24d(図5参照)を有している。
【0037】
熱接着性樹脂の印刷液は水溶性型でもよく、水分散型(コロイダルディスパージョン型、エマルション型)でもよい。重ねられた包装紙20の接着層24上を加圧及び加熱して熱接着することにより、背シール部2及び端縁シール部3、4(図1参照)が形成される。また、折返し部6、7の接着層23上を加圧及び加熱することにより、折返し部6、7が背面部12に熱接着される。
【0038】
水系の熱接着性樹脂の具体例として、水系アクリルエマルション、水系ポリオレフィン(ポリエチレン、EMA、EMAA、EVA、アイオノマー等)等を挙げることができる。
【0039】
接着層23、24の樹脂量は例えば1~10g/m2とすることができる。即ち、固形分が1~10g/m2の印刷液を塗布して乾燥させることにより、接着層23、24が形成される。接着層23、24の樹脂量が1g/m2よりも少ないと、背シール部2及び端縁シール部3、4のシール強度や折返し部6、7の接着強度が得られない。接着層23、24の樹脂量が10g/m2よりも多いと、使用樹脂量が多くなるとともに印刷特性が悪くなる。
【0040】
接着層23、24は印刷領域を分割して非形成領域を設けられるため、紙製包装袋1の樹脂使用量を削減することができる。この時、接着層24がコート層22b上の非形成領域と異なる色に着色されると好ましい。これにより、紙製包装袋1の製袋時に背シール部2、端縁シール部3の熱接着位置を容易に判別することができる。接着層24はコート層22bと異なる色に着色してもよく、コート層22bが無色透明の場合は紙基材22aと異なる色に着色してもよい。
【0041】
コート層22bをコーティング膜により形成し、接着層23、24を印刷により形成するため、樹脂の厚みを小さくできる。このため、接着層23、24として押出し樹脂や樹脂フィルムを用いた場合よりも石油由来の材料を削減して環境負荷を低減することができる。この時、内容物19を除く紙製包装袋1全体に対する紙基材22aの重量比を50%以上にすると、環境負荷の低減効果の高い紙製包装袋1を実現することができる。
【0042】
また、コート層22b及び接着層23、24を水系樹脂膜により形成するため、加工時にいわゆる油性の有機溶剤(トルエン、MEK、酢酸エチル等)を含まない。これにより、残留溶剤による臭気を防止することができ、包装紙20を食品の包装に適した食品用包装紙として用いることができる。
【0043】
また、コート層22b及び接着層24の一方のみに水系樹脂を用いてもよい。この場合、紙基材22aへの染み込みを考慮するとコート層22bに水系樹脂を用いる方が好ましい。尚、残留溶剤が許容される用途の場合はコート層22b及び接着層23、24を非水系樹脂により形成してもよい。
【0044】
印刷層21は紙基材22a上に印刷され、インキ層21aとOP(Over Printing)ニス層21bとを有している。後述するように印刷層21は接着層23、24と同じ印刷機上で印刷される。インキ層21aは紙基材22a上にインキを印刷した印刷塗膜から成り、所望の図柄を印刷する。OPニス層21bはインキ層21a上にニスを印刷した印刷塗膜から成っている。インキ層21a及びOPニス層21bは紙基材22aの全面に設けられる。インキ層21aを紙基材22aの一部のみに設けてもよい。
【0045】
インキ層21aを形成する複数のインキはウレタン系樹脂や硝化綿樹脂等を主成分とし、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の着色顔料及び白色顔料がそれぞれ含まれる。OPニス層21bはニスの塗膜によって包装紙20の表面の耐摩耗性や耐熱性を向上する。
【0046】
インキ層21aのインキの塗布量は例えば0.5~5g/m2とすることができる。また、OPニス層21bのニスの塗布量は例えば0.5~3g/m2とすることができる。本実施形態ではインキ層21aのインキ及びOPニス層21bのニスの塗布量を2g/m2にしている。
【0047】
尚、紙基材22aが片艶紙から成る場合は、紙基材22aの非艶面に印刷層21を形成すると印刷特性が悪くなる。このため、紙基材22aの非艶面にコート層22bを形成して艶面に印刷層21を形成するとより好ましい。紙基材22aの非艶面に印刷層21を形成する場合は、印刷層21の下層にクレーコートを設けてもよい。
【0048】
紙製包装袋1は塗工紙形成工程、印刷工程、製袋工程、折返し工程、孔加工工程により製造される。紙製包装袋1を形成する包装紙20は巻取られた巻取体の状態で各工程で加工される。塗工紙形成工程は、紙基材22aの巻取体から送り出された紙基材22a上に固形分が3g/m2以上の水系樹脂の塗工液を塗布して乾燥させることによりコート層22bを形成する。これにより、樹脂塗工紙22の巻取体が形成される。
【0049】
印刷工程は樹脂塗工紙22の巻取体から送り出された樹脂塗工紙22に印刷層21及び接着層23、24を印刷機により印刷する。印刷機は複数の色数(例えば、8色)を印刷可能になっている。
【0050】
印刷層21は紙基材22a上にインキ及びニスをそれぞれ印刷して形成される。接着層23、24はそれぞれ印刷層21及びコート層22b上に固形分が1~10g/m2の水系の熱接着性樹脂を印刷して形成される。このため、多色印刷可能な印刷機によって印刷層21、接着層23及び接着層24を同時に形成することができる。これにより、包装紙20の巻取体30(図5参照)が形成される。
【0051】
尚、水系の熱接着性樹脂を紙基材22a上に印刷する場合に、印刷塗膜が薄いと紙基材22aに染み込むため背シール部2等のシール強度が弱くなる。一方で、水系樹脂は乾燥時間が長いため印刷塗膜を厚くすると乾燥不良が生じ易くなる。
【0052】
このため、薄い印刷塗膜を複数回(例えば4回)印刷してシール強度を高くすると、印刷層21の色数が不足する場合がある。これにより、包装紙20を印刷機に複数回通す必要があり、紙製包装袋1の工数が大きくなる問題がある。
【0053】
これに対して本実施形態の紙製包装袋1は、コート層22b上に接着層24が印刷される。このため、水系の熱接着性樹脂の染み込みが少なく、印刷塗膜を薄くしても1回の印刷で背シール部2等のシール強度を高くすることができる。従って、紙製包装袋1の工数を削減することができる。
【0054】
尚、背シール部2等に高いシール強度を必要としない場合は、塗工紙形成工程を省いてもよい。これにより、コート層22bを省いた紙基材22aに接して接着層24が設けられる。
【0055】
製袋工程は巻取体30から送り出される包装紙20により内容物19を包み込みながら接着層24を熱接着して袋状に形成する。図5は印刷工程後の包装紙20の巻取体30の斜視図を示している。巻取体30は印刷工程により包装紙20の紙基材22aの一面に印刷層21及び接着層23が配され、他面に接着層24が配される。図中、紙製包装袋1の前面部11の領域を一点鎖線で示している。
【0056】
接着層24の印刷領域は接着層24a、24b、24dに分割され、接着層23の印刷領域は接着層23a、23bに分割される。接着層24dは包装紙20のTD方向(幅方向)の両端部に配され、MD方向(送り方向、巻取り方向)に延びる。接着層24aは前面部11の内部に配されてTD方向に延び、前面部11のMD方向の一端部に配される。接着層24bは前面部11の内部に配されてTD方向に延び、前面部11のMD方向の他端部に配される。
【0057】
接着層23aは前面部11に対してTD方向の外側に配され、前面部11のMD方向の一端部に配される。接着層23bは前面部11に対してTD方向の外側に配され、前面部11のMD方向の他端部に配される。
【0058】
これにより、紙基材22aの一方の面に配された接着層23と、他方の面に配された接着層24とは、MD方向(巻取り方向)に重ならないように配される。このため、巻かれた状態で隣接する包装紙20上の接着層23と接着層24とが接触しないため、包装紙20の接着層23、24による固着を防止することができる。
【0059】
巻取体30から送り出される包装紙20のTD方向の両端部の接着層24dを熱接着して紙製包装袋1の背シール部2(図1参照)が形成される。また、接着層24a、24b上に背面部12(図2参照)を重ねて熱接着する。これにより、紙製包装袋1の上端部に前面部11と背面部12とが接着部13を介して熱接着された端縁シール部3が形成される。同様に紙製包装袋1の下端部に前面部11と背面部12とが接着部14を介して熱接着された端縁シール部4が形成される。これにより、紙製包装袋1内に内容物19が封入される。
【0060】
尚、巻取体30の接着層23を前面部11の内部に配して接着層24a、24bを前面部11の外部に配してもよい。また、接着層24a、24bを前面部11の内部及び外部に配してもよい。
【0061】
図6はこの変形例の巻取体30の斜視図を示している。図6に示す巻取体30は接着層24a、24bがTD方向に分割され、前面部11の内部及び外部に配される。接着層23は接着層24a、24bとMD方向(巻取り方向)に重ならないように配置される。端縁シール部3、4の形成時に前面部11上の接着層24a、24bと背面部12上の接着層24a、24bとが重ねられて熱接着される。これにより、端縁シール部3、4のシール強度を高くすることができる。
【0062】
折返し工程は前述の図2に示すように、紙製包装袋1の上端部及び下端部を背面部12側に折返して折返し部6、7を形成する。そして、接着層23aの熱接着によって折返し部6と背面部12とが接着部16を介して固着される。また、接着層23bの熱接着によって折返し部7と背面部12とが接着部17を介して固着される。
【0063】
孔加工工程では前述の図2に示すように、紙製包装袋1の上方の折返し部6上に吊下げ孔8を形成する。この時、吊下げ孔8は折返し部6と、折返し部6に対向して接着部16により接着された背面部12と、折返し部6及び背面部12に対向する前面部11とを貫通する。これにより、吊下げ孔8を備えた紙製包装袋1が得られる。この時、吊下げ孔8を介して収納部9の内部と外部とが連通するため、本実施形態の紙包装袋1は気密性が低くてもよい用途に用いられる。
【0064】
本実施形態によると、内面上端部を接着された前面部11及び背面部12の上端部を折り返した折返し部6(第1折返し部)上に吊下げ孔8を設けたので、吊下げ孔8の周囲の強度を高くすることができる。このため、重量の大きい内容物19を収納した紙製包装袋1を吊り下げた際に紙製包装袋1の吊下げ孔8からの破れを防止することができる。
【0065】
また、折返し部6が接着部16によって背面部12の外面上に固着される。このため、折返し部6と、折返し部6に対向する前面部11及び背面部12とを貫通する吊下げ孔8を容易に形成できるとともに吊下げ孔8に陳列用のロッドを容易に挿通することができる。
【0066】
また、折返し部6が背面部12の外面上に配された接着層23aにより背面部12の外面上に接着されるので、折返し部6を容易に固着することができる。
【0067】
また、前面部11及び背面部12の下端部を折り返した折返し部7(第2折返し部)によって紙製包装袋1の下端部の強度を高くすることができる。このため、重量の大きい内容物19を収納した紙製包装袋1を吊り下げて陳列した際に紙製包装袋1の底が抜けることを防止できる。
【0068】
また、折返し部7が背面部12の外面上に配された接着層23bにより背面部12の外面上に接着されるので、折返し部7を容易に固着することができる。
【0069】
尚、折返し部6及び折返し部7の一方または両方を紙製包装袋1の前面部11側に折り返してもよい。
【0070】
また、接着層23、24が熱接着性樹脂により形成されるので、接着層23、24の熱接着によって紙製包装袋1を容易に封止し、折返し部6、7を容易に固着することができる。
【0071】
また、包装紙20の巻取体30において、紙基材22aの一方の面に配された接着層23と、他方の面に配された接着層24とがMD方向(巻取り方向)に重ならない。このため、内面側を接着して閉じられた紙製包装袋1の一部を折り返して外面側に接着し、強度の高い紙製包装袋1を実現することができる。この時、巻かれた状態で隣接する包装紙20上の接着層23、24が接触しないため、包装紙20の接着層23、24による固着を防止することができる。
【0072】
<第2実施形態>
次に、図7は第2実施形態の紙製包装袋1の上部の側面断面図を示している。説明の便宜上、前述の図1図6に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は紙製包装袋1の折返し部6、7に対向する前面部11及び背面部12が固着されている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0073】
紙製包装袋1の上端部を折り返された折返し部6は接着部16によって背面部12上に接着される。また、折返し部6に対向する前面部11及び背面部12は接着層24c(図8参照)から成る接着部13’により接着される。
【0074】
図8は本実施形態の紙製包装袋1を形成する包装紙20の巻取体30の斜視図を示している。接着層24の印刷領域は接着層24c、24dに分割される。接着層24dは第1実施形態と同様に、包装紙20のTD方向の両端部に配され、MD方向に延びる。接着層24cは前面部11の幅でMD方向に延びる。
【0075】
接着層23は第1実施形態と同様に、接着層23a、23bに分割される。接着層23aは前面部11に対してTD方向の外側に配され、前面部11のMD方向の一端部に配される。接着層23bは前面部11に対してTD方向の外側に配され、前面部11の外側でMD方向の他端部に配される。これにより、紙基材22aの一方の面に配された接着層23と、他方の面に配された接着層24とは、MD方向(巻取り方向)に重ならないように配される。
【0076】
製袋工程で包装紙20は接着層24dにより背シール部2を形成した後、接着層24c上に背面部12(図2参照)を重ねて熱接着される。これにより、前面部11と背面部12とが接着部13、14を介して接着された端縁シール部3、4がそれぞれ形成される。
【0077】
折返し工程では接着層23aの熱接着によって折返し部6と背面部12とが接着部16を介して固着される。同様に、接着層23bの熱接着によって折返し部7と背面部12とが接着部17を介して固着される。この時、折返し部6、7上が加圧及び加熱されるため、折返し部6、7に対向する前面部11及び背面部12が接着層24cから成る接着部13’によって熱接着される。
【0078】
そして、孔加工工程で吊下げ孔8が折返し部6上に形成される。吊下げ孔8の周囲は接着部13及び接着部13’により塞がれるため、紙製包装袋1の気密性を高くすることができる。このため、紙製包装袋1の内部からのガス(空気または窒素)の流出を抑制し、紙製包装袋1の搬送時や保管時に内容物19を保護することができる。
【0079】
この時、紙基材22a上にコート層22bを塗工した樹脂塗工紙22(図3参照)の透気抵抗度を3000秒以上に形成するとより望ましい。透気抵抗度はJIS P8117:2009に定義されるように、単位面積及び単位圧力差当たり、100mLの空気が透過する時間である。
【0080】
コート層22bの樹脂量は紙基材22aに応じて異なるが、3g/m2以上にすることで透気抵抗度が3000秒以上の樹脂塗工紙22を得ることができる。即ち、固形分が3g/m2以上の塗工液を紙基材22a上に塗布して乾燥させることにより、透気抵抗度が3000秒以上の樹脂塗工紙22を得ることができる。
【0081】
これにより、紙製包装袋1の気密性をより高くすることができる。従って、紙製包装袋1の内部からのガスの流出が更に抑制され、紙製包装袋1の搬送時や保管時に内容物19をより確実に保護することができる。
【0082】
本実施形態によると、折返し部6(第1折返し部)に対向する前面部11と背面部12とが接着層23cによって接着されるので、紙製包装袋1の気密性を高くすることができる。従って、紙製包装袋1の搬送時や保管時に内容物19を保護することができる。
【0083】
また、樹脂塗工紙22の透気抵抗度を3000秒以上に形成すると紙製包装袋1の気密性を高くすることができ、内容物19をより確実に保護することができる。
【0084】
第1、第2実施形態において、紙製包装袋1がピロー型に形成されるが、紙製包装袋1を三方シール袋や自立型の袋等の他の形態に形成してもよい。また、紙製包装袋1を二次包装に用いているが、一次包装に用いてもよい。
【0085】
また、第1、第2実施形態の接着層23、24が熱接着性樹脂により形成されるが、印刷工程において包装紙20上に印刷された感圧性接着剤により接着層23、24を形成してもよい。また、包装紙20の接着層23を省いて折返し工程においてホットメルト接着剤等を塗布して接着部16、17を形成し、折返し部6、7を前面部11または背面部12に接着してもよい。
【0086】
また、接着層23を省くことにより接着部16または接着部17を設けず、折返し部6または折返し部7を紙製包装袋1上にかしめ等によって固着してもよい。また、接着層23aを省くことにより接着部16を設けず、折返し部6が折り返された状態を包装紙20のデッドホールド性によって保持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によると、食品等の包装袋に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 紙製包装袋
1a 上面開口部
2 背シール部
3、4 端縁シール部
5 胴部
6、7 折返し部
8 吊下げ孔
9 収納部
11 前面部
12 背面部
13、13’14 接着部
16、17 接着部
19 内容物
20 包装紙
21 印刷層
21a インキ層
21b OPニス層
22 樹脂塗工紙
22a 紙基材
22b コート層
23、23a、23b
24、24a、24b、24c、24d 接着層
30 巻取体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8