(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2019229120
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠佑
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119385(JP,A)
【文献】特開2019-119386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置において、
乗物に対して固定される固定レールであって、多数の係合穴が長手方向に沿って直列に設けられた固定レールと、
乗物用シートが固定されるとともに、前記固定レールに対してスライド可能な可動レールと、
前記可動レールに一体化され、当該可動レールを前記固定レールに対してスライドさせるための駆動ユニットと、
前記駆動ユニットの一部を構成する無端状のベルトと、
前記ベルトに設けられ、前記多数の係合穴に着脱自在に嵌り込む複数の突起部であって、当該ベルトの回転に伴って前記多数の係合穴のいずれかに嵌り込むとともに、当該ベルトの回転が更に進行すると、当該当該係合穴から離脱する突起部と、
前記ベルトの内周面に設けられた凹凸と噛み合う平歯車状の
第1駆動プーリであって、前記ベルトを
回転駆動するための
第1駆動プーリと、
前記駆動ユニットの一部を構成するとともに、前記ベルトの内周側に配置されて前記ベルトと連動して回転する回転体であって、外周に複数の突起部が設けられた回転体と、
前記
第1駆動プーリと同軸上に配置され、当該
第1駆動プーリと一体的に回転する
第2駆動プーリとを備え、
前記ベルトに設けられた複数の突起部それぞれを駆動突起部とし、前記回転体に設けられた複数の突起部それぞれを補強突起部としたとき、
前記ベルトの内周面のうち複数の前記駆動突起部それぞれに対応する部位には、外周面側に陥没した穴部であって、複数の前記補強突起部のいずれかが
着脱自在に嵌り込み可能な穴部が複数設けられ、
さらに、前記回転体は、前記
第1駆動プーリと前記
第2駆動プーリとの間において当該
第1駆動プーリと同軸上に配置され、かつ、前記
第1駆動プーリと一体的に回転するスライド装置。
【請求項2】
前記
第1駆動プーリの幅方向一端から前記
第2駆動プーリの幅方向他端に至るまでの寸法は、前記ベルトの幅寸法以下である請求項1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記ベルトに発生する張力が予め決められた張力以下の場合には、前記穴部に嵌まり込んだ前記補強突起部と当該穴部の内壁との間に隙間が存在する請求項1又は2に記載のスライド装置。
【請求項4】
前記ベルトの内周面には、当該ベルトの周方向に沿って延びる無端状の溝部が設けられ、
前記溝部と嵌合した状態で当該溝部の内壁と滑り接触可能な回転ガイド部を備え、
前記回転体の回転軸線と平行な方向を軸線方向としたとき、
前記回転ガイド部は、前記溝部に嵌合した状態で当該溝部の内壁と滑り接触したときに、前記ベルトが軸線方向に予め決められた寸法を超えて変位することを規制する請求項1ないし3いずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項5】
前記ベルトの内周面と滑り接触することにより、前記係合穴に嵌り込んだ前記駆動突起部が当該係合穴から離間することを規制するための規制部を備え、
前記回転ガイド部は、前記規制部に設けられている請求項4に記載のスライド装置。
【請求項6】
前記ベルト及び複数の前記駆動突起部は、樹脂又はゴム製である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のスライド装置では、固定レール、可動レール、及び無端状のベルトを有する駆動ユニット等を備え、当該駆動ユニットを利用して可動レールを固定レールに対してスライドさせる。
【0003】
ベルトの外周には、複数の突起部が設けられている。各突起部は、固定レールに設けられた穴に着脱自在に嵌まり込み可能である。このため、ベルトが回転すると、可動レールに一体化された駆動ユニットは、無限軌道(クローラー又はカタピラ等ともいう。)のように固定レールに対して変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のスライド装置(以下、従来装置ともいう。)では、可動レールをスライドさせる際に、各突起部の根元に応力集中が発生し易いので、高負荷時に対応した強度(以下、必要強度という。)を確保することが難しい。
【0006】
このため、従来装置では、多数の突起部が多数の穴に嵌まり込む構成を採用している。これにより、従来装置では、ベルトに作用する荷重が多数の突起部に分散するので、必要強度を確保することができ得る。しかし、当該構成では、駆動ユニットの大型化を招くおそれが高い。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、従来装置と異なる技術的思想にて必要強度を確保可能なスライド装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、乗物に対して固定される固定レール(11)であって、多数の係合穴(11A)が長手方向に沿って直列に設けられた固定レール(11)と、乗物用シートが固定されるとともに、固定レール(11)に対してスライド可能な可動レール(12)と、可動レール(12)に一体化され、当該可動レール(12)を固定レール(11)に対してスライドさせるための駆動ユニット(14)と、駆動ユニット(14)の一部を構成する無端状のベルト(18)であって、多数の係合穴(11A)に着脱自在に嵌り込む複数の突起部(以下、駆動突起部(18B)という。)が外周面に設けられたベルト(18)と、ベルト(18)の内周面に設けられた凹凸と噛み合う平歯車状の第1駆動プーリ(20A)であって、ベルト(18)を回転駆動するための第1駆動プーリ(20A)と、駆動ユニット(14)の一部を構成するとともに、ベルト(18)の内周側に配置されてベルト(18)と連動して回転する回転体(20C)であって、外周に複数の突起部(以下、補強突起部(20D)という。)が設けられた回転体(20C)とを備え、ベルト(18)の内周面のうち複数の駆動突起部(18B)それぞれに対応する部位には、外
面側に陥没した穴部(18C)であって、複数の補強突起部(20D)のいずれかが着脱自在に嵌り込み可能な穴部(18C)が複数設けられていることである。
【0009】
これにより、駆動突起部(18B)の内部に補強突起部(20D)が存在する構成となる。つまり、駆動突起部(18B)が補強突起部(20D)により補強された構成となる。したがって、当該スライド装置では、必要強度が確保され得る。
【0010】
なお、当該スライド装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、第1駆動プーリ(20A)と同軸上に配置された第2駆動プーリ(20B)であって、第1駆動プーリ(20A)と一体的に回転する第2駆動プーリ(20B)を備え、さらに、回転体(20C)は、第1駆動プーリ(20A)と第2駆動プーリ(20B)との間において当該第1駆動プーリ(20A)と同軸上に配置され、かつ、第1駆動プーリ(20A)と一体的に回転することが望ましい。
【0011】
これにより、当該スライド装置は、2つの駆動プーリ(20A、20B)にてベルト(18)が駆動され、かつ、当該2つの駆動プーリ(20A、20B)の間に補強突起部(20D)が位置する構成となる。このため、ベルト(18)が回転駆動される際に、ベルト(18)に捻れが発生することが抑制され得る。
【0012】
なお、上記構成においては、第1駆動プーリ(20A)の幅方向一端から第2駆動プーリ(20B)の幅方向他端に至るまでの寸法(H1)が、ベルト(18)の幅寸法(W1)以下であることが望ましい。
【0013】
ベルト(18)に発生する張力が予め決められた張力以下の場合には、穴部(18C)に嵌まり込んだ補強突起部(20D)と当該穴部(18C)の内壁との間に隙間(20E)が存在することが望ましい。これにより、回転体(20C)、つまり複数の駆動突起部(18B)に大きな寸法バラツキが生じた場合であっても、当該寸法バラツキが確実に吸収され得る。
【0014】
ベルト(18)の内周面には、当該ベルト(18)の周方向に沿って延びる無端状の溝部(18D)が設けられ、溝部(18D)と嵌合した状態で当該溝部(18D)の内壁と滑り接触可能な回転ガイド部(23B、23C)を備え、回転ガイド部(23B、23C)は、溝部(18D)に嵌合した状態で当該溝部(18D)の内壁と滑り接触したときに、ベルト(18)が軸線方向に予め決められた寸法を超えて変位することを規制することが望ましい。なお、軸線方向とは、回転体(20C)の回転軸線と平行な方向いう。
【0015】
これにより、各駆動突起部(18B)がベルト(18)の穴部(18C)に対して滑らかに着脱し得る。したがって、当該スライド装置が滑らかに作動し得る。
ベルト(18)の内周面と滑り接触することにより、係合穴(11A)に嵌り込んだ駆動突起部(18B)が当該係合穴(11A)から離間することを規制するための規制部(23)を備え、回転ガイド部(23B、23C)は、規制部(23)に設けられていることが望ましい。これにより、複数の駆動突起部(18B)が確実に複数の係合穴(11A)に嵌まり込み得るので、高負荷時であっても、スライド装置が確実に作動し得る。
【0016】
なお、上記スライド装置においては、ベルト(18)及び複数の駆動突起部(18B)は、樹脂又はゴム製であることが望ましい。
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る固定レールを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る駆動ユニットを示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る減速機構及び無限軌道の分解図である。
【
図5】第1実施形態に係る無限軌道を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る無限軌道の構造を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る無限軌道の構造を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る無限軌道と固定レールの構造を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る駆動プーリユニットを示す図である。
【
図11】第1実施形態に係るハウジングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0019】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る乗物用シート装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0020】
したがって、当該乗物用シート装置は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シート装置が車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0021】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シート装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0022】
(第1実施形態)
<1.乗物用シート装置の概要>
乗物用シート装置は、乗物用シート(図示せず。)及びスライド装置10(
図1参照)等を少なくとも備える。乗物用シートは、乗物を利用する者が着座可能な座席である。当該乗物用シートは、少なくともシートクッションを有する。シートクッションは、着席者の臀部を支持するための部位である。
【0023】
スライド装置10は、乗物用シートをスライド可能に支持するための装置である。乗物用シートは、2つのスライド装置10によりスライド可能に支持される。具体的には、第1のスライド装置は、乗物用シートのシート幅方向一端側を支持する。第2のスライド装置は、乗物用シートのシート幅方向他端側を支持する。
【0024】
<2.スライド装置の構成>
<2.1 スライド装置の概要>
2つのスライド装置は略左右対称な構成である。以下の説明は、シート幅方向左端側に配置されたスライド装置10の説明である。スライド装置10は、
図1に示されるように、固定レール11、可動レール12及び駆動ユニット14等を少なくとも備える。
【0025】
固定レール11は、乗物に対して直接的又は間接的に固定される部材である。可動レール12は、乗物用シートが固定されるとともに、固定レール11に対してスライド可能な部材である。
【0026】
固定レール11には、多数の穴11A(以下、係合穴11Aという。)が設けられている。多数の係合穴11Aは、固定レール11の長手方向に沿って直列に設けられている。当該多数の係合穴11Aは、可動レール12をスライドさせる際に利用される穴である。
【0027】
なお、各係合穴11Aは、
図2に示されるように、固定レール11のうちシート幅方向と略直交する板面を有する帯状の部位11Bに設けられている。固定レール11のうち部位11Bと対向する位置には、隙間11Dを挟んで部位11Cが設けられている。部位11Cは、隙間11Dを挟んで部位11Bと対称な形状の部位である。
【0028】
可動レール12の一部は、当該隙間11Dを貫通して固定レール11内に嵌り込んでいる(
図1参照)。可動レール12のうち固定レール11内に位置する部位には、複数のローラ(図示せず。)が設けられている。それらローラは可動レール12を変位可能に支持する。
【0029】
<2.2 駆動ユニットの概要>
駆動ユニット14は、可動レール12を固定レール11に対してスライドさせるための駆動装置である。当該駆動ユニット14は、直接的又は間接的に可動レール12に固定されている。このため、駆動ユニット14は可動レール12と一体的に変位する。
【0030】
駆動ユニット14は、
図3に示されるように、動力部15、減速機構16及び無限軌道17等を少なくとも有して構成されている。動力部15は、可動レール12をスライドさせるための動力を発生させる。
【0031】
本実施形態に係る動力部15は、電動モータ15A、ウォーム(図示せず。)及びウォームホィール(図示せず。)等を有して構成されている。電動モータ15Aから出力された回転力は、ウォーム及びウォームホィールにて転向された後、出力軸15Bを介して減速機構16に伝達される。
【0032】
減速機構16は、
図4に示されるように、複数の歯車16A~16C及びハウジング16D、15E等を有して構成されている。複数の歯車16A~16Cは、動力部15から伝達されてきた回転を減速して無限軌道17に伝達する。
【0033】
歯車16Aは、出力軸15Bから回転力を受けて回転する。歯車16B、16Cは、ピニオン(図示せず。)と噛み合って回転して無限軌道17に回転力を伝達する。ピニオンは、歯車16Aと同軸上に配置されて当該歯車16Aと一体的に回転する。
【0034】
ハウジング16D、15Eは、複数の歯車16A~16C(ピニオンを含む。)を収納するケーシングを構成する。当該ハウジング16D、15Eは、複数の歯車16A~16C(ピニオンを含む。)を回転軸線方向から挟み込んだ状態で、複数の歯車16A~16C(ピニオンを含む。)を回転可能に支持する。
【0035】
なお、本実施形態に係るハウジング16Dにはブラケット部16F、16Gが設けられている。ブラケット部16F、16Gは、駆動ユニット14を可動レール12に固定するためのステーを構成する。
【0036】
無限軌道17は、動力部15から出力された動力を利用して可動レール12、つまり乗物用シートを固定レール11に対してスライドさせる機構である。当該無限軌道17は、クローラー(カタピラ)のごとく、無端状のベルト18の回転を利用して可動レール12をスライドさせる。
【0037】
<2.3 無限軌道の詳細>
無限軌道17は、
図4に示されるように、ベルト18、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の駆動プーリユニット19、20、及びハウジング21、22等を少なくとも有して構成されている。
【0038】
<ベルト>
ベルト18は、
図5~
図7に示されるように、内周面に凹凸18Aが設けられた歯付きベルトにて構成されている。当該ベルト18の外周面には、複数の突起部18B(以下、駆動突起部18Bという。)が設けられている。
【0039】
ベルト18、つまり環状の部分及び凹凸18Aと複数の駆動突起部18Bは、樹脂又はゴムにて一体成形された一体品である。なお、環状の部分は、環状の金属ワイヤーや炭素繊維が補強材として埋設されている。
【0040】
各駆動突起部18Bは、
図8又は
図9に示されるように、いずれかの係合穴11Aに着脱自在に嵌り込み可能な突起部である。
換言すれば、各駆動突起部18Bは、図8からも明らかなように、ベルト18の回転に伴って多数の係合穴11Aのいずれかに嵌り込むとともに、当該ベルト18の回転が更に進行すると、当該当該係合穴11Aから離脱する。ベルト18の内周面には、
図6に示されるように、駆動突起部18Bと同数の穴部18Cが設けられている。
【0041】
各穴部18Cは、複数の駆動突起部18Bそれぞれに対応する部位に設けられている。当該各穴部18Cは、ベルト18の内周面から外周面側に陥没した凹部又は貫通穴(本実施形態では、貫通穴)であって、複数の補強突起部19D、20Dのいずれかが
着脱自在に嵌り込み可能である(
図8参照)。
【0042】
図7に示されるように、ベルト18の内周面には溝部18Dが設けられている。当該溝部18Dは、ベルト18の周方向に沿って延びる無端状の溝である。このため、溝部18Dが設けられた部位には、凹凸18Aが設けられていない。
【0043】
溝部18Dは、ベルト18の幅方向(
図7紙面の上下方向)中央に設けられている。なお、本実施形態では、各駆動突起部18Bの中心位置は、ベルト18の幅方向中央に一致する。このため、各穴部18Cが設けられた内周面は、溝部18Dの底面と一致する。
【0044】
<駆動プーリユニット>
2つの駆動プーリユニット19、20は、同一構造である。各駆動プーリユニット19、20は、
図10に示されるように、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の駆動プーリ19A、19B、20A、20B及び回転体19C、20C等を有する。
【0045】
駆動プーリ19A、19B、20A、20Bは、ベルト18の凹凸18Aと噛み合う平歯車状のプーリである。駆動プーリ19Bは、駆動プーリ19Aと同軸上に配置されて駆動プーリ19Aと一体的に回転する。駆動プーリ20Bは、駆動プーリ20Aと同軸上に配置されて駆動プーリ20Aと一体的に回転する。
【0046】
回転体19C、20Cは、
図6に示されるように、ベルト18の内周側に配置されてベルト18と連動して回転するとともに、外周に複数の突起部19D、20D(以下、補強突起部19D、20Dという。)が設けられている。
【0047】
回転体19Cは、
図10に示されるように、駆動プーリ19Aと駆動プーリ19Bとの間において、駆動プーリ19Aと同軸上に配置されている。そして、駆動プーリ19A、駆動プーリ19B及び回転体19Cは、軸部19Eを介して一体化されて一体的に回転する。
【0048】
回転体20Cは、駆動プーリ20Aと駆動プーリ20Bとの間において、駆動プーリ20Aと同軸上に配置されている。そして、駆動プーリ20A、駆動プーリ20B及び回転体20Cは、軸部20Eを介して一体化されて一体的に回転する。
【0049】
回転体19Cの回転軸線と回転体20Cの回転軸線とは平行である。したがって、駆動プーリ19A、19Bの回転軸線は、駆動プーリ20A、20Bの回転軸線と平行である。本実施形態では、2つの回転軸線の方向(以下、軸線方向という。)は、上下方向と一致している。
【0050】
駆動プーリ19、20Aの幅方向一端から駆動プーリ19B、20Bの幅方向他端に至るまでの寸法H1(
図10参照)は、ベルト18の幅寸法W1(
図7参照)以下である。つまり、駆動プーリ19A、19B及び回転体19C、並びに駆動プーリ20A、20B及び回転体20Cは、ベルト18の幅寸法内に収まっている。
【0051】
なお、軸部19Eは歯車16Bの軸部に連結されて歯車16Bと連動して回転する。軸部20Eは歯車16Cの軸部に連結されて歯車16Cと連動して回転する。したがって、2つの駆動プーリユニット19、20は、同期して回転する。
【0052】
そして、駆動プーリユニット19、20が回転すると、複数の補強突起部19D、20Dのいずれかの少なくとも一部は、
図6及び
図8に示されるように、いずれかの穴部18Cに
着脱自在に嵌り込む。
【0053】
すなわち、複数の駆動突起部18Bのうちベルト18に駆動力を作用させている1つ又は複数の駆動突起部18Bを噛合突起部としたとき、噛合突起部に対応する穴部18Cには、各補強突起部19D、20Dの少なくとも一部が嵌り込む。
【0054】
ところで、ベルト18は、回転体19C、20Cではなく、駆動プーリ19A、19B、20A、20Bから駆動力を受けて回転する。このため、ベルト18に発生する張力が予め決められた張力以下の場合には、穴部18Cに嵌まり込んだ補強突起部19D、20Dと当該穴部18Cの内壁との間に隙間19E、20E(
図6参照)が存在する。
【0055】
つまり、ベルト18に発生する張力が予め決められた張力(以下、「通常負荷」ともいう。)以下の場合には、当該ベルト18は、駆動プーリ19A、19B、20A、20Bから駆動力を受けて回転する。当該張力が通常負荷を越えた高負荷となった場合には、ベルト18(駆動突起部18B)が変形し、補強突起部19D、20Dと穴部18Cの内壁とが圧接する。
【0056】
<ハウジング等>
ハウジング21、22は、駆動プーリユニット19、20を回転可能に支持した状態で、駆動プーリユニット19、20及びベルト18を収納する。ハウジング21、22は、
図4に示されるように、軸線方向から駆動プーリユニット19、20及びベルト18を挟み込んだ状態で、それら18~20を収納する。
【0057】
なお、ハウジング21、22は、軸線方向に延びる複数(本実施形態では、2つ)のボルトB1、B2により締結固定されている。なお、ボルトB1は駆動プーリユニット19側に配置されている。ボルトB2は駆動プーリユニット20側に配置されている。
【0058】
ハウジング21、22のうちいずれか(本実施形態では、ハウジング21)には、
図11に示されるように、板状の規制部23が設けられている。規制部23は、以下の機能を発揮するための部材である。
【0059】
第1の機能は、規制部23の先端23Aがベルト18の内周面(本実施形態では、溝部18Dの底部)と滑り接触することにより、係合穴11Aに嵌り込んだ駆動突起部18Bが当該係合穴11Aから離間することを規制するための機能である。
【0060】
第2の機能は、規制部23の先端23A側が溝部18Dと嵌合した状態で、規制部23の側面23B、23C(以下、回転ガイド部という。)が当該溝部18Dの内壁と滑り接触することにより、ベルト18が軸線方向に予め決められた寸法を超えて変位することを規制する機能である。
【0061】
なお、本実施形態に係る回転ガイド部23B、23Cは、規制部23の板厚方向と直交する面(具体的には、水平面)である。ベルト18が回転すると、側面23B、23Cのうち少なくとも一方の面が溝部18Dの内壁と滑り接触する。
【0062】
ハウジング21のうち先端23A側には、フック状の係止部23Dが設けられている。係止部23Dは、
図9に示されるように、固定レール11の部位11B(
図2参照)に滑り接触可能な状態で当該部位11Bと係止する部位である。
【0063】
<3.本実施形態に係るスライド装置の特徴>
ベルト18の内周面のうち複数の駆動突起部18Bそれぞれに対応する部位には、外周面側に陥没した穴部18Cであって、複数の補強突起部19D、20Dのいずれかが
着脱自在に嵌り込み可能な穴部18Cが複数設けられている(
図6参照)。
【0064】
これにより、駆動突起部18Bの内部に補強突起部19D、20Dが存在する構成となる。つまり、駆動突起部18Bが補強突起部19D、20Dにより補強された構成となる。したがって、本実施形態に係るスライド装置10では、必要強度が確保され得る(
図8参照)。
【0065】
回転体19Cは、駆動プー19Aと駆動プーリ19Bとの間において当該駆動プーリ19Aと同軸上に配置され、かつ、駆動プーリ19Aと一体的に回転する。回転体20Cは、駆動プーリ20Aと駆動プーリ20Bとの間において当該駆動プーリ20Aと同軸上に配置され、かつ、駆動プーリ20Aと一体的に回転する。
【0066】
これにより、ベルト18は、当該ベルト18の幅方向中央に対して互いに対称の位置にある駆動プーリ19A、20A及び駆動プーリ19B、20Bにより駆動される。さらに、駆動プーリ19Aと駆動プーリ19Bとの間に補強突起部19Dが位置し、駆動プーリ20Aと駆動プーリ20Bとの間に補強突起部20Dが位置する構成となる。
【0067】
このため、ベルト18が回転駆動される際に、当該ベルト18に作用する駆動力の分布が幅方向中央について対称な状態となる。したがって、ベルト18が回転駆動される際に、当該ベルト18に捻れが発生することが抑制され得る。
【0068】
ベルト18に発生する張力が通常負荷の場合には、穴部18Cに嵌まり込んだ補強突起部20Dと当該穴部18Cの内壁との間に隙間20Eが存在する。これにより、回転体20C、つまり複数の駆動突起部18Bに大きな寸法バラツキが生じた場合であっても、当該寸法バラツキが確実に吸収され得る。
【0069】
溝部18Dと嵌合した状態で当該溝部18Dの内壁と滑り接触することにより、ベルト18が軸線方向に予め決められた寸法を超えて変位することを規制する回転ガイド部23B、23Cを備える。これにより、各駆動突起部18Bがベルト18の穴部18Cに対して滑らかに着脱し得る。したがって、当該スライド装置が滑らかに作動し得る。
【0070】
ベルト18の内周面と滑り接触することにより、係合穴11Aに嵌り込んだ駆動突起部18Bが当該係合穴11Aから離間することを規制するための規制部23を備える。これにより、複数の駆動突起部18Bが確実に複数の係合穴11Aに嵌まり込み得るので、高負荷時であっても、スライド装置10が確実に作動し得る。
【0071】
回転ガイド部23B、23Cが規制部23に設けられている。これにより、回転ガイド部23B、23Cが規制部23と別に設けられた構成に比べて、スライド装置10の構成が簡素となる。
【0072】
スライド装置10は、固定レール11の部位11B(
図2参照)に滑り接触可能な状態で当該部位11Bと係止する係止部23Dを備える。これにより、複数の駆動突起部18Bが確実に複数の係合穴11Aに嵌まり込み得る。
【0073】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るスライド装置10では、2つの駆動プーリユニット19、20を備えていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、2つの駆動プーリユニット19、20のうちいずれか一方の駆動プーリユニット、及び従動プーリユニットを備える構成であってもよい。
【0074】
なお、従動プーリユニットは、ベルト18と共に従動回転するものである。具体的には、当該従動プーリユニットは、駆動プーリと合同な形状に構成された2つの従動プーリ、及び上記回転体と合同な形状に構成された回転体を有する構成が望ましい。
【0075】
上述の実施形態に係る駆動プーリユニット19、20それぞれは、2つの駆動プーリ19A、19B、20A、20Bを有する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動プーリユニット19、20が1つ又は3つ以上の駆動プーリを有する構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、駆動プーリ19A、19B及び回転体19C、並びに駆動プーリ20A、20B及び回転体20Cがベルト18の幅寸法内に収まっていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0077】
上述の実施形態では、通常負荷の場合には、穴部18Cに嵌まり込んだ補強突起部19D、20Dと当該穴部18Cの内壁との間に隙間19E、20Eが存在する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0078】
すなわち、当該開示は、通常負荷時には、例えば、補強突起部19D、20Dと当該穴部18Cの内壁とが接触面圧が所定面圧以下(面圧0も含む。)で接触した状態であってもよい。つまり、無限軌道17は、高負荷時にベルト18が弾性変形し、接触面圧が上記所定面圧を越えるような構成であってもよい。
【0079】
上述の実施形態に係るスライド装置10は、規制部23及び回転ガイド部23B、23Cを備える構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、規制部23及び回転ガイド部23B、23Cのうち少なくとも一方が廃止された構成であってもよい。
【0080】
上述の実施形態では、駆動ユニット14が可動レール12に固定される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、駆動ユニット14が乗物用シートに固定される構成であってもよい。
【0081】
上述の実施形態に係る多数の係合穴11Aは、可動レール12のスライドを規制するため閂(図示せず。)が嵌まり込み可能な穴を利用したものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0082】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0083】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0084】
10… スライド装置 11… 固定レール 11A… 係合穴
12… 可動レール 14… 駆動ユニット 15… 動力部
16… 減速機構 17… 無限軌道 18… ベルト
18A… 凹凸 18B… 駆動突起部 18C… 穴部
18D… 溝部 19、20… 駆動プーリユニット
19A、19B、20A、20B… 駆動プーリ
19C、20C… 回転体 19D、20D… 補強突起部
19E、20E… 隙間