(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231219BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231219BHJP
G03G 15/23 20060101ALI20231219BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 555
G03G15/00 303
G03G15/23
G03G21/20
(21)【出願番号】P 2019229601
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019028810
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小寺 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 光介
(72)【発明者】
【氏名】下平 善樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 真登
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-017495(JP,A)
【文献】特開2011-039148(JP,A)
【文献】特開2000-047503(JP,A)
【文献】特開2009-163065(JP,A)
【文献】特開2014-139619(JP,A)
【文献】特開平07-044043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0317528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
G03G 15/23
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にトナー画像を転写する転写部と、
記録媒体の搬送方向において前記転写部の下流側に配置され、
記録媒体を加熱し、トナー画像を記録媒体に定着する
第一の加熱部と、
前記
第一の加熱部によって記録媒体の第一面に画像が定着
された記録媒体の表裏を
反転させる反転部と、
記録媒体の搬送方向において前記転写部と前記
第一の加熱部との間に配置され
、記録媒体の未定着のトナー画像がある面に対して非接触状態で記録媒体を加熱する
第二の加熱部と、
前記
記録媒体の未定着のトナー画像がある面とは反対の面に記録媒体に空気を吹き付けてトナー画像がある面には吹き付けないように当該記録媒体を定位置で支持する吹付け部と、
を備え、
前記反転部によって反転された記録媒体の第二面に転写された
未定着のトナー画像を前記第二の加熱部で加熱するときに、
前記第二の加熱部は、前記記録媒体の
第二面の未定着トナーの温度が当該未定着トナーの軟化点以上となり、かつ、前記記録媒体の第一面
に定着されたトナーの温度が
当該トナーの軟化点未満となるように加熱する、
画像形成装置。
【請求項2】
記録媒体の先端部を把持して記録媒体を搬送する搬送部を備え、
前記搬送部は、
前記第二の加熱部が第二面に画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の第一面の画像形成領域が他の部材と非接触状態となるように記録媒体を搬送する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電子写真システムは、複数台の電子写真装置を実質上連結して印刷を行う場合に用いられる印刷速度と、複数台の電子写真装置を独立させて個々の電子写真装置で印刷を行う場合に用いられる印刷速度とを設定するとともに、印刷速度を切り替える印刷速度切替え手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、記録媒体の両面にトナー画像を形成するときは、先ず、予備加熱部が、第一面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱する。さらに、本加熱部が、記録媒体と接触して記録媒体を加熱し、予備加熱部によって加熱された記録媒体の第一面にトナー画像を定着する。次に、第一面にトナー画像が定着された記録媒体の第二面にトナー画像が転写され、予備加熱部が、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱する。さらに、本加熱部が、記録媒体と接触して記録媒体を加熱し、予備加熱部によって加熱された記録媒体の第二面にトナー画像を定着する。
【0005】
ここで、予備加熱部が、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱することで、記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点以上になる。そこで、本加熱部によって二度加熱される第一面のトナー画像の光沢度が、第二面のトナー画像の光沢度に比して高くなる。つまり、第一面のトナー画像と第二面のトナー画像とに光沢差(=グロス差)が生じてしまう。
【0006】
本発明の課題は、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を予備加熱部が加熱することで、本加熱部が記録媒体を加熱する前に記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点以上になる場合と比して、第一面のトナー画像の光沢度と第二面のトナー画像の光沢度との差を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る画像形成装置は、搬送される記録媒体にトナー画像を転写する転写部と、記録媒体の搬送方向において前記転写部の下流側に配置され、記録媒体と接触して記録媒体を加熱し、トナー画像を記録媒体に定着する本加熱部と、前記本加熱部によって記録媒体の第一面に画像が定着した記録媒体の表裏を反転させて、記録媒体を前記転写部へ送る反転部と、記録媒体の搬送方向において前記転写部と前記本加熱部との間に配置され、記録媒体を加熱する予備加熱部であって、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、前記本加熱部で記録媒体が加熱される前に記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点未満となるように記録媒体を加熱する前記予備加熱部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様に係る画像形成装置は、第1態様に記載の画像形成装置において、前記予備加熱部は、未定着のトナー画像側から、非接触状態で記録媒体を加熱することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3態様に係る画像形成装置は、第2態様に記載の画像形成装置において、前記予備加熱部が第二面に画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録面が上下方向に向くように記録媒体が搬送され、前記予備加熱部は、記録部材の上方から記録部材を加熱し、搬送される記録媒体を挟んで前記予備加熱部の反対側には、記録媒体に空気を吹き付ける吹付け部が備えられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4態様に係る画像形成装置は、第1~第3態様の何れか1態様に記載の画像形成装置において、記録媒体の先端部を把持して記録媒体を搬送する搬送部を備え、前記搬送部は、前記予備加熱部が第二面に画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の第一面の画像形成領域が他の部材と非接触状態となるように記録媒体を搬送することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5態様に係る画像形成装置は、第4態様に記載の画像形成装置において、前記搬送部は、前記予備加熱部が第二面に画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録面が上下方向に向くように記録媒体を搬送し、前記予備加熱部は、記録部材の上方から記録部材を加熱し、搬送される記録媒体を挟んで前記予備加熱部の反対側には、記録部材の搬送姿勢を安定させる安定部が記録媒体と非接触状態で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様の画像形成装置によれば、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を予備加熱部が加熱することで、本加熱部が記録媒体を加熱する前に記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点以上になる場合と比して、第一面のトナー画像の光沢度と第二面のトナー画像の光沢度との差を小さくすることができる。
【0013】
本発明の第2態様の画像形成装置によれば、第二面に画像が転写された記録媒体を予備加熱部が加熱するときに、未定着のトナー画像が転写されている記録媒体の第二面の温度を、トナー画像が定着した記録媒体の第一面の温度に対して高くすることができる。
【0014】
本発明の第3態様の画像形成装置によれば、第二面に画像が転写された記録媒体を予備加熱部が加熱するときに、第一面側の空気が滞留している場合と比して、第一面の温度を、容易にトナーの軟化点未満にすることができる。
【0015】
本発明の第4態様の画像形成装置によれば、第二面に画像が転写された記録媒体を予備加熱部が加熱するときに、記録媒体の第一面の画像形成領域が他の部材と接触する場合と比して、記録媒体の第一面に形成されたトナー画像の品質低下を抑制することができる。
【0016】
本発明の第5態様の画像形成装置によれば、重力によって撓んだ状態で記録媒体が搬送される場合と比して、1枚の記録媒体の中で、予備加熱部によって加熱される記録媒体に光沢度差が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置を示した構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の本定着部を示した断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置、及び比較形態に係る画像形成装置を評価した評価結果を表で示した図面である。
【
図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の本定着部を示した斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の本定着部を示した断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた搬送機構を示した斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた冷却部を示した断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられたトナー画像形成部を示した構成図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示した構成図である。
【
図10】本発明の比較形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例について
図1~
図10に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0019】
(画像形成装置10)
本実施形態に係る画像形成装置10は、シート部材Pにトナー画像を形成する電子写真式の画像形成装置である。画像形成装置10は、
図9に示されるように、収容部50と、制御部160と、排出部52と、画像形成部12と、搬送機構60と、反転機構80と、定着装置100と、冷却部90とを備えている。
【0020】
〔制御部160〕
制御部160は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびHDD(Hard Disk Drive)(何れも不図示)により構成されている。CPUでは、処理プログラムが実行される。ROMには、各種プログラム、各種テーブル、パラメータ等が記憶されている。RAMは、CPUによる各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。
【0021】
〔収容部50〕
収容部50は、記録媒体としてのシート部材Pを収容する機能を有している。画像形成装置10では、収容部50は、複数(例えば2つ)備えられている。この複数の収容部50から選択的にシート部材Pが送り出される構成とされている。
【0022】
〔排出部52〕
排出部52は、トナー画像が形成されたシート部材Pが排出される部分である。具体的には、定着装置100でトナー画像が定着された後に、冷却部90で冷却されたシート部材Pが排出部52へ排出される構成とされている。
【0023】
〔画像形成部12〕
画像形成部12は、電子写真方式によりシート部材Pにトナー画像を形成する機能を有している。具体的には、画像形成部12は、トナー画像を形成するトナー画像形成部20と、トナー画像形成部20で形成されたトナー画像をシート部材Pに転写する転写装置30と、を備えている。
【0024】
トナー画像形成部20は、色ごとにトナー画像を形成するように複数備えられている。画像形成装置10では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色のトナー画像形成部20が備えられている。
図9に示す(Y)、(M)、(C)、(K)は、上記各色に対応する構成部分を示している。
【0025】
-トナー画像形成部20-
各色のトナー画像形成部20は、用いるトナーを除き基本的に同様に構成されている。具体的には、各色のトナー画像形成部20は、
図8に示されるように、図中矢印A方向に回転する感光体ドラム21(=感光体)と、感光体ドラム21を帯電させる帯電器22とを備えている。さらに、各色のトナー画像形成部20は、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21を露光して感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23と、露光装置23によって感光体ドラム21に形成された静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー画像を形成する現像装置24とを備えている。
【0026】
-転写装置30-
転写装置30は、各色の感光体ドラム21のトナー画像を、中間転写体に重畳して一次転写し、該重畳されたトナー画像をシート部材Pに二次転写する機能を有している。具体的には、転写装置30は、
図9に示されるように、中間転写体としての転写ベルト31と、一次転写ロール33と、転写部35とを備えている。
【0027】
一次転写ロール33は、感光体ドラム21に形成されたトナー画像を、感光体ドラム21と一次転写ロール33との間の一次転写位置T(
図8参照)で転写ベルト31に転写する機能を有している。
【0028】
転写ベルト31は、無端状を成し、複数のロール32に巻き掛けられて姿勢が決められている。転写ベルト31は、複数のロール32の少なくとも1つが回転駆動されることで、矢印B方向へ周回し、一次転写されたトナー画像を二次転写位置NTへ搬送する。
【0029】
転写部35は、転写ベルト31に転写されたトナー画像をシート部材Pに転写する機能を有している。具体的には、転写部35は、二次転写部34と、対向ロール36とを備えている。
【0030】
対向ロール36は、転写ベルト31に対向するように、転写ベルト31の下側に配置されている。二次転写部34は、対向ロール36との間に転写ベルト31が配置されるように、転写ベルト31の内側に配置されている。二次転写部34は、具体的には、コロトロンで構成されている。転写部35では、転写ベルト31に転写されたトナー画像が、二次転写部34の放電により発生された静電力により、二次転写位置NTを通過するシート部材Pに転写される。
【0031】
〔搬送機構60〕
搬送機構60は、収容部50に収容されたシート部材Pを二次転写位置NTへ搬送する機能を有している。さらに、搬送機構60は、二次転写位置NTから後述の本加熱部120へ搬送する機能を有している。搬送機構60については、詳細を後述する。
【0032】
〔反転機構80〕
反転機構80は、シート部材Pの表裏を反転させる機能を有している。反転機構80については詳細を後述する。
【0033】
〔定着装置100〕
定着装置100は、転写装置30によってシート部材Pに転写されたトナー画像をシート部材Pに定着する機能を有している。なお、定着装置100については、詳細を後述する。
【0034】
〔冷却部90〕
冷却部90は、定着装置100で加熱されたシート部材Pを冷却する機能を有している。冷却部90は、
図9に示されるように、シート部材Pの搬送方向において、定着装置100の本加熱部120の下流側に配置されている。また、冷却部90は、装置幅方向に並んでいる2個の冷却ロール92を備えている。2個の冷却ロール92は、同様の構成とされているため、一方の冷却ロール92について説明する。
【0035】
冷却ロール92は、
図7に示されるように、シート部材Pの搬送経路を挟んで上方に配置されたロール92aと、シート部材Pの搬送経路を挟んで下方に配置されたロール92bとを備えている。
【0036】
ロール92a、92bは、装置奥行方向に延びている円柱状とされており、円筒状の基材94a、94bを有している。基材94a、94bは、アルミニウム管であって、図示せぬ送風機構によって生じた空気の流れが、基材94a、94bの内部に生じるようになっている。この空気の流れによって、ロール92a、92bの表面の温度は、この空気の流れが生じない場合の温度と比して低下する。
【0037】
この構成において、ロール92bは、図示せぬ駆動部材から回転力が伝達されて、回転する。さらに、ロール92bに従動してロール92aが回転する。ロール92a、92bは、シート部材Pを挟み込んで搬送し、シート部材Pを冷却する。
【0038】
(画像形成装置の作用)
図9に示す画像形成装置10では、次のようにしてトナー画像が形成される。
【0039】
先ず、電圧が印加された各色の帯電器22(
図8参照)は、各色の感光体ドラム21の表面を予定の電位で一様にマイナス帯電する。続いて、外部から入力された画像データに基づいて露光装置23は、帯電した各色の感光体ドラム21の表面に露光光を照射して静電潜像を形成する。
【0040】
これにより、画像データに対応した静電潜像が夫々の感光体ドラム21の表面に形成される。さらに、各色の現像装置40は、この静電潜像を現像し、トナー画像として可視化する。また、転写装置30は、各色の感光体ドラム21の表面に形成されたトナー画像を、転写ベルト31に転写する。
【0041】
そこで、
図9に示す収容部50から搬送機構60によってシート部材Pの搬送経路へ送り出され、搬送されるシート部材Pは、転写ベルト31と対向ロール36とが接触する二次転写位置NTへ送り出される。二次転写位置NTでは、シート部材Pが転写ベルト31と対向ロール36とに挟み込んで搬送されることで、転写ベルト31の表面のトナー画像は、シート部材Pの第一面(=表面)に転写される。
【0042】
さらに、定着装置100は、シート部材Pの第一面に転写されたトナー画像をシート部材Pに定着し、シート部材Pは、冷却部90へ搬送される。冷却部90は、トナー画像が定着されたシート部材Pを冷却して排出部52へ排出する。
【0043】
一方、シート部材Pの第二面(=裏面)にトナー画像を形成する場合には、搬送機構60によって搬送されることで定着装置100を通過したシート部材Pが、反転機構80へ搬送され、反転機構80によって搬送されたシート部材Pは、反転装置84によって表裏が反転される。さらに、搬送ロール86は、表裏が反転したシート部材Pを搬送機構60へ搬送する。搬送機構60は、シート部材Pを搬送する。そして、シート部材Pの第二面にトナー画像を形成するために、前述した工程が再度行われる。
【0044】
(要部構成)
次に、搬送機構60、反転機構80、及び定着装置100について説明する。
【0045】
〔搬送機構60〕
搬送機構60は、
図9に示されるように、送出ロール62と、複数の搬送ロール64と、チェーングリッパ66とを備えている。搬送機構60は、搬送部の一例である。
【0046】
送出ロール62は、収容部50に収容されたシート部材Pを送り出すロールである。複数の搬送ロール64は、送出ロール62が送り出したシート部材Pをチェーングリッパ66へ搬送するロール、又はチェーングリッパ66が搬送したシート部材Pを冷却部90へ搬送するロールである。チェーングリッパ66は、シート部材Pの先端部を保持してシート部材Pを搬送する機能を有している。具体的には、チェーングリッパ66は、
図6に示されるように、一対のチェーン72と、保持部(=把持部)としてのグリッパ76とを有している。
【0047】
一対のチェーン72は、環状に形成されている。この一対のチェーン72は、装置奥行方向に間隔をおいて配置されている。そして、一対のチェーン72は、対向ロール36(
図9参照)に対する軸方向の一端側及び他端側に配置された一対のスプロケット(図示省略)と、後述の加圧ロール140に対する軸方向の一端側及び他端側に配置された一対のスプロケット71(
図4参照)とに巻き掛けられている。さらに、一対のチェーン72は、一対のスプロケット74(
図9参照)に巻き掛けられている。これらの一対のスプロケットのいずれかが回転することで、チェーン72が矢印C方向へ周回するようになっている。
【0048】
また、一対のチェーン72には、グリッパ76が取り付けられた取付部材75が装置奥行方向に沿って掛け渡されている。取付部材75は、複数設けられ、チェーン72の周方向(周回方向)に沿って予め定められた間隔で一対のチェーン72に固定されている。
【0049】
グリッパ76は、複数設けられ、取付部材75に装置奥行方向に沿って予め定められた間隔で取り付けられている。グリッパ76は、シート部材Pの先端部を保持する機能を有している。具体的には、グリッパ76は、爪76aを有している。また、取付部材75には、爪76aが接触する接触部75a(
図5参照)が形成されている。
【0050】
グリッパ76は、爪76aと接触部75aとの間にシート部材Pの先端部を挟むことでシート部材Pを保持するようになっている。なお、グリッパ76では、例えば、爪76aが接触部75aに対してバネ等により押し付けられると共に、カム等の作用により爪76aが接触部75aに対して接離される。
【0051】
そして、チェーングリッパ66では、グリッパ76がシート部材Pの先端部を保持した状態で、チェーン72が矢印C方向へ周回することで、シート部材Pが搬送される。チェーングリッパ66は、複数の搬送ロール64で搬送されたシート部材Pを二次転写位置NTへ搬送し、さらに、シート部材Pを後述の予備加熱部102を通過させた後、後述の本加熱部120へ搬送する。なお、搬送機構60においてシート部材Pが搬送される搬送経路の一部が、
図9の一点鎖線で示されている。
【0052】
この構成において、搬送機構60は、少なくとも、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、シート面(=記録面)が上下方向に向くようにシート部材Pを搬送する。換言すれば、搬送機構60は、少なくとも、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、未定着のトナー画像面が上方を向くようにシート部材Pを搬送する。
【0053】
さらに、シート部材Pの第一面(=表面)及び第二面(=裏面)にトナー画像を形成する場合(以下「両面印刷の場合」と記載する)がある。この場合に、搬送機構60は、第二面に画像が転写されたシート部材Pを後述する予備加熱部102が加熱するときに、シート部材Pの第一面の画像形成領域が、他の部材と非接触状態となるように搬送する。換言すれば、搬送機構60によって搬送されるシート部材Pの搬送姿勢を考慮して、他の部材の配置が決めされている。なお、「画像形成領域」とは、シート部材Pの外周部等の画像が形成されない部分以外の部分を指し、全面ベタ画像をシート部材Pに形成したときに、画像が形成される領域である。
【0054】
〔反転機構80〕
反転機構80は、
図9に示されるように、複数の搬送ロール82と、反転装置84と、複数の搬送ロール86とを備えている。反転機構80は、反転部の一例である。
【0055】
複数の搬送ロール82は、定着装置100から送られたシート部材Pを反転装置84へ搬送するロールである。反転装置84は、一例として、シート部材Pの搬送方向が例えば90度ずつ変化するように、シート部材Pを複数回折り返しながら搬送することで、メビウスの帯のようにシート部材Pを捻って、シート部材Pの表裏を反転させる装置である。複数の搬送ロール86は、反転装置84で表裏が反転されたシート部材Pをチェーングリッパ66へ搬送するロールである。
【0056】
この構成において、両面印刷の場合に、反転機構80は、第一面にトナー画像が定着したシート部材Pの表裏を反転させる。そして、反転機構80は、搬送機構60を通してシート部材Pを再度二次転写位置NTへ送る。
【0057】
〔定着装置100〕
定着装置100は、
図1に示されるように、搬送されるシート部材Pと非接触状態でシート部材Pを加熱する予備加熱部102と、シート部材Pと接触してシート部材Pを加熱、加圧する本加熱部120と、吹付けユニット170とを備えている。
【0058】
[予備加熱部102]
予備加熱部102は、
図1に示されるように、シート部材Pの搬送方向において、トナー画像がシート部材Pに転写される二次転写位置NT(
図9参照)に対して下流側で、搬送されるシート部材Pの上方に配置されている。換言すれば、予備加熱部102は、シート部材Pに転写された未定着トナー画像側に配置されている。この予備加熱部102は、反射板104と、複数の赤外線ヒータ106(以下「ヒータ106」と記載する)と、金網112とを備えている。
【0059】
-反射板104-
反射板104は、アルミニウム板を用いて形成されており、搬送されるシート部材P側が開放された底浅の箱状とされている。本実施形態では、上方から見て、反射板104は、搬送されるシート部材Pを装置奥行方向で覆うようになっている。
【0060】
-ヒータ106-
ヒータ106は、外形が円柱状の赤外線ヒータであって、反射板104の内部に複数収容され、装置奥行方向に延びるように配置されている。本実施形態では、上方から見て、ヒータ106は、搬送されるシート部材Pを装置奥行方向で覆うようになっている。また、ヒータ106は、搬送されるシート部材Pから上下方向で30〔mm〕離れている。
【0061】
さらに、複数のヒータ106は、装置幅方向に並べられている。本実施形態では、上方から見て、複数のヒータ106が配置されている領域は、搬送されるシート部材Pを装置幅方向で覆うようになっている。換言すれば、複数のヒータ106によって、搬送されるシート部材Pの全体が、一度に加熱されるようになっている。
【0062】
以上の構成において、ヒータ106からは、3〔μm〕以上5〔μm〕以下の波長で分光放射輝度が最大となる赤外線が放射され、ヒータ106の表面温度は、300〔℃〕以上1175〔℃〕以下の予め定められた温度となる。
【0063】
-金網112-
金網112は、反射板104の縁部に図示せぬ固定部材で固定されており、反射板104の内部と、反射板110の外部とを仕切っている。これにより、金網112は、搬送されるシート部材Pと、ヒータ106とが接触するのを防止している。
【0064】
この構成において、予備加熱部102は、未定着のトナー画像側から、非接触状態でシート部材Pを加熱する。つまり、予備加熱部102は、未定着のトナーを軟らかくする軟化手段として機能している。
【0065】
また、片面印刷の場合に、第一面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度をトナーの軟化点以上、又は軟化点に近づけようにシート部材Pを加熱する。
また、両面印刷の場合に、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱する。
【0066】
ここで、「本加熱部120でシート部材Pが加熱される前のシート部材Pの第一面の温度」とは、
図2に示す本加熱部120のニップ部Nの搬送方向上流端から搬送方向の上流側へ100〔mm〕離れた位置S01でのシート部材Pの第一面の温度である。つまり、予備加熱部102は、第二面に対向して第二面に転写されたトナー画像を加熱するときに、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱する。換言すれば、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点未満となるように、予備加熱部102の出力が調整されている。具体的には、第二面に転写されたトナー画像が黒ベタ画像であっても、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点未満となるように、予備加熱部102の出力が調整されている。
【0067】
本実施形態では、一例として、予め試験によって、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点未満となる予備加熱部102の出力条件を紙種又はサイズごとに求めておき、制御部160に予備加熱部102の出力テーブルを記憶させておく。そして、ユーザが入力した紙種又はサイズ等の情報をもとに制御部160が予備加熱部102の出力を調整する。これにより、予備加熱部102が、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱するようになっている。なお、シート部材Pの第二面に形成されたトナー画像を加熱する前に、第一面の温度を温度センサで測定し、測定結果をもとに制御部160が予備加熱部102の出力を調整することで、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱してもよい。
【0068】
ここで、「トナーの軟化点(=トナーのガラス転移温度)」とは、フローテスター(島津製作所社製、CFT500)を用い、ダイス細孔径0.5〔mm〕、加圧加重0.98〔MPa〕、昇温速度1〔℃/min〕の条件で測定した1/2降下速度である。なお、1/2降下速度とは、トナーサンプルを溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度である。
【0069】
[吹付けユニット170]
吹付けユニット170は、
図1に示されるように、上下方向で予備加熱部102と対向するように配置されており、搬送されるシート部材Pは、吹付けユニット170と予備加熱部102との間を通過するようになっている。そして、吹付けユニット170は、装置幅方向、及び装置奥行方向に並べられている複数のファン172を備えている。ファン172は、吹付け部の一例である。
【0070】
この構成において、複数のファン172が予備加熱部102との間を通過するシート部材Pに向けて空気を吹き付けることで、先端部が保持されて搬送されるシート部材Pの搬送姿勢が安定する。ファン172は、安定部の一例である。
【0071】
ここで、「シート部材Pの搬送姿勢が安定する」とは、安定部が備えられていない場合と比して、重力によって撓んだ状態となる虞のあるシート部材Pのシート面後端部から予備加熱部102までの距離が短くなることを意味する。更に、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの距離が、予備加熱部102からグリッパ76までの距離に対して長いことが好ましい。また、シート面の位置によってばらつくのを抑制することが好ましい。換言すれば、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの距離が、予備加熱部102からグリッパ76までの距離に対して長いことが好ましく、また、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの最も長い距離と、最も短い距離との差を小さくすることが好ましい。ここで、ファン172の出力を調整してもよい。本実施形態では、一例として、ファン172の出力条件を紙種又はサイズごとに求めておき、制御部160にファン172の出力テーブルを記憶させておく。そして、ユーザが入力した紙種又はサイズの情報をもとに制御部160がファン172の出力を調整する。例えば、ユーザが入力した紙厚が所定値よりも厚かったり、所定値よりも大きいサイズであれば、ファンの出力を高めるようにする。なお、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの距離を光学センサで測定し、測定結果をもとに制御部160がファン172の出力を調整してもよい。
【0072】
さらに、複数のファン172がシート部材Pに向けて空気を吹き付けることで、シート部材Pにおいて空気が吹き付けられる側のシート面の温度が低下する。このように、ファン172は、温度低下手段として機能している。
【0073】
[本加熱部120]
本加熱部120は、
図1に示されるように、シート部材Pの搬送方向において、予備加熱部102の下流側に配置されている。本加熱部120は、搬送されるシート部材Pと接触してシート部材Pを加熱する加熱ロール130と、加熱ロール130に向けてシート部材Pを加圧する加圧ロール140と、回転する加熱ロール130に従動して回転する従動ロール150とを備えている。
【0074】
-加熱ロール130-
加熱ロール130は、
図1に示されるように、搬送されるシート部材Pの上方を向いた面に接触し、軸方向を装置奥行方向として装置奥行方向に延びるように配置されている。また、加熱ロール130は、円筒状の基材132と、基材132の全周を覆うように形成されたゴム層134と、ゴム層134の全周を覆うように形成された離型層136と、基材132の内部に収容されたヒータ138とを有している。加熱ロール130における離型層136の外周面の外径は、一例として80〔mm〕とされている。
【0075】
基材132は、アルミニウム管であって、一例として厚さ20〔mm〕とされている。また、ゴム層134は、シリコーンゴムによって形成されており、一例として厚さ6〔mm〕とされている。さらに、離型層136は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロエチレンの共重合体(PFA樹脂)によって形成されており、一例として厚さ50〔μm〕とされている。
【0076】
また、
図4に示されるように、装置奥行方向において加熱ロール130の両端部には、装置奥行方向に延びる軸部139aが夫々形成されており、そして、軸部139aを夫々支持する支持部材139bが設けられている。これにより、加熱ロール130は、加熱ロール130の両端部で支持部材139bによって回転可能に支持されている。
【0077】
-従動ロール150-
従動ロール150は、
図1、
図4に示されるように、加熱ロール130を挟んで搬送されるシート部材Pの反対側で、軸方向を装置奥行方向として装置奥行方向に延びるように配置されている。また、従動ロール150は、円筒状の基材152と、基材152の内部に収容されたヒータ154とを有している。従動ロール150の基材152の外周面の外径は、一例として50〔mm〕とされている。
【0078】
基材152は、アルミニウム管であって、一例として厚さ10〔mm〕とされている。そして、従動ロール150は、従動ロール150の両端部で図示せぬ支持部材によって回転可能に支持されている。
【0079】
この構成において、従動ロール150は、加熱ロール130に従動して回転する。そして、従動ロール150は、加熱ロール130を加熱する。このように、加熱ロール130が従動ロール150によって加熱されること、及び加熱ロール130自身がヒータ138を有していることで、加熱ロール130の表面温度は、180〔℃〕以上200〔℃〕以下の予め定められた温度となる。
【0080】
-加圧ロール140-
加圧ロール140は、
図1、
図4に示されるように、搬送されるシート部材Pを挟んで加熱ロール130の反対側で、搬送されるシート部材Pの下方を向いた面に接触し、軸方向を装置奥行方向として装置奥行方向に延びるように配置されている。また、加圧ロール140は、円筒状の基材142と、基材142を覆うように形成されたゴム層144と、ゴム層144を覆うように形成された離型層146と、装置奥行方向の両端部に形成された一対の軸部148(
図4参照)とを有している。加圧ロール140における離型層146の外周面の外径は、一例として225〔mm〕とされている。このように、加圧ロール140の外径は、加熱ロールの外径と比して大きくされている。
【0081】
基材142は、アルミニウム管であって、一例として厚さ20〔mm〕とされている。また、ゴム層144は、シリコーンゴムによって形成されており、一例として厚さ1〔mm〕とされている。さらに、離型層146は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロエチレンの共重合体(PFA樹脂)によって形成されており、一例として厚さ50〔μm〕とされている。
【0082】
また、加圧ロール140の外周面には、装置奥行方向に延びる凹部140aが形成されている。そして、加圧ロール140と加熱ロール130との間をシート部材Pが通過する場合に、シート部材Pの先端部を把持するグリッパ76が、
図5に示されるように、この凹部140aに収容されるようになっている。
【0083】
また、一対の軸部148は、
図4に示されるように、加圧ロール140の装置奥行方向の両端部に形成されており、加圧ロール140における離型層146の外周面と比して小径化され、軸方向に延びている。
【0084】
この構成において、加圧ロール140は、図示せぬ駆動部材から回転力が伝達されて回転する。そして、回転する加圧ロール140に従動して加熱ロール130が回転し、回転する加熱ロール130に従動して従動ロール150が回転する。さらに、加熱ロール130と加圧ロール140とが、トナー画像が転写されたシート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像がシート部材Pに定着される。
【0085】
-その他-
本加熱部120は、
図4に示されるように、加圧ロール140を支持する支持部材156と、支持部材156を介して加圧ロール140を加熱ロール130側に付勢する付勢部材158とを備えている。
【0086】
支持部材156は、一対設けられている。そして、一対の支持部材156は、加圧ロール140の一対の軸部148を下方から回転可能に支持するように夫々配置されている。
【0087】
付勢部材158は、圧縮スプリングであって、一対設けられており、支持部材156を挟んで軸部148の反対側に配置されている。
【0088】
この構成において、一対の付勢部材158が、加圧ロール140を加熱ロール130側に付勢することで、加圧ロール140が、シート部材Pを加熱ロール130に向けて加圧する。そして、
図2に示されるように、加圧ロール140によって付勢された部分の加熱ロール130が変形し、加熱ロール130と加圧ロール140とが接触した領域であるニップ部Nが形成される。
【0089】
(要部構成の作用)
次に、画像形成装置10の作用について、比較形態に係る画像形成装置510と比較しつつ説明する。先ず、比較形態に係る画像形成装置510の構成について、画像形成装置10と異なる部分を主に説明する。なお、画像形成装置510の作用についても画像形成装置10と異なる部分を主に説明する。
【0090】
〔画像形成装置510〕
画像形成装置510は、収容部50と、排出部52と、画像形成部12と、搬送機構60と、反転機構80と、定着装置600と、冷却部90とを備えている。定着装置600は、
図10に示されるように、搬送されるシート部材Pと非接触状態でシート部材Pを加熱する予備加熱部602と、本加熱部120とを備えている。
【0091】
この構成において、予備加熱部602は、未定着のトナー画像側から、非接触状態でシート部材Pを加熱する。また、両面印刷の場合に、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを予備加熱部602が加熱することで、本加熱部120がシート部材Pを加熱する前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点以上になる。
【0092】
(画像形成装置10、510の作用)
図9に示す画像形成装置10では、搬送機構60が、シート部材Pを二次転写位置NTへ搬送し、二次転写位置NTでは、転写ベルト31及び対向ロール36が、シート部材Pを挟み込んで搬送する。これにより、転写ベルト31の表面のトナー画像が、シート部材Pの第一面(=表面)に転写される。
【0093】
さらに、搬送機構60は、シート面が上下方向を向くようにシート部材Pを搬送する。また、
図1、
図10に示す予備加熱部102、602は、搬送機構60によって搬送されるシート部材Pの第一面側(=未定着のトナー画像側)から非接触状態でシート部材Pを加熱する。
図1に示す予備加熱部102がシート部材Pを加熱するときには、ファン172が、シート部材Pの第二面(=裏面)に向かって空気を吹き付ける。これにより、予備加熱部102によって加熱されている状態のシート部材Pの搬送姿勢が安定する。
【0094】
さらに、
図1、
図10に示す本加熱部120が、加熱ロール130と加圧ロール140とによってシート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像をシート部材Pの第一面に定着させる。また、反転機構80は、第一面にトナー画像が定着したシート部材Pを本加熱部120から受け取って搬送し、シート部材Pの表裏を反転させる。さらに、搬送機構60が、表裏が反転されたシート部材Pを反転機構80から受け取って搬送する。
【0095】
搬送機構60が、シート部材Pを再度二次転写位置NTへ搬送し、二次転写位置NTでは、転写ベルト31及び対向ロール36が、シート部材Pを挟み込んで搬送する。これにより、転写ベルト31の表面のトナー画像が、シート部材Pの第二面(=裏面)に転写される。
【0096】
さらに、搬送機構60は、シート面が上下方向を向くようにシート部材Pを搬送する。また、予備加熱部102、602は、搬送機構60によって搬送されるシート部材Pの第二面側(=未定着のトナー画像側)から非接触状態でシート部材Pを加熱する。
図1に示す予備加熱部102がシート部材Pを加熱するときには、吹付けユニット170のファン172が、シート部材Pの第一面(=表面)に向かって空気を吹き付ける。これにより、予備加熱部102、602によって加熱されている状態のシート部材Pの姿勢が安定する。
【0097】
また、搬送機構60は、第二面に画像が転写されたシート部材Pを予備加熱部102、602が加熱するときに、シート部材Pの第一面の画像形成領域が、他の部材と非接触状態となるように搬送する。
【0098】
さらに、本加熱部120が、加熱ロール130と加圧ロール140とによってシート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像をシート部材Pの第二面に定着させる。このようにして、第一面のトナー画像は、加熱ロール130と加圧ロール140とによって2度挟まれる。また、冷却部90は、両面にトナー画像が定着したシート部材Pを冷却して排出部52へ排出する。
【0099】
ここで、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを
図10に示す予備加熱部602が加熱することで、本加熱部120がシート部材Pを加熱する前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点以上になる。換言すれば、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを予備加熱部602が加熱することで、
図2に示す位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点以上になる。このように、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点以上になることで、シート部材Pは、第一面の温度がトナーの軟化点以上になった状態で、本加熱部120によって加熱される。
【0100】
これに対して、
図1に示す予備加熱部102は、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱する。換言すれば、予備加熱部102は、第二面に転写されたトナー画像を加熱するときに、
図2に示す位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱する。このように、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点未満となることで、シート部材Pは、第一面の温度がトナーの軟化点未満となった状態で、本加熱部120によって加熱される。
【0101】
-光沢度評価-
次に、画像形成装置10、510によって出力されたトナー画像の光沢度(=グロス)を評価したため、この評価について説明する。具体的には、シート部材Pの両面にトナー画像を形成させて第一面の光沢度と第二面の光沢度との差を評価した。本評価においては、軟化点温度が75〔℃〕のトナーを用いた。
【0102】
1.評価仕様(
図3参照)
(a)実施例1では、位置S01での第一面の温度が60〔℃〕となり、第二面の温度が65〔℃〕となるように、予備加熱部102が、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを第二面側から加熱した。
【0103】
(b)実施例2では、位置S01での第一面の温度が65〔℃〕となり、第二面の温度が70〔℃〕となるように、予備加熱部102が、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを第二面側から加熱した。
【0104】
(c)実施例3では、位置S01での第一面の温度が70〔℃〕となり、第二面の温度が75〔℃〕となるように、予備加熱部102が、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを第二面側から加熱した。
【0105】
(d)比較例1では、位置S01での第一面の温度が80〔℃〕となり、第二面の温度が85〔℃〕となるように、予備加熱部602が、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを第二面側から加熱した。
【0106】
(e)比較例2では、位置S01での第一面の温度が90〔℃〕となり、第二面の温度が95〔℃〕となるように、予備加熱部602が、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを第二面側から加熱した。
【0107】
(f)比較例3では、位置S01での第一面の温度が75〔℃〕となり、第二面の温度が70〔℃〕となるように、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを予備加熱部が加熱した。なお、比較例3については、実施例1~3、比較例1、2とは異なり、予備加熱部が、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを第一面側から加熱した。つまり、予備加熱部を搬送されるシート部材Pの下方に配置した。
【0108】
上記以外の仕様については、各仕様間で全て同様とした。
【0109】
2.評価方法
シート部材PとしてA4サイズのOSコート紙(富士ゼロックス社製、坪量127.9〔g/m 2〕)を用いた。そして、シート部材Pの両面に黒ベタ画像(黒色のエリアカバレッジ100〔%〕の画像)を形成させた。
【0110】
また、加熱ロール130の表面温度を200〔℃〕とし、加熱ロール130と加圧ロール140とが接触したニップ部Nにおける圧力を、250〔KPa〕とした。
【0111】
3.評価項目
出力されたシート部材Pの第一面の光沢度と第二面の光沢度との差(=グロス差)を評価した。光沢度は、グロス測定機(BYK-Gardner社製のAG-4430)を用いて評価した。具体的には、このグロス測定機を用いて、鏡面光沢度の測定方法(JIS Z 8741)における入射角60度で測定し、この測定値を光沢度とした。
【0112】
4.評価基準、評価結果
同じ画像形成装置によって形成されたトナー画像であるにも係わらず、第一面のトナー画像の光沢度と第二面のトナー画像の光沢度との差が大きいと、ユーザに違和感を与える。本評価では、第一面のトナー画像の光沢度と第二面のトナー画像の光沢度との差が、10以下の場合には、ユーザに違和感を与えることがないと考え、評価を「○」とし、第一面のトナー画像の光沢度と第二面のトナー画像の光沢度との差が、10より大きい場合には、評価「×」とした。
【0113】
評価結果を、
図3の表に示す。
図3の表に示されるように、第一面の温度がトナーの軟化点未満の実施例1~3については、評価結果が「○」となった。これに対して、第一面の温度がトナーの軟化点以上の比較例1~3については、評価結果が「×」となった。
【0114】
5.考察
両面印刷の場合には、第一面のトナー画像は、加熱ロール130と加圧ロール140とによって2度挟まれ、第二面のトナー画像は、加熱ロール130と加圧ロール140とによって1度挟まれる。
【0115】
ここで、比較例1~3では、位置S01での第一面の温度が、トナーの軟化点以上となっている。このため、第一面に形成されたトナー画像が、加熱ロール130と加圧ロール140とによって2度目に挟まれたときに、トナー画像の表面の表面粗さが、1度しか挟まれない場合と比して、小さくり、光沢度が向上する。
【0116】
一方、実施例1~3では、位置S01での第一面の温度が、トナーの軟化点未満となっている。このため、第一面に形成されたトナー画像が、加熱ロール130と加圧ロール140とによって2度目に挟まれたときに、トナー画像の表面の表面粗さが小さくり、光沢度が向上するのが抑制される。
【0117】
このため、
図3の表に示されるように、比較例1~3では、第一面の光沢度と第二面の光沢度との差が大きくなり、評価結果が「×」になったと考察する。一方、実施例1~3では、第一面の光沢度と第二面の光沢度との差が小さくなり、評価結果が「○」になったと考察する。
【0118】
(まとめ)
以上説明したように、予備加熱部102は、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点未満となるようにシート部材Pを加熱する。このため、前述した評価結果からも分かるように、比較形態に係る画像形成装置510を用いる場合と比して、第一面のトナー画像の光沢度と第二面のトナー画像の光沢度との差が小さくなる。
【0119】
また、予備加熱部102は、未定着のトナー画像側から、非接触状態でシート部材Pを加熱する。つまり、予備加熱部102は、第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、第二面側からシート部材Pを加熱する。このため、未定着のトナー画像が転写されているシート部材Pの第二面の温度が、トナー画像が定着したシート部材Pの第一面の温度に対して高くなる。
【0120】
また、未定着のトナー画像が転写されているシート部材Pの第二面の温度が、第一面の温度に対して高くなることで、第二面の温度が、第一面の温度に対して低くなる場合と比して、第二面のトナー画像の光沢度が向上する。
【0121】
また、搬送機構60は、予備加熱部102によってシート部材Pが加熱されるときに、シート面が上下方向に向くようにシート部材Pを搬送する。さらに、予備加熱部102は、シート部材の上方からシート部材Pを加熱し、ファン172は、シート部材Pの下方からシート部材Pに空気を吹き付ける。このように、予備加熱部102によって第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱しているときに、ファン172は、シート部材Pの第一面側からシート部材Pに空気を吹き付ける。このため、第一面側の空気が滞留している場合と比して、第一面の温度が容易にトナーの軟化点未満になる。
【0122】
また、搬送機構60は、予備加熱部102によってシート部材Pが加熱されるときに、シート面が上下方向に向くようにシート部材Pを搬送する。さらに、予備加熱部102は、シート部材の上方からシート部材Pを加熱し、ファン172は、シート部材Pの下方からシート部材Pに空気を吹き付ける。このため、重力によって撓んだ状態でシート部材Pが搬送される場合と比して、搬送されるシート部材Pの搬送姿勢が安定する。
【0123】
また、シート部材Pの搬送姿勢が安定することで、重力によって撓んだ状態でシート部材Pが搬送される場合と比して、シート部材Pの後端部の温度がシート部材Pの先端部の温度より低下することが抑制される。
【0124】
また、搬送機構60は、第二面に画像が転写されたシート部材Pを予備加熱部102が加熱するときに、シート部材Pの第一面の画像形成領域が、他の部材と非接触状態となるように搬送する。このため、シート部材Pの第一面の画像形成領域が他の部材と接触する場合と比して、1枚のシート部材Pの中で温度に差が生じるのが抑制されることで、シート部材Pの第一面に形成されたトナー画像の光沢度差が生じる。
【0125】
また、搬送機構60は、予備加熱部102によってシート部材Pが加熱されるときに、シート面が上下方向に向くようにシート部材Pを搬送する。また、予備加熱部102は、シート部材の上方からシート部材Pを加熱する。このため、搬送機構が、シート面が水平方向に向くようにシート部材Pを搬送し、かつ、予備加熱部が、水平方向からシート部材Pを加熱する場合と比して、予備加熱部によって生じた熱気がシート部材Pと予備加熱部との間から上昇して逃げてしまうが抑制される。
【0126】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、予備加熱部102は、未定着のトナー画像側から、非接触状態でシート部材Pを加熱したが、予備加熱部が、シート部材Pと接触した状態で、シート部材Pを加熱してもよい。しかし、この場合には、予備加熱部102が非接触状態でシート部材Pを加熱することで奏する作用は奏しない。
【0127】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、位置S01に温度検出部材を設け、この検出結果に基づいて、予備加熱部102の出力を調整してもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、本加熱部120によって第二面にトナー画像がシート部材Pに定着される前に、シート部材Pの第一面を冷却する冷却部材を設けてもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、搬送機構60は、予備加熱部102が第二面に画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、シート部材Pの第一面の画像形成領域が、他の部材と非接触状態となるように搬送したが、第一面の画像形成領域が、他の部材と接触してもよい。しかし、この場合には、非接触状態により生じる作用は、生じない。
【0130】
また、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点未満であれば、予備加熱部102第二面の温度を、トナーの軟化点未満としても、トナーの軟化点以上にしても良い。但し、本加熱部120でトナーを容易にシート部材P上に定着させるためには、第二面の温度をトナーの軟化点以上とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0131】
10 画像形成装置
35 転写部
60 搬送機構(搬送部の一例)
80 反転機構(反転部の一例)
102 予備加熱部
120 本加熱部
172 ファン(吹付け部の一例、安定部の一例)