(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】売上データ処理システム、売上データ処理装置、携帯端末装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G07G 1/12 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G07G1/12 331F
(21)【出願番号】P 2019231035
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 朗
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-31790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07G 1/00 - 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備え、
前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置は、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする売上データ処理システム。
【請求項2】
前記売上データ処理装置は、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧の検出に応じて、前記中継通信装置との間で通信接続を開始し、かつ、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を通知する復電通知データを前記携帯端末装置に対して前記第2の通信接続を介して送信し、
前記携帯端末装置は、前記復電通知データの受信に応じて、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする請求項1に記載の売上データ処理システム。
【請求項3】
前記売上データ処理装置は、
自装置に対する外部からの電力供給の停止を検出し、自装置が前記予備電源による動作に切り替わったことにより、
自装置及び前記中継通信装置に対する
外部からの電力供給の停止を検出し、
自装置が、前記予備電源による動作から、外部からの電力供給による動作に切り替わったことにより、
自装置及び前記中継通信装置に対する
外部からの電力供給の復旧を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の売上データ処理システム。
【請求項4】
前記売上データ処理装置は、
自装置と前記中継通信装置との通信接続が切断されたことにより、前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の停止を検出し、
自装置と前記中継通信装置との通信接続が再開できたことにより、前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の売上データ処理システム。
【請求項5】
前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧後に前記第1の通信接続が再開された場合に、前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置の少なくとも一方が前記第2の通信接続を終了させることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
【請求項6】
前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置の少なくとも一方は、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧後に前記第1の通信接続が再開された場合に、前記第2の通信接続に対して前記第1の通信接続を優先的に利用して通信処理を行うように自装置の設定を切り替えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
【請求項7】
前記第1の通信接続は、第1の通信方式により行われ、
前記第2の通信接続は、前記第1の通信方式よりも電力消費量の少ない第2の通信方式により行われることを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
【請求項8】
前記中継通信装置は、外部のネットワークに接続された、無線通信のアクセスポイントであり、
前記第1の通信接続が行われている場合に、前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置の少なくとも一方は、前記中継通信装置を介して、前記ネットワークに接続された外部装置とデータ通信を行うことを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
【請求項9】
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる売上データ処理装置であって、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を検出した場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする売上データ処理装置。
【請求項10】
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる携帯端末装置であって、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項11】
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる売上データ処理装置に設けられたコンピュータに、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始する機能と、
前記第2の通信接続の開始後に、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を検出した場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる携帯端末装置に設けられたコンピュータに、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始する機能と、
前記第2の通信接続の開始後に、前記
売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、売上データ処理システム、売上データ処理装置、携帯端末装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗に設置されて会計に用いられ、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置(例えばECR(Electronic Cash Register))がある。また、近年では、この売上データ処理装置との間で無線による通信接続を行う携帯端末装置をさらに備えた売上データ処理システムを用いて、売上データ処理装置と携帯端末装置との連携動作により会計に係る各種処理を行う技術が知られている。この売上データ処理システムによれば、例えば、携帯端末装置において会計に係る入力操作を受け付けて売上データを生成するとともに当該売上データを売上データ処理装置に送信し、売上データ処理装置において顧客に対する画面表示やレシートの印刷等を行う、といった連携動作が可能となる。
【0003】
また、売上データ処理装置と携帯端末装置とを、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント等の中継通信装置を介して接続することで、1台の売上データ処理装置に対して複数の携帯端末装置を通信接続させることができる。これにより、携帯端末装置を各々所持する複数のユーザで売上データ処理装置を共用することができる。
また、インターネット等の外部のネットワークに接続された中継通信装置を用いることで、携帯端末装置又は売上データ処理装置と、ネットワーク上のサーバ等との間でデータ通信を行うことができる。これにより、例えば、売上データをネットワーク上のサーバに記憶させて管理したり、クレジットカードの情報をネットワーク上の管理サーバに照会したりすることが可能となる。
【0004】
売上データ処理システムのうち売上データ処理装置は、通常、外部電源により動作するため、停電などにより電力供給が停止した場合に処理中の売上データを保持できる機能を備えていることが望ましい。例えば、特許文献1には、売上データ処理装置に対する外部からの電力供給が停止した場合に、会計処理を中断して売上データを所定の退避用メモリに退避させ、電力供給が復旧した場合に、退避させた売上データを用いて会計処理を再開させる技術が開示されている。
ただし、売上データ処理装置に携帯端末装置を組み合わせて売上データ処理システムを構成する場合には、売上データ処理装置に予備電源を設けて電力供給の停止期間中も動作を継続させ、携帯端末装置との連携動作を維持できるようにすることがより好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように中継通信装置を介して売上データ処理装置と携帯端末装置とを通信接続させる場合には、停電時には中継通信装置に対する電力供給も停止して売上データ処理装置と携帯端末装置との通信接続が切断されるため、売上データ処理装置と携帯端末装置との連携動作が行えなくなる。また、電力供給の復旧時に中継通信装置を介した通信接続を確実かつ速やかに再開させることが容易でない。
このように、上記従来の技術では、電力供給の停止期間に売上データ処理システムの連携動作を継続させることができないという課題がある。
【0007】
この発明の目的は、電力供給の停止期間に連携動作を継続させることができる売上データ処理システム、売上データ処理装置、携帯端末装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の売上データ処理システムは、
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備え、
前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置は、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に、前記売上データ処理装置及び前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧又は前記中継通信装置に対する外部からの電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力供給の停止期間及びその前後で連携動作を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】売上データ処理システムの構成を示す図である。
【
図2】売上データ処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】携帯端末装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】電力供給の停止時における売上データ処理システムの動作を示す図である。
【
図5】電力供給の復旧時における売上データ処理システムの動作を示す図である。
【
図6】通信接続切替処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の売上データ処理システム、売上データ処理装置、携帯端末装置及びプログラムに係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
<売上データ処理システムの構成>
図1は、本実施形態の売上データ処理システム1の構成を示す図である。
売上データ処理システム1は、売上データ処理装置10と、携帯端末装置20と、アクセスポイント30と、を備えている。売上データ処理システム1は、例えば個人商店、スーパーマーケット、飲食店等の店舗に設置されて会計に用いられる。
【0013】
売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、アクセスポイント30(中継通信装置)を介した無線LAN、ここではWi-Fi(登録商標)による通信接続(第1の通信接続)(以下、単に「Wi-Fi接続」とも記す」)が可能となっている。売上データ処理システム1は、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作によって、店舗における商取引の売上データの登録等の各種処理を行う。以下では、商品やサービスなどの商取引の対象を、まとめて「商品」と記す。
また、アクセスポイント30はルータ機能を備えており、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20を外部のネットワークN(例えば、インターネット)に接続することができる。したがって、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、アクセスポイント30及びネットワークNを介して、売上データ管理サーバ2及びカード情報管理サーバ3などの外部装置にアクセスすることができる。なお、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20のうち一方のみが外部装置にアクセスする構成としてもよい。
【0014】
携帯端末装置20は、店舗の店員等のユーザが所持する端末装置であり、例えばタブレット端末やスマートフォン等である。携帯端末装置20は、会計時にユーザから会計の内容を特定する入力操作を受け付けて、販売する商品の名称、個数、金額等の情報を含む売上データを生成して登録(記憶)する。携帯端末装置20は、登録した売上データを売上データ処理装置10に送信したり、アクセスポイント30を介して、売上データを管理するための売上データ管理サーバ2に送信したりする。また、携帯端末装置20は、クレジットカードによる決済を行う場合に、クレジットカード情報の照会等のため、アクセスポイント30を介してクレジットカード会社等のカード情報管理サーバ3との間のデータ通信なども行う。
携帯端末装置20は、バッテリー26(内部電源)(
図3参照)による動作が可能である。
【0015】
売上データ処理装置10は、店舗のレジに設置されるECRである。売上データ処理装置10は、アクセスポイント30から受信した売上データの内容に応じて、会計に係る情報を顧客用表示部152に表示したり、印刷部16からレシートを出力したりする。また、現金による決済を行う場合にドロア17(
図2参照)を開放して、現金の出納を行う。また、売上データ処理装置10は、会計時に携帯端末装置20に代わって会計内容を特定するユーザからの入力操作を受け付けて、売上データを生成、登録することもできるようになっている。
売上データ処理装置10は、外部からの電力供給を受けて動作する。また、売上データ処理装置10は、予備電源19(
図2参照)を備え、外部からの電力供給が停止した場合に予備電源19による動作の継続が可能となっている。
【0016】
アクセスポイント30は、Wi-Fiにより無線通信を行う機器(本実施形態では、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20)同士を相互に接続したり、当該機器をネットワークNに接続したりする機器である。アクセスポイント30には、複数のWi-Fi機器を接続することができる。よって、アクセスポイント30を用いることで、複数のWi-Fi機器同士の相互間接続を行うことができる。したがって、1つの売上データ処理装置10に対して複数の携帯端末装置20を通信接続することができる。すなわち、
図1では携帯端末装置20が1つのみ描かれているが、売上データ処理システム1は、各々がアクセスポイント30を介して売上データ処理装置10と通信接続する複数の携帯端末装置20を備えていてもよい。
アクセスポイント30は、外部からの電力供給を受けて動作する。
【0017】
売上データ処理装置10と携帯端末装置20とは、Wi-Fiによる通信接続に代えて、アクセスポイント30を介さない直接の無線通信による通信接続(第2の通信接続)を行うこともできるようになっている。この場合の無線通信としては、各種の近距離無線通信を用いることができ、本実施形態ではBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy))が用いられている。BLEによる通信接続(以下、単に「BLE接続」とも記す」)は、Wi-Fi接続よりも通信速度が遅く、接続可能距離が短いものの、Wi-Fi接続より電力消費量が少ない利点がある。BLEは、「第2の通信方式」に相当する。
【0018】
BLE接続では、1台のマスターデバイスに対して複数台のスレーブデバイスを接続することができる。スレーブデバイス側から見ると、各スレーブデバイスは1台のマスターデバイスに対してのみBLE接続を行うことができる。本実施形態では、携帯端末装置20がマスターデバイスに相当し、売上データ処理装置10がスレーブデバイスに相当するため、売上データ処理装置10は、1台の携帯端末装置20とのみBLE接続を行うことができる。
【0019】
このように、BLE接続を用いると、1台の売上データ処理装置10を複数の携帯端末装置20で共用することができず、また、ネットワークNを介した外部のサーバとのデータ通信も行うことができない。このため、通常時はアクセスポイント30を介したWi-Fi接続が用いられ、BLE接続は、停電等により売上データ処理装置10及びアクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合に、一時的な代替の通信接続として用いられる。Wi-Fi接続及びBLE接続の切り替えに係る動作については、後に詳述する。
【0020】
<売上データ処理装置の構成>
図2は、売上データ処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
売上データ処理装置10は、CPU11(Central Processing Unit)(コンピュータ)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、Wi-Fi通信部141及びBLE通信部142を有する通信部14と、操作表示部151と、顧客用表示部152と、印刷部16と、ドロア17と、ADC181(アナログデジタル変換回路)及び検出回路182を有する電源部18と、予備電源19と、バスB1などを備えている。売上データ処理装置10の各部は、バスB1により接続されている。
【0021】
CPU11は、売上データ処理装置10の各部を制御するプロセッサである。CPU11は、記憶部13に記憶されたプログラム131を読み出してRAM12に展開し、当該プログラム131を実行して各種演算処理を行う。プログラム131を実行することで、CPU11は、売上データを生成する処理手段、通信部14の動作を制御する通信制御手段、及び検出回路182から受信した検出信号に基づいて電力供給の復旧を検出する復電検出手段などとして機能する。
【0022】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。RAM12は、不揮発性メモリを含んでいてもよい。RAM12には、携帯端末装置20から受信し、又は売上データ処理装置10において生成された売上データが一時的に記憶される。
【0023】
記憶部13は、CPU11により実行されるプログラム131や各種設定データなどを記憶する。プログラム131は、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードの形態で記憶部13に格納されている。記憶部13としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの、データの保持に電源を要しない記憶装置が用いられる。
記憶部13に記憶される設定データとしては、通信部14が無線通信を行う対象の携帯端末装置20、アクセスポイント30、及び外部のサーバ等を識別、特定するための識別データなどが含まれる。
【0024】
Wi-Fi通信部141及びBLE通信部142はそれぞれ、アンテナ、変復調回路、信号処理回路などを有する通信モジュールである。Wi-Fi通信部141は、Wi-Fiによる無線通信に係る通信規格に従って、アクセスポイント30との間(したがって、アクセスポイント30を介して携帯端末装置20の通信部24(
図3参照)との間)で無線データ通信を行う。BLE通信部142は、BLEによる無線通信に係る通信規格に従って、携帯端末装置20の通信部24との間で無線データ通信を行う。
【0025】
操作表示部151は、LCD(Liquid Crystal Display)や、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイといった表示部と、表示部の表示画面に重ねられて設けられたタッチパネルとを備える。操作表示部151は、例えば、会計時においてユーザからの上述の会計内容を特定する入力操作を受け付ける。
なお、操作表示部151には、キーボードやマウスといった、タッチパネル以外の入力デバイスがさらに設けられていてもよい。
【0026】
顧客用表示部152は、LCDや有機ELディスプレイなどにより構成され、売上データ処理装置10を操作するユーザと対面する顧客に対して、商品名や価格などの各種情報を表示する。
【0027】
印刷部16は、CPU11から出力された制御信号に従い、レシートやジャーナルなどを用紙に印刷して出力する。
【0028】
ドロア17は、金銭、商品券等を格納する引き出しであり、CPU11による制御下で開放する開放機構を有する。
【0029】
電源部18は、
図1に示す電源プラグ183を介して外部のAC電源に接続され、このAC電源による供給電力を、CPU11、RAM12、記憶部13、通信部14、操作表示部151、顧客用表示部152、印刷部16、ドロア17を含む売上データ処理装置10の各部に供給する。
図2では、電源部18から各部への電力供給経路は記載が省略されている。
電源部18は、AC電源からの交流電圧を直流電圧に変換するADC181と、AC電源からの電力の供給状態を検出する検出回路182と、を備える。検出回路182は、電力の供給状態を検出して、検出結果に係る検出信号をCPU11に出力する。例えば、検出回路182は、AC電源からの電力供給の停止を検出すると、停電検出信号を出力し、AC電源からの電力供給の復旧を検出すると、復電検出信号を出力する。この復電検出信号により、CPU11は、停電などにより停止されていた電力供給の復旧を検出することができる。
【0030】
予備電源19は、外部のAC電源からの電力供給が停止した場合に、電源部18に代わって売上データ処理装置10の所定の構成要素に一時的に電力を供給する。予備電源19としては、例えば乾電池や充電式のバッテリーなどを用いることができる。本実施形態の予備電源19は、CPU11、RAM12、記憶部13、BLE通信部142、操作表示部151、顧客用表示部152、印刷部16、ドロア17及び検出回路182に対して電力を供給可能に設けられている。よって、停電などでAC電源からの電力供給が停止した場合には、予備電源19の電力により、売上データ処理装置10を一定期間動作させることができる。例えば、予備電源19の電力により、RAM12に記憶されたデータを保持することができ、また、BLE通信部142により携帯端末装置20とのBLEによる通信接続を行うことができる。以下では、売上データ処理装置10の各部に予備電源19から電力を供給して動作を維持させることを、「バックアップ」とも記す。
なお、予備電源19からWi-Fi通信部141に電力が供給されないようになっているのは、後述するように、停電時にはアクセスポイント30が動作しなくなるため、Wi-Fi通信部141によるアクセスポイント30とのWi-Fi接続を行うことができない(行う必要がない)ためである。ただし、これに限られず、予備電源19からWi-Fi通信部141に電力が供給されてもよい。このようにすれば、電源プラグ183が意図せずに外れた場合など、売上データ処理装置10に対する電力供給のみが停止し、アクセスポイント30には電力が供給されている状況下において、アクセスポイント30とのWi-Fi接続を継続させることができる。
【0031】
<携帯端末装置の構成>
図3は、携帯端末装置20の機能構成を示すブロック図である。
携帯端末装置20は、CPU21(コンピュータ)と、RAM22と、記憶部23と、Wi-Fi通信部241及びBLE通信部242を有する通信部24と、操作表示部25と、バッテリー26と、バスB2などを備えている。携帯端末装置20の各部は、バスB2により接続されている。
【0032】
CPU21は、携帯端末装置20の各部を制御するプロセッサである。CPU21は、記憶部23に記憶されたプログラム231を読み出してRAM22に展開し、当該プログラム231を実行して各種演算処理を行う。プログラム231を実行することで、CPU21は、売上データを生成する処理手段、及び通信部24の動作を制御する通信制御手段などとして機能する。
【0033】
RAM22は、CPU21に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。RAM22は、不揮発性メモリを含んでいてもよい。RAM22には、携帯端末装置20において生成された売上データが一時的に記憶される。
【0034】
記憶部23は、CPU21により実行されるプログラム231や各種設定データなどを記憶する。プログラム231は、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードの形態で記憶部23に格納されている。記憶部23としては、例えばHDD又はSSDなどが用いられる。
記憶部23に記憶される設定データとしては、通信部24が無線通信を行う対象の売上データ処理装置10、アクセスポイント30、及び外部のサーバ等を識別、特定するための識別データなどが含まれる。この識別データのうちの1つは、後述するBLEのアドバタイジングパケットに含まれる、売上データ処理装置10からのパケットであることを示す固有のIDのデータである。
【0035】
Wi-Fi通信部241及びBLE通信部242はそれぞれ、アンテナ、変復調回路、信号処理回路などを有する通信モジュールである。Wi-Fi通信部241は、Wi-Fiによる無線通信に係る通信規格に従って、アクセスポイント30との間(したがって、アクセスポイント30を介して売上データ処理装置10の通信部14との間)で無線データ通信を行う。BLE通信部242は、BLEによる無線通信に係る通信規格に従って、売上データ処理装置10の通信部14との間で無線データ通信を行う。
【0036】
操作表示部25は、LCDや有機ELディスプレイといった表示部と、表示部の表示画面に重ねられて設けられたタッチパネルとを備える。操作表示部25は、例えば、会計時においてユーザからの上述の会計内容を特定する入力操作を受け付ける。なお、操作表示部25には、ユーザからの入力操作を受け付けるタッチパネル以外の入力デバイスがさらに設けられていてもよい。
【0037】
バッテリー26は、CPU21、RAM22、記憶部23、通信部24、及び操作表示部25を含む携帯端末装置20の各部に電力を供給する。バッテリー26としては、例えば充電式のものを用いることができるが、これに限られず、乾電池などの使い捨てのものであってもよい。
図3では、バッテリー26から各部への電力供給経路は記載が省略されている。
携帯端末装置20は、このようにバッテリー26から供給される電力で動作するため、停電等によりAC電源からの電力供給が停止しても動作を継続することができる。
【0038】
<売上データ処理システムにおける通信接続の切替動作>
次に、売上データ処理システム1の動作について、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の間の通信接続の切替動作を中心に説明する。
【0039】
図1に示すとおり、売上データ処理システム1では、売上データ処理装置10及びアクセスポイント30に対して外部のAC電源からの電力供給が行われている場合には、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、アクセスポイント30を介したWi-Fi接続を行う。
【0040】
この状態から、停電等により、売上データ処理装置10及びアクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止すると、売上データ処理装置10は予備電源19からのバックアップにより動作を継続する一方、アクセスポイント30は動作を停止する。よって、売上データ処理装置10と携帯端末装置20との間のWi-Fi接続が切断される。
停電時には、売上データ処理装置10及びアクセスポイント30に対する外部からの電力供給が同時に停止する。このため、売上データ処理装置10は、自装置が予備電源19による動作に切り替わったことにより、アクセスポイント30に対する外部からの電力供給の停止を検出することができ、また、アクセスポイント30とのWi-Fi接続が切断されたと判別することができる。
【0041】
図4は、電力供給の停止時における売上データ処理システム1の動作を示す図である。
売上データ処理装置10が外部からの電力供給の停止を検出すると、
図4に示すように、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、切断されたWi-Fi接続に代わる通信接続として、BLE接続(第2の通信接続)を開始する。停電時にBLEによる直接の通信接続を行うことで、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を継続することができる。
BLE接続の開始後、売上データ処理装置10は、外部からの電力供給の状況を監視する。
【0042】
図5は、電力供給の復旧時における売上データ処理システム1の動作を示す図である。
電力供給が復旧すると、売上データ処理装置10は、予備電源19による動作から、外部からの電力供給による動作に切り替わる。また、アクセスポイント30が起動し、Wi-Fi接続が可能な状態となる。
売上データ処理装置10は、自装置が外部からの電力供給による動作に切り替わったことにより、アクセスポイント30に対する電力供給が復旧したこと、すなわちアクセスポイント30がWi-Fi接続の可能な状態に復旧したことを検出することができる。当該検出に応じて、売上データ処理装置10は、
図5に示すようにアクセスポイント30とのWi-Fi接続を開始する。
これと並行して、売上データ処理装置10は、電力供給の復旧を通知する所定の復電通知データを携帯端末装置20に対してBLE接続を介して送信する。
携帯端末装置20は、この復電通知データを受信することで、売上データ処理装置10及びアクセスポイント30に対する電力供給の復旧を即時に検知することができる。携帯端末装置20は、復電通知データの受信に応じて、アクセスポイント30とのWi-Fi接続を開始し、次いで売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する。
また、電力供給の復旧後にWi-Fi接続が再開された場合には、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、BLE接続を終了させる。なお、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20のうち一方のみがBLE接続を終了させるための処理を行ってもよい。
これにより、売上データ処理システム1は、
図1に示す通常時の通信接続状態に戻る。
【0043】
<通信接続切替処理の制御手順>
次に、売上データ処理システム1に上記の通信接続の切替動作を行わせるための通信接続切替処理の詳細な制御手順について説明する。
図6は、通信接続切替処理のCPU11及びCPU21による制御手順を示すフローチャートである。
図6では、売上データ処理装置10側の通信接続切替処理(CPU11により実行される処理)、及び携帯端末装置20側の通信接続切替処理(CPU21により実行される処理)が併記されている。通信接続切替処理の開始時には、
図1に示すように売上データ処理装置10と携帯端末装置20とがWi-Fi接続を行っているものとする。
【0044】
通信接続切替処理が開始されると、売上データ処理装置10のCPU11は、AC電源からの電力供給の停止を検出したか否かを判別する(ステップS101)。ここでは、CPU11は、検出回路182からの停電検出信号の受信に応じて、電力供給の停止を検出する。電力供給の停止を検出していないと判別された場合には(ステップS101で“NO”)、CPU11は、再度ステップS101の処理を実行する。
【0045】
電力供給の停止を検出したと判別された場合には(ステップS101で“YES”)、CPU11は、売上データ処理装置10の各部への供給電力を、予備電源19からの電力に切り替える(ステップS102)。
【0046】
予備電源19からの電力に切り替わると、CPU11は、携帯端末装置20とのBLE通信を開始させるためのアドバタイズを行う(ステップS103)。すなわち、CPU11は、売上データ処理装置10からのパケットであることを示す固有のIDを含む所定のアドバタイジングパケットをBLE通信部142により発信させる。
【0047】
携帯端末装置20のCPU21は、通信接続切替処理が開始されると、売上データ処理装置10から発信されたアドバタイジングパケットをBLE通信部242が受信したか否かを判別する(ステップS201)。なお、ステップS201の処理は、電力供給の停止により売上データ処理装置10及びアクセスポイント30とのWi-Fi接続が切断されたことを検出した場合に開始してもよい。アドバタイジングパケットを受信していないと判別された場合には(ステップS201で“NO”)、CPU21は、再度ステップS201の処理を実行する。
【0048】
アドバタイジングパケットを受信したと判別された場合には(ステップS201で“YES”)、CPU21は、売上データ処理装置10とのペアリング処理を行って、BLE通信部242によりBLE接続を開始させる(ステップS202)。よって、ステップS202の終了時点以降、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、BLE接続を行っている状態となる。このBLE接続を行っているときの売上データ処理システム1の動作状態が、
図4に相当する。
【0049】
BLEによる無線通信接続が開始されると、売上データ処理装置10のCPU11は、電力供給の復旧を検出したか否かを判別する(ステップS104)。ここでは、CPU11は、検出回路182からの復電検出信号の受信に応じて、電力供給の復旧を検出する。電力供給の復旧を検出していないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、CPU11は、再度ステップS104の処理を実行する。
【0050】
電力供給の復旧を検出したと判別された場合には(ステップS104で“YES”)、CPU11は、売上データ処理装置10の各部への供給電力を、外部のAC電源からの電力に切り替える(ステップS105)。また、CPU11は、電力供給の復旧を通知する復電通知データを、BLE通信部142によりBLE通信を介して携帯端末装置20に対して送信させる。これと並行して、CPU11は、Wi-Fi通信部141により、アクセスポイント30とのWi-Fi接続を開始させる(ステップS106)。ステップS106の実行時における売上データ処理システム1の動作状態が、
図5に相当する。
【0051】
一方、携帯端末装置20のCPU21は、ステップS202の処理が終了してBLE接続が開始されると、売上データ処理装置10から復電通知データを受信したか否かを判別する(ステップS203)。復電通知データを受信していないと判別された場合には(ステップS203で“NO”)、CPU21は、再度ステップS203の処理を実行する。
【0052】
復電通知データを受信したと判別された場合には(ステップS203で“YES”)、CPU21は、Wi-Fi通信部241により、アクセスポイント30とのWi-Fi接続を開始させ、次いで売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開させる。また、CPU21は、売上データ処理装置10とのBLE接続を切断させる(ステップS204)。よって、ステップS204の終了時点以降、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、
図1に示すように、Wi-Fi接続を行っている状態となる。
【0053】
Wi-Fi接続が再開されると、CPU21は、停電期間中に生成した売上データのうち、Wi-Fi接続の切断により売上データ管理サーバ2に送信できなかったデータを、まとめて売上データ管理サーバ2に送信する(ステップS205)。
【0054】
ステップS205の処理が終了すると、CPU21は、売上データ処理システム1の動作が継続されるか否かを判別し(ステップS206)、売上データ処理システム1の動作が継続されると判別された場合には(ステップS206で“YES”)、処理をステップS201に戻す。売上データ処理システム1の動作が終了すると判別された場合には(ステップS206で“NO”)、CPU21は、通信接続切替処理を終了させる。
【0055】
また、ステップS106の処理が終了すると、売上データ処理装置10のCPU11は、売上データ処理システム1の動作が継続されるか否かを判別し(ステップS107)、売上データ処理システム1の動作が継続されると判別された場合には(ステップS107で“YES”)、処理をステップS101に戻す。売上データ処理システム1の動作が終了すると判別された場合には(ステップS107で“NO”)、CPU11は、通信接続切替処理を終了させる。
【0056】
なお、
図6のフローチャートでは、ステップS204の処理においてBLE接続を切断したが、これに限られず、電力供給の復旧後にもBLE接続を直ちに切断せずに一定時間利用を継続したり、BLE接続及びWi-Fi接続を併用したりしてもよい。ただし、BLE接続よりもWi-Fi接続の方が通信速度が速いため、Wi-Fi接続を優先的に利用することで効率的なデータ通信を行うことができる。例えば、BLE接続で実行中であった印字データ(売上データ処理装置10においてレシートに印字する内容のデータ)の送信を、電力復旧後も一定時間継続し、切り替え可能なタイミングでWi-Fi接続による送信に切り替えてもよい。また、画像データ等を含む大容量のデータをWi-Fi接続で送信し、その他の小容量のデータをBLE通信により並行して送信してもよい。
このような動作を行うために、ステップS204の処理において、携帯端末装置20のCPU21は、BLE接続に対してWi-Fi接続を優先的に利用して通信処理を行うように自装置の設定を切り替える。この自装置の設定の切り替えは、携帯端末装置20に代えて、又は携帯端末装置20に加えて、売上データ処理装置10において行ってもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る売上データ処理システム1は、外部からの電力供給が停止した場合に予備電源19による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置10と、バッテリー26による動作が可能であり、売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介した第1の通信接続としてのWi-Fi接続を行う携帯端末装置20と、を備え、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20は、アクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合に、アクセスポイント30を介さない直接の無線通信による第2の通信接続としてのBLE接続を開始し、BLE接続の開始後に、電力供給の復旧を売上データ処理装置10が検出した場合に、アクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する。
このように、通常時においてアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を行うことで、1台の売上データ処理装置10と複数の携帯端末装置20とを同時に通信接続させることができるとともに、アクセスポイント30を介して、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20と、外部のサーバ等との間でデータ通信を行うことができる。
また、上記構成によれば、停電等によりアクセスポイント30に対する電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合であっても、BLE接続により売上データ処理装置10と携帯端末装置20との通信接続を維持することができる。よって、停電時においても売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を行うことができ、ユーザ利便性を向上させることができる。また、アクセスポイント30に無停電電源装置を接続して停電時のバックアップを行う必要がないため、無停電電源装置を導入するコストを削減することができる。
また、電力供給の復旧を売上データ処理装置10が検出したことを契機としてWi-Fi接続を再開することで、電力復旧後に確実かつ速やかにBLE接続からWi-Fi接続に移行することができる。よって、停電前から停電期間中、及び停電後に亘って、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を継続することができる。
【0058】
また、売上データ処理装置10は、電力供給の復旧の検出に応じて、アクセスポイント30との間で通信接続を開始し、かつ、電力供給の復旧を通知する復電通知データを携帯端末装置20に対してBLE接続を介して送信し、携帯端末装置20は、復電通知データの受信に応じて、売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する。このように、BLE接続を介して復電通知データを送信することで、携帯端末装置20に対して確実かつ速やかに電力供給の復旧を通知することができる。また、この復電通知データの受信に応じて携帯端末装置20がWi-Fi接続を行うことで、電力供給の復旧後、早期にWi-Fi接続を再開することができる。
【0059】
また、売上データ処理装置10は、自装置が予備電源19による動作に切り替わったことにより、アクセスポイント30に対する電力供給の停止を検出し、自装置が、予備電源19による動作から、外部からの電力供給による動作に切り替わったことにより、アクセスポイント30に対する電力供給の復旧を検出する。これにより、停電時には、Wi-Fi通信部141を用いなくとも、アクセスポイント30に対する電力供給の停止、及びアクセスポイント30とのWi-Fi接続の切断を簡易に検出することができる。また、復電時には、売上データ処理装置10が外部電源による動作に切り替わったことを判別する1つの検出処理で、売上データ処理装置がWi-Fi接続を行うことのできる電力を外部電源から得られていること、及びアクセスポイント30の動作が復旧したこと(復旧したとみなせること)、の双方を一度に担保することができる。
【0060】
また、電力供給の復旧後にWi-Fi接続が再開された場合に、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の少なくとも一方がBLE接続を終了させる。これによれば、使用する周波数帯域が重複するWi-Fi接続とBLE接続との干渉を避けつつ、電力消費量を低減することができる。
【0061】
また、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の少なくとも一方は、電力供給の復旧後にWi-Fi接続が再開された場合に、BLE接続に対してWi-Fi接続を優先的に利用して通信処理を行うように自装置の設定を切り替える。これによれば、BLE接続及びWi-Fi接続を併用しつつ、柔軟かつ効率的なデータ通信を行うことができる。
【0062】
また、第2の通信接続は、第1の通信方式としてのWi-Fiよりも電力消費量の少ない第2の通信方式としてのBLEにより行われる。これによれば、予備電源19及びバッテリー26の電力消費量を抑えて、停電時における売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の動作時間を延ばすことができる。
【0063】
また、アクセスポイント30は、外部のネットワークNに接続されており、第1の通信接続としてのWi-Fi接続が行われている場合に、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の少なくとも一方は、アクセスポイント30を介して、ネットワークNに接続された外部装置とデータ通信を行う。これによれば、アクセスポイント30及びネットワークNを介して、売上データ処理システムの外部に設けられたサーバ等との間でデータ通信を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態に係る売上データ処理装置10は、アクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合に、携帯端末装置20との間でアクセスポイント30を介さないBLE接続を開始し、BLE接続の開始後に電力供給の復旧を検出した場合に、携帯端末装置20との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する。これによれば、電力供給が停止した場合にWi-Fi接続からBLE接続に移行して、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を継続することができるとともに、電力復旧後に確実かつ速やかにWi-Fi接続を再開することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る携帯端末装置20は、アクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合に、売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介さないBLE接続を開始し、BLE接続の開始後に、電力供給の復旧を売上データ処理装置10が検出した場合に、売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する。これによれば、電力供給が停止した場合にWi-Fi接続からBLE接続に移行して、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を継続することができるとともに、電力復旧後に確実かつ速やかにWi-Fi接続を再開することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るプログラム131は、売上データ処理装置10に設けられたコンピュータとしてのCPU11に、アクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合に、携帯端末装置20との間でアクセスポイント30を介さないBLE接続を開始する機能と、BLE接続の開始後に、電力供給の復旧を検出した場合に、携帯端末装置20との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する機能と、を実現させる。これによれば、電力供給が停止した場合にWi-Fi接続からBLE接続に移行して、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を継続することができるとともに、電力復旧後に確実かつ速やかにWi-Fi接続を再開することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るプログラム231は、携帯端末装置20に設けられたコンピュータとしてのCPU21に、アクセスポイント30に対する外部からの電力供給が停止してWi-Fi接続が切断された場合に、売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介さないBLE接続を開始する機能と、BLE接続の開始後に、電力供給の復旧を売上データ処理装置10が検出した場合に、売上データ処理装置10との間でアクセスポイント30を介したWi-Fi接続を再開する機能と、を実現させる。これによれば、電力供給が停止した場合にWi-Fi接続からBLE接続に移行して、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の連携動作を継続することができるとともに、電力復旧後に確実かつ速やかにWi-Fi接続を再開することができる。
【0068】
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る売上データ処理システム、売上データ処理装置、携帯端末装置及びプログラムの一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、第2の通信接続の通信方式は、BLEに限られず、直接の無線通信を用いる任意の通信方式とすることができる。例えば、無線LANのアドホックモード、Wi-Fiダイレクト(登録商標)、又はBluetoothなどを用いてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、携帯端末装置20は、復電通知データの受信に応じてアクセスポイント30及び売上データ処理装置10とのWi-Fi接続を再開する例を用いて説明したが、これに限られず、復電時にアクセスポイント30から発信されるビーコンを検出してアクセスポイント30とのWi-Fi接続を開始し、さらに売上データ処理装置10とのWi-Fi接続を試みるようにしてもよい。
【0070】
また、売上データ処理装置10は、必ずしも予備電源19を備えていなくてもよく、予備電源としての無停電電源装置が外付けされた構成とし、停電時に当該無停電電源装置から電力の供給を受けるようになっていてもよい。
【0071】
また、売上データ処理装置10とアクセスポイント30との間の通信接続は無線通信に限られず、有線の通信接続であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、売上データ処理システム1が中継通信装置としてのアクセスポイント30を備える例を用いて説明したが、これに限られず、アクセスポイント30は売上データ処理システム1の外部に設けられていてもよい。すなわち、売上データ処理システム1は、当該売上データ処理システム1の外部に設けられたアクセスポイント30を介してWi-Fi接続を行う売上データ処理装置10及び携帯端末装置20を備えていてもよい。
【0073】
また、売上データ処理装置10に対する電源供給が維持された状態でアクセスポイント30に対する電源供給が停止した場合(例えば、アクセスポイント30の電源プラグが意図せずに外れた場合など)に、上記実施形態と同様の通信接続の切替動作を行ってもよい。この場合には、売上データ処理装置10は、アクセスポイント30とのWi-Fi接続が切断されたことによって、アクセスポイント30に対する電源供給の停止を検出し、この検出を契機にアドバタイジングパケットを発信して携帯端末装置20とのBLE接続を開始する。その後、売上データ処理装置10は、継続的にアクセスポイント30とのWi-Fi接続の再開を試み、Wi-Fi接続が再開できたことによって、電源供給の復旧を検出する。電源供給の復旧を検出した後の動作は、上記実施形態と同様である。
【0074】
また、上記実施形態における売上データ処理システム1、売上データ処理装置10及び携帯端末装置20の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【0075】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備え、
前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置は、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に、前記電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする売上データ処理システム。
<請求項2>
前記売上データ処理装置は、前記電力供給の復旧の検出に応じて、前記中継通信装置との間で通信接続を開始し、かつ、前記電力供給の復旧を通知する復電通知データを前記携帯端末装置に対して前記第2の通信接続を介して送信し、
前記携帯端末装置は、前記復電通知データの受信に応じて、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする請求項1に記載の売上データ処理システム。
<請求項3>
前記売上データ処理装置は、
自装置が前記予備電源による動作に切り替わったことにより、前記中継通信装置に対する前記電力供給の停止を検出し、
自装置が、前記予備電源による動作から、外部からの電力供給による動作に切り替わったことにより、前記中継通信装置に対する前記電力供給の復旧を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の売上データ処理システム。
<請求項4>
前記電力供給の復旧後に前記第1の通信接続が再開された場合に、前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置の少なくとも一方が前記第2の通信接続を終了させることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
<請求項5>
前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置の少なくとも一方は、前記電力供給の復旧後に前記第1の通信接続が再開された場合に、前記第2の通信接続に対して前記第1の通信接続を優先的に利用して通信処理を行うように自装置の設定を切り替えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
<請求項6>
前記第1の通信接続は、第1の通信方式により行われ、
前記第2の通信接続は、前記第1の通信方式よりも電力消費量の少ない第2の通信方式により行われることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
<請求項7>
前記中継通信装置は、外部のネットワークに接続された、無線通信のアクセスポイントであり、
前記第1の通信接続が行われている場合に、前記売上データ処理装置及び前記携帯端末装置の少なくとも一方は、前記中継通信装置を介して、前記ネットワークに接続された外部装置とデータ通信を行うことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の売上データ処理システム。
<請求項8>
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる売上データ処理装置であって、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に前記電力供給の復旧を検出した場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする売上データ処理装置。
<請求項9>
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる携帯端末装置であって、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始し、
前記第2の通信接続の開始後に、前記電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開することを特徴とする携帯端末装置。
<請求項10>
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる売上データ処理装置に設けられたコンピュータに、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始する機能と、
前記第2の通信接続の開始後に、前記電力供給の復旧を検出した場合に、前記携帯端末装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
<請求項11>
外部からの電力供給が停止した場合に予備電源による動作の継続が可能であり、商取引の売上データの処理を行う売上データ処理装置と、
内部電源による動作が可能であり、前記売上データ処理装置との間で所定の中継通信装置を介した第1の通信接続を行う携帯端末装置と、
を備えた売上データ処理システムに用いられる携帯端末装置に設けられたコンピュータに、
前記中継通信装置に対する外部からの電力供給が停止して前記第1の通信接続が切断された場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介さない直接の無線通信による第2の通信接続を開始する機能と、
前記第2の通信接続の開始後に、前記電力供給の復旧を前記売上データ処理装置が検出した場合に、前記売上データ処理装置との間で前記中継通信装置を介した前記第1の通信接続を再開する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0076】
1 売上データ処理システム
2 売上データ管理サーバ(外部装置)
3 カード情報管理サーバ(外部装置)
10 売上データ処理装置
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
131 プログラム
14 通信部
141 Wi-Fi通信部
142 BLE通信部
151 操作表示部
152 顧客用表示部
16 印刷部
17 ドロア
18 電源部
182 検出回路
183 電源プラグ
19 予備電源
20 携帯端末装置
21 CPU
22 RAM
23 記憶部
231 プログラム
24 通信部
241 Wi-Fi通信部
242 BLE通信部
25 操作表示部
26 バッテリー(内部電源)
30 アクセスポイント(中継通信装置)
B1、B2 バス
N ネットワーク