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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】測定装置、プリンター、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20231219BHJP
   G01J 3/52 20060101ALI20231219BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01J3/50
G01J3/52
B41J2/525
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019232806
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101171
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 隆史
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009461(JP,A)
【文献】特開2014-133396(JP,A)
【文献】特開2012-142920(JP,A)
【文献】特開2017-134078(JP,A)
【文献】特開2016-132169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
B41J 2/00-2/525
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象における所定の測定位置からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、
前記分光測定部を前記測定対象に対して第一方向に沿って相対移動させることで、前記測定位置を前記測定対象上で移動させる移動機構と、
前記分光測定部による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出するエラー検出部と、
前記分光測定部及び前記移動機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定対象が前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された特定波長の光を測定させる第一測定処理を実施させて、前記第一測定処理により得られる前記特定波長に対する測定値と、前記第一測定処理が実施された時の前記測定対象に対する前記分光測定部の相対位置とを取得し、前記測定エラーが検出された場合に、前記測定値の変化量が閾値以上となる前記相対位置まで、前記分光測定部を、前記第一方向とは逆の第二方向に相対移動させた後、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記分光測定部は、前記第一測定処理と、前記分光波長を複数の波長に切り替えてそれぞれの波長の光を測定する第二測定処理と、を実施し、
前記制御部は、前記分光測定部による前記測定位置が前記カラーパッチの所定の測定対象位置に位置した際に、前記分光測定部に前記第二測定処理を実施させ、前記第二測定処理が実施されていない間、前記分光測定部に前記第一測定処理を実施させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定装置において、
前記移動機構は、前記分光測定部を相対移動させる時に、移動開始位置から所定の加速距離までの間で前記分光測定部を加速させた後、一定の移動速度で前記分光測定部を相対移動させ、
前記制御部は、前記測定エラーが検出された場合、少なくとも前記加速距離以上、前記分光測定部を前記第二方向に相対移動させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記第一方向に並ぶ複数のカラーパッチを1つのパッチ群として、
前記パッチ群は、前記第一方向に直交する第三方向に複数設けられ、
前記分光測定部は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定する分光器を複数備え、
複数の前記分光器は、前記第三方向に沿って配置され、それぞれ異なるパッチ群に対向している
ことを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定装置において、
前記制御部は、複数の前記分光器に、それぞれ前記第一測定処理を実施させて、複数の前記分光器のそれぞれで得られる前記測定値と、前記第一測定処理が実施された時の前記測定対象に対する前記分光測定部の相対位置と、を取得し、前記測定エラーが検出された場合に、少なくとも1つの前記分光器の前記第一測定処理で取得された前記測定値の変化量が閾値以上となる前記相対位置まで、前記分光測定部を、前記第二方向に相対移動させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の測定装置と、
前記測定対象に、前記第一方向に沿った複数のカラーパッチを含むカラーチャートを形成する印刷部と、
を備えることを特徴とするプリンター。
【請求項7】
請求項6に記載のプリンターにおいて、
前記印刷部は、前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチとして、所定の色を有する複数の測定パッチと、白色又は黒色を有する複数の復帰検出パッチとを含み、前記復帰検出パッチの前記第一方向及び前記第二方向に前記測定パッチが隣り合って配置される前記カラーチャートを形成する
ことを特徴とするプリンター。
【請求項8】
請求項7に記載のプリンターにおいて、
前記印刷部は、前記第一方向に沿った複数の前記カラーパッチを1つのパッチ群として、前記第一方向に直交する第三方向に複数の前記パッチ群が並び、前記第三方向から複数の前記パッチ群を見た投影視で、複数の前記パッチ群の前記復帰検出パッチが重ならない位置に配置された前記カラーチャートを形成する
ことを特徴とするプリンター。
【請求項9】
測定対象における所定の測定位置からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を第一方向に沿って相対移動させることで、前記測定位置を前記測定対象上で移動させる移動機構と、前記分光測定部による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出するエラー検出部と、を備える測定装置の測定方法であって、
前記測定対象が前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された特定波長の光を測定させる第一測定処理を実施させて、前記第一測定処理により得られる前記特定波長に対する測定値と、前記第一測定処理が実施された時の前記測定対象に対する前記分光測定部の相対位置と、を取得し、前記測定エラーが検出された場合に、前記測定値の変化量が閾値以上となる前記相対位置まで、前記分光測定部を、前記第一方向とは逆の第二方向に相対移動させた後、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させる
ことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、プリンター、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メディア上に印刷されたカラーパッチの測色を行う測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の測定装置は、行方向及び列方向に並んで形成されたカラーパッチを手動測色器により測定する装置である。この測定装置では、手動測色器を行方向に沿って移動させながら、行方向に並ぶ各カラーパッチに対する測定を行い、測色値を測色結果テーブルに記憶する。また、測定装置は、測色値が異常か正常の判定を行い、異常である場合に、測色不可(測定エラー)として、測色結果テーブルに記憶する。そして、測定装置は、測色結果テーブルを読み出して測色結果が異常なカラーパッチを検出し、異常なカラーパッチを表示したチャート画像をディスプレイに表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-258683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の測定装置では、測色器により全てのカラーパッチの測定を行った後、測定エラーのカラーパッチを表示させるので、ユーザーは、測定エラーがあったカラーパッチに測色器を移動させて再度測色を行う必要があった。
また、一般に、測色対象となるカラーパッチには、座標情報がないものが多く、測定エラーとなったカラーパッチの位置に測色器を移動させることは困難である、との課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様に係る測定装置は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記分光測定部を前記測定対象に対して第一方向に沿って相対移動させる移動機構と、前記分光測定部による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出するエラー検出部と、前記分光測定部及び前記移動機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記測定対象が前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された特定波長の光を測定させる第一測定処理を実施させて、前記第一測定処理により得られる前記特定波長に対する測定値と前記分光測定部の位置とを取得し、前記測定エラーが検出された場合に、前記測定値の変化量が閾値以上となる位置まで、前記分光測定部を、前記第一方向とは逆の第二方向に移動させた後、前記分光測定部を前記第一方向に移動させる。
【0007】
第二態様に係るプリンターは、第一態様の測定装置と、前記測定対象に、前記第一方向に沿った複数のカラーパッチを含むカラーチャートを形成する印刷部と、を備える。
【0008】
第三態様に係る測定方法は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を第一方向に沿って相対移動させる移動機構と、前記分光測定部による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出するエラー検出部と、を備える測定装置の測定方法であって、前記測定対象が前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された特定波長の光を測定させる第一測定処理を実施させて、前記第一測定処理により得られる前記特定波長に対する測定値と、前記分光測定部の位置と、を取得し、前記測定エラーが検出された場合に、前記測定値の変化量が閾値以上となる位置まで、前記分光測定部を、前記第一方向とは逆の第二方向に移動させた後、前記分光測定部を前記第一方向に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態のプリンターの概略構成を示す外観図。
図2】第一実施形態のプリンターの概略構成を示すブロック図。
図3】第一実施形態の分光器の概略構成を示す断面図。
図4】第一実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
図5】第一実施形態における制御ユニットの機能構成を示したブロック図。
図6】第一実施形態のプリンターにおける測定方法を示すフローチャート。
図7】第一実施形態におけるカラーチャートの一例を示す図。
図8】第一実施形態で測定エラーが発生した場合のキャリッジの動きを模式的に示す図。
図9】各カラーパッチに対する測定値及び測定値の変化量の一例を示す図。
図10】第二実施形態のキャリッジの構成を示す模式図。
図11】第二実施形態のカラーチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態について説明する。本実施形態では、測定装置を備えたプリンター10について、以下説明する。
【0011】
[プリンター10の概略構成]
図1は、本実施形態のプリンター10の外観の構成例を示す図である。図2は、本実施形態のプリンター10の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プリンター10は、供給ユニット11、搬送ユニット12と、キャリッジ13と、キャリッジ移動ユニット14と、制御ユニット15(図2参照)と、を備えている。このプリンター10は、例えばパーソナルコンピューター等の外部機器20から入力された印刷データに基づいて、各ユニット11,12,14及びキャリッジ13を制御し、媒体A上に画像を印刷する。また、本実施形態のプリンター10は、予め設定された較正用データに基づいて媒体A上の所定位置に測色用のカラーパッチ31(図7等参照)を形成し、かつ当該カラーパッチ31に対する分光測定を行う。これにより、プリンター10は、カラーパッチ31に対する実測値である測定値と、較正用データとを比較して、印刷されたカラーに色ずれがあるか否か判定し、色ずれがある場合は、実測値に基づいて色補正を行う。
以下、プリンター10の各構成について具体的に説明する。
【0012】
供給ユニット11は、測定対象である媒体Aを、画像形成位置に供給するユニットである。この供給ユニット11は、例えば、媒体Aが巻装されたロール体111、図示略のロール駆動モーター、及び図示略のロール駆動輪列等を備える。そして、制御ユニット15からの指令に基づいて、ロール駆動モーターが回転駆動され、ロール駆動モーターの回転力がロール駆動輪列を介してロール体111に伝達される。これにより、ロール体111が回転し、ロール体111に巻装された媒体Aが+Y側に供給される。
なお、本実施形態では、ロール体111に巻装された紙面を供給する例を示すがこれに限定されない。例えば、トレイ等に積載された紙面等の媒体Aをローラー等によって例えば1枚ずつ供給する等、如何なる供給方法によって媒体Aが供給されてもよい。
また、本実施形態の媒体Aは、印刷用紙等の紙の他、フィルムや布等を用いることができる。
【0013】
搬送ユニット12は、供給ユニット11から供給された媒体Aを、+Y側に送り出す。この搬送ユニット12は、搬送ローラー121と、搬送ローラー121と媒体Aを挟んで配置され、搬送ローラー121に従動する図示略の従動ローラーと、プラテン122と、を含んで構成されている。
搬送ローラー121は、図示略の搬送モーターからの駆動力が伝達され、制御ユニット15の制御により搬送モーターが駆動されると、その回転力により回転駆動されて、従動ローラーとの間に媒体Aを挟み込んだ状態でY方向に沿って搬送する。Y方向は、本開示の第三方向に相当する。また、搬送ローラー121の+Y側には、キャリッジ13に対向するプラテン122が設けられている。
【0014】
キャリッジ13は、本開示の分光測定部に相当し、媒体Aに対して画像を印刷する印刷部16と、媒体A上の所定の測定領域R(図2参照)の分光測定を行う分光器17と、を備えている。なお、測定領域Rは、本開示の測定位置に相当する。本実施形態では、分光測定部であるキャリッジ13が1つの分光器を備える例を示す。
このキャリッジ13は、キャリッジ移動ユニット14によって、Y方向と交差するX方向に沿って移動可能に設けられている。なお、キャリッジ13の移動可能範囲内において、-X側の端部はキャリッジ13の待機位置であり、待機位置から+X側に向かう方向が本開示の第一方向である。また、キャリッジ13が所定位置から待機位置に戻る方向、つまり、所定位置から-X側に向かう方向が、本開示の第二方向である。さらに、キャリッジ13がX方向に沿って移動可能とは、キャリッジ移動ユニット14によって、キャリッジ13が+X側に移動可能であり、かつ-X側にも移動可能であることを意味する。
また、キャリッジ13は、フレキシブル回路131により制御ユニット15に接続されている。キャリッジ13は、制御ユニット15からの指令に基づいて、印刷部16による印刷処理(媒体Aに対する画像形成処理)及び、分光器17による分光測定処理を実施する。
なお、キャリッジ13に搭載される印刷部16及び分光器17の詳細な構成については後述する。
【0015】
キャリッジ移動ユニット14は、本開示の移動機構を構成し、制御ユニット15からの指令に基づいて、キャリッジ13をX方向に沿って往復移動させる。
このキャリッジ移動ユニット14は、例えば、キャリッジガイド軸141と、キャリッジモーター142と、タイミングベルト143と、を含んで構成されている。
キャリッジガイド軸141は、X方向に沿って配置され、両端部がプリンター10の筐体に固定されている。キャリッジモーター142は、タイミングベルト143を駆動させる。タイミングベルト143は、キャリッジガイド軸141と略平行に支持され、キャリッジ13の一部が固定されている。そして、制御ユニット15の指令に基づいてキャリッジモーター142が駆動されると、タイミングベルト143が正逆走行され、タイミングベルト143に固定されたキャリッジ13がキャリッジガイド軸141にガイドされて往復移動する。
【0016】
次に、キャリッジ13に搭載される印刷部16及び分光器17の構成について説明する。
[印刷部16の構成]
印刷部16は、媒体Aと対向して配置され、インクを個別に媒体A上に吐出して、媒体A上に画像を形成する。
この印刷部16は、複数色のインクに対応したインクカートリッジ161が着脱自在に装着されており、各インクカートリッジ161からインクタンク(図示略)にチューブ(図示略)を介してインクが供給される。また、印刷部16の下面(媒体Aに対向する位置)には、インク滴を吐出するノズル(図示略)が、各色に対応して設けられている。これらのノズルには、例えばピエゾ素子が配置されており、ピエゾ素子を駆動させることで、インクタンクから供給されたインク滴が吐出されて媒体Aに着弾し、ドットが形成される。
【0017】
[分光器17の構成]
図3は、分光器17の概略構成を示す断面図である。
分光器17は、図3に示すように、光源部171と、光学フィルターデバイス172、受光部173と、導光部174と、を備えている。
この分光器17は、光源部171から媒体A上に照明光を照射し、媒体Aで反射された光成分を、導光部174により光学フィルターデバイス172に入射させる。そして、光学フィルターデバイス172は、この反射光から所定波長の光を出射(透過)させて、受光部173により受光させる。また、光学フィルターデバイス172は、制御ユニット15の制御に基づいて、透過波長を選択可能であり、可視光における各波長の光の光量を測定することで、媒体A上の測定領域Rの分光測定が可能となる。
【0018】
[光源部171の構成]
光源部171は、光源171Aと、集光部171Bとを備える。この光源部171は、光源171Aから出射された光を媒体Aの測定領域R内に、媒体Aの表面に対する法線方向から照射する。
光源171Aとしては、可視光域の発光スペクトルが、複数のピーク波長を有する光源が好ましく、より好ましくは、複数のピーク波長がそれぞれ80nm以上離間して現れる光源である。このような光源として、例えば、紫外LEDとRGB蛍光体とを組み合わせた白色LED等が例示でき、その他、蛍光灯等の光源を用いてもよい。
集光部171Bは、例えば集光レンズ等により構成され、光源171Aからの光を測定領域Rに集光させる。なお、図3においては、集光部171Bでは、1つのレンズ(集光レンズ)のみを表示するが、複数のレンズを組み合わせて構成されていてもよい。
なお、本実施形態では、分光器17に光源部171が含まれる例を示すがこれに限定されない。例えば、光源部171は、分光器17とは別にキャリッジ13に搭載されていてもよい。
【0019】
[光学フィルターデバイス172の構成]
図4は、光学フィルターデバイス172の概略構成を示す断面図である。
光学フィルターデバイス172は、筐体6と、筐体6の内部に収納された波長可変干渉フィルター5とを備えている。
【0020】
波長可変干渉フィルター5は、波長可変型のファブリーペローエタロン素子であり、図4に示すように、透光性の第一基板51及び第二基板52を備え、これらの第一基板51及び第二基板52が、接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
第一基板51は、エッチングにより形成された第一溝部511、及び第一溝部511より溝深さが浅い第二溝部512を備えている。そして、第一溝部511には、第一電極561が設けられ、第二溝部512には、第一反射膜54が設けられている。
第一電極561は、例えば第二溝部512を囲う環状に形成されており、第二基板52に設けられた第二電極562に対向する。
第一反射膜54は、例えばAg等の金属膜、Ag合金等の合金膜、高屈折層及び低屈折層を積層した誘電体多層膜、又は、金属膜(合金膜)と誘電体多層膜を積層した積層体により構成されている。
【0021】
第二基板52は、可動部521と、可動部521の外に設けられ、可動部521を保持するダイアフラム部522とを備えている。
可動部521は、ダイアフラム部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。この可動部521は、第一電極561の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されており、可動部521の第一基板51に対向する面に、第二電極562及び第二反射膜55が設けられている。
第二電極562は、第一電極561に対向する位置に設けられている。
第二反射膜55は、第一反射膜54に対向する位置に、ギャップGを介して配置されている。この第二反射膜55としては、上述した第一反射膜54と同一の構成の反射膜を用いることができる。
また、第一反射膜54及び第二反射膜55として金属膜を用いる場合、又は誘電体多層膜の表面に透明電極を設ける場合では、これらの第一反射膜54及び第二反射膜55を静電容量検出用の電極として機能させてもよい。
【0022】
ダイアフラム部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このようなダイアフラム部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を第一基板51側に変位させることが可能となる。これにより、第一反射膜54及び第二反射膜55の平行度を維持した状態で、ギャップGのギャップ寸法を変更することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状のダイアフラム部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点を中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
また、第二基板52の外周部(第一基板51に対向しない領域)には、第一電極561や第二電極562と個別に接続された複数の電極パッド57が設けられている。
【0023】
筐体6は、図4に示すように、ベース61と、ガラス基板62と、を備えている。これらのベース61及びガラス基板62は、例えばガラスフリット(低融点ガラス)を用いた低融点ガラス接合、エポキシ樹脂等による接着などを利用でき、これにより、内部に収容空間が形成され、この収容空間内に波長可変干渉フィルター5が収納される。
【0024】
ベース61は、例えば薄板上にセラミックを積層することで構成され、波長可変干渉フィルター5を収納可能な凹部611を有している。波長可変干渉フィルター5は、ベース61の凹部611の例えば側面に固定材64により固定されている。
ベース61の凹部611の底面には、光通過孔612が設けられている。この光通過孔612は、波長可変干渉フィルター5の反射膜54,55と重なる領域を含むように設けられている。また、ベース61のガラス基板62とは反対側の面には、光通過孔612を覆うカバーガラス63が接合されている。
【0025】
また、ベース61には、波長可変干渉フィルター5の電極パッド57に接続される内側端子部613が設けられており、この内側端子部613は、導通孔614を介して、ベース61の外側に設けられた外側端子部615に接続されている。この外側端子部615は、制御ユニット15に電気的に接続されている。
【0026】
[受光部173及び導光部174の構成]
図3に戻り、受光部173は、波長可変干渉フィルター5の光軸上に配置され、当該波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する。そして、受光部173は、制御ユニット15の制御に基づいて、受光量に応じた検出信号を出力する。
受光部173から出力された検出信号は、I-V変換器、増幅器、及びAD変換器により信号処理された後、図示略のサンプルアンドホールド回路で、所定のサンプリング周波数でサンプリングされる。サンプリングされた検出信号の信号値は、制御ユニット15に出力される。
導光部174は、反射鏡174Aと、バンドパスフィルター174Bとを備えている。
この導光部174は、測定領域Rで、媒体Aの表面に対して45°で反射された光を反射鏡174Aにより、波長可変干渉フィルター5の光軸上に反射させる。バンドパスフィルター174Bは、例えば可視光域(例えば380nm~720nm)の光を透過させ、紫外光及び赤外光の光をカットする。これにより、波長可変干渉フィルター5には、可視光域の光が入射されることになり、受光部173において、可視光域における波長可変干渉フィルター5により選択された波長の光が受光される。
【0027】
[制御ユニットの構成]
制御ユニット15は、本開示の制御部であり、図2に示すように、I/F151と、ユニット制御回路152と、記憶部153と、プロセッサー154と、を含んで構成されている。
I/F151は、外部機器20から入力される印刷データをプロセッサー154に入力する。
ユニット制御回路152は、供給ユニット11、搬送ユニット12、印刷部16、光源171A、波長可変干渉フィルター5、受光部173、及びキャリッジ移動ユニット14をそれぞれ制御する制御回路を備えており、プロセッサー154からの指令信号に基づいて、各ユニットの動作を制御する。なお、各ユニットの制御回路が、制御ユニット15とは別体に設けられ、制御ユニット15に接続されていてもよい。
【0028】
記憶部153は、例えば半導体メモリーやハードディスクなどの情報記憶装置であり、プリンター10の動作を制御する各種プログラムや各種データが記憶されている。
各種データとしては、例えば、波長可変干渉フィルター5を制御する際の、静電アクチュエーター56への印加電圧に対する、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長を示したV-λデータ、印刷データとして含まれる色データに対する各インクの吐出量を記憶した印刷プロファイルデータ等が挙げられる。また、光源171Aの各波長に対する発光特性(発光スペクトル)や、受光部173の各波長に対する受光特性(受光感度特性)等が記憶されていてもよい。
【0029】
図5は、プリンター10の制御ユニット15の機能構成を示したブロック図である。
プロセッサー154は、記憶部153に記憶された各種プログラムを読み出し実行することで、図5に示すように、制御ユニット15を、走査制御部181、印刷制御部182、分光器制御部183、測定値算出部184、エラー検出部185、判定部186、測色部187、及び較正部188等として機能させる。
【0030】
走査制御部181は、供給ユニット11、搬送ユニット12、及びキャリッジ移動ユニット14を駆動させる旨の指令信号をユニット制御回路152に出力する。これにより、ユニット制御回路152は、供給ユニット11のロール駆動モーターを駆動させて、媒体Aを搬送ユニット12に供給させる。また、ユニット制御回路152は、搬送ユニット12の搬送モーターを駆動させて、媒体Aの所定領域をプラテン122のキャリッジ13に対向する位置まで、Y方向に沿って搬送させる。また、ユニット制御回路152は、キャリッジ移動ユニット14のキャリッジモーター142を駆動させて、キャリッジ13をX方向に沿って移動させる。
なお、走査制御部181は、印刷部16による印刷処理時、及び分光器17による分光測定時でのキャリッジ13の移動速度が一定速度となるように、キャリッジ13を移動させる。つまり、走査制御部181は、キャリッジ移動ユニット14に速度指令値を含む指令信号を出力する。これにより、キャリッジ移動ユニット14は、所定時間でキャリッジ13を加速させ、速度指令値に応じた移動速度になると、キャリッジ13を等速移動させる。この加速期間は予め決められた時間であり、加速期間で移動されるキャリッジ13の移動量は、既知の距離(以降、加速距離と称す)になる。
【0031】
印刷制御部182は、例えば外部機器20から入力された印刷データに基づいて、印刷部16を制御する旨の指令信号をユニット制御回路152に出力する。また、本実施形態では、印刷制御部182は、予め設定された所定色のカラーパッチ31を所定位置に形成する旨の較正用データに基づいて、媒体A上にカラーパッチ31を形成する。なお、較正用データとしては、記憶部153に記憶されていてもよく、外部機器20から入力されてもよい。
カラーパッチ31についての詳細な説明は後述する。
印刷制御部182からユニット制御回路152に指令信号が出力されると、ユニット制御回路152は、印刷部16に印刷制御信号を出力し、ノズルに設けられたピエゾ素子を駆動させて媒体Aに対してインクを吐出させる。なお、印刷を実施する際は、キャリッジ13がX方向に沿って移動されて、その移動中に印刷部16からインクを吐出させてドットを形成するドット形成動作と、媒体AをY方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像を媒体Aに印刷する。
【0032】
分光器制御部183は、波長可変干渉フィルター5を透過させる光の波長に対する静電アクチュエーター56への駆動電圧を、記憶部153のV-λデータから読み出し、ユニット制御回路152に指令信号を出力する。これにより、ユニット制御回路152は、波長可変干渉フィルター5に指令された駆動電圧を印加し、波長可変干渉フィルター5から所望の透過波長の光が透過される。
具体的には、分光器制御部183は、判定部186により、測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に移動したと判定された場合に、カラーパッチ31に対する分光測定処理(本測定処理)を実施する。この本測定処理は、本開示の第二測定処理に相当し、カラーパッチ31の色を測定するための測定処理であり、例えば380nmから680nmの可視光域で20nm間隔となる各波長に対する光量を測定する測定処理である。
また、分光器制御部183は、カラーパッチ31に対する本測定処理を実施していない間、測定領域Rの位置を判定するために、分光器17の分光波長を、予め設定された特定波長に切り替えて分光測定処理(副測定処理)を実施する。この副測定処理は、本開示の第一測定処理に相当する。
【0033】
測定値算出部184は、分光器17の分光処理により得られる測定値と、分光器17の分光波長とを対応付けて記憶部153に記憶する。
なお、分光器17の分光波長は、分光器制御部183により設定される、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長である。
本実施形態では、分光器17の分光処理により得られる測定値は、分光器17から出力される検出信号の信号値に基づいて算出される。具体的には、測定値算出部184は、所定のサンプリング時間の間にサンプリングされた所定数の検出信号の代表値を、分光波長の測定値として採用する。この代表値は、信号値の平均値であってもよく、信号値の最頻値であってもよい。例えば、本実施形態では、サンプリング時間に、10個の検出信号がサンプリングされ、これらの検出信号の信号値の平均値を測定値として採用する。
【0034】
エラー検出部185は、分光器17による本測定処理時が適切に実施できていない場合に出力される測定エラーを検出する。
この測定エラーとしては、例えば、分光器17が適正な分光測定処理を実施できない場合に、分光器17から出力する測定エラーが例示できる。つまり、分光器17の測定中に振動などの外乱が加わると、波長可変干渉フィルター5のギャップGが変動するので、適切な分光測定処理が実施できない。よって、分光器17は、分光測定中に分光器17の振動を測定し、測定された振動振幅が所定値以上である場合、及び、振動が所定時間以上継続して続く場合に、測定エラーを出力する。
【0035】
なお、分光器17による振動の測定としては特に限定されない。例えば、第一反射膜54及び第二反射膜55を静電容量検出用の電極として機能させる場合、第一反射膜54及び第二反射膜55の間の静電容量の変動から振動を検出してもよい。或いは、分光器17又はキャリッジ13に、ジャイロセンサー等の振動を検出する振動検出センサーが設けられていてもよい。
また、分光器17の振動によるエラーのみならず、その他の原因により測定値に誤差が含まれてエラーとなる場合もあり、当該エラーを測定エラーとして検出してもよい。例えば、本実施形態では、各カラーパッチは較正用データに基づいて印刷されるので、各カラーパッチの色は既知である。したがって、エラー検出部185は、本測定処理によって得られる測定値に基づいた色と、較正用データに基づいた色との色差が所定値を超える場合に、測定エラーを検出してもよい。
【0036】
判定部186は、分光器17による測定領域Rが、カラーパッチ31の領域内であるか否か、つまり、カラーパッチ31から位置ずれして一部がはみ出ていないかを判定する。
測色部187は、カラーパッチ31に対する測定処理で得られた測定値に基づいて、カラーパッチ31における色度を測定する。
較正部188は、測色部187による測色結果と、較正用データとに基づいて、印刷プロファイルデータを補正(更新)する。
なお、制御ユニット15における各機能構成の詳細な動作については後述する。
【0037】
[測定方法]
次に、本実施形態のプリンター10における分光測定方法について、図面に基づいて説明する。
図6は、プリンター10における分光測定方法を示すフローチャートである。
なお、本実施形態では、測定対象となる波長域は400nmから700nmの可視光域であり、初期波長を700nmとして、20nm間隔となる16個の波長の光の光量に基づいて分光測定を実施する例を示す。
【0038】
本実施形態の測定方法では、まず、プリンター10は、媒体A上にカラーパッチ31を含むカラーチャートを形成する。
これには、走査制御部181は、媒体Aを所定位置にセットする(ステップS1)。すなわち、走査制御部181は、供給ユニット11、搬送ユニット12を制御して、媒体Aを+Y側に搬送し、媒体Aの所定の印刷開始位置をプラテン122上にセットする。また、走査制御部181は、キャリッジ13を、例えば-X側端部に位置する初期位置に移動させる。
【0039】
この後、印刷制御部182は、記憶部153から較正用データを読み出し、走査制御部181による制御と同期して、カラーチャートを媒体A上に印刷する(ステップS2)。
すなわち、走査制御部181は、キャリッジ13を+X側に所定速度で走査させる。印刷制御部182は、走査開始からの時間、または、モーター駆動量に応じて印刷部16の位置を特定し、較正用データに基づく画像形成位置に、較正用データに基づく色のインクを吐出させてドットを形成する。また、走査制御部181は、キャリッジ13が+X側端部まで移動されると、供給ユニット11及び搬送ユニット12を制御して媒体Aを+Y側に搬送する。そして、走査制御部181は、キャリッジ13を-X側に走査させ、印刷制御部182は、較正用データに基づいて、所定位置にドットを形成する。
以上のようなドット形成動作と搬送動作を繰り返すことで、媒体A上にカラーチャートが形成される。
【0040】
図7は、本実施形態において形成されるカラーチャートの一例を示す図である。
本実施形態では、図7に示すように、複数色のカラーパッチ31がX方向に沿って隙間なく配置されることで、パッチ群30を形成する。また、Y方向に沿って、複数のパッチ群30を形成する。また、パッチ群30に配置されるカラーパッチ31には、測定パッチ31Aと、復帰検出パッチ31Bとが含まれる。測定パッチ31Aは、印刷部16の印刷補正のための測色を行うカラーパッチ31であり、それぞれ異なる色で形成される。復帰検出パッチ31Bは、白色または黒色のカラーパッチ31であり、1つのパッチ群30Aに複数配置されている。例えば、複数の復帰検出パッチ31Bは、所定数の測定パッチ31Aを挟んで一定の間隔で配置されている。
また、カラーチャート3には、パッチ群30の-X側でY方向に平行な直線状のスタートバー32、及びパッチ群30の+X側でY方向に平行な直線状のゴールバー33が設けられている。スタートバー32及びゴールバー33は、特定波長に対する反射率が、媒体Aと異なる色で形成されており、例えば、白色紙面の媒体Aに対して、黒色のスタートバー32及びゴールバー33が形成されている。
なお、以降の説明にあたり、パッチ群30は、Y方向にJ行配置されており、測定対象となるパッチ群30の行数を、変数j(jは1~Jの整数)で示す。
【0041】
図6に戻り、ステップS2の後、走査制御部181は、変数jを初期化してj=1を設定する(ステップS3)。
そして、走査制御部181は、搬送ユニット12を制御して、媒体AをY方向に沿って搬送し、カラーパッチ31の第j行目を、プラテン122の走査直線上に移動させ、さらに、キャリッジ13を所定の初期位置(例えば、-X側端部)に移動させる(ステップS4)。この走査直線は、キャリッジ13をX方向に移動させた際に、分光器17による測定領域Rが移動する仮想直線である。
【0042】
ステップS4の後、制御ユニット15は、キャリッジ13をX方向に沿って移動させ、これと同時に、分光器17の分光波長を位置判定用の特定波長として副測定処理を実施する(ステップS5)。
つまり、走査制御部181は、キャリッジ13をX方向に沿って移動させる。分光器制御部183は、予め設定された特定波長に対応する駆動電圧を、静電アクチュエーター56に印加する。そして、測定値算出部184は、分光器17から出力された検出信号をサンプリングし、サンプリングされた所定数の検出信号の信号値に基づいて、特定波長に対するそれぞれの測定値を算出する。
なお、この特定波長は、位置判定用の波長であり、例えば、光源171Aの発光スペクトルのピーク波長またはピーク波長近傍の波長を用いることが好ましい。
【0043】
また、測定値算出部184は、特定波長に対する測定値が算出される毎に、測定値の変化量ΔVをさらに算出する(ステップS6)。
具体的には、測定値算出部184は、測定値算出部184によって、n回目に測定された測定値V(n)と、n-1回目に測定された測定値V(n-1)とに基づいて、ΔV=|V(n)-V(n-1)|により、変化量ΔVを算出する。算出された測定値の変化量ΔVは、分光器17のX方向に対する位置、つまり、キャリッジ13のX方向に対する位置とともに記憶部153に記憶される。
【0044】
次に、判定部186は、分光器17による測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に位置しているか否かを判定する(ステップS7)。
これには、例えば、判定部186は、測定値算出部184により算出される特定波長に対する測定値の変化量ΔVが、所定時間の間、所定の第二閾値を上回り、その後、変化量ΔVが第二閾値以下である第三閾値を下回ったか否かを判定する。つまり、測定領域Rがカラーパッチ31の境界を跨いで、1つのカラーパッチ31から、当該カラーパッチ31に隣り合う、異なる色のカラーパッチ31に移動すると、測定領域R内に、カラーパッチ31間の境界が含まれる間、測定値が単調増加、又は単調減少する。一方、測定領域Rの全体が境界を越えて次のカラーパッチ31に移動すると、測定値は一定又は略一定値となる。したがって、上記のように、特定波長に対する測定値の変化を監視することで、判定部186は、測定領域Rがカラーパッチ31内に移動したか否かを判定できる。
【0045】
なお、判定部186による判定方法は上記に限られない。例えば、印刷部16により較正用データに基づいて形成される各カラーパッチの位置が既知である場合、判定部186は、スタートバー32を検出した後の経過時間と、キャリッジ13の移動速度に基づいて、測定領域Rの位置を算出してもよい。この場合、算出された測定領域Rの位置が、既知のカラーパッチ31内の位置に位置するか否かを判定する。また、キャリッジ13の位置を検出するスケールセンサーが設けられていてもよい。この場合、判定部186は、スケールセンサーで検出されるキャリッジ13の位置に基づいて、測定領域Rの位置を特定する。
【0046】
ステップS7でNOと判定される場合、ステップS5に戻る。つまり、制御ユニット15は、判定部186により、測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に移動したと判定されるまで、ステップS5からステップS7の処理を継続する。
ステップS7でYESと判定される場合、測定領域Rの全体が、カラーパッチ31内に位置していること、つまり、カラーパッチ31の所定の測定対象位置に位置したことを意味する。この場合は、分光器制御部183は、カラーパッチ31に対する分光測定処理(本測定処理)を実施する(ステップS8)。
具体的には、分光器制御部183は、V-λデータに基づいて、静電アクチュエーター56に印加する電圧を順次変更する。これにより、例えば可視光域における16バンドの光に対する検出信号が分光器17から制御ユニット15に出力される。測定値算出部184は、ステップS5と同様、これらの検出信号の信号値を平均して測定値とし、分光器17での分光波長と関連付けて記憶部153に記憶する。
【0047】
この後、エラー検出部185は、ステップS8の測定処理で測定エラーが検出されたか否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9でYESと判定された場合、つまり、測定エラーが検出された場合、分光器制御部183は、分光器17による測定を一時停止させ、走査制御部181は、キャリッジ13の移動を停止させ、さらに、走査制御部181は、キャリッジ13の復帰位置を設定する(ステップS10)。
【0048】
このステップS10では、走査制御部181は、記憶部153に蓄積された、測定値の変化量ΔVとキャリッジ13の位置との組み合わせから、測定値の変化量ΔVが所定の第一閾値を超える組み合わせを抽出する。つまり、走査制御部181は、測定値の変化量ΔVが第一閾値を超えるキャリッジ13の位置を抽出する。なお、この第一閾値は、測定領域Rがカラーパッチ31の境界を跨いだか否かを判定する第二閾値よりも大きい値であって、復帰位置を設定するための本開示の閾値に相当する。
そして、走査制御部181は、抽出された位置のうち、現在のキャリッジ13の位置から加速距離以上離れ、かつ、現在のキャリッジ13に最も近い位置を復帰位置に設定する。
ここで、本実施形態では、パッチ群30は、一定の間隔で復帰検出パッチ31Bが配置されている。復帰検出パッチ31Bは、白色または黒色であるため、隣り合う測定パッチ31Aとの反射率が大きく異なり、測定値の変化量ΔVが第一閾値を超える。例えば、ステップS5でキャリッジ13を+X側に移動させる場合、復帰検出パッチ31Bの+X側の測定パッチ31Aが、測定値の変化量ΔVが第一閾値を超えるカラーパッチ31として検出され、復帰位置に設定される。また、このような復帰検出パッチ31Bが一定間隔で配置されることで、復帰位置がキャリッジ13の現在位置から過剰に遠くなる不都合が抑制される。
【0049】
そして、走査制御部181は、キャリッジ13を-X側に移動させて、復帰位置まで戻し(ステップS11)、ステップS5に戻る。つまり、走査制御部181は、復帰位置から、キャリッジ13を再度+X側に移動させて、副測定処理及び本測定処理を実施する。
【0050】
図8は、測定エラーが発生した場合のキャリッジの動きを模式的に示す図である。また、図9は、各カラーパッチの測定値、及び測定値の変化量を示す。
図8で、パッチIDが「9」の第一カラーパッチ311で測定エラーが検出された場合、走査制御部181は、測定値の変化量ΔVが第一閾値を超える位置を抽出する。図9に示す例では、パッチID「7」、「6」、「4」が、第一閾値を超える変化量ΔVを超える位置として記録されている。また、本例では、加速距離は、2個のカラーパッチ31のX方向の幅に相当する距離であるとする。この場合、走査制御部181は、測定エラーが検出された現在のキャリッジ13の位置から、2個分のカラーパッチ31以上離れ、かつ、現在のキャリッジ13に最も近い位置となるパッチID「6」を復帰位置として設定する。このため、図8に示すように、キャリッジ13は、測定エラーが検出された第一カラーパッチ311から、復帰位置であるパッチID「6」に対応する第二カラーパッチ312まで、-X側に移動され、その後、再び、+X側に移動される。また、分光器制御部183は、加速距離内である第三カラーパッチ313、及び第四カラーパッチ314に対する本測定処理を実施せず、加速距離を過ぎた第一カラーパッチ311に対する本測定処理を実施する。これにより、測定エラーが検出された第一カラーパッチ311に対する再測定が実施される。
なお、本例では、測定エラーが検出された、第三カラーパッチ313及び第四カラーパッチ314に対する本測定処理は実施されない。しかし、復帰位置が、第二カラーパッチ312よりも-X側に位置する場合は、第三カラーパッチ313及び第四カラーパッチ314に対する本測定処理を実施してもよい。この場合、記憶部153に記憶されていた前回の第三カラーパッチ313及び第四カラーパッチ314に対する測定値が、最新の測定値で更新されてもよく、前回の測定値と最新の測定値との平均値により更新されてもよい。
【0051】
図6に戻り、ステップS9でNOと判定される場合は、制御ユニット15は、第j行目に配置されたパッチ群30における全てのカラーパッチ31の分光測定処理が終了したか否かを判定する(ステップS12)。例えば、制御ユニット15は、ステップS8の実施回数をカウントし、カウント数がパッチ群30に配置されるカラーパッチ31の総数Iとなったか否かを判定する。
ステップS12でNOと判定された場合は、ステップS5に戻る。
【0052】
ステップS12でYESと判定された場合、走査制御部181は、変数jに「1」を加算し(ステップS13)、変数jが最大値Jより大きくなったか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14でNOと判定される場合、ステップS4に戻る。
ステップS14でYESと判定された場合は、測色部187は、各カラーパッチ31に対して実施されたステップS8の本測定処理の測定結果に基づいて、各カラーパッチ31の色を算出する(ステップS15)。例えば、測色部187は、各カラーパッチ31の反射率スペクトルを算出する。この際、測色部187は、カラーパッチ31のうち、復帰検出パッチ31Bの測定値を基準測定値とし、各測定パッチ31Aの測定値を補正してもよい。この後、較正部188は、較正用データと、ステップS12により算出された色とに基づいて、記憶部153に記憶された印刷プロファイルデータを更新する(ステップS16)。
【0053】
[本実施形態の作用効果]
本開示の第一態様に係るプリンター10は、媒体Aからの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、分光波長を変更可能な分光器17を備えたキャリッジ13と、キャリッジ13を媒体Aに対してX方向に沿って相対移動させるキャリッジ移動ユニット14とを備える。また、プリンター10の制御ユニット15は、エラー検出部185として機能し、エラー検出部185は、分光器17による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出する。さらに、制御ユニット15は、走査制御部181及び分光器制御部183として機能し、カラーパッチ31の測定時に、キャリッジ13を+X側に移動させながら、分光器17で特定波長の光を測定させる副測定処理を実施させ、副測定処理により得られる特定波長に対する測定値と分光測定部の位置とを取得する。そして、走査制御部181は、測定エラーが検出された場合に、測定値の変化量が第一閾値以上となる位置まで、キャリッジ13を、-X側に移動させた後、キャリッジ13を再度+X側に移動させて、副測定処理及び本測定処理を再度実施する。
【0054】
これにより、本実施形態では、測定エラーが発生した場合に、測定エラーが発生した位置から近いカラーパッチ31の位置にキャリッジ13を戻すことができる。つまり、全てのカラーパッチ31に対する測定が完了した後、キャリッジ13を測定エラーに対する位置に戻す場合、媒体Aの搬送量やキャリッジ13の移動量が多くなり、測定に時間がかかる。また、測定エラーが発生した場合に、所定の初期位置から再測定を行う場合も、測定に時間がかかる。これに対して、本実施形態では、測定エラーが発生した場合に、即座に測定エラーが発生したカラーパッチ31の近傍にキャリッジ13を移動させることができ、測定に係る時間を短縮できる。
また、全てのカラーパッチ31の測定後に測定エラーが発生したカラーパッチ31の位置に測定領域Rを移動させる場合、各カラーパッチ31の座標位置が特定されている必要があるが、一般的なカラーパッチ31には、座標情報がないことが多い。これに対して、本実施形態では、制御ユニット15は、測色値の変化量を監視して、測定エラーが発生した場合に、測定値の変化量が第一閾値を超える位置にキャリッジ13を戻すものであり、カラーパッチ31の座標情報が不要である。つまり、座標情報がないカラーパッチ31を測定する場合でも、測定エラーが発生したカラーパッチ31の位置近傍のキャリッジ13を戻すことができる。
【0055】
本実施形態では、キャリッジ13に搭載される分光器17は、キャリッジ13の移動中に特定波長に対する分光測定を行う副測定処理と、分光波長を複数の波長に切り替えてそれぞれの波長の光を測定する本測定処理と、を実施する。そして、制御ユニット15は、分光器17による測定領域Rがカラーパッチ31の所定の測定対象位置に位置した際に、分光器17に本測定処理を実施させ、本測定処理が実施されていない間、副測定処理を実施させる。
これにより、本測定処理が実施されていない間、副測定処理が継続して実施され、測定値算出部184は、特定波長に対する測定値の変化量を算出し続ける。つまり、本測定処理が実施されていない間、測定値の変化量が常に監視される。これにより、測定エラーが発生した場合に、現在のキャリッジ13の位置から、最も近い位置に復帰位置を設定することができる。
【0056】
本実施形態では、キャリッジ移動ユニット14は、キャリッジ13を移動させる時に、移動開始位置から所定の加速距離までの間でキャリッジ13を加速させた後、一定の移動速度でキャリッジ13を移動させる。そして、制御ユニット15の走査制御部181は、測定エラーが検出された場合に、現在のキャリッジ13の位置から、少なくとも加速距離以上離れた復帰位置まで、キャリッジ13を-X側に移動させる。
キャリッジ13が加速移動している間、振動が発生しやすい。このため、加速期間での本測定処理は避けることが好ましい。本実施形態では、走査制御部181は、現在のキャリッジ13の位置から加速距離以上離れた位置に復帰位置を設けるので、測定エラーが発生した位置のカラーパッチ31に対して本測定処理を実施する際のキャリッジ13の移動速度は、一定の移動速度となっており、安定した本測定処理を実施することができる。これにより、測定エラーが再度検出される不都合を抑制できる。
【0057】
本実施形態のプリンター10は、キャリッジ13に、印刷部16が搭載されている。
これにより、印刷部16で印刷したカラーパッチを、キャリッジ13に搭載された分光器17で分光測定することができる。
【0058】
本実施形態では、印刷部16は、X方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチ31として、所定の色を有する複数の測定パッチ31Aと、白色又は黒色を有する複数の復帰検出パッチ31Bとを含み、復帰検出パッチ31Bの±X側に測定パッチ31Aが隣り合って配置されるカラーチャート3を形成する。
このようなカラーチャート3では、測定パッチ31Aと復帰検出パッチ31Bとの色差が大きく、キャリッジ13を+X側に移動させながら副測定処理を実施した場合に、測定値の変化量が第一閾値を超える。よって、同系色の測定パッチ31Aが並ぶ場合でも、適切に復帰位置を設定することができる。
【0059】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、キャリッジ13に1つの分光器17が搭載される例を示したが、第二実施形態では、キャリッジに複数の分光器が搭載される点で上記第一実施形態と相違する。なお、以降の説明にあたり、第一実施形態と同一の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0060】
図10は、第二実施形態におけるキャリッジ13Aの概略構成を示す図である。
図10に示すように、本実施形態のキャリッジ13Aは、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cを備える。これらの第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cは、Y方向、つまりキャリッジ13Aの走査方向に沿って配置されている。具体的には、第二分光器17Bは、第一分光器17Aの-Y側に配置されており、第三分光器17Cは、第一分光器17Aの+Y側に配置されている。
なお、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17C及びそれぞれの構成は、第一実施形態の分光器17と同様である。
【0061】
本実施形態では、第一実施形態と略同様、図6に示す測定方法により、カラーパッチの色を測定するが、一部において、処理の内容が異なる。
具体的には、印刷部16及び印刷制御部182は、ステップS2のカラーチャートの印刷において、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cのそれぞれに対応したカラーパッチ31を有するカラーチャートを形成する。
図11は、本実施形態において、印刷部16により印刷されるカラーチャート3Aの一例を示す図である。
本実施形態では、カラーチャート3Aには、第一分光器17Aの測定領域Rに対向した第一パッチ群30A、第二分光器17Bの測定領域Rに対向した第二パッチ群30B、及び第三分光器17Cの測定領域Rに対向した第三パッチ群30Cの3つのパッチ群が設けられている。本実施形態では、第一パッチ群30A、第二パッチ群30B、及び第三パッチ群30Cを1つのグループとして、Y方向にJ個のグループが配置されている。
また、第一パッチ群30A、第二パッチ群30B、第三パッチ群30Cには、第一実施形態と同様、白色または黒色の復帰検出パッチ31Bが配置されている。
ここで、1つのパッチ群30A,30B,30Cに含まれる復帰検出パッチ31Bの数は、第一実施形態に比べて少ない。また、第一パッチ群30Aに配置される復帰検出パッチ31Bの±Y側には、第二パッチ群30Bや第三パッチ群30Cの復帰検出パッチ31Bが配置されない。つまり、Y方向から見た投影視で、第一パッチ群30Aの復帰検出パッチ31B、第二パッチ群30Bの復帰検出パッチ31B、及び、第三パッチ群30Cの復帰検出パッチ31Bは、それぞれX方向の位置がそれぞれ異なり、重ならない位置に設けられている。また、Y方向に沿って見た投影視で、各パッチ群30A,30B,30Cに配置される復帰検出パッチ31Bは、X方向に沿って所定数のカラーパッチ31を挟んで一定間隔で配置される。
例えば、Y方向から見た投影視で、第一パッチ群30Aの復帰検出パッチ31Bと第二パッチ群30Bの復帰検出パッチ31Bとの間、第二パッチ群30Bの復帰検出パッチ31Bと第三パッチ群30Cの復帰検出パッチ31Bとの間、及び、第三パッチ群30Cの復帰検出パッチ31Bと第一パッチ群30Aの復帰検出パッチ31Bとの間に、それぞれ、所定数のカラーパッチ31が配置される構成としてもよい。
【0062】
また、走査制御部181は、ステップS4で、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cを、それぞれ、第一パッチ群30A、第二パッチ群30B、第三パッチ群30Cに対向するように、媒体Aを搬送し、キャリッジ13AをX方向の初期位置に移動させる。
そして、ステップS5では、キャリッジ13AをX方向に沿って移動させ、これと同時に、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cのそれぞれで副測定処理を実施させる。
【0063】
また、ステップS6では、測定値算出部184は、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cのそれぞれから出力される検出信号に基づいて測定値、及び測定値の変化量を算出する。つまり、第一分光器17Aにより測定された測定値の変化量ΔV、第二分光器17Bにより測定された測定値の変化量ΔV、第三分光器17Cにより測定された測定値の変化量ΔVがそれぞれ算出され、キャリッジ13Aの位置とともに記憶部153に記憶される。
【0064】
ステップS7では、判定部186は、第一分光器17A,第二分光器17B、及び第三分光器17Cの全ての測定領域Rがカラーパッチ31内に位置しているか否かを判断する。なお、第一分光器17A,第二分光器17B、及び第三分光器17CはY方向に並んで配置されているので、いずれかの分光器のみがカラーパッチ31からずれる場合、媒体Aが搬送方向に対して傾斜していたり、媒体Aに皺が発生していたりすることが考えられる。よって、いずれかの分光器のみがカラーパッチ31からずれる場合、測定不能エラーとして、測色を中断してもよい。
【0065】
また、ステップS7でYESと判断された場合、ステップS8において、分光器制御部183は、カラーパッチ31に対する本測定処理を実施する。この時、本実施形態では、第一分光器17A,第二分光器17B、及び第三分光器17Cのそれぞれで、本測定処理を実施する。
本実施形態では、第一パッチ群30Aの各カラーパッチ31を第一分光器17Aで測定し、第二パッチ群30Bの各カラーパッチ31を第二分光器17Bで測定し、第三パッチ群30Cの各カラーパッチ31を第三分光器17Cで測定する。このため、第一実施形態の様に1つの分光器17でパッチ群30を1列ずつ測定する場合に比べて、測定に係る時間を短縮することが可能となる。
【0066】
さらに、ステップS10で、走査制御部181は、3つの測定値の変化量ΔV,ΔV,ΔVのうちのいずれか1つが第一閾値を超えるキャリッジ13Aの位置を抽出する。そして、走査制御部181は、抽出された位置のうち、現在のキャリッジ13Aの位置からキャリッジ13Aの加速距離以上離れ、かつ、現在のキャリッジ13Aに最も近い位置をキャリッジ13Aの復帰位置に設定する。
以降の処理に関しては第一実施形態と同一である。
【0067】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態のプリンター10では、カラーチャート3Aとして、第一パッチ群30A、第二パッチ群30B、及び第三パッチ群30Cが、Y方向に沿って並んで配置されている。また、キャリッジ13は、Y方向に沿って配置された、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cを備える。そして、第一分光器17Aは、第一パッチ群30Aのカラーパッチ31を測定し、第二分光器17Bは、第二パッチ群30Bのカラーパッチ31を測定し、第三分光器17Cは、第三パッチ群30Cのカラーパッチ31を測定する。
これにより、3つの分光器17A,17B,17Cにより、一度に3つのカラーパッチ31に対する本測定処理を実施することができ、全てのカラーパッチ31に対する本測定処理を迅速に完了させることができる。
【0068】
本実施形態では、制御ユニット15の走査制御部181は、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cのそれぞれに副測定処理を実施させ、測定値算出部184は、各分光器17A,17B,17Cから出力される検出信号に基づいた測定値の変化量ΔV,ΔV,ΔVをそれぞれ算出する。そして、エラー検出部185により測定エラーが検出されると、測定値の変化量ΔV,ΔV,ΔVのうち少なくとも1つが第一閾値以上となる復帰位置を設定して、キャリッジ13を復帰位置まで移動させる。
このように、3つの分光器17A,17B,17Cを用いることで、キャリッジ13に最も近い復帰位置をより適正に設定することができる。例えば、第一パッチ群30Aで隣り合うカラーパッチ31が同系色である場合でも、第二パッチ群30Bで隣り合うカラーパッチ31の色差が大きく、第二分光器17Bでの測定値の変化量が第一閾値を超える場合がある。この場合、第一パッチ群30Aに対する副測定処理のみで復帰位置を設定する場合に比べて、現在のキャリッジ13の位置に近い位置に復帰位置を設定することができる。
【0069】
本実施形態では、印刷部16は、第一パッチ群30A、第二パッチ群30B、及び第三パッチ群30Cが、Y方向に沿って並ぶカラーチャート3Aを形成する。そして、Y方向から見た投影視で、第一パッチ群30Aの復帰検出パッチ31B、第二パッチ群30Bの復帰検出パッチ31B、及び、第三パッチ群30Cの復帰検出パッチ31Bは、それぞれX方向の位置がそれぞれ異なり、重ならない位置に設けられている。
このような復帰検出パッチ31Bが設けられることで、第一実施形態と同様、同系色の測定パッチ31Aが並ぶ場合でも、適切に復帰位置を設定することができる。また、第一実施形態に比べて、1つのパッチ群に含まれる復帰検出パッチ31Bを減らすことができ、その分、測定パッチ31Aを多く配置することができる。これにより、カラーチャート3Aの各カラーパッチ31の測定に係る測定時間を短縮することができる。
【0070】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0071】
[変形例1]
上記第一実施形態及び第二実施形態では、印刷部16は、白色または黒色の復帰検出パッチ31Bを含む、パッチ群30、第一パッチ群30A、第二パッチ群30B、及び第三パッチ群30Cを形成する例を示したが、これに限定されない。
例えば、隣り合うカラーパッチ31で、副測定処理を実施する特定波長に対する反射率の差が第一閾値以上大きいカラーチャート3,3Aを形成する場合では、復帰検出パッチ31Bが含まれていなくてもよい。
【0072】
また、カラーチャート3,3Aは、各カラーパッチ31の間に、白色または黒色の枠画像を備える構成としてもよい。この場合、副測定処理で、特定波長に対する測定値の変化量を測定すると、測定領域R,R,R,R内に枠画像が入る場合に、測定値の変化量が第一閾値を超える値となる。この場合、各カラーパッチ31のそれぞれの位置を特定することが可能となる。つまり、現在のキャリッジ13,13Aから加速距離以上離れ、かつ現在のキャリッジ13,13Aに最も近い位置のカラーパッチ31を、復帰位置として設定できる。
【0073】
[変形例2]
第二実施形態では、副測定処理で、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cのそれぞれで同一の特定波長の光を測定する例を示した。これに対して、第一分光器17A、第二分光器17B、及び第三分光器17Cにより測定する特定波長を分光器毎に異ならせてもよい。例えば、第一分光器17Aでは、赤色波長域内の所定の第一特定波長を用い、第二分光器17Bでは、緑色波長域内の所定の第二特定波長を用い、第三分光器17Cでは、青色波長域内の所定の第三特定波長を用いてもよい。
【0074】
[変形例3]
上記実施形態では、測定値算出部184が、分光器17から出力される検出信号をサンプリングして、その平均値を測定値として算出し、n回目に算出される測定値と、n-1回目に算出される測定値との差を測定値の変化量ΔVとした。これに対して、分光器17が検出信号を微分する微分回路を備え、測定値算出部184は、微分回路から出力される微分信号の信号値をサンプリングして、測定値の変化量として取得してもよい。
第二実施形態においても同様であり、第一分光器17Aからの検出信号を微分する第一微分回路、第二分光器17Bからの検出信号を微分する第二微分回路、及び第三分光器17Cからの検出信号を微分する第三微分回路を備える構成としてもよい。
【0075】
[変形例4]
第二実施形態では、複数の分光器として、第一分光器17A、第二分光器17B、及び、第三分光器17Cを例示したが、キャリッジ13Aに4つ以上の分光器が設けられていてもよく、2つの分光器のみが設けられる構成としてもよい。
【0076】
[変形例5]
上記実施形態では、本開示の移動機構として、キャリッジ13,13Aを+X方向に移動させるキャリッジ移動ユニット14を例示したがこれに限定されない。
例えば、キャリッジ13,13Aを固定し、媒体Aをキャリッジ13,13Aに対して移動させる構成としてもよい。この場合、キャリッジ13,13Aの移動に伴う波長可変干渉フィルター5の振動を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の透過波長を安定化させることができる。
また、X方向に沿って複数配置されたカラーパッチ31に対して、キャリッジ13,13AをX方向に沿って走査させる例を示したが、Y方向に沿って複数配置されたカラーパッチ31に対して、キャリッジ13,13AをY方向に沿って走査させてもよい。この場合、搬送ユニット12によって媒体AをY方向に送ることで、測定領域R,R,R,Rをカラーパッチ31に対して相対移動させることができる。
【0077】
[変形例6]
上記実施形態では、キャリッジ13,13Aを+X側に移動させる間に、各カラーパッチ31に対する副測定処理及び本測定処理を実施する例を示したが、キャリッジ13,13Aを-X側に移動させる間に、各カラーパッチ31に対する副測定処理及び本測定処理を実施してもよい。
【0078】
[変形例7]
上記実施形態において、測定装置の一例としてプリンター10を例示したが、これに限定されない。例えば、印刷部16を備えず、媒体Aに対する測色処理のみを実施する測定装置であってもよい。
【0079】
[変形例8]
上記実施形態では、キャリッジ13,13Aが、X方向に等速移動される例を示したが、これに限定されない。
例えば、キャリッジ13,13Aの移動速度が一定とならない構成であってもよい。この場合、エラー検出部185により測定エラーが検出されると、キャリッジ13,13Aの移動を反転(-X側に移動)させて、副測定処理を実施する。そして、副測定処理において、測定値の変化量が第一閾値以上となるカラーパッチ31を復帰位置として、キャリッジ13,13Aを停止させ、再度キャリッジ13,13Aを+X側に移動させる。
【0080】
[変形例9]
上記各実施形態では、分光器17が、測定対象からの光を分光する際の分光波長を変更可能な分光素子としての波長可変干渉フィルター5を含む構成を例示したがこれに限定されない。例えば、分光器17,17A,17B,17Cが、波長可変干渉フィルター5の代りに、AOTF(音響光学チューナブルフィルター)やLCTF(液晶チューナブルフィルター)やグレーティング等の分光波長を変更可能な各種の分光素子を含む構成としてもよい。
また、上記実施形態では、分光器17,17A,17B,17Cが、媒体Aから入射光を分光する、いわゆる後分光タイプの構成を例示したが、光源部171からの照明光を所定の分光波長に分光して媒体Aに照射する、いわゆる前分光タイプの構成としてもよい。
【0081】
[本開示のまとめ]
本開示の第一態様の測定装置は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記分光測定部を前記測定対象に対して第一方向に沿って相対移動させる移動機構と、前記分光測定部による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出するエラー検出部と、前記分光測定部及び前記移動機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記測定対象が前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された特定波長の光を測定させる第一測定処理を実施させて、前記第一測定処理により得られる前記特定波長に対する測定値と前記分光測定部の位置とを取得し、前記測定エラーが検出された場合に、前記測定値の変化量が閾値以上となる位置まで、前記分光測定部を、前記第一方向とは逆の第二方向に移動させた後、前記分光測定部を前記第一方向に移動させる。
【0082】
これにより、制御部は、測定エラーが発生した場合に、測定エラーが発生した位置から近いカラーパッチの位置に分光測定部を戻すことができる。つまり、全てのカラーパッチに対する測定が完了した後に、測定エラーが発生した位置に分光測定部を戻す場合では、分光測定部の相対移動量が多くなり、測定に時間がかかる。これに対して、本態様では、測定エラーが発生した場合に、即座に測定エラーが発生したカラーパッチの近傍に分光測定部を移動させることができ、測定に係る時間を短縮できる。
また、測定が完了した後に測定エラーが発生したカラーパッチの位置に分光測定部を移動させる場合、各カラーパッチの座標位置が特定されている必要がある。これに対して、本態様では、座標情報がないカラーパッチを測定する場合でも、測定エラーが発生したカラーパッチに対する再測定を行うことができる。
【0083】
本態様の測定装置では、前記分光測定部は、前記第一測定処理と、前記分光波長を複数の波長に切り替えてそれぞれの波長の光を測定する第二測定処理と、を実施し、前記制御部は、前記分光測定部による測定位置が前記カラーパッチの所定の測定対象位置に位置した際に、前記分光測定部に前記第二測定処理を実施させ、前記第二測定処理が実施されていない間、前記分光測定部に前記第一測定処理を実施させることが好ましい。
本態様では、カラーパッチの色を測定するための第二測定処理が実施されていない間、常に、第一測定処理が実施されている。これにより、測定エラーが発生した場合に、現在の分光測定部の位置から、最も近い位置に復帰位置を設定することができる。
【0084】
本態様の測定装置では、前記移動機構は、前記分光測定部を移動させる時に、移動開始位置から所定の加速距離までの間で前記分光測定部を加速させた後、一定の移動速度で前記分光測定部を相対移動させ、前記制御部は、前記測定エラーが検出された場合、少なくとも前記加速距離以上、前記分光測定部を前記第二方向に移動させることが好ましい。
分光測定部が加速移動している間は、振動が発生しやすいため、加速期間でカラーパッチに対する第二測定処理を実施すると測定エラーが検出されやすい。これに対して、本態様では、分光測定部を加速距離以上離れた位置まで第二方向に移動させる。これにより、測定エラーが発生したカラーパッチに対して第二測定処理を実施する時には、分光測定部の移動速度が一定の移動速度となっている。このため、測定エラーが発生したカラーパッチを再測定する場合に、安定した第二測定処理を実施することができる。
【0085】
本態様の測定装置において、前記第一方向に並ぶ複数のカラーパッチを1つのパッチ群として、前記パッチ群は、前記第一方向に直交する第三方向に複数設けられ、前記分光測定部は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定する分光器を複数備え、複数の前記分光器は、前記第三方向に沿って配置され、それぞれ異なるパッチ群に対向していることが好ましい。
これにより、複数の分光器により、一度に複数のカラーパッチ31に対する第二測定処理を実施することができ、全てのカラーパッチに対する測定処理を迅速に完了させることができる。
【0086】
本態様の測定装置では、前記制御部は、複数の前記分光器に、それぞれ前記第一測定処理を実施させて、複数の前記分光器のそれぞれで得られる前記測定値と、前記分光測定部の位置と、を取得し、前記測定エラーが検出された場合に、少なくとも1つの前記分光器の前記第一測定処理で取得された前記測定値の変化量が閾値以上となる位置まで、前記分光測定部を、前記第二方向に移動させることが好ましい。
このように、複数の分光器を用いることで、測定エラーが発生した時の分光測定部の第二方向への移動量を最小にできる。例えば、1つのパッチ群で隣り合うカラーパッチが同系色である場合でも、他のパッチ群で隣り合うカラーパッチの色差が大きい場合では、当該他のパッチ群で隣り合うカラーパッチの位置まで分光測定部を第二方向に移動させればよい。測定エラーの発生時に、分光測定部を過剰に第二方向に移動させると、カラーパッチの再測定に係る時間が長くなる。これに対して、本態様では、上記のように、分光測定部の第二方向への移動量を減らすことができるので、カラーパッチの再測定に係る時間を短縮できる。
【0087】
本開示の第二態様に係るプリンターは、第一態様の測定装置と、前記測定対象に、前記第一方向に沿った複数のカラーパッチを含むカラーチャートを形成する印刷部と、を備える。
このようなプリンター10では、印刷部16で印刷したカラーパッチを、分光測定部で分光測定することができる。したがって、カラーパッチが印刷された測定対象を、測定装置に移し替える等の作業が不要となる。
【0088】
本態様のプリンターにおいて、前記印刷部は、前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチとして、所定の色を有する複数の測定パッチと、白色又は黒色を有する複数の復帰検出パッチとを含み、前記復帰検出パッチの前記第一方向及び前記第二方向に前記測定パッチが隣り合って配置される前記カラーチャートを形成することが好ましい。
このようなカラーチャートでは、測定パッチと復帰検出パッチとの色差が大きく、分光測定部を+X側に移動させながら副測定処理を実施した場合に、測定値の変化量が閾値を超える。よって、同系色の測定パッチが並ぶ場合でも、適切に復帰位置を設定することができる。
【0089】
本態様のプリンターでは、前記印刷部は、前記第一方向に沿った複数の前記カラーパッチを1つのパッチ群として、前記第一方向に直交する第三方向に複数の前記パッチ群が並び、前記第三方向から複数の前記パッチ群を見た投影視で、複数の前記パッチ群の前記復帰検出パッチが重ならない位置に配置された前記カラーチャートを形成することが好ましい。
本態様では、分光測定部が第二方向に沿って複数の分光器を備える場合に、各分光器でそれぞれ異なるパッチ群を測定することができる。また、1つのパッチ群を1つの分光器で測定する場合に比べ、復帰検出パッチを複数のパッチ群に分散して配置することができる。このため、1つのパッチ群に含まれる復帰検出パッチの数を減らし、その分、測定パッチを多く配置することができる。これにより、より効率的に複数のカラーパッチに対する測定処理を実施でき、測定時間を短縮することができる。
【0090】
本開示の第三態様の測定方法は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を第一方向に沿って相対移動させる移動機構と、前記分光測定部による分光測定処理が正常に実施できていないことを示す測定エラーを検出するエラー検出部と、を備える測定装置の測定方法であって、前記測定対象が前記第一方向に沿って並ぶ複数のカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記第一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された特定波長の光を測定させる第一測定処理を実施させて、前記第一測定処理により得られる前記特定波長に対する測定値と、前記分光測定部の位置と、を取得し、前記測定エラーが検出された場合に、前記測定値の変化量が閾値以上となる位置まで、前記分光測定部を、前記第一方向とは逆の第二方向に移動させた後、前記分光測定部を前記第一方向に移動させる。
このような測定方法では、測定エラーが発生した場合に、測定エラーが発生した位置から近いカラーパッチの位置に分光測定部を即座に戻すことができ、測定に係る時間を短縮できる。
また、座標情報がないカラーパッチを測定する場合でも、測定エラーが発生したカラーパッチに対する再測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
3,3A…カラーチャート、10…プリンター、13,13A…キャリッジ、14…キャリッジ移動ユニット(移動機構)、15…制御ユニット(制御部)、16…印刷部、17…分光器、17A…第一分光器、17B…第二分光器、17C…第三分光器、30…パッチ群、30A…第一パッチ群、30B…第二パッチ群、30C…第三パッチ群、31…カラーパッチ、31A…測定パッチ、31B…復帰検出パッチ、153…記憶部、154…プロセッサー、181…走査制御部、182…印刷制御部、183…分光器制御部、184…測定値算出部、185…エラー検出部、186…判定部、187…測色部、188…較正部。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
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図11