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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20231219BHJP
   B65H 20/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B41J15/04
B65H20/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019235875
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104589
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 裕一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 星潤
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111275(JP,A)
【文献】特開2013-169773(JP,A)
【文献】特開2016-023061(JP,A)
【文献】特開平05-169042(JP,A)
【文献】特開2006-130372(JP,A)
【文献】特開2000-006929(JP,A)
【文献】米国特許第06357201(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04
B65H 20/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアの第1面に記録可能な記録部と、
前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送可能な搬送部と、
前記保持部と前記記録部との間における前記メディアの前記第1面とは反対側の面である第2面をノック可能なノック部と、
前記保持部と前記記録部との間の部分における前記メディアの前記第2面に接触可能なテンションバーと、
前記テンションバーに巻き付けられた部分よりも上流側の部分と下流側の部分との前記第1面を押さえることにより前記テンションバーに前記メディアを巻き付け可能なローラー対と、を備え、
前記ノック部は、前記ローラー対のうち一のローラーと前記テンションバーとの間の部分における前記メディアをノック可能に設けられており、前記第2面から離間する離間位置と、前記第2面に当接する当接位置との間を移動することによって、前記第2面をノックすることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ノック部と前記メディアの経路を挟む反対側の位置に、前記第1面からの異物を除去可能な除去部を備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記除去部は、前記メディアの前記第1面にガスを吹き付ける吹付部であって、前記ノック部よりも前記メディアの搬送方向の下流となる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ノック部は、
前記第2面に当接可能な当接部を有するカムと、
前記カムを回転させる駆動部と、
を備えることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記メディアの搬送方向と交差しかつ前記搬送部が前記メディアを支持する支持面と平行な方向である幅方向において、前記カムの配置長さは、前記メディアの幅寸法以上であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記メディアの種類に関するメディア種情報を取得し、
メディア種情報を基に特定される前記メディアの種類に応じて、前記カムの回転速度を変更することを特徴とする請求項または請求項に記載の記録装置。
【請求項7】
メディアの第1面に記録可能な記録部と、
前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送可能な搬送部と、
前記保持部と前記記録部との間における前記メディアの前記第1面とは反対側の面である第2面をノック可能なノック部と、
前記保持部に支持された前記ロール体を正逆回転させる駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、
を備え、
前記ノック部は、前記第2面から離間する離間位置と、前記第2面に当接する当接位置との間を移動することによって、前記第2面をノックし、
前記記録部は走査方向に移動して前記メディアに記録するシリアル記録方式であり、
前記搬送部は、前記保持部に支持された前記ロール体から巻き解かれたメディアを、前記ロール体と前記記録部による記録が行われる記録位置との間の搬送経路に沿って案内する複数のローラーを有し、
前記複数のローラーのうち前記ロール体から繰り出されたメディアが最初に巻き付けられるローラーを第1ローラーとすると、
前記制御部は、前記記録部が前記メディアへの記録のために走査方向に1回移動する走査期間の間に、前記駆動源を前記ロール体が正転する方向へ駆動させて前記ロール体から前記メディアを繰り出すことにより、前記ロール体と前記第1ローラーとの間の部分の前記メディアに弛みを形成する弛み動作と、前記駆動源を前記ロール体が逆転する方向へ駆動させて前記ロール体に前記メディアを巻き取ることにより前記ロール体と前記第1ローラーとの間で弛んだ部分の前記メディアを引っ張って当該メディアにテンションを付与する引張り動作とを1回ずつ含む振動動作を2回以上行う、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール体から巻き解かれた用紙や布帛等のメディアを搬送経路に沿って搬送する搬送部と、搬送されるメディアに記録する記録部とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送経路の上流位置にメディアが巻かれたロール体が保持され、ロール体から巻き解かれたメディアを、搬送経路の下流位置に保持されたロール体に巻き取ることで搬送する搬送部と、メディアにインク等の液体を吐出して画像等を記録する記録部と、を備えた記録装置の一例としてインクジェットプリンターが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された記録装置は、メディアに記録するための記録機構を収容する筐体を有し、筐体よりもメディアの搬送方向の上流に、メディアの表面に空気流を送風する送風手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-111275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された記録装置では、送風手段によって空気流のみで異物を除去している。メディア種によっては異物が取れにくいものがあり、十分に異物が除去されないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する記録装置は、メディアの第1面に記録可能な記録部と、前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送可能な搬送部と、前記保持部と前記記録部との間における前記メディアの前記第1面とは反対側の面である第2面をノック可能なノック部と、を備え、前記ノック部は、前記第2面から離間する離間位置と、前記第2面に当接する当接位置との間を移動することによって、前記第2面をノックする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における記録装置の模式側断面図。
図2】ノック部と吹付部を示す模式側面図。
図3】ノック部の構成を示す正面図。
図4】ノック部と吸引部を示す模式側面図。
図5】カムが離間位置にある状態を示す模式側面図。
図6】カムが当接位置にある状態を示す模式側面図。
図7】記録装置の電気的構成を示すブロック図。
図8】第2実施形態における振動付与機構の弛み形成動作を説明する模式側面図。
図9】振動付与機構の引張り動作を説明する模式側面図。
図10】変更例におけるノック部の構成を示す正面図。
図11】変更例におけるノック部と除去部を示す模式側面図。
図12】変更例におけるカムを示す模式側面図。
図13図12と異なる変更例におけるカムを示す模式側面図。
図14】変更例における記録装置を示す模式側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、記録装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1では、記録装置11が水平面上に置かれているものとして、互いに直交する3つの仮想軸を、X軸、Y軸及びZ軸とする。X軸は後述する搬送ベルト21の幅方向と平行な仮想軸であり、Y軸は搬送ベルト21上のメディアMが搬送されるベルト搬送方向Yと平行な仮想軸である。また、Z軸は鉛直方向と平行な仮想軸である。以下では、X軸に沿う方向を幅方向Xともいう。
【0009】
図1に示すように、記録装置11は、例えば、布帛、用紙などであるメディアMに液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を記録するインクジェット式のプリンターである。記録装置11は、保持部12と、皺抑制装置13と、剥離装置14と、記録部15と、搬送部の一例を構成する搬送ユニット16と、押付部17と、を有する。保持部12は、メディアMが巻かれたロール体R1を保持する。搬送ユニット16は、ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送する。記録部15は、メディアMの第1面Maに記録する。すなわち、メディアMの第1面Maは、記録部15によって記録される面である。なお、メディアMは、保持部12に保持されたロール体R1から、剥離装置14により搬送ユニット16から剥離されて巻き取られたロール体R2までの搬送経路に沿う搬送方向Y1に搬送される。この搬送方向Y1は、搬送経路上のメディアMの位置に応じて変化する方向である。搬送ユニット16により搬送されるメディアMの搬送方向であるベルト搬送方向Yは、搬送方向Y1のうちの一つである。ここで、メディアMは、ベルト搬送方向Yと、ベルト搬送方向Yとは反対の逆ベルト搬送方向-Yと、に移動可能である。搬送方向Y1は、メディアMに対して記録部15による記録動作が実行される場合の搬送方向であり、逆ベルト搬送方向-Yは、例えばメディアMが搬送ユニット16にセットされる際のメディア位置を調整する調整動作が実行される場合の搬送方向である。
【0010】
図1に示すように、搬送ユニット16の上方にはハウジング11aが配置されている。ハウジング11a内には記録部15及び制御部100が収容されている。記録部15は、例えば、メディアMに液体を吐出することにより、メディアMに記録する。記録部15は、記録ヘッド18と、記録ヘッド18を保持するヘッド保持部19とを有する。記録ヘッド18は、液滴を吐出するノズル18Nと、ノズル18Nが開口するノズル面18aとを有する。ノズル面18aは、搬送ベルト21の支持面21aと所定のギャップを隔てて対向する。ノズル18Nから吐出された液滴が、支持面21a上に貼り付けられたメディアMの第1面Maに着弾することで、メディアMに画像が記録される。
【0011】
記録部15は、メディアMに対して走査するシリアルヘッドでもよいし、メディアMの幅と略同じ範囲に亘って延在するラインヘッドでもよい。記録部15がシリアルヘッドである場合、ヘッド保持部19はX軸に沿う方向である幅方向Xと平行な走査方向に移動するキャリッジである。キャリッジが走査方向に移動する途中で記録ヘッド18がノズル18Nから液滴を吐出することで、メディアMに記録する。記録部15がラインヘッドである場合、メディアMの幅と略同じ範囲に配列された複数のノズル18Nから、一定速度で搬送されるメディアMに向けて一斉に液滴を吐出することで、メディアMに記録する。なお、以下では、記録装置11がシリアルプリンターである場合、ヘッド保持部19であるキャリッジを「キャリッジ19」と記す。
【0012】
図1に示すように、搬送ユニット16は、搬送ベルト21と、駆動ローラー22と、従動ローラー23とを備える。搬送ベルト21は、駆動ローラー22と従動ローラー23とに巻き掛けられる。搬送ベルト21は、無端状の基材24と、基材24の外周面上に設けられる粘着層25とを有する。粘着層25は、基材24の外周面の全周に、粘着剤が塗布されることによって形成される。つまり、搬送ベルト21は、粘着層25を有するグルーベルトである。搬送ベルト21は、粘着層25の表面に、メディアMを支持するための支持面21aを有する。メディアMは、粘着層25の表面に貼り付けられた状態で支持面21aに支持される。
【0013】
搬送ユニット16は、駆動源として搬送モーター26を備える。駆動ローラー22は、搬送モーター26と動力伝達可能に連結されている。搬送モーター26が駆動されると、駆動ローラー22が回転する。駆動ローラー22が回転すると、搬送ベルト21が周回する。従動ローラー23は、搬送ベルト21の周回に従動して回転する。このようにして、搬送モーター26は、駆動ローラー22に駆動力を伝達して搬送ベルト21を駆動する。搬送ベルト21が周回することで、支持面21aに貼り付けられたメディアMは搬送される。なお、駆動ローラー22と従動ローラー23との位置を反対にし、ベルト搬送方向Yの下流側のローラーを駆動ローラー22としてもよい。
【0014】
図1に示すように、押付部17は、記録部15よりもベルト搬送方向Yの上流側の位置に、搬送ベルト21の支持面21aと対向する上方に配置される。押付部17は、メディアMを搬送ベルト21に押し付ける。これにより、メディアMは、粘着層25に貼り付けられる。押付部17は、搬送ベルト21の周回に伴って粘着層25にメディアMを順次貼り付ける。
【0015】
押付部17は、メディアMの第1面Maに接触してメディアMを加圧する加圧ローラー17aを備える。押付部17は、加圧ローラー17aを搬送ベルト21の支持面21aに沿って往復移動させる移動機構(図示略)を備える。押付部17は、加圧ローラー17aがメディアMを加圧しながらベルト搬送方向Yと逆ベルト搬送方向-Yとに往復移動することによって、メディアMの第2面Mbを確実に粘着層25に貼り付ける。メディアMの第2面Mbは、メディアMの第1面Maとは反対の面である。なお、加圧ローラー17aは、幅方向Xにおいて往復移動してもよいし、幅方向Xとベルト搬送方向Yとの両方に交差する交差方向において往復移動してもよい。また、押付部17は、加圧ローラー17aによってメディアMを支持面21aに押し付けるものに限らず、例えば風圧によってメディアMを支持面21aに押し付けるものでもよい。
【0016】
図1に示すように、記録装置11は、搬送ベルト21上のメディアMのうちベルト搬送方向Yにおいて、記録部15よりも上流に位置する部分を被覆可能なカバー30を備える。本実施形態では、カバー30は、搬送ユニット16のうちハウジング11aで覆われる部分よりもベルト搬送方向Yに上流側の部分を覆う。詳しくは、カバー30は、押付部17の配置空間を含む領域を上方から覆う。図2に示すように、カバー30は、ハウジング11aの近傍に設けられた回動軸30aを中心に回動することで開閉可能である。
【0017】
カバー30を図1に示す閉位置から開位置へ移動させることで、押付部17にメディアMをセットするセット作業が可能になる。また、カバー30が閉位置にある状態では、押付部17により押し付けられる部分の周辺のメディアMが、カバー30によって外気中の異物から保護される。また、カバー30は、皺抑制装置13と押付部17との間を区画する隔壁板35を有する。隔壁板35は、カバー30と共に、押付部17が収容される室を区画する壁部の一部を構成し、記録装置11の後方からの室への異物の侵入を防止する。なお、図1は、記録装置11の一部を側断面で示すが、ハウジング11aおよびカバー30の下方領域については幅方向Xの両側が不図示の側壁部により覆われている。
【0018】
図1に示すように、押付部17により支持面21aに貼り付けられたメディアMは、搬送ベルト21の周回によってベルト搬送方向Yに搬送される。記録部15は、搬送ベルト21により搬送される途中の記録位置で、支持面21a上のメディアMに記録する。
【0019】
保持部12は、メディアMが巻き重ねられたロール体R1を保持する。保持部12は、ロール体R1を回転可能に保持する。保持部12が保持するロール体R1は、記録前のメディアMが巻き重ねられたものである。このロール体R1を、以下では第1ロール体R1ともいう。本実施形態においては、搬送ベルト21が駆動することによって、保持部12に保持された第1ロール体R1からメディアMが巻き解かれる。巻き解かれたメディアMは、保持部12から記録部15に向かう搬送経路に沿って搬送される。本実施形態では、保持部12には、保持するロール体R1からメディアMを繰り出す駆動源となる給送モーター27が設けられている。給送モーター27は、搬送ユニット16と共に、搬送部の一例を構成する。なお、第1ロール体R1と搬送ベルト21との間の部分のメディアMに過度なテンションがかからなければ、給送モーター27はなくてもよい。なお、図1に示すように、第1ロール体R1からメディアMを引き出す方法には、図1に実線で示すように第1ロール体R1の外面が記録面(第1面Ma)となる第1引出し方式と、図1に二点鎖線で示すように第1ロール体R1の外面が記録面と反対の面である第2面Mbなる第2引出し方式とがある。
【0020】
図2図4に示すように、皺抑制装置13は、保持部12と記録部15との間の部分におけるメディアMの第2面Mbに接触可能なテンションバーの一例としてのテンションローラー31と、テンションローラー31にメディアMを巻き付け可能なローラー対32とを備える。ローラー対32のうち一方がテンションローラー31に巻き付けられた部分よりも上流側の部分の第1面Maを押さえるとともに、ローラー対32のうち他方がテンションローラー31に巻き付けられた部分よりも下流側の部分の第1面Maを押さえることによりテンションローラー31にメディアMを巻き付ける。
【0021】
テンションローラー31は、保持部12と記録部15との間でメディアMの第2面Mbを押圧してメディアMにテンションを付与する。ローラー対32によってテンションローラー31にメディアMを半周以上巻き付け可能である。ローラー対32は、テンションローラー31に対して一方側に離れた位置に二本並んで配置される第1ガイドローラー33と第2ガイドローラー34との一対で構成される。第1ガイドローラー33はローラー対32の一方に対応し、第2ガイドローラー34はローラー対32の他方に対応する。第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMは、第1ガイドローラー33及び第2ガイドローラー34にガイドされた状態でテンションローラー31の外周面の一部に巻き付けられる。このとき、メディアMがテンションローラー31の外周面に接触するときの反作用により、テンションローラー31がメディアMを各ガイドローラー33,34から離れる方向に押圧することができる。これにより、メディアMに張力が付与される。なお、テンションローラー31は各ガイドローラー33,34から離れる方向に付勢されていなくてもよいし、バネなどの弾性部材によって各ガイドローラー33,34から離れる方向に付勢されていてもよい。
【0022】
テンションローラー31の外周面は、ガイドローラー33,34の外周面に比べ高摩擦面となっている。ユーザーは、第1ロール体R1から引き出したメディアMを皺のない張った状態でテンションローラー31に巻きつける。最初にメディアMを張った状態にセットすれば、メディアMは、テンションローラー31の外周面である高摩擦面によって少なくとも幅方向Xに滑りしにくいので、テンションローラー31に巻き付けられる過程でメディアMが幅方向Xに引き伸ばされた状態が維持される。これによりメディアMの皺が加することが抑制される。例えば、メディアMが蛇行または斜行することによりメディアMに発生する皺は、加圧ローラー17aで押し付けられたときに折れの原因になる。この種の折れを防ぐために皺抑制装置13はメディアMに対して幅方向Xのテンションが付与される状態を維持することにより、皺抑制装置13よりも搬送方向Y1の下流の位置でメディアMの皺が増加することを抑制する。なお、テンションローラー31に替え、回転不能なテンションロッドを、テンションバーの一例としてもよい。要するに、メディアMにテンションを付与することができればよい。
【0023】
剥離装置14は、メディアMが巻き重ねられたロール体R2を回転可能に保持する。剥離装置14が保持するロール体R2は、記録部15と搬送ベルト21との間を通過した記録後のメディアMが巻き重ねられたものである。このロール体R2を、以下では第2ロール体R2ともいう。剥離装置14は、保持するロール体R2にメディアMを巻き取る駆動源となる巻取モーター28を備える。剥離装置14は、巻取モーター28の駆動力で、所定の回転トルクで第2ロール体R2を回転させることによって、メディアMを搬送ベルト21から剥離する。剥離装置14は、剥離したメディアMを第2ロール体R2として巻き取ることで、記録後のメディアMを回収する。
【0024】
なお、Z方向において搬送ベルト21の下方には、不図示の清掃部および乾燥部が設けられている。清掃部は、支持面21aに付着したインク等の液体や毛羽等の異物を除去するために支持面21aを清掃する。清掃部は、例えば、洗浄液で濡れたブラシを支持面21aに接触させることによって、支持面21aを清掃する。乾燥部は、清掃後に洗浄液で濡れた支持面21aを加熱乾燥させる。搬送ベルト21の下方において、乾燥部は、搬送ベルト21が周回方向の上流側に位置し、乾燥部は周回方向の下流側に位置する。搬送ベルト21が周回することによって、支持面21aの清掃と、洗浄液で濡れた支持面21aの乾燥とが順次行われる。また、乾燥部による加熱により粘着層25の粘着力が高くなる。
【0025】
ハウジング11a内には、インク等の液体を収容する複数の液体収容容器(図示略)が配置されている。複数の液体収容容器は、異なる種類の液体をそれぞれ収容する。例えば、複数の液体収容容器は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローを含む色の異なるインクをそれぞれ収容する。液体収容容器が収容する液体は、不図示のチューブを通って記録部15に供給される。記録部15は、液体収容容器から供給された液体を記録ヘッド18のノズル18Nから吐出する。液体収容容器は、例えば、インクタンク、インクカートリッジおよびインクパックのうちいずれかにより構成される。
【0026】
制御部100は、記録装置11を制御する。制御部100は、押付部17、搬送ユニット16の搬送モーター26、記録部15、ノック部40および除去部50を制御する。
次に、図2図3を参照して、皺抑制装置13の構成について説明する。
【0027】
図2に示すように、皺抑制装置13を構成するテンションローラー31の外周面には、高摩擦材料よりなる摩擦部材31aが設けられている。つまり、テンションローラー31におけるメディアMの第2面Mbと接触する部分には、摩擦部材31aが設けられている。摩擦部材31aは、例えば、テンションローラー31の外周面に貼り付けられた、少なくとも表面層が高摩擦材料よりなるテープである。テンションローラー31の外周面の摩擦係数は、ローラー対32を構成する2本のガイドローラー33,34の外周面の摩擦係数よりも高くなっている。
【0028】
皺抑制装置13を構成する3本のローラー31,33,34は、記録装置11の後方に延出するフレーム(図示略)に対し回転可能に支持されている。3本のローラー31,33,34は軸線方向がX軸と平行である。
【0029】
皺抑制装置13の主ローラーであるテンションローラー31は従動ローラーであり、搬送ベルト21によってメディアMが引っ張られる力によりメディアMの搬送量と同じ量だけ回転する。2本のガイドローラー33,34は、例えば、金属ローラーである。このため、2本のガイドローラー33,34は、テンションローラー31に比べ、布帛等のメディアMが多少すべり易い。
【0030】
皺抑制装置13では、テンションローラー31がZ方向において一番高くに位置し、ローラー対32は、Z方向においてテンションローラー31に比べ下方に位置する。テンションローラー31に対して、第1ガイドローラー33が搬送方向Y1の上流に位置し、第2ガイドローラー34が搬送方向Y1の下流に位置する。第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMは、第1ガイドローラー33の外周面の一部を経由して上方へ搬送されたのち、テンションローラー31の外周面に180度(半周)以上の角度範囲に亘って巻き付けられる。図2に示す例では、2本のガイドローラー33,34の間隔が、テンションローラー31の直径よりも狭く、メディアMはテンションローラー31の外周面のうち約200度の角度範囲に亘って巻き付けられる。皺抑制装置13の各ローラー31,33,34を経由したメディアMは、搬送ベルト21の上面に向かって搬送される。
【0031】
図1図2に示すように、本実施形態の記録装置11は、保持部12と記録部15との間におけるメディアMの第1面Maとは反対側の面である第2面Mbをノック可能なノック部40を備える。本例のノック部40は、保持部12と搬送ユニット16との間におけるメディアMの第2面Mbをノック可能な位置に設けられている。
【0032】
また、ノック部40とメディアMあるいはメディアMの搬送経路を挟む反対側の位置に、第1面Maからの異物を除去可能な除去部50が設けられている。図2に示す例では、除去部50は、メディアMの第1面Maにガスを吹き付ける吹付部50Aである。吹付部50Aは、ノズル53からメディアMに向かってガスの一例として空気Fを吹き付ける。吹付部50Aは、ノック部40よりもメディアMの搬送方向Y1の下流となる位置に設けられている。吹付部50Aは、搬送方向Y1の上流に向かう方向に空気Fを吹き付ける。吹付部50Aは、ノック部40が第2面Mbをノックした振動によって第1面Maから飛散した毛羽等の異物を、空気Fを吹き付けることによって除去する。吹付部50Aからの空気流FによってメディアMから除去された毛羽等の異物は、記録ヘッド18と反対側の方向へ吹き飛ばされる。
【0033】
図2図4に示すように、ローラー対32のうち一のローラー33とテンションローラー31との間の部分におけるメディアMをノック可能なノック部40が設けられている。ノック部40は、ローラー対32のうち一のローラー33とテンションローラー31との間の部分における搬送方向Y1の中央部をノックする。これは、ノックしたときの振幅を大きくしメディアMに付与される振動を大きくするためである。また、メディアMの第2面Mbをノックするのは、次の理由による。メディアMの第1面Maをノックすると、ノック時の衝突で第1面Maに存在する繊維が破断するなど記録面を荒らす心配があるからである。荒れた第1面Maに液体が吐出されると、記録品質が低下する。そのため、ノック部40は、記録面である第1面Maと反対側の面である第2面Mbをノックする。なお、メディアMの種類によっては、メディアMの第1面Maをノックすることでも第1面Maの異物を除去するうえで効果はある。特にメディアMがノックにより破断し易い繊維を有していなければ、第1面Maをノックしても異物除去効果は得られる。本実施形態では、記録装置11を布帛等のメディアMに記録する捺染機の例とし、毛足の長い布帛よりなるメディアMにも記録面を傷めずに対応できるように第2面Mbをノックする。
【0034】
図2に示す例では、吹付部50Aのノズル53からの空気流Fは、第1ガイドローラー33の外周面に沿って後方へ流れる。これにより、除去された異物が、ノック箇所よりも搬送経路の下流に位置する部分のメディアMに再付着することが回避される。吹付部50Aからの空気Fの吹き付けによってメディアMは多少ばたつくが、その下流にテンションローラー31が位置するので、そのばたつきの影響がテンションローラー31よりも下流へ伝播することが抑制される。
【0035】
<ノック部の構成>
次に、図3を参照してノック部40の詳細な構成について説明する。図3に示すように、ノック部40は、第2面Mbに当接可能な当接部41aを有するカム41と、カム41を回転させる駆動部の一例としての電動モーター44とを備える。カム41は、カム41と一体に回転可能な回転軸42を有する。回転軸42の両端部は一対の軸受43に回転可能に支持されている。電動モーター44の出力軸は、回転軸42の一端部と連結されている。なお、電動モーター44と回転軸42との間に減速機構が介在する構成でもよい。
【0036】
メディアMの搬送方向Y1と交差しかつ搬送ユニット16がメディアMを支持する支持面21aと平行な方向である幅方向Xにおいて、カム41の配置長さは、メディアMの幅寸法以上である。記録装置11が対応可能なメディアMの幅が複数種類ある場合、カム41の配置長さは、最大幅のメディアMの幅寸法以上であることが好ましい。図3では、カム41の配置長さおよび配置領域を示すため、搬送ベルト21の幅領域に相当するベルト幅領域BLを示している。図3に示すように、ベルト幅領域BLは、メディアMの第2面Mbの全域を搬送ベルト21の支持面21aに貼り付ける必要があることから、メディアMの幅領域よりも少し広く設定されている。カム41は、メディアMの幅全体に振動を付与できるように、メディアMの幅領域よりも少し広い範囲に亘り配置されている。本例では、カム41は、メディアMの幅全体に振動を付与できれば足りるため、メディアMの幅領域よりも広く、且つベルト幅領域BLよりも狭い範囲に亘り配置されている。なお、カム41をベルト幅領域BLよりも広い領域に配置してもよい。
【0037】
電動モーター44は制御部100により制御される。制御部100が電動モーター44を駆動させることでカム41は回転する。カム41が回転することで、図6に示すように、当接部41aがメディアMの第2面Mbをノックする。ノック部40は、カム41によって周期的にメディアMをノックする。
【0038】
ノック部40は、第2面Mbから離間する図5に示す離間位置と、第2面Mbに当接する図6に示す当接位置との間を移動することによって、第2面Mbをノックする。図5に示すように、カム41は、偏心カムであり、カム41の回転中心と当接部41aまでの距離は、回転中心から当接部41a以外の部分までの距離よりも長くなっている。カム41は、偏心した位置にある回転軸42を中心に回転する。
【0039】
<除去部の構成>
次に、除去部50の詳細な構成を説明する。除去部50は、図2に示す吹付部50Aであるが、図4に示す吸引部50Bで構成することもできる。まず、吹付部50Aの構成を説明する。
【0040】
図2に示すように、吹付部50Aは、複数のファン51とダクト52とを備える。ファン51は、例えば、ダクト52の端部に配置される。複数のファン51は、例えば、軸流ファンである。複数のファン51はダクト幅方向に並んで配置されている。ファン51の数は、メディアMの幅、必要な風量および風速等に応じて適宜な数に設定してよい。なお、ファン51の数は、必要な風量および風速が得られれば、1個でもよい。
【0041】
ダクト52は、先端部にノズル53を有する。ファン51が駆動されると、ノズル53からメディアMの第1面Maにガスの一例である空気が吹き付けられる。ノズル53は、第1ガイドローラー33とテンションローラー31との間の部分のメディアMの搬送経路を挟んでノック部40と対向する部分の第1面Maを指向する。あるいは、ノズル53は、ノック部40と対向する部分の第1面Maから少し離間したエリアを指向する。吹付部50Aのノズル53からの空気流Fは、ノック部40と対向する部分の第1面Maまたは前記エリアに向かって吹き付けられる。除去部50が吹付部50Aである場合、メディアMの搬送方向Y1と逆方向に気流を流すことで、記録ヘッド18へ異物が向かうことが抑制される。
【0042】
次に、図4に示す吸引部50Bの構成を説明する。図4に示すように、吸引部50Bは、帯電した異物を静電気力により吸引する静電吸引方式、または負圧により吸引気流を発生させて異物を吸引する負圧吸引方式である。静電吸引方式の場合、吸引部50BとメディアMの第1面Maとの間に電界を発生させたり、吸引部50Bのうち第1面Maと対向する面に電源の高電圧側が接続される第1電極(不図示)と、電源の低電圧側が接続される第2電極(不図示)と、を並べて配置して第1電極と第2電極との間に電界を発生させたりすることで、静電気力を発生させる。なお、第1電極と第2電極とは、互いに櫛歯状となるように形成することで第1電極と第2電極とが噛み合うようにすることが好ましい。これにより、電界を高密度にすることができ、集塵性能を向上できる。負圧方式の場合、不図示のファンを回転させることにより、メディアMの第1面Maから吸引部50Bに向かう側の圧力を発生させる。吸引部50Bは、ノック部40とメディアMあるいはメディアMの搬送経路を挟んで対向する位置に配置されている。吸引部50Bは、ノック部40によるメディアMの第2面Mbのノックにより第1面Maから飛散した異物を吸引により除去する。なお、吸引部50Bは、吸引した異物を回収するダクトボックスを備えてもよい。このように、除去部50が異物を「除去する」とは、ガス流で異物を吹き飛ばす除去のみならず、吸引によって異物を回収する除去も含む。
【0043】
<液体吐出方式のメリット>
記録部15が液体を吐出する液体吐出方式(インクジェット方式)の記録装置11である場合、ノズル18Nから液体を噴射するときに発生する噴流によってメディアMの表面に付着した塵埃や毛羽等の異物が舞い上がり、その異物が記録ヘッド18のノズル面18aに付着する場合がある。ノズル面18aに付着した異物は、吐出不良の原因になる。例えば、ノズル18Nから吐出される液滴が、ノズル18Nの近傍に付着している異物に接触すると、液滴の飛翔経路が曲がってしまう。これが原因で液滴の着弾位置がずれてしまい、記録品質が低下する。また、ノズル面18aに付着した異物は、ノズル18Nから液滴が吐出されないドット抜け等の吐出不良やノズル18Nの目詰まりの原因となる。これに対して、本実施形態では、記録部15よりも搬送方向Y1の上流位置で、ノック部40が事前にメディアMの記録面となる第1面Maに付着している異物を除去する。このため、メディアMと共に記録部15の周辺まで侵入する異物の量を低減できる。この結果、記録ヘッド18が液体を吐出したときの噴流によって舞い上がる異物の量を低減できる。したがって、ノズル面18aへの異物の付着に起因する吐出不良および目詰まりの低減が可能である。
【0044】
<記録装置の電気的構成>
次に、図7を参照して記録装置11の電気的構成について説明する。
制御部100には、記録部15、搬送モーター26、ノック部40および除去部50が電気的に接続されている。詳しくは、ノック部40はその電動モーター44が、除去部50はそのファン51または静電吸引部あるいは負圧吸引部が、それぞれ制御部100に接続されている。制御部100は、搬送モーター26を制御することで、搬送ベルト21が所定の搬送速度になるように制御する。また、制御部100は、搬送ベルト21の駆動により引っ張られるメディアMのテンションが過度にならないように搬送モーター26の出力トルクを制御し、保持部12に保持された第1ロール体R1から搬送ベルト21までにおけるメディアMのテンションを調整可能である。本実施形態では、給送モーター27および巻取モーター28は、記録装置11以外の別の装置の制御部(不図示)により制御される。なお、制御部100が、給送モーター27および巻取モーター28を制御する構成としてもよい。
【0045】
また、制御部100には、入力部61および操作部62が電気的に接続されている。入力部61は、各種のデータを入力可能な入力機能を有する通信インターフェイスである。制御部100は、入力部61を介して印刷データPDを入力する。印刷データPDには、メディアMの種類を示すメディア種情報が含まれる。
【0046】
操作部62は、ユーザーが記録装置11に対して各種の指示を与えるために操作される操作スイッチを有する。操作部62は、表示部を備える操作パネルであってもよい。操作部62には、電源スイッチおよび選択スイッチ等が含まれる。ここで、表示部をタッチパネルにより構成し、表示部の操作機能が操作部62の一部を兼ねてもよい。
【0047】
本実施形態では、制御部100は、ノック部40および除去部50のオン/オフを制御する。制御部100は、ユーザーが操作部62を操作した指示に基づいてノック部40および除去部50のオン/オフを制御してもよい。すなわち、ユーザーは、例えば操作パネルの表示部に表示された設定画面で、操作部62を操作してノック部40および除去部50のオン/オフを選択できる構成としてもよい。ユーザーは、メディアMが、塵埃や毛羽等の異物を除去する必要がある種類のメディアMである場合、ノック部40および除去部50のオンを選択し、異物を除去する必要のない種類のメディアMである場合、ノック部40および除去部50のオフを選択する。ここで、メディアMが布帛である場合、毛羽等の異物を除去する必要のある種類のメディアMとしては、コットン(木綿)およびウールを挙げることができる。また、毛羽等の異物を除去する必要がない種類のメディアMとしては、シルク(絹)およびナイロン等の化学繊維を挙げることができる。
【0048】
また、制御部100は、印刷データPD中のメディア種情報に基づいて、ノック部40および除去部50のオン/オフの制御を行ってもよい。制御部100は、印刷データPDに含まれるメディア種情報を基に、メディア種が異物を除去する必要がある第1メディア種であれば、ノック部40および除去部50をオンに制御する。一方、制御部100は、印刷データPDに含まれるメディア種情報を基に、メディア種が異物を除去する必要がない第2メディア種であれば、ノック部40および除去部50をオフに制御する。このように、制御部100が、メディア種情報を基にノック部40および除去部50のオン/オフ制御を行ってもよい。さらに、制御部100が、メディア種情報を基に、ノック部40と除去部50とのうち少なくとも1つを選択してオンにする選択制御を行ってもよい。つまり、制御部100は、ノック部40および除去部50のうち少なくとも1つをオンさせる3つの組み合わせに、全てをオフにする1つを加えた4つの組み合わせの中からどれを選択するかを、メディア種に応じて切り替えてもよい。
【0049】
なお、制御部100は、除去部50が、吹付部50A又は負圧方式の吸引部50Bである場合、メディア種に応じてファン51(ファン)の回転数を変化させてもよい。例えば、メディアMとしてカーペットのようにその第1面Maから異物が除去しにくい種類の場合はファン51の回転数を増加させ、メディアMとして重量の軽い薄布のようにその姿勢が変化しやすい種類の場合はファン51の回転数を減少させる。これにより、メディア種の特性に応じて、異物の除去能力を調整できる。
【0050】
また、制御部100は、除去部50が、静電吸引方式の吸引部50Bである場合、メディア種に応じて吸引部50BとメディアMの第1面Maとの間の電界の大きさを変化させたり、第1電極(不図示)と第2電極(不図示)との間の電圧(電界)の大きさを変化させたりしてもよい。
【0051】
また、制御部100は、メディアMの種類に関するメディア種情報を取得し、メディア種情報を基に特定されるメディア種に応じて、ノック部40がメディアMをノックするノック頻度およびノック強度のうち少なくとも一方を変更してもよい。本実施形態では、制御部100は、メディア種情報を取得し、メディア種情報を基に特定されるメディア種に応じて、カム41の回転速度を変更することで、ノック頻度およびノック強度のうち少なくとも一方を制御する。
【0052】
メディアMが布帛である場合、コットン、ウール、ナイロン、シルクなどのメディア種がある。メディアMが布帛である場合、布帛の繊維の材質が、メディア種となる。一般にメディアMがコットンおよびウールである場合、毛羽が多い。このように毛羽の多いメディア種を第1メディア種とする。制御部100は、第1メディア種である場合、カム41の回転速度を高速に制御し、ノック頻度を増加させる。ここで、ノック頻度は、単位時間当たりに当接部41aがメディアMの第2面Mbに接触する回数である。また、カム41の回転速度を変化させると、カム41がメディアMをノックするノック強度が変化する。ここで、ノック強度は、当接部41aがメディアMの第2面Mbをノックする強さである。カム41の回転速度が高速になると、当接部41aが円周上の軌道を移動する移動過程において、振動していないときのメディアMの第2面Mbと直交する方向の速度成分が大きくなり、当接部41aがメディアMに衝突するときの衝突速度が大きくなる。当接部41aの大きな衝突速度は、メディアMを強くノックしたことに等しい。カム41の回転速度を高速にすると、ノック強度が大きくなり、カム41の回転速度を低速にすると、ノック強度が小さくなる。制御部100は、第1メディア種である場合、カム41の回転速度を高速に制御し、ノック強度を強くする。
【0053】
また、メディアMがナイロンおよびシルクである場合、毛羽が少ない。このように毛羽の少ないメディア種を第2メディア種とする。制御部100は、第2メディア種である場合、カム41の回転速度を低速に制御し、ノック頻度を減少させる。また、制御部100は、第2メディア種である場合、カム41の回転速度を低速に制御し、ノック強度を弱くする制御を行うことも可能である。また、制御部100は、第2メディア種である場合、カム41を回転させず、ノックを中止してもよい。
【0054】
さらに、薄いメディアまたは強度の弱い材質のメディア種は、ノックの衝撃が繰り返し与えられたり、1回のノックでも強い衝撃が与えられたりすると破れやすい。このように破れやすいメディア種を第2メディア種とする。制御部100は、第2メディア種である場合、ノック頻度を低くするため、カム41の回転速度を低速に制御する。これにより、カム41がメディアMの第2面Mbをノックするノック頻度が低くなり、第2メディア種のメディアMの破れを防止する。また、制御部100は、第2メディア種である場合、ノック強度を弱くするため、カム41の回転速度を低速に制御する。これにより、カム41がメディアMの第2面Mbをノックするノック強度が弱くなり、第2メディア種のメディアMの破れを防止する。また、厚いメディアまたは強度の強い材質のメディア種は、ノックの衝撃が繰り返し与えられたり、ノックによる強い衝撃が与えられたりしても破れにくい。このように破れにくいメディア種を第1メディア種とする。制御部100は、第1メディア種である場合、ノック頻度を高めるため、カム41の回転速度を高速に制御する。これにより、カム41がメディアMの第2面Mbをノックするノック頻度が高くなり、第1メディア種のメディアMからの異物除去効果を高める。また、制御部100は、第1メディア種である場合、ノック強度を高めるため、カム41の回転速度を高速に制御する。これにより、カム41がメディアMの第2面Mbをノックするノック強度が強くなり、第1メディア種のメディアMからの異物除去効果を高める。
【0055】
このように、制御部100は、メディアMが布帛である場合、繊維の種類から規定されるメディア種に応じてカム41の回転速度を制御する。また、制御部100は、メディアMが布帛以外の例えば紙等のメディア種である場合、メディアMの厚さや材質から規定されるメディア種に応じてカム41の回転速度を制御する。制御部100は、第2メディア種であるときは、第1メディア種であるときの第1ノック頻度よりもノック頻度の低い第2ノック頻度でカム41にメディアMをノックさせる。また、制御部100は、第2メディア種であるときは、第1メディア種であるときの第1ノック強度よりもノック強度の小さい第2ノック強度でカム41にメディアMをノックさせる。
【0056】
また、制御部100は、ノック頻度とノック強度とをそれぞれ独立に制御することも可能である。ノック1回分の回転角である単位回転角だけカム41が回転する期間を単位期間とする。制御部100は、単位期間のうちカム41がメディアMをノックする期間であるノック期間ではメディア種に応じたノック強度に合わせた回転速度で電動モーター44を制御し、ノック終了から次回のノック開始までの非ノック期間ではメディア種に応じたノック頻度に合わせた回転速度で電動モーター44を制御する。つまり、制御部100は、カム41の非ノック期間における回転速度を制御することによりノック頻度を調整し、カム41のノック期間における回転速度を制御することによりノック強度を調整する。なお、ノックは記録中に連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
【0057】
ノックを断続的に行う場合、制御部100は、ノックを行う期間が到来する度に、電動モーター44を駆動させることで、カム41を断続的に回転させる。ノックを行う期間であるノック作動期間としては、キャリッジ19の走査中の期間、またはメディアMの間欠搬送が行われる搬送中の期間が挙げられる。制御部100は、ノック作動期間が到来する度に、電動モーター44を一駆動させる。ここで、電動モーター44の一駆動当たりの回転量によって、ノック回数が決まる。例えば、一駆動当たりのカム41の回転量を大きくすると、ノック回数が増加し、一駆動当たりのカム41の回転量を小さくすると、ノック回数が減少する。ノック回数はノック頻度とは異なる。ノック回数はカム41の回転量で決まり、ノック頻度はカム41の回転速度で決まる。カム41の回転速度が一定の下では、ノック回数に応じてノック開始からノック終了までのノック作動時間が変化する。これに対して、ノック頻度は、ノックから次のノックまでの間隔時間が変化する。
【0058】
また、一駆動当たりのカム41の回転速度を大きくすると、ノック強度が大きくなり、一駆動当たりのカム41の回転速度を小さくすると、ノック強度が小さくなる。よって、制御部100は、メディア種に応じて電動モーター44の一駆動当たりの回転速度および回転量を選択することにより、メディア種に応じてノック強度およびノック回数を独立に制御することが可能である。例えば、一駆動当たりのノック回数は変更せずにノック強度のみ変更してもよい。また、ノック強度を変更せずに一駆動当たりのノック回数を変更してもよい。さらに、ノック強度を大きくした場合にノック回数を増やし、ノック強度を小さくした場合にノック回数を減らしてもよい。
【0059】
また、制御部100は、メディア種に応じて電動モーター44の一駆動当たりの回転速度および回転量を選択することにより、メディア種に応じてノック頻度とノック回数を制御してもよい。ノック頻度が一定である場合、ノック回数に応じてノック開始からノック終了までのノック作動時間が変化する。例えば、カム41の回転を検出するロータリーエンコーダー等の回転検出器を設け、制御部100は、回転検出器が検出するカム41の回転量が、ノック回数に応じた値に達すると、電動モーター44の駆動を停止させる。また、カム41の回転量は、カム41の回転速度と回転時間との積で示される。このため、制御部100は、ノック頻度とノック回数の制御を、メディア種に応じて電動モーター44の一駆動当たりの回転速度および回転時間を選択することで行ってもよい。また、制御部100は、ノック作動期間が到来する度にカム41を駆動させる場合、メディア種に応じてノック頻度のみ制御したり、メディア種に応じてノック強度のみ制御したり、メディア種に応じてノック回数のみ制御したりしてもよい。このように、制御部100は、電動モーター44の回転速度、単位期間におけるノック期間と非ノック期間との各回転速度、および1駆動当たりの回転量のうちの少なくとも1つをメディア種に応じて制御することで、ノック頻度、ノック強度およびノック回数のうち少なくとも1つをメディア種に応じて独立に制御してもよい。
【0060】
制御部100は、記録装置11に対する記録制御を含む各種の制御を行う。制御部100は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、制御部100は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、制御部100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサー、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサーは、1つ以上のCPU並びに、1つ以上のRAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0061】
次に、記録装置11の作用について説明する。
ユーザーは、メディアMをセットすると、操作部62を操作して記録装置11に記録開始指示を与える。制御部100は、指示された印刷データPDを基に記録装置11を制御する。この結果、記録装置11は、メディアMに印刷データPDに基づく画像を記録するための運転を開始する。
【0062】
搬送ベルト21が回転することでメディアMは搬送される。このとき、メディアMは皺抑制装置13の各ローラー31,33,34に巻き付けられているので、搬送ベルト21の搬送力で引っ張られ、その引張り力によって各ローラー31,33,34は回転する。
【0063】
搬送モーター26と同期して駆動され、制御部100により搬送ベルト21の駆動源である搬送モーター26の出力トルクが制御され、保持部12に保持された第1ロール体R1から搬送ベルト21までにおけるメディアMのテンションが過度にならず且つ弛みが発生しないように適切な値に調整される。
【0064】
保持部12に保持された第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMは、ローラー33とテンションローラー31との間の部分の第2面Mbがノック部40にノックされることで、第1面Maから異物が飛散する。第1面Maから飛散した異物は除去部50により除去される。
【0065】
吹付部50Aのノズル53は、第1面Maに向かって搬送方向Y1の上流に向かって空気流を吹き付ける。メディアMの記録面となる第1面Maに付着していた毛羽等の異物が、吹き付けられた空気流Fによって予め記録前に除去される。また、除去部50が吸引部50Bである場合、第1面Maから飛散した異物は吸引部50Bに吸引されることで除去される。この結果、搬送ユニット16へは第1面Maから異物が除去されたメディアMが供給される。また、ノック部40はメディアMの第2面Mbをノックするので、搬送ユニット16へ供給されるメディアMの第1面Maは繊維が破断されるなどの荒れた面となっていない。
【0066】
皺抑制装置13のテンションローラー31によってテンションが付与される。メディアMにテンションが付与されることで、メディアMの皺が除去される。皺が除去されたメディアMが搬送ベルト21へ供給される。
【0067】
押付部17は、搬送ベルト21の上面における押付領域でメディアMを搬送ベルト21上に押し付ける。このとき、ベルト搬送方向Yに往復移動する加圧ローラー17aによってメディアMは粘着層25に押し付けられ、搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられる。記録部15は、搬送ベルト21の上面に貼り付けられたメディアMに対して記録位置で記録する。剥離装置14は、搬送ベルト21の上面に貼り付けられた記録後のメディアMを搬送ベルト21から剥離する。このように、搬送ベルト21が周回することによって、メディアMの清掃、メディアMの貼り付け、メディアMへの記録、記録後のメディアMの剥離が、順次行われる。
【0068】
例えば、メディアMにノズル53から空気流を吹き付ける構成であると、メディアMのローラー間の部分はローラーの外周面に支持されていないので、メディアMが空気流によってばたつくことになる。しかし、ノック箇所の下流にテンションローラー31が位置するので、メディアMのばたつきの揺れが、テンションローラー31よりも搬送方向Y1の下流へ伝播しにくい。例えば、メディアMが搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられる過程で、メディアMが微小に揺れたり微小に位置がずれたりすると、その揺れた位置やずれた位置のままメディアMが支持面21aに貼り付けられる可能性がある。この場合、メディアMの搬送ベルト21への貼り付け位置のずれや皺が発生する場合がある。メディアMに発生した皺は、加圧ローラー17aで押し付けられると折れになる。メディアMの貼り付け位置のずれやそのずれに起因する折れは、画像の記録位置ずれ不良の原因になる。
【0069】
これに対して、本実施形態では、吹付部50Aのノズル53から空気流が吹き付けられる吹付箇所が、テンションローラー31よりも搬送方向Y1の上流なので、空気流が吹き付けられたメディアMがばたついても、そのばたつきの影響がテンションローラー31よりも下流へ伝播することが抑制される。この結果、メディアMの搬送ベルト21への貼り付け位置精度が高く保たれ、皺を誘発する心配がないので、加圧ローラー17aで押し付けられるときにメディアMに折れも発生しない。
【0070】
メディアMが搬送ベルト21の支持面21aに位置精度よく貼り付けられることから、記録部15のノズル18Nから吐出された液滴が着弾する位置精度が高まり、メディアMに品質の高い画像を記録することができる。
【0071】
カム41は、配置長さがメディアMの幅寸法よりも長いので、メディアMの幅方向全域をノックする。このため、メディアMの第1面Maに付着する異物を幅方向Xにばらつきなく効果的に除去できる。このため、記録ヘッド18がノズル18Nから液滴を吐出したときに発生する噴流によってメディアMの第1面Maから舞い上がる異物が極めて少なく、ノズル面18aに付着した異物に起因する吐出不良の発生頻度が低くなる。よって、メディアMの記録面となる第1面Maに残る異物に起因する記録品質の低下を抑制できる。
【0072】
本実施形態のノック部40は、カム41を回転させて機械的にノックする構成なので、メディアMに比較的大きな振動を付与できる。具体的には、回転軸42から当接部41aまでの距離を、カム41を製造する際に自由に設計できるので、メディアMに比較的大きな振動を付与できる構造とすることができる。例えば、振動モーターを用いて振動を付与する構成である場合、振動体にメディアMを接触させて振動を伝えるので、付与できる振動の振幅が非常に小さく、メディアMの種類によっては、付着した毛羽等の異物を除去する効果が小さい。本実施形態のノック部40は、振動モーター等を用いてメディアMに振動を付与する構成に比べ、メディアMに付与できる振動の振幅が大きいので、高い異物除去効果が得られる。
【0073】
本実施形態では、ノック箇所よりも搬送方向Y1の下流位置にメディアMが密着状態で巻き付けられるテンションローラー31が位置し、その下流への振動の伝播が抑制される。このため、記録中いつでもメディアMをノックすることができる。記録装置11がシリアル記録方式である場合、走査期間中でも搬送期間中でもメディアMをノックできる。特に、本実施形態では、テンションローラー31の高摩擦面によってメディアMが滑りにくいため、メディアMをノックしても、メディアMの搬送位置精度にも影響しにくいし、走査時の記録位置ずれにも影響しにくい。このため、搬送期間中にも走査期間中にも、メディアMをノックすることができる。なお、搬送制御はメディアMの搬送負荷を考慮してテンション制御しているので、搬送期間中よりも走査期間中にノックした方が、ノックの影響はより少なく済む。
【0074】
1回の走査につき複数回ノックする構成である場合、例えば、走査期間中にメディアMをノックする構成では、メディアMの同じ箇所を繰り返しノックできる。この場合、ノック箇所周辺エリアの高い異物除去効果が得られる。これに対して、メディアMを搬送期間中にノックする構成であれば、搬送方向Y1にメディアMの異なる箇所をノックできるので、搬送方向Y1においてメディアMを短い距離間隔で複数の箇所をノックすることができる。これにより、搬送方向Y1においてメディアMの清掃が不足している箇所が増加することを抑制できる。よって、清掃不足に起因する記録ヘッド18の吐出不良の発生頻度を低減できる。
【0075】
また、制御部100は、取得したメディア種情報を基に特定されるメディア種に応じて、ノック部40がメディアMをノックするノック頻度またはノック強度を変更する制御を行う。詳しくは、制御部100は、メディア種情報を基に特定されるメディア種に応じて、カム41の回転速度を変更する。
【0076】
制御部100は、メディア種が、例えば、コットンやウール等の毛羽の多い第1メディア種である場合、カム41の回転速度を高速に制御し、ノック頻度またはノック強度を高める。また、メディア種がナイロンやシルク等の毛羽の少ない第2メディア種である場合、カム41の回転速度を低速に制御し、ノック頻度またはノック強度を低くする。また、制御部100は、第2メディア種である場合、カム41を回転させず、ノックを中止してもよい。さらに、制御部100は、薄いメディアまたは強度の弱い材質のメディア種である第2メディア種である場合、カム41の回転速度を低下させる。これにより、メディアMの破れを抑制できる。また、制御部100は、厚いメディアまたは強度の強い材質のメディア種である第1メディア種である場合、カム41の回転速度を増加させる。これにより、メディアMから異物を除去する異物除去効果が高まる。また、制御部100は、ノック作動期間が到来する度に電動モーター44を一駆動させ、ノック動作を間欠的に行う場合、メディア種に応じて一駆動当たりのノック頻度とノック強度とノック回数のうち少なくとも1つを変更してもよい。制御部100は、メディアMが第1メディア種である場合、第2メディア種であるときよりも、ノック頻度を高くし、ノック強度を大きくし、ノック回数を多くする。このとき、ノック頻度、ノック強度およびノック回数のうち2つを変更してもよいし、1つを変更してもよい。
【0077】
なお、第1ロール体R1と第1ローラーである第1ガイドローラー33との間における搬送経路は、図1に実線で示す第1引出し方式の経路と、図1に二点鎖線で示す第2引出し方式の経路とで異なる。このため、第1ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMの第2面Mbをノック可能な位置にノック部40を配置する構成とすると、ロール体R1の引出し方式を変える度にノック部40の配置位置を変える必要がある。このとき、ノック部40と除去部50との位置を調整する調整機構を設ける必要があり、調整機構を用いた調整作業がユーザーにとって負担となる。また、メディアMが巻き解かれるに連れてロール体R1の直径は変化する。ロール体R1の直径が変化すると、これに応じてロール体R1と第1ローラーとの間の搬送経路が変化する。このため、ロール体R1の直径の変化に応じて調整機構を調整する調整作業が必要である。例えば、適切な調整時期および調整位置に調整作業が行われなければ、メディアMを適切にノックできなくなりメディアMの清掃不足が発生する可能性がある。
【0078】
これに対して、本実施形態のノック部40は、第1ローラーを含むこれよりも搬送方向Y1の下流の搬送経路上で隣に位置する2つのローラー間におけるメディアMの第2面Mbをノックする。言い換えれば、本実施形態のノック部40は、テンションローラー31から第1ガイドローラー33までの搬送経路におけるメディアMの第2面Mbと、テンションローラー31から第2ガイドローラー34までの搬送経路におけるメディアMの第2面Mbと、の少なくとも一方をノックする。これらの搬送経路は、ロール体R1の直径が変化しても変化することがないので、前述の調整機構の設置およびその調整作業が不要である。このため、メディアMの第1面Maから異物を除去する清掃機構の構成が簡単で済むうえ、メディアMを適切にノックできないことによる清掃不足を回避できる。
【0079】
上記実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)記録装置11は、保持部12と記録部15との間におけるメディアMの第1面Maとは反対側の面である第2面Mbをノック可能なノック部40を備える。ノック部40は、第2面Mbから離間する離間位置と、第2面Mbに当接する当接位置との間を移動することによって、第2面Mbをノックする。よって、ノック部40がメディアMの第2面Mbをノックしたときの衝撃により発生する振動によってメディアMの第1面Maから、付着していた異物が飛散する。これにより、メディアMから異物を除去できる。よって、送風のみに比べ高い異物除去効果を得ることができる。また、記録面である第1面Maをノックすると、メディアMの記録面を傷める可能性がある。メディアMが例えば布帛である場合、繊維を切断することにより記録面を傷めるうえ毛羽等の新たな異物を増やすことにもなる。しかし、この構成では、記録面である第1面Maと反対側の第2面Mbをノックするので、記録面に毛羽等の新たな異物を増やすなど記録面を傷める心配がない。よって、メディアMから異物を除去する高い異物除去効果が得られるうえ、メディアMの記録面を傷めることを抑制できる。
【0080】
(2)ノック部40とメディアMの経路を挟む反対側の位置に、第1面Maからの異物を除去可能な除去部50が設けられている。よって、ノック部40によってノックされたメディアMから飛散した異物を、除去部50によって除去できる。よって、メディアMに異物が再付着することを抑制できる。
【0081】
(3)除去部50は、メディアMの第1面Maにガスを吹き付ける吹付部50Aであって、ノック部40よりもメディアMの搬送方向Y1の下流となる位置に設けられている。よって、ノック部40によってノックされたメディアMから飛散した異物を、吹付部50Aから吹き付けたガス流により除去できる。よって、メディアMに異物が再付着することを抑制できる。また、ノック部40よりもメディアMの搬送方向Y1の下流となる位置から上流に向かってガス流が吹き付けられる。よって、異物が搬送方向Y1の下流に位置する記録部15へ流れることを回避できる。
【0082】
(4)ノック部40は、ローラー対32のうち一のローラーとテンションローラー31との間の部分におけるメディアMをノック可能に設けられている。よって、ローラー対32のうち一のローラーとテンションローラー31との間のテンションが付与された部分のメディアMがノックされる。また、ローラー対32のうち一のローラーとテンションローラー31との間の部分のメディアMの経路は、ロール体R1の径変化によって変化することがないので、メディアMの経路の変化に起因してノック部40が第2面Mbをノックできなくなる事態を回避できる。よって、メディアMの第2面Mbを適切にノックし、メディアMに適切な振動を付与できるので、高い異物除去効果が得られる。
【0083】
(5)ノック部40は、第2面Mbに当接可能な当接部を有するカム41と、カム41を回転させる電動モーター44と、を備える。よって、ノック部40を簡易な構成で実現できる。
【0084】
(6)メディアMの幅方向Xにおいて、カム41の配置長さは、メディアMの幅寸法以上である。よって、カム41はメディアMの幅全域に亘る範囲をノックできるので、メディアMの幅方向Xにおける異物除去効果のばらつきを低減できる。すなわち、メディアMの幅方向X全域で高い異物除去効果が得られる。
【0085】
(7)制御部100は、メディア種情報を取得し、メディア種情報を基に特定されるメディアMの種類に応じて、カム41の回転速度を変更する。よって、メディアMの種類に応じて、カム41の回転速度を変更するため、メディアMの種類に応じて異物飛散能力を最適化できる。例えば、異物が取れにくいメディアMでありかつ破れにくいメディアMである場合は、カム41の回転速度を上昇させ、破れやすいメディアMの場合は回転速度を減少させる。ここで、異物が飛散しにくいメディアMとは、毛足が長く、異物が潜りやすい、布帛(織物)、編物および不織布等を挙げることができる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態におけるノック部40とは異なる方式で、メディアMを振動させる振動付与機構を備えた構成である。第1実施形態とは異なる振動付与機構を備えること以外は、第1実施形態と同様の構成であるので、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
図1示すように、記録装置11は、メディアMの第1面Maに記録可能な記録部15と、メディアMが巻かれたロール体R1を保持可能な保持部12と、ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送可能な搬送部の一例を構成する搬送ユニット16と、を備える。
【0088】
記録装置11は、保持部12に支持されたロール体R1を正逆回転させる駆動源の一例としての給送モーター27を備える。制御部100は、電動モーター44および給送モーター27を制御する。また、制御部100には、エンコーダー29(図7も参照)が電気的に接続されている。
【0089】
記録部15は走査方向に移動してメディアMに記録するシリアル記録方式である。記録装置11は、記録部15がシリアル記録方式であるシリアルプリンターよりなる捺染機である。メディアMは、布帛(織物)、編物、不織布などである。シリアルプリンターよりなる記録装置11は、記録部15を走査方向に1回移動させることで1回の走査を行う。記録部15は、1回の走査で1走査(1パス)分の記録を行う。すなわち、記録装置11は、記録部15を1回走査させる走査途中にノズル18Nから液滴を吐出することで1走査分の記録を行う記録動作と、次の記録位置までメディアMを搬送させる搬送動作とを交互に行うことで、メディアMに記録する。
【0090】
保持部12に支持されたロール体R1から巻き解かれたメディアMを、ロール体R1と記録部15による記録が行われる記録位置との間の搬送経路に沿って案内する複数のローラー31,33,34は、搬送部の一例を構成する。つまり、皺抑制装置13を構成するローラー31,33,34は、搬送ユニット16とともに、搬送部の一例を構成する。
【0091】
すなわち、記録装置11は、保持部12に保持されたロール体R1と搬送ユニット16との間の部分に、第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送経路に沿って案内する複数のローラー31,33,34が配置されている。本実施形態では、複数のローラー31,33,34のすべてが、皺抑制装置13の構成要素である。なお、複数のローラーは、皺抑制装置13の構成要素以外のローラーを含んでもよい。例えば、第1ロール体R1と皺抑制装置13との間の搬送経路上の部分に1つまたは複数の他のローラーを設けてもよい。
【0092】
ここで、複数のローラー31,33,34のうち第1ロール体R1から繰り出されたメディアMが最初に巻き付けられるローラーを第1ローラーとする。本実施形態では、ローラー対32を構成する2つのガイドローラー33,34のうち搬送方向Y1の上流に位置する第1ガイドローラー33が、第1ローラーの一例に相当する。第1ガイドローラー33は、皺抑制装置13を構成する複数のローラー31,33,34のうち最も搬送方向Y1の上流に位置し、第1ガイドローラー33とロール体R1との間の搬送経路上には、メディアMをガイドする他のローラーは存在しない。
【0093】
なお、他のローラーが存在する構成である場合、複数のローラーのうち搬送経路上で最も搬送方向Y1の上流に位置するローラーが、第1ローラーの一例を構成する。また、他のローラーが1つのみ存在する場合、当該1つの他のローラーが第1ローラーの一例に相当する。本実施形態では、第1ロール体R1と第1ローラーとの間の部分のメディアMに弛みを形成する弛み形成動作と、メディアMを引っ張る引張り動作とを交互に行うことで、メディアMに振動を付与する。
【0094】
図7に示す制御部100は、給送モーター27を制御することで、ロール体R1と第1ローラーとの間の部分のメディアMに弛みと引張りとを交互に付与することにより、メディアMを振動させる。制御部100は、記録部15がメディアMへの記録のために走査方向に1回移動する走査期間の間に、弛み形成動作と引張り動作とを1回ずつ含む振動動作を2回以上行う。ここで、弛み形成動作とは、給送モーター27をロール体R1が正転する正転方向FR(図8参照)へ正転駆動させてロール体R1からメディアMを繰り出すことにより、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMに弛みを形成する動作である。引張り動作とは、給送モーター27をロール体R1が逆転する逆転方向BR(図9参照)へ逆転駆動させてロール体R1にメディアMを巻き取ることによりロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMにテンションを付与する動作である。弛み形成動作と引張り動作とのセットで、メディアMを一旦弛ませた後に引っ張ってメディアMにテンションを付与することで、メディアMを振動させる。そして、本実施形態では、制御部100は、1回の走査期間の間に、メディアMの弛み形成動作と引張り動作とを1回ずつ含む振動動作を2回以上行う。つまり、制御部100は、1回の走査期間にメディアMに2回以上の振動を付与する。1回の走査期間にメディアMを2回以上振動させることで、メディアMに付着した異物を飛散させる。
【0095】
本実施形態では、制御部100は、メディアMを2回以上振動させる振動付与動作を、走査期間ごとに毎回行う。ここで、走査期間とは、記録部15が走査する走査動作が行われる期間である。この走査期間には、メディアMを次の記録位置まで搬送する搬送動作が行われる期間は含まれない。例えば、制御部100は、走査動作と搬送動作とを一部重なるタイミングで行うことで、記録速度を高める制御を行ってもよい。この場合、走査動作が行われる期間のうち、搬送動作が重なるタイミングの期間を除いた期間が走査期間となる。制御部100は、搬送動作を行う搬送期間においては、振動動作を行わない。このため、搬送動作が振動動作の影響を受けることが回避される。本実施形態では、搬送動作期間中は、ロール体R1からメディアMを積極的に繰り出して搬送中のメディアMのテンションを調整することで安定した搬送動作を実現している。搬送動作中に振動付与動作を行うと、ロール体R1からメディアMを繰り出す制御ができなくなり、メディアMの安定な搬送ができなくなる。この場合、搬送中のメディアMのテンションが不安定となり、搬送位置精度が低下する虞がある。これは、メディアMのテンションが所定の想定範囲にあることを前提に搬送トルクおよび搬送速度が制御されているからである。制御部100が、給送モーター27を制御して振動付与動作を行わせることによって、本来、給送モーター27の制御によって搬送中のメディアMのテンションを安定化させる制御が行われなくなると、メディアMのテンションが想定範囲から外れてしまい、その影響でメディアMの搬送位置精度が低下してしまう心配がある。これを回避するため、制御部100は、走査期間中に給送モーター27を駆動させて振動付与動作を行わせる。
【0096】
本実施形態では、図8図9に示すように、メディアMを振動させる部分の第1面Maと対向する位置に除去部50が設けられている。除去部50は、第1実施形態のものと同様の構成である。つまり、除去部50は、吹付部50Aまたは吸引部50Bにより構成される。ここで、吹付部50Aは、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMの搬送経路の中央部と対向する位置よりも搬送方向Y1の下流となる位置に配置され、ノズル53から搬送方向Y1の上流に向かって空気流を吹き付けてもよい。また、吸引部50Bは、帯電した異物を静電気力により吸引する静電吸引方式、または負圧により吸引気流を発生させて異物を吸引する負圧吸引方式であってもよい。
【0097】
図7に示すように、制御部100は、エンコーダー29からの検出信号を基に、ロール体R1の回転量および回転速度を検出する。また、制御部100は、ロール体R1の使用開始時の初期の直径、メディアMの厚さ、および使用開始から繰り出されたメディアMの累計長さの情報を基に、ロール体R1の現在の直径を計算して取得している。制御部100は、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMに所定の弛み量で弛みを形成するために必要な繰出し量からロール体R1を正転させるべき回転量を算出する。制御部100は、その算出した回転量だけロール体R1を正転させるために必要なモーター回転量だけ給送モーター27を正転駆動する。制御部100は、このときの給送モーター27の回転量をエンコーダー29の検出信号を基に計数する。制御部100は、エンコーダー29の検出信号を基に計数する回転量が目標回転量に達すると、給送モーター27の正転駆動を停止する。この制御により、ロール体R1のその時々の直径に関わらず、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMにいつも同じ弛み量の弛みを形成可能である。
【0098】
この弛み形成動作によって、図8に示すように、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分に位置する二点鎖線で示す位置にあったメディアMが、図8に実線で示す状態に弛みが形成される。
【0099】
次に、制御部100は、図9に示すように、二点鎖線に示すように弛んだ部分のメディアMを、給送モーター27を逆転駆動させることで、巻き取る巻取り動作を行う。このとき、制御部100は、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMに所定のテンションを付与するまで、メディアMをロール体R1に巻き取る。制御部100は、給送モーター27の電流値を監視し、その電流値が、メディアMに付与すべき目標テンションに相当する負荷がかかったときの目標電流値に達すると、給送モーター27の逆転駆動を停止させる。これにより、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分におけるメディアMに目標のテンションが付与される。
【0100】
ここで、目標のテンションは、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMに弛み状態からメディアMを引っ張ったときに、メディアMに付着した異物を飛散可能な振動を付与できる値に設定される。また、目標のテンションは、振動発生箇所よりも搬送方向Y1の下流に位置する部分のメディアMに引張りによる位置ずれを発生させない程度の値に設定される。このため、振動によって、メディアMに付着した毛羽等の異物をメディアMの第1面Maから飛散させつつ、記録部15がメディアMに記録する記録位置の部分でメディアMの位置ずれが抑制される。
【0101】
また、制御部100は、メディアMの種類に関するメディア種情報を取得し、メディア種情報を基に特定される記メディアMの種類に応じて、1回の走査期間当たりの振動動作の回数を2回以上の範囲で変更してもよい。
【0102】
また、記録装置11は、前記第1実施形態と同様のノック部40を備えてもよい。すなわち、搬送部を構成する複数のローラー31,33,34のうちの2つのローラーの間の部分のメディアMの第2面Mbをノック可能なノック部40を備えてもよい。この場合、ノック部40は、第2面Mbに当接可能な当接部41aを有するカム41と、カム41を回転させる駆動部の一例としての電動モーター44とを備える構成でもよい。
【0103】
また、記録装置11は、前記第1実施形態と同様の除去部50を備えてもよい。すなわち、ノック部40に対してメディアMの搬送経路を挟む反対側の位置に除去部50を設けてもよい。この場合、除去部50は、吹付部50Aまたは吸引部50Bであってもよい。ノック部40を備える場合、ロール体R1と第1ガイドローラー33との間の部分のメディアMを1回の走査期間につき2回以上振動させる振動付与動作と、ノック部40により第1ガイドローラー33とテンションローラー31との間の部分のメディアMの第2面Mbをノックして振動を付与するノック動作とが行われる。よって、メディアMを搬送方向Y1に位置の異なる2箇所で振動させることで、メディアMの第1面Maに付着している異物をより効果的に除去できる。
【0104】
以上詳述したように、第2実施形態によれば、下記の効果が得られる。
(8)記録装置11は、保持部12に支持されたロール体R1を正逆回転させる給送モーター27と、シリアル記録方式の記録部15と、給送モーター27を制御する制御部100とを備える。ロール体R1と記録部15による記録位置との間の搬送経路に沿ってメディアMを案内する複数のローラー31,33,34のうちロール体R1から繰り出されたメディアMが最初に巻き付けられるローラー33を第1ローラーとする。制御部100は、記録部15が1回移動する走査期間の間に、弛み動作と引張り動作とを1回ずつ含む振動動作を2回以上行う。よって、メディアMの弛み動作と引張り動作とによりメディアMに振動を与えてメディアMの第1面Maから塵埃または毛羽等の異物を飛散させることができる。この結果、メディアMの第1面Maから異物の飛散を一層促進させることができる。メディアMの弛み動作と引張り動作とを1回ずつ含む振動動作は、走査期間に行われるので、メディアMの搬送動作を妨げない。また、1回の走査期間につき、振動動作が2回以上行われるので、高い異物除去効果が得られる。よって、メディアから異物を除去する高い異物除去効果が得られるうえ、メディアの記録面を傷める心配がない。
【0105】
また、除去部50を備えれば、メディアMの第1面Maから飛散した異物は除去部50により除去されるので、飛散した異物のメディアMへの再付着を抑制できる。さらに、第1実施形態と同様に、ノック部40がメディアMの第2面Mbをノックする構成とすれば、一層高い異物除去効果が得られる。
【0106】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。以下に示す各変更例は、特に記載がない限りは、実施形態によらず適用可能である。
【0107】
図10に示すように、ノック部40を構成するカム41は、1つではなく、複数備えられてもよい。図10に示すように、複数のカム41は、回転軸42に一定の間隔で固定されている。複数のカム41の向きは同じであり、カム41の中心に対して当接部41aは常に同じ方向に位置する。つまり、複数のカム41が同じ位相で回転軸42に固定されている。幅方向Xの両端に位置する2つのカム41は、メディアMの幅領域よりも外側にはみ出して位置する。すなわち、幅方向Xにおいてカム41の配置長さが、メディアMの幅寸法以上となっている。このため、電動モーター44が駆動されると、複数のカム41は、それぞれの当接部41aによりメディアMの第2面Mbの幅全域を同時にノックする。なお、複数のカム41を異なる位相で回転軸42に固定してもよい。この場合、複数のカム41によりメディアMの第2面Mbを異なるタイミングでノックすることができる。これらの構成では、カム41はメディアMの幅全域に亘る範囲を複数箇所でノックできるので、メディアMの幅方向Xにおける異物除去効果のばらつきを低減できる。
【0108】
図11に示すように、テンションローラー31と第2ガイドローラー34との間の部分のメディアMの第2面Mbをノックする位置にノック部40を設けてもよい。この構成によれば、ノック箇所よりも搬送経路の下流にローラー34が位置するので、ノック部40が第2面Mbをノックしたときの振動が下流へ伝播することを抑制できる。
【0109】
・カム41が有する当接部41aの数は、1つに限定されない。図12に示すように、カム41は当接部41aを2つ有してもよい。この場合、回転軸42が1回転する間に2つの当接部41aがメディアMの第2面Mbを順次ノックする。つまり、ノック部40は、カム41の1回転につき2回ノックすることができる。また、図13に示すように、カム41は当接部41aを3つ有してもよい。この場合、回転軸42が1回転する間に3つの当接部41aがメディアMの第2面Mbを順次ノックする。つまり、ノック部40は、カム41の1回転につき3回ノックすることができる。さらに、カム41は当接部41aを4つ以上の複数有してもよい。このように、カム41が当接部41aを複数有することで、ノック部40は、カム41の1回転につきメディアMの第2面Mbを複数回ノックすることができる。これらの構成によれば、メディアMの第2面Mbをノックする頻度を増やすことができ、第1面Maからの異物除去効果を高めることができる。
【0110】
図14に示すように、記録装置11は、ロール・ツー・ロール方式でもよい。すなわち、メディアMが搬送時に摺動する支持面71aを有する支持台71を備える。支持台71を挟んだ両側に第1ロール体R1を保持する保持部12と、第2ロール体R2を保持する巻取部75とを備える。保持部12は給送モーター27を備える。また、巻取部75は巻取モーター28を備える。第1ロール体R1から繰り出されたメディアMは、支持台71の支持面71a上を摺動しながら搬送され、記録部15により記録が行われた後、第2ロール体R2に巻き取られる。支持台71は、記録部15よりも搬送方向の上流となる部分に開口72を有する。支持台71の裏面側には開口72と対応する位置にノック部40が配置されている。ノック部40は、カム41と、カム41が固定された回転軸42と、回転軸42を回転させる電動モーター44(図3図10を参照)とを備える。カム41は開口72から露出している。カム41が回転すると、その当接部41aが開口72から突出して支持台71の支持面71a上を摺動するメディアMの第2面Mbをノックする。カム41の当接部41a以外の部分が開口72と対向するときは、当接部41aはメディアMの第2面Mbから離間する。ノック部40は、第2面Mbから離間する離間位置と、第2面Mbに当接する当接位置との間を移動することによって、第2面Mbをノックする。ロール・ツー・ロール方式の記録装置11でも、メディアMの第1面Maに付着する異物を振動により飛散させて除去することができる。また、ノック部40とメディアMの搬送経路を挟んで反対側に除去部50を配置すれば、メディアMの第1面Maから飛散した異物を除去できる。よって、振動により第1面Maから飛散させた異物の第1面Maへの再付着を抑制できる。
【0111】
・前記第1実施形態において、給送モーター27と巻取モーター28とが、制御部100に制御されてもよい。この場合、給送モーター27は、搬送ベルト21の駆動源である搬送モーター26と同期して駆動され、制御部100によりメディアMに過度なテンションがかからず且つ弛みが発生しないように回転制御される。また、制御部100は、巻取モーター28を制御することで、剥離装置14に保持されたロール体R2の巻取りによる剥離動作を制御する。また、前記第2実施形態において、巻取モーター28とが、制御部100に制御されてもよい。
【0112】
・搬送部は、粘着層25を有する搬送ベルト21であるグルーベルトに限らず、搬送ベルト21にメディアMを吸着させる方式は、メディアMを静電気力により支持面21aに吸着させる静電吸着方式、布帛等の空気の透過性の高いメディア以外のメディアMに対しては負圧吸引方式でもよい。
【0113】
・ノック部の離間位置と当接位置との間の往復移動は、1回でもよい。
・ノック部の離間位置と当接位置との間の往復移動は、カム41の回転による連続動作に限らず、ノック部が離間位置から当接位置までを往復する往復移動でもよいし、ノック部が当接位置から離間位置までを往復する往復移動でもよい。
【0114】
・ノック部の離間位置と当接位置との間の移動は、往復移動が好ましいが、往復移動に限定されない。ノック部の離間位置から当接位置までの移動でもよい。また、ノック部の当接位置から離間位置までの移動でもよい。これらの一方向の移動でも、テンションにより張られたメディアを弾くことができる。なお、テンションのかからない部分のメディアをノックする場合、ノック部の離間位置から当接位置までの移動が好ましい。
【0115】
・ノック部40は、カム41による回転運動を利用するものに限られず、ソレノイドアクチュエーターによる直線運動を利用するものでもよい。
・除去部50が吸引部50Bの場合、幅方向XにおいてメディアMの縁端から異物を吸引するようにしてもよい。
【0116】
・両面記録を行ってもよい。両面記録の場合、第1面の記録前に第2面をノックし、このノックが第2面の毛羽を増やす虞がある。両面記録ではメディアMを反転させて、この第2面が次の記録面である第2面となり、記録済みの第1面が次の第2面となる。この場合、記録済み面である第2面をノックするが、ノックはメディアMを弾く程度なので、ブラシでメディアMを引っ掻く構成に比べ、記録済みの面に傷が付きにくい。よって、記録済みの第2面をノックすることができ、両面記録時には、両面どちらの記録時も、第2面のノックにより記録面である第1面から記録前に異物を除去することができる。
【0117】
・前記第2実施形態において、1回の走査期間に振動動作を2回以上行う振動付与動作は、走査期間ごとに毎回行わなくてもよい。例えば、走査期間の1回おきでもよいし、2回おき、3回おき等の複数回おきでもよい。また、次回の搬送動作によるメディアMの搬送量に応じて今回の走査動作の走査期間に振動動作を行うか否かを判定し、振動動作を行うべき判定結果であれば、今回の走査期間に2回以上の振動動作を行う構成でもよい。制御部100は、この判定において次回の搬送動作の搬送量から前記条件を満たすように判定する。
【0118】
・ノック部40と除去部50の少なくとも一方を、使用時の搬送経路近くの位置から退避させる退避機構を設けてもよい。この場合、メディアMのセット作業がし易くなる。
・吹付部50Aが吹き付けるガスは空気でなくてもよい。この場合、窒素ガスや希ガスなど反応性の低いものが好ましい。例えば、ガスが充填されたボンベを吹付部50Aの吸気室に接続し、ボンベから供給されたガスをファンによりノズルから吹き付ける。なお、メディアMの第1面Maを記録が実行される前に改質する場合は、ガスの一例としてメディアMの第1面Maを改質するための反応性ガスでもよい。
【0119】
・搬送部を、搬送ベルト21でメディアMを搬送する搬送ベルト方式とした場合、メディアMを支持面21aに密着させる方式は、搬送ベルト21を、粘着層25を有するグルーベルトとする構成に限定されない。搬送ベルト21の支持面21aにメディアMを静電気力により吸着させる静電吸引方式でもよいし、負圧によりメディアMを搬送ベルト21の支持面21aに吸着させる負圧吸引方式でもよい。
【0120】
・第2実施形態において、記録装置11は、ロール・ツー・ロール方式でもよい。例えば、図14に示す記録装置11において、搬送部は、支持台71を挟んだ両側に保持された給送用の第1ロール体R1と巻取り用の第2ロール体R2との間で、第1ロール体R1から繰り出されたメディアMを支持台71の支持面71aに沿って摺動させながら第2ロール体R2が巻き取ることで、メディアMを搬送する。メディアMのうち支持台71の支持面71a上の部分に記録部15が記録を行う。記録装置11は、搬送部を構成するローラーを備え、ローラーのうち最も搬送方向の上流に位置する第1ローラーとロール体R1との間の部分のメディアMに弛みを形成する弛み形成動作とその部分のメディアMを引っ張ってメディアMにテンションを付与する引張り動作とを1回ずつ含む振動付与動作を2回以上行う構成としてもよい。また、例えば、第1実施形態と同様に、皺抑制装置13を設け、皺抑制装置13を構成する複数のローラーのうち最も搬送方向Y1の上流に位置するローラーを第1ローラーとして振動付与動作を行ってもよい。
【0121】
・ノック部は、振動モーターでもよい。振動モーターにより周期的にメディアMを振動させる構成でもよい。振動モーターはメディアMに接触して振動を付与する振動体を有する。振動体の振幅は微視的な大きさであり、振動体は第2面Mbから離間する離間位置と、第2面Mbに当接する当接位置との間を移動することで振動する。この場合、振動モーターと搬送経路を挟んで反対側となる位置に除去部50を設けてもよい。
【0122】
・ノック部40の駆動部は、電動モーター44に限定されず、ソレノイドプランジャーやリニアモーターでもよい。これらの駆動部により、ノック部の当接部を直動により往復移動させてメディアMの第2面をノックすることで、メディアMを振動させてもよい。
【0123】
・搬送部は、搬送ベルト21に替え、記録部15と対向する位置にプラテン等の支持部材が配置され、搬送ローラー対でメディアMを搬送する構成でもよい。
・記録装置11は、布帛に記録する捺染機に限らず、ロール紙に記録する記録装置でもよい。この構成によれば、紙粉等の異物を除去することができる。
【0124】
・記録装置11は、記録部15が走査方向Xに往復移動するシリアルプリンターまたは記録部15が幅方向に延びるラインプリンターに限定されず、記録部15が主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。
【0125】
・記録装置11は、インクジェット方式に限らず、ワイヤインパクト方式または熱転写方式であってもよい。また、記録装置11は、固体のトナーを付与したのち種々の感光手段によってメディアMに画像などを定着させる電子写真方式でもよい。
【0126】
・記録装置11は、読取ユニットを搭載する複合機でもよい。
・ロール体R1のメディアMは、布帛に限らず、ロール紙、可撓性のプラスチックフィルム、不織布、編物などであってもよいし、ロール状のラミネートフィルムや金属箔でもよい。
【0127】
・記録装置は、記録用のプリンターに限定されない。例えば、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体を吐出し、メディアの一例である基板に電気配線パターン、または、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)および面発光などの各種の方式のディスプレイの画素を記録して製造するものでもよい。
【0128】
前記実施形態および変更例から把握される技術思想を、その作用効果と共に以下に記載する。
記録装置は、メディアの第1面に記録可能な記録部と、前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送可能な搬送部と、前記保持部と前記記録部との間における前記メディアの前記第1面とは反対側の面である第2面をノック可能なノック部と、を備え、前記ノック部は、前記第2面から離間する離間位置と、前記第2面に当接する当接位置との間を移動することによって、前記第2面をノックする。
【0129】
この構成によれば、ノック部がメディアの第2面をノックしたときの衝撃により発生する振動によってメディアの第1面から、付着していた異物が飛散する。これにより、メディアから異物を除去できる。よって、送風のみに比べ高い異物除去効果を得ることができる。
【0130】
上記記録装置は、前記ノック部と前記メディアの経路を挟む反対側の位置に、前記第1面からの異物を除去可能な除去部を備えてもよい。
この構成によれば、ノック部によってノックされたメディアから飛散した異物を、除去部によって除去できる。よって、メディアに異物が再付着することを抑制できる。
【0131】
上記記録装置において、前記除去部は、前記メディアの前記第1面にガスを吹き付ける吹付部であって、前記ノック部よりも前記メディアの搬送方向の下流となる位置に設けられていてもよい。
【0132】
この構成によれば、ノック部によってノックされたメディアから飛散した異物を、吹付部から吹き付けたガス流により除去できる。よって、メディアに異物が再付着することを抑制できる。また、ノック部よりもメディアの搬送方向の下流となる位置から上流に向かってガス流が吹き付けられる。よって、異物が搬送方向の下流に位置する記録部へ流れることを回避できる。
【0133】
上記記録装置は、前記保持部と前記記録部との間の部分における前記メディアの前記第2面に接触可能なテンションバーと、前記テンションバーに巻き付けられた部分よりも上流側の部分と下流側の部分との前記第1面を押さえることにより前記テンションバーに前記メディアを巻き付け可能なローラー対とを備え、前記ノック部は、前記ローラー対のうち一のローラーと前記テンションバーとの間の部分における前記メディアをノック可能に設けられていてもよい。
【0134】
この構成によれば、ローラー対のうち一のローラーとテンションバーとの間のテンションが付与された部分のメディアがノックされる。また、ローラー対のうち一のローラーとテンションバーとの間の部分のメディアの経路は、ロール体の径変化によって変化することがないので、メディアの経路の変化に起因してノック部が第2面を適切にノックできなくなる事態を回避できる。よって、メディアの第2面を適切にノックし、メディアに適切な振動を付与できるので、高い異物除去効果が得られる。
【0135】
上記記録装置において、前記ノック部は、前記第2面に当接可能な当接部を有するカムと、前記カムを回転させる駆動部と、を備えてもよい。上記構成によれば、ノック部を簡易な構成で実現できる。
【0136】
上記記録装置において、前記メディアの搬送方向と交差しかつ前記搬送部が前記メディアを支持する支持面と平行な方向である幅方向において、前記カムの配置長さは、前記メディアの幅寸法以上であってもよい。
【0137】
この構成によれば、カムはメディアの幅全域に亘る範囲を一度にまたは複数箇所でノックできるので、メディアの幅方向における異物除去効果のばらつきを低減できる。すなわち、メディアの幅方向全域で高い異物除去効果が得られる。
【0138】
上記記録装置は、前記駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記メディアの種類に関するメディア種情報を取得し、メディア種情報を基に特定される前記メディアの種類に応じて、前記カムの回転速度を変更してもよい。
【0139】
この構成によれば、メディアの種類に応じて、カムの回転速度を変更するため、メディアの種類に応じて異物飛散能力を最適化できる。例えば、異物が取れにくいメディアでありかつ破れにくいメディアである場合は、カムの回転速度を上昇させ、破れやすいメディアの場合は回転速度を減少させる。ここで、異物が飛散しにくいメディアとは、毛足が長く、異物が潜りやすい、布帛(織物)、編物および不織布等を挙げることができる。
【0140】
上記記録装置は、前記保持部に支持された前記ロール体を正逆回転させる駆動源と、前記駆動部および前記駆動源を制御する制御部と、を備え、前記記録部は走査方向に移動して前記メディアに記録するシリアル記録方式であり、前記搬送部は、前記保持部に支持された前記ロール体から巻き解かれたメディアを、前記ロール体と前記記録部による記録が行われる記録位置との間の搬送経路に沿って案内する複数のローラーを有し、前記複数のローラーのうち前記ロール体から繰り出されたメディアが最初に巻き付けられるローラーを第1ローラーとすると、前記制御部は、前記記録部が前記メディアへの記録のために走査方向に1回移動する走査期間の間に、前記駆動源を前記ロール体が正転する方向へ駆動させて前記ロール体から前記メディアを繰り出すことにより、前記ロール体と前記第1ローラーとの間の部分の前記メディアに弛みを形成する弛み動作と、前記駆動源を前記ロール体が逆転する方向へ駆動させて前記ロール体に前記メディアを巻き取ることにより前記ロール体と前記第1ローラーとの間で弛んだ部分の前記メディアを引っ張って当該メディアにテンションを付与する引張り動作とを1回ずつ含む振動動作を2回以上行ってもよい。
【0141】
この構成によれば、ノック部がメディアの第2面をノックすることに加え、メディアの弛み動作と引張り動作とによりメディアに振動を与えてメディアの第1面から塵埃または毛羽等の異物を飛散させることができる。よって、メディアの第1面から塵埃等の異物の飛散を一層促進させることができる。また、メディアの弛み動作と引張り動作とを1回ずつ含む振動動作は、記録部がメディアへの記録のために走査方向に1回移動する走査期間に行われるので、メディアの搬送動作を妨げない。さらに、1回の走査期間につき、振動動作が2回以上行われるので、高い異物除去効果が得られる。
【符号の説明】
【0142】
11…記録装置、11a…ハウジング、12…保持部、13…皺抑制装置、14…剥離装置、15…記録部、16…搬送部の一例を構成する搬送ユニット、17…押付部、17a…加圧ローラー、18…記録ヘッド、18a…ノズル面、18N…ノズル、19…ヘッド保持部(キャリッジ)、21…搬送ベルト、21a…支持面、22…駆動ローラー、23…従動ローラー、24…基材、25…粘着層、26…搬送モーター、27…給送モーター、28…巻取モーター、29…エンコーダー、30…カバー、30a…回動軸、31…搬送部の一例を構成するとともにテンションバーの一例としてのテンションローラー、31a…摩擦部材、32…ローラー対、33…搬送部の一例を構成する第1ガイドローラー、34…搬送部の一例を構成する第2ガイドローラー、40…ノック部、41…カム、41a…当接部、42…回転軸、43…軸受、44…駆動部の一例としての電動モーター、50…除去部、50A…吹付部、50B…吸引部、51…ファン、52…ダクト、53…ノズル、61…入力部、62…操作部、71…支持台、71a…支持面、72…開口、75…巻取部、100…制御部、R1…第1ロール体(ロール体)、R2…第2ロール体(ロール体)、M…メディア、Ma…第1面、Mb…第2面、X…幅方向(走査方向)、Y…ベルト搬送方向、Y1…搬送方向、BL…ベルト幅領域、F…空気流(空気)。
図1
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