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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】超音波眼圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020001464
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021108816
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】三輪 哲之
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212124(JP,A)
【文献】特開2009-158650(JP,A)
【文献】特開2015-005247(JP,A)
【文献】特開2019-208853(JP,A)
【文献】特開2000-107128(JP,A)
【文献】特開2007-185417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計であって、
前記被検眼に対して超音波を照射する照射手段と、
前記超音波の伝搬を阻害する異物を検出するための検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記異物の有無を判定する制御手段と、
前記照射手段に前記異物が接触または侵入することを抑制するために前記照射手段を遮蔽する遮蔽手段と、を備え
前記制御手段は、前記遮蔽手段によって前記照射手段を遮蔽する途中で前記異物が有ると判定した場合に、前記遮蔽手段を停止させることを特徴とする超音波眼圧計。
【請求項2】
前記制御手段は、前記異物が有ると判定して制御を切り換えた後に、前記異物が無いと判定した場合、切り換え前の制御状態に復帰させることを特徴とする請求項1の超音波眼圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式眼圧計としては、空気噴射式眼圧計が一般的である。空気噴射式眼圧計は、角膜に空気を噴射したときの角膜の圧平状態と、角膜に噴射される空気圧とを検出することによって、所定の変形状態における空気圧を眼圧に換算していた。
【0003】
また、非接触式眼圧計としては、超音波を用いて眼圧を測定する超音波式眼圧計が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の超音波式眼圧計は、角膜に超音波を放射したときの角膜の圧平状態と、角膜に噴射される放射圧とを検出することによって、所定の変形状態における放射圧を眼圧に換算するものである。
【0004】
また、超音波眼圧計としては、角膜からの反射波の特性(振幅、位相)と眼圧との関係に基づいて眼圧を計測する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-253190
【文献】特開2009-268651
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような超音波眼圧計において、超音波を照射するための超音波照射部は空気を介して被検眼に超音波を照射するため、超音波照射部は装置の筐体から露出された状態となる。このため、超音波照射部に異物が接触または侵入してしまい、適正な超音波を照射できない場合があった。
【0007】
本開示は、従来の問題点を鑑み、適正な超音波で被検眼を測定できる超音波眼圧計を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1) 超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計であって、前記被検眼に対して超音波を照射する照射手段と、前記超音波の伝搬を阻害する異物を検出するための検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記異物の有無を判定する制御手段と、前記照射手段に前記異物が接触または侵入することを抑制するために前記照射手段を遮蔽する遮蔽手段と、を備え、前記制御手段は、前記遮蔽手段によって前記照射手段を遮蔽する途中で前記異物が有ると判定した場合に、前記遮蔽手段を停止させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】超音波眼圧計の外観図である。
図2】筐体内部を示す概略図である。
図3】照射部の構成を示す概略図である。
図4】検出部について説明するための図である。
図5】抑制部の構成を示す概略図である。
図6】抑制部の変容例を示す図である。
図7】本実施例の制御系を示すブロック図である。
図8】本実施例の測定動作を示すフローチャートである。
図9】本実施例の異物検出動作を示すフローチャートである。
図10】異物が侵入したときの前眼部画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示に係る実施形態について説明する。本実施形態の超音波眼圧計(例えば、超音波眼圧計1)は、超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する。超音波眼圧計は、照射部(例えば、照射部100)と、検出部(例えば、検出部600)と、制御部(例えば、制御部70)を備える。照射部は、例えば、被検眼に対して超音波を照射する。照射部は、振動子等を備える。検出部は、照射部に接近または侵入する異物(指、手、埃、または塵など)を検出する。制御部は、検出部の検出結果に基づいて、異物の有無を判定する。本実施形態の超音波眼圧計は、上記の構成を備えることによって、照射部に異物が接触または侵入している状態で被検眼を測定してしまうことを抑制できる。
【0012】
なお、照射部は、照射部の音軸の方向に開口された開口部(例えば開口部101)を備えてもよい。この場合、検出部は、開口部の内側に侵入する異物を検出してもよい。これによって、開口部の内側に異物が接触または侵入している状態で被検眼を測定してしまうことを抑制できる。なお、開口部は、例えば、被検眼を観察するために用いられる。例えば、観察光学系(例えば、観察系220)の光軸が照射部の開口部を通るように構成される。これによって、照射部の音軸方向から被検眼を観察することができる。
【0013】
なお、制御部は、異物が有ると判定した場合に被検眼の測定を停止させてもよい。これによって、異物が存在する不安定な状態で測定が行われることを防止できる。例えば、制御部は、異物が有ると判定した場合に照射部への電流または電圧の印加を停止させてもよい。これによって、制御部は、超音波の発生を停止させてもよい。
【0014】
照射部に異物が接触または侵入することを抑制するための抑制部(例えば、抑制部300)をさらに備えてもよい。この場合、制御部は、異物の検出結果に基づいて抑制部の制御を切り換えてもよい。例えば、異物が有ると判定した場合に抑制部を作動させてもよい。これによって、照射部への異物の接触または侵入を抑制できる。
【0015】
なお、抑制部は、異物の接近または侵入を検者または被検者に報知する報知部であってもよい。この場合、制御部は、異物が有ると判定した場合に報知部を作動させてもよい。これによって、検者または被検者は、照射部への異物の接近または侵入を容易に把握できる。また、検者は、異物を除去する必要があることを把握できる。
【0016】
なお、抑制部は、照射部を遮蔽するための遮蔽部であってもよい。遮蔽部は、照射部を内部に収容する筐体(例えば、筐体3)において、照射部の照射経路上に設けられた開口部(例えば、開口部6)を遮蔽する。この場合、制御部は、遮蔽部によって照射部を遮蔽する途中で異物が検出された場合に、遮蔽部を停止させてもよい。これによって、遮蔽部による異物の挟み込みを抑制できる。
【0017】
制御部は、異物が有ると判定して制御を切り換えた後に、異物が無いと判定した場合、切り換え前の制御状態に復帰させてもよい。これによって、異物が除去された後でスムーズに動作を再開させることができる。
【0018】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。本実施例の超音波眼圧計は、例えば、超音波を用いて非接触にて被検眼の眼圧を測定する。超音波眼圧計は、例えば、被検眼に超音波を照射したときの被検眼の形状変化または振動等を、光学的または音響的に検出することで眼圧を測定する。例えば超音波眼圧計は、角膜へパルス波またはバースト波を連続的に照射し、角膜が所定形状(例えば、圧平状態)に変形したときの超音波の出力情報等に基づいて眼圧を算出する。出力情報とは、例えば、超音波の音圧、音響放射圧、照射時間(例えば、トリガ信号が入力されてからの経過時間)、または周波数等である。なお、被検眼の角膜を変形させる場合、例えば、超音波の音圧、音響放射圧、または音響流等が用いられる。
【0019】
図1は、装置の外観を示している。超音波眼圧計1は、例えば、基台2と、筐体3と、顔支持部4、駆動部5等を備える。筐体3の内部には後述する照射部100、光学ユニット200、抑制部300、検出部600等が配置される。顔支持部4は、被検眼の顔を支持する。顔支持部4は、例えば、基台2に設置される。駆動部5は、例えば、アライメントのために基台2に対して筐体3を移動させる。
【0020】
図2は、筐体内部の主な構成の概略図である。筐体3の内部には、例えば、照射部100と、光学ユニット200、抑制部300等が配置される。照射部100、光学ユニット200、抑制部300について図2を用いて順に説明する。
【0021】
照射部100は、例えば、超音波を被検眼Eに照射する。例えば、照射部100は、角膜に対して超音波を照射し、角膜に音響放射圧を発生させる。音響放射圧は、例えば、音波の進む方向に働く力である。本実施例の超音波眼圧計1は、例えば、この音響放射圧を利用して、角膜を変形させる。なお、本実施例の照射部100は、円筒状であり、中央の開口部101に、後述する光学ユニット200の光軸O1が配置される。開口部101は、例えば、音軸方向に開口される。音軸は、例えば、超音波の照射方向、超音波の進行方向、または照射部100の振動方向などである。本実施例では、光学ユニット200の光軸O1と照射部100の音軸L1は略同軸とされている。
【0022】
図3(a)は、照射部100の概略構成を示す断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す範囲A1を拡大した様子である。本実施例の照射部100は、いわゆるランジュバン型振動子である。照射部100は、例えば、超音波素子110、電極120、マス部材130、締付部材160等を備える。超音波素子110は、超音波を発生させる。超音波素子110は、電圧素子(例えば、圧電セラミックス)、または磁歪素子等であってもよい。本実施例の超音波素子110はリング状である。例えば、超音波素子110は複数の圧電素子が積層されたものでもよい。本実施例では、超音波素子110は積層された2つの圧電素子(例えば、圧電素子111、圧電素子112)が用いられる。例えば、2つの圧電素子には、それぞれ電極120(電極121,電極122)が接続される。本実施例の電極121,電極122は、例えば、リング状である。
【0023】
マス部材130は、例えば、超音波素子110を挟む。マス部材130は、超音波素子110を挟み込むことによって、例えば、超音波素子110の引っ張り強度を強くし、強い振動に耐えられるようにする。これによって、高出力の超音波を発生させることができる。マス部材130は、例えば、金属ブロックであってもよい。例えば、マス部材130は、ソノトロード(ホーン、またはフロントマスともいう)131と、バックマス132等を備える。
【0024】
ソノトロード131は、超音波素子110の前方(被検眼側)に配置されたマス部材である。ソノトロード131は、超音波素子110によって発生した超音波を空気中に伝搬させる。本実施例のソノトロード131は、円筒状である。ソノトロード131の内円部には、一部に雌ねじ部133が形成される。雌ねじ部133は、後述する締付部材160に形成された雄ねじ部161と螺合する。なお、ソノトロード131は、超音波を収束させる形状であってもよい。例えば、ソノトロード131の被検眼側の端面は、開口部101側に傾斜させ、テーパ形状としてもよい。また、ソノトロード131は、不均一な厚さを有する円筒であってもよい。例えば、ソノトロード131は、円筒の長手方向に関して外径と内径が変化する形状であってもよい。
【0025】
バックマス132は、超音波素子110の後方に配置されたマス部材である。バックマス132は、ソノトロード131とともに超音波素子110を挟み込む。バックマス132は、例えば、円筒状である。バックマス132の内円部には、一部に雌ねじ部134が形成される。雌ねじ部134は、後述する締付部材160の雄ねじ部161と螺合する。また、バックマス132はフランジ部135を備える。フランジ部135は、装着部400によって保持される。
【0026】
締付部材160は、例えば、マス部材130と、マス部材130に挟み込まれる超音波素子110と、を締め付ける。締付部材160は、例えば、中空ボルトである。締付部材160は、例えば、円筒状であり、外円部に雄ねじ部161を備える。締付部材160の雄ねじ部161は、ソノトロード131およびバックマス132の内側に形成された雌ねじ部133,134と螺合する。ソノトロード131とバックマス132は、締付部材160によって、互いに引き合う方向に締め付けられる。これによって、ソノトロード131とバックマス132との間に挟まれた超音波素子110が締め付けられ、圧力が負荷される。
【0027】
なお、照射部100は、絶縁部材170を備えてもよい。絶縁部材170は、例えば、電極120または超音波素子110などが締付部材160に接触することを防ぐ。絶縁部材170は、例えば、電極120と締付部材160との間に配置される。絶縁部材170は、例えば、スリーブ状である。
【0028】
<光学ユニット>
光学ユニット200は、例えば、被検眼の観察、または測定等を行う(図2参照)。光学ユニット200は、例えば、対物系210、観察系220、固視標投影系230、指標投影系250、変形検出系260、ダイクロイックミラー201、ビームスプリッタ202、ビームスプリッタ203、ビームスプリッタ204等を備える。
【0029】
対物系210は、例えば、光学ユニット200に筐体3の外からの光を取り込む、または光学ユニット200からの光を筐体3の外に照射するための光学系である。対物系210は、例えば、光学素子を備える。対物系210は、光学素子(対物レンズ、リレーレンズなど)を備えてもよい。
【0030】
照明光学系240は、被検眼を照明する。照明光学系240は、例えば、被検眼を赤外光によって照明する。照明光学系240は、例えば、照明光源241を備える。照明光源241は、例えば、被検眼の斜め前方に配置される。照明光源241は、例えば、赤外光を出射する。照明光学系240は、複数の照明光源241を備えてもよい。
【0031】
観察系220は、例えば、被検眼の観察画像を撮影する。観察系220は、例えば、被検眼の前眼部画像を撮影する。観察系220は、例えば、受光レンズ221、受光素子222等を備える。観察系220は、例えば、被検眼によって反射した照明光源241からの光を受光する。観察系は、例えば、光軸O1を中心とする被検眼からの反射光束を受光する。例えば、被検眼からの反射光は、照射部100の開口部101を通り、対物系210、受光レンズ221を介して受光素子222に受光される。
【0032】
固視標投影系230は、例えば、被検眼に固視標を投影する。固視標投影系230は、例えば、視標光源231、絞り232、投光レンズ233、絞り234等を備える。視標光源231からの光は、光軸O2に沿って絞り232、投光レンズ233、絞り232等を通り、ダイクロイックミラー201によって反射される。ダイクロイックミラー201は、例えば、固視標投影系230の光軸O2を光軸O1と同軸にする。ビームスプリッタ201によって反射された視標光源231からの光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、被検眼に照射される。固視標投影系230の視標が被検者によって固視されることで、被検者の視線が安定する。
【0033】
指標投影系250は、例えば、被検眼に指標を投影する。指標投影系250は、被検眼にXYアライメント用の指標を投影する。指標投影系250は、例えば、指標光源(例えば、赤外光源であってもよい)251と、絞り252、投光レンズ253等を備える。指標光源251からの光は、光軸O3に沿って絞り252、投光レンズ253を通り、ビームスプリッタ202によって反射される。ビームスプリッタ202は、例えば、指標投影系250の光軸O3を光軸O1と同軸にする。ビームスプリッタ202によって反射された指標光源251の光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、被検眼に照射される。被検眼に照射された指標光源251の光は、被検眼によって反射され、再び光軸O1に沿って対物系210と受光レンズ221等を通り、受光素子222によって受光される。受光素子によって受光された指標は、例えば、XYアライメントに利用される。この場合、例えば、指標投影系250および観察系220は、XYアライメント検出手段として機能する。
【0034】
変形検出系260は、例えば、被検眼の角膜形状を検出する。変形検出系260は、例えば、被検眼の角膜の変形を検出する。変形検出系260は、例えば、受光レンズ261、絞り262、受光素子263等を備える。変形検出系260は、例えば、受光素子263によって受光された角膜反射光に基づいて、角膜の変形を検出してもよい。例えば、変形検出系260は、指標光源251からの光が被検眼の角膜によって反射した光を受光素子263で受光することによって角膜の変形を検出してもよい。例えば、角膜反射光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、ビームスプリッタ202、ビームスプリッタ203によって反射される。そして、角膜反射光は、光軸O4に沿って受光レンズ261および絞り262を通過し、受光素子263によって受光される。
【0035】
変形検出系260は、例えば、受光素子236の受光信号の大きさに基づいて角膜の変形状態を検出してもよい。例えば、変形検出系260は、受光素子236の受光量が最大となったときに角膜が圧平状態になったことを検出してもよい。この場合、例えば、変形検出系260は、被検眼の角膜が圧平状態になったときに受光量が最大となるように設定される。
【0036】
なお、変形検出系260は、OCT又はシャインプルーフカメラ等の前眼部断面像撮像ユニットであってもよい。例えば、変形検出系260は、角膜の変形量または変形速度などを検出してもよい。
【0037】
角膜厚測定系270は、例えば、被検眼の角膜厚を測定する。角膜厚測定系270は、例えば、測定光源271と、投光レンズ272と、絞り273と、受光レンズ274と、受光素子275等を備えてもよい。光源271からの光は、例えば、光軸O5に沿って投光レンズ272、絞り273を通り、被検眼に照射される。そして、被検眼によって反射された反射光は、光軸O6に沿って受光レンズ274によって集光され、受光素子275によって受光される。
【0038】
Zアライメント検出系280は、例えば、Z方向のアライメント状態を検出する。Zアライメント検出系280は、例えば、受光素子281を備える。Zアライメント検出系280は、例えば、角膜からの反射光を検出することによって、Z方向のアライメント状態を検出してもよい。例えば、Zアライメント検出系は、光源271からの光が被検眼の角膜によって反射した反射光を受光してもよい。この場合、Zアライメント検出系280は、例えば、光源271からの光が被検眼の角膜によって反射してできた輝点を受光してもよい。このように、光源271は、Zアライメント検出用の光源として兼用されてもよい。例えば、角膜によって反射した光源271からの光は、光軸O6に沿ってビームスプリッタ204によって反射され、受光素子281によって受光される。
【0039】
<検出部>
検出部600は、照射部100に接近または侵入する異物を検出する。検出部600は、例えば、光学センサ(例えば、フォトインタラプタ、赤外センサなど)である。検出部600は、例えば、照射部100の被検眼側に配置される。検出部600は、例えば、照射部100と筐体3の間に配置される。検出部600は、例えば、開口部101の周辺に配置される。検出部600は、例えば、光源(例えば、LEDなど)601と、受光素子602などを備える。検出部600は、光源601と受光素子602をそれぞれ複数備えてもよい。例えば、光源601と受光素子のセットが光軸O1方向に複数並べて設けられてもよいし、光源601と受光素子のセットが光軸O1と垂直な平面内に複数並べて設けられてもよい。図4(a)に示すように、光源601からの光は受光素子602によって受光される。図4(b)のように異物Gによって光源601からの光が遮られた場合、受光素子602によって受光される受光信号の強度が弱くなる。これによって、検出部600は、異物の接近、開口部6からの侵入、開口部101への侵入等を検出する。
【0040】
なお、検出部600は、光学センサに限らず、種々のセンサを用いてもよい。例えば、検出部600としては、超音波センサ、磁気センサ、温度センサなどを用いてもよい。
【0041】
<抑制部>
抑制部300は、例えば、照射部100が開口部6から常時露出することを防ぎ、照射部100に異物が接触すること、または開口部101の内部に異物が侵入することを抑制する。例えば、照射部100に検者等の指が接触したり、汚れまたは埃等が付着したりすることを抑制できる。これによって、照射部100の特性が変化して出力が低下することを低減できる。本実施例の抑制部300は、照射部100の前面(被検者側)に設けられた装置筐体3の開口部6を遮蔽する。抑制部300は、例えば、遮蔽部310と駆動部320を備える。遮蔽部310は、開口部6の少なくとも一部を遮蔽する。駆動部320は遮蔽部310を駆動させる。駆動部320の駆動によって、開口部6の遮蔽状態が変更される。
【0042】
遮蔽部310は、図5(a)に示すように、半円の切欠き319a,319bが設けられた遮蔽板318a,318bを2枚合わせる構成であってもよい。例えば、図5(b)に示すように、2枚の遮蔽板318a,318bの切欠き319a,319bによって中央に円形の開口部317を形成させた状態で筐体3の開口部6の一部を遮蔽する。これによって、異物の接触または侵入を抑制しつつ、光学ユニット200の光路を確保することができる。また、図5(c)に示すように、切欠き319a,319bがすべて重なるように2枚の遮蔽板318a,318bを合わせることによって、開口部6の全体を遮蔽する。
【0043】
なお、遮蔽部310の形状は、図5に示す構成に限らない。例えば、図6に示すように、複数枚の羽根部を備え、カメラの絞りのような構成であってもよい。例えば、複数の羽根部(311a~311h)がそれぞれの有する回転軸(312a~312h)で回転することによって、開口部6が周囲から中心に向かって徐々に遮蔽される。例えば、図6(a)のように開口部6を開放した状態、図6(b)のように開口部6の一部を遮蔽した状態、図6(c)のように開口部6の全てを遮蔽した状態にすることができる。なお、遮蔽部310は、1枚の遮蔽版を開口部6に挿抜する構成であってもよい。
【0044】
なお、遮蔽部310は透明(透光体)であってもよい。この場合、遮蔽部310で開口部6を遮蔽して超音波を抑制している間も、遮蔽部310を透過する光を利用して光学系による観察または測定を行うことができる。
【0045】
<制御部>
次に、図7を用いて、制御系の構成について説明する。制御部70は、例えば、装置全体の制御、測定値の演算処理等を行う。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73等で実現される。ROM72には、超音波眼圧計1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM73は、各種情報を一時的に記憶する。なお、制御部70は、1つの制御部または複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。制御部70は、例えば、駆動部5、記憶部74、表示部75、操作部76、照射部100、光学ユニット200、抑制部300、検出部600等と接続されてもよい。
【0046】
記憶部74は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0047】
表示部75は、例えば、被検眼の測定結果を表示する。表示部75は、タッチパネル機能を備えてもよい。
【0048】
操作部76は、検者による各種操作指示を受け付ける。操作部76は、入力された操作指示に応じた操作信号を制御部70に出力する。操作部76には、例えば、タッチパネル、マウス、ジョイスティック、キーボード等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。なお、表示部75がタッチパネルである場合、表示部75は、操作部76として機能してもよい。
【0049】
<制御動作>
以上のような構成を備える超音波眼圧計において眼圧を測定するときの制御動作を図8に基づいて説明する。
(ステップS11:アライメント)
まず、制御部70は、顔支持部4に顔を支持された被検者の被検眼に対するアライメントを行う。例えば、制御部70は、受光素子222によって取得される前眼部正面画像から指標投影系250による輝点を検出し、輝点の位置が所定の位置になるように駆動部5を駆動させる。もちろん、検者は、表示部75を見ながら、操作部76等を用いて被検眼に対するアライメントを手動で行ってもよい。制御部70は、駆動部5を駆動させると、前眼部画像の輝点の位置が所定の位置であるか否かによってアライメントの適否を判定する。
【0050】
(ステップS12:角膜厚測定)
被検眼Eに対するアライメント完了後、制御部70は、角膜厚測定系270によって角膜厚を測定する。例えば、制御部70は、受光素子275によって受光された受光信号に基づいて角膜厚を算出する。例えば、制御部70は、受光信号に基づいて、角膜表面の反射光によるピーク値と、角膜裏面の反射光のピーク値との位置関係から角膜厚を求めてもよい。制御部70は、例えば、求めた角膜厚を記憶部74等に記憶させる。
【0051】
(ステップS13:超音波照射)
制御部70は、超音波素子110に電圧を印加することによって、超音波を発生させる。照射部100から出力された超音波は被検眼に照射され、この超音波の音響放射圧によって被検眼の角膜が変形する。
【0052】
(ステップS14:変形検出)
制御部70は、変形検出系260によって角膜の変形状態を検出する。例えば、制御部70は、受光素子263の受光信号に基づいて角膜が所定形状(圧平状態または扁平状態)に変形したことを検出する。
【0053】
(ステップS15:眼圧算出)
制御部70は、例えば、被検眼の角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧(または音圧)に基づいて被検眼の眼圧を算出する。被検眼に加わる音響放射圧(または音圧)は超音波の照射時間と相関があり、超音波の照射時間が長くなるにつれて大きくなる。したがって、制御部70は、超音波の照射時間に基づいて、角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧(または音圧)を求める。角膜が所定形状に変形するときの音響放射圧(または音圧)と、被検眼の眼圧との関係は、予め実験等によって求められ、記憶部74等に記憶される。制御部70は、角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧(または音圧)と、記憶部74に記憶された関係に基づいて被検眼の眼圧を決定する。
【0054】
もちろん、眼圧の算出方法は、上記に限らず、種々の方法が用いられてもよい。例えば、制御部70は、変形検出系260によって角膜の変形量を求め、変形量に換算係数を掛けることによって眼圧を求めてもよい。なお、制御部70は、例えば、記憶部74に記憶された角膜厚に応じて算出した眼圧値を補正してもよい。
【0055】
なお、制御部70は、被検眼によって反射した超音波に基づいて眼圧を測定してもよい。例えば、被検眼によって反射した超音波の特性変化に基づいて眼圧を測定してもよいし、被検眼によって反射した超音波から角膜の変形量を取得し、その変形量に基づいて眼圧を測定してもよい。
【0056】
<異物検出動作>
続いて、異物検出動作について説明する。例えば、本実施例のように、開口部101が設けられた中空式の照射部100の場合、開口部101の内部に指または手等の異物が侵入する可能性がある。異物が照射部100に接触すると、照射部100が汚れてしまい、超音波の強度が減衰してしまう。そこで、本実施例では、照射部100の開口部101の内部に異物が接触または侵入することを防ぐために図9に示す処理を実行する。
【0057】
(ステップS21:検出)
まず、制御部70は、異物の検出を行う。例えば、制御部70は、図5(a)(b)のように開口部6が開放されて照射部100が露出されている間、照射部100に接触または侵入しようとする異物を検出部600によって検出する。例えば、受光素子602の受光信号は制御部70に送られる。
【0058】
(ステップS22:異物有無判定)
例えば、制御部70は、検出部600からの受光信号に基づいて、異物の有無を判定する。例えば、照射部100に異物が接近している場合、異物によって光源601から受光素子602に照射された光が遮られ、受光素子602での受光信号の強度が低下する。制御部70は、例えば、受光信号の強度が所定値以下になったときに異物が有ると判定する。制御部70は、異物が有ると判定した場合にステップS23の処理に進み、異物が無いと判定した場合はステップS25の処理に進む。
【0059】
(ステップS23:制御切換判定)
制御部70は、異物が有ると判定された場合に、超音波眼圧計1の制御を切り換えるか否か判定する。例えば、制御部70は、すでに制御が切り換え済みであり、切り換える必要がないと判定した場合はステップS21の処理に戻り、まだ制御が切り換えられておらず、切り換える必要があると判定した場合はステップS24の処理に進む。
【0060】
(ステップS24:制御切換)
制御部70は、超音波眼圧計1の制御を切り換える。例えば、制御部70は、被検眼の測定を停止させる。この場合、制御部70は、照射部100への電流または電圧などの印可を自動的に停止させる。照射部100への印加が停止されると、被検眼に対する超音波の照射が停止される。制御の切り換えが完了すると、ステップS21の処理に戻る。
【0061】
(ステップS25:復帰判定)
制御部70は、元の制御状態に復帰させる必要があるか否かを判定する。例えば、制御部70は、ステップS24において制御が切り換えられており、復帰が必要だと判定した場合はステップS26の処理に進み、ステップS24において制御が切り換えられておらず、復帰が不要だと判定した場合は処理を終了する。
【0062】
(ステップS26:復帰)
制御部70は、ステップS24において切り換えられた制御を元の制御状態に復帰させる。例えば、制御部70は、ステップS24において、照射部100への電流または電圧の印加が停止されている場合、印加を再開させる。
【0063】
以上のように、本実施例の超音波眼圧計1は、照射部100に接近または侵入する異物を検出し、その検出結果に基づいて異物の有無を判定することによって、安定した状態下で正確な眼圧測定を行うことができる。
【0064】
<変容例>
なお、抑制部300は、報知部を備えてもよい。報知部は、例えば、表示部75、スピーカー、警告灯などである。例えば、報知部は、指や手などの異物が検出された場合に検者または被検者に異物の接近または侵入などを報知することによって、異物の接触または侵入を抑制してもよい。この場合、制御部70は、異物が有ると判定した場合に、表示部75に警告画面を表示させてもよいし、スピーカーによって警告音を鳴らしてもよいし、警告灯を点灯させてもよい。
【0065】
なお、制御部70は、異物の接近状態によって、報知部の制御を切り換えてもよい。例えば、制御部70は、表示部75に表示させた警告画面の表示内容を変更してもよい。例えば、制御部70は、警告画面の色、文字のフォント、レイアウトなどを変更してもよい。また、制御部70は、警告音を変更してもよい。例えば、警告音のメロディ、音程、リズム、音量を変化させてもよい。例えば、制御部70は、異物と照射部100との距離に応じて、警告音を強くしてもよいし、画面表示の色を緑から赤に変化させてもよい。これによって、検者は、異物接触の緊急度を把握することができる。
【0066】
なお、制御部70は、遮蔽部310の遮蔽動作中に異物が検出された場合、遮蔽動作を自動的に停止し、遮蔽部310による異物の挟み込みを抑制してもよい。また、異物が検出されなくなり、遮蔽部310への異物の挟み込みが回避された場合、遮蔽部310の遮蔽動作を再開してもよい。このように、異物の検出結果を用いることで、安全に開口部6を遮蔽することができる。
【0067】
なお、制御部70は、観察系220によって撮影された観察画像に基づいて、異物を検出してもよい。例えば、制御部70は、観察画像の画像処理によって異物を検出する。例えば、図10に示すように、開口部101に異物が侵入した場合、観察画像Pにおいて異物が写っている部分Kの輝度値が高くなる(または低くなる)。制御部70は、観察画像Pの輝度を解析することによって、異物の有無を判定してもよい。制御部70は、例えば、画像全体の輝度変化を検出してもよいし、画像の一部の輝度変化を検出してもよい。また、制御部70は、異物が無いときに撮影された基準画像と、現在の観察画像とを比較することによって異物の有無を判定してもよい。上記のように、観察画像を用いることによって、より簡易な構成で異物を検出することができる。
【0068】
なお、制御部70は、超音波を検出する超音波センサによって異物を検出してもよい。例えば、検出部600は、超音波送信部から出力された超音波を超音波受信部で受信する構成であってもよい。例えば、制御部70は、異物によって超音波の伝搬が阻害され、超音波受信部の信号が弱くなったときに、異物が有ると判定してもよい。また、制御部70は、照射部100の出力を検出しておき、超音波の出力が正常値よりも小さい場合、または異常な値であった場合に、異物が混入したことを判定してもよい。
【0069】
なお、制御部70は、接触センサによって異物を検出してもよい。例えば、検出部600は、静電容量センサなどの接触センサを備えてもよい。この場合、制御部70は、接触センサの検出結果に基づいて異物の接触または侵入を判定してもよい。例えば、照射部100(例えば、マス部材130など)自体を接触センサの一部として機能させてもよい。例えば、検出部600は、照射部100に指や手などの異物が接触したことを検出してもよい。これによって、確実に異物の接触を検出することができる。
【0070】
なお、制御部70は、任意または自動で検出部600による異物の検出を停止させてもよい。これによって、異物の検出が必要ない場合において、不要な検出動作を制限することができる。
【0071】
なお、抑制部300を作動させるか否かを検者が任意に選択できるようにしてもよい。例えば、検者の操作を受け付けたことによって操作部76から出力された操作信号に基づいて、抑制部300を作動させるか否かを切り換えられるようにしてもよい。また、制御部70は、異物が検出されなくなった場合に自動で元の制御状態に復帰するか否かを選択できるようにしてもよい。
【0072】
なお、以上の実施例において、照射部100としてランジュバン型振動子を用いる例を説明したが、これに限らない。照射部100は、別の方式で超音波を発生させる構成であってもよい。また、照射部100は円筒形状であったが、これに限らない。例えば、照射部100は円柱形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 超音波眼圧計
2 基台
3 筐体
4 顔支持部
5 駆動部
6 支基
100 照射部
200 光学ユニット
300 抑制部
310 遮蔽部
320 駆動部
600 検出部
601 光源
602 受光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10