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特許7404884充放電装置、係止状態検出方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】充放電装置、係止状態検出方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231219BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231219BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20231219BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231219BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20231219BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20231219BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J7/00 P
H01M10/44 P
H01M10/46 101
B60L50/60
B60L53/16
B60L53/30
H01R13/639 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020007773
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114881
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋吾
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194909(JP,A)
【文献】特開2012-130127(JP,A)
【文献】特開2015-046326(JP,A)
【文献】特開2017-050936(JP,A)
【文献】特開2015-089249(JP,A)
【文献】特許第6532638(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H01M 10/44
H01M 10/46
B60L 50/60
B60L 53/16
B60L 53/30
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、該コネクタは、前記係止機構のロック及びロックの解除を制御する回路を含み、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置において、
前記回路は、前記係止機構に含まれるラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かで開閉するようにしてあり、
前記回路が閉じているか否かを判断する判断部と、
閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する検出部と
を備え
前記車載コネクタ及びコネクタは、信号線の接続端子を夫々有し、
前記判断部は、前記接続端子による前記信号線の導通を検出できた場合に、判断を実行する充放電装置。
【請求項2】
充放電開始の操作を受け付ける操作部を備え、
前記判断部は、前記操作部にて充放電開始の操作を受け付けた場合に、判断を実行する
請求項1に記載の充放電装置。
【請求項3】
前記操作部にて充放電開始の操作を受け付け、前記検出部が、係止が不十分な状態であることを検出した後に、再度前記判断部による判断を実行し、
前記判断部によって、閉じていると判断された場合、前記操作部による操作を受け付けることなしに、充放電を開始する
請求項2に記載の充放電装置。
【請求項4】
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、該コネクタは、前記係止機構のロック及びロックの解除を制御する回路を含み、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置において、
前記回路は、前記係止機構に含まれるラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かで開閉するようにしてあり、
充放電開始の操作を受け付ける操作部と、
前記回路が閉じているか否かを判断する判断部と、
閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する検出部と
を備え、
前記操作部にて充放電開始の操作を受け付けた場合に前記判断部による判断を実行し、
前記判断部は、前記検出部が、係止が不十分な状態であることを検出した後に、再度前記判断部による判断を実行し、
前記判断部による再度の判断の結果、閉じていると判断された場合、前記操作部による再操作を受け付けることなしに、充放電を開始する充放電装置。
【請求項5】
前記判断部は、前記回路に電流が流れるか否かを判断する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の充放電装置。
【請求項6】
前記判断部は、前記回路に電流を流して前記係止機構をロックさせることができるか否かを判断し、
ロックさせることができると判断された場合、ロックを維持し、
充放電開始の指示を受けた場合に、前記係止機構をロックしていることを通知する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の充放電装置。
【請求項7】
光又は音を出力する出力部を備え、
前記検出部が、係止状態が不十分であることを検出した場合、前記出力部から文字、画像、点灯、点滅又は音を出力することによってユーザへ向けて報知する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の充放電装置。
【請求項8】
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置にて前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する係止状態検出方法であって、
前記車載コネクタ及びコネクタは、信号線の接続端子を夫々有し、
前記充放電装置は、
前記接続端子による前記信号線の導通を検出できた場合に、前記コネクタに内蔵され、前記係止機構のロック及びロック解除を制御する回路であって、ラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かに応じて開閉する回路が、閉じているか否かを判断し、
閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する
係止状態検出方法。
【請求項9】
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置にて前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する係止状態検出方法であって、
前記充放電装置は、
前記充放電装置に設けられた充放電開始の操作を受け付ける操作部にて、充放電開始の操作を受け付けた場合に、前記コネクタに内蔵され、前記係止機構のロック及びロック解除を制御する回路であって、ラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かに応じて開閉する回路が、閉じているか否かを判断し、
閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出し、
再度、前記回路が、閉じているか否かを判断し、
再度の判断の結果、閉じていると判断された場合には、前記操作部による再操作を受け付けることなしに、充放電を開始する
係止状態検出方法。
【請求項10】
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置に搭載されたコンピュータに、
前記車載コネクタ及びコネクタは、信号線の接続端子を夫々有し、
前記接続端子による前記信号線の導通を検出できた場合に、前記コネクタに内蔵され、前記係止機構のロック及びロック解除を制御する回路であって、ラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かに応じて開閉する回路が、閉じているか否かを判断し、
閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置に搭載されたコンピュータに、
前記充放電装置に設けられた充放電開始の操作を受け付ける操作部にて、充放電開始の操作を受け付けた場合に、前記コネクタに内蔵され、前記係止機構のロック及びロック解除を制御する回路であって、ラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かに応じて開閉する回路が、閉じているか否かを判断し、
閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出し、
再度、前記回路が、閉じているか否かを判断し、
再度の判断の結果、閉じていると判断された場合には、前記操作部による再操作を受け付けることなしに、充放電を開始する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられる蓄電池と接続される充放電装置、係止状態検出方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に備えられている蓄電池の電池容量は例えば5~100kWhと比較的大容量である。これらの車両に蓄えられた電力を電気自動車の駆動以外に、例えば家庭等へ供給可能とするV2H(Vehicle to Home )、家庭に限らない建物への供給を可能とするV2B(Vehicle to Building )、電力網への供給を可能とするV2G(Vehicle to Grid )を含むV2Xを実現する技術が提案されている。災害発生によって停電状態となったとしても、移動が可能な電気自動車に蓄えられた電力を供給して生活を維持したり、工場の稼働を維持したりすることが期待できる。
【0003】
電気自動車に備えられている車載蓄電池への充電は、車載蓄電池と商用電源若しくは発電設備との間の充放電を制御する充放電装置によって実行される。そして電気自動車と、充放電装置との間の接続は、充放電装置から延びているケーブルのプラグ状のコネクタを、電気自動車に設けられているレセプタクル状のコネクタに、ユーザが手動で挿し込むことによって達成される。ケーブルには電力線、信号線等、多数の線が含まれているが、このユーザによる挿し込みが不十分であって、車両側のコネクタと充放電装置のコネクタとの間の係止が不十分である場合、充放電が実施できない。ユーザが、ケーブルを車両側のコネクタに挿し込み、係止が不十分な状態であるにもかかわらず、充放電装置及び車両の周りから離れた場合、充電が完了したと考えて戻ってきたときには、充放電が実施されないままであるから、車両の運転を開始することができない。
【0004】
特許文献1には、車両側に設けられている検出部で、充電設備のケーブルの半嵌合状態(係止が不十分な状態)を検出する方法が開示されている。特許文献1の検出方法では、車両側でのみ検出可能であって、車両側のコネクタ(インレット)にケーブルのコネクタが接続されたことを検出するために用いられるプロキシメトリディテクション信号を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6142729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている検出方法によって、車両側で、係止が不十分な状態を検出することができるが、全車両についてこのような検出機能が備わっているとは限らない。充放電装置は、車種毎に用意されるものではなく多種多様な電気自動車に対応するべきであるから、車両側での係止状態の検出機能の有無にかかわらず、これを検出することが求められる。
【0007】
本発明は、より確実にコネクタの係止状態を検出することができる充放電装置、係止状態検出方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充放電装置は、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、該コネクタは、前記係止機構のロック及びロックの解除を制御する回路を含み、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置において、前記回路は、前記係止機構に含まれるラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かで開閉するようにしてあり、前記回路が閉じているか否かを判断する判断部と、閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する検出部とを備える。
【0009】
本開示の一実施形態の係止状態検出方法は、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置にて前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する係止状態検出方法であって、前記充放電装置は、前記コネクタに内蔵され、前記係止機構のロック及びロック解除を制御する回路であって、ラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かに応じて開閉する回路が、閉じているか否かを判断し、閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する。
【0010】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、車両に設けられた蓄電池と接続する車載電力線の車載コネクタに対する係止機構を有するコネクタを備え、前記蓄電池に対する充放電を制御する充放電装置に搭載されたコンピュータに、前記コネクタに内蔵され、前記係止機構のロック及びロック解除を制御する回路であって、ラッチ又はフックが前記車載コネクタに嵌合しているか否かに応じて開閉する回路が、閉じているか否かを判断し、閉じていないと判断された場合、前記係止機構における係止が不十分な状態であることを検出する処理を実行させる。
【0011】
本開示の充放電装置、係止状態検出方法、及びコンピュータプログラムでは、コネクタに既に存在している回路を用いて、充放電装置側で、係止状態が不十分であるか否かを検出することが可能になる。コネクタの信号線の導通のみでは、係止状態が不十分である場合でも、コネクタの挿入が完了したと判断される可能性があるところ、コネクタのロックをかける充放電装置が、ロックを掛けることが可能な状態であるか否かを確認することでより確実に、係止が不十分な状態を検出できる。
【0012】
本開示の一実施形態の充放電装置は、充放電開始の操作を受け付ける操作部を備え、前記判断部は、前記操作部にて充放電開始の操作を受け付けた場合に、判断を実行する。
【0013】
本開示の充放電装置では、充放電開始の操作が受け付けられたことをトリガにして、係止状態の検出が実行される。ユーザによるコネクタの挿し込み操作が完了したタイミングで判断することが必要である。操作の有無により、ユーザがコネクタを差し込む操作中であって、差し込みを完了していないと認識している状態で、係止状態が不十分であると検出してしまうことを回避することができる。
【0014】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記車載コネクタ及びコネクタは、信号線の接続端子を夫々有し、前記判断部は、前記接続端子による前記信号線の導通を検出できた場合に、判断を実行する。
【0015】
本開示の充放電装置では、コネクタに収容される信号線が導通したことをトリガにして、係止状態の検出が実行される。ユーザによるコネクタの挿し込み操作が完了したタイミングで判断することが必要である。信号線の導通により、ユーザがコネクタを差し込む操作中であって、差し込みを完了していないと認識している状態で、係止状態が不十分であると検出してしまうことを回避することができる。
【0016】
本開示の一実施形態の充放電装置は、前記操作部にて充放電開始の操作を受け付け、前記検出部が、係止が不十分な状態であることを検出した後に、再度前記判断部による判断を実行し、前記判断部によって、閉じていると判断された場合、前記操作部による操作を受け付けることなしに、充放電を開始する。
【0017】
本開示の充放電装置では、一旦、係止が不十分な状態であることが検出された後に、コネクタが抜かれなければ再度、押し込まれて係止が十分になったか否かが判断される。充放電開始が既に指示されている場合は、再度操作を受け付けることなく、充放電を開始でき、ユーザの操作を簡略化することができる。
【0018】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記回路に電流が流れるか否かを判断する。
【0019】
本開示の一実施形態の充放電装置では、前記判断部は、前記回路に電流を流して前記係止機構をロックさせることができるか否かを判断し、ロックさせることができると判断された場合、ロックを維持し、充放電開始の指示を受けた場合に、前記係止機構をロックしていることを通知する。
【0020】
本開示の充放電装置では、ロックを解除させてみた場合、ロックが解除された状態から更に解除させることになるから、ロック機構に何ら変化はないが、係止機構の係止状態が十分であるか否かは検出できる。同様に、ロックさせる回路を動作させた場合、ロック機構が動作するが、ロックできる場合にはそのままロックを維持することができる。
【0021】
本開示の一実施形態の充放電装置は、光又は音を出力する出力部を備え、前記検出部が、係止状態が不十分であることを検出した場合、前記出力部から文字、画像、点灯、点滅又は音を出力することによってユーザへ向けて報知する。
【0022】
本開示の充放電装置では、係止状態が不十分である場合、文字、画像、点灯、点滅又は音が出力され、ユーザに更にコネクタを押し込んだり、挿しなおしたりする必要があることを認識させることが期待できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、充放電装置側でコネクタの係止状態を検出し、係止が不十分である場合にはユーザへ素早く報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態の充放電装置及び車両の接続構成を示すブロック図である。
図2】コネクタの模式図である。
図3】ラッチ及びラッチ検出スイッチの状態を示す模式図である。
図4】コネクタの他の例の模式図である。
図5】係止状態の検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】係止状態の検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】出力部における出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態の充放電装置1及び車両Vの接続構成を示すブロック図である。車両Vは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle )である。車両Vは、その駆動に用いることが可能な大容量の蓄電装置30を備える。車両Vは、蓄電装置30に接続される電力線VPLへのコネクタ35と、蓄電装置30における充放電を制御する車載充放電制御装置32とを備える。コネクタ35には車載充放電制御装置32と通信接続するための通信線CLの通信端子、信号の授受のための信号線SLの信号端子が含まれている。
【0027】
充放電装置1は、充放電回路10、制御部11、通信部12、電源部13、出力部14及び操作部15を備える。充放電装置1は、分電盤28を介して接続される電力系統Eから提供される電力を用いて電気自動車である車両Vの車載蓄電装置を充電するために設置されている。充放電装置1は、EMS(Energy Management System)、又は、内蔵されるコントローラ等の上位制御部からの指示に基づいて、車両Vの蓄電装置30から、分電盤28を介して接続される住宅内、若しくは公共施設内の負荷へ放電するように制御することも可能である。
【0028】
充放電回路10は、双方向インバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含む。充放電回路10は、車両Vと接続するコネクタ16に接続されている電力線PL、及び、電力系統E側の電力線PLの間に介装されている。
【0029】
制御部11は、充放電回路10に含まれる回路素子を制御し、車両Vの蓄電装置30の充放電の切り替え、電流量、及び電圧量を制御する。制御部11は、コネクタ16に内蔵されている回路との間で信号線を授受してコネクタ16のコネクタ35との接続を検知する。
【0030】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)及び不揮発性のメモリを含み、CPUはメモリに記憶されたコンピュータプログラム1Pに基づく制御処理を実行する。コンピュータプログラム1Pは、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体9に記憶されていたコンピュータプログラム9PをCPUが読み出してメモリに記憶したものであってもよい。
【0031】
通信部12は、車両通信部12a及び上位通信部12bを含む。車両通信部12aは、コネクタ16及びコネクタ35を介して車載充放電制御装置32と通信接続が可能である。車両通信部12aの通信接続のプロトコルは車両V、コネクタ16,35に対応する充放電方式に準拠していればよく、異なる充放電方式に適用するように複数のプロトコルに対応していずれかを選択的に実行できてもよい。実施の形態1では車両通信部12aは、CAN(Controller Area Network)によって車載充放電制御装置32と通信する。PLCによって通信が実現されてもよい。
【0032】
上位通信部12bは、EMS又はコントローラ等の上位制御部と通信線CLを介して通信を実現する。上位通信部12bは例えば、Ethernet(登録商標)に準拠した通信線CLに対応する通信モジュールであってもよいし、ECHONET /ECHONETLite (登録商標)対応の通信線CLに対応する通信モジュールであってもよい。上位通信部12bは、シリアル通信であってもよいし、PLCにより通信を実現してもよい。上位通信部12bは、無線通信モジュールであってもよい。
【0033】
電源部13は、UPS(Uninterruptible Power Systems)回路及び起動用蓄電池を含み、制御部11へ電力を供給する。電源部13は、停電時には起動用蓄電池から充放電装置1の起動に必要な電力を供給する。電源部13は、電力系統E又は車両Vからの電力を起動用蓄電池に充電してもよい。
【0034】
出力部14は、ディスプレイである。出力部14は、セグメントディスプレイを含む。出力部14は、制御部11の制御によって、文字又は画像を出力する。出力部14の代替として、上位通信部12bと無線通信接続が可能な、スマートフォン又はタブレット端末等の情報端末装置のディスプレイが使用されてもよい。この場合、情報端末装置は充放電装置1と無線通信によって接続され、制御部11から出力される文字又は画像を含む画面を表示できる。出力部14は、LED又はランプであって、制御部11からの指示に応じたパターンで点灯/消灯、点滅によって出力してもよい。出力部14は、スピーカであって、制御部11からの指示に応じて記憶されているビープ音を出力してもよい。出力部14は、ディスプレイ、LED、及びスピーカを併用してもよい。
【0035】
操作部15は、ディスプレイに内蔵されるタッチパネル、及び物理ボタンを含み、充放電装置1の外装に露出してユーザからのSTART(起動)及びSTOP(終了)を含む操作を受け付ける。制御部11は、操作部15にて受け付けられた操作に基づいて制御を実行してもよい。操作部15に代替して、上位通信部12bと無線通信接続が可能な、スマートフォン又はタブレット等のユーザが所持する情報端末装置における操作によって制御されてもよい。この場合、情報端末装置が対応アプリケーションに基づき操作を受け付け、操作にしたがって制御信号が制御部11へ送信される。この場合、出力部14も情報端末装置であってよい。
【0036】
START及びSTOPの指示は、操作部15経由のみならず、充放電装置1内部又は外部に設けられた充放電に対する料金の支払いを確認する課金装置から、START及びSTOPの指示が送信されてもよい。課金装置にて対象ユーザからの課金が認証等によって確認できた場合に初めて、課金装置が充放電装置1へ上位通信部12bを介してSTART信号を送信し、これを受けて制御部11は充放電の開始制御を実行するとよい。課金装置による認証を経て充電を実行する場合、充放電装置1のコネクタ16が車両Vのコネクタ35と支障なく係止されているか否かを検出するタイミングは、課金認証開始時、課金認証完了時、或いはSTART操作時のいずれでもよい。
【0037】
図2は、コネクタ16の模式図である。図2は、コネクタ16の断面及びコネクタ16に設けられた回路を模式的に示す。充放電装置1から延びるケーブルの先端に設けられたプラグ形状のコネクタ16はハンドル部60と、ハンドル部60から延伸する円筒状のソケット61と、ソケット61の外周面に設けられた車両V側のコネクタ35との係止機構であるラッチ62とを含む。ソケット61には、通信線CL、信号線SL、及び電力線PLが収容されている。
【0038】
ラッチ62は、ソケット61の外周面の一箇所に設けられた凹部63に設けられている。ラッチ62は、凹部63内に設けられた圧縮バネ64によって、ソケット61の外周面よりも少し外側に突出するようにしてある。
【0039】
ソケット61の内部には、ラッチ検出スイッチ65が設けられている。ラッチ検出スイッチ65は、ラッチ62をロック/アンロックするソレノイド66を制御するソレノイド制御回路に接続されている。ソレノイド制御回路は、ラッチ62をロックするロック回路と、ラッチ62のロックを解除する解除回路とを含む。ソレノイド制御回路は、制御部11と信号線を介して接続されており、ロックさせるか、解除させるかは制御部11によって制御できる。ロック回路に電流が流れた場合、ロック回路が動作してロックされ、解除回路に電流が流れた場合、解除回路が動作してロックが解除される。ラッチ検出スイッチ65がONである間のみ、ロック回路及び解除回路へ電流を流すことができる。
【0040】
図3は、ラッチ62及びラッチ検出スイッチ65の状態を示す模式図である。図3Aは、ラッチ62のコネクタ35への係止が不十分な状態を示す。図3Aに示すように、係止が不十分な状態では、コネクタ16が挿し込まれていく過程でラッチ62がソケット61の外周面よりも内側に押し込まれ、即ち、ソケット61の外周面が、車両Vのレセプタクル形状であるコネクタ35のソケット51の内周面511に当たり、ラッチ検出スイッチ65はOFFである。図3Bは、ラッチ62のコネクタ35に完全に係止された状態を示す。図3Bに示すように、完全に係止された状態では、コネクタ35のソケット51の内周面511に設けられた凹部512によって圧縮バネ64が開放され、ソケット61の外周面よりもラッチ62が外側に突出した場合には、ラッチ検出スイッチ65はONとなる。
【0041】
図3Bに示した、ラッチ62が完全に係止された状態では、凹部512の縁にラッチ62が係止され、ソケット61を引き抜くことができない。ロックがされていない状態であれば、ハンドル部60に設けられたリリースボタン68を押下すると、ラッチ62が押し込まれてソケット61を引き抜くことができるようにしてある。ロック回路が動作してロックされた場合には、リリースボタン68もロックされ、ラッチ62の押し込みが不可能になる。
【0042】
図4は、コネクタ16の他の例の模式図である。図4は、他の例のコネクタ16の断面及びコネクタ16に設けられた回路を模式的に示す。他の例のコネクタ16と、図2に示したコネクタ16とは、回路が異なる。他の例では、ラッチ62をロックするソレノイド67が、電流が流れている間のみ動作するロック回路によって制御される。このロック回路は、ラッチ検出スイッチ65がONの場合のみに電流が流れる。ロック回路は、制御部11と信号線を介して接続されており、ロックさせるか否かは制御部11によって制御できる。
【0043】
なお、コネクタ16における係止機構の構成は、図2及び図4に示したラッチに限られず、フックが用いられてもよい。同じラッチを用いる構成であったとしても、圧縮バネ64が圧縮されている状態でコネクタ35に係止される態様であってもよい。この場合、コネクタ35のソケットにラッチが完全に嵌合し、係止されている状態では圧縮バネ64が押し込まれ、ラッチ検出スイッチ65がONになり、係止が不十分な状態では圧縮バネ64が開放されているためにラッチ検出スイッチ65がOFFになる。
【0044】
上述のように構成される充放電装置1の制御部11は、ラッチ62のロック/アンロックを制御するロック回路及び解除回路を用いて、車両Vのコネクタ35側での嵌合状態の検出機能の有無にかかわらず、コネクタ16の嵌合状態を検出する。以下、フローチャートを参照して係止状態を検出する処理について説明する。
【0045】
制御部11は、コンピュータプログラム1Pに基づき、内蔵する不揮発性メモリに記憶してあるデータを参照しながら以下に示す処理手順を実行する。
【0046】
図5及び図6は、係止状態の検出処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、検出タイミングを示すイベントトリガによって以下の処理を開始する。
【0047】
イベントトリガの第1の例は、操作部15におけるSTARTの選択(ボタンの押下、又は出力部14のタッチパネル上の選択)である。イベントトリガの第2の例は、コネクタ16に収容される信号線の導通である。検出タイミングは、コネクタ16のコネクタ35へ挿し込む操作が完了したことを確認できたか否かである。挿し込む操作中に、係止状態が不十分であることを検出してしまわないように、挿し込む操作中で検出されるトリガは、単独でトリガとせず、他の状態と組み合わせるべきである。イベントトリガとしてはその他、コネクタ16のハンドル部60に静電センサ等を設け、ユーザがハンドル部60を把持して、充放電装置1におけるホルダからコネクタ16を外し、更にその後手を離したことを検知してもよい。
【0048】
検出タイミングである場合、制御部11は、ソレノイド66,67のソレノイド制御回路へ電流を流すことを試みる(ステップS101)。ステップS101において制御部11は、コネクタ16が図2に示した方式である場合、ラッチ62のロックを解除する解除回路へ電流を流すことを試みる。ロックを解除する解除回路へ電流を流した場合、ロックが解除された状態から更に解除させることになるから、ロック機構に何ら変化はない。制御部11は、コネクタ16が図2に示した方式である場合、ラッチ62をロックするロック回路に電流を流すことを試みてもよい。制御部11は、コネクタ16が図3に示した方式である場合、ソレノイド67のロック回路に電流を流すことを試みる。ロックするロック回路へ電流を流した場合、ロックが解除された状態からロックさせることになるから、ロック機構が動作し、コネクタ16内で振動及び音が発生する。
【0049】
制御部11は、ステップS101で試みた電流が所定の電流値で流れたか否かを判断する(ステップS102)。
【0050】
ステップS102で流れなかったと判断された場合(S102:NO)、ラッチ検出スイッチ65がOFFである。したがって制御部11は、コネクタ16が車両Vのコネクタ35に対して差し込まれる操作がされたにもかかわらず、ラッチ62が嵌合されていない即ち、ラッチ62による係止が不十分な状態であることを検出する(ステップS103)。
【0051】
この場合、制御部11は、出力部14によって、係止が不十分な状態であることを出力する(ステップS104)。ステップS104で例えば制御部11は、ディスプレイである出力部14に、コネクタ16が、完全に挿し込まれていないことを示すテキストを表示したり、接続NGを示す色又は点灯方法でランプを点灯・点滅させたり、スピーカから挿入が不充分であることを示す音声、又はビープ音を発生させたりする(図7参照)。
【0052】
制御部11は、コネクタ16が、挿し込み中の状態から抜かれたか否かを判断する(ステップS105)。抜かれていないと判断された場合(S105:NO)、制御部11は、係止が不十分な状態であると判断された回数を計数し(ステップS106)、回数が所定回数以下であるか否かを判断し(ステップS107)、所定回数以下であると判断された場合(S107:YES)、処理をステップS101へ戻す。この場合、コネクタ16が抜かれずにそのまま押し込まれることで、そのまま、係止が十分な状態であると検出され、ステップS108以降の処理を続行できる。
【0053】
ステップS107で、回数が所定回数を超過していると判断された場合(S107:NO)、制御部11は、処理を終了する。この場合、係止が不十分な状態のまま所定時間放置されたと判断し、処理を終了する。ステップS106及びS107の回数の計数及び判断に代替して、所定時間が経過したか否かを判断してもよい。ステップS107で超過していると判断して処理を終了する場合、制御部11は、ユーザが、コネクタ16のコネクタ35への係止が不十分である状態に気が付きやすいように、メモリに記憶してあるメッセージ通知先(例えば、電子メールアドレス、メッセージアプリのID等)へ通知できるように上位制御部へ通知するとよい。
【0054】
ステップS105でコネクタ16が抜かれたと判断された場合も(S105:YES)、制御部11は処理を終了する。この場合、制御部11は、再度、コネクタ16の挿し込み操作の完了の検出によるイベントトリガによって、ステップS101から処理を開始する。
【0055】
ステップS102で流れたと判断された場合(S102:YES)、ラッチ検出スイッチ65がONであるから、制御部11は、ラッチ62が嵌合し、係止が十分な状態であることを検出する(ステップS108)。
【0056】
制御部11は、ロック回路に所定の電流を流すことができた場合、ロックを維持するようにするとよい。つまり、コネクタ16が図2に示した方式であって、ステップS1で電流を流す対象がロック回路である場合は、解除せずにそのままとする。コネクタ16が図3に示した方式である場合、制御部11は電流を流したままとしてロックを維持する。
【0057】
この場合、制御部11は、出力部14によってラッチ62による係止が十分な状態であることを出力する(ステップS109)。ステップS109で例えば制御部11は、ディスプレイである出力部14に、コネクタ16の接続を確認したことを示すテキストを表示したり、接続OKを示す色又は点灯方法でランプを点灯・点滅させたり、スピーカから接続を確認したことを示す音声、又はビープ音を発生させたりする。ステップS109は必須ではなく、ラッチ62による係止が十分な状態である場合には、出力部14から出力がなくてもよい。
【0058】
制御部11は、上位通信部10bによって上位制御部へ、コネクタ16及びコネクタ35の係止状態を通知する(ステップS110)。ステップS110についても必須ではなく、制御部11は、ステップS108でラッチ62による係止が十分な状態であると検出した場合、そのまま処理を次に進めてもよい。
【0059】
制御部11は、次に、充放電を開始する指示があったか否かを判断する(ステップS111)。例えば、イベントトリガが、STARTの選択である場合、充放電の開始がユーザによる操作部15での操作によって指示されている。その他、ステップS111において制御部11は、イベントトリガが、信号線の導通である場合、その後改めてSTARTが選択されたか否かを判断してもよい。
【0060】
充放電を開始する指示がないと判断された場合(S111:NO)、処理をステップS(S111)へ戻して待機する。
【0061】
充放電を開始する指示があったと判断された場合(S111:YES)、制御部11は、ロックを維持しているか否かを判断する(ステップS112)。ロックを維持していない、即ちステップS101で解除回路に電流を流すことを試みたと判断できる場合(S112:NO)、制御部11は、コネクタ16のロック回路へ電流を流してロックさせ(ステップS113)、ロックを車載充放電制御装置32へ通知する(ステップS114)。
【0062】
ロックを維持していると判断された場合(S112:YES)、制御部11は、ステップS113のロックを省略してステップS114の通知を実行する。
【0063】
制御部11は、その後、充放電開始において規格に基づく接続シーケンスを続行し、充放電を開始、制御する(ステップS115)。制御部11は、操作部15にてSTOPが選択されたか否かを判断する(ステップS116)。
【0064】
STOPが選択されないと判断された場合(S116:NO)、制御部11は、処理をステップS115へ戻して充放電制御を続行する。この間、充放電が何も実施されない待機状態であっても、制御部11は、ラッチ62による係止が十分な状態であるか否かの確認を行なう必要はない。
【0065】
STOPが選択されたと判断された場合(S116:YES)、制御部11は、規格に基づく切断シーケンスを実行し(ステップS117)、コネクタ16のロックを解除し(ステップS118)、処理を終了する。
【0066】
このように、充放電装置1のコネクタ16が、車両Vのコネクタ35と支障なく係止されているか否かを、充放電装置1側で検出することによって、信号線SLにおける規格に基づく信号のやり取りで検出する場合よりも、迅速、且つ確実に検出することができる。信号のやり取り、上述の説明において接続シーケンスとして説明した充放電装置1と車載充放電制御装置32との間での処理で検出する場合よりも、迅速に検出されることは明らかである。コネクタ16の係止を実現するラッチ62及びラッチ検出スイッチ65という規格に準じた既存の構成を用いることで、新たに特別な機構を加えることなしに、係止状態の検出を実現することが可能である。
【0067】
図7は、出力部14における出力例を示す図である。図7において出力部14は、ディスプレイ、スピーカ、及び、LEDランプを含む物理ボタンを含む。図7は、ユーザが、コネクタ16をコネクタ35に挿し込み、STARTの物理ボタンを押下したケースにおいて、制御部11が、STARTの物理ボタンの押下をイベントトリガとして半挿し状態を検出した場合の例を示す。図7に示す例では、ディスプレイに「コネクタをしっかりと挿入してください」というテキストメッセージが表示され、STARTの物理ボタンに内蔵されたLEDランプが点滅し、更に、スピーカからビープ音が出力されている。コネクタ16のロック回路(解除回路)に電流を流してみるという試行によって、係止状態が不十分であるか否かが検出されるので、STARTの物理ボタンの押下から例えば100ミリ秒程度の応答速度で検出結果が出力される。接続シーケンスの中で、ロックができるか否かを検出する場合、規格に応じて数秒要することもあるが、上述の方法によって、より早く確実に検出できる。
【0068】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 充放電装置
11 制御部
12 通信部
14 出力部
15 操作部
16 コネクタ
1P コンピュータプログラム
62 ラッチ
65 ラッチ検出スイッチ
66,67 ソレノイド
35 コネクタ
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7