(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60H 1/08 20060101AFI20231219BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20231219BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20231219BHJP
B60K 11/00 20060101ALI20231219BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20231219BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231219BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20231219BHJP
【FI】
B60H1/08 611Z
B60H1/00 102V
B60H1/22 671
B60K11/00
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L58/26
(21)【出願番号】P 2020010340
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 順平
(72)【発明者】
【氏名】片岡 朋治
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 将史
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112143(JP,A)
【文献】特開2006-216303(JP,A)
【文献】特開2008-265490(JP,A)
【文献】実開昭61-103272(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0131885(KR,A)
【文献】中国実用新案第207403527(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
B60K 11/00
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時に発熱する電気機器を備えた車両本体と、
外気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記電気機器と前記熱交換器との間で前記冷媒を循環させる流路を構成すると共に、前記電気機器から前記熱交換器へ向かう流路の一部が前記車両本体の車室内に配管された冷却管と、
を有し、
前記冷却管の一部は
、ピラーに沿って天井部まで延在されており、天井部からフロアパネルへ向かって垂下された部分によって乗員が把持する手摺を構成しており、前記冷却管内に前記冷媒が流れることで、当該手摺の表面温度を上昇させる、車両。
【請求項2】
前記車両本体の側面にはサイドメンバアウタパネルが配設されており、
前記サイドメンバアウタパネルの車両幅方向内側には、前記サイドメンバアウタパネルとの間で閉断面を構成する断面ハット状のシート固定板が設けられており、
前記シート固定板には、複数の車両用シートのシートバックがそれぞれ固定されており、
前記冷却管の一部は、前記
シート固定板に沿って前記閉断面内に配管されたシート流路を構成している請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両用シートには、乗員の着座状態を直接的又は間接的に検出可能なシートセンサが設けられており、
前記冷却管には、制御部によって制御されることで前記シート流路を開閉可能なバルブが設けられており、
前記制御部は、前記シートセンサからの信号により前記車両用シートに乗員が着座している場合に前記バルブを開いて
前記手摺及び前記シート流路へ前記冷媒を流
し、前記車両用シートに乗員が着座していない場合には、前記手摺のみに前記冷媒を流す、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記電気機器は、駆動用バッテリを含んでいる請求項1~3の何れか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記電気機器は、前記駆動用バッテリの出力を制御するパワーコントロールユニットを含んでいる請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリ部で発生した熱をクッションタンクへ移送し、クッションタンクから各種装置へ熱を供給することで熱を再利用する車両が開示されている。具体的には、クッションタンクからフロントガラス及びヘッドライトケースなどに熱を供給することで、フロントガラス及びヘッドライトケースなどの曇り止めを行う構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された車両では、バッテリなどの電気機器から発生した熱を一旦クッションタンクへ移送することとなるため、排熱を効果的に利用するには改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、電気機器から発生した熱を効果的に利用することができる車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両は、走行時に発熱する電気機器を備えた車両本体と、外気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、前記電気機器と前記熱交換器との間で前記冷媒を循環させる流路を構成すると共に、前記電気機器から前記熱交換器へ向かう流路の一部が前記車両本体の車室内に配管された冷却管と、を有し、前記冷却管の一部は、ピラーに沿って天井部まで延在されており、天井部からフロアパネルへ向かって垂下された部分によって乗員が把持する手摺を構成しており、前記冷却管内に前記冷媒が流れることで、当該手摺の表面温度を上昇させる。
【0007】
請求項1に係る車両では、車両本体は、走行時に発熱する電気機器を備えている。また、熱交換器は、外気と冷媒との間で熱交換を行う。さらに、電気機器と熱交換器との間で冷媒を循環させる流路を構成する冷却管を有している。このように、冷却管を流れる冷媒が電気機器と熱交換器との間を循環することで電気機器が冷却される。
【0008】
また、冷却管のうち、電気機器から熱交換器へ向かう流路の一部が車両本体の車室内に配管されている。これにより、電気機器で熱を奪った冷媒が車室内を流れる間に車室内に放熱され、クッションタンクなどに熱を一旦蓄えることなく排熱を利用することができる。さらに、乗員が手摺を把持することで、手摺を介して冷媒から乗員の手に熱を伝えることができる。なお、ここでいう「電気機器」とは、電気エネルギーの蓄電を行う駆動用バッテリ、駆動用バッテリの出力を制御するパワーコントロールユニット、及び各種の制御を行うECU(Electronic Control Unit)などを含む。
【0009】
請求項2に係る車両は、請求項1において、前記車両本体の側面にはサイドメンバアウタパネルが配設されており、前記サイドメンバアウタパネルの車両幅方向内側には、前記サイドメンバアウタパネルとの間で閉断面を構成する断面ハット状のシート固定板が設けられており、前記シート固定板には、複数の車両用シートのシートバックがそれぞれ固定されており、前記冷却管の一部は、前記シート固定板に沿って前記閉断面内に配管されたシート流路を構成している。
【0010】
請求項2に係る車両では、シート流路を流れる冷媒から車両用シートへ放熱されることで、車両用シートを温めることができる。
【0011】
請求項3に係る車両は、請求項2において、前記車両用シートには、乗員の着座状態を直接的又は間接的に検出可能なシートセンサが設けられており、前記冷却管には、制御部によって制御されることで前記シート流路を開閉可能なバルブが設けられており、前記制御部は、前記シートセンサからの信号により前記車両用シートに乗員が着座している場合に前記バルブを開いて前記手摺及び前記シート流路へ前記冷媒を流し、前記車両用シートに乗員が着座していない場合には、前記手摺のみに前記冷媒を流す。
【0012】
請求項3に係る車両では、シートセンサによって乗員が着座していることが検出された場合には、制御部によりバルブが開状態となりシート流路に冷媒が流れる。これにより、乗員が着座している車両用シートを温めることができる。一方、シートセンサによって乗員が着座していることが検出されていない場合には、バルブが閉状態となりシート流路に冷媒が流れない。これにより、車室内の他の部分における放熱量を多く確保することができる。
【0015】
請求項4に係る車両は、請求項1~3の何れか1項において、前記電気機器は、駆動用バッテリを含んでいる。
【0016】
請求項4に係る車両では、駆動用バッテリを冷媒で冷却して適温に維持することにより、車両の航続距離を延ばすことができる。また、駆動用バッテリの熱を利用して車室内を暖めることができる。
【0017】
請求項5に係る車両は、請求項4において、前記電気機器は、前記駆動用バッテリの出力を制御するパワーコントロールユニットを含んでいる。
【0018】
請求項5に係る車両では、パワーコントロールユニットを冷媒で冷却することで、演算の処理能力を良好に維持することができる。また、パワーコントロールユニットの熱を利用して車室内を暖めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1に係る車両によれば、電気機器から発生した熱を効果的に利用することができる。また、乗員の手を直接的に温めることができる。
【0020】
請求項2に係る車両によれば、車両用シートに着座した乗員の快適性を向上させることができる。
【0021】
請求項3に係る車両によれば、車室内を効果的に暖房することができる。
【0023】
請求項4に係る車両によれば、駆動用バッテリを冷却しつつ、車室内を暖めることができる。
【0024】
請求項5に係る車両によれば、パワーコントロールユニットを冷却しつつ、車室内を暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る車両の要部を示す概略側面図である。
【
図2】実施形態に係る車両の車室内における要部を示す概略斜視図である。
【
図3】実施形態に係る車両を車両後方側から見た概略断面図である。
【
図4】実施形態に係る車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態に係る車両10について、図面を参照して説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP及び矢印RHは、車両の前方向、上方向及び右方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両前方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0027】
(全体構成)
図1に示されるように、本実施形態の車両10は、車両本体12を備えている。本実施形態の車両本体12は、一例として、外形が車両前後方向に対称となっており、車両前後方向の両方向に走行可能に構成されている。
【0028】
車両本体12は、複数の車輪14を備えている。本実施形態では、車両本体12の一方側の側部に4つの車輪14が設けられており、車両本体12の他方の側面に4つの車輪14が設けられている。また、一方側の側部に設けられた4つの車輪14のうち、2つの車輪14が車両前方側に設けられており、残りの2つの車輪14が車両後方側に設けられている。なお、
図1では、車両本体12の一方の側部に設けられた4つの車輪14のみが図示されている。
【0029】
車両本体12を構成するフロアパネル16の下方には、電気機器としての駆動用バッテリ18が設けられており、この駆動用バッテリ18は、車両10の走行時に発熱する。駆動用バッテリ18は、車両本体12における車両前後方向の中央部分に設けられており、車両10を駆動させるための図示しないモータと電気的に接続されている。そして、この駆動用バッテリ18からモータへ電力が供給されることで、モータが駆動して車両10を走行させる。なお、車両前後方向の一方側に1つのモータが設けられた構成としてもよい。また、各車輪14にインホイールモータを備えた構成としてもよい。
【0030】
駆動用バッテリ18は、駆動用バッテリ18の出力を制御する電気機器としてのパワーコントロールユニット(以下、適宜「PCU20」と称する。)20に接続されており、PCU20には図示しないモータが接続されている。PCU20は、交流電力の直流電力への変換及び直流電力の交流電力への変換が可能なインバータを含んでおり、駆動用バッテリ18からPCU20を経由してモータへ電力が供給されるように構成されている。
【0031】
ここで、車両本体12の車両前方側の端部には、熱交換器としてのラジエータ22が設けられており、このラジエータ22の後方側にはファン24が設けられている。また、車両本体12には、ファン24を制御する制御部としてのECU(Electronic Control Unit)26が設けられている。
【0032】
ラジエータ22は、車両本体12の前端部に形成された図示しない開口の後方に設けられており、車両本体12が走行する際に、この開口を通じてラジエータ22へ走行風が導入されるように構成されている。また、ファン24を作動させた場合も同様に、車両本体12の外部から開口を通じてラジエータ22へ外気が導入される。
【0033】
ラジエータ22と駆動用バッテリ18とは、冷媒を循環させる冷却管28によって連結されている。具体的には、冷却管28は、駆動用バッテリ18の内部を通過した冷媒がラジエータ22へ流入する放熱用冷却管30と、ラジエータ22を通過した冷媒が駆動用バッテリ18へ流入する冷却用冷却管32とを含んで構成されている。また、ラジエータ22とPCU20とが同様の冷却管28によって連結されている。本実施形態では一例として、駆動用バッテリ18を通過した後の放熱用冷却管30がPCU20を通過する構成とされている。なお、本実施形態では冷媒として冷却水を用いている。
【0034】
冷却管28には、図示しないポンプ及びバルブ52(
図4参照)が設けられている。そして、駆動用バッテリ18の冷却が必要な場合に冷却管28に冷媒を循環させるようにECU26が制御する。このようにして、駆動用バッテリ18とPCU20とラジエータ22との間で冷媒を循環させることで、ラジエータ22で外気と熱交換されて低温になった冷媒が駆動用バッテリ18及びPCU20に沿って流れる。
【0035】
ここで、
図1には放熱用冷却管30の一部のみが概略的に図示されている。そして、
図2には放熱用冷却管30の他の一部が図示されている。
【0036】
(放熱用冷却管の構成)
図2に示されるように、冷却管28において、電気機器である駆動用バッテリ18からラジエータ22へ向かう放熱用冷却管30の一部が車室内に配管されている。放熱用冷却管30は、第1流路34、第2流路36及び第3流路38を含んで構成されている。第1流路34、第2流路36及び第3流路38は、複数のバルブ52(
図4参照)を介して連結されており、バルブ52を開閉することで、任意の流路のみに冷媒を流すことができるように構成されている。
【0037】
第1流路34は、駆動用バッテリ18の後端部からフロアパネル16に沿って後方へ延在されており、さらに車両幅方向左側へ延在されている。また、第1流路34は、図示しないピラーガーニッシュに沿って天井部まで上方へ延在されており、天井部に沿って前方へ延在されている。さらに、第1流路34は、天井部からフロアパネル16へ向かって垂下されており、この上下に延在された部分によって乗員が把持する手摺34Aが構成されている。
【0038】
第2流路36は、駆動用バッテリ18の後端部からフロアパネル16に沿って後方へ延在されており、さらに車両幅方向右側へ延在されている。また、第2流路36は、ピラーガーニッシュに沿って天井部まで上方へ延在されており、天井部に沿って第1流路34よりも前方へ延在されている。さらに、第2流路36は、第1流路34よりも車両前方側で天井部からフロアパネル16へ向かって垂下されており、この上下に延在された部分によって乗員が把持する手摺36Aが構成されている。すなわち、本実施形態では一例として、上下に延在されて乗員が把持する手摺が2つ設けられている。また、第1流路34及び第2流路36を流れる冷却水はそれぞれ、図示しないポンプが作動することで天井部まで上方へ流れるように構成されており、手摺34A及び手摺36Aの部分では、冷却水の自重によって下方へ流れるように構成されている。
【0039】
なお、第1流路34及び第2流路36は、ピラーガーニッシュの裏面側に配管されていてもよく、ピラーガーニッシュの表面側に配管されていてもよい。第1流路34及び第2流路36をピラーガーニッシュの表面側に配管した場合、車両後部に設けられたベンチシート60に着座した乗員の手摺として機能させることができる。すなわち、車両本体12の後部には、シートクッション60Aとシートバック60Bとを含んで構成されたベンチシート60が設けられている。そして、第1流路34は、ベンチシート60の左端部における前方に位置しており、第2流路36は、ベンチシート60の右端部における前方に位置している。このため、第1流路34は、ベンチシート60の左端に着座した乗員が左手で把持できる。また、第2流路36は、ベンチシート60の右端に着座した乗員の右手で把持できる。
【0040】
第3流路38は、車室の右側面に沿って配管されている。具体的には、第3流路38は、駆動用バッテリ18の後端部からフロアパネル16に沿って車室の右側面まで車両右側へ延在されている。また、第3流路38は、車室の右側面に沿って後述する車両用シート62の上端部まで上方へ延在されており、さらに車両前方側へ延在されている。そして、第3流路38は、車室の右側面に沿って蛇行しながら下方へ延在されている。以下、車室の右側面の構成について具体的に説明する。
【0041】
図3に示されるように、本実施形態の車両本体12における左側面には、大型のスライドドア66が設けられている。一方、車両本体12における右側面には、サイドメンバアウタパネル70が配設されている。サイドメンバアウタパネル70は、車両本体12の下部に位置しており、この車両本体12の外板を構成している。また、サイドメンバアウタパネル70の上方にはサイドガラス64が配設されている。
【0042】
ここで、サイドメンバアウタパネル70の車両幅方向内側には、略板状のシート固定板68が配設されている。シート固定板68は、車両前後方向から見て断面略ハット状に形成されており、サイドメンバアウタパネル70との間で閉断面を構成している。そして、このシート固定板68に図示しないブラケットを介して車両用シート62が固定されている。
【0043】
車両用シート62は、車両前後方向に複数配列されており、本実施形態では一例として、3つの車両用シート62が配列されている(
図2参照)。また、車両用シート62はそれぞれ、シートクッション62Aとシートバック62Bとを含んで構成されており、シートバック62Bの背面がシート固定板68に固定されている。
【0044】
シートクッション62Aは、シートバック62Bに対して回動可能に連結されており、シートクッション62Aとシートバック62Bとの回動軸には、シートクッション62Aをシートバック62B側へ付勢する図示しないスプリングが設けられている。このため、無負荷状態では、シートクッション62Aがシートバック62B側へ回動されて折り畳まれた状態となっている。そして、乗員が着座する際には、乗員がスプリングの付勢力に抗してシートクッション62Aを押し下げた状態で着座することで、車両用シート62を利用することができるように構成されている。
【0045】
ここで、放熱用冷却管30を構成する第3流路38は、シート固定板68に沿って蛇行して配管されたシート流路38Aを構成している。シート流路38Aは、車両用シート62の周辺に配管されている。
図3に示されるように、車両後方側から見た断面では、シート固定板68及びシートバック62Bに沿って上下に複数のシート流路38Aが配置されており、本実施形態では一例として、4つのシート流路38Aが配置されている。
【0046】
(ハードウェア構成)
図4に示されるように、ECU26は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)40、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)44、ストレージ46、通信インタフェース48及び入出力インタフェース50を含んで構成されている。各構成は、バス41を介して相互に通信可能に接続されている。
【0047】
CPU40は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU40は、ROM42又はストレージ46からプログラムを読み出し、RAM44を作業領域としてプログラムを実行する。CPU40は、ROM42又はストレージ46に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0048】
ROM42は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM44は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ46は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0049】
通信インタフェース48は、車両本体12が外部の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0050】
入出力インタフェース50は、ファン24、バルブ52、温度センサ54及びシートセンサ56と電気的に接続されている。ファン24は、作動することで回転してラジエータ22へ外気を導入する。バルブ52は、冷却管28に複数設けられており、それぞれ独立して開閉できるように構成されている。そして、バルブ52を開閉することで、任意の流路に冷媒を流すことができるように構成されている。
【0051】
温度センサ54は、駆動用バッテリ18の近傍に設けられており、駆動用バッテリ18の温度を検出してECU26へ送信する。そして、ECU26は、温度センサ54によって検出された駆動用バッテリ18の温度に応じてバルブ52を制御することで、駆動用バッテリ18の温度を一定の範囲に維持させる。例えば、駆動用バッテリ18の温度が所定の閾値よりも低い場合には、駆動用バッテリ18を迂回してPCU20へ直接冷媒が流れるようにECU26がバルブ52を制御する。なお、温度センサ54は、駆動用バッテリ18に沿って複数配設されていてもよい。この場合、駆動用バッテリ18における一部のみを冷却するようにバルブ52を制御してもよい。
【0052】
シートセンサ56は、車両用シート62に設けられており、乗員の着座状態を直接的又は間接的に検出可能とされている。本実施形態のシートセンサ56は一例として、車両用シート62におけるシートクッション62Aとシートバック62Bとの回動軸に設けられており、シートクッション62Aが開かれたことを検知するように構成されている。そして、ECU26は、シートセンサ56からの信号により車両用シート62に乗員が着座していることを間接的に検知した場合に、バルブ52を開いてシート流路38Aへ冷媒を流す。なお、シートセンサ56に代えて、シートクッション62Aの内部に着座センサを設けた構成としてもよい。この場合、乗員が着座したことを直接的に検知することができる。
【0053】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0054】
本実施形態の車両10では、冷却管28を流れる冷媒が駆動用バッテリ18及びPCU20とラジエータ22との間を循環することで電気機器が冷却される。また、冷却管28のうち、放熱用冷却管30の一部が車両本体12の車室内に配管されている。これにより、駆動用バッテリ18及びPCU20で熱を奪った冷媒が車室内を流れる間に車室内に放熱され、クッションタンクなどに熱を一旦蓄えることなく排熱を利用することができる。この結果、電気機器から発生した熱を効果的に利用することができる。
【0055】
また、本実施形態では、放熱用冷却管30を構成するシート流路38Aを流れる冷媒から車両用シート62へ放熱されることで、車両用シート62を温めることができ、車両用シート62に着座した乗員の快適性を向上させることができる。特に、本実施形態では、シートセンサ56によって乗員が着座していることが検出された場合には、ECU26によりバルブ52が開状態となりシート流路38Aに冷媒が流れるため、乗員が着座している車両用シート62を温めることができる。一方、シートセンサ56によって乗員が着座していることが検出されていない場合には、バルブ52が閉状態となりシート流路38Aに冷媒が流れないので、第1流路34及び第2流路36における放熱量を多く確保することができる。この結果、車室内を効果的に暖房することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第1流路34及び第2流路36がそれぞれ手摺を構成している。これにより、乗員が手摺を把持することで、手摺を介して冷媒から乗員の手に熱を伝えることができる。すなわち、乗員の手を直接的に温めることができる。また、第1流路34及び第2流路36をピラーなどの骨格部材に沿って延在させることで、車両本体12の耐衝突性能を向上させることができる。
【0057】
さらにまた、本実施形態では、駆動用バッテリ18を冷媒で冷却して適温に維持することにより、車両10の航続距離を延ばすことができる。また、駆動用バッテリ18の熱を利用して車室内を暖めることができる。すなわち、駆動用バッテリを冷却しつつ、車室内を暖めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、PCU20を冷媒で冷却することで、演算の処理能力を良好に維持することができる。また、PCU20の熱を利用して車室内を暖めることができる。すなわち、PCU20を冷却しつつ、車室内を暖めることができる。
【0059】
以上、実施形態に係る車両10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、
図2に示されるように、第1流路34によって手摺34Aを構成し、第2流路36によって手摺36Aを構成したが、これに限定されない。すなわち、第1流路34のみを備えた構成としてもよい。また、手摺34A及び手摺36Aとは別に手摺を備えた構成としてもよい。さらに、第1流路34及び第2流路36における車両前後方向に延在された部分を手摺として車室内に露出させてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、冷却管28の全体を同様の構成としているが、これに限定されない。例えば、冷却管28を構成する放熱用冷却管30と冷却用冷却管32とで断熱構造を変えてもよい。冷却用冷却管32は、ラジエータ22で外気と熱交換された冷媒を低温の状態で駆動用バッテリ18及びPCU20まで流す必要があるため、より断熱性能が高い構造としてもよい。一方、放熱用冷却管30は、車室内で放熱が促されるように、断熱性能が低い構造としてもよい。特に、手摺34A及び手摺36Aの部分を構成する放熱用冷却管30を熱伝導性の高い材料で形成すれば、より効果的に乗員の手を温めることができ、かつ車室内を暖めることができる。
【0061】
さらに、上記実施形態では、
図3に示されるように、サイドメンバアウタパネル70とシート固定板68との間の空間にシート流路38Aを設けたが、これに限定されず、車両用シート62の周辺にシート流路38Aを配管すれば同様の作用を奏する。例えば、車両用シート62を構成するシートバック62Bの内部にシート流路38Aを配管してもよい。また、シートクッション62Aの内部にシート流路38Aを配管してもよい。さらに、
図2に示されるベンチシート60の内部に別途シート流路を配管してもよい。
【0062】
さらにまた、上記実施形態では、シートセンサ56を備えた構成としたが、これに限定されず、シートセンサ56を備えていない構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、電気機器として、駆動用バッテリ18及びPCU20を冷却する構成としたが、これに限定されない。例えば、図示しないモータを電気機器としてもよい。また、自動運転時の制御用に用いられるECUなどを電気機器としてもよい。PCU20及びECU26は、駆動用バッテリ18と異なり、走行中は常に冷却する必要があるため、効率よく排熱を利用して車室内を暖めることができる。
【0064】
さらに、上記実施形態では、熱交換器としてラジエータ22を用いたが、これに限定されない。すなわち、外気と冷媒との間で熱交換ができる装置であれば、他の熱交換器を用いてもよい。
【0065】
さらにまた、上記実施形態の車両10は、モータを駆動源とする電気自動車としたが、これに限定されない。例えば、エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 車両
12 車両本体
18 駆動用バッテリ(電気機器)
20 PCU(電気機器)
22 ラジエータ(熱交換器)
26 ECU(制御部)
28 冷却管
34 第1流路
34A 手摺
36 第2流路
36A 手摺
38 第3流路
38A シート流路
52 バルブ
56 シートセンサ
62 車両用シート