(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20231219BHJP
F28F 13/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F13/08
(21)【出願番号】P 2020011615
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】浜田 浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 友彦
(72)【発明者】
【氏名】亀井 一雄
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 章太
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特許第4830918(JP,B2)
【文献】特開2019-100668(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012921(WO,A1)
【文献】米国特許第09958219(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/22
F28F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、
熱媒体の通る流路(FP1,FP2)が形成された管状の部材であって、積層方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(300)と、
それぞれの前記チューブに熱媒体を供給するための容器であって、前記積層方向に沿った端部となる位置に、熱媒体の入口である開口(131)が形成されているタンク(100)と、
前記タンクの内部に配置された板状の部材であって、前記チューブの端面に当接することにより、前記チューブに流入する熱媒体の流れを一定範囲において抑制する抑制板(500)と、を備え、
前記積層方向に対して垂直な方向であって、前記チューブに沿って空気が通過する方向と平行な方向を幅方向としたときに、
それぞれの前記チューブには、前記流路が前記幅方向に沿って複数並ぶように形成されており、
前記抑制板には変形部(510,520)が設けられており、
前記抑制板が、前記開口から前記タンクの内部に挿入される際に、前記変形部が前記開口の縁に当たることにより弾性変形し、
前記抑制板が前記タンクの内部まで挿入されると、復元した前記変形部が前記タンクの内面から反力を受け、前記抑制板が、当該反力によって前記幅方向に沿って移動するように構成されて
おり、
前記抑制板には、
前記タンクの内部において前記幅方向に沿って移動する際に、前記抑制板が傾いてしまうことを防止するためのリブ(530)が形成されている熱交換器。
【請求項2】
前記変形部は、前記タンクの内面に向かって伸びる棒状の部分として形成されている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記変形部には、
前記抑制板のうち、前記幅方向に沿った一方側の部分に設けられた第1変形部(510)と、
前記抑制板のうち、前記幅方向に沿った他方側の部分に設けられた第2変形部(520)と、が含まれており、
前記第1変形部の長さと前記第2変形部の長さとが互いに異なっている、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記変形部は、前記積層方向に沿って並ぶように複数設けられている、請求項2又は3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記リブの先端には、前記タンクの内面(121)に当接する平坦面(531)が形成されている、請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記リブは、前記積層方向に沿って並ぶように複数設けられている、請求項
5に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
空気と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器としては、例えば、車両に設けられるラジエータや、空調装置に設けられるヒータコア等が挙げられる。このような熱交換器は、一対のタンクの間が、複数のチューブによって接続された構成となっている。それぞれのチューブでは、内側の流路を通る熱媒体と、外側の空間を通る空気との間で熱交換が行われる。
【0003】
このような構成の熱交換器においては、全体で均等に熱交換が行われるように、入口側のタンクから、それぞれのチューブに対して均等に熱媒体を流入させることが好ましい。しかしながら、入口側のタンクのうち、外部からの熱媒体を受け入れる流入口の近傍に配置されたチューブには、流入口から遠い位置に配置されたチューブに比べて、より多くの熱媒体が流入する傾向がある。
【0004】
そこで、下記特許文献1に記載されている熱交換器では、それぞれのチューブの端部を板状の部材によって部分的に塞ぐことにより、各チューブに流入する熱媒体の流量のばらつきを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載されている熱交換器では、チューブの端面のうち幅方向における中央、すなわち、空気の通過する方向における中央となる部分が板状部材によって塞がれている。本発明者らが行った実験によれば、このような構成においては、板状の部材を配置したことによるばらつき抑制の効果が十分ではなく、流入口の近傍に配置されたチューブには依然として大きな流量の熱媒体が流入することが判明している。
【0007】
本発明者らは、チューブの端面のうち板状部材によって塞がれる範囲を、上記のような幅方向における中央部分とするのではなく、同方向において中央からずれた部分とすることについて検討を進めている。板状部材を中央からずれた位置に配置すると、それぞれのチューブに流入する熱媒体の流量のばらつきを十分に抑制できることが、実験等により確認されている。
【0008】
熱交換器を製造する際の作業性に鑑みれば、板状部材は、タンクやチューブ等のろう付けが完了した後に、タンクの一端に形成された開口、すなわち、熱媒体の入口として形成された開口から挿入して取り付けられることが好ましい。上記特許文献1にも、そのような板状部材の取り付け方法が記載されている。しかしながら、タンクの開口から板状部材を挿入する方法では、板状部材を幅方向の中央に配置することはできるのであるが、上記のように幅方向の中央からずれた位置に配置することは困難である。
【0009】
本開示は、チューブに流入する熱媒体の流れを一定範囲において抑制するための板状の部材を、チューブの幅方向における中央からずれた位置に、容易に配置することのできる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る熱交換器は、空気と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(10)であって、熱媒体の通る流路(FP1,FP2)が形成された管状の部材であって、積層方向に沿って並ぶように配置された複数のチューブ(300)と、それぞれのチューブに熱媒体を供給するための容器であって、積層方向に沿った端部となる位置に、熱媒体の入口である開口(131)が形成されているタンク(100)と、タンクの内部に配置された板状の部材であって、チューブの端面に当接することにより、チューブに流入する熱媒体の流れを一定範囲において抑制する抑制板(500)と、を備える。積層方向に対して垂直な方向であって、チューブに沿って空気が通過する方向と平行な方向を幅方向としたときに、それぞれのチューブには、流路が幅方向に沿って複数並ぶように形成されている。また、抑制板には変形部(510,520)が設けられている。この熱交換器は、抑制板が、開口からタンクの内部に挿入される際に、変形部が開口の縁に当たることにより弾性変形し、抑制板がタンクの内部まで挿入されると、復元した変形部がタンクの内面から反力を受け、抑制板が、当該反力によって幅方向に沿って移動するように構成されている。抑制板には、タンクの内部において幅方向に沿って移動する際に、抑制板が傾いてしまうことを防止するためのリブ(530)が形成されている。
【0011】
このような構成の熱交換器では、タンクの内部に抑制板が配置されている。抑制板は、タンクの内部に配置された板状の部材であって、チューブの端面に当接することにより、チューブに流入する熱媒体の流れを一定範囲において抑制するためのものである。抑制板は、開口からタンクの内部に挿入される。
【0012】
抑制板が、開口からタンクの内部に挿入されている途中の段階においては、幅方向における抑制板の中央位置は、同方向におけるチューブの中央位置と概ね一致している。その後、抑制板がタンクの内側まで挿入されると、弾性変形していた変形部がタンクの内部に入り込み、元の形状に復元しようとする。その際、変形部の一部がタンクの内面から反力を受け、当該反力により、抑制板が幅方向に沿って移動する。その結果、抑制板は、チューブの幅方向における中央からずれた位置に配置される。
【0013】
作業者は、抑制板を開口から積層方向に沿って挿入する作業を行うだけで、上記のように、中央からずれた位置に抑制板を容易に配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、チューブに流入する熱媒体の流れを一定範囲において抑制するための板状の部材を、チューブの幅方向における中央からずれた位置に、容易に配置することのできる熱交換器、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る熱交換器の全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、熱交換器が備えるチューブの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、熱交換器のうちタンクの内側の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、熱交換器のうちタンクの内側の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、熱交換器に設けられた抑制板の配置を示す図である。
【
図6】
図6は、チューブの流路における開口の幅と、当該流路を流れる熱媒体の流路抵抗と、の関係を示す図である。
【
図7】
図7は、タンクの内部に配置される抑制板の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、タンクの内部に配置される抑制板の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、タンクの内部に配置される抑制板の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、タンクの開口から抑制板が挿入される様子を示す図である。
【
図11】
図11は、タンクの内側における抑制板の移動について説明するための図である。
【
図12】
図12は、タンクの内側における抑制板の移動について説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る抑制板の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る抑制板の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係る抑制板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る熱交換器10は、空気と熱媒体との間で熱交換を行うための熱交換器であって、車両用空調装置に設けられる所謂「ヒータコア」として構成されている。熱交換器10では、外部から供給される高温の冷却水が熱媒体として用いられ、当該熱媒体との熱交換によって空気の加熱が行われる。
図1に示されるように、熱交換器10は、入口側タンク100と、出口側タンク200と、チューブ300と、フィン400と、を備えている。
【0018】
入口側タンク100は、外部から供給される熱媒体を受け入れて、これをそれぞれのチューブ300に分配し供給するための容器である。入口側タンク100は、略円柱形状の細長い容器として形成されており、その長手方向を水平方向に沿わせた状態で配置されている。入口側タンク100は、ヘッダプレート110と、タンクプレート120と、ジョイント部130と、を有している。
【0019】
ヘッダプレート110は、概ね平坦な板状の部材である。ヘッダプレート110は金属によって形成されている。
図3に示されるように、ヘッダプレート110には複数の貫通穴が形成されており、それぞれの貫通穴に、それぞれのチューブ300の下端部が上方側から挿通されている。ヘッダプレート110のうち上記貫通穴の縁の部分と、チューブ300の外周面との間は、全周に亘って水密にろう接されている。
【0020】
タンクプレート120は、熱媒体を貯える空間を区画するための部材である。タンクプレート120は、ヘッダプレート110を下方側、すなわちチューブ300とは反対側から覆うように配置されている。タンクプレート120は金属によって形成されている。タンクプレート120とヘッダプレート110との間は水密にろう接されている。これにより、両者の間から熱媒体が外部に漏出することが防止されている。
【0021】
ジョイント部130は、外部から供給される熱媒体を受け入れて、これを入口側タンク100の内側の空間へと導くものである。ジョイント部130には、熱交換器10に熱媒体を供給するための不図示の配管が接続される。ジョイント部130は、入口側タンク100のうち、その長手方向に沿った端部となる位置に設けられている。ジョイント部130のうち同方向に沿った端部には、熱媒体の入口である開口131が形成されている。外部から開口131を通じてジョイント部130に供給された熱媒体は、入口側タンク100の内側を上記長手方向に沿って流れながら、それぞれのチューブ300へと分配されていく。
【0022】
出口側タンク200は、それぞれのチューブ300を通った熱媒体を受け入れて、これを外部へと排出するための容器である。出口側タンク200は、入口側タンク100の鉛直上方となる位置に配置されている。出口側タンク200は、ヘッダプレート210と、タンクプレート220と、ジョイント部230と、を有している。
【0023】
ヘッダプレート210は、概ね平坦な板状の部材である。ヘッダプレート210は金属によって形成されている。ヘッダプレート210の形状は、
図3に示されるヘッダプレート110の形状と概ね同一である。ヘッダプレート210には複数の貫通穴が形成されており、それぞれの貫通穴に、それぞれのチューブ300の上端部が下方側から挿通されている。ヘッダプレート210のうち上記貫通穴の縁の部分と、チューブ300の外周面との間は、全周に亘って水密にろう接されている。
【0024】
タンクプレート220は、熱媒体を貯える空間を区画するための部材である。タンクプレート220は、ヘッダプレート210を上方側、すなわちチューブ300とは反対側から覆うように配置されている。タンクプレート220は金属によって形成されている。タンクプレート220とヘッダプレート210との間は水密にろう接されている。これにより、両者の間から熱媒体が外部に漏出することが防止されている。
【0025】
ジョイント部230は、出口側タンク200の内部に貯えられた熱媒体を、外部へと排出するための出口として構成された部分である。ジョイント部230には、熱交換器10から熱媒体を排出するための不図示の配管が接続される。ジョイント部230は、出口側タンク200のうち、その長手方向に沿った端部となる位置に設けられている。ジョイント部230のうち同方向に沿った端部には、熱媒体の出口である開口231が形成されている。それぞれのチューブ300を通って出口側タンク200の内部へと供給された熱媒体は、出口側タンク200の内側を上記長手方向に沿って流れた後、ジョイント部230から外部へと排出される。
【0026】
チューブ300は、熱媒体の通る流路が形成された管状の部材である。チューブ300は、熱交換器10において複数備えられている。それぞれのチューブ300は、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で、入口側タンク100と出口側タンク200との間となる位置に配置されている。それぞれのチューブ300は、後述のフィン400と共に積層されており、入口側タンク100や出口側タンク200の長手方向に沿って並ぶように配置されている。このため、積層された複数のチューブ300が並んでいる方向のことを、以下では「積層方向」とも称する。積層方向は、
図1では左右方向である。
【0027】
入口側タンク100において、先に述べた開口131が形成されている位置は、入口側タンク100のうち「積層方向に沿った端部となる位置」ということができる。同様に、出口側タンク200において開口231が形成されている位置は、出口側タンク200のうち「積層方向に沿った端部となる位置」ということができる。開口231は、
図1に示されるように、入口側タンク100における開口131と同じ側に設けられている。
【0028】
既に述べたように、チューブ300の下端は入口側タンク100のヘッダプレート110に接続されており、チューブ300の上端は出口側タンク200のヘッダプレート210に接続されている。入口側タンク100の内部空間と、出口側タンク200の内部空間とは、チューブ300に形成された流路によって連通されている。チューブ300の具体的な構成については後に説明する。
【0029】
フィン400は、金属板を波状に折り曲げることによって形成されたコルゲートフィンである。フィン400は、熱交換器10において複数備えられおり、それぞれのチューブ300の間に配置されている。フィン400は、その両側に配置された一対のチューブ300のそれぞれに対して当接しており、且つろう接されている。
【0030】
熱交換器10のうち、上記のようにチューブ300とフィン400とが交互に積層されている部分は、チューブ300の内部を通る熱媒体と、チューブ300の外部を通る空気との間で熱交換が行われる部分であって、所謂「熱交換コア部」と称される部分である。熱交換コア部のうち、
図1における左右両側の端部となる部分には、サイドプレート11、12が配置されている。
【0031】
サイドプレート11、12は、金属板を曲げ加工することによって形成された板状部材であって、チューブ300の長手方向と同じ方向に沿って伸びるように配置されている。サイドプレート11は、熱交換コア部のうち、積層方向に沿って最もジョイント部130側の端部となる位置に配置されている。サイドプレート12は、熱交換コア部のうち、積層方向に沿って最もジョイント部130とは反対側の端部となる位置に配置されている。サイドプレート11、12は、熱交換コア部を積層方向に沿った両側から挟み込んでいる。これにより、熱交換コア部の剛性が高められている。
【0032】
熱交換器10による熱交換が行われる際には、不図示の内燃機関を通り高温となった熱媒体が、ジョイント部130の開口131から入口側タンク100の内部へと供給される。当該熱媒体は、入口側タンク100の内部を積層方向に沿って流れながら、それぞれのチューブ300へと供給される。熱媒体は、それぞれのチューブ300の内部を上方側に向かって流れて、出口側タンク200の内部へと供給される。
【0033】
熱交換器10の近傍には、熱交換コア部を通過するように空気を送り出す不図示のファンが設けられている。ファンによって空気が送り出される方向は、
図1において紙面手前側から奥側へと向かう方向である。
【0034】
熱媒体は、チューブ300に形成された流路を上記のように流れる際において、空気によって冷却される。当該空気、すなわちファンによって送り出された空気は、チューブ300の周囲を通過する際において熱媒体によって加熱され、その温度を上昇させる。当該空気は、例えば暖房用の空調風として車室内に向けて吹き出される。それぞれのチューブ300を通って出口側タンク200の内部へと供給された熱媒体は、先に述べたように、ジョイント部230から外部へと排出される。
【0035】
図1においては、水平方向であり且つ紙面手前側から奥側に向かう方向をx方向としており、同方向に沿ってx軸を設定している。x方向は、上記のように熱交換器10を空気が通過する方向となっている。
【0036】
また、
図1においては、水平方向であり且つジョイント部130から入口側タンク100の内側へと向かう方向をy方向としており、同方向に沿ってy軸を設定している。積層方向は、このy軸に沿った方向となっている。
【0037】
更に、
図1においては、上記のx方向及びy方向のいずれに対しても垂直な方向であって、入口側タンク100から出口側タンク200へと向かう方向をz方向としており、同方向に沿ってz軸を設定している。
【0038】
以降においては、以上のように定義されたx方向、y方向、z方向、x軸、y軸、及びz軸を用いながら、熱交換器10の構成を説明する。
【0039】
チューブ300の具体的な構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2には、チューブ300のうち-z方向側の端部近傍の部分が斜視図によって示されている。同図に示されるように、チューブ300の内側には、熱媒体の流れる流路として第1流路FP1及び第2流路FP2が形成されている。これらは、いずれもチューブ300の長手方向、つまりz方向に沿って直線状に伸びるように形成されている。
【0040】
本実施形態におけるチューブ300は、一枚の金属板を折り曲げることによって形成されている。チューブ300は、その長手方向に対し垂直な断面の形状が扁平形状となっている。第1流路FP1は、チューブ300のうち-x方向側の部分に形成されている。第2流路FP2は、チューブ300のうちx方向側の部分に形成されている。両者の間は、上記金属板を折り曲げることによって形成された仕切りにより分けられている。当該仕切りと、金属板の端部とが重ねられている部分は水密にろう接されている。
【0041】
第1流路FP1と第2流路FP2とが並んでいる方向であるx方向は、積層方向に対して垂直な方向であって、チューブ300に沿って空気が通過する方向と平行な方向である。x方向はチューブ300の幅に沿った方向であるから、以下では、x方向のことを「幅方向」とも称する。それぞれのチューブ300では、熱媒体の通る流路である第1流路FP1及び第2流路FP2が、幅方向に沿って並ぶように形成されている。
【0042】
本実施形態では、上記の仕切りが、チューブ300のうち幅方向に沿った中央となる位置において形成されている。このため、幅方向に沿った第1流路FP1の寸法と、幅方向に沿った第2流路FP2の寸法とは互いに等しい。本実施形態では、第1流路FP1の断面形状と、第2流路FP2の断面形状とが互いに対称となっている。
【0043】
尚、このような第1流路FP1と第2流路FP2とを有するチューブ300の態様は、上記とは異なる態様であってもよい。例えば、金属の押し出し成型によってチューブ300が形成されてもよい。また、互いに独立の管状部材を幅方向に沿って2つ並べることにより、第1流路FP1と第2流路FP2とを有するチューブ300が構成されていてもよい。この場合、2つ並んだ管状部材の全体が1つの「チューブ300」に該当することになる。更に、第1流路FP1及び第2流路FP2とは更に別の流路が、チューブ300に形成されているような態様であってもよい。つまり、チューブ300において幅方向に沿って並ぶように形成された流路の数が、3以上であってもよい。
【0044】
図3、4には、ジョイント部130の近傍における入口側タンク100の内部構成が示されている。尚、入口側タンク100の内側には、
図4に示されるように抑制板500が配置されているのであるが、
図3においてはその図示が省略されている。
【0045】
図3に示されるように、入口側タンク100の内側においては、ヘッダプレート110からチューブ300の先端部分が-z方向に突出している。その突出量は全てのチューブ300について互いに等しい。このため、それぞれのチューブ300の端面は同一の平面上に配置されている。尚、当該配置はあくまで設計上のものである。実際には、部品の寸法ばらつき等に伴って、一部又は全部の端面が上記平面上から僅かにずれていてもよい。
【0046】
上記の「端面」、すなわち、チューブ300のうち-z方向側の先端面のことを、以下では「端面301」とも称する。
【0047】
図4に示されるように、入口側タンク100の内部には抑制板500が配置されている。抑制板500は平板状の部材であって、z軸に沿って見た場合の形状が略矩形の部材である。抑制板500は、その長辺をy方向、つまり積層方向に沿わせた状態で配置されている。換言すれば、抑制板500は積層方向に沿って伸びるように配置されている。尚、抑制板500には、
図7に示されるように第1変形部510、第2変形部520、及びリブ530等が形成されているのであるが、
図4においてはこれらの図示が省略されている。抑制板500の具体的な形状については、
図7等を参照しながら後に説明する。
【0048】
抑制板500は、そのz方向側の主面を、全てのチューブ300の端面301に対して当接させた状態で配置されている。チューブ300の端面301には、第1流路FP1や第2流路FP2の端部である開口が形成されているのであるが、抑制板500によって覆われている部分においては、各流路に対する熱媒体の流入が抑制される。抑制板500は、第1流路FP1及び第2流路FP2のうち少なくとも一方に流入する熱媒体の流れを、幅方向に沿った一定範囲において抑制するものとして設けられている。
【0049】
本実施形態では、抑制板500は、第2流路FP2の入口の全部と、第1流路FP1の入口の一部とを覆っている。尚、上記における「抑制」とは、本実施形態においては、当該部分における熱媒体の流入を完全に遮断することを意味する。尚、抑制板500の表面の撓み等に起因して、抑制板500とチューブ300の端部との間に僅かな隙間が形成されていたり、当該隙間から少量の熱媒体が第2流路FP2等に流入したりしていてもよい。ただし、抑制板500によって熱媒体の流れを抑制し、各チューブ300に流入する熱媒体の流量のばらつきを抑制するという効果を十分に奏するためには、隙間の大きさは最大でも1mm以内とすることが好ましい。
【0050】
図5を参照しながら、抑制板500の配置について説明する。
図5に示される範囲W1は、第1流路FP1及び第2流路FP2からなる流路全体の、幅方向に沿った範囲である。
図5において矢印AR1で示される位置は、幅方向に沿った範囲W1の中心位置である。
【0051】
また、
図5に示される範囲W2は、上記の流路全体のうち、抑制板500によって熱媒体の流れが抑制される部分の、幅方向に沿った範囲である。
図5において矢印AR2で示される位置は、幅方向に沿った範囲W2の中心位置である。
【0052】
本実施形態では、抑制板500が、幅方向に沿ってx方向寄りとなる位置に配置されている。このため、矢印AR2で示される中心位置は、矢印AR1で示される全体の中心位置とは異なっている。
【0053】
抑制板500は、チューブ300を流れる熱媒体の流路抵抗を大きくし、これにより各チューブ300に流入する熱媒体の流量ばらつきを抑制するためのものとして設けられている。本実施形態では、上記2つの中心位置を互いに一致させるのではなく、互いに異ならせることで、上記の流路抵抗をより大きくしている。
【0054】
流路抵抗が大きくなることに理由について、
図6を参照しながら説明する。
図6には、一つの流路のうち幅方向に沿った開口の幅(横軸)と、当該流路の流路抵抗(縦軸)との関係が示されている。横軸に沿った開口の幅は、流路のうち抑制板500によって塞がれていない部分の開口面積といってもよい。
【0055】
同図に示されるように、開口の幅と流路抵抗との関係は、直線状の関係とはなっていない。開口の幅がある程度狭くなっている状態から、当該幅が更に狭くなると、流路抵抗は急速に大きくなる傾向がある。一方、開口の幅がある程度広くなっている状態から、当該幅が更に広くなっても、流路抵抗は僅かにしか低下しない。
【0056】
このため、
図5において矢印AR2で示される中心位置が、矢印AR1で示される全体の中心位置に一致するような場合、すなわち、抑制板500がチューブ300の中央を塞いでいるような場合に比べると、本実施形態では、第1流路FP1における流路抵抗が僅かに低下している一方で、第2流路FP2における流路抵抗は大きく増加している。このため、1本のチューブ300全体における流路抵抗は、抑制板500の位置をx方向側にずらすことにより、ずらさない場合に比べると大きくなっている。
【0057】
入口側タンク100の内側においては、ジョイント部130に近い-y方向側の部分と、ジョイント部130から遠いy方向側の部分との間で、熱媒体の圧力に差が生じる傾向がある。このため、各チューブ300における流路抵抗が小さい場合には、上記の圧力差に起因して、各チューブ300に流入する熱媒体の流量が、チューブ300毎に大きくばらついてしまう傾向がある。具体的には、ジョイント部130に近いチューブ300における熱媒体の流量は大きくなり、ジョイント部130から遠いチューブ300における熱媒体の流量は小さくなる傾向がある。
【0058】
これに対し、本実施形態に係る熱交換器10では、上記のように抑制板500の位置をx方向側にずらすことで、各チューブ300における流路抵抗が高められている。その結果、入口側タンク100の内側において熱媒体の圧力差が生じても、各チューブ300に流入する熱媒体の流量のばらつきを抑制することができる。
【0059】
抑制板500の具体的な形状について、
図7、8、9を参照しながら説明する。
図7では、抑制板500の構成が斜視図により示されている。
図8では、抑制板500を-z方向側から見た状態が描かれている。
図9では、抑制板500をx方向側から見た状態が描かれている。抑制板500の短手方向、すなわち、
図7等におけるx方向に沿った寸法は、開口131の内径よりも僅かに小さくなっている。
【0060】
抑制板500には、第1変形部510と、第2変形部520と、リブ530と、取手540と、が設けられている。抑制板500は、これらの第1変形部510を含む全体が、樹脂により一体に形成されている。
【0061】
第1変形部510は、抑制板500のうち-z方向側の面、すなわち、タンクプレート120と対向する面から、タンクプレート120側に向かって概ね直線状に伸びる棒状の部分として形成されている。第1変形部510が伸びる方向は、-z方向側に行く程、-y方向側であり且つ-x方向側に向かうような方向となっている。本実施形態では、第1変形部510は3つ設けられており、3つの第1変形部510が積層方向に沿って並ぶように設けられている。
【0062】
第2変形部520は、上記の第1変形部510と同様に、抑制板500のうち-z方向側の面から、タンクプレート120側に向かって概ね直線状に伸びる棒状の部分として形成されている。第2変形部520が伸びる方向は、-z方向側に行く程、-y方向側であり且つx方向側に向かうような方向となっている。本実施形態では、第2変形部520は3つ設けられており、3つの第2変形部520が積層方向に沿って並ぶように設けられている。それぞれの第2変形部520の根元部分のy座標は、第1変形部510の根元部分のy座標に概ね等しい。
【0063】
第1変形部510及び第2変形部520は、樹脂により形成された細長い棒状の部分となっているので、外力を受けて弾性変形しやすくなっている。第1変形部510及び第2変形部520は、本実施形態における「変形部」に該当するものである。
【0064】
本実施形態では、第1変形部510の長さと第2変形部520の長さとは互いに異なっており、第1変形部510の方が長くなっている。
図8のように、チューブ300の長手方向に沿って見た場合には、第1変形部510は、抑制板500から-x方向に向けて大きく突出している。一方、第2変形部520は、その全体が抑制板500の内側に収まっており、x方向に向けた突出量は小さい。
【0065】
リブ530は、抑制板500のうち-z方向側の面から-z方向に向かって直線状に伸びる板状の部分として形成されている。リブ530は十分な厚さを有しており、外力を受けても弾性変形はほとんど生じない。リブ530の厚さ(つまりx方向に沿った寸法)は、抑制板500の厚さ(つまりz方向に沿った寸法)と同程度か、それ以上であることが好ましい。リブ530の先端、すなわち-z方向の端部には、平坦面531が形成されている。平坦面531は、抑制板500の主面と平行な面となっている。
【0066】
本実施形態では、リブ530は3つ設けられており、3つのリブ530が積層方向に沿って並ぶように設けられている。
図7に示されるように、それぞれのリブ530は、抑制板500の-z方向側の面のうち、x方向に沿った中央よりも-x方向側寄りとなる位置に設けられている。
【0067】
取手540は、抑制板500の-y方向側の端部から、更に-y方向側に沿って伸びるように形成された概ね棒状の部分である。取手540は、作業者が抑制板500を入口側タンク100の内部に挿入する作業を行う際に、作業者によって把持される部分である。
【0068】
抑制板500を入口側タンク100の内部に挿入する作業について説明する。抑制板500は、ろう付けにより熱交換器10の全体が形成された後に、開口131から入口側タンク100の内部へと挿入される。
【0069】
図10には、上記のように抑制板500が開口131から挿入される際の様子が描かれている。同図に示されるように、抑制板500は、その長手方向を入口側タンク100の長手方向に沿わせた状態で、取手540とは反対側の端部から、開口131を通じて入口側タンク100の内側へと挿入されて行く。
【0070】
開口131の中心のx座標は、チューブ300のx方向に沿った中央となる位置のx座標に概ね等しい。このため、抑制板500が開口131を通過している途中の段階においては、抑制板500のx方向に沿った中央となる位置のx座標は、チューブ300のx方向に沿った中央となる位置のx座標に概ね等しくなっている。すなわち、
図5において矢印AR1で示されていた中心位置と、同図において矢印AR2で示されていた中心位置とが、抑制板500の挿入中においては概ね互いに一致した状態となっている。
【0071】
先に述べたように、第1変形部510は、抑制板500から-x方向に向けて大きく突出している。このため、抑制板500が開口131を通過する過程においては、突出している第1変形部510の一部が開口131の縁に当たることとなる。しかしながら、第1変形部510は樹脂により形成された細長い棒状の部分となっているので、開口131の縁からの力を受けて弾性変形する。具体的には、第1変形部510は、-y方向側に倒れるように弾性変形する。このため、入口側タンク100の内部に抑制板500を挿入する作業が、第1変形部510によって妨げられてしまうことは無い。
【0072】
尚、第2変形部520も上記と同様に、開口131の縁に当たると-y方向側に倒れるように弾性変形する。このため、入口側タンク100の内部に抑制板500を挿入する作業が、第2変形部520によって妨げられてしまうことも無い。
【0073】
図11には、入口側タンク100の内部に抑制板500が途中まで挿入された状態、が模式的に示されている。
図11に示される第1変形部510は、複数設けられた第1変形部510のうち、先に入口側タンク100の内部まで挿入されたものである。この第1変形部510は、開口131の縁に当たって予め弾性変形した後、入口側タンク100の内部まで入り込んだ際に、元の形状に復元しようとする。
【0074】
しかしながら、
図11に示されるように、抑制板500がx方向に沿った中央にあるうちには、第1変形部510は完全に元の形状にまで復元することはできず、第1変形部510の先端が入口側タンク100の内面121に当たった状態となっている。このとき、第1変形部510は依然として弾性変形した状態となっているので、内面121から、矢印AR3で示されるような反力を受けている。
【0075】
当該反力はx方向の成分を有しており、第1変形部510を介して抑制板500に伝えられる。このため、抑制板500には、
図11の矢印AR4で示されるような力が加えられる。ただし、抑制板500は、入口側タンク100の内部に途中までしか挿入されていないので、この時点では矢印AR4の方向には動かない。
【0076】
その後、抑制板500が積層方向に沿ってさらに奥まで挿入され、その全体が入口側タンク100の内側まで入り込むと、抑制板500は、上記の反力によって矢印AR4の方向に動き始める。つまり、幅方向に沿ったx方向へと移動し始める。
【0077】
尚、第2変形部520は、入口側タンク100の内部に抑制板500が挿入されている途中の段階においても、入口側タンク100の内部で直ちに概ね元の形状まで復元した状態となり、その先端を入口側タンク100の内面121に当接させた状態となる。その後、第1変形部510の復元力によって抑制板500がx方向へと移動して行くと、第2変形部520の先端が、内面121が平坦面から湾曲面となる部分に到達し、これにより抑制板500の移動が終了する。この時点で、第1変形部510が元の形状まで復元した状態となるように、第1変形部510及び第2変形部520のそれぞれの形状が調整されている。
図12には、x方向への抑制板500の移動が終了した状態が、
図11と同様に模式的に描かれている。抑制板500の移動が完了すると、リブ530のx座標は、チューブ300のx方向における中央位置のx座標に概ね一致する。
【0078】
ところで、抑制板500がx方向へと移動する際には、抑制板500の主面が端面301と平行になっている状態が保たれず、抑制板500が傾いてしまうことが懸念される。抑制板500が端面301に対して傾いてしまうと、抑制板500による流路の遮断が設計通りには行われないため、各チューブ300に流入する熱媒体の流量のばらつきを抑制することができなくなってしまう。
【0079】
そこで、本実施形態における抑制板500には、抑制板500が傾いてしまうことを防止するために、先に述べたリブ530が設けられている。
図11、12に示されるように、入口側タンク100の内側においては、リブ530の平坦面531が、入口側タンク100の内面121に当接した状態となっている。このため、移動中又は移動後において抑制板500が傾こうとした場合には、リブ530は内面121から矢印AR5で示されるような力を受けることとなり、当該反力によって、抑制板500の傾きは防止される。尚、本実施形態では、第2変形部520もリブ530と共に、抑制板500の傾きを防止する機能を発揮する。
【0080】
以上に述べたように、本実施形態に係る熱交換器10では、入口側タンク100の内部に抑制板500が配置されており、抑制板500には、変形部として第1変形部510と第2変形部520が設けられている。熱交換器10は、抑制板500が、開口131から入口側タンク100の内部に挿入される際に、変形部が開口131の縁に当たることにより弾性変形するように構成されている。更に熱交換器10は、抑制板500が入口側タンク100の内部まで挿入されると、復元した変形部が入口側タンク100の内面121から反力を受け、抑制板500が、当該反力によって幅方向に沿って移動するように構成されている。
【0081】
作業者は、抑制板500を開口131から積層方向に沿って挿入する作業を行うだけで、
図5に示されるような、チューブ300の幅方向における中央からずれた位置に、抑制板500を容易に配置することができる。
【0082】
変形部である第1変形部510及び第2変形部520は、いずれも、入口側タンク100の内面121に向かって伸びる棒状の部分として形成されている。このため、第1変形部510等を弾性変形させ、抑制板500を移動させるような反力を容易に生じさせることが可能となっている。
【0083】
変形部には、抑制板500のうち、幅方向に沿った一方側の部分に設けられた第1変形部510と、抑制板500のうち、幅方向に沿った他方側の部分に設けられた第2変形部520と、が含まれている。また、第1変形部510の長さと第2変形部520の長さとが互いに異なっており、第1変形部510の方が長くなっている。これにより、第1変形部510の復元により生じる反力の方が、第2変形部の復元により生じる反力よりも大きくなるので、抑制板500をx方向へと移動させるための力を確実に生じさせることができる。
【0084】
本実施形態では、変形部である第1変形部510及び第2変形部520は、積層方向に沿って並ぶように複数、具体的には3つずつ設けられている。このような構成では、抑制板500をx方向へと移動させるための力が、積層方向に沿った複数箇所のそれぞれにおいて抑制板500に作用する。このため、抑制板500を、x方向へとスムーズに平行移動させることができる。
【0085】
抑制板500には、入口側タンク100の内部において幅方向に沿って移動する際に、抑制板500が傾いてしまうことを防止するためのリブ530が形成されている。リブ530の先端が入口側タンク100の内面に当接することで、移動中又は移動後における抑制板500の傾きを確実に防止することができる。
【0086】
また、リブ530の先端には、入口側タンク100の内面121に当接する平坦面531が形成されている。リブ530の先端が、点や線ではなく面において内面121に当接するので、抑制板500が傾いてしまうことを更に確実に防止することができる。
【0087】
本実施形態のリブ530は、積層方向に沿って並ぶように複数、具体的には3つ設けられている。このような態様では、抑制板500の傾きを防止する力、すなわち、
図11において矢印AR5で示されるような力が、積層方向に沿った複数箇所のそれぞれにおいて抑制板500に作用する。このため、抑制板500の傾きを防止するための力を、抑制板500の長手方向に沿った全体において生じさせることができる。
【0088】
第2実施形態について説明する。本実施形態では、抑制板500に形成された変形部の態様においてのみ第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0089】
図13は、本実施形態に係る熱交換器10の入口側タンク100の内部に、抑制板500が挿入された状態を、
図12と同様の方法にて描いたものである。
図13に示されるように、本実施形態に係る抑制板500には、第1変形部510とリブ530が形成されている一方で、第2変形部520は形成されていない。また、第1変形部510は、抑制板500のうち-x方向側の側面から、-x方向側へと伸びるように形成されている。具体的には、第1変形部510は、-x方向側に行く程、z方向側に向かうような方向に向かって伸びている。
【0090】
このような態様においても、抑制板500を入口側タンク100の内部に挿入する際には、第1変形部510が一旦弾性変形し、その復元力によって抑制板500がx方向側へと移動することとなる。これにより、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0091】
第3実施形態について説明する。本実施形態では、抑制板500に形成されたリブ530の態様においてのみ第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0092】
図14には、本実施形態に係る抑制板500を、
図9と同様にx方向側から見た状態が描かれている。
図14に示されるように、本実施形態では、リブ530のy方向に沿った寸法が第1実施形態よりも大きくなっており、このような形状のリブ530が1つだけ設けられている。このような態様でも、第1実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0093】
尚、本実施形態では、リブ530のy方向に沿った寸法が大きくなっていることに伴って、入口側タンク100の内面121に当接する平坦面531も大きくなっている。このため、抑制板500を積層方向に沿って挿入する際には、内面121と平坦面531との間で生じる摩擦力が大きくなり、挿入作業がやりにくくなってしまう可能性がある。この点に鑑みれば、第1実施形態のように、小さなリブ530を積層方向に沿って複数並ぶように設けた方が好ましい。
【0094】
第4実施形態について説明する。本実施形態では、抑制板500に形成されたリブ530の態様においてのみ第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0095】
図15には、本実施形態に係る抑制板500を、
図9と同様にx方向側から見た状態が描かれている。
図15に示されるように、本実施形態でも第1実施形態と同様に、リブ530が積層方向に沿って3つ並ぶように形成されている。最も-y方向側に形成されているリブ530の形状は、第1実施形態におけるリブ530の形状と同様である。一方、y方向の中央に形成されたリブ530Aは、全体が三角形となっており、先端が尖った形状となっている。また、最もy方向側となる位置に形成されたリブ530Bは、先端が円弧状となっている。
【0096】
このように、リブ530の形状としては、入口側タンク100の内面121に当接し得るような形状であれば、任意の形状を採用することができる。全てのリブ530の形状を、530Aのように尖った形状としてもよく、530Bのように円弧状の形状としてもよい。ただし、抑制板500の傾きを確実に防止するためには、第1実施形態のリブ530のように、先端に平坦面531が形成されているような形状とすることが好ましい。
【0097】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0098】
10:熱交換器
100:入口側タンク
131:開口
300:チューブ
FP1,FP2:流路
500:抑制板
510:第1変形部
520:第2変形部