(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 101
B41J2/165 207
B41J2/165 211
B41J2/165 301
B41J2/165 307
(21)【出願番号】P 2020013349
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌信
(72)【発明者】
【氏名】横山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁俊
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205954(JP,A)
【文献】特開2020-006557(JP,A)
【文献】特開2014-073627(JP,A)
【文献】特開2014-148051(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03486089(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、
前記液体噴射部が噴射する前記液体を吸収可能な帯状部材を前記ノズル面に接触させて該ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行可能なワイピング機構と、
前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材にワイピング液を供給可能なワイピング液供給機構と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記液体の付着量の多い前記ノズル面をワイピングする場合、前記ワイピング動作において前記ノズル面に接触する前記帯状部材の接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、前記液体の付着量の少ない前記ノズル面をワイピングする場合より少なくすることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材に供給する前記ワイピング液の量を少なくすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくすることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ワイピング液を前記帯状部材に供給してから前記ワイピング動作を行うまでの時間間隔を長くすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記接触領域のうち前記ワイピング動作において最初に前記ノズル面に接触する部分を前側接触部とした場合に、
前記制御部は、前記ワイピング動作を行う前に供給される前記ワイピング液を受ける前記帯状部材の受け止め部と前記前側接触部との間の距離を長くすることで、前記前側接触部が保持する前記ワイピング液の量を少なくすることを特徴とする請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ワイピング動作を2回続けて行う場合に、最初に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、次に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量より少なくすることを特徴とする請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、
前記液体噴射部が噴射する前記液体を吸収可能な帯状部材を前記ノズル面に接触させて該ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行可能なワイピング機構と、
前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材にワイピング液を供給可能なワイピング液供給機構と、
を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、
前記液体の付着量の多い前記ノズル面をワイピングする場合、前記ワイピング動作において前記ノズル面に接触する前記帯状部材の接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、前記液体の付着量の少ない前記ノズル面をワイピングする場合より少なくすることを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項7】
前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材に供給する前記ワイピング液の量を少なくすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくすることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
前記ワイピング液を前記帯状部材に供給してから前記ワイピング動作を行うまでの時間間隔を長くすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくすることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の液体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項9】
前記接触領域のうち前記ワイピング動作において最初に前記ノズル面に接触する部分を前側接触部とした場合に、
前記ワイピング動作を行う前に供給される前記ワイピング液を受ける前記帯状部材の受け止め部と前記前側接触部との間の距離を長くすることで、前記前側接触部が保持する前記ワイピング液の量を少なくすることを特徴とする請求項6~請求項8のうち何れか一項に記載の液体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項10】
前記ワイピング動作を2回続けて行う場合に、最初に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、次に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量より少なくすることを特徴とする請求項6~請求項9のうち何れか一項に記載の液体噴射装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどの液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、液体噴射部の一例である液体吐出ヘッドから液体を吐出して印刷する液体噴射装置の一例であるプリンターがある。プリンターは、液体吐出ヘッドのノズル面を払拭するワイピング機構の一例である払拭機構を備え、ワイピング液の一例である洗浄液が付与された帯状部材の一例であるウェブによりノズル面を払拭する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイピング液で湿潤させた帯状部材でノズル面をワイピングする場合でも、ノズル面に付着した液体の量によっては、ワイピング後のノズルからの液体の噴射が不安定になる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する液体噴射装置は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記液体噴射部が噴射する前記液体を吸収可能な帯状部材を前記ノズル面に接触させて該ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行可能なワイピング機構と、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材にワイピング液を供給可能なワイピング液供給機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体の付着量の多い前記ノズル面をワイピングする場合、前記ワイピング動作において前記ノズル面に接触する前記帯状部材の接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、前記液体の付着量の少ない前記ノズル面をワイピングする場合より少なくする。
【0006】
上記課題を解決する液体噴射装置のメンテナンス方法は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記液体噴射部が噴射する前記液体を吸収可能な帯状部材を前記ノズル面に接触させて該ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行可能なワイピング機構と、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材にワイピング液を供給可能なワイピング液供給機構と、を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、前記液体の付着量の多い前記ノズル面をワイピングする場合、前記ワイピング動作において前記ノズル面に接触する前記帯状部材の接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、前記液体の付着量の少ない前記ノズル面をワイピングする場合より少なくする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】ケースが待機位置に位置するワイピング機構の模式側面図。
【
図5】帯状部材へのワイピング液の供給を説明するための模式図。
【
図6】ケースが受容位置に位置するワイピング機構の模式側面図。
【
図7】1度目のワイピング動作を行うワイピング機構の模式側面図。
【
図8】2度目のワイピング動作を行うワイピング機構の模式側面図。
【
図9】変更例のケースが補給位置に位置するワイピング機構の模式側面図。
【
図10】変更例の帯状部材へのワイピング液の供給を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、液体噴射装置及び液体噴射装置のメンテナンス方法の一実施形態について図を参照しながら説明する。液体噴射装置は、例えば、用紙等の媒体に液体の一例であるインクを噴射して印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
図面では、液体噴射装置11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、X軸に沿う方向を幅方向X、Y軸に沿う方向を奥行方向Y、Z軸に沿う方向を重力方向Zともいう。
【0010】
図1に示すように、液体噴射装置11は、一対の脚部12と、脚部12上に組み付けられる筐体13と、を備えてもよい。液体噴射装置11は、ロール状に巻き重ねた媒体14を巻き解いて繰り出す繰出部15と、筐体13から排出される媒体14を案内する案内部16と、媒体14を巻き取って回収する回収部17と、を備えてもよい。液体噴射装置11は、回収部17に回収される媒体14にテンションを付与するテンション付与機構18を備えてもよい。
【0011】
液体噴射装置11は、液体を噴射可能な液体噴射部20と、液体噴射部20を移動させるキャリッジ21と、液体噴射部20のメンテナンスを行うメンテナンスユニット22と、を備える。液体噴射装置11は、液体噴射部20に液体を供給する液体供給装置23と、ユーザーによって操作される操作パネル24と、を備えてもよい。キャリッジ21は、液体噴射部20をX軸に沿って往復移動させる。液体噴射部20は、液体供給装置23を通じて供給された液体を移動しながら噴射し、媒体14に印刷する。
【0012】
液体供給装置23は、液体を収容する複数の液体収容体25が着脱可能に装着される装着部26と、装着部26に装着させる液体収容体25から液体噴射部20に液体を供給する供給流路27と、を備える。
【0013】
液体噴射装置11は、液体噴射装置11の動作を制御する制御部29を備える。制御部29は、例えばCPU、メモリーなどを含んで構成される。制御部29は、メモリーに記憶されるプログラムをCPUが実行することにより、液体噴射部20、液体供給装置23、及びメンテナンスユニット22などを制御する。
【0014】
図2に示すように、液体噴射装置11は、キャリッジ21を支持するガイド軸31と、キャリッジ21を移動させるキャリッジモーター32と、を備えてもよい。ガイド軸31は、幅方向Xに延びる。制御部29は、キャリッジモーター32の駆動を制御することにより、キャリッジ21及び液体噴射部20をガイド軸31に沿って往復移動させる。
【0015】
液体噴射装置11は、キャリッジ21の下部に保持される整風部34を備えてもよい。整風部34は、幅方向Xにおいて液体噴射部20の両側に設けると、X軸に沿って往復移動する液体噴射部20周辺の気流を整えやすくできる。
【0016】
液体噴射部20は、複数のノズル36が形成されるノズル形成部材37と、ノズル形成部材37の一部を覆うカバー部材38と、を備えてもよい。カバー部材38は、例えばステンレス鋼などの金属により構成される。カバー部材38には、カバー部材38を重力方向Zに貫通する複数の貫通孔39が形成されている。カバー部材38は、貫通孔39からノズル36が露出するように、ノズル形成部材37においてノズル36が形成される側を覆う。ノズル面40は、ノズル形成部材37と、カバー部材38と、を含んで形成される。具体的には、ノズル面40は、貫通孔39から露出するノズル形成部材37と、カバー部材38と、により構成されている。液体噴射部20は、ノズル面40に配置されるノズル36から液体を噴射可能である。
【0017】
液体噴射部20には、液体を噴射するノズル36の開口が一方向に一定の間隔で多数並ぶ。複数のノズル36は、ノズル列を構成する。本実施形態では、ノズル36の開口は、奥行方向Yに並び、第1ノズル列L1~第12ノズル列L12を構成する。1つのノズル列を構成するノズル36は、同じ種類の液体を噴射する。1つのノズル列を構成するノズル36のうち、奥行方向Yにおける奥に位置するノズル36と、奥行方向Yにおける前に位置するノズル36は、幅方向Xに位置をずらして形成されている。
【0018】
第1ノズル列L1~第12ノズル列L12は、2列ずつ幅方向Xに接近して並ぶ。本実施形態では、互いに接近して並ぶ2つのノズル列をノズル群という。液体噴射部20には、第1ノズル群G1~第6ノズル群G6が幅方向Xに一定の間隔で配置される。
【0019】
具体的には、第1ノズル群G1は、マゼンタインクを噴射する第1ノズル列L1とイエローインクを噴射する第2ノズル列L2を含む。第2ノズル群G2は、シアンインクを噴射する第3ノズル列L3とブラックインクを噴射する第4ノズル列L4を含む。第3ノズル群G3は、ライトシアンインクを噴射する第5ノズル列L5とライトマゼンタインクを噴射する第6ノズル列L6を含む。第4ノズル群G4は、処理液を噴射する第7ノズル列L7および第8ノズル列L8を含む。第5ノズル群G5は、ブラックインクを噴射する第9ノズル列L9とシアンインクを噴射する第10ノズル列L10を含む。第6ノズル群G6は、イエローインクを噴射する第11ノズル列L11とマゼンタインクを噴射する第12ノズル列L12を含む。
【0020】
次に、メンテナンスユニット22について説明する。
図3に示すように、メンテナンスユニット22は、幅方向Xに並ぶフラッシング装置42、ワイピング機構43、吸引装置44、及びキャッピング装置45を有する。さらに、メンテナンスユニット22は、ワイピング機構43に
図5に示すワイピング液Wを供給可能なワイピング液供給機構80を有する。キャッピング装置45の上方は、液体噴射部20のホームポジションHPとなる。ホームポジションHPは、液体噴射部20の移動の始点となる。ワイピング機構43の上方は、液体噴射部20のクリーニング位置CPとなる。
図3には、クリーニング位置CPに位置する液体噴射部20を二点鎖線で示す。
【0021】
フラッシング装置42は、フラッシングにより液体噴射部20から噴射される液体を受容する。フラッシングとは、ノズル36の目詰まりを予防及び解消する目的で、液体を廃液として噴射するメンテナンスである。
【0022】
フラッシング装置42は、液体噴射部20がフラッシングのために噴射した液体を受容する液体受容部47と、液体受容部47の開口を覆うための蓋部材48と、蓋部材48を移動させる蓋用モーター49と、を備える。フラッシング装置42は、複数の液体受容部47と、複数の蓋部材48と、を備えてもよい。制御部29は、液体の種類によって液体受容部47を選択してもよい。本実施形態のフラッシング装置42は、2つの液体受容部47を備え、一方の液体受容部47は、液体噴射部20からフラッシングにより噴射される複数のカラーインクを受容し、他方の液体受容部47は、液体噴射部20からフラッシングにより噴射される処理液を受容する。液体受容部47は、保湿液を収容してもよい。
【0023】
蓋部材48は、蓋用モーター49の駆動により、液体受容部47の開口を覆う図示しない被覆位置と、液体受容部47の開口を露出させる
図3に示す露出位置と、の間で移動する。フラッシングを行わない時には、蓋部材48が被覆位置に移動することにより、収容する保湿液や受容した液体の乾燥を抑制する。
【0024】
吸引装置44は、吸引キャップ51と、吸引キャップ51を保持する吸引用保持体52と、吸引用保持体52をZ軸に沿って往復移動させる吸引用モーター53と、吸引キャップ51内を減圧する減圧機構54と、を備える。吸引用モーター53による吸引用保持体52の移動に伴って、吸引キャップ51が接触位置と退避位置との間で移動する。接触位置は、吸引キャップ51が液体噴射部20に接触してノズル36を囲む位置である。退避位置は、吸引キャップ51が液体噴射部20から離れる位置である。
【0025】
吸引キャップ51は、全てのノズル36をまとめて囲む構成としてもよいし、少なくとも1つのノズル群を囲む構成としてもよいし、ノズル群を構成するノズル36のうち一部のノズル36を囲む構成としてもよい。本実施形態の吸引装置44は、2つの吸引キャップ51により第1ノズル群G1~第6ノズル群G6のうち1つのノズル群を囲む。
【0026】
液体噴射装置11は、液体噴射部20を吸引装置44の上方に位置させると共に、吸引キャップ51を接触位置に位置させて1つのノズル群を囲み、吸引キャップ51内を減圧してノズル36から液体を排出させる吸引クリーニングを行ってもよい。すなわち、吸引装置44は、吸引クリーニングにより排出される液体を受容してもよい。
【0027】
キャッピング装置45は、放置キャップ56と、放置キャップ56を保持する放置用保持体57と、放置用保持体57をZ軸に沿って往復移動させる放置用モーター58と、を有する。放置用モーター58による放置用保持体57の移動に伴って、放置キャップ56が上方もしくは下方に移動する。放置キャップ56は、下方の位置である離隔位置から上方の位置であるキャッピング位置に移動し、ホームポジションHPで停止している液体噴射部20に接触する。
【0028】
キャッピング位置に位置する放置キャップ56は、第1ノズル群G1~第6ノズル群G6を構成するノズル36の開口を囲う。このように、放置キャップ56がノズル36の開口を囲うメンテナンスを放置キャッピングという。放置キャッピングは、キャッピングの一種である。放置キャッピングにより、ノズル36の乾燥が抑制される。
【0029】
放置キャップ56は、全てのノズル36をまとめて囲む構成としてもよいし、少なくとも1つのノズル群を囲む構成としてもよいし、ノズル群を構成するノズル36のうち一部のノズル36を囲む構成としてもよい。
【0030】
次に、ワイピング機構43について説明する。
ワイピング機構43は、液体噴射部20が噴射する液体を吸収可能な帯状部材60を備える。ワイピング機構43は、帯状部材60を収容するケース61と、Y軸に沿って延びる一対のレール62と、払拭用モーター63と、巻取用モーター64と、巻取用モーター64の動力を伝達する動力伝達機構65と、を備えてもよい。ケース61は、帯状部材60を露出させる開口67を有する。幅方向Xにおける帯状部材60の大きさはノズル面40の大きさ以上であってもよい。この場合、液体噴射部20を効率よくメンテナンスできる。
【0031】
ケース61は、払拭用モーター63の動力によりレール62上をY軸に沿って往復移動する。具体的には、ケース61は、
図4に示す待機位置と
図3に示す受容位置との間で移動する。払拭用モーター63が正転駆動すると、待機位置に位置するケース61は、Y軸に平行な第1払拭方向W1に移動して受容位置に向かう。払拭用モーター63が逆転駆動すると、受容位置に位置するケース61は、第1払拭方向W1とは反対の第2払拭方向W2に移動して待機位置に向かう。
【0032】
ワイピング機構43は、帯状部材60をノズル面40に接触させてノズル面40をワイピングするワイピング動作を実行可能である。ワイピング機構43は、ケース61が待機位置と受容位置との間で移動する過程でワイピング動作を行う。制御部29は、ワイピング動作を複数回続けて行わせてもよい。例えば、ワイピング機構43は、受容位置に位置するケース61が第2払拭方向W2に移動する過程で1回目のワイピング動作を行い、ケース61が第1払拭方向W1に移動する過程で2回目のワイピング動作を行ってもよい。
【0033】
図4に示すように、ワイピング機構43は、巻出軸69を有する巻出部70と、巻取軸71を有する巻取部72と、を備える。ケース61は、X軸を軸線方向として巻出軸69及び巻取軸71を回転可能に支持する。巻出部70は、帯状部材60をロール状に巻いた状態で保持する。巻出部70から巻き解かれて繰り出された帯状部材60は、搬送経路に沿って巻取部72まで搬送される。
【0034】
ワイピング機構43は、帯状部材60の搬送経路に沿って上流から順に設けられる上流ローラー73、テンションローラー74、2つの押圧ローラー75、下流ローラー76、規制ローラー77、第1水平ローラー78、及び第2水平ローラー79を備えてもよい。ケース61は、X軸を軸線方向として上記各種ローラーを回転可能に支持する。
【0035】
巻取軸71は、巻取用モーター64の駆動により回転する。巻取部72は、巻取軸71に帯状部材60をロール状に巻き取る。巻取部72は、帯状部材60を巻き取ることで、帯状部材60のうち巻出部70から巻き解かれた部分を移動方向Dに移動させる。移動方向Dとは、帯状部材60の搬送経路に沿う方向であり、上流の巻出部70から下流の巻取部72に向かう方向である。
【0036】
動力伝達機構65は、ケース61が待機位置に位置するときに巻取用モーター64と巻取軸71とを接続し、ケース61が待機位置から離れたときに巻取用モーター64と巻取軸71とを切り離してもよい。巻取用モーター64は、巻出軸69、上流ローラー73、テンションローラー74、2つの押圧ローラー75、下流ローラー76、規制ローラー77、第1水平ローラー78、及び第2水平ローラー79のうち少なくとも1つを巻取軸71と共に回転駆動してもよい。
【0037】
本実施形態では、2つの押圧ローラー75が、奥行方向Yに並んで設けられる。2つの押圧ローラー75は、巻出部70から巻き出された帯状部材60を下方から上方に押し、開口67から帯状部材60を突出させる。
【0038】
帯状部材60には、移動方向Dの上流から順に、上流領域A1と、ノズル面40に対して接触可能な接触領域A2と、下流領域A3と、略水平に保持される水平領域A4と、が位置している。
【0039】
接触領域A2は、2つの押圧ローラー75の各最上部が接する位置の間の領域である。接触領域A2では、帯状部材60が略水平に保持される。接触領域A2は、ワイピング動作においてノズル面40に接触する。図面では、接触領域A2をドットハッチングで示す。
【0040】
上流領域A1は、接触領域A2より移動方向Dの上流に、接触領域A2と連続して設けられる。下流領域A3は、接触領域A2より移動方向Dの下流に、接触領域A2と連続して設けられる。上流領域A1及び下流領域A3では、帯状部材60が水平面に対して傾斜した状態で保持される。下流領域A3は、傾斜の緩い緩斜領域A5と、傾斜の急な急斜領域A6と、を含んでもよい。この場合、接触領域A2がノズル面40に接触した場合に、ノズル面40と上流領域A1とがなす角度およびノズル面40と緩斜領域A5とがなす角度は、3度以上30度以下に設定してもよい。
【0041】
水平領域A4は、帯状部材60のうち、第1水平ローラー78の最上部が接触する位置から第2水平ローラー79の最上部が接触する位置までの領域である。水平領域A4は、ケース61が受容位置に位置し、且つ液体噴射部20がクリーニング位置CPに位置するとき、ノズル面40と対向する。この状態で液体噴射装置11は、加圧した液体をノズル36から排出させる加圧クリーニングを行ってもよい。すなわち、ワイピング機構43は、加圧クリーニングにより排出される液体を受容してもよい。
【0042】
次に、ワイピング液供給機構80について説明する。
図3に示すように、ワイピング液供給機構80は、ワイピング液Wを貯留する貯留部81と、貯留部81からワイピング液Wが供給されるワイピング液供給流路82と、ワイピング液供給流路82に配置された供給ポンプ83と、ワイピング液供給流路82から分岐する複数の分岐流路84と、各分岐流路84に配置された開閉弁85と、を備える。開閉弁85は、閉弁することで分岐流路84を閉塞状態とし、開弁することで分岐流路84を流通状態とする。
【0043】
ワイピング液供給機構80は、分岐流路84を流れるワイピング液Wを帯状部材60に吐出可能な供給ノズル86と、供給ノズル86を保持する供給用保持体87と、を備える。供給用保持体87は、ケース61が待機位置にあるときに帯状部材60と対向する位置に供給ノズル86を保持する。
【0044】
図4に示すように、本実施形態の供給ノズル86は、帯状部材60の上方に位置し、上方からワイピング液Wを滴下させて帯状部材60にワイピング液Wを供給する。本実施形態の帯状部材60は、接触領域A2内の受け止め部60aがワイピング液Wを受ける。
【0045】
ワイピング液Wは、純水を採用してもよいし、純水に防腐剤を含ませた液体を採用してもよい。ワイピング液Wは、液体噴射部20が使用する液体の表面張力より高い表面張力を有する液体を採用してもよい。例えば、ワイピング液Wとして、表面張力が40mN/m以上且つ80mN/m以下となる液体を採用してもよいし、表面張力が60mN/m以上且つ80mN/m以下となる液体を採用してもよい。
【0046】
図3に示すように、ワイピング液供給機構80は、分岐流路84、開閉弁85、及び供給ノズル86を、それぞれ複数備えてもよい。ワイピング液供給機構80は、分岐流路84、開閉弁85、及び供給ノズル86を、液体噴射部20が有するノズル群と同数である6つずつ有してもよい。すなわち、ワイピング液供給機構80は、第1ノズル群G1~第6ノズル群G6と個別に対応するように幅方向Xに並ぶ6つの供給ノズル86を備えてもよい。ワイピング機構43は、接触領域A2のうち各供給ノズル86に対向してワイピング液Wが供給される部分で、各ノズル群の周囲を払拭してもよい。
【0047】
制御部29は、複数の開閉弁85を個別に開閉させてもよい。本実施形態では、一部の開閉弁85が開弁されて一部の供給ノズル86からワイピング液Wが供給される状態を第1供給状態とし、全ての開閉弁85が開弁され、全ての供給ノズル86からワイピング液Wが供給される状態を第2供給状態とする。
【0048】
第1供給状態では、無機顔料を含む液体を噴射するノズル群に対応する供給ノズル86からワイピング液Wを供給してもよい。例えば、ブラックインクが無機顔料を含み、他のインクが有機顔料を含む場合、本実施形態では、ブラックインクを噴射する第4ノズル列L4及び第9ノズル列L9が無機顔料を含むインクを噴射するノズル列になる。すなわち、第4ノズル列L4を含む第2ノズル群G2と、第9ノズル列L9を含む第5ノズル群G5が、無機顔料を含むインクを噴射するノズル36を含むノズル群である。したがって、制御部29は、第2ノズル群G2と第5ノズル群G5とに対応する供給ノズル86からワイピング液Wが供給されるように、開閉弁85を開弁してもよい。これにより、ブラックインクが付着しやすい第2ノズル群G2及び第5ノズル群G5の周囲を払拭する部分にワイピング液Wを供給することができ、無機顔料を帯状部材60内に取り込みやすくなる。
【0049】
本実施形態の作用について説明する。
ワイピング液供給機構80は、ワイピング動作を行う前に帯状部材60にワイピング液Wを供給可能である。制御部29は、液体の付着量の多いノズル面40をワイピングする場合、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を、液体の付着量の少ないノズル面40をワイピングする場合より少なくする。
【0050】
ノズル面40に付着する液体は、ワイピング動作によって減少する。ワイピング動作を2回続けて行う場合、1度目のワイピング動作は、液体の付着量の多いノズル面40を払拭するのに対し、2度目のワイピング動作は、液体の付着量の少ないノズル面40を払拭する。制御部29は、ワイピング動作を2回続けて行う場合に、最初に行うワイピング動作において接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を、次に行うワイピング動作において接触領域A2が保持するワイピング液Wの量より少なくしてもよい。
【0051】
制御部29は、ワイピング動作を行う前に帯状部材60に供給するワイピング液Wの量を少なくすることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を少なくしてもよい。制御部29は、開弁させる開閉弁85の数により、ワイピング液供給機構80が帯状部材60に供給するワイピング液Wの量を調整してもよい。第1供給状態のワイピング液供給機構80は、一部の供給ノズル86からワイピング液Wを供給するのに対し、第2供給状態のワイピング液供給機構80は、全ての供給ノズル86からワイピング液Wを供給する。そのため、第1供給状態で供給されるワイピング液Wの量は、第2供給状態で供給されるワイピング液Wの量よりも少ない。第1供給状態でワイピング液Wが供給された場合に、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量は、第2供給状態でワイピング液Wが供給された場合に、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量より少ない。
【0052】
制御部29は、ワイピング液Wを帯状部材60に供給してからワイピング動作を行うまでの時間間隔を長くすることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を少なくしてもよい。受け止め部60aに供給されたワイピング液Wは、時間の経過とともに拡散する。ワイピング液Wが拡散する範囲は、接触領域A2に留まらず、接触領域A2の外まで拡散する。そのため、上流領域A1および下流領域A3が保持するワイピング液Wの量は、時間の経過とともに多くなるのに対し、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量は、少なくなる。
【0053】
図5に示すように、接触領域A2のうちワイピング動作において最初にノズル面40に接触する部分を前側接触部とする。前側接触部は、ノズル面40を払拭する方向によって変化する。例えば、ケース61が第1払拭方向W1に移動してワイピング動作を行う場合、接触領域A2の上流端Auが前側接触部になる。ケース61が第2払拭方向W2に移動してワイピング動作を行う場合、接触領域A2の下流端Adが前側払拭部になる。制御部29は、ワイピング動作を行う前に供給されるワイピング液Wを受ける帯状部材60の受け止め部60aと前側接触部との間の距離を長くすることで、前側接触部が保持するワイピング液Wの量を少なくしてもよい。
【0054】
受け止め部60aは、接触領域A2の中央よりも第1払拭方向W1にずれた位置に位置する。換言すると、受け止め部60aは、接触領域A2の中央と、接触領域A2の上流端Auとの間に位置する。そのため、受け止め部60aから接触領域A2の下流端Adまでの第1距離R1は、受け止め部60aから上流端Auまでの第2距離R2より長い。
【0055】
次に、制御部29が液体噴射装置11のメンテナンスとして、加圧クリーニング、1度目のワイピング動作、及び2度目のワイピング動作、及びフラッシングを順に行う場合を説明する。
【0056】
図4に示すように、制御部29は、加圧クリーニングの前に、ワイピング液供給機構80から帯状部材60にワイピング液Wを供給させる。本実施形態では、加圧クリーニングの後に1度目のワイピング動作が行われる。そのため、加圧クリーニングの前に行われるワイピング液Wの供給は、1度目のワイピング動作の前に行われるワイピング液Wの供給でもある。ワイピング液Wの供給が行われるとき、制御部29はケース61を待機位置に位置させる。制御部29は、ワイピング液供給機構80を第1供給状態とすることにより、一部の供給ノズル86から接触領域A2に第1供給量のワイピング液Wを供給させる。
【0057】
図5に示すように、供給ノズル86から受け止め部60aに供給されたワイピング液Wは、帯状部材60に吸収されると共に帯状部材60内を拡散する。図面では、受け止め部60aから拡散するワイピング液Wの様子を、帯状部材60に重ねて図示する。
【0058】
制御部29は、接触領域A2へのワイピング液Wの供給が完了すると、払拭用モーター63を正転駆動し、ケース61を第1払拭方向W1に移動させる。ケース61は、
図4に示す待機位置から
図6に示す受容位置まで移動する。
【0059】
図3,
図6に示すように、ケース61が受容位置まで至ると、制御部29が払拭用モーター63の駆動を停止することにより、ケース61が受容位置にて停止する。制御部29は、ケース61が受容位置にて停止した状態で、液体噴射部20をクリーニング位置CPに移動させて停止させる。
【0060】
制御部29は、液体供給装置23を制御し、ノズル36に加圧した液体を供給してノズル36から液体を排出させることで加圧クリーニングを行う。ノズル36から排出された液体は、ノズル面40に濡れ拡がるように留まる。ノズル面40に留まる液体の量が多くなると、液体は、ノズル面40から滴下する。この時、ノズル36の直下には帯状部材60の水平領域A4が位置する。そのため、加圧クリーニングによって排出された液体は、水平領域A4に受容される。
【0061】
図7に示すように、制御部29は、加圧クリーニングを行った後、1度目のワイピング動作を行わせる。制御部29は、液体噴射部20をクリーニング位置CPに位置させたまま払拭用モーター63を逆転駆動し、ケース61を第2払拭方向W2に移動させる。これにより、接触領域A2がノズル面40に接触しながら第2払拭方向W2に移動し、ノズル面40が接触領域A2により払拭される。
【0062】
ワイピング機構43は、2つの押圧ローラー75がノズル面40に対して帯状部材60を押し付け、各押圧ローラー75とノズル面40との間に帯状部材60を挟んだ状態でケース61が移動することでワイピング動作を行う。1度目のワイピング動作では、加圧クリーニングによって液体噴射部20から排出されてノズル面40に残る液体を帯状部材60によって払拭する。
【0063】
ここで、ワイピング液Wを帯状部材60に供給してから1度目のワイピング動作を行うまでの時間間隔を第1時間とする。第1時間は、ケース61が待機位置から受容位置まで移動するのに要する時間と、加圧クリーニングに要する時間と、ケース61が受容位置からワイピング動作の開始位置まで移動するのに要する時間と、の合計時間である。1回目のワイピング動作の開始位置は、前側接触部である接触領域A2の下流端Adがノズル面40に接触を開始する位置である。
【0064】
接触領域A2がノズル面40から離れると、1度目のワイピング動作が完了する。制御部29は、1度目のワイピング動作の完了後も払拭用モーター63の逆転駆動を継続し、ケース61を待機位置まで移動させる。
【0065】
図4に示すように、制御部29は、払拭用モーター63の駆動を停止させた後、払拭用モーター63を正転駆動させるまでの間に巻取用モーター64を駆動してもよい。これにより、ケース61が待機位置に位置する間に帯状部材60を巻取部72に巻き取ることができ、1度目のワイピング動作と2度目のワイピング動作とを、帯状部材60の異なる部分で行うことができる。
【0066】
制御部29は、待機位置にケース61が位置した状態でワイピング液供給機構80を第2供給状態とし、帯状部材60にワイピング液Wを供給させてもよい。すなわち、ワイピング液供給機構80は、2度目のワイピング動作を行う前に、帯状部材60にワイピング液Wを供給してもよい。第2供給状態のワイピング液供給機構80は、全ての供給ノズル86から第2供給量のワイピング液Wを供給する。
【0067】
図8に示すように、制御部29は、帯状部材60へのワイピング液Wの供給が完了すると、払拭用モーター63を正転駆動して2度目のワイピング動作を行わせる。ケース61は、待機位置から第1払拭方向W1に移動する。接触領域A2は、ノズル面40に接触しながら第1払拭方向W1に移動し、ノズル面40を払拭する。
【0068】
ここで、2度目にワイピング液Wを供給してから2度目のワイピング動作を行うまでの時間間隔を第2時間とする。第2時間は、待機位置からワイピング動作の開始位置まで移動するのに要する時間である。2度目のワイピング動作の開始位置は、前側接触部である接触領域A2の上流端Auがノズル面40に接触を開始する位置である。
【0069】
本実施形態では、1度目のワイピング動作時に前側接触部となる下流端Adと、受け止め部60aとの第1距離R1が、2度目のワイピング動作時に前側接触部となる上流端Auと受け止め部60aとの第2距離R2より長い。そのため、第1供給量と第2供給量が同じで、第1時間と第2時間が同じであったとしても、1度目のワイピング動作時に下流端Adおよびノズル面40と挟角を形成する緩斜領域A5の上流端が保持するワイピング液Wの量は、2度目のワイピング動作時に上流端Auおよびノズル面40と挟角を形成する上流領域A1の下流端が保持するワイピング液Wの量よりも少ない。
【0070】
第1供給量は、第2供給量よりも少ない。第1時間は、第2時間よりも長い。そのため、1回目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量は、2回目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量より少ない。
【0071】
接触領域A2がノズル面40から離れると、2度目のワイピング動作が完了する。制御部29は、2度目のワイピング動作の完了後も払拭用モーター63の正転駆動を継続し、ケース61を受容位置まで移動させる。
【0072】
制御部29は、2度目のワイピング動作が完了すると、液体噴射部20をガイド軸31に沿って移動させ、液体噴射部20が液体受容部47を通過するタイミングでフラッシングを行わせる。フラッシングは、液体噴射部20から液体を噴射させるメンテナンスである。制御部29は、フラッシングが終了すると、液体噴射部20をホームポジションHPに移動させる。
【0073】
制御部29は、液体噴射部20をホームポジションHPに位置させた状態で、払拭用モーター63を逆転駆動し、ケース61を待機位置に移動させる。制御部29は、ケース61が待機位置に位置する状態で巻取用モーター64を駆動し、帯状部材60を巻き取ってもよい。
【0074】
本実施形態の効果について説明する。
(1)制御部29は、ノズル面40に付着する液体の量に対応して帯状部材60の接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を調整する。したがって、ワイピング動作後にノズル36から液体を噴射する噴射状態が不安定になる虞を低減できる。
【0075】
(2)制御部29は、帯状部材60に供給するワイピング液Wの量を少なくすることにより、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を少なくする。すなわち、帯状部材60に供給するワイピング液Wの量を調整することで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を容易に調整できる。
【0076】
(3)帯状部材60は、液体を吸収可能である。そのため、帯状部材60に供給されたワイピング液Wは、時間の経過とともに周囲に拡散する。制御部29は、ワイピング液Wを帯状部材60に供給してからワイピングを行うまでの時間間隔を長くすることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を少なくする。したがって、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を容易に調整できる。
【0077】
(4)制御部29は、受け止め部60aと前側接触部との距離を長くすることで、前側接触部が保持するワイピング液Wの量を少なくする。接触領域A2は、ワイピング動作において前側接触部が最初にノズル面40に接触する。そのため、ノズル面40に付着した液体は、前側接触部に集まりやすい。例えば、ノズル面40に付着する液体の量が多い場合には、ノズル面40に付着する液体の量が少ない場合より、前側接触部が保持するワイピング液Wの量を少なくすることで、ノズル面40に付着する液体を帯状部材60に吸収しやすくできる。
【0078】
(5)ノズル面40に付着する液体は、ワイピング動作によって減少する。したがって、最初のワイピング動作を行う前にノズル面40に付着する液体の量は、最初のワイピング動作が終了して次のワイピング動作を行う前にノズル面40に付着する液体の量より多い。制御部29は、最初のワイピング動作において接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を、次のワイピング動作において接触領域A2が保持するワイピング液Wの量より少なくする。したがって、ワイピング動作を続けて行う場合でも、ワイピング動作後にノズル36から液体を噴射する噴射状態が不安定になる虞を低減できる。
【0079】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図9,
図10に示すように、制御部29は、ケース61を補給位置に位置させた状態で帯状部材60にワイピング液Wを供給させてもよい。補給位置は、供給ノズル86が接触領域A2の中央と対向する位置である。ワイピング液Wは、受け止め部60aから拡散するため、受け止め部60aが接触領域A2の中央に近いほど、接触領域A2に留まりやすくなる。そのため、制御部29は、受け止め部60aと接触領域A2の中央との距離を短くすることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を多くしてもよい。換言すると、受け止め部60aと接触領域A2の中央との距離を長くすることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を少なくしてもよい。制御部29は、1回目のワイピング動作の前には、ケース61を
図9に二点鎖線で示す待機位置に位置させた状態でワイピング液Wを供給させることにより、
図5に示すように受け止め部60aと接触領域A2の中央との距離を長くしてもよい。制御部29は、2回目のワイピング動作の前には、ケース61を
図9に実線で示す補給位置に位置させた状態でワイピング液Wを供給させることにより、
図10に示すように受け止め部60aと接触領域A2の中央との距離を短くしてもよい。
【0080】
・ワイピング機構43は、受容位置において帯状部材60を巻き取る構成としてもよい。ワイピング機構43は、待機位置と受容位置の双方において帯状部材60を巻き取る構成としてもよい。
【0081】
・帯状部材60によってノズル面40を払拭する方向は、1度目のワイピング動作と2度目のワイピング動作とで同じ方向にしてもよい。
・ワイピング機構43が備える押圧ローラー75は、1つであってもよい。
【0082】
・ワイピング液供給機構80は、ワイピング液Wを接触領域A2の外の領域に供給してもよい。例えば、受け止め部60aを上流領域A1とする帯状部材60へのワイピング液Wの供給の後に、払拭方向を第2払拭方向W2とする1度目のワイピング動作を行い、帯状部材60を巻取部72に巻き取る巻取動作を行った後、受け止め部60aを接触領域A2の中央とする帯状部材60へのワイピング液Wの供給の後に、払拭方向を第2払拭方向W2の反対方向となる第1払拭方向W1とする2度目のワイピング動作を行ってもよい。この場合、ワイピング動作を行う前に供給されるワイピング液Wを受け止める受け止め部60aと1回目のワイピング動作における前側接触部との間の距離が、受け止め部60aと2回目のワイピング動作における前側接触部との間の距離より長くなる。これにより、1度目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量が2度目のワイピング動作時よりも少なく、かつ1回目のワイピング動作における前側接触部が保持するワイピング液の量は2回目のワイピング動作における前側接触部が保持するワイピング液の量より少なくなる。
【0083】
また、例えば、受け止め部60aを上流領域A1とする帯状部材60へのワイピング液Wの供給の後に、払拭方向を第2払拭方向W2とする1度目のワイピング動作を行い、受け止め部60aが2度目のワイピング動作における接触領域A2の位置となるように帯状部材60を巻取部72に巻き取る巻取動作を行った後、帯状部材60へのワイピング液Wの供給を行わずに、払拭方向を第2払拭方向W2の反対方向となる第1払拭方向W1とする2度目のワイピング動作を行ってもよい。この場合、ワイピング動作を行う前に供給されるワイピング液Wを受け止める受け止め部60aと1回目のワイピング動作における前側接触部との間の距離が、受け止め部60aと2回目のワイピング動作における前側接触部との間の距離より長くなる。これにより、1度目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量が2度目のワイピング動作時よりも少なくなる。また、受け止め部60aが2度目のワイピング動作における接触領域A2のうち前側接触部を含まない位置となるように帯状部材60を巻取部72に巻き取ってもよい。これにより、1度目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量が2度目のワイピング動作時よりも少なく、かつ1回目のワイピング動作における前側接触部が保持するワイピング液の量は2回目のワイピング動作における前側接触部が保持するワイピング液の量より少なくなる。
【0084】
また、例えば、受け止め部60aを上流領域A1とする帯状部材60へのワイピング液Wの供給の後に、払拭方向を第2払拭方向W2とする1度目のワイピング動作を行い、時間の経過により上流領域A1に供給されたワイピング液Wが接触領域A2に拡散した後、帯状部材60へのワイピング液Wの供給を行わずに、払拭方向を第2払拭方向W2の反対方向となる第1払拭方向W1とする2度目のワイピング動作を行ってもよい。この場合、ワイピング動作を行う前に供給されるワイピング液Wを受け止める受け止め部60aと1回目のワイピング動作における前側接触部との間の距離を、受け止め部60aと2回目のワイピング動作における前側接触部との間の距離より長くし、帯状部材60へのワイピング液Wの供給からワイピング動作を行うまでの時間間隔を調整することができる。これにより、1度目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量が2度目のワイピング動作時よりも少なく、かつ1回目のワイピング動作における前側接触部が保持するワイピング液の量は2回目のワイピング動作における前側接触部が保持するワイピング液の量より少なくなる。
【0085】
・ワイピング液供給機構80は、ワイピング液Wを複数の領域に供給してもよい。例えば、制御部29は、ケース61を移動させながらワイピング液Wを供給させることにより、上流領域A1及び接触領域A2に亘ってワイピング液Wを供給してもよい。
【0086】
・制御部29は、供給ポンプ83の駆動を制御することにより、帯状部材60へ供給するワイピング液Wの供給量の調整を行ってもよい。この場合、ワイピング液供給機構80は、開閉弁85を備えない構成としてもよい。
【0087】
・1度目のワイピング動作時と2度目のワイピング動作時とで、供給ノズル86から帯状部材60へのワイピング液Wの供給量を同じ量としてもよい。2度目のワイピング動作時における上記供給量を、1度目のワイピング動作時よりも多くしてもよい。この場合も、1度目のワイピング動作時と2度目のワイピング動作時とで、帯状部材60へのワイピング液Wの供給からワイピング動作を行うまでの時間間隔や、受け止め部60aと接触領域A2の中央との距離を異ならせることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を異ならせることができる。
【0088】
・帯状部材60へのワイピング液Wの供給からワイピング動作を行うまでの時間間隔を、ワイピング液Wが帯状部材60から蒸発する程度の時間間隔としてもよい。この場合、ワイピング液供給機構80から帯状部材60へのワイピング液Wの供給量を調整する制御を行わなくても、上記時間間隔を設定することで帯状部材60が保持するワイピング液Wの量を調整できるため、制御部29による制御を簡素化できる。
【0089】
・1度目のワイピング動作時と2度目のワイピング動作時とで、帯状部材60へのワイピング液Wの供給からワイピング動作を行うまでの時間間隔を同じ時間としてもよい。2度目のワイピング動作時における上記時間間隔を、1度目のワイピング動作時よりも長くしてもよい。この場合も、1度目のワイピング動作時と2度目のワイピング動作時とで、供給ノズル86から帯状部材60へのワイピング液Wの供給量や、受け止め部60aと接触領域A2の中央との距離を異ならせることで、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を異ならせることができる。
【0090】
・1度目のワイピング動作時と2度目のワイピング動作時とで、受け止め部60aと前側接触部との距離を同じ距離としてもよい。2度目のワイピング動作時における上記距離を、1度目のワイピング動作時よりも長くしてもよい。この場合も、1度目のワイピング動作時と2度目のワイピング動作時とで、供給ノズル86から帯状部材60へのワイピング液Wの供給量や、帯状部材60へのワイピング液Wの供給からワイピング動作を行うまでの時間間隔を異ならせることで、前側接触部が保持するワイピング液Wの量を異ならせることができる。
【0091】
・2度目のワイピング動作完了後において、ワイピング機構43は、ノズル面40に付着したワイピング液Wを払拭してもよい。具体的には、2度目のワイピング動作の完了後、ワイピング液Wが供給されていない帯状部材60によって、ノズル面40を払拭してもよい。
【0092】
・帯状部材60へのワイピング液Wの供給を行わずに、1度目のワイピング動作を行ってもよい。この場合、2度目のワイピング動作では帯状部材60へのワイピング液Wの供給を行うことにより、1度目のワイピング動作時に接触領域A2が保持するワイピング液Wの量が2度目のワイピング動作時よりも少なくなる。
【0093】
・制御部29は、ワイピング動作を2回続けて行わなくてもよい。制御部29は、液体噴射部20の状態に合わせて、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を調整してもよい。例えば、吸引クリーニング後のノズル面40に付着する液体の付着量は、印刷後のノズル面40に付着する液体の付着量より多い。したがって、制御部29は、吸引クリーニング後のワイピング動作で接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を、印刷後のワイピング動作で接触領域A2が保持するワイピング液Wの量より少なくしてもよい。例えば、制御部29は、排出量の多い第1加圧クリーニングと、第1加圧クリーニングよりも排出量の少ない第2加圧クリーニングを行ってもよい。第1加圧クリーニング後のノズル面40に付着する液体の付着量は、第2加圧クリーニング後のノズル面40に付着する液体の付着量より多い。したがって、制御部29は、第1加圧クリーニング後のワイピング動作で接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を、第2加圧クリーニング後のワイピング動作で接触領域A2が保持するワイピング液Wの量より少なくしてもよい。例えば、液体噴射装置11は、ノズル面40における液体の付着量を検出するセンサーを備え、センサーの検出結果に基づいて接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を調整してもよい。
【0094】
・帯状部材60にあらかじめ含浸液を含浸させておいてもよい。そして、含浸液は浸透剤や保湿剤を含むことが好ましい。
・ワイピング液Wに、含浸液に含まれる添加剤を含ませてもよい。
【0095】
・液体噴射装置11は、液体噴射部20と帯状部材60とを重力方向Zに相対移動可能に設けてもよい。例えば、加圧クリーニング後、制御部29は、水平領域A4を上昇させ、ノズル面40に付着した液体に水平領域A4を接触させてもよい。これにより、ノズル面40に付着した液体は、水平領域A4に吸収されて少なくなる。したがって、制御部29は、ノズル面40に付着した液体に帯状部材60を接触させずに行うワイピング動作では、ノズル面40に付着した液体に帯状部材60を接触させた後に行うワイピング動作より、接触領域A2が保持するワイピング液Wの量を少なくしてもよい。
【0096】
・液体噴射装置11は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する装置がある。液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体噴射装置は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ、光学レンズ、などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置であってもよい。液体噴射装置は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置であってもよい。
【0097】
次に、帯状部材60に含浸される含浸液について以下に詳述する。
帯状部材60に含浸液を含浸させると、帯状部材60の表面から内部に顔料粒子が移動しやすくなり、帯状部材60の表面に顔料粒子が残りにくくなる。含浸液は、浸透剤や保湿剤を含むことが好ましい。これにより、顔料粒子が帯状部材60中により吸収されやすくなる。なお、含浸液は、無機顔料粒子を帯状部材60の表面から内部へ移動させることができる液であれば特に限定されない。
【0098】
含浸液の表面張力は45mN/m以下であり、35mN/m以下であることが好ましい。表面張力が低いと帯状部材60への無機顔料の浸透性が良好になり、拭き取り性が向上する。表面張力の測定方法としては、一般的に用いられる表面張力計、例えば、協和界面科学株式会社製の表面張力計CBVP-Zなどを用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定する方法が例示できる。
【0099】
含浸液の含有量は、帯状部材60の100質量%に対して、10質量%以上200質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。10質量%以上であることにより、無機顔料インクを帯状部材60の内側へ浸透させやすく、撥水膜が損傷するのをより抑制できる。また、200質量%以下であることにより、ノズル面40における含浸液の残存をより抑制でき、気泡が含浸液とともにノズル36に浸入することに起因するドット抜けや、含浸液自体がノズル36に浸入することに起因するドット抜けをより抑制できる。
【0100】
そのほか、含浸液に含まれ得る添加剤、すなわち含浸液の成分としては、特に限定されないが、例えば、樹脂、消泡剤、界面活性剤、水、有機溶剤、及びpH調製剤などが挙げられる。上記の各成分は、1種単独で用いても2種以上の併用でもよく、含有量は特に制限されない。
【0101】
含浸液が消泡剤を含むと、クリーニング処理後のノズル面40に残った含浸液が泡立つことを効果的に防止することができる。また、含浸液はポリエチレングリコールやグリセリンなどの酸性の保湿剤を多量に含む場合があるが、その場合に含浸液がpH調整剤を含むと、通常、pH7.5以上の塩基性であるインク組成物に酸性の含浸液が接触することが回避できる。これにより、インク組成物が酸性側にシフトすることを防止でき、インク組成物の保存安定性がより保たれる。
【0102】
また、含浸液に含まれ得る保湿剤としては、一般にインクなどに使用可能なものであれば特に制限されることなく使用できる。保湿剤としては、特に限定されないが、1気圧下相当での沸点が、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上の高沸点保湿剤を用いることができる。当該沸点が上記範囲内であると、含浸液中の揮発成分が揮発することを防止でき、含浸液と接触する無機顔料含有インク組成物を確実に湿潤させて効果的に払拭することができる。
【0103】
高沸点保湿剤として、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、及びペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0104】
保湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。保湿剤の含有量は、含浸液の総質量である100質量%に対して、10~100質量%が好ましい。なお、保湿剤の含有量が含浸液の総質量に対して100質量%とは、含浸液の全成分が保湿剤であることを示す。
【0105】
含浸液に含まれ得る添加剤のうち浸透剤について説明する。浸透剤としては、一般にインクなどに使用可能なものであれば特に制限されることなく使用できるが、水90質量%、浸透剤10質量%の溶液において、該溶液の表面張力が45mN/m以下となるものを浸透剤として採用することもできる。浸透剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数5~8のアルカンジオール類、グリコールエーテル類、アセチレングリコール系界面活性剤、シロキサン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤からなる群より選択される一種以上が挙げられる。また、表面張力の測定は上記した方法で行なうことができる。
【0106】
また、含浸液中の浸透剤の含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることが好ましい。1質量%以上であることにより、拭き取り性により優れる傾向にあり、また、40質量%以下であることにより、浸透剤がノズル36近傍のインクに含まれる顔料にアタックをし、分散安定性が壊れ凝集を起こすことを回避できる。
【0107】
炭素数5~8のアルカンジオール類としては、特に限定されないが、例えば、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-ヘキサンジオールなどが挙げられる。炭素数5~8のアルカンジオール類は、1種単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。
【0108】
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-メチルペンチルエーテルなどが挙げられる。グリコールエーテル類は、1種単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。
【0109】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式で表される化合物などが挙げられる。
【0110】
【化1】
[式(1)中、0≦m+n≦50、R
1*、R
2*、R
3*、及びR
4*は各々独立してアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基を表す。]
式(1)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤の中でも、好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3オールなどが挙げられる。式(1)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤として市販品を利用することも可能であり、その具体例としては、いずれも「AirProducts and Chemicals.Inc.」より入手可能なサーフィノール82、104、440、465、485、又はTG、日信化学社製のオルフィンSTG、日信化学社製のオルフィンE1010などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、一種単独で用いても又は二種以上を併用してもよい。
【0111】
シロキサン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(2)又は(3)で表されるものなどが挙げられる。
【0112】
【化2】
[式(2)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、各々独立して、炭素数が1~6のアルキル基、好ましくはメチル基を表す。j及びkは、各々独立して1以上の整数を表すが、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1又は2であり、j=k=1若しくはk=j+1を満足することが好ましい。また、gは0以上の整数を表し、好ましくは1~3であり、より好ましくは1である。さらに、p及びqはそれぞれ0以上の整数を表し、好ましくは1~5を表す。但しp+qは1以上の整数であり、好ましくはp+qは2~4である。]
式(2)で表されるシロキサン系界面活性剤としては、R
1~R
7がすべてメチル基を表し、jが1~2を表し、kが1~2を表し、gが1~2を表し、pが1以上5以下の整数を表し、qが0である化合物が好ましい。
【0113】
【化3】
[式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2~18の整数を表し、mは0~50の整数を表し、nは1~5の整数を表す。]
式(3)で表されるシロキサン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、Rが水素原子又はメチル基を表し、aが7~11の整数を表し、mが30~50の整数を表し、nが3~5の整数を表す化合物、Rが水素原子又はメチル基を表し、aが9~13の整数を表し、mが2~4の整数を表し、nが1~2の整数である化合物、Rが水素原子又はメチル基を表し、aが6~18の整数を表し、mが0の整数を表し、nが1の整数である化合物、Rが水素原子を表し、aが2~5の整数を表し、mが20~40の整数を表し、nが3~5の整数である化合物などが好ましい。
【0114】
シロキサン系界面活性剤は商業的に入手可能で、市販されているものを用いてもよく、例えば、日信化学工業株式会社製のオルフィンPD-501、日信化学工業株式会社製のオルフィンPD-570、ビックケミー株式会社製のBYK-347、ビックケミー株式会社製のBYK-348などを用いることができる。上記シロキサン系界面活性剤は、一種単独で用いても又は二種以上を併用してもよい。
【0115】
フッ素系界面活性剤は、WO2010/050618及びWO2011/007888に開示されている通り、低吸収性、非吸収性の媒体14に対して良好な濡れ性を奏する溶剤として知られている。フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられる。
【0116】
上記以外にもフッ素系界面活性剤として、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば旭硝子株式会社製のS・144、S・145;住友スリーエム株式会社製のFC・170C、FC・430、フロラード・FC4430;Dupont社製のFSO、FSO・100、FSN、FSN・100、FS・300;株式会社ネオス製のFT・250、251などが挙げられる。これらの中でも、Dupont社製のFSO、FSO・100、FSN、FSN・100、FS・300が好ましい。フッ素系界面活性剤は、一種単独で用いても又は二種以上を併用してもよい。
【0117】
次に、液体噴射部20が使用する液体としてのインクについて以下に詳述する。
液体噴射装置11に使用されるインクは、組成上、樹脂を含有し、1気圧下での沸点が290℃のグリセリンを実質的に含有しない。インクがグリセリンを実質的に含むと、インクの乾燥性が大幅に低下してしまう。その結果、種々の媒体14、特にインク非吸収性又は低吸収性の媒体14において、画像の濃淡ムラが目立つだけではなく、インクの定着性も得られない。さらに、インクは、上記グリセリンを除く、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まないことが好ましい。
【0118】
ここで、本明細書における「実質的に含まない」とは、添加する意義を十分に発揮する量以上含有させないことを意味する。これを定量的に言えば、グリセリンを、インクの総質量である100質量%に対して、1.0質量%以上含まないことが好ましく、0.5質量%以上含まないことがより好ましく、0.1質量%以上含まないことがさらに好ましく、0.05質量%以上含まないことがさらにより好ましく、0.01質量%以上含まないことが特に好ましい。そして、グリセリンを0.001質量%以上含まないことが最も好ましい。
【0119】
<撥液性>
ノズル面40には、撥液膜を形成してもよい。撥液膜は、撥液性を有する膜であれば特に限定されない。撥液膜は、例えば、撥液性を有する金属アルコキシドの分子膜を成膜し、その後、乾燥処理、アニール処理等を経て形成することができる。金属アルコキシドの分子膜は撥液性を有していればいかなるものでもよいが、フッ素を含む長鎖高分子基(長鎖RF基)を有する金属アルコキシドの単分子膜、または撥液基(例えば、フッ素を含む長鎖高分子基)を有する金属酸塩の単分子膜であることが望ましい。金属アルコキシドとしては、特に限定されないが、その金属種としては、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウムが一般的に用いられる。長鎖RF基としては、例えば、パーフルオロアルキル鎖、パーフルオロポリエーテル鎖が挙げられる。この長鎖RF基を有するアルコキシシランとして、例えば、長鎖RF基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。また、撥液膜としては、例えばSCA(Silane Coupling Agent)膜や、特許第4424954号に記載されたものも用いることができる。
【0120】
撥液膜は、カバー部材38の表面に導電膜を形成し、その導電膜上に形成してもよいが、先にシリコン材料をプラズマ重合することにより下地膜(PPSi(Plasma Polymerized Silicone)膜)を成膜し、この下地膜上に形成してもよい。この下地膜を介することによりカバー部材38のシリコン材料と撥液膜とを馴染ませることができる。
【0121】
撥液膜は、1nm以上30nm以下の厚さを有することが好ましい。このような厚さの範囲であることにより、カバー部材38が撥液性により優れる傾向にあり、膜の劣化が比較的遅く、より長期間撥液性を維持できる。また、コスト的にも膜形成の容易さにもより優れる。また、膜の形成容易さの観点から、1nm以上20nm以下の厚さを有することがより好ましく、1nm以上15nm以下の厚さを有することがさらに好ましい。
【0122】
<インク組成物>
次に、無機顔料を含有するインク組成物(以下、無機顔料含有インク組成物)、および無機顔料以外の色材を含有するインク組成物(以下、無機顔料非含有インク組成物)に含まれるか、または含まれ得る添加剤(成分)について説明する。インク組成物は、色材(無機顔料、有機顔料、染料など)、溶媒(水、有機溶剤など)、樹脂、界面活性剤などから構成される。
【0123】
<色材>
無機顔料含有インク組成物は、色材として無機顔料を1.0重量%以上20.0質量%以下の範囲で含むものである。特に、無機顔料含有インク組成物が白色インク組成物の場合には、無機顔料濃度は5質量%以上が好ましい。
【0124】
また、無機顔料非含有インク組成物は、無機顔料以外の顔料および染料から選択される色材を含んでもよい。
<顔料>
無機顔料含有インク組成物に含まれる無機顔料は、平均粒子径が20nm以上250nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上200nm以下である。
【0125】
また、無機顔料の針状比率が3.0以下であることが好ましい。このような針状比率にする事で本願発明は良好に撥液膜を保護する事ができる。針状比率は、各粒子の最大長を最小幅で除した値(針状比率=粒子の最大長/粒子の最小幅)である。針状比率の特定については透過型電子顕微鏡を用いて測定可能である。
【0126】
また、無機顔料のモース硬度は、2.0超過であり、5以上8以下であることが好ましい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛等の単体金属;酸化セリウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン等の酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩;チッ化ホウ素、チッ化チタン等のチッ化物;炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウム等の炭化物;ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタン等のホウ化物等が挙げられる。このなかでも好ましい無機顔料としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等が挙げられる。より好ましくは、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられる。酸化チタンにおいては、ルチル型のものはモース硬度が7~7.5前後に対して、アナターゼ型は6.6~6前後である。ルチル型の酸化チタンは製造コストも低く、好ましい結晶系であり良好な白色度も発揮できる。そのため、ルチル型二酸化チタンを用いた場合には、撥液膜保存性を有し、低コストかつ良好な白色度の記録物を作製できる液体噴射装置11となる。
【0127】
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、およびアゾ系顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0128】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントブルー15:3および15:4のうち少なくともいずれかが好ましい。
【0129】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種以上が好ましい。
【0130】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213等が挙げられる。中でもC.I.ピグメントイエロー74、155、および213からなる群から選択される一種以上が好ましい。
【0131】
なお、グリーンインクやオレンジインク等、上記以外の色のインクに用いられる顔料としては、従来公知のものが挙げられる。
無機顔料以外の顔料の平均粒子径は、ノズル36における目詰まりを抑制することができ、かつ、吐出安定性が一層良好となるため、250nm以下であることが好ましい。
【0132】
なお、本明細書における平均粒子径は、体積基準のものである。測定方法としては、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、日機装社(Nikkiso Co., Ltd.)製のマイクロトラックUPA)が挙げられる。
【0133】
<染料>
色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料が使用可能である。
【0134】
色材の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.4~12質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。
<樹脂>
樹脂としては、例えば、樹脂分散剤、樹脂エマルジョン、およびワックス等が挙げられる。これらの中でもエマルジョンであれば密着性や耐擦性が良好であり好ましい。
【0135】
無機顔料含有インク組成物は、組成上、以下の(1)または(2)の特徴を有するものであると好ましい。
(1)インクジェット記録用インク組成物は熱変形温度10℃以下の第1樹脂を含む(以下、「第1のインク」という。)。
【0136】
(2)インクジェット記録用インク組成物は第2樹脂を含み且つグリセリンを実質的に含有しない(以下、「第2のインク」という。)。
これらのインク組成物はノズル面40及び帯状部材60上で固化が起こりやすい性質を有し、撥液膜の損傷も促進しやすい傾向にあるが本願発明であればそれを良好に防止できる。
【0137】
上記第1のインクは、熱変形温度10℃以下の第1樹脂を含むものである。このような樹脂は、布帛等の柔軟性および吸収性に富んだ材料に対して強固に密着する性質を有する。一方、急速に被膜化および固化が進み、ノズル面40及び帯状部材60等に固形物として付着してしまう。
【0138】
上記第2のインクは、1気圧下での沸点が290℃のグリセリンを実質的に含まない。着色インクがグリセリンを実質的に含むと、インクの乾燥性が大幅に低下してしまう。その結果、種々の媒体14、特にインク非吸収性または低吸収性の媒体14において、画像の濃淡ムラが目立つだけではなく、インクの定着性も得られない。また、グリセリンが含まれないことで、インク内の主溶媒となる水分等が急速に揮発し、第2のインクは有機溶剤の占める割合が上昇する事になる。この場合、樹脂の熱変形温度(特に増膜温度)は下がる結果となり、一層皮膜による固化が促進される。さらに、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類(上記のグリセリンを除く。)を実質的に含まないことが好ましい。また、第2のインクの場合は、液体噴射部20に対向する位置に搬送された媒体14を加熱する加熱機構を有する液体噴射装置11の場合、液体噴射部20付近のインクの乾燥が進み、更に課題は顕著となるが、本願発明であれば良好に防止できる。加熱する温度としては30℃以上80℃以下であると、インクの保存安定性、記録画像品質の観点から好ましい。加熱機構については、特に限定されず、発熱ヒーター、熱風ヒーター、および赤外線ヒーター等が挙げられる。
【0139】
ここで、本明細書における「実質的に含まない」とは、添加する意義を十分に発揮する量以上含有させないことを意味する。これを定量的に言えば、グリセリンが、着色インクの総質量(100質量%)に対して、1.0質量%以上含まないことが好ましく、0.5質量%以上含まないことがより好ましく、0.1質量%以上含まないことがさらに好ましく、0.05質量%以上含まないことがさらにより好ましく、0.01質量%以上含まないことが特に好ましく、0.001質量%以上含まないことが最も好ましい。
【0140】
第1樹脂の熱変形温度は、熱変形温度は、10℃以下である。さらに、-10℃以下であることが好ましく、-15℃以下であることがより好ましい。定着樹脂のガラス転移温度が上記範囲内である場合、記録物における顔料の定着性が一層優れたものとなる結果、耐擦性が優れたものとなる。なお、熱変形温度の下限については特に限定されないが、-50℃以上であるとよい。
【0141】
第2樹脂の熱変形温度は、ヘッドの目詰まりを起こしにくく、かつ、記録物の耐擦性を良好にすることができるため、下限は40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。好ましい上限としては100℃以下である。
【0142】
ここで、本明細書における「熱変形温度」は、ガラス転移温度(Tg)または最低造膜温度(Minimum Film forming Temperature;MFT)で表された温度値とする。つまり、「熱変形温度が40℃以上」とは、TgまたはMFTのいずれかが40℃以上であればよいことを意味する。なお、MFTの方がTgよりも樹脂の再分散性の優劣を把握しやすいため、当該熱変形温度はMFTで表された温度値であることが好ましい。樹脂の再分散性に優れたインク組成物であると、インク組成物が固着しないためヘッドが目詰まりしにくくなる。
【0143】
本明細書におけるTgは示差走査熱量測定法により測定された値で記載している。また、本明細書におけるMFTは、ISO2115:1996(標題:プラスチック-ポリマー分散-白色点温度およびフィルム形成最低温度の測定)により測定された値で記載している。
【0144】
<樹脂分散剤>
インク組成物に上記の顔料を含有させる際、顔料が水中で安定的に分散保持できるようにするため、当該インク組成物は樹脂分散剤を含むとよい。上記インク組成物が水溶性樹脂や水分散性樹脂等の樹脂分散剤を用いて分散された顔料(以下、「樹脂分散顔料」という。)を含むことにより、インク組成物が媒体14に付着したときに、媒体14とインク組成物との間およびインク組成物中の固化物間のうち少なくともいずれかの密着性を良好なものとすることができる。樹脂分散剤の中でも分散安定性に優れるため、水溶性樹脂が好ましい。
【0145】
<樹脂エマルジョン>
インク組成物は、樹脂エマルジョンを含んでも良い。樹脂エマルジョンは、樹脂被膜を形成することで、インク組成物を媒体14上に十分定着させて画像の耐擦性を良好にする効果を発揮する。上記の効果により樹脂エマルジョンを含有するインク組成物を用いて記録された記録物は、特に布帛、インク非吸収性または低吸収性の媒体14上で密着性、耐擦性に優れたものとなる。一方無機顔料の固化を促進させてしまう傾向にあるが、本願発明であれば固化した付着物を払拭する際によって生じる撥液膜の劣化の課題を良好に防止する事ができる。
【0146】
また、バインダーとして機能する樹脂エマルジョンはインク組成物中にエマルジョン状態で含有されることが好ましい。バインダーとして機能する樹脂をエマルジョン状態でインク組成物中に含有させることにより、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、かつ、インク組成物の保存安定性および吐出安定性に優れたものとなる。
【0147】
樹脂エマルジョンとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、および塩化ビニリデンの単独重合体または共重合体、フッ素樹脂、および天然樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂およびスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル系樹脂およびスチレン-アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかがより好ましく、スチレン-アクリル酸共重合体系樹脂がさらに好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、およびグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。
【0148】
樹脂エマルジョンは、市販品を用いてもよく、以下のように乳化重合法等を利用して作製してもよい。インク組成物中の樹脂をエマルジョンの状態で得る方法としては、重合触媒および乳化剤を存在させた水中で、上述した水溶性樹脂の単量体を乳化重合させることが挙げられる。乳化重合の際に使用される重合開始剤、乳化剤、および分子量調整剤は従来公知の方法に準じて使用できる。
【0149】
樹脂エマルジョンの平均粒子径は、インクの保存安定性および吐出安定性を一層良好にするため、好ましくは5nm~400nmの範囲であり、より好ましくは20nm~300nmの範囲である。
【0150】
樹脂エマルジョンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂の中でも樹脂エマルジョンの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5~15質量%の範囲であることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、固形分濃度を低くすることができるため、吐出安定性を一層良好にすることができる。
【0151】
<ワックス>
インク組成物は、ワックスを含んでもよい。インク組成物がワックスを含むことにより、インク組成物がインク非吸収性および低吸収性の媒体14上で定着性により優れたものとなる。ワックスの中でもエマルジョンまたはサスペンジョンタイプのものがより好ましい。上記ワックスとしては、以下に限定されないが、例えばポリエチレンワックス、パラフィンワックス、およびポリプロピレンワックスが挙げられ、中でも後述するポリエチレンワックスが好ましい。
【0152】
上記インク組成物がポリエチレンワックスを含むことにより、インクの耐擦性を優れたものとすることができる。
ポリエチレンワックスの平均粒子径は、インクの保存安定性および吐出安定性を一層良好にするため、好ましくは5nm~400nmの範囲であり、より好ましくは50nm~200nmの範囲である。
【0153】
ポリエチレンワックスの含有量(固形分換算)は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~3質量%の範囲が好ましく、0.3~3質量%の範囲がより好ましく、0.3~1.5質量%の範囲がさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、媒体14上においても、インク組成物を良好に固化・定着させることができ、かつ、インクの保存安定性および吐出安定性が一層優れたものとなる。
【0154】
<消泡剤>
インク組成物は、消泡剤を含んでもよい。より詳しく言えば、インク組成物または含浸液のうち少なくともいずれかが、消泡剤を含んでもよい。インク組成物が消泡剤を含む場合、泡立ちを抑制でき、その結果、泡がノズル36の中に入り込む虞を低減できる。
【0155】
消泡剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリコン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、およびアセチレングリコール系消泡剤等が挙げられる。これらの中でも、表面張力および界面張力を適正に保持する能力に優れており、かつ、気泡を殆ど生じさせないため、シリコン系消泡剤、アセチレングリコール系消泡剤が好ましい。また、消泡剤のグリフィン法に基づくHLB値は5以下がより好ましい。
【0156】
<界面活性剤>
インク組成物は、界面活性剤(上記の消泡剤で挙げたものを除く。つまり、グリフィン法によるHLB値が5を上回るものに限る。)を含んでもよい。界面活性剤として、以下に限定されないが、例えばノニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤は、媒体14上でインクを均一に拡げる作用がある。そのため、ノニオン系界面活性剤を含むインクを用いてインクジェット記録を行なった場合、滲みの殆ど無い高精細な画像が得られる。このようなノニオン系界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリコン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、多環フェニルエーテル系、ソルビタン誘導体、およびフッ素系の界面活性剤等が挙げられ、中でもシリコン系界面活性剤が好ましい。
【0157】
シリコン系界面活性剤は、他のノニオン系界面活性剤と比較して、媒体14上で滲みを生じないようにインクを均一に拡げる作用に優れる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。界面活性剤の含有量は、インクの保存安定性および吐出安定性が一層良好なものとなるため、インクの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0158】
<水>
インク組成物は、水を含有してもよい。特に、インク組成物が水性インクである場合、水は、インクの主となる媒体14であり、インクジェット記録において媒体14が加熱される際、蒸発飛散する成分となる。
【0159】
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、および蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射または過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。
【0160】
水の含有量は特に制限されず、必要に応じて適宜決定すればよい。
<インク組成物の表面張力>
インク組成物の表面張力は、特に限定されないが、15~35mN/mであることが好ましい。これによって、インク組成物の帯状部材60への浸透性、記録した際のブリード防止性を確保が可能となり、清掃動作時のインク拭き取り性が向上する。インク組成物の表面張力も、上述のように、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP-Z等)を用いて測定する方法が例示できる。また、インク組成物の表面張力と洗浄液の表面張力の差は、10mN/m以内という関係を有することが好ましい。これによって、両者がノズル36付近で混じった際に、極端にインク組成物の表面張力が低下することを防止できる。
【0161】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)液体噴射装置は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記液体噴射部が噴射する前記液体を吸収可能な帯状部材を前記ノズル面に接触させて該ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行可能なワイピング機構と、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材にワイピング液を供給可能なワイピング液供給機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体の付着量の多い前記ノズル面をワイピングする場合、前記ワイピング動作において前記ノズル面に接触する前記帯状部材の接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、前記液体の付着量の少ない前記ノズル面をワイピングする場合より少なくする。
【0162】
この構成によれば、制御部は、ノズル面に付着する液体の量に対応して帯状部材の接触領域が保持するワイピング液の量を調整する。したがって、ワイピング動作後にノズルから液体を噴射する噴射状態が不安定になる虞を低減できる。
【0163】
(B)液体噴射装置において、前記制御部は、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材に供給する前記ワイピング液の量を少なくすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくしてもよい。
【0164】
この構成によれば、制御部は、帯状部材に供給するワイピング液の量を少なくすることにより、接触領域が保持するワイピング液の量を少なくする。すなわち、帯状部材に供給するワイピング液の量を調整することで、接触領域が保持するワイピング液の量を容易に調整できる。
【0165】
(C)液体噴射装置において、前記制御部は、前記ワイピング液を前記帯状部材に供給してから前記ワイピング動作を行うまでの時間間隔を長くすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくしてもよい。
【0166】
帯状部材は、液体を吸収可能である。そのため、帯状部材に供給されたワイピング液は、時間の経過とともに周囲に拡散する。この構成によれば、制御部は、ワイピング液を帯状部材に供給してからワイピングを行うまでの時間間隔を長くすることで、接触領域が保持するワイピング液の量を少なくする。したがって、接触領域が保持するワイピング液の量を容易に調整できる。
【0167】
(D)液体噴射装置において、前記接触領域のうち前記ワイピング動作において最初に前記ノズル面に接触する部分を前側接触部とした場合に、前記制御部は、前記ワイピング動作を行う前に供給される前記ワイピング液を受ける前記帯状部材の受け止め部と前記前側接触部との間の距離を長くすることで、前記前側接触部が保持する前記ワイピング液の量を少なくしてもよい。
【0168】
この構成によれば、制御部は、受け止め部と前側接触部との距離を長くすることで、前側接触部が保持するワイピング液の量を少なくする。接触領域は、ワイピング動作において前側接触部が最初にノズル面に接触する。そのため、ノズル面に付着した液体は、前側接触部に集まりやすい。例えば、ノズル面に付着する液体の量が多い場合には、ノズル面に付着する液体の量が少ない場合より、前側接触部が保持するワイピング液の量を少なくすることで、ノズル面に付着する液体を帯状部材に吸収しやすくできる。
【0169】
(E)液体噴射装置において、前記制御部は、前記ワイピング動作を2回続けて行う場合に、最初に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、次に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量より少なくしてもよい。
【0170】
ノズル面に付着する液体は、ワイピング動作によって減少する。したがって、最初のワイピング動作を行う前にノズル面に付着する液体の量は、最初のワイピング動作が終了して次のワイピング動作を行う前にノズル面に付着する液体の量より多い。制御部は、最初のワイピング動作において接触領域が保持するワイピング液の量を、次のワイピング動作において接触領域が保持するワイピング液の量より少なくする。したがって、ワイピング動作を続けて行う場合でも、ワイピング動作後にノズルから液体を噴射する噴射状態が不安定になる虞を低減できる。
【0171】
(F)液体噴射装置のメンテナンス方法は、ノズル面に配置されるノズルから液体を噴射可能な液体噴射部と、前記液体噴射部が噴射する前記液体を吸収可能な帯状部材を前記ノズル面に接触させて該ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行可能なワイピング機構と、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材にワイピング液を供給可能なワイピング液供給機構と、を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、前記液体の付着量の多い前記ノズル面をワイピングする場合、前記ワイピング動作において前記ノズル面に接触する前記帯状部材の接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、前記液体の付着量の少ない前記ノズル面をワイピングする場合より少なくする。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【0172】
(G)液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記ワイピング動作を行う前に前記帯状部材に供給する前記ワイピング液の量を少なくすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくしてもよい。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【0173】
(H)液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記ワイピング液を前記帯状部材に供給してから前記ワイピング動作を行うまでの時間間隔を長くすることで、前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を少なくしてもよい。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【0174】
(I)液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記接触領域のうち前記ワイピング動作において最初に前記ノズル面に接触する部分を前側接触部とした場合に、前記ワイピング動作を行う前に供給される前記ワイピング液を受ける前記帯状部材の受け止め部と前記前側接触部との間の距離を長くすることで、前記前側接触部が保持する前記ワイピング液の量を少なくしてもよい。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【0175】
(J)液体噴射装置のメンテナンス方法において、前記ワイピング動作を2回続けて行う場合に、最初に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量を、次に行う該ワイピング動作において前記接触領域が保持する前記ワイピング液の量より少なくしてもよい。この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0176】
11…液体噴射装置、12…脚部、13…筐体、14…媒体、15…繰出部、16…案内部、17…回収部、18…テンション付与機構、20…液体噴射部、21…キャリッジ、22…メンテナンスユニット、23…液体供給装置、24…操作パネル、25…液体収容体、26…装着部、27…供給流路、29…制御部、31…ガイド軸、32…キャリッジモーター、34…整風部、36…ノズル、37…ノズル形成部材、38…カバー部材、39…貫通孔、40…ノズル面、42…フラッシング装置、43…ワイピング機構、44…吸引装置、45…キャッピング装置、47…液体受容部、48…蓋部材、49…蓋用モーター、51…吸引キャップ、52…吸引用保持体、53…吸引用モーター、54…減圧機構、56…放置キャップ、57…放置用保持体、58…放置用モーター、60…帯状部材、60a…受け止め部、61…ケース、62…レール、63…払拭用モーター、64…巻取用モーター、65…動力伝達機構、67…開口、69…巻出軸、70…巻出部、71…巻取軸、72…巻取部、73…上流ローラー、74…テンションローラー、75…押圧ローラー、76…下流ローラー、77…規制ローラー、78…第1水平ローラー、79…第2水平ローラー、80…ワイピング液供給機構、81…貯留部、82…ワイピング液供給流路、83…供給ポンプ、84…分岐流路、85…開閉弁、86…供給ノズル、87…供給用保持体、A1…上流領域、A2…接触領域、A3…下流領域、A4…水平領域、A5…緩斜領域、A6…急斜領域、Au…前側接触部の一例である上流端、Ad…前側接触部の一例である下流端、CP…クリーニング位置、D…移動方向、G1…第1ノズル群、G2…第2ノズル群、G3…第3ノズル群、G4…第4ノズル群、G5…第5ノズル群、G6…第6ノズル群、HP…ホームポジション、L1…第1ノズル列、L2…第2ノズル列、L3…第3ノズル列、L4…第4ノズル列、L5…第5ノズル列、L6…第6ノズル列、L7…第7ノズル列、L8…第8ノズル列、L9…第9ノズル列、L10…第10ノズル列、L11…第11ノズル列、L12…第12ノズル列、R1…第1距離、R2…第2距離、W…ワイピング液、W1…第1払拭方向、W2…第2払拭方向、X…幅方向、Y…奥行方向、Z…重力方向。