(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】印刷装置、及び印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 43/08 20060101AFI20231219BHJP
B65H 9/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B65H43/08
B65H9/14
(21)【出願番号】P 2020021328
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】柳下 賢司
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046459(JP,A)
【文献】特開2011-146833(JP,A)
【文献】特開2002-037484(JP,A)
【文献】特開2008-221748(JP,A)
【文献】特開2006-076293(JP,A)
【文献】特開2009-039952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0347063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 43/08
B65H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体が搬送される搬送路の上流から下流に向かって前記印刷媒体が搬送される第1搬送方向への前記印刷媒体の搬送と、前記搬送路の下流から上流に向かって前記印刷媒体が搬送される第2搬送方向への前記印刷媒体の搬送とを行う搬送部と、
前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断する遮断位置と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断しない非遮断位置とのそれぞれに移動可能な遮断部材と、
前記搬送路と交わる方向に互いに所定間隔離れて設けられており、前記搬送路に沿って搬送される前記印刷媒体を検出可能な複数の検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記複数の前記検出部のうち、前記遮断位置にある前記遮断部材により前記印刷媒体の搬送が遮断された場合において前記印刷媒体を検出した2以上の前記検出部を特定し、
前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向又は前記第2搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体の検出状態が前記印刷媒体の搬送中に変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の端部の位置を特定し、
特定した前記印刷媒体の端部の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、
印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記2以上の前記検出部を特定した後、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体を検出している状態から前記印刷媒体を検出していない状態へと前記印刷媒体の搬送中に前記検出状態が変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の後端の位置を前記端部の位置として特定し、
特定した前記後端の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記2以上の前記検出部を特定した後、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体を検出していない状態から前記印刷媒体を検出している状態へと前記印刷媒体の搬送中に前記検出状態が変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の前端の位置を前記端部の位置として特定し、
特定した前記前端の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記2以上の前記検出部を特定した後、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第2搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体を検出していない状態から前記印刷媒体を検出している状態へと前記印刷媒体の搬送中に前記検出状態が変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の後端の位置を前記端部の位置として特定し、
特定した前記後端の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記2以上の前記検出部を特定した後、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第2搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体を検出している状態から前記印刷媒体を検出していない状態へと前記印刷媒体の搬送中に前記検出状態が変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の前端の位置を前記端部の位置として特定し、
特定した前記前端の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷媒体に含まれる磁気情報を読み取る磁気情報読取部と、
前記印刷媒体に含まれる画像を読み取る画像読取部と、
前記印刷媒体への印刷を行う印刷部と、
を備え、
前記磁気情報読取部、前記複数の前記検出部、前記遮断部材、前記印刷部、前記画像読取部は、前記磁気情報読取部、前記複数の前記検出部、前記遮断部材、前記印刷部、前記画像読取部の順に前記第1搬送方向に向かって並んで前記搬送路に設けられており、
前記制御部は、
前記遮断部材を前記遮断位置に移動させた後、前記印刷媒体が前記遮断部材に遮断されるまで前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向に搬送し、
前記印刷媒体が前記遮断部材に遮断された後、前記遮断部材を前記非遮断位置に移動させ、
前記遮断部材を前記非遮断位置に移動した後、前記搬送部により前記第1搬送方向に前記印刷媒体を搬送し、前記磁気情報読取部により前記磁気情報を読み取ることと、前記画像読取部により前記印刷媒体から画像を読み取ることと、前記印刷部により前記印刷媒体への印刷を行うこととの少なくともいずれかを行う、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記磁気情報読取部による前記磁気情報の読み取りと、前記画像読取部による前記画像の読み取りと、前記印刷部による印刷との少なくともいずれかを行う前に、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第2搬送方向に搬送する、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記磁気情報読取部による前記磁気情報の読み取りと、前記画像読取部による前記画像の読み取りと、前記印刷部による印刷との少なくともいずれかを行った後に、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第2搬送方向に搬送する、
請求項6又は7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記検出状態が前記印刷媒体の搬送中に変化した前記検出部の個数が、前記複数の前記検出部の半分の個数より多い個数、又は、前記複数の前記検出部の半分の個数となった場合、前記端部の位置を特定する、
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項10】
印刷媒体が搬送される搬送路の上流から下流に向かって前記印刷媒体が搬送される第1搬送方向への前記印刷媒体の搬送と、前記搬送路の下流から上流に向かって前記印刷媒体が搬送される第2搬送方向への前記印刷媒体の搬送とを行う搬送部と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断する遮断位置と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断する遮断しない非遮断位置とのそれぞれに移動可能な遮断部材と、前記搬送路と交わる方向に互いに所定間隔離れて設けられており、前記搬送路に沿って搬送される前記印刷媒体を検出可能な複数の検出部と、備える印刷装置の制御方法であって、
前記複数の前記検出部のうち、前記遮断位置にある前記遮断部材により前記印刷媒体の搬送が遮断された場合において前記印刷媒体を検出した2以上の前記検出部を特定し、
前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向又は前記第2搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体の検出状態が前記印刷媒体の搬送中に変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の端部の位置を特定し、
特定した前記印刷媒体の端部の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、
印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置、及び印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行の通帳等の印刷媒体への印刷を行う印刷装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、印刷媒体の向きが搬送方向に対して斜めに傾いていたとしても、印刷媒体の搬送中において、突当部材に搬送媒体を突き当てることによって、搬送媒体の向きを搬送方向と平行となるように矯正する印刷装置が知られている(特許文献1参照)。ここで、印刷媒体の向きは、例えば、印刷媒体が有する辺のうち搬送方向と直交する方向と交わる辺と、搬送方向とが成す鋭角の角度によって表される。印刷媒体の向きが搬送方向と平行である場合、当該角度は、0°である。なお、本明細書では、説明の便宜上、印刷媒体の向きが搬送方向に対して斜めに傾いてしまうこと、すなわち、当該角度が0°よりも大きくなってしまうことを、スキューと称して説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような印刷装置では、突当部材に搬送媒体を突き立てて搬送媒体の向きを矯正したとしても、その後、搬送媒体の搬送の繰り返しにより、搬送媒体の搬送中にスキューが再び生じることがある。このような場合、当該印刷装置では、当該印刷装置により印刷が行われる領域から印刷媒体の少なくとも一部が外れてしまい、印刷媒体への画像の印刷に失敗してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、印刷媒体が搬送される搬送路の上流から下流に向かって前記印刷媒体が搬送される第1搬送方向への前記印刷媒体の搬送と、前記搬送路の下流から上流に向かって前記印刷媒体が搬送される第2搬送方向への前記印刷媒体の搬送とを行う搬送部と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断する遮断位置と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断しない非遮断位置とのそれぞれに移動可能な遮断部材と、前記搬送路と交わる方向に互いに所定間隔離れて設けられており、前記搬送路に沿って搬送される前記印刷媒体を検出可能な複数の検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の前記検出部のうち、前記遮断位置にある前記遮断部材により前記印刷媒体の搬送が遮断された場合において前記印刷媒体を検出した2以上の前記検出部を特定し、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向又は前記第2搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体の検出状態が前記印刷媒体の搬送中に変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の端部の位置を特定し、特定した前記印刷媒体の端部の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、印刷装置である。
【0007】
また、本発明の他の態様は、印刷媒体が搬送される搬送路の上流から下流に向かって前記印刷媒体が搬送される第1搬送方向への前記印刷媒体の搬送と、前記搬送路の下流から上流に向かって前記印刷媒体が搬送される第2搬送方向への前記印刷媒体の搬送とを行う搬送部と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断する遮断位置と、前記搬送路に沿った前記印刷媒体の搬送を遮断する遮断しない非遮断位置とのそれぞれに移動可能な遮断部材と、前記搬送路と交わる方向に互いに所定間隔離れて設けられており、前記搬送路に沿って搬送される前記印刷媒体を検出可能な複数の検出部と、備える印刷装置の制御方法であって、前記複数の前記検出部のうち、前記遮断位置にある前記遮断部材により前記印刷媒体の搬送が遮断された場合において前記印刷媒体を検出した2以上の前記検出部を特定し、前記搬送部により前記印刷媒体を前記第1搬送方向又は前記第2搬送方向に搬送し、特定した前記2以上の前記検出部のうち、前記印刷媒体の検出状態が前記印刷媒体の搬送中に変化した前記検出部の個数に応じて、前記印刷媒体の位置のうち前記印刷媒体の端部の位置を特定し、特定した前記印刷媒体の端部の位置に基づいて、前記印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、印刷装置の制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る印刷装置10の外観の一例を示す斜視図である。
【
図2】印刷装置本体11の一例を示す斜視図である。
【
図3】印刷装置本体11の要部構成の一例を示す上面図である。
【
図4】
図1に示した印刷装置本体11の側断面図である。
【
図5】印刷装置10の制御系の一例を示す図である。
【
図6】印刷装置10が印刷媒体100へ画像を印刷する処理の流れの一例を示す図である。
【
図7】ステップS140において搬送が停止された状態の印刷媒体100と、印刷媒体検出部42との位置関係の一例を示す図である。
【
図8】スキューが生じている場合において第1搬送方向に搬送中の印刷媒体100と、印刷媒体検出部42との位置関係の一例を示す図である。
【
図9】印刷装置10が印刷媒体100へ画像を印刷する処理の流れの他の例を示す図である。
【
図10】スキューが生じている場合において第2搬送方向に搬送中の印刷媒体100と、印刷媒体検出部42との位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
なお、以下では、図中における方向を、三次元座標系TCを用いて説明する。三次元座標系TCは、三次元座標系TCが描かれた各図における方向を示す三次元直交座標系である。そして、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるX軸を、単にX軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるY軸を、単にY軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるZ軸を、単にZ軸と称して説明する。
【0011】
また、以下では、一例として、Z軸の負方向と重力方向とが一致している場合について説明する。そして、以下では、説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、Z軸の負方向を下方向又は単に下と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、Y軸の正方向を左方向又は単に左と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、Y軸の負方向を右方向又は単に右と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を前方向又は単に前と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、X軸の負方向を後方向又は単に後と称して説明する。
【0012】
<印刷装置の構成>
以下、
図1~
図4を参照し、印刷装置10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る印刷装置10の外観の一例を示す斜視図である。
図2は、印刷装置本体11の一例を示す斜視図である。
図3は、印刷装置本体11の要部構成の一例を示す上面図である。
図4は、
図1に示した印刷装置本体11の側断面図である。
【0013】
図1~
図4に示す印刷装置10は、ドットインパクトプリンターである。印刷装置10は、複数のピンを突出させて印刷媒体100に文字等の画像を印刷するヘッド18を備える。なお、これら複数のピンのそれぞれは、ワイヤーと称される場合がある。
【0014】
印刷装置10は、ヘッド18が備える複数のピンの一部又は全部を突出させ、突出させた1本以上のピンを、インクリボンを介して印刷媒体100に押し付ける。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100上にドットを形成し、印刷媒体100上に文字等の画像を印刷する。
【0015】
ここで、印刷媒体100は、例えば、文字等の画像が印刷されるシートである。印刷媒体100は、所定長さに切断されたカットシートであってもよく、複数枚が連接された連続シートであってもよい。カットシートは、例えば、単票紙、単票複写紙等の普通紙であってもよく、通帳、葉書、封筒等であってもよく、所定長さに切断された他のシートであってもよい。連続シートは、例えば、連続紙、連続複写紙等である。以下では、一例として、印刷媒体100が、通帳である場合について説明する。この場合、印刷媒体100は、複数枚の記録用紙が綴じられて構成され、記録用紙の記録面を開いた場合に底面となる面において、磁気ストライプ101が設けられている。
【0016】
印刷装置10は、例えば、
図1~4において図示しないホストコンピューター200等の情報処理装置から受信した印刷データに基づいて、印刷媒体100に印刷を行う。
【0017】
また、印刷装置10は、印刷装置本体11と、印刷装置本体11を覆う外装体である上部カバー12と、上部ハウジング13と、下部ハウジング14を備える。そして、上部ハウジング13及び下部ハウジング14の前面には、手差口15が開口している。
【0018】
印刷装置本体11は、右サイドフレーム16と左サイドフレーム17とを備えた図示しない本体フレームを有する。また、印刷装置本体11は、ヘッド18とキャリッジ19とを備えた印刷部20を有する。印刷部20は、ヘッド18及びキャリッジ19それぞれの動作により、印刷媒体100への印刷を行う。また、印刷装置本体11は、ヘッド18に対向する位置に設けられるプラテン21を備える。プラテン21は、ヘッド18に近づく方向とヘッド18から遠ざかる方向とのそれぞれに移動可能である。なお、
図1~
図4に示した例では、プラテン21がヘッド18に近づく方向が上方向と一致しており、プラテン21がヘッド18から遠ざかる方向は、下方向と一致している。
【0019】
また、印刷装置本体11は、第1搬送ローラー22と第2搬送ローラー23とを備えた第1搬送機構部24を有する。また、印刷装置本体11は、第3搬送ローラー25と第4搬送ローラー26とを備えた第2搬送機構部27を有する。また、印刷装置本体11は、第5搬送ローラー28と第6搬送ローラー29とを備えた第3搬送機構部30を有する。これら第1搬送機構部24、第2搬送機構部27、第3搬送機構部30は、印刷装置10の搬送部Hを構成する。
【0020】
搬送部Hは、第1搬送機構部24、第2搬送機構部27、第3搬送機構部30それぞれの動作により、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送と、第2搬送方向への印刷媒体100の搬送とを行う。
【0021】
第1搬送方向は、印刷媒体100が搬送される搬送路の上流から下流に向かって印刷媒体100が搬送される方向のことである。換言すると、第1搬送方向は、印刷媒体100が搬送される搬送路において印刷媒体100が搬送される2つの方向のうち、手差口15から印刷部20へと向かう方向のことである。更に換言すると、第1搬送方向は、後述するキャリッジ19の走査方向と直交する2つの方向のうち、手差口15から印刷部20へと向かう方向のことである。そこで、本実施形態では、当該搬送路のある第1部分が、当該搬送路の第1部分と異なる第2部分よりも手差口15に近い場合、当該搬送路において第1部分が第2部分よりも上流であると称し、搬送路において第2部分が第1部分よりも下流であると称して説明する。
【0022】
第2搬送方向は、印刷媒体100が搬送される搬送路の下流から上流に向かって印刷媒体100が搬送される方向のことである。換言すると、第2搬送方向は、印刷媒体100が搬送される搬送路において印刷媒体100が搬送される2つの方向のうち、印刷部20から手差口15へと向かう方向のことである。更に換言すると、第2搬送方向は、後述するキャリッジ19の走査方向と直交する2つの方向のうち、印刷部20から手差口15へと向かう方向のことである。
【0023】
また、印刷媒体100の搬送路は、印刷装置10において第1搬送方向又は第2搬送方向へと印刷媒体100が搬送される経路のことであり、
図1~
図4に示した例では、手差口15からX軸に沿って前後に印刷媒体100が搬送される経路のことである。このため、印刷媒体100の搬送路は、前方印刷媒体ガイド32上、及び後方印刷媒体ガイド33上に構成されている。以下では、説明の便宜上、印刷媒体100の搬送路を、単に搬送路と称して説明する。
【0024】
また、印刷装置本体11は、印刷媒体100に設けられた磁気ストライプ101の磁気情報の読み取り及び書き込みを行う磁気情報読書部31を有する。また、印刷装置本体11は、磁気情報読書部31による磁気ストライプ101からの磁気情報の読み書き時において、印刷媒体100の浮き上がりを上から押える押え部Fを有する。
【0025】
なお、印刷装置10は、磁気情報読書部31に代えて、印刷媒体100に設けられた磁気ストライプ101の磁気情報の読み取りを行い、印刷媒体100に設けられた磁気ストライプ101の磁気情報の書き込みを行わない磁気情報読取部を備える構成であってもよい。磁気情報読書部31は、磁気情報読取部の一例である。
【0026】
また、印刷装置本体11では、前述した本体フレームが備える右サイドフレーム16と左サイドフレーム17との間には、キャリッジ軸CAが架け渡される。また、右サイドフレーム16と左サイドフレーム17との間には、平坦面形状の前方印刷媒体ガイド32と、後方印刷媒体ガイド33とが固定して設けられる。そして、前方印刷媒体ガイド32と後方印刷媒体ガイド33との間には、平面形状のプラテン21が配置される。また、キャリッジ19の走査方向と直交する方向における後方印刷媒体ガイド33の中央付近には、キャリッジ19の走査方向に延伸し、印刷媒体100に含まれる画像を読み取る画像読取部35が配置される。
【0027】
キャリッジ19の走査方向は、キャリッジ軸CAに沿ってキャリッジ19が移動可能な2つの方向の総称である。すなわち、
図1~
図4に示した例では、キャリッジ19の走査方向は、Y軸の正方向とY軸の負方向とのそれぞれのことである。このため、当該例では、前述した第1搬送方向は、X軸の負方向と一致している。また、当該例では、前述した第2搬送方向は、X軸の正方向と一致している。
【0028】
ここで、第1搬送機構部24は、プラテン21に対して印刷装置本体11の前方側に配置される。第2搬送機構部27は、プラテン21に対して印刷装置本体11の後方側、且つ、画像読取部35に対して印刷装置本体11の前方側に配置される。第3搬送機構部30は、画像読取部35に対して印刷装置本体11の後方側に配置される。
【0029】
更に、第1搬送ローラー22と第2搬送ローラー23は、それぞれ上下方向に配置されて対をなす。また、第3搬送ローラー25と第4搬送ローラー26も、それぞれ上下方向に配置されて対をなす。また、第5搬送ローラー28と第6搬送ローラー29も、それぞれ上下方向に配置されて対をなす。このうち、第1搬送ローラー22は、プラテン21及び画像読取部35とともに前方印刷媒体ガイド32の下方に配置される。また、第3搬送ローラー25は、プラテン21及び画像読取部35とともに後方印刷媒体ガイド33の下方に配置される。また、第5搬送ローラー28は、プラテン21及び画像読取部35とともに後方印刷媒体ガイド33の下方に配置される。また、第2搬送ローラー23は、前方印刷媒体ガイド32の上方に配置される。また、第4搬送ローラー26は、後方印刷媒体ガイド33の上方に配置される。また、第6搬送ローラー29は、後方印刷媒体ガイド33の上方に配置される。
【0030】
また、第1搬送ローラー22、第3搬送ローラー25、第5搬送ローラー28のそれぞれは、
図1~
図4において図示しない搬送モーターM1と、図示しない駆動輪列部とによって回転駆動される駆動ローラーである。また、第2搬送ローラー23、第4搬送ローラー26、第6搬送ローラー29はそれぞれ、第1搬送ローラー22、第3搬送ローラー25、第5搬送ローラー28側に所定の押圧力でばね付勢されている従動ローラーである。これにより、第1搬送ローラー22と第2搬送ローラー23とが互いに反対方向に回転駆動され、第3搬送ローラー25と第4搬送ローラー26とが互いに反対方向に回転駆動され、第5搬送ローラー28と第6搬送ローラー29とが互いに反対方向に回転駆動される。
【0031】
そして、印刷媒体100は、第1搬送機構部24と第2搬送機構部27と第3搬送機構部30との動作により、キャリッジ19の走査方向と直交する方向に搬送される。
【0032】
キャリッジ19は、キャリッジ軸CAに摺動自在に挿通される。また、キャリッジ19は、ヘッド18を搭載している。キャリッジ19は、図示しないタイミングベルトに結合される。当該タイミングベルトは、
図1~
図4において図示しないキャリッジ駆動モーターM2により駆動される図示しないベルト駆動プーリーに架け渡されている。キャリッジ19は、キャリッジ駆動モーターM2の正回転又は逆回転により、キャリッジ軸CAの軸方向及びプラテン21の長手方向と一致する走査方向に、右サイドフレーム16と左サイドフレーム17とによって挟まれる範囲で走行(走査)される。
【0033】
また、キャリッジ19とともに移動するヘッド18が複数のピンを突出させる方向には、図示しないインクリボンが位置する。このインクリボンは、右サイドフレーム16と左サイドフレーム17との間に装着された図示しないリボンカートリッジ内に折り畳まれて収納される。ヘッド18は、キャリッジ19とともに走査方向に走行される間に、ピンを突出させてインクリボンに打ち当てる。これにより、ヘッド18は、インクリボンのインクをプラテン21とヘッド18との間を搬送される印刷媒体100に付着させ、印刷媒体100に文字等の画像を印刷することができる。
【0034】
ここで、図示を省略するが、ヘッド18は、ヘッド本体のフレームに形成されたコアに嵌め込まれる電磁コイルを備える。ヘッド18は、ピンを駆動する際、この電磁コイルに通電し、電磁コイルの磁気力によりピンレバーを介してピンを駆動する。つまり、ヘッド18は、電磁コイルへの通電により、ピンをプラテン21に向けて突出させる。なお、ピンの突出力は、この電磁コイルへの通電幅によって決まる。つまり、ピンの突出力は、電磁コイルへの通電幅を大きくするほど大きくなり、電磁コイルへの通電幅を小さくするほど小さくなる。
【0035】
また、印刷装置本体11は、印刷媒体100の搬送経路に進退自在な遮断部材41を有する。
図1~
図4に示した例では、印刷装置本体11は、Y軸に沿って並ぶ6個の遮断部材41を有する。なお、印刷装置本体11は、1個以上5個以下の遮断部材41を有する構成であってもよく、7個以上の遮断部材41を有する構成であってもよい。各遮断部材41は、搬送路に沿った印刷媒体100の搬送を遮断する遮断位置と、当該搬送を遮断しない非遮断位置とのそれぞれに移動可能である。遮断位置にある各遮断部材41により印刷媒体100の搬送が遮断された場合、印刷媒体100の向きは、第1搬送方向と平行になる。換言すると、当該場合、印刷媒体100の状態は、スキューが生じていない状態になる。ここで、印刷媒体100の向きは、例えば、印刷媒体100が有する辺のうち第1搬送方向と直交する方向と交わる辺と、第1搬送方向とが成す鋭角の角度によって表される。印刷媒体100の向きが第1搬送方向と平行である場合、当該角度は、0°である。
【0036】
各遮断部材41は、
図1~
図4において図示しない突当モーターM3を駆動源として、遮断位置と非遮断位置とのそれぞれに移動可能に構成されている。なお、各遮断部材41は、突当モーターM3に代えて、ソレノイド等を駆動源としてもよい。
【0037】
また、印刷装置本体11は、前方印刷媒体ガイド32上を搬送される印刷媒体100を検出する印刷媒体検出部42を備える。印刷媒体検出部42は、前方印刷媒体ガイド32上を搬送される印刷媒体100を検出可能なように、第1搬送方向において第1搬送ローラー22と遮断部材41との間に設けられる。
【0038】
印刷媒体検出部42は、搬送路に沿って搬送される印刷媒体100を検出可能な複数個の検出部43を有する。
図1~
図4に示した例では、印刷媒体検出部42は、8個の検出部43を有する。これら8個の検出部43は、搬送路と交わる方向、すなわち、第1搬送方向と交わる方向に、互いに所定間隔離れて設けられる。当該例では、これら8個の検出部43は、当該方向に沿って並ぶように、且つ、互いに所定間隔離れて設けられている。なお、これら8個の検出部43は、第1搬送方向と交わる方向に互いに所定間隔離れて設けられていれば、必ずしも当該方向と平行な軸に沿って一直線に並んでいなくてもよい。すなわち、これら8個の検出部43は、例えば、当該軸を挟んで互い違いに並ぶように設けられていてもよい。また、所定間隔は、如何なる間隔であってもよい。また、これら8個の検出部43のうち隣り合う検出部43同士の間隔はそれぞれ、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0039】
検出部43は、例えば、光センサーである。なお、検出部43は、光センサーに代えて、マイクロスイッチ等、搬送路に沿って搬送される印刷媒体100を検出可能な他のセンサー、他のスイッチ等であってもよい。検出部43は、検出した結果を示す情報を、後述する制御部110に出力する。ここで、以下では、説明の便宜上、検出部43の状態のうち検出部43が印刷媒体100を検出している状態と、検出部43の状態のうち検出部43が印刷媒体100を検出していない状態とを総称して、検出状態と称して説明する。すなわち、本実施形態では、検出状態は、検出部43が印刷媒体100を検出している状態と、検出部43が印刷媒体100を検出していない状態とのいずれかの状態を意味する。
【0040】
また、
図1~
図4に示した例では、印刷装置10において、磁気情報読書部31、印刷媒体検出部42が有する複数の検出部43、遮断部材41、印刷部20、画像読取部35は、磁気情報読書部31、印刷媒体検出部42が有する複数の検出部43、遮断部材41、印刷部20、画像読取部35の順に第1搬送方向に向かって並んで搬送路に設けられている。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100を第1搬送方向と第2搬送方向とのそれぞれへの移動を繰り返すことにより、磁気情報の読み取りと、画像の読み取りと、印刷媒体100への印刷とのうちの少なくとも2つの組み合わせを、ユーザーが印刷媒体100の差し直し等を行うことなく、順に行うことができる。
【0041】
<印刷装置の制御系>
以下、
図5を参照し、印刷装置10の制御系について説明する。
図5は、印刷装置10の制御系の一例を示す図である。
図5に示すように、印刷装置10は、制御部110と、通信部120を備える。
【0042】
制御部110は、印刷装置10の各部を統括的に制御する。制御部110は、CPU111(Central Processing Unit、プロセッサー)と、ROM112(Read Only Memory)と、RAM113(Random Access Memory)を備える。
【0043】
CPU111は、ROM112に記憶された制御プログラムを読み出し、RAM113を用いて実行する。
【0044】
通信部120は、ホストコンピューター200との間で、各種のコマンド、各種の情報等を送受信する。なお、ホストコンピューター200は、例えば、印刷媒体100が銀行の通帳である場合、顧客の口座番号、顧客の暗証番号、顧客の取引履歴等の通帳に対応付けられた口座に関連する情報を格納するデータベースを保有しており、顧客の口座を管理する。
【0045】
<印刷装置が印刷媒体への印刷を行う処理>
以下、
図6を参照し、印刷装置10が印刷媒体100への印刷を行う処理について説明する。
図6は、印刷装置10が印刷媒体100への印刷を行う処理の流れの一例を示す図である。なお、以下では、一例として、
図6に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、印刷媒体100へ印刷する画像と、印刷装置10に当該画像の印刷を行わせる指示とを含むコマンドを印刷装置10がホストコンピューター200から受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、ユーザーにより印刷媒体100が印刷装置10の手差口15に差し込まれている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、遮断部材41が非遮断位置に位置している場合について説明する。
【0046】
制御部110は、突当モーターM3を制御し、各遮断部材41を非遮断位置から遮断位置へ移動させる(ステップS110)。
【0047】
次に、制御部110は、搬送モーターM1を制御し、第1搬送機構部24と第2搬送機構部27と第3搬送機構部30を駆動させて、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送を開始させる(ステップS120)。
【0048】
次に、制御部110は、所定の遮断条件が満たされるまで待機する(ステップS130)。遮断条件は、印刷媒体100が遮断部材41によって遮断されるための必要十分条件である。遮断条件は、例えば、ステップS120の処理によって第1搬送方向への印刷媒体100の搬送が開始されてから所定の時間が経過すること、である。なお、遮断条件は、印刷媒体100が遮断部材41によって遮断されるための必要十分条件であれば、他の条件であってもよい。例えば、遮断条件は、遮断部材41に印刷媒体100が遮断されたことを検出するセンサーを備える場合、当該センサーからの出力に基づいて、遮断部材41に印刷媒体100が遮断されたことが検出されたこと、であってもよい。また、所定の時間は、印刷媒体100が遮断部材41によって遮断されるための必要十分な時間であれば、如何なる時間であってもよい。所定の時間は、例えば、印刷装置10が印刷媒体100を搬送する速度に応じて決められる。
【0049】
制御部110は、所定の遮断条件が満たされたと判定した場合(ステップS130-YES)、搬送モーターM1を制御し、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送を停止させる(ステップS140)。
【0050】
このように、制御部110は、ステップS120~ステップS140の処理によって、遮断部材41を遮断位置に移動させた後、少なくとも印刷媒体100が遮断部材41に遮断されるまでの期間、搬送部Hにより印刷媒体100を第1搬送方向に搬送する。
【0051】
ステップS140の処理が行われた後、制御部110は、印刷媒体検出部42の各検出部43から出力される情報に基づいて、8個の検出部43のうち印刷媒体100を検出している検出状態の2個以上の検出部43を、以下において説明するステップS220の処理において使用する対象検出部として特定する(ステップS150)。ここで、
図7を参照し、ステップS150の処理について説明する。
図7は、ステップS140において搬送が停止された状態の印刷媒体100と、印刷媒体検出部42との位置関係の一例を示す図である。なお、
図7では、印刷媒体100と印刷媒体検出部42との位置関係を明確に示すため、印刷媒体100は、輪郭を示す実線によって示されている。
【0052】
図7に示すように、ステップS140において搬送が停止された状態では、印刷媒体100は、遮断部材41に突き当たっている。すなわち、この状態では、印刷媒体100は、遮断部材41によって遮断されている。これにより、印刷媒体100は、遮断部材41により遮断される前にスキューが発生していたとしても、ステップS140において搬送が停止された状態では、スキューが解消されている。すなわち、この状態では、印刷媒体100の向きは、第1搬送方向と平行になっている。そして、印刷媒体100が遮断部材41により遮断されている場合、印刷媒体100は、8個の検出部43のうちの少なくとも一部の真上を覆っている。8個の検出部43のうち印刷媒体100により真上を覆われた2個以上の検出部43は、印刷媒体100を検出していることを示す情報を制御部110に出力する。これにより、制御部110は、ステップS150において、8個の検出部43のうち印刷媒体100を検出している2個以上の検出部43を、対象検出部として特定することができる。
図7に示した例では、8個の検出部43のうちの両端の検出部43を結ぶ直線の長さよりも、印刷媒体100のY軸方向における長さの方が長い。このため、当該例では、対象検出部として特定される検出部43は、8個の検出部43の全てである。しかしながら、印刷媒体100の大きさは、
図7に示した印刷媒体100の大きさであるとは限らない。このため、制御部110は、印刷媒体100の大きさが
図7に示した印刷媒体100の大きさよりも小さい場合、ステップS140において搬送が停止された状態において、8個の検出部43のうち印刷媒体100を検出している2個以上8個未満の検出部43を、対象検出部として特定することもある。
【0053】
ステップS150の処理が行われた後、制御部110は、突当モーターM3を制御し、各遮断部材41を遮断位置から非遮断位置へ移動させる(ステップS160)。
【0054】
次に、制御部110は、画像の印刷以外の動作を行うか否かを判定する(ステップS170)。例えば、制御部110は、事前に受け付けたコマンドに含まれる未実行の指示の中に、印刷装置10に画像の印刷以外の動作を行わせる指示が含まれている場合、当該動作を行うと判定する。一方、制御部110は、事前に受け付けたコマンドに含まれる未実行の指示の中に、印刷装置10に当該動作を行わせる指示が含まれていない場合、当該動作を行わないと判定する。
【0055】
制御部110は、画像の印刷以外の動作を行うと判定した場合(ステップS170-YES)、第2搬送方向へ印刷媒体100を所定の距離搬送させる(ステップS180)。所定の距離は、印刷媒体100の前端の位置を、所定の第1位置に一致させるのに要する距離である。なお、この時点では、制御部110は、印刷媒体100の前端の位置を特定しているわけではない。この時点では、ステップS140において搬送が停止されてから印刷媒体100が動いていないため、制御部110は、印刷媒体100を第2搬送方向へ所定の距離搬送させることにより、印刷媒体100の前端の位置を、所定の第1位置に一致させることができる。このような事情から、ステップS170~ステップS190の繰り返し処理によってスキューが発生すると、ステップS180の処理によって搬送された印刷媒体100の前端は、所定の第1位置と精度よく一致しない。ここで、印刷媒体100の前端は、印刷媒体100が有する端部のうち第1搬送方向側の端部のことである。
【0056】
次に、制御部110は、画像の印刷以外の動作を印刷装置10に行わせる(ステップS190)。具体的には、制御部110は、ステップS190において、事前に受け付けたコマンドに含まれる未実行の指示、且つ、印刷装置10に画像の印刷以外の動作を行わせる指示のうちのいずれか1つの指示が示す動作を印刷装置10に行わせる処理を行う。当該指示が示す動作は、例えば、磁気情報読書部31による磁気ストライプ101からの磁気情報の読み取り、画像読取部35による印刷媒体100からの画像の読み取り等であるが、これらに限られるわけではない。なお、制御部110は、磁気情報の読み取りを2回以上行う場合、例えば、磁気情報の読み取りを示す2つ以上の指示のそれぞれを、異なる指示として認識する。また、画像の読み取りを2回以上行う場合、例えば、画像の読み取りを示す2つ以上の指示のそれぞれを、異なる指示として認識する。ステップS190の処理が行われた後、制御部110は、ステップS170に遷移し、画像の印刷以外の動作を行うか否かを再び判定する。なお、ステップS170~ステップS190の処理が複数回繰り返される場合、その複数回のうちの一部の回において、ステップS180が省略される構成であってもよい。
【0057】
一方、制御部110は、画像の印刷以外の動作を行わないと判定した場合(ステップS170-NO)、第2搬送方向へ印刷媒体100を所定の距離搬送させる(ステップS200)。前述した通り、この時点でも、制御部110は、印刷媒体100の前端の位置を特定しているわけではない。この時点では、ステップS140において搬送が停止されてから印刷媒体100が動いていなければ、制御部110は、印刷媒体100を第2搬送方向へ所定の距離搬送させることにより、印刷媒体100の前端の位置を、所定の第1位置に一致させることができる。しかしながら、ステップS170~ステップS190の繰り返し処理によってスキューが発生すると、ステップS200の処理によって搬送された印刷媒体100の前端は、所定の第1位置と精度よく一致しない。この場合、印刷装置10は、制御部110が印刷媒体100の前端の位置又は印刷媒体100の後端の位置を特定しなければ、印刷しようとしている画像の印刷媒体100への印刷に失敗する場合がある。これは、当該場合、スキューによって印刷媒体100の向きが第1搬送方向と非平行になっており、印刷しようとしている画像の一部を印刷部20が、第1搬送方向へ搬送される印刷媒体100の外側に印刷してしまうことがあるである。このような問題を解決するため、制御部110は、ステップS210~ステップS240の処理を行う。
【0058】
ステップS200の処理が行われた後、制御部110は、搬送モーターM1を制御し、第1搬送機構部24と第2搬送機構部27と第3搬送機構部30を駆動させて、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送を開始させる。また、制御部110は、キャリッジ駆動モーターM2を制御し、キャリッジ19をキャリッジ軸CAに沿って移動させながら、ヘッド18による印刷媒体100への画像の印刷を開始させる(ステップS210)。
【0059】
次に、制御部110は、ステップS210の処理によって開始された印刷媒体100の搬送中に、状態変化検出部の個数が所定の閾値以上となるまで待機する(ステップS220)。状態変化検出部は、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した対象検出部のことである。すなわち、制御部110は、ステップS220において、2個以上の対象検出部のうち、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した1個以上の対象検出部を、状態変化検出部として特定する。制御部110は、このような状態変化検出部の特定を、ステップS210において開始した印刷媒体100の搬送が行われている間、繰り返し行う。なお、制御部110は、所定時間が経過しても状態変化検出部の個数が所定の閾値以上とならない場合、印刷媒体100の搬送において紙ジャム等の搬送不良が発生している虞があるため、例えば、印刷媒体100の搬送を停止して、印刷装置10の図示しない表示部でエラーを報知する。
【0060】
ここで、
図8は、スキューが発生している場合において第1搬送方向に搬送中の印刷媒体100と、印刷媒体検出部42との位置関係の一例を示す図である。なお、
図8では、印刷媒体100と印刷媒体検出部42との位置関係を明確に示すため、印刷媒体100は、輪郭を示す実線によって示されている。ステップS170~ステップS190の処理によってスキューが生じていた場合、第1搬送方向に搬送中の印刷媒体100の向きは、第1搬送方向と非平行になっている。このため、当該場合、第1搬送方向に搬送中の印刷媒体100が有する辺のうち第2搬送方向側の辺は、
図8に示すように、第1搬送方向と直交する方向と非平行になっている。当該辺が当該方向と非平行になっているため、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送により8個の対象検出部は時間の経過とともに次第に1個ずつ、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が変化していく。
図8に示した例では、8個の対象検出部は、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送により、印刷装置10の右側の検出部43から印刷装置10の左側の検出部43に向かって順に1個ずつ、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が変化していく。
【0061】
そこで、制御部110は、状態変化検出部として特定された対象検出部の個数が所定の閾値以上となった場合、印刷媒体100の後端の位置を特定する。具体的には、例えば、制御部110は、当該場合、印刷媒体検出部42に対応付けられた所定の第2位置と、印刷媒体100の後端の位置とが一致していると判定し、所定の第2位置を印刷媒体100の後端の位置として特定する。印刷媒体100の後端は、印刷媒体100が有する端部のうち第2搬送方向側の端部のことである。所定の第2位置は、例えば、第1搬送方向における位置のうち8個の検出部43のいずれかが位置する位置、第1搬送方向における位置のうち左右両端の遮断部材41を結ぶ直線と第1搬送方向とが交わる位置等であるが、印刷媒体検出部42に対応付けられた他の位置であってもよい。また、所定の第2位置は、印刷媒体検出部42に対応付けられた位置に代えて、印刷装置10が有する部材のうちの他の部材に対応付けられた位置であってもよい。
【0062】
なお、所定の閾値は、2個以上の個数、且つ、対象検出部の個数未満の個数であれば如何なる個数であってもよく、例えば、対象検出部の半分の個数より多い個数、又は、対象検出部の半分の個数である。この一例において、対象検出部の個数は、8個である。この場合、所定の閾値は、例えば、4個である。
【0063】
このように、印刷装置10は、ステップS220の処理により、第1搬送方向へ搬送中の印刷媒体100の後端の位置を特定することができる。
【0064】
制御部110は、状態変化検出部の個数が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS220-YES)、前述した通り、印刷媒体100の後端の位置を特定する。そして、制御部110は、特定した当該位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する(ステップS230)。具体的には、制御部110は、特定した当該位置からヘッド18までの第1搬送方向における距離を算出する。制御部110は、算出した当該距離に基づいて、ヘッド18により印刷を続けながら印刷媒体100を搬送させることが可能な残りの距離を算出する。そして、制御部110は、算出した当該距離を印刷可能範囲として設定し、当該距離搬送されるまで継続する。
【0065】
次に、制御部110は、印刷媒体100への画像の印刷を終了するか否かを判定する(ステップS240)。具体的には、制御部110は、印刷媒体100が、印刷可能範囲として設定した距離以上の距離を搬送されたと判定した場合、印刷媒体100への画像の印刷を終了すると判定する。一方、制御部110は、印刷媒体100が、印刷可能範囲として設定した距離以上の距離を搬送されていないと判定した場合、印刷媒体100への画像の印刷を終了しないと判定する。
【0066】
制御部110は、印刷媒体100への画像の印刷を終了しないと判定した場合(ステップS240-NO)、ステップS240に遷移し、印刷媒体100の搬送及び印刷媒体100への画像の印刷を継続しながら、印刷媒体100への画像の印刷を終了するか否かを再び判定する。
【0067】
一方、制御部110は、印刷媒体100への画像の印刷を終了すると判定した場合(ステップS240-YES)、印刷媒体100へのヘッド18による画像の印刷を終了するとともに、印刷媒体100を第2搬送方向へ搬送して印刷媒体100を排紙する(ステップS250)。
【0068】
次に、制御部110は、ステップS210において開始した印刷において印刷媒体100に印刷する予定であった画像の全てを印刷し終えたか否かを判定する(ステップS260)。例えば、制御部110は、ある画像を、ステップS210において印刷媒体100の1ページ目への印刷を開始していた場合、且つ、当該画像の一部を印刷媒体100の1ページ目に印刷しきれなかった場合、印刷媒体100の2ページ目に残りの画像を印刷することになる。このような場合、制御部110は、ステップS210において開始した印刷において印刷媒体100に印刷する予定であった画像の全てを印刷し終えていないと判定する。一方、例えば、制御部110は、ある画像を、ステップS210において印刷媒体100の1ページ目への印刷を開始していた場合、且つ、当該画像の全てを印刷媒体100の1ページ目に印刷しきれた場合、印刷媒体100の2ページ目に画像を印刷する必要がない。このような場合、制御部110は、ステップS210において開始した印刷において印刷媒体100に印刷する予定であった画像の全てを印刷し終えたと判定する。
【0069】
制御部110は、ステップS210において開始した印刷において印刷媒体100に印刷する予定であった画像の全てを印刷し終えたと判定した場合(ステップS260-YES)、処理を終了する。
【0070】
一方、制御部110は、ステップS210において開始した印刷において印刷媒体100に印刷する予定であった画像の全てを印刷し終えていないと判定した場合(ステップS260-NO)、手差口15に印刷媒体100が差し直されるまで待機する(ステップS270)。すなわち、制御部110は、ステップS270において、印刷されずに残っている画像を印刷するページがユーザーにより開かれた後の印刷媒体100が、ユーザーにより手差口15に差し直されるまで待機する。
【0071】
制御部110は、手差口15に印刷媒体100が差し直されたと判定した場合(ステップS270-YES)、差し直された後の印刷媒体100を第1搬送方向に搬送し、ステップS110~ステップS140の処理と同様の処理によりスキューを解消した後、ステップS200に遷移し、第2搬送方向へ印刷媒体100を、所定の距離再び搬送させる。
【0072】
なお、上記において説明した制御部110は、ステップS220~ステップS230の処理において、印刷媒体100の後端の位置を特定する構成に代えて、印刷媒体100の前端の位置を特定する構成であってもよい。この場合、制御部110は、ステップS200において、印刷媒体100の前端の位置が、印刷媒体検出部42よりも第2搬送方向側に位置するようになるまで、第2搬送方向へ印刷媒体100を搬送する。そして、制御部110は、ステップS210の処理を行った後、ステップS220において、状態変化検出部として特定された対象検出部の個数が所定の閾値以上となった場合、印刷媒体100の前端の位置を特定する。ただし、この場合、状態変化検出部として特定する対象検出部は、印刷媒体100を検出していない状態から、印刷媒体100を検出している状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した対象検出部のことである。そして、制御部110は、ステップS230において、特定した当該位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する。具体的には、制御部110は、特定した当該位置からヘッド18までの第1搬送方向における距離を算出する。制御部110は、算出した当該距離に基づいて、ヘッド18により印刷を続けながら印刷媒体100を搬送させることが可能な残りの距離を算出する。そして、制御部110は、算出した当該距離を印刷可能範囲として設定し、当該距離搬送されるまで継続する。
【0073】
以上のように、印刷装置10は、複数の検出部43のうち、遮断位置にある遮断部材41により印刷媒体100の搬送が遮断された場合において印刷媒体100を検出した2以上の検出部43を特定し、搬送部Hにより印刷媒体100を第1搬送方向又は第2搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部43のうち、印刷媒体100の検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した検出部43の個数に応じて、印刷媒体100の位置のうち印刷媒体100の端部の位置を特定し、特定した印刷媒体100の端部の位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100の搬送中にスキューが発生した場合であっても、印刷媒体100への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。
【0074】
また、印刷装置10は、2以上の対象検出部を特定した後、搬送部Hにより印刷媒体100を第1搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部43のうち、印刷媒体100を検出している状態から印刷媒体100を検出していない状態へと印刷媒体100の搬送中に検出状態が変化した検出部43の個数に応じて、印刷媒体100の位置のうち印刷媒体100の後端の位置を、前述の印刷媒体100の端部として特定し、特定した印刷媒体100の後端の位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100の搬送中にスキューが発生した場合であっても、特定した印刷媒体100の後端の位置に基づいて、印刷媒体100への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。
【0075】
また、印刷装置10は、2以上の対象検出部を特定した後、搬送部Hにより印刷媒体100を第1搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部43のうち、印刷媒体100を検出していない状態から印刷媒体100を検出している状態へと印刷媒体100の搬送中に検出状態が変化する検出部43の個数に応じて、印刷媒体100の位置のうち印刷媒体100の前端の位置を、前述の印刷媒体100の端部として特定し、特定した印刷媒体100の前端に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100の搬送中にスキューが発生した場合であっても、特定した印刷媒体100の前端の位置に基づいて、印刷媒体100への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。
【0076】
また、印刷装置10は、遮断部材41を遮断位置に移動させた後、印刷媒体100が遮断部材41に遮断されるまで搬送部Hにより印刷媒体100を第1搬送方向に搬送し、印刷媒体100が遮断部材41に遮断された後、遮断部材41を非遮断位置に移動させ、遮断部材41を非遮断位置に移動した後、搬送部Hにより第1搬送方向に印刷媒体100を搬送し、磁気情報読書部31により磁気情報を読み取ることと、画像読取部35により印刷媒体100から画像を読み取ることと、印刷部20により印刷媒体100への印刷を行うこととの少なくともいずれかを行う、構成が用いられてもよい。
【0077】
また、印刷装置10は、磁気情報読書部31による磁気情報の読み取りと、画像読取部35による画像の読み取りと、印刷部20による印刷との少なくともいずれかを行う前に、搬送部Hにより印刷媒体100を第2搬送方向に搬送する、構成が用いられてもよい。
【0078】
また、印刷装置10は、磁気情報読書部31による磁気情報の読み取りと、画像読取部35による画像の読み取りと、印刷部20による印刷との少なくともいずれかを行った後に、搬送部Hにより印刷媒体100を第2搬送方向に搬送する、構成が用いられてもよい。
【0079】
<印刷装置が印刷媒体への印刷を行う処理の変形例>
以下、
図9を参照し、印刷装置10が印刷媒体100への印刷を行う処理の変形例について説明する。
図9は、印刷装置10が印刷媒体100への印刷を行う処理の流れの他の例を示す図である。なお、
図9に示したステップS110~ステップS190の処理は、
図6に示したステップS110~ステップS190の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。また、
図9に示したステップS240~ステップS270の処理は、
図6に示したステップS240~ステップS270の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。また、以下では、一例として、
図9に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、印刷媒体100へ印刷する画像と、印刷装置10に当該画像の印刷を行わせる指示とを含むコマンドを印刷装置10がホストコンピューター200から受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、ユーザーにより印刷媒体100が印刷装置10の手差口15に差し込まれている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、遮断部材41が非遮断位置に位置している場合について説明する。
【0080】
制御部110は、ステップS170において画像の印刷以外の動作を行わないと判定した場合、搬送モーターM1を制御し、第2搬送方向への印刷媒体100の搬送を開始させる(ステップS310)。
【0081】
次に、制御部110は、ステップS310の処理によって開始された印刷媒体100の搬送中に、状態変化検出部の個数が所定の閾値以上となるまで待機する(ステップS320)。ただし、ステップS320では、状態変化検出部として特定する対象検出部は、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した対象検出部のことである。すなわち、制御部110は、ステップS320において、2個以上の対象検出部のうち、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した1個以上の対象検出部を、状態変化検出部として特定する。制御部110は、このような状態変化検出部の特定を、ステップS310において開始した印刷媒体100の搬送が行われている間、繰り返し行う。なお、制御部110は、所定時間が経過しても状態変化検出部の個数が所定の閾値以上とならない場合、印刷媒体100の搬送において紙ジャム等の搬送不良が発生している虞があるため、例えば、印刷媒体100の搬送を停止して、印刷装置10の図示しない表示部でエラーを報知する。
【0082】
ここで、
図10は、スキューが生じている場合において第2搬送方向に搬送中の印刷媒体100と、印刷媒体検出部42との位置関係の一例を示す図である。なお、
図10では、印刷媒体100と印刷媒体検出部42との位置関係を明確に示すため、印刷媒体100は、輪郭を示す実線によって示されている。ステップS170~ステップS190の処理によってスキューが生じていた場合、第2搬送方向に搬送中の印刷媒体100の向きは、第2搬送方向と非平行になっている。このため、当該場合、第2搬送方向に搬送中の印刷媒体100が有する辺のうち第1搬送方向側の辺は、
図8に示すように、第2搬送方向と直交する方向と非平行になっている。当該辺が当該方向と非平行になっているため、第2搬送方向への印刷媒体100の搬送により8個の対象検出部は時間の経過とともに次第に1個ずつ、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が変化していく。
図8に示した例では、8個の対象検出部は、第2搬送方向への印刷媒体100の搬送により、印刷装置10の左側の検出部43から印刷装置10の右側の検出部43に向かって順に1個ずつ、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が変化していく。
【0083】
そこで、制御部110は、状態変化検出部として特定された対象検出部の個数が所定の閾値以上となった場合、印刷媒体100の前端の位置を特定する。具体的には、例えば、制御部110は、当該場合、印刷媒体検出部42に対応付けられた所定の第2位置と、印刷媒体100の前端の位置とが一致していると判定し、所定の第2位置を印刷媒体100の前端の位置として特定する。
【0084】
このように、印刷装置10は、ステップS320の処理により、第2搬送方向へ搬送中の印刷媒体100の前端の位置を特定することができる。
【0085】
制御部110は、状態変化検出部の個数が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS320-YES)、搬送モーターM1を制御し、第2搬送方向への印刷媒体100の搬送を停止させる(ステップS330)。
【0086】
次に、制御部110は、前述した通り、印刷媒体100の前端の位置を特定する。そして、制御部110は、特定した当該位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する(ステップS340)。具体的には、制御部110は、特定した当該位置からヘッド18までの第1搬送方向における距離を算出する。制御部110は、算出した当該距離に基づいて、ヘッド18により印刷を続けながら印刷媒体100を搬送させることが可能な残りの距離を算出する。そして、制御部110は、算出した当該距離を印刷可能範囲として設定する。
【0087】
次に、制御部110は、搬送モーターM1を制御し、第1搬送機構部24と第2搬送機構部27と第3搬送機構部30を駆動させて、第1搬送方向への印刷媒体100の搬送を開始させる。また、制御部110は、キャリッジ駆動モーターM2を制御し、キャリッジ19をキャリッジ軸CAに沿って移動させながら、ヘッド18による印刷媒体100への画像の印刷を開始させる(ステップS350)。
【0088】
このように、印刷装置10は、第2搬送方向への印刷媒体100の搬送中においても、印刷媒体100の前端の位置を特定することができる。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100の搬送中にスキューが発生した場合であっても、当該位置に基づいて、印刷媒体100への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。
【0089】
なお、上記において説明した制御部110は、ステップS310~ステップS340の処理において、印刷媒体100の前端の位置を特定する構成に代えて、印刷媒体100の後端の位置を特定する構成であってもよい。この場合、制御部110は、ステップS320において、状態変化検出部として特定された対象検出部の個数が所定の閾値以上となった場合、印刷媒体100の後端の位置を特定する。ただし、この場合、状態変化検出部として特定する対象検出部は、印刷媒体100を検出している状態から、印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した対象検出部のことである。そして、制御部110は、ステップS340において、特定した当該位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する。具体的には、制御部110は、特定した当該位置からヘッド18までの第1搬送方向における距離を算出する。制御部110は、算出した当該距離に基づいて、ヘッド18により印刷を続けながら印刷媒体100を搬送させることが可能な残りの距離を算出する。そして、制御部110は、算出した当該距離を印刷可能範囲として設定し、当該距離搬送されるまで継続する。
【0090】
以上のように、印刷装置10は、搬送部Hにより印刷媒体100を第2搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部43のうち、印刷媒体100を検出している状態から印刷媒体100を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した検出部43の個数に応じて、印刷媒体100の位置のうち印刷媒体100の前端の位置を特定し、特定した印刷媒体100の前端の位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100の搬送中にスキューが発生した場合であっても、印刷媒体100の前端の位置に基づいて、印刷媒体100への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。
【0091】
また、印刷装置10は、搬送部Hにより印刷媒体100を第2搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部43のうち、印刷媒体100を検出していない状態から印刷媒体100を検出している状態へと検出状態が印刷媒体100の搬送中に変化した検出部43の個数に応じて、印刷媒体100の位置のうち印刷媒体100の後端の位置を特定し、特定した印刷媒体100の後端の位置に基づいて、印刷媒体100の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。これにより、印刷装置10は、印刷媒体100の搬送中にスキューが発生した場合であっても、印刷媒体100の後端の位置に基づいて、印刷媒体100への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。
【0092】
なお、上記において説明した印刷媒体100の前端の位置又は印刷媒体100の後端の位置を特定する処理は、印刷装置10への適用に代えて、例えば、スキャナー等のシートを搬送する動作を行う他の電子機器に適用されてもよい。
【0093】
以上説明したように、実施形態に係る印刷装置は、印刷媒体が搬送される搬送路の上流から下流に向かって印刷媒体が搬送される第1搬送方向への印刷媒体の搬送と、搬送路の下流から上流に向かって印刷媒体が搬送される第2搬送方向への印刷媒体の搬送とを行う搬送部と、搬送路に沿った印刷媒体の搬送を遮断する遮断位置と、搬送路に沿った印刷媒体の搬送を遮断しない非遮断位置とのそれぞれに移動可能な遮断部材と、搬送路と交わる方向に互いに所定間隔離れて設けられており、搬送路に沿って搬送される印刷媒体を検出可能な複数の検出部と、制御部と、を備え、制御部は、複数の検出部のうち、遮断位置にある遮断部材により印刷媒体の搬送が遮断された場合において印刷媒体を検出した2以上の検出部を特定し、搬送部により印刷媒体を第1搬送方向又は第2搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部のうち、印刷媒体の検出状態が印刷媒体の搬送中に変化した検出部の個数に応じて、印刷媒体の位置のうち印刷媒体の端部の位置を特定し、特定した印刷媒体の端部の位置に基づいて、印刷媒体の印刷可能範囲を設定する。これにより、印刷装置は、搬送媒体の搬送中にスキューが発生した場合であっても、印刷媒体への画像の印刷が失敗してしまうことを抑制することができる。ここで、上記において説明した例では、印刷装置10は、当該印刷装置の一例である。また、上記において説明した例では、印刷媒体100は、当該印刷媒体の一例である。また、上記において説明した例では、搬送部Hは、当該搬送部の一例である。また、上記において説明した例では、遮断部材41は、当該遮断部材の一例である。また、上記において説明した例では、検出部43は、当該検出部の一例である。また、上記において説明した例では、制御部110は、当該制御部の一例である。また、上記において説明した例では、2個以上の対象検出部は、遮断位置にある遮断部材により印刷媒体の搬送が遮断された場合において印刷媒体を検出した2以上の検出部の一例である。また、上記において説明した例では、状態変化検出部は、特定した2以上の検出部のうち、印刷媒体の検出状態が変化する検出部の一例である。また、上記において説明した例では、印刷媒体100の前端、印刷媒体100の後端のそれぞれは、印刷媒体の端部の一例である。
【0094】
また、印刷装置では、制御部は、2以上の検出部を特定した後、搬送部により印刷媒体を第1搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部のうち、印刷媒体を検出している状態から印刷媒体を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体の搬送中に変化した検出部の個数に応じて、印刷媒体の位置のうち印刷媒体の後端の位置を印刷媒体の端部として特定し、特定した印刷媒体の後端の位置に基づいて、印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。
【0095】
また、印刷装置では、制御部は、2以上の検出部を特定した後、搬送部により印刷媒体を第1搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部のうち、印刷媒体を検出していない状態から印刷媒体を検出している状態へと検出状態が印刷媒体の搬送中に変化した検出部の個数に応じて、印刷媒体の位置のうち印刷媒体の前端の位置を印刷媒体の端部として特定し、特定した印刷媒体の前端に基づいて、印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。
【0096】
また、印刷装置では、制御部は、2以上の検出部を特定した後、搬送部により印刷媒体を第2搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部のうち、印刷媒体を検出していない状態から印刷媒体を検出している状態へと検出状態が印刷媒体の搬送中に変化した検出部の個数に応じて、印刷媒体の位置のうち印刷媒体の後端の位置を印刷媒体の端部として特定し、特定した印刷媒体の後端の位置に基づいて、印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。
【0097】
また、印刷装置では、制御部は、2以上の検出部を特定した後、搬送部により印刷媒体を第2搬送方向に搬送し、特定した2以上の検出部のうち、印刷媒体を検出している状態から印刷媒体を検出していない状態へと検出状態が印刷媒体の搬送中に変化した検出部の個数に応じて、印刷媒体の位置のうち印刷媒体の前端の位置を印刷媒体の端部として特定し、特定した印刷媒体の前端の位置に基づいて、印刷媒体の印刷可能範囲を設定する、構成が用いられてもよい。
【0098】
また、印刷装置は、印刷媒体に含まれる磁気情報を読み取る磁気読取部と、印刷媒体に含まれる画像を読み取る画像読取部と、印刷媒体への印刷を行う印刷部と、を備え、磁気読取部、複数の検出部、遮断部材、印刷部、画像読取部は、磁気読取部、複数の検出部、遮断部材、印刷部、画像読取部の順に第1搬送方向に向かって並んで搬送路に設けられており、制御部は、遮断部材を遮断位置に移動させた後、印刷媒体が遮断部材に遮断されるまで搬送部により印刷媒体を第1搬送方向に搬送し、印刷媒体が遮断部材に遮断された後、遮断部材を非遮断位置に移動させ、遮断部材を非遮断位置に移動した後、搬送部により第1搬送方向に印刷媒体を搬送し、磁気読取部により磁気情報を読み取ることと、画像読取部により印刷媒体から画像を読み取ることと、印刷部により印刷媒体への印刷を行うこととのうちの少なくともいずれかを行う、構成が用いられてもよい。ここで、上記において説明した例では、磁気情報読書部31は、当該磁気読取部の一例である。また、上記において説明した例では、画像読取部35は、当該画像読取部の一例である。また、上記において説明した例では、印刷部20は、当該印刷部の一例である。
【0099】
また、印刷装置では、制御部は、磁気読取部による磁気情報の読み取りと、画像読取部による画像の読み取りと、印刷部による印刷との少なくともいずれかを行う前に、搬送部により印刷媒体を第2搬送方向に搬送する、構成が用いられてもよい。
【0100】
また、印刷装置では、制御部は、磁気読取部による磁気情報の読み取りと、画像読取部による画像の読み取りと、印刷部による印刷との少なくともいずれかを行った後に、搬送部により印刷媒体を第2搬送方向に搬送する、構成が用いられてもよい。
【0101】
また、印刷装置では、制御部は、前記検出状態が前記印刷媒体の搬送中に変化した前記検出部の個数が、複数の検出部の半分の個数より多い個数、又は、複数の検出部の半分の個数となった場合、印刷媒体100の端部の位置を特定する、構成が用いられてもよい。
【0102】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0103】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、印刷装置10、ホストコンピューター200等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0104】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
10…印刷装置、11…印刷装置本体、12…上部カバー、13…上部ハウジング、14…下部ハウジング、15…手差口、16…右サイドフレーム、17…左サイドフレーム、18…ヘッド、19…キャリッジ、20…印刷部、21…プラテン、22…第1搬送ローラー、23…第2搬送ローラー、24…第1搬送機構部、25…第3搬送ローラー、26…第4搬送ローラー、27…第2搬送機構部、28…第5搬送ローラー、29…第6搬送ローラー、30…第3搬送機構部、31…磁気情報読書部、32…前方印刷媒体ガイド、33…後方印刷媒体ガイド、35…画像読取部、41…遮断部材、42…印刷媒体検出部、43…検出部、100…印刷媒体、101…磁気ストライプ、110…制御部、120…通信部、200…ホストコンピューター、CA…キャリッジ軸、F…押え部、H…搬送部、M1…搬送モーター、M2…キャリッジ駆動モーター、M3…突当モーター、TC…三次元座標系