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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20231219BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20231219BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20231219BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20231219BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231219BHJP
   H02G 3/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/18 D
H01B7/18 G
H01B7/40 307Z
H05K9/00 L
H02G3/04 081
H02G3/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020029719
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021136094
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 将志
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168421(JP,A)
【文献】特開2014-130886(JP,A)
【文献】特開2017-005921(JP,A)
【文献】実開平03-013797(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H01B 7/40
H05K 9/00
H02G 3/04
H02G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の外周に設けられた合成樹脂製の位置決め部材と、
前記電線が貫通する貫通孔を有するとともに、前記位置決め部材に固定された環状の電磁波吸収部材と、
前記位置決め部材を前記電線に固定する固定部材と、を有し、
前記位置決め部材は、前記貫通孔に挿入された挿入部を含む本体部と、前記本体部から前記貫通孔の外部に突出された固定部と、を有し、
前記固定部材は、前記電線と前記固定部とを締め付けるように形成されており、
前記位置決め部材は、前記挿入部と前記固定部との間に設けられ、前記本体部の外周面から前記電線の長さ方向と交差する方向に突出する第1突出部を有し、
前記第1突出部は、前記電磁波吸収部材の第1側面と対向しており、
前記第1突出部は、前記挿入部側から前記固定部側に向かうに連れて、前記本体部の外周面からの突出量が小さくなるように形成されているワイヤハーネス。
【請求項2】
電線と、
前記電線の外周に設けられた合成樹脂製の位置決め部材と、
前記電線が貫通する貫通孔を有するとともに、前記位置決め部材に固定された環状の電磁波吸収部材と、
前記位置決め部材を前記電線に固定する固定部材と、を有し、
前記位置決め部材は、前記貫通孔に挿入された挿入部を含む本体部と、前記本体部から前記貫通孔の外部に突出された固定部と、を有し、
前記固定部材は、前記電線と前記固定部とを締め付けるように形成されており、
前記本体部は、前記電線が貫通する筒状をなしており、
前記本体部は、前記本体部の軸方向に沿って延びるスリットを有し、
前記位置決め部材は、前記本体部の軸方向の端部のうち前記固定部とは反対側の端部における外周面から前記軸方向と交差する方向に突出する第2突出部を有し、
前記第2突出部は、前記電磁波吸収部材の第2側面と対向しているワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第2突出部は、前記電磁波吸収部材から離れるに連れて、前記本体部の外周面からの突出量が小さくなるように形成されている請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第2突出部は、前記電磁波吸収部材の第2側面と接触しており、
前記第2側面と接触された部分における前記第2突出部の外周面は、前記電磁波吸収部材の外周面と面一になるように形成されている請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記電線と前記位置決め部材と前記電磁波吸収部材との外周を包囲する電磁シールド部材と、
前記電磁シールド部材の外周面を被覆する規制部材と、を更に有し、
前記規制部材は、前記電磁シールド部材を前記電磁シールド部材の外側から前記電線に向かって締め付けるように形成されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記規制部材は、前記電線の長さ方向と交差する方向において、前記固定部と重なるように設けられている請求項5に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記電線を収容する第1外装部材と、
前記電線を収容し、前記電線の長さ方向において前記第1外装部材と離れて設けられた第2外装部材と、
前記電磁波吸収部材及び前記位置決め部材の外周を覆い、前記第1外装部材の外周と前記第2外装部材の外周との間に架け渡すように固定された保護部材と、を更に有し、
前記電磁波吸収部材は、前記電線の長さ方向において前記第1外装部材と前記第2外装部材との間に設けられている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記第1外装部材は、金属製のパイプであり、
前記第2外装部材は、合成樹脂製の外装部材であり、
前記固定部は、前記挿入部と前記第2外装部材との間に設けられている請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記保護部材は、前記保護部材の内部に収容された部材を防水する防水部材であり、
前記固定部材は、前記固定部と前記電線とに巻き回されたテープ部材である請求項又は請求項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスとしては、複数の電気機器間を電気的に接続する電線と、その電線から放射される電磁波(電磁ノイズ)を吸収する電磁波吸収部材とを備えたものが知られている。この種のワイヤハーネスでは、フェライトコア等からなる電磁波吸収部材の貫通孔に電線を貫通させることで、電線の外周に電磁波吸収部材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-130886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ワイヤハーネスでは、低減したい電磁波が大きくなるほど、電磁波吸収部材が大型化する。このように大型化した電磁波吸収部材に電線を貫通させると、例えば車両走行等に伴う振動に起因して電磁波吸収部材が振動し、その電磁波吸収部材の振動によって電線が揺さぶられ、電線が損傷するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、電線の損傷を低減できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の外周に設けられた合成樹脂製の位置決め部材と、前記電線が貫通する貫通孔を有するとともに、前記位置決め部材に固定された環状の電磁波吸収部材と、前記位置決め部材を前記電線に固定する固定部材と、を有し、前記位置決め部材は、前記貫通孔に挿入された挿入部を含む本体部と、前記本体部から前記貫通孔の外部に突出された固定部と、を有し、前記固定部材は、前記電線と前記固定部とを締め付けるように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、電線の損傷を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図3図3は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略横断面図(図2における3-3線断面図)である。
図4図4は、一実施形態の位置決め部材を示す概略斜視図である。
図5図5は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図6図6は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図7図7は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図8図8は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図9図9は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図10図10は、変更例のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
図11図11は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図12図12は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図13図13は、変更例のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の外周に設けられた合成樹脂製の位置決め部材と、前記電線が貫通する貫通孔を有するとともに、前記位置決め部材に固定された環状の電磁波吸収部材と、前記位置決め部材を前記電線に固定する固定部材と、を有し、前記位置決め部材は、前記貫通孔に挿入された挿入部を含む本体部と、前記本体部から前記貫通孔の外部に突出された固定部と、を有し、前記固定部材は、前記電線と前記固定部とを締め付けるように形成されている。
【0010】
この構成によれば、電磁波吸収部材の貫通孔の内側に位置決め部材の挿入部が挿入される。これにより、貫通孔の内周面と電線との間に合成樹脂製の位置決め部材を介在させることができる。このため、貫通孔の内周面と電線の外周面とが直接接触することを抑制できる。この結果、車両走行等に起因して電磁波吸収部材が振動した場合であっても、貫通孔の内周面のエッジとの接触に起因して電線が損傷することを抑制できる。
【0011】
また、位置決め部材が固定部材によって電線に固定され、その位置決め部材に電磁波吸収部材が固定される。このため、電線に対して位置決め部材が位置ずれすることを抑制できるとともに、電線に対して電磁波吸収部材が位置ずれすることを抑制できる。
【0012】
ここで、本明細書における「環」は、外縁形状が円形の円環、外縁形状が楕円形や長円形の環、外縁形状が多角形の多角形環、外縁形状が角丸多角形の環を含み、外縁形状が直線又は曲線で結ばれる任意の閉じた形状からなるものを言う。「環」は、平面視において貫通孔を有する形状であり、外縁形状と貫通孔の内周形状とが同じ形状であるものや、外縁形状と貫通孔の内周形状とが異なる形状であるものを含む。「環」は、貫通孔の中心を通る中心軸が延びる中心軸方向に沿って延びる所定の長さを有するものを含み、その長さの大小は問わない。また、本明細書における「環状」は、全体として環と見做せればよく、C字状のように一部に切り欠き等を有するものを含む。
【0013】
[2]前記位置決め部材は、前記挿入部と前記固定部との間に設けられ、前記本体部の外周面から前記電線の長さ方向と交差する方向に突出する第1突出部を有し、前記第1突出部は、前記電磁波吸収部材の第1側面と対向していることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1突出部に電磁波吸収部材の第1側面を接触させることにより、位置決め部材に対する電磁波吸収部材の位置決めを容易に行うことができる。このため、ワイヤハーネスの組立作業性を向上させることができる。また、第1突出部に電磁波吸収部材の第1側面を接触させることにより、電線の長さ方向において位置決め部材に対する電磁波吸収部材の相対移動を規制することができる。これにより、位置決め部材に対する電磁波吸収部材の位置ずれを好適に抑制できる。
【0015】
ここで、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0016】
[3]前記第1突出部は、前記挿入部側から前記固定部側に向かうに連れて、前記本体部の外周面からの突出量が小さくなるように形成されていることが好ましい。
この構成によれば、第1突出部の外周面がテーパ状に形成される。このため、例えば損傷の発生しやすい編組部材等が第1突出部の外周を包囲するように設けられた場合であっても、第1突出部の外周面との接触に起因して編組部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0017】
[4]前記本体部は、前記電線が貫通する筒状をなしており、前記本体部は、前記本体部の軸方向に沿って延びるスリットを有し、前記位置決め部材は、前記本体部の軸方向の端部のうち前記固定部とは反対側の端部における外周面から前記軸方向と交差する方向に突出する第2突出部を有し、前記第2突出部は、前記電磁波吸収部材の第2側面と対向していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、挿入部が筒状に形成されるため、貫通孔の内周面と電線の外周面とが直接接触することをより好適に抑制できる。これにより、貫通孔の内周面のエッジとの接触に起因して電線が損傷することを好適に抑制できる。
【0019】
また、第2突出部に電磁波吸収部材の第2側面を接触させることにより、位置決め部材に対する電磁波吸収部材の位置決めを容易に行うことができる。このため、ワイヤハーネスの組立作業性を向上させることができる。さらに、第2突出部に電磁波吸収部材の第2側面を接触させることにより、電線の長さ方向において位置決め部材に対する電磁波吸収部材の相対移動を規制することができる。これにより、位置決め部材に対する電磁波吸収部材の位置ずれを好適に抑制できる。
【0020】
[5]前記第2突出部は、前記電磁波吸収部材から離れるに連れて、前記本体部の外周面からの突出量が小さくなるように形成されていることが好ましい。
この構成によれば、第2突出部の外周面がテーパ状に形成される。このため、例えば損傷の発生しやすい編組部材等が第2突出部の外周を包囲するように設けられた場合であっても、第2突出部の外周面との接触に起因して編組部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0021】
[6]前記第2突出部は、前記電磁波吸収部材の第2側面と接触しており、前記第2側面と接触された部分における前記第2突出部の外周面は、前記電磁波吸収部材の外周面と面一になるように形成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、第2突出部の外周面が電磁波吸収部材の外周面と面一に形成されるとともに、その面一に形成された部分から電磁波吸収部材から離れるに連れて突出量が小さくなるようにテーパ状に形成される。例えば電磁波吸収部材の角部がピン角に形成されている場合であっても、電磁波吸収部材の外周面と連続して形成された第2突出部の外周面がテーパ状に形成されることにより、電磁波吸収部材の角部を疑似的にテーパ状に形成することができる。これにより、例えば損傷の発生しやすい編組部材等が電磁波吸収部材及び第2突出部の外周を包囲するように設けられた場合であっても、それら電磁波吸収部材及び第2突出部の外周面との接触に起因して編組部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0023】
[7]前記電線と前記位置決め部材と前記電磁波吸収部材との外周を包囲する電磁シールド部材と、前記電磁シールド部材の外周面を被覆する規制部材と、を更に有し、前記規制部材は、前記電磁シールド部材を前記電磁シールド部材の外側から前記電線に向かって締め付けるように形成されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、電磁波吸収部材と、その電磁波吸収部材の外周を包囲する電磁シールド部材とによって、電線から放射される電磁波を低減することができる。また、規制部材によって電磁シールド部材が電線に向かって締め付けられるため、電磁シールド部材が電線の径方向外側に広がることを抑制できる。
【0025】
[8]前記規制部材は、前記電線の長さ方向と交差する方向において、前記固定部と重なるように設けられていることが好ましい。
この構成によれば、固定部の外周を包囲するように規制部材が設けられる。このため、規制部材によって電磁シールド部材が電線及び固定部に向かって締め付けられる。このとき、電線の外周面のみに電磁シールド部材が締め付けられる場合に比べて、電磁シールド部材が締め付けられる対象物の厚みが固定部の厚みの分だけ厚くなるため、電磁波吸収部材の外周面と規制部材の外周面との段差を小さくできる。これにより、電磁波吸収部材の外周面を包囲する部分と規制部材により被覆された部分との間における電磁シールド部材にかかる張力が大きくなることを抑制でき、その部分における電磁シールド部材の伸縮性が低下することを抑制できる。この結果、電磁波吸収部材の外周面との接触に起因して電磁シールド部材が摩耗することを抑制でき、電磁シールド部材が損傷することを抑制できる。
【0026】
[9]前記電線を収容する第1外装部材と、前記電線を収容し、前記電線の長さ方向において前記第1外装部材と離れて設けられた第2外装部材と、前記電磁波吸収部材及び前記位置決め部材の外周を覆い、前記第1外装部材の外周と前記第2外装部材の外周との間に架け渡すように固定された保護部材と、を更に有し、前記電磁波吸収部材は、前記電線の長さ方向において前記第1外装部材と前記第2外装部材との間に設けられていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、電磁波吸収部材の外周が保護部材によって覆われるため、電磁波吸収部材とその周辺部品との間に保護部材を介在させることができる。これにより、電磁波吸収部材と周辺部品とが直接接触することを抑制できるため、電磁波吸収部材と周辺部品との接触に起因して電磁波吸収部材が損傷することを抑制できる。
【0028】
[10]前記第1外装部材は、金属製のパイプであり、前記第2外装部材は、合成樹脂製の外装部材であり、前記固定部は、前記挿入部と前記第2外装部材との間に設けられていることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、挿入部から第2外装部材に向かって固定部が延びるように形成される。換言すると、挿入部から金属製のパイプである第1外装部材から遠ざかる方向に向かって固定部が延びるように形成される。このため、例えば金属製のパイプの端部にホルダが取り付けられる場合であっても、そのホルダと位置決め部材の固定部とが干渉することを好適に抑制できる。
【0030】
[11]前記保護部材は、前記保護部材の内部に収容された部材を防水する防水部材であり、前記固定部材は、前記固定部と前記電線とに巻き回されたテープ部材であることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、テープ部材によって、位置決め部材を電線に固定することができる。また、テープ部材が防水部材の内部に設けられるため、テープ部材に雨水等の液体が接触することを抑制できる。これにより、液体の接触に起因してテープ部材の粘着力が低下することを好適に抑制できるため、テープ部材による位置決め部材及び電線の固定を好適に維持することができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの床下等を通るように配索される。例えば、ワイヤハーネス10の長さ方向の中間部が車両Vの床下等の車室外を通るように配策される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0034】
ワイヤハーネス10は、1本又は複数本(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1と、複数の電線20を一括して包囲する外装部材30と、電磁波吸収部材80とを有している。
【0035】
(電線20の構成)
各電線20の一端部はコネクタC1を介してインバータ11と接続され、各電線20の他端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ12と接続されている。各電線20は、例えば、車両Vの前後方向に延びるように長尺状に形成されている。各電線20は、例えば、ワイヤハーネス10の配策経路に応じて、二次元状又は三次元状に曲げられるように形成されている。各電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線20は、ノンシールド電線である。
【0036】
図2に示すように、電線20は、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する被覆電線である。
(芯線21の構成)
芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。芯線21としては、例えば、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。柱状導体としては、例えば、単芯線やバスバなどを挙げることができる。本実施形態の芯線21は、撚り線である。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0037】
芯線21の長さ方向と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状(つまり、横断面形状)は、任意の形状にすることができる。芯線21の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成されている。本実施形態の芯線21の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0038】
(絶縁被覆22の構成)
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂を用いることができる。絶縁被覆22の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0039】
(外装部材30の構成)
外装部材30は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材30の内部空間には、複数の電線20が収容されている。外装部材30は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材30は、例えば、飛翔物や水滴から電線20を保護する。外装部材30としては、例えば、金属製又は樹脂製のパイプや、樹脂製のプロテクタ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。
【0040】
外装部材30は、例えば、金属製のパイプ40と、コルゲートチューブ50と、保護部材60とを有している。
(パイプ40の構成)
パイプ40は、例えば、全体として複数の電線20の外周を一括して包囲する筒状をなしている。パイプ40は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。パイプ40は、例えば、電線20の長さ方向(軸方向)の一部を包囲するように設けられている。パイプ40の外周面は、例えば、平滑面に形成されている。本実施形態のパイプ40は、円筒状に形成されている。パイプ40の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。パイプ40は、例えば、複数の電線20を一括して電磁シールドする機能と、飛翔物や水滴から複数の電線20を保護する機能とを有している。
【0041】
パイプ40の端部には、例えば、一対の取付孔41が形成されている。各取付孔41は、例えば、パイプ40をそのパイプ40の径方向に貫通するように形成されている。各取付孔41は、例えば、パイプ40の長さ方向(軸方向)の端面42から離れた位置に設けられている。
【0042】
パイプ40の端部には、例えば、合成樹脂製のホルダ70が取り付けられている。ホルダ70は、例えば、複数の電線20を一括して包囲可能に形成されている。ホルダ70は、例えば、パイプ40の内部に挿入されてパイプ40の端部に取り付けられている。ホルダ70は、例えば、金属製のパイプ40の内側に配置されることで、パイプ40の開口端のエッジから電線20の絶縁被覆22を保護する機能を有している。ホルダ70の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0043】
(ホルダ70の構成)
ホルダ70は、例えば、筒状に形成された本体部71と、本体部71の外周面に形成された一対の突起部72と、本体部71の外周面に形成された突出部73とを有している。ホルダ70は、例えば、本体部71と突起部72と突出部73とが合成樹脂材によって一体に形成された単一部品である。
【0044】
本体部71は、パイプ40の内側に嵌合される。本体部71は、パイプ40の内周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の本体部71は、全体として円筒状に形成されている。本体部71の外径は、例えば、パイプ40の内径よりも一回り小さく形成されている。図示は省略するが、本体部71には、本体部71の軸方向全長にわたって延びるスリットが形成されている。
【0045】
各突起部72は、例えば、本体部71の軸方向の一端部における外周面から本体部71の径方向外方に突出するように形成されている。各突起部72は、例えば、パイプ40の取付孔41に係止される。この取付孔41に対する突起部72の係止により、ホルダ70がパイプ40の端部に固定されている。
【0046】
突出部73は、例えば、本体部71の軸方向の端部のうち突起部72とは反対側の端部における外周面から本体部71の径方向外方に突出するように形成されている。突出部73は、例えば、本体部71の周方向に沿って延びるように形成されている。例えば、突出部73は、本体部71の周方向の全長にわたって形成されている。突出部73は、例えば、パイプ40の軸方向の端面42に対向している。突出部73は、例えば、パイプ40の軸方向の端面42に接触している。
【0047】
(コルゲートチューブ50の構成)
コルゲートチューブ50は、例えば、電線20の長さ方向において、パイプ40と離れて設けられている。コルゲートチューブ50は、例えば、パイプ40とコネクタC1との間に設けられている。コルゲートチューブ50の端部は、例えば、コネクタC1に接続されている。コルゲートチューブ50は、例えば、全体として複数の電線20の外周を一括して包囲する筒状をなしている。コルゲートチューブ50は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。コルゲートチューブ50は、例えば、電線20の長さ方向の一部を包囲するように設けられている。コルゲートチューブ50は、その長さ方向に沿って環状凸部51と環状凹部52とが交互に連設された蛇腹構造を有している。コルゲートチューブ50は、芯線21よりも可撓性に優れている。本実施形態のコルゲートチューブ50は、円筒状に形成されている。なお、コルゲートチューブ50の材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0048】
(保護部材60の構成)
保護部材60は、例えば、パイプ40の外周とコルゲートチューブ50の外周との間に架け渡されるように設けられている。保護部材60は、例えば、電線20の長さ方向の両端が開口する筒状をなしている。保護部材60の材料としては、例えば、比較的硬度の高い弾性材料を用いることができる。弾性材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴムやエラストマを用いることができる。
【0049】
(ワイヤハーネス10の構成)
ワイヤハーネス10は、例えば、電線20の外周に設けられた位置決め部材90と、位置決め部材90に固定された電磁波吸収部材80と、電線20に位置決め部材90を固定する固定部材100とを有している。ワイヤハーネス10は、電線20を包囲する編組部材110と、編組部材110の外周面を被覆する規制部材120,121とを有している。
【0050】
(電磁波吸収部材80の構成)
電磁波吸収部材80は、例えば、パイプ40とコルゲートチューブ50との間に位置する電線20の外周に設けられている。例えば、電線20の長さ方向において、電磁波吸収部材80の一方側にはパイプ40が設けられ、電磁波吸収部材80の他方側にはコルゲートチューブ50が設けられている。電磁波吸収部材80は、例えば、電線20の長さ方向においてパイプ40と離れて設けられている。電磁波吸収部材80は、例えば、電線20の長さ方向においてコルゲートチューブ50と離れて設けられている。電磁波吸収部材80は、例えば、パイプ40及びコルゲートチューブ50から露出されている。電磁波吸収部材80は、例えば、複数の電線20の外周を一括して包囲するように設けられている。電磁波吸収部材80は、例えば、複数の電線20から放射される電磁波(電磁ノイズ)の一部を吸収する。
【0051】
電磁波吸収部材80は、例えば、複数の電線20が一括して貫通する貫通孔81を有している。電磁波吸収部材80は、例えば、貫通孔81を有することにより環状をなしている。電磁波吸収部材80は、例えば、電線20の長さ方向から見た平面視において貫通孔81を有し、その貫通孔81の中心を通る中心軸が延びる中心軸方向に沿って延びる所定の長さを有する環状に形成されている。本実施形態では、電磁波吸収部材80の中心軸方向が、電線20の長さ方向と平行に延びる方向に設定されている。なお、以下の説明では、単に「中心軸方向」と記載した場合には、電磁波吸収部材80の中心軸方向を意味するものとする。
【0052】
貫通孔81は、例えば、電磁波吸収部材80を電線20の長さ方向に貫通するように形成されている。複数の電線20は、例えば、貫通孔81を貫通するように設けられている。貫通孔81の内周面は、電線20の外周面と対向している。
【0053】
本実施形態の電磁波吸収部材80は、環状をなす磁性体コア82のみから構成されている。本実施形態の磁性体コア82は、円環状に形成されている。磁性体コア82は、例えば、電線20の周方向全周にわたって電線20に対して対向するように配置されることで、電線20から放射される電磁波を低減する機能を有している。磁性体コア82は、例えば、電線20から放射される電磁波を吸収し、この電磁波のエネルギーを振動等の力学的エネルギーや熱エネルギーに変換する。これにより、電線20から放射される電磁波が周辺の機器等に及ぼす悪影響が低減される。
【0054】
磁性体コア82は、例えば、軟磁性材料を含む成形体である。軟磁性材料としては、例えば、鉄(Fe)、鉄合金やフェライトなどを挙げることができる。鉄合金としては、例えば、Fe-ケイ素(Si)合金やFe-ニッケル(Ni)合金などを挙げることができる。磁性体コア82としては、例えば、フェライトコア、アモルファスコア、パーマロイコアを用いることができる。フェライトコアは、例えば、軟磁性を示すソフトフェライトからなる。ソフトフェライトとしては、例えば、ニッケル(Ni)と亜鉛(Zn)を含むフェライトやマンガン(Mn)と亜鉛(Zn)を含むフェライトを挙げることができる。磁性体コア82の材料は、例えば、低減したい電磁ノイズの周波数帯に応じて適宜選択することができる。
【0055】
図3に示すように、本実施形態の磁性体コア82は、周方向全周にわたって連続して形成されており、閉環状に形成されている。すなわち、本実施形態の磁性体コア82は、全体がつながって切れ目がなく輪になっている構造、つまり始点と終点とが一致する無端状の構造に形成されている。換言すると、本実施形態の磁性体コア82には、電磁波吸収部材80の中心軸方向に沿って延びるスリットが形成されていない。本実施形態の磁性体コア82は一部品によって構成されている。なお、本実施形態では、磁性体コア82を一部品で構成するようにしたが、複数のコア材を組み合わせて環状をなす磁性体コア82を構成するようにしてもよい。例えば、磁性体コア82を、横断面半円状の一対のコア材を組み合わせて円環状に構成するようにしてもよい。
【0056】
図2に示すように、磁性体コア82は、例えば、磁性体コア82の周方向に沿って延びる外周面82Aと、磁性体コア82の径方向に沿って延び、パイプ40側に向く側面82Bと、磁性体コア82の径方向に沿って延び、コルゲートチューブ50側に向く側面82Cとを有している。側面82B,82Cは、例えば、外周面82Aと貫通孔81の内周面との間に設けられている。磁性体コア82の外周寸法は、例えば、パイプ40及びコルゲートチューブ50の内周寸法よりも大きく設定されている。
【0057】
磁性体コア82は、例えば、位置決め部材90の外周面に設けられている。磁性体コア82は、例えば、位置決め部材90の外周に嵌合されている。
(位置決め部材90の構成)
位置決め部材90は、例えば、パイプ40とコルゲートチューブ50との間に位置する電線20の外周に設けられている。例えば、電線20の長さ方向において、位置決め部材90の一方側にはパイプ40が設けられ、位置決め部材90の他方側にはコルゲートチューブ50が設けられている。位置決め部材90は、例えば、電線20の長さ方向においてパイプ40と離れて設けられている。位置決め部材90は、例えば、電線20の長さ方向においてコルゲートチューブ50と離れて設けられている。位置決め部材90は、例えば、パイプ40及びコルゲートチューブ50から露出されている。位置決め部材90は、例えば、電線20の外周面に固定されている。位置決め部材90は、例えば、合成樹脂製である。位置決め部材90の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0058】
位置決め部材90は、例えば、電磁波吸収部材80の貫通孔81に挿入される挿入部91を含む本体部90Aと、本体部90Aの端面から突出して形成された固定部92とを有している。位置決め部材90は、例えば、挿入部91と固定部92との間に設けられ、本体部90Aの外周面から電線20の長さ方向と交差する方向に突出する突出部93と、本体部90Aの端部の外周面から電線20の長さ方向と交差する方向に突出する突出部94とを有している。位置決め部材90は、例えば、挿入部91と固定部92と突出部93,94とが合成樹脂材によって一体に形成された単一部品である。
【0059】
(本体部90Aの構成)
本体部90Aは、例えば、電線20が貫通する筒状に形成されている。本体部90Aは、例えば、全体として複数の電線20の外周を一括して包囲する筒状をなしている。本実施形態の本体部90Aは、全体として円筒状に形成されている。
【0060】
図4に示すように、本体部90Aには、例えば、本体部90Aの軸方向に沿って延びるスリット91Xが形成されている。スリット91Xは、例えば、本体部90Aの軸方向の全長にわたって延びるように形成されている。本実施形態の本体部90Aでは、その本体部90Aの周方向における一箇所にスリット91Xが形成されている。なお、本体部90Aは、複数のスリット91Xを有していてもよい。
【0061】
(挿入部91の構成)
図2に示すように、挿入部91は、例えば、本体部90Aの軸方向の中間部に形成されている。挿入部91は、例えば、貫通孔81の内側に嵌合されている。挿入部91は、例えば、貫通孔81の内周面と電線20の外周面との間に介在されている。挿入部91は、例えば、全体として複数の電線20の外周を一括して包囲する筒状をなしている。挿入部91は、例えば、貫通孔81の内周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の挿入部91は、全体として円筒状に形成されている。挿入部91の外径は、例えば、貫通孔81の内径よりも一回り小さく形成されている。挿入部91の外周面は、例えば、貫通孔81の内周面に接触している。なお、挿入部91の外周面と貫通孔81の内周面との接触は、面接触、線接触及び点接触のいずれの形態であってもよい。挿入部91の内周面は、例えば、電線20の外周面と対向している。挿入部91は、例えば、スリット91Xを有することにより、貫通孔81に挿入する際に、スリット91Xの幅を狭めて縮径するように弾性変形することが可能に構成されている。
【0062】
(固定部92の構成)
固定部92は、本体部90Aから貫通孔81の外部に突出するように形成されている。固定部92は、例えば、本体部90Aの軸方向の端面から本体部90Aの軸方向に沿って延びるように形成されている。固定部92は、挿入部91から離れる方向に突出して形成されている。固定部92は、例えば、本体部90Aの周方向の一部のみに形成されている。図4に示すように、固定部92は、例えば、スリット91Xと周方向にずれた位置に形成されている。固定部92は、例えば、スリット91Xと周方向に約π[rad]ずれた位置に形成されている。
【0063】
固定部92は、例えば、薄板状に形成されている。固定部92は、電線20(図2参照)と対向する内面(ここでは、図中上側を向く面)と、その内面と反対側の外面とを有している。固定部92の内面及び外面は、例えば、曲面状に形成されている。固定部92の内面及び外面は、例えば、本体部90Aと同軸の円弧面に形成されている。固定部92の内面は、例えば、本体部90Aの内周面と段差無く連続して一体に形成されている。
【0064】
(突出部93の構成)
突出部93は、例えば、本体部90Aの軸方向の一端部における外周面から本体部90Aの径方向外方に張り出して形成されている。突出部93は、例えば、本体部90Aの軸方向の端部のうち固定部92側の端部における外周面に形成されている。突出部93は、例えば、本体部90Aの周方向の全長にわたって形成されている。なお、突出部93を、本体部90Aの周方向の一部のみに形成するようにしてもよい。
【0065】
図2に示すように、突出部93は、電磁波吸収部材80と対向する側面93Aと、突出部93の突出先端面である外周面93Bとを有している。側面93Aは、例えば、本体部90Aの径方向及び周方向に広がるように形成されている。側面93Aは、例えば、電磁波吸収部材80の側面82Cと対向するように形成されている。側面93Aは、例えば、電磁波吸収部材80の側面82Cと接触している。側面93Aの径方向に沿う厚さ寸法は、例えば、側面82Cの径方向に沿う厚さ寸法よりも小さく形成されている。このため、側面93Aは、側面82Cの径方向の一部のみと対向している。
【0066】
外周面93Bは、突出部93の外面のうち径方向外側に位置する面である。外周面93Bは、例えば、本体部90Aの軸方向及び周方向に広がるように形成されている。外周面93Bは、例えば、挿入部91側から固定部92側に向かうに連れて本体部90Aの外周面に近づくように傾斜する傾斜面93Cを有している。すなわち、外周面93Bは、電磁波吸収部材80から離れるに連れて本体部90Aの外周面に近づくように傾斜する傾斜面93Cを有している。換言すると、突出部93は、挿入部91側から固定部92側に近づくに連れて、本体部90Aの外周面から径方向外方への突出量が小さくなるように形成されている。傾斜面93Cは、例えば、突出部93の外周面93Bの少なくとも一部に設けられている。
【0067】
(突出部94の構成)
突出部94は、例えば、本体部90Aの軸方向の一端部における外周面から本体部90Aの径方向外方に張り出して形成されている。突出部94は、例えば、本体部90Aの軸方向の端部のうち固定部92とは反対側の端部における外周面に形成されている。突出部94は、例えば、本体部90Aの周方向の全長にわたって形成されている。なお、突出部94を、本体部90Aの周方向の一部のみに形成するようにしてもよい。
【0068】
突出部94は、電磁波吸収部材80と対向する側面94Aと、突出部94の突出先端面である外周面94Bとを有している。側面94Aは、例えば、本体部90Aの径方向及び周方向に広がるように形成されている。側面94Aは、例えば、電磁波吸収部材80の側面82Bと対向するように形成されている。側面94Aは、例えば、電磁波吸収部材80の側面82Bと接触している。側面94Aの径方向に沿う厚さ寸法は、例えば、側面82Bの径方向に沿う厚さ寸法と同じ長さに形成されている。このため、側面94Aは、例えば、側面82Bの径方向の全長と対向している。側面94Aは、例えば、突出部93の側面93Aと対向するように形成されている。例えば、側面94Aの厚さ寸法は、側面93Aの厚さ寸法よりも大きく形成されている。
【0069】
外周面94Bは、突出部94の外面のうち径方向外側に位置する面である。外周面94Bは、例えば、本体部90Aの軸方向及び周方向に広がるように形成されている。外周面94Bは、例えば、電磁波吸収部材80側から、その電磁波吸収部材80から離れるに連れて本体部90Aの外周面に近づくように傾斜する傾斜面94Cを有している。すなわち、突出部94は、電磁波吸収部材80から離れるに連れて、径方向外方への突出量が小さくなるように形成されている。傾斜面94Cは、例えば、突出部94の外周面94Bの少なくとも一部に設けられている。ここで、外周面94Bのうち電磁波吸収部材80の側面82Bに最も近い部分は、例えば、電磁波吸収部材80の外周面82Aと面一になるように形成されている。すなわち、突出部94のうち電磁波吸収部材80の側面82Bと接触する部分の外周面94Bが電磁波吸収部材80の外周面82Aと面一になるように形成されている。
【0070】
位置決め部材90は、例えば、電磁波吸収部材80の貫通孔81に対して側面82B側から側面82C側に向かって挿入部91が挿入されて電磁波吸収部材80に取り付けられる。このとき、挿入部91を含む本体部90Aは、スリット91Xの幅を狭めて縮径するように弾性変形する。そして、本体部90Aの端部の突出部93が貫通孔81を通り抜けると、本体部90Aが元の形状に戻るように弾性復帰する、つまりスリット91Xの幅が広がるように弾性復帰する。すると、突出部93の側面93Aが電磁波吸収部材80の側面82Cに接触し、突出部93が電磁波吸収部材80に係止される。さらに、このとき、突出部94の側面94Aが電磁波吸収部材80の側面82Bに接触し、突出部94が電磁波吸収部材80に係止される。これにより、位置決め部材90が貫通孔81から抜けることが抑制されるとともに、位置決め部材90の長さ方向において位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の相対移動が規制される。換言すると、電磁波吸収部材80の両側に設けられた突出部93,94によって、電磁波吸収部材80が位置決め部材90に固定される。このとき、位置決め部材90の固定部92は、例えば、本体部90Aとコルゲートチューブ50との間に設けられている。固定部92は、例えば、本体部90Aからコルゲートチューブ50に向かって延びるように形成されている。換言すると、固定部92は、本体部90Aから、パイプ40から遠ざかる方向に向かって延びるように形成されている。これにより、パイプ40の端部に取り付けられたホルダ70と固定部92とが干渉することを抑制できる。
【0071】
(固定部材100の構成)
固定部材100は、例えば、位置決め部材90を複数の電線20に固定するように設けられている。固定部材100は、例えば、位置決め部材90の固定部92を複数の電線20に固定するように設けられている。固定部材100は、例えば、電線20の長さ方向において電線20に対する位置決め部材90の相対移動を規制する機能を有している。
【0072】
固定部材100は、例えば、テープ部材101が固定部92及び電線20に巻き回されて形成されている。テープ部材101は、例えば、一面に粘着層を有している。テープ部材101は、例えば、粘着層を径方向内側に向けた状態で、固定部92と電線20とに対して巻き回される。テープ部材101は、例えば、固定部92の外面と電線20の外周面とにわたって巻き回されている。
【0073】
なお、図示は省略するが、テープ部材101は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。ここで、オーバーラップ巻きの構造とは、テープ部材101の幅方向における所定部分同士が重なるようにテープ部材101を螺旋状に巻き回した構造である。なお、テープ部材101の幅方向は、電線20の長さ方向に沿って延びる方向である。オーバーラップ巻きの構造としては、例えば、ハーフラップ巻きの構造であることが好ましい。ここで、ハーフラップ巻きの構造とは、テープ部材101の幅方向において略半分となる部分同士が重なるようにテープ部材101を螺旋状に巻き回した構造である。
【0074】
テープ部材101は、例えば、固定部92と電線20とを締め付けるように形成されている。テープ部材101は、例えば、固定部92の外面と複数の電線20の外周面とを、それら固定部92と複数の電線20とが互いに接近する方向に締め付けるように被覆している。テープ部材101は、例えば、固定部92の内面と電線20の外周面とが接触するように、固定部92と電線20とを締め付けるように形成されている。
【0075】
テープ部材101は、例えば、挿入部91の内部において、挿入部91の周方向の一部に片寄って電線20が配置されるように、固定部92を電線20の外周に固定している。例えば、テープ部材101は、電線20が固定部92の内面に接触して固定部92側に片寄るように、固定部92及び電線20の外周面に巻き回されている。
【0076】
テープ部材101によって位置決め部材90が電線20に固定されると、位置決め部材90に固定された電磁波吸収部材80も電線20に固定される。これにより、電線20の長さ方向において電線20に対する電磁波吸収部材80の相対移動が規制されるため、電磁波吸収部材80が位置ずれすることを抑制できる。
【0077】
(編組部材110の構成)
編組部材110は、例えば、全体として複数の電線20の外周を一括して包囲する筒状をなしている。編組部材110は、例えば、電線20の長さ方向の略全長にわたって電線20の外周を包囲するように設けられている。編組部材110としては、複数の金属素線が編成された編組部材や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編成された編組部材を用いることができる。金属素線の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。樹脂素線としては、例えば、パラ系アラミド繊維等の絶縁性及び耐剪断性に優れた強化繊維を用いることができる。
【0078】
編組部材110は、例えば、コルゲートチューブ50の内部空間において、複数の電線20の外周を一括して包囲するように形成されている。換言すると、コルゲートチューブ50は、電線20及び編組部材110の外周を包囲するように設けられている。編組部材110は、例えば、パイプ40とコルゲートチューブ50との間において、電磁波吸収部材80及び位置決め部材90の外周を包囲するように形成されている。編組部材110は、例えば、電磁波吸収部材80及び位置決め部材90を被覆する部分の外形が他の部分の外形に比べて大きくなるように形成されている。編組部材110は、例えば、保護部材60の内部空間において、電線20、位置決め部材90、電磁波吸収部材80及び固定部材100の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。
【0079】
編組部材110の軸方向の端部は、例えば、パイプ40の外周面に電気的に接続されている。編組部材110の軸方向の端部は、例えば、パイプ40の外周面に直接接触された状態で、編組部材110の外周側に設けられたカシメリング115によってパイプ40の外周面に接続されている。カシメリング115は、例えば、パイプ40の外周面との間に編組部材110の端部を挟む態様でパイプ40の外側に嵌合されている。そして、カシメリング115がパイプ40の径方向内側に締め付けられることで、編組部材110の端部がパイプ40の外周面に対して直接接触した状態で固定されている。これにより、編組部材110とパイプ40との電気的導通が安定的に確保される。カシメリング115は、例えば、パイプ40の端面42と取付孔41との間におけるパイプ40の外周面に設けられている。編組部材110の端部は、例えば、コルゲートチューブ50側及び径方向外側に折り返されるように形成されている。折り返された後の編組部材110は、例えば、カシメリング115の外周を包囲するように形成されている。なお、図示は省略するが、編組部材110の軸方向の端部のうちコネクタC1側の端部は、例えば、コネクタC1等においてアース接続(アース接地)されている。
【0080】
カシメリング115の材料としては、例えば、銅系、鉄系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。カシメリング115の材料としては、例えば、パイプ40を構成する金属材料と同種の金属材料であることが好ましい。
【0081】
(規制部材120,121の構成)
規制部材120,121は、例えば、編組部材110を、編組部材110の外側から電線20に向かって締め付けるように形成されている。規制部材120,121は、例えば、編組部材110を径方向内側に締め付けるように形成されている。規制部材120,121は、例えば、編組部材110が電線20の径方向外側に広がることを規制する機能を有している。規制部材120,121は、例えば、電線20の長さ方向において電磁波吸収部材80に対する編組部材110の相対移動を規制する機能を有している。
【0082】
規制部材120,121は、例えば、テープ部材122が編組部材110の外周面に巻き回されて形成されている。テープ部材122は、例えば、一面に粘着層を有している。テープ部材122は、例えば、粘着層を径方向内側に向けた状態で、編組部材110に対して巻き回されている。図示は省略するが、テープ部材122は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。
【0083】
規制部材120は、例えば、電磁波吸収部材80とコルゲートチューブ50との間に位置する編組部材110の外周面に設けられている。規制部材120は、例えば、電線20の長さ方向と交差する方向において、固定部92と重なるように設けられている。規制部材120は、例えば、電線20の長さ方向と交差する方向において、固定部材100と重なるように設けられている。
【0084】
規制部材121は、例えば、電磁波吸収部材80とパイプ40との間に位置する編組部材110の外周面に設けられている。規制部材121は、例えば、位置決め部材90とホルダ70との間に位置する編組部材110の外周面に設けられている。
【0085】
規制部材120,121は、例えば、電磁波吸収部材80の外周を包囲していない。本実施形態の規制部材120,121は、磁性体コア82の外周面82Aを被覆する部分における編組部材110の外周面を被覆していない。すなわち、本実施形態の電磁波吸収部材80は、規制部材120,121によって電線20に対して固定されていない。本実施形態の電磁波吸収部材80は、その電磁波吸収部材80の両側に設けられた規制部材120,121によって径方向内側に締め付けられる編組部材110により径方向内側に締め付けられる。これにより、電線20に対する電磁波吸収部材80の相対移動が抑制される。すなわち、電磁波吸収部材80自体を電線20に固定していない状態であっても、電線20に対する電磁波吸収部材80の相対移動を抑制することができる。
【0086】
(保護部材60の構成)
保護部材60は、例えば、電磁波吸収部材80の外周を包囲するように設けられている。保護部材60は、例えば、保護部材60の内部に配置された各種部材を防水する防水カバーとして機能する。
【0087】
保護部材60は、例えば、パイプ40の外周に接続される筒状の接続筒部61と、コルゲートチューブ50の外周に接続される筒状の接続筒部62と、接続筒部61と接続筒部62との間に設けられた本体筒部63とを有している。本体筒部63は、他の部分、つまり接続筒部61,62の外周よりも径方向外側に張り出して形成されている。本体筒部63は、例えば、接続筒部61,62の周方向の全周にわたって接続筒部61,62よりも径方向外側に突出するように形成されている。本体筒部63の外周寸法は、例えば、接続筒部61,62の外周寸法よりも大きく形成されている。保護部材60は、例えば、接続筒部61と本体筒部63と接続筒部62とが連続して一体に形成された単一部品である。本実施形態の接続筒部61,62及び本体筒部63は、周方向全周にわたって連続して形成されており、始点と終点とが一致する無端状の構造に形成されている。換言すると、本実施形態の接続筒部61,62及び本体筒部63は、電線20の長さ方向に沿って延びるスリットが形成されていない。
【0088】
保護部材60は、例えば、接続筒部61がパイプ40の外周に嵌合され、接続筒部62がコルゲートチューブ50の外周に嵌合されている。
接続筒部61は、例えば、パイプ40の外周に嵌合可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の接続筒部61は、円筒状に形成されている。接続筒部61の端部の内周面には、例えば、パイプ40の外周面に向かって突出する1つ又は複数(ここでは、3つ)のリップ61Aが形成されている。各リップ61Aは、例えば、接続筒部61の内周面の周方向全周にわたって連続して形成されており、無端状の構造に形成されている。各リップ61Aは、例えば、接続筒部61がパイプ40の外周に嵌合したときに、そのパイプ40の外周面に密着するように形成されている。
【0089】
接続筒部61の外周面には、例えば、連結部材65が設けられている。連結部材65としては、例えば、樹脂製又は金属製の結束バンド、カシメリングやテープ部材などを用いることができる。接続筒部61は、連結部材65によって外周側から締め付けられてパイプ40に固定される。例えば、接続筒部61は、パイプ40に液密状に密着するまで、連結部材65によって外周側から締め付けられる。これにより、接続筒部61とパイプ40との間から保護部材60の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0090】
接続筒部62は、例えば、コルゲートチューブ50の外周に嵌合可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の接続筒部62は、円筒状に形成されている。接続筒部62の端部の内周面には、例えば、コルゲートチューブ50に係止する1つ又は複数(ここでは、3つ)のリップ62Aが形成されている。各リップ62Aは、例えば、接続筒部62の内周面の周方向全周にわたって連続して形成されており、無端状の構造に形成されている。各リップ62Aは、例えば、接続筒部62がコルゲートチューブ50の外周に嵌合したときに、そのコルゲートチューブ50の環状凹部52に入り込むように形成されている。
【0091】
接続筒部62の外周面には、例えば、連結部材66が設けられている。連結部材66としては、例えば、樹脂製又は金属製の結束バンド、カシメリングやテープ部材などを用いることができる。接続筒部62は、連結部材66によって外周側から締め付けられてコルゲートチューブ50に固定される。例えば、接続筒部62は、コルゲートチューブ50に液密状に密着するまで、連結部材66によって外周側から締め付けられる。これにより、接続筒部62とコルゲートチューブ50との間から保護部材60の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0092】
本体筒部63は、例えば、一端部が接続筒部61と連続して一体に形成され、他端部が接続筒部62と連続して一体に形成されている。本体筒部63は、例えば、電磁波吸収部材80を収容可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の本体筒部63は、円筒状に形成されている。本体筒部63は、電磁波吸収部材80を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。本体筒部63は、例えば、パイプ40及びコルゲートチューブ50から露出された電線20、位置決め部材90、電磁波吸収部材80、固定部材100、編組部材110及び規制部材120,121を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。本体筒部63は、例えば、カシメリング115の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。
【0093】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)ワイヤハーネス10は、電線20と、電線20の外周に設けられた合成樹脂製の位置決め部材90と、電線20が貫通する貫通孔81を有するとともに、位置決め部材90に固定された環状の電磁波吸収部材80と、位置決め部材90を電線20に固定する固定部材100とを有する。位置決め部材90は、貫通孔81に挿入された挿入部91を含む本体部90Aと、本体部90Aから貫通孔81の外部に突出された固定部92とを有する。固定部材100は、電線20と固定部92とを締め付けるように形成されている。
【0094】
この構成によれば、電磁波吸収部材80の貫通孔81の内側に位置決め部材90の挿入部91が挿入される。これにより、貫通孔81の内周面と電線20との間に合成樹脂製の位置決め部材90を介在させることができる。このため、貫通孔81の内周面と電線20の外周面とが直接接触することを抑制できる。この結果、車両走行等に起因して電磁波吸収部材80が振動した場合であっても、貫通孔81の内周面のエッジとの接触に起因して電線20が損傷することを抑制できる。
【0095】
(2)また、位置決め部材90が固定部材100によって電線20に固定され、その位置決め部材90に電磁波吸収部材80が固定される。このため、電線20に対して位置決め部材90が位置ずれすることを抑制できるとともに、電線20に対して電磁波吸収部材80が位置ずれすることを抑制できる。
【0096】
(3)位置決め部材90には、挿入部91と固定部92との間に設けられ、本体部90Aの外周面から電線20の長さ方向と交差する方向に突出する突出部93が設けられる。この突出部93に電磁波吸収部材80の側面82Cを接触させることにより、位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の位置決めを容易に行うことができる。このため、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上させることができる。
【0097】
(4)また、突出部93に電磁波吸収部材80の側面82Cを接触させることにより、電線20の長さ方向において位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の相対移動を規制することができる。これにより、位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の位置ずれを好適に抑制できる。
【0098】
(5)突出部93を、挿入部91側から固定部92側に向かうに連れて、本体部90Aの外周面からの突出量が小さくなるように形成した。この構成によれば、突出部93の外周面が傾斜面93Cに形成される。このため、突出部93の外周を包囲するように編組部材110を設けた場合であっても、突出部93の外周面との接触に起因して編組部材110が損傷することを好適に抑制できる。
【0099】
(6)位置決め部材90には、本体部90Aの軸方向の端部のうち固定部92とは反対側の端部における外周面から軸方向と交差する方向に突出する突出部94が設けられる。この突出部94に電磁波吸収部材80の側面82Bを接触させることにより、位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の位置決めを容易に行うことができる。このため、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上させることができる。
【0100】
(7)また、突出部94に電磁波吸収部材80の側面82Bを接触させることにより、電線20の長さ方向において位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の相対移動を規制することができる。これにより、位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の位置ずれを好適に抑制できる。
【0101】
(8)位置決め部材90が有する突出部93,94によって、電磁波吸収部材80を位置決め部材90に固定するようにした。この構成によれば、電磁波吸収部材80を位置決め部材90に固定するための部材を位置決め部材90とは別に設ける必要が無いため、部品点数を低減することができる。
【0102】
(9)突出部94を、電磁波吸収部材80から離れるに連れて、本体部90Aの外周面からの突出量が小さくなるように形成した。また、電磁波吸収部材80の側面82Bと接触された部分における突出部94の外周面94Bを、電磁波吸収部材80の外周面82Aと面一になるように形成した。この構成によれば、突出部94の外周面94Bが電磁波吸収部材80の外周面82Aと面一に形成されるとともに、その面一に形成された部分から電磁波吸収部材80から離れるに連れて突出量が小さくなるようにテーパ状に形成される。例えば電磁波吸収部材80の角部がピン角に形成されている場合であっても、電磁波吸収部材80の外周面と連続して形成された突出部94の外周面94Bがテーパ状に形成されることにより、電磁波吸収部材80の角部を疑似的にテーパ状に形成することができる。これにより、電磁波吸収部材80及び突出部94の外周を包囲するように編組部材110を設けた場合であっても、電磁波吸収部材80の外周面82A及び突出部94の外周面94Bとの接触に起因して編組部材110が損傷することを好適に抑制できる。
【0103】
(10)規制部材120,121を、編組部材110を編組部材110の外側から電線20に向かって締め付けるように形成した。このため、編組部材110が電線20の径方向外側に広がることを抑制できる。これにより、編組部材110の外周を覆うように保護部材60を取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0104】
(11)規制部材120を、位置決め部材90の固定部92の外周を包囲するように設けた。このため、規制部材120によって編組部材110が電線20及び固定部92に向かって締め付けられる。このとき、電線20の外周面のみに編組部材110が締め付けられる場合に比べて、編組部材110が締め付けられる対象物の厚みが固定部92の厚みの分だけ厚くなるため、電磁波吸収部材80の外周面82Aと規制部材120の外周面との段差を小さくできる。これにより、電磁波吸収部材80の外周面82Aを包囲する部分と規制部材120により被覆された部分との間における編組部材110にかかる張力が大きくなることを抑制でき、その部分における編組部材110の伸縮性が低下することを抑制できる。この結果、電磁波吸収部材80の外周面82Aとの接触に起因して編組部材110が摩耗することを抑制でき、編組部材110が損傷することを抑制できる。
【0105】
(12)挿入部91からコルゲートチューブ50に向かって固定部92が延びるように形成される。換言すると、挿入部91から金属製のパイプ40から遠ざかる方向に向かって固定部92が延びるように形成される。このため、例えばパイプ40の端部に取り付けられたホルダ70と固定部92とが干渉することを好適に抑制できる。
【0106】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0107】
・例えば図5に示すように、カシメリング115の外周を包囲する編組部材110の外周面に対して巻き回されるテープ部材125を設けるようにしてもよい。すなわち、編組部材110の端部においてコルゲートチューブ50及び径方向外側に向かって折り返された部分の編組部材110の外周面にテープ部材125を巻き回すようにしてもよい。テープ部材125は、例えば、編組部材110を、編組部材110の外側からパイプ40に向かって締め付けるように形成されている。テープ部材125は、例えば、編組部材110を径方向内側に締め付けるように形成されている。テープ部材125は、例えば、電線20の長さ方向と交差する方向において、カシメリング115と重なるように設けられている。これにより、カシメリング115の外周がテープ部材125によって包囲される。
【0108】
・上記実施形態の規制部材120,121の設置位置は特に限定されない。
例えば図6に示すように、規制部材120を、固定部92とコルゲートチューブ50との間に設けるようにしてもよい。すなわち、規制部材120を、電線20の長さ方向と交差する方向において、固定部92と重ならない位置に設けるようにしてもよい。
【0109】
・上記実施形態では、規制部材120,121をテープ部材122で構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、規制部材120,121として、金属バンドや樹脂製の結束バンドを用いるようにしてもよい。
【0110】
・上記実施形態の規制部材121を省略してもよい。
・上記実施形態の規制部材120を省略してもよい。
・上記実施形態では、固定部材100をテープ部材101で構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、固定部材100として、金属バンドや樹脂製の結束バンドを用いるようにしてもよい。
【0111】
・上記実施形態の位置決め部材90では、突出部94のうち電磁波吸収部材80の側面82Bと接触する部分の外周面94Bを、電磁波吸収部材80の外周面82Aと面一になるように形成したが、これに限定されない。
【0112】
例えば図7に示すように、突出部94の側面94Aの厚さ寸法を、電磁波吸収部材80の側面82Bの厚さ寸法よりも小さく形成してもよい。この場合の側面94Aは、側面82Bの径方向の一部のみと対向している。
【0113】
・上記実施形態の位置決め部材90では、突出部94を、電磁波吸収部材80から離れるに連れて、本体部90Aの外周面からの径方向外方への突出量が小さくなるように形成した。しかし、突出部94の形状はこれに限定されない。
【0114】
例えば図8に示すように、本体部90Aの軸方向において突出部94の全長にわたって、突出部94の突出量が同じになるように形成してもよい。すなわち、突出部94の傾斜面94Cの形成を省略してもよい。
【0115】
・上記実施形態の位置決め部材90から突出部94を省略してもよい。
・上記実施形態の位置決め部材90では、突出部93を、挿入部91側から固定部92に向かうに連れて、本体部90Aの外周面からの径方向外方への突出量が小さくなるように形成した。しかし、突出部93の形状はこれに限定されない。
【0116】
例えば図8に示すように、本体部90Aの軸方向において突出部93の全長にわたって、突出部93の突出量が同じになるように形成してもよい。すなわち、突出部93の傾斜面93Cの形成を省略してもよい。
【0117】
・例えば図9に示すように、位置決め部材90から突出部93を省略してもよい。
・上記実施形態の位置決め部材90では、本体部90Aを筒状に形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、本体部90Aの横断面形状を半円弧状に形成するようにしてもよい。
【0118】
・上記実施形態では、挿入部91とコルゲートチューブ50との間に固定部92を配置するようにしたが、これに限定されない。例えば、挿入部91とパイプ40との間に固定部92を配置するようにしてもよい。
【0119】
・上記実施形態の位置決め部材90に複数個の固定部92を設けるようにしてもよい。
・上記実施形態では、位置決め部材90の突出部93,94によって電磁波吸収部材80を位置決め部材90に固定するようにしたが、位置決め部材90に対する電磁波吸収部材80の固定方法は特に限定されない。例えば、テープ部材等によって電磁波吸収部材80を位置決め部材90に向かって締め付けることにより、電磁波吸収部材80を位置決め部材90に固定するようにしてもよい。
【0120】
・上記実施形態では、保護部材60を無端状の構造に具体化したが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態では、保護部材60を、内部に電磁波吸収部材80が配置される前の状態からすでに筒体として形成されているものに具体化したが、これに限定されない。
【0121】
例えば図10に示すように、保護部材60を、電線20の長さ方向に沿って延びるスリット67を有するシート状をなす構造に具体化してもよい。本変更例の保護部材60は、例えば、可撓性を有する一枚のシートを電線20の周方向に巻くことによって筒状をなすように形成されている。保護部材60は、例えば、電線20の長さ方向と交差する第1方向(図10では、電線20の周方向)における端部68と、端部68と第1方向において反対側の端部69とを有している。保護部材60は、例えば、端部68と端部69とを電磁波吸収部材80の径方向に重ね合わせることによって筒状をなすように形成されている。保護部材60の内周寸法は、例えば、端部68と端部69との重なり幅を調整することにより、電磁波吸収部材80の外周寸法に合わせた寸法に調整することができる。保護部材60は、例えば、電磁波吸収部材80の外周を包囲可能な筒状態から、電磁波吸収部材80の外周を包囲しないシート状態に戻ることが可能な弾性を有している。
【0122】
保護部材60は、例えば、図2に示した連結部材65,66によってパイプ40及びコルゲートチューブ50の外周にそれぞれ固定されることにより、筒状態が維持される。連結部材65,66としては、例えば、テープ部材、結束バンドやカシメリングなどを用いることができる。
【0123】
次に、図11に従って、連結部材65,66としてテープ部材65A,66Aをそれぞれ用いた場合の構成について説明する。
テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部をパイプ40の外周面に固定するように形成されている。テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部をコルゲートチューブ50の外周面に固定するように形成されている。
【0124】
テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部の外周面と、保護部材60から露出されたパイプ40の外周面とにわたって巻かれている。テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の外周面からパイプ40の外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。テープ部材65Aは、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。テープ部材65Aは、例えば、保護部材60の筒状態が維持されるように、保護部材60の端部の外周に巻かれている。
【0125】
テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の長さ方向の端部の外周面と、保護部材60から露出されたコルゲートチューブ50の外周面とにわたって巻かれている。テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の外周面からコルゲートチューブ50の外周面までの範囲に対して連続的に巻かれている。テープ部材66Aは、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。テープ部材66Aは、例えば、保護部材60の筒状態が維持されるように、保護部材60の端部の外周に巻かれている。
【0126】
図10に示した保護部材60の一面に、接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。例えば、保護部材60の端部69の一面に接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。この構成によれば、保護部材60の端部68に端部69を重ね合わせた場合に、接着層又は粘着層によって端部69を端部68に接着させることができる。これにより、テープ部材65A,66A(図11参照)によって固定される前の段階において、保護部材60がシート状態に戻ることを好適に抑制できる。
【0127】
・上記実施形態の保護部材60の材料としては、例えば、パイプ40及びコルゲートチューブ50よりも耐衝撃性及びクッション性に優れた材料を用いることもできる。例えば、保護部材60の材料としては、例えば、パイプ40及びコルゲートチューブ50よりも吸音性に優れた材料を用いることもできる。このような保護部材60の材料としては、例えば、多孔性を有する材料を用いることができる。保護部材60の材料としては、例えば、発泡樹脂を用いることができる。発泡樹脂における気泡構造は、連続気泡構造であってもよいし、独立気泡構造であってもよい。保護部材60の材料としては、例えば、発泡ウレタン、発泡ポリエチレンや発泡エチレンプロピレンジエンゴムなどを用いることができる。以上説明したような材料を保護部材60の材料として用いることにより、保護部材60を緩衝部材として好適に機能させることができる。
【0128】
この構成によれば、電磁波吸収部材80とその周辺部品との間に緩衝部材としての保護部材60を介在させることができる。これにより、電磁波吸収部材80と周辺部品との接触に起因した異音の発生を抑制できる。
【0129】
・上記実施形態では、パイプ40の外周面に編組部材110の端部を電気的に接続した状態で固定する接続部材としてカシメリング115を用いたが、これに限定されない。例えば、カシメリング115の代わりに、金属バンド、樹脂製の結束バンドやテープ部材等を接続部材として用いてもよい。
【0130】
・上記実施形態では、第1外装部材として金属製のパイプ40に具体化し、第2外装部材としてコルゲートチューブ50に具体化したが、これに限定されない。例えば、第1外装部材として、硬質の樹脂製パイプ、コルゲートチューブやゴム製の防水カバーを用いることができる。また、第2外装部材として、例えば、硬質の樹脂製パイプ、金属製のパイプやゴム製の防水カバーを用いることができる。例えば、第1外装部材と第2外装部材とを、互いに同じ種類の外装部材に具体化してもよい。
【0131】
例えば図12に示すように、第1外装部材としてコルゲートチューブ140に具体化し、第2外装部材としてコルゲートチューブ50に具体化してもよい。コルゲートチューブ140は、例えば、電線20の長さ方向において、コルゲートチューブ50と離れて設けられている。コルゲートチューブ140は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。コルゲートチューブ140は、例えば、電線20の長さ方向の一部を包囲するように設けられている。コルゲートチューブ140は、その長さ方向に沿って環状凸部141と環状凹部142とが交互に連設された蛇腹構造を有している。本変更例の編組部材110は、例えば、コルゲートチューブ140の内部空間において、複数の電線20の外周を一括して包囲するように形成されている。換言すると、コルゲートチューブ140は、電線20及び編組部材110の外周を包囲するように設けられている。本変更例の保護部材60は、例えば、コルゲートチューブ140の外周とコルゲートチューブ50の外周との間に架け渡されるように設けられている。例えば、保護部材60は、接続筒部61がコルゲートチューブ140の外周に嵌合され、接続筒部62がコルゲートチューブ50の外周に嵌合されている。
【0132】
・上記実施形態では、電磁波吸収部材80の外周を覆うように編組部材110を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、編組部材110を電磁波吸収部材80の貫通孔81に貫通させるようにしてもよい。この場合の編組部材110は、例えば、複数の電線20の外周を包囲した状態で貫通孔81に貫通される。
【0133】
・上記実施形態の編組部材110の代わりに、金属箔などの他の電磁シールド部材に変更してもよい。
・上記実施形態における編組部材110を省略してもよい。
【0134】
・上記実施形態の電線20をシールド電線に変更してもよい。
・上記実施形態では、電磁波吸収部材80を磁性体コア82のみで構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、電磁波吸収部材80を、磁性体コア82と、その磁性体コア82を収容するケースとを含む構成としてもよい。
【0135】
・上記実施形態における電磁波吸収部材80の数及び設置位置は特に限定されない。例えば、ワイヤハーネス10に対して2個以上の電磁波吸収部材80を設けてもよい。
・上記実施形態では、外装部材30の内部に収容される電線20が2本であったが、特に限定されるものではなく、車両Vの仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、外装部材30の内部に収容される電線20は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、外装部材30に収容される電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0136】
・車両Vにおけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
例えば図13に示すように、高圧バッテリ12が車両Vの床の略全体に配置され、その高圧バッテリ12とインバータ11とを電気的に接続するワイヤハーネス10に具体化してもよい。
【0137】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続する電線に採用してもよい。すなわち、車両Vに搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【0138】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
V 車両
C1 コネクタ
10 ワイヤハーネス
11 インバータ
12 高圧バッテリ
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30 外装部材
40 パイプ(第1外装部材)
41 取付孔
42 端面
50 コルゲートチューブ(第2外装部材)
51 環状凸部
52 環状凹部
60 保護部材
61,62 接続筒部
61A,62A リップ
63 本体筒部
65,66 連結部材
65A,66A テープ部材
67 スリット
68 端部
69 端部
70 ホルダ
71 本体部
72 突起部
73 突出部
80 電磁波吸収部材
81 貫通孔
82 磁性体コア
82A 外周面
82B 側面(第2側面)
82C 側面(第1側面)
90 位置決め部材
90A 本体部
91 挿入部
91X スリット
92 固定部
93 突出部(第1突出部)
93A 側面
93B 外周面
93C 傾斜面
94 突出部(第2突出部)
94A 側面
94B 外周面
94C 傾斜面
100 固定部材
101 テープ部材
110 編組部材
115 カシメリング
120 規制部材
121 規制部材
122 テープ部材
125 テープ部材
140 コルゲートチューブ
141 環状凸部
142 環状凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13