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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231219BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20231219BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 611C
B60H1/22 671
B60L58/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020035754
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138209
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 友宏
(72)【発明者】
【氏名】梯 伸治
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119369(JP,A)
【文献】特開2014-906(JP,A)
【文献】特開2016-144963(JP,A)
【文献】特開平11-200858(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011016070(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60L 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を加熱する加熱部(12、13)と、前記熱媒体の熱を空調対象空間へ送風される送風空気に放熱させるヒータコア(11)と、前記熱媒体を圧送する第1熱媒体ポンプ(23a)と、を前記熱媒体が循環できるように接続した高温側熱媒体回路(10)と、
前記熱媒体の有する熱を外気に放熱するラジエータ(17)と、作動に伴い発熱し、前記熱媒体の有する熱によって温度調整される発熱機器(16)と、前記熱媒体を圧送する第2熱媒体ポンプ(23b)と、を前記熱媒体が循環できるように接続した低温側熱媒体回路(15)と、
前記熱媒体の流出入可能に接続され、温度調整の対象である対象機器(21)と前記熱媒体とを熱交換させる機器用熱交換部(21a)と、前記熱媒体を圧送する第3熱媒体ポンプ(23c)と、を前記熱媒体が循環できるように接続した機器用熱媒体回路(20)と、
前記高温側熱媒体回路、前記低温側熱媒体回路及び前記機器用熱媒体回路を前記熱媒体の流出入ができるように接続する回路接続部(25)と、
前記高温側熱媒体回路、前記低温側熱媒体回路、前記機器用熱媒体回路及び前記回路接続部における前記熱媒体の流れを切り替える回路切替部(70c)と、を有し、
前記低温側熱媒体回路を通過した前記熱媒体が、前記回路接続部を介して、前記高温側熱媒体回路及び前記機器用熱媒体回路の何れか一方を経由するように循環させる運転モードと、
前記回路接続部を介して、前記高温側熱媒体回路、前記低温側熱媒体回路及び前記機器用熱媒体回路を接続して、前記発熱機器、前記機器用熱交換部、前記加熱部、前記ヒータコアを経由するように前記熱媒体を循環させる運転モードに、前記回路切替部によって切り替えられ、
前記回路接続部を介して、前記高温側熱媒体回路、前記低温側熱媒体回路及び前記機器用熱媒体回路を接続して、前記発熱機器、前記機器用熱交換部、前記加熱部、前記ヒータコアを経由するように前記熱媒体を循環させる運転モードにおける前記熱媒体の循環径路は、前記第1熱媒体ポンプ、前記第2熱媒体ポンプ及び前記第3熱媒体ポンプの何れかが外れるように構成されている熱管理システム。
【請求項2】
更に、前記高温側熱媒体回路、前記低温側熱媒体回路及び前記機器用熱媒体回路において、それぞれ独立して前記熱媒体を循環させる運転モードに前記回路切替部によって切り替えられる請求項1に記載の熱管理システム。
【請求項3】
前記低温側熱媒体回路を通過した前記熱媒体が、前記回路接続部を介して前記高温側熱媒体回路を経由するように循環させる運転モードの際に、前記熱媒体が前記発熱機器、前記加熱部及び前記ヒータコアを経由して循環するように、前記回路切替部によって切り替えられる請求項1又は2に記載の熱管理システム。
【請求項4】
前記低温側熱媒体回路を通過した前記熱媒体が、前記回路接続部を介して前記機器用熱媒体回路を経由するように循環させる運転モードの際に、前記熱媒体が前記発熱機器及び前記機器用熱交換部を経由して循環するように、前記回路切替部によって切り替えられる請求項1ないし3の何れか1つに記載の熱管理システム。
【請求項5】
前記高温側熱媒体回路を通過した前記熱媒体が、前記回路接続部を介して前記機器用熱媒体回路を循環する際に、前記熱媒体が前記加熱部、前記ヒータコア及び前記機器用熱交換部を経由して循環させる運転モードに、前記回路切替部によって切り替えられる請求項1ないし4の何れか1つに記載の熱管理システム。
【請求項6】
前記回路切替部は、
前記高温側熱媒体回路において前記熱媒体を循環させる状態と、前記高温側熱媒体回路と前記低温側熱媒体回路との間における前記熱媒体の流出入を許容する状態とに切り替える第1熱媒体三方弁(30a)と、
前記高温側熱媒体回路において前記熱媒体を循環させる状態と、前記高温側熱媒体回路と前記機器用熱媒体回路との間における前記熱媒体の流出入を許容する状態とに切り替える第2熱媒体三方弁(30b)と、
前記低温側熱媒体回路における前記熱媒体の流れを切り替える第1熱媒体開閉弁(31a)と、
前記機器用熱媒体回路における前記熱媒体の流れを切り替える第2熱媒体開閉弁(31b)と、を有している請求項1ないし5の何れか1つに記載の熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱管理システムに関し、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る車両に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用された熱管理システムの技術として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1の電動車両用熱管理システムは、エアコンサイクル、高水温ループ、低水温ループを有し、高水温ループ側のモータで生じた廃熱や低水温ループ側にてインバータに生じた廃熱を利用するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-37178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の技術において、高水温ループと、低水温ループは、それぞれ独立した熱媒体回路として構成されている。従って、低水温ループで吸熱したインバータやバッテリの廃熱を高水温ループ側で暖房に利用しようとした場合、エアコンサイクルを作動させて、エアコンサイクルの冷媒を介して、廃熱を輸送する必要がある。
【0005】
又、低水温ループ等の熱媒体と、エアコンサイクルの冷媒とを熱交換させる必要がある為、熱媒体と冷媒の間にて熱を輸送する際に、熱交換効率等に伴う熱損失が生じてしまう。更に、エアコンサイクルを利用して熱を輸送させる場合には、エアコンサイクルを構成する圧縮機を作動させる必要がある。この為、発熱機器の廃熱を暖房熱源に利用する際には、圧縮機の稼働量をできるだけ抑制することが望ましい。
【0006】
本発明は、これらの点に鑑みてなされており、発熱機器の廃熱を有効に活用することができる熱管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の熱管理システムは、高温側熱媒体回路(10)と、低温側熱媒体回路(15)と、機器用熱媒体回路(20)と、回路接続部(25)と、回路切替部(70c)と、を有している。
【0008】
高温側熱媒体回路は、熱媒体を加熱する加熱部(12、13)と、熱媒体の熱を空調対象空間へ送風される送風空気に放熱させるヒータコア(11)と、熱媒体を圧送する第1熱媒体ポンプ(23a)と、を熱媒体が循環できるように接続している。
【0009】
低温側熱媒体回路は、熱媒体の有する熱を外気に放熱するラジエータ(17)と、作動に伴い発熱し、熱媒体の有する熱によって温度調整される発熱機器(16)と、熱媒体を圧送する第2熱媒体ポンプ(23b)と、を熱媒体が循環できるように接続している。
【0010】
機器用熱媒体回路は、機器用熱交換部(21a)と、熱媒体を圧送する第3熱媒体ポンプ(23c)と、を熱媒体が循環できるように接続している。機器用熱交換部は、熱媒体の流出入可能に接続され、温度調整の対象である対象機器(21)と熱媒体とを熱交換させる。
【0011】
回路接続部は、高温側熱媒体回路、低温側熱媒体回路及び機器用熱媒体回路を熱媒体の流出入ができるように接続する。回路切替部は、高温側熱媒体回路、低温側熱媒体回路、機器用熱媒体回路及び回路接続部における熱媒体の流れを切り替える。
【0012】
そして、熱管理システムは、低温側熱媒体回路を通過した熱媒体が、回路接続部を介して、高温側熱媒体回路及び機器用熱媒体回路の何れか一方を経由するように循環させる運転モードに、回路切替部によって切り替えられる。更に、熱管理システムは、回路接続部を介して、高温側熱媒体回路、低温側熱媒体回路及び機器用熱媒体回路を接続して、発熱機器、機器用熱交換部、加熱部、ヒータコアを経由するように熱媒体を循環させる運転モードに、回路切替部によって切り替えられる。
【0013】
そして、回路接続部を介して、高温側熱媒体回路、低温側熱媒体回路及び機器用熱媒体回路を接続して、発熱機器、機器用熱交換部、加熱部、ヒータコアを経由するように熱媒体を循環させる運転モードにおける熱媒体の循環径路は、第1熱媒体ポンプ、第2熱媒体ポンプ及び第3熱媒体ポンプの何れかが外れるように構成されている。
【0014】
これによれば、運転モードの一つにおいて、低温側熱媒体回路を通過した熱媒体が、回路接続部を介して、高温側熱媒体回路及び機器用熱媒体回路の何れか一方を経由するように循環する。この為、低温側熱媒体回路の発熱機器の廃熱を、高温側熱媒体回路における暖房熱源、又は、機器用熱媒体回路における対象機器の温度調整に利用できる。
【0015】
更に、運転モードの一つとして、回路接続部を介して、高温側熱媒体回路、低温側熱媒体回路及び機器用熱媒体回路を接続して、発熱機器、機器用熱交換部、加熱部、ヒータコアを経由するように熱媒体を循環させる。この為、低温側熱媒体回路の発熱機器の廃熱を、高温側熱媒体回路における暖房熱源及び機器用熱媒体回路における対象機器の温度調整の何れに対しても利用できる。
【0016】
又、熱管理システムによれば、低温側熱媒体回路における発熱機器の廃熱を、熱媒体の循環によって輸送している為、冷凍サイクルを作動させることはない。この為、発熱機器の廃熱の利用に関して、省エネルギ化を図ることができる。又、発熱機器の廃熱を輸送する際に、熱媒体以外の媒体との熱交換が行われることがない為、熱交換効率等に伴う熱損失を抑えることができ、発熱機器の廃熱を有効に活用することができる。
【0017】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る熱管理システムの全体構成図である。
図2】熱管理システムを構成する冷凍サイクルの構成図である。
図3】熱管理システムにおける室内空調ユニットの模式的な全体構成図である。
図4】一実施形態の熱管理システムの制御系を示すブロック図である。
図5】一実施形態に係る熱管理システムの第1運転モードの説明図である。
図6】一実施形態に係る熱管理システムの第2運転モードの説明図である。
図7】一実施形態に係る熱管理システムの第3運転モードの説明図である。
図8】一実施形態に係る熱管理システムの第4運転モードの説明図である。
図9】一実施形態に係る熱管理システムの第5運転モードの説明図である。
図10】一実施形態に係る熱管理システムの第6運転モードの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための一実施形態を説明する。
【0020】
本実施形態に係る熱管理システム1の概略構成について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る熱管理システム1は、走行用の駆動力をモータジェネレータから得る電気自動車に搭載されている。
【0021】
熱管理システム1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行うと共に、車載機器(例えば、発熱機器16)の温度調整を行う。つまり、熱管理システム1は、電気自動車において、車載機器の冷却機能付きの車両用空調装置として用いられている。
【0022】
更に、本実施形態の熱管理システム1は、熱媒体回路5及び冷凍サイクル40を利用して、電気自動車に搭載されたバッテリ21の温度調整を行う。従って、熱管理システム1は、バッテリ21の温度調整機能付きの車両用空調装置としても用いられている。バッテリ21は温度調整の対象機器の一例に相当する。
【0023】
本実施形態における発熱機器16には、複数の構成機器が含まれている。発熱機器16の構成機器としては、具体的に、モータジェネレータ、電力制御ユニット(所謂、PCU)、先進運転支援システム(所謂、ADAS)用の制御装置等を挙げることができる。
【0024】
モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力し、車両の減速時等には回生電力を発生させる。PCUは、各車載機器へ供給される電力を適切に制御するために変圧器、周波数変換器等を一体化させたものである。
【0025】
尚、発熱機器16における各構成機器の適正温度範囲は相互に異なっている。例えば、モータジェネレータの適正温度範囲は、電力制御ユニットの適正温度範囲よりも広く、高い温度帯に定められている。この為、電力制御ユニットを適正に使用する為には、モータジェネレータよりも繊細な温度管理が必要となる。
【0026】
本実施形態に係る熱管理システム1は、熱媒体回路5と、冷凍サイクル40と、室内空調ユニット60と、制御装置70等を有し、空調対象空間である車室内の空調を行うと共に、バッテリ21や発熱機器16の温度調整を行っている。
【0027】
熱媒体回路5は、熱媒体としての冷却水を循環させる熱媒体循環回路であり、高温側熱媒体回路10と、低温側熱媒体回路15と、機器用熱媒体回路20と、回路接続部25を有している。
【0028】
熱管理システム1では、車室内の空調や、バッテリ21及び発熱機器16の温度調整を行う為に、後述するように熱媒体回路5の回路構成を切り替えている。熱管理システム1では、熱媒体回路5を循環する熱媒体として、非圧縮性流体であるエチレングリコール水溶液を採用している。
【0029】
そして、冷凍サイクル40は、冷媒を循環させる冷媒循環回路である。熱管理システム1では、後述する各種空調運転モードに応じて冷凍サイクル40の回路構成を切り替えている。
【0030】
図1に示すように、高温側熱媒体回路10には、ヒータコア11と、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bと、加熱装置13と、第1水ポンプ23a等が配置されている。
【0031】
第1水ポンプ23aは、熱媒体を水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bへ向けて圧送する。第1水ポンプ23aは、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。第1水ポンプ23aは、第1熱媒体ポンプの一例に相当する。
【0032】
水冷媒熱交換器12は、高温側熱媒体回路10の構成機器であると同時に、冷凍サイクル40の構成機器の1つである。水冷媒熱交換器12は、冷凍サイクル40の冷媒を流通させる冷媒通路12aと、熱媒体回路5の熱媒体を流通させる熱媒体通路12bを有している。
【0033】
水冷媒熱交換器12は、伝熱性に優れる同種の金属(例えば、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。これにより、冷媒通路12aを流通する冷媒と熱媒体通路12bを流通する熱媒体は、互いに熱交換することができる。水冷媒熱交換器12は、冷凍サイクル40において、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒の熱を、熱媒体通路12bを流通する熱媒体に放熱させる放熱器である。
【0034】
尚、以降の説明では、説明の明確化のために、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおいて、第1水ポンプ23a側の接続口を熱媒体入口といい、他方側の接続口を熱媒体出口という。
【0035】
水冷媒熱交換器12の熱媒体出口側には、加熱装置13が接続されている。加熱装置13は、加熱用通路及び発熱部を有しており、後述する制御装置70から供給される電力によって、ヒータコア11へ流入する熱媒体を加熱する。加熱装置13の発熱量は、制御装置70からの電力を制御することで任意に調整することができる。
【0036】
加熱装置13の加熱用通路は、熱媒体を流通させる通路である。発熱部は、電力を供給されることによって、加熱用通路を流通する熱媒体を加熱する。発熱部としては、具体的に、PTC素子やニクロム線を採用することができる。加熱装置13は、水冷媒熱交換器12と共に、熱媒体を加熱する加熱部を構成する。
【0037】
加熱装置13の出口には、ヒータコア11の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア11は、熱媒体と後述する送風機62から送風された送風空気とを熱交換させる熱交換器である。ヒータコア11は、水冷媒熱交換器12や加熱装置13等によって加熱された熱媒体の有する熱を熱源として送風空気を加熱する。ヒータコア11は、後述する室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。
【0038】
ヒータコア11の熱媒体出口には、第1熱媒体三方弁30aの流入口側が接続されている。第1熱媒体三方弁30aは、3つの流入出口を有する三方式の流量調整弁により構成されている。第1熱媒体三方弁30aの他の流入出口には、第5接続部26eを介して、第1水ポンプ23aの吸入口側が接続されている。第1熱媒体三方弁30aにおけるもう一つの流入出口には、第1接続通路25aを介して、後述する第1接続部26aが接続されている。
【0039】
従って、第1熱媒体三方弁30aは、ヒータコア11から流出した熱媒体のうち、第1水ポンプ23aの吸入口側へ流出させる熱媒体流量と、第1接続通路25a側へ流出させる熱媒体流量との流量比を連続的に調整することができる。第1熱媒体三方弁30aは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0040】
更に、第1熱媒体三方弁30aは、ヒータコア11から流出した熱媒体の全流量を、第1水ポンプ23a側及び第1接続通路25a側の何れか一方へ流出させることができる。これにより、第1熱媒体三方弁30aは、熱媒体回路5の回路構成を切り替えることができる。従って、第1熱媒体三方弁30aは回路切替部の一部を構成する。
【0041】
図1に示すように、高温側熱媒体回路10における第1水ポンプ23aと水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bとの間には、第2熱媒体三方弁30bが配置されている。第2熱媒体三方弁30bの構成は、第1熱媒体三方弁30aと同様である。
【0042】
第2熱媒体三方弁30bにおける一方の流入出口には、第1水ポンプ23aの吐出口側が接続されている。そして、第2熱媒体三方弁30bにおける他方の流入出口には、後述する第2接続部26bを介して、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける熱媒体入口側が接続されている。第2熱媒体三方弁30bにおける別の流入出口には、後述する第3接続通路25cが接続されている。
【0043】
第2熱媒体三方弁30bは、第1熱媒体三方弁30aと同様に、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。つまり、第2熱媒体三方弁30bは、熱媒体回路5の回路構成を切り替えることができるので、第1熱媒体三方弁30aと同様に、回路切替部の一部を構成する。
【0044】
次に、低温側熱媒体回路15の構成について説明する。低温側熱媒体回路15には、発熱機器16の熱媒体通路16aと、ラジエータ17と、第2水ポンプ23b等が配置されている。第2水ポンプ23bは、発熱機器16における熱媒体通路16aの一端部側に向かって熱媒体を圧送する。第2水ポンプ23bの基本的構成は、第1水ポンプ23aと同様である。第2水ポンプ23bは、第2熱媒体ポンプの一例に相当する。
【0045】
第2水ポンプ23bの吐出口側には、後述する第7接続部26g及び第3接続部26cを介して、第1熱媒体開閉弁31aにおける一方の流入出口が接続されている。第1熱媒体開閉弁31aは、第2水ポンプ23bの吐出口と発熱機器16の熱媒体通路16aとを接続する熱媒体通路を開閉することで熱媒体の流れの有無を切り替える。
【0046】
第1熱媒体開閉弁31aは、制御装置70から出力される制御電圧によって、その作動が制御される電磁弁である。従って、第1熱媒体開閉弁31aは、熱媒体回路5の回路構成を切り替える回路切替部の一部を構成する。
【0047】
そして、第1熱媒体開閉弁31aにおける他方の流入出口には、第1接続部26aを介して、発熱機器16の熱媒体通路16aにおける入口側が接続されている。発熱機器16の熱媒体通路16aは、発熱機器16の外殻を形成するハウジング部或いはケースの内部等に形成されている。
【0048】
発熱機器16の熱媒体通路16aは、熱媒体を流通させることで発熱機器16の温度を調整する為の熱媒体通路である。換言すると、発熱機器16の熱媒体通路16aは、熱媒体回路5を循環する熱媒体との熱交換によって、発熱機器16の温度調整を行う温度調整部として機能する。
【0049】
発熱機器16における熱媒体通路16aの他端側には、第9接続部26iを介して、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cが接続されている。第3熱媒体三方弁30cの構成は、第1熱媒体三方弁30aと同様である。第3熱媒体三方弁30cの一方の流入出口には、第9接続部26i側の熱媒体通路が接続されている。第3熱媒体三方弁30cの他方の流入出口には、ラジエータ17の熱媒体入口側が接続されている。そして、第3熱媒体三方弁30cにおける別の流入出口には、迂回通路18が接続されている。
【0050】
従って、第3熱媒体三方弁30cは、第9接続部26i側から流入した熱媒体のうち、ラジエータ17側へ流出させる熱媒体流量と、迂回通路18側へ流出させる熱媒体流量との流量比を連続的に調整できる。この為、第3熱媒体三方弁30cは、ラジエータ17側を通過する熱媒体流量と、迂回通路18側を通過する熱媒体流量との流量比を調整する為の流量調整部19を構成する。
【0051】
そして、ラジエータ17は、内部を流通する熱媒体と外気とを熱交換させる熱交換器である。従って、ラジエータ17は、内部を流通する熱媒体の熱を外気に放熱する。ラジエータ17の熱媒体出口側は、第3接続部26cを介して、第2水ポンプ23bの吸入口側に接続されている。ラジエータ17は駆動装置室内の前方側に配置されている。この為、ラジエータ17を、後述する室外熱交換器46と一体的に構成することも可能である。
【0052】
迂回通路18は、第2熱媒体三方弁30bを通過した熱媒体の流れについて、ラジエータ17を迂回させる為の熱媒体通路である。迂回通路18の端部は、ラジエータ17の熱媒体出口と第2水ポンプ23bの吸入口を接続する熱媒体通路に配置された第3接続部26cに接続されている。
【0053】
続いて、機器用熱媒体回路20の構成について説明する。機器用熱媒体回路20には、バッテリ21の熱媒体通路21aと、チラー22の熱媒体通路22bと、第3水ポンプ23c等が配置されている。第3水ポンプ23cは、バッテリ21の熱媒体通路21aの一端部側に向かって熱媒体を圧送する。第3水ポンプ23cの基本的構成は、第1水ポンプ23aと同様である。第3水ポンプ23cは、第3熱媒体ポンプの一例に相当する。
【0054】
第3水ポンプ23cの吐出口には、第4接続部26dを介して、チラー22の熱媒体通路22bにおける入口側が接続されている。チラー22は、機器用熱媒体回路20の構成機器であると同時に、冷凍サイクル40の構成機器の1つである。チラー22は、冷凍サイクル40の冷媒を流通させる冷媒通路22aと、熱媒体回路5の熱媒体を流通させる熱媒体通路22bを有している。
【0055】
チラー22は、伝熱性に優れる同種の金属(例えば、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。これにより、冷媒通路22aを流通する冷媒と熱媒体通路22bを流通する熱媒体は、互いに熱交換することができる。チラー22は、冷凍サイクル40において、熱媒体通路22bを流通する熱媒体の熱を、冷媒通路12aを流通する低圧冷媒に吸熱させる吸熱器である。
【0056】
チラー22の熱媒体通路22bにおける熱媒体出口側には、バッテリ21の熱媒体通路21aが接続されている。バッテリ21は、モータジェネレータ等へ供給される電力を蓄える二次電池(例えば、リチウムイオン電池)である。バッテリ21は、複数の電池セルを直列或いは並列に接続することによって形成された組電池である。バッテリ21は、充放電時に発熱する。
【0057】
バッテリ21の熱媒体通路21aは、熱媒体を流通させることによって、バッテリ21の温度調整を行う為の熱媒体通路であり、機器用熱交換部を構成している。即ち、バッテリ21の熱媒体通路21aは、熱媒体回路5の熱媒体が流出入可能に接続されている。
【0058】
又、バッテリ21の熱媒体通路21aは、チラー22にて冷却された熱媒体が流通した場合、低温の熱媒体を冷熱源としてバッテリ21を冷却する冷却部として機能する。又、バッテリ21の熱媒体通路21aは、高温の熱媒体が流通した場合、高温の熱媒体を熱源としてバッテリ21を温める加温部として機能する。
【0059】
そして、バッテリ21の熱媒体通路21aは、バッテリ21の専用ケースに形成されている。バッテリ21の熱媒体通路21aの通路構成は、専用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した通路構成となっている。
【0060】
これにより、熱媒体通路21aは、バッテリ21の全域において、熱媒体との熱交換を均等に行うことができる。例えば、熱媒体通路21aは、全ての電池セルの有する熱を均等に吸熱して、全ての電池セルを均等に冷却できるように形成されている。バッテリ21の熱媒体通路21aの出口には、後述する第6接続部26fを介して、第3水ポンプ23cの吸入口が接続されている。
【0061】
機器用熱媒体回路20において、第6接続部26fと第3水ポンプ23cの吸入口との間には、第4熱媒体逆止弁32dが配置されている。第4熱媒体逆止弁32dは、熱媒体が第6接続部26f側から第3水ポンプ23cの吸入口側へ流れることを許容し、第3水ポンプ23cの吸入口側から第6接続部26f側へ流れることを禁止する。
【0062】
図1に示すように、熱媒体回路5は、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を熱媒体の流出入が可能なように接続する回路接続部25を有している。本実施形態における回路接続部25は、第1接続通路25aと、第2接続通路25bと、第3接続通路25cと、第4接続通路25dと、第5接続通路25eと、第6接続通路25fを有している。
【0063】
上述したように、第1接続通路25aの一端部は、第1熱媒体三方弁30aにおけるもう一つの流入出口に接続されている。そして、第1接続通路25aの他端部は、第1接続部26aに接続されている。第1接続部26aは、発熱機器16の熱媒体通路16aと第1熱媒体開閉弁31aの間に位置している。即ち、第1接続通路25aは、高温側熱媒体回路10と低温側熱媒体回路15の間における熱媒体の流出入が可能なように接続している。
【0064】
第2接続通路25bの一端部は、第2接続部26bに接続されている。第2接続部26bは、第2熱媒体三方弁30bにおける他方の流入出口と、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける熱媒体入口側の間に位置している。又、第2接続通路25bの他端部は、第3接続部26cに接続されている。第3接続部26cは、第1熱媒体開閉弁31aと、第2水ポンプ23bの吐出口との間において、第7接続部26gよりも第1熱媒体開閉弁31a側に配置されている。
【0065】
従って、第2接続通路25bは、第1接続通路25aと同様に、高温側熱媒体回路10と低温側熱媒体回路15の間における熱媒体の流出入が可能なように接続している。そして、第2接続通路25bには、第1熱媒体逆止弁32aが配置されている。第1熱媒体逆止弁32aは、熱媒体が第3接続部26c側から第2接続部26b側へ流れることを許容し、第2接続部26b側から第3接続部26c側へ流れることを禁止する。
【0066】
第3接続通路25cの一端部は、第2熱媒体三方弁30bにおける別の流入出口に接続されている。そして、第3接続通路25cの他端部は、第4接続部26dに接続されている。第4接続部26dは、第3水ポンプ23cの吐出口とチラー22の熱媒体通路22bにおける熱媒体入口との間において、第8接続部26hよりもチラー22側に配置されている。従って、第3接続通路25cは、高温側熱媒体回路10と機器用熱媒体回路20の間における熱媒体の流出入が可能なように接続している。
【0067】
第4接続通路25dの一端部は、第5接続部26eに接続されている。第5接続部26eは、第1熱媒体三方弁30aの他の流入出口と第1水ポンプ23aの吸入口との間に位置している。
【0068】
そして、第4接続通路25dの他端部は、第6接続部26fに接続されている。第6接続部26fは、バッテリ21における熱媒体通路21aの出口と第4熱媒体逆止弁32dの入口との間に配置されている。つまり、第4接続通路25dは、第3接続通路25cと同様に、高温側熱媒体回路10と機器用熱媒体回路20の間における熱媒体の流出入が可能なように接続している。
【0069】
又、第4接続通路25dには、第2熱媒体逆止弁32bが配置されている。第2熱媒体逆止弁32bは、熱媒体が第6接続部26f側から第5接続部26e側へ流れることを許容し、第5接続部26e側から第6接続部26f側へ流れることを禁止する。
【0070】
第5接続通路25eの一端部は、第7接続部26gに接続されている。第7接続部26gは、第1熱媒体開閉弁31aと、第2水ポンプ23bの吐出口との間において、第3接続部26cよりも第2水ポンプ23b側に配置されている。
【0071】
そして、第5接続通路25eの他端部は、第8接続部26hに接続されている。第8接続部26hは、第3水ポンプ23cの吐出口とチラー22の熱媒体通路22bにおける熱媒体入口との間において、第4接続通路25dよりも第3水ポンプ23c側に配置されている。従って、第5接続通路25eは、低温側熱媒体回路15と機器用熱媒体回路20の間における熱媒体の流出入が可能なように接続している。
【0072】
又、第5接続通路25eには、第3熱媒体逆止弁32cが配置されている。第3熱媒体逆止弁32cは、熱媒体が第7接続部26g側から第8接続部26h側へ流れることを許容し、第8接続部26h側から第7接続部26g側へ流れることを禁止する。
【0073】
第6接続通路25fの一端部は、第9接続部26iに接続されている。第9接続部26iは、発熱機器16の熱媒体通路16aにおける出口と、第3熱媒体三方弁30cの流入口との間に配置されている。そして、第6接続通路25fの他端部は、上述した第6接続部26fに接続されている。従って、第6接続通路25fは、第5接続通路25eと同様に、低温側熱媒体回路15と機器用熱媒体回路20の間における熱媒体の流出入が可能なように接続している。
【0074】
又、第6接続通路25fには、第2熱媒体開閉弁31bが配置されている。第2熱媒体開閉弁31bは、第1熱媒体開閉弁31aと同様の構成である。従って、第2熱媒体開閉弁31bは、熱媒体回路5の回路構成を切り替える回路切替部の一部を構成する。
【0075】
本実施形態の回路接続部25は、第1接続通路25a~第6接続通路25fにより構成されている為、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を熱媒体の流出入が可能なように接続している。
【0076】
そして、本実施形態に係る熱管理システム1においては、第1熱媒体三方弁30a、第2熱媒体三方弁30b、第1熱媒体開閉弁31a及び第2熱媒体開閉弁31bの作動をそれぞれ制御することで、熱媒体回路5の回路構成を変更することができる。従って、第1熱媒体三方弁30a等及びこれらの作動を制御する構成は回路切替部の一例に相当する。
【0077】
尚、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cは、その作動により、熱媒遺体の流れをラジエータ17側への流れと、迂回通路18側への流れとに切り替えることができる。従って、流量調整部19を、回路切替部の一部に包含することも可能である。
【0078】
続いて、本実施形態に係る熱管理システム1における冷凍サイクル40の構成について図面を参照して説明する。図2に示すように、冷凍サイクル40には、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44b、冷却用膨張弁44c、室外熱交換器46、室内蒸発器47、チラー22等が接続されている。
【0079】
冷凍サイクル40の構成機器のうち、圧縮機41は、冷凍サイクル40において冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機41は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。
【0080】
圧縮機41は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機41は、後述する制御装置70から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0081】
圧縮機41の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの入口側が接続されている。上述したように、水冷媒熱交換器12は、冷媒通路12aと熱媒体通路12bを有している。
【0082】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手構造の第1三方継手42aの流入口側が接続されている。三方継手構造としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0083】
更に、冷凍サイクル40には、第1三方継手42aと同様に構成された第2三方継手42b~第6三方継手42fが配置されている。これらの第2三方継手42b~第6三方継手42fの基本的構成は、第1三方継手42aと同様である。
【0084】
第1三方継手42aの一方の流出口には、暖房用膨張弁44aの入口側が接続されている。第1三方継手42aの他方の流出口には、冷媒バイパス通路50を介して、第2三方継手42bの一方の流入口側が接続されている。冷媒バイパス通路50には、除湿用開閉弁43aが配置されている。
【0085】
除湿用開閉弁43aは、第1三方継手42aの他方の流出口側と第2三方継手42bの一方の流入口側とを接続する冷媒通路を開閉する電磁弁である。さらに、冷凍サイクル40は、後述するように、暖房用開閉弁43bを備えている。暖房用開閉弁43bの基本的構成は、除湿用開閉弁43aと同様である。除湿用開閉弁43aおよび暖房用開閉弁43bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。
【0086】
暖房用膨張弁44aは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水冷媒熱交換器12の冷媒通路12aから流出した高圧冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁44aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0087】
さらに、冷凍サイクル40は、冷房用膨張弁44b及び冷却用膨張弁44cを備えている。冷房用膨張弁44bおよび冷却用膨張弁44cの基本的構成は、暖房用膨張弁44aと同様である。
【0088】
暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44bおよび冷却用膨張弁44cは、全開機能および全閉機能をそれぞれ有している。全開機能は、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能させる。全閉機能は、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞させる機能である。そして、この全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44bおよび冷却用膨張弁44cは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。
【0089】
従って、本実施形態の暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44bおよび冷却用膨張弁44cは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44bおよび冷却用膨張弁44cは、制御装置70から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
【0090】
暖房用膨張弁44aの出口には、室外熱交換器46の冷媒入口側が接続されている。そして、外気ファン46aは、室外熱交換器46に対して外気を送風するように配置されている。室外熱交換器46は、暖房用膨張弁44aから流出した冷媒と外気ファン46aにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器46は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器46に走行風を当てることができる。
【0091】
室外熱交換器46の冷媒流出口には、第3三方継手42cの流入口側が接続されている。第3三方継手42cの一方の流出口には、暖房用冷媒通路51を介して、第4三方継手42dの一方の流入口側が接続されている。暖房用冷媒通路51には、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁43bが配置されている。
【0092】
第3三方継手42cの他方の流出口には、第2三方継手42bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手42cの他方の流出口側と第2三方継手42bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、冷媒逆止弁45が配置されている。冷媒逆止弁45は、第3三方継手42c側から第2三方継手42b側へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手42b側から第3三方継手42c側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0093】
そして、第2三方継手42bの流出口には、第5三方継手42eの流入口側が接続されている。第5三方継手42eの一方の流出口には、冷房用膨張弁44bの入口側が接続されている。第5三方継手42eの他方の流出口には、冷却用膨張弁44cの入口側が接続されている。
【0094】
冷房用膨張弁44bは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、第5三方継手42eを通過した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷房用減圧部である。
【0095】
冷房用膨張弁44bの出口には、室内蒸発器47の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器47は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。室内蒸発器47は、冷房用膨張弁44bにて減圧された低圧冷媒と送風機62から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0096】
冷却用膨張弁44cは、少なくともバッテリ21の冷却を行う運転モード時に、第5三方継手42eを通過した冷媒を減圧させると共に、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷却用減圧部である。
【0097】
そして、冷却用膨張弁44cの出口には、チラー22の冷媒通路22aの入口側が接続されている。チラー22は、上述したように、冷媒通路22aと熱媒体通路22bとを有している。そして、チラー22は、冷却用膨張弁44cで減圧された低圧冷媒と、熱媒体通路22bを流通する熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる冷却用蒸発器である。チラー22の冷媒通路22aの出口には、第6三方継手42fの他方の流入口側が接続されている。
【0098】
そして、室内蒸発器47の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁48の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁48は、室内蒸発器47の着霜を抑制するために、室内蒸発器47における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁48は、室内蒸発器47の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
【0099】
これにより、蒸発圧力調整弁48は、室内蒸発器47における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器47の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁48の出口には、第6三方継手42fの一方の流入口側が接続されている。そして、第6三方継手42fの流出口には、第4三方継手42dの他方の流入口側が接続されている。
【0100】
第4三方継手42dの流出口には、アキュムレータ49の入口側が接続されている。アキュムレータ49は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器であり、貯液部の一例に相当する。アキュムレータ49の気相冷媒出口には、圧縮機41の吸入口側が接続されている。
【0101】
冷凍サイクル40によれば、暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44b、冷却用膨張弁44c、除湿用開閉弁43a、暖房用開閉弁43bの作動を制御することで、様々な冷媒回路に切り替えることができる。即ち、冷凍サイクル40は、暖房モードの冷媒回路、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路等に切り替えることができる。
【0102】
次に、熱管理システム1の室内空調ユニット60について、図3を参照して説明する。室内空調ユニット60は、熱媒体回路5及び冷凍サイクル40によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット60は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0103】
室内空調ユニット60は、その外殻を形成するケーシング61内に形成された空気通路の内部に送風機62、室内蒸発器47、ヒータコア11等を収容している。ケーシング61は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。ケーシング61は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0104】
ケーシング61の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
【0105】
内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0106】
内外気切替装置63の送風空気流れ下流側には、送風機62が配置されている。送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機62は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機62は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0107】
送風機62の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器47、ヒータコア11が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器47は、ヒータコア11よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
【0108】
ケーシング61内には、室内蒸発器47通過後の送風空気を、ヒータコア11を迂回して流す冷風バイパス通路65が設けられている。又、ケーシング61内の室内蒸発器47の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア11の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。
【0109】
エアミックスドア64は、室内蒸発器47通過後の送風空気のうち、ヒータコア11側を通過する送風空気の風量と冷風バイパス通路65を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア64は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0110】
ケーシング61内のヒータコア11及び冷風バイパス通路65の送風空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア11にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路65を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。
【0111】
そして、ケーシング61の送風空気流れ下流部には、混合空間にて混合された送風空気(即ち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
【0112】
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0113】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0114】
従って、エアミックスドア64が、ヒータコア11を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整される。
【0115】
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
【0116】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成する。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0117】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0118】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0119】
更に、乗員が操作パネル80に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0120】
続いて、本実施形態に係る熱管理システム1の制御系について、図4を参照して説明する。制御装置70は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路を有している。制御装置70は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。そして、制御装置70は、演算、処理結果に基づいて、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。熱媒体回路5における制御対象機器には、加熱装置13、流量調整部19、第1水ポンプ23a、第2水ポンプ23b、第3水ポンプ23c、第1熱媒体三方弁30a、第2熱媒体三方弁30b、第1熱媒体開閉弁31a、第2熱媒体開閉弁31bが含まれている。
【0121】
冷凍サイクル40における制御対象機器には、圧縮機41、除湿用開閉弁43a、暖房用開閉弁43b、暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44b、冷却用膨張弁44cが含まれている。更に、室内空調ユニット60における制御対象機器には、送風機62や、内外気切替装置63及びエアミックスドア64の電動アクチュエータが含まれている。
【0122】
図4に示すように、制御装置70の入力側には、熱管理システム1の運転態様を制御する為の各種検出センサが接続されている。従って、制御装置70には、各種検出センサの検出信号が入力される。
【0123】
各種検出センサには、内気温センサ71、外気温センサ72、日射センサ73が含まれている。内気温センサ71は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ72は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ73は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
【0124】
図4に示すように、各種検出センサには、吸入冷媒温度センサ74a、熱交換器温度センサ74b、蒸発器温度センサ74f、吸入冷媒圧力センサ75が含まれている。吸入冷媒温度センサ74aは、圧縮機41へ吸入される冷媒の吸入冷媒温度Tsを検出する吸入冷媒温度検出部である。熱交換器温度センサ74bは、水冷媒熱交換器12を通過する冷媒の温度(熱交換器温度)TCを検出する熱交換器温度検出部である。熱交換器温度センサ74bは、具体的に、水冷媒熱交換器12の外表面の温度を検出している。
【0125】
蒸発器温度センサ74fは、室内蒸発器47における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。蒸発器温度センサ74fは、具体的に、室内蒸発器47の熱交換フィンの温度を検出している。吸入冷媒圧力センサ75は、圧縮機41へ吸入される冷媒の吸入冷媒圧力Psを検出する吸入冷媒圧力検出部である。
【0126】
更に、各種検出センサには、第1熱媒体温度センサ76a、第2熱媒体温度センサ76b、バッテリ温度センサ77a、発熱機器温度センサ77b、空調風温度センサ78が含まれている。
【0127】
第1熱媒体温度センサ76aは、ヒータコア11へ流入する熱媒体の温度TW1を検出する第1熱媒体温度検出部である。第2熱媒体温度センサ76bは、バッテリ21の熱媒体通路21aへ流入する熱媒体の温度TW2を検出する第2熱媒体温度検出部である。空調風温度センサ78は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0128】
バッテリ温度センサ77aは、車両に搭載されたバッテリ21の温度であるバッテリ温度TBAを検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサ77aは、複数の温度検出部を有し、バッテリ21の複数の箇所の温度を検出している。この為、制御装置70では、バッテリ21の各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度TBAとしては、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
【0129】
発熱機器温度センサ77bは、発熱機器16の温度である発熱機器温度TMGを検出する発熱機器温度検出部である。発熱機器温度センサ77bは、発熱機器16の外殻を形成するハウジングの外表面の温度を検出している。
【0130】
図4に示すように、制御装置70の入力側には、操作パネル80が接続されている。操作パネル80は、車室内前部の計器盤付近に配置されており、各種操作スイッチを有している。従って、制御装置70には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0131】
操作パネル80の各種操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等が含まれている。オートスイッチは、熱管理システム1の自動制御運転を設定あるいは解除する際に操作される。エアコンスイッチは、室内蒸発器47で送風空気の冷却を行うことを要求する際に操作される。風量設定スイッチは、送風機62の風量をマニュアル設定する際に操作される。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。
【0132】
尚、制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0133】
例えば、制御装置70のうち、圧縮機41の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機41の回転数)を制御する構成は、吐出能力制御部70aを構成している。又、制御装置70のうち、冷媒回路切替部を構成する各種構成機器の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部70bを構成している。冷媒回路切替部の構成機器には、除湿用開閉弁43a、暖房用開閉弁43b、暖房用膨張弁44a、冷房用膨張弁44b、冷却用膨張弁44cが含まれている。
【0134】
そして、制御装置70のうち、熱媒体回路5の回路切替部を構成する各構成機器の作動を制御する構成は、熱媒体回路切替制御部70cを構成している。回路切替部の構成機器には、第1熱媒体三方弁30a、第2熱媒体三方弁30b、第3熱媒体三方弁30c、第1熱媒体開閉弁31a、第2熱媒体開閉弁31bが含まれている。更に構成機器として、第1水ポンプ23a、第2水ポンプ23b、第3水ポンプ23cを含めても良い。熱媒体回路切替制御部70cは、熱媒体回路5における回路切替部の一例に相当する。
【0135】
そして、本実施形態に係る熱管理システム1では、冷凍サイクル40は、冷媒回路切替部の各構成機器の作動を制御することで、種々の冷媒回路に切り替えることができる。種々の冷媒回路には、冷房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路、直列除湿暖房モードの冷媒回路、並列除湿暖房の冷媒回路、冷却モードの冷媒回路、冷房冷却モードの冷媒回路が含まれている。
【0136】
具体的に説明すると、冷房モードの冷媒回路に切り替える場合、制御装置70は、暖房用膨張弁44aを全開状態とし、冷房用膨張弁44bを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とする。この時、制御装置70は、冷却用膨張弁44cを全閉状態にする。又、制御装置70は、除湿用開閉弁43a及び暖房用開閉弁43bを何れも閉じておく。
【0137】
これにより、冷房モードでは、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、(暖房用膨張弁44a)、室外熱交換器46、冷媒逆止弁45、冷房用膨張弁44b、室内蒸発器47、蒸発圧力調整弁48、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。冷房モードでは、水冷媒熱交換器12及び室外熱交換器46が放熱器として機能し、室内蒸発器47が吸熱器として機能する。
【0138】
次に、暖房モードの冷媒回路について説明する。暖房モードの場合、制御装置70は、暖房用膨張弁44aを絞り状態とし、冷房用膨張弁44b及び冷却用膨張弁44cを全閉状態とする。そして、制御装置70は、除湿用開閉弁43aを閉じ、暖房用開閉弁43bを開く。
【0139】
これにより、暖房モードでは、圧縮機41、暖房用膨張弁44a、室外熱交換器46、暖房用開閉弁43b、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。暖房モードでは、水冷媒熱交換器12が放熱器として機能し、室外熱交換器46が吸熱器として機能する。
【0140】
続いて、直列除湿暖房モードの冷媒回路について説明する。直列除湿暖房モードの場合には、制御装置70は、暖房用開閉弁43b及び冷房用膨張弁44bをそれぞれに定められた絞り状態とし、冷却用膨張弁44cを全閉状態とする。又、制御装置70は、除湿用開閉弁43a及び暖房用開閉弁43bを閉じる。
【0141】
これにより、直列除湿暖房モードでは、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁44a、室外熱交換器46、冷媒逆止弁45、冷房用膨張弁44b、室内蒸発器47、蒸発圧力調整弁48、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。
【0142】
直列除湿暖房モードでは、水冷媒熱交換器12が放熱器として機能し、室内蒸発器47が吸熱器として機能する。そして、室外熱交換器46については、室外熱交換器46における冷媒の飽和温度が外気温よりも高くなっている場合には放熱器として機能し、室外熱交換器46における冷媒の飽和温度が外気温よりも低くなっている場合は吸熱器として機能する。
【0143】
次に、並列除湿暖房モードの冷媒回路について説明する。並列除湿暖房モードの場合、制御装置70は、暖房用膨張弁44a及び冷房用膨張弁44bをそれぞれに定められた絞り状態とし、冷却用膨張弁44cを全閉状態にする。又、制御装置70は、除湿用開閉弁43a及び暖房用膨張弁44aを全開状態にする。
【0144】
これにより、並列除湿暖房モードでは、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁44a、室外熱交換器46、暖房用開閉弁43b、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。同時に、冷媒は、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、除湿用開閉弁43a、冷房用膨張弁44b、室内蒸発器47、蒸発圧力調整弁48、アキュムレータ49、圧縮機41の順に流れて循環する。そして、並列除湿暖房モードでは、水冷媒熱交換器12が放熱器として機能し、室外熱交換器46及び室内蒸発器47が吸熱器として機能する。
【0145】
続いて、冷却モードの冷媒回路について説明する。冷却モードの場合には、制御装置70は、暖房用膨張弁44aを全開状態とし、冷却用膨張弁44cを絞り状態とする。この時、制御装置70は、冷房用膨張弁44bを全閉状態にする。又、制御装置70は、除湿用開閉弁43a及び暖房用開閉弁43bを何れも閉じておく。
【0146】
これにより、冷却モードでは、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、(暖房用膨張弁44a)、室外熱交換器46、冷媒逆止弁45、冷却用膨張弁44c、チラー22、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。冷却モードでは、水冷媒熱交換器12及び室外熱交換器46が放熱器として機能し、チラー22が吸熱器として機能する。
【0147】
最後に、冷房冷却モードの冷媒回路について説明する。冷房冷却モードの場合、制御装置70は、暖房用膨張弁44aを全開状態とし、冷房用膨張弁44b及び冷却用膨張弁44cを、それぞれに定められた絞り状態とする。又、制御装置70は、除湿用開閉弁43a及び暖房用開閉弁43bを何れも閉じておく。
【0148】
これにより、冷房冷却モードでは、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、(暖房用膨張弁44a)、室外熱交換器46、冷媒逆止弁45、冷房用膨張弁44b、室内蒸発器47、蒸発圧力調整弁48、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。同時に、圧縮機41、水冷媒熱交換器12、(暖房用膨張弁44a)、室外熱交換器46、冷媒逆止弁45、冷却用膨張弁44c、チラー22、アキュムレータ49、圧縮機41の順で冷媒が流れて循環する。冷房冷却モードでは、水冷媒熱交換器12及び室外熱交換器46が放熱器として機能し、室内蒸発器47及びチラー22が吸熱器として機能する。
【0149】
次に、上述のように構成された熱管理システム1の運転モードについて、図5図10を参照して説明する。本実施形態に係る熱管理システム1は、車室内空調の状態や、発熱機器16及びバッテリ21の状態に応じて、複数種類の運転モードを切り替えることができる。
【0150】
具体的には、運転モードを切り替える場合、流量調整部19、第1水ポンプ23a、第2水ポンプ23b、第3水ポンプ23c、第1熱媒体三方弁30a、第2熱媒体三方弁30b、第1熱媒体開閉弁31a、第2熱媒体開閉弁31bの作動が制御される。
【0151】
以下の説明では、本実施形態に係る熱管理システム1の運転モードとして、第1運転モード~第6運転モードについて説明する。尚、冷凍サイクル40の運転モードについては、既に説明している為、主に熱媒体回路5の回路構成等について詳細に説明する。
【0152】
(1)第1運転モード
第1運転モードは、冷凍サイクル40を作動させることなく、熱媒体回路5の熱媒体を介して、発熱機器16やバッテリ21の廃熱を活用する際に、熱管理システム1で実行される運転モードである。
【0153】
第1運転モードでは、制御装置70は、第1水ポンプ23a及び第2水ポンプ23bを作動させると共に、第3水ポンプ23cを停止状態にする。又、制御装置70は、加熱装置13及び冷凍サイクル40(即ち、圧縮機41)の作動を停止させる。更に、制御装置70は、第1熱媒体開閉弁31a及び第2熱媒体開閉弁31bを何れも閉状態にする。
【0154】
制御装置70は、第1熱媒体三方弁30aの作動を制御して、ヒータコア11側の流入出口と第1接続通路25a側の流入出口を連通させると共に、第5接続部26e側の流入出口を閉塞させる。
【0155】
そして、制御装置70は、第2熱媒体三方弁30bの作動を制御して、第1水ポンプ23a側の流入出口と第2接続部26b側の流入出口を連通させると共に、第3接続通路25c側の流入出口を閉塞させる。
【0156】
又、制御装置70は、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cの作動を制御して、第9接続部26i側の流入出口と迂回通路18側の流入出口を連通させると共に、ラジエータ17側の流入出口を閉塞させる。
【0157】
これにより、第1運転モードの熱媒体回路5においては、図5にて太線矢印で示すように熱媒体が循環する。具体的に、第1運転モードにおいては、熱媒体は、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11、第1熱媒体三方弁30a、発熱機器16、流量調整部19、第2水ポンプ23bの順に流れる。そして、第2水ポンプ23bから吐出された熱媒体は、第2水ポンプ23b、第3熱媒体逆止弁32c、チラー22、バッテリ21、第2熱媒体逆止弁32b、第1水ポンプ23aの順に流れる。
【0158】
図5からわかるように、第1運転モードにおいて、熱媒体回路5の熱媒体は、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を経由して、発熱機器16、バッテリ21、加熱装置13、ヒータコア11を通過するように循環している。
【0159】
この第1運転モードにおける熱媒体回路5の回路構成によれば、熱媒体回路5の熱媒体は、発熱機器16の熱媒体通路16aを通過する。この時、熱媒体は、発熱機器16の有する熱を吸熱して流出する。
【0160】
発熱機器16から流出した熱媒体は、流量調整部19にて迂回通路18を経由して、第2水ポンプ23bの吸入口に到達する。つまり、ラジエータ17を迂回する為、熱媒体には、発熱機器16から吸熱した廃熱を蓄えておくことができる。尚、熱媒体の温度が高すぎる場合は、ラジエータ17側と迂回通路18側の流量比を、流量調整部19で調整して、余剰の熱量を熱媒体から外気に放熱するようにしても良い。
【0161】
第2水ポンプ23bから吐出された熱媒体は、第3熱媒体逆止弁32c及びチラー22を介して、バッテリ21の熱媒体通路21aに流入する。バッテリ21の熱媒体通路21aを通過する際に、熱媒体は、バッテリ21と熱交換して、バッテリ21の温度調整を行う。
【0162】
バッテリ21の熱媒体通路21aから流出すると、熱媒体は、第2熱媒体逆止弁32bを介して、第1水ポンプ23aの吸入口から吸入される。第1水ポンプ23aから吐出された熱媒体は、第2熱媒体三方弁30b、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13を介して、ヒータコア11に流入する。ヒータコア11に流入した熱媒体は、空調対象空間である車室内に送風される送風空気に対して放熱する。
【0163】
即ち、第1運転モードの熱管理システム1によれば、発熱機器16及びバッテリ21の廃熱にて加熱された熱媒体がヒータコア11を経由して循環する為、発熱機器16及びバッテリ21の廃熱を利用した車室内暖房を実現することができる。
【0164】
第1運転モードでは、冷凍サイクル40を作動させることなく、熱媒体の循環により発熱機器16等の廃熱をヒータコア11に輸送している為、熱交換効率等に伴う熱損失を生じさせることなく、車室内暖房に利用することができる。
【0165】
又、図5に示すように、第1運転モードにおける熱媒体の循環径路には、第3水ポンプ23cは含まれておらず、第3水ポンプ23cは停止状態である。換言すると、第1運転モードにおける熱媒体の循環径路は、熱媒体の循環径路から、第3水ポンプ23cが外れるように構成されている。
【0166】
つまり、第1運転モードにおいては、第1水ポンプ23a及び第2水ポンプ23bによって、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15、機器用熱媒体回路20を経由するように熱媒体を循環させている。この為、第1運転モードによれば、冷凍サイクル40及び第3水ポンプ23cを停止状態としたまま、発熱機器16等の廃熱を用いた車室内暖房を行う為、車室内暖房の省エネルギ化を図ることができる。
【0167】
(2)第2運転モード
第2運転モードは、例えば、バッテリ21の廃熱を利用した発熱機器16の暖機を行いつつ、車室内の暖房を行う場合に、熱管理システム1で実行される。
【0168】
第2運転モードにおいては、制御装置70は、第1水ポンプ23a及び第2水ポンプ23bを作動させると共に、第3水ポンプ23cを停止状態にする。又、制御装置70は、加熱装置13を予め定められた発熱量で発熱させると共に、冷凍サイクル40の作動を停止させる。更に、制御装置70は、第1熱媒体開閉弁31a及び第2熱媒体開閉弁31bを何れも開状態にする。
【0169】
制御装置70は、第1熱媒体三方弁30aの作動を制御して、ヒータコア11側の流入出口と第5接続部26e側の流入出口を連通させると共に、第1接続通路25a側の流入出口を閉塞させる。
【0170】
そして、制御装置70は、第2熱媒体三方弁30bの作動を制御して、第1水ポンプ23a側の流入出口と第2接続部26b側の流入出口を連通させると共に、第3接続通路25c側の流入出口を閉塞させる。
【0171】
又、制御装置70は、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cの作動を制御して、第9接続部26i側の流入出口と迂回通路18側の流入出口を連通させると共に、ラジエータ17側の流入出口を閉塞させる。
【0172】
これにより、第2運転モードの熱媒体回路5においては、図6にて太線矢印で示すように熱媒体が循環する。具体的に、第2運転モードにおいては、熱媒体は、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11、第1熱媒体三方弁30a、第1水ポンプ23aの順に流れて循環する。
【0173】
又、第2運転モードでは、第2水ポンプ23b、第1熱媒体開閉弁31a、発熱機器16、流量調整部19、第2水ポンプ23bの順に熱媒体が流れて循環する。同時に、第2水ポンプ23b、第3熱媒体逆止弁32c、チラー22、バッテリ21、第2熱媒体開閉弁31b、流量調整部19、第2水ポンプ23bの順に熱媒体が流れて循環する。
【0174】
図6からわかるように、第2運転モードにおいて、熱媒体回路5の熱媒体は、高温側熱媒体回路10において、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11を通過するように循環している。又、熱媒体回路5の熱媒体は、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を接続して、第2水ポンプ23bを通過する熱媒体の流れに対して、発熱機器16と、バッテリ21及びチラー22とが並列に接続された循環径路を構成している。
【0175】
従って、第2運転モードの高温側熱媒体回路10においては、第1水ポンプ23aから流出した熱媒体は、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13を通過する際に加熱される。そして、加熱装置13から流出した熱媒体は、ヒータコア11にて送風空気に対して放熱する。この為、第2運転モードでは、高温側熱媒体回路10にて熱媒体を循環させることによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0176】
又、第2運転モードでは、低温側熱媒体回路15と機器用熱媒体回路20が第5接続通路25e及び第6接続通路25fを介して接続されている。そして、熱媒体回路5の熱媒体は、バッテリ21の熱媒体通路21aを通過すると共に、発熱機器16の熱媒体通路16aを通過する。従って、熱媒体の流れによって、バッテリ21に生じた廃熱を発熱機器16に移動させることができ、発熱機器16を暖機することができる。
【0177】
(3)第3運転モード
第3運転モードは、例えば、ラジエータ17における外気放熱を利用した発熱機器16及びバッテリ21の温度調整と共に、車室内の暖房を行う場合に、熱管理システム1で実行される。
【0178】
第3運転モードでは、制御装置70は、第1水ポンプ23a及び第2水ポンプ23bを作動させると共に、第3水ポンプ23cを停止状態にする。又、制御装置70は、加熱装置13を予め定められた発熱量で発熱させると共に、冷凍サイクル40(即ち、圧縮機41)の作動を停止させる。更に、制御装置70は、第1熱媒体開閉弁31a及び第2熱媒体開閉弁31bを何れも開状態にする。
【0179】
制御装置70は、第1熱媒体三方弁30aの作動を制御して、ヒータコア11側の流入出口と第5接続部26e側の流入出口を連通させると共に、第1接続通路25a側の流入出口を閉塞させる。
【0180】
そして、制御装置70は、第2熱媒体三方弁30bの作動を制御して、第1水ポンプ23a側の流入出口と第2接続部26b側の流入出口を連通させると共に、第3接続通路25c側の流入出口を閉塞させる。
【0181】
又、制御装置70は、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cの作動を制御して、第9接続部26i側の流入出口とラジエータ17側の流入出口を連通させると共に、迂回通路18側の流入出口を閉塞させる。
【0182】
これにより、第3運転モードの熱媒体回路5においては、図7にて太線矢印で示すように熱媒体が循環する。具体的に、第3運転モードにおいては、熱媒体は、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11、第1熱媒体三方弁30a、第1水ポンプ23aの順に流れて循環する。
【0183】
又、第3運転モードでは、第2水ポンプ23b、第1熱媒体開閉弁31a、発熱機器16、流量調整部19、ラジエータ17、第2水ポンプ23bの順に熱媒体が流れて循環する。同時に、第2水ポンプ23b、第3熱媒体逆止弁32c、チラー22、バッテリ21、第2熱媒体開閉弁31b、流量調整部19、ラジエータ17、第2水ポンプ23bの順に熱媒体が流れて循環する。
【0184】
図7に示すように、第3運転モードにおいても、熱媒体は、高温側熱媒体回路10において、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11を通過するように循環している。又、熱媒体回路5の熱媒体は、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を接続して、ラジエータ17を通過する熱媒体の流れに対して、発熱機器16と、バッテリ21及びチラー22とが並列に接続された循環径路を構成している。
【0185】
従って、第3運転モードの高温側熱媒体回路10において、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13を通過する際に加熱された熱媒体は、ヒータコア11にて送風空気に対して放熱する。この為、第3運転モードでは、高温側熱媒体回路10にて熱媒体を循環させることによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0186】
又、第3運転モードでは、低温側熱媒体回路15と機器用熱媒体回路20が第5接続通路25e及び第6接続通路25fを介して接続されている。そして、バッテリ21の熱媒体通路21aを通過する熱媒体の循環径路と、発熱機器16の熱媒体通路16aを通過する熱媒体の循環径路には、ラジエータ17が含まれている。従って、熱媒体の流れによって、バッテリ21に生じた廃熱及び発熱機器16に生じた廃熱をラジエータ17に移動させることができ、外気に放熱させることができる。つまり、バッテリ21及び発熱機器16を外気放熱によって冷却することができる。
【0187】
(4)第4運転モード
第4運転モードは、例えば、バッテリ21の温度調整と共に、発熱機器16の廃熱を利用した車室内の暖房を行う場合に、熱管理システム1で実行される。
【0188】
第4運転モードにおいては、制御装置70は、第1水ポンプ23a及び第2水ポンプ23bを作動させると共に、第3水ポンプ23cを停止状態にする。又、制御装置70は、加熱装置13を予め定められた発熱量で発熱させると共に、冷凍サイクル40を上述した冷却モードで作動させる。更に、制御装置70は、第1熱媒体開閉弁31a及び第2熱媒体開閉弁31bを何れも閉状態にする。
【0189】
制御装置70は、第1熱媒体三方弁30aの作動を制御して、ヒータコア11側の流入出口と第1接続通路25a側の流入出口を連通させると共に、第5接続部26e側の流入出口を閉塞させる。
【0190】
そして、制御装置70は、第2熱媒体三方弁30bの作動を制御して、第1水ポンプ23a側の流入出口と第3接続通路25c側の流入出口を連通させると共に、第2接続部26b側の流入出口を閉塞させる。
【0191】
又、制御装置70は、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cの作動を制御して、第9接続部26i側の流入出口と迂回通路18側の流入出口を連通させると共に、ラジエータ17側の流入出口を閉塞させる。
【0192】
これにより、第4運転モードの熱媒体回路5においては、図8にて太線矢印で示すように熱媒体が循環する。具体的に、第4運転モードにおいては、熱媒体は、第2水ポンプ23b、第1熱媒体逆止弁32a、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11、第1熱媒体三方弁30a、発熱機器16、流量調整部19、第2水ポンプ23bの順に流れて循環する。
【0193】
そして、第4運転モードでは、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、チラー22、バッテリ21、第2熱媒体逆止弁32b、第1水ポンプ23aの順に熱媒体が流れて循環する。
【0194】
図8に示すように、第4運転モードでは、高温側熱媒体回路10と低温側熱媒体回路15が第1接続通路25a及び第2接続通路25bを介して接続されている。そして、発熱機器16の熱媒体通路16aから流出した熱媒体は、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13を介して、ヒータコア11に流入し、送風空気に対して放熱する。この為、第4運転モードでは、高温側熱媒体回路10及び低温側熱媒体回路15において熱媒体を循環させることで、発熱機器16の廃熱を利用した車室内暖房を実現することができる。
【0195】
又、第4運転モードの熱媒体回路5において、チラー22から流出した熱媒体は、バッテリ21の熱媒体通路21aを流通して循環している。従って、第4運転モードにおいては、チラー22で冷却された熱媒体をバッテリ21の熱媒体通路21aに流通させることができるので、バッテリ21の温度調整を行うことができる。
【0196】
(5)第5運転モード
第5運転モードは、例えば、発熱機器16の温度調整、バッテリ21の温度調整及び車室内暖房をそれぞれ独立して行う場合に、熱管理システム1で実行される。
【0197】
第5運転モードにおいては、制御装置70は、第1水ポンプ23a、第2水ポンプ23b及び第3水ポンプ23cを、それぞれに定められた圧送能力を発揮するように作動させる。又、制御装置70は、加熱装置13を予め定められた発熱量で発熱させると共に、冷凍サイクル40を上述した冷却モードで作動させる。更に、制御装置70は、第1熱媒体開閉弁31aを開状態にすると共に、第2熱媒体開閉弁31bを閉状態にする。
【0198】
制御装置70は、第1熱媒体三方弁30aの作動を制御して、ヒータコア11側の流入出口と第5接続部26e側の流入出口を連通させると共に、第1接続通路25a側の流入出口を閉塞させる。
【0199】
そして、制御装置70は、第2熱媒体三方弁30bの作動を制御して、第1水ポンプ23a側の流入出口と第2接続部26b側の流入出口を連通させると共に、第3接続通路25c側の流入出口を閉塞させる。
【0200】
又、制御装置70は、流量調整部19を構成する第3熱媒体三方弁30cの作動を制御して、第9接続部26i側の流入出口とラジエータ17側の流入出口を連通させると共に、迂回通路18側の流入出口を閉塞させる。
【0201】
これにより、第5運転モードの熱媒体回路5においては、図9にて太線矢印で示すように熱媒体が循環する。具体的に、第5運転モードの高温側熱媒体回路10においては、熱媒体は、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11、第1熱媒体三方弁30a、第1水ポンプ23aの順に流れて循環する。
【0202】
第5運転モードの低温側熱媒体回路15では、第2水ポンプ23b、第1熱媒体開閉弁31a、発熱機器16、流量調整部19、ラジエータ17、第2水ポンプ23bの順に熱媒体が流れて循環する。同時に、第5運転モードの機器用熱媒体回路20では、第3水ポンプ23c、チラー22、バッテリ21、第4熱媒体逆止弁32d、第3水ポンプ23cの順に熱媒体が流れて循環する。つまり、第5運転モードでは、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20の夫々について、それぞれ独立して熱媒体が循環する。
【0203】
図9に示すように、第5運転モードの高温側熱媒体回路10では、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13を通過した熱媒体がヒータコア11を通過するように循環している。この為、加熱装置13等で加熱された熱媒体は、ヒータコア11を通過する際に、送風空気に放熱する。つまり、加熱装置13等を利用した車室内暖房を実現することができる。
【0204】
又、第5運転モードの低温側熱媒体回路15では、発熱機器16を通過した熱媒体は、流量調整部19を経由して循環している。流量調整部19では、ラジエータ17側の熱媒体流量と、迂回通路18側の熱媒体流量を調整することができるので、ラジエータ17にて、機器用熱媒体回路20を循環する熱媒体から外気に放熱される放熱量を調整することができる。即ち、ラジエータ17による発熱機器16の温度調整を実現できる。
【0205】
そして、第5運転モードの機器用熱媒体回路20においては、チラー22を通過した熱媒体は、バッテリ21の熱媒体回路5を流通する際に、バッテリ21から吸熱する。第5運転モードでは、冷凍サイクル40は冷却モードで作動している為、バッテリ21の温度調整を適切に行うことができる。
【0206】
更に、第5運転モードでは、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20における熱媒体の循環はそれぞれ独立している。従って、加熱装置13等を用いた車室内暖房、発熱機器16の温度調整及びバッテリ21の温度調整について、相互に与える影響を抑えて、それぞれの用途に応じた適切な対応を行うことができる。
【0207】
(6)第6運転モード
第6運転モードは、例えば、加熱装置13等を用いた車室内暖房と共に、バッテリ21の暖機を行う場合に、熱管理システム1で実行される。
【0208】
第6運転モードでは、制御装置70は、第1水ポンプ23aを予め定められた圧送能力を発揮するように作動させ、第2水ポンプ23b及び第3水ポンプ23cを停止状態にする。又、制御装置70は、加熱装置13を予め定められた発熱量で発熱させると共に、冷凍サイクル40の作動を停止させる。更に、制御装置70は、第1熱媒体開閉弁31a及び第2熱媒体開閉弁31bを閉状態にする。
【0209】
制御装置70は、第1熱媒体三方弁30aの作動を制御して、ヒータコア11側の流入出口と第5接続部26e側の流入出口を連通させると共に、第1接続通路25a側の流入出口を閉塞させる。
【0210】
そして、制御装置70は、第2熱媒体三方弁30bの作動を制御して、第1水ポンプ23a側の流入出口、第2接続部26b側の流入出口及び第3接続通路25c側の流入出口を連通させる。尚、第6運転モードにおける流量調整部19の作動態様については、任意に定めることができる。
【0211】
これにより、第6運転モードの熱媒体回路5においては、図10にて太線矢印で示すように熱媒体が循環する。具体的に、第6運転モードの高温側熱媒体回路10においては、熱媒体は、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、水冷媒熱交換器12、加熱装置13、ヒータコア11、第1熱媒体三方弁30a、第1水ポンプ23aの順に流れて循環する。同時に、第1水ポンプ23a、第2熱媒体三方弁30b、チラー22、バッテリ21、第2熱媒体逆止弁32b、第1水ポンプ23aの順に、熱媒体が流れて循環する。
【0212】
即ち、第6運転モードでは、第3接続通路25c及び第4接続通路25dによって、高温側熱媒体回路10と機器用熱媒体回路20が接続されている。そして、第1水ポンプ23aから吐出される熱媒体の流れに対して、バッテリ21、加熱装置13及びヒータコア11と、チラー22及びバッテリ21が並列に接続されている。
【0213】
図10に示すように、第6運転モードでは、高温側熱媒体回路10及び機器用熱媒体回路20を接続して、第1水ポンプ23aから吐出された熱媒体の一部が、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13を介して、ヒータコア11を通過するように循環させている。
【0214】
従って、第6運転モードでは、水冷媒熱交換器12及び加熱装置13から流出した熱媒体は、ヒータコア11に流入して送風空気に対して放熱する。この為、第6運転モードでは、加熱装置13等を利用した車室内暖房を実現することができる。
【0215】
又、第6運転モードの熱媒体回路5において、第1水ポンプ23aから吐出された熱媒体の他の一部は、チラー22を介して、バッテリ21の熱媒体通路21aを流通して循環している。従って、第6運転モードにおいては、加熱装置13等で温められた熱媒体を、バッテリ21の熱媒体通路21aを介して循環させることができ、熱媒体の有する熱を利用してバッテリの暖機を行うことができる。
【0216】
以上説明したように、本実施形態に係る熱管理システム1は、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15、機器用熱媒体回路20、回路接続部25、熱媒体回路切替制御部70cを有している。
【0217】
図6図8に示すように、熱管理システム1によれば、低温側熱媒体回路15を流通した熱媒体が、回路接続部25を介して、高温側熱媒体回路10及び機器用熱媒体回路20の何れか一方を経由するように循環させることができる。これにより、熱管理システム1は、低温側熱媒体回路15の発熱機器16の廃熱を熱媒体によって輸送して、高温側熱媒体回路10からの車室内暖房や、機器用熱媒体回路20の対象機器であるバッテリ21の暖機に利用することができる。
【0218】
又、熱管理システム1は、回路接続部25を介して、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を接続して、熱媒体を循環させる第1運転モードを実現することができる。図5に示すように、第1運転モードにおいて、熱媒体は、発熱機器16、バッテリ21の熱媒体通路21a、加熱装置13、ヒータコア11を経由するように循環している。従って、第1運転モードの熱管理システム1では、発熱機器16等の廃熱を利用した車室内暖房と共に、発熱機器16及びバッテリ21の温度調整を実現することができる。
【0219】
そして、熱管理システム1では、冷凍サイクル40を作動させることなく、熱媒体の循環によって、高温側熱媒体回路10等の間における熱輸送を実現している。つまり、熱媒体と冷媒の熱交換を行う必要がない為、熱交換効率等に起因する熱損失を生じさせることはない。これにより、熱管理システム1によれば、車室内暖房や発熱機器及び対象機器の温度調整について、省エネルギ化を図ることができる。
【0220】
更に、図5に示すように、第1運転モードにおける熱媒体の循環径路は、第1水ポンプ23a、第2水ポンプ23bを経由するように構成されており、第3水ポンプ23cは循環径路から外れている。換言すると、第1運転モードにおける熱媒体の循環径路に、第3水ポンプ23cが配置されていない状態ということができる。
【0221】
この為、第1運転モードにおける熱媒体の循環に関し、第3水ポンプ23cを経由しないように循環径路を構成することで、第3水ポンプ23cに由来する流路抵抗を低減し、熱媒体の循環に関する流路抵抗をできるだけ低く抑えることができる。
【0222】
そして、第1運転モードでは、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20を経由して循環する為、循環径路が長くなり熱媒体の圧送能力も要求される。図5に示すように、第1運転モードの循環径路には、第1水ポンプ23a及び第2水ポンプ23bが配置されている為、第1運転モードにおける熱媒体の循環に要する圧送能力を充分に確保することができる。
【0223】
又、本実施形態に係る熱管理システム1は、更に、第5運転モードに切り替えることができる。図9に示すように、第5運転モードでは、高温側熱媒体回路10、低温側熱媒体回路15、機器用熱媒体回路20にて、熱媒体をそれぞれ独立して循環させている為、熱媒体の循環が相互に影響を及ぼすことがない。
【0224】
これにより、高温側熱媒体回路10による車室内暖房、低温側熱媒体回路15における発熱機器16の温度調整及び機器用熱媒体回路20におけるバッテリ21の温度調整を、それぞれに適した対応で並行して実行することができる。
【0225】
そして、熱管理システム1は、回路切替部を構成する第1熱媒体三方弁30a等の作動を制御することにより、第4運転モードに切り替えることができる。図8に示すように、回路接続部25を構成する第1接続通路25a及び第2接続通路25bを介して、高温側熱媒体回路10のヒータコア11と、低温側熱媒体回路15の発熱機器16を通過するように熱媒体を循環させている。又、第4運転モードでは、機器用熱媒体回路20にて、熱媒体を独立して循環させることができる。
【0226】
これにより、高温側熱媒体回路10及び低温側熱媒体回路15による発熱機器16の廃熱を利用した車室内暖房と、機器用熱媒体回路20におけるバッテリ21の温度調整を並行して実行することができる。
【0227】
又、熱管理システム1は、回路切替部を構成する第1熱媒体三方弁30a等の作動を制御することにより、第2運転モードに切り替えることができる。図6に示すように、回路接続部25を構成する第5接続通路25e及び第6接続通路25fを介して、低温側熱媒体回路15の発熱機器16と、機器用熱媒体回路20のバッテリ21を通過するように熱媒体を循環させている。又、第2運転モードでは、高温側熱媒体回路10にて、熱媒体を独立して循環させることができる。
【0228】
これにより、熱管理システム1は、低温側熱媒体回路15及び機器用熱媒体回路20にて、発熱機器16の廃熱を利用したバッテリ21の暖機や、バッテリ21の廃熱を利用した発熱機器16の温度調整を行うことができる。又、高温側熱媒体回路10において、加熱装置13及びヒータコア11を経由するように熱媒体が循環している為、加熱装置13を用いた車室内暖房を実行することができる。
【0229】
更に、熱管理システム1は、回路切替部を構成する第1熱媒体三方弁30a等の作動を制御することで、第6運転モードに切り替えることができる。図10に示すように、第6運転モードでは、回路接続部25を構成する第3接続通路25c及び第4接続通路25dを介して、高温側熱媒体回路10のヒータコア11及び加熱装置13と、機器用熱媒体回路20のバッテリ21を通過するように熱媒体を循環させる。これにより、熱管理システム1は、高温側熱媒体回路10の加熱装置13を熱源として用いて、車室内の暖房とバッテリ21の暖機を並行して実現させることができる。
【0230】
そして、本実施形態に係る熱管理システム1の回路切替部は、第1熱媒体三方弁30aと、第2熱媒体三方弁30bと、第1熱媒体開閉弁31aと、第2熱媒体開閉弁31bを有して構成されている。2つの熱媒体三方弁及び2つの熱媒体開閉弁という簡素な構成によって、熱管理システム1における熱媒体の循環径路を様々な態様に切り替えることができ、第1運転モード~第6運転モードを実現することができる。
【0231】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0232】
(1)上述した実施形態では、本開示に係る熱管理システム1を、車載機器冷却機能付きの車両用空調装置に適用した例を説明したが、熱管理システム1の適用はこれに限定されない。熱管理システム1は、車両用に限定されることなく、定置型の空調装置等に適用してもよい。例えば、サーバ(コンピュータ)の温度を適切に調整しつつ、サーバが収容される室内の空調を行うサーバ冷却機能付きの空調装置等に適用してもよい。
【0233】
(2)又、熱管理システムの熱媒体回路において、発熱機器16には、複数の構成機器が含まれていることとしていたが、発熱機器16における各構成機器の熱媒体通路16aは、互いに直接的に直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。又、発熱機器16を、単一の構成機器とすることも可能である。
【0234】
(3)そして、上述した実施形態では、熱媒体回路5における回路切替部として、第1熱媒体三方弁30a、第2熱媒体三方弁30b、第1熱媒体開閉弁31a、第2熱媒体開閉弁31bを採用していたが、これに限定されるものではない。熱媒体回路5における回路構成を切り替えることができれば、複数の開閉弁の組み合わせ等の他の構成を採用することができる。
【0235】
(4)又、上述した実施形態では、熱媒体回路5の熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、熱媒体はこれに限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、或いはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を、熱媒体として採用することができる。更に、熱媒体としてオイル等の絶縁の液媒体を用いることも可能である。
【0236】
(5)そして、本開示における冷凍サイクル40の構成は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、冷凍サイクル40を構成する室外熱交換器46として、モジュレータを有する室外熱交換器を採用してもよい。同様に、水冷媒熱交換器12として、貯液タンクを有する水冷媒熱交換器12を採用してもよい。
【0237】
(6)上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
【0238】
(7)又、上述の実施形態の第1運転モードでは、図5に示すように、熱媒体の循環径路から第3水ポンプ23cが外れるように構成されていたが、第1運転モードにおける熱媒体の循環経路の構成はこれに限定されない。第1運転モードにおける熱媒体の循環径路から、第1水ポンプ23a~第3水ポンプ23cのうちの一つが外れていれば良く、第1水ポンプ23aが外れていても良いし、第2水ポンプ23bが外れていても良い。
【符号の説明】
【0239】
1 熱管理システム
10 高温側熱媒体回路
11 ヒータコア
13 加熱装置
15 低温側熱媒体回路
16 発熱機器
20 機器用熱媒体回路
21 バッテリ
25 回路接続部
70c 熱媒体回路切替制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10