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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】複合成形部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20231219BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20231219BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/76
B29C45/27
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020050504
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146663
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】西口 喬
(72)【発明者】
【氏名】金 京佑
(72)【発明者】
【氏名】小林 利成
(72)【発明者】
【氏名】鄭 然率
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 元寿
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107097(WO,A1)
【文献】特開2012-101393(JP,A)
【文献】特開平11-207775(JP,A)
【文献】実開昭53-054963(JP,U)
【文献】特開平11-156909(JP,A)
【文献】特表平04-502737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部部品と、前記内部部品を覆う一次成形部と、前記一次成形部を覆う二次成形部とを備え、前記一次成形部に前記二次成形部側に突出するリブ部が形成された複合成形部品の製造方法であって、
(a)前記内部部品と前記一次成形部とを含む中間部品を金型内にセットするステップと、
(b)前記金型内に前記二次成形部用の樹脂を流し込むステップと、
(c)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度を検出するステップと、
(d)前記樹脂温度に基づいて、前記金型内における前記二次成形部用の樹脂が前記一次成形部の前記リブ部を溶融可能な溶融可能時間を求めるステップと、
(e)前記溶融可能時間に基づいて前記リブ部の溶融状態の良否を判定するステップと、
(f)前記金型から前記複合成形部品を取出すステップと、
を備える複合成形部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の複合成形部品の製造方法であって、
(g)前記ステップ(f)において、前記リブ部の溶融状態が不良と判定された場合に、前記金型から取出された前記複合成形部品を廃棄するステップ、をさらに備える複合成形部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の複合成形部品の製造方法であって、
(h)前記リブ部の溶融状態が不良と判定された場合に、次回の成形条件を変更するステップ、をさらに備える複合成形部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合成形部品の製造方法であって、
前記ステップ(e)において、前記溶融可能時間における前記樹脂温度の積分値に基づいて前記リブ部の溶融状態の良否を判定する、複合成形部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の複合成形部品の製造方法であって、
(i)前記金型に離れて設けられた第1温度センサと第2温度センサとに基づいて、前記金型内における前記二次成形部用の樹脂の流入速度を求めるステップ、をさらに備える複合成形部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の複合成形部品の製造方法であって、
(j)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度に基づいて、前記内部部品が熱条件を満たすか否かを判定するステップ、をさらに備える複合成形部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合成形部品の製造方法であって、
(c)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度は、前記二次成形部用の樹脂のうち前記リブ部を覆う部分の表面延長上の温度である、複合成形部品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の複合成形部品の製造方法であって、
(k)前記金型内の金型面のうち前記二次成形部用の樹脂の注入口から離れた端寄りに設けられた圧力センサに基づいて、前記金型内への前記二次成形部用の樹脂の充填状態を判定するステップ、をさらに備える複合成形部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合成形部品の製造方法及び複合成形部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形等によって、検出素子部を含む検出ユニットとホルダ部とが一体化された成形体が構成されること、この成形体にさらに射出成形等がなされることで樹脂モールド部が形成されること等が開示されている。
【0003】
特許文献2には、温度センサによりキャビティの表面温度及び熱流束を測定し、その測定値を基準値と比較することで成形条件を制御することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-96828号公報
【文献】特開昭63-126717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一次成形部と二次成形部との間でのシールを行うためリブが設けられることがある。リブ部によるシール性能をさらに改善することが要請されている。
【0006】
そこで、本開示は、リブ部によるシール性能をさらに改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の複合成形部品の製造方法は、内部部品と、前記内部部品を覆う一次成形部と、前記一次成形部を覆う二次成形部とを備え、前記一次成形部に前記二次成形部側に突出するリブ部が形成された複合成形部品の製造方法であって、(a)前記内部部品と前記一次成形部とを含む中間部品を金型内にセットするステップと、(b)前記金型内に前記二次成形部用の樹脂を流し込むステップと、(c)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度を検出するステップと、(d)前記樹脂温度に基づいて、前記金型内における前記二次成形部用の樹脂が前記一次成形部の前記リブ部を溶融可能な溶融可能時間を求めるステップと、(e)前記溶融可能時間に基づいて前記リブ部の溶融状態の良否を判定するステップと、(f)前記金型から前記複合成形部品を取出すステップと、を備える複合成形部品の製造方法である。
【0008】
また、本開示の複合成形部品は、内部部品と、前記内部部品を覆う一次成形部と、前記一次成形部を覆う二次成形部と、を備え、前記一次成形部に前記二次成形部側に突出するリブ部が形成され、前記二次成形部の表面にセンサ跡が形成されている、複合成形部品である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、リブ部によるシール性能がさらに改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は複合成形部品の製造方法に用いられる金型装置を示す概略平面図である。
図2図2は複合成形部品の製造方法に用いられる複合成形部品の製造装置を示すブロック図である。
図3図3は複合成形部品を示す概略斜視図である。
図4図4は複合成形部品の部分断面図である。
図5図5は複合成形部品の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は制御装置の処理例を示すフローチャートである。
図7図7は時間に対する樹脂温度の変化例を示す図である。
図8図8は変形例に係る処理を示すフローチャートである。
図9図9は他の変形例に係る処理を示すフローチャートである。
図10図10はさらに他の変形例に係る処理を示すフローチャートである。
図11図11はさらに他の変形例に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本開示の複合成形部品の製造方法は、次の通りである。
【0013】
(1)内部部品と、前記内部部品を覆う一次成形部と、前記一次成形部を覆う二次成形部とを備え、前記一次成形部に前記二次成形部側に突出するリブ部が形成された複合成形部品の製造方法であって、(a)前記内部部品と前記一次成形部とを含む中間部品を金型内にセットするステップと、(b)前記金型内に前記二次成形部用の樹脂を流し込むステップと、(c)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度を検出するステップと、(d)前記樹脂温度に基づいて、前記金型内における前記二次成形部用の樹脂が前記一次成形部の前記リブ部を溶融可能な溶融可能時間を求めるステップと、(e)前記溶融可能時間に基づいて前記リブ部の溶融状態の良否を判定するステップと、(f)前記金型から前記複合成形部品を取出すステップと、を備える複合成形部品の製造方法である。樹脂温度に基づいて、前記金型内における前記二次成形部用の樹脂が前記一次成形部のリブ部を溶融可能な溶融可能時間を求め、この溶融可能時間に基づいて前記リブ部の溶融状態良否を判定するため、リブ部の溶融状態をより正確に判定できる。リブ部の溶融状態を把握することによって、リブ部によるシール性能をさらに改善することができる。
【0014】
(2)(1)の複合成形部品の製造方法であって、(g)前記ステップ(f)において、前記リブ部の溶融状態が不良と判定された場合に、前記金型から取出された前記複合成形部品を廃棄するステップ、をさらに備えてもよい。リブ部の溶融状態が不良と判定された場合に前記複合成形部品を容易に廃棄することができる。
【0015】
(3)(1)又は(2)の複合成形部品の製造方法であって、(h)前記リブ部の溶融状態が不良と判定された場合に、次回の成形条件を変更するステップ、をさらに備えてもよい。次回の金型成形時に不良となることが抑制される。
【0016】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの態様に係る複合成形部品の製造方法であって、前記ステップ(e)において、前記溶融可能時間における前記樹脂温度の積分値に基づいて前記リブ部の溶融状態の良否を判定してもよい。溶融可能時間及び樹脂温度を参照して、リブ部の溶融状態の良否を判定できる。
【0017】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの態様に係る複合成形部品の製造方法であって、(i)前記金型に離れて設けられた第1温度センサと第2温度センサとに基づいて、前記金型内における前記二次成形部用の樹脂の流入速度を求めるステップをさらに備えてもよい。金型内への樹脂の流入状態を監視することができる。
【0018】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの態様に係る複合成形部品の製造方法であって、(j)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度に基づいて、前記内部部品が熱条件を満たすか否かを判定するステップ、をさらに備えてもよい。内部部品が熱条件を満たすか否かを判定することができる。
【0019】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの態様に係る複合成形部品の製造方法であって、(c)前記金型内における前記二次成形部用の樹脂温度は、前記二次成形部用の樹脂のうち前記リブ部を覆う部分の表面延長上の温度であってもよい。リブ部の近くの樹脂温度に基づいて、リブ部の溶融状態をより正確に判定することができる。
【0020】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの態様に係る複合成形部品の製造方法であって、(k)前記金型内の金型面のうち前記二次成形部用の樹脂の注入口から離れた端寄りに設けられた圧力センサに基づいて、前記金型内への前記二次成形部用の樹脂の充填状態を判定してもよい。前記金型内への前記二次成形部用の樹脂がしっかりと充填されているかどうかを判定することができる。
【0021】
本開示の複合成形部品は、次の通りである。
【0022】
(9)内部部品と、前記内部部品を覆う一次成形部と、前記一次成形部を覆う二次成形部と、を備え、前記一次成形部に前記二次成形部側に突出するリブ部が形成され、前記二次成形部の表面にセンサ跡が形成されている、複合成形部品である。二次成形部の表面にセンサ跡が形成されているため、センサ跡に配置されていたセンサに基づいて、二次成形部を金型成形する際の条件を知ることができる。これにより、リブ部によるシール性能をさらに改善することに貢献することができる。
【0023】
(10)(9)の複合成形部品であって、前記センサ跡は、前記二次成形部の表面に離れて形成された第1センサ跡と第2センサ跡とを含んでもよい。二次成形部用の樹脂の条件が離れた位置で把握される。
【0024】
(11)(9)又は(10)の複合成形部品であって、前記二次成形部の表面に、樹脂注入口跡が形成され、前記二次成形部の表面のうち前記樹脂注入口跡から離れた端寄りに端部センサ跡が形成されてもよい。前記金型内への前記二次成形部用の樹脂がしっかりと充填されていたかどうかを判定することができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の複合成形部品の製造方法及び複合成形部品の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
[実施形態]
以下、実施形態に係る複合成形部品の製造方法及び複合成形部品について説明する。
【0027】
<複合成形部品及び複合成形部品の製造装置について>
図1は複合成形部品の製造方法に用いられる金型装置30を示す概略平面図である。図2は複合成形部品の製造方法に用いられる複合成形部品の製造装置10を示すブロック図である。図2では図1における金型装置30のII-II線断面図が示されている。図3は複合成形部品50を示す概略斜視図である。図3では2つの複合成形部品50がランナ跡部70を介して繋がった状態が示されている。図4は複合成形部品50の部分断面図である。
【0028】
複合成形部品50は、内部部品52と、一次成形部54と、二次成形部56とを備える。図1図3では、複合成形部品50を取付対象部位にネジ止するためのネジ止部51も、二次成形部56に一体形成されている。ネジ止部51は省略されてもよい。
【0029】
内部部品52は、一次成形部54及び二次成形部56によって覆われる部品であり、例えば、電気部品である(図1参照)。より具体的には、内部部品52は、磁気、光、温度等の物理量あるいはそれらの変化量を検出するセンサ素子である。内部部品52の端子は、電線Wの芯線に接続されている。電線Wは、一次成形部54及び二次成形部56の内部を通って外部に延出する。内部部品の出力信号は、電線Wを介して外部に出力され得る。
【0030】
一次成形部54及び二次成形部56は、内部部品52を覆っている。ここでは、一次成形部54及び二次成形部56は、樹脂によって形成された部分である。一次成形部54及び二次成形部56は、例えば、PE(ポリエチレン)、ポリアミド、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等によって形成されていてもよい。一次成形部54は内部部品52を保持する部分である。二次成形部56は、一次成形部54を覆う部分である。内部部品52が一次成形部54及び二次成形部56内に埋められた状態とされることで、内部部品52に対する封止性が高められている。
【0031】
より具体的には、一次成形部54は、内部部品52を覆う部分である。一次成形部54が内部部品52と覆った状態で、両者が一体化された部品が中間部品54Mである。例えば、一次成形部54は、内部部品52をインサート部品として金型成形された部分である。図2において、内部部品52を覆った一次成形部54が金型装置30内に位置決めされた状態が示される。一次成形部54は、直方体状に形成されている。一次成形部54における長手方向一端部の一方主面寄りの位置に、内部部品52が収容されている。内部部品52に接続された電線Wは、一次成形部54内を通って、一次成形部54の他端側に向けて延びる。なお一次成形部54は、内部部品52の全体を覆う必要は無く、内部部品52の少なくとも一部を覆っていればよい。内部部品52をインサート部品として一次成形部54が金型成形されることは必須ではない。一次成形部54が内部部品52を嵌め込み可能な形状に金型成形されており、これに内部部品52が嵌め込まれてもよい。
【0032】
二次成形部56は、一次成形部54を覆っている。二次成形部56は、一次成形部54の周囲の全体を覆っていてもよいし、一次成形部54の一部を覆っていてもよい。ここでは、二次成形部56は、一次成形部54のうち位置決めに利用した部分を除き、当該一次成形部54の周囲の全体を覆っている。すなわち、一次成形部54は、金型装置30内において、金型空間に向けて突出する位置決めピン31Pによって一定位置に位置決めされている(図4参照)。
【0033】
二次成形部56の外形状は細長い直方体形状に形成されている。内部部品52は、二次成形部56内における一端部寄りの部分に埋込まれた状態とされる。電線Wは、一次成形部54の他端部からさらに二次成形部56内を通って二次成形部56の他端部から外方に延出する。なお、二次成形部56の外形状が直方体であることは必須ではない。
【0034】
一次成形部54には、二次成形部56側に突出するリブ部55が形成されている。リブ部55は、一次成形部54と二次成形部56との境界を伝って水が浸入することをより確実に抑制する役割を果す部分である。
【0035】
すなわち、二次成形部56に、その表面から一次成形部54に達する孔56hが形成される(図4参照)。内部部品52及び一次成形部54をインサート物として、二次成形部56が金型成形される際、上記したように位置決めピン30Pによって一次成形部54が位置決め保持される。リブ部55は、上記孔56hを囲む環状リブ部である。リブ部55は、突出方向先端側に向う程細幅に形成されていることが好ましい。ここでは、一次成形部54の表面のうちリブ部55の中央に位置決めピン30Pが嵌ることができ、かつ、底がある有底穴54hが形成されている。位置決めピン30Pが当該有底穴54hに嵌り込むことで、二次成形部56を金型成形する際に、一次成形部54がより正確に位置決めされる。有底穴54hが形成されていることは必須ではない。上記有底穴54hは、内部部品52に達していない。
【0036】
一次成形部54をインサート物として二次成形部56が金型成形される際、二次成形部56を成形するための加熱溶融した樹脂が金型装置30内に注入される。加熱溶融した樹脂が一次成形部54の表面に接すると急に冷却して固化する。加熱溶融した樹脂は、リブ部55の先端部では、一次成形部54の表面に接した場合ほど急に冷却されない。このため、二次成形部56を形成するための加熱溶融樹脂は、リブ部55の先端部と溶け合うことが期待される。これにより、一次成形部54と二次成形部56との境界において、リブ部55に沿ってより完全な止水がなされることになる。かかるリブ部55は、メルトリブと呼ばれることもある。リブ部55と二次成形部56とが溶け合いやすいように、一次成形部54と二次成形部56とは同材料によって形成されていることが好ましい。
【0037】
特に、上記位置決め用の孔56hを形成した場合には、一次成形部54と二次成形部56との境界が、当該孔56hを通じて外部に曝される。そこで、当該孔56hを囲むようにリブ部55が形成される。これにより、孔56hを経由して一次成形部54と二次成形部56との間、さらには、内部部品52に水が伝わることが抑制される。
【0038】
上記リブ部55による止水効果をより高めるためには、リブ部55の先端部と二次成形部56を形成する樹脂とが溶け合っていること(以下「溶け合い状態」という場合がある)ことが好ましい。しかしながら、リブ部55自体は、二次成形部56内に埋った状態となっているので、製造された複合成形部品50を観察しても、上記溶け合った状態となっているかを直接的に確認することはできない。
【0039】
リブ部55の先端部と二次成形部56を形成する樹脂とがより確実に溶け合うようにするためには、金型装置30内に注入される二次成形部56用の樹脂温度をなるべく高くすること、あるいは、金型装置30内において二次成形部56用の樹脂温度が高温を保つ時間を長くすること等の対処が考えられる。しかしながら、内部部品52に対する熱的な影響、金型成形時間をなるべく短くしたいとの要請等に鑑みると、樹脂温度を高くしたり、金型装置30内において高温を保つ時間を長くしたりことにも制限がある。
【0040】
このような背景下、本開示は、リブ部の先端部が二次成形部56を形成する樹脂とより確実に溶け合うようにし、もって、リブ部によるシール性能をさらに改善する技術に関する。
【0041】
本開示に係る複合成形部品50の製造方法に用いられる複合成形部品の製造装置10は、金型装置30と、樹脂注入装置60と、制御装置20とを備える。
【0042】
金型装置30は、上金型32と、下金型36とを含む。上金型32と下金型36とによって、複合成形部品50を金型成形するための金型38が構成される。金型38内に二次成形部56の表面を形作るための金型面38Fが形成される。金型面38F内に二次成形部56を形成するための樹脂が流れ込む金型空間が広がる。本実施形態では、上金型32と下金型36とは、電線Wを保持する部分と、他の部分とに分れているが、これは必須ではない。
【0043】
本実施形態では、金型装置30内に複数(ここでは2つ)の金型面38Fが形成される。金型装置30には、1つの導入口31aから途中で分岐して複数の金型面38Fのそれぞれに開口する注入口31cに向かうランナ等の流路31bが形成されている。ここでは、流路31bは、T字状に分岐する部分を含む形状に形成されている。流路31bに対応するランナ跡部70は、二次成形部56における他端部よりの一側部に連なっている。このため、二次成形部56からランナ跡部70が切除されると、二次成形部56における他端部の一側部に、樹脂注入口跡P1が残り得る。
【0044】
金型38には、温度センサ40、42が設けられる。ここでは、上金型32に温度センサ40、42が設けられる。より具体的には、上金型32の表面から金型面38Fに向けて貫通孔が設けられる。この貫通孔に温度センサ40、42が貫通するように配置される。温度センサ40、42のうち一端部の温度検出面は、金型面38Fに露出しており、当該金型面38Fの延長上で金型空間内における樹脂温度を検出することができる。温度センサ40、42の他端部は、上金型32の外部に露出しており、他の電線等を介して検出信号が出力される。
【0045】
上金型32における位置決めピン30Pは、金型38内の一次成形部54に対して上方から接触している。一次成形部54のうち上金型32における位置決めピン30Pを囲む部分にリブ部55が形成されている(図2及び図4参照)。このため、二次成形部56用の樹脂であって当該リブ部55を覆う部分の表面延長上に、温度センサ40、42の温度検出面が位置している。よって、温度センサ40、42が検出する樹脂温度は、金型38内における二次成形部56用の樹脂温度であって二次成形部56用の樹脂のうちリブ部55を覆う部分の表面延長上の温度である。温度センサ40、42が設けられる位置は、リブ部55に近い位置であることが好ましく、例えば、リブ部55の隣の位置であることが好ましい。温度センサ40、42が設けられる部分における二次成形部56の厚みは、リブ部55が設けられる部分における二次成形部56の厚みと同じであることが好ましい。温度センサ40、42は、他の位置、例えば、下金型36側の部分、二次成形部56のうち一側の部分等に設けられてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、温度センサ40、42は、第1温度センサ40と、第2温度センサ42とを含む。第1温度センサ40と第2温度センサ42とは離れた位置に設けられる。好ましくは、第1温度センサ40と第2温度センサ42とは、樹脂の注入口31cに対して互いに異なる距離となる位置に設けられる。なお、第1温度センサ40と第2温度センサ42との距離は、設計上定る既知の値である。
【0047】
金型面38Fと温度センサ40、42の温度検出面とはなるべく同一面状に配置されるが、僅かな隙間あるいは段差が形成され得る。このため、温度センサ40、42の跡が、二次成形部56の表面に残り得る。本実施形態では、二次成形部56の表面に離れて、第1センサ跡56a1と、第2センサ跡56a2とが残り得る。
【0048】
また、金型38には、圧力センサ44が設けられる。ここでは、上金型32に圧力センサ44が設けられる。より具体的には、上金型32の表面から金型面38Fに向けて貫通孔が設けられる。この貫通孔に圧力センサが貫通するように配置される。圧力センサ44のうち一端部の圧力検出面は、金型面38Fに露出しており、当該金型面38Fの延長上で金型空間内における樹脂圧力を検出することができる。圧力センサ44の他端部は、上金型32の外部に露出しており、他の電線等を介して検出信号が出力される。
【0049】
圧力センサ44は、二次成形部56用の樹脂の注入口31cから離れた端寄りに設けられている。即ち、圧力センサ44は、二次成形部56の長手方向において、注入口31cが存在する側とは反対側寄りの位置に設けられている。圧力センサ44は、二次成形部56の端部から1cm以内等、二次成形部56の端部になるべく近いことが好ましい。ここでは、圧力センサ44は、上記温度センサ40、42よりも注入口31cから離れている。圧力センサ44は、内部部品52と対向する位置に設けられている。
【0050】
金型面38Fと圧力センサ44の温度検出面とはなるべく同一面状に配置されるが、僅かな隙間あるいは段差が形成され得る。このため、圧力センサ44の跡が、二次成形部56の表面に残り得る。本実施形態では、二次成形部56の表面に、上記注入口跡P1とは離れて、圧力センサ跡56a3が残り得る。
【0051】
金型装置30には、ヒータ39が組込まれていてもよい。このヒータ39によって、金型温度が制御されてもよい。
【0052】
樹脂注入装置60から、二次成形部56用の加熱溶融樹脂が供給される。加熱溶融樹脂は、注入口31cを介して金型装置30内に注入される。
【0053】
制御装置20は、CPU21、記憶部22等がバスラインを介して相互接続されたコンピュータによって構成されている。記憶部22は、ROM、RAM等である。記憶部22には、プログラム22a、条件値22b等が記憶されている。CPU21は、プロセッサである。プログラム22aは、外部のサーバ装置等からインストールされてもよい。プログラム22aは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通してもよい。
【0054】
制御装置20は、入出インターフェースを介して温度センサ40、42、圧力センサ44に接続されている。温度センサ40、42、圧力センサ44の出力が制御装置20に与えられる。
【0055】
制御装置20は、入出インターフェースを介して、樹脂注入装置60及びヒータ39に接続されている。制御装置20は、樹脂注入装置60による注入タイミング、注入圧力、注入温度等を制御することができる。また、制御装置20は、ヒータ39を制御して金型装置30における温度制御を行うことができる。
【0056】
また、制御装置20は、入出インターフェースを介して、成形品取出装置80に接続されていてもよい。成形品取出装置80は、金型装置30から複合成形部品50を取出して、コンテナ等の回収部84、86に移し替える装置である。成形品取出装置80は、複合成形部品50を把持可能なハンドを有する直交ロボット又は垂直多関節ロボットによって実現されてもよい。回収部84,86として、良品用の回収部84と、不良用の回収部86とを準備しておき、成形品取出装置80が、複合成形部品50を、回収部84、86に分けて移し替えるようにしてもよい。その場合の区別制御例については、後述する。
【0057】
CPU21が、プログラム22aに記述された手順に従って演算処理を行うことにより、複合成形部品50の製造に関して、温度センサ40、42、圧力センサ44等の出力結果に基づく下記処理を実行することができる。
【0058】
なお、本開示は、このような特徴的な処理部を備える制御装置20として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする製造方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりすることができる。また、制御装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、制御装置を含む製造システムとして実現したりすることができる。
【0059】
上記複合成形部品50によると、二次成形部56の表面にセンサ跡56a1、56a2、56a3が形成されている。このため、それらのセンサ跡56a1、56a2、56a3のセンサ跡に配置されていたセンサ40、42、44に基づいて、二次成形部56を金型成形する際の条件を知ることができる。これにより、リブ部55によるシール性能をさらに改善することに貢献することができる。
【0060】
また、第1センサ跡56a1と第2センサ跡56a2とが、二次成形部56の表面に離れて形成されているため、二次成形部56用の樹脂温度が離れた位置で把握される。これにより、例えば、樹脂の流入速度が把握され得る。
【0061】
また、二次成形部56の表面のうち樹脂注入口跡P1から離れた端寄りにセンサ跡56a3が形成されているため、金型空間において樹脂がしっかり充填されているかどうかが判定される。
【0062】
<複合成形部品の製造方法について>
図5は複合成形部品50の製造方法を示すフローチャートである。複合成形部品50の製造方法は、下記のステップS1からS6を備える。図5に示す各ステップは、コンピュータにより実行されてもよいし、人によって実行されてもよい。
【0063】
ステップS1は、中間部品54Mを金型装置30にセットするステップ(a)である。すなわち、中間部品54Mが位置決めピン30Pによって位置決めされるように、中間部品54Mが金型装置30内に設定される(図2参照)。本ステップは、中間部品54Mを把持するロボットによってなされてもよいし、人手によってなされてもよい。
【0064】
ステップS2は、金型38内における金型空間内に二次成形部56用の樹脂を流し込むステップ(b)である。例えば、制御装置20が樹脂注入装置60を制御することで、樹脂注入装置60から加熱溶融された樹脂が金型空間内に注入される。
【0065】
ステップS3は、金型38内における二次成形部56用の樹脂温度を検出するステップ(c)である。例えば、金型装置30に組込まれた第1温度センサ40及び第2温度センサ42による検出信号が、制御装置20に出力される。これにより、制御装置20において、樹脂温度が把握される。
【0066】
ステップS4は、樹脂温度に基づいて、金型38内における二次成形部56用の樹脂が一次成形部54を溶融可能な溶融可能時間を求めるステップ(d)である。すなわち、二次成形部56用の加熱溶融樹脂の温度が、一次成形部54を形成する樹脂を溶融させる温度以上であれば、一次成形部54におけるリブ部55が二次成形部56用の樹脂に混じり合う状態が保たれる。溶融可能時間は、例えば、検出された樹脂温度が、一次成形部54のリブ部55を形成する樹脂を溶融させる温度以上となる継続時間である。樹脂を溶融させる温度は、一次成形部54を形成する樹脂の融点又はガラス転移温度であってもよいし、当該融点又はガラス転移温度に基づいて設定された基準温度であってもよい。例えば、温度センサ40、42の測定位置は、金型面38Fの位置であり、一次成形部54からは離れている。リブ部55の溶融状態を把握するためには、一次成形部54と二次成形部56との境界における二次成形部56用の樹脂温度を推測することが望ましい。そこで、温度センサ40、42による検出温度よりも所定温度大きい温度を基準温度としてもよい。
【0067】
ステップS5は、溶融可能時間に基づいて、リブ部55の溶融状態の良品を判定するステップ(e)である。すなわち、溶融可能時間が短ければ、リブ部55はあまり溶融せず、溶融状態が不良となることが考えられる。また、溶融可能時間が長ければ、リブ部55が十分に溶融し、溶融状態が良好となることが考えられる。そこで、溶融可能時間に基づいて、リブ部55の溶融状態の良品を判定することができる。この判定の際、溶融可能時間だけではなく、他の要素、例えば、樹脂温度も合わせて考慮されてもよい。後に、溶融可能時間と樹脂温度とが考慮されて、良否判定される例が説明される。
【0068】
ステップS6は、金型38から複合成形部品50を取出すステップ(f)である。本ステップは、本ステップは、中間部品54Mを把持するロボットによってなされてもよいし、人手によってなされてもよい。
【0069】
上記ステップS2からS5がコンピュータである制御装置20によってなされるとして、その処理に係るフローチャートを図6に示す。
【0070】
ステップS11では、制御装置20は、成形条件を設定する。成形条件は、樹脂注入装置60における圧力、樹脂温度、金型38における加熱温度等である。例えば、作業を開始する際には、予め設定された初期値が成形条件として設定される。
【0071】
次ステップS12では、制御装置20は、樹脂注入装置60に注入を開始するように指令を与える。これにより、樹脂注入装置60から加熱溶融樹脂が金型38の金型空間内に注入される。
【0072】
次ステップS13では、温度センサ40、42からの出力に基づき、樹脂温度が取得される。
【0073】
次ステップS14では、樹脂温度に基づいて溶融可能時間が求められる。図7は樹脂温度の変化例を示す図である。同図に示すように、温度センサ40、42によって検出される樹脂温度は、加熱溶融樹脂が金型38内に注入されることによって急激に上昇、その後、徐々に下がる変化を示す。ここで、一次成形部54のリブ部55を形成する樹脂を溶融させる基準温度aとすると、樹脂温度は時間t1において基準温度aとなる。樹脂温度がピーク値を超えると下降を続け、時間t2において基準温度aとなる。樹脂温度が基準温度以上となっていた時間は、時間t1から時間t2に至る時間であるから、溶融可能時間はt2-t1となる。
【0074】
ステップS15及びS16は、上記ステップS5の一具体例を示している。ステップS15では、溶融可能時間における樹脂温度の積分値(図7における斜線領域の面積)を求める。例えば、検出された樹脂温度の離散データに対して、上記溶融可能時間において数値積分を行い、溶融可能時間における樹脂温度の積分値を求める。かかる積分値は、溶融可能時間が長いほど大きくなり、樹脂温度が大きいほど大きくなる。つまり、積分値は、溶融可能時間及び樹脂温度が反映された値を示す。積分値は、定数を引いた値(例えば、温度から上記基準温度を引いた値)に対して求められてもよい。
【0075】
ステップS16では、積分値が基準値未満であるか否かが判定される。基準値は、実際の種々温度下で複合成形部品50を試験的に製造し、その製造された複合成形部品50におけるリブ部55の溶融状態が良好であるかどうかを観察することによって決定され得る。例えば、一次成形部54と二次成形部56との間でエア漏れが生じるかどうかの試験を行い、エア漏れの有無によって、リブ部55の溶融状態の良否を判定してもよい。あるいは、複合成形部品50を切断してリブ部55の溶融状況を観察することで、リブ部55の溶融状態が良好であるか否かを判定してもよい。そして、リブ部55の溶融状態が良好である条件と、不良である条件との境界で、上記基準値を決定してもよい。積分値が基準値を超えると、ステップS17に進み、良品と判定される。積分値が基準値を超えない場合、ステップS18に進み、不良警告がなされる。積分値が基準値と同じである場合、良品と判定されてもよいし、不良と判定されてもよい。不良警告は、警告装置62を通じてなされる。警告装置62としては、発光部、モニタ等の表示装置、あるいは、音を出すスピーカ等が用いられる。不良警告は、表示装置を通じて不良警告を表示すること、あるいは、スピーカを通じて不良である旨の警告音を発すること等によりなされる。
【0076】
複数の温度センサ40、42が設けられる場合、複数の温度センサ40、42の検出結果のそれぞれについて、上記ステップS14からS16の処理を行い、少なくとも1つの検出結果に基づいて不良と判定された場合に、不良と判定されてもよい。あるいは、複数の温度センサ40、42の検出結果の平均値に対して、上記ステップS14からS16の処理が行われてもよい。
【0077】
良否判定を行う処理例は上記例に限られない。例えば、溶融可能時間と所定の基準時間とを比較することで、良否判定がなされてもよい。また、溶融可能時間と溶融可能時間における樹脂温度の最高値又は平均値との積又は和と所定の基準値とを比較することで、良否判定がなされてもよい。
【0078】
ステップS17あるいはS18の終了後、ステップS19に進む。ステップS19では、成形が終了したか否かが判定される。成形の終了の有無は、例えば、予め入力された製造個数の設定に対して所定数の成形が終了したか否かを判定することによってなされる。成形が終了していないと判定されると、ステップS12に戻って、上記処理を繰返す。成形が終了したと判定されると、処理を終了する。
【0079】
このように構成された複合成形部品50の製造方法によると、樹脂温度に基づいて、金型38内における二次成形部56用の樹脂が一次成形部54のリブ部55を溶融可能な溶融可能時間を求め、この溶融可能時間に基づいてリブ部55の溶融状態良否を判定する。このため、リブ部55の溶融状態をより正確に判定できる。リブ部55の溶融状態を把握することによって、リブ部55によるシール性能をさらに改善することができる。
【0080】
特に、溶融可能時間における樹脂温度の積分値に基づいてリブ部55の溶融状態の良否を判定するため、溶融可能時間及び樹脂温度を加味して、リブ部55の溶融状態の良否をより正確に判定できる。
【0081】
また、二次成形部56の樹脂温度は、二次成形部56用の樹脂のうちリブ部55を覆う部分の表面延長上の温度であるため、リブ部55の近くの樹脂温度に基づいて、リブ部55の溶融状態をより正確に判定することができる。
【0082】
<複合成形部品の製造方法に関する変形例>
上記製造方法に関して、リブ部55の溶融状態が不良と判定された場合に、金型38から取出された複合成形部品50を廃棄するステップ(g)を備えていてもよい。
【0083】
また、上記製造方法に関して、リブ部55の溶融状態が不良と判定された場合に、次の成形条件を変更するステップ(h)を備えてもよい。
【0084】
本変形例に係るフローチャートが図8に示される。図8では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS18の次に、ステップS21及びステップS22が追加されている。すなわち、不良と判定された後(図8ではステップS18の後)、ステップS21において、廃棄動作制御がなされる。廃棄動作制御は、上記ステップ(g)に対応する制御である。例えば、制御装置20は、成形品取出装置80を制御して、金型38から複合成形部品50を取出して、不良用の回収部86に移し替えるようにするとよい。なお、良品と判定された場合(ステップS17)、制御装置20は、成形品取出装置80を制御して、金型38から複合成形部品50を取出して、良用の回収部84に移し替えるようにするとよい。作業者が上記警告表示を見て又は警告音を聞いて、金型38から取出された複合成形部品50を廃棄するようにしてもよい。
【0085】
また、次ステップS22では、成形条件の変更がなされる。本ステップS22は、上記ステップ(h)に対応する制御である。例えば、積分値が基準値を超えない場合、加熱不足であることが考えられるので、樹脂注入装置60における樹脂温度、金型装置30における金型温度の少なくとも一方の設定温度を上げることが考えられる。なお、積分値が大きく基準値を超える場合、加熱され過ぎであることが考えられるので、上記とは逆に、樹脂注入装置60における樹脂温度、金型装置30における金型温度の少なくとも一方の設定温度を下げることが考えられる。これにより、次回の金型成形時には、樹脂がより高温となり、リブ部55がより確実に溶けるようになる。
【0086】
本変形例により、リブ部55の溶融状態が不良と判定された場合に複合成形部品50を容易に廃棄することができる。
【0087】
また、リブ部55の溶融状態が続けて不良となることが抑制される。なお、温度センサ40、42に出力に基づき、加熱溶融樹脂の温度が所定温度より低すぎると判定された場合、金型38におけるヒータ39の温度を上げる等して、フィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0088】
上記製造方法に関して、第1温度センサ40と第2温度センサ42とに基づいて、金型38内における二次成形部56用の樹脂の流入速度を求めるステップ(i)をさらに備えてもよい。
【0089】
本変形例に係るフローチャートが図9に示される。図9では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS16の次にステップS31及びS32が追加されている。すなわち、ステップS16において積分値が基準値を超えると判定されると、ステップS31に進む。ステップS31において、流入速度が求められる。2つの温度センサ40、42は、金型38における所定位置に設けられているから、2つの温度センサ40、42の距離は設計上既知の値である。また、2つの温度センサ40、42の出力が制御装置20に与えられることで、樹脂が2つの温度センサ40、42に対応する位置を通過した時間が求められる。例えば、2つの温度センサ40、42に出力結果に基づく温度が所定の基準値を超えた時間が、樹脂が温度センサ40、42に対応する位置を通過した時間として特定されてもよい。そして、2つの温度センサ40、42の距離を、樹脂が2つの温度センサ40、42に対応する位置を通過した時間の差で除することによって、樹脂の流入速度が求められる。
【0090】
次ステップS32では、樹脂の流入速度が所定の流入条件を満たすか否かが求められる。例えば、流入速度が遅いと、樹脂が十分に溶融していないこと、あるいは、圧力不足である可能性がある。そこで、下限流入速度が予め設定され、流入条件として、流入速度が当該下限流入速度を超えていることが規定されてもよい。下限流入速度は、実験的、経験的に求められてもよい。樹脂の流入速度が所定の流入条件を満たさない場合、不良として、ステップS18に進み、不良警告が出される。樹脂の流入速度が所定の流入条件を満たす場合、良品として、ステップS17に進む。
【0091】
本変形例によると、金型38内への樹脂の流入速度に基づいて、樹脂の流入状態がより適切になされるか否かが監視される。
【0092】
上記製造方法に関して、温度センサ40、42の出力結果に基づいて、内部部品52の熱条件を満たすかどうかを判定するステップ(j)をさらに備えてもよい。
【0093】
本変形例に係るフローチャートが図10に示される。図10では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS16の次にステップS41が追加されている。すなわち、ステップS16において積分値が基準値を超えると判定されると、ステップS41に進む。ステップS41において、温度センサ40、42の出力結果に基づいて、内部部品52の熱条件を満たすか否かが判定される。熱条件は、内部部品52が耐えることができる温度条件であり、内部部品52の特性等に鑑み、予め決定される。熱条件は、溶融樹脂の温度が反映された条件であればよく、樹脂温度に対する上限値条件であってもよいし、樹脂温度が所定の温度を超えた時間に対する条件時間によって規定されていてもよいし、樹脂温度を、所定温度を超えた時間で積分した積分値に対する上限値であってもよい。これらの各条件は、内部部品52の特性に鑑みて、実験的、経験的に求められてもよい。熱条件を満たさないと判定されると、不良として、ステップS18に進み、熱条件を満たすと判定されると、良品として、ステップS17に進む。
【0094】
本変形例によると、内部部品52への熱状態の良否を判定することができ、加熱されすぎた内部部品52を含む複合成形部品50を不良品として処理することにより、不良の発生が抑制される。
【0095】
上記製造方法に関して、圧力センサ44の出力結果に基づいて、金型38内への二次成形部56用の樹脂の充填温度を判定するステップ(k)をさらに備えてもよい。
【0096】
本変形例に係るフローチャートが図11に示される。図11では、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS16の次にステップS51が追加されている。すなわち、ステップS16において積分値が基準値を超えると判定されると、ステップS51に進む。ステップS51において、圧力センサ44の出力結果に基づいて、圧力条件を満たすか否かが判定される。圧力条件は、加熱溶融樹脂が金型38内に流れ込む際の圧力条件であり、内部部品52の特性等に鑑み、予め決定される。圧力が小さすぎると、樹脂が注入口31cから外れた端に十分に充填されないことが発生し得る。また、圧力が大きすぎると、一次成形部54、内部部品52に過大な力が加わってしまうことが考えられる。このため、圧力条件として、適切な上限値及び下限値が設定される。上限値及び下限値は、樹脂が細部に行渡って充填され、かつ、一次成形部54、内部部品52に過大な力が加わらないように、実験的、経験的に設定され得る。圧力条件を満たさないと判定されると、不良として、ステップS18に進み、圧力条件を満たすと判定されると、良品として、ステップS17に進む。
【0097】
本変形例によると、内部部品52、一次成形部54等に大きな力が加わらない範囲で、金型38内に二次成形部56用の樹脂がしっかりと充填されているかどうかを判定することができる。
【0098】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0099】
10 製造装置
20 制御装置
21 CPU
22 記憶部
22a プログラム
22b 条件値
30 金型装置
30P 位置決めピン
31a 導入口
31b 流路
31c 注入口
32 上金型
36 下金型
38 金型
38F 金型面
39 ヒータ
40 第1温度センサ
42 第2温度センサ
44 圧力センサ
50 複合成形部品
51 ネジ止部
52 内部部品
54 一次成形部
54M 中間部品
54h 有底穴
55 リブ部
56 二次成形部
56a1 第1センサ跡
56a2 第2センサ跡
56a3 圧力センサ跡
56h 孔
60 樹脂注入装置
62 警告装置
70 ランナ跡部
80 成形品取出装置
84、86 回収部
P1 樹脂注入口跡
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11