(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】風洞構造及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20231219BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20231219BHJP
H05K 7/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H05K7/20 G
H02M1/00 Z
H05K7/18 K
(21)【出願番号】P 2020051902
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 誉人
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-037665(JP,A)
【文献】特開2016-212519(JP,A)
【文献】特開2013-099113(JP,A)
【文献】特開2018-056255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H02M 1/00
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換部ユニットが電力変換装置の盤に収納の際に当該電力変換部ユニットの排気ダクトと気密に連通が可能な第一風洞部と、
前記盤の内面の排気口に配置されると共に前記排気ダクトと前記第一風洞部との隙間の確保が可能に当該第一風洞部と連結される第二風洞部と
を有し、
前記第一風洞部は、この第一風洞部の一端が前記第二風洞部に挿入されて当該第二風洞部と連結され、
前記第二風洞部には、この第二風洞部を前記第一風洞部に固着する固着具の取り付け孔が形成され、
この取り付け孔は、前記挿入の方向に沿う長孔を成すこと
を特徴とする風洞構造。
【請求項2】
電力変換部ユニットが電力変換装置の盤に収納の際に当該電力変換部ユニットの排気ダクトと気密に連通が可能な第一風洞部と、
前記盤の内面の排気口に配置されると共に前記排気ダクトと前記第一風洞部との隙間の確保が可能に当該第一風洞部と連結される第二風洞部と
を有し、
前記電力変換部ユニットと対向する前記第一風洞部の端部には、
前記排気ダクトが挿入される開口部が形成された仕切り板と、
前記排気ダクトの封止部材受けと気密に当接が可能な封止部材と
が備えられたことを特徴とする記載の風洞構造。
【請求項3】
前記電力変換部ユニットと対向する前記第一風洞部の端部には、
前記排気ダクトが挿入される開口部が形成された仕切り板と、
前記排気ダクトの封止部材受けと気密に当接が可能な封止部材と
が備えられたことを特徴とする請求項
1に記載の風洞構造。
【請求項4】
前記電力変換部ユニットは、前記盤の内外に移動可能なベース部に設置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の風洞構造。
【請求項5】
前記仕切り板は、絶縁材料から成ることを特徴とする請求項
2または3に記載の風洞構造。
【請求項6】
前記ベース部は、絶縁材料から成ることを特徴とする請求項4に記載の風洞構造。
【請求項7】
前記第一風洞部及び前記第二風洞部は、前記電力変換部ユニットの冷却風の吸気方向に対して垂直または水平に配置されたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の風洞構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の風洞構造を有する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換部ユニットの冷却に供する電力変換装置の風洞部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の電力変換部ユニットを強制風冷する場合、冷却効率を向上させるため風洞構造が用いられる。この風洞構造の先行文献としては、例えば、特許文献1の風洞構造は、電力変換部ユニットと風洞部との隙間をパッキンにより密閉し、当該風洞部に収納された放冷部に冷却風を供して当該電力変換部ユニットを冷却する。また、特許文献2,3の風洞構造は、風洞部に電力変換部ユニットが収容され、この電力変換部ユニットと風洞部との隙間に冷却風を流通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-057091号公報
【文献】特開2018-137852号公報
【文献】特開2016-19324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換部ユニットは定期交換等のメンテナンスを行うことが一般的であるが、従来の風洞構造は以下の問題がある。
【0005】
特許文献1の風洞構造は、電力変換部ユニットを盤外に引き出す際などに風洞と電力変換部ユニットとが干渉するので、風洞の構成部材等を取り外す必要があり、作業時間が増える。特許文献2,3の風洞構造は、漏れ風量が増大して冷却効率が低減する。
【0006】
本願発明は、電力変換部ユニットの冷却に供される冷却風の漏れを低減して冷却効率を高めると共に当該電力変換部ユニットのメンテナンス性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、風洞構造であって、電力変換部ユニットが電力変換装置の盤に収納の際に当該電力変換部ユニットの排気ダクトと気密に連通が可能な第一風洞部と、前記盤の内面の排気口に配置されると共に前記排気ダクトと前記第一風洞部との隙間の確保が可能に当該第一風洞部と連結される第二風洞部とを有する。
【0008】
本発明の一態様は、前記風洞構造において、前記第一風洞部は、この第一風洞部の一端が前記第二風洞部に挿入されて当該第二風洞部と連結され、前記第二風洞部には、この第二風洞部を前記第一風洞部に固着する固着具の取り付け孔が形成され、この取り付け孔は、前記挿入の方向に沿う長孔を成す。
【0009】
本発明の一態様は、前記風洞構造において、前記電力変換部ユニットと対向する前記第一風洞部の端部には、前記排気ダクトが挿入される開口部が形成された仕切り板と、前記排気ダクトの封止部材受けと気密に当接が可能な封止部材とが備えられる。
【0010】
本発明の一態様は、前記風洞構造において、前記電力変換部ユニットは、前記盤の内外に移動可能なベース部に設置される。
【0011】
本発明の一態様は、前記仕切り板は、絶縁材料から成ることを特徴とする請求項3に記載の風洞構造。
【0012】
本発明の一態様は、前記風洞構造において、前記ベース部は、絶縁材料から成る。
【0013】
本発明の一態様は、前記第一風洞部及び前記第二風洞部は、前記電力変換部ユニットの冷却風の吸気方向に対して垂直または水平に配置される。
【0014】
本発明の一態様は、上記の風洞構造を有する電力変換装置である。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、電力変換部ユニットの冷却に供される冷却風の漏れを低減して冷却効率を高めると共に当該電力変換部ユニットのメンテナンス性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一態様である実施形態1の風洞構造を有する電力変換装置の盤の内部を示す斜視図。
【
図3】本発明の一態様である実施形態2の風洞構造を有する電力変換装置の盤の内部を示す斜視図。
【
図4】電力変換部ユニットの収納時を説明した風洞構造の正面図。
【
図5】電力変換部ユニットの引き出し作業時を説明した風同構造の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[実施形態1]
図1に例示された電力変換装置1の風洞構造2は、電力変換装置1の電力変換部ユニット3が収納される盤10の天井部における内面11に構成される。
【0019】
本態様の風洞構造2は、電力変換部ユニット3の冷却風の吸気方向(同図の矢印a)に対して垂直に配置され、第一風洞部21及び第二風洞部22を有する。
【0020】
第一風洞部21は、電力変換装置1の電力変換部ユニット3が電力変換装置1の盤10に収納の際に電力変換部ユニット3の排気ダクト31と気密に連通が可能となっている。特に、第一風洞部21は、この第一風洞部21の一端が第二風洞部22に挿入されて第二風洞部22と連結される。
【0021】
また、第一風洞部21には、
図4(a)(b)に示されたように第二風洞部22を第一風洞部21に固着する固着具である調整ネジ23が螺着される固定孔24が形成されている。
【0022】
排気ダクト31は、
図1に示したように電力変換部ユニット3の運転時に吸気口34から導入されて電力変換部ユニット3の内部の冷却に供された冷却風が排出される。そして、
図4,5に示したように、排気ダクト31の排出側端部の内周部には、パッキン受け32が設けられる。パッキン受け32は、封止部材受けであって、排気ダクト31と第一風洞部21とが連通時に、第一風洞部21側の封止部材であるパッキン27と液密に当接可能となっている。
【0023】
また、
図1の盤10の内部において電力変換部ユニット3と対向する第一風洞部21の端部には、
図2に示したように、仕切り板26及びパッキン27が備えられる。
【0024】
仕切り板26には、排気ダクト31から排出された熱交換後の冷却風が供される開口部28が形成されている。仕切り板26は、絶縁部材から成り、電力変換部ユニット3と風洞構造2の絶縁が確保される。
【0025】
パッキン27は、この仕切り板26の開口部28の周縁に配置される封止部材であって、第一風洞部21と排気ダクト31とが連通時に、排気ダクト31側の封止部材受けであるパッキン受け32と気密に当接可能となっている。
【0026】
第二風洞部22は、盤10の排気口12に配置されると共に排気ダクト31と第一風洞部21との隙間の確保が可能に第一風洞部21と連結される。
【0027】
また、第二風洞部22には、
図2に示されたように、第一風洞部21との連結に供される固着具である調整ネジ23の取り付け孔25が形成されている。
【0028】
取り付け孔25は、第一風洞部21に対する第一風洞部21の挿入方向に沿う長孔を成す。これにより、取り付け孔25の長手方向の範囲で、第二風洞部22において、第一風洞部21のスライド量が規定され、第一風洞部21の固着位置が任意に調整可能となる。
【0029】
そして、電力変換部ユニット3は、
図1に示したように、車輪33を備えたベース部30に設置され、盤10の内外に移動可能となっている。ベース部30は、仕切り板26と同様に絶縁部材から成り、電力変換部ユニット3の大地との絶縁が確保される。
【0030】
図1,4及び5を参照して本実施形態の風洞構造2の動作例について説明する。
【0031】
先ず、電力変換部ユニット3が盤10内に導入される前に、盤10内の第一風洞部21は、
図5に示したように、調整ネジ23の締め付けにより、例えば、第二風洞部22の取り付け孔25の一端側(盤10の排気口12側)の位置に固着される。次いで、
図1に示したように、ベース部30を盤10内に移動させると、電力変換部ユニット3は、盤10内に導入された状態となる。
【0032】
次いで、
図5に示したように、電力変換部ユニット3の排気ダクト31が盤10の内面11における第一風洞部21の開口部28と対向するように配置される。次いで、同図の状態から調整ネジ23を緩め、そして、この調整ネジ23が例えば第二風洞部22の取り付け孔25の他端側(排気ダクト31側)の位置となるように、第一風洞部21を、
図4の矢印dで示したように、排気ダクト31に向けてスライドさせる。このとき、同図に示したように、第一風洞部21のパッキン27は、排気ダクト31のパッキン受け32と気密に当接した状態となる。
【0033】
次いで、第一風洞部21は、調整ネジ23の締め付けにより第二風洞部22において固着される。このとき、
図1に示したように、盤10内において、電力変換部ユニット3の排気ダクト31は、第一風洞部21及び第二風洞部22と気密に連通した状態となる。
【0034】
そして、電力変換装置1の運転の際には、同図の矢印aで示したように、冷却風が電力変換部ユニット3の吸気口34を介して電力変換部ユニット3内に導入される。電力変換部ユニット3の冷却に供された冷却風は、同図,
図4の矢印bで示したように、排気ダクト31、第一風洞部21、第二風洞部22及び盤10の排気口12を介して、吸気方向(
図1の矢印a)に対して垂直に排出される。
【0035】
また、電力変換部ユニット3のメンテナンスの際、
図4の状態において、先ず、調整ネジ23が緩められる。次いで、調整ネジ23が例えば第二風洞部22の取り付け孔25の前記一端の位置となるように、第一風洞部21が、
図5の矢印eで示したように、盤10の排気口12側にスライドされる。このとき、第一風洞部21は、
図5に示したように、排気ダクト31から離れた状態となる。
【0036】
その後、第一風洞部21は、調整ネジ23の締め付けにより第二風洞部22において固着される。そして、
図1の矢印cで示したように、ベース部30を盤10の外部に移動させると、電力変換部ユニット3は、盤10の外に引き出された状態となる。
【0037】
以上の風洞構造2によれば、電力変換部ユニット3を盤10に導入する際または盤10から引き出す際に、調整ネジ23を緩めて第一風洞部21を盤10の排気口12側にスライドすれば、排気ダクト31と第一風洞部21との隙間が確保される。
【0038】
したがって、電力変換部ユニット3を盤10に対して導入する際または引き出す際に電力変換部ユニット3と風洞部(第一風洞部21)との干渉が解消される。よって、盤10に対する電力変換部ユニット3の引き出し及び収納の作業時間の削減や着脱する部材の管理が容易となり、電力変換装置1のメンテナンス性が向上する。
【0039】
また、電力変換部ユニット3が盤10内に収納される際に、第一風洞部21側のパッキン27と電力変換部ユニット3側のパッキン受け32とが気密に当接するので、漏れ風量が低減し、冷却効率の向上が図られる。
【0040】
さらに、第二風洞部22に対する第一風洞部21の固着位置は、取り付け孔25の範囲で調整ネジ23により容易に微調整が可能であるので、メンテナンス性が向上する。
【0041】
そして、仕切り板26やベース部30が絶縁材料から構成させることで、電力変換部ユニット3と風洞構造2との絶縁や電力変換部ユニット3の大地との絶縁が容易に確保され、電気的な保護等が図れる。
【0042】
[実施形態2]
風洞構造2は、
図3に例示した実施形態2の電力変換装置1のように、盤10において水平に配置してもよい
本態様の盤10は、電力変換部ユニット3の背面部に排気ダクト31を備えた仕様に対応したものである。この場合、風洞構造2(第一風洞部21及び第二風洞部22)は、同図に示したように、盤10の背面部における内面13の排気口12において、電力変換部ユニット3の冷却風の吸気方向(矢印a)に対して水平に配置される。
【0043】
実施形態2の電力変換装置1における盤10に対する電力変換部ユニット3の引き出し及び収納は、実施形態1と同様の要領で行えばよい。
【0044】
電力変換装置1の運転の際には、同図の矢印aで示したように、冷却風が電力変換部ユニット3の吸気口34を介して電力変換部ユニット3内に導入される。電力変換部ユニット3の冷却に供された冷却風は、同図の矢印bで示したように前記吸気方向(矢印a)に対して水平方向の流れとなり、排気ダクト31、第一風洞部21、第二風洞部22及び盤10の背面側の排気口12を介して排出される。そして、電力変換部ユニット3のメンテナンスの際には、同図の矢印cで示したようにベース部30を盤10の外側に水平方向に移動させると、電力変換部ユニット3は、盤10の外に引き出された状態となる。
【0045】
以上の実施形態2の風洞構造2によれば、実施形態1と同様の効果が得られることが明らかである。特に、電力変換装置1の盤10の奥行寸法が大きい場合等の実施形態1の態様では調整ネジ23の作業が困難な場合であっても、実施形態2のように、冷却風の流れ方向を水平方向に変更すれば、調整ネジ23の取り扱いを電力変換部ユニット3及び盤10の背面部等から容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1…電力変換装置
2…風洞構造、21…第一風洞部、22…第二風洞部、23…調整ネジ、24…固定孔、25…取り付け孔、26…仕切り板、27…パッキン、28…開口部
3…電力変換部ユニット、30…ベース部、31…排気ダクト、32…パッキン受け、33…車輪、34…吸気口
10…盤、11,13…内面、12…排気口
a,b…冷却風が流れる方向
c…電力変換部ユニットが引き出される方向
d,e…第一風洞部がスライドする方向