(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】スライド装置及びスライド装置用キャップ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2020054204
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 英義
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レールと、
前記第1レールに対し相対的にスライドするように構成された第2レールと、
前記第1レールのスライド方向における端部に取り付けられたキャップと、
を備え、
前記第1レールは、
レール幅方向に互いに離れて配置された第1外壁及び第2外壁と、
前記第1外壁とレール幅方向に対向するように配置された第1内壁と、
前記第2外壁とレール幅方向に対向するように配置された第2内壁と、
前記第1外壁又は前記第1内壁に設けられた第1係合孔と、
を有し、
前記キャップは、
前記第1外壁、前記第2外壁、前記第1内壁及び前記第2内壁の前記スライド方向における端部を被覆する本体と、
前記本体から前記第1外壁と前記第1内壁との間の空間に突出する第1爪と、
前記本体から前記第2外壁と前記第2内壁との間の空間に突出する第2爪と、
を有し、
前記第1爪は、
前記第1係合孔に対しレール幅方向に離れて配置された第1支持部と、
前記第1支持部のうち前記スライド方向において前記第1係合孔よりも前記本体から離れた第1起点部から、前記第1係合孔に向かって延伸すると共に、前記第1係合孔に係合する第1係合部と、
を有し、
前記第1支持部は、レール幅方向において、前記第1内壁及び前記第1外壁のうち前記第1係合孔が設けられていない壁に近い位置に配置され
、
前記第1支持部の前記第1起点部は、前記第1外壁及び前記第1内壁の双方と離れて配置される、スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記第1レールは、前記第2外壁又は前記第2内壁に設けられた第2係合孔を有し、
前記第2爪は、
前記第2係合孔に対しレール幅方向に離れて配置された第2支持部と、
前記第2支持部のうち前記スライド方向において前記第2係合孔よりも前記本体から離れた第2起点部から、前記第2係合孔に向かって延伸すると共に、前記第2係合孔に係合する第2係合部と、
を有する、スライド装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスライド装置であって、
前記第1爪は、前記第1係合部と前記本体とを前記スライド方向に連結する連結部を有する、スライド装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のスライド装置であって、
前記第1レールは、シートに取り付けられるように構成された可動レールであり、
前記第2レールは、前記第1レールをスライド可能に支持する固定レールである、スライド装置。
【請求項5】
スライド装置を構成するレールのスライド方向の端部に取り付けられるように構成されたスライド装置用キャップであって、
本体と、
第1爪と、
第2爪と、
を備え、
前記レールは、
レール幅方向に互いに離れて配置された第1外壁及び第2外壁と、
前記第1外壁とレール幅方向に対向するように配置された第1内壁と、
前記第2外壁とレール幅方向に対向するように配置された第2内壁と、
前記第1外壁又は前記第1内壁に設けられた第1係合孔と、
を有し、
前記本体は、前記第1外壁、前記第2外壁、前記第1内壁及び前記第2内壁の前記スライド方向における端部を被覆するように構成され、
前記第1爪は、前記本体から前記第1外壁と前記第1内壁との間の空間に突出するように構成され、
前記第2爪は、前記本体から前記第2外壁と前記第2内壁との間の空間に突出するように構成され、
前記第1爪は、
前記第1係合孔に対しレール幅方向に離れて配置されるように構成された第1支持部と、
前記第1支持部のうち前記スライド方向において前記第1係合孔よりも前記本体から離れた第1起点部から、前記第1係合孔に向かって延伸すると共に、前記第1係合孔に係合するように構成された第1係合部と、
を有し、
前記第1支持部は、レール幅方向において、前記第1内壁及び前記第1外壁のうち前記第1係合孔が設けられていない壁に近い位置に配置され
、
前記第1支持部の前記第1起点部は、前記第1外壁及び前記第1内壁の双方と離れて配置される、スライド装置用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライド装置及びスライド装置用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物に設置されるシートのスライド装置は、乗物のフロアに固定される固定レールと、固定レールに対してスライド可能な可動レールとを有する。可動レール及び/又は固定レールには、端部を保護するキャップ(つまりプロテクタ)が取り付けられる(特許文献1参照)。
【0003】
レールに取り付けられるキャップは、レールの端部を覆う本体と、本体からレール内部に突出する爪とを有する。爪は、レールの外壁と内壁との間に挿入され、内壁に設けられた係合孔に係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に開示されたキャップでは、キャップのレール幅方向の端部にキャップをレールから外す方向の負荷が加わると、係合孔から離脱する方向の反力を内壁から爪が受ける。そのため、負荷が小さい場合でもキャップがレールから脱落する場合がある。
【0006】
本開示の一局面は、キャップのレールからの脱落を抑制できるスライド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、第1レール(2)と、第1レール(2)に対し相対的にスライドするように構成された第2レール(3)と、第1レール(2)のスライド方向における端部(21A)に取り付けられたキャップ(4)と、を備えるスライド装置(1)である。第1レール(2)は、レール幅方向に互いに離れて配置された第1外壁(25A)及び第2外壁(25B)と、第1外壁(25A)とレール幅方向に対向するように配置された第1内壁(23A)と、第2外壁(25B)とレール幅方向に対向するように配置された第2内壁(23B)と、第1外壁(25A)又は第1内壁(23A)に設けられた第1係合孔(26A)と、を有する。
【0008】
キャップ(4)は、第1外壁(25A)、第2外壁(25B)、第1内壁(23A)及び第2内壁(23B)のスライド方向における端部を被覆する本体(41)と、本体(41)から第1外壁(25A)と第1内壁(23A)との間の空間に突出する第1爪(42A)と、本体(41)から第2外壁(25B)と第2内壁(23B)との間の空間に突出する第2爪(42B)と、を有する。
【0009】
第1爪(42A)は、第1係合孔(26A)に対しレール幅方向に離れて配置された第1支持部(421A)と、第1支持部(421A)のうちスライド方向において第1係合孔(26A)よりも本体(41)から離れた第1起点部(424A)から、第1係合孔(26A)に向かって延伸すると共に、第1係合孔(26A)に係合する第1係合部(422A)と、を有する。
【0010】
このような構成によれば、本体(41)に第1レール(2)から離脱する方向の負荷が加わった際に、第1支持部(421A)の第1起点部(424A)を支点として第1係合部(422A)が第1係合孔(26A)に進入する方向に回転する。そのため、第1爪(42A)の第1係合孔(26A)からの脱離が抑制される。その結果、キャップ(4)の第1レール(2)からの脱落が抑制される。
【0011】
本開示の一態様では、第1レール(2)は、第2外壁(25B)又は第2内壁(23B)に設けられた第2係合孔(26B)を有してもよい。第2爪(42B)は、第2係合孔(26B)に対しレール幅方向に離れて配置された第2支持部(421B)と、第2支持部(421B)のうちスライド方向において第2係合孔(26B)よりも本体(41)から離れた第2起点部(424B)から、第2係合孔(26B)に向かって延伸すると共に、第2係合孔(26B)に係合する第2係合部(422B)と、を有してもよい。このような構成によれば、第1爪(42A)の第1係合孔(26A)からの脱離の抑制に加えて、第2爪(42B)の第2係合孔(26B)からの脱離も抑制できる。そのため、キャップ(4)の第1レール(2)からの脱落抑制効果が促進される。
【0012】
本開示の一態様では、第1爪(42A)は、第1係合部(422A)と本体(41)とをスライド方向に連結する連結部(423A)を有してもよい。このような構成によれば、第1爪(42A)の変形が抑制されるため、第1爪(42A)の第1係合孔(26A)からの脱離抑制効果が促進される。また、第1爪(42A)の第1レール(2)への挿入が容易となる。
【0013】
本開示の一態様では、第1支持部(421A)の第1起点部(424A)は、第1外壁(25A)及び第1内壁(23A)の双方と離れて配置されてもよい。このような構成によれば、本体(41)に第1レール(2)から離脱する方向の負荷が加わった際に、第1起点部(424A)が第1外壁(25A)又は第1内壁(23A)に向かって変位する。そのため、第1係合部(422A)の第1係合孔(26A)に進入する方向への回転が大きくなる。その結果、キャップ(4)の第1レール(2)からの脱落抑制効果が促進される。
【0014】
本開示の一態様では、第1レール(2)は、シート(11)に取り付けられるように構成された可動レールであってもよい。第2レール(3)は、第1レール(2)をスライド可能に支持する固定レールであってもよい。このような構成によれば、シート(11)の設置時等に他の部材に干渉しやすい可動レールにおいて、プロテクタの脱落を効果的に抑制できる。
【0015】
本開示の別の態様は、スライド装置(1)を構成するレール(2)のスライド方向の端部(21A)に取り付けられるように構成されたスライド装置用キャップ(4)である。スライド装置用キャップ(4)は、本体(41)と、第1爪(42A)と、第2爪(42B)と、を備える。レール(2)は、レール幅方向に互いに離れて配置された第1外壁(25A)及び第2外壁(25B)と、第1外壁(25A)とレール幅方向に対向するように配置された第1内壁(23A)と、第2外壁(25B)とレール幅方向に対向するように配置された第2内壁(23B)と、第1外壁(25A)又は第1内壁(23A)に設けられた第1係合孔(26A)と、を有する。
【0016】
本体(41)は、第1外壁(25A)、第2外壁(25B)、第1内壁(23A)及び第2内壁(23B)のスライド方向における端部を被覆するように構成される。第1爪(42A)は、本体(41)から第1外壁(25A)と第1内壁(23A)との間の空間に突出するように構成される。第2爪(42B)は、本体(41)から第2外壁(25B)と第2内壁(23B)との間の空間に突出するように構成される。
【0017】
第1爪(42A)は、第1係合孔(26A)に対しレール幅方向に離れて配置されるように構成された第1支持部(421A)と、第1支持部(421A)のうちスライド方向において第1係合孔(26A)よりも本体(41)から離れた第1起点部(424A)から、第1係合孔(26A)に向かって延伸すると共に、第1係合孔(26A)に係合するように構成された第1係合部(422A)と、を有する。
【0018】
このような構成によれば、上述したように第1爪(42A)の第1係合孔(26A)からの脱離が抑制されるため、スライド装置用キャップ(4)のレール(2)からの脱落が抑制される。
【0019】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態におけるシートの模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態におけるスライド装置を示す模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線での模式的な切断部端面図である。
【
図5】
図5は、第1キャップの第1爪及び第2爪の係合状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図5とは異なる実施形態における可動レール及び第1キャップを示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図5及び
図6とは異なる実施形態における可動レール及び第1キャップを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート10は、シート11と、スライド装置1とを備える。
【0022】
本実施形態のシート11は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、シート11を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0023】
スライド装置1は、シート11と乗物のフロアFとの間に配置されている。スライド装置1は、
図2に示すように、可動レール2と、固定レール3と、第1キャップ4と、第2キャップ5とを備える。
【0024】
<可動レール>
可動レール2は、いわゆるアッパレールであり、シート11に取り付けられている。可動レール2は、シート前後方向に延伸し、固定レール3に対しシート前後方向にスライド可能に構成されている。
【0025】
可動レール2は、スライド方向(つまりシート前後方向)における第1端部21Aと、第1端部21Aとは反対側の第2端部21Bとを有する。本実施形態では、第1端部21Aは、後端部であり、第2端部21Bは、前端部である。
【0026】
図3に示すように、可動レール2は、上壁22と、第1内壁23Aと、第2内壁23Bと、第1下壁24Aと、第2下壁24Bと、第1外壁25Aと、第2外壁25Bと、第1係合孔26Aと、第2係合孔26Bとを有する。可動レール2は、シート幅方向の中心を通りシート幅方向と直交する面に対して対称形状である。
【0027】
上壁22は、上下方向と直交する方向に延伸し、シート11と対向している。第1内壁23Aは、上壁22の左端部から下方に延伸している。第2内壁23Bは、上壁22の右端部から下方に延伸している。第1内壁23Aと第2内壁23Bとは、レール幅方向に対向している。
【0028】
ここで、「レール幅方向」とは、シート上下方向と可動レール2のスライド方向とに直交する方向を意味する。また、本実施形態では、レール幅方向はシート幅方向に一致している。
【0029】
第1下壁24Aは、第1内壁23Aの下端部からレール幅方向外側(つまり左側)に延伸している。第2下壁24Bは、第2内壁23Bの下端部からレール幅方向外側(つまり右側)に延伸している。
【0030】
第1外壁25Aは、第1下壁24Aの左端部から上方に延伸している。第2外壁25Bは、第2下壁24Bの右端部から上方に延伸している。第1外壁25Aと第2外壁25Bとはレール幅方向に互いに離れて配置されている。
【0031】
また、第1内壁23Aは、第1外壁25Aとレール幅方向に対向するように配置されている。第2内壁23Bは、第2外壁25Bとレール幅方向に対向するように配置されている。
【0032】
第1係合孔26Aは、第1内壁23Aに設けられている。第2係合孔26Bは、第2内壁23Bに設けられている。第1係合孔26Aと第2係合孔26Bとは、レール幅方向に重なる位置に配置されている。
【0033】
<固定レール>
固定レール3は、いわゆるロアレールである。固定レール3は、シート前後方向に延伸し、可動レール2を上下方向と直交する方向にスライド可能に支持している。つまり、固定レール3は、可動レール2に対して相対的にスライド可能に構成されている。
【0034】
固定レール3は、底壁31と、第1外壁32Aと、第2外壁32Bと、第1天壁33Aと、第2天壁33Bと、第1内壁34Aと、第2内壁34Bとを有する。固定レール3は、シート幅方向の中心を通りシート幅方向と直交する面に対して対称形状である。
【0035】
底壁31は、可動レール2のスライド方向に延伸している。底壁31は、可動レール2の上壁22と対向している。第1外壁32Aは、底壁31の左端部から上方に延伸している。第2外壁32Bは、底壁31の右端部から上方に延伸している。
【0036】
第1天壁33Aは、第1外壁32Aの上端部からシート幅方向内側(つまり右側)に延伸している。第1天壁33Aは、可動レール2の第1外壁25Aを上方から覆っている。第2天壁33Bは、第2外壁32Bの上端部からシート幅方向内側(つまり左側)に延伸している。第2天壁33Bは、可動レール2の第2外壁25Bを上方から覆っている。
【0037】
第1内壁34Aは、第1天壁33Aの右端部から下方に延伸している。第1内壁34Aは、レール幅方向において可動レール2の第1内壁23Aと第1外壁25Aとの間に配置されている。
【0038】
第2内壁34Bは、第2天壁33Bの左端部から下方に延伸している。第2内壁34Bは、レール幅方向において可動レール2の第2内壁23Bと第2外壁25Bとの間に配置されている。
【0039】
外壁32A,32Bと天壁33A,33Bと内壁34A,34Bとにより、下側が開放され、かつスライド方向に延伸する溝状の2つの空間が形成されている。可動レール2における外壁25A,25Bの上端部は、固定レール3に形成された上記溝状の空間に挿入されている。
【0040】
固定レール3は乗物のフロアFに固定されていてもよい。また、シート11の折り畳みが可能なように、固定レール3は例えばシート後方の端部が乗物のフロアFに着脱可能に構成されていてもよい。
【0041】
<第1キャップ>
図4A,4B,4C,4Dに示す第1キャップ4は、可動レール2の第1端部21Aに取り付けられている。第1キャップ4は、可動レール2の後端部を保護するプロテクタである。
【0042】
第1キャップ4は、本体41と、第1爪42Aと、第2爪42Bと、第1補助爪43Aと、第2補助爪43Bと、補強部44と、第1保持部45Aと、第2保持部45Bとを有する。第1キャップ4は、シート幅方向の中心を通りシート幅方向と直交する面に対して対称形状である。
【0043】
(本体)
本体41は、可動レール2の第1外壁25A、第2外壁25B、第1内壁23A、第2内壁23B、上壁21、第1下壁24A、及び第2下壁24Bのスライド方向における端部を被覆する。具体的には、本体41は、可動レール2の第1端部21Aにスライド方向外側(つまり後方)から当接している。
【0044】
(第1爪)
図5に示すように、第1爪42Aは、U字状であり、本体41から可動レール2の第1外壁25Aと第1内壁23Aとの間の空間に突出している。第1爪42Aは、第1支持部421Aと、第1係合部422Aと、第1連結部423Aとを有する。
【0045】
第1支持部421Aは、本体41の左下部におけるシート前方の面からシート前方に延伸している。第1支持部421Aは、第1係合孔26Aに対しレール幅方向に離れて配置されている。具体的には、第1支持部421Aは、レール幅方向において、第1内壁23Aよりも第1外壁25Aに近い位置、詳細には第1外壁25Aの近傍に配置されている。
【0046】
第1支持部421Aの前端部は、第1外壁25Aから離れるようにレール幅方向内側に湾曲している。第1支持部421Aの前端部には、第1係合部422Aが接続された第1起点部424Aが設けられている。
【0047】
第1起点部424Aは、スライド方向において第1係合孔26Aよりも本体41から離れている。つまり、第1起点部424Aは、第1係合孔26Aよりもシート前方に位置している。また、第1起点部424Aは、第1外壁25A及び第1内壁23Aの双方と離れて配置されている。
【0048】
第1係合部422Aは、第1支持部421Aの第1起点部424Aから第1係合孔26Aに向かって(つまり右後方に)直線状に延伸している。第1係合部422Aは、第1係合孔26Aに係合する第1先端部425Aを有する。
【0049】
第1先端部425Aは、第1係合孔26Aの内部に進入すると共に、第1係合孔26Aのシート後方の縁に当接している。第1先端部425Aは、第1キャップ4のシート後方への脱落を抑制する。
【0050】
第1連結部423Aは、第1係合部422Aと本体41とをスライド方向に連結している。具体的には、第1連結部423Aは、本体41のシート前方の面から第1係合部422Aのうち第1先端部425Aよりもレール幅方向外側の部位まで延伸している。
【0051】
第1連結部423Aは、第1支持部421Aよりもレール幅方向内側に、第1支持部421Aと離れて配置されている。第1支持部421Aと、第1係合部422Aと、第1連結部423Aと、本体41の一部とは、ループを形成している。
【0052】
第1係合部422Aが第1係合孔26Aに係合している状態で、本体41の左端部をシート後方へ変位させる負荷が第1キャップ4に加わると(
図5中の矢印D1)、第1爪42Aの全体がレール幅方向外側に(つまり第1外壁25Aに向かって)たわむ。しかし、第1支持部421Aが第1外壁25Aに当接することで第1爪42Aのたわみが止められ、第1起点部424Aを支点(つまり回転中心)として、第1係合部422Aが上方から視て反時計回りに回転する(
図5中の矢印D2)。
【0053】
これにより、第1係合部422Aの第1先端部425Aがレール幅方向内側に変位するように変形する(
図5中の矢印D3)。つまり、第1支持部421Aの働きによって、第1係合部422Aが係合を解除する方向とは逆向きに変位する。
【0054】
(第2爪)
第2爪42Bは、U字状であり、本体41から可動レール2の第2外壁25Bと第2内壁23Bとの間の空間に突出している。第2爪42Bは、第2支持部421Bと、第2係合部422Bと、第2連結部423Bとを有する。
【0055】
第2支持部421Bは、本体41の右下部におけるシート前方の面からシート前方に延伸している。第2支持部421Bは、第2係合孔26Bに対しレール幅方向に離れて配置されている。
【0056】
第2支持部421Bの前端部には、第2係合部422Bが接続された第2起点部424Bが設けられている。第2起点部424Bは、スライド方向において第2係合孔26Bよりも本体41から離れている。また、第2起点部424Bは、第2外壁25B及び第2内壁23Bの双方と離れて配置されている。
【0057】
第2係合部422Bは、第2支持部421Bの第2起点部424Bから第2係合孔26Bに向かって(つまり左後方に)直線状に延伸している。第2係合部422Bは、第2係合孔26Bに係合する第2先端部425Bを有する。
【0058】
第2連結部423Bは、第2係合部422Bと本体41とをスライド方向に連結している。第2支持部421Bと、第2係合部422Bと、第2連結部423Bと、本体41の一部とは、ループを形成している。
【0059】
(補助爪)
図4Aに示す第1補助爪43Aは、本体41から可動レール2の第1内壁23Aの内面に沿ってシート前方に突出している。第1補助爪43Aは、第1爪42Aよりも上方に配置されている。第1補助爪43Aは、第1内壁23Aに設けられた補助係合孔に係合している。
【0060】
第2補助爪43Bは、本体41から可動レール2の第2内壁23Bの内面に沿ってシート前方に突出している。第2補助爪43Bは、第2爪42Bよりも上方に配置されている。第2補助爪43Bは、第2内壁23Bに設けられた補助係合孔に係合している。
【0061】
(補強部)
補強部44は、本体41からシート前方に突出すると共に、第1補助爪43Aと第2補助爪43Bとをレール幅方向に連結している。
【0062】
(保持部)
第1保持部45Aは、本体41の第1爪42Aよりも下方の部位からシート前方に突出している。第1保持部45Aは、可動レール2の第1下壁24Aに下方から重ね合わされている。
【0063】
第2保持部45Bは、本体41の第2爪42Bよりも下方の部位からシート前方に突出している。第2保持部45Bは、可動レール2の第2下壁24Bに下方から重ね合わされている。
【0064】
<第2キャップ>
図2に示す第2キャップ5は、可動レール2の第2端部21Bに取り付けられている。第2キャップ5は、可動レール2の前端部を保護するプロテクタである。
【0065】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1キャップ4の本体41に可動レール2から離脱する方向の負荷が加わった際に、第1支持部421Aの第1起点部424Aを支点として第1係合部422Aが第1係合孔26Aに進入する方向に回転する。そのため、第1爪42Aの第1係合孔26Aからの脱離が抑制される。その結果、第1キャップ4の可動レール2からの脱落が抑制される。
【0066】
(1b)第2爪42Bが第1爪42Aと同様の構成を有することで、第1爪42Aの第1係合孔26Aからの脱離の抑制に加えて、第2爪42Bの第2係合孔26Bからの脱離も抑制できる。そのため、第1キャップ4の可動レール2からの脱落抑制効果が促進される。
【0067】
(1c)第1連結部423Aによって、第1係合部422Aが本体41に連結されることで、第1爪42Aの変形が抑制される。そのため、第1爪42Aの第1係合孔26Aからの脱離抑制効果が促進される。また、第1爪42Aの可動レール2への挿入が容易となる。
【0068】
(1d)本体41に可動レール2から離脱する方向の負荷が加わった際に、第1起点部424Aが第1外壁25Aに向かって変位するため、第1係合部422Aの第1係合孔26Aに進入する方向への回転が大きくなる。その結果、第1キャップ4の可動レール2からの脱落抑制効果が促進される。
【0069】
(1e)可動レール2の第1端部21Aに第1キャップ4が取り付けられることで、シート11の設置時等に他の部材に干渉しやすい可動レール2において、プロテクタの脱落を効果的に抑制できる。
【0070】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0071】
(2a)上記実施形態のスライド装置1において、第1係合孔26Aは、第1外壁25Aに設けられてもよい。第2係合孔26Bは、第2外壁25Bに設けられてもよい。この場合、
図6に示すように、第1爪42Aの第1支持部421Aは、レール幅方向において、第1外壁25Aよりも第1内壁23Aに近い位置に配置される。第2爪42Bの第2支持部421Bは、レール幅方向において、第2外壁25Bよりも第2内壁23Bに近い位置に配置される。
【0072】
(2b)上記実施形態のスライド装置1において、第1爪42Aは、必ずしも第1連結部423Aを有しなくてもよい。例えば、
図7に示すように、第1爪42Aは、本体41と共にループを形成しないJ字状であってもよい。
【0073】
(2c)上記実施形態のスライド装置1において、第1支持部421Aの第1起点部424Aは、第1外壁25Aに当接していてもよい。また、第1係合部422Aは、上方から視て屈曲又は湾曲していてもよい。
【0074】
(2d)上記実施形態のスライド装置1において、第1キャップ4は、可動レール2の第2端部21Bに取り付けられてもよい。また、第1キャップ4は、固定レール3のスライド方向における少なくとも一方の端部に取り付けられてもよい。
【0075】
(2e)上記実施形態のスライド装置1は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。また、上記実施形態のスライド装置1は、乗物以外の建物で使用されるシートにも適用できる。
【0076】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0077】
1…スライド装置、2…可動レール、3…固定レール、4…第1キャップ、
5…第2キャップ、10…乗物用シート、11…シート、21A…第1端部、
22…上壁、23A…第1内壁、23B…第2内壁、24A,24B…下壁、
25A…第1外壁、25B…第2外壁、26A…第1係合孔、26B…第2係合孔、
31…底壁、32A,32B…外壁、33A,33B…天壁、34A,34B…内壁、
41…本体、42A…第1爪、42B…第2爪、43A,43B…補助爪、
44…補強部、45A,45B…保持部、421A…第1支持部、
421B…第2支持部、422A…第1係合部、422B…第2係合部、
423A…第1連結部、423B…第2連結部、424A…第1起点部、
424B…第2起点部、425A…第1先端部、425B…第2先端部。