(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】接触および非接触共用ICカードおよびアンテナシート
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20231219BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20231219BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/077 156
G06K19/077 272
B42D25/305 100
G06K19/077 244
(21)【出願番号】P 2020062784
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 徹
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-207518(JP,A)
【文献】特開2003-44816(JP,A)
【文献】特開2010-97459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
B42D 25/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に外部接触端子を備え、他方の面に複数のアンテナ接続端子を備えた基板、並びに、
当該基板の前記他方の面に搭載され、前記外部接触端子および前記アンテナ接続端子と、それぞれ電気的に接続されたICチップ、を有するICモジュールと、
両方の端部のそれぞれに導電ブロックが電気的に接続されたアンテナ、を有するカード基体と、を備える接触および非接触共用ICカードであって、
前記導電ブロックは、第1の厚さを有する第1部位と、当該第1の厚さよりも厚い部分を有する第2部位とが隣接して構成され、
前記第1部位と前記アンテナの前記端部とが、電気的に接続されており、
前記第2部位と前記アンテナ接続端子とが、導電接着層を介して電気的に接続されており、
前記カード基体の前記ICモジュールが載置される面に、前記ICモジュールの外周の輪郭と対向する領域に沿って、溝を備えることを特徴とする接触および非接触共用ICカード。
【請求項2】
前記溝は、幅が0.1mm以上、2.0mm以下である、請求項1に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項3】
前記溝は、前記カード基体の表面からの深さが0.1mm以上、0.4mm以下である、請求項1または2に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項4】
前記第2部位の前記導電接着層と当接する部分の融点が、前記ICモジュールを、前記導電接着層を介して前記第2部位と接着させるために必要な温度よりも高い、請求項1から3のいずれか一項に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項5】
前記導電接着層は、異方性導電フィルムを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項6】
前記第2部位は、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する中継部と、前記第2の厚さよりも薄い先端部と、を有し、
前記導電ブロックは、前記第1部位と前記中継部とが隣接しており、
前記先端部と前記アンテナ接続端子とが、導電接着層を介して電気的に接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項7】
前記導電ブロックの、前記第2部位は、前記第1部位と同一厚さの部材を部分的に屈曲させて形成されており、前記第2部位の内部に空隙を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項8】
前記接触および非接触共用ICカードの前記外部接触端子が配置された側の面の法線方向から当該ICカードを透視したとき、前記第1部位が、前記第2部位から遠ざかるにつれ先細りする形状を有している、請求項1から7のいずれか一項に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項9】
前記第2部位に、厚さ方向に沿った凹部または貫通孔が形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の接触および非接触共用ICカード。
【請求項10】
シートと、
前記シート上に形成された、両方の端部のそれぞれに導電ブロックが電気的に接続されたアンテナと、を備えた接触および非接触共用ICカードに使用されるアンテナシートであって、
前記導電ブロックは、第1の厚さを有する第1部位と、当該第1の厚さよりも厚い部分を有する第2部位とが隣接して構成され、
前記第1部位と前記アンテナの前記端部とが、電気的に接続されており、
前記第2部位は、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する中継部と、前記第2の厚さよりも薄い先端部と、を有し、
前記導電ブロックは、前記第1部位と前記中継部とが隣接していることを特徴とする、アンテナシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部接触端子および非接触通信用のアンテナを備える接触および非接触共用ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカードとして、カード表面の外部接触端子を通じて電気信号の入出力を行う接触ICカード、アンテナを介して電磁誘導等により電気信号の入出力を行う非接触ICカード、および、カードが備える単一のICチップにより、接触ICカードの機能と非接触ICカードの機能とのいずれをも実現できる接触および非接触共用ICカードが用いられている。中でも、接触および非接触共用ICカードは、1枚のカードの使い分けによって、金融決済時には入出力データの外部漏洩が抑制できる接触ICカードとして使用でき、部屋への入退室時や駅の改札機等に対しては近接状態でデータのやり取りができる非接触ICカードとして使用できる等、利便性が高く、普及が進んでいる。
【0003】
ところで、接触および非接触共用ICカードの製造は、一般的にはまず、特許文献1に記載されるように、アンテナコイルを形成したアンテナシートの両面にコアシート等が積層されたICカード基体に対して、エンドミル切削により、外部接触端子やICチップを備えたICモジュールを装着するための凹部を形成し、アンテナシートのアンテナコイル両端部を露出させてこれを接続端子とする。
【0004】
次に、当該接続端子の上方を覆うように導電接着剤を塗付してから、ICモジュールを、接着剤を介して装着し、当該ICモジュールのアンテナ接続端子とアンテナコイル両端部の接続端子とが、当該導電接着剤により電気的に接続するように、当該ICモジュールをICカード基体に接着固定する。これにより、ICモジュールが備えるICチップは、外部接触端子と電気的に接続されるとともに、アンテナ接続端子、導電接着剤および接続端子を経由してアンテナとも電気的に接続され、接触ICカードおよび非接触ICカードの両方の機能を併せ持つ接触および非接触共用ICカードとして使用できる。
【0005】
また、特許文献2には、プラスチックの2層間に配置されたアンテナの2つの端部の各々に、互いに電気的に接続される第1の部分および第2の部分を有する接続パッドが可撓性フィルム上に形成された接続ユニットの当該第1の部分が接続され、当該第2の部分の上にはんだ材料が堆積され、プラスチックにキャビティ(凹部)を形成し、チップカードモジュールを当該キャビティに導入して、チップカードモジュールの導電トラックを接続パッドの第2の部分に接触させ、加熱により内部のはんだを溶融させて導電トラックを接続パッドにはんだ付けすることにより、チップカードを製造できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-157666号公報
【文献】特表2019-511782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的にアンテナシートに形成されるアンテナが銅箔をエッチングしたものであれば、当該アンテナの厚さが、例えば15μm以上、75μm以下程度であり、巻き線アンテナであれば、当該アンテナ直径が、例えば50μm以上、150μm以下程度であるため、エンドミル切削の加工精度によっては、アンテナを貫通または切断してしまったり、アンテナコイル両端部の面積が小さいため、位置ずれにより接続端子を露出できないおそれがあった。また、ICモジュールのアンテナ接続端子とアンテナの接続端子とのカードの厚さ方向の距離が大きいため、カードを曲げる等した場合に、塗付、硬化後の導電接着剤が破断し、電気的接続が失われるおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2のように、加熱により内部のはんだを溶融させる際、液化したはんだの形状が不確定となるため、チップカードモジュールの導電トラックから、はんだが外れて、電気的接続が損なわれたり、厚さ方向のはんだの断面積が変動するため、カードを切削加工した場合の表面に露出するはんだ部分と導電トラックとの接着面積も変動し、接着信頼性が低下するおそれがあった。また、チップカードモジュールの導電トラックと接続パッドの第2の部分とのチップカードの厚さ方向の距離が大きく、その両者を接続するようにはんだが堆積されているため、上述した導電接着剤と同様に、カードを曲げる等した場合に、硬化後の形状不確定なはんだが破断し、電気的接続が失われるおそれがあった。
【0009】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、アンテナとICモジュールとの電気的な接続信頼性を高めた、接触および非接触共用ICカードおよび接触および非接触共用ICカードの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態による接触および非接触共用ICカードは、一方の面に外部接触端子を備え、他方の面に複数のアンテナ接続端子を備えた基板、並びに、当該基板の前記他方の面に搭載され、前記外部接触端子および前記アンテナ接続端子と、それぞれ電気的に接続されたICチップ、を有するICモジュールと、両方の端部のそれぞれに導電ブロックが電気的に接続されたアンテナ、を有するカード基体と、を備える接触および非接触共用ICカードであって、前記導電ブロックは、第1の厚さを有する第1部位と、当該第1の厚さよりも厚い部分を有する第2部位とが隣接して構成され、前記第1部位と前記アンテナの前記端部とが、電気的に接続されており、前記第2部位と前記アンテナ接続端子とが、導電接着層を介して電気的に接続されており、前記カード基体の前記ICモジュールが載置される面に、前記ICモジュールの外周の輪郭と対向する領域に沿って、溝を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記溝は、幅が0.1mm以上、2.0mm以下であってもよい。
【0012】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記溝は、前記カード基体の表面からの深さが0.1mm以上、0.4mm以下であってもよい。
【0013】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記第2部位の前記導電接着層と当接する部分の融点が、前記ICモジュールを、前記導電接着層を介して前記第2部位と接着させるために必要な温度よりも高くてもよい。
【0014】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記導電接着層は、異方性導電フィルムを含んでもよい。
【0015】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記第2部位は、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する中継部と、前記第2の厚さよりも薄い先端部と、を有し、前記導電ブロックは、前記第1部位と前記中継部とが隣接しており、 前記先端部と前記アンテナ接続端子とが、導電接着層を介して電気的に接続されてもよい。
【0016】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記導電ブロックの、前記第2部位は、前記第1部位と同一厚さの部材を部分的に屈曲させて形成されており、前記第2部位の内部に空隙を有してもよい。
【0017】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記接触および非接触共用ICカードの前記外部接触端子が配置された側の面の法線方向から当該ICカードを透視したとき、前記第1部位が、前記第2部位から遠ざかるにつれ先細りする形状を有してもよい。
【0018】
また、本実施の別の形態による接触および非接触共用ICカードにおいて、前記第2部位に、厚さ方向に沿った凹部または貫通孔が形成されてもよい。
【0019】
また、本実施の別の形態によるアンテナシートにおいて、シートと、前記シート上に形成された、両方の端部のそれぞれに導電ブロックが電気的に接続されたアンテナと、を備えた接触および非接触共用ICカードに使用されるアンテナシートであって、前記導電ブロックは、第1の厚さを有する第1部位と、当該第1の厚さよりも厚い部分を有する第2部位とが隣接して構成され、前記第1部位と前記アンテナの前記端部とが、電気的に接続されており、前記第2部位は、前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さを有する中継部と、前記第2の厚さよりも薄い先端部と、を有し、前記導電ブロックは、前記第1部位と前記中継部とが隣接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本実施の形態によれば、アンテナとICモジュールとの電気的な接続信頼性を高めた、接触および非接触共用ICカードおよびアンテナシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の実施形態のカードの構造を説明する平面図および断面図である。
【
図3】アンテナシートを示す平面図および断面図である。
【
図4】
図1(a)におけるICモジュール付近を説明する平面図である。
【
図5】
図1(b)におけるICモジュール付近を説明する断面図である。
【
図6】導電ブロックに関する変形例を説明する平面図である。
【
図7】導電ブロックに関する変形例を説明する平面図である。
【
図8】導電ブロックの断面形状のバリエーションを示す断面図である。
【
図9】導電ブロックの断面形状のバリエーションを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面等を参照して、本開示の接触および非接触共用ICカードおよびアンテナシートの一例について説明する。ただし、本開示の接触および非接触共用ICカードは、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。
【0023】
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0024】
1.本開示の実施形態
本開示の接触および非接触共用ICカードおよびアンテナシートの実施形態の一例について説明する。ここで、説明の便宜上、接触および非接触共用ICカード1についてXYZ座標系を設定する。まず、
図1(a)および
図1(b)に示すように、接触および非接触共用ICカード1の主面の法線方向にZ軸をとり、ICモジュール7の外部接触端子14が配置されていない側の主面から、当該外部接触端子14が配置されている側の主面に向かう方向をZ2方向または厚さ方向の上側とし、その反対方向をZ1方向または厚さ方向の下側とする。
【0025】
また、接触および非接触共用ICカード1をZ2方向から見たとき、接触および非接触共用ICカード1の両短辺およびZ軸に垂直な直線をX軸とし、外部接触端子14に近い側の一の短辺から他の短辺に向かう方向をX2方向または右側とし、その反対方向をX1方向または左側とする。さらに、X軸およびZ軸に垂直な直線をY軸とし、外部接触端子14から遠い側の一の長辺から他の長辺に向かう方向をY2方向または上側とし、その反対方向をY1方向または下側とする。
【0026】
ここで、
図1(a)は、接触および非接触共用ICカード1をZ2方向から見た平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の接触および非接触共用ICカード1を、外部接触端子14の上下方向の略中心を通るX軸に平行な直線であるA-A線に沿ってXZ平面で切断し、これをY1方向から見た断面図である。また、
図2は、ICモジュール7を埋設するための凹部9が切削形成される前のカード基体2についての、
図1(b)と同様の断面図である。
図3は、シート17にアンテナ8および導電ブロックが形成されたアンテナシート18を示す図であり、
図3(a)が平面図であり、
図3(b)が、
図3(a)のアンテナシート18を導電ブロック11の上下方向の略中心を通るX軸に平行な直線であるB-B線に沿ってXZ平面で切断し、これをY1方向から見た断面図である。
【0027】
接触および非接触共用ICカード1のZ2方向側の表面には、ICモジュール7がその内部に備えているICチップ15との接触通信のための外部接触端子14が配置されている。詳細は後述するが、
図2に示すカード基体2は、切削加工されて凹部9や溝20が形成された切削済カード基体2aとなる。この切削済カード基体2aの凹部9に導電接着層10を介してICモジュール7を埋設、固定したものが、
図1(b)に示す、接触および非接触共用ICカード1である。
【0028】
また、カード基体2または切削済カード基体2aの内部であって、その厚さ方向の略中心付近には、被覆付導線等から形成され、ループ形状に巻かれたアンテナ8が配置されている。被覆が除去されたアンテナ8の端部8a付近および8b付近のZ2方向側には、それぞれ、導電性部材である第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bから構成された一対の導電ブロック11が電気的に接続されている。
【0029】
さらに、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bのそれぞれのZ2方向側には、それぞれ、第1導電接着層10aおよび第2導電接着層10bから構成された一対の導電接着層10が電気的および機械的に接続され、当該一対の導電接着層10は、そのZ2方向側の、ICモジュール7の基板71の外部接触端子14とは反対側の表面とが、電気的および機械的に接続されている。なお、導電接着層10は、第1導電接着層10aおよび第2導電接着層10bとして分離配置されてもよく、または、両者が一体につながっており、ICモジュール7の基板71の外部接触端子14とは反対側の表面の一部もしくは全部を覆う態様であってもよい。
【0030】
一方、切削済カード基体2aには、凹部9とは別に、ICモジュール7の外周の輪郭に対向する領域沿って、一定の狭い幅を有する溝20が形成されている。
図1(a)では、溝20は、ICモジュール7の外部接触端子14の外周の輪郭に沿って、これよりも一回り小さい破線部分までの幅を有する領域として示される。また、
図1(b)では、溝20は、切削済カード基体2aのICモジュール7の外部接触端子14の左右両端部の下方に延びる領域として示される。溝20の深さは、当該溝20に囲まれた内部の凹部9の領域の深さよりも深くなっている。
【0031】
これにより、ICモジュール7は、カード基体2と導電接着層10を介して機械的に接続されて一体化しているとともに、ICモジュール7がその内部に備えるICチップ15と外部接触端子14とが電気的に接続される。さらに、当該ICチップ15とアンテナ8の両方の端部8aおよび8bとが電気的に接続される。よって、接触および非接触共用ICカード1は、例えば、ISO/IEC14443やNFC通信規格に加え、ISO/IEC7816に準拠したものであり、内部に備える同一ICチップ15に基づいて、接触通信および非接触通信(無線通信)の両方を行うことができる。
【0032】
さらには、切削済カード基体2aのICモジュール7の外周の輪郭に対向する領域には、一定の狭い幅を有する溝20が形成されている。これにより、接触および非接触共用ICカード1が曲げられる等、何らかの外力を受けた場合でも、その曲げ応力を切削済カード基体2aの溝20に集中させることができる。その結果、導電接着層10を介して接合された、導電ブロック11およびICモジュール7の接合部分への曲げ応力の影響を極力抑制することができ、導電ブロック11およびICモジュール7が互いに剥がれてしまうことが抑制される。その結果、導電ブロック11およびICモジュール7の電気的接続の信頼性を高めることが可能となる。次に、接触および非接触共用ICカード1の主要な構成要素の各部について説明する。
【0033】
(a)カード基体
カード基体2は、ICモジュール7を埋め込む前のカード状態の部材を指すが、典型的には、
図2に示すとおり、厚さ方向の下側からオーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3がこの順に積層された構成を有している。また、コア層5およびコア層4の間には、ループ形状に巻かれ、被覆付導線等から形成されたアンテナ8が配置されている。また、アンテナ8の両方の端部である8a付近および8b付近に、それぞれ、導電性部材である第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bから構成された一対の導電ブロック11が電気的に接続されている。
【0034】
ただし、カード基体2の層構成は、これに限らず、オーバーシート層、コア層、オーバーシート層の3層構成、コア層、コア層の2層構成、または、オーバーシート層、コア層、アンテナが形成されたコア層、コア層、オーバーシート層の5層構成等であってもよい。また、カード基体2のオーバーシート層3または6のコア層4または5とは反対側の表面に印刷や磁気ストライプの埋め込みがされていてもよく、コア層4または5のオーバーシート層3または6との隣接表面に印刷がされていてもよい。
【0035】
(i)コア層
コア層4および5としては、白色または着色された各種のプラスチックシートを幅広く使用することができ、以下にあげる単独のフィルムあるいはそれらの複合フィルムを使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET-G(テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、等である。コアシートの厚さは、カードの全体厚さを勘案して適宜に選択することができるが、例えば、0.25mm以上、0.38mm以下程度とすることができる。なお、後述するように、コア層4または5のいずれかの表面上に、両コア層に挟まれる位置関係となるようにアンテナ8を配置する必要がある。
【0036】
(ii)オーバーシート層
オーバーシート層3および6としては、通常、コア層と同質の材料を使用するが、厚さが0.05mm以上、0.10mm以下程度の透明材料が使用されることが多い。コア層およびオーバーシート層の積層体を熱プレス等で一体化する際のカールの発生を防止する観点からは、オーバーシート層3および6の厚さが同一であることが好ましいが、必ずしも同一ではなくてもよい。
【0037】
オーバーシート層の材料は、熱により接着性を有するものであればよいが、オーバーシート層自体が熱による接着性を有しない場合でも、熱等により接着力を発生させる公知の接着剤の層をコア層およびオーバーシート層の間に追加形成することで両者を一体化できる。また、接触および非接触共用ICカード1を磁気カードとして使用する場合には、オーバーシート層3および6のいずれかまたは両方について、コア層4および5とは反対の主面側に磁気テープを熱転写等によりあらかじめ埋め込んでおいてもよい。
【0038】
(iii)アンテナシート
本実施形態では、後述するように、コア層5の一方の面に、アンテナ8を形成し、さらに当該アンテナ8の両方の端部である8a付近および8b付近に、それぞれ、導電性部材である第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bから構成された一対の導電ブロック11を電気的に接続している。このような、アンテナ8および導電ブロック11を具備したコア層5のような中間生成物を、アンテナシート18と称することができる。アンテナシート18は、それのみで接触および非接触共用ICカード1用の部品として市場に流通させることができ、あるいは、コア層5等のシート17を加工業者に供給し、これを当該加工業者がアンテナシート18に加工して供給元に納品する、という商形態が存在し得る。
【0039】
アンテナシート18のアンテナ8や導電ブロック11の支持部材となるシート17は、コア層として例示した前述の材料に加え、ポリイミド、ガラスエポキシ、フェノール樹脂等のプリント基板用材料を適宜選択することもできる。アンテナシート18の一般的な態様は、例えば
図3(a)および
図3(b)に例示することができる。
【0040】
アンテナシート18の形成方法は、コア層へのアンテナ形成および導電ブロックの接続として、詳細を後述するが、概略として以下のようになる。まず、コア層5等にあたるシート17の表面に、絶縁体部材で被覆された被覆付導線を、アンテナ端部8aまたは8bのいずれかを始点として、巻き線形成機により埋め込む。すなわち、シート17に対して所定の熱圧を加えながら、
図3(a)に示すようなループ形状にアンテナ供給ヘッドを描画させ、当該アンテナ供給ヘッドから供給されたアンテナ8をシート17に順次、埋め込む。
【0041】
ここで、ICモジュール7の搭載予定位置の左右の外側にアンテナ端部8a付近および8b付近が上下方向に並ぶようにアンテナ8を配置し、その終点でアンテナ8を切断する。ただし、アンテナ8は、このような被覆付導線を使用せずに、シート17にあらかじめ銅箔やアルミ箔等を貼り込み、所定のアンテナパターンが残存するようにマスキングして露光、エッチングを行うことにより形成してもよい。
【0042】
次に、
図3(a)に示すように、Z2方向から見たときに、シート17上に形成されたアンテナ8の端部8aおよび8b付近に重なり、かつ、後から搭載するICモジュール7とも重なる位置に、一対の導電ブロック11である第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bを電気的、機械的に接合する。当該第1導電ブロック11aは、
図3(b)に示すように、カード側面であるY1方向から見たときの断面形状が略S字型、Z2方向から見たときの平面形状が長方形となる形状としている。また、第2導電ブロック11bも第1導電ブロック11aと左右対称となるようにしている。ここで、アンテナ8の端部8aおよび8b付近に対して、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bの厚さが薄い第1部位12aおよび12bを、それぞれ、溶接により接合する。
【0043】
なお、
図3(a)は、カード形状のアンテナシート18について表示しているが、実際のアンテナシート18は、カード形状が縦横に多面付けで配置された大判シート状であることが多い。
【0044】
(iv)アンテナ
図1(a)および
図1(b)の、切削済カード基体2aや、
図2のカード基体2が内部に備えるアンテナ8は、例えば、13.56MHzのHF周波数帯域を用いて近接通信を行うものでもよく、それ以外の、例えば920MHzのUHF周波数帯域を用いて通信を行うものでもよいが、非接触通信を行う際に、ICチップ15が外部のリーダライタ(情報読み書き機器)と通信を行なうために配置される。アンテナ8は、リーダライタに接触および非接触共用ICカード1をかざしたときに、リーダライタが形成する磁界等により電流が発生して、ICチップ15に電力を供給する。これにより、ICチップ15は駆動可能となり、非接触通信を行う際に、リーダライタと情報の送受信をしたり、情報の書き換え等を行なう。
【0045】
アンテナ8は、典型的には、銅線の周囲が絶縁体部材で被覆された被覆付導線により形成される。なお、これ以外にも、Cu-Ni、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Sn、Cu-Be等の銅合金線、または鉄、ステンレス、アルミ等の種々の金属線、金属合金線を選択することもできる。接触および非接触共用ICカード1は、被覆付導線を用いることにより、形成加工費を、例えば銅箔エッチング方式等に比較して安価にできる。ただし、アンテナ8は、銅箔やアルミ箔等からエッチング形成したものであってもよい。
【0046】
次に、
図4(a)は、
図1(a)のICモジュール7近辺の拡大図である。また、
図4(b)は、
図4(a)において、ICモジュール7を外した状態を示す平面図であり、
図4(c)は、さらに、これよりオーバーシート層3およびコア層4を外して一対の導電ブロック11を剥き出しにした状態を示す平面図である。
図5(a)は、
図1(b)のICモジュール7近辺の拡大断面図であり、
図5(b)は、ICモジュール7を埋設するための凹部9や溝20を形成する前の、カード基体2の状態を示す断面図、
図5(c)は、第1導電ブロック11a付近の拡大断面図である。
【0047】
図4(a)に示すように、アンテナ8の両方の端部8aおよび8bは、ICモジュール7の外部接触端子14の左右の外側に、導線がY軸に対して略平行となるように配置されており、便宜的にX1方向側の端部を8a、X2方向側の端部を8bとしている。また、アンテナ8の両方の端部8a付近および8b付近の、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bと当接する箇所は、これらとの電気的接続のため、あらかじめ被覆が剥がされた剥き出しの銅線となっている。
【0048】
(v)導電ブロック
図2および
図4(b)に示すように、被覆が除去されたアンテナ8の端部8a付近および8b付近のZ2方向側には、それぞれ、導電性部材を有する第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bから構成された一対の導電ブロック11が電気的に接続されている。また、
図4(a)に示すように、接触および非接触共用ICカード1のICモジュール7付近をZ2方向から透視したとき、第1導電ブロック11aは、ICモジュール7の外部接触端子14の左端の領域と、アンテナ8の端部8a付近との両方に重なるように配置されている。
【0049】
また、第2導電ブロック11bも、同様に、ICモジュール7の外部接触端子14の右端の領域と、アンテナ8の端部8b付近との両方に重なるように配置されている。なお、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bが重なるICモジュール7の外部接触端子14の左端および右側の領域に対応する、基板71の裏面側(基板71の外部接触端子14とは反対の表面側)には、
図5(a)で図示するように、ICチップ15と電気的に接続している第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bが、それぞれ配置されている。
【0050】
一対の導電ブロック11である第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bは、
図5(a)に示すように、そのXZ平面で切った断面をY1方向から見た断面形状が略S字型(もしくは略Z字型)またはこれの対称形状となっている。ただし、導電ブロック11のY1方向から見た断面形状は、これに限らず、例えば
図5(a)において、第1導電ブロック11aや第2導電ブロック11bのZ2方向側の先端部がX軸に沿って広がらない略L字型またはこれの対称形状となっていてもよい。すなわち、導電ブロック11を、そのXZ平面で切った断面をY1方向から見た断面形状が単純な略長方形とはならず、断面形状において何らかの屈曲構造を有していることが好ましい。このような構造を有することで、導電ブロック11自体の熱容量を低減させて蓄熱作用を抑制し、かつ、熱伝達効率を低減することが期待され、カードの熱変形等が抑えられるからである。
【0051】
なお、このような導電ブロック11を、そのXZ平面で切った断面をY1方向から見た断面形状のバリエーションとして、例えば、
図5(c)に相当する断面図として示した、
図8(a)~(c)や
図9(a)~(c)に挙げるような形状としてもよい。
図8(a)の第1導電ブロック11aは、上述の略L字型の断面を有するものである。
図8(b)の第1導電ブロック11aは、第2部位13aが略C字型であり、全体で略Y型の断面を有するものである。
図8(c)の第1導電ブロック11aは、上述の略S字型であるが、第1部位12aと隣接する部位に傾斜が付いた断面を有するものである。
【0052】
また、
図9(a)の第1導電ブロック11aは、略J字型の断面を有するものである。
図9(b)の第1導電ブロック11aは、第2部位13aの下端側が、第1部位12aと連続的につながった板状部材と、これと所定距離だけ離隔して配置された別の板状部材と、両者を隔てる複数の仕切り部材と、で構成されたものである。
図9(c)の第1導電ブロック11aは、第2部位13aが、所定厚さの板状部材が斜め方向に繰り返し屈曲されたジグザグ形状の断面を有するものである。これらもすべて、本開示の導電ブロック11に含まれる。
【0053】
一方、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bをZ2方向側から平面視した際の形状は、本実施形態では略長方形であるが、これに限らず、後述する変形例に示すように、略台形や2分割された略長方形であってもよく、さらには略三角形、略楕円形等の任意形状であってもよい。導電ブロック11をZ2方向側から平面視した際の形状は、導電ブロック11自体の熱容量や熱伝達効率の低減よりも、アンテナ端部8a、8bや導電接着層10との接着面積の確保や接着安定性を重視すべきだからである。
【0054】
ここで、
図5(c)に例示するように、第1導電ブロック11aは、Z軸に沿った厚さがh11と薄く、X1方向側にd11の長さだけ張り出した板状部の第1部位12aと、略L字型を構成する第2部位13aとから構成される。第2部位13aは、第1部位12aと隣接する、Z軸方向に沿って長い中継部131aと、導電接着層10aが塗付または搭載される領域を備える、X軸方向に沿って広がる先端部132aとを有する。中継部131aは、Z軸に沿った厚さがh11よりも(h12+h13)だけ厚いh1であり、X軸に沿った長さがd12である。また、先端部132aは、Z軸に沿った厚さがh13であり、X軸に沿った長さがd13である。よって、第1導電ブロック11a全体として見ると、X軸に沿った長さd1は、d1=d11+d12+d13として求められ、Z軸に沿った厚さh1は、h1=h11+h12+h13として求められる。
【0055】
なお、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bは、ともに、アンテナ8よりも上方、すなわちZ2方向側に配置される。両導電ブロックを、アンテナ8の下端と当接するように接合する方法もとり得るが、前者の方が、第2部位13aのZ軸に沿った厚さh1を薄くでき、導電ブロック11を小型化できる点で、熱容量の低減等の観点から有利となる。
【0056】
ここで、第1導電ブロック11aの第2部位13aの厚さh1は、
図5(c)に示すように、Z軸に沿ったアンテナ端部8aの上端から導電接着層10の下端までの距離を埋める必要があること、アンテナ8は、カード基体2の反り防止等の観点から、約0.8mmの厚さを有するカード基体2の厚さ方向の中心近辺に配置することが好ましいこと、等を考慮すると、0.1mm以上、0.3mm以下とすることが好ましい。また、当該第2部位13aのY軸に沿った長さは、XZ平面に沿った第1導電ブロック11aの断面形状にもよるが、おおむね、2.0mm以上、10.0mm以下とすることが好ましい。
【0057】
一方、第1導電ブロック11aの寸法において、第1部位12aの厚さh11に対する第2部位13aの厚さh1の比を、1.3以上、20.0以下とすることが、当該第1導電ブロック11aの熱容量を低減し、かつ、特に第1部位12aの物理強度を確保する観点から好ましい。さらに、これらの特性を量産時に安定的に確保する上で、当該比を、2.0以上、10.0以下とすることがさらに好ましい。なお、後述するように、カード基体2に溝20を形成する際に、誤って第1導電ブロック11aの上面を切削してしまわないよう、h11等を適正に定める必要がある。
【0058】
また、上記と同様の理由により、第1導電ブロック11aの第2部位13aの厚さh1に対するX軸沿いの長さd1の比を、20.0以上、60.0以下とすることが好ましく、30.0以上、50.0以下とすることがさらに好ましい。一方、第1導電ブロック11aの第2部位13aのX軸沿いの長さ(d12+d13)に対する全体の長さd1の比を、1.5以上、7.0以下とすることが好ましい。
【0059】
一方、第1導電ブロック11aの第1部位12aのZ1側の表面、および、第2部位13aの先端部132aのZ2側の表面は、XY平面と略平行であり、かつ平坦であることが好ましい。特に、溶接が困難な第2部位13aについては、切削済カード基体2aの第1凹部9aの表面に対する、第2部位13aのZ2側の表面のなす角度の最大値が5°以下となることが好ましい。これにより、第2部位13aのZ2側の表面を、第1凹部9a形成時に切削し、導電接着層10を貼り込む際に、適正な接触面積を確保して、導電接着層10との接合を良好に行うためである。
【0060】
ただし、導電接着層10との密着性の観点から、第2部位13aの先端部132aのZ2側の表面には、算術表面粗さRaが0.5μm以上、50.0μm以下程度の微小な凹凸が形成されていてもよい。なお、上記の適正な接触面積の確保の観点から、切削済カード基体2aの第1凹部9aの表面における第2部位13aの断面積に対する、当該第1凹部9aの表面からZ1方向に向かう0.1mmまでの任意の深さにおける、XY平面で切った第2部位13aの断面積の比が、0.8以上、1.2以下であることが好ましい。
【0061】
第1部位12aと第2部位13aとは互いに隣接しており、ともに同一部材で一体に形成されていてもよく、異なる部材が互いに接合されていてもよい。また、第2部位13aは中継部131aおよび先端部132aを有してもよいが、第1部位12a、中継部131aおよび先端部132aがそれぞれ異なる部材によって互いに接合されていてもよい。一方、第2導電ブロック11bも、第1導電ブロック11aと左右対称形状であり、同様に、厚さが薄くX2方向側に張り出した板状部の第1部位12bと、XZ平面で切った断面をY1方向から見た断面形状が略L字型の第2部位13bとから構成される。
【0062】
このように、第1導電ブロック11aが厚さの異なる第1部位12aおよび第2部位13aを有するのは、接触および非接触共用ICカード1の厚さ方向の配置位置が異なるアンテナ端部8aとICモジュール7の第1アンテナ接続端子71aとを電気的に接続し、かつ、XZ平面に平行な平面で切ったときの断面積、ひいては体積が最小となるようにして、当該第1導電ブロック11aの熱容量をできる限り小さくするためである。
【0063】
また、第1導電ブロック11aのアンテナ端部8aと接合する側の第1部位12aの表面と、第2部位13aの導電接着層10と接合する側の表面とは、いずれも平坦面が形成されることにより、アンテナ8や導電接着層10との十分な接触面積を確保することができ、信頼性の高い電気的接続が図れる。なお、上述の第1導電ブロック11aについてした説明は、すべて、第2導電ブロック11bについても当てはまる。
【0064】
導電ブロック11に使用する材料としては、ICチップ15とアンテナ8との電気的接続に寄与するための導電性を有するものであって、後述するとおり、ICモジュール7の埋設用凹部9を切削加工する際の切削性とカードの曲げ等の外力で破断しない程度の硬度、強度を有するものであれば特に限定はない。ただし、アンテナ8との接続を溶接で行う場合には、銅線等のアンテナ部材との溶接性と、後述する導電接着層10との接着性とを有することが好ましい。
【0065】
さらには、導電ブロック11の、少なくとも第2部位13aおよび13bの導電接着層10と当接する部分の融点が、ICモジュール7を、導電接着層10を介して第2部位13aおよび13bと接着させるために必要な温度よりも高いことが好ましい。なお、ICモジュール7を、導電接着層10を介して第2部位13aおよび13bと接着させるために必要な温度とは、例えば、導電接着層10が熱可塑性樹脂等であれば、これを軟化させ、または溶融させるための加熱温度であってもよく、導電接着層10が熱硬化性樹脂等であれば、軟化させ、架橋反応等を起こさせ、または接着力を活性化させるための加熱温度であってもよい。
【0066】
なお、導電接着層10がはんだを含む場合は、はんだがSn-Pb系(Sn-Pb-Bi系、Sn-Pb-Ag系を含む)であれば融点が180℃以上、300℃以下程度、鉛フリーはんだであれば融点が120℃以上、250℃以下程度となるが、実際に使用するはんだの融点よりも高い融点を有するものを導電ブロック11の部材とすべきである。
【0067】
また、導電接着層10がホットメルト接着剤で構成されるときは、例えば、JIS K6863-1994(ホットメルト接着剤の軟化点試験方法)で定義される環球法の軟化点試験方法により規定された軟化点よりも高いものを導電ブロック11の部材とすることができる。一方、導電接着層10がエポキシ樹脂接着剤で構成されるときは、例えば、JIS K7234-1986(エポキシ樹脂の軟化点試験方法)で定義される環球法または水銀置換法の軟化点試験方法により規定された軟化点よりも高いものを導電ブロック11の部材とすることができる。なお、上記以外の導電接着層10については、上記方法に準じて、あるいは上記方法の実施が困難であれば、これにとらわれずに、実質的に融点、軟化点等と認められる温度を測定、換算すればよい。
【0068】
上記の要件を備える導電ブロック11の材料は、導電接着層10を第2部位13aおよび13bと接着させるために必要な温度が何度であるかにより変わり得るが、例えば、銅、アルミ、鉄、ステンレス、真鍮、黄銅、青銅、金、銀、チタン、鉛等の金属であって、0℃における全体の体積抵抗率が80×10-8Ωm以下であり、かつ、融点が300℃以上であるものが挙げられる。特に、導電接着層10を高温で溶融させる必要があり、かつ、非接触通信を良好に行う観点からは、体積抵抗率が20×10-8Ωm以下であり、融点が500℃以上である、アルミ、金、銀、銅、真鍮、黄銅、青銅がより好ましい。
【0069】
また、これらの同一金属で導電ブロック11を構成してもよく、例えば、第1部位12aおよび12bと、第2部位13aおよび13bとを、それぞれ異なる金属で構成してもよい。さらには、第2部位13aおよび13bを構成する中継部131aおよび131bや、先端部132aおよび132bを、それぞれ異なる金属で構成してもよい。
【0070】
例えば、導電ブロック11のうち、導電接着層10から比較的、離隔して配置される第1部位12aおよび12bについては、導電接着層10の軟化点温度以下の融点の部材を使用し、導電接着層10と当接する第2部位13aおよび13bについては、導電接着層10の軟化点温度よりも高い融点の部材を使用してもよい。こうすることで、導電ブロック11の熱変形による、導電接着層10との接続信頼性の低下を抑制しつつ、導電ブロック11全体としての部材の選択範囲を拡張することができる。
【0071】
さらには、導電接着層10と当接する第2部位13aおよび13bに使用する部材は、導電接着層10との接着のために加える熱が第1部位12aおよび12bに伝導してしまい、周囲の切削済カード基体2aが熱変形することを抑制すべく、できる限り熱伝導しにくいものを使用することが好ましい。例えば、熱伝導率が70W/m・K以下である青銅、白金イリジウム、白金ロジウム、鉛、チタン、鉄、ステンレス、錫等が、導電接着層10の軟化点よりも高い融点である前提で好適に選択できる。中でも、熱伝導率が40W/m・K以下である白金イリジウム、白金ロジウム、鉛、チタン、鉄、ステンレス等が、切削済カード基体2aの熱変形の一層の抑制において有効である。
【0072】
また、導電ブロック11の本体を同一金属で形成し、その外表面を別の金属でメッキ加工することもできる。一例として、導電ブロック11の内部を銅、黄銅または青銅で形成しておき、その外表面全体または、アンテナ8および導電接着層10との当接部位のみに、銀メッキまたは金メッキを施すことが考えられる。これにより、アンテナ8を導電ブロック11に対して良好に溶接接合させることができ、または、導電接着層10を介したICモジュール7と導電ブロック11との電気的、機械的接続を良好に行うことができる。
【0073】
上記のような一対の導電ブロック11は、特に、第2部位13aおよび13bの厚さを
図5(c)のh1よりも若干厚く形成しておくこともできる。この場合、
図5(b)に示すように、ICモジュール7埋設用の凹部9の幅広部分である、第1凹部9aの予定領域内に、第2部位13aおよび13bの上端が若干飛び出す構成となる。
【0074】
言い換えると、
図5(b)に示すように、凹部9の第1凹部9aが形成される側のカード基体2の表面から、厚さ方向に沿った第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bの第2部位13aおよび13bまでの最短距離e2は、エンドミルによる切削済カード基体2aの、凹部9の第1凹部9aが形成される側の非切削領域の表面から、厚さ方向に沿った第1凹部9a下端までの最短距離e1よりも短くすることができる。
【0075】
ここで、エンドミルによる凹部9の切削加工時には、この若干飛び出した第1部位12aおよび12bの上端が一緒に切削され、カード基体2の第1凹部9aの下面部分と導電ブロック11の表面部分とが同一面を形成する。このため、導電接着層10を介したICモジュール7とアンテナ8との電気的、機械的接続を良好に行うことができる。
【0076】
また、カード基体2に対する導電ブロック11の厚さ方向の配置が本来位置よりも若干下側にずれてしまった場合であっても、そのずれ量が、上述のe1とe2との差分を上回らない限り、e2が常にe1より長くならないため、エンドミルによる凹部9の切削加工時に、第1部位12aおよび12bの上端が、切削済カード基体2aの第1凹部9aの下面部分に露出しないという不具合の発生を抑制することができる。さらには第2部位13aの導電接着層10と接合する側の表面には、平坦面が形成されているため、エンドミルによる切削深さが変動したとしても、第2部位13aの切削面の導電接着層10と対向する露出表面の面積は常に一定となり、安定した導電接着層10との接触面積が確保でき、信頼性の高い電気的接続が図れる。
【0077】
ただし、凹部9の第1凹部9aが形成される側の非切削領域の表面から、厚さ方向に沿った溝20の深さをe3としたとき、当該表面から第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bの第1部位12aおよび12bまでの最短距離e4が、必ずe3よりも長くなるように導電ブロック11の大きさ及び配置を設計すべきである。万一、e4がe3よりも短くなった場合は、溝20の形成時に、第1部位12aおよび12bを切削してしまうこととなり、導電ブロック11としてのアンテナ8およびICモジュール7の接合強度が著しく低下するおそれがあるからである。
【0078】
(b)ICモジュール
次に、カード基体2に対して凹部9と溝20とを切削加工等により形成し、切削済カード基体2aとした後で、導電接着層10を介して切削済カード基体2aに埋設される、ICモジュール7について説明する。ICモジュール7は、
図4(a)および
図5(a)に示すように、角に丸みを有する略長方形状の平板状の基板71の一方の面に外部接触端子14を、他方の面にアンテナ接続端子である第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bを備えるとともに、内部に備えたICチップ15を被覆する突起状部位であるモールド部72を備えている。以下にICモジュール7の主要な構成要素の各部について説明する。
【0079】
(i)基板
基板71はガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の可撓性を有する樹脂フィルムの表裏に銅箔が接着剤を介して貼り込まれ、当該樹脂フィルムの表裏面に貼り込まれた銅箔を、所定のパターンを形成するように残存させたものである。具体的には、当該樹脂フィルムの一方の銅箔面に外部接触端子14を、他方の銅箔面に第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bを形成するように、感光材の塗付、所定パターンが形成されたフィルム版の載置、露光、非感光部位のエッチング除去、を順次行うことで、当該樹脂フィルムの表裏面に所定のパターンの銅箔が一部残存した基板71が形成される。また、基板71には、あらかじめ、外部接触端子14へのワイヤボンディングのための図示しない貫通孔を複数箇所設けている。
【0080】
(ii)ICチップ
基板71の、外部接触端子14の形成面とは反対側の面に、ICチップ15が接着剤を介して接着、固定される。ICチップ15は、接触通信、非接触通信の両方の動作を制御するためのCPUと、RAMやEEPROM、フラッシュメモリー等の記憶装置と、接触通信および非接触通信の入力信号解読と出力信号生成を行うインターフェース回路や電力発生回路等の各種回路と、を備えている。
【0081】
なお、各種回路はICチップとは別個の素子として設けられていてもよい。基板71の第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bの形成面の中央部に、当該ICチップ15が、接着剤を介して接着固定され、当該ICチップ15の回路面にあるパッドと外部接触端子14の各端子区画とが、基板71の貫通孔を通る、金ワイヤ等であるワイヤ16で結線されている。また、当該ICチップ15のパッドと基板71の第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bとが、同様にワイヤ16で結線されている。
【0082】
(iii)モールド部
上述のICチップ15が搭載され、ワイヤ16が結線された基板71のICチップ15の搭載面には、ICチップ15やワイヤ16を外力負荷や環境負荷から保護するために、これらを被覆する突起状部位であるモールド部72が形成される。モールド部72として、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂等が使用される。
【0083】
(c)導電接着層
カード基体2に対してICモジュール7を埋設するための凹部9および溝20を、エンドミルによる切削加工等によって形成した後、上述のICモジュール7を、切削済カード基体2aに対して埋設固定し、電気的、機械的に接続する導電接着層10について説明する。導電接着層10は、
図5(c)に示すように、第1導電ブロック11aの第2部位13aの厚さ方向の上側、すなわち先端部132aの上側に、塗付、貼付される液状またはテープ状の部材である。第2導電ブロック11bについても同様である。
【0084】
もっとも、導電接着層10は、必ずしも第1導電ブロック11aや第2導電ブロック11bに先に塗付、貼付されている必要はなく、ICモジュール7の基板71の裏面側に、第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bを覆うように塗付、貼付されていてもよい。
【0085】
また、導電接着層10は、ICモジュール7と切削済カード基体2aとの機械的接続を兼ねるため、基板71の裏面の全面に塗付、貼付されていてもよい。しかし、導電接着層10が、基板71の裏面のうち、第1アンテナ接続端子71aおよび第2アンテナ接続端子71bの領域のみを覆うように塗付、貼付され、その他の基板71の裏面には、導電性を有しない別の接着剤が塗付、貼付されていてもよい。当該別の接着剤として、導電性を考慮しないことにより、より機械的接続に有利なものを選定し易くできるからである。
【0086】
このような導電接着層10としては、ACF(Anisotropic Conductive Film)、すなわち、異方性導電フィルムや、ACP(異方性導電ペースト)、その他、エポキシ樹脂中に銀粒子をフィラーとして分散した、いわゆる導電性ペースト等を使用することができる。中でも、ACFを使用すれば、ICモジュール7の基板71の裏面全体にACFを熱ラミネートしておき、当該ICモジュール7を切削済カード基体2aの凹部9に埋設後、これを所定温度、荷重でヒートプレスすることにより、ICチップ15とアンテナ8との電気的接続が図れる。さらには、ICモジュール7の切削済カード基体2aへの機械的接続も同時に図れるため、ICモジュール7の切削済カード基体2aへの実装工程を簡易化することができる。
【0087】
(d)接触および非接触共用ICカードの製造方法
次に、上述したカード基体2、ICモジュール7および導電接着層10を用いた、接触および非接触共用ICカード1の製造方法の一例を説明する。
【0088】
(i)コア層へのアンテナ形成
前述したアンテナシート18の形成と重複するが、まず、オーバーシート層6または3とは隣接しない側の、コア層5または4のいずれかの表面に、絶縁体部材で被覆された被覆付導線を、アンテナ端部8aまたは8bのいずれかを始点として、巻き線形成機により埋め込む。具体的には、例えば、コア層5に対して所定の熱圧を加えながら、
図1(a)に示すようなループ形状にアンテナ供給ヘッドを描画させ、当該アンテナ供給ヘッドから供給されたアンテナ8をコア層5に順次、埋め込む。
【0089】
ここで、ICモジュール7の搭載予定位置の左右の外側にアンテナ端部8a付近および8b付近が上下方向に並ぶようにアンテナ8を配置し、その終点でアンテナ8を切断する。また、アンテナ端部8a付近および8b付近は、後工程による導電ブロック11との電気的接続のために、あらかじめ被覆が除去されることが好ましい。なお、
図1(a)は、カード形状の切削済カード基体2aについて表示しているが、前述のアンテナシート18と同様、実際のアンテナ形成は、カードが縦横に多面付けで配置された大判シート単位で行うことが多い。
【0090】
(ii)アンテナ端部への導電ブロックの接続
次に、
図3(a)に示すように、Z2方向から見たときに、コア層5等であるシート17上に形成されたアンテナ8の端部8aおよび8b付近に重なり、かつ、後から搭載するICモジュール7とも重なる位置に、一対の導電ブロック11である第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bを電気的、機械的に接合する。すなわち、アンテナ8の端部8aおよび8b付近に対して、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bの厚さが薄い第1部位12aおよび12bを、それぞれ、溶接により接合する。例えば、第1導電ブロック11aは、耐食性、耐疲労性、耐摩耗性等に優れる、りん青銅の外周部に、溶接加工性の向上のため、銀メッキがされたものを使用する。このように、シート17にアンテナ8および導電ブロック11が形成された中間生成物は、前述したように、アンテナシート18と称することができる。
【0091】
(iii)カード基体の製造
アンテナ8および一対の導電ブロック11が形成されたコア層5を用いて、
図2に示すとおり、厚さ方向の下側からオーバーシート層6、コア層5、コア層4およびオーバーシート層3をこの順に重ねる。その後、カードが縦横に多面付けで配置された大判シートの積層体の単位で、厚さ方向の上下からステンレス板で挟み込み、当該ステンレス板を介して、当該積層体に対して熱圧を加える。
【0092】
このような熱プレス工程を経ることにより、積層体の各層が一体化した大判シート単位のカード基体を得ることができる。また、オーバーシート層、コア層のいずれかが、所定温度で熱融着しない耐熱性を有する場合には、各層間に所定温度で熱融着する接着シートを挟み、あるいは、接着剤を塗付した上で、これらを熱プレス工程に掛けることにより、一体化した大判シート単位のカード基体を得る。コア層5、アンテナ8および導電ブロック11を含めた中間生成物をアンテナシート18と置き換えても同様である。
【0093】
なお、
図5(c)における、第1導電ブロック11aのサイズ、すなわち、第1部位12aの長さd11および厚さh11、第2部位13aの中継部131aの長さd12および厚さh1、並びに先端部132aの長さd13および厚さh13、によっては、当該第1導電ブロック11aの所定領域にあらかじめ、貫通孔または凹部を形成しておくことが好ましい。すなわち、コア層5と重なるコア層4の当該第1導電ブロック11aとの当接領域、特に厚さが厚い中継部131aに隣接する先端部132aとの当接領域に、これに対応した貫通孔または凹部を形成しておくことが好ましい。第2導電ブロック11bも同様である。こうすることで、厚さ方向の上下から熱圧を加えた際や、後工程で導電接着層10を加熱する際に、局所的に厚さを有する導電ブロック11の影響によってカード基体の表裏面に熱変形による外観不良が生じるリスクを、貫通孔または凹部の放熱効果によって低減させることができる。
【0094】
(iv)カード基体のカードサイズへの打ち抜き、および、凹部の形成
上記により得られた、カードが縦横に多面付けで配置された大判シート単位のカード基体を、打ち抜き機により、ISO/IEC7816のカードサイズであるカード基体2として打ち抜く。また、当該カード基体2に、ICモジュール7を埋設するための凹部9と、応力緩和による導電ブロック11およびICモジュール7の接続信頼性向上のための溝20とを、エンドミルによる切削加工にて形成する。これにより、切削済カード基体2aが得られる。凹部9は、ICモジュール7の平板状の基板71を収納するための第1凹部9aと、凸状のモールド部72を収納するための第2凹部9bとの2段で構成される。溝20は、カード基体2のICモジュール7が載置される面に、当該ICモジュール7の外周の輪郭と対向する領域に沿って形成される。
【0095】
外部接触端子14の表面は、接触および非接触共用ICカード1の非切削領域の表面と、略同一面となるように凹部9が形成される。ここで、ICモジュール7の基板の厚さは0.07mm以上、0.2mm以下程度であり、モールド部72の厚さは0.45mm以上、0.75mm以下程度である。また、導電接着層10や接着テープの厚さは通常0.03mm以上、0.2mm以下程度である。これらを考慮して、第1凹部9aの深さは通常0.1mm以上、0.4mm以下程度であり、第2凹部9bの深さは通常0.48mm以上、0.78mm以下程度となる。ただし、第2凹部9bの深さは、第1凹部9aの深さよりも深い。
【0096】
一方、溝20の幅は0.1mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。溝20の幅が0.1mmよりも狭いと、溝加工が困難となり、切削済カード基体2aを曲げたときに、溝20をきっかけにして破断しやすくなるからである。また、溝20の幅が2.0mmよりも広いと、ICモジュール7を切削済カード基体2aに接着するための接着面積が小さくなり、切削済カード基体2aからICモジュール7が剥がれ易くなるからである。なお、溝20の幅は0.5mm以上、1.5mm以下であることがより好ましい。この範囲であることにより、溝20をエンドミル加工で形成する際の加工タクトの低下を抑制でき、かつ、ICモジュール7を切削済カード基体2aに接着するための接着面積を良好に確保し得るからである。
【0097】
さらに、溝20の切削済カード基体2aの非切削領域の表面からの深さは0.1mm以上、0.4mm以下であることが好ましい。溝20の深さが0.1mmよりも浅いと、第1凹部9aの深さとの差異が小さくなり、応力緩和の効果が少ないからである。また、溝20の幅が0.4mmよりも深いと、切削済カード基体2aを曲げたときに、溝20をきっかけにして破断しやすくなる上、溝加工時に導電ブロック11の一部と干渉するおそれがあるからである。なお、溝20の深さが0.2mm以上、0.3mm以下であることがより好ましい。この範囲であることにより、外力を受けた際の適正な応力緩和効果が得られ、導電ブロック11およびICモジュール7の接続信頼性向上が図れるからである。一方、溝20の深さは、第1凹部9aの深さよりも深く、かつ、第2凹部9bの深さよりも浅いことが好ましい。溝20の深さがこの範囲であることにより、外力を受けた際の応力緩和効果がより一層得られ、導電ブロック11およびICモジュール7の接続信頼性の一層の向上が図れるからである。
【0098】
なお、溝20は、凹部9を形成するエンドミル用の刃とは、直径や特性の異なる別のエンドミル用の刃を用いてもよい。例えば凹部9の切削は直径の大きい刃を用いて高速で行い、溝20の切削は直径の小さい刃を用いて行ってもよい。こうすることにより、ICモジュール7と凹部9との接着面積を十分に確保しつつ、凹部9の切削時間を短縮させることができる。
【0099】
また、溝20は、エンドミルによる切削加工には限定されず、例えばトムソン刃(ビク刃)で所定の深さの切れ込みを入れることにより形成してもよい。エンドミル用の刃で切削加工する場合には、刃の直径が0.5mm以上必要であり、刃の耐久性を考慮すると1.0mm以上が必要となるが、切れ込みを入れる方式であれば、溝20の隙間を0.5mmより小さくすることが容易であり、接着面積をより一層確保しつつ、加工時間の更なる短縮を行うことができるからである。このような切れ込みを入れる方式では、例えば溝20の隙間を0.1mm以上、0.3mm以下とすることができる。
【0100】
さらに、溝20は、凹部9の外周部、すなわちICモジュール7の外周の輪郭に対向する部分の全体に設ける必要はなく、例えばミシン目のように、部分的に設けてもよい。こうすることにより、応力緩和による導電ブロック11およびICモジュール7の接続信頼性向上を図りつつ、接着面積の増加を図ることができるからである。
【0101】
ここで、
図5(b)に示すように、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bは、凹部9の形成予定領域中に、その上端部が若干飛び出すように配置されている。このため、カード基体2に凹部9の第1凹部9aを切削加工する際に、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bの上端部が一緒に切削される。よって、上述のとおり、その後の導電接着層10を介したICモジュール7とアンテナ8との電気的、機械的接続が良好に行われ、切削済カード基体2aに対する導電ブロック11の厚さ方向の配置の許容範囲を広げることが可能となる。
【0102】
(v)ICモジュールへの導電接着層の貼付
一方、カード基体2の製造および切削済カード基体2aへの加工とは別に、ICモジュール7への導電接着層10の貼付を行う。ICモジュール7としては、通常、1列取りまたは2列取りで連続的に長尺のテープに当該ICモジュール7が形成されているモジュールテープを使用する。このモジュールテープの外部接触端子14の形成面とは反対側の面に、テープ状のACFを一定の熱圧を加えながら貼り込んでいく。その後、ACFが貼り込まれたモジュールテープを、角に丸みを有する略長方形状のICモジュール7として打ち抜き機で打ち抜くことで、導電接着層10の貼付がされたICモジュール7を得る。
【0103】
(vi)カード基体へのICモジュールの埋設および電気的接続
その後、
図5(a)に示すように、凹部9および溝20が形成された切削済カード基体2aに対し、導電接着層10の貼付がされたICモジュール7を埋設し、外部接触端子14に図示しないヒートブロックを押し当てて、Z1方向側に向けて所定時間、所定の熱圧を加える。これにより、ACFで構成された導電接着層10を溶融させ、熱硬化反応を生じさせることで、
図5(a)に示すように、第1導電ブロック11aおよび第2導電ブロック11bの上端部と、その上方に配置される導電接着層10とを、その界面91aおよび91bにおいて、電気的かつ機械的に接合させることができる。
【0104】
また、導電ブロック11が存在しない切削済カード基体2aの第1凹部9aと、その上方に配置される導電接着層10とは、機械的にのみ接合する。ACFは、その品種や組成により、加える時間、熱圧条件に差異はあるが、一例としては、時間を0.5秒以上、10.0秒以下、温度を150℃以上、250℃以下、圧力を20MPa以上、100MPa以下とすることができる。
【0105】
一方、りん青銅により構成される導電ブロック11の場合、その固相融点は880℃から975℃の間と考えられるため、ACFの軟化および熱硬化反応を促進するための加熱温度が例えば250℃であったとしても、その加熱によって導電ブロック11が軟化することはない。したがって、導電ブロック11の形状が不確定となるためにICモジュール7との電気的接続が損なわれたり、導電ブロック11が左右方向に変形することによってコア層、オーバーシート層への伝熱量が増加し、切削済カード基体2aに外観不良を生じさせることが抑制できる。さらには、導電ブロック11が熱変形により脆弱化し、カードを曲げる等した場合に当該導電ブロック11が破断し、電気的接続が失われることも抑制できる。
【0106】
ここで、アンテナ端部8a付近と、第1導電ブロック11aの第1部位12aとの電気的接続、および、第1導電ブロック11aの第2部位13aと、ICモジュール7の第1アンテナ接続端子71aとの電気的接続、の違いについて説明する。前者は、前述したように、例えばコア層5上に、巻き線形成機等によって埋め込み形成したアンテナ8の端部8a付近に、金属製である第1導電ブロック11aの第1部位12aを接近させ、電気放電を利用した溶接で容易に電気的接続させることができる。アンテナ端部8aおよび第1導電ブロック11aの周囲には十分な溶接を行うための作業空間が確保でき、ある程度の高温溶接によりコア層5が熱変形したとしても、直ちに最終的な接触および非接触共用ICカード1の外観不良につながる可能性が少ないからである。
【0107】
一方、後者では、切削済カード基体2aの凹部9をICモジュール7で覆い被せた上で、内部の第1導電ブロック11aの第2部位13aと、ICモジュール7の第1アンテナ接続端子71aとの電気的接続を図る必要がある。この場合、第1導電ブロック11aの第2部位13a自体に熱接着性等を付与するか、第1導電ブロック11aの第2部位13aと、ICモジュール7の第1アンテナ接続端子71aとの間に、別途、導電接着層10を挟み込み、これを熱溶融させる等して接着させる必要がある。しかし、接続部分が隠れる以上、溶接等の手段は取り得ない。
【0108】
また、前述したように、第1導電ブロック11aの第2部位13aをはんだで構成する等、第2部位13a自体に加熱による接着性を付与すると、第1導電ブロック11aが溶融により形状変化し、当該第1導電ブロック11aと第1アンテナ接続端子71aとの接続信頼性が低下し、熱伝導の変化により切削済カード基体2a自体の外観が劣化するおそれがある。そこで、第1導電ブロック11aの第2部位13aが溶融しない温度条件で、間に挟んだ導電接着層10のみを熱溶融させ、当該第1導電ブロック11aと第1アンテナ接続端子71aとの電気的接続の信頼性を確保する必要がある。すなわち、第2部位13aの導電接着層10と当接する部分の融点が、ICモジュール7を、導電接着層10を介して当該第2部位13aと接着させるために必要な温度よりも高いことが必須となる。これらは当然ながら、第2導電ブロック11bとの関係についても共通する。
【0109】
このように、少なくとも、導電ブロック11の厚さが厚い第2部位13aおよび13bの導電接着層10と当接する部分の融点が、導電接着層10を第2部位13aおよび13bと接着させるために必要な温度、すなわち、導電接着層10を構成するACFの軟化および熱硬化反応を促進するための加熱温度よりも高いことにより、導電接着層10は、しっかりと導電ブロック11と電気的、機械的に接続されることとなる。
【0110】
一対の導電ブロック11は、第1導電ブロック11aを例にとると、切削済カード基体2a側のアンテナ端部8aと、ICモジュール7の基板71の裏面に配置される第1アンテナ接続端子71aとの、左右方向の接続ブリッジとしての機能を有する厚さの薄い第1部位12aと、アンテナ端部8aおよび第1アンテナ接続端子71aの、厚さ方向の接続ブリッジとしての機能を有する厚さの厚い部分を有する第2部位13aと、から構成された略S字型またはこれの対称形状の断面を有する導電性部材である。
【0111】
一対の導電ブロック11をこのような形状とすることにより、当該導電ブロック11の全体が第2部位13aの厚さを有する平板状の部材である場合と比べて、アンテナ8や、ICモジュール7との接合、接着面積を十分に確保しながら、導電ブロック11の熱容量を低減できる。したがって、ICモジュール7の外部接触端子14にヒートブロックによる加熱がされた際に、導電ブロック11に溜め込んだ熱が周囲に放熱され、カード基体2のコア層4、5やオーバーシート層3、6が熱変形し、外観不良を来すことを抑制できる。また、カード基体2の内部に挟まれるコア層、オーバーシート層以外の異物の体積をできる限り低減することにより、厚さ方向の上下から熱圧を加える熱プレス工程における、カード基体2の熱変形による外観不良を抑制できる。
【0112】
さらに、切削済カード基体2aのICモジュール7の外周の輪郭に対向する領域には、その周囲よりも深く、一定の狭い幅を有する溝20が形成されている。切削済カード基体2aのICモジュール7と対向する領域には、基板71を載置するための第1の深さを有する第1凹部9aと、ICチップ15を含むモールド部72を収納するための、第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2凹部9bが切削形成される。これに対して溝20は、第1凹部9aの外周に沿った、第1の深さよりも深く、かつ、第2の深さよりも浅い深さを有している。
【0113】
これにより、接触および非接触共用ICカード1が曲げられる等、何らかの外力を受けた場合でも、その曲げ応力を切削済カード基体2aの溝20に集中させることができる。その結果、導電接着層10を介して接合された、導電ブロック11およびICモジュール7の接合部分への曲げ応力を緩和することができ、その影響を極力抑制することができる。このため、導電ブロック11およびICモジュール7の電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0114】
2.変形例
本開示の接触および非接触共用ICカードにおける、特に、導電ブロックに関する変形例について説明する。
【0115】
(a)変形例1
図6(a)に、本開示の接触および非接触共用ICカードにおける、
図4(c)に倣った、変形例1に係る導電ブロック21の平面図を示す。導電ブロック21を構成する第1導電ブロック21aおよび第2導電ブロック21bは、実施形態の導電ブロック11と同様に、左右対称形状であって、図示を省略するが、
図5(b)に対応するY1方向から見た断面が略S字型またはこれの対称形状の断面となる。しかし、
図6(a)に示すように、接触および非接触共用ICカードの外部接触端子14が配置された側の面の法線方向から当該ICカードを透視したとき、厚さが厚い部分を有する第2部位23aや23bに比べて、厚さが薄い第1部位22aや22bが、当該第2部位23aや23bからX軸沿いに遠ざかるにつれ、当該第1部位のY軸に沿った幅が小さくなり、先細りする形状となっている点が、実施形態の導電ブロック11とは異なる。
【0116】
このように、厚さが薄い第1部位22aや22bのY軸に沿った幅が、第2部位23aや23bからX軸沿いに遠ざかるにつれて徐々に先細りする形状となっていることにより、第1導電ブロック21aおよび第2導電ブロック21bの体積および熱容量の低減を一層図ることができる。よって、導電接着層10と導電ブロック21との当接面積を減らすことなく、導電接着層10への加熱時における、導電ブロック21への熱の溜め込みおよび放熱による周囲のカード基体2の熱変形を一層抑制することができる。
【0117】
(b)変形例2
次に、
図6(b)に、上述の変形例1に類似する、変形例2に係る導電ブロック31の平面図を示す。導電ブロック31を構成する第1導電ブロック31aおよび第2導電ブロック31bにおいて、厚さが厚い部分を有する第2部位33aや33bの領域に、厚さ方向に沿った凹部または貫通孔34が形成されている点を除き、変形例2に係る導電ブロック31は、変形例1に係る導電ブロック21と同一形状となる。
【0118】
導電ブロック31の厚さが厚い部分を有する第2部位33aや33bの領域に凹部または貫通孔34が形成されることにより、第2部位33aおよび33bの上面と、その上側に配置される導電接着層10との間で、くさび効果による機械的接着力の強化が図れる。また、凹部または貫通孔の分だけ、導電ブロック31の表面積が増えることにより放熱効果が高まり、導電接着層10への加熱時における、導電ブロック31への熱の溜め込みおよび放熱による周囲のカード基体2の熱変形を、さらに抑制することができる。
【0119】
(c)変形例3
次いで、
図6(c)に、変形例3に係る導電ブロック41の平面図を示す。本変形例では、前述の実施形態や変形例とは異なり、導電ブロック41が、アンテナ端部8a付近と接続する部分として2分割された第1導電ブロック41aおよび第3導電ブロック41cが配置され、アンテナ端部8b付近と接続する部分として2分割された第2導電ブロック41bおよび第4導電ブロック41dが配置されている。すなわち、導電ブロック41は4分割されている。また、4つの各々の導電ブロックは、図示を省略するが、
図5(b)に対応するY1方向から見た断面が、実施形態と装用に略S字型またはこれの対称形状の断面となる。
【0120】
このように、導電ブロック41が4分割されていることにより、導電ブロック41全体としての表面積が増えることにより放熱効果が高まり、導電接着層10への加熱時における、導電ブロック41への熱の溜め込みおよび放熱による周囲のカード基体2の熱変形を、効果的に抑制することができる。また、アンテナ端部8a付近と接続する導電ブロックおよびアンテナ端部8b付近と接続する導電ブロックが、それぞれ2分割されていることにより、例えば、アンテナ端部8a付近と接続する2箇所の導電ブロックのいずれか一方に電気的な接続不良が生じたとしても、他方の導電ブロックが電気的に接続していることにより、全体として良好な電気的接続を確保し得る。これにより、導電ブロックとアンテナ8との電気的な接続信頼性を向上できる。また、カードを曲げる等した場合にも、導電ブロック41に掛かる内部応力は、4分割された各々の導電ブロックに分散するので、導電ブロック41の破断が抑制される。
【0121】
(d)変形例4
続いて、
図6(d)に、変形例4に係る導電ブロック51の平面図を示す。本変形例において、導電ブロック51は、第1導電ブロック51aおよび第2導電ブロック51bから構成され、アンテナ端部8a付近に第1導電ブロック51aが、アンテナ端部8b付近に第2導電ブロック51bが接続されている。ここで、第1導電ブロック51aにおいて、厚さが薄い第1部位52aは1枚の板状構造であるが、厚さが厚い部位が、第2部位53aと、これとY軸に沿って並列する第3部位53cとに分割配置されている点が、前述の実施形態や変形例とは異なる。
【0122】
また、第2導電ブロック51bも、上記の第1導電ブロック51aと左右対称に形成され、厚さが薄い第1部位52bが1枚の板状構造であるのに対し、厚さが厚い部位が、第2部位53bと、これとY軸に沿って並列する第3部位53dとに分割配置されている。
【0123】
このように、導電ブロック51は、厚さが薄い第1部位52a、52bにおいては1枚構成であるのに対して、その上側に形成される部位が、第2部位53a、53bに加えて第3部位53c、53dを備えている。したがって、導電ブロック51全体としての表面積の増大、特に、最も高温となり得る第2部位や第3部位における表面積の増大により放熱効果を高め、導電接着層10への加熱時において、導電ブロック51への熱の溜め込みおよび放熱による周囲のカード基体2の熱変形を、効果的に抑制することができる。また、カードを曲げる等した場合にも、導電ブロック51に掛かる内部応力を、第2部位および第3部位の各々に分散することで、導電ブロック51全体の破断が抑制される。
【0124】
(e)変形例5
次に、
図7(a)に、変形例5に係る導電ブロック61について、
図5(c)に対応する、第1導電ブロック61a付近の断面図を示す。本変形例において、第1導電ブロック61aは、同一厚さの板状部材を屈曲加工することで、厚さが薄い第1部位62aと、厚さが厚い第2部位63aとを形成している。そのため、第2部位63aの内部には、空隙64が形成されている。
【0125】
具体的には、まず、同一厚さh21の板状部材を、X1方向からX2方向に向けた長さd2の地点でZ2方向に向けて略直角に屈曲加工する。そして、高さh22を付加した合計h2の長さの地点で、さらにX1方向に向けて略直角に屈曲加工する。その後、長さd22の地点で、さらにZ1方向に向けて略直角に屈曲加工することにより、第1導電ブロック61aを得る。なお、最後の屈曲加工により、板状部材の末端を当該板状部材と当接させず、少なくとも一部に隙間を有するようにして、放熱効果を高めることが好ましい。また、第2導電ブロックは、図示を省略するが、第1導電ブロック61aとは左右対称形状となる点において、前述の実施形態等と同様である。
【0126】
このように、導電ブロック61を、同一厚さの板状部材を折り曲げ加工して、厚さが薄い第1部位と、厚さが厚い第2部位とを形成する構造とすることにより、実施形態に係る導電ブロック11と比べて、導電ブロック61の表面積を増大させることができ、放熱効果の一層の向上が図れる。また、同一厚さの板状部材を使用できることから、材料入手や加工が容易となる。さらに、板状部材の屈曲加工によるばね適性の付与により、カードを曲げる等した場合にも、導電ブロック61に掛かる内部応力に対して適宜変形可能であるため、導電ブロック61全体の破断が抑制される。
【0127】
(f)変形例6
さらに、
図7(b)に、変形例5と類似する変形例6に係る導電ブロック81について、
図7(a)に対応する、第1導電ブロック81a付近の断面図を示す。本変形例において、第1導電ブロック81aは、変形例5と同様に、同一厚さの板状部材を屈曲加工することで、厚さが薄い第1部位82aと、厚さが厚い第2部位83aとを形成している。第2部位83aの内部には、一部が大きく開放された空隙84が形成される。
【0128】
具体的には、まず、同一厚さh31の板状部材を、X1方向からX2方向に向けた長さd31の地点でZ2方向に向けて略直角に屈曲加工する。そして、高さh32を付加した合計h3の長さの地点で、X2方向に向けて略直角に屈曲加工する。その後、長さd32の地点で、さらにZ1方向に向けて略直角に屈曲加工することにより、第1導電ブロック81aを得る。なお、最後の屈曲加工後の区間の長さがh3となるようにする。
【0129】
このように、導電ブロック81を、同一厚さの板状部材を屈曲加工することにより、変形例5と同様の放熱効果の向上や、ばね適性による破断抑制の効果が得られる。本変形例では、板状部材の屈曲方向を変形例5に対して変えることにより、板状部材の使用量がさらに削減でき、コスト削減も図れることから、材料入手や加工が一層容易となる。
【符号の説明】
【0130】
1 接触および非接触共用ICカード
2 カード基体
2a 切削済カード基体
3、6 オーバーシート層
4、5 コア層
7 ICモジュール
8 アンテナ
8a、8b アンテナ端部
9 凹部
9a 第1凹部
9b 第2凹部
10 導電接着層
10a 第1導電接着層
10b 第2導電接着層
11、21、31、41、51、61、81 導電ブロック
11a、21a、31a、41a、51a、61a、81a 第1導電ブロック
11b、21b、31b、41b、51b 第2導電ブロック
12a、12b、22a、22b、32a、32b、42a、42b、42c、42d、52a、52b、62a、82a 第1部位
13a、13b、23a、23b、33a、33b、43a、43b、43c、43d、53a、53b、63a、83a 第2部位
14 外部接触端子
15 ICチップ
16 ワイヤ
17 シート
18 アンテナシート
20 溝
34 凹部または貫通孔
53c、53d 第3部位
64、84 空隙
71 基板
71a 第1アンテナ接続端子
71b 第2アンテナ接続端子
72 モールド部
91a、91b 界面
92a 第1アンテナ接点
92b 第2アンテナ接点
131a、131b 中継部
132a、132b 先端部