(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/147 504
(21)【出願番号】P 2020069479
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 真優子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】倉持 和裕
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-327190(JP,A)
【文献】特開2016-009066(JP,A)
【文献】特開2015-184489(JP,A)
【文献】特開2020-046575(JP,A)
【文献】特開2011-007969(JP,A)
【文献】特開2010-244002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも感光層上に、硬化型の最外層を有する電子写真感光体であって、
前記最外層が、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、
重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、
有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物であり、
前記第2の重合性モノマーの含有量が、全重合性モノマーに対して、30~70質量%の範囲内であり、
前記有機樹脂粒子が、少なくともメラミン構造を有する化合物を含有し、かつ、
前記有機樹脂粒子の粒径が0.
20~
2.
50μmの範囲内である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記第2の重合性モノマーの2個の重合性基が、原子
量が12以上の原子を3個以上含む連結基を介して結合した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記第2の重合性モノマーの2個の重合性基が、少なくとも連結基が炭素数2以上のアルキレン構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記第1の重合性モノマーが、重合性基をモノマー1分子中に3個有することを特徴とする請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記第1の重合性モノマー又は前記第2の重合性モノマー以外の第3の重合性モノマーとして
、2官能の重合性モノマーを含有
し、前記第2の重合性モノマーと前記第3の重合性モノマーとの合計量が、重合性モノマー全含有量に対して、45~70質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を具備していることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項7】
少なくとも、電子写真感光体の表面を帯電する帯電工程と、当該電子写真感光体の表面を露光することにより、静電潜像を形成する露光工程と、当該静電潜像をトナーにより顕像化しトナー画像を形成する現像工程と、当該トナー画像を転写媒体に転写する転写工程と、を有する電子写真画像形成方法であって、請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を使用することを特徴とする電子写真画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成方法に関する。より詳しくは、良好なクリーニング性、耐傷性及び長期にわたり点欠陥の抑制をすることができる電子写真感光体、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンターなどによる画像形成には、より一層の高耐久化、高画質化が望まれ、加えて、画像部の面積である印字率及び、画像濃度が高い画像の出力を必要とする画像形成も増えている。
そのため、電子写真感光体においても、高耐久化、高画質化や印字率及び、画像濃度が高い画像出力への対応も必要となっている。
【0003】
特に、高耐久化に関しては、持続可能な社会の実現に貢献するためにも要求が高まっており、感光体の耐久寿命を決定する最大の要素である耐摩耗性や耐傷性等の機械的強度は特に重要となる。
【0004】
一方、高画質化に関しても、長期にわたり高画質を維持できることが必要となっており、画質に影響を及ぼす良好なクリーニング性を維持することも重要である。
【0005】
そこで、感光体の長寿命化に繋がる耐摩耗性や耐傷性を向上させるとともに、感光体のクリーニング性も向上させるために、硬化型の表面層に有機樹脂粒子を含有させることが知られている。
【0006】
例えば特許文献1では、2官能以上のモノマーを使用した硬化型の表面層にメラミンに由来の構成単位を含む樹脂からなる有機樹脂微粒子(以下メラミン樹脂粒子ともいう)を含有させる提案がなされている。
【0007】
しかし、実施例にあるように3官能モノマー単独の場合、2官能モノマーとの併用と比較をして、樹脂部にもろい部分が生じてしまったり、未反応の重合性基が残りやすくなったりするため、特に印字率が高く、画像濃度が高い場合に、耐傷性やクリーニング性や点欠陥の観点で改善の余地がある。
【0008】
また、2官能モノマーを単独で用いると架橋密度が不十分になり、十分な膜強度を得ることが困難となるため、長期にわたり使用した際の耐傷性の確保の観点からも改善の余地があり、加えて、特に印字率が高く画像濃度が高い場合に、クリーニング性の維持が困難となる。
【0009】
また、炭素数7以上の一価の炭化水素基及び重合性官能基を同一分子内に有する化合物(単官能モノマー)と3官能モノマーを併用した表面層に有機樹脂粒子を含有させる提案もなされている(特許文献2)。
【0010】
しかし、単官能モノマーと3官能モノマーを併用する場合、架橋密度が不十分になり、十分な膜強度を得ることが困難となる。
【0011】
その結果、長期にわたり使用した際の良好な耐傷性の維持に問題が生じる。加えて、特に印字率が高く、画像濃度が高い場合に、良好なクリーニング性の維持が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2015-114453号公報
【文献】特開2019-45862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、良好なクリーニング性、耐傷性及び点欠陥の抑制を長期にわたり達成することができる電子写真感光体、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、最外層を、3官能以上の重合性モノマーと、特定の構造を有する2官能モノマーと、特定の範囲内の粒径をもつ有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成することで、良好なクリーニング性、耐傷性及び長期にわたり点欠陥の抑制をすることができる電子写真感光体を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0015】
1.少なくとも感光層上に、硬化型の最外層を有する電子写真感光体であって、
前記最外層が、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、
重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、
有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物であり、
前記第2の重合性モノマーの含有量が、全重合性モノマーに対して、30~70質量%の範囲内であり、
前記有機樹脂粒子が、少なくともメラミン構造を有する化合物を含有し、かつ、
前記有機樹脂粒子の粒径が0.20~2.50μmの範囲内である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【0016】
2.前記第2の重合性モノマーの2個の重合性基が、原子量が12以上の原子を3個以上含む連結基を介して結合した構造を有することを特徴とする第1項に記載の電子写真感光体。
【0017】
3.前記第2の重合性モノマーの2個の重合性基が、少なくとも連結基が炭素数2以上のアルキレン構造を有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の電子写真感光体。
【0019】
4.前記第1の重合性モノマーが、重合性基をモノマー1分子中に3個有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0020】
5.前記第1の重合性モノマー又は前記第2の重合性モノマー以外の第3の重合性モノマーとして、2官能の重合性モノマーを含有し、前記第2の重合性モノマーと前記第3の重合性モノマーとの合計量が、重合性モノマー全含有量に対して、45~70質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0023】
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を具備していることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【0024】
7.少なくとも、電子写真感光体の表面を帯電する帯電工程と、当該電子写真感光体の表面を露光することにより、静電潜像を形成する露光工程と、当該静電潜像をトナーにより顕像化しトナー画像を形成する現像工程と、当該トナー画像を転写媒体に転写する転写工程と、を有する電子写真画像形成方法であって、第1項から第5項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を使用することを特徴とする電子写真画像形成方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の上記手段により、良好なクリーニング性、耐傷性及び点欠陥の抑制を長期にわたり達成することができる電子写真感光体、電子写真画像形成装置及び電子写真画像形成方法を提供することができる。
【0026】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0027】
有機樹脂粒子を含有した硬化表面層において、第1のモノマー(三官能以上の多官能)と第2のモノマー(二官能)を併用することで、有機樹脂粒子によるクリーニング性の向上に加え、未反応の重合性基が少ない膜の形成が可能となり、さらに大径有機樹脂粒子による樹脂部への応力の軽減ができるため、良好なクリーニング性、耐傷性と長期にわたる点欠陥抑制の両立を図ることができる。
【0028】
第1のモノマー(多官能モノマー)に第2のモノマー(二官能モノマー)を併用することで、膜強度を損なわずに反応率を上げることができる。
反応率を上げるためには、官能基の少ないモノマーを併用することが有効となるが、架橋密度は下がる傾向がある。
【0029】
そのため、多官能モノマーと単官能モノマーの併用、又は、二官能モノマー単独では、架橋密度が不十分となり、耐傷性が悪化する。
【0030】
一方、3官能以上の多官能単独又は、多官能同士の組み合わせでは、未反応の重合性基が増えてしまい、局所的な抵抗低下が生じるため、非印字部に点が印字されてしまう画像欠陥が発生しやすくなる。
【0031】
一方、大径有機樹脂粒子は感光体の表面エネルギーや摩擦係数を下げることができるため、感光体とトナーとの付着力が低減し、クリーニング性が向上する。
特に有機樹脂粒子としてメラミンを用いた場合、樹脂との相溶性の観点から、耐久時の粒子脱落を抑制することができるため、長期にわたりクリーニング性を維持することが可能となる。
【0032】
しかし、単に大径微粒子を硬化型表面層に含有させた場合、有機樹脂粒子により樹脂部に応力がかかるため膜がもろくなり、耐傷性が悪化しやすくなる。
【0033】
そこで、第2のモノマーとして二官能モノマーを併用すると、架橋密度が適度に下がり、樹脂部に応力がかかりにくくなる。
特に、第2のモノマーが重合性基である2つの(メタ)アクリロイルオキシ基の間が離れた構造の場合、樹脂部が柔軟な構造となるため、樹脂部へかかる応力がより小さくなり、膜強度の向上に対してより効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の電子写真感光体の構成の一例を示す断面図
【
図2】本発明の電子写真感光体を備えるタンデム型の電子写真画像形成装置の全体構成の一例を示す模式図
【
図3】本発明の実施例において用いる複合粒子の製造に用いる微粒子製造装置の構成の一例を示す模式図
【
図5】感光体の評価方法を説明するための模式図(カバレッジ10%の縦帯状ベタ画像からなるテスト画像)
【
図6】感光体の評価方法を説明するための模式図(カバレッジ40%の横帯状ベタ画像からなるテスト画像)
【
図7】感光体の評価方法を説明するための模式図(カバレッジ25%の横帯状ベタ画像からなるテスト画像)
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の電子写真感光体は、少なくとも感光層上に、硬化型の最外層を有する電子写真感光体であって、前記最外層が、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物であり、前記第2の重合性モノマーの含有量が、全重合性モノマーに対して、30~70質量%の範囲内であり、前記有機樹脂粒子が、少なくともメラミン構造を有する化合物を含有し、かつ、前記有機樹脂粒子の粒径が0.20~2.50μmの範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0036】
本発明の実施態様としては、前記第2の重合性モノマーの2個の重合性基が、原子量が12以上の原子を3個以上含む連結基を介して結合した構造を有することが好ましい。
このような連結基を有することで、樹脂部に柔軟な部位を付与することが可能となるため、有機樹脂粒子による樹脂への応力を低減する効果を高めることが可能となる。
【0037】
また、前記第2の重合性モノマーの2個の重合性基が、少なくとも連結基が炭素数2以上のアルキレン構造を有することが好ましい。
2つの重合性基が原子量12以上の原子が18個よりも少ない連結基を介して連結していると、架橋密度の低下を小さくすることができ、耐傷性が悪化を防ぐことができる。
【0038】
また、前記有機樹脂粒子が、少なくともメラミン構造を有する化合物を含有する有機樹脂粒子であり、樹脂との相溶性に優れる。
【0039】
また、前記第1の重合性モノマーが、重合性基をモノマー1分子中に3個有することが反応率向上の観点から好ましい。
【0040】
また、前記第1の重合性モノマー又は第2の重合性モノマー以外の第3の重合性モノマーとして、2官能の重合性モノマーを含有し、前記第2の重合性モノマーと前記第3の重合性モノマーとの合計量が、重合性モノマー全含有量に対して、45~70質量%の範囲内であることが、効果発現の観点から好ましい。
【0042】
前記第3の重合性モノマーが2官能の重合性モノマーである場合、前記第2の重合性モノマーと前記第3の重合性モノマーとの合計量が、重合性モノマー全含有量に対して、45~70質量%の範囲内であり、これにより反応率低下の抑制及び架橋密度低下の抑制の効果が向上する。
【0043】
本発明の電子写真感光体は、電子写真画像形成装置に好適に用いられる。
【0044】
また、本発明の電子写真感光体は、電子写真画像形成方法にも好適に用いられる。
【0045】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0046】
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、少なくとも感光層上に、硬化型の最外層を有する電子写真感光体であって、前記最外層が、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物であり、前記第2の重合性モノマーの含有量が、全重合性モノマーに対して、30~70質量%の範囲内であり、前記有機樹脂粒子が、少なくともメラミン構造を有する化合物を含有し、かつ、前記有機樹脂粒子の粒径が0.20~2.50μmの範囲内であることを特徴とする。
【0047】
[電子写真感光体の基本構成]
図1は、本発明の電子写真感光体の構成の一例を示す断面図である。
図1(a)は、第1の構成の電子写真感光体101Aを示す断面図であり、導電性支持体102上に、中間層103を形成し、その上に、感光層104を設け、最表面に、本発明に係る最外層105が形成されている構成で、最外層105は、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物である。
【0048】
また、
図1(b)は、第2の構成の電子写真感光体101Bを示す断面図であり、導電性支持体102上に、中間層103を形成し、その上に、電荷発生層106及び電荷輸送層107により構成されている感光層104が形成され、最表面に、本発明に係る最外層105が形成されている構成で、最外層105は、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物である。
【0049】
また、本発明の電子写真感光体に係る最外層は、第1の重合性モノマー及び第2の重合性モノマー以外の重合性モノマー(第3の重合性モノマー)を含有してもよい。
以下に、本発明の電子写真感光体の主要構成要素の詳細について説明する。
【0050】
1.最外層
本発明に係る最外層は、少なくとも重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する第1の重合性モノマーと、重合性基を、モノマー1分子中に2個有する第2の重合性モノマーと、粒径が0.20~2.50μmの範囲内である有機樹脂粒子とを含有する組成物で形成された硬化物である。
【0051】
以下、本発明に係る最外層の各構成要素の詳細について説明する。
【0052】
(1.1)重合性モノマー
本発明に係る重合性モノマーは、重合性基を有し、紫外線、可視光線、電子線等の活性線の照射により、又は加熱等のエネルギーの付加により、重合(硬化)して、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となる化合物である。
【0053】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合反応を経て硬化するラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
【0054】
重合性モノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N-ビニルピロリドン系モノマー等が挙げられる。
【0055】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリレート等が挙げられる。
【0056】
重合性モノマーが有する重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基であることが好ましい。
【0057】
重合性基は、少ない光量又は短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO-)であることが特に好ましい。
【0058】
重合性モノマーは、第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーとを含み、第1の重合性モノマー及び第2の重合性モノマー以外の重合性モノマー(第3の重合性モノマー)を含有してもよい。
重合性モノマーは、公知の方法で合成することができ、また市販品としても入手することができる。
【0059】
(1.1.1)第1の重合性モノマー
第1の重合性モノマーは、重合性基をモノマー1分子中に3個以上有する多官能モノマー(以下3官能以上の多官能モノマーともいう)である。
【0060】
第1の重合性モノマー(多官能モノマー)に第2の重合性モノマー(二官能モノマー)を併用することで、膜強度を損なわずに反応率を上げることができる。
反応率を上げるためには、官能基の少ないモノマーを併用することが有効となるが、架橋密度は下がる傾向がある。
そのため、多官能モノマーと単官能モノマーの併用、又は、二官能モノマー単独では、架橋密度が不十分となり、耐傷性が悪化する。
【0061】
一方、3官能以上の多官能モノマーに柔軟な部位を導入しても架橋密度を下げることができる。
【0062】
しかし、3官能以上の多官能モノマーに柔軟な部位を導入した場合、重合性基が多いため、反応率が低下し未反応の重合性基が増えることで、点欠陥の悪化が生じてしまう。
また、架橋密度の低下により多官能モノマーの利点である膜強度の低下が生じてしまう。
【0063】
第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーの割合は、電子写真感光体が本発明の効果が得られる範囲で適宜、調製できる。
また、第1の重合性モノマーとしては、重合性基をモノマー1分子中に3個有する化合物であることが、反応率向上の観点から好ましい。
第1の重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、以下の化合物M1~M12が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
下記の各式中、Rは、アクリロイルオキシ基を表し、R′は、メタクリロイルオキシ基を表す。
【0064】
【0065】
前記第1の重合性モノマーとしては、重合性基を3個有するモノマーであることが、反応率向上の観点から好ましい。
【0066】
(1.1.2)第2の重合性モノマー
第2の重合性モノマーは、重合性基をモノマー1分子中に2個有する二官能モノマーである。
【0067】
第2の重合性モノマーの含有量は、第2の重合性モノマーの効果を発揮する観点から、全重合性モノマーに対して、30~70質量%の範囲内であり、35~65質量%の範囲内であることが好ましい。
【0068】
第2の重合性モノマーを30質量%よりも大きくすると、反応率の向上に対する寄与が大きくなり、点欠陥抑制の効果が発揮されやすくなる。
【0069】
一方、第2の重合性モノマーを70質量%よりも少なくすると架橋密度の低下を抑制することができ、膜強度を十分に確保することができる傾向が見られるため、耐傷性に対する効果を発揮しやすくすることができる。
前記第1の重合性モノマーと、第2の重合性モノマーである二官能の重合性モノマーを併用することで、重合反応の反応率を上げることができ、局所的な抵抗低下の要因となる重合の未反応部位を減らすことが可能となる。
本発明では、2官能の重合性モノマーにより、反応率を向上させ、適度な架橋密度の低下により後に記載する有機微粒子が樹脂にかける応力を緩和することにより効果が発現する。
未反応部位は単官能モノマーを併用した場合も重合の反応率を上げることは可能であるが、架橋密度の低下が大きく、十分な膜強度を確保することが困難となる。
有機樹脂粒子による樹脂への応力を低減する観点から、第2の重合性モノマーは2つの重合性基の間が離れていることが好ましい。
【0070】
具体的には、2つの重合性基は原子量が12以上の原子が3個以上の連結基を介して結合していることが好ましい。
【0071】
このような連結基を有することで、樹脂部に柔軟な部位を付与することが可能となるため、有機樹脂粒子による樹脂への応力を低減する効果を高めることが可能となる。
【0072】
原子量が12以上の原子が3個以上の連結基としては、アルキレン基、エーテル結合、エステル結合、環状構造等が挙げられ、分岐構造を有してもよい。
【0073】
さらに好ましくは、2つの重合性基は原子量が12以上の原子が3~18個の連結基を介して結合していることが好ましい。
【0074】
2つの重合性基が原子量12以上の原子が3~18個の連結基を介して結合していることで、有機樹脂粒子による樹脂への応力を低減する効果を高めながら架橋密度の低下を抑え、耐傷性の悪化を抑制することができる。
【0075】
第2の重合性モノマーのより好ましい構造としては、2つの重合性基は少なくとも連結基が炭素数2以上のアルキレン構造を有することが挙げられ、さらに連結基に環状構造を有さないことが好ましく、さらに好ましくは連結基が炭素数3以上のアルキレン基であることが好ましい。
【0076】
連結基として炭素数2以上のアルキレン構造を有すると樹脂部により柔軟な部位を付与することができる。
【0077】
また、環状構造を有すると剛直な部位になってしまうため、環状構造を有さない構造にすることにより、もろくなりやすくなることを防ぐことができる。
【0078】
アルキレン基は直線的な構造を取るため、連結基が炭素数3以上のアルキレン基の場合は、より効率的に2つの重合性基間の距離を離すことができ、柔軟性をより付与しやすく、有機樹脂粒子による樹脂部への応力をより効果的に低減することが可能となる。
【0079】
その結果、特に印字率や画像濃度が高い場合でも、良好なクリーニング性を維持でき、更に耐傷性が良好となる。
【0080】
ここで、2官能の重合性モノマーが重合性モノマー全体の30質量%以上であることで、多官能の重合性モノマーが少なくなり、反応率の低下を抑えることができる。
その結果点欠陥の抑制に対して有利になる。
また、70質量%よりも少ないことで、架橋密度の低下を抑えることができ、耐傷性に対する効果が大きくなる。
効果発現の観点からは、2官能の重合性モノマー、3官能以上の重合性多官能モノマー、ともにモノマー全体として30~70質量%であることが好ましい。
【0081】
第2の重合性モノマーとしては、2官能のアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレン(メタ)アクリレート、トリシクロデカノール(メタ)アクリレート、アルコキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
市販されている第2の重合性モノマーの具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられ、アルキル(メタ)アクリレート:A-HD-N、A-NOD-N、A-NPG、BD、HD-N、DOD-N(以上、新中村化学工業株式会社製)、SR206、SR213(以上、サートマー社製)、FA-129AS(日立化成株式会社製)等、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート:A-1000、4G、9G(以上、新中村化学工業株式会社製)、SR272、SR344、SR209(以上、サートマー社製)、FA-222A、FA-204M(以上、日立化成株式会社製)等、ポリプロピレン(メタ)アクリレート:APG-200、3PG、9PG(以上、新中村化学工業社製)、SR508、SR644(以上、サートマー社製)、FA-P207A(日立化成株式会社製)等、トリシクロデカノール(メタ)アクリレート:DCP(新中村化学工業株式会社製)、SR833S(サートマー社製)等、アルコキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート:BPE-80N、ABE-200(以上、新中村化学工業株式会社製)、KAYARAD R-551(日本化薬株式会社製)、SR480、SR602(以上、サートマー社製)、FA-302M(日立化成株式会社製)等を挙げることができる。
【0083】
第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーの割合は、電子写真感光体が本実施の形態の効果が得られる範囲で適宜、調整できる。
【0084】
(1.1.3)第3の重合性モノマー
本発明に係るモノマーは、第1の重合性モノマー及び第2の重合性モノマー以外の重合性モノマー(以下第3の重合性モノマーともいう。)を含有してもよい。また、本発明の効果を発揮するためには、第3の重合性モノマーは、全重合性モノマーの20質量%未満であることが好ましい。
【0085】
第3の重合性モノマーとして単官能の重合性モノマーを含有する場合、膜強度の観点から、単官能の重合性モノマーは重合性モノマー全体の10質量%未満であることが好ましい。
【0086】
第3の重合性モノマーとして2官能の重合性モノマーを含有する場合、第2の重合性モノマーと第3の重合性モノマーとの合計が全重合性モノマーに対して、45~70質量%の範囲内であることが好ましい。
【0087】
2官能の重合性モノマーが重合性モノマー全体の30質量%以上であると多官能の重合性モノマーが少なくなり、反応率の低下が生じにくくなる。
その結果、点欠陥の抑制に対して有利になる傾向が見られる。
一方、70質量%よりも少ない場合は架橋密度の低下が小さくなり、耐傷性に対する効果が大きくなる。
【0088】
(1.2)有機樹脂粒子
本発明に用いられる有機樹脂粒子としては、メラミン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、オレフィン系樹脂粒子、その他ポリマー粒子などが挙げられる。
【0089】
メラミン樹脂粒子は、少なくともメラミンに由来の構成単位を含む樹脂の粒子であり、具体的にはメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物や、メラミンと、ベンゾグアナミンと、ホルムアルデヒドとの共重縮合物等が挙げられる。
【0090】
フッ素樹脂粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ3フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフルオロアルキルビニルエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリジフルオロジクロロエチレンまたはこれの共重合体等が挙げられる。
【0091】
シリコーン樹脂粒子としては、オルガノポリシロキサン、例えばメチル水素ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロヘキシルポリシロキサン等が挙げられる。
【0092】
アクリル樹脂粒子としては、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルとスチレンの共重合体等が挙げられ、架橋構造を有していてもよい。
【0093】
ポリスチレン樹脂粒子としては、スチレンの重合体が挙げられ、架橋構造を有していてもよい。
【0094】
ベンゾグアナミン樹脂粒子としては、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの重縮合物等が挙げられる。
【0095】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセン等が挙げられる。
【0096】
市販されている有機樹脂粒子の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0097】
メラミン樹脂粒子:エポスターS、エポスターS6、エポスターS12、エポスターM30(以上、株式会社日本触媒社製)、オプトビーズ2000M、オプトビーズ3500M(以上、日産化学株式会社製)等。
【0098】
フッ素樹脂粒子:KTL-1N(株式会社喜多村製)、ポリミストF5A(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製)等。
【0099】
シリコーン樹脂粒子:トスパールXC99-A8808、トスパール120(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、KMP-605(信越化学工業株式会社製)等。
【0100】
アクリル樹脂粒子:エポスターMA1002、エポスターMA1004、エポスターMA2003(以上、株式会社日本触媒社製)、FS102、FS201(以上、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製)等。
【0101】
ポリスチレン樹脂粒子:SX-130H、KSR-3A(以上、綜研化学株式会社製)等。
【0102】
ベンゾグアナミン樹脂粒子:エポスターMS(株式会社日本触媒社製)等。
を挙げることができる。
【0103】
(1.2.1)メラミン樹脂粒子
本発明に用いられる有機樹脂粒子としては、メラミン樹脂粒子が挙げられる。
メラミン樹脂粒子を用いることによって、樹脂との相溶性の観点から、耐久時の粒子脱落を抑制することができるため、長期にわたり良好なクリーニング性を維持することが可能となる。
【0104】
(1.2.2)有機樹脂粒子の数平均一次粒径
本発明に用いられる有機樹脂粒子の数平均一次粒径は、0.20~2.50μmの範囲内であり、0.30~1.50μmの範囲内であることが更に好ましい。
【0105】
有機樹脂粒子の数平均一次粒径が0.20μm以上であることによって、良好なクリーニング性を得ることができ、0.30μm以上であればさらに良好なクリーニング性を得ることが可能となる。
【0106】
一方、有機樹脂粒子の数平均一次粒径が2.50μm以下であることによって、最外層の形成時に硬化阻害がより抑制され、1.50μm以下であれば硬化阻害がさらに抑制されるため、良好な耐傷性を得ることができる。
有機樹脂粒子の数平均一次粒径は、以下の方法で測定される数平均一次粒径と定義する。
【0107】
まず、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により、倍率30000倍で撮影された試料(有機樹脂粒子等)の拡大写真をスキャナーに取り込む。
【0108】
次いで、得られた写真画像から、凝集した有機樹脂粒子を除く300個の有機樹脂粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム ルーゼックスAP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)を使用して2値化処理して、当該有機樹脂粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出する。
【0109】
そして、当該有機樹脂粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径の平均値を算出して数平均一次粒径とする。
【0110】
ここで、水平方向フェレ径とは、上記有機樹脂粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0111】
(1.2.3)有機樹脂粒子の表面修飾剤
本発明の有機樹脂粒子は、表面修飾剤で表面修飾処理してもよい。表面修飾処理は原料となる未処理の有機樹脂粒子に、表面修飾剤により表面修飾処理を施すことで可能となる。
【0112】
表面修飾剤で表面修飾処理された有機樹脂粒子は、表面修飾剤由来の化学種(被覆層)及び有機樹脂粒子を含む表面被覆樹脂粒子となると考えられる。なお、表面修飾処理された有機樹脂粒子は、その表面上の少なくとも一部に表面修飾剤由来の化学種(被覆層)を有していればよい。
【0113】
本発明において、有機樹脂粒子の表面修飾処理に適用する表面修飾剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。表面修飾剤の具体例としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素系表面修飾剤、シリコーン鎖を有する表面修飾剤等が挙げられる。
【0114】
表面修飾剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。また、表面修飾剤は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
【0115】
(1.2.4)有機樹脂粒子の形状
上記有機樹脂粒子の形状は、特に制限されるものではなく、例えば、球状、断面楕円形状、針状、円盤状、不定形状などが挙げられる。クリーニング性向上の観点から、球状が好ましい。
【0116】
(1.2.5)有機樹脂粒子の含有割合
有機樹脂粒子は、硬化樹脂100質量部に対して3~50質量部の割合で含有されることが好ましく、より好ましくは3~30質量部である。有機樹脂粒子の含有割合が上記範囲内であることにより、良好なクリーニング性を確保することができる。
【0117】
(1.3)無機フィラー
本発明の最外層は無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーを含有する場合、適用可能な無機フィラーとしては、特に制限はないが、例えば、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、二酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、銅アルミ複合酸化物及びアンチモンをドープした酸化スズ等を挙げることができる。その中でも、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化スズ(SnO2)、二酸化チタン(TiO2)、銅アルミ複合酸化物(CuAlO2)が好ましい。
【0118】
上記無機フィラーは、1種であってもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、無機フィラーは、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
【0119】
また、本発明に係る無機フィラーにおいては、絶縁材料からなる芯材の表面に導電性金属酸化物が付着されてなる複合微粒子であってもよい。
【0120】
すなわち、無機フィラーが、絶縁材料から構成される芯材(コア)の表面に、上述したような無機フィラーからなる外殻(シェル)を有する、コア・シェル構造の複合微粒子であってもよい。
【0121】
(1.3.1)コア・シェル構造の複合粒子
上記コア・シェル構造を有する複合粒子を構成する芯材(コア)の材料の例としては、硫酸バリウム、酸化アルミニウム及びシリカが挙げられる。
【0122】
コア・シェル構造の複合微粒子の好ましい例としては、硫酸バリウムからなる芯材と、酸化スズからなる外殻と、を有する複合粒子が挙げられる。なお、芯材の数平均一次粒径と、外殻の厚みとの比率は、使用する芯材及び外殻の種類、ならびにこれらの組み合わせに応じて、適宜設定すればよい。
【0123】
(1.3.2)無機フィラーの数平均一次粒径
無機フィラーの数平均一次粒径は、10~200nmの範囲内であることが好ましい。無機フィラーの数平均一次粒径が10nm以上であれば、十分な耐傷性を得ることができる。
【0124】
一方、無機フィラーの数平均一次粒径が200nm以下であれば、最外層の形成時に無機フィラーを溶剤に分散させる際に、分散液中で無機フィラーの沈降が生じることなく、安定して感光体を製造することができる。
【0125】
また、有機樹脂粒子のクリーニング性向上効果は、有機樹脂粒子とトナーが接触する際に発揮されるため、無機フィラーの数平均一次粒径は、有機樹脂粒子よりも小さいことが好ましい。
【0126】
無機フィラーが凝集する場合は、二次粒径が有機樹脂粒子よりも小さいことが好ましい。無機フィラーが凝集する場合は、通常一次粒子が2~3個凝集すると考えられるため、二次粒径としては最大で数平均一次粒径の2.5倍程度を考えればよい。
【0127】
例えば、数平均一次粒径が20nmの無機フィラーの場合、二次粒径としては最大で50nm程度を考えればよい。
無機フィラーの数平均一次粒径は、以下の方法で測定される数平均一次粒径と定義する。
【0128】
まず、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された試料(無機フィラー等)の30000倍の拡大写真を撮影する。
【0129】
具体的には、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により、倍率30000倍で撮影された試料(無機フィラー等)の拡大写真をスキャナーに取り込む。
【0130】
次いで、得られた写真画像から、凝集した無機フィラーを除く300個の無機フィラー像を、ランダムに自動画像処理解析システム ルーゼックスAP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)を使用して2値化処理して、当該無機フィラー像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出する。
【0131】
そして、当該無機フィラー像のそれぞれの水平方向フェレ径の平均値を算出して数平均一次粒径とする。
【0132】
ここで、水平方向フェレ径とは、上記無機フィラー像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0133】
また、上記無機フィラーの数平均一次粒径の測定は、表面修飾剤由来の化学種(被覆層)を含まない無機フィラーについて、行うものとする。
【0134】
無機フィラーは、後述する表面修飾処理を施しても、無機フィラーに対して誤差範囲の厚さ(大体、無機フィラー径に対して1/10000程度の厚さ)になると考えられ、このため、表面修飾処理を施すことによっては、平均一次粒子径の変化がないとする。
【0135】
(1.3.3)無機フィラーの表面修飾剤
また、無機フィラーは表面修飾剤で表面修飾処理してもよい。表面修飾処理は原料となる未処理の無機フィラーに、表面修飾剤により表面修飾処理を施すことで可能となる。
【0136】
表面修飾剤で表面修飾処理された無機フィラーは、表面修飾剤由来の化学種(被覆層)及び無機フィラーを含む表面被覆フィラーとなると考えられる。なお、表面修飾処理された無機フィラーは、その表面上の少なくとも一部に表面修飾剤由来の化学種(被覆層)を有していればよい。
【0137】
表面修飾剤で無機フィラーの表面修飾処理を行うと、無機フィラーは効率的に疎水化されることとなる。
【0138】
このように表面修飾処理された無機フィラーと、二種類の重合性モノマーとを用いて組成物を調製し、その重合硬化物で感光体の最外層を形成すると、当該表面修飾処理された無機フィラーは、重合性モノマーとの相溶性が向上するため分散性に対して有利となる。また、無機フィラーが、重合性基を有することが好ましい形態の一つである。
【0139】
本発明において、無機フィラーの表面修飾処理に適用する表面修飾剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。表面修飾剤の具体例としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素系表面修飾剤、シリコーン鎖を有する表面修飾剤等が挙げられる。
【0140】
表面修飾剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。また、表面修飾剤は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。市販されている表面修飾剤の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0141】
本発明においては、当該重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。無機フィラーが有していても良い重合性基は、一種でもそれ以上でも良く、互いに同じであっても異なっていても良く、また、重合性硬化物を形成する重合性モノマーが有する重合性基と同じであっても異なっていても良い。
【0142】
重合性基を有する無機フィラーは、例えば、重合性基を有する化合物よりなる表面修飾剤によって無機フィラーを表面修飾処理することで得ることができる。
【0143】
重合性基を有する無機フィラーを用いると、無機フィラーと重合性モノマーが重合し、より機械的強度を得られやすくなるとともに、無機フィラーが脱落しにくくなるため長期にわたり効果を発揮しやすくなる。
【0144】
(1.3.4)無機フィラーの形状
上記無機フィラーの形状は、特に制限されるものではなく、例えば、球状、断面楕円形状、針状、円盤状、不定形状などが挙げられる。分散性等の観点から、球状又は断面楕円形状等が好ましい。
【0145】
(1.4)他の成分
最外層は、上記成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例としては、特に制限されないが、電荷輸送物質やシリコーンオイルや潤滑剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0146】
例えば、電荷輸送物質としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。その例としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン誘導体が好ましい。
【0147】
次いで、本発明の電子写真感光体の他の構成要素について説明する。
【0148】
2.導電性支持体
本発明の感光体を構成する導電性支持体は、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム又はシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又はバインダー樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙などが挙げられる。
【0149】
3.中間層
本発明の感光体には、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する中間層を設けることもできる。種々の故障防止などを考慮すると、中間層を設けるのが好ましい。
【0150】
このような中間層は、例えば、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)及び必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子が含有されてなるものである。
【0151】
中間層用バインダー樹脂としては、特に制限されず、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンなどが挙げられる。これらの中でもアルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。これら中間層用バインダー樹脂は1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0152】
中間層には、抵抗調整の目的で各種の導電性粒子や金属酸化物粒子を含有させることができる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの各種金属酸化物粒子を用いることができる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの導電性粒子(超微粒子)を用いることができる。
【0153】
このような導電性粒子又は金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
【0154】
これら導電性粒子又は金属酸化物粒子は、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合した場合には、固溶体又は融着の形をとってもよい。
【0155】
導電性粒子又は金属酸化物粒子の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して20~400質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~350質量部の範囲内である。
【0156】
中間層の層厚は、0.1~15μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.3~10μmの範囲内である。
【0157】
4.感光層
本発明の感光体では、中間層と最外層との間に、感光層を有する。感光層は、後述する露光手段により、所期の画像の静電潜像を感光体の表面に形成するための層である。当該感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に付与した単層構造でもよいし、電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層に感光層の機能を分離させた積層構造でもよい。
【0158】
電荷輸送層と電荷発生層との積層構造の様に、機能分離型の層構成を有すると、繰り返し使用に伴う残留電位の上昇を小さく制御できる他、各種の電子写真特性を目的に合わせて制御し易いメリットがある。
負帯電性感光体は中間層の上に電荷発生層、その上に電荷輸送層を設ける構成をとり、正帯電性感光体は中間層の上に電荷輸送層、その上に電荷発生層を設ける構成をとる。
好ましい感光層の層構成は前記機能分離構造を有する負帯電性感光体である。
【0159】
以下に、感光層の好ましい具体例として機能分離型の負帯電性感光体の感光層、すなわち電荷発生層および電荷輸送層を積層した感光層について説明する。
【0160】
(4.1)電荷発生層
感光体を構成する感光層における電荷発生層は、電荷発生物質及びバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなるものである。
【0161】
電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ原料、ピレンキノン、アントアントロンなどのキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレンなどの多環キノン顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、多環キノン顔料、チタニルフタロシアニン顔料が好ましい。これらの電荷発生物質は、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0162】
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、及びこれらの樹脂の内二つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ-ビニルカルバゾール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。これら電荷発生層用バインダー樹脂は、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0163】
電荷発生層中の電荷発生物質の含有割合は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して1~600質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~500質量部の範囲内である。
【0164】
電荷発生層の層厚は、電荷発生物質の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性、含有割合などにより異なるが、おおむね0.01~5μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.05~3μmの範囲内である。
【0165】
(4.2)電荷輸送層
感光体を構成する感光層における電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなるものである。
【0166】
電荷輸送層の電荷輸送物質としては、電荷(正孔)を輸送する物質として、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。
【0167】
最外層の下部に形成される電荷輸送層には、移動度が高く、分子量が大きい電荷輸送物質を含有させることが好ましく、このような電荷輸送物質としては、公知の化合物を併用することが可能で、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン及びポリ-9-ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの化合物を単独又は2種類以上混合して使用することができる。
【0168】
電荷輸送層用バインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂などが挙げられるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらにはBPA(ビスフェノールA)型、BPZ(ビスフェノールZ)型、ジメチルBPA型、BPA-ジメチルBPA共重合体型のポリカーボネート樹脂などが耐クラック、耐磨耗性、帯電特性の点で好ましい。これら電荷輸送層用バインダー樹脂は1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0169】
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有割合は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10~500質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20~250質量部の範囲内である。
【0170】
電荷輸送層の層厚は、電荷輸送物質の特性、電荷輸送層用バインダー樹脂の特性及び含有割合などによって異なるが、5~40μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~30μmの範囲内である。
【0171】
電荷輸送層中には、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイルなどを添加してもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報などに開示されているものが好ましい。
【0172】
[電子写真感光体の製造方法]
本発明の感光体を製造する方法としては、導電性支持体上の感光層上に、重合性化合物を含有する未硬化膜を形成する工程と、前記未硬化膜に光照射して硬化樹脂を含有する最外層を形成する工程とを備え、その他、特に制限されないが、下記工程を有する製造方法で製造されることが好ましい。
【0173】
工程(1):導電性支持体の外周面に中間層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層を形成する工程、
工程(2):導電性支持体の外周面に、又は工程(1)により導電性支持体上に形成された中間層の外周面に、電荷発生層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷発生層を形成する工程、
工程(3):導電性支持体の外周面、又は中間層上に形成された電荷発生層の外周面に電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷輸送層を形成する工程、
工程(4):電荷発生層上に形成された電荷輸送層の外周面に、最外層形成用の塗布液を塗布し、重合し、硬化させることにより最外層を形成する工程。
【0174】
各層を形成するための塗布液中の各成分の濃度は、各層の層厚や生産速度に合わせて適宜選択される。
【0175】
各層を形成するための塗布液において、導電性粒子や金属酸化物粒子等の粒子や電荷発生物質等の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサーなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0176】
各層を形成するための塗布液の塗布方法としては、特に制限されないが、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。
【0177】
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥、又は自然乾燥が好ましい。
【0178】
以下、各層の形成工程の詳細を説明する。
【0179】
〈工程(1):中間層の形成〉
中間層は、溶媒中に中間層用バインダー樹脂を溶解させて、中間層形成用塗布液を調製し、必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子、分散剤やレベリング剤等の他の成分を分散又は溶解させた後、当該塗布液を導電性支持体上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0180】
中間層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0181】
中間層の形成工程において使用する溶媒としては、導電性粒子や金属酸化物粒子を良好に分散し、中間層用バインダー樹脂、特にポリアミド樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)などの炭素数1~4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性能に優れ好ましい。また、保存性、粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用でき、好ましい効果を得られる助溶媒としては、ベンジルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0182】
〈工程(2):電荷発生層の形成〉
電荷発生層は、溶媒中に電荷発生層用バインダー樹脂を溶解させた溶液中に、電荷発生物質を分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を中間層上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0183】
電荷発生層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0184】
電荷発生層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸tert-ブチル、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、メチルセロソルブ、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0185】
〈工程(3):電荷輸送層の形成〉
電荷輸送層は、溶媒中に電荷輸送層用バインダー樹脂及び電荷輸送物質を溶解させた、電荷輸送層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を電荷発生層上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0186】
電荷輸送層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
【0187】
電荷輸送層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0188】
〈工程(4):最外層の形成〉
最外層は、前記第1の重合性モノマーと、前記第2の重合性モノマーと、有機樹脂粒子と、表面修飾剤で処理された無機フィラーと、必要に応じて重合開始剤、特定のラジカル捕捉剤、潤滑剤及び電荷輸送物質等の他の成分を公知の溶媒に添加して、最外層形成用塗布液を調製し、この最外層形成用塗布液を工程(3)により形成された電荷輸送層の外周面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥し、紫外線や電子線などの活性線を照射することによって塗膜中の重合性化合物成分を重合させ、硬化されることにより最外層を形成することができる。
【0189】
最外層形成用塗布液は、円形スライドホッパー塗布装置を用いてスライドホッパー法にて塗布することが好ましく、例えば、特開2015-114454号公報など開示されている方法で塗布することができる。
【0190】
最外層の形成に用いられる溶媒としては、重合性化合物、金属酸化物粒子等を溶解又は分散させることができればいずれのものも使用でき、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0191】
重合性化合物を反応させる方法としては、特に制限されないが、例えば、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤を添加して、光、熱で反応する方法等が挙げられる。
【0192】
硬化樹脂成分は、硬化処理として塗膜に活性線を照射し、ラジカルを発生させて重合し、かつ分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化することにより、生成される。活性線としては紫外線や電子線がより好ましく、紫外線が使用しやすく特に好ましい。
【0193】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノンなどを用いることができる。
【0194】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、好ましくは5~500mJ/cm2の範囲内、より好ましくは5~100mJ/cm2の範囲内である。
【0195】
ランプの電力は、好ましくは0.1~5kWの範囲内であり、より好ましくは0.5~4kWの範囲内であり、さらに好ましくは0.5~3kWの範囲内である。
【0196】
必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒間~10分間が好ましく、作業効率の観点から0.1秒間~5分間がより好ましい。
【0197】
最外層の形成の工程においては、活性線を照射する前後、及び活性線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
【0198】
(最外層の硬化装置及び条件)
本発明では、最外層塗布後の光照射条件により、感光体の長軸方向における表面硬度を調製することができる。
【0199】
光照射装置によって、感光体の表面硬度が変えられる理由として、表面硬度は、感光体に照射する光の積算照射光量と相関があり、積算照射光量は、(積算照射光量)=(感光体ドラム面の単位面積当たりの照射光量)×(単位面積当たりの照射時間)で決定されるため、(i)照射光量又は(ii)照射時間を変えることで、感光体の表面硬度を変えることができる。
【0200】
例として、特開2013-57787号公報で記載されている光照射装置を用いた場合、感光体ワークを下方から上方へ引き上げる際に、任意の位置で(i)光の照射強度を変える、又は(ii)ワークの引き上げ速度を変える、すなわち、照射時間を変えることにより、感光体の長軸方向で感光体ドラム面の積算照射光量を変えることができ、感光体の表面硬度を変えることができる。特に、(ii)のワーク引き上げ速度を変える手段の方が、制御性の観点から好ましい。
【0201】
<電子写真画像形成方法>
本発明に係る電子写真画像形成方法は、少なくとも、
1)電子写真感光体の表面を帯電する帯電工程と、
2)当該電子写真感光体の表面を露光することにより、静電潜像を形成する露光工程と、
3)当該静電潜像をトナーにより顕像化しトナー画像を形成する現像工程と、
4)当該トナー画像を転写媒体に転写する転写工程と、
を有し、1)~4)で使用する電子写真感光体が本発明の電子写真感光体であることが好ましい。
【0202】
また、必要に応じて
5)残存トナーを除去するクリーニング工程と、
6)残存電荷を除去する除電工程を、
有していてもよい。
【0203】
本発明の電子写真感光体(以下、単に感光体ともいう。)は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
【0204】
本発明に係る電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明の感光体を使用して、感光体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光(露光工程)することにより形成された静電潜像を、現像装置を用いて現像(現像工程)することにより顕像化させてトナー画像を得る。このトナー画像をコピー用紙又は転写ベルト等の転写媒体上に転写(転写工程)し、その後、除電工程を経て、次の画像形成のサイクルが行われる。転写ベルト等の転写媒体上に転写されたトナー画像は、コピー用紙上に転写され、コピー用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式等の定着処理によってコピー用紙に定着(定着工程)させることにより、可視画像を得る。転写工程の後、感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、ゴムブレード等により除去(クリーニング工程)される。このクリーニング工程は、除電工程の前でも後であってもよいが、除電工程が光照射による除電の場合は、クリーニング工程の後の方が、感光体上に残留するトナーが除電光の吸収を妨げることがないので、効果的に除電が行えるので好ましい。
【0205】
除電工程においては、交流除電(AC除電)又は光除電のどちらでもよいが、交流除電では、交流電源の設置が必要になり、スペースの問題、又は装置が大がかりになるなどの問題があり、光除電の方が好ましい。
【0206】
<電子写真画像形成装置>
次いで、具体的な電子写真画像形成方法について、電子写真画像形成装置を用いて説明する。
【0207】
本発明において、電子写真画像形成装置は、本発明の感光体を使用して、感光体上に帯電装置にて帯電する帯電手段、像露光することにより形成された静電潜像を形成する露光手段、現像装置を用いて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る現像手段、このトナー画像を用紙又は転写ベルト等の転写媒体上に転写する転写手段、及び除電手段を有している。コピー用紙上に直接転写されたトナー画像及び転写ベルト等の転写媒体を経て用紙上に転写されたトナー画像は接触加熱方式等の定着処理によってコピー用紙に定着する定着手段により可視画像を得る。転写の後、感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニングブレード等のクリーニング手段によりにより除去される。
【0208】
図2は、本発明の電子写真感光体を備えるタンデム型の電子写真画像形成装置の構造を示す断面模式図である。
【0209】
図2に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とからなる。電子写真画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0210】
4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk、及び感光体1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0211】
なお、本発明の電子写真画像形成装置は、感光体1Y、1M、1C、1Bkとして、各々上記説明した本発明の感光体を用いる。
【0212】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、備えるトナーの色がそれぞれイエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(Bk)色というように異なることを除き同じ構成である。よって、以下では、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0213】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを有し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。
【0214】
帯電手段2Yは、感光体1Yの表面を一様に負極性に帯電させる手段である。帯電手段2Yとしては、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0215】
露光手段3Yは、帯電手段2Yにより一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又は、レーザー光学系などが用いられる。
【0216】
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ(図示せず)及び感光体と、この現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0217】
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ、及び当該現像スリーブと感光体との間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0218】
定着手段24は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0219】
クリーニング手段6Yは、クリーニングブレードより構成されている。なお、このクリーニングブレードより上流側にブラシローラーを設けてもよい。
また、感光体1Yの表面に滑剤を供給する(塗布する)滑剤供給手段(図示せず)を設けてもよい。滑剤供給手段は、例えば、一次転写ローラー5Yの下流側かつクリーニング手段6Yの上流側に設けることができる。ただし、クリーニング手段6Yの下流側であってもよい。
【0220】
画像形成装置100としては、感光体と、現像手段、クリーニング手段などの構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくとも一つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
【0221】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0222】
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シートなど)Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、及びレジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材などの感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体という。
【0223】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0224】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M及び5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M及び1Cに当接する。
【0225】
二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0226】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0227】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C及び10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とからなる。
【0228】
画像形成部10Y、10M、10C及び10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C及び1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bk、並びにクリーニング手段6bとからなる。
【0229】
<トナー及び現像剤>
本発明において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むものであり、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0230】
本発明において、画像形成装置に適用するトナーとしては、特に制限されず、公知の各種トナーを用いることができる。
【0231】
トナーとしては、粉砕トナー及び重合トナーのいずれを用いることもできるが、高い画質の画像が得られる観点から、重合トナーを用いることが好ましい。
【0232】
トナーの平均粒径は、特に制限されないが、体積基準のメジアン径で2~8μmの範囲内であることが好ましい。この範囲とすることにより、解像度をより高くすることができる。
【0233】
また、トナー母体粒子には、外添剤として、平均粒径10~300nm程度のシリカ及びチタニアなどの無機粒子、0.2~3μm程度の研磨剤等を適宜量、外添剤として外部添加することができる。
【0234】
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウム及び鉛などの合金、フェライト及びマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。これらの中でも、特にフェライトが好ましい。
【0235】
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、又は樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、シクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体などを用いることが好ましい。
【0236】
キャリアの体積基準のメジアン径は15~100μmの範囲内が好ましく、25~60μmの範囲内がより好ましい。
【0237】
二成分現像剤に含まれるトナーの濃度は、4.0~8.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【実施例】
【0238】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0239】
[有機樹脂粒子1~8及び10と有機樹脂粒子9の作製]
【0240】
表Iに略称で記載した有機樹脂粒子1~10の詳細は以下の通りである。
〈有機樹脂粒子1〉S6:エポスター S6(メラミン樹脂粒子、日本触媒社製)
〈有機樹脂粒子2〉FS201:ファインスフェア FS201
(アクリル樹脂粒子、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)
〈有機樹脂粒子3〉X99-A8808:トスパール X99-A8808
(シリコーン樹脂粒子、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
〈有機樹脂粒子4〉SS:エポスター SS(メラミン樹脂粒子、日本触媒社製)
〈有機樹脂粒子5〉S :エポスター S (メラミン樹脂粒子、日本触媒社製)
〈有機樹脂粒子6〉M30:エポスター M30(メラミン樹脂粒子、日本触媒社製)
〈有機樹脂粒子7〉2000M:オプトビーズ 2000M
(メラミン樹脂粒子、日産化学社製)
〈有機樹脂粒子8〉S12:エポスター S12(メラミン樹脂粒子、日本触媒社製)
〈有機樹脂粒子9〉RP-1:下記作製方法で作製した。
〈有機樹脂粒子10〉3500M:オプトビーズ 3500M
(メラミン樹脂粒子、日産化学社製)
【0241】
〔有機樹脂粒子9(RP-1)の作製〕
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lの反応フラスコに、メラミン45g、37%ホルマリン100g、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名:スノーテックスS)27g、水720gを仕込み、25%アンモニア水にてpHを8.5に調整した。
その後、上記混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させた。
次いで温度を70℃を維持したまま、ドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加してpHを7.0に調整した。
反応系内が白濁して硬化メラミン樹脂粒子が析出した後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。
冷却後、得られた反応液を濾過、乾燥して粒径0.05μmの有機樹脂粒子9(RP-1)を作製した。
【表1】
【0242】
<有機樹脂粒子分散液PD-1~PD-10の調製>
〔有機樹脂粒子分散液PD-1の調製〕
下記構成成分を超音波ホモジナイサー(US-150AT、日本精機製作所社製)を用いて、振幅を30μmに設定し120分間分散させた。
【0243】
有機樹脂粒子1:エポスターS6 150質量部
2-ブタノール 850質量部
【0244】
〔有機樹脂粒子分散液PD-2~PD-10の調製〕
上記有機樹脂微粒子分散液PD-1の調製において、使用する有機樹脂粒子を表Iのように変更した以外は同様にして、有機樹脂粒子分散液PD-2~PD-10を調製した。
【0245】
[無機フィラーF-1~F-3の作製]
〔無機フィラーF-1の作製〕
メタノール40mLに、母体としての酸化スズ(数平均一次粒径:20nm)20gを加え、超音波ホモジナイサーを用いて120分間分散させた。
次いで、重合性基を有する反応性有機基含有表面修飾剤として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM503)1g及びトルエン40mLを加え、室温で2時間撹拌した。
次いで、エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、反応性有機基含有表面修飾剤(KBM503)により表面修飾処理が施された、重合性基を有する無機フィラーF-1を作製した。
【0246】
〔無機フィラーF-2の作製〕
上記無機フィラーF-1の作製において、無機フィラー母体を、酸化チタン(数平均一次粒径:100nm)に変更した以外は同様にして、無機フィラーF-2を作製した。
【0247】
〔無機フィラーF-3の作製〕
まず、
図3に記載の微粒子製造装置を用い、コア粒子として硫酸バリウムの表面に、酸化スズの外殻(シェル)を形成して構成される複合粒子を調製した。
【0248】
具体的には、
図3に示す母液槽11中に純水3500mLを投入し、次に数平均一次粒径が100nmである球状の硫酸バリウム芯材の900gを投入して、5サイクル循環させた。
【0249】
母液槽11から流出するスラリーの流速は2280mL/minであった。また、強分散装置13の撹拌速度を16000rpmとした。
【0250】
循環完了後のスラリーを純水で全量9000mLにメスアップし、そこに1600gのスズ酸ナトリウム及び2.3mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度25N)を投入して5サイクル循環させて、母液を調製した。
【0251】
次いで、この母液を、母液槽11から流出する流速S1が200mL/minとなるように循環させながら、強分散装置13としての「ホモジナイザー magic LAB」(IKAジャパン株式会社製)に20質量%の硫酸を供給した。
【0252】
供給速度S3を9.2mL/minとした。ホモジナイザーの容積は20cm3、撹拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザーに供給した。
【0253】
このようにして、硫酸バリウム芯材の表面に酸化スズの被覆層(シェル層)が形成されたコア・シェル型粒子を得た。
【0254】
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。
【0255】
このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。得られた乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で、450℃において45分間の還元焼成を行った。
【0256】
これによって、硫酸バリウム芯材の表面に酸化スズの外殻(シェル層)が形成されてなる、数平均一次粒径が100nmである複合粒子を作製した。
【0257】
ここで、
図3に示す微粒子製造装置において、符号12及び14は、母液槽11と強分散装置13との間に循環路を形成するための循環配管であり、符号15及び16は、循環配管12及び14の経路に設けられたポンプ、符号11aは撹拌翼、符号13aは撹拌部、符号11b及び13bはシャフト、符号11c及び13cはモーターを示す。
次いで、上記無機フィラーF-1の作製において、無機フィラー母体を、上記で作製した複合粒子に変更した以外は同様にして、無機フィラーF-3を作製した。
【0258】
<無機フィラー分散液FD-1~FD-3の調製>
〔無機フィラー分散液FD-1の調製〕
下記構成成分を超音波ホモジナイサー(US-150AT、日本精機製作所社製)を用いて、振幅を30μmに設定し120分間分散させた。
【0259】
無機フィラーF-1 200質量部
2-ブタノール 800質量部
【0260】
〔無機フィラー分散液FD-2及びFD-3の調製〕
上記無機フィラー分散液FD-1の調製において、使用する無機フィラーをF-2及びF-3に変更した以外は同様にして、無機フィラー分散液FD-2及びFD-3を調製した。
【0261】
<感光体1~24の作製>
〔感光体1の作製〕
(1)導電性支持体の準備
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
【0262】
(2)中間層の作製
下記構成成分を混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を調製した。調製した中間層形成用塗布液を浸漬塗布法によって、上記作製した導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚が2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
【0263】
ポリアミド樹脂:X1010 ダイセル・エボニック社製 100質量部
酸化チタン粒子:SMT500SAS テイカ社製 110質量部
酸化チタン粒子:SMT150MK テイカ社製 160質量部
エタノール 2000質量部
【0264】
(3)電荷発生層の形成
下記構成成分を混合し、循環式超音波ホモジナイザー(RUS-600TCVP;株式会社日本精機製作所製)を用いて、19.5kHz、600Wにて循環流量40L/時間で0.5時間にわたって分散することにより、電荷発生層形成用塗布液を調製した。
【0265】
上記調製した電荷発生層形成用塗布液を浸漬塗布法によって、中間層の表面に塗布し、乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0266】
なお、下記に記載の電荷発生物質は、Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニン及び(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンとの混晶を使用した。
【0267】
電荷発生物質 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂:エスレック(登録商標)BL-1 積水化学工業社製)
12質量部
混合溶媒:3-メチル-2-ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(体積比)
1000質量部
【0268】
(4)電荷輸送層の形成
下記構成成分を混合した電荷輸送層形成用塗布液を、浸漬塗布法によって電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、膜厚24μmの電荷輸送層を形成した。
【0269】
電荷輸送物質1(下記参照) 180質量部
ポリカーボネート樹脂:ユーピロンZ300(三菱ガス化学社製、ビスフェノールZ型ポリカーボネート) 300質量部
酸化防止剤:IRGANOX1010(BASF社製) 4質量部
混合溶媒:THF/トルエン=4/1(体積比) 2000質量部
シリコーンオイル「KF-96」(信越化学工業株式会社製) 1質量部
【0270】
【0271】
(5)最外層の形成
下記、第1の重合性モノマー及び第2の重合性モノマー、有機樹脂粒子分散液及び無機フィラー分散液を混合、撹拌した後、下記重合開始剤を遮光下で撹拌して溶解させ、最外層形成用塗布液を調製した。
【0272】
この最外層形成用塗布液を、電荷輸送層の表面に、円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。
【0273】
次いで、塗布した最外層塗膜に、メタルハライドランプを用いて紫外線(主波長:365nm)を1分間照射して(紫外線照度:16mW/cm2、積算光量:960mJ/cm2)、最外層塗膜を硬化させることにより、膜厚5.0μmの最外層を電荷輸送層上に形成し、感光体1を作製した。
【0274】
第1の重合性モノマー:例示化合物M2 50質量部
第2の重合性モノマー:下記に示すHD-N 50質量部
有機樹脂粒子分散液:PD-1 100質量部
無機フィラー分散液:FD-1 650質量部
重合開始剤:IRGACURE819(BASF社製) 10質量部
【0275】
〔感光体2~22の作製〕
上記感光体1の作製において、最外層の形成に用いる有機樹脂粒子分散液の種類、無機フィラー分散液の種類及び第1/第2の重合性モノマーの種類/量を表IIに記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、感光体2~22を作製した。
【表2】
【0276】
表IIに略称で記載したモノマーの詳細は以下の通りである。
【0277】
【0278】
〔感光体23の作製〕
上記感光体1の作製において、最外層の形成に用いる第1の重合性モノマーを100質量部とし、第2の重合性モノマーを添加しなかった以外は同様にして、感光体23を作製した。
【0279】
〔感光体24の作製〕
上記感光体1の作製において、最外層の形成に用いる第1の重合性モノマーを例示化合物M1に変更し、第2の重合性モノマーの代わりに第3の重合性モノマーとして単官能モノマーMM-1を用いた以外は同様にして、感光体24を作製した。
【0280】
〔感光体25の作製〕
上記感光体1の作製において、最外層の形成に用いる第1の重合性モノマーを42質量部に変更し、第3の重合性モノマーとして単官能モノマーMM-1を8質量部加えた以外は同様にして、感光体25を作製した。
【0281】
〔感光体26の作製〕
上記感光体1の作製において、最外層の形成に用いる第1の重合性モノマーを35質量部に変更し、第3の重合性モノマーとして二官能モノマーSR206を15質量部加えた以外は同様にして、感光体26を作製した。なお、感光体26は、二官能モノマーである第2の重合性モノマー及び第3の重合性モノマーの合計が全モノマー質量に対して65%である。
【0282】
〔感光体27の作製〕
上記感光体26の作製において、最外層の形成に用いる第1の重合性モノマーを65質量部に変更し、第2の重合性モノマーを20質量部に変更した以外は同様にして、感光体27を作製した。なお、感光体27は、二官能モノマーである第2の重合性モノマー及び第3の重合性モノマーの合計が全モノマー質量に対して35%である。
【0283】
〔感光体28の作製〕
上記感光体1の作製において、下記電荷輸送物質2を25質量部添加した以外は同様にして、感光体28を作製した。
【0284】
【0285】
(反応率の測定)
感光体1~28に使用した最外層形成用塗布液を用いて、以下に示す方法で反応率を測定した。表IIに測定した値を示す。
【0286】
〈反応率の測定方法〉
最外層の塗布液をワイヤーバーにより、PETシート上に塗布したものを2枚用意する。1枚は遮光をして重合反応が起こらないようにする(反応前サンプル)。もう1枚には紫外線を照射して硬化させる(反応後サンプル)。反応前後のサンプルのFT-IRスペクトルを測定し、スペクトルの変化から反応率を算出した。
上記における各条件は以下の通りである。
【0287】
≪硬化条件≫
窒素雰囲気下で、表面層を塗布したPETシートにメタルハライドランプを用いて紫外線(主波長:365nm)を1分間照射して(紫外線照度:16mW/cm2、積算光量:960mJ/cm2)、硬化させた。
【0288】
≪測定条件≫
フーリエ変換赤外分光装置(FT-IR;NICOLET380、Thermo Fisher Scientific社製)を使用して、全反射法(ATR法)で得られたスペクトルのピーク強度比より求めることができる。
その際のピーク例を
図4に示す。
ATR測定は、ダイヤモンドプリズムを用い、分解能4cm
-1、積算回数32回の条件で行った。
【0289】
≪解析条件≫
反応前後で構造の変化がないC-H(脂肪族)由来である2955cm-1付近のピークと、反応により数が少なくなるC-H(アルケン)由来である1405cm-1付近のピークの強度を用いて、下記式より反応率[%]を算出した。
【0290】
式:100-({硬化後 Abs(1405cm-1)/Abs(2955cm-1)}/{硬化前 Abs(1405cm-1)/Abs(2955cm-1)})×100
【0291】
1405cm-1のピーク高さ(Abs(1405cm-1))は、1390cm-1から1400cm-1の最小値と、1410cm-1と1430cm-1の最小値をベースポイントとした際の、1400cm-1から1410cm-1の最大値と定義する。
【0292】
2955cm-1のピーク高さ(Abs(2955cm-1))は、2560cm-1から2590cm-1の最小値と、3135cm-1と3165cm-1の最小値をベースポイントとした際の、2945cm-1から2965cm-1の最大値と定義する。
【0293】
<感光体の評価>
(点欠陥)
〔画像形成装置の準備〕
フルカラー印刷機(bizhub PRESS C1070、コニカミノルタ社製)を線速200mm/secに改造した画像形成装置を用いて、上記作製した各感光体を、画像形成ユニットのブラック(K)の位置に配置して、評価用の画像形成装置を作製した。
【0294】
また、下記の方法に従って、印刷初期と、耐久試験後の形成画像について、点欠陥の評価を行った。
図2は、本発明の電子写真感光体を備えるタンデム型の電子写真画像形成装置の全体構成の一例を示す模式図である。
【0295】
(1)印刷初期の点欠陥評価用の印刷物の作製
印刷初期の点欠陥の評価は、30℃、85%RH環境下で、転写材:「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2)」(王子製紙社製)上に、グリッド電圧-800V、現像バイアス-700Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成し、印刷初期の点欠陥評価用の印刷物を作製した。
【0296】
(2)耐久試験後の点欠陥評価用の印刷物の作製
耐久試験は、23℃、50%RH環境下で、
図5に示すカバレッジ10%の縦帯状ベタ画像からなるテスト画像をA4横送りにおいて50万枚連続印刷した。
【0297】
次いで、上記初期印刷の評価方法と同様にして、30℃、85%RH環境下で、転写材:「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2)」(王子製紙社製)上に、グリッド電圧-800V、現像バイアス-700Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成し、耐久試験後の点欠陥評価用の印刷物を作製した。
【0298】
(3)点欠陥の評価方法
上記により作成した各評価用の印刷物について、転写材上の10cm×10cmの範囲における直径0.1mm以上の黒点発生数をカウントし、以下の評価基準によりランク付けを行った。ここでは評価ランクとして、ランクA~Cを合格とし、ランクD~Eを不合格とした。
【0299】
(4)点欠陥の評価基準
A:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が観測されない。(合格)
B:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が1~3個。 (合格)
C:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が4~9個。 (合格)
D:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が10~49個。(不合格)
E:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が50個以上。 (不合格)
【0300】
(クリーニング性の評価)
〔画像形成装置の準備〕
フルカラー印刷機(bizhub PRESS C1070、コニカミノルタ社製)を線速が500mm/sec、滑剤押圧力が半分になるように改造した画像形成装置を用いて、上記作製した各感光体を、画像形成ユニットのシアン(C)の位置に配置して、評価用の画像形成装置を作製した。
【0301】
また、下記の方法に従って、印刷初期と、耐久試験後について、クリーニング性の評価を行った。
(1)印刷初期のクリーニング性評価のための印刷物の作製と確認方法
印刷初期のクリーニング性の評価は、10℃、20%RH環境下で、
図6に示すカバレッジ40%の横帯状ベタ画像からなるテスト画像をA4横送りにおいて2万枚連続印刷した。
【0302】
なお、この画像の一番上と一番下の印字部(帯部)は感光体の回転軸方向に垂直な方向(周方向)ではカバレッジが100%となり、中央の2本の印字部(帯部)は感光体の回転軸方向に垂直な方向(周方向)ではカバレッジが50%となる。その後、ユニットから感光体を外し、滑剤塗布ブラシの汚染を目視で確認した。
【0303】
(2)耐久試験後のクリーニング性評価のための印刷物の作製と確認方法
耐久試験は、23℃、50%RH環境下で、
図5に示すカバレッジ10%の縦帯状ベタ画像からなるテスト画像をA4横送りにおいて50万枚連続印刷した。
【0304】
次いで、上記初期印刷の評価方法と同様にして、10℃、20%RH環境下で、
図6で示すカバレッジ40%の横帯状ベタ画像からなるテスト画像をA4横送りにおいて2万枚印刷した後、ユニットから感光体を外し、滑剤塗布ブラシの汚染を目視で確認した。
【0305】
(3)クリーニング性の評価方法
上記の評価後の滑剤塗布ブラシについて、以下の評価基準によりランク付けを行った。ここでは評価ランクとして、ランクA~Cを合格とし、ランクD~Eを不合格とした。
【0306】
(4)クリーニング性の評価基準
A:滑剤塗布ブラシの汚染はなく良好。(合格)
B:周方向のカバレッジ100%に当たる画像に対応する領域のみ滑剤塗布ブラシに白色の汚染が認められるが、実用上問題なし。(合格)
C:周方向のカバレッジ100%に当たる画像に対応する領域に加え、50%に当たる領域にも滑剤塗布ブラシに白色の汚染が認められるが、実用上問題なし。(合格)
D:周方向のカバレッジ100%に当たる画像に対応する領域のみ滑剤塗布ブラシにトナーによる汚染が認められ、実用上問題がある。(不合格)
E:周方向のカバレッジ100%に当たる画像に対応する領域に加え、50%に当たる領域にも滑剤塗布ブラシにトナーによる汚染が認められ、実用上問題がある。(不合格)
【0307】
(耐傷性の評価)
〔画像形成装置の準備〕
フルカラー印刷機(bizhub PRESS C1070、コニカミノルタ社製)を線速500mm/secに改造した画像形成装置を用いて、上記作製した各感光体を、画像形成ユニットのブラック(K)の位置に配置して、評価用の画像形成装置を作製した。
【0308】
(1)耐久試験後の耐傷性評価のための印刷物の作製と確認方法
耐久試験として、23℃、50%RH環境下で、
図5に示すカバレッジ10%の縦帯状ベタ画像からなるテスト画像をA4横送りにおいて50万枚連続印刷した。
【0309】
次いで、23℃、50%RH環境下で、
図7に示すカバレッジ25%の横帯状ベタ画像からなるテスト画像をA4横送りにおいて20万枚連続印刷した。なお、この画像の印字部は感光体の回転軸方向に垂直な方向(周方向)ではカバレッジが100%となる。
【0310】
次いで、23℃、50%RH環境下で、感光体の表面状態を目視観察するとともに、耐久試験後の感光体を用いて、A3サイズの転写材:「PODグロスコート(100g/m2)」(王子製紙社製)の全面にハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)を印字した。
耐久試験後の画像不良の有無を目視で確認した。
【0311】
(2)耐傷性の評価方法
上記の評価後の感光体表面について、以下の基準によりランク付を行った。ここでは評価ランクとして、ランクA~Cを合格とし、ランクDを不合格とした。
【0312】
(3)耐傷性の評価基準
A:感光体表面に目視でみられる傷の発生はなく、出力したハーフトーン画像にも感光体の傷に対応する画像不良の発生は認められず、良好な品質である。
B:感光体表面に目視で軽微な傷の発生が1~3か所認められるが、出力したハーフトーン画像には感光体傷に対応する画像不良の発生は見あたらず、実用上問題はない。
C:感光体表面に目視で軽微な傷の発生が4~6か所認められるが、出力したハーフトーン画像には感光体傷に対応する画像不良の発生は見あたらず、実用上問題はない。
D:感光体表面に目視で明らかな傷の発生が認められ、出力したハーフトーン画像にも感光体の傷に対応する画像不良の発生が認められ、実用上問題がある
【0313】
表IIIの通り本発明は長期にわたり、良好なクリーニング性の維持及び、点欠陥の抑制でき、かつ、耐傷性も良好である。
【0314】
【符号の説明】
【0315】
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
5Y、5M、5C、5Bk 一次転写ローラー
5b 二次転写ローラー
6Y、6M、6C、6Bk、6b クリーニング手段
7 中間転写体ユニット
8 筐体
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
20 給紙カセット
21 給紙手段
22A、22B、22C、22D 中間ローラー
23 レジストローラー
24 定着手段
25 排紙ローラー
26 排紙トレイ
70 中間転写体
71、72、73、74 ローラー
77 中間転写体
82L、82R 支持レール
100 画像形成装置
A 本体
SC 原稿画像読み取り装置
P 転写材
101A、101B 電子写真感光体
102 導電性支持体
103 中間層
104 感光層
105 最外層
106 電荷発生層
107 電荷輸送層
10 導電性粒子の製造装置
11 母液槽
11a 撹拌翼
11b 第1シャフト
11c 第1モーター
12 第1配管
13 強分散装置
13a 撹拌部
13b 第2シャフト
13c 第2モーター
14 第2配管
15 第1ポンプ
16 第2ポンプ