(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ストレージ制御装置、ストレージシステムおよびストレージ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/06 20060101AFI20231219BHJP
G06F 13/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G06F3/06 301Z
G06F3/06 301W
G06F3/06 304F
G06F13/10 340A
G06F3/06 304N
(21)【出願番号】P 2020073356
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100189201
【氏名又は名称】横田 功
(72)【発明者】
【氏名】林 光一
(72)【発明者】
【氏名】松村 振一郎
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-054416(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157103(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/06-3/08
G06F11/16-11/20
G06F12/00-12/06
G06F13/10-13/18
G06F13/38-13/42
G06F16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボリュームを管理するボリューム管理部と、
前記複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御するコピー制御部と、
前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行なう重複排除処理部と、
前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶する記憶部と、
前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合
であって、前記管理情報によって示される前記使用状況が前記第2のポストプロセス域にデータが格納されていない状況である場合に、前記ライトデータを前
記第2のポストプロセス域に格納するポストプロセス域管理部と
を備えることを特徴とする、ストレージ制御装置。
【請求項2】
前記ライトデータを前記第2のポストプロセス域に格納した場合に、前記ライト要求に関する完了通知を出力する完了通知部
を備えることを特徴とする、請求項1記載のストレージ制御装置。
【請求項3】
前記コピー制御部による前記第1のボリュームから前記第2のボリュームへのデータのコピーが完了した後に、前記第2のポストプロセス域に格納された前記ライトデータを前記第1のボリュームの前記ライト要求の対象領域に格納するライト要求処理部
を備えることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のストレージ制御装置。
【請求項4】
記憶装置と、上位装置と通信可能に接続される通信部と、前記記憶装置を制御するストレージ制御装置とを備えるストレージシステムにおいて、
複数のボリュームを管理するボリューム管理部と、
前記複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御するコピー制御部と、
前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行なう重複排除処理部と、
前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶する記憶部と、
前記上位装置から前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合
であって、前記管理情報によって示される前記使用状況が前記第2のポストプロセス域にデータが格納されていない状況である場合に、前記ライトデータを前
記第2のポストプロセス域に格納するポストプロセス域管理部と
を備えることを特徴とする、ストレージシステム。
【請求項5】
ストレージ制御装置のプロセッサに、
複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御し、
前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行ない、
前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶部に記憶させ、
前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合
であって、前記管理情報によって示される前記使用状況が前記第2のポストプロセス域にデータが格納されていない状況である場合に、前記ライトデータを前
記第2のポストプロセス域に格納する
処理を実行させる、ストレージ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ制御装置、ストレージシステムおよびストレージ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレージ装置において、データの重複排除を行なうことが知られている。また、重複排除手法として、ポストプロセス方式が用いられる場合がある。
【0003】
ポストプロセス方式のストレージシステムにおいては、ストレージ装置は、ライトのI/O(Input / Output)要求を受信した場合に、受け付けたライトデータを重複排除せずにそのまま記憶装置のポストプロセス領域に書き込み、その後、I/Oとは非同期に重複排除を行なう。すなわち、ポストプロセス方式においては、ストレージ装置に全てのデータを保存した後、このストレージ装置内で重複排除が行なわれる。
【0004】
また、ストレージ装置において、複数のLUN(Logical Unit Number)を管理し、一のLUNから、他のLUNへデータをコピーするコピーセッションを実行する場合がある。LUNは、例えば、ブロック仮想化技術を用いて作成される。
【0005】
図9~
図12は、それぞれポストプロセス方式の重複排除が有効な従来のストレージシステムにおいて、ホストからのライトのI/O要求が発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
以下に示す例においては、LUN#1とLUN#2とを備えるストレージ装置に対して図示しないホストからデータのライトを行なう場合について示す。
【0006】
LUN#1,#2は、それぞれ所定サイズ(例えば8KB)単位の複数の単位領域に区分されて管理される。
図9~
図12中において、正方形ブロックはそれぞれ8KBサイズ単位の記憶領域を示す。LUN#1,#2は、例えば、8KB単位でスワップ可能である。
【0007】
図9~
図12において図示をしていないが、先に、ホストが、LUN#1に対し、データAを領域A2に、データDを領域A4に書き込み指示を行なったものとする。これらのライトデータA,Dは、LUN#1にライトされる前に、一旦、ポストプロセス域の領域B2,B4にそれぞれ書き込まれる。ポストプロセス域は、LUN#1,#2の各記憶領域に対して備えられる。ポストプロセス域は、例えば、シンプロビジョニングにより形成されスワップ不可であるものとする。また、ポストプロセス域は、例えば、21MB単位で割り当てられる。
【0008】
ポストプロセス域のデータA,Dに対して重複排除処理が行なわれ、重複排除後のデータA,Dが、LUN#1の領域A2,A4にそれぞれ書き込まれる(
図9の符号P1,2参照)。
【0009】
その後、ホストが、LUN#1に対して、データBを領域A2に、データCを領域A3に書き込み指示を行なったものとする。データB,Cは、LUN#1の領域A2,A3に対応する、ポストプロセス域の領域B2,B3に、それぞれ書き込まれる(
図9の符号P3,P4参照)。
この時点で、LUN#1からLUN#2に対してのコピーセッションが張られたものとする。
【0010】
LUN間のコピーはコピービットマップを用いて管理される。コピービットマップは、例えば、コピー元ボリュームの単位領域毎に、当該単位領域に格納されているデータがコピー先ボリュームに転送(コピー)されたか否かを表す情報を対応付けることにより作成される。コピービットマップにおいて、例えば、未コピーの単位領域にはONが、コピー済みの単位領域にはOFFが、それぞれ設定される。そして、LUN#1からLUN#2に対してコピーセッションが張られることで、コピービットマップの各単位領域にONが設定される(
図9の符号P5参照)。
【0011】
なお、この状態においては、ホストからは、LUN#1の領域A2,A3,A4に、データB,C,Dがそれぞれライトされているように見える(
図9の符号P6参照)。コピーセッションに基づき、LUN#2の領域A6,A7,A8に、データB,C,Dをそれぞれライトするコピーが開始される。
【0012】
その後、さらに、ホストがLUN#1に対し、領域A1,A2,A3,A4へ、データE,F,G,Hのライト指示を行なったものとする(
図10の符号P7参照)。
【0013】
ここで、ポストプロセス域において、領域B1,B4はデータ未格納の状態であるので、データE,Hは、これらのポストプロセス域の領域B1,B4にライトできる(
図10の符号P8,P9参照)。これに対して、ポストプロセス域の領域B2,B3にはデータB,Cがそれぞれ格納されているので、データF,Gを格納することができない(
図10の符号P10,P11参照)。また、LUN#1において、領域A4に格納されているデータDは、LUN#2へのコピーが未だ行なわれていない(未コピー)状態であるので、LUN#1からLUN#2へのデータDのコピーを先に処理する必要がある(
図10の符号P12参照)。
【0014】
ホストからコピー元LUN#1にデータF,Gのライト指示を受けているので、データB,Cが、コピー先LUN#2の領域A6,A7にライトされる(
図11の符号P13,P14参照)。また、LUN#1の領域A4のデータDが、LUN#2の領域A8にコピーされる(
図11の符号P15参照)。
ポストプロセス域の領域B1~B4に、ライトデータE~Hが格納され(
図11の符号P16参照)、ホストにデータE~Hのライト完了が応答される。
【0015】
その後、ポストプロセス域のデータE~Hに対して重複排除処理が行なわれ、重複排除後のデータE~Hが、LUN#1の領域A1~A4にそれぞれ書き込まれる(
図12の符号P17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2012-3621号公報
【文献】特開2014-96072号公報
【文献】特開2017-83933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような従来のストレージ装置においては、コピー元LUN#1からコピー先LUN#2へのデータのコピーが完了していないと、ポストプロセス域のデータをコピー元LUN#1に書き込むことができない。また、ポストプロセス域が空かないと、ホストからコピー元LUN#1に対して発行されたライト要求のデータを処理することができない。
【0018】
すなわち、ストレージ装置において、ホストへ応答する前に、ポストプロセス域に残っているデータに重複排除処理を実施したうえで記憶装置に書き込む処理や、LUN間のコピーセッションを完了させる必要がある。これにより、ホストへの応答が遅れ、レスポンス性能が低下するという課題がある。
【0019】
1つの側面では、本発明は、ボリューム間のコピーが設定された状態において上位装置から発行されるライト要求に対するレスポンス性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このため、このストレージ制御装置は、複数のボリュームを管理するボリューム管理部と、前記複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御するコピー制御部と、前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行なう重複排除処理部と、前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶する記憶部と、前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合であって、前記管理情報によって示される前記使用状況が前記第2のポストプロセス域にデータが格納されていない状況である場合に、前記ライトデータを前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域に格納するポストプロセス域管理部とを備える。
【発明の効果】
【0021】
一実施形態によれば、ボリューム間のコピーが設定された状態において上位装置から発行されるライトデータのライト要求に対するレスポンス性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の一例としてのストレージシステムのハードウェア構成を示す図である。
【
図2】実施形態の一例としてのストレージシステムに備えられたストレージ装置の機能構成を例示する図である。
【
図3】実施形態の一例としてのストレージシステムにおいてホスト装置からのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図4】実施形態の一例としてのストレージシステムにおいてホスト装置からのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図5】実施形態の一例としてのストレージシステムにおいてホスト装置からのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図6】実施形態の一例としてのストレージシステムにおいてホスト装置からのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図7】実施形態の一例としてのストレージシステムにおいてホスト装置からのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図8】実施形態の一例としてのストレージシステムにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】従来のストレージシステムにおいてホストからのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図10】従来のストレージシステムにおいてホストからのライトI/Oが発行された場合の処理を説明するための図である。
【
図11】従来のストレージシステムにおいてホストからのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【
図12】従来のストレージシステムにおいてホストからのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本ストレージ制御装置、ストレージシステムおよびストレージ制御プログラムに係る実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0024】
(A)構成
図1は実施形態の一例としてのストレージシステム1のハードウェア構成を示す図である。また、
図2は本ストレージシステム1に備えられたストレージ装置10の機能構成を例示する図である。
【0025】
実施形態の一例としてのストレージシステム1は、
図1に示すように、ストレージ装置10とホスト装置5とを備える。
ストレージ装置10には、上位装置としてのホスト装置5が接続されている。
【0026】
ホスト装置5は、情報処理装置であり、例えば、図示しない、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリや、CPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータである。また、ホスト装置5は、図示しないアダプタを備え、このアダプタがストレージ装置10に備えられたCA(Channel Adapter)4と通信回線を介して接続される。
【0027】
ホスト装置5は、ストレージ装置10が提供する記憶領域(ボリューム)にデータのライトやリードを行なう。例えば、ホスト装置5はストレージ装置10が管理するLUN#1やLUN#2に対してリードやライトのデータアクセス要求(I/O要求)を行なう。
ストレージ装置10は、このI/O要求に応じてLUN#1,#2に対するデータアクセスを行ない、ホスト装置5に対して応答を行なう。
【0028】
ストレージ装置10は、
図1に示すように、1つ以上(
図1に示す例では2つ)のCM(Controller Module)2-1,2-2と、複数(
図1に示す例では4つ)の記憶装置(物理ディスク)3と、複数(
図1に示す例では4つ)のCA(Channel Adapter)4とを備える。
【0029】
以下、CM2-1をCM#1という場合があり、CM2-2をCM#2という場合がある。また、以下、CM2-1,2-2を特に区別しない場合にはCM2と表記する。
【0030】
[CA]
CA4は、ホスト装置5と通信可能に接続するインタフェースコントローラであり、ホスト装置5のアダプタ(図示省略)と通信回線を介して接続される。CA4は、例えば、ネットワークアダプタやファイバチャネルアダプタである。
【0031】
CA4は、ホスト装置5から送信されたデータを受信して、図示しないバッファメモリに一旦格納した後に、このデータをCM2に受け渡したり、又、CM2から受け取ったデータをホスト装置5に送信する。
【0032】
例えば、オペレータがホスト装置5から、コピー元ボリューム(例えば、LUN#1)からコピー先ボリューム(例えば、LUN#2)へのデータコピーを指示すると、これらのCA4がデータコピーの指示を受信する。また、オペレータが、ホスト装置5からボリューム(例えば、LUN#1)に対してデータのリードやライトのI/O要求を発行すると、CA4が、これらのI/O要求を受信する。
【0033】
[記憶装置3]
記憶装置3は、ハードディスクドライブ(Hard disk drive:HDD)、SSD(Solid State Drive),ストレージクラスメモリ(Storage Class Memory:SCM)等の記憶装置であって、種々のデータを格納するものである。
【0034】
これらの記憶装置3の記憶領域(実ボリューム,実ストレージ)を用いて、後述するボリューム管理部102により生成された論理ボリューム(LUN)がホスト装置5に記憶領域として提供される。以下、論理ボリュームを単にボリュームという場合がある。
また、記憶装置3の記憶領域の一部は、後述するポストプロセス域203として用いられる。さらに、記憶装置3の記憶領域の一部は、コピービットマップ201を格納するコピービットマップ領域として用いられる。また、記憶装置3の記憶領域の一部は、後述するチェンジビットマップ202を格納するチェンジビットマップ領域として用いられる。記憶装置3は、チェンジビットマップ202を記憶する記憶部に相当する。
【0035】
[CM2]
CM2はストレージ装置10における種々の制御を行なうストレージ制御装置であり、ホスト装置5からのI/O要求に従って、記憶装置3へのアクセス制御等、各種制御を行なう。又、CM2-1,2-2は互いにほぼ同様の構成を有している。
【0036】
CM2-1,2-2は二重化されており、通常は、一方のCM2(例えば、CM2-1)がプライマリとして各種制御を行なう。しかし、このプライマリCM2-1の故障時等には、セカンダリのCM2-2がプライマリとしてCM2-1の動作を引き継ぐ。
【0037】
CM2は、CA4を介してネットワークに接続され、ホスト装置からのリード/ライト等のコマンド(I/O要求)を受け取り、DA(Device Adapter)23を介して記憶装置3の制御を行なう。
【0038】
CM2は、
図1に示すように、CPU21,メモリ22および複数(
図1に示す例では2つ)のDA23を備える。なお、本実施形態においては、ストレージ装置10に2つのCM2-1,2-2がそなえられている例を示すが、これに限定されるものではなく、1つのストレージ装置10に、1つもしくは3つ以上のCM2をそなえてもよい。
DA23は、図示しない回線を介して記憶装置3と通信可能に接続するインタフェースコントローラである。
【0039】
メモリ22は、ROMおよびRAMを含む記憶メモリである。
メモリ22のRAMは、種々のデータやプログラムを一時的に格納する。RAMにおける所定の領域には、例えば、ホスト装置5から受信したデータや、ホスト装置5に対して送信するデータが一時的に格納され、これによりRAMはキャッシュメモリやバッファメモリとしても機能する。
【0040】
さらに、RAMにおける他の所定の領域には、後述するCPU21がプログラムを実行する際に、データやプログラムが一時的に格納・展開される。
メモリ22のROMは、CPU21が実行するプログラムや種々のデータを格納する。
【0041】
CPU21は、種々の制御や演算を行なう処理装置であり、メモリ22のROM等に格納されたプログラム(ストレージ制御プログラム)を実行することにより、
図2に例示する、コピー制御部101,I/O処理部103およびボリューム管理部102としての機能を実現する。
【0042】
なお、これらのコピー制御部101,I/O処理部103およびボリューム管理部102としての機能を実現するためのプログラム(ストレージ制御プログラム)は、例えばフレキシブルディスク,CD(CD-ROM,CD-R,CD-RW等),DVD(DVD-ROM,DVD-RAM,DVD-R,DVD+R,DVD-RW,DVD+RW,HD DVD等),ブルーレイディスク,磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。そして、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し格納して用いる。また、そのプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信経路を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0043】
コピー制御部101,I/O処理部103およびボリューム管理部102としての機能を実現する際には、内部記憶装置(本実施形態ではメモリ22)に格納されたプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサ(本実施形態ではCPU21)によって実行される。このとき、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータが読み取って実行するようにしてもよい。
【0044】
――ボリューム管理部102――
ボリューム管理部102は、本ストレージシステム1におけるボリュームを管理する。ボリューム管理部102は、記憶装置3の記憶領域(物理ボリューム)を用いてLUN(論理ボリューム)を生成し、生成したLUNを管理する。LUNは、例えば、ブロック仮想化技術を用いて作成され、8KB単位でスワップ可能である。
なお、ボリューム管理部102によるLUNの生成や管理は、既知の手法により実現することができ、その具体的な説明は省略する。
【0045】
本実施形態においては、ボリューム管理部102が少なくともLUN#1およびLUN#2の2つのLUNを管理する例について示す。また、ホスト装置5は、これらのLUN#1およびLUN#2のうちのLUN#1に対してI/O要求を発行し、データアクセスを実現するものとする。ホスト装置5は、LUN#2に対してI/O要求を発行し、データアクセスを実現してもよい。また、図示しない他のホスト装置が、これらのLUN#,#2に対してデータアクセスを行なってもよい。
ボリューム管理部102が管理するボリューム(LUN)は、所定サイズ(例えば8KB)単位の複数の単位領域に区分されて管理される。
【0046】
――コピー制御部101――
コピー制御部101は、LUN間においてデータのコピーを行なう。例えば、コピー制御部101は、LUN#1のデータをLUN#2にコピーすることでLUN#1とLUN#2とでデータを同期させるコピーを行なう。そのため、コピー制御部101は、LUN#1のデータをLUN#2へコピーするコピーセッションを設定する。コピーセッションを設定することを、コピーセッションを張るという場合がある。コピーセッションは、コピーが開始された時点でのコピー元LUNのデータをコピー先LUNに転送する。
【0047】
コピー制御部に101によって設定されたコピーセッションに関して、コピー元LUN#1は第1のボリュームに相当し、コピー先LUN#2は第2のボリュームに相当する。
【0048】
LUN間におけるデータのコピーは、例えば、オペレータから入力されるコピー指示に従って実行される。コピー指示には、コピー元およびコピー先の各情報と、コピー対象のデータの情報とが含まれる。
【0049】
コピー制御部101は、これらのコピー元,コピー先,コピー対象等の情報(制御情報)を管理し、コピーを実現するためのコピーデータの転送指示の発行を行なう。
コピー制御部101は、LUN間のコピーをコピービットマップ201を用いて管理する。
【0050】
コピービットマップ201は、例えば、コピー元ボリュームを所定サイズ(例えば8KB)単位の複数の単位領域に区分し、これらの単位領域毎に、当該単位領域に格納されているデータがコピー先ボリュームに転送(コピー)されたか否かを表す情報を対応付けることにより作成される。すなわち、コピービットマップ201は、コピー元のLUN#1からコピー先のLUN#2へのコピー(同期コピー,書き込み)の進捗状況を示す進捗情報である。
【0051】
コピービットマップ201においては、例えば、コピー元のLUN#1からコピー先のLUN#2にデータのコピーが行なわれた箇所に、コピー、すなわちデータの書き込みがされたことを示す情報(例えば、“OFF”)が設定される。また、コピーが行なわれていない箇所には、コピーがされていないことを示す情報(例えば、“ON”)が設定される。
【0052】
――I/O処理部103――
I/O処理部103は、ホスト装置5から発行されるI/O要求を処理する。I/O処理部103は、
図2に示すように、重複排除処理部104およびポストプロセス域管理部105としての機能を備える。
【0053】
――重複排除処理部104――
重複排除処理部104は、ポストプロセス域203に格納されたデータに対して、ポストプロセス方式による重複排除処理を行なう。ポストプロセス方式においては、ホスト装置5から発行されたライトデータがストレージ装置10に到達した後に、このストレージ装置10において重複排除の処理が行なわれる。ポストプロセス方式においては、ホスト装置5において重複排除処理を行なわないので、重複排除処理にかかるホスト装置5の負荷を無くすことができる。また、重複排除処理を行なわずにストレージ装置10にデータを転送することでデータ転送性能に優れる利点もある。
ポストプロセス域203は、本ストレージ装置10において管理されるLUN(論理ボリューム)毎に備えられる。
【0054】
図2に示す例においては、本実施形態においては、上述したLUN#1用に備えられたポストプロセス域203-1と、LUN#2用に備えられたポストプロセス域203-2とを示す。LUN#1用に備えられたポストプロセス域203-1は、第1のボリューム(LUN#1)用に備えられた第1のポストプロセス域に相当する。また、LUN#2用に備えられたポストプロセス域203-2は、第2のボリューム(LUN#2)用に備えられた第2のポストプロセス域に相当する。
【0055】
重複排除処理部104は、ポストプロセス域203-1に格納されたデータに対して重複排除処理を行なう。重複排除処理後のデータは、LUN#1におけるライト対象領域に格納される。同様に、重複排除処理部104は、ポストプロセス域203-2に格納されたデータに対して重複排除処理を行ない、重複排除処理後のデータは、LUN#2におけるライト対象領域に格納される。
なお、重複排除処理部104は、既知の種々の手法を用いて重複排除処理を実施してよく、その説明は省略する。
【0056】
――ポストプロセス域管理部105――
ポストプロセス域管理部105は、ポストプロセス域203の管理を行なう。
上述の如く、ポストプロセス域203は、本ストレージ装置10において管理されるLUN毎に備えられる。ポストプロセス域は、例えば、シンプロビジョニングにより形成されスワップ不可であるものとする。また、ポストプロセス域は、例えば、21MB単位で割り当てられる。
【0057】
ポストプロセス域203には、本ストレージ装置10に備えられた記憶装置3の中でも特に高速アクセス可能なハードウェアを用いることが望ましい。例えば、NVMe(Non-Volatile Memory Express)プロトコルで接続される不揮発性メモリを使用したフラッシュストレージ(SSD等)をポストプロセス域203として用いてもよい。
【0058】
ポストプロセス域管理部105は、ホスト装置5から受信したライトデータをポストプロセス域203に格納する制御を行なう。例えば、ポストプロセス域管理部105は、ホスト装置5から受信したライトのI/O要求に基づき、ライト対象のLUNに対応して設けられたポストプロセス域203にライトデータを格納する。
【0059】
また、ポストプロセス域管理部105は、コピー制御部101によりLUN間のコピーセッションが設定されたコピー先ボリューム(LUN)に対応するポストプロセス域203をチェンジビットマップ202を用いて管理する。
チェンジビットマップ202は、ポストプロセス域203にデータが格納されているか、すなわち、使用中であるか否かを表す管理情報である。
【0060】
チェンジビットマップ202は、例えば、コピー先ボリュームを所定サイズ(例えば8KB)単位の複数の単位領域に区分し、これらの単位領域毎に、当該単位領域にデータが格納されているか否かを表す情報を対応付けることにより作成される。すなわち、チェンジビットマップ202は、コピーセッションが設定されている一対のボリュームのうち、コピー先ボリュームに対応して備えられたポストプロセス域203へのデータの格納状態を示す情報である。
【0061】
チェンジビットマップ202においては、例えば、コピー先LUN#2に対応するポストプロセス域203-2にデータが格納された場合に、ポストプロセス域203-2における当該格納位置に対応する箇所に、データが格納されたことを示す情報(例えば、“OFF”)が設定される。また、チェンジビットマップ202において、ポストプロセス域203-2におけるデータが格納されていない領域に対応する箇所には、データが格納されていないことを示す情報(例えば、“ON”)が設定される。
【0062】
すなわち、チェンジビットマップ202は、コピー先LUN#2(第2のボリューム)用に備えられたポストプロセス域(第2のポストプロセス域)203-2の使用状況を管理する管理情報に相当する。
【0063】
ボリューム管理部102によって生成される全てのボリュームは、コピー制御部101により設定されるコピーセッションのコピー先となり得るので、これらの全てのボリュームに対応させてチェンジビットマップ202を用意してもよい。また、コピー制御部101によりコピーセッションが作成された際に、このコピーセッションにおけるコピー先ボリュームにチェンジビットマップ202を用意してもよく、種々変形して実施することができる。
【0064】
また、ポストプロセス域管理部105は、コピー制御部101によりLUN間のコピーセッションが設定されたコピー元LUN#1において、コピーが未実施であり、且つ、対応するポストプロセス域203-1にデータが存在している領域にライトのI/O要求が発行された場合に、コピー先LUN#2のポストプロセス域203-2にライトデータを格納する制御を行なう。
【0065】
そして、I/O処理部103は、コピー先LUN#2のポストプロセス域203-2にライトデータを格納した場合に、ホスト装置5に対して、ライトのI/O要求が完了した旨を示す完了通知を出力する。すなわち、I/O処理部103は、ライトデータをポストプロセス域203-2に格納した場合に、ライト要求に関する完了通知をホスト装置5に対して出力する完了通知部に相当する。
【0066】
(B)動作
上述の如く構成された実施形態の一例としてのストレージシステム1における処理を、
図3~
図8を用いて説明する。
【0067】
図3~
図8は、それぞれ本ストレージシステム1において、ホスト装置5からのライトI/Oが発行された場合の処理の遷移を説明するための図である。
図3~
図7中において、正方形ブロックはそれぞれ8KBサイズ単位の記憶領域を示す。
【0068】
以下に示す例においては、LUN#1とLUN#2とを備えるストレージ装置10において、LUN#1に対してホスト装置5からデータのライトを指示するI/O要求が発行された例を示す。
【0069】
LUN#1,#2は、それぞれ所定サイズ(例えば8KB)単位の複数の単位領域に区分されて管理される。以下に示す例においては、LUN#1における複数の単位領域のうち領域A1~A4を図示するとともに、LUN#2における複数の単位領域のうち領域A5~A8を図示する。
【0070】
また、以下に示す例においては、ポストプロセス域203の領域B1~B8を図示する。これらの領域B1~B8のうち、領域B1~B4がLUN#1の領域A1~A4に対応するポストプロセス域203-1に相当し、領域B5~B8がLUN#2の領域A5~A8に対応するポストプロセス域203-2に相当する。
【0071】
さて、
図3~
図8に図示をしていないが、先に、ホスト装置5は、LUN#1に対し、データAを領域A2に、データDを領域A4に書き込み指示を行なったものとする。これらのライトデータA,Dは、LUN#1にライトされる前に、一旦、ポストプロセス域203-1の領域B2,B4にそれぞれ書き込まれる。
【0072】
重複排除処理部104は、ポストプロセス域203-1のデータA,Dに対して重複排除処理を行ない、重複排除後のデータA,Dが、LUN#1の領域A2,A4にそれぞれ書き込まれる(
図3の符号P1,P2参照)。
【0073】
その後、ホスト装置5が、LUN#1に対して、データBを領域A2に、データCを領域A3にライトするI/O要求を発行したものとする。ライトデータであるデータB,Cは、ポストプロセス域の領域B2,B3に、それぞれ書き込まれる(
図3の符号P3,P4参照)。
【0074】
なお、この状態においては、ホスト装置5からは、LUN#1の領域A2,A3,A4に、データB,C,Dがそれぞれライトされているように見えている(
図3の符号P5参照)。
ここで、ホスト装置5からストレージ装置10に対して、LUN#1の領域A1~A4のデータを、LUN#2の領域A5~A8にコピーするコピー命令が発行されたものとする。
【0075】
コピー制御部101は、LUN#1からLUN#2に対してスナップショット等のコピーセッションを設定する(張る)。ホスト装置5においては、
図3の符号P5に示すように、LUN#1の領域A1にはデータが未格納であり、領域A2~A4にデータB,C,Dが格納されていると認識している。従って、ホスト装置5は、領域A1にはデータが未格納であり、領域A2~A4にデータB,C,Dが格納された状態のLUN#1をLUN#2にコピーさせるコピー命令を発行する。これに従い、コピー制御部101は、コピー先LUN#2の領域A5をデータ未格納の状態とし、領域A6~A8にデータB,C,Dを格納するコピーセッションを設定する。
【0076】
コピー制御部101は、LUN#1からLUN#2へのコピーをコピービットマップ201を用いて管理する。コピー制御部101は、LUN#1からLUN#2に対してコピーセッションの設定に伴い、コピービットマップ201の各単位領域に、コピーが未実施であることを示す“ON”を設定する(
図3の符号P6参照)。
【0077】
ここで、さらに、ホスト装置5がLUN#1に対し、領域A1,A2,A3,A4へ、データE,F,G,Hのライト指示を発行したものとする(
図4の符号P7参照)。
【0078】
ポストプロセス域203-1において、領域B1,B4はデータ未格納の状態であるので、データE,Hは、これらのポストプロセス域203-1の領域B1,B4にライトできる(
図4の符号P8,P9参照)。これに対して、ポストプロセス域203-1の領域B2,B3にはデータB,Cがそれぞれ格納されているので、データF,Gを格納することができない(
図4の符号P10,P11参照)。また、LUN#1において、領域A4に格納されているデータDは、LUN#2へのコピーが未だ行なわれていない(未コピー)状態である(
図4の符号P12参照)。なお、コピー制御部101は、LUN#1の領域A2のデータAは新たに発行されたライトデータBにより上書きされるので、LUN#2へのコピーは不要であると判断する。
【0079】
ここで、チェンジビットマップ202には、ポストプロセス域203-2の領域B5~B8が未使用であることを示す“ON”が設定されている(
図4の符号P13参照)。また、コピービットマップ201には、コピー元LUN#1の領域A1~A4の各データをコピー先LUN#2の領域A5~A8へコピーするコピーセッションが未実施であることを示す“ON”が設定されている(
図4の符号P14参照)。
【0080】
ポストプロセス域管理部105は、ポストプロセス域203-1の領域B2,B3が埋まっていること、およびポストプロセス域203-1の領域B1,B4は空いているが、対応するコピー元LUN#1の領域A4のデータが未コピーであることを検知する。このような状態を検知した場合に、ポストプロセス域管理部105は、ホスト装置5から受信したライトデータをポストプロセス域203-2に格納することを決定する。
【0081】
この際、ポストプロセス域管理部105は、コピー元LUNにおけるホスト装置5から受信したライト要求の対象領域に基づき、コピーセッションにおける、コピー元LUNにおけるライトの対象領域に対応するコピー先LUNにおけるコピー先の領域を特定する。そして、ポストプロセス域管理部105は、このようにして特定したコピー先LUNの記憶領域に対応するポストプロセス域203に、ホスト装置5から受信したライトデータを格納する。
【0082】
例えば、ポストプロセス域管理部105は、コピーセッションの情報に基づき、ホスト装置5からのライト対象領域であるコピー元LUN#1の領域A1~A4の各データのコピー先であるコピー先LUN#2の領域A5~A8を特定する。そして、ポストプロセス域管理部105は、これらのコピー先LUN#2の領域A5~A8に対応するポストプロセス域203-2の領域B5~B8に、ライトデータE~Hを格納することを決定する。
【0083】
そして、ポストプロセス域管理部105は、チェンジビットマップ202における、ポストプロセス域203-2におけるライトデータの格納領域に相当する部分に対して、使用中であることを示す“OFF”を設定する(
図5の符号P15参照)。
【0084】
ポストプロセス域管理部105は、コピー元LUN#1の領域A1~A4の各データのコピー先であるコピー先LUN#2の領域A5~A8に対応するポストプロセス域203-2の領域B5~B8に、ライトデータE~Hを格納する(
図5の符号P16参照)。
【0085】
すなわち、ポストプロセス域管理部105は、コピー先LUN用に備えられたポストプロセス域203を、一時的に、コピー元LUNにライトするライトデータの格納に転用する。
【0086】
なお、ポストプロセス域管理部105は、ポストプロセス域203-2の領域B5~B8に、ライトデータE~Hを格納した後にチェンジビットマップ202の更新を行なってもよい。
その後、I/O処理部103が、ホスト装置5に対して、ライトI/Oが完了した旨の応答を送信する。
【0087】
なお、ポストプロセス域管理部105は、ホスト装置5に対して、ライトI/Oが完了した旨の応答を送信する前にチェンジビットマップ202の更新を行なってもよい。
【0088】
ホスト装置5から、コピー元LUN#1の領域A2,A3にデータF,GをライトするI/O要求を受信しているので、コピー制御部101は、コピー先LUN#2の領域A6,A7にデータB,Cを格納する(
図6の符号P17,P18参照)。また、コピー制御部101は、コピー元LUN#1の領域A4のデータDをコピー先LUN#2の領域A8にコピーする(
図6の符号P19参照)。このように、コピー制御部101はLUN#1からLUN#2へのコピーセッションを完了させる。
【0089】
ポストプロセス域管理部105は、チェンジビットマップ202を参照し、チェンジビットマップ202がOFFであるので、ポストプロセス域203-2のデータE,F,G,Hを、コピー先LUN#2ではなく、コピー元LUN#1の領域A1~A4に格納する(
図6の符号P20参照)。
これにより、ホスト装置5からのI/O要求に従って、コピー元LUN#1にデータE,F,G,Hが格納される(
図7の符号P21参照)。
その後、ポストプロセス域管理部105は、チェンジビットマップ202をONに戻す(
図7の符号P22参照)。
【0090】
次に、実施形態の一例としてのストレージシステム1における処理を、
図8に示すフローチャート(ステップS1~S18)に従って説明する。
以下に示す例においては、LUN#1とLUN#2とを備えるストレージ装置10に対して、ホスト装置5からLUN#1に対してデータのライトを指示するI/O要求が発行された例を示す。また、コピー制御部101が、LUN#1のデータをLUN#2にコピーするコピーセッションを張っているものとする。
【0091】
ステップS1において、I/O処理部103は、ホスト装置5からライトのI/O要求(ライト指示)を受信する。
ステップS2において、ポストプロセス域管理部105は、ライト指示の対象領域(LUN#1)に対応するポストプロセス域203が空いているか、すなわち、ポストプロセス域203-1がデータを未格納の状態であるかを確認する。ポストプロセス域管理部105は、当該記憶領域に対応するチェンジビットマップ202を参照することで、ポストプロセス域203-1が空いているかを確認する。
【0092】
確認の結果、ポストプロセス域203-1が空いている場合には(ステップS2のYESルート参照)、ステップS12に移行する。
ステップS12において、I/O処理部103は、受信したライトデータをコピー元LUN#のポストプロセス域203-1に格納する。
ステップS13において、I/O処理部103は、ホスト装置5に対してライトI/Oが完了した旨の応答を送信する。
【0093】
ステップS14において、重複排除処理部104が、コピー元LUN(LUN#1)のポストプロセス域203-1からライトデータを読み出して重複排除処理を行なう。I/O処理部103は、重複排除処理を行なったライトデータをコピー元LUN#1にライトし、処理を終了する。
【0094】
ステップS2における確認の結果、ライト要求の対象領域(LUN#1)に対応するポストプロセス域203-1が空いていない場合には(ステップS2のNOルート参照)、ステップS3に移行する。
【0095】
ステップS3において、ポストプロセス域管理部105は、ライト対象領域をコピー元に含むコピーセッションが完了しているかを確認する。ポストプロセス域管理部105は、例えば、コピー制御部101により管理されるコピービットマップ201を参照することで、コピーセッションが完了しているかを確認する。確認の結果、コピー処理が完了している場合には(ステップS3のYESルート参照)、ステップS12に移行する。
一方、ライト指示の対象領域をコピー元に含むコピーセッションが完了していない場合には(ステップS3のNOルート参照)、ステップS4に移行する。
【0096】
ステップS4において、ポストプロセス域管理部105は、ライト指示の対象領域をコピー元とするコピーセッションについてそのコピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するポストプロセス域203-2が空いているか、すなわち、データを未格納の状態であるかを確認する。例えば、コピー制御部101がコピーセッションを張る前に、当該コピー先の記憶領域にライトがされていた場合には、そのポストプロセス域203-2にデータが残っているおそれがある。
【0097】
ステップS4における確認の結果、ライト対象領域をコピー元とするコピーセッションについてそのコピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するポストプロセス域203-2が空いている場合には(ステップS4のYESルート参照)、ステップS5に移行する。
【0098】
ステップS5において、ポストプロセス域管理部105は、コピー先ボリューム(LUN#2)のコピーデータのライト対象領域に相当する部分のチェンジビットマップ202に、使用中であることを示す“OFF“を設定する。その後、ステップS7に移行する。
【0099】
ステップS7において、ポストプロセス域管理部105は、コピー先LUNにおけるコピーデータ格納領域に対応するポストプロセス域203-2に、ホスト装置5から受信したライトデータを格納する。
ステップS8において、I/O処理部103が、ホスト装置5に対して、ライトI/Oが完了した旨の応答を送信する。
ステップS9において、コピー制御部101は、LUN間のコピーセッションを完了させる。
【0100】
ステップS10において、重複排除処理部104は、コピー先LUN(LUN#2)のポストプロセス域203-2からライトデータを読み出して重複排除処理を行なう。I/O処理部103は、重複排除処理を行なったライトデータをコピー元LUN#1にライトする。
【0101】
ステップS11において、ポストプロセス域管理部105は、コピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するチェンジビットマップ202に“ON”を設定し、その後、処理を終了する。
【0102】
また、コピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するポストプロセス域203が空いていない場合には(ステップS4のNOルート参照)、ステップS6に移行する。
【0103】
ステップS6において、ポストプロセス域管理部105は、当該記憶領域に対応するチェンジビットマップ202を参照して、コピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するチェンジビットマップ202が未使用を示す“OFF”であるかを確認する。
【0104】
確認の結果、コピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するチェンジビットマップ202が“ON”の場合(ステップS6のNOルート参照)、すなわち、ポストプロセス域203-2が未使用である場合には、ステップS7に移行する。
【0105】
一方、ステップS6における確認の結果、コピー先LUN(LUN#2)のコピーデータの格納領域に対応するチェンジビットマップ202が“OFF”の場合(ステップS6のYESルート参照)、すなわち、ポストプロセス域203-2が使用中である場合には、ステップS15に移行する。
【0106】
例えば、コピー先LUN#2のポストプロセス域203-2には、ホスト装置5等からコピー先LUN#2に直接ライトされたデータ等が残っている場合があり得る。このような場合には、以後の処理を行なうためには、先にコピー先LUN#2に対して行なわれたライトの完了を待つ必要がある。
そこで、ステップS15において、コピー制御部101は、LUN#0,#1間のコピーセッションを完了させる。
【0107】
ステップS16において、I/O処理部103は、受信したライトデータをコピー元LUN#1のポストプロセス域203-1に格納する。
ステップS17において、I/O処理部103は、ホスト装置5に対してライトI/Oが完了した旨の応答を送信する。
【0108】
ステップS18において、重複排除処理部104が、コピー元LUN#1のポストプロセス域203-1からライトデータを読み出して重複排除処理を行なう。I/O処理部103は、重複排除処理を行なったライトデータをコピー元LUN#1にライトし、処理を終了する。
【0109】
(C)効果
このように、実施形態の一例としてのストレージシステム1によれば、異なるボリューム間でコピーセッションが設定されたストレージ装置10において、対応するポストプロセス域203にデータが残っているコピー元ボリュームの領域であり、且つ、ボリューム間のコピーが未完了の領域にホスト装置5からのライトのI/O要求が発行された場合に、ライトデータをコピー先ボリューム用に備えられたポストプロセス域203に格納する。すなわち、ライトデータの格納に、コピー先ボリューム用に備えられたポストプロセス域203を一時的に転用する。
【0110】
そして、このようにコピー先ボリューム用に備えられたポストプロセス域203にライトデータの格納を行なった後に、ホスト装置5に対して、ライトのI/O処理が完了した旨の応答を発行する。
【0111】
これにより、本来のライトのI/O要求の対象であるコピー元ボリュームのポストプロセス域203が使用中であったり、当該コピー元ボリュームに設定されたコピーセッションが未完了であっても、ホスト装置5からのライトデータをポストプロセス域203に格納することができる。そして、これにより、ホスト装置5にI/O処理の完了応答を送信することができる。従って、ホスト装置5に対して早いタイミングでレスポンスを送信することができるので、ホスト装置5による処理性能を向上させることができる。すなわち、ライトデータを即座にポストプロセス域203にライトし、ホストレスポンスを向上させることができる。
【0112】
ポストプロセス域管理部105が、チェンジビットマップ202を用いてコピー先LUN#2のポストプロセス域203-2の使用状況を管理する。これにより、コピー先LUN#2のポストプロセス域203-2の使用状況を容易に把握することができ、ホスト装置5へのレスポンス性能の向上に寄与することができる。
【0113】
ポストプロセス域203には、一般に、高速かつ高価なハードウェアが用いられる。そのため、重複排除可能なボリュームに対し最低限のサイズを確保するのが一般的である。
また、ユーザが重複排除可能なボリュームを作成するとき、そのボリュームがコピー元とコピー先とのどちらに使われるかはストレージから判断することはできない。その結果、コピー先LUN用のポストプロセス域があまり活用されない資源となる。本ストレージシステム1においては、コピー先LUN#2用に備えられたポストプロセス域203-2を積極的に用いることができ、記憶装置3の資源(記憶領域)を効率的に使用することができる。
【0114】
(D)その他
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成および各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0115】
例えば、上述した実施形態においては、ストレージシステム1に1つのストレージ装置10が備えられた例を示しているが、これに限定されるものではない。ストレージシステム1においては、複数のストレージ装置10を備え、これらが相互に通信可能に構成されてもよい。また、上述した実施形態においては、ストレージ装置10に1つのホスト装置5が接続された例を示しているが、これに限定されるものではない。ストレージ装置10に複数のホスト装置5が接続され、これらのホスト装置5がストレージ装置10に対してI/O要求を発行してもよい。
【0116】
また、上述した開示により本実施形態を当業者によって実施・製造することが可能である。
【0117】
(E)付記
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0118】
(付記1)
複数のボリュームを管理するボリューム管理部と、
前記複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御するコピー制御部と、
前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行なう重複排除処理部と、
前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合に、前記ライトデータを前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域に格納するポストプロセス域管理部と
を備えることを特徴とする、ストレージ制御装置。
【0119】
(付記2)
前記ライトデータを前記第2のポストプロセス域に格納した場合に、前記ライト要求に関する完了通知を出力する完了通知部
を備えることを特徴とする、付記1記載のストレージ制御装置。
【0120】
(付記3)
前記第2のボリューム用に備えられた前記第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶する記憶部
を備えることを特徴とする、付記1又は2記載のストレージ制御装置。
【0121】
(付記4)
前記コピー制御部による前記第1のボリュームから前記第2のボリュームへのデータのコピーが完了した後に、前記第2のポストプロセス域に格納された前記ライトデータを前記第1のボリュームの前記ライト要求の対象領域に格納するライト要求処理部を備えることを特徴とする、付記1~3のいずれか1項に記載のストレージ制御装置。
【0122】
(付記5)
記憶装置と、上位装置と通信可能に接続される通信部と、前記記憶装置を制御するストレージ制御装置とを備えるストレージシステムにおいて、
複数のボリュームを管理するボリューム管理部と、
前記複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御するコピー制御部と、
前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行なう重複排除処理部と、
前記上位装置から前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合に、前記ライトデータを前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域に格納するポストプロセス域管理部と
を備えることを特徴とする、ストレージシステム。
【0123】
(付記6)
前記ライトデータを前記第2のポストプロセス域に格納した場合に、前記上位装置に対して、前記ライト要求に関する完了通知を出力する完了通知部
を備えることを特徴とする、付記5記載のストレージシステム。
【0124】
(付記7)
前記第2のボリューム用に備えられた前記第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶する記憶部
を備えることを特徴とする、付記5又は6記載のストレージシステム。
【0125】
(付記8)
前記コピー制御部による前記第1のボリュームから前記第2のボリュームへのデータのコピーが完了した後に、前記第2のポストプロセス域203-2に格納された前記ライトデータを前記第1のボリュームの前記ライト要求の対象領域に格納するライト要求処理部
を備えることを特徴とする、付記5~7のいずれか1項に記載のストレージシステム。
【0126】
(付記9)
ストレージ制御装置のプロセッサに、
複数のボリュームのうちの第1のボリュームから第2のボリュームへのデータのコピーを制御し、
前記複数のボリュームのそれぞれに対して設けられたポストプロセス域に格納されたデータに対して重複排除処理を行ない、
前記第1のボリュームに対するライトデータのライト要求を受信し、前記第1のボリュームにおける前記ライト要求の対象領域について、前記第1のボリューム用に備えられた第1のポストプロセス域における前記対象領域に対応する記憶領域の少なくとも一部にデータが格納されており、且つ、前記第1のボリュームにおける前記対象領域が前記第2のボリュームへデータを未コピーの領域を含む場合に、前記ライトデータを前記第2のボリューム用に備えられた第2のポストプロセス域に格納する
処理を実行させる、ストレージ制御プログラム。
【0127】
(付記10)
前記ライトデータを前記第2のポストプロセス域に格納した場合に、前記ライト要求に関する完了通知を出力する
処理を、前記プロセッサに実行させる、付記9記載のストレージ制御プログラム。
【0128】
(付記11)
前記第2のボリューム用に備えられた前記第2のポストプロセス域の使用状況を管理する管理情報を記憶部に記憶させる
処理を、前記プロセッサに実行させる、付記9又は10記載のストレージ制御プログラム。
【0129】
(付記12)
前記第1のボリュームから前記第2のボリュームへのデータのコピーが完了した後に、前記第2のポストプロセス域203-2に格納された前記ライトデータを前記第1のボリュームの前記ライト要求の対象領域に格納する
処理を、前記プロセッサに実行させる、付記9~11のいずれか1項に記載のストレージ制御プログラム。
【符号の説明】
【0130】
1 ストレージシステム
2-1,2-2,2 CM
3 記憶装置
4 CA
5 ホスト装置
10 ストレージ装置
21 CPU
22 メモリ
23 DA
101 コピー制御部
102 ボリューム管理部
103 I/O処理部
104 重複排除処理部
105 ポストプロセス域管理部
201 コピービットマップ
202 チェンジビットマップ
203-1,203-2,203 ポストプロセス域