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特許7404996圧電アクチュエータ、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20231219BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20231219BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02N2/04
B41J2/14 305
B41J2/16 305
B41J2/14 611
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020080941
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021176249
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】蔵 圭司
(72)【発明者】
【氏名】相羽 貴司
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177562(JP,A)
【文献】特開平11-195554(JP,A)
【文献】特開平8-148731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、
第1電極と、
前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、
前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータであって、
前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、
前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、
前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第2電極は、第2厚肉部と、前記第2厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第2薄肉部と、を有し、
前記第2電極は、前記第2方向において、前記第1活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、
前記第2薄肉部は、前記第2電極の前記他端に形成され、前記第2電極の前記一端に形成されていないことを特徴とする、圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記第3電極は、第3厚肉部と、前記第3厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第3薄肉部と、を有し、
前記第3電極は、前記第2方向において、前記第3活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第2活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、
前記第3薄肉部は、前記第3電極の前記一端に形成され、前記第3電極の前記他端に形成されていないことを特徴とする、請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、
第1電極と、
前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、
前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータであって、
前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、
前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、
前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第3電極は、第3厚肉部と、前記第3厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第3薄肉部と、を有し、
前記第3電極は、前記第2方向において、前記第3活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第2活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、
前記第3薄肉部は、前記第3電極の前記一端に形成され、前記第3電極の前記他端に形成されていないことを特徴とする、圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記第2電極は、第2厚肉部と、前記第2厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第2薄肉部と、を有し、
前記第2電極は、前記第2方向において、前記第1活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、
前記第2薄肉部は、前記第2電極の前記他端に形成され、前記第2電極の前記一端に形成されていないことを特徴とする、請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記第3活性部は、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置にあり、
前記第2厚肉部と前記第3厚肉部とは、前記第1方向に互いに重ならず、前記第2方向に互いに隣接し、
前記第2薄肉部は、前記第3厚肉部と前記第1方向に重なり、
前記第3薄肉部は、前記第2厚肉部と前記第1方向に重なることを特徴とする、請求項2又は4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記第3活性部は、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置にあり、
前記第2厚肉部と前記第3厚肉部とは、前記第2方向に互いに離隔し、
前記第2薄肉部と前記第3薄肉部とが、前記第2方向における前記第2厚肉部と前記第3厚肉部との間において、前記第1方向に互いに重なることを特徴とする、請求項2又は4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記第1電極は、第1厚肉部と、前記第1厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第1薄肉部と、を有し、
前記第1電極は、前記第2方向において、前記第2活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第3活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、
前記第1薄肉部は、前記第1電極の前記一端に形成され、前記第1電極の前記他端に形成されていないことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔は、前記第2薄肉部の前記第2方向の長さ以下であることを特徴とする、請求項1、2、4、5、6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔は、前記第3薄肉部の前記第2方向の長さ以下であることを特徴とする、請求項2、3、4、5、6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
複数の前記第1電極が、前記第2方向に配列され、
前記複数の第1電極のそれぞれに対し、前記第2薄肉部が前記第2厚肉部に対して前記第2方向の同じ側に配置されていることを特徴とする、請求項1、2、4、5、6、8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
複数の前記第1電極が、前記第2方向に配列され、
前記複数の第1電極のそれぞれに対し、前記第3薄肉部が前記第3厚肉部に対して前記第2方向の同じ側に配置されていることを特徴とする、請求項2、3、4、5、6、9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項12】
第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、第1電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータの製造方法であって、
前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、
前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、
前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第2電極を、前記第2方向の一方から他方に向かってスキージを移動させ、スクリーン印刷により形成する工程を備えたことを特徴とする、圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項13】
第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、第1電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータの製造方法であって、
前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、
前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、
前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第3電極を、前記第2方向の他方から一方に向かってスキージを移動させ、スクリーン印刷により形成する工程を備えたことを特徴とする、圧電アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧電層を有する圧電体と第1~第3電極とを備え、圧電体が第1~第3活性部を有する圧電アクチュエータ、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の圧電層を有する圧電体と第1~第3電極とを備え、圧電体が第1~第3部分(本発明の第1~第3活性部)を有する圧電アクチュエータにおいて、以下の要件(I),(II)を満たすことで、アクチュエータ部の駆動劣化を抑制できる(具体的には、アクチュエータ部の変形回数の増加に伴い、第2部分は変形量が低下し得るが、第3部分は変形量が増加し、1つのアクチュエータ部全体としての変形量が安定する)ことが示されている。
【0003】
要件(I): 「前記第2部分(本発明の第2活性部)の前記他端は、前記第1方向において、前記第2部分の前記一端と前記第1部分(本発明の第1活性部)の前記一端との間の位置」にあること(例えば、特許文献1の図6において、第2活性部62の他端は、X方向において、第2活性部62の一端と第1活性部61の一端との間の位置にある。即ち、第2活性部62は、第1活性部61からX方向の一方に離隔している。)
【0004】
要件(II): 「前記第3部分(本発明の第3活性部)の前記一端」が下記(a)~(c)のいずれかの位置にあること
(a)「前記第1方向において、前記第1部分(本発明の第1活性部)の前記一端と前記第1部分の前記他端との間の位置」(例えば、特許文献1の図6において、第2活性部63の一端は、X方向において、第1活性部61の一端と第1活性部61の他端との間の位置にある。即ち、第2活性部63は、第1活性部61におけるX方向の他方の端部とZ方向に重なっている。)
(b)「前記第1方向において、前記第1部分(本発明の第1活性部)の前記他端と同じ位置」(例えば、特許文献1の図16(a),(b)において、第2活性部63の一端は、X方向において、第1活性部61の他端と同じ位置にある。即ち、第2活性部63は、第1活性部61におけるX方向の他方の端部とX方向に隣接している。)
(c)「前記第1方向において、前記第1部分(本発明の第1活性部)の前記他端と前記第3部分(本発明の第3活性部)の前記他端との間の位置であって、前記第1部分の前記他端から前記第3部分の前記一端までの前記第1方向の距離が、前記第2部分の前記他端から前記第1部分の前記一端までの前記第1方向の距離よりも短くなる位置」(例えば、特許文献1の図16(c)において、第2活性部63の一端は、X方向において、第1活性部61の他端61bと第2活性部63の他端63bとの間の位置であり(即ち、第2活性部63は、第1活性部61からX方向の他方に離隔し)、かつ、第2活性部63と第1活性部61とのX方向の間隔t3が、第2活性部62と第1活性部61とのX方向の間隔t2よりも短くなる位置にある。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-177562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スキージを用いたスクリーン印刷により電極を形成する場合、電極におけるスキージの移動方向の下流側の端部に滲みが生じ易く、当該滲みが薄肉部となって形成され得る。
【0007】
特許文献1の構成において、電極に薄肉部が形成されると、薄肉部が形成される位置によっては、要件(I)が満たされない場合が生じ得る(例えば、特許文献1の図6において、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に部分的に重なり合う場合がある)。この場合、要件(I)が満たされないことで、アクチュエータ部の変形回数の増加に伴い、第3活性部の変形量だけでなく、第2活性部の変形量も増加し、アクチュエータ部全体としての変形量が変化してしまう。
【0008】
本発明の目的は、電極に薄肉部が形成された場合でも上記要件(I)を確実に満たすことができる、圧電アクチュエータ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係る圧電アクチュエータは、第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、第1電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータであって、前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第2電極は、第2厚肉部と、前記第2厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第2薄肉部と、を有し、前記第2電極は、前記第2方向において、前記第1活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、前記第2薄肉部は、前記第2電極の前記他端に形成され、前記第2電極の前記一端に形成されていないことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2観点に係る圧電アクチュエータは、第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、第1電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータであって、前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第3電極は、第3厚肉部と、前記第3厚肉部よりも前記第1方向の厚みが小さい第3薄肉部と、を有し、前記第3電極は、前記第2方向において、前記第3活性部における前記第2方向の一方の端部を形成する一端と、前記第2活性部における前記第2方向の他方の端部を形成する他端と、を有し、前記第3薄肉部は、前記第3電極の前記一端に形成され、前記第3電極の前記他端に形成されていないことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3観点に係る圧電アクチュエータの製造方法は、第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、第1電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータの製造方法であって、前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第2電極を、前記第2方向の一方から他方に向かってスキージを移動させ、スクリーン印刷により形成する工程を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4観点に係る圧電アクチュエータの製造方法は、第1方向に積層された複数の圧電層を有する圧電体と、第1電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第2電極と、前記第1方向において前記第1電極から離隔した第3電極と、を備えた圧電アクチュエータの製造方法であって、前記圧電体は、前記第1方向において前記第1電極と前記第2電極とに挟まれた第1活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第2活性部と、前記第1方向において前記第1電極と前記第3電極とに挟まれた第3活性部であって、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2活性部から離隔した第3活性部と、を有し、前記第1活性部は、前記第2方向において前記第2活性部と前記第3活性部との間に配置された部分を有し、前記第2活性部は、前記第1活性部から前記第2方向の一方に離隔し、前記第3活性部は、下記(a)~(c)のいずれかの位置にあり、
(a)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第1方向に重なる位置
(b)前記第1活性部における前記第2方向の他方の端部と前記第2方向に隣接する位置
(c)前記第1活性部から前記第2方向の他方に離隔し、かつ、前記第3活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔が前記第2活性部と前記第1活性部との前記第2方向の間隔よりも短くなる位置
前記第3電極を、前記第2方向の他方から一方に向かってスキージを移動させ、スクリーン印刷により形成する工程を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータ22を備えたヘッド3を含む、プリンタ1の全体構成図である。
図2図1のヘッド3の平面図である。
図3図2の圧電アクチュエータ22における3つの圧電層41~43をそれぞれ示す平面図である。
図4図2及び図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図2及び図3のV-V線に沿った断面図である。
図6図5の断面におけるアクチュエータ部の動作を示す図である。
図7】圧電層42の上面に高電位電極52をスクリーン印刷により形成する工程を示す、図5に対応する断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータ222を示す図5に対応する断面図である。
図9】本発明の第3~第5実施形態に係る圧電アクチュエータ322,422,522をそれぞれ示す図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明において、Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平方向である。X方向及びY方向は、共にZ方向と直交する。X方向は、Y方向と直交する。Z方向が本発明の「第1方向」に該当し、X方向が本発明の「第2方向」に該当する。
【0015】
<第1実施形態>
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータ22を備えたヘッド3を含む、プリンタ1の全体構成について説明する。
【0016】
プリンタ1は、ヘッド3と、キャリッジ2と、2つの搬送ローラ対4とを備えている。
【0017】
キャリッジ2は、Y方向に延びる2本のガイドレール5に支持され、ガイドレール5に沿ってY方向に移動可能である。
【0018】
ヘッド3は、シリアル式であり、キャリッジ2に搭載され、キャリッジ2と共にY方向に移動可能である。ヘッド3の下面(Z方向下方を向く面)には、複数のノズル15が開口している。
【0019】
2つの搬送ローラ対4は、X方向にキャリッジ2を挟んで配置されている。プリンタ1の制御部(図示略)の制御により、搬送ローラ対4が用紙Pを挟持した状態で回転することで、用紙PがX方向に沿った搬送方向に搬送される。
【0020】
制御部は、キャリッジ2と共にヘッド3をY方向に移動させながらノズル15からインクを吐出させる吐出動作と、搬送ローラ対4によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙Pに画像が記録される。
【0021】
次に、図2図7を参照し、ヘッド3の構成について説明する。
【0022】
ヘッド3は、図2に示すように、流路ユニット21と、圧電アクチュエータ22と、COF(Chip On Film)23とを含む。
【0023】
流路ユニット21は、Z方向から見て矩形状であり、Y方向に沿った2つの辺21a,21bと、X方向に沿った2つの辺21c,21dとを有する。
【0024】
圧電アクチュエータ22は、流路ユニット21と同様、Z方向から見て矩形状であり、Y方向に沿った2つの辺22a,22bと、X方向に沿った2つの辺22c,22dとを有する。圧電アクチュエータ22は、Z方向から見て流路ユニット21よりも一回り小さい。
【0025】
流路ユニット21は、図4に示すように、Z方向に積層された4枚のプレート31~34で構成されている。
【0026】
プレート31には、複数の圧力室10が形成されている。各圧力室10は、図2に示すように、Z方向から見て略矩形状であり、Y方向の長さがX方向の長さよりも長い。複数の圧力室10は、4つの圧力室列9を形成している。4つの圧力室列9は、Y方向に並んでいる。各圧力室列9は、X方向に等間隔で配列された8個の圧力室10で構成されている。
【0027】
プレート32には、図4に示すように、圧力室10毎に、貫通孔12,13が形成されている。貫通孔12,13は、それぞれ、対応する圧力室10のY方向の一端10c及びY方向の他端10dとZ方向に重なっている。貫通孔12は、Z方向と直交する断面積が圧力室10におけるY方向と直交する断面積よりも小さく、絞り流路として機能する。
【0028】
プレート33には、図4に示すように、貫通孔13毎に、貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、対応する貫通孔13とZ方向に重なっている。
【0029】
プレート33には、図4に示すように、さらに、4本のマニホールド流路11が形成されている。4本のマニホールド流路11は、図2に示すように、4つの圧力室列9のそれぞれに対応する。各マニホールド流路11は、X方向に延び、対応する圧力室列9の8個の圧力室10とZ方向に重なる部分を有する。各マニホールド流路11は、対応する圧力室列9の8個の圧力室10と、貫通孔12を介して連通している。
【0030】
プレート31の上面において、圧電アクチュエータ22が配置されない領域に、4つのインク供給口8が形成されている(図2参照)。4つのインク供給口8は、4本のマニホールド流路11のそれぞれに対応する。各インク供給口8は、対応するマニホールド流路11のX方向の一端(図2の下端)とZ方向に重なる位置にある。4つのインク供給口8から、4本のマニホールド流路11のそれぞれに、インクが供給される。
【0031】
プレート34には、図4に示すように、複数のノズル15が貫通して形成されている。複数のノズル15は、それぞれ、貫通孔14とZ方向に重なっている。ノズル15は、貫通孔13、14を介して、圧力室10と連通している。
【0032】
各マニホールド流路11に供給されたインクは、貫通孔12をZ方向上方に流れ、圧力室10に流入する。当該インクは、圧力室10内をY方向に沿って一端10cから他端10dに向かって流れ、貫通孔13,14をZ方向下方に流れて、ノズル15から吐出される。
【0033】
圧電アクチュエータ22は、図4に示すように、流路ユニット21に対してZ方向上方に位置し、プレート31の上面に固定されている。
【0034】
圧電アクチュエータ22は、圧電体40と、インク分離層44と、複数の駆動電極51と、高電位電極52と、低電位電極53とを有する。駆動電極51が本発明の「第1電極」に該当し、高電位電極52が本発明の「第2電極」に該当し、低電位電極53が本発明の「第3電極」に該当する。
【0035】
圧電体40は、Z方向に積層された3つの圧電層41~43を含む。圧電層41~43及びインク分離層44は、Z方向から見て、互いに同じ形状及びサイズを有し、図2に示す矩形状の圧電アクチュエータ22の外形を画定している。
【0036】
インク分離層44は、図4に示すように、プレート31の上面に配置され、プレート31に形成された全ての圧力室10を覆っている。インク分離層44は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料、合成樹脂材料等からなる。
【0037】
圧電層43は、インク分離層44の上面に配置されている。圧電層42は、圧電層43の上面に配置されている。圧電層41は、圧電層42の上面に配置されている。圧電層41~43は、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなる。
【0038】
複数の駆動電極51と、高電位電極52と、低電位電極53とは、Z方向において互いに離隔している。具体的には、Z方向において上から順に、複数の駆動電極51、高電位電極52及び低電位電極53が配置されている。
【0039】
複数の駆動電極51は、図3(a)に示すように、圧電層41の上面に配置され、複数の圧力室10のそれぞれに対応して設けられている。即ち、複数の駆動電極51は、複数の圧力室10と同様、X方向に等間隔で配列された8個の駆動電極51でそれぞれ構成される、4つの列を形成している。各駆動電極51は、対応する圧力室10とZ方向に重なる部分と、対応する圧力室10とZ方向に重ならない部分とを含む。各駆動電極51において、上記重ならない部分は、上記重なる部分に対し、X方向の一方(図3(a)の下方)に位置する。
【0040】
各駆動電極51において、上記重ならない部分には、COF23(図2参照)の配線と電気的に接続される接点が設けられている。COF23に実装されたドライバIC24は、COF23の配線を介して、複数の駆動電極51に対して個別に、高電位(VDD電位)及び低電位(GND電位)のいずれかを付与する。
【0041】
高電位電極52は、図3(b)に示すように、圧電層42の上面に配置され、複数の個別部52aと、4つの接続部52bと、連結部52cと、引出部52dとを有する。複数の個別部52aは、複数の圧力室10のそれぞれに対応して設けられている。各個別部52aは、対応する圧力室10とZ方向に重なっている。4つの接続部52bは、4つの圧力室列9のそれぞれに対応して設けられている。各接続部52bは、X方向に延び、当該圧力室列9の8個の圧力室10のそれぞれに対応する個別部52aのY方向の一端(図3(b)の右端)同士を接続している。連結部52cは、Y方向に延び、4つの接続部52bのX方向の一端(図3(b)の下端)同士を連結している。引出部52dは、連結部52cのY方向の他端(図3(b)の左端)から、X方向の他方(図3(b)の上方)に引き出されている。引出部52dが連結部52cから延びる方向と、各接続部52bが連結部52cから延びる方向とは、互いに同じである。引出部52dは、圧電層41に形成された貫通孔41x(図3(a)参照)を介して、表面電極72と接続されている。表面電極72は、圧電層41の上面に配置され、引出部52dとZ方向に重なっている。
【0042】
表面電極72は、COF23(図2参照)の配線と電気的に接続されている。ドライバIC24は、COF23の配線を介して、高電位電極52に高電位(VDD電位)を付与する。
【0043】
低電位電極53は、図3(c)に示すように、圧電層43の上面に配置され、複数の個別部53aと、4つの接続部53bと、連結部53cと、引出部53dとを有する。X方向に互いに隣接する2つの圧力室10の間に、個別部53aが配置されている。さらに、圧電アクチュエータ22の辺22aと、辺22aとX方向に隣接する圧力室10との間に、個別部53aが配置されている。複数の個別部53aのうち、X方向の一端(図3(c)の下端)に位置する4つの個別部53aを除く個別部53aは、それぞれ、X方向に互いに隣接する2つの圧力室10に跨り、当該2つの圧力室10とZ方向に重なる部分を有する。上記4つの個別部53aは、それぞれ、辺22aとX方向に隣接する圧力室10と、Z方向に重なる部分を有する。4つの接続部53bは、4つの圧力室列9のそれぞれに対応して設けられている。各接続部53bは、X方向に延び、当該圧力室列9の8個の圧力室10のそれぞれに対応する個別部53aのY方向の他端(図3(c)の左端)同士を接続している。連結部53cは、Y方向に延び、4つの接続部53bのX方向の他端(図3(c)の上端)同士を接続している。連結部53cは、圧電アクチュエータ22の辺22bとX方向に隣接する4つの圧力室10のそれぞれと、Z方向に重なる部分を有する。引出部53dは、連結部53cのY方向の他端(図3(c)の左端)から、X方向の一方(図3(c)の下方)に引き出されている。引出部53dが連結部53cから延びる方向と、各接続部53bが連結部53cから延びる方向とは、互いに同じである。引出部53dは、圧電層41に形成された貫通孔41y(図3(a)参照)及び圧電層42に形成された貫通孔42y(図3(b)参照)を介して、表面電極73と接続されている。表面電極73は、圧電層41の上面に配置され、引出部53dとZ方向に重なっている。
【0044】
表面電極73は、COF23(図2参照)の配線と電気的に接続されている。ドライバIC24は、COF23の配線を介して、低電位電極53に低電位(GND電位)を付与する。
【0045】
図4及び図5に示すように、圧電層41のうち、Z方向において駆動電極51と高電位電極52とに挟まれた部分を「第1活性部61」という。圧電層41,42のうち、Z方向において駆動電極51と低電位電極53とに挟まれた部分を「第2活性部62」「第3活性部63」という。第1活性部61は主に上向きに分極され、第2活性部62及び第3活性部63は主に下向きに分極されている。
【0046】
圧電アクチュエータ22は、圧力室10毎に、第1活性部61と第2活性部62と第3活性部63とから構成されるアクチュエータ部60を有する。
【0047】
第2活性部62及び第3活性部63は、クロストークを抑制する機能を有する。クロストークとは、ある圧力室10におけるアクチュエータ部60の変形に伴う圧力変動が当該圧力室10とX方向に隣接する別の圧力室10に伝わる現象をいう。
【0048】
以下、図5を参照し、1つのアクチュエータ部60における活性部61~63間の位置関係、1つのアクチュエータ部60の活性部61~63とこれに対応する圧力室10との位置関係等について説明する。
【0049】
第1活性部61は、圧力室10のX方向の略中央領域とZ方向に重なっており、圧力室10とZ方向に重ならない部分を有していない。第2活性部62と第3活性部63とは、X方向において互いに離隔している。第1活性部61は、X方向において第2活性部62と第3活性部63との間に配置された部分を有する。
【0050】
第2活性部62は、第1活性部61からX方向の一方(図5の左方)に離隔し、圧力室10のX方向の一端(図5の左端)とZ方向に重なる部分と、圧力室10とZ方向に重ならない部分とを有する。
【0051】
第3活性部63は、圧力室10におけるX方向の中心と他端(図5の右端)との間の領域とZ方向に重なっており、圧力室10とZ方向に重ならない部分を有していない。第3活性部63は、第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)とZ方向に重なっている。
【0052】
次に、図6を参照し、あるノズル15からインクを吐出させる際の、当該ノズル15に対応するアクチュエータ部60の動作について説明する。
【0053】
プリンタ1が記録動作を開始する前は、図6(a)に示すように、各駆動電極51に低電位(GND電位)が付与されている。このとき、各アクチュエータ部60において、駆動電極51と高電位電極52との電位差によって、第1活性部61にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部61が面方向(X方向及びY方向に沿った方向)に収縮している。これにより、圧電体40及びインク分離層44からなる積層体における圧力室10とZ方向に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓んでいる。このとき圧力室10は、上記積層体がフラットな場合と比べ、容積が小さくなっている。
【0054】
プリンタ1が記録動作を開始し、あるノズル15からインクが吐出させる際には、先ず、図6(b)に示すように、当該ノズル15に対応する駆動電極51の電位が低電位(GND電位)から高電位(VDD電位)に切り替えられる。このとき、当該アクチュエータ部60において、駆動電極51と高電位電極52との電位差がなくなることで、第1活性部61の収縮が解消される。一方、駆動電極51と低電位電極53との電位差が生じることで、第2活性部62及び第3活性部63にその分極方向に等しい下向きの電界が生じ、第2活性部62及び第3活性部63が面方向に収縮する。ただし、第2活性部62及び第3活性部63は、上記のとおりクロストーク抑制機能を有するものであり、アクチュエータ部60の変形にほとんど寄与しない。つまり、このとき上記積層体は、圧力室10とZ方向に重なる部分が圧力室10から離れる方向に(上向きに)凸となるように撓まず、フラットな状態となる。これにより、圧力室10の容積は、図6(a)に比べて大きくなる。
【0055】
その後、図6(a)に示すように、当該ノズル15に対応する駆動電極51の電位が高電位(VDD電位)から低電位(GND電位)に切り替えられる。このとき、当該アクチュエータ部60において、駆動電極51と低電位電極53との電位差がなくなることで、第2活性部62及び第3活性部63の収縮が解消される。一方、駆動電極51と高電位電極52との電位差が生じることで、第1活性部61にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部61が面方向に収縮する。これにより、上記積層体における圧力室10とZ方向に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓む。このとき、圧力室10の容積が大きく減少することで、圧力室10内のインクに大きな圧力が付与され、ノズル15からインクが吐出される。
【0056】
このようなアクチュエータ部60の動作が繰り返し行われることで、アクチュエータ部60の変形量が低下すること(即ち、駆動劣化)が懸念される。しかしながら、本実施形態では、以下の要件(I),(II-a)を満たすことで、アクチュエータ部60の駆動劣化を抑制できる。
【0057】
要件(I): 第2活性部62は、第1活性部61からX方向の一方(図5の左方)に離隔している。
【0058】
要件(II-a): 第3活性部63は、第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)とZ方向に重なっている。
【0059】
具体的には、特開2019-177562号公報に示されているように、上記要件(I),(II-a)を満たすことで、アクチュエータ部60の変形回数の増加に伴い、第2活性部62は変形量が低下し得るが、第3活性部63は変形量が増加し、1つのアクチュエータ部60全体としての変形量が安定する。
【0060】
ここで、本実施形態の圧電アクチュエータ22は、インク分離層44(図5参照)の上面に、圧電層41~43及び各電極51~53を順次形成することで製造される。各電極51~53は、スキージを用いたスクリーン印刷により形成される。この場合、スキージの移動方向の下流側の端部に滲みが生じ易く、当該滲みが薄肉部51s,52s,53s(図5参照)となって形成され得る。
【0061】
例えば、高電位電極52を形成する際には、図7に示すように、圧電層42の上面に、高電位電極52に対応する孔101xが形成されたマスク101を配置し、スキージ100を移動させて、スクリーン印刷により高電位電極52を形成する。このときスキージ100は、その移動方向Dの下流側に電極の材料(例えば、銀、ニッケル、金等)110を保持しつつ、移動する。当該材料110が孔101xに入り込むことで、高電位電極52が形成される。このとき、高電位電極52における移動方向Dの下流側の端部に材料110が流れ込むことで、滲みAが生じ易い。この滲みAが、薄肉部52sとして形成される。
【0062】
このように、高電位電極52は、マスク101の孔101xに対応する厚肉部52tと、厚肉部52tに対して移動方向Dの下流側に位置する薄肉部52sとを有する。薄肉部52sは、厚肉部52tよりもZ方向の厚みが小さい。
【0063】
駆動電極51及び低電位電極53も同様であり、図5に示すように、それぞれ、厚肉部51t,53tと、厚肉部51t,53tに対して移動方向Dの下流側に位置する薄肉部51s,53sとを有する。薄肉部51s,53sは、厚肉部51t,53tよりもZ方向の厚みが小さい。
【0064】
厚肉部51tが本発明の「第1厚肉部」に該当し、薄肉部51sが本発明の「第1薄肉部」に該当する。厚肉部52tが本発明の「第2厚肉部」に該当し、薄肉部52sが本発明の「第2薄肉部」に該当する。厚肉部53tが本発明の「第33厚肉部」に該当し、薄肉部53sが本発明の「第3薄肉部」に該当する。
【0065】
例えば、厚肉部51t~53tのZ方向の厚みは1μm程度であり、薄肉部51s~53sのZ方向の厚みは0.1μm以下である。また、薄肉部51s~53sのX方向の長さは、例えば、10~100μmであり、第2活性部62と第1活性部61とのX方向の間隔S以上である。
【0066】
本実施形態では、駆動電極51を形成する際のスキージ100の移動方向Dを、X方向の他方(図5の右方)から一方(図5の左方)に向かう方向としている。したがって、薄肉部51sは、厚肉部51tに対してX方向の一方(図5の左方)に位置している。
【0067】
駆動電極51は、X方向において、第2活性部62におけるX方向の一方の端部(図5の左端)を形成する一端51xと、第3活性部63におけるX方向の他方の端部(図5の右端)を形成する他端51yとを有する。薄肉部51sは、一端51xに形成され、他端51yに形成されていない。薄肉部51sは、圧力室10とZ方向に重ならない部分に配置されている。
【0068】
上記スキージ100の移動方向Dは、全ての駆動電極51において同じである。したがって、全ての駆動電極51において、薄肉部51sは厚肉部51tに対してX方向の同じ側に配置されている。
【0069】
高電位電極52を形成する際は、スキージ100の移動方向Dを、X方向の一方(図5の左方)から他方(図5の右方)に向かう方向としている。したがって、薄肉部52sは、厚肉部52tに対してX方向の他方(図5の右方)に位置している。
【0070】
高電位電極52の個別部52aは、X方向において、第1活性部61におけるX方向の一方の端部(図5の左端)を形成する一端52axと、第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)を形成する他端52ayとを有する。薄肉部52sは、他端52ayに形成され、一端52axに形成されていない。
【0071】
上記スキージ100の移動方向Dは、全ての個別部52aにおいて同じである。したがって、複数の駆動電極51のそれぞれに対し、薄肉部52sが厚肉部52tに対してX方向の同じ側に配置されている。
【0072】
低電位電極53を形成する際は、スキージ100の移動方向Dを、X方向の他方(図5の右方)から一方(図5の左方)に向かう方向としている。したがって、薄肉部53sは、厚肉部53tに対してX方向の一方(図5の左方)に位置している。
【0073】
低電位電極53の個別部53aは、X方向において、第3活性部63におけるX方向の一方の端部(図5の左端)を形成する一端53axと、第2活性部62におけるX方向の他方の端部(図5の右端)を形成する他端53ayとを有する。薄肉部53sは、一端53axに形成され、他端53ayに形成されていない。
【0074】
上記スキージ100の移動方向Dは、全ての個別部53aにおいて同じである。したがって、複数の駆動電極51のそれぞれに対し、薄肉部53sが厚肉部53tに対してX方向の同じ側に配置されている。
【0075】
本実施形態では、図5に示すように、個別部52aの厚肉部52tにおける薄肉部52sが接続する端部と、個別部53aの厚肉部53tにおける薄肉部53sが接続する端部とが、X方向において互いに同じ位置にある。厚肉部52tと厚肉部53tとは、Z方向に互いに重ならず、X方向に互いに隣接している。薄肉部52sは厚肉部53tとZ方向に重なり、薄肉部53sは厚肉部52tとZ方向に重なっている。
【0076】
以上に述べたように、本実施形態の圧電アクチュエータ22によれば、高電位電極52の個別部52aにおいて、薄肉部52sは、他端52ayに形成され、一端52axに形成されていない(図5参照)。本実施形態の圧電アクチュエータ22の製造方法は、高電位電極52を、X方向の一方から他方(図5の右方)に向かってスキージ100を移動させ、スクリーン印刷により形成する工程を備えている(図7参照)。薄肉部52sが一端52axに形成されると、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、本実施形態では、薄肉部52sが他端52ayに形成されかつ一端52axに形成されていないため、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くならず、上記要件(I)を確実に満たすことができる。
【0077】
本実施形態の圧電アクチュエータ22によれば、低電位電極53の個別部53aにおいて、薄肉部53sは、一端53axに形成され、他端53ayに形成されていない(図5参照)。本実施形態の圧電アクチュエータ22の製造方法は、低電位電極53を、X方向の他方から一方(図5の左方)に向かってスキージ100を移動させ、スクリーン印刷により形成する工程を備えている。薄肉部53sが他端53ayに形成されると、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、本実施形態では、薄肉部53sが一端53axに形成されかつ他端53ayに形成されていないため、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くならず、要件(I)を確実に満たすことができる。
【0078】
要件(II-a)[第3活性部63が第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)とZ方向に重なるという要件]を満たす構成において、厚肉部52t,53t同士がZ方向に重ならずにX方向に隣接し、薄肉部52sが厚肉部53tとZ方向に重なり、薄肉部53sが厚肉部52tとZ方向に重なっている(図5参照)。厚肉部52t,53t同士がZ方向に重なると、当該部分の剛性が高くなり、アクチュエータ部60の変形が阻害され得る。これに対し、本実施形態では、厚肉部52t,53t同士がZ方向に重ならないため、上記のように剛性が高くなるのを抑制し、アクチュエータ部60の変形の阻害を抑制できる。
【0079】
駆動電極51において、薄肉部51sは、一端51xに形成され、他端51yに形成されていない(図5参照)。本実施形態の圧電アクチュエータ22は、流路ユニット21に対し、一端51xが圧力室10とZ方向に重ならず、他端51yが圧力室10とZ方向に重なるよう固定されることが想定される。この場合に、薄肉部51sが他端51yに形成されると、圧力室10とZ方向に重なる部分の剛性が高くなることで、アクチュエータ部60の変形が阻害され得る。これに対し、本実施形態では、薄肉部51sが一端51xに形成されかつ他端51yに形成されていないため、圧力室10とZ方向に重なる部分の剛性が高くなるのを抑制し、アクチュエータ部60の変形の阻害を抑制できる。
【0080】
第2活性部62と第1活性部61とのX方向の間隔Sは、薄肉部52sのX方向の長さ以下である(図5参照)。この場合において、薄肉部52sが一端52axに形成されると、間隔Sが薄肉部52sによって埋められ、要件(I)が満たされない可能性が高くなる。しかし本実施形態では、薄肉部52sが一端52axではなく他端52ayに形成されているため、要件(I)が満たされなくなる問題を抑制できる。
【0081】
第2活性部62と第1活性部61とのX方向の間隔Sは、薄肉部53sのX方向の長さ以下である(図5参照)。この場合において、薄肉部53sが他端53ayに形成されると、間隔Sが薄肉部53sによって埋められ、要件(I)が満たされない可能性が高くなる。しかし本実施形態では、薄肉部53sが他端53ayではなく一端53axに形成されているため、要件(I)が満たされなくなる問題を抑制できる。
【0082】
複数の駆動電極51のそれぞれに対し、薄肉部52sが厚肉部52tに対してX方向(駆動電極51の配列方向)の同じ側に配置されている。この場合、X方向に配列された複数のアクチュエータ部60において、活性部61~63の配置態様が揃う。これにより、X方向に配列された複数のアクチュエータ部60における変形特性のばらつきを抑制できる。
【0083】
複数の駆動電極51のそれぞれに対し、薄肉部53sが厚肉部53tに対してX方向(駆動電極51の配列方向)の同じ側に配置されている。この場合、上記同様、X方向に配列された複数のアクチュエータ部60において、活性部61~63の配置態様が揃う。これにより、X方向に配列された複数のアクチュエータ部60における変形特性のばらつきを抑制できる。
【0084】
<第2実施形態>
続いて、図8を参照し、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータ222について説明する。
【0085】
第1実施形態(図5)では、要件(II-a)[第3活性部63が第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)とZ方向に重なるという要件]を満たす構成において、厚肉部52t,53t同士がZ方向に重ならずにX方向に隣接し、薄肉部52sが厚肉部53tとZ方向に重なり、薄肉部53sが厚肉部52tとZ方向に重なっている。これに対し、第2実施形態(図8)では、要件(II-a)を満たす構成において、厚肉部52t,53t同士がX方向に離隔し、薄肉部52sと薄肉部53sとが、X方向における厚肉部52t,53tの間において、Z方向に互いに重なっている。
【0086】
本実施形態では、第1実施形態と同様、厚肉部52t,53t同士がZ方向に重ならないため、アクチュエータ部60の変形の阻害を抑制できる。さらに本実施形態では、薄肉部52s,53s同士がZ方向に重なる構成を採用したことで、剛性が高くなるのをより確実に抑制し、アクチュエータ部60の変形の阻害をより一層抑制できる。
【0087】
<第3実施形態>
続いて、図9(a)を参照し、本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータ322について説明する。
【0088】
第1実施形態(図5)では、要件(II-a)[第3活性部63が第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)とZ方向に重なるという要件]を満たす構成が採用されている。これに対し、第3実施形態(図9(a))では、要件(II-b)[第3活性部63が第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図9(a)の右端)とX方向に隣接するという要件]を満たす構成が採用されている。即ち、第3実施形態では、第3活性部63が、第1活性部61とZ方向に重なる部分を有さず、第1活性部61とX方向に隣接している。
【0089】
第3実施形態(図9(a))では、高電位電極52及び低電位電極53のZ方向の位置が、第1実施形態(図5)と逆である。第3実施形態(図9(a))では、Z方向において上から順に、駆動電極51、低電位電極53及び高電位電極52が配置されている。
【0090】
第3実施形態(図9(a))では、第1実施形態(図5)と同様、高電位電極52の個別部52aにおいて、薄肉部52sは、他端52ayに形成され、一端52axに形成されていない。低電位電極53の個別部53aにおいて、薄肉部53sは、一端53axに形成され、他端53ayに形成されていない。
【0091】
第3実施形態(図9(a))では、厚肉部52t,53t同士が、Z方向に重ならず、X方向に離隔している。薄肉部52s,53s同士が、Z方向に重ならず、X方向に隣接している。
【0092】
第3実施形態(図9(a))において、薄肉部52sが一端52axに形成されると、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、第3実施形態では、薄肉部52sが他端52ayに形成されかつ一端52axに形成されていないため、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くならず、上記要件(I)を確実に満たすことができる。
【0093】
また、薄肉部53sが他端53ayに形成されると、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、第3実施形態では、薄肉部53sが一端53axに形成されかつ他端53ayに形成されていないため、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くならず、要件(I)を確実に満たすことができる。
【0094】
<第4実施形態>
続いて、図9(b)を参照し、本発明の第4実施形態に係る圧電アクチュエータ422について説明する。
【0095】
第4実施形態(図9(b))では、第3実施形態(図9(a))と同様、要件(II-b)[第3活性部63が第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図9(b)の右端)とX方向に隣接するという要件]を満たす構成が採用されている。即ち、第4実施形態(図9(b))では、第3実施形態(図9(a))と同様、第3活性部63が、第1活性部61とZ方向に重なる部分を有さず、第1活性部61とX方向に隣接している。
【0096】
第4実施形態(図9(b))では、駆動電極51及び高電位電極52のZ方向の位置が、第1実施形態(図5)と逆である。第4実施形態(図9(b))では、Z方向において上から順に、高電位電極52、駆動電極51及び低電位電極53が配置されている。
【0097】
第4実施形態(図9(b))では、第1実施形態(図5)と同様、高電位電極52の個別部52aにおいて、薄肉部52sは、他端52ayに形成され、一端52axに形成されていない。低電位電極53の個別部53aにおいて、薄肉部53sは、一端53axに形成され、他端53ayに形成されていない。
【0098】
第4実施形態(図9(b))では、第3実施形態(図9(a))と同様、厚肉部52t,53t同士が、Z方向に重ならず、X方向に離隔している。薄肉部52s,53s同士が、Z方向に重ならず、X方向に隣接している。
【0099】
第4実施形態(図9(b))において、薄肉部52sが一端52axに形成されると、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、第4実施形態では、薄肉部52sが他端52ayに形成されかつ一端52axに形成されていないため、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くならず、上記要件(I)を確実に満たすことができる。
【0100】
また、薄肉部53sが他端53ayに形成されると、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、第4実施形態では、薄肉部53sが一端53axに形成されかつ他端53ayに形成されていないため、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くならず、要件(I)を確実に満たすことができる。
【0101】
<第5実施形態>
続いて、図9(c)を参照し、本発明の第5実施形態に係る圧電アクチュエータ522について説明する。
【0102】
第1実施形態(図5)では、要件(II-a)[第3活性部63が第1活性部61におけるX方向の他方の端部(図5の右端)とZ方向に重なるという要件]を満たす構成が採用されている。これに対し、第5実施形態(図9(c))では、要件(II-c)[第3活性部63が第1活性部61からX方向の他方に離隔し、かつ、第3活性部63と第1活性部61とのX方向の間隔S1が、第2活性部62と第1活性部61とのX方向の間隔S2よりも短いという要件]を満たす構成が採用されている。第5実施形態(図9(c))では、第3活性部63が、第1活性部61とZ方向に重なる部分を有さず、第1活性部61からX方向に離隔している。
【0103】
第5実施形態(図9(c))では、第1実施形態(図5)における最下層の圧電層43が省略されており、圧電体40は、Z方向に積層された2つの圧電層41,42を有する。
【0104】
第5実施形態(図9(c))では、第1実施形態(図5)と同様、高電位電極52の個別部52aにおいて、薄肉部52sは、他端52ayに形成され、一端52axに形成されていない。低電位電極53の個別部53aにおいて、薄肉部53sは、一端53axに形成され、他端53ayに形成されていない。
【0105】
第5実施形態(図9(c))では、厚肉部52t,53t同士が、Z方向に重ならず、X方向に離隔している。薄肉部52s,53s同士が、Z方向に重ならず、X方向に離隔している。
【0106】
第5実施形態(図9(c))において、薄肉部52sが一端52axに形成されると、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、第5実施形態では、薄肉部52sが他端52ayに形成されかつ一端52axに形成されていないため、第1活性部61が第2活性部62に近づく方向に長くならず、上記要件(I)を確実に満たすことができる。
【0107】
また、薄肉部53sが他端53ayに形成されると、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くなる。この場合、第2活性部62と第1活性部61とが、X方向に互いに離隔せず、X方向に互いに隣接したり、Z方向に重なり合うことで、要件(I)が満たされなくなり得る。これに対し、第5実施形態では、薄肉部53sが一端53axに形成されかつ他端53ayに形成されていないため、第2活性部62が第1活性部61に近づく方向に長くならず、要件(I)を確実に満たすことができる。
【0108】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0109】
第1実施形態では、駆動電極51を形成する際のスキージ100の移動方向Dが、全ての駆動電極51において同じであるが、これに限定されない(高電位電極52及び低電位電極53についても同様)。例えば、電極51~53の列(図2に示す圧力室列9に対応する列)毎に、スキージ100の移動方向を異ならせてもよい。この場合でも、列内での薄肉部51~53sと厚肉部51t~53tとの位置関係が揃うこと、ひいては活性部61~63の配置態様が揃うことにより、X方向に配列された複数のアクチュエータ部60における変形特性のばらつきを抑制できる。
【0110】
第2活性部62と第1活性部61との第2方向の間隔(図5の間隔S)が、薄肉部52s(第2薄肉部)や薄肉部53s(第3薄肉部)の第2方向の長さを超えてもよい。
【0111】
本発明に係る圧電アクチュエータは、「第2薄肉部が、第2電極の他端に形成され、第2電極の一端に形成されていないこと」及び「第3薄肉部が、第3電極の一端に形成され、第3電極の他端に形成されていないこと」の少なくとも一方を満たせばよく、両方を満たすことには限定されない。
【0112】
第1活性部は、圧力室と第1方向に重ならない部分を含んでもよい。
【0113】
第1~第3電極の第3方向の位置は、図9(a)~(c)に示すように、任意に変更可能である。
【0114】
インク分離層44(図5参照)を省略してもよい。
【0115】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。さらに、本発明に係る圧電アクチュエータは、液体吐出装置以外の任意の装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
22;222;322;422;522 圧電アクチュエータ
40 圧電体
41~43 圧電層
51 駆動電極(第1電極)
51x 一端
51y 他端
51t 厚肉部(第1厚肉部)
51s 薄肉部(第1薄肉部)
52 高電位電極(第2電極)
52ax 一端
52ay 他端
52t 厚肉部(第2厚肉部)
52s 薄肉部(第2薄肉部)
53 低電位電極(第3電極)
53ax 一端
53ay 他端
53t 厚肉部(第3厚肉部)
53s 薄肉部(第3薄肉部)
60 アクチュエータ部
61 第1活性部
62 第2活性部
63 第3活性部
100 スキージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9