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特許7405003歪み分布計測システム、及び歪み分布計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】歪み分布計測システム、及び歪み分布計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/28 20060101AFI20231219BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N3/28
G01B11/16 H
G01N3/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020089381
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183932
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永島 知貴
(72)【発明者】
【氏名】岩永 幸満
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀夫
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249589(JP,A)
【文献】特開2008-268164(JP,A)
【文献】特開昭57-191504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/28
G01N 3/08
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を変形させて、前記試験片の材料の機械的特性を測定する材料試験機と、前記試験片の歪み分布を計測する歪み分布計測装置と、を備え、
前記試験片は、平織り又は綾織りされたFRP(Fiber Reinforced Plastics)であって、前記試験片を変形させた際に明領域と暗領域とが市松模様状に配置され、
前記歪み分布計測装置は、前記明領域及び前記暗領域を撮像した前記試験片の主面の画像に対して2次元DFT(Discrete Fourier Transform)を含む処理を行うことで、前記試験片の歪み分布を計測する制御部を備える、歪み分布計測システム。
【請求項2】
前記試験片は、平織り、又は綾織りされた、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)及びGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)を含む前記FRPで構成される、請求項1に記載の歪み分布計測システム。
【請求項3】
前記試験片は、平織りされたCFRPで構成される、請求項2に記載の歪み分布計測システム。
【請求項4】
前記歪み分布計測装置は、
前記試験片の前記主面に光を照射する光源部と、
前記試験片の前記主面を撮像する撮像部と、
を備え、
前記制御部は、前記撮像部の撮像画像に基づいて、前記試験片の歪み分布を算出する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の歪み分布計測システム。
【請求項5】
前記光源部は、
第1方向から前記試験片の前記主面に光を照射する第1光源と、
前記主面を含む平面の法線に対して前記第1方向と線対称の方向を示す第2方向から前記試験片の前記主面に光を照射する第2光源と、
を備える、請求項4に記載の歪み分布計測システム。
【請求項6】
前記光源部は、
前記試験片の前記主面に光を照射する光源と、
前記光源から出射される光線の偏光方向を直線偏光にする偏光部材と、
を備える、請求項4に記載の歪み分布計測システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記2次元DFTを用いた前記撮像画像の位相解析によって、前記試験片の歪み分布を算出する、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の歪み分布計測システム。
【請求項8】
試験片を変形させて、前記試験片の材料の機械的特性を測定する材料試験機と、前記試験片の歪み分布を計測する歪み分布計測装置と、を備える歪み分布計測システムにおける歪み分布計測方法であって、
前記試験片は、平織り又は綾織りされたFRP(Fiber Reinforced Plastics)であって、前記試験片を変形させた際に明領域と暗領域とが市松模様状に配置され、
前記歪み分布計測装置は、前記明領域及び前記暗領域を撮像した前記試験片の主面の画像に対して2次元DFT(Discrete Fourier Transform)を含む処理を行うことで、前記試験片の歪み分布を計測する、歪み分布計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機によって変形される試験片の歪み分布計測システム、及び歪み分布計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験機によって変形される試験片の表面の変位を計測する種々の技術が知られている。
例えば、特許文献1には、変位計測装置が、所定の位置に設けられた変位計測用の格子を含む変位計測用画像を撮影する撮影部と、変位計測用画像から格子の領域を検出して該格子領域の画像を抽出する格子領域検出部と、抽出した格子領域の画像に対してサンプリングモアレ法により格子領域の画像に対するモアレの位相分布を導出する位相分布導出部と、位相分布から求められた所定の位置における変位前後の位相差と、予め定められた格子ピッチとから所定の位置における変位を決定する変位決定部と、を備えた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-174874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の変位計測装置では、変位計測用の格子模様等を試験片の表面に形成する必要がある。例えば、引張試験機の試験片の変位分布を測定する場合には、ユーザは、例えば、格子模様のような模様を、試験片の表面に塗布又は貼付する必要があり、ユーザの手間を要した。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、材料試験機の試験片の歪み分布を測定するためのユーザの手間を軽減することが可能な歪み分布計測システム、及び歪み分布計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、試験片を変形させて、前記試験片の材料の機械的特性を測定する材料試験機と、前記試験片の歪み分布を計測する歪み分布計測装置と、を備え、前記試験片は、平織り又は綾織りされたFRP(Fiber Reinforced Plastics)であって、前記試験片を変形させた際に明領域と暗領域とが市松模様状に配置され、前記歪み分布計測装置は、前記明領域及び前記暗領域を撮像した前記試験片の主面の画像に対して2次元DFT(Discrete Fourier Transform)を含む処理を行うことで、前記試験片の歪み分布を計測する制御部を備える、歪み分布計測システムに関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、試験片を変形させて、前記試験片の材料の機械的特性を測定する材料試験機と、前記試験片の歪み分布を計測する歪み分布計測装置と、を備える歪み分布計測システムにおける歪み分布計測方法であって、前記試験片は、平織り又は綾織りされたFRP(Fiber Reinforced Plastics)であって、前記試験片を変形させた際に明領域と暗領域とが市松模様状に配置され、前記歪み分布計測装置は、前記明領域及び前記暗領域を撮像した前記試験片の主面の画像に対して2次元DFT(Discrete Fourier Transform)を含む処理を行うことで、前記試験片の歪み分布を計測する、歪み分布計測方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測する。
よって、試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測するため、格子模様のような模様を試験片に塗布又は貼付することなく、試験片の歪み分布を計測できる。したがって、格子模様のような模様を試験片に塗布又は貼付するユーザの手間を削減できる。その結果、材料試験機の試験片の歪み分布を測定するためのユーザの手間を軽減することができる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測する。
よって、試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測するため、格子模様のような模様を試験片に塗布又は貼付することなく、試験片の歪み分布を計測できる。したがって、格子模様のような模様を試験片に塗布又は貼付するユーザの手間を削減できる。その結果、材料試験機の試験片の歪み分布を測定するためのユーザの手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る引張試験機の構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る歪み分布計測システムの構成の一例を示す平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る撮像画像の一例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る歪み算出部の処理の一例を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る歪み分布計測システムの構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[1.引張試験機の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る引張試験機1の構成の一例を示す図である。
本発明の実施形態に係る引張試験機1は、試験片TPに試験力Fを与えて、試料の引張強度、降伏点などの機械的性質を測定する材料試験を行う。試験力Fは、引張力である。
引張試験機1は、試験対象の材料である試験片TPに試験力Fを与えて引張試験を行う引張試験機本体2と、引張試験機本体2による引張試験動作を制御する制御ユニット4と、を備える。
なお、引張試験機1は、「材料試験機」の一例に対応する。
本発明の実施形態は、後述にて図2図6を参照して説明する第1実施形態と、図7を参照して説明する第2実施形態とを含む。
【0013】
試験機本体2は、テーブル26と、このテーブル26上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設された一対のねじ棹28、29と、これらのねじ棹28、29に沿って移動可能なクロスヘッド10と、このクロスヘッド10を移動させて試験片TPに負荷を与える負荷機構12と、ロードセル14と、を備える。ロードセル14は、試験片TPに与えられる引張荷重である試験力Fを測定し、試験力測定信号SG1を出力するセンサである。
【0014】
負荷機構12は、各ねじ棹28、29の下端部に連結されるウォーム減速機16、17と、各ウォーム減速機16、17に連結されるサーボモータ18と、ロータリエンコーダ20と、を備える。ロータリエンコーダ20は、サーボモータ18の回転量を測定し、回転量に応じたパルス数の回転測定信号SG2を制御ユニット4に出力するセンサである。
そして負荷機構12は、ウォーム減速機16、17を介して、一対のねじ棹28、29にサーボモータ18の回転を伝達し、各ねじ棹28、29が同期して回転することにより、クロスヘッド10がねじ棹28、29に沿って昇降する。
【0015】
クロスヘッド10には、試験片TPの上端部を把持する上つかみ具21が付設され、テーブル26には、試験片TPの下端部を把持する下つかみ具22が付設されている。引張試験を実行するときには、試験機本体2は、上つかみ具21及び下つかみ具22が試験片TPの両端部を把持した状態で、制御ユニット4の制御に従って、クロスヘッド10を上昇させることによって、試験片TPに試験力Fを与える。
【0016】
試験片TPは、平織り、又は綾織りされた、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)及びGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)を含むFRP(Fiber Reinforced Plastics)で構成される。
本発明の実施形態では、試験片TPは、平織りされたCFRPで構成される。試験片TPは、経糸(たていと)VTと緯糸(よこいと)HTとを有する。
経糸VT及び緯糸HTについては、後述する図3を参照して詳細に説明する。
なお、本発明の実施形態では、試験片TPが、平織りされたCFRPで構成されるが本発明の実施形態はこれに限定されない。試験片TPが、平織り、又は綾織りされたFRPで構成されればよい。例えば、試験片TPが綾織りされたCFRPで構成されてもよい。また、例えば、試験片TPが平織りされたGFRPで構成されてもよい。
【0017】
制御ユニット4は、統括制御装置30と、表示装置32と、試験プログラム実行装置34と、を備える。
統括制御装置30は、当該試験機本体2を中枢的に制御する装置であり、試験機本体2との間で信号を送受信可能に接続される。試験機本体2から受信する信号は、ロードセル14が出力する試験力測定信号SG1、ロータリエンコーダ20が出力する回転測定信号SG2、及び制御や試験に要する適宜の信号などである。
表示装置32は、統括制御装置30から入力される信号に基づいて各種情報を表示する装置であり、例えば、統括制御装置30は、引張試験の間、回転測定信号SG2に基づくクロスヘッド10の変位を示す変位計測値XDを表示装置32に表示する。
【0018】
引張試験プログラム実行装置34は、引張試験の試験条件といった各種設定パラメータの設定操作や実行指示操作などのユーザ操作を受け付け、統括制御装置30に出力する機能や、試験力計測値FDのデータを解析する機能などを備えた装置である。
本発明の実施形態の引張試験プログラム実行装置34はコンピュータを備え、このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイスと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置と、統括制御装置30や各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。そして、プロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶されたコンピュータプログラムである引張試験プログラムを実行することで、上述の各種の機能を実現する。
【0019】
次いで、本発明の実施形態の統括制御装置30について、更に詳述する。統括制御装置30は、信号入出力ユニット40と、制御回路ユニット50と、を備える。
信号入出力ユニット40は、試験機本体2との間で信号を送受する入出力インターフェース回路を構成するものであり、本発明の実施形態では、第1センサアンプ42と、第2センサアンプ45と、カウンタ回路43と、サーボアンプ44とを有する。
第1センサアンプ42は、ロードセル14が出力する試験力測定信号SG1を増幅して制御回路ユニット50に出力する増幅器である。
カウンタ回路43は、ロータリエンコーダ20が出力する回転測定信号SG2のパルス数を計数し、サーボモータ18の回転量、すなわちサーボモータ18の回転によって昇降するクロスヘッド10の変位計測値XDを示す変位測定信号A3を制御回路ユニット50にデジタル信号で出力する。サーボアンプ44は、制御回路ユニット50の制御に従って、サーボモータ18を制御する装置である。
【0020】
制御回路ユニット50は、通信部51と、フィードバック制御部52を備える。
制御回路ユニット50は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、信号入出力ユニット40とのインターフェース回路と、引張試験プログラム実行装置34と通信する通信装置と、表示装置32を制御する表示制御回路と、各種の電子回路と、を備えたコンピュータを備える。また、制御回路ユニット50のプロセッサがメモリデバイス又はストレージ装置に記憶された制御プログラムを実行することで、図1に示す各機能部を実現する。
また、信号入出力ユニット40のインターフェース回路にはA/D変換器が設けられており、アナログ信号の試験力測定信号SG1がA/D変換器によってデジタル信号に変換される。
なお、制御回路ユニット50は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。
【0021】
通信部51は、試験プログラム実行装置34との間で通信し、試験条件の設定や各種設定パラメータの設定値、引張試験の実行指示や中断指示などを試験プログラム実行装置34から受信する。また、通信部51は、試験力測定信号SG1に基づく試験力計測値FDを適宜のタイミングで試験プログラム実行装置34に送信する。また、通信部51は、回転測定信号SG2に基づく変位計測値XDを適宜のタイミングで試験プログラム実行装置34に送信する。
【0022】
フィードバック制御部52は、試験機本体2のサーボモータ18をフィードバック制御して引張試験を実行する。フィードバック制御部52は、サーボモータ18のフィードバック制御を実行する回路である。
フィードバック制御部52が位置制御を実行する場合には、フィードバック制御部52は、例えば、ロードセル14が出力する試験力計測値FDについて位置制御を実行する。この場合には、フィードバック制御部52は、試験力計測値FDを試験力目標値FTに一致させるように変位計測値XDの指令値dXを演算し、当該指令値dXを示す指令信号A4をサーボアンプ44に出力する。なお、試験力目標値FTは、試験力計測値FDの目標値を示す。
なお、「位置制御」とは、センサ等によって測定された検出値を、その目標値に一致させるように制御することを示す。
【0023】
なお、本発明の実施形態では、フィードバック制御部52が位置制御を実行する場合について説明するが、フィードバック制御部52が速度制御を実行してもよい。「速度制御」とは、センサ等によって測定された検出値の単位時間当たりの変化量を、その目標値に一致させるように制御することを示す。
【0024】
[2.第1実施形態]
[2-1.第1実施形態に係る歪み分布計測システムの構成]
図2は、本発明の第1実施形態に係る歪み分布計測システム100の構成の一例を示す平面図である。図2に示すように、歪み分布計測システム100は、図1を参照して説明した引張試験機1と、歪み分布計測装置200とを備える。歪み分布計測装置200は、光源部6と、カメラ7と、制御部8と、を備える。
引張試験機1の上つかみ具21及び下つかみ具22は試験片TPを把持している。
【0025】
試験片TPは、主面MFを有する。主面MFは、試験片TPのカメラ7に近接する側の主面を示す。試験片TPのカメラ7に近接する側は、図2では下側を示す。
【0026】
カメラ7は、制御部8の指示に従って、試験片TPの主面MFの撮像画像PNを生成する。カメラ7は、CCD(Charge Coupled Device)、及び、CMOS(Complementary MOS)等のイメージセンサーを備える。
カメラ7は、「撮像部」の一例に対応する。また、撮像画像PNについては、後述にて図3を参照して説明する。
【0027】
カメラ7の撮影方向C1は、試験片TPの幅方向の中央を通り、試験片TPの主面MFと直交するようにカメラ7が配置される。試験片TPの幅方向C2は、図2の左右方向を示す。撮影方向C1は、カメラ7の撮影範囲の中心を示す。
【0028】
光源部6は、試験片TPの主面MFに光を照射する。光源部6は、第1光源61と、第2光源62とを含む。
第1光源61は、第1方向D1から試験片TPの主面MFに光を照射する。第1方向D1は、第1照射方向C3に対応する。第1照射方向C3を示す直線と幅方向C2を示す直線との狭角は、第1角θ1を示す。第1角θ1は、例えば、25度である。第1角θ1は、15度~30度の範囲であることが好ましい。
【0029】
第2光源62は、第2方向D2から試験片TPの主面MFに光を照射する。第2方向D2は、撮影方向C1を示す直線に対して第1方向D1と線対称の方向を示す。撮影方向C1を示す直線は、試験片TPの主面MFを含む平面の法線を示す。
第2方向D2は、第2照射方向C4に対応する。第2照射方向C4を示す直線と幅方向C2を示す直線との狭角は、第2角θ2を示す。第2角θ2の値は、第1角θ1の値と略一致する。すなわち、第2角θ2は、例えば、25度である。第2角θ2は、15度~30度の範囲であることが好ましい。
【0030】
第1光源61及び第2光源62の各々は、例えば白色のLED(Light Emitting Diode)光源である。
本発明の第1実施形態では、第1光源61及び第2光源62の各々が、LED光源であるが、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、第1光源61及び第2光源62の各々が、ハロゲンランプ、キセノンランプ等のランプ光源でもよい。
【0031】
制御部8は、歪み分布計測装置200の動作を制御する。また、制御部8は、制御回路ユニット50と通信可能に構成され、制御回路ユニット50からの指示に従って、光源部6及びカメラ7の動作を制御する。具体的には、制御部8は、制御回路ユニット50からの指示に従って、光源部6の発光タイミング、及びカメラ7の撮影タイミングを決定する。制御部8の構成については、後述にて図4を参照して詳細に説明する。
【0032】
第1実施形態に係る歪み分布計測システム100では、第1光源61及び第2光源62が、試験片TPに対して、幅方向C2に離間して配置されるが、本発明の実施形態はこれに限定されない。第1光源61及び第2光源62が、試験片TPに対して、1つの方向に離間して配置されればよい。例えば、第1光源61及び第2光源62が、試験片TPに対して、試験片TPの長手方向に離間して配置されてもよい。試験片TPの長手方向は、図2の紙面に垂直な方向を示す。
【0033】
[2-2.撮像画像の具体例]
図3は、本発明の第1実施形態に係る撮像画像PNの一例を示す図である。
撮像画像PNは、明領域PVと、暗領域PHとが市松模様状に配置されて構成される。
明領域PVは、第1光源61からの光線、及び第2光源62からの光線の各々の反射光のうちのカメラ7に入光する反射光の光量が、暗領域PHと比較して多い領域を示す。明領域PVは、経糸VTに対応する。
暗領域PHは、第1光源61からの光線、及び第2光源62からの光線の各々の反射光のうちのカメラ7に入光する反射光の光量が、明領域PVと比較して少ない領域を示す。暗領域PHは、緯糸HTに対応する。
【0034】
経糸VTを構成する繊維は、上下方向DVに延びる。上下方向DVは、試験片TPの上下方向と一致する。また、図2に示すように、試験片TPの上下方向は、第1方向D1及び第2方向D2と直交する。したがって、経糸VTの表面においては、緯糸HTの表面と比較して、第1光源61からの光線、及び第2光源62からの光線の各々が乱反射し易い。その結果、経糸VTに対応する明領域PVが生成される。
【0035】
一方、緯糸HTを構成する繊維は、左右方向DHに延びる。左右方向DHは、試験片TPの幅方向と一致する。また、図2に示すように、試験片TPの幅方向と第1方向D1とは、第1角θ1をなし、試験片TPの幅方向と第2方向D2とは、第2角θ2をなす。第1角θ1及び第2角θ2の各々は、25度である。したがって、緯糸HTの表面においては、経糸VTの表面と比較して、第1光源61からの光線、及び第2光源62からの光線の各々が正反射し易い。その結果、緯糸HTに対応する暗領域PHが生成される。
【0036】
[2-3.制御部の構成]
図4は、本発明の第1実施形態に係る制御部8の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、制御部8は、光源制御部81と、撮影制御部82と、歪み算出部83と、を備える。
また、制御部8は、CPUやMPU等のプロセッサ8Aと、ROMやRAM等のメモリデバイス8Bと、HDDやSSD等のストレージ装置8Cと、制御回路ユニット50の各々と通信する通信装置8Dと、各種の電子回路と、を備えたパーソナルコンピュータで構成される。また、制御部8のプロセッサ8Aがメモリデバイス8B又はストレージ装置8Cに記憶された制御プログラムを実行することで、図4に示す各機能部を実現する。
【0037】
なお、制御部8は、パーソナルコンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。また、制御部8は、例えば、タブレット端末、又はスマートフォンとして構成されてもよい。
また、制御部8は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等、プログラムされたハードウェアを備えてもよい。また、制御部8は、SoC(System-on-a-Chip)-FPGAを備えてもよい。
【0038】
光源制御部81は、試験片TPの主面MFに光源部6が光を照射するように、光源部6を制御する。具体的には、光源制御部81は、制御回路ユニット50からの指示に従って、光源部6を制御する。
また、光源制御部81は、撮影制御部82が撮像画像PNを生成するタイミングで、試験片TPの主面MFに光源部6が光を照射するように、光源部6を制御する。
【0039】
撮影制御部82は、カメラ7に試験片TPの主面MFを撮像させて、撮像画像PNを生成させる。具体的には、撮影制御部82は、制御回路ユニット50からの指示に従って、撮像画像PNを生成させる。
また、撮影制御部82は、所定時間毎に撮像画像PNを生成させる。所定時間は、例えば、0.01秒である。具体的には、引張試験機1が引張試験の実行を開始してから、引張試験の実行を終了するまでの間において、撮影制御部82は、所定時間毎に撮像画像PNを生成させる。
【0040】
歪み算出部83は、撮像画像PNに基づき、試験片TPの歪み分布を算出する。具体的には、歪み算出部83は、以下のようにして、試験片TPの歪み分布を算出する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る歪み算出部83の処理の一例を示す図である。図4の上図に示すように、以下の説明では、撮像画像PNが市松模様であるとする。
図4の上図に示すように、撮像画像PNの画素(x,y)を中心として、市松模様の1周期分に対応する画素を、x軸方向に個数Nx、y軸方向に個数Nyだけ抜き出す。図4の上図の横軸は、x軸であり、縦軸はy軸である。そして、市松模様の1周期分の輝度値I(x,y)を関数f(x,y,i,j)とする。
関数f(x,y,i,j)は、次の式(1)で与えられる。
【数1】
ここで、x軸方向は、試験片TPの幅方向に対応し、y軸方向は、試験片TPの上下方向に対応する。
図4の中図は、関数f(x,y,i,j)を示す。図4の中図の横軸は、x軸方向の画素数iであり、縦軸は、y軸方向の画素数jである。
【0041】
式(1)に示す関数f(x,y,i,j)に対して2次元DFT(Discrete Fourier Transformation)を行うと、図1の下図のように、空間周波数成分の分布が得られる。図1の下図の横軸は、x軸方向の周波数uを示し、縦軸は、y軸方の周波数vを示す。
撮像画像PNが市松模様である場合には、図1の下図に示すように、DC成分に対応する領域PX0以外の強度の高い成分として、領域PX0に対して斜め方向に位置し、基本周波数成分を示す2つの領域PX1及び領域PX2が現れる。
DFTで得られる成分は通常複素数であるが、分かりやすいように実数で表現すると、次の式(2)及び式(3)となる。
【数2】
【数3】
なお、式(2)に示す関数f(x,y,i,j)は、図1の下図に示す基本周波数成分を示す領域PX1に対応し、式(3)に示す関数f(x,y,i,j)は、図1の下図に示す基本周波数成分を示す領域PX2に対応する。ここで、関数f(x,y,i,j)、及び関数f(x,y,i,j)の各々の位相をx軸方向とy軸方向に分けて、関数φ(x,y)、及び関数φ(x,y)としている。周期Px、及び周期Pyの各々は、x軸方向とy軸方向の画素単位の模様周期(整数)を表す。関数f(x,y,i,j)、及び関数f(x,y,i,j)の各々の位相は、下記の式(4)及び式(5)で得られる。
【数4】
【数5】
【0042】
DFTは、処理する画像PN1の両端が連続であることを仮定しているが、カメラ7と試験片TPの主面MFとの距離の関係や、試験中に発生する試験片TPの歪みにより、撮影された模様の周期と抜き出す画素の周期にズレがあると、画像PN1の両端が不連続になってしまう。
そこで、窓関数を用いることで不連続の影響を低減する。窓関数には次の式(6)で示すガウシアン関数を用い、各画素の周辺画素も1周期よりも広く抜き出す。
【数6】
第1実施形態では、式(6)で示すσx、及びσyを、次の式(7)で規定し、周辺画素を3周期分抜き出した。
σx=Px/2,σy=Py/2 (7)
【0043】
式(6)を式(4)、及び式(5)と組み合わせると、畳み込み計算によって、次の式(8)~式(10)に示すように、全画素の位相をまとめて高速に計算することが出来る。
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
関数φ(x,y)、及び関数φ(x,y)の各々は、次の式(12)及び式(13)で得られる。
【数11】
【数12】
【0044】
このとき、関数φ(x,y)、及び関数φ(x,y)の各々は、-πからπの間の値として得られる。また、関数φ(x,y)、及び関数φ(x,y)で得られる模様と、関数φ(x,y)+π、及び関数φ(x,y)+πで得られる模様、若しくは、関数φ(x,y)-π、及び関数φ(x,y)-πで得られる模様とは、全く同じになるため、一意に位相を決定することができない。
そこで、関数φ(x,y)、及び関数φ(x,y)を次の式(14)及び式(15)に示すように規定することによって、関数φ(x,y)、及び関数φ(x,y)の各々の値が、零からπの間で一意に値が決まるようにする。
【数13】
【数14】
【0045】
その後、変形前後の位相値を比較するために、隣接する画素との位相の差分がπ/2より大きい、又は、-π/2より小さい場合には、π又は-πを加算する位相アンラッピング処理を行う。なお、位相アンラッピング処理は空間的な差分を用いるほか、時間的な差分を用いることもできる。
変形前の位相を関数φ (x,y)、及び関数φ (x,y)とし、変形後の位相を関数φ (x,y)、及び関数φ (x,y)とし、実スケールの模様周期をx軸方向の周期P’、及びy軸方向の周期P’とすると、x軸方向の変位u、及びy軸方向の変位uは次の式(16)及び式(17)で求められる。
【数15】
【数16】
【0046】
また、試験中の歪みにより模様周期が変化した場合には、位相の勾配から各画素における小数点以下を含む画素単位の模様のx軸方向の周期P、及びy軸方向の周期Pが次の式(18)及び式(19)で求められる。
【数17】
【数18】
よって、x軸方向の歪みε、及びy軸方向の歪みεの各々は、次の式(20)及び式(21)で求められる。
【数19】
【数20】
このようにして、歪み算出部83は、試験片TPのx軸方向の歪みεと、y軸方向の歪みεとを算出する。
【0047】
[2-4.制御部の処理]
図6は、本発明の第1実施形態に係る制御部8の処理の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、制御部8は、引張試験機1が引張試験を開始するか否かを判定する。具体的には、制御部8は、制御回路ユニット50からの情報に基づいて、引張試験機1が引張試験を開始するか否かを判定する。
引張試験を開始しないと制御部8が判定した場合(ステップS101;NO)には、処理が待機状態になる。引張試験を開始すると制御部8が判定した場合(ステップS101;YES)には、処理がステップS103に進む。
次に、ステップS103において、制御部8は、撮影タイミングであるか否かを判定する。具体的には、制御部8は、制御回路ユニット50からの指示に基づいて、撮影タイミングであるか否かを判定する。
撮影タイミングではないと制御部8が判定した場合(ステップS103;NO)には、処理が待機状態になる。撮影タイミングであると制御部8が判定した場合(ステップS103;YES)には、処理がステップS105に進む。
【0048】
そして、ステップS105において、光源制御部81が、試験片TPの主面MFに光源部6が光を照射するように光源部6を制御する。
次に、ステップS107において、撮影制御部82は、カメラ7に試験片TPの主面MFを撮像させて、撮像画像PNを生成する。
次に、ステップS109において、歪み算出部83は、撮像画像PNに対して、DFT処理を実行する。
次に、ステップS111において、歪み算出部83は、位相アンラッピング処理を実行する。
次に、ステップS113において、歪み算出部83は、x軸方向の歪みεと、y軸方向の歪みεとを算出する。
次に、ステップS115において、制御部8は、引張試験機1が引張試験を終了するか否かを判定する。具体的には、制御部8は、制御回路ユニット50からの情報に基づいて、引張試験機1が引張試験を終了するか否かを判定する。
引張試験を終了しないと制御部8が判定した場合(ステップS115;NO)には、処理がステップS103に戻る。引張試験を終了すると制御部8が判定した場合(ステップS115;YES)には、処理が終了する。
【0049】
[3.第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係る歪み分布計測システム100Aの構成の一例を示す平面図である。図7に示すように、歪み分布計測システム100Aは、引張試験機1と、歪み分布計測装置200Aとを備える。歪み分布計測装置200Aは、光源部6と、カメラ7と、制御部8と、ハーフミラー9と、を備える。光源部6は、光源60と、偏光部材63を備える。
【0050】
歪み分布計測システム100Aは、図2に示す歪み分布計測システム100と比較して、光源部6が1つの光源60と、偏光部材63とで構成される点で相違している。また、歪み分布計測システム100Aは、ハーフミラー9を備える点で相違している。以下では、歪み分布計測システム100Aが、図2に示す歪み分布計測システム100と相違する点について説明する。
【0051】
光源60は、ハーフミラー9に向けて光線L1を照射する。光源60は、例えば白色のLED光源である。
偏光部材63は、光源60とハーフミラー9との間に配置される。偏光部材63は、光源から出射される光線の偏光方向を直線偏光にする。偏光部材63は、例えば、複屈折型偏光子である。
すなわち、光源部6は、偏光部材63によって生成された直線偏光をハーフミラー9に照射する。
【0052】
ハーフミラー9は、カメラ7の撮影方向C1に配置される。ハーフミラー9は、カメラ7と、試験片TPとの間に配置される。また、ハーフミラー9は、光源部6に対して、試験片TPの幅方向C2と平行な位置に配置される。
【0053】
ハーフミラー9は、反射面91を備える。光線L1は、反射面91で反射し、反射光L2を試験片TPの主面MFに向けて出射する。反射光L2は、試験片TPの主面MFで反射して、反射光L3がハーフミラー9に入射する。反射光L3は、反射面91を透過して、透過光L4がカメラ7に入射する。
【0054】
反射光L2の偏光面は、例えば、図7の紙面と平行である。換言すれば、反射光L2の偏光面は、撮影方向C1を示す直線と、幅方向C2を示す直線とを含む平面と平行である。
図3を参照して説明したように、経糸VTを構成する繊維は、上下方向DVに延び、緯糸HTを構成する繊維は、左右方向DHに延びる。上下方向DVは、試験片TPの上下方向と一致し、左右方向DHは、試験片TPの幅方向と一致する。そこで、経糸VTの偏光特性と、緯糸HTの偏光特性とは相違する。
反射光L2の偏光面は、幅方向C2を示す直線を含む平面と平行であるため、例えば、経糸VTにおける反射光L3の光量は、緯糸HTにおける反射光L3の光量より多い。
したがって、図3に示すように、明領域PVと、暗領域PHとが市松模様状に配置されて構成される撮像画像PNがカメラ7によって撮像される。明領域PVは、経糸VTに対応し、暗領域PHは、緯糸HTに対応する。
【0055】
このようにして、第2実施形態に係る歪み分布計測システム100Aでは、試験片TPの主面MFにおける偏光特性の分布によって、図3に示すような市松模様状の撮像画像PNがカメラ7によって撮像される。したがって、歪み算出部83は、撮像画像PNに基づき、試験片TPの歪み分布を算出できる。
【0056】
また、第2実施形態に係る歪み分布計測システム100Aでは、反射光L2を試験片TPの主面MFと直交する方向に照射する。したがって、試験片TPの主面MFを、光量が均一になるように照射できる。
【0057】
[4.態様と効果]
上述した第1実施形態及び第2実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0058】
(第1項)
一態様に関わる変位分布計測システムは、試験片を変形させて、前記試験片の材料の機械的特性を測定する材料試験機と、前記試験片の歪み分布を計測する歪み分布計測装置と、を備え、前記歪み分布計測装置は、前記試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、前記試験片の歪み分布を計測する制御部を備える、歪み分布計測システムである。
【0059】
第1項に記載の変位分布計測システムによれば、試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測するため、試験片の主面に格子模様のような模様を試験片に塗布又は貼付することなく、試験片の歪み分布を計測できる。したがって、格子模様のような模様を試験片に塗布又は貼付するユーザの手間を削減できる。その結果、材料試験機の試験片の歪み分布を測定するためのユーザの手間を軽減することができる。
【0060】
(第2項)
第1項に記載の変位分布計測システムにおいて、前記試験片は、平織り、又は綾織りされた、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)及びGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)を含むFRP(Fiber Reinforced Plastics)で構成される。
【0061】
第2項に記載の変位分布計測システムによれば、前記試験片は、平織り、又は綾織りされた、CFRP及びGFRPを含むFRPで構成されるため、試験片の主面における反射率、及び偏光特性が、例えば市松模様状に分布する。したがって、試験片の歪み分布を正確に計測できる。
【0062】
(第3項)
第2項に記載の変位分布計測システムにおいて、前記試験片は、平織りされたCFRPで構成される。
【0063】
第3項に記載の変位分布計測システムによれば、試験片は、平織りされたCFRPで構成されるため、試験片の主面における反射率、及び偏光特性が、市松模様状に分布する。したがって、試験片の歪み分布を正確に計測できる。
【0064】
(第4項)
第1項から第3項のいずれか1項に記載の変位分布計測システムにおいて、前記歪み分布計測装置は、前記試験片の前記主面に光を照射する光源部と、前記試験片の前記主面を撮像する撮像部と、を備え、前記制御部は、前記撮像部の撮像画像に基づいて、前記試験片の歪み分布を算出する。
【0065】
第4項に記載の変位分布計測システムによれば、光源部が、試験片の主面に光を照射し、撮像部が試験片の主面を撮像するため、適正な撮像画像を生成できる。また、適正な撮像画像に基づいて、制御部が試験片の歪み分布を算出するため、正確な歪み分布を算出できる。
【0066】
(第5項)
第2項に記載の変位分布計測システムにおいて、前記光源部は、第1方向から前記試験片の前記主面に光を照射する第1光源と、前記主面を含む平面の法線に対して前記第1方向と線対称の方向を示す第2方向から前記試験片の前記主面に光を照射する第2光源と、を備える。
【0067】
第5項に記載の変位分布計測システムによれば、第1光源が、試験片の主面を第1方向から照射し、第2光源が、試験片の主面を、主面を含む平面の法線に対して第1方向と線対称の方向を示す第2方向から照射するため、試験片の主面を均一に照射できる。
また、第1光源が試験片の主面を第1方向から照射し、第2光源が試験片の主面を第2方向から照射するため、試験片の主面における反射率の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測できる。
【0068】
(第6項)
第4項に記載の変位分布計測システムにおいて、前記光源部は、前記試験片の前記主面に光を照射する光源と、前記光源から出射される光線の偏光方向を直線偏光にする偏光部材と、を備える。
【0069】
第6項に記載の変位分布計測システムによれば、直線偏光を試験片の主面に照射できる。したがって、試験片の主面における偏光特性の分布に基づいて、試験片の歪み分布を計測できる。
【0070】
(第7項)
第4項から第6項のいずれか1項に記載の変位分布計測システムにおいて、前記制御部は、2次元DFT(Discrete Fourier Transform)を用いた前記撮像画像の位相解析によって、前記試験片の歪み分布を算出する。
【0071】
第7項に記載の変位分布計測システムによれば、制御部は、2次元DFTを用いた撮像画像の位相解析によって、試験片の歪み分布を算出するため、簡素な処理で、試験片の歪み分布を正確に算出できる。
【0072】
(第8項)
一態様に関わる歪み分布計測方法は、試験片を変形させて、前記試験片の材料の機械的特性を測定する材料試験機と、前記試験片の歪み分布を計測する歪み分布計測装置と、を備える歪み分布計測システムにおける歪み分布計測方法であって、前記歪み分布計測装置は、前記試験片の主面における反射率、及び偏光特性の少なくともいずれか一方の分布に基づいて、前記試験片の歪み分布を計測する、変位分布計測方法である。
【0073】
第8項に記載の変位形状検出方法によれば、第1項に記載の変位分布計測システムと同様の効果を奏する。
【0074】
[5.その他の実施形態]
本発明の実施形態では、材料試験機が、引張試験機1である場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。材料試験機が、圧縮試験機でもよい。
【0075】
また、本発明の実施形態では、試験片TPが、平織りされたCFRPで構成されるが、本発明の実施形態はこれに限定されない。試験片TPが、平織り、又は綾織りされたFRPで構成されればよい。例えば、試験片TPが、平織りされたGFRPで構成されてよいし、試験片TPが、綾織りされたCFRPで構成されてもよい。
【0076】
また、本発明の実施形態では、材料試験機により試験片TPを変形させる場合について説明したが、測定対象の変化前と変化後の格子模様の状態に基づき、歪み分布及び変位分布を測定しても良い。例えば、測定対象を航空機、自動車としたとき、構成部材の成形過程で格子パターンを埋め込んだり、構成するガラスクロスの縦糸と横糸との色を変え織り込むことによって、メンテナンス前の格子パターンとメンテナンス時の格子パターンとをそれぞれ撮影可能とし、それらを撮影記録及び計測することで、歪み分布及び変位分布を測定してもよい。
なお、構成部材の表面に格子パターンが現れる場合には上記方法でよいが、格子パターンが構成部材に完全に埋め込まれている場合には、X線等の放射線を用いて格子模様を測定してもよい。
【0077】
また、本発明の実施形態では、撮影部を2つ以上設けることで試験対象の歪みを3次元的に解析又は測定してもよい。
【0078】
また、本発明の実施形態では、制御部8が、光源制御部81、撮影制御部82、及び歪み算出部83として機能する場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。制御回路ユニット50が、光源制御部81、撮影制御部82、及び歪み算出部83のうちの少なくとも1つとして機能してもよい。例えば、制御回路ユニット50が、光源制御部81、撮影制御部82、及び歪み算出部83として機能してもよい。
【0079】
また、図1及び図4の各々に示した各機能ブロックのうち少なくとも一部は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現される構成としてもよく、図に示した通りに独立したハードウェア資源を配置する構成に限定されない。
また、制御部8が実行する制御プログラムは、メモリー内の他の記憶部に記憶されてもよい。また、外部の装置に記憶された制御プログラムを、通信部等を介して取得して実行する構成としてもよい。
【0080】
また、図6に示すフローチャートの処理単位は、制御部8の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。図6の各々に示すフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって実施形態が制限されることはない。また、制御部8の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0081】
なお、本発明の実施形態に係る歪み分布計測システム100、100Aは、あくまでも本発明に係る変位分布計測装置の態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。
【符号の説明】
【0082】
100、100A 歪み分布計測システム
1 引張試験機(材料試験機)
2 引張試験機本体
10 クロスヘッド
12 負荷機構
14 ロードセル
15 サーボモータ
20 ロータリエンコーダ
21 上つかみ具
22 下つかみ具
4 制御ユニット
32 表示装置
34 試験プログラム実行装置
30 統括制御装置
40 信号入出力ユニット
50 制御回路ユニット
200、200A 歪み分布計測装置
6 光源部
60、61、62 光源
63 偏光部材
7 カメラ
8 制御部
8A プロセッサ
8B メモリデバイス
8C ストレージ装置
8D 通信装置
81 光源制御部
82 撮影制御部
83 歪み算出部
9 ハーフミラー
HT 緯糸
VT 経糸
PN 撮像画像
PV 明領域
PH 暗領域
TP 試験対象
MF 主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7