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特許7405010診断支援システム、診断支援装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】診断支援システム、診断支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231219BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B6/00 330A
A61B6/00 350Z
A61B6/00 360Z
G16H50/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020103419
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021194281
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長束 澄也
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-059610(JP,A)
【文献】特開2020-028310(JP,A)
【文献】特開2017-182615(JP,A)
【文献】特開2019-180512(JP,A)
【文献】特開2016-042876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0055647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14、5/055、5/00-5/01
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向から見たときの被検者の動きが写った放射線動画を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した前記放射線動画と、予め作成された人体の標準的な動作を示すモデル動画と、に基づいて、前記被検者に固有の三次元動画、又は前記放射線動画とは前記被検者が写る方向が異なる前記被検者に固有の他方向動画を生成する加工手段と、
前記加工手段が加工した前記三次元動画又は前記他方向動画を表示する表示手段と、を備える診断支援システム。
【請求項2】
前記生成手段が前記放射線動画を生成している間、前記被検者が訴えた痛みに関する情報を検出する検出手段を備え、
前記加工手段は、前記検出手段が検出した前記情報に基づいて、前記三次元動画又は前記他方向動画を構成する複数のフレームのうち、前記被検者が痛みを訴えたタイミングで生成されたフレームの表示方法を他のフレームの表示方法と異ならせる、請求項1に記載の診断支援システム。
【請求項3】
撮影オーダー情報を取得する取得手段と、
複数のモデル動画を格納する格納手段と、を備え、
前記加工手段は、前記格納手段に格納された複数の前記モデル動画の中から、前記取得手段が取得した撮影オーダー情報に対応する前記モデル動画を、前記三次元動画又は前記他方向動画を生成するための前記モデル動画として選択する、請求項1又は請求項2に記載の診断支援システム。
【請求項4】
前記生成手段が生成した前記放射線動画に基づいて診断対象部位を認識する認識手段と、
複数のモデル動画を格納する格納手段と、を備え、
前記加工手段は、前記格納手段に格納された複数の前記モデル動画の中から、前記認識手段が認識した前記診断対象部位に対応する前記モデル動画を、前記三次元動画又は前記他方向動画を生成するための前記モデル動画として選択する、請求項1又は請求項2に記載の診断支援システム。
【請求項5】
ユーザーによる診断情報の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が受け付けた前記診断情報を、前記三次元動画又は前記他方向動画を構成する複数のフレームのうち、ユーザーが選択したフレームに付加する付加手段と、を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【請求項6】
一方向から見たときの被検者の動きが写った放射線動画を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記放射線動画と、予め作成された人体の標準的な動作を示すモデル動画と、に基づいて、前記被検者に固有の三次元動画、又は前記放射線動画とは前記被検者が写る方向が異なる前記被検者に固有の他方向動画を生成する加工手段と、
前記加工手段が加工した前記三次元動画又は前記他方向動画を出力する出力手段と、を備える診断支援装置。
【請求項7】
診断支援装置の制御部に、
一方向から見たときの被検者の動きが写った放射線動画を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画と、予め作成された人体の標準的な動作を示すモデル動画と、に基づいて、前記被検者に固有の三次元動画、又は前記放射線動画とは前記被検者が写る方向が異なる前記被検者に固有の他方向動画を生成する加工処理と、
前記加工処理において加工した前記三次元動画又は前記他方向動画を出力する出力処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援システム、診断支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体における動作時に痛みが生じる部位を特定するための各種技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、患者の体内の位置で、疼痛の源と関係する疼痛因子に結合し、これをラベリングするように適合させたターゲッティングされるラベルを含む、ターゲッティングされる薬剤と、患者に、ターゲッティングされるラベルを送達するように適合させた送達アッセンブリと、当該位置における第1の濃度のラベルされた疼痛因子と、当該位置に隣接した組織における第2の濃度のラベルされた疼痛因子とを、選択的に区別するのに十分な様式で、ターゲッティングされるラベルまたはラベルされた疼痛因子の少なくとも1つを造影するように適合させた造影システムと、当該位置に隔離された、局所的な手法で、治療を提供するように適合させた治療デバイスアッセンブリと、を含むシステムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-151512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、疼痛因子を検出するのに薬剤又はマーカーを体内に投与するため、検査を行うこと自体が容易ではないし、疼痛の源を正確に検出することも容易ではない。
また、特許文献1に記載された技術は、薬剤又はマーカーが体内にある間でないと疼痛因子を検出することができないため、投与した直後に診断を行わなければならないし、後日同様の検査を行ったときに過去の状態と比較することもできない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、被検者の痛みが生じた部位やタイミングを容易且つ正確に特定することができ、診断や経過観察をいつでも行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る診断支援システムは、
一方向から見たときの被検者の動きが写った放射線動画を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した前記放射線動画と、予め作成された人体の標準的な動作を示すモデル動画と、に基づいて、前記被検者に固有の三次元動画、又は前記放射線動画とは前記被検者Sが写る方向が異なる前記被検者に固有の他方向動画を生成する加工手段と、
前記加工手段が加工した前記三次元動画又は前記他方向動画を表示する表示手段と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る診断支援装置は、
一方向から見たときの被検者の動きが写った放射線動画を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記放射線動画と、予め作成された人体の標準的な動作を示すモデル動画と、に基づいて、前記被検者に固有の三次元動画、又は前記放射線動画とは前記被検者Sが写る方向が異なる前記被検者に固有の他方向動画を生成する加工手段と、
前記加工手段が加工した前記三次元動画又は前記他方向動画を出力する出力手段と、を備える。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、
診断支援装置の制御部に、
一方向から見たときの被検者の動きが写った放射線動画を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画と、予め作成された人体の標準的な動作を示すモデル動画と、に基づいて、前記被検者に固有の三次元動画、又は前記放射線動画とは前記被検者Sが写る方向が異なる前記被検者に固有の他方向動画を生成する加工処理と、
前記加工処理において加工した前記三次元動画又は前記他方向動画を出力する出力処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検者の痛みが生じた部位やタイミングを容易且つ正確に特定することができるとともに、診断や経過観察をいつでも行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る診断支援システムを示すブロック図である。
図2】撮影時に被検者Sが行う所定動作の一例を示す図である。
図3】撮影時に被検者Sが行う所定動作の一例を示す図である。
図4】撮影時に被検者Sが行う所定動作の一例を示す図である。
図5図1の診断支援システムが備える診断支援装置を示すブロック図である。
図6図5の診断支援装置が格納するモデル動画の一例を示す図である。
図7図5の診断支援装置が格納するモデル動画の一例を示す図である。
図8図5の診断支援装置が実行する診断支援処理の流れを示すフローチャートである。
図9図5の診断支援装置が表示する三次元動画又は他方向動画の一例を示す図である。
図10図5の診断支援装置が表示する三次元動画又は他方向動画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0012】
〔1.診断支援システム〕
はじめに、本実施形態に係る診断支援システム(以下、システム100)の概略構成について説明する。
図1はシステム100を表すブロック図、図2~4は撮影時に被検者Sが行う所定動作の一例を示す図である。
【0013】
システム100は、図1に示すように、放射線発生装置1と、放射線検出器2と、診断支援装置3と、情報検知器4と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム100は、コンソール5と、動態解析装置6と、を更に備えている。
各装置1~6は、例えば通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0014】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と通信することが可能となっていてもよい。
【0015】
(放射線発生装置)
放射線発生装置1は、ジェネレーター11と、照射指示スイッチ12と、放射線源13と、を備えている。
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール5等と共に回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものとなっていてもよい。
【0016】
ジェネレーター11は、照射指示スイッチ12が操作されたことに基づいて、予め設定された撮影条件(例えば撮影部位、撮影方向、体格等の被検者Sに関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)等の放射線Rの照射に関する条件)に応じた電圧を放射線源13(管球)へ印加するようになっている。
【0017】
放射線源13は、ジェネレーター11から電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線R(例えばX線等)を発生させるようになっている。
また、放射線源13は、X軸方向、X軸と直交するY軸方向、X軸及びY軸と直交するZ軸方向に移動することが可能であるとともに、Y軸、Z軸と平行な回転軸を中心に回転して放射線の照射口の向きを変えることが可能となっている。
このため、放射線発生装置1は、任意の体位(立位、臥位、座位等)でいる被検者Sの任意の診断対象部位(膝、肩、肘、手首等)に放射線Rを照射することが可能となっている。
なお、診断対象部位が関節を含む部位である場合、診断対象部位は人工関節に置換された状態であってもよい。
【0018】
また、放射線発生装置1は、撮影形態(静止画撮影、動画撮影)に応じた態様で放射線Rを発生させるようになっている。
静止画撮影を行う場合には、1回の撮影操作(照射指示スイッチの押下)につき放射線Rの照射を1回だけ行う。
動画撮影を行う場合には、1回の撮影操作につきパルス状の放射線Rの照射を所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す、又は放射線Rの照射を所定時間継続する。
【0019】
(放射線検出器)
放射線検出器2は、図示を省略するが、放射線Rを受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子や電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子を備えた画素が二次元状(マトリクス状)に配列されたセンサー基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査回路、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し回路、読み出し回路が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータや各種信号等を外部へ送信したり、各種情報や各種信号を受信したりする通信部等を備えている。
【0020】
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線Rが照射されるタイミングと同期して、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを行うことにより、照射された放射線Rの線量に応じた放射線画像を生成するようになっている。
静止画撮影を行う場合には、1回の撮影操作(照射指示スイッチ12の押下)につき放射線画像の生成を1回だけ行う。
動画撮影を行う場合には、1回の撮影操作につき動画を構成するフレームの生成を所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す。
すなわち、放射線検出器2は、生成手段をなす。
【0021】
また、放射線検出器2は、生成した画像データに付帯情報を紐づけるようになっている。
本実施形態に係る放射線検出器2は、画像データのヘッダーに付帯情報を書き込むことにより画像データと情報データとを紐づけるようになっている。
本実施形態に係る付帯情報には、撮影オーダー情報が含まれる。
撮影オーダー情報には、撮影の仕方を規定する情報(撮影部位、撮影方向等)が含まれる。
【0022】
(コンソール)
コンソール5は、放射線発生装置1及び放射線検出器2のうちの少なくとも一方に各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、撮影部位、撮影方向等)を設定するものである。
コンソール5は、PCや専用の装置等で構成されている。
本実施形態に係るコンソール5は、撮影条件の設定を、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報やユーザー(例えば技師)による操作に基づいて行うようになっている。
【0023】
(診断支援装置)
診断支援装置3は、三次元動画M1又は他方向動画M2(詳細後述)を生成し、出力するものである。
診断支援装置3は、PCや専用の装置で構成されている。
なお、診断支援装置3は、コンソール5と一体になっていてもよい。
この診断支援装置3の詳細については後述する。
【0024】
(動態解析装置)
動態解析装置6は、放射線動画に基づいて被検者Sの診断対象部位の動態を解析するものである。
動態解析装置6は、PCや専用の装置等で構成されている。
なお、動態解析装置6は、コンソール5又は診断支援装置3と一体になっていてもよいし、コンソール5と診断支援装置3とが一体になったものと更に一体になっていてもよい。
【0025】
(情報検知器)
情報検知器4は、動画撮影を行っている間(放射線検出器2が放射線動画を生成している間)に発生した外部情報を検知するものである。
本実施形態に係る情報検知器4には、被検者Sの近傍に配置されるマイク、被検者Sが操作可能なボタン等が含まれる。
この「外部情報」は、撮影を行っている間に被検者Sが関節の曲げ伸ばし等によって痛みを感じたときに発した声や、被検者Sが痛みを感じたときに押しボタンを押したことにより出力された操作信号等である。
つまり、外部情報には、痛みが発生したタイミングを(場合によっては痛みの程度も)示す情報が含まれる。
【0026】
また、情報検知器4は、外部情報を検知すると、放射線動画に外部情報を付加する装置(放射線検出器2、診断支援装置3、コンソール5又は動態解析装置6)へ、検知した旨の情報検知信号を送信するようになっている。外部情報を付加する装置は、この情報検知信号を受信したことに基づいて放射線動画に外部情報を付帯させる。
情報検知器4は、以上のような動作をすることにより検出手段をなす。
【0027】
なお、マイクやボタンの代わりに、被検者Sを光学撮影するカメラと、カメラが生成した動画を解析する装置(動態解析装置6でもよい)を備え、被検者Sが痛みを感じたときの反射や表情の変化を外部情報として検知するようになっていてもよい。
また、情報検知器4は、情報検知信号を、放射線動画のデータを扱う他の装置(例えば、放射線検出器2、コンソール5、動態解析装置6等)に送信するようになっていてもよい。
【0028】
(診断支援システムを用いた診断の流れ)
このように構成された本実施形態に係るシステム100を用いた診断は、以下のよう流れで行われる。
まず、ユーザーが、間を空けて対向配置された放射線発生装置1の放射線源13と放射線検出器2との間に被検者を配置させる。
そして、ユーザーが、所定動作を行う被検者Sの診断対象部位へ放射線源13から放射線Rを照射させることにより、被検者Sを撮影する。すると、放射線検出器2は、一方向から見たときの被検者Sの診断対象部位の動きが写った放射線動画(動画データ)を生成する。
【0029】
所定動作には、例えば図2に示すような肩関節J1の屈曲・伸展、内転・外転、又は内旋・外旋、図3に示すような手関節J2の屈曲・伸展、図4に示すような膝関節J3の屈曲・伸展、内旋・外旋等が含まれる。
なお、このときの診断対象部位の撮影方向は、特に限定されるものではないが、生成される放射線動画の解析が困難にならない方向とするのが好ましい。
【0030】
放射線検出器2は、放射線動画を生成すると、その放射線動画を診断支援装置3へ送信する。
また、放射線検出器2は、必要に応じて、放射線動画を動態解析装置6へ送信する。この場合、動態解析装置6は、診断対象部位の動態を解析し、その解析結果を診断支援装置3へ送信する。
診断支援装置3は、放射線動画を受信すると、放射線動画に基づいて診断を支援するための三次元動画M1又は他方向動画M2(詳細後述)を生成し、表示する。
ユーザー(例えば医師)は、診断支援装置3に表示された三次元動画M1又は他方向動画M2に基づいて被検者Sの診断を行う。
【0031】
〔2.診断支援装置の詳細〕
次に、上記システム100が備える診断支援装置3の具体的構成及び動作について説明する。
図5は診断支援装置3を表すブロック図、図6,7はPACS3又は診断支援装置3が備えるモデル動画の一例を示す図、図8は診断支援装置3が実行する診断支援処理の流れを示すフローチャート、図9,10は診断支援装置3が表示する三次元動画M1又は他方向動画M2の一例を示す図である。
【0032】
(診断支援装置の具体的構成)
診断支援装置3は、図5に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、操作部35と、を備えている。
各部31~35は、バス等で電気的に接続されている。
【0033】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、診断支援装置3各部の動作を集中制御するようになっている。
【0034】
通信部32は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部32は、通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して有線又は無線で接続された他の装置(放射線検出器2、コンソール5、動態解析装置6等)との間で各種信号や各種データを送受信するようになっている。
【0035】
記憶部33は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
また、本実施形態に係る記憶部33は、各種動画(動画データ)を記憶することが可能となっている。
【0036】
また、記憶部33は、複数のモデル動画M0を格納する格納手段をなしている。
モデル動画M0は、例えば図6に示すような、予め作成された骨格Bの標準的な動作(図6は肩関節J1の内転・外転の例)を示す動画である。
モデル動画M0は、骨格Bのみのものであってもよいし、骨格Bの他に軟組織を有するものであってもよい。
また、モデル動画M0は、骨格Bが三次元になっている三次元モデル動画であってもよいし、二次元の骨格Bの表示方向(向き)が異なる複数の二次元モデル動画のセットであってもよい。
モデル動画M0は、表示部位毎に複数用意されている(図6は肩部のモデル動画M0の例である)。
また、モデル動画M0に写る骨格Bは、ユーザーが所望する状態(フレーム)で静止させることが可能となっている。
また、モデル動画M0に写る骨格Bは、例えば図7に示すように、ユーザーが所望する方向(前、後、横、上、下、斜め等)から見ることが可能となっている。
【0037】
表示部34は、ユーザーの診断に用いられる各種画面を表示するものである。
表示部34は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やELD(Electronic Luminescent Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等で構成されている。
そして、表示部34は、制御部31から受信した画像信号に応じたリストや放射線画像等を表示するようになっている。
【0038】
操作部35は、ユーザーが操作可能に構成された操作手段である。
操作部35には、カーソルキーや数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボード、ポインティングデバイス(マウス等)、表示部34の表面に積層されたタッチパネル等が含まれる。
そして、操作部35は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部31へ出力するようになっている。
【0039】
なお、診断支援装置3は、表示部34及び操作部35を備えず、診断支援装置3とは別に設けられた操作装置からの制御信号を入力し、診断支援装置3とは別に設けられた表示装置(モニター)へ画像信号を出力する入出力部を備えていてもよい。
【0040】
(診断支援装置の動作)
以上のように構成された診断支援装置3の制御部31は、所定条件が成立したことを契機として、例えば図8に示すような診断支援処理を実行するようになっている。
所定条件の成立には、例えば、電源がオンにされたこと、アプリケーションを起動したこと、放射線検出器2が放射線動画の生成を開始したこと等が含まれる。
【0041】
この診断支援処理において、制御部31は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理において、制御部31は、放射線動画を取得する。
制御部31は、放射線動画を放射線検出器2から取得するようになっていてもよいし、他の装置(コンソール5、動態解析装置6、PACS等)から取得するようになっていてもよい。
また、本実施形態に係る取得処理において、制御部31は、撮影オーダー情報を取得する。
本実施形態に係る撮影オーダー情報は、放射線動画に付帯されているため、放射線動画を取得することにより、放射線動画に対応する撮影オーダー情報を取得したことになる。
制御部31は、この取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0042】
放射線動画を取得した後、制御部31は、選択処理を実行する(ステップS2)。
この選択処理において、制御部31は、記憶部33に格納された表示部位の異なる複数のモデル動画M0の中から、取得処理において取得した撮影オーダー情報(撮影部位)に対応するモデル動画M0を、三次元動画M1又は他方向動画M2を生成するためのモデル動画M0として選択する。
【0043】
なお、上記取得処理の後に、放射線動画に基づいて撮影部位を認識する認識処理を実行するようになっていてもよい。
この場合、制御部31は、この認識処理を実行することにより認識手段をなすことになる。
そして、撮影部位を認識した後、制御部31は、上記選択処理において、認識処理において認識した撮影部位に対応するモデル動画M0を、三次元動画M1又は他方向動画M2を生成するためのモデル動画M0として選択するようになっていてもよい。
この場合、放射線動画への撮影オーダー情報への紐づけは必須ではない。
【0044】
モデル動画M0を選択した後、制御部31は、加工処理を実行する(ステップS3)。
この加工処理において、制御部31は、放射線動画と、モデル動画M0と、に基づいて、三次元動画又は他方向動画M2を生成する。
三次元動画M1は、上記三次元モデル動画に、放射線動画に基づいて得られた各種情報が付加された被検者Sに固有の動画である。
他方向動画M2は、上記複数の二次元モデル動画のセットのうち放射線動画とは被検者Sが写る方向が異なる(例えば、一方向と逆、一方向と直交する等)動画に、放射線動画に基づいて得られた各種情報が付加された被検者Sに固有の動画である。
【0045】
本実施形態に係る加工処理において、制御部31は、放射線動画に付加された外部情報(情報検知器4が検出した情報)に基づいて、三次元動画M1又は他方向動画M2を構成する複数のフレームのうち、被検者Sが痛みを訴えたタイミングで生成されたフレームF1の表示方法を他のフレームF2の表示方法と異ならせる。
具体的には、例えば図9に示すように、被検者Sが痛みを訴えたタイミングで生成されたフレームF1(当該フレームF1の前数フレームF2及び後数フレームF2のうちの少なくとも一方を含めてもよい)における、痛みが生じた部位(図9は肩甲骨B1の例)の色を変更する。
【0046】
なお、この加工処理において、制御部31は、動態解析装置6による放射線動画の解析結果に基づいて三次元動画M1又は他方向動画M2を生成するようになっていてもよい。
例えば、関節における骨と骨との間に作用する圧力の分布や変化が解析結果として得られた場合、制御部31は、骨に作用する圧力を色で表す。
また、関節における骨と骨とのずれが解析結果として得られた場合、制御部31は、モデル動画M0の骨がずれるようにしたり、ずれが生じたタイミングで生成されたフレームにおけるずれた骨の色を変更したりする。
また、診断対象部位の非連続的な動作(突発的な動作の変化)が解析結果として得られた場合、制御部31は、モデル動画M0の診断対象部位が非連続的な動作をするようにしたり、非連続的な動作が生じたタイミングで生成されたフレームにおける動作した部位の色を変更したりする。
制御部31は、以上説明してきた加工処理を実行することにより加工手段をなす。
【0047】
三次元動画M1又は他方向動画M2を生成した後、制御部31は、図8に示したように、出力処理を実行する(ステップS4)。
本実施形態に係る出力処理において、制御部31は、加工処理において加工した三次元動画M1又は他方向動画M2を表示部34に表示させる。
なお、表示部34を備えない診断支援装置の場合、制御部31は、加工した三次元動画M1又は他方向動画M2の画像信号を、診断支援装置3とは別に設けられた表示装置に送信する。
上述したように、三次元動画M1又は他方向動画M2は、被検者Sが痛みを訴えたタイミングで生成されたフレームF1における、痛みが生じた部位(骨)の色が変更されているため、ユーザーは、三次元動画M1又は他方向動画M2を再生しながら、痛みが生じたタイミングや部位を確認することができる。
【0048】
本実施形態に係る出力処理を実行している間、制御部31は、ユーザーの所定操作(シークバーのスライダーをドラッグ、シークバーの何処かをクリック又はタッチ、再生途中で停止ボタンをタッチまたはクリック等)に応じて、再生途中の三次元動画M1又は他方向動画M2を静止させることが可能となっている。
これにより、ユーザーは、診断対象部位を所望する状態で静止させながら時間をかけて診断することができる。
また、ユーザーは、三次元動画M1又は他方向動画M2を、所望するフレームから再生させることもできる。
【0049】
また、制御部31は、ユーザーの所定操作に応じて、三次元動画M1又は他方向動画M2の骨格Bの向きを変更することが可能となっている。
表示されているのが三次元動画M1である場合、制御部31は、例えばマウスのドラッグ操作、ホイールの回転等に応じて、動画内の骨格Bを回転させる。
一方、表示されているのが他方向動画M2である場合、制御部31は、例えば向きを指定する複数の操作ボタンのうち操作された操作ボタンに応じた他方向動画M2に切り替える。
これにより、ユーザーは、診断対象部位を所望する方向から診断することができる。
具体的には、ユーザーは、被検者Sが痛みを訴えたタイミングで生成された、痛みが生じた部位の色が変更されたフレームF1の診断対象部位を、図10に示すように、様々な方向(前、後、横、上、下、斜め等)から見て診断することができる。
制御部31は、以上説明してきた出力処理を実行することにより出力手段をなす。
また、制御部31及び表示部34は、表示手段をなす。
【0050】
なお、本実施形態に係る出力処理を実行している間、制御部31は、ユーザーによる診断情報の入力を受け付けることが可能となっていてもよい。
診断情報は、ユーザーが放射線動画を読影したとき、又は三次元動画M1又は他方向動画M2を見たときの所見や、ユーザーにとって関心の高い部位の位置等である。
診断情報の入力は、ユーザーによる操作部35への操作により行われてもよいし、他の入力手段により行われてもよい。
このようにすれば、制御部31は受付手段をなすこととなる。
【0051】
そして、制御部31は、診断情報を受け付けた場合に、付加処理を実行するようになっていてもよい。
この付加処理において、制御部31は、受け付けた診断情報を、三次元動画M1又は他方向動画M2を構成する複数のフレームF1,F2のうち、ユーザーが選択したフレームに付加する。
このとき、制御部31は、例えば、診断情報を、例えばアノテーション(テキスト、矢印等)の形で診断対象部位の画像の近傍に表示させる。
このようにすれば、制御部31は付加手段をなすこととなり、診断情報が付加された三次元動画M1又は他方向動画M2を用いて、診断結果を容易に被検者S等に説明することができる。
【0052】
〔3.効果〕
以上説明してきた診断支援装置3、及びこの診断支援装置3を備えるシステム100は、放射線検出器2が生成した放射線動画と、モデル動画M0と、に基づいて、三次元動画M1又は他方向動画M2を生成する。
三次元動画M1や他方向動画M2には、放射線画像に基づく各被検者Sに固有の情報が付加されている。特に三次元動画M1は、診断対象部位を一番見たい方向から診断することを可能にする。
このため、診断支援装置3及びシステム100によれば、被検者Sの痛みが生じた部位やタイミングを容易且つ正確に特定することができる。
【0053】
また、三次元動画M1又は他方向動画M2は、保存しておき、ユーザーの求めに応じていつでも呼び出すことができる。
また、例えばある時期(例えば、手術前、リハビリ前等)に被検者Sを撮影することにより生成された放射線動画に基づく三次元動画M1又は他方向動画M2と、ある時期とは異なる他の時期(例えば、手術後、リハビリ後等)に同じ被検者Sを撮影することにより生成された放射線動画に基づく第二の三次元動画M1又は第二の他方向動画M2と、を用意すれば、これらを比較することもできる。
このため、診断支援装置3及びシステム100によれば、診断や経過観察をいつでも行うことができる。
【0054】
また、手術(例えば人工関節の置換術)中に診断対象部位を撮影し、得られた放射線画像を解析して三次元動画M1又は他方向動画M2を生成すれば、手術を終える前に診断対象部位に不具合(例えば、人工関節と骨とのズレ等)が生じていないかどうかを確認することができるため、手術のやり直しによりユーザーや被検者Sの負担が増えてしまうのを防ぐことができる。
【0055】
〔4.その他〕
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0056】
例えば、制御部31は、放射線動画の取得を契機として診断支援処理を実行するようになっていてもよい。その場合、診断支援処理において取得処理の実行は不要となる。
また、放射線動画やモデル動画M0は、記憶部33ではなく、他の装置(コンソール5、動態解析装置6、PACS等)に記憶するようになっていてもよい。
【0057】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0058】
100 診断支援システム
1 放射線発生装置
11 ジェネレーター
12 照射指示スイッチ
13 放射線源
2 放射線検出器(生成手段)
3 診断支援装置
31 制御部(加工手段、取得手段、認識手段、受付手段、付加手段、出力手段)
32 通信部
33 記憶部(格納手段)
34 表示部
35 操作部
4 情報検知器(検出手段)
5 コンソール
6 動態解析装置
B 骨格
1 肩甲骨
1 被検者Sが痛みを訴えたタイミングで生成されたフレーム
2 他のフレーム
1 肩関節
2 手関節
3 膝関節
0 モデル動画
1 三次元動画
2 他方向動画
N 通信ネットワーク
R 放射線
S 被検者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10