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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020113840
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012190
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 常規
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0152043(US,A1)
【文献】特開2017-171154(JP,A)
【文献】米国特許第02210533(US,A)
【文献】特開2019-077381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126988(US,A1)
【文献】特開2019-142348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0256154(US,A1)
【文献】特開2015-168421(JP,A)
【文献】特開2018-008587(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19960784(DE,A1)
【文献】特開2015-151044(JP,A)
【文献】特開2011-105102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体構造であって、
少なくとも1つの閉断面を構成する車両前後方向に延びる一対のルーフサイドレールと、
前記一対のルーフサイドレールに架設され、車幅方向に延びるルーフパネルと、を備え、
前記ルーフパネルは、前記車幅方向に延びる本体部と、当該本体部の車幅方向両側端部に設けられ、前記閉断面の下面に沿って車幅方向に延びるフランジ部とを有し、
前記フランジ部は、前記閉断面の前記下面に固定され、
前記ルーフサイドレールは、第1フレームと当該第1フレームに接着された第2フレームとによって形成され、
前記第1フレームおよび前記第2フレームは、それぞれ前記閉断面を有し、
前記第2フレームの前記閉断面は、前記第1フレームおよびフランジ部の上部を覆うように前記車幅方向に延びており、
前記第2フレームの前記閉断面の前記下面は、前記第1フレームの上面に接着された第1接着面と、前記フランジ部に接着された第2接着面とを有し、
前記第1接着面と前記第2接着面とが略同一平面上に配置されている、
車体構造。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記閉断面の前記下面に対して、接着材により接着されるとともに締結具により締結されている、
請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記第2フレームの前記閉断面は、前記第2フレームにおける前記第1フレームの上方の位置から車幅方向内側に延びる内側延設部を有し、
前記内側延設部の下面には、前記第2接着面が配置されている、
請求項に記載の車体構造。
【請求項4】
前記第2フレームは、前記第1接着面よりも車幅方向外側において異なる方向を向く第3接着面をさらに有し、
第1フレームは、前記上面に隣接する側面をさらに有し、
前記第1接着面が前記第1フレームの前記上面に接着されるとともに前記第3接着面が前記第1フレームの前記側面に接着されている、
請求項に記載の車体構造。
【請求項5】
前記第2フレームは、前記第1フレームよりも引張強度が高く、かつ軽量であり、
前記第2フレームの図心は、前記第1フレームの図心よりも車両中心に対して車幅方向外側に配置されている、
請求項のいずれか1項に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体のルーフパネルの車幅方向両側端部を一対のルーフサイドレールに固定するために種々の構造がある。
【0003】
一般的な車幅構造では、特許文献1に記載されているように、一対のルーフサイドレールにそれぞれ設けられたブラケットと、ルーフパネルの車幅方向両側端部に設けられたフランジとをそれぞれ溶接などによって接合している。
【0004】
具体的には、特許文献1記載のルーフパネルは、その車幅方向両側端部を下向きに折り曲げた段差部と、段差部の下端を車幅方向外向きに折り曲げたフランジとを備えている。ルーフパネルのフランジは、一対のルーフサイドレールの車幅方向内側の側面から車両内方に突出して設けられたブラケットの上方から重ね合わせて溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-151044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の車体構造では、ルーフパネルの車幅方向両側端部のフランジをルーフサイドレール側のブラケットに上方から重ね合わせて溶接することによってルーフサイドレールの強固な固定を実現している。この構造では、ルーフパネル本体とフランジとの間に段差部が設けられているので、フランジとブラケットとの溶接部分は外部から見えにくくなっているが、ルーフパネルの車幅方向両側に段差部が存在することによって、車体のデザイン性の向上が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ルーフパネルとルーフサイドレールとの強固な固定と車体のデザイン性の向上との両立が可能な車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の車体構造は、自動車の車体構造であって、少なくとも1つの閉断面を構成する車両前後方向に延びる一対のルーフサイドレールと、前記一対のルーフサイドレールに架設され、車幅方向に延びるルーフパネルと、を備え、前記ルーフパネルは、前記車幅方向に延びる本体部と、当該本体部の車幅方向両側端部に設けられ、前記閉断面の下面に沿って車幅方向に延びるフランジ部とを有し、前記フランジ部は、前記閉断面の前記下面に固定され、前記ルーフサイドレールは、第1フレームと当該第1フレームに接着された第2フレームとによって形成され、前記第1フレームおよび前記第2フレームは、それぞれ前記閉断面を有し、前記第2フレームの前記閉断面は、前記第1フレームおよびフランジ部の上部を覆うように前記車幅方向に延びており、前記第2フレームの前記閉断面の前記下面は、前記第1フレームの上面に接着された第1接着面と、前記フランジ部に接着された第2接着面とを有し、前記第1接着面と前記第2接着面とが略同一平面上に配置されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ルーフサイドレールの少なくとも1つの閉断面の下面にルーフパネルのフランジ部を固定することにより、ルーフパネルに作用する引張荷重に対する強度を高めることが可能である。しかも、フランジ部はルーフサイドレールの閉断面の下面に固定されているので、フランジ部が外部から視認されなくなるとともに従来の車体構造に有った段差部が形成されなくなる。その結果、ルーフパネルとルーフサイドレールとの強固な固定と車体のデザイン性の向上との両立が可能になる。
また、上記の構成によれば、ルーフサイドレールが第1フレームと第2フレームとにより形成され、前記第2フレームの前記閉断面は、略同一平面上に配置された第1接着面および第2接着面で第1フレームの上面およびフランジ部にそれぞれ接着される。この構成では、ルーフパネルに作用するせん断方向の荷重がフランジ部と接着される第2接着面を介して第2フレームに入力されても、第2接着面と略同一平面上にある第1接着面を介して第1フレームにせん断方向に作用する荷重を伝達することが可能になる。これにより、第1接着面において面外方向にかかる荷重、すなわち第1接着面で剥離を生じさせる荷重が生じにくくなる。その結果、ルーフパネルのせん断方向に作用する荷重に対する強度を強くすることが可能である。
【0010】
上記の車体構造において、前記フランジ部は、前記閉断面の前記下面に対して、接着材により接着されるとともに締結具により締結されているのが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、フランジ部がルーフサイドレールの閉断面の下面に対して接着材による接着と締結具による締結の両方によって固定されているので、ルーフパネルをルーフサイドレールにより強固に固定することが可能である。すなわち、この構成では、締結具による締結によってフランジ部がルーフサイドレールの閉断面の下面から離脱しにくくなるので、接着材の剥離を抑制することが可能である。また、接着材による接着によって、フランジ部が閉断面の下面に沿ってずれにくくなるので締結具の位置におけるフランジ部の応力集中による損傷を防ぐことが可能である。これらの相乗効果によって、上記のようにルーフパネルをルーフサイドレールにより強固に固定することが可能である。
【0014】
上記の車体構造において、前記第2フレームの前記閉断面は、前記第2フレームにおける前記第1フレームの上方の位置から車幅方向内側に延びる内側延設部を有し、前記内側延設部の下面には、前記第2接着面が配置されているのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、ルーフパネルのフランジ部と接着する第2フレームの第2接着面が、第2フレームの閉断面の下面、具体的には、閉断面の車幅方向内側に延びる内側延設部の下面に配置されている。これにより、フランジ部と接着する第2接着面を第2フレームの閉断面によって支持することが可能であり、第2接着面の引張強度を確保することが可能である。しかも、第2フレームの内側延設部が第1フレームの上方の位置から車幅方向内側に延びて、ルーフパネルの本体部に近づくことにより、ルーフパネルの本体部と第2フレームとの隙間を小さくすることが可能であり、車体のデザイン性が向上する。
【0016】
上記の車体構造において、前記第2フレームは、前記第1接着面よりも車幅方向外側において異なる方向を向く第3接着面をさらに有し、第1フレームは、前記上面に隣接する側面をさらに有し、前記第1接着面が前記第1フレームの前記上面に接着されるとともに前記第3接着面が前記第1フレームの前記側面に接着されているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、第2フレームが第1フレームに対して第1接着面だけでなく第1接着面と異なる方向を向く第3接着面で接着されているので、ルーフパネルに作用するせん断方向の荷重が第2フレームに入力されても、第2フレームが第1フレームから剥離して第1フレームに対して相対的に移動するおそれが低減する。
【0018】
上記の車体構造において、前記第2フレームは、前記第1フレームよりも引張強度が高く、かつ軽量であり、前記第2フレームの図心は、前記第1フレームの図心よりも車両中心に対して車幅方向外側に配置されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、第1フレームよりも引張強度が高くて軽量な第2フレームの図心が当該第1フレームの図心よりも車両中心に対して車幅方向外側に配置されている。これにより、車両走行時において車両中心に対する慣性モーメントを小さくしながら、車体変形を抑えることが可能になり、車体の軽量化と車両の操縦安定性の向上との両立が可能になる。また、アルミニウムなどの同一材料で複数の閉断面を有する単一のフレームを構成するよりも異種材料の第1フレームおよび第2フレーム全体の外形寸法の増大を抑えることが可能になり、車体のデザイン自由度の向上も可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車体構造によれば、ルーフパネルとルーフサイドレールとの強固な固定と車体のデザイン性の向上との両立を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る車体構造を有する車両の全体構成を示す側面図である。
図2図1の車両の正面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図3の左側のルーフサイドレールおよびその周辺の拡大断面図である。
図5図1のV-V線断面における図4の左側のルーフサイドレールおよびその周辺の拡大断面図である。
図6図4のルーフサイドレールの第1フレームおよび第2フレーム、ならびにルーフパネルのフランジ部の拡大断面図である。
図7図1の車体の一対のルーフサイドレールおよびルーフパネルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0023】
図1~3および図7に示される車体構造は、自動車などの車両1の車体構造であり、車体2の上部を構成する一対のルーフサイドレール3と、フロントウインド4と、一対のルーフサイドレール3に架設され、車幅方向Yに延びるルーフパネル5と、車体2の車幅方向Yの両側に取り付けられた一対のドア6とを備える。
【0024】
一対のルーフサイドレール3は、それぞれ、車両前後方向Xに延びるルーフサイドレール本体部3bと、ルーフサイドレール本体部3bの前端から車両1の下方かつ車両前方X1に延びるピラー部3aとを有する。
【0025】
フロントウインド4は、一対のルーフサイドレール3におけるピラー部3aの間を覆うように設けられている。フロントウインド4の両側端は、ピラー部3aに沿うように上方かつ車両後方X2に延びている。
【0026】
ルーフパネル5は、一対のルーフサイドレール3におけるルーフサイドレール本体部3bの間を覆い、車体2の天井部を構成している。ルーフパネル5の両側端は、ルーフサイドレール本体部3bに沿うように車両後方X2に延びている。
【0027】
具体的には、ルーフパネル5は、車幅方向Yに延びる本体部5aと、当該本体部5aの車幅方向Y両側端部に設けられ、ルーフサイドレール3の閉断面12aの下面12f(図6参照)に沿って車幅方向Yに延びるフランジ部5bとを有する。ルーフパネル5は、図7に示されるように、一対のルーフサイドレール3の間に架設された車幅方向Yに延びる2本のビーム7、8に載置された状態で、一対のルーフサイドレール3の両側端のフランジ部5bが一対のルーフサイドレール3のそれぞれに固定される。
【0028】
一対のルーフサイドレール3のそれぞれは、異種材料で構成された複合フレームで構成され、具体的には、図3~6に示されるように、第1フレーム11および第2フレーム12によって構成されている。第1フレーム11および第2フレーム12は、車幅方向Yおよび上下方向Zに互いに並び、車両前後方向Xに延びている。
【0029】
第1フレーム11は、第1材料からなり閉断面11aを有し、車両1の前後方向Xに延びる長尺の筒状体である。
【0030】
第1フレーム11は、第1材料として例えばアルミニウムやスチールなどの剛性があってかつ安価に製造可能な金属材料などで製造される。
【0031】
図6に示される第1フレーム11は、車両1の正面断面視で複数の辺11b、11c、11d、11eを有する多角形形状、本実施形態ではひし形形状を有する。言い換えれば、これら複数の辺11b、11c、11d、11eによって、ひし形形状(多角形形状)の閉断面11aが構成される。
【0032】
複数の辺11b、11c、11d、11eは、第1フレーム11の外周面を構成する面が車幅方向外側Y1を向く少なくとも2つの外側辺として、第1外側辺11bおよび第2外側辺11cを有する。第1外側辺11bは、第1フレーム11の車幅方向外側Y1であって斜め上方を向いている。第2外側辺11cは、第1フレーム11の車幅方向外側Y1であって斜め下方を向いている。
【0033】
これに対して、第2フレーム12は、上記の少なくとも2つの外側辺11b、11cのそれぞれに固定可能な面として、後述の少なくとも2つの固定面12b1、12b2を備える。
【0034】
したがって、第1フレーム11は、車幅方向Yにおいて外側を向く少なくとも2つの外側辺11b、11cを有することにより、1つの外側辺しか無い場合(例えば、矩形断面の第1フレーム11が外側辺11bのみが車幅方向外側Y1を向いている場合)と比較して、第2フレーム12を接着などで固定するための面積を広く確保することが可能である。
【0035】
第2フレーム12は、第1材料と異なる第2材料からなり閉断面12aを有し、車両1の前後方向Xに延びる長尺の筒状体である。
【0036】
第2フレーム12は、第2材料として、例えば炭素繊維などで強化されたCFRPなどの強化繊維樹脂で製造されている。CFRPなどの強化繊維樹脂は、上記の第1材料に採用されるアルミニウムやスチールなどの金属材料と比較して軽量(すなわち、単位重量当たりの重量(または比重)が軽い)でかつ引張強度が高い(さらに詳しく言えば、ねじり剛性や曲げ剛性などの剛性が高い)性質を有する。
【0037】
第2フレーム12は、図6に示されるように、車両1の車幅方向Yで切断した場合に閉断面12aを有する筒状の形状を有する。閉断面12aは、第1フレーム固定部12bと、外面構成部12cと、ウェザーストリップ取付部12dとの3つで形成されている。これら第1フレーム固定部12bと、外面構成部12cと、ウェザーストリップ取付部12dは、それぞれCFRPなどからなる薄板の繊維強化樹脂材料で製造される。薄板の繊維強化樹脂材料は、それぞれ炭素繊維などの強化繊維が第2フレーム12の長手方向(主に車両前後方向X)に延びるように配向されている。カーボンファイバーの焼結時にこれら第1フレーム固定部12bと、外面構成部12cと、ウェザーストリップ取付部12dが結合されることにより、閉断面12aを有する第2フレーム12が製造される。このような繊維強化樹脂材料で形成された閉断面12aを有する構造により、第2フレーム12は、第1フレーム11よりも引張強度が高く、かつ軽量(すなわち、単位重量当たりの重量(または比重)が軽い)になっている。また、第1フレーム11および第2フレーム12の正面断面視において、第2フレーム12の図心C2は、第1フレーム11の図心C1よりも車両中心CLに対して中心に対して車幅方向外側Y1に配置されている。
【0038】
なお、「正面断面視」とは、第1フレーム11および第2フレーム12の延伸方向に対する断面を車両前方から見た断面視を意味する。また、図心C1とは、第1フレーム11の車幅方向断面の中心(重心)を意味する。図心C2とは、第2フレーム12の車幅方向断面の中心(重心)を意味する。
【0039】
また、図2に示されるように、車両中心CLについての車幅方向Yの位置は、車両正面視で車両1の中心に位置しており、車両1の重心Gと同じである。
【0040】
第1フレーム固定部12bは、第1フレーム11の2つの外側辺11b、11cとそれぞれ固定可能な2つの固定面として、第1固定面12b1と、第2固定面12b2とを備える。すなわち、第1固定面12b1は、外側辺11bに固定可能であり、第2固定面12b2は、外側辺11cに固定可能である。
【0041】
第1固定面12b1および第2固定面12b2は、異なる方向を向いており、図3~5に示される本実施形態では互いに直交している。
【0042】
本実施形態では、図6に示されるように、第2フレーム12の少なくとも2つの固定面12b1、12b2が第1フレーム11の少なくとも2つの外側辺11b、11cにそれぞれ接着されている。
【0043】
具体的には、第1固定面12b1の下面である後述の第1接着面12f1は、第1フレーム11の上面である車幅方向外側Y1であって斜め上方を向く第1外側辺11bに対向し、接着材13によって第1外側辺11bに接着されている。
【0044】
第2固定面12b2の車幅方向内側Y2を向く面である後述の第3接着面12hは、第1フレーム11の車幅方向外側Y1であって斜め下方を向く第2外側辺11cに対向し、接着材15によって第2外側辺11cに接着されている。
【0045】
なお、本実施形態では、接着材13、15は、分離しているが、つながっていてもよい。
【0046】
外面構成部12cは、車両1の外側から見える部分であり、車両1の意匠面の一部を構成する。
【0047】
ウェザーストリップ取付部12dは、車両1の車幅方向外側Y1を向いて開口する嵌合凹部12d1(図7参照)を有する。嵌合凹部12d1は、車両前後方向Xに延びる溝であり、長尺の樹脂材料のウェザーストリップを取付けることが可能である。
【0048】
本実施形態では、第2フレーム12はウェザーストリップ取付部12dを一体形成によって含んでいるので、別部材を取り付けた場合の出っ張りや継ぎ目などが無くなり、その結果、車両1のデザイン性が向上する。
【0049】
なお、接着以外の方法で固定、例えばリベット接合などを用いてもよいし、または接着およびリベット接合を併用してもよい。
【0050】
図6に示されるように、第2フレーム12における閉断面12a(具体的には、第1フレーム固定部12bの第1固定面12b1)は、下面12fを有する。
【0051】
ルーフパネル5のフランジ部5bは、ルーフサイドレール3における閉断面12aの下面12fに固定されている。
【0052】
具体的には、第2フレーム12におけるルーフパネル5と平行になるように延びている部分では、閉断面12aは、第2フレーム12における第1フレーム11の上方の位置から車幅方向Yの内側Y2に延びる内側延設部12gを有する。すなわち、第2フレーム12の閉断面12aを構成する第1フレーム固定部12bおよび外面構成部12cが第1フレーム11の上方の第1外側辺11bよりも車幅方向Yにおける内側Y2に突出することにより、閉断面12aの内側延設部12gが形成されている。内側延設部12gの下面には、後述の第2接着面12f2が配置されている。
【0053】
一方、ルーフパネル5の車幅方向Yにおける両側には、車幅方向Yの外側Y1に突出する上記のフランジ部5bが形成されている。フランジ部5bが閉断面12aの内側延設部12gの下面に配置された第2接着面12f2に接着されることにより、ルーフパネル5の両側端部を一対のルーフサイドレール3にそれぞれ固定することが可能である。
【0054】
なお、フランジ部5bは、閉断面12aの下面12fに対して、接着材14により接着されるとともにボルトまたはリベットなどの締結具Bにより締結されているのが好ましい。
【0055】
本実施形態では、図6に示されるように、第2フレーム12の閉断面12aは、第1フレーム11およびフランジ部5bの上部を覆うように車幅方向Yに延びている。
【0056】
閉断面12aの下面12fは、第1フレーム11の上面である第1外側辺11bに接着された第1接着面12f1と、フランジ部5bに接着された第2接着面12f2とを有する。第1接着面12f1と第2接着面12f2とが略同一平面上に配置されている。
【0057】
第2フレーム12は、図6に示されるように、第1接着面12f1よりも車幅方向外側Y1において異なる方向、本実施形態では直交する方向を向く第3接着面12hをさらに有する。第1フレーム11は、上面である第1外側辺11bに隣接する側面である第2外側辺11cをさらに有する。
【0058】
第1接着面12f1が第1フレーム11の上面である第1外側辺11bに接着材13で接着されるとともに第3接着面12hが第1フレーム11の側面である第2外側辺11cに接着材15で接着されている。
【0059】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の自動車の車体構造は、図1~3および図7に示されるように、自動車の車体構造であって、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の閉断面11a、12aを構成する車両前後方向Xに延びる一対のルーフサイドレール3と、一対のルーフサイドレール3に架設され、車幅方向Yに延びるルーフパネル5とを備えている。ルーフパネル5は、車幅方向Yに延びる本体部5aと、当該本体部5aの車幅方向Yの両側端部に設けられ、閉断面12aの下面12fに沿って車幅方向Yに延びるフランジ部5bとを有する。フランジ部5bは、ルーフサイドレール3における閉断面12aの下面12fに固定されている。
【0060】
かかる構成によれば、ルーフサイドレール3の閉断面12aの下面12fにルーフパネル5のフランジ部5bを固定することにより、ルーフパネル5に作用する引張荷重に対する強度を高めることが可能である。しかも、フランジ部5bはルーフサイドレール3の閉断面12aの下面12fに固定されているので、フランジ部5bが外部から視認されなくなるとともに従来の車体構造に有った段差部が形成されなくなる。その結果、ルーフパネル5とルーフサイドレール3との強固な固定と車体のデザイン性の向上との両立が可能になる。
【0061】
(2)
本実施形態の自動車の車体構造では、図6に示されるように、フランジ部5bは、閉断面12aの下面12fに対して、接着材14により接着されるとともに締結具Bにより締結されているのが好ましい。
【0062】
かかる構成によれば、フランジ部5bがルーフサイドレール3の閉断面12aの下面12fに対する接着材14による接着と締結具Bによる締結の両方によって固定されているので、ルーフパネル5をルーフサイドレール3により強固に固定することが可能である。すなわち、この構成では、締結具Bによる締結によってフランジ部5bがルーフサイドレール3の閉断面12aの下面12fから離脱しにくくなるので、接着材14の剥離を抑制することが可能である。また、接着材14による接着によって、フランジ部5bが閉断面12aの下面12fに沿ってずれにくくなるので締結具Bの位置におけるフランジ部5bの応力集中による損傷を防ぐことが可能である。これらの相乗効果によって、上記のようにルーフパネル5をルーフサイドレール3により強固に固定することが可能である。
【0063】
(3)
本実施形態の自動車の車体構造では、図6に示されるように、ルーフサイドレール3は、第1フレーム11と当該第1フレーム11に接着された第2フレーム12とによって形成されている。第1フレーム11は、閉断面11aを有し、第2フレーム12は閉断面12aを有する。第2フレーム12の閉断面12aは、第1フレーム11およびフランジ部5bの上部を覆うように車幅方向Yに延びている。第2フレーム12の閉断面12aの下面12fは、第1フレーム11の上面である第1外側辺11bに接着された第1接着面12f1と、フランジ部5bに接着された第2接着面12f2とを有する。第1接着面12f1と第2接着面12f2とが略同一平面上(好ましくは、同一平面上)に配置されている。
【0064】
かかる構成によれば、ルーフサイドレール3が第1フレーム11と第2フレーム12とにより形成されている。第2フレーム12の閉断面12aは、略同一平面上に配置された第1接着面12f1および第2接着面12f2において、第1フレーム11の上面およびフランジ部5bにそれぞれ接着される。この構成では、ルーフパネル5に作用するせん断方向の荷重がフランジ部5bと接着される第2接着面12f2を介して第2フレーム12に入力されても、第2接着面12f2と略同一平面上にある第1接着面12f1を介して第1フレーム11にせん断方向に作用する荷重を伝達することが可能になる。これにより、第1接着面12f1において面外方向にかかる荷重、すなわち第1接着面12f1で剥離を生じさせる荷重が生じにくくなる。その結果、ルーフパネル5のせん断方向に作用する荷重に対する強度を強くすることが可能である。
【0065】
上記の「略同一平面」については、例えば、第1接着面12f1に対する第2接着面12f2の傾きを20度以下とすることで、ルーフパネル5から第2フレーム12に伝わる車幅方向Yの荷重に対して、接着面12f1、12f2におけるせん断方向に作用する荷重を増やすことができ、接着面12f1、12f2の破断を防止することが可能である。前記傾きが大きくなるにつれて接着面12f1、12f2における剥離方向の荷重が増えるため、第1接着面12f1と第2接着面12f2とが同一平面となることが好ましい。
【0066】
(4)
本実施形態の自動車の車体構造では、図6に示されるように、第2フレーム12の閉断面12aは、第2フレーム12における第1フレーム11の上方の位置から車幅方向Yの内側Y2に延びる内側延設部12gを有する。内側延設部12gの下面には、第2接着面12f2が配置されている。
【0067】
かかる構成によれば、ルーフパネル5のフランジ部5bと接着する第2フレーム12の第2接着面12f2が、第2フレーム12の閉断面12aの下面、具体的には、閉断面12aの車幅方向Yの内側Y2に延びる内側延設部12gの下面に配置されている。これにより、フランジ部5bと接着する第2接着面12f2を第2フレーム12の閉断面12aによって支持することが可能であり、第2接着面12f2の引張強度を確保することが可能である。しかも、第2フレーム12の内側延設部12gが第1フレーム11の上方の位置から車幅方向Yの内側Y2に延びて、ルーフパネルの本体部5aに近づくことにより、ルーフパネルの本体部5aと第2フレーム12との隙間を小さくすることが可能であり、車体のデザイン性が向上する。
【0068】
(5)
本実施形態の自動車の車体構造では、図6に示されるように、第2フレーム12は、第1接着面12f1よりも車幅方向外側Y1において異なる方向を向く第3接着面12hをさらに有する。第1フレーム11は、上面である第1外側辺11bに隣接する側面である第2外側辺11cをさらに有する。第1接着面12f1が第1フレーム11の上面である第1外側辺11bに接着されるとともに第3接着面12hが第1フレーム11の側面である第2外側辺11cに接着されている。
【0069】
かかる構成によれば、第2フレーム12が第1フレーム11に対して第1接着面12f1だけでなく第1接着面12f1と異なる方向を向く第3接着面12hで接着されているので、ルーフパネル5に作用するせん断方向の荷重が第2フレーム12に入力されても、第2フレーム12が第1フレーム11から剥離して第1フレーム11に対して相対的に移動するおそれが低減する。
【0070】
(6)
本実施形態の自動車の車体構造では、第2フレーム12は、第1フレーム11よりも引張強度が高く、かつ軽量である。第2フレーム12の図心C2は、第1フレーム11の図心C1よりも車両中心CLに対して車幅方向外側Y1に配置されている。
【0071】
かかる構成によれば、第1フレーム11よりも引張強度が高くて軽量な第2フレーム12の図心C2が当該第1フレーム11の図心C1よりも車両中心CLに対して車幅方向外側Y1に配置されている。これにより、車両1走行時において車両中心CLに対する慣性モーメントを小さくしながら、車体変形を抑えることが可能になり、車体の軽量化と車両1の操縦安定性の向上との両立が可能になる。また、アルミニウムなどの同一材料で複数の閉断面を有する単一のフレームを構成するよりも異種材料の第1フレーム11および第2フレーム12全体の外形寸法の増大を抑えることが可能になり、車体のデザイン自由度の向上も可能になる。
【0072】
言い換えれば、本実施形態の車体構造では、車両中心CLから遠方に軽量な部材である第2フレーム12を配置することにより、車両中心CLに対する車体の慣性モーメントを小さくすることが可能である。また、第2フレーム12は車両中心CLから遠方にあるため、車両中心CLに対する第2フレーム12の断面2次モーメントは大きくなり、さらに、第2フレーム12の引張強度が高いことにより、車体のねじれ変形を抑制でき、操縦安定性を向上することが可能である。
【0073】
第2フレーム12は、第1フレーム11の車幅方向外側Y1の側面に固定されているとともに、第1フレーム11の上面に沿って車幅方向内側Y2に向かって延び、ルーフパネル5に連結されている。これにより、ルーフパネル5に作用する荷重を第1フレーム11および第2フレーム12に確実に伝達することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 車両
2 車体
3 ルーフサイドレール
4 フロントウインド
5 ルーフパネル
5b フランジ部
6 ドア
11 第1フレーム
11a、12a 閉断面
11b 第1外側辺(上面)
11c 第2外側辺(側面)
12 第2フレーム
12f 下面
12f1 第1接着面
12f2 第2接着面
12g 内側延設部
12h 第3接着面
13、14、15 接着材
B 締結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7