(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H10N 30/88 20230101AFI20231219BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20231219BHJP
H10N 30/50 20230101ALI20231219BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20231219BHJP
H10N 30/073 20230101ALI20231219BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H10N30/88
H10N30/20
H10N30/50
H10N30/853
H10N30/073
B06B1/06 Z
(21)【出願番号】P 2020144951
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030267(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110654(WO,A1)
【文献】特開2005-096346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/88
H10N 30/20
H10N 30/50
H10N 30/853
H10N 30/073
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲振動する振動デバイスであって、
圧電素子と、
前記圧電素子が配置されている振動板と、を備え、
前記振動板には、凹部が設けられており、
前記圧電素子は、前記凹部内に配置されて
おり、
前記振動板は、積層された第一振動層及び第二振動層を有し、
前記第一振動層は、前記圧電素子が配置されている配置領域を有し、
前記第二振動層には、前記配置領域を露出させている開口が設けられている、
振動デバイス。
【請求項2】
前記圧電素子と前記凹部の内面との間に配置された密着層を更に備える、
請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記圧電素子は、圧電素体を有し、
前記圧電素体は、主面と、前記主面と隣り合うと共に、互いに対向している一対の第一側面と、を有し、
前記主面及び前記一対の第一側面は、前記密着層と接している、
請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記主面は矩形状を呈しており、
前記圧電素体は、前記主面と隣り合うと共に、互いに対向している一対の第二側面を更に有し、
前記一対の第二側面も、前記密着層と接している、
請求項3に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記第二振動層は、前記第一振動層よりも硬い、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記第一振動層及び前記第二振動層は、それぞれ金属からなると共に、拡散接合により互いに接合されている、請求項
1~5のいずれか一項に記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子と、圧電素子が配置されている振動板と、を備える振動デバイスが知られている(たとえば、特許文献1及び特許文献2)。この振動デバイスでは、振動板を用いることで振幅を増大させ、変位量の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/098859号
【文献】登録実用新案第3057898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一側面は、変位量の更なる向上が可能な振動デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る振動デバイスは、屈曲振動する振動デバイスであって、圧電素子と、圧電素子が配置されている振動板と、を備え、振動板には、凹部が設けられており、圧電素子は、凹部内に配置されている。
【0006】
この振動デバイスでは、振動板に設けられた凹部内に圧電素子が配置されている。したがって、振動板の主面上に圧電素子が配置されている構成と比べて、圧電素子と振動板との接触面積が増える。これにより、圧電素子の振動が振動板に伝達され易い。よって、変位量を更に向上させることができる。
【0007】
この振動デバイスは、圧電素子と凹部の内面との間に配置された密着層を更に備えてもよい。この場合、圧電素子の振動が振動板に更に伝達され易くなる。
【0008】
圧電素子は、圧電素体を有し、圧電素体は、主面と、主面と隣り合うと共に、互いに対向している一対の第一側面と、を有し、主面及び一対の第一側面は、密着層と接していてもよい。この場合、圧電素子の拡がり振動を、密着層を介して一対の第一側面から振動板に伝達することができる。
【0009】
主面は矩形状を呈しており、圧電素体は、主面と隣り合うと共に、互いに対向している一対の第二側面を更に有し、一対の第二側面も、密着層と接していてもよい。この場合、圧電素子の拡がり振動を、密着層を介して一対の第二側面からも振動板に伝達することができる。
【0010】
振動板は、積層された第一振動層及び第二振動層を有し、第一振動層は、圧電素子が配置されている配置領域を有し、第二振動層には、配置領域を露出させている開口が設けられていてもよい。この場合、振動板を単層構造の板部材により構成する場合に比べて、凹部を容易に形成することができる。
【0011】
第二振動層は、第一振動層よりも硬くてもよい。この場合、圧電素子の拡がり振動が第二振動層に伝達され易い。
【0012】
第一振動層及び第二振動層は、それぞれ金属からなると共に、拡散接合により互いに接合されていてもよい。この場合、接着剤を用いて接着する場合に比べて、圧電素子の振動が振動板に伝達される際の伝達速度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、変位量の更なる向上が可能な振動デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る振動デバイスの断面図である。
【
図4】
図4は、第一変形例に係る振動デバイスの断面図である。
【
図5】
図5は、第二変形例に係る振動デバイスの上面図である。
【
図6】
図6は、第三変形例に係る振動デバイスの上面図である。
【
図7】
図7は、第四変形例に係る振動デバイスの上面図である。
【
図8】
図7は、第五変形例に係る振動デバイスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1~
図3を参照して、実施形態に係る振動デバイス1の構成を説明する。
図1は、実施形態に係る振動デバイスの断面図である。
図2は、
図1の振動デバイスの上面図である。
図3は、
図1の振動デバイスの分解斜視図である。
【0017】
図1~
図3に示されるように、振動デバイス1は、圧電素子10と、密着層40と、振動板50と、配線部材60とを備えている。振動デバイス1は、屈曲振動(撓み振動)する。なお、
図2では、密着層40の図示が省略されている。
【0018】
圧電素子10は、圧電素体11と、複数の外部電極21,22と、複数の内部電極23,24,25と、複数の接続導体26,27と、複数のビア導体31,33,35,37,39とを有している。本実施形態では、圧電素子10は、2つの外部電極21,22と、3つの内部電極23,24,25と、2つの接続導体26,27と、5つのビア導体31,33,35,37,39とを有している。
【0019】
圧電素体11は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。圧電素体11は、互いに対向している一対の主面11a,11bと、互いに対向している一対の第一側面11cと、互いに対向している一対の第二側面11dと、を有している。主面11a,11bは、矩形状を呈している。本実施形態では、主面11a,11bは、正方形状を呈している。
【0020】
一対の主面11a,11bが互いに対向している方向が第一方向D1である。第一方向D1は、各主面11a,11bに直交する方向でもある。一対の第一側面11cが互いに対向している方向が第二方向D2である。一対の第二側面11dが互いに対向している方向が第三方向D3である。一対の第一側面11c及び一対の第二側面11dは、それぞれ一対の主面11a,11bの間を連結するように第一方向D1に延在している。
【0021】
一対の第一側面11c及び一対の第二側面11dは、それぞれ主面11aと隣り合っている。一対の第一側面11c及び一対の第二側面11dは、それぞれ稜線部を介して主面11aと間接的に隣り合っている。一対の第一側面11c及び一対の第二側面11dは、それぞれ主面11bとも隣り合っている。一対の第一側面11c及び一対の第二側面11dは、それぞれ稜線部を介して主面11bと間接的に隣り合っている。
【0022】
圧電素体11の第一方向D1での長さ(圧電素体11の厚さ)は、たとえば100μm以上500μm以下である。圧電素体11の第二方向D2での長さは、たとえば10mm以上30mm以下である。圧電素体11の第三方向D3での長さは、たとえば20mm以上30mm以下である。
【0023】
圧電素体11は、第一方向D1に複数の圧電体層17a,17b,17c,17dが積層されて構成されている。圧電素体11は、第一方向D1に積層されている複数の圧電体層17a,17b,17c,17dを含んでいる。圧電素体11では、複数の圧電体層17a,17b,17c,17dが積層されている方向が第一方向D1と一致する。
【0024】
各圧電体層17a,17b,17c,17dは、圧電材料からなる。本実施形態では、各圧電体層17a,17b,17c,17dは、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)などが挙げられる。各圧電体層17a,17b,17c,17dは、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の圧電素体11では、各圧電体層17a,17b,17c,17dは、各圧電体層17a,17b,17c,17dの間の境界が認識できない程度に一体化されている。
【0025】
圧電体層17aは、主面11aを有している。圧電体層17dは、主面11bを有している。圧電体層17b,17cは、圧電体層17aと圧電体層17dとの間に位置している。各圧電体層17a,17b,17c,17dの厚さは、たとえば16μm以上35μm以下である。
【0026】
各外部電極21,22は、主面11a上に配置されている。各外部電極21,22は、第一方向D1から見て、主面11a,11bの全ての縁(四辺)から離間している。複数の外部電極21,22は、第一方向D1から見て、互いに離間して配置されている。外部電極21は、平面視で略矩形状(たとえば、略正方形状)を呈している。外部電極21の四辺のうち、一方の第一側面11c寄りの一辺には、他方の第一側面11c側に凹む凹部が形成されている。外部電極22は、外部電極21に形成された凹部内に配置されている。すなわち、外部電極22は、一方の第一側面11c寄りに配置されている。外部電極22は、平面視で略矩形状(たとえば、略正方形状)を呈している。外部電極21は、主面11aの外部電極22が配置された領域を除く略全体に配置されている。
【0027】
各外部電極21,22は、導電性材料からなる。導電性材料として、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金などが用いられる。各外部電極21,22は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0028】
複数の内部電極23,24,25と、複数の接続導体26,27と、複数のビア導体31,33,35,37,39とは、圧電素体11内に配置されている。複数の内部電極23,24,25、及び、複数の接続導体26,27は、圧電素体11の表面には露出していない。すなわち、複数の内部電極23,24,25、及び、複数の接続導体26,27は、各主面11a,11b、各第一側面11c、及び、各第二側面11dには露出していない。複数の内部電極23,24,25、及び、複数の接続導体26,27は、第一方向D1から見て、主面11a,11bの全ての縁(四辺)から離間している。
【0029】
各内部電極23,24,25は、第一方向D1において互いに異なる位置(層)に配置されている。内部電極23と内部電極24とは、第一方向D1に間隔を有して対向している。内部電極24と内部電極25とは、第一方向D1に間隔を有して対向している。内部電極23は、圧電体層17aと圧電体層17bとの間に位置している。内部電極24は、圧電体層17bと圧電体層17cとの間に位置している。内部電極25は、圧電体層17cと圧電体層17dとの間に位置している。
【0030】
接続導体26は、内部電極23と同じ層に位置している。接続導体26は、圧電体層17aと圧電体層17bとの間に位置している。内部電極23と接続導体26とは、互いに離間している。接続導体26は、圧電体層17aを介して外部電極21と第一方向D1で対向している。接続導体26は、圧電体層17bを介して内部電極24と第一方向D1で対向している。
【0031】
内部電極23は、平面視で略矩形状(たとえば、略正方形状)を呈している。内部電極23の四辺のうち、一方の第一側面11c寄りの一辺には、他方の第一側面11c側に凹む凹部が形成されている。接続導体26は、内部電極23に形成された凹部内に配置されている。すなわち、接続導体26は、一方の第一側面11c寄りに配置されている。接続導体26は、平面視で略矩形状(たとえば、略正方形状)を呈している。内部電極23は、圧電体層17aと圧電体層17bとの間において、接続導体26が配置された領域を除く略全体に配置されている。
【0032】
接続導体27は、内部電極24と同じ層に位置している。接続導体27は、圧電体層17bと圧電体層17cとの間に位置している。内部電極24と接続導体27とは、互いに離間している。接続導体27は、圧電体層17bを介して内部電極23と第一方向D1で対向している。接続導体27は、圧電体層17cを介して内部電極25と第一方向D1で対向している。
【0033】
内部電極24は、平面視で略矩形状(たとえば、略正方形状)を呈している。内部電極24の四辺のうち、一方の第一側面11c寄りの一辺には、他方の第一側面11c側に凹む凹部が形成されている。接続導体27は、内部電極24に形成された凹部内に配置されている。すなわち、接続導体27は、一方の第一側面11c寄りに配置されている。接続導体27は、平面視で略矩形状(たとえば、略正方形状)を呈している。内部電極24は、圧電体層17bと圧電体層17cとの間において、接続導体27が配置された領域を除く略全体に配置されている。内部電極24は、平面視で外部電極21と同形状を呈している。
【0034】
ビア導体31は、圧電体層17aを貫通している。ビア導体31は、外部電極21と接続されていると共に、接続導体26と接続されている。ビア導体31は、外部電極21と接続導体26とを電気的に接続している。
【0035】
ビア導体33は、圧電体層17aを貫通している。ビア導体33は、外部電極22と接続されていると共に、内部電極23と接続されている。ビア導体33は、外部電極22と内部電極23とを電気的に接続している。
【0036】
ビア導体35は、圧電体層17bを貫通している。ビア導体35は、接続導体26と接続されていると共に、内部電極24と接続されている。ビア導体35は、接続導体26と内部電極24とを電気的に接続している。
【0037】
ビア導体37は、圧電体層17bを貫通している。ビア導体37は、内部電極23と接続されていると共に、接続導体27と接続されている。ビア導体37は、内部電極23と接続導体27とを電気的に接続している。
【0038】
ビア導体39は、圧電体層17cを貫通している。ビア導体39は、接続導体27と接続されていると共に、内部電極25と接続されている。ビア導体39は、接続導体27と内部電極25とを電気的に接続している。
【0039】
外部電極21は、ビア導体31、接続導体26、及び、ビア導体35を通じて、内部電極24と電気的に接続されている。外部電極22は、ビア導体33を通じて内部電極23と電気的に接続されている。外部電極22は、ビア導体33、内部電極23、ビア導体37、接続導体27、及びビア導体39を通じて内部電極25と電気的に接続されている。外部電極21及び外部電極22には、互いに異なる極性の電圧が印加される。内部電極23及び内部電極25には、外部電極22と同じ極性の電圧が印加される。内部電極24には、外部電極21と同じ極性の電圧が印加される。
【0040】
各内部電極23,24,25、各接続導体26,27、及び、各ビア導体31,33,35,37,39は、導電性材料からなる。導電性材料として、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金などが用いられる。各内部電極23,24,25、各接続導体26,27、及び、各ビア導体31,33,35,37,39は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。ビア導体31,33,35,37,39は、対応する圧電体層17a,17b,17cを形成するためのセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
【0041】
圧電素体11の主面11bには、内部電極23,25と電気的に接続されている導体、及び、内部電極24と電気的に接続されている導体は配置されていない。本実施形態では、主面11bを第一方向D1から見たとき、主面11bの全体が露出している。主面11a,11bは、自然面である。自然面とは、焼成により成長した結晶粒の表面により構成される面である。
【0042】
圧電素体11の各第一側面11c、及び、各第二側面11dにも、内部電極23,25と電気的に接続されている導体、及び、内部電極24と電気的に接続されている導体は配置されていない。本実施形態では、各第一側面11cを第二方向D2から見たとき、各第一側面11cの全体が露出している。各第二側面11dを第三方向D3から見たとき、各第二側面11dの全体が露出している。各第一側面11c及び各第二側面11dも、自然面である。
【0043】
振動板50には、圧電素子10が配置されている。振動板50は、たとえば、金属からなる。振動板50は、たとえば、Ni-Fe合金、Ni、黄銅、又はステンレス鋼からなる。振動板50は、樹脂からなってもよい。本実施形態では、振動板50は一部材からなっている。振動板50は、単層構造の板部材により構成されている。
【0044】
振動板50は、互いに対向している主面50a,50bを有している。主面50a,50bは、たとえば矩形状を呈している。主面50a,50bは、一対の長辺と一対の短辺とを有する長方形状を呈している。本実施形態では、主面50a,50bの長辺方向(すなわち、振動板50の長手方向)は、第二方向D2と一致する。主面50a,50bの短辺方向(すなわち、振動板50の短手方向)は、第三方向D3と一致する。圧電素子10は、主面50a側に配置されている。圧電素子10は、振動板50の第二方向D2及び第三方向D3における略中央に配置されている。
【0045】
主面50a,50bの長辺の長さ(振動板50の第二方向D2の長さ)は、たとえば、60mm以上80mm以下である。主面50a,50bの短辺の長さ(振動板50の第三方向D3の長さ)は、たとえば、30mm以上60mm以下である。振動板50の厚さ(第一方向D1の長さ)は、たとえば、100μm以上250μm以下である。
【0046】
主面50aには、凹部51が設けられている。凹部51の深さ(凹部51の第一方向D1の長さ)は、振動板50の厚さ未満であり、たとえば、10μm以上100μm未満である。圧電素子10は、凹部51内に設けられている。凹部51は、底面53と、互いに対向している一対の第一内側面55と、互いに対向している一対の第二内側面57と、を有している。底面53、一対の第一内側面55、及び、一対の第二内側面57は、凹部51の内面を構成している。底面53は、たとえは、矩形状を呈している。実施形態では、底面53は、正方形状を呈している。
【0047】
一対の第一内側面55が互いに対向している方向は、第二方向D2と一致している。各第一内側面55は、第一方向D1に延在し、底面53と主面50aとを接続している。各第一内側面55は、底面53と隣り合うと共に、主面50aと隣り合っている。各第一内側面55は、矩形状を呈している。各第一側面11cと主面11bとの間の稜線部が曲面で構成されている場合、各第一内側面55と底面53とは、当該稜線部に沿う曲面で接続されていてもよい。
【0048】
一対の第二内側面57が互いに対向している方向は、第三方向D3と一致している。各第二内側面57は、第一方向D1に延在し、底面53と主面50aとを接続している。各第二内側面57は、底面53と隣り合うと共に、主面50aと隣り合っている。各第二内側面57は、矩形状を呈している。各第二側面11dと主面11bとの間の稜線部が曲面で構成されている場合、各第二内側面57と底面53とは、当該稜線部に沿う曲面で接続されていてもよい。
【0049】
圧電素子10は、主面11bが底面53と対向するように凹部51内に配置されている。主面11bの全体が底面53と対向している。第一側面11cは、第一内側面55と対向している。第二側面11dは、第二内側面57と対向している。第一側面11cと第一内側面55との間隔、及び、第二側面11dと第二内側面57との間隔は、それぞれ0.1mm以上である。0.1mm以上とすることにより、密着層40による接着ばらつき、又は、密着層40による変位吸収などの不具合が抑制される。本実施形態では、凹部51の深さは、圧電素子10の厚さよりも浅いが、圧電素子10の厚さと同等であってもよいし、圧電素子10の厚さよりも深くてもよい。
【0050】
圧電素子10は凹部51から突出している。すなわち、外部電極21,22の表面は、主面50aよりも外側に位置している。本実施形態では、主面11aは凹部51よりも外側に位置している。圧電素子10のうち、凹部51から突出している部分の第一方向D1の長さは、圧電素子10のうち、凹部51内に配置されている部分の第一方向D1の長さよりも短くてもよいし、長くてもよい。圧電素子10のうち、凹部51から突出している部分の第一方向D1の長さは、圧電素子10のうち、凹部51内に配置されている部分の第一方向D1の長さよりも短い方が、より圧電素子10の振動を振動板50に伝達し易い。
【0051】
凹部51は、たとえば、研削により形成される。この場合、研削により底面53に複数の溝が形成される。複数の溝が延在する方向が振動板50の長手方向(第二方向D2)と一致するように、凹部51が形成される。
【0052】
密着層40は、圧電素子10と凹部51の内面との間に配置されている。密着層40は、圧電素子10と凹部51の内面とを互いに接合している。密着層40は、主面11bと底面53との間、第一側面11cと第一内側面55との間、及び、第二側面11dと第二内側面57との間に配置されている。主面11bと、一対の第一側面11cと、一対の第二側面11dとは、密着層40と接している。
【0053】
密着層40は、主面11bと底面53との間に配置されている部分と、第一側面11cと第一内側面55との間に配置されている部分と、第二側面11dと第二内側面57との間に配置されている部分とを有している。密着層40の各部分は、互いに接続されて連続している。密着層40の各部分は、一体的に設けられている。
【0054】
密着層40は、接着剤樹脂からなる。密着層40は、たとえば、エポキシ樹脂からなる。密着層40がエポキシ樹脂からなる場合、たとえば、密着層40が両面テープ等の接着シートである場合に比べて、圧電素子10の振動が密着層40に吸収されることが抑制される。本実施形態では、密着層40の縁部40aは、凹部51の外側に設けられている。縁部40aは、主面50aに接合されている。縁部40aは、各第一側面11c及び各第二側面11dのうち、凹部51から露出した部分にも接合されている。縁部40aは、たとえば、圧電素子10を振動板50に配置する際に凹部51内に設けられた未硬化状態の接着剤樹脂が、圧電素子10により凹部51の外に押し出され、硬化することにより形成される。
【0055】
配線部材60は、圧電素子10と電気的かつ物理的に接続されている。配線部材60は、ベース61と、導体63,65とを有している。ベース61は、たとえば、樹脂からなっている。導体63,65は、ベース61の一方面に設けられている。導体63,65は、たとえば、ベース61の一方面に接着されている。
【0056】
配線部材60は、導体63,65を覆うようにベース61の一方面と接合されたカバー(不図示)を更に有している。導体63,65の一端部は、カバーから露出している。配線部材60の一端部は、接続部材(不図示)によって、圧電素子10と接合されている。接続部材は、たとえば、異方性導電ペースト又は異方性導電膜が硬化することにより形成される。導体63の一端部は、接続部材に含まれる複数の金属粒子によって、外部電極21と電気的に接合されている。導体65の一端部は、接続部材に含まれる複数の金属粒子によって、外部電極22と電気的に接合されている。
【0057】
配線部材60は、樹脂層70によって振動板50と接合されている。樹脂層70は、配線部材60のカバーと主面50aとを接合している。樹脂層70は、主面50aの一方の短辺に沿って配置されている。樹脂層70は、たとえば、ニトリルゴムからなる。
【0058】
配線部材60は、圧電素子10の第二方向D2の一方の端部に接続され、第二方向D2の一方側に延在している。第三方向D3から見て、配線部材60の一端部だけが圧電素子10と重なっている。したがって、圧電素子10の振動が配線部材60によって阻害され難い。
【0059】
以上説明した振動デバイス1では、振動板50に設けられた凹部51内に圧電素子10が配置されている。振動板50の主面50a上に圧電素子10が配置されている構成では、主面11bの面積が、圧電素子10と振動板50との接触面積となる。これに対し、振動デバイス1では、圧電素子10と振動板50との接触面積が、一対の第一側面11cの面積及び一対の第二側面11dの面積だけ増える。これにより、圧電素子10の振動が振動板50に伝達され易い。よって、振動デバイス1によれば、変位量を更に向上させることができる。
【0060】
圧電素子10と凹部51の内面との間には、密着層40が配置されている。これにより、圧電素子10の主面11b、一対の第一側面11c、及び一対の第二側面11dは、凹部51の底面53、一対の第一内側面55、及び一対の第二内側面57とそれぞれ密着している。よって、圧電素子10の振動が、主面11b、一対の第一側面11c、及び一対の第二側面11dから、底面53、一対の第一内側面55、及び一対の第二内側面57にそれぞれ更に伝達され易くなる。このように、圧電素子10の振動が振動板50に更に伝達され易くなるので、変位量を一層向上させることができる。
【0061】
圧電素子10の振動は拡がり振動であり、圧電素子10は厚さ方向に直交する方向に伸縮する。これにより、一対の第一側面11cは、一対の第一内側面55に対し第二方向D2に応力を与える。また、一対の第二側面11dは、一対の第二内側面57に対し第三方向D3に応力を与える。これにより、振動板50が屈曲振動する。その結果、振動デバイス1は全体として屈曲振動する。
【0062】
振動デバイス1では、圧電素子10が凹部51から突出している。このため、配線部材60を圧電素子10に容易に接続することができる。よって、配線部材60と圧電素子10との接続部分に加わる応力を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0064】
図4は、第一変形例に係る振動デバイスの断面図である。
図4に示される振動デバイス1Aは、二部材からなる振動板50Aを備える点で
図1に示される振動デバイス1と相違し、その他の点で一致している。以下では、振動デバイス1との相違点を中心とし、振動デバイス1Aについて説明する。
【0065】
振動板50Aは、多層構造の板部材により構成されている。振動板50Aは、積層された第一振動層81及び第二振動層82を有している。第一振動層81及び第二振動層82は、それぞれ金属からなる。第一振動層81及び第二振動層82は、たとえば、拡散接合によって互いに接合されている。拡散接合では、2つの母材を溶融することなく加熱することで原子レベルの拡散が起こり、2つの母材が接合される。
【0066】
拡散接合によれば、接着剤を用いて接着する場合に比べて、圧電素子10の振動が振動板50Aに伝達される際の伝達速度の低下を抑制することができる。また、接着剤を用いて接着する場合、接着剤が第一振動層81及び第二振動層82の間から凹部51にはみ出すおそれがある。このような接着剤のはみ出しが生じると、圧電素子10を凹部51内に配置し難くなるおそれがある。拡散接合によれば、接着剤のはみ出しが生じない。
【0067】
第一振動層81及び第二振動層82は、たとえば、互いに異なる金属材料からなる。第一振動層81は、たとえば、SUS303等の柔軟性の高い金属材料からなる。これにより、第一振動層81の柔軟性が高まるので、第一振動層81の屈曲振動が容易となる。第二振動層82は、たとえば、42Ni等の硬い金属材料からなる。これにより、圧電素子10の振動が、第二振動層82に伝達され易い。
【0068】
第一振動層81は、第二振動層82よりも厚い。第一振動層81の厚さは、第二振動層82の厚さの1.5倍以上2倍以下である。第一振動層81の厚さは、たとえば、50μm以上100μm以下である。第一振動層81の厚さが100μm以下であることにより、第一振動層81を容易に屈曲振動させることができる。第二振動層82の厚さは、たとえば、10μm以上100μm未満である。
【0069】
第一振動層81は、互いに対向している一対の主面81a,81bを有している。主面81aは、圧電素子10が配置されている配置領域81cを有している。配置領域81cは、凹部51の底面53を構成している。
【0070】
第二振動層82は、互いに対向している一対の主面82a,82bを有している。第二振動層82は、主面82bが主面81aと対向するように第一振動層81上に配置されている。すなわち、主面81aと主面82bとが互いに接合されている。第二振動層82は、配置領域81cを露出させている開口82cが設けられている。開口82c内には、圧電素子10が配置されている。開口82cは、第二振動層82を厚さ方向に貫通する貫通孔である。開口82cの内側面は、凹部51の第一内側面55及び第二内側面57を構成している。
【0071】
振動デバイス1Aにおいても、振動デバイス1と同様の効果が得られる。加えて、振動デバイス1Aでは、振動デバイス1に比べて、凹部51を容易に形成することができる。振動デバイス1では、振動板50は単層構造の板部材により構成され、凹部51は研削等により形成される。この場合、凹部51の深さ方向の寸法精度を向上させ難い。また、底面53の面精度を向上させ難い。これに対し、振動デバイス1Aでは、凹部51の深さは、第二振動層82の厚さによって決まるので、凹部51の深さ方向の寸法精度を容易に向上させることができる。また、底面53は、第一振動層81の主面81aにより構成されるので、底面53の面精度を容易に向上させることができる。
【0072】
振動デバイス1Aでは、第一振動層81及び第二振動層82を互いに異なる材料により形成することができる。これにより、第二振動層82が第一振動層81よりも硬い構成とすることができる。この場合、圧電素子10の拡がり振動が第二振動層82に伝達され易い。また、第二振動層82は、第一振動層81よりも柔軟性が高い構成とすることができる。この場合、第一振動層81を容易に屈曲振動させることができる。
【0073】
図5は、第二変形例に係る振動デバイスの上面図である。なお、
図5では、密着層40の図示が省略されている。
図5に示される振動デバイス1Bは、凹部51の四隅に4つの膨出部59が設けられている点で、
図2に示される振動デバイス1と相違している。4つの膨出部59は、主面50a,50bの対向方向(第一方向D1)から見て、凹部51の四隅から膨出したような略円形状を呈している。膨出部59は、凹部51と接続されている。膨出部59の底面は、底面53と同一平面をなし、連続している。第一方向D1から見て、各膨出部59には、圧電素子10の各角部(すなわち、第一側面11cと第二側面11dとの間の稜線部)が配置されている。膨出部59によれば、圧電素子10が伸縮する際、圧電素子10の各角部に応力が集中することを抑制し、圧電素子10の破損を抑制することができる。
【0074】
図6は、第三変形例に係る振動デバイスの上面図である。なお、
図6では、密着層40の図示が省略されている。
図6に示される振動デバイス1Cは、第一側面11cと第一内側面55との間隔、及び、第二側面11dと第二内側面57との間隔がそれぞれ狭くなっている点で、
図5に示される振動デバイス1Bと相違している。振動デバイス1Cにおいても、振動デバイス1Bと同様に、圧電素子10の各角部に変位による応力が集中することを抑制し、圧電素子10の破損を抑制することができる。振動デバイス1Cでは、圧電素子10と凹部51との間隔が狭く設計されているので、密着層40による接着ばらつき、又は変位吸収などの不具合が抑制される。
【0075】
図7は、第四変形例に係る振動デバイスの上面図である。なお、
図7では、密着層40の図示が省略されている。
図7に示される振動デバイス1Dは、凹部51の形状の点で、
図2に示される振動デバイス1と相違している。振動デバイス1Dでは、凹部51が振動板50の第三方向D3の両端まで設けられており、一対の第二内側面57を有していない。よって、密着層40は、一対の第二側面11dに設けられているが、一対の第二側面11dに設けられていなくてもよい。
【0076】
振動デバイス1Dによれば、凹部51を容易に製造することができる。また、凹部51が広いので、密着層40を構成する接着剤樹脂の余りを収容することができる。これにより、接着剤樹脂の余りによる変位吸収などの不具合が抑制される。加えて、振動デバイス1Dでは、振動デバイス1に比べて、第一側面11cと第一内側面55との間隔が狭くなっている。これにより、第一側面11cと第一内側面55との間において、密着層40による接着ばらつき、又は変位吸収などの不具合が抑制される。
【0077】
図8は、第五変形例に係る振動デバイスの上面図である。なお、
図8では、密着層40の図示が省略されている。
図8に示される振動デバイス1Eは、凹部51の形状の点で、
図7に示される振動デバイス1Dと相違している。振動デバイス1Eでは、凹部51が振動板50の第三方向D3の両端近傍まで設けられているものの、当該両端には達していない。密着層40は、一対の第二内側面57とは接していない。密着層40は、一対の第二側面11dに設けられているが、一対の第二側面11dに設けられていなくてもよい。
【0078】
振動デバイス1Eによれば、振動板50の強度を向上させることができる。振動デバイス1Eにおいても、振動デバイス1Dと同様に、凹部51が広いので、密着層40を構成する接着剤樹脂の余りを収容することができる。加えて、第一側面11cと第一内側面55との間隔が狭くなっているので、第一側面11cと第一内側面55との間において、密着層40による接着ばらつき、又は変位吸収などの不具合が抑制される。
【0079】
振動デバイス1,1A,1B,1C,1D,1Eでは、圧電素子10はモノモルフ型の素子であるが、圧電素子10はバイモルフ型の素子であってもよい。
【0080】
振動デバイス1,1A,1B,1Cでは、一対の第一側面11c及び一対の第二側面11dが全て密着層40と接しているため、圧電素子10の拡がり振動を振動板50に効果的に伝達することができるが、たとえば、一対の第一側面11cが密着層40と接し、一対の第二側面11dが密着層40と接していない構成であってもよい。一対の第一側面11cは、振動板50の長手方向において互いに対向している。よって、一対の第一側面11cが密着層40と接していることにより、圧電素子10の拡がり振動のうち、振動板50の長手方向に沿う振動が、振動板50に伝達される。この結果、一対の第二側面11dが密着層40と接し、一対の第一側面11cが密着層40と接していない構成と比べて、振動板50を大きく振動させることができる。
【0081】
振動デバイス1Aでは、第一振動層81及び第二振動層82は、互いに接着剤により接合されていてもよい。
【0082】
振動デバイス1,1A,1B,1C,1D,1Eでは、圧電素子10は凹部51から突出していなくてもよい。たとえば、外部電極21,22の表面は、主面50aと同一平面上に位置していてもよいし、主面50aよりも内側に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B,1C,1D,1E…振動デバイス、10…圧電素子、11…圧電素体、11b…主面、11c…第一側面、11d…第二側面、40…密着層、50,50A…振動板、51…凹部、53…底面、55…第一内側面、57…第二内側面、81…第一振動層、81c…配置領域、82…第二振動層、82c…開口。