(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二次電池の評価方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2020147270
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 愛子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 守
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-149379(JP,A)
【文献】特開2014-044149(JP,A)
【文献】特開2018-159586(JP,A)
【文献】特開2015-224876(JP,A)
【文献】特開2002-343444(JP,A)
【文献】特開2000-228827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の耐久性評価方法であって、
耐久電池温度及び耐久SOCに調整された評価用の二次電池に、耐久試験期間に亘って、耐久周波数の交流電圧を印加し続ける耐久ステップと、
上記評価用の二次電池の電池反応のうち、上記耐久周波数に関連した関連電池反応についての耐久性を評価する評価ステップと、を備え
、
前記耐久ステップに先立ち、
前記評価用の二次電池を予め定めた評価電池温度及び評価SOCに調整する初期調整ステップと、
調整された上記評価用の二次電池の耐久前インピーダンスを、評価周波数範囲に亘って測定する耐久前インピーダンス測定ステップと、
上記評価用の二次電池を、前記耐久電池温度及び前記耐久SOCに調整する耐久前調整ステップと、を有し、
前記耐久ステップの後、前記評価ステップに先立ち、
上記耐久ステップ後の上記評価用の二次電池を上記評価電池温度及び上記評価SOCに調整する耐久後調整ステップと、
調整された上記評価用の二次電池の耐久後インピーダンスを、上記評価周波数範囲に亘って測定する耐久後インピーダンス測定ステップと、を有し、
上記評価ステップは、
上記評価用の二次電池について得た上記耐久前インピーダンス及び上記耐久後インピーダンスを用いて、上記評価用の二次電池の電池反応についての耐久性を評価する
二次電池の評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池の評価方法であって、
前記評価ステップは、
前記評価周波数範囲に亘って測定した前記耐久前インピーダンスを用いて、前記評価用の二次電池の、耐久前直流抵抗、耐久前正極反応抵抗、及び、耐久前負極反応抵抗を取得する耐久前抵抗取得ステップと、
上記評価周波数範囲に亘って測定した前記耐久後インピーダンスを用いて、上記評価用の二次電池の、耐久後直流抵抗、耐久後正極反応抵抗、及び、耐久後負極反応抵抗を取得する耐久後抵抗取得ステップと、を含む
二次電池の評価方法。
【請求項3】
請求項1又は
請求項2に記載の二次電池の評価方法であって、
前記評価用の二次電池とは別の、基準用の二次電池について、前記評価電池温度及び前記評価SOCに調整する基準初期調整ステップと、
調整された上記基準用の二次電池の放置前インピーダンスを、前記評価周波数範囲に亘って測定する放置前インピーダンス測定ステップと、
上記基準用の二次電池を、前記耐久電池温度及び前記耐久SOCに調整する放置前調整ステップと、
上記耐久電池温度及び上記耐久SOCに調整された上記基準用の二次電池を、正負極間を開放した状態で、前記耐久試験期間に亘って放置し続ける放置ステップと、
上記放置ステップ後の上記基準用の二次電池を上記評価電池温度及び上記評価SOCに調整する放置後調整ステップと、
調整された上記基準用の二次電池の放置後インピーダンスを、上記評価周波数範囲に亘って測定する放置後インピーダンス測定ステップと、を有し、
前記評価ステップは、
上記基準用の二次電池についての上記放置前インピーダンス及び上記放置後インピーダンスのうち、少なくとも上記放置後インピーダンスをも用いて、前記評価用の二次電池の電池反応についての耐久性を評価する
二次電池の評価方法。
【請求項4】
請求項3に記載の二次電池の評価方法であって、
前記評価ステップは、
前記評価周波数範囲に亘って測定した前記放置前インピーダンスを用いた、前記基準用の二次電池の、放置前直流抵抗、放置前正極反応抵抗、及び、放置前負極反応抵抗を取得すると、
前記評価周波数範囲に亘って測定した前記放置後インピーダンスを用いた、前記基準用の二次電池の、放置後直流抵抗、放置後正極反応抵抗、及び、放置後負極反応抵抗を取得する放置後抵抗取得ステップのうち、
少なくとも、上記放置後抵抗取得ステップを含む
二次電池の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の耐久性の評価を行うに当たっては、二次電池を予め定めた耐久試験期間に亘り、所定の条件で駆動し、その前後の二次電池の特性変化などから、二次電池の各種の劣化要因について劣化状況などの評価を行っている。このような耐久性評価においては、電池の劣化を加速させるため、電池を高温下に保持する高温保持試験(例えば、特許文献1参照)や、第1電池電圧から第2電池電圧まで(第1SOCから第2SOCまで、例えばSOC0%から100%まで)の充電とこの逆の放電とを繰り返すサイクル試験(特許文献2参照)などを行うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-149288号公報
【文献】特開2016-072071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような耐久試験によっても、電池の各部に劣化を生じさせ、各劣化要因について評価を行えるようになるのに、長時間(例えば1ヶ月)を要することが多い。
本発明は、かかる問題点に基づいてなされたものであって、二次電池における特定の電池反応についての耐久性を、効率的にかつ適切に評価可能な二次電池の評価方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、二次電池の耐久性評価方法であって、耐久電池温度及び耐久SOCに調整された評価用の二次電池に、耐久試験期間に亘って、耐久周波数の交流電圧を印加し続ける耐久ステップと、上記評価用の二次電池の電池反応のうち、上記耐久周波数に関連した関連電池反応についての耐久性を評価する評価ステップと、を備え、前記耐久ステップに先立ち、前記評価用の二次電池を予め定めた評価電池温度及び評価SOCに調整する初期調整ステップと、調整された上記評価用の二次電池の耐久前インピーダンスを、評価周波数範囲に亘って測定する耐久前インピーダンス測定ステップと、上記評価用の二次電池を、前記耐久電池温度及び前記耐久SOCに調整する耐久前調整ステップと、を有し、前記耐久ステップの後、前記評価ステップに先立ち、上記耐久ステップ後の上記評価用の二次電池を上記評価電池温度及び上記評価SOCに調整する耐久後調整ステップと、調整された上記評価用の二次電池の耐久後インピーダンスを、上記評価周波数範囲に亘って測定する耐久後インピーダンス測定ステップと、を有し、上記評価ステップは、上記評価用の二次電池について得た上記耐久前インピーダンス及び上記耐久後インピーダンスを用いて、上記評価用の二次電池の電池反応についての耐久性を評価する二次電池の評価方法である。
【0006】
一般に、二次電池の充放電時に正極及び負極で生じる電池反応には、様々な段階(種類)がある。例えば、リチウムイオン二次電池,ナトリウムイオン二次電池などにおいては、導体や活物質内における電子の移動や、電解質材(電解液、固体電解質体)におけるイオン(Liイオン,Naイオンなど)の移動、負極活物質粒子内における電子とイオンとの反応、正極活物質粒子内における電子とイオンとの反応、(負極,正極)活物質粒子表面における電解質材との間のイオンの移動、(負極,正極)活物質粒子の表面から内部まで(あるいは内部から表面まで)のイオンの拡散移動などが挙げられる。
そして各段階の反応における荷電粒子(電子、イオン)の移動や反応の速度(移動や反応に要する時間)には違いがある。例えば上述の各段階について考察すると、導体や活物質内における電子の移動の速度は極めて速く、電解質材におけるイオンの移動も比較的速い。一方、負極における負極活物質とイオンとの反応の速度や、正極における正極活物質とイオンとの反応の速度は比較的遅い。また、(負極,正極)活物質粒子表面におけるイオンの移動(拡散)の速度はさらに遅い。さらに、活物質粒子の表面から内部まで(あるいは内部から表面まで)のイオンの拡散移動の速度は極めて遅いと言える。
【0007】
ここで、二次電池に交流電圧を印加した場合、電池反応に掛かる時間が、印加する交流電圧の1/2周期と同程度である種類の電池反応、及びこれよりも早い種類の電池反応は、交流電圧が正或いは負の期間内にこれを生じさせることができる。
しかし、電池反応に掛かる時間が、印加する交流電圧の1/2周期よりも遅い種類の電池反応は、当該電池反応の途中で印加している交流電圧の正負が入れ替わるため、当該電池反応が完結し得ないと考えられる。
なお、電池反応に掛かる時間が、印加する交流電圧の1/2周期よりも早い種類の電池反応については、より高い周波数(より短い周期)の交流電圧を印加した方が、同じ期間内により多数回の電池反応を生じさせ得る。つまり、二次電池における電池反応のうち或る種類の電池反応について考えた場合、当該電池反応に掛かる時間が、交流電圧の1/2周期の長さと同程度である周期(周波数)を有する交流電圧を二次電池に印加すると、この二次電池において当該電池反応を最も効率的に繰り返し生じさせ得ることになり、二次電池において、最も効率よく、当該電池反応による劣化を生じさせることができることになる。
【0008】
これに対し、上述の二次電池の評価方法では、耐久ステップにおいて耐久周波数の交流電圧を評価用の二次電池に印加する。従って、この評価用の二次電池においては、この二次電池に生じる様々な電池反応のうちでも、電池反応に掛かる時間が、耐久周波数feで決まる1/2周期(T/2=1/2fe)と同程度あるいはこれよりも短時間である種類の電池反応を繰り返し生じさせ得る。特に、電池反応に掛かる時間が、1/2周期(T/2=1/2fe)と同程度あるいはやや短時間である種類の電池反応を、効率的に繰り返し生じさせ得る。そして評価ステップでは、このような、印加する交流電圧の耐久周波数に関連した電池反応について耐久性を評価する。これによって、当該二次電池における特定の電池反応についての耐久性を、効率的にかつ適切に評価することができる。
加えてこの評価方法では、評価用の二次電池の状態を揃えるべく、初期調整ステップと耐久後調整ステップで、同じ「評価電池温度」及び「評価SOC」に調整し、その後に、二次電池の耐久前インピーダンス及び耐久後インピーダンスをそれぞれ測定する。
このように、耐久ステップにおける耐久電池温度及び耐久SOCとは別の、「評価電池温度」及び「評価SOC」とした評価用の二次電池について、それぞれインピーダンスを取得するので、耐久ステップでは、耐久試験に適切な耐久電池温度及び耐久SOCで耐久試験を行うことができる一方、評価用二次電池の評価においては、評価に適切な評価電池温度及び評価SOCで、この評価用の二次電池の耐久性前後の特性を評価することができる。
【0009】
なお、二次電池の電池反応についての耐久性の評価手法としては、例えば、上述のように、同一の二次電池の耐久試験前と後の特性を比較する手法が挙げられる。また、耐久試験後の特性と、基準とする同種の二次電池(基準用の二次電池)を耐久試験時間と同じ放置時間に亘り放置した後の特性とを比較する手法も挙げられる。このほか、第1耐久周波数の交流電圧を印加する耐久ステップを経た第1の二次電池と、第1耐久周波数よりも高周波数である第2耐久周波数の交流電圧を印加する耐久ステップを経た第2の二次電池について、耐久後の特性を比較することもできる。この場合には、第1耐久周波数と第2耐久周波数の周波数の違いから、交流電圧の印加の影響を受ける電池反応の種類に差異が生じる。このため、両者の特性の違いから、第1耐久周波数で決まる1/2周期の長さと同程度あるいはやや短時間である種類の電池反応について耐久性の知見が得やすくなる。
【0010】
また、評価に用いるべく取得(測定)する二次電池の特性としては、特定の周波数におけるインピーダンスや、或る周波数範囲に亘るインピーダンスを挙げることができる。また、評価に当たっては、インピーダンスそのものを用いるほか、或る周波数範囲に亘って測定したインピーダンスを用いてコールコールプロットを作成し、二次電池の直流抵抗、負極反応抵抗、正極反応抵抗などの抵抗成分に分離し、これらの抵抗成分の大きさやその変化を評価することもできる。
【0013】
「評価電池温度」及び「評価SOC」としては、耐久ステップによる各部の劣化によって、二次電池の特性差が現れ易い温度及びSOCの値を選択すると良い。「評価電池温度」としては、例えば、室温(25℃程度)のほか、-30℃などの低温域(例えば-10~-50℃の範囲)内の温度が採用し得る。また、「評価SOC」としては、例えば、SOC=20%などの低SOC領域(例えば、0~30%の範囲)内の値や、SOC=90%、100%などの高SOC領域(例えば、80~110%の範囲)内の値を用いるとよい。
【0014】
さらに上述の二次電池の評価方法であって、前記評価ステップは、前記評価周波数範囲に亘って測定した前記耐久前インピーダンスを用いて、前記評価用の二次電池の、耐久前直流抵抗、耐久前正極反応抵抗、及び、耐久前負極反応抵抗を取得する耐久前抵抗取得ステップと、上記評価周波数範囲に亘って測定した前記耐久後インピーダンスを用いて、上記評価用の二次電池の、耐久後直流抵抗、耐久後正極反応抵抗、及び、耐久後負極反応抵抗を取得する耐久後抵抗取得ステップと、を含む二次電池の評価方法とすると良い。
【0015】
この評価方法では、評価ステップの耐久前抵抗取得ステップで、耐久前直流抵抗、耐久前正極反応抵抗、及び、耐久前負極反応抵抗を取得し、耐久後抵抗取得ステップで、耐久後直流抵抗、耐久後正極反応抵抗、及び、耐久後負極反応抵抗を取得するので、これらを用いて、評価用の二次電池の耐久試験前後の特性変化などの特性評価を行うことができる。
【0016】
なお、取得した耐久前インピーダンス或いは耐久後インピーダンスを用いて、直流抵抗,正極反応抵抗、負極反応抵抗等を得る手法としては、所定の周波数範囲に亘って取得したインピーダンスを用いて、コールコールプロットを作成し、その軌跡の形態から直流抵抗等を得る手法が挙げられる。コールコールプロットからから直流抵抗等を得るには、ソフトウェアを用いて、想定した等価回路に適合する直流抵抗等の大きさを算出するようすると良い。
【0017】
前二項に記載の二次電池の評価方法であって、前記評価用の二次電池とは別の、基準用の二次電池について、前記評価電池温度及び前記評価SOCに調整する基準初期調整ステップと、調整された上記基準用の二次電池の放置前インピーダンスを、前記評価周波数範囲に亘って測定する放置前インピーダンス測定ステップと、上記基準用の二次電池を、前記耐久電池温度及び前記耐久SOCに調整する放置前調整ステップと、上記耐久電池温度及び上記耐久SOCに調整された上記基準用の二次電池を、正負極間を開放した状態で、前記耐久試験期間に亘って放置し続ける放置ステップと、上記放置ステップ後の上記基準用の二次電池を上記評価電池温度及び上記評価SOCに調整する放置後調整ステップと、調整された上記基準用の二次電池の放置後インピーダンスを、上記評価周波数範囲に亘って測定する放置後インピーダンス測定ステップと、を有し、前記評価ステップは、上記基準用の二次電池についての上記放置前インピーダンス及び上記放置後インピーダンスのうち、少なくとも上記放置後インピーダンスをも用いて、前記評価用の二次電池の電池反応についての耐久性を評価する二次電池の評価方法とすると良い。
【0018】
この評価方法では、評価用の二次電池のほか、基準用の二次電池を用い、これを耐久試験期間に亘って放置し続ける放置ステップの前後に、放置前インピーダンス及び放置後インピーダンスを得ておく。そして、評価ステップにおいて、放置前インピーダンス及び放置後インピーダンスのうち、少なくとも放置後インピーダンスをも用いて、評価用の二次電池の電池反応についての耐久性を評価する。
【0019】
このため、同じ耐久試験期間に亘って耐久周波数の交流電圧を印加した場合(評価用の二次電池)と、印加しなかった場合(基準用の二次電池)との比較から、耐久周波数に関連した評価用の二次電池の電池反応についての耐久性をより適切に評価することができる。
【0020】
なお、評価用の二次電池の評価に当たっては、基準用の二次電池の放置後インピーダンスをも用いて、評価を行うことができる。またこれから、放置後直流抵抗、放置後正極反応抵抗、及び、放置後負極反応抵抗を得て、評価用の二次電池における、耐久前直流抵抗、耐久前正極反応抵抗、及び、耐久前負極反応抵抗と比較したり、耐久後抵抗取得ステップで、取得耐久後直流抵抗、耐久後正極反応抵抗、及び、耐久後負極反応抵抗と比較して、評価用の二次電池の各特性を評価することもできる。
【0021】
なお、基準用の二次電池としては、評価用の二次電池と同じ構成、同等の特性を有する電池(同一品番の電池、同一品番同一ロットの電池)を用いるが好ましい。
また、基準用の二次電池の放置前インピーダンスをも用いて、評価を行うことができる。またこれから、放置前直流抵抗、放置前正極反応抵抗、及び、放置前負極反応抵抗を得て、これをも用いて、評価用の二次電池の各特性を評価することもできる。
【0022】
さらに上述の二次電池の評価方法であって、前記評価ステップは、前記評価周波数範囲に亘って測定した前記放置前インピーダンスを用いた、前記基準用の二次電池の、放置前直流抵抗、放置前正極反応抵抗、及び、放置前負極反応抵抗を取得する放置前抵抗取得ステップと、前記評価周波数範囲に亘って測定した前記放置後インピーダンスを用いた、前記基準用の二次電池の、放置後直流抵抗、放置後正極反応抵抗、及び、放置後負極反応抵抗を取得する放置後抵抗取得ステップのうち、少なくとも、上記放置後抵抗取得ステップを含む二次電池の評価方法とすると良い。
【0023】
この評価方法では、評価ステップの放置前抵抗取得ステップで、放置前直流抵抗、放置前正極反応抵抗、及び、放置前負極反応抵抗を取得し、放置後抵抗取得ステップで、放置後直流抵抗、放置後正極反応抵抗、及び、放置後負極反応抵抗を取得するので、これらをも加えることで、基準用の二次電池を基準とした、評価用の二次電池の耐久試験前後の特性変化などの特性評価を行うことができる。
【0024】
なお、放置前インピーダンス及び放置後インピーダンスを用いて、直流抵抗等を得る手法としては、前述の耐久前インピーダンス及び耐久後インピーダンスの場合と同様、所定の周波数範囲に亘って得られたインピーダンスを用いて、コールコールプロットを作成し、これから、直流抵抗等を得る手法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態にかかる電池の評価手法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】実施形態にかかり、耐久電池温度及び耐久SOCとした評価用電池のインピーダンスのコールコールプロットと、5つの耐久周波数fda~fdeとの関係を示すグラフである。
【
図3】
図2のコールコールプロットを用いて得た、評価用電池の等価回路図である。
【
図4】実施形態にかかり、5つの評価用電池及び基準用電池の、耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)及び放置前インピーダンスZBf(0)のコールコールプロットである。
【
図5】実施形態にかかり、5つの評価用電池及び基準用電池の、5日耐久後インピーダンスZBa(5)~ZBe(5)及び5日間放置後インピーダンスZBf(5)のコールコールプロットである。
【
図6】実施形態にかかり、5つの評価用電池及び基準用電池の、10日耐久後インピーダンスZBa(10)~ZBe(10)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)のコールコールプロットである。
【
図7】実施形態にかかり、耐久周波数fde=0.1mHzの交流電圧を印加した評価用電池Beについての、耐久前インピーダンスZBe(0)、5日間耐久後インピーダンスZBe(5)及び10日間耐久後インピーダンスZBe(10)のコールコールプロットである。
【
図8】実施形態にかかり、基準用電池Bfについての、放置前インピーダンスZBf(0)、5日間放置後インピーダンスZBf(5)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)のコールコールプロットである。
【
図9】実施形態にかかり、耐久周波数fde=0.1mHzの交流電圧を印加した評価用電池Beについて得た、直流抵抗Rs、負極反応抵抗Rn、及び正極反応抵抗Rpの推移を示すグラフである。
【
図10】実施形態にかかり、両端子間開放状態で放置電池温度の環境下に放置した基準用電池Bfについて得た、直流抵抗Rs、負極反応抵抗Rn、及び正極反応抵抗Rpの推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。先ず、本実施形態において、各測定に使用する全固体リチウムイオン二次電池(図示しない。以下、単に二次電池又は電池という。)を、以下のようにして製造した。
【0027】
(固体電解質の合成)
Li2S粉末0.550gとP2S5粉末0.877gとLiI粉末0.285gとLiBr粉末0.277gを秤量し、メノウ乳鉢で5分間混合し、その後、脱水ヘプタンを4g入れ、遊星型ボールミルを用い40時間メカニカルミリングして固体電解質の粉末を得た。
【0028】
(負極合材ペーストの作製)
負極活物質として、平均一次粒子径0.7μmのチタン酸リチウムLi4Ti5O12(以下、LTOともいう)粉末を1.0g、導電材カーボンである気相法炭素繊維を0.024g、PVDFを0.048g、酪酸ブチル1.6g秤量し、超音波ホモジナイザー(SMT社製UH-50)を用いて30分以上混合し、さらに、上述の固体電解質の粉末を0.336g添加し、再度、上述の超音波ホモジナイザーで混合して、負極合剤ペーストを得た。
【0029】
(正極合材ペーストの作製)
正極活物質にLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を使用した。活物質にはLiNbO3の表面処理を施してある。この正極活物質を2.0g、導電材カーボンである気相法炭素繊維を0.048g、固体電解質を0.407g、PVDFを0.016g、酪酸ブチルを1.3g秤量し、上述の超音波ホモジナイザーを用いて混合して正極合剤ペーストを得た。
【0030】
(固体電解質層用ペーストの作製)
ブタジエンゴム系バインダーを5wt%含んだヘプタン溶液と、固体電解質としての平均粒子径2.5μmのLiI-Li2S-P2S5系ガラスセラミック粉末とを、ポリプロピレン製容器に投入し、超音波分散装置で30秒間攪拌した。次に、この容器を振とう器で3分間振とうさせて、固体電解質層用ペーストを得た。
【0031】
(正極及び負極の作製)
アプリケーターを使用しブレード法によって、アルミニウム箔上に前述の正極合材ペーストを塗工した。塗工後、100℃のホットプレス上で30分間乾燥させて、アルミニウム箔の一方表面上に正極合剤層を有する正極板を得た。
同様に、アプリケーターを使用しブレード法によって、銅箔上に前述の負極合材ペーストを塗工した。塗工後、100℃のホットプレス上で30分間乾燥させて、銅箔の一方表面上に負極合剤層を有する負極板を得た。
なお、正極合材の目付量は18mg/cm2とし、負極板は正極板に対し、容量比1.3となるように負極合材の目付量を調整した。この際、負極活物質として炭素粒子の理論容量は370mAh/g、LTOの理論容量は165mAh/gとして、容量比を計算した。
【0032】
(正極側の固体電解質層用ペーストの塗工)
製造した上述の正極板を予備プレスし、予備プレス後の正極板について、正極合剤層の表面に、ダイコーターにより前述の固体電解質層用ペーストを塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。その後、面圧2ton/cm2の圧力でロールプレスを行って、正極合材層の表面に固体電解質層を備える正極側積層体を得た。
【0033】
(負極側の固体電解質層用ペーストの塗工)
製造した前述の負極板も予備プレスし、予備プレス後の負極板について、負極合剤層の表面に、ダイコーターにより前述の固体電解質層用ペーストを塗工し、100℃のホットプレート上で、30分間乾燥させた。その後、面圧2ton/cm2の圧力でロールプレスを行って、負極合材層の表面に固体電解質層を備える負極側積層体を得た。
【0034】
(全固体リチウムイオン二次電池の作製)
上述のようにして製造した正極側積層体と負極側積層体とを、それぞれ対向面積が1cm2の円形状に打ち抜き加工し、固体電解質層同士を貼り合わせるようにして重ね合わせた。但し、正極側積層体の固体電解質層上に、未プレスの固体電解質層(固体電解質層用ペースト)を転写しておき、正極側積層体の固体電解質層と、負極側積層体の固体電解質層との間に、未プレスの固体電解質層が介在するようにして重ね合わせた。その後、130℃の温度下で2ton/cm2の圧力でプレスし、正極箔(アルミニウム箔)と負極泊(銅箔)との間に、正極合材層と固体電解質層と負極合材層とをこの順に有する発電要素を得た。得られた発電要素をラミネート封入し、拘束治具を用いて5MPaの拘束圧力で拘束して、全固体リチウムイオン二次電池とした。
【0035】
(コンディショニング)
その後、コンディショングとして25℃の環境下で、充放電レート0.1Cの電流で、電池電圧4.35~3.00Vの範囲で3サイクルのCCCV充放電を行った。
【0036】
(全固体リチウムイオン二次電池の評価)
上述のようにしてコンディショニングを終えた同一ロットの二次電池のうち、5つの二次電池を評価用電池Ba~Beとして用い、1つの二次電池を基準用電池Bfとして用いて、耐久試験及び放置試験を以下の手順で行う(
図1参照)。
【0037】
先ず、基準用電池Bfを用いた放置試験について説明する。先ず、基準初期調整ステップSK1において、基準用電池BfのSOCをCCCV放電によって評価SOCSOCe(SOCe=20%)に調整した上で、この基準用電池Bfを評価電池温度Te(Te=-30℃)の環境下に3時間以上放置する。
【0038】
その後、放置前インピーダンス測定ステップSK2において、Solartron Analytical社製Solartron1260を用いて、予め定めた評価周波数範囲Wfe(本実施形態では、周波数f=1MHz~0.01Hzの範囲)に亘る基準用電池Bfの放置前インピーダンスZBf(0)を測定する。
なお、このステップSK2及び後述する耐久前インピーダンス測定ステップS2において、基準用電池Bf及び評価用電池Ba~Beのインピーダンス測定を、低温下かつ低SOCの状態で行うのは、電池のインピーダンスが大きくなり、放置試験あるいは耐久試験による特性変化を検知し易い傾向にあるからである。
【0039】
次いで放置前調整ステップSK3に進み、基準用電池BfのSOCをCCCV充電によって耐久SOCSOCd(SOCd=80%)に調整した上で、基準用電池Bfを耐久電池温度Td(Td=60℃)の環境下に3時間以上放置する。
【0040】
その後、放置ステップSK4,SK5では、基準用電池Bfを正負極端子間を開放した状態で耐久期間Dd1(本実施形態では5日間)に亘り放置する。即ち、ステップSK4では基準用電池Bfを正負極端子間を開放した状態で放置し、ステップSK5では耐久期間Dd1が経過したか否かを判断する。このステップSK5でNo、即ち、耐久期間Dd1が未経過の場合には、ステップSK4に戻り、放置試験を継続する。一方、ステップSK5でYes、即ち、耐久期間Dd1を経過した場合には、放置試験を終了してステップSK6に進む。
なお、基準用電池Bfの放置試験(ステップSK4)及び後述する評価用電池Ba~Beの耐久試験(ステップS4)を、高温下かつ高SOCの状態下で行うのは、電池の劣化が進みやすく、放置試験あるいは耐久試験による特性変化を生じさせ易い傾向にあるからである。
【0041】
放置後調整ステップSK6では、ステップSK2と同様、基準用電池Bfを評価電池温度Te(Te=-30℃)の環境下に3時間以上放置した上で、基準用電池BfのSOCをCCCV放電によって評価SOCSOCe(SOCe=20%)に調整する。その後、放置後インピーダンス測定ステップSK7において、ステップSK3と同様、評価周波数範囲Wfeに亘る基準用電池Bfの5日間放置後インピーダンスZBf(5)を測定する。
【0042】
続く再放置判定ステップSK8では、再度放置試験を行うか否かを判断する。このステップSK8でYes、即ち、放置試験を再度行う場合には、再びステップSK3に戻り、基準用電池BfのSOCをCCCV充電によって耐久SOCSOCd(SOCd=80%)に調整した上で、基準用電池Bfを評価電池温度Te(Te=60℃)の環境下に3時間以上放置する。その後は、ステップSK4~SK7を再度行い、ステップSK8に戻る。
本実施形態では、ステップSK8で、一度だけ、再度の放置試験を行うこととしており、これにより、2回目のステップSK7において、評価周波数範囲Wfeに亘る基準用電池Bfの10日間放置後インピーダンスZBf(10)が測定される。
【0043】
一方、ステップSK8でNo、即ち、再度の放置試験を行わない場合には、評価ステップS9に進む。これにより本実施形態では、基準用電池Bfについて、放置前インピーダンスZBf(0)のほか、5日間放置後インピーダンスZBf(5)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)が得られたことになる。
【0044】
次いで、5つの評価用電池Ba~Beを用いた5種類の評価試験について説明する。先ず、初期調整ステップS1において、ステップSK1における基準用電池Bfと同じく、評価用電池Ba~BeのSOCをCCCV放電によって評価SOCSOCe(SOCe=20%)に調整した上で、評価電池温度Te(Te=-30℃)の環境下に3時間以上放置する。その後、耐久前インピーダンス測定ステップS2において、ステップSK2と同様、評価周波数範囲Wfe(本実施形態では、周波数f=1MkHz~0.01Hzの範囲)に亘る評価用電池Ba~Beの耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)を測定する。
【0045】
次いで耐久前調整ステップS3に進み、ステップSK3における基準用電池Bfと同じく、評価用電池Ba~BeのSOCをCCCV充電によって耐久SOCSOCd(SOCd=80%)に調整した上で、これら評価用電池Ba~Beを耐久電池温度Td(Td=60℃)の環境下に3時間以上放置する。
【0046】
その後、耐久ステップS4,S5では、評価用電池Ba~Beの正負極端子間にそれぞれ耐久周波数fda~fdeの交流電圧(35mVrms)を耐久期間Dd1(本実施形態では5日間)に亘り印加し続ける。即ち、ステップS4では評価用電池Ba~Beの正負極端子間にそれぞれ交流電圧を印加し、ステップS5で耐久期間Dd1が経過したか否かを判断する。このステップS5でNo、即ち、耐久期間Dd1未経過の場合には、ステップS4に戻り、評価試験を継続する。一方、ステップS5でYes、即ち、耐久期間を経過した場合には、評価試験を終了して耐久後調整ステップS6に進む。
【0047】
なお本実施形態では、ステップS4の耐久試験で、評価用電池Ba~Beの正負極端子間に印加する交流電圧の耐久周波数fda~fdeとして、fda=50kHz,fdb=30kHz,fdc=1kHz,fdd=0.1Hz,fde=0.1mHzを選択した。これらの周波数の選択について、
図2,
図3を参照して説明する。
【0048】
図3に、本実施形態において評価に用いた評価用電池Ba~Be及び基準用電池Bfが示す電池インピーダンスZBa~ZBfの等価回路を示す。この
図3に示す電池インピーダンスZBa~ZBfの等価回路は、直流インピーダンス部Zdcと、負極インピーダンス部Znと、正極インピーダンス部Zpの直列回路で示される。このうち、直流インピーダンス部Zdcは、直流インダクタンスLsと、直流抵抗Rsの直列回路で与えられる。また負極インピーダンス部Znは、負極容量Cnと負極反応抵抗Rnの並列回路で与えられる。さらに正極インピーダンス部Zpは、正極反応抵抗Rp及びワールブルグインピーダンスWpの直列回路と正極容量Cpとの並列回路で与えられる。
【0049】
このうち、直流インダクタンスLs及び直流抵抗Rsは、電池内の配線等に生じるインダクタンス及び抵抗である。一方、負極インピーダンス部Znのうち、負極容量Cnは、負極に生じるコンデンサ成分を示し、負極反応抵抗Rnは負極における電極反応に伴って生じる抵抗成分を示す。他方、正極インピーダンス部Zpのうち、正極容量Cpは、正極に生じるコンデンサ成分を示し、正極反応抵抗Rpは正極における電極反応に伴って生じる抵抗成分を示す。また、ワールブルグインピーダンスWpは、正極活物質粒子内及び負極活物質粒子内におけるLiイオンの拡散移動に伴って生じるインピーダンスを示す。
【0050】
この等価回路で示される電池インピーダンスZBの周波数変化を、コールコールプロット(ナイキストプロット)で示すと、典型的には、負極インピーダンス部Znの負極容量Cnと負極反応抵抗Rnの大きさに対応した半円弧状に変化する部位を生じる。また、正極インピーダンス部Zpのうち正極容量Cpと正極反応抵抗Rpの大きさに対応した半円弧状に変化する部位を生じる。但し、正極インピーダンス部Zpは、半円弧状に変化する部位よりも低周波側では、ワールブルグインピーダンスWpの存在により、低周波側ほどレジスタンスZ’及び容量性リアクタンスZ”も大きくなるパターンで変化する。このため、半円弧状に変化する部位のうち低周波側(レジスタンスZ’の大きい側)の部位は、ワールブルグインピーダンスWpによる低周波側ほどレジスタンスZ’及び容量性リアクタンスZ”も大きくなるパターンに徐々に移行する変化となる。また、電池インピーダンスZBのコールコールプロットにおいては、上述したように等価回路上では、半円弧状に変化する部位が2つ生じるはずである。しかし、実際の電池においては、電池インピーダンスZBのコールコールプロットのグラフにおいて、必ずしも、半円弧状に変化する部位が明確に2つ認められるとは限らない。なお、本実施形態の各電池では、負極インピーダンス部Znによって生じる半円弧状の変化を生じる周波数域の方が、正極インピーダンス部Zpによって生じる半円弧状の変化を生じる周波数域よりもやや高い周波数域となることが判っている。
【0051】
本実施形態の評価用電池Ba~Beと同一ロットの電池を、耐久SOCSOCd(=80%)及び耐久電池温度Td(=60℃)とし、周波数1MHz~0.01Hzの範囲で順に変化させて計測した、電池インピーダンスZBの周波数変化の典型例を
図2に示す。この
図2のグラフは、その横軸を得られた電池インピーダンスZBの実数部であるレジスタンスZ’とし、グラフの縦軸を得られた電池インピーダンスZBの虚数部であるリアクタンスZ”(但し、上側を負、即ち容量性リアクタンスとして示す。)として表示したコールコールプロットである。
【0052】
本実施形態では、この
図2に示す、耐久SOCSOCd及び耐久電池温度Td下での評価用電池の電池インピーダンスZBのコールコールプロットにおいて、グラフがZ”=0の横軸と最初に交差する周波数f、即ち、
図2に示す電池インピーダンスZBがリアクタンスZ”=0Ωに対応する周波数f(=50kHz)を、ステップS4の耐久試験で評価用電池Baに印加する交流電圧の耐久周波数fdaとした。即ち、ステップS4において、評価用電池Baに耐久周波数fda(=50kHz)の交流電圧を印加すると、評価用電池Baでは、電池の充放電時に正極及び負極で生じる電池反応のうちでも、正極で生じる正極反応や負極で生じる負極反応よりも早い、電子やイオンの移動を選択的に生じさせることができ、これによる評価用電池Baの劣化を選択的に生じさせることができる。
【0053】
また、
図2に示す電池インピーダンスZBのコールコールプロットにおいて、負極インピーダンス部Zn及び正極インピーダンス部Zpによってそれぞれ生じる半円弧状の変化の低周波側の終点に概ね対応する周波数f(=1kHz)を、ステップS4の耐久試験で評価用電池Bcに印加する交流電圧の耐久周波数fdcとした。即ち、ステップS4において、評価用電池Baに耐久周波数fdc(=1kHz)の交流電圧を印加すると、評価用電池Bcでは、電池の充放電時に正極及び負極で生じる電池反応のうちでも、正極で生じる正極活物質とLiイオンとで生じる正極反応を、繰り返し効率良く生じさせることができ、これによる評価用電池Bcの劣化を効率よく生じさせることができる。
【0054】
本実施形態の電池では、
図2に示す電池インピーダンスZBのコールコールプロットにおいては、負極インピーダンス部Znによって生じる半円弧状の変化部分と、正極インピーダンス部Zpによって生じる半円弧状の変化部分とを明確に分離できない。しかし、電池温度を例えば-30℃などの低温とし、電池のSOCを20%などの低SOCとした場合には、比較的両者を分離しやすい。そこで、電池を低音かつ低SOCにおいて、分離される負極インピーダンス部Znによる半円弧状の変化部分と正極インピーダンス部Zpによる半円弧状の変化部分との境界に対応する周波数f(=30kHz)を、ステップS4の耐久試験で評価用電池Bbに印加する交流電圧の耐久周波数fdbとした。即ち、ステップS4において、評価用電池Bbに耐久周波数fdb(=30kHz)の交流電圧を印加すると、評価用電池Bbでは、電池の充放電時に正極及び負極で生じる電池反応のうちでも、負極で生じる負極活物質とLiイオンとで生じる負極反応を、効率良く生じさせることができ、これによる評価用電池Bbの劣化を効率よく生じさせることができる。
【0055】
さらに、等価回路におけるワールブルグインピーダンスWpに対応した周波数、即ち、正極活物質粒子内及び負極活物質粒子内におけるLiイオンの拡散移動が生じる周波数領域内の周波数f(=0.1Hz)を、ステップS4の耐久試験で評価用電池Bdに印加する交流電圧の耐久周波数fddとした。即ち、ステップS4において、評価用電池Bdに耐久周波数fdd(=0.1Hz)の交流電圧を印加すると、評価用電池Bdでは、電池の充放電時に正極及び負極で生じる電池反応のうちでも、負極活物質粒子及び正極活物質粒子におけるLi原子の拡散、特に、負極活物質粒子の表面部分及び正極活物質粒子の表面部分におけるLi原子の拡散移動を、効率良く生じさせることができ、これによる評価用電池Bdの劣化を効率よく生じさせることができる。
【0056】
さらに、等価回路におけるワールブルグインピーダンスWpに対応し、正極活物質粒子内及び負極活物質粒子内におけるLiイオンの拡散移動が十分に生じる周波数f(=0.1mHz)を、ステップS4の耐久試験で評価用電池Beに印加する交流電圧の耐久周波数fdeとした。即ち、ステップS4において、評価用電池Bdに耐久周波数fde(=0.1mHz)の交流電圧を印加すると、評価用電池Beでは、電池の充放電時に正極及び負極で生じる電池反応のうちでも、負極活物質粒子及び正極活物質粒子におけるLi原子の拡散、特に、負極活物質粒子の中心部分までの及び正極活物質粒子の中心部分までのLi原子の拡散移動を、効率良く生じさせることができ、これによる評価用電池Beの劣化を効率よく生じさせることができる。
【0057】
ステップS6では、ステップS2と同様、ステップS4の耐久試験で耐久周波数fda~fdeの交流電圧を5日間印加した評価用電池Ba~Beを、評価電池温度Te(Te=-30℃)の環境下に3時間以上放置した上で、評価用電池Ba~BeのSOCをCCCV放電によって評価SOCSOCe(SOCe=20%)に調整する。その後、耐久後インピーダンス測定ステップS7において、ステップS3と同様、所定の周波数範囲に亘る評価用電池Ba~Beの5日間耐久後インピーダンスZBa(5)~ZBe(5)を測定する。
【0058】
このように本実施形態では、評価用電池Ba~Beの状態を揃えるべく、初期調整ステップS1と耐久後調整ステップS6で、同じ評価電池温度Te(Te=-30℃)及び評価SOCSOCe(SOCe=20%)に調整し、その後に、各電池Ba~Beの耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)及び5日間耐久後インピーダンスZBa(5)~ZBe(5)をそれぞれ測定する。
このように、耐久ステップS4,S5における耐久電池温度Td(Td=60℃)及び耐久SOCSOCd(SOCd=80%)とは別の、評価電池温度Te及び評価SOCSOCeとした評価用電池Ba~Beについて、それぞれ電池インピーダンスZBa(0)等を取得するので、耐久ステップS4,S5では、耐久試験に適切な耐久電池温度Td及び耐久SOCSOCdで耐久試験を行うことができる一方、評価用電池Ba~Beの評価においては、評価に適切な評価電池温度Te及び評価SOCSOCeで、この評価用電池Ba~Beの耐久性前後の特性を評価することができる。この点は、次述する10日間耐久後インピーダンスZBa(10)~ZBe(10)についても同様である。
【0059】
続く再耐久判定ステップS8では、再度耐久試験を行うか否かを判断する。このステップS8でYes、即ち、耐久試験を再度行う場合には、再びステップS3に戻り、評価用電池Ba~Beを耐久電池温度Td(Td=60℃)の環境下に3時間以上放置した上で、評価用電池Ba~BeのSOCをCCCV充電によって耐久SOCSOCd(SOCd=80%)に調整する。その後は、ステップS4~S7を再度行い、ステップS8に戻る。
本実施形態では、ステップS8で、一度だけ、再度の耐久試験を行うこととしており、これにより、2回目のステップS7において、評価周波数範囲Wfeに亘る評価用電池Ba~Beの10日間耐久後インピーダンスZBa(10)~ZBe(10)が測定される。
一方、ステップS8でNo、即ち、再度の放置試験を行わない場合には、評価ステップS9に進む。
【0060】
かくして本実施形態では、前述したように、基準用電池Bfについて、放置前インピーダンスZBf(0)、5日間放置後インピーダンスZBf(5)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)が得られたほか、評価用電池Ba~Beについて、耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)、5日間耐久後インピーダンスZBa(5)~ZBe(5)及び10日間耐久後インピーダンスZBa(10)~ZBe(10)が得られたことになる。
【0061】
そこで、評価ステップS9では、これらのインピーダンスZBa(0)~ZBe(0)等を用いて、各評価用電池Ba~Beの耐久試験前後の特性変化、及び基準用電池Bfの放置試験前後の特性変化から、各評価用電池Ba~Beの耐久性を評価する。
【0062】
本実施形態では、評価用電池Ba~Beのほか、基準用電池Bfを用い、これを耐久期間Dd1,Dd2に亘って放置し続ける放置ステップの前後に、放置前インピーダンスZBf(0)及び放置後インピーダンスZBf(5),ZBf(10)を得ておく。そして、評価ステップS9において、放置前インピーダンスZBf(0)と放置後インピーダンスZBf(5),ZBf(10)の二者あるいは三者を用いて、評価用電池Ba~Beの電池反応についての耐久性を評価する。
このため、同じ耐久期間に亘って耐久周波数の交流電圧を印加した場合(評価用電池)と、印加しなかった場合(基準用電池)との比較から、耐久周波数に関連した評価用電池の電池反応についての耐久性をより適切に評価することができる。
【0063】
図4は、5つの評価用電池Ba~Be及び基準用電池Bf(合計6つ)の、耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)及び放置前インピーダンスZBf(0)のコールコールプロットである。この
図4を
図2と比較すると判るように、各電池Ba~Bfを、耐久電池温度Td(Td=60℃)で、耐久SOCSOCd(SOCd=80%)とした場合に相当する
図2に示す電池インピーダンスZBは、概ね数Ω程度である。これに対し、評価電池温度Te(Te=-30℃)で、評価SOCSOCe(SOCe=20%)とした場合の各電池Ba~Bfの耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)及び放置前インピーダンスZBf(0)は、概ね数100Ωの大きさとなっており、
図2の場合に比して、大幅に(本実施形態では100倍程度)大きいことが判る。電池温度が低いために、正極及び負極における活物質とイオンとの反応などの速度が大幅に低下したためであると解される。
【0064】
また
図4に示す、各電池Ba~Bfの耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)及び放置前インピーダンスZBf(0)の6本のグラフは、互いに近似した形態及び大きさのグラフとなっており、特にレジスタンスZ’が概ね200Ω以下の領域で、互いに近似した形態及び大きさのグラフとなっている。つまり、各電池Ba~Bfの耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)及び放置前インピーダンスZBf(0)は、相互に似た特性となっていることが判る。
【0065】
次いで、
図5に、5つの評価用電池Ba~Be及び基準用電池Bfの、5日間耐久後インピーダンスZBa(5)~ZBe(5)及び5日間放置後インピーダンスZBf(5)のコールコールプロットを示す。
さらに、
図6に、5つの評価用電池Ba~Be及び基準用電池Bfの、10日間耐久後インピーダンスZBa(10)~ZBe(10)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)のコールコールプロットを示す。
【0066】
これらの
図4~
図6から、本実施形態の評価用電池Ba~Beでは、太線で示す基準用電池Bfの5日間放置後インピーダンスZBf(5)あるいは10日間放置後インピーダンスZBf(10)に比して、最も大きく特性に差異が生じているのは、太破線で示す評価用電池Beに掛かる5日間耐久後インピーダンスZBe(5)及び10日間耐久後インピーダンスZBe(10)であることが判る。即ち、耐久周波数fde=0.1mHzの交流電圧を印加すると、他の大きさの耐久周波数fd(fda~fdd)の交流電圧を印加した場合よりも、評価用電池Beの特性を大きく変化(劣化)させることが判る。
【0067】
このように、本実施形態では、複数の評価用電池を用いて(本実施形態では5つの電池Ba~Be)を用いて、それぞれ異なる耐久周波数fd(本実施形態では5種類の耐久周波数fda~fde)の交流電圧を印加する。このため、本実施形態の評価用電池Ba~Beにおける特定の電池反応についての耐久性を、効率的にかつ適切に評価することができる。
【0068】
次いで、
図7に、
図4~
図6に示す各グラフのうち、耐久周波数fde=0.1mHzの交流電圧を印加した評価用電池Beについての、耐久前インピーダンスZBe(0)、5日間耐久後インピーダンスZBe(5)及び10日間耐久後インピーダンスZBe(10)のコールコールプロットのグラフを示す。また同様に、
図8に、基準用電池Bfについての、放置前インピーダンスZBf(0)、5日間放置後インピーダンスZBf(5)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)のコールコールプロットのグラフを示す。
【0069】
そしてステップS9のうち、耐久前抵抗取得ステップS9aでは、前述の
図3の等価回路を前提として、カーブフィッティングソフトであるScribner Associates社製ZViewを用いて、
図7に示す耐久前インピーダンスZBe(0)のグラフから、直流抵抗Rs、負極反応抵抗Rn,正極反応抵抗Rpの大きさを推定し、耐久前直流抵抗Rse(0)、耐久前負極反応抵抗Rne(0)及び耐久前正極反応抵抗Rpe(0)を得た。また、耐久後抵抗取得ステップS9bでは、同様にして、
図7に示す5日間耐久後インピーダンスZBe(5)及び10日間耐久後インピーダンスZBe(10)のグラフから、5日間耐久後直流抵抗Rse(5)、5日間耐久後負極反応抵抗Rne(5)及び5日間耐久後正極反応抵抗Rpe(5)のほか、10日間耐久後直流抵抗Rse(10)、10日間耐久後負極反応抵抗Rne(10)及び10日間耐久後正極反応抵抗Rpe(10)を得た。これらを用いることで、後述するように、評価用電池Beの耐久試験前後の特性変化などの特性評価を行うことができる。
【0070】
図9に、耐久試験による直流抵抗Rs、負極反応抵抗Rn,正極反応抵抗Rpの大きさの推移、即ち、耐久前直流抵抗Rse(0),5日間耐久後直流抵抗Rse(5)及び10日間耐久後直流抵抗Rse(10)、耐久前負極反応抵抗Rne(0)、5日間耐久後負極反応抵抗Rne(5)及び10日間耐久後負極反応抵抗Rne(10)、耐久前正極反応抵抗Rpe(0)、5日間耐久後正極反応抵抗Rpe(5)及び10日間耐久後正極反応抵抗Rpe(10)を示す。
【0071】
同様に、放置前抵抗取得ステップS9cでは、
図8に示す放置前インピーダンスZBf(0)のグラフから、直流抵抗Rs、負極反応抵抗Rn,正極反応抵抗Rpの大きさを推定し、放置前直流抵抗Rsf(0)、放置前負極反応抵抗Rnf(0)及び放置前正極反応抵抗Rpf(0)を得た。また、放置後抵抗取得ステップS9dでは、同様にして、
図8に示す5日間放置後インピーダンスZBf(5)及び10日間放置後インピーダンスZBf(10)のグラフから、5日間放置後直流抵抗Rsf(5)、5日間放置後負極反応抵抗Rnf(5)及び5日間放置後正極反応抵抗Rpf(5)のほか、10日間放置後直流抵抗Rsf(10)、10日間放置後負極反応抵抗Rnf(10)及び10日間放置後正極反応抵抗Rpf(10)を得た。これらをも加えることで、後述するように、基準用電池Bfを基準とした、評価用電池Beの耐久試験前後の特性変化などの特性評価を行うことができる。
【0072】
図10に、放置試験による直流抵抗Rs、負極反応抵抗Rn,正極反応抵抗Rpの大きさの推移、即ち、放置前直流抵抗Rsf(0),5日間放置後直流抵抗Rsf(5)及び10日間放置後直流抵抗Rsf(10)、放置前負極反応抵抗Rnf(0)、5日間放置後負極反応抵抗Rnf(5)及び10日間放置後負極反応抵抗Rnf(10)、放置前正極反応抵抗Rpf(0)、5日間放置後正極反応抵抗Rpf(5)及び10日間放置後正極反応抵抗Rpf(10)を示す。
【0073】
先ず直流抵抗Rsについて検討する。
図10の基準用電池Bfのグラフにおいて、放置前直流抵抗Rsf(0)、5日間放置後直流抵抗Rsf(5)及び10日間放置後直流抵抗Rsf(10)は、ほとんど変化していない。即ち、5日間の耐久期間Dd1及び10日間の耐久期間Dd2に亘る耐久電池温度Td(=60℃)、耐久SOCSOCd(=80%)下での放置では、本実施形態の電池(基準用電池Bf)の直流抵抗Rsは変化しないことが判る。本実施形態の電池において直流抵抗Rsは、導体などに生じる抵抗成分であり、高温、高SOC(Td=60℃、SOCd=80%)下の放置では、変化が生じなかったためであると解される。
【0074】
一方、
図9の評価用電池Beのグラフにおいても、耐久前直流抵抗Rse(0)、5日間耐久後直流抵抗Rse(5)及び10日間耐久後直流抵抗Rse(10)は、ほとんど変化していない。本実施形態の電池(評価用電池Be)の直流抵抗Rsは、5日間の耐久期間Dd1及び10日間の耐久期間Dd2に亘る耐久電池温度Td(=60℃)、耐久SOCSOCd(=80%)下での放置に加え、耐久周波数fde=0.1mHzのごくゆっくりとした電圧変化の交流電圧の印加でも、変化しなかったためであると解される。
【0075】
次いで、負極反応抵抗Rnについて検討する。
図10の基準用電池Bfのグラフにおいて、放置前負極反応抵抗Rnf(0)、5日間放置後負極反応抵抗Rnf(5)及び10日間放置後負極反応抵抗Rnf(10)も、ほとんど変化していない。即ち、耐久期間Dd1,Dd2に亘る耐久電池温度Td、耐久SOCSOCd下での放置では、本実施形態の電池の負極反応抵抗Rnも変化しないことが判る。本実施形態の電池において負極反応抵抗Rnは、負極活物質粒子とLiイオンとの反応時に生じる抵抗成分であり、高温、高SOC(Td=60℃、SOCd=80%)下の放置では、負極活物質粒子にLiイオンとの反応に変化が生じるような変質が生じなかったためであると解される。
【0076】
一方、
図9の評価用電池Beのグラフにおいても、耐久前負極反応抵抗Rne(0)、5日間耐久後負極反応抵抗Rne(5)及び10日間耐久後負極反応抵抗Rne(10)は、ほとんど変化していない。本実施形態の電池(評価用電池Be)の負極反応抵抗Rnも、耐久期間Dd1,Dd2に亘る耐久電池温度Td、耐久SOCSOCd下での放置に加え、耐久周波数fde=0.1mHzのごくゆっくりとした電圧変化の交流電圧の印加でも、負極活物質粒子にLiイオンとの反応に変化が生じるような変質が生じなかったためであると解される。
【0077】
さらに正極反応抵抗Rpについて検討する。直流抵抗Rs及び負極反応抵抗Rnとは異なり、
図10の基準用電池Bfのグラフにおいて、放置前正極反応抵抗Rpf(0)、5日間放置後正極反応抵抗Rpf(5)及び10日間放置後正極反応抵抗Rpf(10)は、耐久期間Dd1,Dd2の経過と共に徐々に増加しており、10日間の耐久期間Dd2で、正極反応抵抗Rpは16%程度増加することが判る。本実施形態の電池において正極反応抵抗Rpは、正極活物質粒子とLiイオンとの反応時に生じる抵抗成分であるが、高温、高SOC(Td=60℃、SOCd=80%)下の放置で、正極活物質粒子に徐々に変質が生じ、正極活物質粒子とLiイオンとの間の反応が生じにくくなる方向への変化(劣化)が生じたと解される。
【0078】
一方、
図10と
図9とを比較すると判るように、
図9の評価用電池Beのグラフでは、耐久前正極反応抵抗Rpe(0)、5日間耐久後正極反応抵抗Rpe(5)及び10日間耐久後正極反応抵抗Rpe(10)は、耐久期間Dd1,Dd2の経過と共に増加しており、正極反応抵抗Rpは、耐久期間Dd1(5日間)で34%程度、耐久期間Dd2(10日間)で45%程度増加していることが判る。つまり、正極反応抵抗Rpは、10日間の放置により16%程度増加したのに加え、10日間の耐久周波数fde=0.1mHzの交流電圧の印加で29%程度増加したと考えられる。即ち、本実施形態の電池では、正極反応抵抗Rpは耐久期間Dd1,Dd2に亘る耐久電池温度Td、耐久SOCSOCd下での放置に加え、耐久周波数fde=0.1mHzのごくゆっくりとした電圧変化の交流電圧の印加で、正極活物質粒子の変質が加速され、正極活物質粒子とLiイオンとの間の反応が生じにくくなる方向への変化(劣化)がより大きく生じ、正極反応抵抗Rpの増大を招いたと解される。
【0079】
このように、本実施形態では、基準用電池Bfのほか、5つの評価用電池Ba~Beにそれぞれ異なる耐久周波数fda~fdeの交流電圧を印加した。これにより、印加する交流電圧の耐久周波数fda~fdeに関連した電池反応について耐久性をすることで、当該電池Ba~Beにおける特定の電池反応についての耐久性を、効率的にかつ適切に評価することができる。
【0080】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【0081】
例えば、本実施形態では、評価ステップS9における評価用電池Ba~Beの評価において、基準用電池Bfの放置前インピーダンスZBf(0)及び放置後インピーダンスZBf(5),ZBf(10)を得て、放置前インピーダンスZBf(0)と放置後インピーダンスZBf(5),ZBf(10)の二者あるいは三者を用いた例を示した。
【0082】
しかし、評価用電池Ba~Beの評価に当たっては、基準用電池Bfおよび、その放置前インピーダンスZBf(0)及び放置後インピーダンスZBf(5),ZBf(10)を用いず、耐久前インピーダンスZBa(0)~ZBe(0)を基準として、耐久後インピーダンスZBa(5)~ZBe(5),ZBa(10)~ZBe(10)によって評価を行うことも出来る。また、基準用電池Bfの放置前インピーダンスZBf(0)は用いないで、放置後インピーダンスZBf(5)あるいはZBf(10)を用いて、評価用電池Ba~Beの評価することもできる。
【0083】
また、評価用電池Ba~Beのうち、評価用電池Beのみ、得られたコールコールプロット(
図4~
図6参照)から、耐久前正極反応抵抗Rpe(0)や耐久後正極反応抵抗Rpe(5)、Rpe(10)等を得て、電池Beの特性劣化等を検討したが、他の評価用電池Ba~Bdについても、同様にして、耐久前正極反応抵抗や耐久後正極反応抵抗等を得て、電池の特性劣化等を検討することもできる。
【符号の説明】
【0084】
Ba~Be 評価用電池
Bf 基準用電池
fd,fda~fde (評価用電池に印加する交流電圧の)耐久周波数
ZB,ZBa~ZBf (評価用電池、基準用電池の)電池インピーダンス
ZBa(0)~ZBe(0) 耐久前インピーダンス
ZBa(5)~ZBe(5) 5日間耐久後インピーダンス(耐久後インピーダンス)
ZBa(10)~ZBe(10) 10日間耐久後インピーダンス(耐久後インピーダンス)
ZBf(0) 放置前インピーダンス
ZBf(5) 5日間放置後インピーダンス(放置後インピーダンス)
ZBf(10) 10日間放置後インピーダンス(放置後インピーダンス)
Rs,Rse(0),Rse(5),Rse(10),Rsf(0),Rsf(5),Rsf(10) 直流抵抗
Rn,Rne(0),Rne(5),Rne(10),Rnf(0),Rnf(5),Rnf(10) 負極反応抵抗
Rp,Rpe(0),Rpe(5),Rpe(10),Rpf(0),Rpf(5),Rpf(10) 正極反応抵抗
Td 耐久電池温度
SOCd 耐久SOC
Dd1,Dd2 耐久期間(耐久試験期間)
Te 評価電池温度
SOCe 評価SOC
Wfe 評価周波数範囲
S1 初期調整ステップ
S2 耐久前インピーダンス測定ステップ
S3 耐久前調整ステップ
S4,S5 耐久ステップ
S6 耐久後調整ステップ
S7 耐久後インピーダンス測定ステップ
S9 評価ステップ
S9a 耐久前抵抗取得ステップ
S9b 耐久後抵抗取得ステップ
S9c 放置前抵抗取得ステップ
S9d 放置後抵抗取得ステップ
SK1 基準初期調整ステップ
SK2 放置前インピーダンス測定ステップ
SK3 放置前調整ステップ
SK4,SK5 放置ステップ
SK6 放置後調整ステップ
SK7 放置後インピーダンス測定ステップ