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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20231219BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20231219BHJP
   A62B 99/00 20090101ALI20231219BHJP
【FI】
A41D13/018
A41D13/05 106
A62B99/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020165665
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057420
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100688(JP,A)
【文献】特開2019-081457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0101112(US,A1)
【文献】米国特許第05500952(US,A)
【文献】米国特許第8998667(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/015-13/05
A62B 99/00
B60R 21/20-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
骨盤周囲において前記装着者に装着される構成とされて、内部に膨張用ガスを流入させて、前記装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグと、
該エアバッグの外周側を覆うように配設されるアウタカバー部と、
を、備え、
前記エアバッグが、膨張完了形状を、前記装着者側に配置される内側壁部と、外側に配置される外側壁部と、の周縁相互を結合させて構成される略板状として構成されるとともに、前記内側壁部と前記外側壁部とを重ねて平らに展開した状態から、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれて、前記骨盤周囲の収納部位に、収納される構成とされ、
前記エアバッグが、膨張完了時の上端側となる位置であって前記骨盤の側方に配置される装着側部位と、該装着側部位から下方に延びるように配置されて前記保護対象部位の外側を覆う保護本体部と、を備えるとともに、膨張初期に、前記保護本体部より先に膨張用ガスを流入させて膨張する前記装着側部位により、前記保護本体部を、下方に向かって突出させるように、折り畳まれ
前記アウタカバー部が、前記装着者側に配置される内壁部と、外側に配置される外壁部と、を備え、
前記アウタカバー部が、前記内壁部と前記外壁部との下縁側に、それぞれ、内側に折り込まれる折込部を、有して、該折込部を、前記エアバッグの膨張初期において膨張する前記エアバッグによって分離可能に相互に連結させる構成とされ、
前記折込部が、前記エアバッグの膨張初期における連結状態の解除時に、反転するようにして下方に突出することにより、展開する前記エアバッグを下方に向かうようにガイド可能な構成とされていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記装着側部位が、蛇腹折りにより折り畳まれ、前記保護本体部が、下縁側から巻くようなロール折りにより折り畳まれていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記保護本体部が、下縁側から装着者側に向かって巻くようなロール折りにより、折り畳まれていることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記保護本体部が、前記装着側部位と、連通路部を介して連通されるとともに、膨張完了形状を、前記連通路部よりも前後に幅広とするように、構成されて、前後方向の幅寸法を縮めるような前後縮小折り後に、上下方向の幅寸法を縮めるような上下縮小折りによって折り畳まれて、前記収納部位内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転倒時等において、装着者(例えば高齢者)の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置としては、腰に巻き付けるように装着して、作動時に、下方に向かって突出するように膨張したエアバッグにより腰部を覆う構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/207474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、エアバッグは、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する際に、外周面を湾曲させつつ厚く膨張することとなる。そのため、従来の着用エアバッグ装置の如く、腰に巻き付けられた状態から、下方に向かって突出させるように、エアバッグを膨張させる場合、膨張したエアバッグが腰部から離れるように浮き上がってしまって、転倒時等に、腰部を迅速かつ的確に覆うことができない虞れが生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、装着者の腰部を安定して保護可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置は、装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
骨盤周囲において装着者に装着される構成とされて、内部に膨張用ガスを流入させて、装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグを、備え、
エアバッグが、膨張完了形状を、装着者側に配置される内側壁部と、外側に配置される外側壁部と、の周縁相互を結合させて構成される略板状として構成されるとともに、内側壁部と外側壁部とを重ねて平らに展開した状態から、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれて、骨盤周囲の収納部位に、収納される構成とされ、
エアバッグが、膨張完了時の上端側となる位置であって骨盤の側方に配置される装着側部位と、装着側部位から下方に延びるように配置されて保護対象部位の外側を覆う保護本体部と、を備えるとともに、膨張初期に、保護本体部より先に膨張用ガスを流入させて膨張する装着側部位により、保護本体部を、下方に向かって突出させるように、折り畳まれていることを特徴とする。
【0007】
本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグにおいて、膨張完了時に大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆う保護本体部が、骨盤の側方に配置される装着側部位から下方に延びるように配置される構成であっても、エアバッグが、膨張初期に、まず、保護本体部よりも先に装着側部位を膨張させ、膨張した装着側部位により、保護本体部を下方に向かって突出させ、折りを展開させつつ膨張させる構成であることから、保護本体部を、装着者からの浮き上がりを抑制された状態で、すなわち、保護対象部位に近接した状態で、配置させることができる。そのため、保護本体部により、保護対象部位の外側を、迅速かつ的確に覆うことができる。
【0008】
したがって、本発明の着用エアバッグ装置では、装着者の腰部を安定して保護することができる。
【0009】
具体的には、本発明の着用エアバッグ装置において、装着側部位を、蛇腹折りにより折り畳み、保護本体部を、下縁側から巻くようなロール折りにより折り畳む構成とすれば、装着側部位を、内部に膨張用ガスを流入させて迅速に膨張させることができて、折り畳まれた保護本体部を、迅速に下方に突出させることが可能となって、好ましい。
【0010】
さらに、保護本体部を、下縁側から装着者側に向かって巻くようなロール折りにより、折り畳む構成とすれば、折りを解くように展開する際に、保護本体部を、装着者に沿って展開させることができて、装着者から離隔するような浮き上がりを、一層抑制することができる。
【0011】
また、着用エアバッグ装置として、保護本体部を、装着側部位と、連通路部を介して連通させるとともに、膨張完了形状を連通路部よりも前後に幅広とするように、構成して、前後方向の幅寸法を縮めるような前後縮小折り後に、上下方向の幅寸法を縮めるような上下縮小折りによって折り畳んで、収納部位内に収納させる構成としてもよい。
【0012】
着用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、装着側部位の膨張によって、下方に突出される保護本体部が、まず、上下縮小折りの折りを解消するように上下に広く展開し、その後、前後縮小折りの折りを解消するように展開しつつ、内部に膨張用ガスを流入させて膨張することから、保護本体部によって、保護対象部位の外側を上下に広く迅速に覆うことができ、また、保護本体部が保護対象部位に対して前後方向側でずれることも、抑制できる。また、上記構成の着用エアバッグ装置では、保護本体部が、前後方向側の幅寸法を縮められた状態で、収納部位に収納されることから、嵩張りを抑制して、コンパクトに収納させることもできる。
【0013】
さらに、上記構成の着用エアバッグ装置において、エアバッグの外周側を覆うように、アウタカバー部を配設させ、アウタカバー部を、装着者側に配置される内壁部と、外側に配置される外壁部と、を備える構成とすれば、エアバッグの外周側を覆うアウタカバー部によって、展開膨張するエアバッグを、装着者から離れる方向に向かうことを抑制して、下方に向かって案内することができ、また、着用時の意匠性も良好とすることができて、好ましい。
【0014】
さらにまた、上記構成の着用エアバッグ装置において、アウタカバー部を、内壁部と外壁部との下縁側を、エアバッグの膨張初期において膨張するエアバッグによって分離可能に、相互に連結させる構成とするとともに、展開するエアバッグを下方に向かうようにガイド可能な構成とすれば、アウタカバー部内への下方からの異物の混入等を防止でき、また、アウタカバー部によって、膨張するエアバッグの装着者から離隔するような浮き上がりを、一層抑制することが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
図2】実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の平面図である。
図3】実施形態の着用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、図2のIII-III部位に対応する。
図4】実施形態の着用エアバッグ装置において使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図5】実施形態の着用エアバッグ装置において、装着者に装着させた状態でのエアバッグの膨張過程を説明する概略断面図である。
図6】実施形態の着用エアバッグ装置において、装着者に装着させた状態で、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略図である。
図7】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図)である。
図8】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
図9】本発明の他の実施形態であるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図10図9のエアバッグの折畳工程を説明する概略図である。
図11図9のエアバッグを膨張させた状態を示す着用状態での概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、図1に示すように、装着者Mの腰部MWの周囲(詳細には、骨盤MPの周囲)に巻き付けるように装着するタイプの着用エアバッグ装置Sを例に採り、説明する。実施形態では、上下,前後,左右の方向は、特に断らない限り、装着者Mに装着させた状態での装着者Mの上下,前後,左右の方向と一致するものである。
【0017】
着用エアバッグ装置Sは、図1~3に示すように、エアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2を備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ10の外周側を覆うアウタカバー部25と、を備える構成とされている。
【0018】
作動制御装置1は、上下前後左右の3軸回りの角速度を検知可能な角速度センサと、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有するセンサ部2を、備えるとともに、センサ部2からの信号によって、装着者Mの通常動作と異なる転倒動作を検知すると、ガス発生器5を作動させるように、構成されている。具体的には、装着者Mが通常動作と異なった転倒動作を開始していると、作動制御装置1は、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えていることから、その判定手段の判定に基づいて装着者Mの転倒を検出し、ガス発生器5を作動させることとなる。この作動制御装置1には、センサ部2の作動用やガス発生器5の作動用信号の出力のために、図示しない電池等からなる電源が、内蔵されている。
【0019】
エアバッグ10は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。エアバッグ10は、図4に示すように、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部10aと、外側に配置される外側壁部10bと、を有し、内側壁部10aと外側壁部10bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。エアバッグ10は、袋織りにより、形成してもよい。実施形態の場合、エアバッグ10は、図4に示すように、装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つのバッグ本体13(13L,13R)と、バッグ本体13(13L,13R)の上端13a側においてバッグ本体13(13L,13R)相互を連通させるガス供給路部12と、を備えている。エアバッグ10は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0020】
ガス供給路部12は、膨張完了形状を、左右方向に略沿った棒状として構成されている。このガス供給路部12は、実施形態の場合、詳細な図示は省略するが、エアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの後方となる位置に、配置されることとなる。実施形態では、このガス供給路部12の部位に、ガス発生器5が、エアバッグ10の内部に膨張用ガスを供給可能に連結されている(図2,4参照)。ガス発生器5は、詳細な図示を省略するが、ガス供給路部12の長手方向の中央付近に配置されるもので、内部に圧縮ガスを封入させて構成されて、作動時に、封入状態を解除されて、エアバッグ10内にコールドガスを噴出可能な構成とされている。このガス発生器5は、上述した作動制御装置1と電気的に接続されており、装着者Mの転倒を検知した作動制御装置1からの作動信号を入力させて、作動される構成である。
【0021】
各バッグ本体13(13L,13R)は、実施形態の場合、図4に示すように、それぞれ、上端13a側に配置される装着側部位15と、装着側部位15から下方に延びるように配置される保護本体部16と、を備えている。
【0022】
装着側部位15は、エアバッグ10を平らに展開した状態において、バッグ本体13の上端13a側において、ガス供給路部12から連なるように、ガス供給路部12の左方と右方とに延びるように形成されるもので、装着時におけるエアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの側方に配置されることとなる(図6,8参照)。この装着側部位15は、間に配置されるガス供給路部12も含めて、平らに展開した状態のエアバッグ10の上縁10c側における左右の略全域にわたって、配設されている。
【0023】
保護本体部16は、エアバッグ10の膨張完了時に、装着側部位15から下方に延びるように配置されるもので、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの外側を覆う構成とされている。実施形態の場合、保護本体部16は、平らに展開した状態の外形形状を、大腿骨転子部TPの周囲を広く覆い可能に、左右方向側を上下方向側よりやや幅広として、かつ、下端側にかけて僅かに狭幅とした略台形状として、構成されている。保護本体部16は、左右方向側の幅寸法を、装着側部位15における左右方向側の幅寸法を略同一として、構成されている。この保護本体部16は、図7,8に示すように、膨張完了時に、大腿骨転子部TPの外側を前後上下で広く覆い可能に構成されている。実施形態の場合、保護本体部16の内部には、内側壁部10aと外側壁部10bとに連結されて膨張完了時の厚さを規制する図示しないテザーが、配設されている。
【0024】
エアバッグ10は、実施形態の場合、内側壁部10aと外側壁部10bとを重ねるように平らに展開した状態から、上下方向側の幅寸法を縮められるように折り畳まれた折り完了体20の状態で、骨盤MP周囲の収納部位に、収納される構成である。実施形態の場合、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体20は、外周側をアウタカバー部25によって覆われた状態で、装着者Mの骨盤MP周囲に巻き付けられて装着される構成であり(図5のA参照)、アウタカバー部25が、折り畳まれたエアバッグ10(折り完了体20)を収納する収納部位を、構成している。実施形態の場合、エアバッグ10は、膨張初期に、保護本体部16より先に膨張用ガスを流入させて膨張する装着側部位15により、保護本体部16を、下方に向かって突出させるように、折り畳まれている。具体的には、エアバッグ10は、内側壁部10aと外側壁部10bとを重ねるように平らに展開した状態から、膨張完了時の上端側となる各装着側部位15,15とガス供給路部12とを、前後方向(平らに展開した状態での左右方向)に沿った複数の折目CL1(図4参照)を付けた蛇腹折りにより折り畳み、保護本体部16を、下縁16a側から装着者側となる内側壁部10a側に巻くようなロール折りにより折り畳んで、蛇腹折り部位20aとロール折り部位20bとを上下方向側で重ねるような折り完了体20を形成するように、折り畳まれている(図3参照)。
【0025】
アウタカバー部25は、エアバッグ10を折り畳んで形成される折り完了体20の外周側を覆う構成とされるもので、外形形状を略帯状とされている。アウタカバー部25は、実施形態の場合、エアバッグ10を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されている。アウタカバー部25は、装着時に内側(装着者M側)に配置される内壁部26と、外側に配置される外壁部29と、を有している。実施形態の場合、内壁部26と外壁部29とは、下縁26a,29a側を、エアバッグ10の膨張初期において膨張するエアバッグ10によって分離可能に、相互に連結される構成とされている。具体的には、内壁部26と外壁部29とは、下縁26a,29a側を、面状ファスナー32(連結手段)によって、相互に連結されており、面状ファスナー32は、鉤状側部位32aとループ側部位32bと、を有した一対として、連結強度を、エアバッグ10の膨張初期において膨張するエアバッグ10によって連結状態を解除可能な強度に、設定されている。また、内壁部26と外壁部29とは、下縁26a,29a側に、それぞれ、内側に折り込まれる折込部27,30を、有しており、面状ファスナー32は、折込部27,30の元部27a,30a側相互を、連結するように、配置されている。すなわち、実施形態のアウタカバー部25では、折込部27,30が、面状ファスナー32により、エアバッグ10の膨張初期において膨張するエアバッグ10によって分離可能に、相互に連結されている。これらの折込部27,30は、エアバッグ10の膨張初期において面状ファスナー32による連結状態を解除されると、折り込み状態を解除されて、反転するようにして、下方に突出しつつ、展開されることとなる。そして、この折込部27,30は、折り込み状態の解除後(反転後)には、ガイド部として、展開するエアバッグ10を下方に向かうようにガイドすることとなる。実施形態の場合、アウタカバー部25の内壁部26,外壁部29は、折込部(ガイド部)27,30を含めて、膨張完了時のエアバッグ10におけるバッグ本体13の上半分程度の領域を覆うように、構成されている(図8参照)。アウタカバー部25における内壁部26と外壁部29とにおいて、下縁26a,29aを除いた外周縁相互は、エアバッグ10の膨張完了後にも、連結状態を維持可能に、相互に連結されている。

【0026】
アウタカバー部25は、長手方向側における両方の端部25a,25b側に、装着者Mの腰部MWに巻き付けるための装着手段を有する構成とされている。装着手段としては、実施形態では、装着者Mの腰回りの寸法に応じて容易に微調整可能で、かつ、着脱を容易とするように、それぞれ、端部25a,25b側に配置される鉤状側部位34aとループ側部位34bとを有して、端部25a,25b相互を連結可能な一対の面状ファスナー34が、用いられている。
【0027】
実施形態の着用エアバッグ装置Sは、アウタカバー部25の端部25a,25b相互を、装着手段としての面状ファスナー34を利用して連結させることにより、装着者Mの腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着されることとなる。そして、実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置1からガス発生器5に作動信号が出力されて、エアバッグ10の内部に膨張用ガスが流入こととなり、エアバッグ10が、折りを解消するように展開しつつ膨張して、図1の二点鎖線及び図6~8に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0028】
そして、実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、エアバッグ10において、膨張完了時に大腿骨転子部TPからなる保護対象部位の外側を覆う保護本体部16が、骨盤MPの側方に配置される装着側部位15から下方に延びるように配置される構成であっても、エアバッグ10が、膨張初期に、まず、保護本体部16よりも先に装着側部位15を膨張させ、膨張した装着側部位15により、保護本体部16を下方に向かって突出させ、折りを展開させつつ膨張させる構成であることから(図5のA,B参照)、保護本体部16を、装着者Mからの浮き上がりを抑制された状態で、すなわち、保護対象部位(大腿骨転子部TP)に近接した状態で、配置させることができる。そのため、保護本体部16により、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの外側を、迅速かつ的確に覆うことができる。
【0029】
したがって、実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、装着者Mの腰部MWを安定して保護することができる。
【0030】
具体的には、実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、装着側部位15が、蛇腹折りにより折り畳まれ、保護本体部16が、下縁16a側から巻くようなロール折りにより折り畳まれていることから、装着側部位15を、内部に膨張用ガスを流入させて迅速に膨張させることができて、折り畳まれた保護本体部16を、迅速に下方に突出させることができる。特に、実施形態では、装着側部位15は、ガス発生器5と連結されているガス供給路部12から連なるように形成されており、ガス供給路部12と一体的に棒状に膨らむ構成であることから、内部に膨張用ガスを流入させて迅速に膨張することとなる。また、保護本体部16は、装着側部位15を折り畳んで形成されている蛇腹折り部位20aの直下において、ロール折りされていることから、図5のA,Bに示すように、膨張する装着側部位15によって、下方に押し出され、その後、折りを解消するように展開しつつ、内部に膨張用ガスを流入させて膨張することとなって、装着者Mから浮き上がるように膨張することを、的確に抑制することができる。なお、このような点を考慮しなければ、保護本体部をロール折りしているロール折り部位の内側(装着者側)に、蛇腹折りされた装着者側部位を配置させる構成としてもよい。
【0031】
さらに、実施形態では、保護本体部16は、下縁16a側から装着者M側に向かって巻く(内側壁部10a側に向かって巻く)ようなロール折りにより、折り畳まれている。そのため、ロール折りの折りを解くように展開する際に、保護本体部16を、図5のB,Cに示すように、装着者Mに沿って展開させることができて、装着者Mから離隔するような浮き上がりを、一層抑制することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、保護本体部を、下縁側から装着者から離隔した側に向かって巻く(外側壁部側に向かって巻く)ようなロール折りにより、折り畳んでもよい。
【0032】
さらにまた、実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、エアバッグ10(折り完了体20)の外周側を覆うように、アウタカバー部25が配設され、アウタカバー部25が、装着者M側に配置される内壁部26と、外側に配置される外壁部29と、を備える構成とされている。そのため、エアバッグ10(折り完了体20)の外周側を覆うアウタカバー部25によって、展開膨張するエアバッグ10を、装着者Mから離れる方向に向かうことを抑制して、下方に向かって案内することができ、また、着用時の意匠性も良好とすることができる。なお、このような点を考慮しなければ、アウタカバー部を配設させない構成としてもよい。
【0033】
さらに、実施形態の着用エアバッグ装置では、アウタカバー部25が、内壁部26と外壁部29との下縁26a,29a側を、エアバッグ10の膨張初期において膨張するエアバッグ10によって分離可能に、相互に連結させる構成とされるとともに、展開するエアバッグ10を下方に向かうようにガイド可能な構成としている。具体的には、アウタカバー部25は、内壁部26,外壁部29の下縁26a,29a側に、内側に折り込まれる折込部27,30を有し、エアバッグ10の展開膨張時に、この折込部27,30を、反転させるようにして、下方に突出させ、折込部(ガイド部)27,30によって、エアバッグ10をガイドする構成とされている。そのため、アウタカバー部25内への下方からの異物の混入等を防止でき、また、折込部(ガイド部)27,30によって、膨張するエアバッグ10の装着者Mから離隔するような浮き上がりを、一層抑制することができる。なお、このような点を考慮しなければ、アウタカバー部の下縁側を、相互に連結させず、エアバッグを突出可能に開口させる構成としてもよく、さらには、下縁側を相互に連結させてエアバッグの膨張初期に分離可能な構成としていても、折込部を備えない構成としてもよい。実施形態では、アウタカバー部25は、折込部27,30を含めて、膨張完了時のエアバッグ10におけるバッグ本体13の上半分程度の領域を覆い可能に構成されているが、アウタカバー部は、折込部を長くするようにして、膨張完了時のバッグ本体の外周側を下端近傍まで略全域にわたって覆うように、構成してもよい。
【0034】
また、エアバッグ40として、図9,11に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ40は、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部40aと、外側に配置される外側壁部40bと、を有し、内側壁部40aと外側壁部40bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。エアバッグ40は、平らに展開した状態で左右対称形とされるとともに、膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの左右の側方と後方とを覆うように配置される装着側部位42と、装着側部位42の両端側の下方に配置される2つの保護本体部43(43L,43R)と、各保護本体部43と装着側部位42とを連通させる連通路部44(44L,44R)と、を備える構成とされている。各連通路部44は、装着側部位42の両側の端部42a,42bから下方に延びるように形成されている。各保護本体部43は、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの外側を覆うもので、平らに展開した状態で、連通路部44よりも左右(装着状態における前後)に幅広として構成されている。具体的には、各保護本体部43は、平らに展開した状態の外形形状を、下端側にかけて僅かに狭幅とした略台形状として、膨張完了時に、大腿骨転子部TPの外側を前後上下で広く覆い可能に構成されている(図11参照)。なお、図11においては、アウタカバー部は省略されている。
【0035】
このエアバッグ40も、内側壁部40aと外側壁部40bとを重ねるように平らに展開した状態から、上下方向側の幅寸法を縮められるように折り畳まれた折り完了体の状態で、図示しないアウタカバー部により、外周側を覆われることとなる。具体的には、エアバッグ40は、内側壁部40aと外側壁部40bとを重ねるように平らに展開した状態から、膨張完了時の上端側となる装着側部位42を、前後方向(平らに展開した状態での左右方向)に沿った折目を付けた蛇腹折りにより折り畳み、各保護本体部43を、上下方向側の幅寸法を縮めるように折り畳む。詳細には、各保護本体部43は、平らに展開した状態での左右方向(装着状態での前後方向)の幅寸法を縮めるような前後縮小折り後に、上下方向の幅寸法を縮めるような上下縮小折りによって、折り畳まれる。前後縮小折りにおいては、保護本体部43は、図10のA,Bに示すように、連通路部44よりも前方あるいは後方(平らに展開した状態における左方あるいは右方)に突出している前側部位45,後側部位46を、前後の中央側に接近させるように、上下方向に沿った折目CL2を付けて、外側壁部40b側に折り返すようにして、折り畳まれて、前後縮小折りバッグ48を形成されることとなる。上下縮小折りにおいては、前後縮小折りバッグ48は、図10のB,Cに示すように、下縁48a側を内側壁部側に向かって巻くようなロール折りにより、折り畳まれて、ロール折り部位50を形成することとなる。
【0036】
このような構成のエアバッグ40では、装着側部位42の膨張によって、下方に突出される保護本体部43が、まず、上下縮小折りの折りを解消するように上下に広く展開し、その後、前後縮小折りの折りを解消するように展開しつつ、内部に膨張用ガスを流入させて膨張することから、保護本体部43によって、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの外側を上下に広く迅速に覆うことができ、また、保護本体部43が大腿骨転子部TPに対して前後方向側でずれることも、抑制できる。特に、実施形態のエアバッグ40では、保護本体部43は、上下縮小折りの際に、下縁(前後縮小折りバッグ48の下縁48a)を内側壁部40a側に向かって巻くようなロール折りにより折り畳まれて、上下方向の幅寸法を縮められていることから、装着者Mに沿って展開させるように、上下縮小折り(ロール折りを解消することができて、装着者Mから離隔するような浮き上がりを、的確に抑制することができる。また、このような構成のエアバッグ40では、保護本体部43が、前後方向側の幅寸法を縮められた状態で、図示しないアウタカバー部内に収納されることから、嵩張りを抑制して、コンパクトに収納させることができる。具体的には、実施形態の場合、保護本体部43を折り畳んで形成されるロール折り部位50は、図11の二点鎖線に示すように、前後方向側の幅寸法を、連通路部44と略同一として、小さくされていることから、嵩張りを抑えることができて、装着した状態での歩行時等において、違和感が生じることを抑制できる。
【0037】
実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、エアバッグ10,40の2つの保護本体部16,43によって、装着者Mの大腿骨TBの付け根付近(大腿骨転子部TP)を安定して保護することができることから、装着者Mが、転倒によって、治療が長引く大腿骨TBを骨折することを、抑制することができ、高齢者に好適に使用することができる。
【0038】
また、実施形態の着用エアバッグ装置Sでは、エアバッグ10として、ガス供給路部12によって連結される2つのバッグ本体13を有し、各バッグ本体13により左右の保護対象部位(大腿骨転子部TP)を保護する構成のものを使用しているが、エアバッグの構成は実施形態に限られるものではなく、左右の対象部位をそれぞれ保護可能に、別体のエアバッグと、各エアバッグに膨張用ガスを供給する2つのガス発生器と、を配置させるように、構成してもよい。
【0039】
なお、実施形態では、着用エアバッグ装置として、腰部の周囲に巻き付けるようにして装着させるベルトタイプのものを例に採り説明しているが、本発明を適用可能な着用エアバッグ装置は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、ベストやジャケット等、装着者の胴部に着用させ、着用状態での下端側にエアバッグを折り畳んで収納させるタイプの着用エアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…エアバッグ、10a…内側壁部、10b…外側壁部、15…装着側部位、16…保護本体部、16a…下縁、20…折り完了体、20a…蛇腹折り部位、20b…ロール折り部位、25…アウタカバー部、26…内壁部、26a…下縁、27…折込部(ガイド部)、29…外壁部、29a…下縁、30…折込部(ガイド部)、32…面状ファスナ0(連結手段)、40…エアバッグ、40a…内側壁部、40b…外側壁部、42…装着側部位、43(43L,43R)…保護本体部、44(44L,44R)…連通路部、48…前後縮小折りバッグ、M…装着者、MW…腰部、MP…骨盤、TB…大腿骨、TP…大腿骨転子部(保護対象部位)、S…着用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11