(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B62D 7/18 20060101AFI20231219BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20231219BHJP
B62D 7/15 20060101ALI20231219BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20231219BHJP
B62D 7/14 20060101ALI20231219BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20231219BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B62D7/18 A
B61B13/00 A
B62D7/15 D
B62D6/00
B62D7/14 B
B62D101:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2020166981
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】小原 基央
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠太
(72)【発明者】
【氏名】大澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 陽平
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-306333(JP,A)
【文献】特開昭62-061879(JP,A)
【文献】特開2016-074507(JP,A)
【文献】特開平05-178232(JP,A)
【文献】特開2020-140424(JP,A)
【文献】特開2018-122829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00-7/22
B61B 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に装着されると共に当該車体を支持しそれぞれ一方向に走行可能な車輪を備えた3以上の車輪ユニット(12~15)と、
全ての前記車輪ユニットのうち少なくとも一部の車輪ユニットは
、前記車輪を正逆回転駆動可能にする駆動部(33)と、前記車体の走行可能な方向を操舵する操舵部(27)とを備え、
前記操舵部は、それぞれの前記車輪の走行可能な方向を180°以下に操舵制限すると 共に、前記駆動部により前記車輪を正逆回転駆動することで前記車体を360°全方位に 走行可能に
し、
前記操舵部は、前記車体が直進、横進、回転するときに前記車体の進行方向の基準方向に対して+45°方向、-45°方向、+135°方向、又は、+225°方向の何れかの方向を中心として±90°に操舵制限する無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
出発地点から目標地点まで自律的に移動する無人搬送台車(所謂AGV:Automatic Guided Vehicle)が開発されている。この種の無人搬送台車は、出発地点から目標地点までの経路を決定し当該経路に基づいて高速移動する。無人搬送台車は、移動経路を柔軟に素早く変更するため360°全方向に移動可能に構成される。無人搬送台車が全方向に移動するためにオムニホイールやメカナムホイールといった車輪そのものに工夫を施した機構が提案されている。他方、無人搬送台車でも車輪が一方向に回転する構成とされており、操舵機構を用いて車輪の向きを変更することで進行方向を変更する方式も提案されている。
【0003】
後者の構造の場合、一般的な無人搬送車は車輪の駆動軸にモータが連結される構造を採用している。このため、操舵機構により駆動軸を操舵するとモータも駆動軸と共に動く。
例えば、無人搬送台車が180°進行方向を変更して後進する場合、180°操舵することになるため電気配線に大きな屈曲やねじれを生じる。しかも、操舵機構によりこのような操舵が繰り返されると、電気信号を伝達する信頼性に欠けてしまい故障率が増加する虞がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】田中,外1名,”ロボコンにおける自動走行ロボットの足回りの研究”,[online],平成28年度学部学生による自主研究奨励事業研究成果報告書,2017年3月,[令和2年7月1日検索],インターネット<URL:http://hdl.handle.net/11094/60351>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、故障率を低減できるようにした無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、車体に装着されると共に車体を支持しそれぞれ一方向に走行可能な車輪を備えた3以上の車輪ユニット、を備えた無人搬送車を対象としている。
全ての車輪ユニットのうち少なくとも一部の車輪ユニットは、車輪を正逆回転駆動可能な駆動部と、無人搬送車本体に対して走行可能な方向を操舵する操舵部と、を備える。駆動部は、車輪を正転駆動、逆転駆動も可能にしており、操舵部はそれぞれの車輪の操舵可能な方向を180°以下に制限しつつ無人搬送車本体を360°全方位に走行可能にしているため、180°を超える操舵を実行することがなくなり故障率を抑制できる。
【0007】
また無人搬送台車が、進行方向を急激に変更するときには、車体の安定を保つために一旦走行を停止し、操舵機構により車輪の回転方向を操舵完了してから、走行再開することが望ましい。車輪を操舵する時間が長くなればなるほど、無人搬送車の停止時間が延びることになり、搬送に時間を要してしまう。
【0008】
そこで、車体が直進、横進、回転するときに、操舵部は車体の進行方向の基準方向に対して+45°方向、-45°方向、+135°方向、又は、+225°方向の何れかの方向を中心として±90°に操舵制限しているため、90°を超える角度範囲で操舵を行うことがなくなる。例えば、車体が後進する際にも180°操舵する必要がなくなり、搬送に要する待機時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態を説明する図であり、四輪駆動の無人搬送車の全体構造を模式的に示す斜視図
【
図2】無人搬送車が横進するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図3】無人搬送車を構成する車輪ユニットの構造の要部を示す正面図
【
図7】無人搬送車が直進するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図8】無人搬送車が回転するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図9】四輪走行二輪駆動の無人搬送車の車輪ユニットの設置態様を模式的に示す下面図のその1
【
図10】四輪二輪駆動の無人搬送車の車輪ユニットの設置態様を模式的に示す下面図のその2
【
図11】六輪駆動の無人搬送車が直進するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図12】六輪駆動の無人搬送車が横進するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図13】六輪駆動の無人搬送車が回転するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図14】六輪走行二輪駆動の無人搬送車が直進するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図15】六輪走行二輪駆動の無人搬送車が横進するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図16】六輪走行二輪駆動の無人搬送車が回転するときの車輪の向きを模式的に示す下面図
【
図17】第2実施形態を説明する図であり、無人搬送車制御装置の機能的構成図
【
図18】無人搬送車が移動する際の非接触式センサの検知範囲を模式的に示す図のその1
【
図19】無人搬送車が移動する際の非接触式センサの検知範囲を模式的に示す図のその2
【
図20】第3実施形態を説明する図であり、四輪駆動の無人搬送車における操舵角度範囲を示す図のその1
【
図21】四輪駆動の無人搬送車における操舵角度範囲を示す図のその2
【
図22】荷渡し台から荷受け台まで移動する場合の車輪の操舵態様を模式的に示す下面図
【
図23】四輪走行二輪駆動の無人搬送車における操舵角度範囲を示す図のその1
【
図24】四輪走行二輪駆動の無人搬送車における操舵角度範囲を示す図のその2
【
図25】四輪走行二輪駆動の無人搬送車における操舵角度範囲を示す図のその3
【
図26】四輪走行二輪駆動の無人搬送車における操舵角度範囲を示す図のその4
【
図27】第4実施形態を説明する図であり、無人搬送台車の全体構造を模式的に示す斜視図
【
図28】無人搬送台車が荷渡し台から荷受け台まで荷物を搬送する際の態様を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施形態において、同一又は類似の動作を行う構成については、同一又は類似の符号を付し、必要に応じて説明を省略する。なお、図示しているようにXY座標系を用いて説明する。断らない限りXY方向を水平方向と考慮して説明する。なお、説明の便宜上、XY方向を水平方向と称するが、水平に限られるものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1から
図8は、第1実施形態の説明図を示す。
図1に外観を示す無人搬送車10(無人搬送車本体相当)は、様々な施設内の対象範囲を自律走行可能に構成されるもので、車体11に車輪ユニット12…15が装着されることで構成される。各車輪ユニット12…15は、モジュール化されている車輪ユニットモジュール相当である。また車輪ユニット12…15は、互いに同一構造で構成されており、それぞれが車輪21の駆動源を備えた駆動輪ユニットとして構成されている。
【0012】
図1に示すように、車体11は全体的に矩形箱状のボディにより構成されている。車体11は、車輪ユニット12…15を装着可能な被装着部11aを備える。各車輪ユニット12…15は車体11を車輪21を用いて支持することで、無人搬送車10は施設内の通路を走行可能に構成される。車輪ユニット12~15は、少なくとも3以上構成されており、3点以上通路と接触することで、車体11を安定的に走行制御できれば良い。ここでは4つの車輪ユニット12…15を組み込んだ例を説明する。
【0013】
安全レーザスキャナ18、19は、無人搬送車10の少なくとも前後左右の障害物を認識可能な非接触型センサにより構成され、例えばLIDARと称されるレーダユニットによる。安全レーザスキャナ18、19は、車体11に対し当該車体11の水平方向全方位をセンシング可能に備え付けられる。
【0014】
例えば安全レーザスキャナ18、19は、車体11の水平方向四隅のうち対角位置となる2つの隅に設置されていると良い。すると安全レーザスキャナ18、19は、車体11の対角位置からそれぞれ水平方向270度を効率的にセンシングできる。なお、安全レーザスキャナ18、19の設置箇所は、この設置位置に限られるものではなく、前後左右の全方位にわたり物体を検出できればどのように設置されていても良い。これにより安全レーザスキャナ18、19は、車体11の前後左右全方位にわたり、柱や壁といった障害物などの物体を検出できる。
【0015】
図2に無人搬送車10の下面図を示すように、車輪ユニット12…15にはそれぞれ車輪21が装着されている。個々の車輪ユニット12…15は、互いに同一構造の駆動輪ユニットであり、その全てが被装着部11aに着脱可能に構成される。
以下、
図3から
図5を参照して車輪ユニット12の構造を説明し、他の車輪ユニット13…15の説明を省略する。
図3から
図5に示すように、車輪ユニット12は、車輪21を駆動する走行用駆動モータ33を備えた駆動輪ユニットとして構成される。車輪ユニット12には、主に安全制御用の機器として、それぞれの車輪21の進行方向の速度を検出する速度検出部としての安全エンコーダ35、車輪21の操舵角を検出する操舵角検出部としての安全非接触スイッチ28、及び、車輪21の回転を制動する制動機器としての電磁ブレーキ36が組み込まれている。詳しくは後述する。
【0016】
車輪ユニット12は、車体11の被装着部11aに固定される固定部としての固定板22、及び、固定板22に対し水平方向に回転可能な可動部23により構成されている。
固定板22の上には、当該固定板22の上面に沿って回転可能に設置されたプーリ24、25、及びプーリ24及び25を連結したタイミングベルト26が設置されている。プーリ24の軸には操舵部としての操舵モータ27が連結されている。操舵モータ27は、モータ軸を介してプーリ24を回転駆動することでタイミングベルト26を通じてプーリ25を連動して回転可能になっている。操舵モータ27は、水平方向に車輪21を回転させることができ、走行可能な方向を操舵できる。またエンコーダ34が、タイミングベルト26にプーリ43を介して係合されており、操舵角を検出可能になっている。
【0017】
固定板22には安全非接触スイッチ28がボルト及びナットなどを用いて固定されている。安全非接触スイッチ28は、安全性能を向上するために用いられ、車輪21の操舵角を検出する操舵角検出部として用いられる。
図4に例示したように、安全非接触スイッチ28は、固定板22の上方から下方まで貫通し、その先端がフレーム30の脇まで延設されている。安全非接触スイッチ28の先端には、発振回路を用いて磁界出力する誘導検出コイルが設置されている。安全非接触スイッチ28は、後述するフレーム30に設けられた突起31、32と合わせて誘導形近接スイッチとして機能する。安全規格に準拠した方法で操舵角を検出できればどのような方法を用いても良い。
【0018】
固定板22の下面にはベアリング29が設置されている。ベアリング29の下側にはフレーム30が連結されている。フレーム30は、ねじを用いてベアリング29に固定されている。
【0019】
可動部23は、フレーム30を母材として構成され、当該フレーム30に直接又は間接的に連結された、突起31、32、車輪21、走行用駆動モータ33、エンコーダ34、安全エンコーダ35、及び電磁ブレーキ36を備える。その他、可動部23は、回転軸21aなども備える。可動部23は、ベアリング29を通じて固定板22に対して構成要素30…36を一体として水平方向に回転自在に構成されている。
【0020】
突起31、32は、フレーム30の水平方向周囲に所定角度ステップ(例えば90°ステップ)で固定されており、フレーム30と共に一体で水平方向に回転可能になっている。このため、可動部23がベアリング29の回転方向である水平方向に回転することで、突起31、32が、安全非接触スイッチ28の先端位置から外れたり一致したりする。固定板22に固定された安全非接触スイッチ28は、その先端の誘導検出コイルにより発せられる磁界により突起31、32との近接状態を検出することで、車輪21の特定の方向、例えば90°ステップ、の操舵状態を検出できる。これにより、車輪21が進行方向に対する角度の何れの方向を向いているか、例えば前、後、左、右、の何れの方向を向いているか判断できる。
【0021】
走行用駆動モータ33は、車輪21を駆動する駆動部として用いられる。走行用駆動モータ33は、車輪21を正逆回転駆動可能になっており、車輪21を一方向、例えば図示Y方向、X方向又はそれ以外の方向に走行可能にする。本実施形態において、走行用駆動モータ33は、安全エンコーダ35及び電磁ブレーキ36と一体に設けられている。これらは別部品により構成しても良い。
【0022】
走行用駆動モータ33は、フレーム30に固定されており、走行用駆動モータ33の回転軸21aは車輪21に直結されている。安全エンコーダ35は、車輪21の回転数を検出する。回転数はギヤ比変換して検出しても良い。これにより安全エンコーダ35は、各車輪ユニット12…15の進行方向の速度を検出する速度検出部として用いられる。
【0023】
電磁ブレーキ36は、走行用駆動モータ33及び安全エンコーダ35と一体に設けられており、車輪21の回転を制動する制動機器として用いられる。電磁ブレーキ36は、回転軸21aを通じて車輪21の回転を制動する。なお、
図3に示したように、各種電気的構成を接続する電気配線42が、ベアリング29の回転軸に沿って設置されている。
【0024】
図6には電気的構成を例示している。無人搬送車10は、車輪ユニット12…15、環境認識部としての安全レーザスキャナ18、19と共に、制御部50、及び非常停止スイッチ55を搭載している。制御部50は、走行制御コントローラ51、安全コントローラ52、コンタクタ53、及び、制御基板54に搭載された駆動回路54aを組み合わせて構成されている。
【0025】
また前述したように、車体11には安全レーザスキャナ18、19が装着されている。安全レーザスキャナ18、19は、制御部50の安全コントローラ52に電気的に接続されている。各車輪ユニット12…15は、前述した操舵モータ27、安全非接触スイッチ28、走行用駆動モータ33、安全エンコーダ35、電磁ブレーキ36の他、エンコーダ34を備える。エンコーダ34は、走行制御用に車輪21の操舵角を詳細に検出できる。
【0026】
走行制御コントローラ51は、主に走行制御を担うマイクロコンピュータにより構成されている。走行制御コントローラ51は、CPUがROMなどに記憶されたプログラムを実行することで実現されている。つまりソフトウェアにより実現されているが、これら走行制御コントローラ51をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0027】
走行制御コントローラ51は、制御基板54に搭載された駆動回路54aを通じて走行用駆動モータ33を駆動すると共に、操舵モータ27を駆動することで車輪ユニット12…15の各車輪21を回転制御する。このとき、走行制御コントローラ51は、エンコーダ34により各車輪21の詳細な操舵角を検出してフィードバック制御することで無人搬送車10を走行制御する。
【0028】
安全コントローラ52は、主に安全制御を担うコントローラでありPLCにより構成される。安全コントローラ52は、安全レーザスキャナ18、19のスキャン検出範囲内における、障害物の存在の有無や当該障害物との距離などの周辺環境の情報を判断する。安全コントローラ52は、走行制御コントローラ51との間で情報を送受可能になっており、安全レーザスキャナ18、19から取得される周辺環境の情報を走行制御コントローラ51に送信可能になっている。走行制御コントローラ51は、安全コントローラ52と連携制御することで自律走行可能になる。
【0029】
また安全コントローラ52は、安全非接触スイッチ28及び安全エンコーダ35の信号を直接入力している。安全コントローラ52は、各車輪ユニット12…15の安全非接触スイッチ28により各車輪ユニット12…15毎の特定の方向への操舵状態を検出できる。さらに安全コントローラ52は、各車輪ユニット12…15の安全エンコーダ35により各車輪ユニット12…15の速度を検出できる。これにより安全コントローラ52は、無人搬送車10の各種状態を検出できる。
【0030】
安全コントローラ52、安全レーザスキャナ18、19、安全非接触スイッチ28、安全エンコーダ35、及び電磁ブレーキ36は、走行制御の主体としては用いられないものの、安全基準ISO3691-4を満たすうえで必要な機器として設けられ、安全認証済の安全機器として構成される。速度監視機能や操舵検出機能は、ISO13849で定義される安全カテゴリ3かつパフォーマンスレベルDの認証を受けている。
エンコーダ34は、走行制御用に車輪21の操舵角を詳細に検出しているが、例えば安全非接触スイッチ28は、前述したように特定の方向を検出する上で必須の機器として設けられている。また、走行用駆動モータ33の駆動力が小さくなった場合、何らかの不具合で走行用駆動モータ33の動力の遮断に失敗した場合、安全で且つ確実に無人搬送車10を停止させるため、電磁ブレーキ36が組付けられている。
【0031】
コンタクタ53は、安全コントローラ52の制御に応じて電源を開閉する電磁開閉器である。コンタクタ53は、安全コントローラ52の制御に応じて制動作用に必要な電力を電磁ブレーキ36に通電可能に構成される。
【0032】
また、コンタクタ53は、安全コントローラ52の制御に応じて制御基板54に通電される電源を通断電可能になっている。非常停止スイッチ55は、外部ユーザにより操作可能なスイッチであり安全コントローラ52に電気的に接続されており、外部から非常時に停止指示可能になっている。
【0033】
走行制御コントローラ51が、駆動回路54aを通じて走行用駆動モータ33、操舵モータ27、エンコーダ34を用いて自律走行制御している最中でも、非常停止スイッチ55がオン操作されることで、安全コントローラ52が、コンタクタ53を通じて駆動回路54aに通電されている電源を遮断できる。これにより自律走行制御を停止できる。
【0034】
また安全コントローラ52は、無人搬送車10の車輪ユニット12…15の状態と当該無人搬送車10の周辺環境の情報と照合し、周辺に存在する障害物との距離を一定以上確保できる。例えば無人搬送車10が障害物と衝突しつつあるときには、安全コントローラ52がコンタクタ53を通じて電源を電磁ブレーキ36に通電することで無人搬送車10を制動できる。
【0035】
走行制御コントローラ51が、各車輪ユニット12…15のそれぞれの走行用駆動モータ33を駆動制御することで、各車輪ユニット12…15の車輪21を正逆回転駆動できる。
【0036】
このため制御部50が、
図2に示すように全ての車輪ユニット12…15の車輪21をX方向に操舵することで車体11を横進させることができる。また制御部50が、
図7に示すように全ての車輪ユニット12…15の車輪21をY方向に操舵することで車体11を直進させることができる。
【0037】
また制御部50が、
図8に示すように全ての車輪ユニット12…15の車輪21をXY方向に傾斜させることで当該無人搬送車10をその鉛直軸回りに旋回させることができる。これにより、水平方向の任意の方向へ無人搬送車10を移動させることができ、無人搬送車10を360°全方位に走行させることができる。
【0038】
図9の無人搬送車10aに示すように、全ての車輪ユニット12…15のうち一部の車輪ユニット12、15を、駆動輪ユニットに従動する従動輪ユニット312、315により構成しても良い。従動輪ユニット312、315には、フレーム30に水平方向に自在に可動できる車輪21が装着されているものの、電気的構成、すなわち、走行用駆動モータ33、操舵モータ27、エンコーダ34、電磁ブレーキ36、安全非接触スイッチ28、安全エンコーダ35などが取り付けられていない。すなわち従動輪ユニット312、315はキャスタとして構成される。また同様に、
図10の無人搬送車10bに示すように、全ての車輪ユニット12…15のうち一部の車輪ユニット14、15を、駆動輪ユニットに従動する従動輪ユニット314、315により構成しても良い。
【0039】
図9に示した無人搬送車10aの例では、車輪ユニット13、14は、車体11の対角方向に設けた被装着部11b、11cにそれぞれ着脱可能に構成され、車輪21を駆動する走行用駆動モータ33を備えた駆動輪ユニットにより構成されている。さらに、従動輪ユニット312、315は、車輪ユニット13,14を装着した被装着部11b、11c以外の被装着部11a、11dに着脱可能に構成される。
【0040】
なお、図中、車輪ユニット13、14には車輪21にハッチングを付しており、従動輪ユニット312、315には、車輪21にハッチングを付していない。各車輪ユニット13、14の操舵モータ27がそれぞれY方向の同方向に向けて車輪21を操舵すると共に、走行用駆動モータ33が車輪21を同方向に駆動することでY方向に駆動力をかけることができる。各従動輪ユニット312、315の車輪21は、これらの車輪ユニット13、14の駆動力のかかる方向に従動するため、無人搬送車10はY方向に移動できる。
【0041】
また、各車輪ユニット13、14の操舵モータ27がそれぞれX方向の同方向に向けて車輪21を操舵すると共に、走行用駆動モータ33が車輪21を同方向に駆動することでX方向に駆動力をかけることができる。各従動輪ユニット312、315の車輪21は、これらの車輪ユニット13、14の駆動力のかかる方向に従動するため、無人搬送車10はX方向に移動できる。これにより、無人搬送車10はY方向に直進することもX方向に横進することもできる。
【0042】
また、各車輪ユニット13、14の操舵モータ27が、車輪ユニット13、14の車輪21をそれぞれXY傾斜方向に向けて操舵した後、車輪ユニット13、14の走行用駆動モータ33がそれぞれ車輪21を逆方向に駆動することで、車体11の重心を中心軸として旋回力が生まれる。
【0043】
各従動輪ユニット312、315は、この旋回力に従動することになり、無人搬送車10は、車体11の中心軸を旋回軸として旋回できる。直進、横進、回転が可能になるため、水平方向の任意の方向へ無人搬送車10aを移動させることができ、無人搬送車10aを360°全方位に走行させることができる。
【0044】
図10に示した無人搬送車10bの例では、車輪ユニット12、13は、車体11の前部に設けられた被装着部11a、11bにそれぞれ着脱可能に構成され、車輪21を駆動する走行用駆動モータ33を備えた駆動輪ユニットにより構成されている。さらに、従動輪ユニット314、315は、車輪ユニット12、13を装着した被装着部11a、11b以外の被装着部11c、11dに着脱可能に構成される。
図10に示した無人搬送車10bの例でも、
図9に示した無人搬送車10aと同様に、直進、横進、回転が可能になるが説明を省略する。
【0045】
図11から
図16は、六輪駆動の例を示す。
図11に例示したように、車輪ユニット12…17を被装着部11a…11fにそれぞれ装着することで六輪駆動にしても良い。この無人搬送車310は、水平方向に矩形枠状に構成された車体311に対し正六角形の頂点位置に被装着部11a…11fを設けており、これらの被装着部11a…11fに車輪ユニット12…17を装着している。車輪ユニット12…17は、全て同一の構造及び電気的構成により構成されている。
【0046】
図11に例示したように、制御部50が車輪21を全てY方向に操舵することで無人搬送車310を前進又は後退させることができる。また、
図12に例示したように、制御部50が車輪21をすべてX方向に操舵することで無人搬送車310を横進させることができる。
【0047】
また
図13に例示したように、制御部50が、車輪ユニット12…15の車輪21をXY方向に傾斜させると共に車輪ユニット16、17の車輪21をY方向に沿って操舵することで、当該無人搬送車310をその鉛直軸回りに旋回させることができる。これにより、水平方向の任意の方向へ無人搬送車10を移動させることができ、無人搬送車10を360°全方位に走行させることができる。
【0048】
また、
図14に無人搬送車310aを例示している。
図14に示した無人搬送車310aは、全ての車輪ユニット12…17のうち一部を、それぞれ駆動輪ユニットに従動する従動輪ユニット312、315…317により構成している。従動輪ユニット312、315…317には、フレーム30に対して水平方向に自在に動作可能な車輪21が装着されているものの、走行用駆動モータ33、操舵モータ27、エンコーダ34、電磁ブレーキ36、安全非接触スイッチ28、及び安全エンコーダ35などは取り付けられていない。すなわち、従動輪ユニット312、315…317は所謂キャスタとして構成される。
【0049】
図14に示した例では、車体311の対角方向に設けた車輪ユニット13、14を駆動輪ユニットとし、その他には従動輪ユニット312、315…317を設けている。車輪ユニット13、14には車輪21にハッチングを付しており、従動輪ユニット312、315…317には、車輪21にハッチングを付していない。
【0050】
制御部50が、
図14に示すように車輪ユニット13、14の車輪21をY方向に操舵し、走行用駆動モータ33により車輪21を同方向に駆動する。すると、その他の従動輪ユニット312、315…317の車輪21が車輪ユニット13、14の駆動力の方向に沿って従動する。これにより、無人搬送車10を直進させることができる。
【0051】
また制御部50が、
図15に示すように車輪ユニット13、14の車輪21をX方向に操舵し、走行用駆動モータ33により車輪21を同方向に駆動する。すると、従動輪ユニット312、315…317の車輪21は、車輪ユニット13、14の駆動力の方向に従って従動する。これにより、無人搬送車10を横進させることができる。
【0052】
また制御部50が、
図16に示すように車輪ユニット13、14の車輪21をXY傾斜方向に操舵すると共に互いに逆方向に車輪21を駆動する。すると、車体11の重心を中心軸とした旋回力を生じる。従動輪ユニット312、315…317の車輪21は、車輪ユニット13、14の旋回力に従って従動するため、無人搬送車310aを車体311の鉛直軸回りに旋回させることができる。これにより、水平方向の任意の方向へ無人搬送車310aを移動させることができ、無人搬送車310aを360°全方位に走行させることができる。
【0053】
車輪ユニット12…17を設置する車体311をより大きくすることで、無人搬送車10が運搬可能な搬送物の重量も重くできる。前述の無人搬送車10、10a、10b、310、310aは、車輪ユニット12…17の駆動輪ユニットの設置個数を汎用的に変更できるため、搬送物の重さ、大きさに対応して設計、製作を簡単にできる。
【0054】
本実施形態によれば、車輪ユニット12…17が駆動輪ユニットとして無人搬送車10、10a、10b、310、310aの被装着部11a…11fに着脱可能に構成されている。このため、当該車輪ユニット12…17の装着個数により様々な搬送物の重さや大きさに対応して駆動力等を容易に設計、製作変更できる。
【0055】
それぞれの車輪ユニット12…17が、安全エンコーダ35により速度検出機能を実現したり、安全非接触スイッチ28により車輪21の操舵角検出機能を実現したり、電磁ブレーキ36により非常時などに車輪21の回転を制動できる。車輪ユニット12…17を組み合わせることで国際安全基準を満たすように構成できる。
【0056】
(第2実施形態)
図17から
図19は、第2実施形態の説明図を示す。
図17に例示したように、制御部50は、検出範囲設定部56、進行方向検出部57、及び検出範囲変更制御部58としての機能を備える。
【0057】
図18に例示したように、無人搬送車10が両脇に壁を備えたルートRを走行中に、制御部50の検出範囲設定部56は、安全レーザスキャナ18、19を用いて無人搬送車10の周囲に存在する物体の検出範囲を変更可能にする。
【0058】
制御部50の進行方向検出部57は、安全レーザスキャナ18、19のスキャン情報に基づいて壁の存在しない方向を検出する。制御部50の走行制御コントローラ51は、予め内部のメモリに記憶された走行マップ、及びエンコーダ34による操舵角検出情報に基づいて進行方向を決定できる。また、走行制御コントローラ51は、安全エンコーダ35により各車輪ユニット12…15の車輪21の回転数を検出し、各車輪21の走行速度のうちの最低速度を検出速度として制御する。
【0059】
制御部50の検出範囲変更制御部58は、進行方向検出部57にて検出される進行方向に検出範囲設定部56の検出範囲を向けるように変更制御する。
図18に示したように、制御部50の検出範囲変更制御部58は、安全レーザスキャナ18、19のスキャン検出範囲として進行方向のY方向を有効化し、進行方向のY方向以外の方向のスキャン検出範囲を無効化する。制御部50の検出範囲変更制御部58は、進行方向のY方向におけるスキャン検出範囲を所定の距離L1としている。
【0060】
また
図18に示したように、無人搬送車10がY方向に走行した後、無人搬送車10の車輪ユニット12…15を操舵し、L字交差点角を屈曲して
図18中のX方向に走行する場合を考慮する。
【0061】
制御部50の検出範囲変更制御部58は、安全レーザスキャナ18、19のスキャン検出範囲として進行方向のX方向を有効化し、進行方向X方向以外の方向のスキャン検出範囲を無効化する。制御部50の検出範囲変更制御部58は、進行方向X方向におけるスキャン検出範囲を所定の距離L2としている。
【0062】
このため、無人搬送車10の進行方向に応じて検出範囲設定部56による検出範囲を変更でき、安全レーザスキャナ18、19によるスキャン検知範囲を状況に合わせて変更対応できる。
【0063】
前述したように、検出範囲変更制御部58は、進行方向検出部57にて検出される進行方向に検出範囲設定部56の検出範囲を向けるように変更制御しているため、無人搬送車10の進行方向の検出範囲内の物体を精度良く検出でき、進行方向の検出範囲内に存在する物体Obの有無を信頼性良く判定できる。
【0064】
また制御部50は、無人搬送車10が進行方向に走行する速度の低下に伴い検出範囲を狭めるように安全レーザスキャナ18、19のスキャン検出範囲を制御すると良い。特に、走行速度の低下に伴い検出範囲を単調減少、又は階段状に減少させると良い。例えば
図19に示したように、無人搬送車10の走行速度が比較的速いときには進行方向の検出範囲L1cとした場合、進行方向に物体Obが近接したときの進行方向の検出範囲L1d(ただしL1c>L1d)に設定すると良い。すると、物体Obが近接したとしても徐々に物体Obに近づくことができる。
【0065】
(第3実施形態)
図20から
図26は、第3実施形態の説明図を示す。個々の車輪ユニット12…15の電気配線42は、それぞれベアリング29の回転軸に沿って配線されているため、操舵モータ27が車輪21を操舵することで電気配線42が捩られる。電気配線42の捩りを極力抑制するため、操舵モータ27がそれぞれの車輪21を操舵する角度を180°以下に制限することが望ましい。
【0066】
このとき個々の車輪ユニット12…15の操舵モータ27は、それぞれの車輪21の操舵可能な方向を180°以下に制限しつつ、無人搬送車10を360°全方位に走行可能にできるため、180°を超える操舵を実行することがなくなる。操舵角度を制限することで、車輪21の走行可能な方向を制限することになるが、電気配線42の捩りなどの原因に基づく故障率を低減できる。
【0067】
無人搬送車10が、進行方向を急激に変更するときには、車体11の安定を保つために一旦走行を停止し、操舵モータ27により車輪21の回転方向を操舵完了してから、走行再開することが望ましい。車輪21を操舵する時間が長くなればなるほど、無人搬送車10の停止時間が延びることになり、搬送に時間を要してしまう。
【0068】
無人搬送車10が直進、横進、回転するときに、操舵モータ27は、車体11の進行方向の基準方向に対して45°斜め方向を中心として±90°以下に操舵制限することが望ましい。すると90°を超える角度範囲で操舵することがなくなる。この場合、例えば、車体11が後進する際にも180°操舵する必要がなくなり、搬送に要する待機時間を低減できる。
【0069】
図20から
図26は、上記条件を満たす操舵モータ27の操舵角度範囲例を挙げている。図中に示した角度の数値は、操舵角のY方向に対する左回りの中心角を示している。
図20に示した操舵角度範囲例を説明する。
図20に示す右前輪部の車輪ユニット12の車輪21の基準走行方向は、Y方向に対して右斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット12の車輪21の操舵角の中心角を+45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0070】
左前輪部の車輪ユニット13の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして車輪ユニット13の車輪21の操舵角の中心角を-45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0071】
右後輪部の車輪ユニット14の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット14の車輪21の操舵角の中心角を-45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0072】
左後輪部の車輪ユニット15の車輪21の基準走行方向はY方向に対して右斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット15の車輪21の操舵角の中心角を+45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0073】
この場合、各車輪ユニット12…15の操舵モータ27は、それぞれの車輪ユニット12…15の車輪21をY方向にもX方向にも操舵できる。このため、無人搬送車10はY方向に直進することもX方向に横進することもできる。また操舵モータ27が、
図20に示す車輪21をそれぞれ+90°又は-90°操舵することで無人搬送車10を旋回させることができる。このため、無人搬送車10の車体11を360°全方位に走行させることができる。
【0074】
図21に示す右前輪部の車輪ユニット12の車輪21の基準走行方向は、Y方向に対して右斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット12の車輪21の操舵角の中心角を+225°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0075】
左前輪部の車輪ユニット13の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット13の車輪21の操舵角の中心角を+135°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0076】
右後輪部の車輪ユニット14の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット14の車輪21の操舵角の中心角を+135°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0077】
左後輪部の車輪ユニット15の車輪21の基準走行方向はY方向に対して右斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット15の車輪21の操舵角の中心角を+225°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0078】
この場合もまた、操舵モータ27は各車輪ユニット12…15の車輪21をY方向にもX方向にも操舵できる。このため、無人搬送車10はY方向に直進することもX方向に横進することもできる。また、操舵モータ27が、
図21に示す車輪21をそれぞれ+90°又は-90°操舵することで無人搬送車10を旋回させることができる。このため、無人搬送車10を360°全方位に走行させることができる。
【0079】
図22に示すように、荷渡し台61から荷受け台62まで荷物66を受け渡す場合の一例を説明する。荷渡し台61から荷受け台62までのルートRは、荷渡し台61の近接位置からX方向に移動してノードRaにて直角に曲がってY方向に移動し、さらにノードRbにて直角に曲がってX方向に移動するルートとなる。
【0080】
このルートRに沿って無人搬送車10が移動するとき、まず荷渡し台61から無人搬送車10がX方向に走行してノードRaに達したときに、操舵モータ27が各車輪ユニット12…15の車輪21を右回転に+90°又は左回転に-90°操舵することで直角に曲がることができる。
【0081】
また、走行用駆動モータ33がノードRaからノードRbに達するまで車輪21を駆動することで、無人搬送車10がノードRaからノードRbまで走行してノードRbに達する。無人搬送車10がノードRbに達したときに、操舵モータ27が各車輪ユニット12…15の車輪21を右回転に+90°又は左回転に-90°操舵することで直角に曲がることができる。そして、走行用駆動モータ33がノードRbから荷受け台62まで達するまで車輪21を駆動することで、無人搬送車10はノードRbから荷受け台62まで走行する。このようにして、無人搬送車10は荷渡し台61から荷受け台62まで走行できる。
【0082】
前述したように、操舵モータ27が、車体11の進行方向の基準方向に対して45°斜め方向を中心として±90°以下に操舵制限されていたとしても、無人搬送車10は荷渡し台61から荷受け台62まで走行できる。これにより、無人搬送車10は、荷物66の搬送に要する待機時間を低減できる。
【0083】
図23には従動輪ユニット312、315を使用した無人搬送車10aに適用した場合の操舵角度範囲例を挙げている。
図23に示した無人搬送車10aは、左前輪部と右後輪部に車輪ユニット13、14がそれぞれ装着されており、右前輪部と左後輪部に従動輪ユニット312、315がそれぞれ装着されている。
【0084】
左前輪の車輪ユニット13の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット13の車輪21の操舵角の中心角を-45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。右後輪の車輪ユニット14の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。
【0085】
そして、車輪ユニット14の車輪21の操舵角の中心角を-45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。左後輪の従動輪ユニット315の車輪21はXY全方向に従動可能になっており、右前輪の従動輪ユニット312の車輪21もまたXY全方向に従動可能になっている。
【0086】
このような操舵角度範囲であっても、各車輪ユニット13、14の操舵モータ27はそれぞれの車輪21をY方向にもX方向にも操舵できる。また、各車輪ユニット13、14の操舵モータ27が、車輪ユニット13、14の車輪21をそれぞれ+90°、-90°操舵し、車輪ユニット13、14の走行用駆動モータ33がそれぞれ車輪21を逆方向に駆動すると、車体11の中心を軸として旋回力が発生する。
【0087】
従動輪ユニット312、315の車輪21は、この旋回力に従動するため、無人搬送車10は車体11の中心を軸として旋回することになる。これにより、前述したような操舵角度範囲であっても、無人搬送車10は直進、横進、回転できる。
【0088】
図24にも従動輪ユニット312、315を使用した無人搬送車10aに適用した場合の操舵角度範囲例を挙げている。
図24に示した無人搬送車10aは、左前輪部と右後輪部に車輪ユニット13、14がそれぞれ装着されており、右前輪部と左後輪部に従動輪ユニット312、315がそれぞれ装着されている。
【0089】
左前輪の車輪ユニット13の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット13の車輪21の操舵角の中心角を-135°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0090】
右後輪の車輪ユニット14の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット14の車輪21の操舵角の中心角を+135°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。左後輪の従動輪ユニット315の車輪21はXY全方向に従動可能になっており、右前輪の従動輪ユニット312の車輪21もまたXY全方向に従動可能になっている。
【0091】
このような操舵角度範囲であっても、各車輪ユニット13、14の操舵モータ27はそれぞれの車輪21をY方向にもX方向にも操舵できる。また、各車輪ユニット13、14の操舵モータ27が、車輪ユニット13、14の車輪21をそれぞれ+90°、-90°操舵し、車輪ユニット13、14の走行用駆動モータ33がそれぞれ車輪21を逆方向に駆動すると、車体11の中心を軸として旋回力が発生する。
【0092】
従動輪ユニット312、315の車輪21は、この旋回力に従動するため、無人搬送車10は車体11の中心を軸として旋回することになる。これにより、前述したような操舵角度範囲であっても、無人搬送車10は直進、横進、回転できる。
【0093】
図25にも従動輪ユニット314、315を使用した無人搬送車10bに適用した場合の操舵角度範囲例を挙げている。
図25に示した無人搬送車10bは、右前輪部と左前輪部に車輪ユニット12、13がそれぞれ装着されており、右後輪部と左後輪部に従動輪ユニット314、315がそれぞれ装着されている。
【0094】
右前輪の車輪ユニット12の車輪21の基準走行方向はY方向に対して右斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット12の車輪21の操舵角の中心角を+45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。左前輪の車輪ユニット13の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット13の車輪21の操舵角の中心角を-45°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0095】
左後輪の従動輪ユニット315の車輪21はXY全方向に従動可能になっており、右前輪の従動輪ユニット312の車輪21もまたXY全方向に従動可能になっている。
【0096】
このような操舵角度範囲であっても、各車輪ユニット12、13の操舵モータ27はそれぞれの車輪21をY方向にもX方向にも操舵できる。また、各車輪ユニット12、13の操舵モータ27が、車輪ユニット12、13の車輪21をそれぞれ-90°、+90°操舵し、車輪ユニット12、13の走行用駆動モータ33がそれぞれ車輪21を逆方向に駆動すると、車体11の中心を軸として旋回力が発生する。
【0097】
従動輪ユニット314、315の車輪21は、この旋回力に従動するため、無人搬送車10は車体11の中心を軸として旋回することになる。これにより、前述したような操舵角度範囲であっても、無人搬送車10は直進、横進、回転できる。
【0098】
図26にも従動輪ユニット314、315を使用した無人搬送車10bに適用した場合の操舵角度範囲例を挙げている。
図26に示した無人搬送車10bは、右前輪部と左前輪部に車輪ユニット12、13がそれぞれ装着されており、右後輪部と左後輪部に従動輪ユニット314、315がそれぞれ装着されている。
【0099】
右前輪の車輪ユニット12の車輪21の基準走行方向はY方向に対して右斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット12の車輪21の操舵角の中心角を+225°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。左前輪の車輪ユニット13の車輪21の基準走行方向はY方向に対して左斜め45°方向を向いている。そして、車輪ユニット13の車輪21の操舵角の中心角を+135°としたときに、操舵モータ27の操舵角度範囲をその±90°以下に操舵制限している。
【0100】
左後輪の従動輪ユニット315の車輪21はXY全方向に従動可能になっており、右前輪の従動輪ユニット312の車輪21もまたXY全方向に従動可能になっている。
【0101】
このような操舵角度範囲であっても、各車輪ユニット12、13の操舵モータ27はそれぞれの車輪21をY方向にもX方向にも操舵できる。また、各車輪ユニット12、13の操舵モータ27が、車輪ユニット12、13の車輪21をそれぞれ+90°、-90°操舵し、車輪ユニット12、13の走行用駆動モータ33がそれぞれ車輪21を逆方向に駆動すると、車体11の中心を軸として旋回力が発生する。
【0102】
従動輪ユニット314、315の車輪21は、この旋回力に従動するため、無人搬送車10は車体11の中心を軸として旋回することになる。これにより、前述したような操舵角度範囲であっても、無人搬送車10は直進、横進、回転できる。
【0103】
(第4実施形態)
図27及び
図28は、第4実施形態の説明図を示す。第4実施形態は、荷渡し台61の荷渡し地点67から荷受けした荷物66を荷受け台62の荷受け地点68に荷渡しする無人搬送台車510について説明する。
【0104】
図27に例示したように、無人搬送台車510は、台車510aと、この台車510aの上に搭載された搬送部としてのベルトコンベア63とを備える。台車510aは、例えば無人搬送車10と同等の機能を備え、車輪21を用いて360°全方向に移動可能に構成されている。
【0105】
ベルトコンベア63は、荷物66を荷受け荷渡しする両端部にプーリ63aを備えると共に当該プーリ63aの間に多数のローラ63bを併設して構成され、プーリ63a及びローラ63bの上にコンベアベルト63cを敷設して構成された一般的なベルトコンベアである。ベルトコンベア63のコンベアベルト63cの一端上には荷受け部64が設けられている。
【0106】
ベルトコンベア63の荷受け部64は、
図28に示す荷渡し台61の荷渡し地点67から台車510aに荷物66を受取り可能にする。荷渡し部65と荷受け部64との間は離間している。ベルトコンベア63のコンベアベルト63cが図示しないモータにより回転駆動されると、コンベアベルト63cはプーリ63a及びローラ63bの周りに沿って動く。
【0107】
するとベルトコンベア63は、荷受け部64と荷渡し部65との間で一方向に荷物66を搬送できる。ベルトコンベア63の荷渡し部65は、台車510aから荷受け台62の荷受け地点68に荷物66を荷渡し可能にしている。
【0108】
図28に示すように、荷渡し台61から荷受け台62まで荷物66を受け渡す場合の動作例を説明する。荷渡し台61から荷受け台62までのルートRは、荷渡し台61の近接位置からX方向に移動してノードRaにて直角に曲がってY方向に移動し、さらにノードRbにて直角に曲がってX方向に移動して荷受け台62の近接位置まで達するルートとなる。
【0109】
荷渡し台61の荷渡し地点67には図示しないベルトコンベアが設置されている。荷渡し台61から荷物66をX方向に流すことで、無人搬送台車510は荷受け部64に荷物66を荷受けする。ベルトコンベア63の上を流れる荷物66の搬送方向は、X方向の一方向である。
【0110】
無人搬送台車510がルートRに沿って荷渡し台61からX方向に走行してノードRaに移動する途中又はノードRaに達したときに、ベルトコンベア63を作動させることで荷物66をX方向に移動させる。このとき、荷物66はベルトコンベア63の中央に載っている。
【0111】
無人搬送台車510がノードRaに達すると、移動方向をY方向に変更し、ノードRaからノードRbに至るまで移動する。このとき、前述実施形態にて説明した無人搬送車10の直進及び横進の技術を用いることで、ベルトコンベア63による荷物66の搬送方向をX方向に保持したままルートRを移動できる。
【0112】
無人搬送台車510がノードRbに達すると、ベルトコンベア63を再度作動させることで荷物66を荷渡し部65まで移動させる。そして、無人搬送台車510の移動方向を再度X方向に変更し、ノードRbから荷受け台62の近接位置までX方向に向けて移動する。
【0113】
無人搬送台車510が、荷受け台62の近接位置に達すると、ベルトコンベア63を再度作動させることで荷物66をX方向に移動させて荷受け台62の荷受け地点68に渡すことができる。
【0114】
本実施形態によれば、荷渡し地点67から荷受け部64、ベルトコンベア63、荷渡し部65、及び荷受け地点68にかけて一方向に荷物66を先入れ先出しさせるようにしている。このため、荷渡し地点67にて受け取った荷物66を荷受け地点68にて効率良く先入れ先出しできるようになる。
【0115】
(他の実施形態)
前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
例えば、前述の各実施形態の構成は概念的なものであり、一つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を一つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、前述の実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、前述の2以上の実施形態の構成の一部又は全部を必要に応じて互いに組み合わせて付加しても置換しても良い。
【0116】
本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0117】
図面中、10は無人搬送車、11は車体、12~15は車輪ユニット、21は車輪、27は操舵モータ(操舵部)、33は走行用駆動モータ(駆動部)、を示す。