(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】回転電機の駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20231219BHJP
H02P 25/22 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02P27/06
H02P25/22
(21)【出願番号】P 2020169271
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】徳舛 彰
(72)【発明者】
【氏名】西端 幸一
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225123(WO,A1)
【文献】特開2015-159684(JP,A)
【文献】実開平07-036595(JP,U)
【文献】特開2015-107045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧領域に設けられた高圧電源(30)と、
前記高圧領域に設けられた複数の巻線群(11,21)を有する回転電機(10,20)と、
前記高圧領域に設けられるとともに前記各巻線群に対応して個別に設けられ、前記巻線群及び前記高圧電源を電気的に接続する電力変換器(41,61)と、
前記高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられ、前記高圧電源よりも出力電圧の低い低圧電源(36)と、を備えるシステムに対して適用される回転電機の駆動装置において、
前記各電力変換器に対応して個別に設けられ、前記回転電機を駆動するために前記電力変換器を構成するスイッチ(SW1H,SW1L,SW2H,SW2L)のスイッチング制御を行う制御装置(42,62)
と、
前記システムに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、を備え、
前記各制御装置のうち少なくとも1つは、前記低圧電源を電力供給源として動作する第1制御装置(42)であり、
前記各制御装置のうち前記第1制御装置以外の少なくとも1つは、前記高圧電源を電力供給源として動作する第2制御装置(62)であ
り、
前記第1制御装置は、
前記低圧領域に設けられるとともに前記低圧電源を電力供給源として動作し、前記回転電機を駆動制御するための第1駆動信号を生成する第1信号生成部(44)と、
前記高圧領域に設けられるとともに前記高圧電源を電力供給源として動作し、前記第1信号生成部により生成された前記第1駆動信号に基づいて、前記第1制御装置に対応して設けられた前記電力変換器の前記スイッチング制御を行う第1駆動部(46)と、を有し、
前記第2制御装置は、
前記低圧領域又は前記高圧領域に設けられるとともに前記高圧電源を電力供給源として動作し、前記回転電機を駆動制御するための第2駆動信号を生成する第2信号生成部(64)と、
前記高圧領域に設けられるとともに前記高圧電源を電力供給源として動作し、前記第2信号生成部により生成された前記第2駆動信号に基づいて、前記第2制御装置に対応して設けられた前記電力変換器の前記スイッチング制御を行う第2駆動部(66)と、を有し、
前記低圧電源から前記第1制御装置に電力供給できなくなる異常が発生した場合、前記第2信号生成部及び前記第2駆動部による前記スイッチング制御により前記回転電機の駆動が継続され、
前記システムの異常として前記低圧電源から前記第1制御装置に電力供給できなくなる異常が発生したと前記異常判定部により判定された場合、前記第2制御装置から前記第1制御装置に対して異常時制御の実行が指示されることにより、前記第1駆動部により前記異常時制御が行われ、
前記異常時制御は、前記第1制御装置に対応して設けられた前記電力変換器において、上下アームのうちいずれか一方のアームにおける前記スイッチであるオン側スイッチをオンし、他方のアームにおける前記スイッチであるオフ側スイッチをオフする短絡制御、又は上下アームの前記スイッチをオフするシャットダウン制御のいずれかである、回転電機の駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機側から前記高圧電源側の方向に電流が流れる電力回生が発生するか否かを判定する回生判定部を備え、
前記回生判定部により前記電力回生が発生すると判定された場合、前記第2制御装置から前記第1制御装置に対して前記短絡制御の実行が指示され、前記回生判定部により前記電力回生が発生すると判定されない場合、前記第2制御装置から前記第1制御装置に対して前記シャットダウン制御の実行が指示される、請求項
1に記載の回転電機の駆動装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記第2制御装置の前記低圧領域に設けられるとともに給電されることにより動作し、
前記第2制御装置は、前記低圧領域と前記高圧領域との境界を跨いで前記低圧領域及び前記高圧領域に設けられるとともに、前記高圧電源から給電されて前記異常判定部に供給する電力を生成する絶縁電源(65)を有し、
前記低圧電源から前記第1制御装置に電力供給できなくなる異常が発生したと異常判定部により判定された場合、前記異常判定部から前記第1制御装置の前記低圧領域に対して前記異常時制御の実行指示信号が送信されることにより、前記第1駆動部により前記異常時制御が行われ、
前記第2制御装置の前記低圧領域側と前記第1制御装置の前記低圧領域側とが共通のグランドに接続されている、請求項
1又は
2に記載の回転電機の駆動装置。
【請求項4】
前記システムは、
前記第2制御装置及び前記各電力変換器と、前記高圧電源とを接続する電気経路(31H,31L)と、
前記電気経路に設けられた遮断スイッチ(S1,S2)と、を備え、
前記第1制御装置が起動した後、前記遮断スイッチがオンに切り替えられ、
前記第2制御装置は、前記高圧電源から給電された場合に起動する、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の回転電機の駆動装置。
【請求項5】
前記第2制御装置は、自身への供給電圧が所定電圧以上となる場合に起動し、
前記第2制御装置は、自身の起動後に前記第1制御装置の起動信号を送信する、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の回転電機の駆動装置。
【請求項6】
前記第1制御装置は、前記低圧電源から給電されて起動した後に前記第2制御装置に対して起動信号を送信し、
前記第2制御装置は、前記起動信号を受信したことを条件として起動する、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の回転電機の駆動装置。
【請求項7】
高圧領域に設けられた高圧電源(30)と、
前記高圧領域に設けられた複数の巻線群(11,21)を有する回転電機(10,20)と、
前記高圧領域に設けられるとともに前記各巻線群に対応して個別に設けられ、前記巻線群及び前記高圧電源を電気的に接続する電力変換器(41,61)と、
前記高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられ、前記高圧電源よりも出力電圧の低い低圧電源(36)と、を備えるシステムに対して適用される回転電機の駆動装置において、
前記各電力変換器に対応して個別に設けられ、前記回転電機を駆動するために前記電力変換器を構成するスイッチ(SW1H,SW1L,SW2H,SW2L)のスイッチング制御を行う制御装置(42,62)を備え、
前記各制御装置のうち少なくとも1つは、前記低圧電源を電力供給源として動作する第1制御装置(42)であり、
前記各制御装置のうち前記第1制御装置以外の少なくとも1つは、前記高圧電源を電力供給源として動作する第2制御装置(62)であり、
前記低圧電源から前記第1制御装置に電力供給できなくなる異常が発生した場合、前記第2制御装置が行う前記スイッチング制御により前記回転電機の駆動が継続され、
前記システムは、
前記第2制御装置及び前記各電力変換器と、前記高圧電源とを接続する電気経路(31H,31L)と、
前記電気経路に設けられた遮断スイッチ(S1,S2)と、を備え、
前記第1制御装置が起動した後、前記遮断スイッチがオンに切り替えられ、
前記第2制御装置は、前記高圧電源から給電された場合に起動する、回転電機の駆動装置。
【請求項8】
前記システムは、
前記第2制御装置及び前記各電力変換器と、前記高圧電源とを接続する電気経路(31H,31L)と、
前記電気経路に設けられた遮断スイッチ(S1,S2)と、
前記電気経路のうち前記遮断スイッチよりも前記各電力変換器側に設けられた蓄電部(32)と、を備え、
前記第1制御装置は、前記遮断スイッチがオフに切り替えられた後、前記蓄電部から放電させる放電処理を行う、請求項1~
7のいずれか1項に記載の回転電機の駆動装置。
【請求項9】
前記システムは、
前記第2制御装置及び前記各電力変換器と、前記高圧電源とを接続する電気経路(31H,31L)と、
前記電気経路に設けられた遮断スイッチ(S1,S2)と、
前記電気経路のうち前記遮断スイッチよりも前記各電力変換器側に設けられた蓄電部(32)と、を備え、
前記第2制御装置は、
前記遮断スイッチがオフに切り替えられた後、前記蓄電部から放電させて前記蓄電部の電圧を規定電圧まで低下させる放電処理を行い、
前記蓄電部の電圧が前記規定電圧まで低下した場合、その旨の情報を前記第1制御装置に送信し、
前記規定電圧は、前記第2制御装置の動作可能な電圧範囲の下限値以上の電圧である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の回転電機の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置としては、特許文献1に記載されているように、第1,第2巻線群を有する回転電機、第1,第2低圧電源及び第1,第2インバータを備えるシステムに対して適用される電動パワーステアリング装置が知られている。第1インバータは、第1低圧電源及び第1巻線群を電気的に接続し、第2インバータは、第2低圧電源及び第2巻線群を電気的に接続する。
【0003】
また、この装置は、第1低圧電源を電力供給源として第1インバータを構成するスイッチのスイッチング制御を行う第1制御回路と、第2低圧電源を電力供給源として第2インバータを構成するスイッチのスイッチング制御を行う第2制御回路とを備えている。各インバータのスイッチング制御により、操舵力をアシストするためのトルクが回転電機から出力される。
【0004】
特許文献1に記載の装置によれば、低圧電源が冗長化されているため、第1,第2低圧電源のうちいずれか一方の低圧電源から電力供給できなくなる異常が発生した場合であっても、他方の低圧電源からの電力供給を継続でき、回転電機の駆動を継続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
システムには、低圧領域と、低圧領域とは電気的に絶縁された高圧領域とが設けられている。特許文献1に記載のシステムを構成する第1,第2低圧電源等の各構成は低圧領域に設けられている。
【0007】
低圧領域側において何らかの異常が発生することにより、第1,第2低圧電源の双方から電力供給できなくなる異常が発生し得る。この場合、回転電機の駆動を継続できなくなる懸念がある。
【0008】
本発明は、低圧電源から電力供給できなくなる異常が発生した場合であっても、回転電機の駆動を継続できる回転電機の駆動装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高圧領域に設けられた高圧電源と、
前記高圧領域に設けられた複数の巻線群を有する回転電機と、
前記高圧領域に設けられるとともに前記各巻線群に対応して個別に設けられ、前記巻線群及び前記高圧電源を電気的に接続する電力変換器と、
前記高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられ、前記高圧電源よりも出力電圧の低い低圧電源と、を備えるシステムに対して適用される回転電機の駆動装置において、
前記各電力変換器に対応して個別に設けられ、前記回転電機を駆動するために前記電力変換器を構成するスイッチのスイッチング制御を行う制御装置を備え、
前記各制御装置のうち少なくとも1つは、前記低圧電源を電力供給源として動作する第1制御装置であり、
前記各制御装置のうち前記第1制御装置以外の少なくとも1つは、前記高圧電源を電力供給源として動作する第2制御装置である。
【0010】
本発明に係るシステムでは、高圧電源、回転電機を構成する各巻線群、及び各電力変換器が高圧領域に設けられている。一方、低圧電源が低圧領域に設けられている。
【0011】
低圧領域側において何らかの異常が発生することにより、低圧電源から第1制御装置に電力供給できなくなる異常が発生し得る。本発明では、この場合であっても、高圧電源から第2制御装置に電力供給を継続できる。高圧電源は、第2制御装置に加え、第2制御装置の制御対象となる電力変換器の電源となる。このため、本発明によれば、低圧電源から電力供給できなくなる異常が発生した場合であっても、第2制御装置の制御対象となる電力変換器のスイッチング制御を継続でき、ひいては回転電機の駆動を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る車載制御システムの全体構成図。
【
図3】マイコンが実行する処理の手順を示すフローチャート。
【
図4】第2実施形態に係る各PCU及びその周辺構成を示す図。
【
図5】マイコンが実行する処理の手順を示すフローチャート。
【
図6】第3実施形態に係る各PCU及びその周辺構成を示す図。
【
図7】第4実施形態に係るシステム起動処理の手順を示すフローチャート。
【
図8】第5実施形態に係るシステム起動処理の手順を示すフローチャート。
【
図9】第6実施形態に係る各PCU及びその周辺構成を示す図。
【
図11】第7実施形態に係る終了シーケンスの処理手順を示すフローチャート。
【
図12】第8実施形態に係る終了シーケンスの処理手順を示すフローチャート。
【
図13】その他の実施形態に係る車載制御システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る駆動装置は制御システムを構成し、制御システムは車両に搭載されている。
【0014】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10を備えている。回転電機10は、共通のステータに巻回された第1巻線11(「第1巻線群」に相当)及び第2巻線21(「第2巻線群」に相当)と、ロータとを備えている。ロータは、車両の駆動輪と動力伝達可能とされている。つまり、回転電機10は、車両の走行動力源となる。本実施形態では、回転電機10として、同期機が用いられており、より具体的には、永久磁石同期機が用いられている。
【0015】
制御システムは、第1パワーコントロールユニット(以下、第1PCU)40と、第2パワーコントロールユニット(以下、第2PCU)60とを備えている。第1PCU40は、第1スイッチングデバイス部41(「電力変換器」に相当)と、第1ECU42(「第1制御装置」に相当)とを備えている。第1スイッチングデバイス部41は、第1上アームスイッチSW1Hと第1下アームスイッチSW1Lとの直列接続体を3相分備えている。各相において、第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lの接続点には、第1巻線11の第1端が接続されている。第1巻線11の第2端は、中性点で接続されている。各相の第1巻線11は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。ちなみに、本実施形態では、第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的にはIGBTが用いられている。第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
【0016】
各第1上アームスイッチSW1Hの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路31Hを介して、高圧電源30の正極端子が接続されている。各第1下アームスイッチSW1Lの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路31Lを介して、高圧電源30の負極端子が接続されている。本実施形態において、高圧電源30は、2次電池であり、その出力電圧(定格電圧)が例えば百V以上である。
【0017】
第2PCU60は、第2スイッチングデバイス部61(「電力変換器」に相当)と、第2ECU62(「第2制御装置」に相当)とを備えている。第2スイッチングデバイス部61は、第2上アームスイッチSW2Hと第2下アームスイッチSW2Lとの直列接続体を3相分備えている。各相において、第2上,下アームスイッチSW2H,SW2Lの接続点には、第2巻線21の第1端が接続されている。第2巻線21の第2端は、中性点で接続されている。各相の第2巻線21は、電気角で互いに120°ずらされて配置されている。各第2上アームスイッチSW2Hのコレクタには、高電位側電気経路31Hが接続されている。各第2下アームスイッチSW2Lのエミッタには、低電位側電気経路31Lが接続されている。
【0018】
高電位側電気経路31Hには、第1遮断スイッチS1が設けられ、低電位側電気経路31Lには、第2遮断スイッチS2が設けられている。各遮断スイッチS1,S2は、リレー又は半導体スイッチである。
【0019】
制御システムは、「蓄電部」としての平滑コンデンサ32を備えている。平滑コンデンサ32は、高電位側電気経路31Hのうち第1遮断スイッチS1よりも各スイッチングデバイス部41,61側と、低電位側電気経路31Lのうち第2遮断スイッチS2よりも各スイッチングデバイス部41,61側とを電気的に接続している。
【0020】
制御システムは、放電抵抗体33及び放電スイッチ34の直列接続体を備えている。この直列接続体は、高電位側電気経路31Hのうち第1遮断スイッチS1よりも各スイッチングデバイス部41,61側と、低電位側電気経路22Lのうち第2遮断スイッチS2よりもスイッチングデバイス部41,61側とを電気的に接続している。本実施形態において、放電スイッチ34はNチャネルMOSFETである。
【0021】
制御システムは、角度センサ13及び電圧センサ35を備えている。角度センサ13は、回転電機10の電気角θeを検出し、例えば、レゾルバ、エンコーダ又は磁気抵抗効果素子を有するMRセンサである。電圧センサ35は、平滑コンデンサ32の端子電圧である電源電圧Vdcを検出する。角度センサ13及び電圧センサ35の検出値は、各ECU42,62に入力される。
【0022】
高圧電源30、平滑コンデンサ32、放電抵抗体33、放電スイッチ34、第1スイッチングデバイス部41、第2スイッチングデバイス部61、第1巻線11及び第2巻線21は、高圧領域に設けられている。
【0023】
図2を用いて、第1PCU40及び第2PCU60の構成について説明する。
【0024】
第1PCU40は、第1電源回路43及び第1マイコン44を備えている。第1電源回路43には、電源スイッチ37を介して低圧電源36の正極端子が接続されている。低圧電源36の負極端子には、接地部位としてのグランドが接続されている。低圧電源36は、その出力電圧(定格電圧)が高圧電源30の出力電圧(定格電圧)よりも低い電圧(例えば12V)の2次電池であり、例えば鉛蓄電池である。第1電源回路43、第1マイコン44、電源スイッチ37及び低圧電源36は、高圧領域とは電気的に絶縁された低圧領域に設けられている。
【0025】
電源スイッチ37は、第1ECU42及び第2ECU62に対して上位の制御装置である図示しない上位ECUにより駆動される。上位ECUは、図示しない始動スイッチがオンに切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ37をオンに切り替える。これにより、低圧電源36から第1ECU42への給電が開始される。ここで、始動スイッチは、制御システムに備えられ、例えばイグニッションスイッチ又はプッシュ式のスタートスイッチであり、車両のユーザにより操作される。
【0026】
一方、上位ECUは、始動スイッチがオフに切り替えられたと判定した場合、電源スイッチ37をオフに切り替える。具体的には、上位ECUは、始動スイッチがオフに切り替えられたと判定した場合、所定の終了シーケンス処理の後、電源スイッチ37をオフに切り替える。これにより、低圧電源36から第1ECU42への給電が停止される。
【0027】
第1電源回路43は、低圧電源36を電力供給源として、第1マイコン44に供給する電圧を生成する。第1マイコン44は、「第1信号生成部」に相当し、CPUと、それ以外の周辺回路とを備えている。周辺回路には、例えば、外部と信号をやり取りするための入出力部と、AD変換部とが含まれている。第1マイコン44は、第1電源回路43により生成された電圧が供給されることにより、上記グランドの電位を基準電位として動作する。第1マイコン44は、第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lに対する第1上,下アーム駆動信号を生成する。
【0028】
第1ECU42は、第1絶縁電源45及び第1駆動回路46を備えている。第1絶縁電源45は、低圧電源36から供給された電圧に基づいて、第1駆動回路46に供給する駆動電圧を生成して出力する。第1絶縁電源45は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。第1絶縁電源45は、例えばフライバック方式の絶縁電源である。
【0029】
第1駆動回路46は、高圧領域に設けられ、「第1駆動部」に相当する。第1駆動回路46は、第1絶縁電源45から駆動電圧が供給されることにより動作する。第1駆動回路46には、第1マイコン44から図示しない絶縁伝達部を介して第1上,下アーム駆動信号が入力される。絶縁伝達部は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられ、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。
【0030】
第1駆動回路46は、各相各アームに対応して個別に設けられている。このため、本実施形態では、第1駆動回路46は合わせて6つ設けられている。
【0031】
上アーム側の各相の第1駆動回路46は、入力された第1上アーム駆動信号がオン指令である場合、第1上アームスイッチSW1Hのゲートに充電電流を供給する。これにより、第1上アームスイッチSW1Hのゲート電圧が閾値電圧以上となり、第1上アームスイッチSW1Hがオンされる。一方、第1駆動回路46は、入力された第1上アーム駆動信号がオフ指令である場合、第1上アームスイッチSW1Hのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、第1上アームスイッチSW1Hのゲート電圧が閾値電圧未満となり、第1上アームスイッチSW1Hがオフされる。
【0032】
下アーム側の各相の第1駆動回路46は、入力された第1下アーム駆動信号がオン指令である場合、第1下アームスイッチSW1Lのゲートに充電電流を供給する。これにより、第1下アームスイッチSW1Lがオンされる。一方、第1駆動回路46は、入力された第1下アーム駆動信号がオフ指令である場合、第1下アームスイッチSW1Lのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、第1下アームスイッチSW1Lがオフされる。
【0033】
第2PCU60は、第2電源回路63及び第2マイコン64を備えている。第2電源回路63及び第2マイコン64は、低圧領域に設けられている。
【0034】
第2電源回路63は、後述する第2絶縁電源65から給電されることにより、第2マイコン64に供給する電圧を生成する。第2マイコン64は、「第2信号生成部」に相当し、CPUと、それ以外の周辺回路とを備えている。第2マイコン64は、第2電源回路63により生成された電圧が供給されることにより、上記グランドの電位を基準電位として動作する。第2マイコン64は、第2上,下アームスイッチSW2H,SW2Lに対する第2上,下アーム駆動信号を生成する。
【0035】
第2ECU62は、第2絶縁電源65及び第2駆動回路66を備えている。第2駆動回路66は、高圧領域に設けられている。第2絶縁電源65は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。第2絶縁電源65は、例えばフライバック方式の絶縁電源である。第2絶縁電源65は、各遮断スイッチS1,S2がオンされた状態において、高圧電源30から供給された電圧に基づいて、第2電源回路63に供給する電圧を生成して出力する。
【0036】
また、第2絶縁電源65は、高圧電源30から供給された電圧に基づいて、第2駆動回路66に供給する駆動電圧を生成して出力する機能を有する。第2絶縁電源65は、高圧電源30から供給された電圧を降圧することにより、第2駆動回路66に供給する駆動電圧を生成する。
【0037】
ちなみに、第2駆動回路66に駆動電圧を供給する電源は、第2絶縁電源65とは別に設けられた電源であってもよい。
【0038】
第2駆動回路66は、「第2駆動部」に相当し、第2絶縁電源65から駆動電圧が供給されることにより動作する。第2駆動回路66には、第2マイコン64から図示しない絶縁伝達部を介して第2上,下アーム駆動信号が入力される。第2駆動回路66は、各相各アームに対応して個別に設けられている。このため、本実施形態では、第2駆動回路66は合わせて6つ設けられている。
【0039】
上アーム側の各相の第2駆動回路66は、入力された第2上アーム駆動信号がオン指令である場合、第2上アームスイッチSW2Hのゲートに充電電流を供給する。これにより、第2上アームスイッチSW2Hがオンされる。一方、第2駆動回路66は、入力された第2上アーム駆動信号がオフ指令である場合、第2上アームスイッチSW2Hのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、第2上アームスイッチSW2Hがオフされる。
【0040】
下アーム側の各相の第2駆動回路66は、入力された第2下アーム駆動信号がオン指令である場合、第2下アームスイッチSW2Lのゲートに充電電流を供給する。これにより、第2下アームスイッチSW2Lがオンされる。一方、第2駆動回路66は、入力された第2下アーム駆動信号がオフ指令である場合、第2下アームスイッチSW2Lのゲートからエミッタ側へと放電電流を流す。これにより、第2下アームスイッチSW2Lがオフされる。
【0041】
第1,第2マイコン44,64は、角度センサ13及び電圧センサ35の検出値等に基づいて、回転電機10の制御量を指令値に制御するための第1上,下アーム駆動信号及び第2上,下アーム駆動信号を生成する通常制御を行う。通常制御で生成される第1上,下アーム駆動信号は、各相において第1上アームスイッチSW1Hと第1下アームスイッチSW1Lとを交互にオンさせる信号である。通常制御で生成される第2上,下アーム駆動信号は、各相において第2上アームスイッチSW2Hと第2下アームスイッチSW2Lとを交互にオンさせる信号である。
【0042】
第1,第2マイコン44,64は、3相短絡制御及びシャットダウン制御を行う。3相短絡制御は、ASC(Active Short Circuit)制御とも呼ばれる。
図3を用いて、第1マイコン44を例にして、3相短絡制御及びシャットダウン制御について説明する。
【0043】
ステップS10では、制御システムに異常が発生したか否かを判定する。本実施形態において、制御システムの異常には、電圧センサ35により検出された電源電圧Vdcが許容上限値を超える過電圧異常、及び第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lの異常が含まれる。
【0044】
ステップS10において異常が発生していないと判定した場合には、ステップS11に進み、通常制御を行う。
【0045】
一方、ステップS10において異常が発生したと判定した場合には、ステップS12に進み、回転電機10側から平滑コンデンサ32の方向に電流が流れる現象である電力回生が発生しているか否かを判定する。
【0046】
具体的には例えば、第1巻線11に逆起電圧が発生する場合における線間電圧Vdemfを推定し、推定した線間電圧Vdemfが電源電圧Vdcを超えていると判定した場合、電力回生が発生していると判定すればよい。また、線間電圧Vdemfは、例えば、検出された電気角θeから電気角速度ωeを算出し、算出した電気角速度ωeに基づいて、「Vdemf=K×ωe」を用いて推定されればよい。Kは、定数であり、ロータの磁極の磁束量φから定まる値である。
【0047】
なお、線間電圧Vdemfと比較される値は、検出された電源電圧Vdcに限らず、例えば予め定められた判定値であってもよい。判定値は、例えば、高圧電源30の端子電圧の正常値が取り得る範囲の最小値に設定されていればよい。
【0048】
ステップS12において電力回生が発生していないと判定した場合には、第1スイッチングデバイス部41を安全状態とする異常時制御がシャットダウン制御であると判定し、ステップS13に移行する。ステップS13では、3相分の第1上,下アーム駆動信号をオフ指令にする。これにより、3相分の第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lがオフされ、電力回生の発生を防止するシャットダウン制御が実行される。
【0049】
ステップS12において電力回生が発生していると判定した場合には、第1スイッチングデバイス部41を安全状態とする制御が3相短絡制御であると判定し、ステップS14に移行する。ステップS14では、3相分の第1上,下アーム駆動信号のうち、一方のアーム駆動信号をオフ指令とし、他方のアーム駆動信号をオン指令とする。本実施形態では、3相分の第1上アーム駆動信号をオフ指令とし、3相分の第1下アーム駆動信号をオン指令とする。これにより、3相分の第1上アームスイッチSW1H(「オフ側スイッチ」に相当)がオフされ、3相分の第1下アームスイッチSW1L(「オン側スイッチ」に相当)がオンされる3相短絡制御が実行される。これにより、電力回生の発生を防止する。
【0050】
なお、シャットダウン制御又は3相短絡制御の実行中において、ステップS10において否定判定した場合、システムの異常が解消したと判定し、ステップS11の通常制御に移行する。
【0051】
以上説明した本実施形態では、高圧電源30、回転電機10を構成する第1,第2巻線11,21、及び第1,第2スイッチングデバイス部41,61が高圧領域に設けられている。一方、低圧電源36が低圧領域に設けられている。低圧領域側において何らかの異常が発生することにより、低圧電源36から第1ECU42に電力供給できなくなる異常が発生し得る。この異常には、低圧電源36の異常、低圧電源36から第1電源回路43までの給電経路の断線異常、第1電源回路43の異常、及び第1電源回路43から第1マイコン44までの給電経路の断線異常が含まれる。
【0052】
本実施形態では、低圧電源36から第1ECU42に電力供給できなくなる異常が発生した場合であっても、高圧電源30から第2ECU62の各構成に電力供給を継続できる。高圧電源30は、第2ECU62に加え、第2ECU62の制御対象となる第2スイッチングデバイス部61の電源となる。このため、本実施形態によれば、低圧電源36から第1ECU42に電力供給できなくなる異常が発生した場合であっても、第2ECU62により回転電機10の駆動を継続することができ、ひいては車両の走行を継続できる。
【0053】
<第1実施形態の変形例>
・3相短絡制御において、上アームスイッチがオンされ、下アームスイッチがオフされてもよい。
【0054】
・第2マイコン64及び第2電源回路63は、高圧領域に設けられていてもよい。
【0055】
・第1スイッチングデバイス部41及び第2スイッチングデバイス部61が別体である構成に限らず、第1スイッチングデバイス部41及び第2スイッチングデバイス部61が一体化された構成であってもよい。また、第1ECU42及び第2ECU62が別体である構成に限らず、第1ECU42及び第2ECU62が一体化された構成であってもよい。
【0056】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図4に示すように、第1ECU42の第1絶縁電源47は、高圧領域に設けられている。第1絶縁電源47は、各遮断スイッチS1,S2がオンされている状態において、高圧電源30から供給された電圧に基づいて、第1駆動回路46に供給する駆動電圧を生成して出力する。第1絶縁電源47は、例えばフライバック方式の絶縁電源である。なお、
図4において、先の
図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0057】
第1ECU42と第2ECU62とは、互いに通信可能に構成されている。第1ECU42は、自身の状態を監視し、自身に異常が発生した場合にその旨の情報を第2ECU62に送信する。本実施形態では、第1ECU42を構成する第1マイコン44(「異常判定部」に相当)は、第1ECU42の状態を監視する機能を有し、異常が発生した場合にその旨の情報を第2ECU62に送信する。
【0058】
第2ECU62は、自身の状態を監視し、自身に異常が発生した場合にその旨の情報を第1ECU42に送信する。本実施形態では、第2ECU62を構成する第2マイコン64(「異常判定部」に相当)は、第2ECU62の状態を監視する機能を有し、異常が発生した場合にその旨の情報を第1ECU42に送信する。
【0059】
第1ECU42は、第2ECU62に異常が発生した旨の情報を受信した場合、第1マイコン44による通常制御を継続しつつ、第2ECU62を構成する第2マイコン64又は第2駆動回路66に対して、第2スイッチングデバイス部61の3相短絡制御又はシャットダウン制御の実行指示信号を送信する。一方、第2ECU62は、第1ECU42に異常が発生した旨の情報を受信した場合、第2マイコン64による通常制御を継続しつつ、第1ECU42構成する第1マイコン44又は第1駆動回路46に対して、第1スイッチングデバイス部41の3相短絡制御又はシャットダウン制御の実行指示信号を送信する。
【0060】
第1マイコン44及び第2マイコン64は、共通のグランドに接続されているため、共通のグランド電位を基準電位として動作する。このため、第1マイコン44及び第2マイコン64間の通信にフォトカプラ等の絶縁伝達部を必要とせず、例えば、第1マイコン44及び第2マイコン64間を有線接続する信号線、又はCAN通信により、第1マイコン44及び第2マイコン64間の通信が可能となる。これにより、各ECU42,62の構成を簡素化できる。
【0061】
なお、第1ECU42の異常監視機能は、第1マイコン44に限らず、例えば、第1ECU42が備える図示しない第1監視部が有していてもよい。また、第2ECU62の異常監視機能は、第2マイコン64に限らず、例えば、第2ECU62が備える図示しない第2監視部が有していてもよい。各監視部は、低圧領域に設けられていればよい。
【0062】
続いて、
図5を用いて、第2マイコン64により実行される処理について説明する。
【0063】
ステップS20では、低圧電源36から第1ECU42に電力供給できなくなる異常が発生した旨の情報を受信したか否かを判定する。この情報は、例えば、第1ECU42を構成する第1マイコン44により送信される。
【0064】
ステップS20において異常が発生した旨の情報を受信していないと判定した場合には、ステップS21に進み、通常制御を行う。
【0065】
一方、ステップS20において異常が発生した旨の情報を受信したと判定した場合には、ステップS22に進み、通常制御を継続する。これにより、第2スイッチングデバイス部61から第2巻線21に交流電流が流れ、回転電機10の駆動が継続され、車両の走行の継続が可能となる。
【0066】
ステップS23では、第2巻線21側から平滑コンデンサ32の方向に電流が流れる現象である電力回生が発生しているか否かを判定する。具体的には例えば、第1実施形態と同様に、第1巻線11に逆起電圧が発生する場合における線間電圧Vdemfを推定し、推定した線間電圧Vdemfが電源電圧Vdcを超えていると判定した場合、電力回生が発生していると判定すればよい。なお、本実施形態において、ステップS23の処理が「回生判定部」に相当する。
【0067】
ステップS23において電力回生が発生していないと判定した場合には、第1スイッチングデバイス部41を安全状態とする異常時制御がシャットダウン制御であると判定し、ステップS24に移行する。ステップS24では、図示しない絶縁伝達部を介して、第1駆動回路46に対してシャットダウン制御の実行指示信号を送信する。これにより、3相分の第1上,下アームスイッチSW1H,SW1Lがオフされる。
【0068】
ステップS23において電力回生が発生していると判定した場合には、第1スイッチングデバイス部41を安全状態とする制御が3相短絡制御であると判定し、ステップS25に移行する。ステップS25では、図示しない絶縁伝達部を介して、第1駆動回路46に対して3相短絡制御の実行指示信号を送信する。これにより、3相分の第1上アームスイッチSW1Hがオフされ、3相分の第1下アームスイッチSW1Lがオンされる。
【0069】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0070】
第1駆動回路46には、第1絶縁電源47を介して高圧電源30の電力が供給される。このため、低圧電源36から第1ECU42に電力供給できなくなる異常が発生した場合であっても、第1駆動回路46により第1スイッチングデバイス部41を構成する各スイッチSW1H,SW1Lを駆動することができる。これにより、第2ECU62を構成する第2マイコン64から第1ECU42を構成する第1駆動回路46に対して異常時制御の実行指示信号が送信されることにより、第1PCU40においてシャットダウン制御又は3相短絡制御を実施することができる。
【0071】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6には、先に説明した上位ECU38が記載されている。上位ECU38は、第1PCU40及び第2PCU60の外部に設けられている。
【0072】
上位ECU38は、第1ECU42及び第2ECU62それぞれと通信可能とされている。第1ECU42は、自身の状態を監視し、自身に異常が発生した場合にその旨の情報を上位ECU38に送信する。第2ECU62は、自身の状態を監視し、自身に異常が発生した場合にその旨の情報を上位ECU38に送信する。
【0073】
上位ECU38は、第2ECU62に異常が発生した旨の情報を受信した場合、通常制御の継続を指示する信号を第1マイコン44に対して送信し、第2マイコン64又は第2駆動回路66に対して、第2スイッチングデバイス部61の3相短絡制御又はシャットダウン制御の実行指示信号を送信する。
【0074】
一方、上位ECU38は、第1ECU42に異常が発生した旨の情報を受信した場合、通常制御の継続を指示する信号を第2マイコン64に対して送信し、第1マイコン44又は第1駆動回路46に対して、第1スイッチングデバイス部41の3相短絡制御又はシャットダウン制御の実行指示信号を送信する。
【0075】
特に、上位ECU38は、低圧電源36から第1ECU42に電力供給できなくなる異常が発生した旨の情報を受信した場合、通常制御の継続を指示する信号を第2マイコン64に対して送信し、第1駆動回路46に対して3相短絡制御又はシャットダウン制御の実行指示信号を送信する。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ECUの起動方法について説明する。詳しくは、第1ECU42が起動した後、第1,第2遮断スイッチS1,S2がオンに切り替えられ、高圧電源30から第2ECU62への給電が開始される。これにより、第2ECU62が起動する。
【0078】
図7は、ECUの起動処理の手順を示すフローチャートである。なお、
図7の説明において、各PCU40,60の構成として
図4に示す構成を例にする。
【0079】
ステップS30では、車両のユーザにより始動スイッチがオンに切り替えられることにより、電源スイッチ37がオンに切り替えられる。これにより、低圧電源36から第1ECU42への給電が開始される。その結果、低圧電源36から第1電源回路43への供給電圧が第1電源回路43の動作可能な電圧範囲の下限値以上となり、第1電源回路43が動作し始める。その後、第1電源回路43から第1マイコン44への供給電圧が、第1マイコン44の動作可能な電圧範囲の下限値以上となる。これにより、ステップS31において、第1ECU42が起動する。
【0080】
その後、ステップS32において、上位ECU又は第1マイコン44により、第1遮断スイッチS1及び第2遮断スイッチS2がオンに切り替えられる。その結果、ステップS33において、高圧電源30から第2ECU62への給電が開始される。これにより、高圧電源30から第2絶縁電源65への供給電圧が第2絶縁電源65の動作可能な電圧範囲の下限値以上となり、第2絶縁電源65が動作し始める。その後、第2絶縁電源65から第2電源回路63への供給電圧が第2電源回路63の動作可能な電圧範囲の下限値以上となり、第2電源回路63も動作し始める。そして、第2電源回路63から第2マイコン64への供給電圧が、第2マイコン64の動作可能な電圧範囲の下限値以上となる。これにより、ステップS34において、第2ECU62が起動する。第2絶縁電源65が動作し始めると、第2絶縁電源65から第2駆動回路66への給電が開始される。
【0081】
また、第1遮断スイッチS1及び第2遮断スイッチS2がオンに切り替えられると、高圧電源30から第1絶縁電源47への供給電圧が第1絶縁電源47の動作可能な電圧範囲の下限値以上となり、第1絶縁電源47が動作し始める。これにより、第1絶縁電源47から第1駆動回路46への給電が開始される。
【0082】
以上説明した本実施形態では、第1ECU42及び第2ECU62のうち低圧電源36に接続される第1ECU42から起動させる。このため、例えば、低圧領域における各機能が正常に動作するか否かの安全チェックや、上位ECUとの通信を確立した後に、高圧電源30に接続される第2ECU62を起動させることができる。これにより、各ECU42,62を起動させる際の安全性を担保することができる。
【0083】
また、本実施形態では、高圧電源30から第2ECU62に高電圧が供給されることをトリガとして第2ECU62を起動させる。このため、第2ECU62を起動させるための起動信号を第1ECU42から第2ECU62に伝えるための信号線が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【0084】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ECUの起動方法を変更する。詳しくは、第2ECU62は、第1,第2遮断スイッチS1,S2がオフの場合であっても、自身に高電圧が供給されることをトリガとして場合に起動する。そして、第2ECU62は、自身の起動後に第1ECU42に対して起動信号を送信する。第1ECU42は、起動信号を受信した場合に起動する。
【0085】
図8は、ECUの起動処理の手順を示すフローチャートである。
【0086】
ステップS40では、第2絶縁電源65への供給電圧が第2絶縁電源65の動作可能な電圧範囲の下限値以上となる。これにより、第2絶縁電源65、第2電源回路63及び第2マイコン64が動作し始め、ステップS41において、第2ECU62が起動する。
【0087】
車両が牽引される場合、駆動輪が回転することにより、第1巻線11及び第2巻線21において逆起電圧が発生する。この場合、第1,第2遮断スイッチS1,S2がオフの場合であっても、第1スイッチングデバイス部41及び第2スイッチングデバイス部61の出力電圧が、第2絶縁電源65の動作可能な電圧範囲の下限値以上となり得る。この場合、第2ECU62が起動する。
【0088】
ステップS42では、第2ECU62を構成する第2マイコン64が上位ECUに対して第1ECU42の起動信号を出力する。これにより、ステップS42において、上位ECUは、電源スイッチ37をオンに切り替え、低圧電源36から第1ECU42に給電が開始される。その結果、第1電源回路43及び第1マイコン44が動作し始め、ステップS43において、第1ECU42が起動する。
【0089】
ステップS44では、第1PCU40及び第2PCU60において、安全状態に応じた3相短絡制御又はシャットダウン制御が実施される。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、始動スイッチがオンされていない車両の牽引時において、第2ECU62を起動させることができる。このため、車両の牽引時において、逆起電圧が高い場合に3相短絡制御を実施することができ、平滑コンデンサ32等を過電圧から保護できる。この際、第1,第2スイッチングデバイス部41,61の双方において3相短絡制御を実施することもできる。この場合、平滑コンデンサ32等に流れる電流を大きく低減させることができ、平滑コンデンサ32等の発熱を抑制できる。
【0091】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本実施形態では、ECUの起動方法を変更する。詳しくは、第1ECU42は、自身の起動後に、
図9に示すように第2ECU62に対して起動信号を送信する。第2ECU62は、起動信号を受信した場合に起動する。なお、
図9において、先の
図4に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0092】
図10は、ECUの起動処理の手順を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS50では、車両ユーザにより始動スイッチがオンに切り替えられることにより、電源スイッチ37がオンに切り替えられる。これにより、低圧電源36から第1ECU42への給電が開始される。その結果、第1電源回路43及び第1マイコン44が動作し始め、ステップS51において、第1ECU42が起動する。
【0094】
その後、ステップS52において、第1マイコン44から第2ECU62に対して起動信号が送信される。これにより、第2絶縁電源65、第2電源回路63及び第2マイコン64が動作し始め、ステップS53において、第2ECU62が起動する。
【0095】
例えば車両が牽引される場合、逆起電圧が高くなり、第2絶縁電源65への供給電圧が第2絶縁電源65の動作可能な電圧範囲の下限値以上となり得る。この場合であっても、本実施形態によれば、第1ECU42から第2ECU62に起動信号が送信されない限り、第2ECU62を起動させないようにすることができる。
【0096】
<第6実施形態の変形例>
上位ECUから第2ECU62に起動禁止信号が送信されている場合に第2ECU62の起動が禁止される構成が採用され得る。この場合、第1ECU42から第2ECU62に起動信号を送信する構成に代えて、第1ECU42から上位ECUに起動禁止信号の出力停止信号を送信することにより、第2ECU62を起動させてもよい。
【0097】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、回転電機10の駆動制御の終了シーケンスについて説明する。
図11は、終了シーケンスの手順を示すフローチャートである。
【0098】
ステップS60では、第1,第2マイコン44,64は、回転電機10の停止処理を行う。本実施形態では、始動スイッチがオフに切り替えられたと上位ECUが判定した場合、上位ECUが第1,第2マイコン44,64に対してこの停止処理の実行指示を行う。
【0099】
第1,第2マイコン44,64は、回転電機10の停止処理を行った後、ステップS61において、回転電機10のロータの回転が停止するまで待機する。ここで、ロータの回転が停止したか否かは、例えば電気角速度に基づいて判定すればよい。
【0100】
ロータの回転が停止したと第1,第2マイコン44,64により判定された場合には、ステップS62に進み、第1マイコン44、第2マイコン64又は上位ECUにより第1,第2遮断スイッチS1,S2がオフに切り替えられる。これにより、高圧電源30から第2ECU62への給電が停止され、ステップS63において、第2ECU62が停止する。
【0101】
ステップS64では、第1マイコン44は、平滑コンデンサ32、放電抵抗体33及び放電スイッチ34を含む閉回路に電流を流して平滑コンデンサ32の蓄積電荷を放出させるべく、放電スイッチ34を駆動する放電処理を行う。これにより、平滑コンデンサ32の端子電圧が低下する。
【0102】
その後、ステップS65では、上位ECUにより電源スイッチ37がオフに切り替えられる。これにより、低圧電源36から第1ECU42への給電が停止され、第1ECU42が停止する。
【0103】
以上説明した本実施形態によれば、第1ECU42により放電処理を適正に行うことができる。
【0104】
<第8実施形態>
以下、第8実施形態について、第7実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1ECU42に代えて、第2ECU62が放電処理を行う。
【0105】
図12は、終了シーケンスの手順を示すフローチャートである。
【0106】
ステップS70~S72では、ステップS60~S62と同様の処理が行われる。
【0107】
ステップS72の処理により、高圧電源30から第2ECU62への給電が停止される。ただし、平滑コンデンサ32には電力が蓄積されているため、平滑コンデンサ32の電力供給源として、第2絶縁電源65から第2電源回路63を介して第2マイコン64に給電される。ステップS73,S74において、第2マイコン64は、検出した電源電圧Vdcが低下して規定電圧Vαになるまで上記放電処理を行う。ステップS75において、第2マイコン64は、電源電圧Vdcが規定電圧Vαになったと判定した場合、その旨の情報を第1マイコン44に送信する。
【0108】
ここで、規定電圧Vαは、第2絶縁電源65の動作可能な電圧範囲の下限値以上の電圧に設定されている。このため、ステップS73,S74の処理によって平滑コンデンサ32の端子電圧が低下する場合であっても、第2絶縁電源65の動作を継続でき、ひいてはステップS72~S75の処理中に第2ECU62が停止することを防止できる。
【0109】
その後、平滑コンデンサ32の端子電圧が第2絶縁電源65の動作可能な電圧範囲の下限値を下回り、第2絶縁電源65が停止する。これにより、ステップS76において、第2ECU62が停止する。なお、ステップS77では、ステップS65と同様の処理が行われる。
【0110】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0111】
・回転電機が1つ備えられる制御システムに限らず、回転電機が複数備えられる制御システムであってもよい。
図13に、回転電機が2つ備えられる制御システムを例示する。
図13において、先の
図1に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0112】
制御システムは、第1回転電機10及び第2回転電機20を備えている。各回転電機10,20は、車両の走行動力源となる。本実施形態では、第1回転電機10のロータが車両の前輪15と動力伝達可能とされ、第2回転電機20のロータが車両の後輪25と動力伝達可能とされている。なお、制御システムは、第1回転電機10の電気角を検出する第1角度センサ13と、第2回転電機20の電気角を検出する第2角度センサ23とを備えている。例えば、第1角度センサ13により検出された電気角は第1ECU42において用いられ、第2角度センサ23により検出された電気角は第2ECU62において用いられる。
【0113】
・
図4に示す第1ECU42に、
図2に示す第1絶縁電源45が備えられていてもよい。つまり、第1ECU42は、低圧電源36及び高圧電源30の双方を電力供給源として動作するものであってもよい。
【0114】
・スイッチングデバイス部を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。
【0115】
・回転電機を構成する巻線群は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。この場合、巻線群の数と同数のECUが制御システムに備えられる。例えば、それらECUのうち、一部のECUは低圧電源を電力供給源とし、残りのECUは高圧電源を電力供給源とすればよい。
【0116】
・回転電機としては、車両の車体に備えられるものに限らず、車輪に内蔵されるインホイールモータであってもよい。
【0117】
・制御システムが搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。例えば、移動体が航空機の場合、制御システムを構成する回転電機は航空機の飛行動力源となる。また、例えば、移動体が船舶の場合、制御システムを構成する回転電機は船舶の航行動力源となる。さらに、制御システムの搭載先は、移動体に限らない。
【符号の説明】
【0118】
10…回転電機、30…高圧電源、36…低圧電源、41,61…第1,第2スイッチングデバイス部、42,62…第1,第2ECU。