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特許7405058電波マップ更新装置、及び通信品質特定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電波マップ更新装置、及び通信品質特定装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20231219BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20231219BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20231219BHJP
【FI】
H04W16/18 110
H04W24/06
H04W4/029
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020172339
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063929
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【弁護士】
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【弁理士】
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】古山 卓宏
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-349742(JP,A)
【文献】特開2003-188802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部(201)と、
移動体に搭載されたプローブ情報送信装置(1100,2100)と前記第1の基地局又は前記第2の基地局との間の通信品質情報を受信する受信部(202)と、
前記通信品質情報を用いて、前記保存部に保存されている前記基準通信品質情報を更新する更新部(211)と、
を備える、電波マップ更新装置(1200,2200)。
【請求項2】
前記受信部は、前記プローブ情報送信装置から、
前記移動体の位置を示す位置情報と、
前記プローブ情報送信装置と前記第1の基地局との通信を遮蔽する移動可能な遮蔽体を示す遮蔽原因情報と、
を含むプローブ情報を受信し、
当該電波マップ更新装置はさらに、
前記位置情報に対応する前記基準位置情報を判定するとともに、前記遮蔽原因情報が示す前記遮蔽体によって発生する、前記プローブ情報送信装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽状況に対応する前記基準遮蔽状況を示す前記基準遮蔽情報を判定する判定部(210)、を備え、
前記更新部は、前記基準位置情報及び前記基準遮蔽情報に対応する前記基準通信品質情報を更新する、
請求項1記載の電波マップ更新装置。
【請求項3】
前記基準遮蔽情報は、前記基準位置での通信が遮蔽される前記第1の基地局及び前記基準位置での通信が遮蔽されない前記第2の基地局を示す情報を含む、
請求項1記載の電波マップ更新装置。
【請求項4】
前記基準遮蔽情報は、前記第1の基地局との通信を遮蔽する基準遮蔽体の種別を示す遮蔽種別情報を含む、
請求項1記載の電波マップ更新装置。
【請求項5】
前記基準遮蔽情報は、前記基準位置での通信に用いている複数の基準アンテナのうち、前記第1の基地局との通信が遮蔽されている基準アンテナを示す基準遮蔽アンテナ情報を含む、
請求項1記載の電波マップ更新装置。
【請求項6】
前記遮蔽原因情報は、前記移動体の周囲の画像情報である、
請求項2記載の電波マップ更新装置。
【請求項7】
前記プローブ情報はさらに、前記通信品質情報を含んでおり、
前記受信部は、前記プローブ情報に含まれる前記通信品質情報を前記プローブ情報送信装置から受信する、
請求項2記載の電波マップ更新装置。
【請求項8】
前記受信部は、前記通信品質情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局から受信する、
請求項2記載の電波マップ更新装置。
【請求項9】
電波マップ更新装置で実行される電波マップ更新方法であって、
前記電波マップ更新装置は、基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部を備え、
移動体に搭載されたプローブ情報送信装置と前記第1の基地局又は前記第2の基地局との間の通信品質情報を受信し、
前記通信品質情報を用いて、前記保存部に保存されている前記基準通信品質情報を更新する、
電波マップ更新方法。
【請求項10】
電波マップ更新装置で実行可能な電波マップ更新プログラムであって、
前記電波マップ更新装置は、基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部を備え、
移動体に搭載されたプローブ情報送信装置と前記第1の基地局又は前記第2の基地局との間の通信品質情報を受信し、
前記通信品質情報を用いて、前記保存部に保存されている前記基準通信品質情報を更新する、
電波マップ更新プログラム。
【請求項11】
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部(109,201)と、
前記第1の基地局又は前記第2の基地局と通信する電波マップ利用装置(1150,2150)を搭載する移動体の移動予定位置を示す予定位置情報を取得する予定位置情報取得部(107,202)と、
前記予定位置情報において、移動可能な遮蔽体によって前記電波マップ利用装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽が発生することを予測し、前記遮蔽の予測遮蔽状況を示す予測遮蔽情報を生成する遮蔽予測部(111,213)と、
前記予定位置情報に対応する前記基準位置情報を判定するとともに、前記予測遮蔽状況に対応する前記基準遮蔽状況を示す前記基準遮蔽情報を判定する電波マップ判定部(112,214)と、
前記基準位置情報及び前記基準遮蔽情報に対応する前記基準通信品質情報を特定する通信品質特定部(113,215)と、
を備える、通信品質特定装置(1150,2250)。
【請求項12】
当該通信品質特定装置は、前記電波マップ利用装置(1150)が有する装置であって、
前記電波マップ利用装置と通信を行う電波マップ提供装置から、前記電波マップを受信する受信部(108)と、
前記通信品質特定部が特定した前記基準通信品質情報に基づいて、前記移動予定位置における前記電波マップ利用装置の通信を制御する通信制御部(114)と、
をさらに備える、請求項11記載の通信品質特定装置。
【請求項13】
当該通信品質特定装置は、前記電波マップ利用装置と通信を行う電波マップ提供装置(2250)が有する装置であって、
前記予定位置情報取得部(202)は、前記電波マップ利用装置から前記予定位置情報を取得し、
当該通信品質特定装置はさらに、前記通信品質特定部が特定した前記基準通信品質情報を前記電波マップ利用装置に送信する送信部(204)を備える、
請求項11記載の通信品質特定装置。
【請求項14】
前記予定位置情報取得部は、前記移動体の前記予定位置情報である第1の予定位置情報に加えて、前記遮蔽体の移動予定位置を示す第2の予定位置情報を取得し、
前記遮蔽予測部は、前記第1の予定位置情報及び前記第2の予定位置情報に基づいて、前記遮蔽体によって生じる前記電波マップ利用装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽を予測する、
請求項11記載の通信品質特定装置。
【請求項15】
前記基準遮蔽情報は、前記基準位置での通信が遮蔽される前記第1の基地局及び前記基準位置での通信が遮蔽されない前記第2の基地局を示す情報を含み、
前記遮蔽予測部が、前記遮蔽体によって前記移動予定位置での前記電波マップ利用装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽が発生し、且つ、前記移動予定位置での前記電波マップ利用装置と前記第2の基地局との通信の遮蔽が発生しないと予測した場合に、前記電波マップ判定部は前記基準遮蔽状況が前記予測遮蔽状況に対応すると判定する、
請求項11記載の通信品質特定装置。
【請求項16】
前記基準遮蔽情報は、前記第1の基地局との通信を遮蔽する基準遮蔽体の種別を示す遮蔽種別情報を含み、
前記遮蔽予測部が、前記遮蔽体の種別が前記基準遮蔽体の種別と一致すると予測した場合に、前記電波マップ判定部は前記基準遮蔽状況が前記予測遮蔽状況に対応すると判定する、
請求項11記載の通信品質特定装置。
【請求項17】
前記基準遮蔽情報は、前記基準位置での通信に用いている複数の基準アンテナのうち、前記第1の基地局との通信が遮蔽されている基準アンテナを示す基準遮蔽アンテナ情報を含み、
前記遮蔽予測部は、前記電波マップ利用装置が有する複数のアンテナのうち、前記遮蔽体によって通信が遮蔽される遮蔽アンテナを予測し、
前記遮蔽予測部が、前記遮蔽アンテナが前記基準アンテナと一致すると予測した場合に、前記電波マップ判定部は前記基準遮蔽状況が前記予測遮蔽状況に対応すると判定する、
請求項11記載の通信品質特定装置。
【請求項18】
電波マップが有する通信品質を特定する通信品質特定装置で実行される通信品質特定方法であって、
前記通信品質特定装置は、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部を備え
前記第1の基地局又は前記第2の基地局と通信する電波マップ利用装置を搭載する移動体の移動予定位置を示す予定位置情報を取得するステップと、
前記予定位置情報において、移動可能な遮蔽体によって前記電波マップ利用装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽が発生することを予測し、前記遮蔽の予測遮蔽状況を示す予測遮蔽情報を生成するステップと、
前記予定位置情報に対応する前記基準位置情報を判定するとともに、前記予測遮蔽状況に対応する前記基準遮蔽状況を示す前記基準遮蔽情報を判定するステップと、
前記基準位置情報及び前記基準遮蔽情報に対応する前記基準通信品質情報を特定するステップと、
を含む、通信品質特定方法。
【請求項19】
電波マップが有する通信品質を特定する通信品質特定装置で実行可能な通信品質特定プログラムであって、
前記通信品質特定装置は、
基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部を備え、
前記第1の基地局又は前記第2の基地局と通信する電波マップ利用装置を搭載する移動体の移動予定位置を示す予定位置情報を取得するステップと、
前記予定位置情報において、移動可能な遮蔽体によって前記電波マップ利用装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽が発生することを予測し、前記遮蔽の予測遮蔽状況を示す予測遮蔽情報を生成するステップと、
前記予定位置情報に対応する前記基準位置情報を判定するとともに、前記予測遮蔽状況に対応する前記基準遮蔽状況を示す前記基準遮蔽情報を判定するステップと、
前記基準位置情報及び前記基準遮蔽情報に対応する前記基準通信品質情報を特定するステップと、
を含む、通信品質特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波マップに関する装置等であって、主にサーバで実現される電波マップ更新装置及び通信品質特定装置としての電波マップ提供装置、並びに、主に移動体に搭載される通信品質特定装置としての電波マップ利用装置、そしてこれらの装置で実現する方法及びこれらの装置で実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信が普及するにつれ、様々な場所で無線通信を用いた通信を行う機会が増えている。とりわけ、自動車等の移動体においては、無線通信を用いて運転支援や自動運転制御を行う技術が注目されており、いわゆる車両のコネクティッド化が進んでいる。特に、車両の通信方式に第5世代移動体通信システム(以下、5G)を採用することにより、車両に搭載された通信装置と基地局との間で高速且つ大容量の通信を行うことが期待されている。
【0003】
ところで、5Gは高周波数帯を利用する通信技術であるが、高周波数帯の電波は直進性が高いことが知られている。直進性が高い5Gの通信品質は、通信経路上に存在する遮蔽物によって影響を受けるため、通信経路上の遮蔽物を考慮して通信を行うことが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には、過去に発生した遮蔽履歴情報を用いる通信装置が開示されている。特許文献1の通信装置によれば、遮蔽によって通信品質の劣化が発生する危険性のある場合に通信装置の接続先を制御することにより、遮蔽によって通信品質が劣化するのを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-022089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本発明者は、以下の課題を見出した。
車両等の移動体と基地局との間には、建物などの固定物の他に、車両などの移動可能な物体が通信経路上の遮蔽物として存在することが考えられる。しかしながら、従来技術では、移動する遮蔽物によって生じる通信品質の劣化は考慮されていないため、車両は、将来発生する通信品質の劣化を正確に予測して通信を行うことができないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、移動可能な遮蔽体によって発生する通信品質の劣化を考慮した電波マップを生成することを目的とする。
また、本発明は、移動可能な遮蔽体によって発生する遮蔽状況に応じた電波マップを提供し、利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様による電波マップ更新装置(1200,2200)は、基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部(201)と、移動体に搭載されたプローブ情報送信装置と前記第1の基地局又は前記第2の基地局との間の通信品質情報を受信する受信部(202)と、前記通信品質情報を用いて、前記保存部に保存されている前記基準通信品質情報を更新する更新部(211)と、を備える。
【0009】
本開示の他の態様による通信品質特定装置(1150、2250)は、基準位置を示す基準位置情報、前記基準位置での第1の基地局との通信の基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報、及び前記基準位置及び前記基準遮蔽状況における前記第1の基地局又は第2の基地局との基準通信品質情報を有する電波マップを保存する保存部(109,201)と、前記第1の基地局又は前記第2の基地局と通信する電波マップ利用装置を搭載する移動体の移動予定位置を示す予定位置情報を取得する予定位置情報取得部(107,202)と、前記予定位置情報において、移動可能な遮蔽体によって前記電波マップ利用装置と前記第1の基地局との通信の遮蔽が発生することを予測し、前記遮蔽の予測遮蔽状況を示す予測遮蔽情報を生成する遮蔽予測部(111,213)と、前記予定位置情報に対応する前記基準位置情報を判定するとともに、前記予測遮蔽状況に対応する前記基準遮蔽状況を示す前記基準遮蔽情報を判定する電波マップ判定部(112,214)と、前記基準位置情報及び前記基準遮蔽情報に対応する前記基準通信品質情報を特定する通信品質特定部(113,215)と、を備える。
【0010】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成により、移動可能な遮蔽体によって発生する通信品質の劣化を考慮した電波マップを生成することが可能となる。
また、上述のような構成により、移動可能な遮蔽体によって発生する遮蔽状況に応じた電波マップを提供し、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の各実施形態に共通の全体構成を示す図
図2】第1の実施形態の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ利用装置の構成例を示すブロック図
図3】第1の実施形態で生成及び利用される電波マップを説明する図
図4】第1の実施形態の遮蔽状況を説明する図
図5】第1の実施形態のサーバ装置である電波マップ更新装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
図6】第1の実施形態のプローブ情報送信装置及び電波マップ更新装置の動作を示すフローチャート
図7】第1の実施形態の電波マップ利用装置及び電波マップ提供装置の動作を示すフローチャート
図8】第2の実施形態の車載装置であるプローブ情報送信装置及び電波マップ利用装置の構成例を示すブロック図
図9】第2の実施形態のサーバ装置である電波マップ更新装置及び電波マップ提供装置の構成例を示すブロック図
図10】第2の実施形態の電波マップ利用装置及び電波マップ提供装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0016】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0017】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせてもよい。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせてもよい。
【0018】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0019】
1.各実施形態に共通する全体構成
図1を用いて、各実施形態に共通する機器及び相互関係を示す全体構成をまず説明する。
【0020】
「移動体」である車両に「搭載された」車載装置A及び車載装置Cは、通信ネットワークを介してサーバ装置Bと接続されている。
ここで、「移動体」とは、移動可能な物体をいい、移動速度は任意である。また移動体が停止している場合も当然含む。例えば、自動車、自動二輪車、自転車、歩行者、船舶、航空機、及びこれらに搭載される物を含み、またこれらに限らない。
また、「搭載された」とは、移動体に直接固定されている場合の他、移動体に固定されていないが移動体と共に移動する場合も含む。例えば、移動体に乗った人が所持している場合、移動体に載置された積荷に搭載されている場合、が挙げられる。
【0021】
車載装置Aは、以下に説明する各実施形態のプローブ情報送信装置に相当し、通信ネットワークを介して電波マップを生成するために必要な情報であるプローブ情報をサーバ装置Bに送信する。
【0022】
サーバ装置Bは、各実施形態の電波マップ更新装置に相当し、車載装置Aから通信ネットワークを介してプローブ情報を受信し、プローブ情報に基づき「電波マップ」を更新又は生成する。
ここで、「電波マップ」とは、特定の位置における通信品質の状態又は推定結果の集合をいい、例えば地図上の格子点毎に単位時間当たりの平均ビットレート(bps)やRSSIをマッピングしたものをいう。
【0023】
また、サーバ装置Bは、各実施形態の電波マップ提供装置に相当し、電波マップ更新装置が更新又は生成した電波マップ又は電波マップに含まれる情報の一部を、通信ネットワークを介して車載装置Cに送信する。
【0024】
車載装置Cは、各実施形態の電波マップ利用装置に相当し、サーバ装置Bから電波マップの情報を受信して利用する。
【0025】
車載装置A及び車載装置Cは、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムから測位信号を受信し、それぞれの位置情報を取得する。
【0026】
車載装置A及び車載装置Cは、基地局との間で無線通信を行う。
【0027】
以下の実施形態では、基地局との間の無線通信方式として5Gを利用することを想定している。しかしながら、無線通信方式として、5Gの他に、例えば、IEEE802.11(WiFi(登録商標))やIEEE802.16(WiMAX(登録商標))、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、HSPA(High Speed Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、4G等を用いることができる。あるいは、DSRC(Dedicated Short Range Communication)を用いることができる。
【0028】
通信ネットワークは、前述の無線通信方式に加えて、有線通信方式を用いることもできる。例えば、LAN(Local Area Network)やインターネット、固定電話回線を用いることができる。有線通信方式を用いる場合、車両は自宅やその他の駐車場に停止していたり、修理工場に収容されていることが想定される。
【0029】
無線通信ネットワークは、無線通信方式と有線通信方式とを組み合わせてもよい。例えば、車載装置Aと基地局との間は5Gの無線通信方式で、基地局から先は、通信事業者の基幹回線やインターネット等の有線通信方式で、それぞれ接続されてもよい。
【0030】
なお、車載装置Aと車載装置Cは別の車両に搭載されている例を説明したが、これを一つの車両に搭載するようにしてもよい。さらに、この場合、車載装置A及び車載装置Cを別々の装置として実装することはもちろん、車載装置Aであるプローブ情報送信装置の機能及び車載装置Cである電波マップ利用装置の機能を1つの車載装置として実装してもよい。
【0031】
また、サーバ装置Bは、本実施形態の電波マップ更新装置及び電波マップ提供装置の両方の機能を有する例を説明したが、これを別々のサーバ装置に分けて設けてもよい。
【0032】
2.第1の実施形態
(1)車載装置(プローブ情報送信装置1100、電波マップ利用装置1150)の構成
図2を用いて、本実施形態の車載装置の構成について説明する。本実施形態では、車載装置が、プローブ情報送信装置1100と電波マップ利用装置1150(「通信品質特定装置」に対応)の両方の機能を実現するように構成された例で説明する。
【0033】
車載装置は、位置情報取得部101、無線通信部102、通信品質情報取得部103、遮蔽原因情報取得部104、制御部105、送信部106、予定位置情報取得部107、受信部108、及び保存部109を備える。また、制御部105は、通信断判定部110、遮蔽予測部111、電波マップ判定部112、通信品質特定部113、及び通信制御部114を実現する。
【0034】
車載装置は、汎用のCPU(Central Processing Unit)、RAM等の揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の不揮発性メモリ、各種インターフェース、及びこれらを接続する内部バスで構成することができる。そして、これらのハードウェア上でソフトウェアを実行することにより、図2に記載の各機能ブロックの機能を発揮させるように構成することができる。後述の図5で示されるサーバ装置、及び第2の実施形態で説明する装置においても同様である。もちろん、車載装置を、LSI等の専用のハードウェアで実現してもよい。
【0035】
車載装置は、本実施形態では半完成品としての電子制御装置(ECU(Electric Control Unit)、以下ECUと略する。)の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーションシステムが挙げられる。
なお、車載装置は、単一のECUの他、複数のECUで構成されてもよい。例えば、外部との通信を通信ECUが担当するようにしてもよい。また、プローブ情報送信装置1100と電波マップ利用装置1150を別々のECUで構成してもよい。
【0036】
図2の車載装置の各ブロックは、専らプローブ情報送信装置1100で用いられるブロック、専ら電波マップ利用装置1150で用いられるブロック、プローブ情報送信装置1100と電波マップ利用装置1150の両方で用いられるブロックがある。以下、まずプローブ情報送信装置1100で用いられるブロック、次に、電波マップ利用装置1150で用いられるブロックを説明する。
【0037】
まず、プローブ情報送信装置1100で用いられるブロックを説明する。
【0038】
位置情報取得部101は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部101は、主に衛星測位装置の測位受信機で構成される。測位受信機は、利用する衛星システムに対応する測位受信機を設ければよい。位置情報取得部101は、測位受信機の他、位置情報の補正に用いる補正情報を供給する機器も含まれる。例えば、ジャイロセンサや加速度センサなどの慣性センサ、レーザセンサ、地図情報データベース、も位置情報取得部101として把握できる。
【0039】
無線通信部102は、外部の通信装置、本実施形態では基地局との間で無線通信を行い、必要な情報の送受信を行う。本実施形態では、無線通信部102として5G通信機を想定しているが、LTE通信機、V2X通信機、WiFi通信機であってもよい。また、無線通信部102と無線通信を行う外部の通信装置として5Gの基地局を想定しているが、WiFiを用いる場合はAP(Access Point)、V2Xを用いる場合は他の車両や路側機であってもよい。もちろん、複数の通信方式に対応していてもよい。接続可能な基地局が複数存在する場合、無線通信部102が通信を行う基地局は自動的に選択される。
【0040】
通信品質情報取得部103は、位置情報取得部101で取得した車両の現在位置において、無線通信部102と基地局との間の無線通信の通信品質を示す「通信品質情報」を取得する。例えば、通信品質情報取得部103は、通信品質として通信速度を測定する装置を用いることができる。あるいは、通信品質情報取得部103は、通信品質情報を外部の通信装置等から取得してもよい。
【0041】
ここで、「通信品質情報」とは、無線通信の状態又は推定結果を示すものであり、これを表す指標として、単位時間当たりの平均ビットレート(bps)の他、例えばRSSI、RSRP、RSRQ、SNR、SIR、BER、伝搬関数、伝搬路行列等が挙げられる。
【0042】
通信品質情報取得部103は、上り回線(アップリンク)の通信品質を評価するための情報を取得するためには、上り回線に割り当てられている周波数帯域における送信状況に関する情報を取得すればよい。例えば、単位時間当たりの送信平均ビットレート(bps)がこれにあたる。あるいは、基地局において測定した参照信号のRSSI、RISP、RSRQを、基地局から受信するようにしてもよい。これらの情報を用いることにより、サーバ装置の電波マップ更新装置1200において、地図上の特定の位置における送信電波マップを生成又は更新することができる。
【0043】
また、通信品質情報取得部103は、下り回線(ダウンリンク)の通信品質を評価するための情報を取得するためには、下り回線に割り当てられている周波数帯域における受信状況に関する情報を取得すればよい。例えば、参照信号のRSSI、RSRP、RSRQがこれにあたる。これらの情報を用いることにより、サーバ装置の電波マップ更新装置1200において、地図上の特定の位置における受信電波マップを生成又は更新することができる。
【0044】
以下の実施形態では、通信品質情報が上り回線の通信品質である例を説明しているが、本開示は下り回線の通信品質にも適用することができる。また、通信品質情報が上り回線の通信品質と下り回線の通信品質を併せて示すものであってもよい。
【0045】
通信品質情報取得部103は、無線通信部102の機能として無線通信部102と兼ねるようにしてもよい。また、通信品質情報取得部103で取得し出力する通信品質情報は、各値の測定結果の絶対値ではなく、正規化した相対値で求めるようにしてもよい。例えば、電波干渉がない理想的な通信状況で引き出せる最大速度を100、最小を0とした値としてもよい。
【0046】
通信品質情報取得部103は、無線通信部102と接続中の一の基地局との間の通信品質情報を取得することを想定している。しかしながら、車両の現在位置において、無線通信部102が無線通信可能な基地局が複数存在する場合、通信品質情報取得部103は、複数の基地局それぞれとの間の通信品質情報を取得してもよい。
【0047】
遮蔽原因情報取得部104は、後述する通信断判定部110が、無線通信部102と接続中の基地局との間の無線通信の通信断が発生したと判定した場合に遮蔽原因情報を取得する。遮蔽原因情報は基地局との通信を遮蔽している遮蔽体を示す情報であり、例えば、車両に搭載された車載カメラが撮影した静止画又は動画などの車両の周囲の画像情報である。遮蔽原因情報は、車載カメラが撮影した画像情報のうち、通信断が発生した基地局方向の画像情報であってもよい。他の例として、遮蔽原因情報は、車両に搭載されたLiDar(Light Detection and Ranging)等によって検出された、車両の周囲の測定情報であってもよく、車車間通信によって受信された車両の周囲を走行する他車両の情報であってもよい。また、遮蔽原因情報取得部104は、上述した複数の情報の組み合わせを遮蔽原因情報として取得してもよい。
【0048】
制御部105は、位置情報取得部101、無線通信部102、通信品質情報取得部103、遮蔽原因情報取得部104、及び送信部106の動作を制御する。また、制御部105は、それ自身で通信断判定部110を実現する。
【0049】
通信断判定部110は、通信品質情報取得部103が取得した通信品質情報に基づいて、無線通信部102と接続中の基地局(「第1の基地局」に対応)との間の無線通信に通信断が発生したか否かを判定する。通信断判定部110は、例えば、RLF(Radio Link Failure)が所定の回数以上発生した場合に、無線通信部102と基地局との間に通信断が発生したと判定してもよい。
【0050】
送信部106は、位置情報取得部101で取得した位置情報、通信品質情報取得部103で取得した通信品質情報、遮蔽原因情報取得部104で取得した遮蔽原因情報、及び通信断判定部110の通信断判定結果を、プローブ情報として電波マップ更新装置1200に送信する。例えば、本実施形態の場合、プローブ情報として以下の情報を送信する。
【0051】
(プローブ情報)
タイムスタンプ:プローブ情報を生成した時刻(UTC)
位置情報:GPS等で取得した車両の位置座標
通信品質情報:通信中の基地局との通信速度[Мbps]
基地局ID:通信中の基地局ID
遮蔽発生有無:基地局との通信断の発生有無
遮蔽原因情報:通信断発生時の車両の周囲に関する情報
【0052】
上述した例に示す基地局IDは、無線通信部102が現在位置において通信を行っている基地局を示しており、通信品質情報は、基地局IDが示す基地局との通信品質情報である。基地局IDが示す基地局、つまり、通信中の基地局は、遮蔽が発生していない基地局(「第2の基地局」に対応)であることが望ましいが、通信に遮蔽が発生している基地局(「第1の基地局」に対応)であってもよい。
【0053】
なお、プローブ情報としてこれ以外の情報を送るようにしてもよい。例えば、基地局との通信断が発生した場合には、プローブ情報はさらに、通信断が発生した基地局IDを含んでもよい。また、プローブ情報として送信する情報は、制御部105の他、特定のブロックで生成するようにしてもよい。
【0054】
以上、本実施形態のプローブ情報送信装置1100によれば、通信品質情報と併せて遮蔽原因情報をプローブ情報として送信する。これにより、プローブ情報を受信する電波マップ更新装置1200では、遮蔽原因情報が示す遮蔽体によって発生する遮蔽状況に応じた電波マップを作り分けることができる。
【0055】
次に、電波マップ利用装置1150で用いられるブロックを説明する。
【0056】
予定位置情報取得部107は、車両が将来移動を予定している移動予定位置を示す「予定位置情報」を「取得する」。例えば、車両が自動運転車両である場合、車両の目的地までの移動経路は自動運転システムによって予め求められている。また、車両がドライバによって手動で操作される場合であっても、ナビゲーションシステムによって目的地までの推奨される移動経路がドライバに提示される。そこで、予定位置情報取得部107は自動運転システムやナビゲーションシステムによって予め求められた移動経路から予定位置情報を取得する。
【0057】
ここで、「予定位置情報」とは、移動体が移動を予定している位置の情報が含まれていれば足り、例えば、移動体の目的地を示す情報や、移動体の移動計画を示す情報であってもよい。
「取得する」とは、予定位置情報を外部の通信装置等から取得する場合、予定位置情報を当該電波マップ利用装置が自ら生成することにより取得する場合のいずれも含む。
【0058】
送信部106は、予定位置情報取得部107で取得した予定位置情報を電波マップ提供装置1250に送信する。送信部106は、予定位置情報と併せて、電波マップの送信を要求する電波マップ要求を送信してもよい。
【0059】
受信部108は、電波マップを電波マップ提供装置1250から受信する。ここで、受信部108が受信する電波マップは、送信部106で送信した予定位置情報に対応する位置の電波マップである。
【0060】
保存部109は、受信部108で受信した電波マップを保存する。図3は、本実施形態の電波マップの一例を示している。
【0061】
図3に示す例では、電波マップは、基準位置情報、周波数情報、接続可能基地局ID、遮蔽ケース番号、遮蔽基地局ID、接続基地局ID、及び基準通信品質情報を有する。以下、接続可能基地局ID、遮蔽基地局ID、接続基地局ID、及び遮蔽ケース番号をまとめて基準遮蔽情報とする。図3に示す電波マップは一例であり、例えば、基準遮蔽情報はこれ以外の情報を含むものであってもよい。
【0062】
基準位置情報は、後述する基準通信品質が得られる地点の基準位置を示す情報であり、例えば、緯度経度高度又は地図上の格子点を表すIDである。基準位置情報は、特定の地点を示す情報でなくともよく、地図上の範囲を示す情報(例えば、緯度X~Yの区間など)であってもよい。
周波数情報は、基準位置情報が示す基準位置での無線通信に使用される無線周波数を示している。
接続可能基地局IDは、基準位置において無線通信が可能な基地局、つまり、接続可能基地局のIDを示している。
遮蔽ケース番号は、移動可能な遮蔽体によって生じる、基準位置での基地局との通信の「遮蔽状況」(以下、基準遮蔽状況)を示す番号であり、基準遮蔽状況に応じてそれぞれ異なる番号が割り当てられる。例えば、遮蔽ケース番号は、接続可能基地局のうち、移動可能な遮蔽体によって通信が遮蔽される遮蔽基地局と、移動可能な遮蔽体によって通信が遮蔽されない基地局との組み合わせに応じて番号が割り当てられてもよい。図3の例では、遮蔽ケース番号として1000、1001、1002の値が割り当てられている。それぞれの遮蔽ケース番号が示す基準遮蔽状況の詳細は後述する。
遮蔽基地局IDは、接続可能基地局のうち、移動可能な遮蔽体によって、基準位置での通信が遮蔽される基地局のIDを示している。
接続基地局IDは、接続可能基地局のうち、基準位置において無線通信を行う基地局、つまり接続基地局のIDを示している。
基準通信品質情報は、基準位置及び基準遮蔽状況において得られる、接続基地局との基準通信品質を示している。
【0063】
ここで、「遮蔽状況」とは、通信を遮蔽している物体や、遮蔽が発生している環境といった状況を含むことはもちろん、遮蔽の発生有無の事実も含む。
【0064】
図4は、遮蔽ケース番号それぞれに対応する基準遮蔽状況の一例を示している。図4(a)は、図3に示す遮蔽ケース番号が1000の場合、図4(b)は遮蔽ケース番号が1001の場合、図4(c)は遮蔽ケース番号が1002の場合の基準遮蔽状況をそれぞれ示している。
【0065】
図4(a)は、基準位置X1、Y1において、基地局BS100、BS200、BS300の間に移動可能な遮蔽体が存在しない状況を示している。図4(a)に示すように、基地局BS100、BS200、BS300のいずれの間にも遮蔽体が存在しない遮蔽状況を、本実施形態では遮蔽ケース番号1000で表す。図4(a)では、無線通信が遮蔽される基地局はなく、また、BS100と無線通信を行っている。そのため、図3の電波マップでは、基準位置情報(X1、Y1)且つ遮蔽ケース番号(1000)の場合、遮蔽基地局IDはなく、接続基地局IDは(100)を示している。図3の電波マップによれば、基準位置情報(X1、Y1)且つ遮蔽ケース番号(1000)の場合に得られる基準通信品質は100Mbpsである。
【0066】
なお、基準位置と基地局との間に建物などの固定された遮蔽体が存在する場合も、図4(a)に示す遮蔽ケース番号1000となる。移動しない固定遮蔽体が存在する場合、電波マップは、固定遮蔽体が存在することを前提とした基準通信品質を有するためである。
【0067】
これに対し、図4(b)は、基準位置X1、Y1において、基地局BS100との間に移動可能な遮蔽体が存在する状況を示している。図4(b)に示すように、基準位置での基地局BS100との通信が遮蔽され、基準位置での基地局BS200、300との通信が遮蔽されない遮蔽状況を、本実施形態では遮蔽ケース番号1001で表す。図3の電波マップでは、基準位置情報(X1、Y1)且つ遮蔽ケース番号(1001)の場合の遮蔽基地局IDは(100)であり、接続基地局IDは(300)を示している。図3の電波マップによれば、基準位置情報(X1、Y1)且つ遮蔽ケース番号(1001)の場合に得られる基準通信品質は150Mbpsである。
【0068】
図4(c)は、基準位置X1、Y1において、基地局BS100及びBS300との間に移動可能な遮蔽体が存在する状況を示している。図4(c)に示すように、基準位置での基地局BS100、BS300との通信が遮蔽され、基準位置での基地局BS200との通信が遮蔽されない遮蔽状況を、本実施形態では遮蔽ケース番号1002で表す。図3の電波マップでは、基準位置情報(X1、Y1)且つ遮蔽ケース番号(1002)の場合の遮蔽基地局IDは(100、300)であり、接続基地局IDは(200)を示している。図3の電波マップによれば、基準位置情報(X1、Y1)且つ遮蔽ケース番号(1002)の場合に得られる基準通信品質は50Mbpsである。
【0069】
なお、図3図4はいずれも電波マップ及び基準遮蔽状況の一例にすぎず、これらに限定されるものではない。例えば、図3、4の例では、遮蔽ケース番号が、移動可能な遮蔽体によって通信が遮蔽される遮蔽基地局と、移動可能な遮蔽体によって通信が遮蔽されない基地局との組み合わせに応じて番号が割り当てられてられる例を説明したが、遮蔽ケース番号は、遮蔽基地局及び遮蔽されない基地局以外のパラメータに応じて割り当てられるものであってもよい。さらに、基準遮蔽情報としてさらに別の情報を含んでもよい。
【0070】
例えば、電波マップは、基地局との通信を遮蔽する基準遮蔽体の種別を示す遮蔽種別情報を基準遮蔽情報として含んでもよい。例えば、移動可能な遮蔽体が小型車両である場合、遮蔽体がない場合と比較して通信品質は低下するが、そのまま無線通信を継続できる可能性がある。一方、移動可能な遮蔽体が大型車両である場合、通信品質が著しく低下するおそれがあるため、通信を行う接続基地局の変更が必要となる可能性がある。このように、遮蔽体の種別によって通信品質や接続基地局が変化する可能性があるため、電波マップは、遮蔽体の種別に応じた基準通信品質や接続可能基地局IDの情報を有していることが望ましい。そこで、電波マップは、基準遮蔽情報として遮蔽種別情報を含み、遮蔽種別情報が示す遮蔽体の種別に応じて遮蔽ケース番号が割り当てられてもよい。ここで、遮蔽種別情報は、例えば遮蔽体の大きさ、形、素材を示す情報を含んでもよい。また、遮蔽体が車両である場合には、遮蔽種別情報は車種情報であってもよい。
【0071】
他の例では、電波マップはさらに、移動可能な遮蔽体によって基地局との通信が遮蔽されている基準アンテナを示す「基準遮蔽アンテナ情報」を基準遮蔽情報として含んでもよい。例えば、基準位置での無線通信に用いているアンテナが複数の場合、遮蔽体によって通信が遮蔽されているアンテナ(以下、基準遮蔽アンテナ)と、遮蔽体によって通信が遮蔽されていないアンテナが存在することが起こりうる。遮蔽されるアンテナと遮蔽されないアンテナの数や組み合わせによって、通信品質や接続基地局が変化する可能性があるため、電波マップは、遮蔽されるアンテナ又は遮蔽されないアンテナの数や組み合わせに応じた基準通信品質や接続可能基地局IDの情報を有していることが望ましい。そこで、電波マップは、基準遮蔽情報として基準遮蔽アンテナ情報を含み、基準遮蔽アンテナ情報が示すアンテナに応じて遮蔽ケース番号が割り当てられてもよい。
【0072】
ここで、通信が遮蔽されている基準アンテナを示す「基準遮蔽アンテナ情報」とは、通信が遮蔽されているアンテナを直接的に示す場合はもちろん、通信が遮蔽されていないアンテナを示すことによって、遮蔽されているアンテナを間接的に示すものであってもよい。また、「基準遮蔽アンテナ情報」は、通信が遮蔽されているアンテナを特定する情報の他、遮蔽されているアンテナの数や組み合わせの情報であってもよい。
【0073】
あるいは、基準遮蔽情報は、接続可能基地局ID、接続基地局ID、遮蔽基地局IDといった情報を含まず、単に遮蔽の有無のみを含む情報であってもよい。
【0074】
制御部105は、送信部106、予定位置情報取得部107、受信部108、保存部109の動作を制御する。また、制御部105は、それ自身で遮蔽予測部111、電波マップ判定部112、通信品質特定部113、及び通信制御部114を実現する。
【0075】
遮蔽予測部111は、予定位置情報取得部107で取得した車両の移動予定位置において、移動可能な遮蔽体によって電波マップ利用装置1150と基地局との通信の遮蔽が発生することを予測する。遮蔽予測部111はさらに、車両の移動予定位置で発生する遮蔽の状況(以下、予測遮蔽状況)を予測し、この予測遮蔽状況を示す予測遮蔽情報を生成する。生成した遮蔽予測情報は、電波マップ判定部112に出力する。
【0076】
遮蔽予測部111は、例えば、車車間通信や路車間通信によって受信した、他の車両の移動予定位置に関する情報(例えば、他車両の走行計画等)から遮蔽の発生及び予測遮蔽状況を予測してもよい。この場合、予定位置情報取得部107は、自車両の移動予定位置を示す予定位置情報(「第1の予定位置情報」に対応)に加えて、他車両の移動予定位置を示す予定位置情報(「第2の予定位置情報」に対応)を取得する。そして、遮蔽予測部111は、自車両の予定位置情報及び他車両の予定位置情報に基づいて、他車両によって、電波マップ利用装置1150と基地局との通信の遮蔽が発生することを予測する。
【0077】
電波マップ判定部112は、電力マップに含まれる基準位置情報のうち、予定位置情報取得部107で取得した予定「位置情報に対応する」基準位置情報を判定する。電波マップ判定部112はさらに、遮蔽予測部111で予測した予測「遮蔽状況に対応する」基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を判定する。
【0078】
ここで、「位置情報に対応する」とは、位置情報が示す位置と同じ又は近傍にあることをいう。例えば、基準位置情報が特定の位置ではなく、範囲を示している場合、「位置情報に対応する」とは、範囲内に含まれていることをいう。
また、「遮蔽状況に対応する」とは、遮蔽状況が同じ又は近似していることをいう。例えば、遮蔽状況が、遮蔽される基地局及び/又は遮蔽されていない基地局を示している場合、「遮蔽状況に対応する」とは、遮蔽される基地局及び/又は遮蔽されていない基地局が一致していることをいう。
【0079】
例えば、遮蔽予測部111は、他車両によって、移動予定位置(X1、Y1)において電波マップ利用装置1150と基地局BS100との通信の遮蔽が発生し、且つ、移動予定位置において電波マップ利用装置1150と基地局BS200、BS300との通信の遮蔽は発生しないと予測した場合を検討する。この場合、電波マップ判定部112は、遮蔽ケース番号1001で表される基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報が予測遮蔽状況に対応すると判定する。あるいは、遮蔽予測部111が、移動予定位置(X1、Y1)において、電波マップ利用装置1150と基地局BS100、BS200、BS300との通信の遮蔽が発生しないと予測した場合、電波マップ判定部112は遮蔽ケース番号1000で表される基準遮蔽状況が予測遮蔽状況に対応すると判定する。
【0080】
ここで、電波マップが基準遮蔽情報として遮蔽種別情報を含む場合、遮蔽予測部111はさらに、遮蔽原因情報に基づいて遮蔽体の種別を予測する。そして、電波マップ判定部112は、遮蔽予測部111が予測した遮蔽体の種別と一致する基準遮蔽体の種別を示す遮蔽種別情報を含む基準遮蔽情報を、予測遮蔽情報に対応するものと判定する。
【0081】
また、電波マップが基準遮蔽情報として基準遮蔽アンテナ情報を含む場合、遮蔽予測部111はさらに、電波マップ利用装置1150が有する複数のアンテナのうち、遮蔽体によって通信が遮蔽される遮蔽アンテナを予測する。そして、電波マップ判定部112は、遮蔽予測部111が予測した遮蔽アンテナと一致する基準遮蔽アンテナを示す基準遮蔽アンテナ情報を含む基準遮蔽情報を、予測遮蔽情報に対応するものと判定する。
【0082】
通信品質特定部113は、電波マップが有する基準通信品質情報のうち、電波マップ判定部112が判定した基準位置情報及び基準遮蔽情報に対応付けて保存された基準通信品質情報を特定する。
【0083】
通信制御部114は、通信品質特定部113が特定した基準通信品質情報に基づいて、移動予定位置における電波マップ利用装置1150の無線通信を制御する。例えば、通信品質特定部113で特定された基準通信品質情報が著しく低い通信品質を示している場合、無線通信部102がその移動予定位置で容量が大きいデータを送信しようとすると、通信に時間がかかる恐れがある。そこで、通信制御部114は、基準通信品質情報が低い通信品質を示している場合には、その地点での通信を控えたり、容量の大きいデータを送受信しないように通信を制御する。
【0084】
例えば、遮蔽予測部111が、車両が移動を予定している位置(X1、Y1)において、他車両が基地局BS100、BS300との無線通信を遮蔽すると予測した場合を検討する。図3に示す電波マップに基づいて、通信品質特定部113は、移動予定位置(X1、Y1)で得られる通信品質は50Mbpsと特定する。50Mbpsがデータを送信するのに通信品質が十分ではない場合、通信制御部114は(X1、Y1)の地点ではデータの送信をせず、さらに高い通信品質が得られる地点において、当該データを送信するように制御する。
【0085】
以上、本実施形態の電波マップ利用装置1150によれば、車両が移動を予定している位置での遮蔽の発生を予測するとともに、将来発生しうる遮蔽状況に応じた通信品質の情報を得ることができるため、高い精度で通信品質を予測するとともに、通信品質に応じて無線通信を行うことができる。本実施形態の電波マップ利用装置1150は、遮蔽状況に応じた通信品質を特定する装置であるため、通信品質特定装置としても把握できる。
【0086】
(2)サーバ装置(電波マップ更新装置1200、電波マップ提供装置1250)の構成
図5を用いて、本実施形態のサーバ装置の構成について説明する。本実施形態では、サーバ装置が、電波マップ更新装置1200と電波マップ提供装置1250の両方の機能を実現するように構成された例で説明する。
【0087】
サーバ装置は、保存部201、受信部202、制御部203、及び送信部204を備える。制御部203は、判定部210、更新部211、及び電波マップ抽出部212としての機能を実現する。
【0088】
サーバ装置は、本実施形態では完成品としてのサーバ装置の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、スマートフォン、携帯電話が挙げられる。
【0089】
図5のサーバ装置の各ブロックは、専ら電波マップ更新装置1200で用いられるブロック、専ら電波マップ提供装置1250で用いられるブロック、電波マップ更新装置1200と電波マップ提供装置1250の両方で用いられるブロックがある。以下、まず電波マップ更新装置1200で用いられるブロック、次に、電波マップ提供装置1250で用いられるブロックを説明する。
【0090】
まず、電波マップ更新装置1200で用いられるブロックを説明する。
【0091】
保存部201は電波マップを保存するメモリであり、HDDやフラッシュメモリ等の不揮発装置で構成される。保存部201に保存される電波マップは、図3で説明した電波マップと同じく、基準位置情報、周波数情報、接続可能基地局ID、遮蔽ケース番号、遮蔽基地局ID、接続基地局ID、及び基準通信品質情報を有する。
【0092】
受信部202は、車両の位置情報、遮蔽原因情報、及び通信品質情報を含むプローブ情報をプローブ情報送信装置1100から受信する。本実施形態で用いるプローブ情報は、(1)で説明した例と同じである。
【0093】
制御部203は、保存部201、及び受信部202の動作を制御する。また、制御部203は、それ自身で判定部210及び更新部211を実現している。
【0094】
判定部210は、受信部202で受信したプローブ情報に含まれる位置情報に対応する基準位置情報を判定する。
【0095】
判定部210はさらに、プローブ情報に含まれる遮蔽原因情報が示す遮蔽体によって発生する、プローブ情報送信装置1100と基地局との通信の遮蔽状況を推定し、推定した遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を判定する。ここで、通信の遮蔽状況を推定するとは、遮蔽体によっていずれの基地局との通信が遮蔽されるか、遮蔽体が移動可能な遮蔽体であるか否か、遮蔽体の種別、及び/又は遮蔽体によって遮蔽されるアンテナを推定することを含む。
【0096】
例えば、遮蔽原因情報が車両の周囲を撮影した画像情報であり、画像情報に他車両が含まれている場合、判定部210は、画像情報に含まれる他車両が基地局との通信を遮蔽する遮蔽体であると推定するとともに、自車両、他車両及び基地局の相対位置から遮蔽状況を推定する。遮蔽状況として、例えば、他車両によって通信が遮蔽される基地局と、通信が遮蔽されない基地局を推定する。そして、推定した遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す遮蔽ケース番号や、接続基地局IDを判定する。
【0097】
また、判定部210が、画像情報などの遮蔽原因情報を解析した結果、遮蔽が移動可能な遮蔽体によって発生したものではないと判定した場合には、対応する基準遮蔽状況を示す遮蔽ケース番号が1000であると判定する。
【0098】
更新部211は、プローブ情報に含まれる通信品質情報を用いて、保存部201に保存されている基準通信品質情報のうち、判定部210が判定した基準位置情報及び基準遮蔽情報に対応する基準通信品質情報を更新する。
【0099】
更新の方法は任意の方法を用いることができる。例えば、更新部211は、プローブ情報に含まれる通信品質情報を用いて、保存部201に保存されている基準通信品質情報を平均化処理して算出した値を、新たな基準通信品質情報として更新する。あるいは、保存部に保存されている基準通信品質情報を、プローブ情報に含まれる通信品質情報に差し替えることによって更新してもよい。
【0100】
なお、本実施形態では、更新という語を用いているが、これは新たな電波マップの生成と把握することもできる。すなわち、電波マップ更新装置とは、電波マップを生成又は更新する装置を意味する。
【0101】
例えば、判定部210が、位置情報に対応する基準位置情報、又は遮蔽原因情報が示す遮蔽体によって発生する遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報が電波マップに存在しないと判定した場合、更新部211は、受信したプローブ情報を用いて新たな電波マップを生成(すなわち、更新)してもよい。
【0102】
以上、本実施形態の電波マップ更新装置によれば、基準位置情報及び基準通信品質情報に加えて、基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を有する電波マップを生成・更新することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、電波マップ更新装置1200は、通信品質情報をプローブ情報送信装置1100から受信する構成を説明した。しかしながら、電波マップ更新装置1200は、プローブ情報送信装置1100の無線通信部102と基地局との間の通信品質情報を基地局から受信してもよい。つまり、基地局が無線通信部102から送信された信号の受信電力を測定することによって通信品質情報を取得し、その情報を電波マップ更新装置1200に送信する構成としてもよい。
【0104】
次に、電波マップ提供装置1250で用いられるブロックを説明する。
【0105】
保存部201は、電波マップ更新装置1200で説明したとおり、電波マップを保存している。
【0106】
受信部202は、電波マップ利用装置1150が搭載された車両の予定位置情報を、電波マップ利用装置1150から受信する。受信部202は、予定位置情報とともに電波マップ要求を受信してもよい。
【0107】
制御部203は、保存部201、受信部202、及び送信部204の動作を制御する。また、制御部203は、それ自身で電波マップ抽出部212を実現している。
【0108】
電波マップ抽出部212は、予定位置情報に対応する基準位置情報を含む電波マップを抽出する。受信部202が複数の予定位置情報を受信した場合には、電波マップ抽出部212は、複数の予定位置情報に対応する複数の電波マップを抽出する。
【0109】
送信部204は、電波マップ抽出部212で抽出した電波マップを電波マップ利用装置1150に送信する。
【0110】
以上、本実施形態の電波マップ提供装置1250によれば、移動体に搭載された電波マップ利用装置1150に対し、移動体が移動を予定している位置の電波マップを提供することができる。さらに、電波マップ提供装置1250が提供する電波マップは、基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を有しているため、将来発生しうる遮蔽状況に応じて利用可能な電波マップを提供することができる。
【0111】
(3)電波マップ生成プロセスにおける、プローブ情報送信装置1100及び電波マップ更新装置1200の動作
プローブ情報送信装置1100及び電波マップ更新装置1200は、共に電波マップの生成に関与している。以下、図6のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ生成プロセスにおける、プローブ情報送信装置1100及び電波マップ更新装置1200の動作を説明する。
【0112】
なお、以下の動作は、プローブ情報送信装置1100で実行されるプローブ情報送信方法を示すだけでなく、プローブ情報送信装置1100で実行可能なプローブ情報送信プログラムの処理手順を示すものである。また、以下の動作は、電波マップ更新装置1200で実行される電波マップ生成更新方法を示すだけでなく、電波マップ更新装置1200で実行可能な電波マップ生成更新プログラムの処理手順を示すものである。そして、これらの処理は、図6で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0113】
S101において、プローブ情報送信装置1100の位置情報取得部101は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する。
S102において、通信品質情報取得部103は、車両の現在位置で接続中の基地局との間の通信品質情報を取得する。
【0114】
S103において、通信断判定部110は、通信品質情報取得部103が取得した通信品質情報に基づいて、接続中の基地局との間の通信断が発生したか否かを判定する。ここで、通信断判定部110が、通信断が発生したと判定した場合(S103:Yes)、遮蔽原因情報取得部104は遮蔽原因情報を取得する(S104)。
さらに、S105において、通信品質情報取得部103は、通信断が発生した基地局に代えて新たに接続した基地局との間の通信品質情報を取得する。
【0115】
そして、S106において、送信部106は、S101で取得した位置情報、S105で取得した新たに接続した基地局との間の通信品質情報をプローブ情報として電波マップ更新装置1200に送信する。ここで、S103で通信断が発生したと判定された場合には、S104で取得した遮蔽原因情報についても、プローブ情報として送信する。
【0116】
なお、通信断が発生した基地局の他に通信可能な基地局が存在しない場合には、S105で通信品質情報を取得せず、通信断が発生した基地局との間の通信品質情報を含むプローブ情報を送信してもよい。
【0117】
S201において、電波マップ更新装置1200の受信部202は、プローブ情報をプローブ情報送信装置1100から受信する。
S202において、判定部210は、プローブ情報に含まれる位置情報に対応する基準位置情報を判定する。
S203において、判定部210はさらに、プローブ情報に含まれる遮蔽原因情報に基づいて、遮蔽原因情報が示す遮蔽体によって発生する、車両と基地局との通信の遮蔽状況を推定し、推定した遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を判定する。
S204において、プローブ情報に含まれる通信品質情報を用いて、S202で判定部210が判定した基準位置情報、及びS203で判定部210が判定した基準遮蔽情報に対応する基準通信品質情報を更新する。上述したとおり、S204における基準通信品質情報の更新は、新たな電波マップの生成であってもよい。
【0118】
このような処理を行うことにより、移動可能な遮蔽体によって生じる遮蔽状況を考慮した電波マップを生成・更新することができる。
【0119】
(4)電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置1250及び電波マップ利用装置1150の動作
電波マップ提供装置1250及び電波マップ利用装置1150は、共に電波マップの利用に関与している。以下、図7のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置1250及び電波マップ利用装置1150の動作を説明する。
【0120】
なお、以下の動作は、電波マップ提供装置1250で実行される電波マップ提供方法を示すだけでなく、電波マップ提供装置1250で実行可能な電波マップ提供プログラムの処理手順を示すものである。また、以下の動作は、電波マップ利用装置1150で実行される電波マップ利用方法を示すだけでなく、電波マップ利用装置1150で実行可能な電波マップ利用プログラムの処理手順を示すものである。そして、これらの処理は、図7で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0121】
S151において、電波マップ利用装置1150の予定位置情報取得部107は、車両の移動予定位置を示す予定位置情報を取得する。
S152において、S151で取得した予定位置情報を、電波マップ提供装置1250に送信する。
【0122】
S251において、電波マップ提供装置1250の受信部202は、予定位置情報を受信する。
S252において、電波マップ抽出部212は、保存部201に保存されている電波マップのうち、予定位置情報に対応する基準位置情報を含む電波マップを抽出する。
S253において、送信部204は、S252で抽出した電波マップを電波マップ利用装置1150に送信する。
【0123】
S153において、電波マップ利用装置1150の受信部108は、電波マップを受信する。
S154において、遮蔽予測部111は、車両の移動予定位置において、移動可能な遮蔽体によって基地局との通信の遮蔽が発生すること、及びその遮蔽状況を予測して、予測遮蔽情報を生成する。
S155において、移動予定位置に対応する基準位置情報を判定する。
S156において、S154で予測した遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を判定する。
S157において、S155で判定した基準位置情報、及びS156で判定した基準遮蔽情報に対応する基準通信品質情報を特定する。
S158において、S157で特定した基準通信品質情報を用いて、通信制御部114は、無線通信部102における無線通信を制御する。
【0124】
3.第2の実施形態
第1の実施形態では、電波マップ利用装置としての車載装置が、車両の移動予定位置に基づいて、車両と基地局との通信の遮蔽を予測する構成を説明した。本実施形態では、車載装置に代えて、サーバ装置が、車両と基地局との通信の遮蔽を予測する構成を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0125】
(1)車載装置(プローブ情報送信装置2100、電波マップ利用装置2150)の構成
図8を用いて、本実施形態の車載装置の構成について説明する。図8に示すとおり、本実施形態の車載装置は、図2に示す車載装置とは異なり、遮蔽予測部111、電波マップ判定部112、及び通信品質特定部113を有しない。本実施形態のプローブ情報送信装置2100の構成は、第1の実施形態のプローブ情報送信装置1100の構成と同じであるので、説明は省略する。
【0126】
本実施形態の電波マップ利用装置2150の受信部108は、送信部106で送信した予定位置情報における基準通信品質情報を受信する。そして、保存部109は、受信部108で受信した基準通信品質情報を保存する。
【0127】
そして、通信制御部114は、保存部109に保存した基準通信品質情報に基づいて、無線通信部102における無線通信を制御する。
【0128】
(2)サーバ装置(電波マップ更新装置2200、電波マップ提供装置2250)の構成
図9を用いて、本実施形態のサーバ装置の構成について説明する。図9に示すとおり、本実施形態のサーバ装置は、図5に示すサーバ装置とは異なり、電波マップ抽出部212を備えていない。代わりに、本実施形態のサーバ装置は、遮蔽予測部213、電波マップ判定部214、及び通信品質特定部215を有する。本実施形態の電波マップ更新装置2200の構成は、第1の実施形態の電波マップ更新装置1200の構成と同じであるので、説明は省略する。以下に、本実施形態の電波マップ提供装置2250(「通信品質特定装置」に対応)の構成を説明する。なお、以下に示す通り、本実施形態の電波マップ提供装置2250は、遮蔽状況に応じて通信品質を特定する装置であるため、通信品質特定装置としても把握できる。
【0129】
本実施形態の電波マップ提供装置2250の受信部202は、車両の予定位置情報を電波マップ利用装置2150から受信する。つまり、本実施形態の受信部202は、予定位置情報取得部としても機能する。
【0130】
遮蔽予測部213は、受信部202で受信した車両の予定位置情報、及び当該車両とは異なる他車両の予定位置情報に基づいて、他車両等の移動可能な遮蔽体によって車両の無線通信部102と基地局との通信の遮蔽が発生することを予測し、その遮蔽状況(すなわち、予測遮蔽状況)を予測して予測遮蔽情報を生成する。本実施形態の遮蔽予測部213が遮蔽を予測する方法は、第1の実施形態と同様である。ただし、サーバ装置は、多くの車両、路側機等から、膨大なプローブ情報を収集、蓄積しているため、車載装置が遮蔽を予測する場合と比較して、より正確に遮蔽の発生、及び遮蔽状況を予測できる可能性がある。
【0131】
電波マップ判定部214は、受信部202で受信した予定位置情報に対応する電波マップの基準位置情報を判定する。電波マップ判定部214はさらに、遮蔽予測部213で予測した予測遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を判定する。
【0132】
通信品質特定部215は、電波マップ判定部214が判定した基準位置情報及び基準遮蔽情報に対応付けて保存された基準通信品質情報を特定する。
【0133】
送信部204は、通信品質特定部215で特定した基準通信品質情報を、電波マップ利用装置2150に送信する。
【0134】
(3)電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置2250及び電波マップ利用装置2150の動作
以下、図10のフローチャートを用いて、本実施形態の電波マップ利用プロセスにおける、電波マップ提供装置2250及び電波マップ利用装置2150の動作を説明する。なお、本実施形態の電波マップ生成プロセスは、第1の実施形態の電波マップ生成プロセスと同じであり、説明は省略する。
【0135】
本実施形態の電波マップ利用装置2150は、S351において、S151で取得した予定位置情報を電波マップ提供装置2250に送信する。
【0136】
S251において、電波マップ提供装置2250の受信部202は、予定位置情報を受信する。
S451において、遮蔽予測部213は、S251で受信した予定位置情報、及び他車両の予定位置情報に基づいて、移動可能な遮蔽体(例えば、他車両)によって車両の無線通信部102と基地局との通信の遮蔽が発生すること、及び遮蔽状況を予測する。
S452において、S251で受信した予定位置情報に対応する基準位置情報を判定する。
S453において、S451で予測した遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況を示す基準遮蔽情報を判定する。
S454において、S452で判定した基準位置情報、及びS453で判定した基準遮蔽情報に対応する基準通信品質情報を特定する。
S455において、S454で特定した基準通信品質情報を、電波マップ利用装置2150に送信する。
【0137】
S352において、電波マップ利用装置2150の受信部108は、電波マップ提供装置2250から基準通信品質情報を受信する。そして、S157において、通信制御部114は、受信した基準通信品質情報に基づいて、無線通信部102における無線通信を制御する。
【0138】
以上のとおり、本実施形態では、電波マップ利用装置2150は、車両の移動予定位置における遮蔽の予測、予測した遮蔽状況に対応する基準遮蔽状況の判定、及び基準通信品質情報の特定処理を行わず、これらの処理を電波マップ提供装置2250で行う。これにより、車載装置における処理負荷を低減することができる。
さらに、サーバ装置は、多くの車両のプローブ情報や走行計画を収集して蓄積しているため、蓄積データに基づいて遮蔽の予測を行うことにより、精度の高い予測を行うことができる。
【0139】
4.総括
以上、本発明の各実施形態におけるプローブ情報送信装置、電波マップ更新装置、電波マップ提供装置、電波マップ利用装置の特徴について説明した。
【0140】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0141】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0142】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0143】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0144】
各実施形態は、車両に搭載されるプローブ情報送信装置や電波マップ利用装置を前提としているが、本発明は、特許請求の範囲で特に限定する場合を除き、車両用以外の専用又は汎用の装置も含むものである。
【0145】
各実施形態では、各実施形態に開示のプローブ情報送信装置や電波マップ利用装置を車両に搭載する前提で説明したが、歩行者が所持する前提としてもよい。
【0146】
また、本発明の装置の形態の例として、以下のものが挙げられる。
部品の形態として、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
その他、通信機能を有するデバイス等を含み、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、カーナビゲーションシステムが挙げられる。
【0147】
また各装置に、アンテナや通信用インターフェースなど、必要な機能を追加してもよい。
【0148】
本発明の電波マップ更新装置や電波マップ提供装置は、各種サービスの提供を目的とするために用いられることが想定される。かかるサービスの提供に伴い、本発明の装置が使用され、本発明の方法が使用され、又は/及び本発明のプログラムが実行されることになる。
【0149】
加えて、本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0150】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明のプローブ情報送信装置や電波マップ利用装置は、主として自動車に搭載される車両用の電子制御装置として説明したが、自動二輪車、電動機付自転車、鉄道はもちろん、歩行者、船舶、航空機等、移動する移動体全般に適用することが可能である。
また、携帯電話やタブレット、ゲーム機等、様々な用途に用いられる装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0152】
107 予定位置情報取得部、108 受信部、109 保存部、111,213 遮蔽予測部、112,214 電波マップ判定部、113,215 通信品質特定部、114 通信制御部、201 保存部、202 受信部、204 送信部、210 判定部、211 更新部、1100,2100 プローブ情報送信装置、1150 電波マップ利用装置、1200,2200 電波マップ更新装置、2250 電波マップ提供装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10