(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20231219BHJP
H04L 12/40 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
H04L12/40 Z
(21)【出願番号】P 2020178966
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 雄基
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179888(JP,A)
【文献】特開2016-201740(JP,A)
【文献】特開2019-089382(JP,A)
【文献】特開2005-086692(JP,A)
【文献】特開2016-037211(JP,A)
【文献】特開2014-046777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103988(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
H04L 12/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の中継装置(3,4)と、
前記一つ以上の中継装置を介して接続される複数の伝送路(2)と、
それぞれが前記複数の伝送路のいずれかに接続される複数の端末装置(5)と、
を備え、
前記端末装置は、
当該端末装置を指定する起動情報が付与された管理用フレームを、前記伝送路を介して受信すると、指定機能が停止されたスリープ状態から前記指定機能を実行可能なウェイクアップ状態に、当該端末装置を遷移させるように構成されたトランシーバであるPN対応トランシーバ(51)と、
当該端末装置が前記管理用フレームの受信以外の要因でウェイクアップした場合、当該端末装置が属する起動グループの特定に必要な情報を前記起動情報として付与した前記管理用フレームを送信するように構成された起動処理部(53)と、
を備え、
前記中継装置の一つである管理中継装置(4)は、
前記管理用フレームを受信すると、前記起動情報の内容に関わらず、当該管理中継装置を前記スリープ状態から前記ウェイクアップ状態に遷移させるように構成されたトランシーバである一つ以上のPN非対応トランシーバ(41)と、
前記PN非対応トランシーバを介して受信した前記管理用フレームの前記起動情報、及び起動テーブルを用いて、該管理用フレームの送信元となった前記端末装置が属する前記起動グループ、及び該起動グループに対応づけられる対象伝送路を抽出し、抽出された前記起動グループに属する全ての前記端末装置を指定する前記起動情報を生成し、該起動情報が付与された前記管理用フレームを、前記対象伝送路に流す返送処理を実行するように構成された起動管理部(43)と、
を備え、
前記起動グループは、同時にウェイクアップさせる必要がある前記端末装置のグループであり、
前記対象伝送路は、前記起動グループに属する前記端末装置が接続された前記伝送路であり、
前記起動テーブルは、前記起動グループのそれぞれに対応づけられる前記対象伝送路を指定するための情報を列挙したテーブル情報である、
ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワークシステムであって、
前記管理中継装置は、前記PN非対応トランシーバを複数備え、
前記起動管理部は、前記返送処理として、前記対象伝送路に接続された前記PN非対応トランシーバを介して前記管理用フレームを送信するように構成された
ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のネットワークシステムであって、
前記管理中継装置以外の前記中継装置である通常中継装置を一つ以上備え、
前記伝送路のうち前記通常中継装置からみて前記管理中継装置に到る前記伝送路を上流伝送路とし、前記上流伝送路以外の前記伝送路を下流伝送路として、
前記通常中継装置は、前記上流伝送路との接続に前記PN対応トランシーバが用いられ、前記下流伝送路との接続に前記PN非対応トランシーバが用いられ、
前記起動管理部は、前記返送処理として、前記下流伝送路が前記対象伝送路である前記通常中継装置が起動されるように前記起動情報が設定された前記管理用フレームを送信するように構成された
ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のネットワークシステムであって、
前記通常中継装置のそれぞれには、個別の前記起動グループが割り当てられた
ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のネットワークシステムであって、
前記通常中継装置の少なくとも一つを補助管理装置(3a)とし、
前記補助管理装置は、
前記管理中継装置の前記起動管理部と同等の機能を有するように構成された補助起動部(33:S630)と、
前記管理中継装置の動作を監視する監視部(33:510~S580)と、
前記管理中継装置の異常が検出された場合、前記補助起動部を作動させることで、前記管理中継装置の機能を代行するように構成された代行制御部(33:S610)と、
を備えるネットワークシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のネットワークシステムであって、
前記監視部は、前記管理中継装置から前記伝送路に定期的に送信される信号の受信間隔が、予め設定された許容時間を超えた場合に、前記管理中継装置が異常であると判定する
ネットワークシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のネットワークシステムであって、
前記管理中継装置は、
トリガ信号を入力するように構成されたトリガ入力部(6)と、
前記トリガ信号が入力されると、全ての前記端末装置を起動するために用いられる前記起動情報が付与された前記管理用フレームである一斉起動フレームを送信し、該一斉起動フレームに対する前記端末装置からの応答として、前記端末装置のそれぞれから、グループ情報が付与された情報フレームを受信し、受信した前記グループ情報に基づいて前記起動テーブルを更新するように構成された更新部(43:S810,S830~S880)と、
を更に備え、
前記端末装置は、
前記一斉起動フレームを受信した場合、当該端末装置及び当該端末装置と同時にウェイクアップさせる他の前記端末装置を個々に識別する情報を前記グループ情報として用いて、前記情報フレームを送信するように構成された情報提供部(53:S210、S230~S240)を更に備える、
ネットワークシステム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のネットワークシステムであって、
前記端末装置及び前記中継装置は、CAN(登録商標)プロトコルに従って通信を行うように構成された
ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネットワークシステムに接続されたノードを個別に起動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には車載機器を制御するために多数の電子制御装置、いわゆるECUが搭載され、これらのECUが通信バスに接続されることによって、ECUをノードとするネットワークシステムが構築される。特許文献1には、この種のネットワークシステムにおいて、状況に応じて制御に不必要な一部のECUの機能を停止したスリープ状態にすることで、システム全体としての消費電力を低減するパーシャルネットワークという技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パーシャルネットワークにおいて、スリープ状態にあるECUは、通信バスを介して受信する起動用のフレームに、自ECUを指定する情報が示されている場合に、機能の制限がないウェイクアップ状態に遷移する。このため、パーシャルネットワークでは、フレームの送受信だけでなく、受信フレームに自ECUを指定する情報が含まれているか否かを判定して、自ECUのウェイクアップを指示する機能を有した複雑な構成のトランシーバを使用する必要があった。
【0005】
本開示の1つの局面では、パーシャルネットワークに対応したトランシーバの使用を抑制しつつ、パーシャルネットワークの機能を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ネットワークシステムであって、一つ以上の中継装置(3,4)と、複数の伝送路(2)と、複数の端末装置(5)と、を備える。伝送路は、一つ以上の中継装置を介して接続される。端末装置は、それぞれが複数の伝送路のいずれかに接続される。
【0007】
端末装置は、PN対応トランシーバ(51)と、起動処理部(53)と、を備える。PN対応トランシーバは、当該端末装置を指定する起動情報が付与された管理用フレームを、伝送路を介して受信すると、指定機能が停止されたスリープ状態から指定機能を実行可能なウェイクアップ状態に、当該端末装置を遷移させる。起動処理部は、当該端末装置が管理用フレームの受信以外の要因でウェイクアップした場合、当該端末装置が属する起動グループの特定に必要な情報を起動情報として付与した管理用フレームを送信する。
【0008】
中継装置の一つである管理中継装置(4)は、一つ以上のPN非対応トランシーバ(41)と、起動管理部(43)と、を備える。PN非対応トランシーバは、管理用フレームを受信すると、起動情報の内容に関わらず、当該管理中継装置をスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移させる。起動管理部は、PN非対応トランシーバを介して受信した管理用フレームの起動情報、及び起動テーブルを用いて、管理用フレームの送信元となった端末装置が属する起動グループ、及び起動グループに対応づけられる対象伝送路を抽出する。さらに起動管理部は、抽出された起動グループに属する全ての端末装置を指定する起動情報が付与された管理用フレームを、対象伝送路に流す返送処理を実行する。
【0009】
なお、起動グループは、同時にウェイクアップさせる必要がある端末装置のグループである。対象伝送路は、起動グループに属する端末装置が接続された伝送路である。起動テーブルは、起動グループのそれぞれに対応づけられる対象伝送路を指定するための情報を列挙したテーブル情報である。
【0010】
このような構成によれば、ウェイクアップした端末装置から送信される管理用フレームが管理中継装置に受信される。そして、管理中継装置が実行する返送処理によって返送される管理用フレームが、対象伝送路に到達するため、送信元の端末装置と同じ起動グループに属する全ての端末装置がウェイクアップする。
【0011】
このような手順で端末装置をウェイクアップすることにより、ネットワークシステムでは、パーシャルネットワークであるにも関わらず、管理中継装置にPN非対応トランシーバを用いることができる。なお、管理中継装置以外の中継装置は、管理中継装置に到る伝送路を上流伝送路、それ以外の伝送路を下流伝送路として、下流伝送路から受信する管理用フレームは、管理中継装置に受信させるために、そのまま上流伝送路に中継すればよい。このため、管理中継装置以外の中継装置でも、下流伝送路が接続されるトランシーバには、PN非対応トランシーバを用いることができる。すなわち、PN対応トランシーバの導入コストを抑えつつ、ウェイクアップする必要のない端末装置がウェイクアップすることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】上流バス及び下流バスの定義を示す説明図である。
【
図3】端末装置及び中継装置が保持する所属情報、及びNMフレームに付与される起動情報を例示する説明図である。
【
図5】管理中継装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】起動テーブルの内容を例示する説明図である。
【
図8】PN対応トランシーバが実行する起動制御の内容を示すフローチャートである。
【
図9】PN非対応トランシーバが実行する起動制御の内容を示すフローチャートである。
【
図10】端末装置のMCUが実行する起動維持処理のフローチャートである。
【
図11】中継装置のMCUが実行するフレーム中継処理のフローチャートである。
【
図12】管理中継装置のMCUが実行するフレーム返送処理のフローチャートである。
【
図13】第2実施形態のネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【
図14】予備機能を有する中継装置が実行する監視処理のフローチャートである。
【
図15】予備機能を有する中継装置が実行するメイン処理のフローチャートである。
【
図16】第3実施形態のネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【
図17】起動テーブルの内容を例示する説明図である。
【
図18】管理中継装置のMCUが実行するフレーム返信処理のフローチャートである。
【
図19】第4実施形態のネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【
図20】管理中継装置が実行するメイン処理のフローチャートである。
【
図21】端末装置のMCUが実行する起動関連処理のフローチャートである。
【
図22】端末装置の追加時におけるネットワークシステムの動作を例示するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1に示すネットワークシステム1は、複数のバス状伝送路(以下、バス)2と、複数の通常中継装置3と、一つの管理中継装置4と、複数の端末装置5とを備える。
【0014】
複数のバス2は、複数の通常中継装置3及び管理中継装置4を介して相互に接続され、ネットワークを形成する。各端末装置5は、複数のバス2のいずれかに接続される。以下では、通常中継装置3,管理中継装置4及び端末装置5を総称して、ノードとも呼ぶ。
【0015】
ネットワークシステム1は、ISO11898-6に規定されたCANプロトコル規格の通信制御に基づく給電制御手法であるパーシャルネットワークを形成する。CANは登録商標である。パーシャルネットワークでは、ノードを必要に応じて個別にウェイクアップ(すなわち、起動)又はスリープ(すなわち、休眠)させることで低消費電力を実現する。ノードは、ウェイクアップすることで、ノードに割り当てられた機能を制限されることなく利用可能な通常の動作状態となり、スリープすることで、利用可能な機能が制限された低消費電力の動作状態となる。
【0016】
管理中継装置4は、ネットワークシステム1全体の起動を管理する起動管理機能を有する。ここでは管理中継装置4をCGWとも表記する。また、起動管理機能を有さない通常中継装置3をGWとも表記する。特に、個々のGWを識別する必要がある場合は、GW1,GW2と表記する。GWは、Gatewayの略であり、CGWは、Central Gatewayの略である。以下では、
図2に示すように、GW及びCGWに接続されたバス2のうち、CGWに到るバス2を上流バスと呼び、上流バス以外を下流バスと呼ぶ。上流バスが上流伝送路に相当し、下流バスが下流伝送路に相当する。
【0017】
以下では、
図1に示すネットワークシステム1において、GW1の下流バスをBUS1、GW2の下流バスをBUS2、CGWの下流バスであり、且つ、GW1及びGW2の上流バスをBUS3と表記する。なお、端末装置5からみてBUS1~BUS3は、いずれも上流バスである。
【0018】
端末装置5は、ウェイクアップ時に、同時に起動する必要のある他の端末装置5と共に起動グループGrαを形成する。以下、BUSiに接続され、かつ、起動グループGrαに属する端末装置5を、ECU_iαで表す。複数の起動グループに属する端末装置5は、ECU_iαβ…で表す。但し、i=1,2,3,…、α,β=A,B,C,…である。ECUは、Electronic Control Unitの略である。例えば、ECU_1BCは、BUS1に接続され、かつ、二つの起動グループGrB及びGrCに属する端末装置5を意味する。
【0019】
GWiのそれぞれには、端末装置5とは、別の起動グループGriが割り当てられる。以下、起動グループGrαをECU起動グループ、起動グループGriをGW起動グループとも称する。
【0020】
ネットワークシステム1では、スリープ状態にあるノードをウェイクアップする際に、起動グループを指定する起動情報を含んだCANフレームであるNMフレームを使用する。NMは、Network Managementの略である。なお、NMフレームが管理用フレームに相当する。
【0021】
起動情報は、例えば、
図3に示すように設定される。DLCは、Data Length Codeの略であり、CANフレームにおけるデータ領域サイズをバイト単位で表す領域である。つまり、起動情報は、CANフレームのデータ領域に格納される。ここでは、説明を簡単にするため、DLCが1バイト(すなわち、8ビット)の場合を示す。起動情報を表す8ビットデータの各ビットに起動グループが対応づけられる。例えば、上位3ビットがGW起動グループGr1~Gr3を表し、下位5ビットがECU起動グループGrA~GrEを表す。但し、
図1に示すネットワーク構成では、Gr3,GrD,GrEは未使用となる。
【0022】
NWフレームに設定される起動情報は、起動対象となる起動グループに対応するビットが1に設定される。
[1-1-1.通常中継装置の構成]
起動管理機能を有さない通常中継装置3であるGWiは、
図4に示すように、上流用トランシーバ31と、下流用トランシーバ32と、MCU33と、電源リレー34と、を備える。MCUは、Micro Control Unitの略である。
【0023】
上流用トランシーバ31及び下流用トランシーバ32は、常時給電を受け、MCU33は、電源リレー34を介して給電を受ける。
上流用トランシーバ31は、パーシャルネットワークの規格に対応したトランシーバ、すなわち、PN対応トランシーバであり、上流バスであるBUS3を介して通信フレームを送受信する。
【0024】
上流用トランシーバ31は、送受信回路311と、プロトコル検出器312と、フレーム構成メモリ313と、メッセージフィルタ314とを備える。
送受信回路311は、MCU33から供給される送信データに従ってCANプロトコルに従った通信フレームを生成して上流バスに送信する。送受信回路311は、上流バスを介して受信した通信フレームから受信データを抽出してMCU33に供給する。
【0025】
プロトコル検出器312は、送受信回路421にて受信された通信フレームが、ノードをウェイクアップする制御に用いるNMフレームである場合に、NMフレームのデータ領域に示された起動情報を抽出して、メッセージフィルタ314に供給する。
【0026】
フレーム構成メモリ313には、自ノードが属する起動グループを示す所属情報が記憶される。フレーム構成メモリ313の記憶内容は、MCU33によって書き換え可能に構成されてもよい。所属情報は、起動情報と同じデータ長を有し、各ビットの割当も、起動情報と同様である。そして、フレーム構成メモリ313に記憶される所属情報は、自ノードが属する起動グループに対応するビットが1に設定される。但し、GWは、一つのGW起動グループにだけ所属できる。
【0027】
メッセージフィルタ314は、NMフレームから抽出される起動情報と、フレーム構成メモリ313に記憶された所属情報とを比較することで、起動情報に自ノードを指定する情報が含まれるか否かを判定する。例えば、起動情報と所属情報とをビット毎に論理積演算を行い、演算結果が非ゼロであれば、自ノードを指定する情報が含まれると判定する。メッセージフィルタ314は、起動情報に自ノードを指定する情報が含まれると判定した場合、起動指令を電源リレー34に出力する。
【0028】
下流用トランシーバ32は、パーシャルネットワークの規格に非対応のトランシーバ、すなわち、PN非対応トランシーバであり、下流バスであるBUSiを介して信号を送受信する。
【0029】
下流用トランシーバ32は、送受信回路321とプロトコル検出器322とを備える。送受信回路321及びプロトコル検出器322は、上流用トランシーバ31を構成する送受信回路311及びプロトコル検出器312と同様の機能を有する。つまり、下流用トランシーバ32は、上流用トランシーバ31からフレーム構成メモリ313及びメッセージフィルタ314を省略した構造を有する。
【0030】
但し、プロトコル検出器322は、NMフレームの受信を検出すると、起動情報を抽出することなく、電源リレー34に対して起動指令を出力する。
電源リレー34は、上流用トランシーバ31及び下流用トランシーバ32からの起動指令(以下、外部要因の起動指令)によって、MCU33への給電を開始することで、MCU33を起動する。
【0031】
MCU33は、CPUと、例えば、ROM又はRAM等の半導体メモリ(以下、メモリ)と、を備える。MCU33は、給電が開始されて起動すると、フレーム中継処理を少なくとも実行する。メモリには、フレーム中継処理を実行するためのプログラムの他、フレーム構成メモリ313にも記憶される所属情報が少なくとも記憶される。
【0032】
つまり、スリープ状態にあるGWは、下流バスを介してNMフレームを受信すると、起動情報の内容に関わらずMCU33をウェイクアップし、受信したNMフレームを上流バスに中継する。また、スリープ状態にあるGWは、上流バスを介してNMフレームを受信すると、起動情報に自ノードを指定する情報が含まれる場合にMCU33をウェイクアップし、受信したNMフレームを下流バスに中継する。
【0033】
[1-1-2.管理中継装置の構成]
図5に示すように、起動管理機能を有する管理中継装置4であるCGWは、下流用トランシーバ42と、MCU43と、電源リレー44とを備える。下流用トランシーバ42、MCU43、及び電源リレー44は、基本的には、
図4を用いて説明したGWの下流用トランシーバ32、MCU33、及び電源リレー34と同様の機能を有する。つまり、CGWは、GWから上流用トランシーバ31を省略した構造を有する。当然、下流用トランシーバ42を構成する送受信回路421及びプロトコル検出器422も、下流用トランシーバ32を構成する送受信回路321及びプロトコル検出器322と同様の機能を有する。但し、下流用トランシーバ42には、BUS3が接続される。
【0034】
電源リレー44は、下流用トランシーバ42からのみ起動指令が供給される。従って、CGWの電源リレー44では、ウェイクアップ要因をMCU43に通知する機能は省略されてもよい。
【0035】
MCU43は、起動管理機能を実現するための処理であるフレーム返信処理を少なくとも実行する。MCU43のメモリには、フレーム返信処理を実行するためのプログラムの他、受信したNMフレームから抽出される起動情報の内容を書き換える際に使用する起動テーブルが少なくとも記憶される。
【0036】
起動テーブルは、
図7に示すように、ECU起動グループGrαと、ECU起動グループGrαの対象伝送路にNMフレームを流すために、ウェイクアップさせる必要のある全てのGWのGW起動グループGriとの対応関係を示す。対象伝送路とは、ECU起動グループGrαに属するECUが接続された全てのバスをいう。
【0037】
例えば、ECU起動グループGrAには、BUS1に接続されたECU_1A、BUS3に接続されたECU_3ABが含まれる。この場合、CGWに直接接続されたBUS3以外にBUS1にもNMフレームを流す必要があるため、ECU起動クループGrAには、GW1が属するGW起動グループGr1が対応づけられる。同様に、ECU起動グループGrBには、GW起動グループGr1,Gr2が対応づけられ、ECU起動グループGrCには、GW起動グループGr1が対応づけられる。
【0038】
CGWは、NMフレームを受信すると起動情報の内容に関わらずMCU43をウェイクアップし、フレーム返送処理を実行する。フレーム返送処理では、受信したNMフレームの起動情報(すなわち、送信元ECUの所属情報)に示されたECU起動グループGrαに属する全てのECUがNMフレームを受信できるように、起動テーブルを用いて起動情報を書き換えたNMフレームを送信する。
【0039】
[1-1-3.端末装置の構成]
端末装置5であるECUは、
図6に示すように、上流用トランシーバ51と、MCU53と、電源リレー54と、状況検知部55とを備える。上流用トランシーバ51、MCU53、及び電源リレー54は、基本的には、
図4を用いて説明したGWの上流用トランシーバ31、MCU33、及び電源リレー34と同様の機能を有する。当然、上流用トランシーバ51を構成する送受信回路511、プロトコル検出器512、フレーム構成メモリ513、及びメッセージフィルタ514も、上流用トランシーバ31を構成する送受信回路311、プロトコル検出器312、フレーム構成メモリ313、及びメッセージフィルタ314と同様の機能を有する。つまり、ECUは、GWから下流用トランシーバ32を省略して、状況検知部55を追加した構造を有する。但し、上流用トランシーバ31は、BUS1~3のいずれかに接続される。
【0040】
状況検知部55は、自ノードに割り当てられた検知機能を用いて、自ノードのウェイクアップを必要とする状況であるか否かを判定し、ウェイクアップを必要とする状況である場合に、電源リレー54に対して起動指令(以下、内部要因による起動指令)を出力する。
【0041】
電源リレー54は、上流用トランシーバ51又は状況検知部55からの起動指令によって、MCU53への給電を開始することで、MCU53をウェイクアップする。また、電源リレー54は、ウェイクアップ要因を、MCU53に通知する。ここでのウェイクアップ要因は、上流用トランシーバ51からのNMフレーム受信(すなわち、外部要因)による起動指令、及び状況検知部55からの内部要因による起動指令のいずれかである。
【0042】
MCU53は、ECU起動維持処理を少なくとも実行する。MCU53のメモリには、ECU起動維持処理を実行するためのプログラムの他、フレーム構成メモリ513にも記憶される所属情報が少なくとも記憶される。
【0043】
スリープ状態にあるECUは、NMフレームを受信し、起動情報に自ノードを指定する情報が含まれる場合、又は、ECU内で自ノードをウェイクアップさせる必要のある状況が検出された場合に、MCU53を起動する。
【0044】
[1-2.トランシーバでの起動制御]
[1-2-1.PN対応トランシーバ]
各ノードの上流用トランシーバ31,51、すなわち、PN対応トランシーバにて実行される起動制御の内容を、
図8のフローチャートを用いて説明する。起動制御は、ノードへの給電が行なわれている間、繰り返し実行される。ここでは、GWの上流用トランシーバ31を例にして具体的に説明する。
【0045】
S110では、上流用トランシーバ31は、NMフレームを受信したか否かを判定する。この判定は、プロトコル検出器312によって行われる。上流用トランシーバ31は、NMフレームを受信していない場合は、同ステップを繰り返すことで待機し、NMフレームを受信すると、S120に処理を移行する。
【0046】
S120では、上流用トランシーバ31は、受信したNMフレームのデータ領域に示された起動情報に、自ノードが属する起動グループが含まれているか否か、すなわち自ノードが起動対象であるか否かを判定する。上流用トランシーバ31は、自ノードが起動対象であると判定した場合は、処理をS130に移行し、起動対象ではないと判定した場合は処理をS110に戻す。
【0047】
S130では、上流用トランシーバ31は、電源リレー34に起動指令を出力することで、MCUを起動する。
S120及びS130の処理は、メッセージフィルタ314によって行われる。
【0048】
起動指令を受けた電源リレー34は、MCU33への給電を開始すると共に、上流用トランシーバ31からの起動指令によるウェイクアップであることをMCU33に通知する。
これにより、ウェイクアップしたMCU33による処理が実行される。
【0049】
続くS140では、上流用トランシーバ31は、起動維持条件が成立しているか否かを判定し、起動維持条件が成立していれば、同ステップを繰り返すことで待機し、起動維持条件が不成立であれば、処理をS150に移行する。具体的には、予め設定された許容時間以内の間隔で、自ノードを起動対象とするNMフレームの受信が継続されていれば、起動維持条件が成立していると判定する。
【0050】
S150では、上流用トランシーバ31は、電源リレー44への起動指令の出力を停止して、処理を終了する。これにより、MCU33への給電が停止されることでスリープする。
【0051】
S140及びS150の処理は、プロトコル検出器312及びメッセージフィルタ314によって実行される。
[1-2-2.PN非対応トランシーバ]
各ノードの下流用トランシーバ32,42、すなわち、PN非対応トランシーバにて実行される起動制御の内容を、
図9のフローチャートを用いて説明する。起動制御は、ノードへの給電が行なわれている間、繰り返し実行される。ここでは、GWの下流用トランシーバ32を例にして具体的に説明する。
【0052】
下流用トランシーバ32での起動制御は、
図8を用いて説明した上流用トランシーバ31での起動制御と比較して、S120が省略される以外は、同様である。
つまり、下流用トランシーバ32では、NWフレームを受信した場合に、起動情報の内容に関わらず起動指令を出力する。
【0053】
起動指令を受けた電源リレー34は、MCU33への給電を開始すると共に、下流用トランシーバ32からの起動指令によるウェイクアップであることをMCU33に通知する。
また、下流用トランシーバ32では、S140において、許容時間以内の間隔でNMフレームが受信され続けていれば起動情報の内容に関わらず起動維持条件が成立していると判定する。
【0054】
[1-3.MCUでの処理]
前述した上流用トランシーバ31,51及び下流用トランシーバ32,42での起動制御により、各ノード(すなわち、GW、CGW及びECU)では、以下の状況でMCU33,43,53が起動する。
【0055】
上流用トランシーバ31及び下流用トランシーバ32をいずれも有するGWは、下流バスを介してNMフレームを受信した場合は、起動情報の内容に関わらずウェイクアップする。また、GWは、上流バスを介してNMフレームを受信した場合は、自ノードが起動対象のときだけウェイクアップする。なお、GWでは、上流用トランシーバ31及び下流用トランシーバ32のいずれからの起動指令がウェイクアップ要因であるかを示す情報が、電源リレー34からMCU33に通知される。
【0056】
下流用トランシーバ42だけを有するCGWは、NMフレームを受信した場合、起動情報の内容に関わらずウェイクアップする。
上流用トランシーバ51だけを有するECUは、NMフレームを受信した場合、自ノードが起動対象のときだけウェイクアップする。但し、ECUは、状況検知部55にてネットワークシステム1を起動すべき状況(すなわち、内部要因)が検出された場合もウェイクアップする。従って、ECUでは、NMフレームの受信、又は内部要因のいずれがウェイクアップ要因であるかを示す情報が、電源リレー54からMCU53に通知される。
【0057】
[1-3-1.ECUの起動維持処理]
ECUにおけるMCU53がウェイクアップ時に実行する起動維持処理を、
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
S210では、MCU53は、電源リレー54から通知される情報に基づき、ウェイクアップ要因が内部要因であるか否かを判定する。MCU53は、ウェイクアップ要因が内部要因であると判定した場合は処理をS220に移行し、内部要因ではなく外部要因(すなわち、NMフレームの受信)であると判定した場合は処理を終了する。
【0059】
S220では、MCU53は、自ノードの所属情報を起動情報として設定したNMフレームを、上流用トランシーバ51を介して送信して、処理を終了する。但し、NMフレームの送信は、予め設定されたスリープ条件が成立するまで、許容時間以内の周期で繰り返し実行される。
【0060】
[1-3-2.GWのフレーム中継処理]
GWにおけるMCU33がウェイクアップ中に実行するフレーム中継処理を、
図11のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
S310では、MCU33は、上流用トランシーバ31がNMフレームを受信したか否かを判定し、受信していれば処理をS320に移行し、受信していなければ処理をS330に移行する。
【0062】
S320では、MCU33は、上流バスを介して受信したNMフレーム、すなわち、CGWが送信元となるNMフレームを、下流バスに送信する処理を実行して、処理をS330に進める。
S330では、MCU33は、下流用トランシーバ32がNMフレームを受信したか否かを判定し、受信していれば処理をS340に移行し、受信していなければ処理を終了する。
S340では、MCU33は、下流バスを介して受信したNMフレーム、すなわち、いずれかのECUが送信元となるNMフレームを、上流バスに送信して処理を終了する。
【0063】
[1-3-3.CGWのフレーム返送処理]
CGWにおけるMCU43がウェイクアップ時に実行するフレーム返送処理を、
図12のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
S410では、MCU43は、受信したNMフレームのデータ領域に示された起動情報、すなわち、送信元ECUの所属情報を抽出する。
続くS420では、MCU43は、S410で抽出された所属情報が示すECU起動グループGrαを用い、起動テーブルを参照することで、GW起動グループGriを特定する。
【0065】
続くS430では、MCU43は、S410で抽出された所属情報と、S420で特定されたGW起動グループGriの情報をマージすることで、返送用の起動情報を生成する。
続くS440では、MCU43は、S430で生成された返送用の起動情報をデータ領域に設定したNMフレームである返送NMフレームを送信して、処理を終了する。
【0066】
[1-4.動作]
内部要因でECU_2Bがウェイクアップした場合の動作を、
図1及び
図3を用いて説明する。なお、初期状態では、全てのノードがスリープ状態にあるとする。
【0067】
ウェイクアップしたECU_2Bから、
図3の最上段に示すように、ECU2Bが所属するECU起動グループGrBを示す起動情報が設定されたNMフレームが、上位バスであるBUS2に送信される。
【0068】
BUS2はGW2にとっては下位バスであるため、BUS2上のNMフレームを受信したGW2は、起動情報の内容に関わらずウェイクアップし、起動情報を加工することなく、そのまま上流バスであるBUS3に送信する。
【0069】
BUS3はGW1,ECU_3AB,ECU_3Cにとっては上位バスである。BUS3上のNMフレームの起動情報には、ECU_3ABの所属情報(すなわち、ECU起動グループGrB)が含まれ、GW1及びECU_3Cの所属情報が含まれない。このため、ECU_3ABはウェイクアップし、GW1及びECU_3Cはスリープ状態を維持する。
【0070】
BUS3はCGWにとっては下位バスである。BUS3上のNMフレームを受信したCGWは、起動情報の内容に関わらずウェイクアップし、起動情報を加工して、BUS3に返送するフレーム返送処理を実行する。具体的には、受信した起動情報に示されたECU起動グループGrBは、テーブル情報にてGW起動グループGr1,Gr2に対応付けられる。このため、
図3の2段目に示すように、CGWから送信される返送NMフレームの起動情報は、ECU起動グループGrBに加えて、GW起動グループGr1,Gr2が設定された内容となる。
【0071】
BUS3は、BUS3に接続されたCGW以外のいずれのノードにとっても上位バスである。BUS3上の返送NMフレームの起動情報には、GW1、GW2、及びECU_3ABの所属情報が含まれ、ECU_3Cの所属情報は含まれない。返送NMフレームを受信したECU_3ABは、すでにウェイクアップしているため、ウェイクアップ状態が維持される。返送NMフレームを受信したGW1,GW2は、ウェイクアップし、起動情報を加工することなくそのまま返送NMフレームをBUS1及びBUS2に送信する。ECU_3Cはスリープ状態を維持する。
【0072】
BUS1は、BUS1に接続されたいずれのECUにとっても上位バスである。BUS1上の返送NMフレームの起動情報には、ECU_1BCの所属情報が含まれ、ECU_1Aの所属情報が含まれない。返送NMフレームの受信により、ECU_1BCはウェイクアップし、ECU_1Aは、スリープ状態が維持される。
【0073】
BUS2は、BUS2に接続されたECU_2Bにとって上位バスである。BUS2上の返送NMフレームの起動情報には、ECU_2Bの所属情報が含まれる。返送NMフレームを受信したECU_2Bは、すでにウェイクアップしているため、ウェイクアップ状態が維持される。
【0074】
これにより、ECU起動グループGrBに所属する全てのECUがウェイクアップする。
以後、ECU_2Bは、自ノードがスリープ状態に遷移するまでの間、NMフレームを周期的に送信することで、ECU起動グループGrBに所属する全てのECUのウェイクアップ状態が維持される。
【0075】
[1-5.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)ネットワークシステム1では、GW(すなわち、通常中継装置3)は、下流バスからのNMフレームを起動情報の内容に関わらず上流バスに中継する。つまり、ECU(すなわち、端末装置5)から送信されたNMフレームを、そのままCGW(すなわち、管理中継装置4)に受信させる。CGWは、受信したNMフレームの起動情報、すなわち、送信元となったECUの所属情報に基づき、起動テーブルを用いてW起動グループGriを特定し、起動情報に追加して返送NMフレームを送信する。
【0076】
このような手順でECUをウェイクアップすることにより、ネットワークシステム1では、パーシャルネットワークであるにも関わらず、GW及びCGWの下流用トランシーバ32,42として、PN非対応トランシーバを用いることができる。すなわち、PN対応トランシーバの導入コストを抑えつつ、ウェイクアップする必要のないGW、ECUがウェイクアップすることを回避できる。
【0077】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0078】
前述した第1実施形態では、管理中継装置4だけが起動管理機能を有する。これに対し、第2実施形態では、管理中継装置4に加えて、通常中継装置3の一つが起動管理機能と同等の予備機能を備える。予備機能を有する通常中継装置を補助管理装置3aという。管理中継装置4の異常が検出された場合に、補助管理装置3aが管理中継装置4の機能を代行する点で、第1実施形態と相違する。
【0079】
図13に示すように、第2実施形態のネットワークシステム1aでは、GW2が補助管理装置3aであり、以下では、予備機能付GWとも表記する。
予備機能付GWとCGWは、バス2とは異なる信号線7で接続される。信号線7は、予備機能付GWがCGWの動作を監視するために用いられる。信号線7は、トランシーバ31,42を介することなく、予備機能付GWのMCU33及びCGWのMCU43が有する入出力ポートを介して直接接続される。なお、信号線7は、シリアル通信用の簡易な通信回路に接続されてもよい。
【0080】
CGWのMCU43は、信号線7を介してPingを送信する。Pingは、例えば、予め設定された反転周期で、信号レベルが、定期的にハイレベル、ロウレベルの間で切り替わる信号である。
【0081】
予備機能付GWの上流用トランシーバ31は、第1実施形態と同様にPN対応トランシーバである。但し、MCU33からの指示に従って、メッセージフィルタ314の機能を無効にすることで、下流用トランシーバ32と同等の機能を有するトランシーバとして動作させることができるように構成される。
【0082】
予備機能付GWのMCU33は、
図11を用いて説明したフレーム中継処理に代えてメイン処理を実行する。予備機能付GWのMCU33は、更に、CGW監視処理を実行する。従って、予備機能付GWのMCU33のメモリには、メイン処理及びCGW監視処理を実行するためのプログラムの他、フレーム構成メモリ313にも記憶される所属情報、及びCGWが有する起動テーブルと同様の起動テーブルが記憶される。
【0083】
予備機能付GWの電源リレー34は、上流用トランシーバ31及び下流用トランシーバ32からの起動指令によってMCU33への給電を行う。更に、予備機能付GWの電源リレー34は、Pingの反転周期より短く設定された時間間隔で定期的にMCU33への給電を行う。また、予備機能付GWの電源リレー34は、上流用トランシーバ31又は下流用トランシーバ32からの起動指令によるウェイクアップであるか、定期的なウェイクアップであるかを表す情報をMCU33に通知する。通知の方法としては、例えば、電源リレー34からの書き込み、及びMCU33からの読み出しが可能なレジスタに、ウェイクアップ要因を示すフラグを設定することが考えられる。
【0084】
[2-2.処理]
[2-2-1.CGW監視処理]
予備機能付GWのMCU33が、定期的なウェイクアップ時に実行するCGW監視処理を、
図14のフローチャートを用いて説明する。ネットワークシステム1aの起動時に、本処理で使用する故障フラグは、オフに設定され、Pingの受信間隔を測定するタイマーカウンタはリセットされる。
【0085】
S510では、MCU33は、故障フラグがセットされているか否かを判定し、セットされていなければ、処理をS520に移行し、セットされていれば処理をS570に移行する。
【0086】
S520では、MCU33は、Pingの信号レベルが反転しているか否かを判定し、判定していなければ、処理をS530に移行し、判定していれば処理をS560に移行する。
【0087】
S530では、MCU33は、タイマーカウンタをカウントアップする。
続くS540では、MCU33は、タイマーカウンタがタイムアウトしたか否かを判定し、タイムアウトしていれば、CGWの動作に異常が検出されたとして、処理をS550に移行し、タイムアウトしていなければ、処理を終了する。CGW監視処理が実行される時間間隔が、例えば、Pingの反転周期の0.6~0.9倍程度に設定されている場合、タイマーカウンタが3以上であればタイムアウトと判定する。
【0088】
S550では、MCU33は、故障フラグをセットすると共に、上流用トランシーバ31が、下流用トランシーバ32と同等のPN非対応トランシーバとして作動するように設定を切り替えて、処理を終了する。
【0089】
S560では、MCU33は、タイマーカウンタをリセットして処理を終了する。
S570では、MCU33は、S520と同様に、Pingの受信レベルが反転したか否かを判定し、信号レベルが反転していれば、CGWの正常な動作が確認されたとして、処理をS580に移行し、信号レベルが反転していなければ処理を終了する。
【0090】
S580では、MCU33は、故障フラグをリセットすると共に、上流用トランシーバ31がPN対応トランシーバとして作動するように設定を切り替え、更に、タイマーカウンタをリセットして処理を終了する。
S510~S580が監視部に相当する。
【0091】
[2-2-2.予備機能付GWメイン処理]
予備機能付GWのMCU33が実行する予備機能付GWメイン処理を、
図15のフローチャートを用いて説明する。
【0092】
S610では、MCU33は、故障フラグがセットされているか否かを判定し、故障フラグがセットされていなければ、処理をS620に移行し、故障フラグがセットされていれば、処理をS630に移行する。
【0093】
S620では、MCU33は、フレーム中継処理を実行して処理を終了する。フレーム中継処理は、
図11を用いて説明した内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。
S630では、MCU33は、フレーム返送処理を実行して処理を終了する。フレーム返送処理は、
図12を用いて説明した内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0094】
つまり、予備機能付GWは、故障フレームがセットされていない場合は、GWとして機能し、故障フレームがセットされている場合は、CGWとして機能する。
S610が代行制御部に相当し、S630が補助起動部に相当する。
【0095】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
(2a)ネットワークシステム1aによれば、CGWの異常が検出された場合、予備機能付GWがCGWの機能を代行するため、システム全体が機能停止することを抑制できる。
【0096】
[3.第3実施形態]
[3-1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0097】
前述した第1実施形態では、CGW及びGW1,2は、いずれもBUS3に接続され、GWのウェイクアップ/スリープ状態を制御することで、所望のバス2に返送NMフレームを流している。これに対し、第3実施形態では、CGWに複数のトランシーバを備え、返送NMフレームの送信に用いるトランシーバを選択することで、トランシーバに接続された所望のバス2に返送NMフレームを流す点で、第1実施形態と相違する。
【0098】
図16に示すように、第3実施形態のネットワークシステム1bは、管理中継装置4bの構成が第1実施形態とは異なる。管理中継装置4b(以下、CGW)は、複数の下流用トランシーバ42を備える。以下、CGWが有する複数のトランシーバをTr1~Tr3と表記する。
【0099】
管理中継装置4bにおいて、電源リレー44bは、トランシーバTr1~Tr3からの起動指令によって、MCU43への給電を開始することで、MCU43をウェイクアップする。
【0100】
Tr1には、BUS1を下流バスとするGW1の上流バスが接続される。Tr2には、BUS2を下流バスとするGW2の上流バスが接続される。Tr3には、BUS3が接続される。
【0101】
GW1,GW2は、上流バスに接続されるトランシーバが、下流用トランシーバ32と同じPN非対応トランシーバで構成される。つまり、GW1、GW2は、下流バスからNMフレームを受信した場合、起動情報の内容に関わらず上流バスへ中継するだけでなく、上流バスからNMフレームを受信した場合も、起動情報の内容に関わらず下流バスへ中継する。なお、GW1,GW2は省略されてもよい。
【0102】
ネットワークシステム1bにおいて、起動情報の各ビットには、ECU起動グループGrαではなく、個々のECUが割り当てられる。各ECUは、所属情報として、自ノードに割り当てられたビットが1に設定されたECU識別情報を有する。
【0103】
CGWが有する起動テーブルには、
図17に示すように、ECU起動グループGrαと、その起動グループに属する全てのECUのECU識別情報との対応に加えて、ECU起動グループGrαと送信先トランシーバTriとの対応が示される。
【0104】
ECUでは、内部要因でウェイクアップした場合、NMフレームに設定する起動情報として自ノードに割り当てられたECU識別情報が用いられる。
[3-2.CGWのフレーム返送処理]
次に、CGWのMCU43が、
図12を用いて説明したフレーム返送処理に代えて実行するフレーム返送処理について、
図18のフローチャートを用いて説明する。
【0105】
S710では、MCU43は、受信したNMフレームに示された起動情報(すなわち、送信元ECUのECU識別情報)を抽出する。
続くS720では、MCU43は、S710で抽出されたECU識別情報を用いて、起動テーブルを参照し、送信元ECUが所属するECU起動グループGrαを特定する。
【0106】
続くS730では、MCU43は、S720で特定されたECU起動グループGrαに属する全てのECUのECU識別情報をマージすることで、返送用の起動情報を生成する。
続くS740では、MCU43は、S720で特定されたECU起動グループGrαを用いて、起動テーブルを参照することで、返送NMフレームの送信に使用するトランシーバTriを選択する。
【0107】
続くS750では、MCU43は、S730で生成された返送用の起動情報を含んだ返送NMフレームを、S740で選択された全てのトランシーバTriを介して送信して、処理を終了する。
【0108】
ここでは、起動情報の各ビットに、個々のECUを割り当てているが、第1実施形態と同様に、ECU起動グループを割り当ててもよい。本実施形態において、起動情報の各ビットにECU起動グループを割り当てた場合、CGWは、受信したNMフレームの起動情報を、加工することなくそのまま返送NMフレームの起動情報として用いることができる。
【0109】
[3-3.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0110】
(3a)ネットワークシステム1bでは、BUS1~BUS3が、CGWが有する異なるトランシーバTr1~Tr3のいずれかにそれぞれ接続される。このため、返送NMフレームの送信に用いるトランシーバTriを選択することで、第1実施形態においてGWのウェイクアップ/スリープを制御する場合と同様の効果を得ることができる。
【0111】
(3b)ネットワークシステム1bでは、GW1,GW2において、下流用トランシーバだけでなく、上流用トランシーバにもPN非対応トランシーバを用いることができるため、システム構成を簡略化できる。
【0112】
[4.第4実施形態]
[4-1.第3実施形態との相違点]
第4実施形態は、基本的な構成は第3実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0113】
図19に示すように、第4実施形態のネットワークシステム1cでは、管理中継装置4c(以下、CGW)は、登録スイッチ6を備え、登録スイッチ6の状態は、電源リレー44cに入力される。
【0114】
電源リレー44cは、トランシーバTr1~Tr3からの起動指令に加えて登録スイッチ6が押下された場合にも、MCU43をウェイクアップする。また、電源リレー44cは、ウェイクアップ要因が、トランシーバTr1~Tr3からの起動指令であるか、登録スイッチ6の押下であるかを識別する情報をMCU43に通知する。
【0115】
ネットワークシステム1cは、GW1,GW2が省略され、Tr1にBUS1が直接接続され、Tr2にBUS2が直接接続されている。なお、GW1,GW2は、第3実施形態の場合と同様に接続されてもよい。
【0116】
[4-2.処理]
[4-2-1.CGWメイン処理]
次に、CGWのMCU43が、
図18を用いて説明したフレーム返送処理に代えて実行するCGWメイン処理を、
図20のフローチャートを用いて説明する。
【0117】
S810では、MCU43は、ウェイクアップ要因が登録スイッチ6の押下による起動であるか否かを判定する。MCU43は、スイッチ押下による起動であると判定した場合は、処理をS830に移行し、スイッチ押下による起動ではなく、NMフレームの受信による起動であると判定した場合は、処理をS820に移行する。
【0118】
S820では、MCU43は、フレーム返送処理を実行して、処理を終了する。フレーム返送処理は、
図18を用いて説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
S830では、MCU43は、起動情報にて全ECUを指定したNMフレームを送信する。
【0119】
続くS840では、MCU43は、一定期間待機して、NMフレームに対する各ECUからの返信される情報フレームを受信する。
返信される情報フレームには、ECU識別情報又はグループ情報を含む情報が示される。グループ情報とは、自ノードのECU識別情報に、自ノードの通信相手となるノードのECU識別情報をマージした情報である。
【0120】
続くS850では、MCU43は、各ECUから返信された情報フレームから情報を抽出し、抽出された情報(以下、抽出情報)に、起動テーブルに登録されていない未知のECU識別情報が含まれているか否かを判定する。MCU43は、抽出情報に未知のECU識別情報が含まれていないと判定した場合は処理を終了し、抽出情報に未知の識別情報が含まれていると判定した場合は処理をS860に移行する。
【0121】
S860では、MCU43は、抽出情報に既知のECU識別情報が含まれているか否かを判定し、含まれていれば処理をS870に移行し、含まれていなければ処理をS880に移行する。
【0122】
S870では、MCU43は、抽出情報に示された全てのECU識別情報から特定されるECUによって、新たなECU起動グループを生成して起動テーブルに登録して、処理を終了する。
【0123】
S880では、MCU43は、抽出情報に示されたECU識別情報から特定されるECUを、起動テーブルにおける「グループなし」のECU起動グループに登録して、処理を終了する。「グループなし」のECU起動グループとは、自身のウェイクアップ時には、他のすべてのECUをウェイクアップさせる必要のあるECUを登録するためのグループである。
S810、S830~S880が更新部に相当する。
【0124】
[4-2-2.ECUメイン処理]
ECUのMCU53が、
図10を用いて説明した起動維持処理に代えて実行する起動維持処理を、
図21のフローチャートを用いて説明する。
図10で説明した、フローチャートと比較して、S210で否定判定された場合の処理として、S230~S240が追加されている。
【0125】
S210では、MCU53は、ウェイクアップ要因が内部要因であるか否かを判定し、内部要因でなく、NMフレームの受信によるウェイクアップであると判定した場合は、処理をS230に移行する。
【0126】
S230では、MCU53は、自ノードのECU識別情報と、自ノードの通信相手となるノードのECU識別情報をマージしたグループ情報を生成する。
S240では、MCU53は、S230で生成したグループ情報を含んだ情報フレームを送信して、処理を終了する。
【0127】
なお、S230におけるグループ情報を生成する処理は、ネットワークシステム1cに、新規にECUを追加した後の最初のウェイクアップ時に行ない、2回目のウェイクアップからは、自ノードのECU識別情報を情報フレームに載せて送信するようにしてもよい。
S210、S230~S240が情報提供部に相当する。
【0128】
[4-3.動作]
ネットワークシステム1cに、新規のECUを追加する場合、まず、起動情報を表す各ビットのうち未使用のビットを選択して自ノードの識別情報に設定する。
図22では、起動情報の上位6ビットが既存のECUに割り当てられ、下位2ビットが未使用の状態であり、新規のECUの識別情報として最下位ビットを用いるものとする。また、ECU_2Cを新規に追加し、通信相手がECU_1BCであるとする。
【0129】
次に、追加するECUをバス2に接続して、登録スイッチ6を押下する。登録スイッチ6がトリガ入力部に相当し、登録スイッチ6の状態を表す信号がトリガ信号に相当する。
登録スイッチ6が押下されると、CGWのMCU43がウェイクアップし、CGWからは、起動情報にて全てのECUを指定したNMフレームが送信される。この全てのECUを指定したNMフレームが一斉起動フレームに相当する。
【0130】
ECUは、既存であるか新規であるかに関わらず、NMフレームを受信するとウェイクアップして、自身のECU識別情報と、自身の通信相手となるECUのECU識別情報とをマージしたグループ情報を、情報フレームにて返送する。なお、既存のECUの場合は、自身のECU識別情報だけを返送してもよい。
【0131】
CGWは、各ECUから返送された情報フレームに示されたグループ情報又はECU識別情報に基づき、未登録のECU識別情報を含んでいれば、起動テーブルの更新を行う。
[4-4.効果]
以上詳述した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)及び第3実施形態の効果(3a)(3b)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0132】
(4a)ネットワークシステム1cでは、パーシャルネットワークに新規のECUを簡単に追加できる。
(4b)ネットワークシステム1cでは、追加した新規のECUを含んだ新たなECU起動グループも簡単に起動テーブルに登録できる。
【0133】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0134】
(5a)上記第1及び第2実施形態では、CGWとGW1,2とが同一のBUS3に接続されているが、GW1,2の下流バスに、更にGWが接続されてもよい。
(5b)上記第1及び第2実施形態では、CGWが下流用トランシーバ42を一つだけ備えているが、CGWが複数の下流用トランシーバ42を備えてもよい。そして、各下流用トランシーバ42には、それぞれ
図1及び
図3に示されたネットワークと同様のネットワークが接続されてもよい。この場合、CGWでは、
図7及び
図17に示した起動テーブルを組み合わせた起動テーブルが用いられる。そして、CGWのフレーム返送処理では、起動情報にGW起動グループ及びECU起動グループが示されたNMフレームを、選択された下流用トランシーバ42に送信することになる。
【0135】
(5c)本開示に記載のMCU33,43,53及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のMCU33,43,53及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のMCU33,43,53及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。MCU33,43,53に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0136】
(5d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0137】
(5e)前述したネットワークシステムの他、当該ネットワークシステムを構成する中継装置、当該中継装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、起動制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0138】
1…ネットワークシステム、2…バス、3…中継装置、4…管理中継装置、5…端末装置。