(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20231219BHJP
C07B 43/06 20060101ALI20231219BHJP
C07H 21/02 20060101ALI20231219BHJP
C07F 9/24 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 120Z
C07B43/06
C07H21/02
C07F9/24 F
(21)【出願番号】P 2020550483
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038860
(87)【国際公開番号】W WO2020071407
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2018187767
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】伊関 克彦
(72)【発明者】
【氏名】稲田 英朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 達也
(72)【発明者】
【氏名】沖村 慶一
(72)【発明者】
【氏名】國嶋 崇隆
(72)【発明者】
【氏名】大木 忠明
(72)【発明者】
【氏名】青木 絵里子
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073767(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/133221(WO,A1)
【文献】LIU, Y., et al.,Tetrahedron,2008年,Vol. 64, Issue 36,pp. 8417-8422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法であって、
脱水縮合剤の存在下、緩衝液と親水性有機溶媒とを含む混合溶媒中で、下記式(I)で表される第1の一本鎖オリゴRNA分子と下記式(II)で表される第2の一本鎖オリゴRNA分子とを反応させる工程を含み、
5’-Xc-Lx
1 ・・・(I)
Lx
2-X-Y-Ly-Yc-3’ ・・・(II)
[式(I)及び式(II)中、X、Xc、Y及びYcは、リボヌクレオチド残基からなり、Xcは、Xと相補的であり、Ycは、Yと相補的であり、Lyは、非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx
1は、アミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx
2は、カルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、X-Yは、前記標的遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列を含
み、
Lx
1
は、下記式(VI):
【化1】
で表され、
Lx
2
は、下記式(VII)又は下記式(VII’):
【化2】
【化3】
で表され、
Lyは、下記式(V)又は下記式(XXII):
【化4】
【化5】
で表される]
前記脱水縮合剤は、トリアジン型脱水縮合剤、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、カルボジイミド型脱水縮合剤、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤、及びホルムアミジニウム型脱水縮合剤からなる群から選択され、
前記脱水縮合剤がカルボジイミド型脱水縮合剤の場合は、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルと組み合わせて使用し、
前記脱水縮合剤が2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤の場合は、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物と組み合わせて使用し、
前記脱水縮合剤がホルムアミジニウム型脱水縮合剤の場合は、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体と組み合わせて使用する、
ヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法。
【請求項2】
(i)前記N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤が、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である、
(ii)前記N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物が、ヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体である、
(iii)前記シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルが、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステルである、及び/又は
(iv)前記N-炭化水素置換イミダゾール誘導体が、N-アルキルイミダゾール誘導体である、
請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記親水性有機溶媒が、親水性の非プロトン性有機溶媒である、請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記親水性の非プロトン性有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルエチレンウレア、又はアセトニトリルである、請求項
3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記脱水縮合剤が、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド、又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートであり、
前記N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物が、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールであり、
前記シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルが、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチルであり、
前記N-炭化水素置換イミダゾール誘導体が、N-メチルイミダゾールである、請求項1~
4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項6】
前記脱水縮合剤と前記親水性の非プロトン性有機溶媒の組み合わせが、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートとジメチルスルホキシドとの組み合わせ、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートとN,N-ジメチルホルムアミドとの組み合わせ、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩と1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールとジメチルスルホキシドとの組み合わせ、又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートと1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールとジメチルスルホキシドとの組み合わせである、請求項
4又
5のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項7】
前記緩衝液のpHは、6.5~7.5である、請求項1~
6のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項8】
Lyが、下記式(V)で表される、請求項1~
7のいずれか一項記載の製造方法。
【化6】
【請求項9】
Lx
2が、下記式(VII)で表される、請求項1~
8のいずれか一項記載の製造方法。
【化7】
【請求項10】
前記標的遺伝子は、TGF-β1遺伝子である、請求項1~
9のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項11】
前記ヘアピン型一本鎖RNA分子は、配列番号1で表される塩基配列からなる、請求項1~
10のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項12】
以下の(a)又は(b)である、一本鎖オリゴRNA分子。
(a)1番目のリボヌクレオチド残基がLx
2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号3で表される塩基配列からなる一本鎖オリゴRNA分子
(b)1番目のリボヌクレオチド残基がLx
2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号6で表される塩基配列からなる一本鎖オリゴRNA分子
であって、
Lx
2
は、下記式(VII)又は下記式(VII’):
【化8】
【化9】
で表され、
Lyは、下記式(V)又は下記式(XXII):
【化10】
【化11】
で表される、一本鎖オリゴRNA分子。
【請求項13】
以下の(1)又は(2)である、一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ
:
(1)24番目のリボヌクレオチド残基がLx
1と連結されている配列番号2で表される塩基配列からなる第1の一本鎖オリゴRNA分子と、1番目のリボヌクレオチド残基がLx
2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号3で表される塩基配列からなる第2の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ
、
(2)22番目のリボヌクレオチド残基がLx
1と連結されている配列番号5で表される塩基配列からなる第1の一本鎖オリゴRNA分子と、1番目のリボヌクレオチド残基がLx
2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号6で表される塩基配列からなる第2の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ
、
を含む、標的遺伝子の発現を抑制するためのヘアピン型一本鎖RNA分子の製造用のキットであって、
Lx
1
は、下記式(VI):
【化12】
で表され、
Lx
2
は、下記式(VII)又は下記式(VII’):
【化13】
【化14】
で表され、
Lyは、下記式(V)又は下記式(XXII):
【化15】
【化16】
で表される、キット。
【請求項14】
下記のi)一般式(X)、又はii)一般式(X’)で示される、アミダイト。
i)一般式(X):
【化17】
[式中、pは、
1であり、R
2は、置換されて
いない炭素数5のアルキレン鎖であり、R
3は、カルボン酸保護基であり、R
4は、電子吸引基で置換されたアルキル基であり、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、アルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。]
ii)一般式(X’):
【化18】
[式中、R
2は、置換されていない
炭素数5のアルキレン鎖であり、R
3は、カルボン酸保護基であり、R
4は、電子吸引基で置換されたアルキル基であり、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、アルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現を抑制する技術として、例えば、RNA干渉(RNAi)が知られている(非特許文献1)。RNA干渉による遺伝子発現抑制には、siRNA(small interfering RNA)と呼ばれる短い二本鎖のRNA分子を用いる方法が多く利用されている。また、分子内アニールにより、部分的に二重鎖を形成した環状RNA分子を用いた遺伝子発現を抑制する技術も報告されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、siRNAは生体内での安定性が低く、一本鎖RNAに解離しやすいため、遺伝子発現を安定的に抑制するのが困難である。特許文献2には、siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖を、アミノ酸誘導体を用いて形成される1つ又は2つのリンカーを用いて一本鎖に連結したヘアピン型一本鎖長鎖RNA分子が、siRNAを安定化できることが報告されている。この一本鎖長鎖RNA分子の製造方法としては、ホスホロアミダイト法による固相合成法が特許文献2に記載されている。
【0004】
長鎖DNA分子の製造方法としては、比較的短鎖の2つのオリゴDNA分子のペア、すなわち、末端にカルボキシル基を有する第1のオリゴDNA分子と、末端にアミノ基を有する第2のオリゴDNA分子との2つに分割して合成し、それらをトリアジン型脱水縮合剤を含む緩衝液中、アミド化により連結することで製造する技術が非特許文献2に報告されているが、RNA分子に関する記載はない。
【0005】
一方、水系溶媒でのアミド化反応は、例えば非特許文献3に報告されているが、RNA分子に関する記載はない。
【0006】
固相合成時に、5’末端にカルボン酸を含有するオリゴマーのカルボン酸とラベル体(例えば、シアニン、アミノ酸、ぺプチドといったアミノ基含有物質)とアミド結合を形成する際に用いるペプチドカップリング剤としてHATUが例示されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2004/058886号
【文献】国際公開WO2012/017919
【非特許文献】
【0008】
【文献】Fireら、Nature、1998年、第391巻、p.806-811
【文献】Liuら、Tetrahedron、2008年、第64巻、p.8417-8422.
【文献】Badlandら、Tetrahedron Letters、2017年、第58巻、p.4391-4394.
【文献】Guidebook for the Synthesis OF Oligonucleotides Product Guide 2015/16、Link Technologies Ltd.、2017年、第58巻、p.49-51.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、標的遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
標的遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の従来の製造方法は、ホスホロアミダイト法によりヌクレオシドを1ユニットずつ伸長するものであり、効率のよい方法とは言えない。
【0011】
そこで本発明者らは、標的遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の効率的な製造方法の開発を目的に、非特許文献2の合成技術をヘアピン型一本鎖RNA分子の合成に適用したが、RNA分子中には、アミド化反応において副反応の原因となる水酸基が多数存在するため、不純物が多く生成し、目的物を高い収率で得られないことが示された。
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、緩衝液とジメチルスルホキシド等の親水性有機溶媒と含む混合溶媒中で、所定のタイプの脱水縮合剤を用いて2つの一本鎖オリゴRNA分子の末端をアミド化反応させることによって、ヘアピン型一本鎖RNA分子を高い収率で効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
ジメチルスルホキシド等の有機溶媒は、核酸の変性剤として使用されることが文献(Nucleic Acid Research、1990年、第391巻、p.4953.、基礎分子生物学 第4版 田村ら著、2016年、東京化学同人等)に記載されており、そのような有機溶媒は核酸のアニーリングを不安定化することが知られている。このことを考えると、本発明者らが見出した上記知見は驚くべきものであった。
【0014】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]標的遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法であって、
脱水縮合剤の存在下、緩衝液と親水性有機溶媒とを含む混合溶媒中で、下記式(I)で表される第1の一本鎖オリゴRNA分子と下記式(II)で表される第2の一本鎖オリゴRNA分子とを反応させる工程を含み、
5’-Xc-Lx1 ・・・(I)
Lx2-X-Y-Ly-Yc-3’ ・・・(II)
[式(I)及び式(II)中、X、Xc、Y及びYcは、リボヌクレオチド残基からなり、Xcは、Xと相補的であり、Ycは、Yと相補的であり、Lyは、非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx1は、アミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx2は、カルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、X-Yは、上記標的遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列を含む]
上記脱水縮合剤は、トリアジン型脱水縮合剤、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、カルボジイミド型脱水縮合剤、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤、及びホルムアミジニウム型脱水縮合剤からなる群から選択され、
上記脱水縮合剤がカルボジイミド型脱水縮合剤の場合は、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルと組み合わせて使用し、
上記脱水縮合剤が2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤の場合は、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物と組み合わせて使用し、
上記脱水縮合剤がホルムアミジニウム型脱水縮合剤の場合は、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体と組み合わせて使用する、
ヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法。
【0015】
[2]上記リンカーLyが、アミノ酸骨格又はアミノアルコール骨格を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、上記リンカーLx2が、アミノ酸骨格を有する非ヌクレオチド性リンカーである[1]に記載の製造方法。
【0016】
[3]上記Lyが、ピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカー、又は-NHCH2COO-を含む非ヌクレオチド性リンカーであり、上記Lx2が、カルボキシル基を有するピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカー、又は-NHCH2COOHを含む非ヌクレオチド性リンカーである[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0017】
[4]Lx
1が、下記式(III)で表され、Lx
2が、下記式(IV)又は下記式(IV’)で表される、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
【化1】
[式(III)中、R
1は、置換されていてもよいアルキレン鎖であり、-OR
1は、Xcの3’末端にホスホジエステル結合を介して結合している]
【化2】
[式(IV)中、R
2は、置換されていてもよいアルキレン鎖であり、pは、1又は2であり、-OR
2は、Xの5’末端にホスホジエステル結合を介して結合しており、式(IV’)中、R
2は、置換されていてもよいアルキレン鎖であり、-OR
2は、Xの5’末端にホスホジエステル結合を介して結合している]
【0018】
[5](i)上記N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤が、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である、
(ii)上記N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物が、ヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体である、
(iii)上記シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルが、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステルである、及び/又は
(iv)上記N-炭化水素置換イミダゾール誘導体が、N-アルキルイミダゾール誘導体である、
[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
[6]上記親水性有機溶媒が、親水性の非プロトン性有機溶媒である、[1]~[5]に記載の製造方法。
【0020】
[7]上記親水性の非プロトン性有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルエチレンウレア、又はアセトニトリルである、[6]に記載の製造方法。
【0021】
[8]上記脱水縮合剤が、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド、又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートであり、
上記N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物が、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールであり、
上記シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルが、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチルであり、
上記N-炭化水素置換イミダゾール誘導体が、N-メチルイミダゾールである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
[9]上記脱水縮合剤と上記親水性の非プロトン性有機溶媒の組み合わせが、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートとジメチルスルホキシドとの組み合わせ、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートとN,N-ジメチルホルムアミドとの組み合わせ、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩と1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールとジメチルスルホキシドとの組み合わせ、又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートと1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールとジメチルスルホキシドとの組み合わせである、[7]又は[8]のいずれかに記載の製造方法。
【0023】
[10]上記緩衝液のpHは、6.5~7.5である、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
[11]Lyが、ピロリジン骨格又はピぺリジン骨格を含む非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx1が、アミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx2が、カルボキシル基を有するピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカーである、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0025】
[12]Lyが、下記式(V)で表される、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
【化3】
【0026】
[13]Lx
1が、下記式(VI)で表され、Lx
2が、下記式(VII)で表される、[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
【化4】
【化5】
【0027】
[14]上記標的遺伝子は、TGF-β1遺伝子である、[1]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
【0028】
[15]上記ヘアピン型一本鎖RNA分子は、配列番号1で表される塩基配列からなる、[1]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
【0029】
[16]以下の(a)又は(b)である、一本鎖オリゴRNA分子。
(a)1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号3で表される塩基配列からなる一本鎖オリゴRNA分子
(b)1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号6で表される塩基配列からなる一本鎖オリゴRNA分子
【0030】
[17]以下の(1)又は(2)である、一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせを含む、標的遺伝子の発現を抑制するためのヘアピン型一本鎖RNA分子の製造用のキット。
(1)24番目のリボヌクレオチド残基がLx1と連結されている配列番号2で表される塩基配列からなる第1の一本鎖オリゴRNA分子と、1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号3で表される塩基配列からなる第2の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ
(2)22番目のリボヌクレオチド残基がLx1と連結されている配列番号5で表される塩基配列からなる第1の一本鎖オリゴRNA分子と、1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号6で表される塩基配列からなる第2の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ
【0031】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-187767号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、標的遺伝子に対する発現抑制配列を含むヘアピン型一本鎖RNA分子を、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の製造方法の概略図である。図中のX、Xc、Y、Yc配列を表す線の上の垂直線(実線)は、配列が相補的であることを模式的に表しているが、個々のリボヌクレオチド残基やそれが対応する残基との相補性を限定的に表しているわけではない。図中の配列Xと配列Yの境界を、垂直線(点線)で模式的に表している。
【
図2】
図2は、ssTbRNA分子(配列番号1)の模式図である。Lx
1はアミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーを表し、Lyは非ヌクレオチド性リンカーを表し、Lx
2はカルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーを表す。配列番号1の29位(U)~47位(C)は活性配列(TGF-β1遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列)に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0035】
本発明は、遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法に関する。本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子は、遺伝子発現抑制配列を含む二本鎖RNAのセンス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の5’末端が、非ヌクレオチド性リンカーを含む配列を介して連結され、そのアンチセンス鎖の3’末端にさらなる非ヌクレオチド性リンカーを含む配列を介してリボヌクレオチドがさらに連結された一本鎖構造を有する。本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子の5’末端と3’末端は、結合されていない。本明細書において「ヘアピン型」とは、一本鎖RNA分子が分子内アニーリング(自己アニーリング)により1つ以上の二重鎖構造を形成することを意味する。本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子は、その5’末端を含む5’側領域と3’末端を含む3’側領域がそれぞれ別個に分子内アニーリングすることにより、少なくとも2つの二重鎖構造を形成する。本明細書において「RNA」、「RNA分子」、「核酸分子」及び「核酸」は、ヌクレオチドのみから構成されていてもよいが、ヌクレオチドと非ヌクレオチド物質(例えば、プロリン誘導体、グリシン誘導体などのアミノ酸誘導体)から構成されていてもよい。
【0036】
本発明では、遺伝子発現抑制配列を含むヘアピン型一本鎖RNA分子を、(i)アミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカー(Lx
1)を3’側に有する第1の一本鎖オリゴRNA分子と、(ii)カルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカー(Lx
2)を5’側に有し、非ヌクレオチド性リンカー(Ly)を3’側に含む第2の一本鎖オリゴRNA分子との2つのフラグメントに分割して合成し、それらをアミド化反応で連結することにより、製造することができる。ここでカルボキシル基はカルボン酸基とも称される。本発明の方法の概略図を
図1に示す。
図1中、Lx
1はアミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx
2はカルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、Lyは、非ヌクレオチド性リンカーである。本発明の方法では、比較的長鎖のヘアピン型一本鎖RNA分子を、より短鎖の一本鎖RNA分子のペアを連結することによって製造し、それにより高い生産効率を実現することができる。
【0037】
より具体的には、本発明に係る、遺伝子発現抑制配列を含むヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法は、脱水縮合剤の存在下、下記式(I)で表される第1の一本鎖オリゴRNA分子と下記式(II)で表される第2の一本鎖オリゴRNA分子とを反応させる工程を含む。
【0038】
5’-Xc-Lx1 ・・・(I)
Lx2-X-Y-Ly-Yc-3’ ・・・(II)
【0039】
なお後述のとおり、上記方法で脱水縮合剤としてカルボジイミド型脱水縮合剤を使用する場合には、カルボジイミド型脱水縮合剤はN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルと組み合わせて使用される。脱水縮合剤として2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤を使用する場合には、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤はN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物と組み合わせて使用される。脱水縮合剤としてホルムアミジニウム型脱水縮合剤を使用する場合には、ホルムアミジニウム型脱水縮合剤はN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体と組み合わせて使用される。
【0040】
第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子との反応は、アミド化反応である。第1の一本鎖オリゴRNA分子(具体的には、この分子の末端のLx1にあるアミノ基)と、第2の一本鎖オリゴRNA分子(具体的には、この分子の末端のLx2にあるカルボキシル基)のアミド化反応(脱水縮合反応)により、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の間にアミド結合を形成させることができる。本発明の製造方法におけるこのアミド化反応は、反応溶媒中、特に、緩衝液と親水性有機溶媒とを含む混合溶媒中で実施することができる。
【0041】
本発明において「オリゴRNA」及び「オリゴRNA分子」とは、49塩基長以下(非ヌクレオチド性リンカーの残基数は不算入)の塩基配列を有するRNA分子を指す。本発明において用語「オリゴRNA」と「オリゴRNA分子」は通常、互換的に使用される。本発明に係る一本鎖オリゴRNA分子は、一本鎖オリゴRNA、オリゴ核酸、一本鎖核酸分子、オリゴRNA、又はオリゴRNA分子と称されることもある。
【0042】
式(I)は、配列XcとリンカーLx1が、5’末端側から、Xc-Lx1の順番で連結された構造を表している。式(II)は、配列X、Y及びYc並びにリンカーLx2及びLyが、5’末端側から、Lx2-X-Y-Ly-Ycの順番で連結された構造を表している。
【0043】
式(I)及び式(II)中、X、Xc、Y及びYcは、リボヌクレオチド残基(1個又はそれ以上のリボヌクレオチド残基)からなる。リボヌクレオチド残基は、アデニン、ウラシル、グアニン又はシトシンから選択されるいずれかの核酸塩基を有するものであってよい。リボヌクレオチド残基はまた、修飾リボヌクレオチド残基であってもよく、例えば、修飾された核酸塩基(修飾塩基)を有していてもよい。修飾としては、蛍光色素標識、メチル化、ハロゲン化、シュードウリジン化、アミノ化、脱アミノ化、チオ化、ジヒドロ化などが挙げられるが、これらに限定されない。X、Xc、Y及びYcは、それぞれ独立に、非修飾リボヌクレオチド残基のみからなるものであってもよいし、非修飾リボヌクレオチド残基に加えて修飾リボヌクレオチド残基を含むものであってもよいし、修飾リボヌクレオチド残基のみからなるものであってもよい。
【0044】
本発明において、Xcは、Xと相補的である。Xcは、好ましくは、Xの全領域又はその部分領域に対して完全に相補的な配列(相補配列)からなる。XcがXの全領域に対して完全に相補的である場合、Xcは、Xの5’末端から3’末端の全領域の相補配列からなり、XcとXの塩基数は同一である。また、XcがXの部分領域に対して完全に相補的である場合、Xcは、Xの部分領域の相補配列からなり、XcはXよりも1塩基以上、例えば1~4塩基又は1~2塩基少ない塩基数を有する。この部分領域は、X中のLx2側の末端塩基から連続する塩基配列からなる領域であることが好ましい。
【0045】
Xは、例えば、19~39塩基長であってよく、好ましくは19~30塩基長、より好ましくは19~25塩基長である。
【0046】
Xcは、例えば、19~39塩基長であってよく、好ましくは19~30塩基長、より好ましくは19~25塩基長である。
【0047】
本発明において、YcとYは同一の塩基長を有する。本発明において、Ycは、Yと相補的である。Ycは、好ましくは、Yの全領域に対して完全に相補的な配列(相補配列)からなる。YcがYの全領域に対して完全に相補的である場合、Ycは、Yの5’末端から3’末端の全領域の相補配列からなり、YcとYの塩基数は同一である。
【0048】
Yは、例えば、1~5塩基長であってよく、好ましくは1~3塩基長、より好ましくは1又は2塩基長である。
【0049】
Ycは、例えば、1~5塩基長であってよく、好ましくは1~3塩基長、より好ましくは1又は2塩基長である。
【0050】
XとYの塩基数(塩基長)の合計[(X+Y)]と、XcとYcの塩基数(塩基長)の合計[(Xc+Yc)]との差[(X+Y)-(Xc+Yc)]は、特に限定されないが、例えば、0~4塩基(塩基長)であり、好ましくは0、1、又は2塩基(塩基長)である。
【0051】
式(II)で表される第2の一本鎖オリゴRNA分子において、X、Y及びYcの合計塩基数は、例えば、21~49塩基であり、好ましくは21~30塩基、より好ましくは25~30塩基である。
【0052】
上記式(I)中のリンカーLx1は、アミノ基、好ましくは1級アミノ基又は2級アミノ基を有する、非ヌクレオチド性リンカーである。上記アミノ基はリンカーLx1の末端に存在してもよいし、内部に存在してもよいが、末端に存在することが好ましい。
リンカーLx1は、例えば、下記式(III)で表される。
【0053】
【0054】
式(III)中、R1は、炭素数mのアルキレン鎖である。ここで、アルキレン鎖R1の炭素原子上の任意の水素原子は、任意の置換基で置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。mは、特に制限されず、リンカーLx1の所望の長さに応じて適宜設定できるが、例えば、製造コスト及び収率等の点からは、mは1~30の整数が好ましく、より好ましくは1~20の整数であり、さらに好ましくは1~10の整数である。式(III)中の-OR1は、Xcの3’末端にホスホジエステル結合を介して結合している。すなわち、リンカーLx1中の-OR1は、Xcの3’末端の糖(リボース)の3’位にホスホジエステル結合を介して結合している。
【0055】
リンカーLx1は直鎖構造を有することが好ましい。好ましい実施形態では、リンカーLx1は、下記式(VI)で表されるものであってよい。
【0056】
【0057】
上記式(II)中のリンカーLx2は、カルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーである。
【0058】
上記リンカーLx2は、カルボキシル基を有し、アミド化反応を阻害しない限り任意の構造であってよい。上記カルボキシル基はリンカーLx2の末端に存在してもよいし、内部に存在してもよいが、末端に存在することが好ましい。
【0059】
前記リンカーLx2としては、例えば、アミノ酸骨格を有する非ヌクレオチド性リンカーが挙げられる。そのようなリンカーLx2は、アミノ酸から誘導され、かつ末端にカルボキシル基を有する構造を含むリンカーであってよい。
【0060】
本明細書において「アミノ酸骨格」とは、分子中にアミノ基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上含む任意の有機化合物又はその構造をいう。ここでアミノ基とは、アンモニア、一級アミン、又は二級アミンから1つ以上の水素原子を除去した官能基をいう。アミノ酸骨格を構成するアミノ基及び/又はカルボキシル基は、アミド結合、エステル結合等の任意の化学結合を形成していてもよい。アミノ酸骨格が由来するアミノ酸は、例えば、天然アミノ酸でもよいし、人工アミノ酸であってもよい。なお、天然アミノ酸は、天然に存在する構造のアミノ酸又はその光学異性体をいう。また、人工アミノ酸は、天然に存在しない構造のアミノ酸をいう。すなわち、人工アミノ酸は、アミノ酸すなわちアミノ基を含むカルボン酸誘導体(分子中にアミノ基及びカルボキシル基をそれぞれ1つ以上含む有機化合物)であって、天然に存在しない構造のカルボン酸誘導体をいう。人工アミノ酸は、例えば、ヘテロ環を含まないことが好ましい。アミノ酸は、例えば、グリシン、α-アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、ヒドロキシリシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、トリプトファン、β-アラニン、1-アミノ-2-カルボキシシクロペンタン、アミノ安息香酸、アミノピリジンカルボン酸、ニペコチン酸、イソニペコチン酸、ピペコリン酸、3-ピロリジンカルボン酸、γ-アミノ酪酸、若しくはサルコシンであってもよく、さらに置換基又は保護基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、以下に限定されないが、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、カルバモイル、スルファモイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル、ピロールイル、イミダゾリル、等が挙げられる。保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であってよく、公知の保護基等が挙げられる。保護基については、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)の記載を援用できる。保護基は、特に制限されず、例えば、tert-ブチルジメチルシリル基、ビス(2-アセトキシエチルオキシ)メチル基、トリイソプロピルシリルオキシメチル基、1-(2-シアノエトキシ)エチル基、2-シアノエトキシメチル基、2-シアノエチル基、トリルスルフォニルエトキシメチル基、トリチル基及びジメトキシトリチル基等が挙げられる。また、アミノ酸は、光学異性体、幾何異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体でもよい。これらは単一の異性体であってもよく、混合物であってもよい。
【0061】
上記リンカーLx2の好ましい例としては、カルボキシル基を有するピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカー、又は-NHCH2COOHを含む非ヌクレオチド性リンカーが挙げられる。一実施形態では、上記リンカーLx2は、例えば、下記式(IV)又は下記式(IV’)で表され、より好ましくは下記式(IV)で表される。
【0062】
【0063】
式(IV)及び式(IV’)中、R2は、炭素数nのアルキレン鎖である。ここで、アルキレン鎖R2の炭素原子上の任意の水素原子は、任意の置換基で置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。nは、特に制限されず、リンカーLx2の所望の長さに応じて適宜設定できるが、例えば、製造コスト及び収率等の点からは、nは1~30の整数が好ましく、より好ましくは1~20の整数であり、さらに好ましくは1~10の整数である。
【0064】
式(IV)中、pは、1又は2であり、好ましくは1である。
【0065】
式(IV)及び式(IV’)中の-OR2は、Xの5’末端にホスホジエステル結合を介して結合している。すなわち、リンカーLx2中の-OR2は、Xの5’末端の糖(リボース)の5’位にホスホジエステル結合を介して結合している。
【0066】
ここで、R1のmとR2のnの合計は、例えば、2~31の整数であり、好ましくは2~21の整数であり、より好ましくは2~15の整数である。
【0067】
式(IV)では、リンカーLx2はピロリジン骨格又はピペリジン骨格のような環状構造を有している。
【0068】
好ましい実施形態では、リンカーLx2は、下記式(VII)で表されるものであってよい。
【0069】
【0070】
式(VII)で表されるリンカーは、下記式(VII-1)又は下記式(VII-2)で表される光学活性体であってよい。
【0071】
【0072】
【0073】
別の実施形態では、リンカーLx2は、下記式(VII’)で表されるものであってよい。
【0074】
【0075】
式(II)中のリンカーLyは、非ヌクレオチド性リンカーである。上記リンカーLyは、アミド化反応を阻害しない限り任意の構造であってよい。リンカーLyとしては、アミノ酸骨格又はアミノアルコール骨格を有する非ヌクレオチド性リンカーが挙げられる。そのようなリンカーLyは、アミノ酸から誘導される構造を含むリンカーであってよい。この「アミノ酸骨格」は前述したとおりである。但しリンカーLyのアミノ酸骨格を構成するアミノ基及び/又はカルボキシル基は、アミド結合、エステル結合等の任意の化学結合を形成していてもよい。
【0076】
ここで「アミノアルコール骨格」は、分子中にアミノ基及びヒドロキシル基をそれぞれ1つ以上含む任意の有機化合物又はその構造をいう。「アミノ基」は前述したとおりである。リンカーLyのアミノアルコール骨格を構成するアミノ基及び/又はヒドロキシル基は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合等の任意の化学結合を形成していてもよい。アミノアルコールは、例えば、上記アミノ酸のカルボキシル基を変換して得られるアミノアルコールが挙げられる。アミノアルコールは、例えば、アミノエタノール、アミノプロパノール、バリノール、プロリノール、若しくはピペリジンメタノールであってもよく、さらに置換基又は保護基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、以下に限定されないが、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、カルバモイル、スルファモイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、シリル、シリルオキシアルキル、ピロールイル、イミダゾリル、等が挙げられる。保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であってよく、公知の保護基等が挙げられる。保護基については、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)の記載を援用できる。保護基は、特に制限されず、例えば、tert-ブチルジメチルシリル基、ビス(2-アセトキシエチルオキシ)メチル基、トリイソプロピルシリルオキシメチル基、1-(2-シアノエトキシ)エチル基、2-シアノエトキシメチル基、2-シアノエチル基、トリルスルフォニルエトキシメチル基、トリチル基及びジメトキシトリチル基等が挙げられる。また、アミノアルコールは、光学異性体、幾何異性体、立体異性体等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体でもよい。これらは単一の異性体であってもよく、混合物であってもよい。
【0077】
リンカーLyは、好ましくはピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカー、又は-NHCH2COO-を含む非ヌクレオチド性リンカーである。リンカーLyは、2以上の位置で置換可能な環状構造を有することがより好ましい。リンカーLyは、n員環(例えばn=5又は6)を1つ又は2つ以上有していてもよく、2つ以上の環を有する場合、それらは縮合環、スピロ環又はビシクロ環等を形成していてもよい。リンカーLyは、1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい。リンカーLyは、そのいずれか2つの基(例えば、n員環を構成する2つの原子上の置換基)を介して、上記のYとYcを連結する。本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子は、このようなリンカーでセンス鎖とアンチセンス鎖が連結されていることにより、ヌクレアーゼ耐性に優れる。
【0078】
一実施形態では、リンカーLyは、ピロリジン骨格及びピぺリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカーであり、好ましくは、ピロリジン骨格又はピペリジン骨格を含む非ヌクレオチド性リンカーである。上記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環を構成する炭素原子が、1個以上置換されたピロリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、2位の炭素原子(C-2)以外の炭素原子が置換されていることが好ましい。上記炭素原子は、例えば、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子で置換されてもよい。上記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。上記ピロリジン骨格において、ピロリジンの5員環を構成する炭素原子及び窒素原子には、例えば、水素原子が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。リンカーLyは、例えば、上記ピロリジン骨格のいずれかの基を介して、YとYcを連結してもよい。それらは、上記5員環を構成するいずれか1個の炭素原子と窒素原子、好ましくは、上記5員環の2位の炭素原子(C-2)と窒素原子を介して連結されうる。上記ピロリジン骨格としては、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等が挙げられる。
【0079】
一実施形態では、本発明において、式(I)及び式(II)中、Lyは、ピロリジン骨格又はピぺリジン骨格を含む非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx1は、アミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーであり、Lx2は、カルボキシル基を有するピロリジン骨格及びピペリジン骨格の少なくとも一方を含む非ヌクレオチド性リンカーである。
【0080】
上記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環を構成する炭素原子が、1個以上置換されたピペリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、2位の炭素原子(C-2)以外の炭素原子が置換されていることが好ましい。上記炭素原子は、例えば、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子で置換されてもよい。上記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。上記ピペリジン骨格において、ピペリジンの6員環を構成する炭素原子及び窒素原子は、例えば、水素原子が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。リンカーLyは、例えば、上記ピペリジン骨格のいずれかの基を介して、YとYcを連結してもよい。それらは、上記6員環を構成するいずれか1個の炭素原子と窒素原子、好ましくは、上記6員環の2位の炭素原子(C-2)と窒素原子を介して連結されうる。
上記リンカーLyは、例えば、下記式(VIII)で表される。
【0081】
【0082】
式(VIII)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、H2、O、S又はNHであり、
Y1及びY2は、それぞれ独立して、単結合、CH2、NH、O又はSであり、
Zは、環A上のC-3、C-4、C-5又はC-6に結合する水素原子又は置換基であり、
L1は、炭素数rのアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン鎖の炭素原子上の水素原子は、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されても、置換されていなくてもよく、又は、
L1は、上記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ここで、Y1が、NH、O又はSの場合、Y1に結合するL1の原子は炭素であり、Oに結合するL1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず、
L2は、炭素数sのアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン鎖の炭素原子上の水素原子は、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されても、置換されていなくてもよく、又は、
L2は、上記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ここで、Y2が、NH、O又はSの場合、Y2に結合するL2の原子は炭素であり、Oに結合するL2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず、
Ra及びRbは、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり;
qは、1又は2であり、
rは、0~30の範囲の整数であり、
sは、0~30の範囲の整数であり、
環Aは、環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子で置換されてもよく、環A内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。
【0083】
YとYcは、式(VIII)中の-OL1又は-OL2を介して、リンカーLyと連結する。一実施形態では、Yが-OL1を介して、Ycが-OL2を介して、リンカーLyと連結してもよい。別の実施形態では、Yが-OL2を介して、Ycが-OL1を介して、リンカーLyと連結してもよい。
【0084】
式(VIII)中、X1及びX2は、例えば、それぞれ独立して、H2、O、S又はNHである。式(VIII)において、X1がH2であるとは、X1が、X1の結合する炭素原子とともに、CH2を形成することを意味する。X2についても同様である。
【0085】
式(VIII)中、Y1及びY2は、それぞれ独立して、単結合、CH2、NH、O又はSである。
【0086】
式(VIII)中、環Aにおいて、qは、1又は2である。qが1の場合、環Aは、5員環であり、例えば、上記ピロリジン骨格である。上記ピロリジン骨格は、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられ、これらの二価の構造が例示できる。qが2の場合、環Aは、6員環であり、例えば、上記ピペリジン骨格である。環Aは、環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子で置換されてもよい。また、環Aは、環A内に、炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合を含んでもよい。環Aは、例えば、L型及びD型のいずれでもよい。
【0087】
式(VIII)中、Zは、環A上のC-3、C-4、C-5又はC-6に結合する水素原子又は置換基である。Zが置換基の場合、置換基Zは、1でも複数でも、存在しなくてもよく、複数の場合、同一でも異なってもよい。
【0088】
置換基Zは、例えば、ハロゲン、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH、SRa又はオキソ基(=O)等である。
【0089】
Ra及びRbは、例えば、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり、同一でも異なってもよい。上記置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等が挙げられる。以下、同様である。置換基Zは、これらの列挙する置換基であってもよい。
【0090】
上記保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等が挙げられる。上記保護基については、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)の記載を援用できる。上記保護基は、特に制限されず、例えば、tert-ブチルジメチルシリル基(以下、TBDMS基)、ビス(2-アセトキシエチルオキシ)メチル基(以下、ACE基)、トリイソプロピルシリルオキシメチル基(以下、TOM基)、1-(2-シアノエトキシ)エチル基(以下、CEE基)、2-シアノエトキシメチル基(以下、CEM基)、2-シアノエチル基(以下、CE基)、トリルスルフォニルエトキシメチル基(以下、TEM基)、トリチル基(以下、Tr基)及びジメトキシトリチル基(以下、DMTr基)等が挙げられる。ZがORaの場合、上記保護基は、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基及びTEM基等が挙げられる。この他にも、シリル含有基も挙げられる。以下、同様である。
【0091】
式(VIII)中、L1は、炭素数rのアルキレン鎖である。上記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。又は、L1は、上記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。上記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Y1が、NH、O又はSの場合、Y1に結合するL1の原子は炭素であり、Oに結合するL1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。
【0092】
式(VIII)中、L2は、炭素数sのアルキレン鎖である。上記アルキレン鎖の炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。又は、L2は、上記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Y2が、NH、O又はSの場合、Y2に結合するL2の原子は炭素であり、Oに結合するL2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。
【0093】
L1のr及びL2のsは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。r及びsは、例えば、リンカーLyの所望の長さに応じて、適宜設定できる。r及びsは、例えば、製造コスト及び収率等の点から、それぞれ独立して、0~30の整数が好ましく、より好ましくは0~20の整数であり、さらに好ましくは0~15の整数である。r及びsは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0094】
Ra及びRbは、前述と同様である。
【0095】
式(VIII)中、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、F及びI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0096】
好ましい実施形態では、上記リンカーLyは、下記式(VIII-1)~(VIII-9)のいずれかで表されるものであってよい。下記式(VIII-1)~(VIII-9)において、tは、0~10の整数であり、r及びsは、上記式(VIII)と同じである。具体例としては、式(VIII-1)においてr=8、式(VIII-2)においてr=3、式(VIII-3)においてr=4又は8、式(VIII-4)においてr=7又は8、式(VIII-5)においてr=3及びs=4、式(VIII-6)においてr=8及びs=4、式(VIII-7)においてr=8及びs=4、式(VIII-8)においてr=5及びs=4、式(VIII-9)においてt=1及びs=4が挙げられる。
【0097】
【0098】
一実施形態では、上記リンカーLyは、下記式(V)又は下記式(IX)で表されるものであってよい。
【0099】
【0100】
【0101】
式(V)で表されるリンカーは、下記式(V-1)又は下記式(V-2)で表される光学活性体であってよい。
【0102】
【0103】
【0104】
別の実施形態では、リンカーLyは、-NHCH2COO-を含む非ヌクレオチド性リンカーであり、そのようなリンカーは、例えば、下記式(XXI)で表される。このリンカーLyは、基本的に上記式(VIII)で表されるリンカーLyと対応しており、上記式(VIII)で表されるリンカーについての説明は下記式(XXI)で表されるリンカーにも援用される。
【0105】
【0106】
式(XXI)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、H2、O、S又はNHであり、
Y1及びY2は、それぞれ独立して、単結合、CH2、NH、O又はSであり、
L1は、炭素数rのアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン鎖の炭素原子上の水素原子は、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されても、置換されていなくてもよく、又は、
L1は、上記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ここで、Y1が、NH、O又はSの場合、Y1に結合するL1の原子は炭素であり、Oに結合するL1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず、
L2は、炭素数sのアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン鎖の炭素原子上の水素原子は、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されても、置換されていなくてもよく、又は、
L2は、上記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ここで、Y2が、NH、O又はSの場合、Y2に結合するL2の原子は炭素であり、Oに結合するL2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず、
Ra及びRbは、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり;
rは、0~30の範囲の整数であり、
sは、0~30の範囲の整数である。
【0107】
YとYcは、式(XXI)中の-OL1又は-OL2を介して、リンカーLyと連結する。一実施形態では、Yが-OL1を介して、Ycが-OL2を介して、リンカーLyと連結してもよい。別の実施形態では、Yが-OL2を介して、Ycが-OL1を介して、リンカーLyと連結してもよい。
【0108】
式(XXI)中、X1及びX2は、例えば、それぞれ独立して、H2、O、S又はNHである。式(XXI)において、X1がH2であるとは、X1が、X1の結合する炭素原子とともに、CH2を形成することを意味する。X2についても同様である。
【0109】
式(XXI)中、Y1及びY2は、それぞれ独立して、単結合、CH2、NH、O又はSである。
【0110】
Ra及びRbは、例えば、それぞれ独立して、置換基又は保護基であり、同一でも異なってもよい。上記置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等が挙げられる。以下、同様である。
【0111】
上記保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等が挙げられる。上記保護基については、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)の記載を援用できる。上記保護基は、特に制限されず、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基、CE基、TEM基、Tr基及び、DMTr基等が挙げられる。以下、同様である。
【0112】
式(XXI)中、L1は、炭素数rのアルキレン鎖である。上記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。又は、L1は、上記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。上記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Y1が、NH、O又はSの場合、Y1に結合するL1の原子は炭素であり、Oに結合するL1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。
【0113】
式(XXI)中、L2は、炭素数sのアルキレン鎖である。上記アルキレン鎖の炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、ORa、NH2、NHRa、NRaRb、SH又はSRaで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。又は、L2は、上記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Y2が、NH、O又はSの場合、Y2に結合するL2の原子は炭素であり、Oに結合するL2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。
【0114】
L1のr及びL2のsは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。r及びsは、例えば、リンカーLyの所望の長さに応じて、適宜設定できる。r及びsは、例えば、製造コスト及び収率等の点から、それぞれ独立して、0~30の整数が好ましく、より好ましくは0~20の整数であり、さらに好ましくは0~15の整数である。r及びsは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0115】
Ra及びRbは、前述と同様である。
【0116】
式(XXI)中、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、F及びI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0117】
好ましい実施形態では、上記リンカーLyは、下記式(XXII)で表されるものであってよい。
【0118】
【0119】
第1及び第2の一本鎖オリゴRNA分子は、当業者に公知のRNA合成法を用いて作製することができる。当業者に公知のRNA合成法としては、例えば、ホスホロアミダイト法やH-ホスホネート法等が挙げられる。ホスホロアミダイト法では、担体の疎水性基に結合したリボヌクレオシドをRNAアミダイト(リボヌクレオシドホスホロアミダイト)との縮合反応により伸長し、酸化と脱保護を経て、RNAアミダイトとの縮合反応を繰り返し行うことにより、RNA合成を行うことができる。
【0120】
式(I)で表される第1の一本鎖オリゴRNA分子は、一般的なRNA合成法、例えばホスホロアミダイト法により作製することができる。一実施形態では、予めリンカーLx1の構造に相当するアミノアルコールがアミノ基を介して結合された固相担体(例えば、後述する3’-PT Amino-Modifier C4 CPG;Link Technologies)を用い、常法通り、3’末端側からXcを固相合成することにより、作製することができる。合成には、任意のRNAアミダイトを使用することができ、例えば、2’位の水酸基にTBDMS基、TOM基、ACE基、CEE基、CEM基、TEM基、DMTr基等の様々な保護基を有する汎用型RNAアミダイトも使用することができる。また固相担体としては、ポリスチレン系担体、アクリルアミド系担体、又はガラス担体などの任意の固相担体を使用することができる。担体は、ビーズ、プレート、チップ、チューブ等の任意の形態であってよい。アミノアルコールが結合された担体の例として、例えば、3’-PT Amino-Modifier C3 CPG,又はC7 CPG(Link Technologies)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
式(II)で表される第2の一本鎖オリゴRNA分子も同様に、一般的なRNA合成法、例えばホスホロアミダイト法により作製することができる。一実施形態では、固相担体上に、常法通り、3’末端側からYcを固相合成した後、Ycの5’末端にリンカーLyを連結する。次にその末端からさらに固相合成を行い、Xの5’末端にリンカーLx2を連結することにより、第2の一本鎖オリゴRNA分子を作製することができる。合成には、任意のRNAアミダイトを使用することができ、例えば、2’位の水酸基にTBDMS基、TOM基、ACE基、CEE基、CEM基、TEM基、DMTr基等の様々な保護基を有する汎用型RNAアミダイトも使用することができる。また固相担体としては、ポリスチレン系担体、アクリルアミド系担体、又はガラス担体などの任意の固相担体を使用することができる。担体は、ビーズ、プレート、チップ、チューブ等の任意の形態であってよい。担体の例として、例えばNittoPhase(R) HL rG(ibu)、又はrU(KINOVATE)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
Xの5’末端へのリンカーLx2の連結には、それに適した任意のRNA合成用モノマーを用いることができ、例えば、下記式(X)で表されるRNA合成用のモノマーを用いることができる。このモノマーは、基本的に上記式(IV)で表されるリンカーと対応しており、上記式(IV)で表されるリンカーについての説明は下記式(X)で表されるモノマーにも援用される。下記式(X)で表されるモノマーは、例えば、自動核酸合成用のアミダイトとして使用でき、例えば、一般的な核酸自動合成装置に適用可能である。本発明は、下記式(X)で表されるRNA合成用のモノマー(アミダイト)も提供する。
【0123】
【0124】
式(X)において、上記式(IV)と同一箇所については、式(IV)の説明を援用できる。具体的には、式(X)中、R2は、炭素数nのアルキレン鎖である。ここで、アルキレン鎖R2の炭素原子上の任意の水素原子は、任意の置換基で置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。nは、特に制限されず、リンカーLx2の所望の長さに応じて適宜設定できるが、例えば、製造コスト及び収率等の点からは、nは1~30の整数が好ましく、より好ましくは1~20の整数であり、さらに好ましくは1~15の整数である。式(X)中、pは、1又は2であり、好ましくは1である。式(X)中、R3は、カルボン酸保護基である。カルボン酸保護基については、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)の記載を援用できる。カルボン酸保護基の具体例として、例えば、DMTr基、Tr基、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基、CE基、TEM基及び2,4-ジメトキシベンジル基が挙げられるが、CE基又は2,4-ジメトキシベンジル基が好ましい。
【0125】
R4は、電子吸引基で置換されたアルキル基であり、具体的には、例えば、2-シアノエチル基(CE基)、ニトロフェニルエチル基等が挙げられるが、2-シアノエチル基(CE基)が好ましい。
【0126】
R5及びR6は、それぞれ独立して、アルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。-NR5R6は、具体的には、例えば、ジイソプロピルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられるが、ジイソプロピルアミノ基が好ましい。
【0127】
好ましい実施形態では、式(X)で表されるモノマーは、下記式(XI)又は下記式(XVIII)で表されるものであってよい。
【0128】
【0129】
【0130】
式(XI)で表されるモノマーは、下記式(XI-1)又は下記式(XI-2)で表される光学活性体であってよい。
【0131】
【0132】
【0133】
式(XVIII)で表されるモノマーは、下記式(XVIII-1)又は下記式
(XVIII-2)で表される光学活性体であってよい。
【0134】
【0135】
【0136】
以下に、式(X)で表されるモノマーの合成法の例を説明するが、合成に使用する出発物質と試薬は、市販品をそのまま利用してもよいし、公知の方法により合成してもよい。
【0137】
式(X)で表されるモノマーは、例えば、以下のスキーム1に示すように、式(XII)で表されるアルコール誘導体の、式(XIII)で表されるリン酸化試薬によるリン酸化反応で合成することができる。
【0138】
【化28】
[式中、Xは、ハロゲン又はNR
5R
6であり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、pは、前述の定義に同じ。]
【0139】
式(XIII)で表されるリン酸化試薬の具体例としては、例えば、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト、ニトロフェニルエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト、メチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト又は2-シアノエチル-N,N, N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト等が挙げられる。
【0140】
式(XIII)で表されるリン酸化試薬の当量は、式(XII)で表されるアルコール誘導体に対して1~10当量が好ましく、1.1~1.5当量がより好ましい。
【0141】
リン酸化反応に用いる活性化剤としては、テトラゾール又はジイソプロピルアミンテトラゾール塩等が挙げられるが、ジイソプロピルアミンテトラゾール塩が好ましい。
【0142】
上記活性化剤の当量は、式(XII)で表されるアルコール誘導体に対して1~10当量が好ましく、1.1~1.5当量がより好ましい。
【0143】
リン酸化反応に用いる溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル又はアセトニトリル等が挙げられるが、アセトニトリルが好ましい。
【0144】
リン酸化反応の反応温度は、20~50℃が好ましく、20~30℃がより好ましい。また、リン酸化反応の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~5時間がより好ましい。
【0145】
式(XII)で表されるアルコール誘導体は、例えば、以下のスキーム2に示すように、式(XIV)で表されるアミン誘導体と式(XV)で表されるカルボン酸誘導体との縮合反応により合成することができる。
【0146】
【化29】
[式中、R
2、R
3、pは、前述の定義に同じ。]
【0147】
縮合反応に用いる、式(XV)で表されるカルボン酸誘導体の当量は、式(XIV)で表されるアミン誘導体に対して1~3当量が好ましく、1.1~1.5当量がより好ましい。
【0148】
縮合反応に用いる縮合剤としては、例えば、シクロヘキシルカルボジイミド、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート又はO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられるが、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩が好ましい。
【0149】
上記縮合剤の当量は、式(XV)で表されるカルボン酸誘導体に対して1~10当量が好ましく、1.1~1.5当量がより好ましい。
【0150】
縮合反応に用いる塩基としては、例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸水素ナトリウム等の有機酸塩が挙げられるが、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンが好ましい。
【0151】
上記塩基の当量は、式(XV)で表されるカルボン酸誘導体に対して0~10当量が好ましく、1~3当量がより好ましい。
【0152】
縮合反応に用いる溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム又はジエチルエーテル等が挙げられるが、ジクロロメタンが好ましい。
【0153】
縮合反応の反応温度は、0~50℃が好ましく、0~30℃がより好ましい。また、縮合反応の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~5時間がより好ましい。
【0154】
式(XIV)で表されるアミン誘導体は、例えば、以下のスキーム3に示すように、式(XVI)で表されるアミノ酸誘導体のカルボン酸への保護基導入反応と、得られた式(XVII)で表されるアミノ酸誘導体の脱Boc化反応又はスキーム4に示すように、式(XIX)で表されるアミノ酸誘導体のカルボン酸への保護基導入反応と、得られた式(XX)で表されるアミノ酸誘導体の脱Fmoc化反応により合成することができる。
【0155】
【化30】
[式中、R
3、pは、前述の定義に同じ。]
【0156】
【化31】
[式中、R
3、pは、前述の定義に同じ。]
【0157】
上記カルボン酸への保護基導入反応は、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)等に記載の公知の方法で実施することができる。
【0158】
脱Boc化反応や脱Fmoc化反応は、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)等に記載の公知の方法により行うことができる。
【0159】
式(XVI)や式(XIX)で表されるアミノ酸誘導体は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれに準じた方法で製造できる。
【0160】
別の実施形態では、Xの5’末端へのリンカーLx2の連結に、下記式(X’)で表されるRNA合成用のモノマーも用いることができる。このモノマーは、基本的に上記式(IV’)で表されるリンカーと対応しており、上記式(IV’)で表されるリンカーについての説明は下記式(X’)で表されるモノマーにも援用される。本発明は、下記式(X’)で表されるRNA合成用のモノマー(アミダイト)も提供する。
【0161】
【0162】
式(X’)において、上記式(IV’)と同一箇所については、式(IV’)の説明を援用できる。具体的には、式(X’)中、R2は、炭素数nのアルキレン鎖である。ここで、アルキレン鎖R2の炭素原子上の任意の水素原子は、任意の置換基で置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。nは、特に制限されず、リンカーLx2の所望の長さに応じて適宜設定できるが、例えば、製造コスト及び収率等の点からは、nは1~30の整数が好ましく、より好ましくは1~20の整数であり、さらに好ましくは1~15の整数である。式(X’)中、R3は、カルボン酸保護基である。カルボン酸保護基については、例えば、文献(Protective Groups in Organic Synthesis 第4版、Greeneら著、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)の記載を援用できる。カルボン酸保護基の具体例として、例えば、DMTr基、Tr基、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基、CE基、TEM基及び2,4-ジメトキシベンジル基が挙げられるが、CE基が好ましい。
【0163】
R4は、電子吸引基で置換されたアルキル基であり、具体的には、例えば、2-シアノエチル基(CE基)、ニトロフェニルエチル基等が挙げられるが、2-シアノエチル基(CE基)が好ましい。
【0164】
R5及びR6は、それぞれ独立して、アルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。-NR5R6は、具体的には、例えば、ジイソプロピルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられるが、ジイソプロピルアミノ基が好ましい。
【0165】
好ましい実施形態では、式(X’)で表されるモノマーは、下記式(XXIII)で表されるものであってよい。
【0166】
【0167】
式(X’)で表されるモノマーは、例えば、式(XVI)で表されるアミノ誘導体の代わりに、式(XVI’)で表されるアミノ酸誘導体を用いて、上記スキーム1~3と同様の方法により製造することができる。
【0168】
【0169】
式(XVI’)で表されるアミノ酸誘導体は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれに準じた方法で製造できる。
【0170】
またYcの5’末端への上記リンカーLyの連結には、それに適した任意のRNA合成用モノマー、例えば、文献(日本国特許第5261677号明細書又は日本国特許第5876890号明細書)に記載されている公知のRNA合成用モノマーを用いることができる。
【0171】
本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子において、X-Yは、標的遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列を含む。遺伝子発現抑制配列は、Xのみ又はYのみに含まれていてもよい。遺伝子発現抑制配列は、好ましくは、標的遺伝子から転写されるmRNAの全体又は一部のセンス配列又はアンチセンス配列である。
【0172】
上記ヘアピン型一本鎖RNA分子は、遺伝子発現抑制配列を1つ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。上記ヘアピン型一本鎖RNA分子は、例えば、同じ標的遺伝子に対する同じ発現抑制配列を2つ以上有してもよいし、同じ標的に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有してもよいし、異なる標的遺伝子に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有してもよい。異なる標的遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列を2つ以上有するヘアピン型一本鎖RNA分子は、2種類以上の異なる標的遺伝子の発現抑制に有用である。本発明において「遺伝子」とは、mRNAに転写されるゲノム領域を指し、タンパク質コード領域であってよいが、RNAコード領域であってもよい。
【0173】
本発明に係るヘアピン型一本鎖RNA分子は、遺伝子発現抑制配列を介して標的遺伝子の発現を抑制する能力を有する。本発明に係るヘアピン型一本鎖RNA分子による標的遺伝子の発現抑制は、RNA干渉によるものであることが好ましいが、それに限定されない。RNA干渉は、一般に、長い二本鎖RNA(dsRNA)が、細胞内において、Dicerにより、3’末端が突出した19~21塩基対程度の短い二本鎖RNA(siRNA:small interfering RNA)に切断され、その一方の一本鎖RNAが標的mRNAに結合して、標的mRNAを分解することにより、標的mRNAの翻訳を抑制し、それにより標的mRNAが由来する標的遺伝子の発現を抑制する現象である。標的mRNAに結合するsiRNAに含まれる一本鎖RNAの配列は、例えば、標的遺伝子の種類に応じて様々な種類が報告されている。本発明は、例えば、siRNAに含まれる一本鎖RNAの配列を、遺伝子発現抑制配列として使用できる。本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子は、in vivoで切断されてsiRNAを生成することにより標的遺伝子の発現を抑制することができる。本発明に係るヘアピン型一本鎖RNA分子は、標的遺伝子の発現又は発現増加と関連する疾患又は障害の治療又は予防のために用いることができる。
【0174】
遺伝子発現抑制配列は、好ましくは19~30塩基長であり、より好ましくは19~27塩基長であり、例えば、19、20、21、22、又は23塩基長であってよい。遺伝子発現抑制配列は、標的遺伝子のmRNAの少なくとも一部の配列と完全に同一又は完全に相補的なRNA配列からなることが好ましい。
【0175】
標的遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、TGF-β1遺伝子、GAPDH遺伝子、LAMA1遺伝子、LMNA遺伝子が挙げられる。標的遺伝子がTGF-β1遺伝子である場合、本発明の方法により製造されるヘアピン型一本鎖RNA分子は、in vivoでTGF-β1遺伝子の発現を抑制する。そのようなヘアピン型一本鎖RNA分子は、TGF-β1遺伝子の遺伝子発現抑制を通じて、TGF-β1遺伝子の発現又は発現増加と関連する疾患又は障害、例えば肺線維症や急性肺疾患の治療又は予防のために用いることができる。
【0176】
本発明の方法により製造される、遺伝子発現抑制配列を含むヘアピン型一本鎖RNA分子の1つの例は、配列番号1で表される塩基配列を有し、配列番号2で表される塩基配列を有する第1の一本鎖オリゴRNA分子(ストランドA)と配列番号3で表される塩基配列を有する第2の一本鎖オリゴRNA分子(ストランドB)の組み合わせにより得られる。配列番号1で表される塩基配列は、標的遺伝子であるTGF-β1遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列を含む。配列番号1で表される塩基配列の29位~47位の配列が遺伝子発現抑制配列(活性配列)に相当する(
図2)。
【0177】
また、別の例としては、配列番号4で表される塩基配列を有し、配列番号5で表される塩基配列を有する第1の一本鎖オリゴRNA分子(ストランドC)と配列番号6で表される塩基配列を有する第2の一本鎖オリゴRNA分子(ストランドD)の組み合わせにより得られる。配列番号4で表される塩基配列は、標的遺伝子であるGAPDH遺伝子に対する遺伝子発現抑制配列を含む。配列番号4で表される塩基配列の27位~45位の配列が遺伝子発現抑制配列(活性配列)に相当する。
【0178】
本発明では、上記式(I)で表される第1の一本鎖オリゴRNA分子と、上記式(II)で表される第2の一本鎖オリゴRNA分子とを、反応溶媒中で、脱水縮合剤(縮合剤とも称される。)の存在下、反応させ、リンカーLx1とリンカーLx2の間にアミド結合を形成することにより、上記ヘアピン型一本鎖RNA分子を製造することができる。反応溶媒は、緩衝液と親水性有機溶媒とを含む混合溶媒である。
【0179】
上記緩衝液としては、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸緩衝液(以下、MES緩衝液)、3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸緩衝液(以下、MOPSO緩衝液)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)緩衝液(以下、PIPES緩衝液)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(以下、MOPS緩衝液)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸緩衝液(以下、BES緩衝液)、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸緩衝液(以下、DIPSO緩衝液)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液(以下、HEPES緩衝液)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)緩衝液(以下、POPSO緩衝液)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパン-3-スルホン酸緩衝液(以下、HEPPSO緩衝液)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸緩衝液(以下、HEPPS緩衝液)等が挙げられるが、これらに限定されない。MES緩衝液又はMOPS緩衝液等が好ましく用いられる。
【0180】
緩衝液のpHは適宜調整することができるが、6.5~7.5であることが好ましく、6.9~7.5であることがより好ましく、例えば6.5~7.0、6.9~7.1、又は7.0~7.5である。
【0181】
本発明では、上記反応溶媒の成分として、親水性有機溶媒を用いることができる。親水性有機溶媒は、例えば、親水性の非プロトン性有機溶媒であってもよい。
【0182】
親水性有機溶媒とは、水と自由な比率で混和できる有機溶媒を意味し、スルホラン等のスルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒、N,N’-ジメチルエチレンウレア等のウレア系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、エタノール、tert-ブチルアルコール等のアルコール系溶媒が挙げられる。また、「非プロトン性」有機溶媒とは、プロトン供与性を持たない有機溶媒を意味し、親水性の非プロトン性有機溶媒としては、スルホラン等のスルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒、N,N’-ジメチルエチレンウレア等のウレア系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が挙げられるが、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO),N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF),N,N’-ジメチルエチレンウレア(以下,DMEU)、又はアセトニトリルが好ましく、DMSO又はDMFがより好ましい。
【0183】
なお脱水縮合剤やN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステル、又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体を有機溶媒に溶解又は懸濁して添加する場合、その有機溶媒は、混合溶媒中の「有機溶媒」に含むものとする。有機溶媒は1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0184】
一実施形態では、反応溶媒である混合溶媒中の有機溶媒の比率は、溶媒全体量(緩衝液と有機溶媒を含む混合溶媒の全量)の、15~70体積%(v/v%)であってよく、例えば、20~70体積%、20~65体積%、35~60体積%、35~55体積%、又は50~55体積%であってよい。本発明において、脱水縮合剤やN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)やシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルやN-炭化水素置換イミダゾール誘導体を、水、緩衝液又は有機溶媒等の溶液に溶解又は懸濁して添加する場合、溶媒全体量は、脱水縮合剤やN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)やシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルやN-炭化水素置換イミダゾール誘導体を含む溶液の量を含む。また混合溶媒中の有機溶媒の比率の算出において、脱水縮合剤やN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステル、又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体を有機溶媒に溶解又は懸濁して添加する場合、その有機溶媒の量は、混合溶媒中の有機溶媒の合計量に含めるものとする。
【0185】
親水性有機溶媒がDMSOである場合、混合溶媒中のDMSOの比率は溶媒全体量の20~65体積%であることが好ましく、35~60体積%であることが好ましく、50~55又は50~60体積%であることがより好ましい。親水性有機溶媒がDMSOであり、脱水縮合剤が、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、例えば、HATUなどのベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である場合、混合溶媒中のDMSOの比率は溶媒全体量の35~65体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがより好ましく、例えば50~60体積%であってよい。親水性有機溶媒がDMSOであり、脱水縮合剤が、トリアジン型脱水縮合剤、例えば、DMT-MMなどのトリアジン型4級モルホリニウム誘導体である場合、混合溶媒中のDMSOの比率は溶媒全体量の35~65体積%であることが好ましく、35~60体積%であることがより好ましく、例えば、50~60体積%、又は50~55体積%であってよい。これらの場合、反応溶媒(混合溶媒)のpHは、以下に限定するものではないが、6.5~7.5であることが好ましく、6.9~7.5であることがより好ましく、例えば6.5~7.0、6.9~7.1、又は7.0~7.5であってよい。
【0186】
親水性有機溶媒がDMFである場合、混合溶媒中のDMFの比率は溶媒全体量の20~65体積%であることが好ましく、35~65体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがより好ましい。親水性有機溶媒がDMFであり、脱水縮合剤が、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、例えば、HATUなどのベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である場合、混合溶媒中のDMFの比率は溶媒全体量の35~65体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがより好ましく、例えば50~60体積%であってよい。これらの場合、反応溶媒(混合溶媒)のpHは、以下に限定するものではないが、6.5~7.5であることが好ましく、6.9~7.5であることがより好ましく、例えば6.5~7.0、6.9~7.1、又は7.0~7.5であってよい。
【0187】
親水性有機溶媒がDMEUである場合、混合溶媒中のDMEUの比率は溶媒全体量の20~65体積%であることが好ましく、35~65体積%であることが好ましく、50~60体積%であることがより好ましい。親水性有機溶媒がDMEUであり、脱水縮合剤が、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、例えば、HATUなどのベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である場合、混合溶媒中のDMEUの比率は溶媒全体量の35~65体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがより好ましく、例えば50~60体積%であってよい。これらの場合、反応溶媒(混合溶媒)のpHは、以下に限定するものではないが、6.5~7.5であることが好ましく、6.9~7.5であることがより好ましく、例えば6.5~7.0、6.9~7.1、又は7.0~7.5であってよい。
【0188】
親水性有機溶媒がアセトニトリルである場合、混合溶媒中のアセトニトリルの比率は溶媒全体量の20~65体積%であることが好ましく、35~65体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがより好ましい。親水性有機溶媒がアセトニトリルであり、脱水縮合剤が、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、例えば、HATUなどのベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である場合、混合溶媒中のアセトニトリルの比率は溶媒全体量の35~65体積%であることが好ましく、50~65体積%であることがより好ましく、例えば50~60体積%であってよい。これらの場合、反応溶媒(混合溶媒)のpHは、以下に限定するものではないが、6.5~7.5であることが好ましく、6.9~7.5であることがより好ましく、例えば6.5~7.0、6.9~7.1、又は7.0~7.5であってよい。
【0189】
緩衝液と親水性有機溶媒の添加順序に特に制限はなく、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子を緩衝液に溶解した後に親水性有機溶媒を加えてもよいし、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子に親水性有機溶媒を添加した後に緩衝液を加えてもよい。あるいは、緩衝液と親水性有機溶媒とを事前に混合した溶媒と、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子を、混合することもできる。通常、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子を緩衝液に溶解した後に親水性有機溶媒を加えることが好ましい。
【0190】
第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子を緩衝液に溶解した後、一定時間(例えば、1~15分間)にわたり静置してもよいし、静置することなく直ちに親水性有機溶媒を添加してもよい。また、緩衝液中で第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の熱変性(例えば、90℃以上の温度での加熱した後、室温まで冷却)を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0191】
本発明の製造方法で用いる脱水縮合剤としては、(i)トリアジン型脱水縮合剤、(ii)N-ヒドロキシ含窒素芳環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤(例えばベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤)、(iii)カルボジイミド型脱水縮合剤、(iv)2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤、又は(v)ホルムアミジニウム型脱水縮合剤を用いることができる。脱水縮合剤として(iii)カルボジイミド型脱水縮合剤を用いる場合、カルボジイミド型脱水縮合剤をN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルと組み合わせて用いることができ、(iv)2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤を用いる場合、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤をN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物と組み合わせて用いることができ、(v)ホルムアミジニウム型脱水縮合剤を用いる場合、ホルムアミジニウム型脱水縮合剤をN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体と組み合わせて用いることができる。本発明の製造方法では、N-アシルオキシ含窒素芳香族化合物型活性中間体(例えばベンゾトリアゾリル型活性中間体)、シアノ(アシルオキシイミノ)酢酸エステル型活性中間体又はN’-アシル-N-炭化水素置換イミダゾール型活性中間体を経由してアミド化を引き起こす反応条件を好適に用いることができる。脱水縮合剤は、遊離体又は塩の形態であってよく、好ましくは塩の形態である。
【0192】
一実施形態では、本発明の製造方法は、以下の(i)~(iv)のうち少なくとも1つ又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、全て)の条件を満たしてもよい:
(i)N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤を使用し、それがベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤である、
(ii)N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物を使用し、それがヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体である、
(iii)シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルを使用し、それがシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステルである、
(iv)N-炭化水素置換イミダゾール誘導体を使用し、それがN-アルキルイミダゾール誘導体である。
【0193】
トリアジン型脱水縮合剤は、トリアジンの、少なくとも1つの炭素原子が、4級アンモニウム又はハロゲン等の脱離可能な官能基で置換された構造を有する化合物(例えば、遊離体又は塩)を意味する。トリアジン型脱水縮合剤としては、例えば、文献(Kunishimaら、Tetrahedron、2001年,第57巻、p.1551-1558;Kunishimaら、Chemistry A European Journal、2012年、第18巻、p.15856-15867;日本国特許第4349749号明細書、特開2008-214473号公報、特開2016-141618号公報、特開2016-141619号公報、特開2017-149876号公報等)に記載された脱水縮合剤を用いることができる。より具体的には、トリアジン型脱水縮合剤は、トリアジン型4級モルホリニウム、例えば、4-[4,6-ビス(2,6-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、4-[4-メトキシ-6-(2,6-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、4-(4-t-ブチル-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)4-メトキシモルホリニウム、4-(4,6-ジ-t-ブチル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム、N-[4-メトキシ-6-(N’-フェニルアセトアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、N-[4-メトキシ-6-(N’-メチルアセトアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、N-[4-メトキシ-6-(N’-フェニルベンズアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、N-[4-メトキシ-6-(N’-メチルベンズアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、N-[4-メトキシ-6-(2,5-ジオキソピロリジル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、N-[4-メトキシ-6-(2-ピペリドン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム、及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、塩化物、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。トリアジン型脱水縮合剤は、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム塩であってよい。
【0194】
トリアジン型脱水縮合剤であるトリアジン型4級モルホリニウム誘導体としては、例えば、4-[4,6-ビス(2,6-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムペルクロラート、4-[4-メトキシ-6-(2,6-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムペルクロラート、4-(4-t-ブチル-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)4-メトキシモルホリニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-(4,6-ジ-t-ブチル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド、N-[4-メトキシ-6-(N’-フェニルアセトアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムペルクロラート、N-[4-メトキシ-6-(N’-メチルアセトアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムペルクロラート、N-[4-メトキシ-6-(N’-フェニルベンズアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムクロリド、N-[4-メトキシ-6-(N’-メチルベンズアミド)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムクロリド、N-[4-メトキシ-6-(2,5-ジオキソピロリジル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムクロリド、N-[4-メトキシ-6-(2-ピペリドン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウムクロリド、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムトリフルオロメタンスルホナート等が好ましく、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(以下、DMT-MM)がより好ましい。
【0195】
トリアジン型脱水縮合剤の当量としては、第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。
【0196】
N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造にテトラアルキルアミジニウム構造が付加した化合物を意味する。N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤としては、例えば、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール構造を含むウロニウム型脱水縮合剤)、N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、N-ヒドロキシイミダゾール構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、又はN-ヒドロキシピリジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤等が好ましく、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤、N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤、又は3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤がより好ましく、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤、又は3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤がより好ましい。
【0197】
ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール構造にテトラアルキルアミジニウム構造が付加した化合物を意味する。アミジニウム構造の二つの窒素原子上の4つの置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、窒素原子とともに環を形成していてもよい。上記1-ヒドロキシベンゾトリアゾール構造はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限なく、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいし、ベンゼン環中の一部の炭素原子が窒素原子に置換されていてもよい。
【0198】
ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤は、一般にO-アシル型(ウロニウム型)とN-アシル型(アミニウム型)の2つの形態をとることが文献(Carpinoら、Angewandte Chemie International Edition、2002年、第41巻、p.441-445.)で知られているが、本発明において「ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤」は、O-アシル型(ウロニウム型)とN-アシル型(アミニウム型)の両方の形態を包含する。
【0199】
【0200】
ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤としては、例えば、文献(Knorrら、Tetrahedron Letters、1989年、第30巻、p.1927-1930;Carpinoら、Organic Letters、2001年、第3巻、p.2793-2795;EL-Fahamら,The Journal of Organic Chemistry、2008年、第73巻、p.2731-2737;国際公開第1994/007910号、国際公開第2002/094822号等)に記載された脱水縮合剤を用いることができる。より具体的には、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤は、ベンゾトリアゾリルウロニウム、例えば、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、[(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)ピペリジン-1-イルメチレン]ピペリジニウム等、並びにその誘導体、又は、アザベンゾトリアゾリルウロニウム、例えば、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラエチルウロニウム、[(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-4-モルホリノメチレン]ジメチルアンモニウム、[(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)ピペリジン-1-イルメチレン]ピペリジニウム、[(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)ピロリジン-1-イルメチレン]ピロリジニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、塩化物、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤は、例えば、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩やO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩であってもよい。
【0201】
ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートやO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(以下、HATU)が挙げられる。
【0202】
N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造にテトラアルキルアミジニウム構造が付加した化合物を意味する。アミジニウム構造の二つの窒素原子上の4つの置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、窒素原子とともに環を形成していてもよい。上記N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限なく、ピリドン環上に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤としては、例えば、O-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、O-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N’,N’-ビス(テトラメチレン)ウロニウム、及びO-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N’,N’-ビス(ペンタメチレン)ウロニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては塩化物、臭化物、ヨウ化物、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、O-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩であってもよい。
【0203】
N-ヒドロキシ-2-ピリドン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、O-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(以下、TPTU)が挙げられる。
【0204】
3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造にテトラアルキルアミジニウム構造が付加した化合物を意味する。アミジニウム構造の二つの窒素原子上の4つの置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、窒素原子とともに環を形成していてもよい。上記3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限なく、4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン環上に置換基を有していてもよい。3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤としては、例えば、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’- ビス(テトラメチレン)ウロニウム、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’- ビス(ペンタメチレン)ウロニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては塩化物、臭化物、ヨウ化物、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩であってもよい。
【0205】
3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(以下、TDBTU)が挙げられる。
【0206】
N-ヒドロキシイミダゾール構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、N-ヒドロキシイミダゾール構造にテトラアルキルアミジニウム構造が付加した化合物を意味する。アミジニウム構造の二つの窒素原子上の4つの置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、窒素原子とともに環を形成していてもよい。上記N-ヒドロキシイミダゾール構造はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限なく、N-ヒドロキシイミダゾール環上に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシイミダゾール構造を含むウロニウム型脱水縮合剤としては、例えば、O-(イミダゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、O-(イミダゾール-1-イル)-N,N,N’,N’- ビス(テトラメチレン)ウロニウム、O-(イミダゾール-1-イル)-N,N,N’,N’- ビス(ペンタメチレン)ウロニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては塩化物、臭化物、ヨウ化物、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。N-ヒドロキシイミダゾール構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、O-(イミダゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩であってもよい。
【0207】
N-ヒドロキシイミダゾール構造を含むウロニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、O-(イミダゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0208】
N-ヒドロキシピリジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、N-ヒドロキシピリジン構造にテトラアルキルアミジニウム構造が付加した化合物を意味する。アミジニウム構造の二つの窒素原子上の4つの置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、窒素原子とともに環を形成していてもよい。上記N-ヒドロキシピリジン構造はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限なく、N-ヒドロキピリジン環上に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシピリジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤としては、例えば、O-ピリジル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、O-ピリジル-N,N,N’,N’- ビス(テトラメチレン)ウロニウム、O-ピリジル-N,N,N’,N’- ビス(ペンタメチレン)ウロニウム、O-(4-ジメチルアミノ-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム、O-(4-ジメチルアミノ-ピリジル)-N,N,N’,N’- ビス(テトラメチレン)ウロニウム、O-(4-ジメチルアミノ-ピリジル)-N,N,N’,N’- ビス(ペンタメチレン)ウロニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては塩化物、臭化物、ヨウ化物、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。N-ヒドロキシピリジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤は、O-ピリジル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩やO-4-ジメチルアミノ-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩であってもよい。
【0209】
N-ヒドロキシピリジン構造を含むウロニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、O-(4-ジメチルアミノ-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0210】
N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤(例えば、ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤)の当量としては、第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。
【0211】
カルボジイミド型脱水縮合剤は、N=C=Nで表されるカルボジイミド構造を有する化合物を意味する。N上の置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はない。カルボジイミド型脱水縮合剤としては、例えば、N,N’-ジメチルカルボジイミド、N,N’-ジエチルカルボジイミド、N,N’-ジプロピルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N-tert-ブチル-N’-メチルカルボジイミド、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N-ベンジル-N’-メチルカルボジイミド、N-ベンジル-N’-エチルカルボジイミド、N-ベンジル-N’-プロピルカルボジイミド、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド、N,N’-ビス(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、3-(エチルイミノメチリデンアミノ)プロピルトリメチルアンモニウム、3-(イソプロピルイミノメチリデンアミノ)プロピルトリメチルアンモニウム等のカルボジイミド誘導体、並びにその塩(酸付加塩を含む)を用いることができる。塩の例としては、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、塩化物、ヘキサフルオロホスファート、塩酸塩、臭素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、過塩素酸塩等が挙げられる。3級アミン構造又は4級アンモニウム構造を含むカルボジイミド誘導体がより好ましく、例えば、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド及びその酸付加塩などの塩、N,N’-ビス(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及びその酸付加塩などの塩、3-(エチルイミノメチリデンアミノ)プロピルトリメチルアンモニウム塩、3-(イソプロピルイミノメチリデンアミノ)プロピルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。特に好ましいカルボジイミド型脱水縮合剤の例は、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(以下、EDCI塩酸塩)である。
【0212】
N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシベンゾトリアゾール若しくはその誘導体、N-ヒドロキシトリアゾール若しくはその誘導体、N-ヒドロキシベンゾイミダゾール若しくはその誘導体、N-ヒドロキシイミダゾール若しくはその誘導体、N-ヒドロキシ-2-ピリドン若しくはその誘導体、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン若しくはその誘導体、又はN-ヒドロキシピリジン若しくはその誘導体が好ましく、ヒドロキシベンゾトリアゾール若しくはその誘導体、N-ヒドロキシトリアゾール若しくはその誘導体、N-ヒドロキシ-2-ピリドン若しくはその誘導体、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン若しくはその誘導体、又はN-ヒドロキシピリジン若しくはその誘導体がより好ましい。
【0213】
ヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体は、アミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいし、ベンゼン環中の一部の炭素原子が窒素原子に置換されていてもよい。ヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-6-クロロ-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-6-トリフルオロメチルベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-ニトロ-6―トリフルオロメチルベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-メチル-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-メトキシ-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-tert-ブチル-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4,5,6-トリメチル-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-6-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-5-アザベンゾトリアゾール又は1-ヒドロキシ-4-アザベンゾトリアゾール等を用いることができ、好ましくは、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-メチル-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-メトキシ-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4-tert-ブチル-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-4,5,6-トリメチル-7-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-6-アザベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-5-アザベンゾトリアゾール又は1-ヒドロキシ-4-アザベンゾトリアゾール等のヒドロキシアザベンゾトリアゾール又はその誘導体であり、より好ましくは、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(以下、HOAt)である。
【0214】
N-ヒドロキシトリアゾール又はその誘導体は、アミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、トリアゾール環上4又は5位に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシトリアゾール又はその誘導体は、例えば、1-ヒドロキシ-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチルが挙げられる。
【0215】
N-ヒドロキシベンゾイミダゾール又はその誘導体は、アミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいし、ベンゼン環中の一部の炭素原子が窒素原子に置換されていてもよい。N-ヒドロキシベンゾイミダゾール又はその誘導体は、例えば、N-ヒドロキシベンゾイミダゾール、N-ヒドロキシ-7-アザベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0216】
N-ヒドロキシイミダゾール又はその誘導体は、アミド化反応に阻害しないものであれば、特に制限はなく、イミダゾール環上に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシイミダゾール又はその誘導体は、例えば、N-ヒドロキシイミダゾールが挙げられる。
【0217】
N-ヒドロキシ-2-ピリドン又はその誘導体は、アミド化反応に阻害しないものであれば、特に制限はなく、ピリドン環上3~6位に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシ-2-ピリドン又はその誘導体は、例えば、N-ヒドロキシ-2-ピリドン(以下、HOPO)が挙げられる。
【0218】
3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン又はその誘導体は、アミド化反応に阻害しないものであれば、特に制限はなく、ベンゼン環上に置換基を有していてもよい。3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン又はその誘導体は、例えば、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン、7-クロロ-3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-7-ニトロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-6,7-ジメトキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジンが挙げられる。
【0219】
N-ヒドロキシピリジン又はその誘導体は、アミド化反応に阻害しないものであれば、特に制限はなく、ピリジン環上に置換基を有していてもよい。N-ヒドロキシピリジン又はその誘導体は、例えば、N-ヒドロキシピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン-N-オキシドが挙げられる。
【0220】
シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルはエステル基として、アミド化反応を阻害しない置換基を有していてもよい。シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルとしては、例えば、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アリールエステルが挙げられる。
【0221】
シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステルにおいて、アルキルエステル基部分は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステルとしては、例えば、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸メチル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸プロピル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸tert-ブチル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸ベンジル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸シクロヘキシル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルであり、より好ましくは、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチルである。
【0222】
シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アリールエステルにおいて、アリールエステル基部分は、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいし、ベンゼン環中の一部の炭素原子が窒素原子に置換されていてもよい。シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アリールエステルとしては、例えば、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸フェニル、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸-1-ナフチルが挙げられる。
【0223】
カルボジイミド型脱水縮合剤の当量としては、第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。また、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルの当量としては、それぞれ第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。
【0224】
2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤は、ピリジン環上の窒素原子上に炭化水素置換基を有するピリジニウム塩であって、ピリジン環の2位にハロゲンを有する化合物を意味する。上記ピリジン環はピリジン環上3~6位に置換基を有していてもよい。上記窒素原子上の炭化水素置換基、およびピリジン環上3~6位に置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はない。2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤としては、例えば、2-クロロ-1-メチルピリジニウム、2-ブロモ-1-メチルピリジニウム、2-フルオロ-1-メチルピリジニウム、2-クロロ-1-エチルピリジニウム、2-ブロモ-1-エチルピリジニウム、2-フルオロ-1-エチルピリジニウム、2-フルオロ-1、3-ジメチルピリジニウム、2-クロロ-1-メチルキノリニウム、2-ヨード-1-メチルキノリニウム、2-クロロ-1-(2-オキソ-2-フェネチル)ピリジニウム、2-ブロモ-1-(2-オキソ-2-フェネチル)ピリジニウム、2-クロロ-1-[2-(3-ニトロフェニル)-2-オキソエチル]ピリジニウム、2-クロロ-1-[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]ピリジニウム、2-クロロ-1-[2-(4-クロロフェニル)-2-オキソエチル]ピリジニウム、2-ブロモ-1-[2-(4-ビフェニル)-2-オキソエチル]ピリジニウム、2-ブロモ-1-[2-(3-ニトロフェニル)-2-オキソエチル]ピリジニウム、2-ブロモ-1-[2-(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル]ピリジニウム、2-クロロ-1-ベンジルピリジニウム、2-ヨード-1-エチル-6-メトキシキノリニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては塩化物、臭化物、ヨウ化物、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤は、2-クロロ-1-メチルピリジニウム塩であってもよい。
【0225】
2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージドが挙げられる。
【0226】
2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤の当量としては、第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。また、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)の当量としては、第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。
【0227】
ホルムアミジニウム型脱水縮合剤の二つの窒素原子上の4つの置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、窒素原子とともに環を形成していてもよい。ホルムアミジニウム型脱水縮合剤としては、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウム、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウム、クロロ-N,N,N’,N’-ビス(テトラメチレン)ホルムアミジニウム、クロロ-N,N,N’,N’-ビス(ペンタメチレン)ホルムアミジニウム、2-クロロ-1,3-ジメチル-4,5-ジヒドロピリミジニウム、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウム、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウム、フルオロ-N,N,N’,N’-ビス(テトラメチレン)ホルムアミジニウム等、並びにその誘導体が挙げられる。誘導体の例としては塩化物、臭化物、ヨウ化物、ペルクロラート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスファート等の塩が挙げられる。ホルムアミジニウム型脱水縮合剤は、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウム塩であってもよい。
【0228】
ホルムアミジニウム型脱水縮合剤の好ましい例としては、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(以下、TCFH)が挙げられる。
【0229】
N-炭化水素置換イミダゾール誘導体は、イミダゾール構造の窒素原子上に炭化水素置換基を有する化合物を意味する。上記イミダゾール構造はイミダゾール環2位,4位又は5位上に置換基を有していてもよい。上記炭化水素置換基、およびイミダゾール環2位,4位又は5位上の置換基はアミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はない。N-炭化水素置換イミダゾール誘導体としては、例えば、N-アルキルイミダゾール誘導体、N-アリールイミダゾール誘導体が挙げられる。
【0230】
N-アルキルイミダゾール誘導体は、アミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、イミダゾール環上に置換基を有していてもよい。N-アルキルイミダゾール誘導体としては、例えば、N-メチルイミダゾール(以下、NMI)、1,2-ジメチルイミダゾールが挙げられる。
【0231】
N-アリールイミダゾール誘導体は、アミド化反応を阻害しないものであれば、特に制限はなく、イミダゾール環上に置換基を有していてもよい。N-アリールイミダゾール誘導体としては、例えば、N-フェニルイミダゾール、1-フェニル-2-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0232】
ホルムアミジニウム型脱水縮合剤の当量としては、第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。また、N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体の当量としては、それぞれ第1の一本鎖オリゴRNA分子に対して10~100当量が好ましく、20~40当量がより好ましい。
【0233】
前記脱水縮合剤並びに前記N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物、前記シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステル及び前記N-炭化水素置換イミダゾール誘導体は、市販品を用いてもよいし公知の方法若しくはそれに準じた方法で合成してもよい。
【0234】
一実施形態では、第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子に対して、脱水縮合剤、具体的には、トリアジン型脱水縮合剤、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤(例えばベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤)、カルボジイミド型脱水縮合剤、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤又はホルムアミジニウム型脱水縮合剤を、固体として添加してもよいし、水、緩衝液、親水性有機溶媒又はそれらの混合溶媒等の溶液に溶解又は懸濁して添加してもよい。カルボジイミド型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルとを組み合わせて使用する場合、カルボジイミド型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルのいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物とを組み合わせて使用する場合、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物のいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。ホルムアミジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体とを組み合わせて使用する場合、ホルムアミジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体のいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。
【0235】
また、脱水縮合剤、具体的には、トリアジン型脱水縮合剤、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤(例えばベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤)、カルボジイミド型脱水縮合剤、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤又はホルムアミジニウム型脱水縮合剤に対して、第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子を添加することもできる。この際、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子はいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子は、固体として添加してもよいし、水、緩衝液、親水性有機溶媒又はそれらの混合溶媒等に溶解又は懸濁して添加してもよいが、通常、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の溶液に脱水縮合剤を加えることが好ましい。カルボジイミド型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルとを組み合わせて使用する場合、カルボジイミド型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルに対して、第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子を添加することもできる。この際、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子はいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子は、固体として添加してもよいし、水、緩衝液、親水性有機溶媒又はそれらの混合溶媒等に溶解又は懸濁して添加してもよいが、通常、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の溶液に脱水縮合剤を加えることが好ましい。2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物とを組み合わせて使用する場合、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物に対して、第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子を添加することもできる。この際、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子はいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子は、固体として添加してもよいし、水、緩衝液、親水性有機溶媒又はそれらの混合溶媒等に溶解又は懸濁して添加してもよいが、通常、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の溶液に脱水縮合剤を加えることが好ましい。ホルムアミジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体とを組み合わせて使用する場合、ホルムアミジニウム型脱水縮合剤とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体に対して、第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子を添加することもできる。この際、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子はいずれを先に添加してもよく、両者を同時に添加することもできる。第1の一本鎖オリゴRNA分子及び第2の一本鎖オリゴRNA分子は、固体として添加してもよいし、水、緩衝液、親水性有機溶媒又はそれらの混合溶媒等に溶解又は懸濁して添加してもよいが、通常、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の溶液に脱水縮合剤を加えることが好ましい。
【0236】
本発明において、脱水縮合剤としては、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム塩、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド若しくはその塩、2-クロロ-1-メチルピリジニウム塩又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウム塩が好ましく、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド、又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートがより好ましい。
【0237】
脱水縮合剤としてのカルボジイミド型脱水縮合剤や2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤やホルムアミジニウム型脱水縮合剤と共に用いるN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物としては、ヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体が好ましく、ヒドロキシアザベンゾトリアゾール又はその誘導体がより好ましく、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールがより好ましい。
【0238】
脱水縮合剤としてのカルボジイミド型脱水縮合剤と共に用いるシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルとしては、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸アルキルエステルが好ましく、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチルがより好ましい。
【0239】
脱水縮合剤としてのホルムアミジニウム型脱水縮合剤と共に用いるN-炭化水素置換イミダゾール誘導体としては、N-アルキルイミダゾール誘導体が好ましく、N-メチルイミダゾールがより好ましい。
【0240】
本発明において、脱水縮合剤は、少なくともトリアジン型脱水縮合剤、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含むウロニウム型脱水縮合剤(例えばベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤)、カルボジイミド型脱水縮合剤、2-ハロピリジニウム型脱水縮合剤又はホルムアミジニウム型脱水縮合剤を含んでいればよく、2種類以上を混合してもよい。本発明において、脱水縮合剤やN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)やシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルやN-炭化水素置換イミダゾール誘導体を、水、緩衝液又は親水性有機溶媒等の溶液に溶解又は懸濁して添加する場合、脱水縮合剤やN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)やシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステルやN-炭化水素置換イミダゾール誘導体を含む溶液は、反応溶媒(混合溶媒)の一部を構成する。
【0241】
上記脱水縮合剤の好ましい態様、上記N-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール又はその誘導体)、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エステル又はN-炭化水素置換イミダゾール誘導体の好ましい態様、上記親水性有機溶媒の好ましい態様は、任意に組み合わせることができる。例えば、DMT-MMとDMSOとの組合せ、HATUとDMSOとの組合せ、HATUとDMFとの組合せ、EDCI塩酸塩とHOAtとDMSOとの組み合わせ、EDCI塩酸塩とシアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチルとDMSOとの組み合わせ、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージドとHOAtとDMSOとの組み合わせ、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートとHOAtとDMSOとの組み合わせ、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートとN-メチルイミダゾールとDMSOとの組み合わせが挙げられ、特に好ましい組み合わせの態様は、HATUとDMSOとの組合せ、HATUとDMFとの組合せ、EDCI塩酸塩とHOAtとDMSOとの組み合わせ、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートとHOAtとDMSOとの組み合わせが挙げられる。
【0242】
反応溶媒(混合溶媒)のpHは適宜調整することができるが、6.5~7.5であることが好ましく、6.9~7.5であることがより好ましく、例えば6.5~7.0、6.9~7.1、又は7.0~7.5である。
【0243】
第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子の反応(アミド化反応)に用いる時間は、適宜設定することができるが、典型的には1時間以上、例えば、1~48時間、又は1~24時間であってよい。
【0244】
一実施形態では、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子は、等モル量で混合してもよい。本発明において「等モル量で混合する」とは、第1の一本鎖オリゴRNA分子と第2の一本鎖オリゴRNA分子を、1:1.1~1.1:1のモル比で混合することを意味する。アミド化反応液(反応溶媒)中で形成された本発明に係る遺伝子発現抑制配列を含むヘアピン型一本鎖RNA分子は、当業者に公知の方法により、精製することができる。精製技術としては、逆相クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法、ゲル濾過、カラム精製、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)など、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
特許文献2に記載の方法では、ごく短鎖のうちに伸長反応が停止したことによる短鎖核酸不純物や欠損体などの核酸不純物の生成により、反応液中の目的産物の純度の低下が起こる。一方、本発明の方法は、核酸不純物を低減できる点で有利である。好ましい実施形態では、本発明の方法は、核酸不純物の生成を低減しつつ、汎用型RNAアミダイトを使用して安定性の高い遺伝子発現抑制性一本鎖RNA分子を製造することができる。
【0246】
本発明の方法により製造されたヘアピン型一本鎖RNA分子は、常法により、生体内又は細胞内に投与することにより、標的遺伝子の発現を抑制するために用いることができる。
【0247】
なお、本発明における上記の好ましい態様、例えば、第1の一本鎖オリゴRNA分子、第2の一本鎖オリゴRNA分子、緩衝液、有機溶媒、脱水縮合剤、pH、有機溶媒の比率、反応時間、使用量、その他の反応条件などは、任意に組み合わせることができる。
【0248】
本発明は、本発明の方法に従ってヘアピン型一本鎖RNA分子の製造のために第2の一本鎖オリゴRNA分子として用いることができる、一本鎖オリゴRNA分子を提供する。
【0249】
一実施形態では、標的遺伝子であるTGF-β1遺伝子又はGAPDH遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の製造に用いる一本鎖オリゴRNA分子の例として、下記(a)又は(b)が挙げられるが、これらに限定されない:
(a)1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号3で表される塩基配列からなる一本鎖オリゴRNA分子、
(b)1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号6で表される塩基配列からなる一本鎖オリゴRNA分子。
【0250】
さらに本発明は、本発明に係る一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ(ペア)を含む、標的遺伝子の発現を抑制するためのヘアピン型一本鎖RNA分子の製造用のキットにも関する。そのようなキットは、本発明に係る標的遺伝子の発現を抑制するヘアピン型一本鎖RNA分子の製造方法を実施するために、好適に用いることができる。
【0251】
一実施形態では、キットの例として、以下の(1)又は(2)に記載の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせを含む、TGF-β1遺伝子又はGAPDH遺伝子の発現を抑制するためのヘアピン型一本鎖RNA分子の製造用のキットが挙げられるが、これらに限定されない:
(1)24番目のリボヌクレオチド残基がLx1と連結されている配列番号2で表される塩基配列からなる第1の一本鎖オリゴRNA分子と、1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号3で表される塩基配列からなる第2の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ、
(2)22番目のリボヌクレオチド残基がLx1と連結されている配列番号5で表される塩基配列からなる第1の一本鎖オリゴRNA分子と、1番目のリボヌクレオチド残基がLx2と連結され、26番目と27番目のリボヌクレオチド残基がLyを介して連結されている配列番号6で表される塩基配列からなる第2の一本鎖オリゴRNA分子の組み合わせ。
【実施例】
【0252】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0253】
(参考例1)
プロリンジアミド型アミダイトの合成
プロリンジアミド型アミダイトは、例えば、国際公開WO2012/017919の記載に従って合成することができる。具体的な合成例を以下に示すが、合成方法はそれにより限定されない。
【0254】
【0255】
(1)Fmoc-ヒドロキシアミド-L-プロリン(化合物1)
Fmoc-L-プロリン(10.00g、29.64mmol)、4-アミノ-1-ブタノール(3.18g、35.56mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(10.90g、70.72mmol)を混合し、その混合物に対し、減圧下で脱気し、アルゴンガスを充填した。得られた混合物に、無水アセトニトリル(140mL)を室温で加え、さらに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(7.34g、35.56mmol)の無水アセトニトリル溶液(70mL)を添加した後、アルゴン雰囲気下、室温で15時間撹拌した。反応終了後、生成した沈殿をろ別し、回収したろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣にジクロロメタン(200mL)を加え、飽和重曹水(200mL)で洗浄した。そして、有機層を回収し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去し、その残渣にジエチルエーテル(200mL)を加え、粉末化した。生じた粉末を濾取することにより、無色粉末状物質としてFmoc-ヒドロキシアミド-L-プロリンが得られた。Fmocは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基である。
【0256】
(2)DMTr-アミド-L-プロリン(化合物2)
Fmoc-ヒドロキシアミド-L-プロリン(7.80g、19.09mmol)を無水ピリジン(5mL)と混合し、室温で2回共沸乾燥した。得られた残留物に、4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(8.20g、24.20mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(23mg、0.19mmol)及び無水ピリジン(39mL)を加えた。この混合物を、室温で1時間撹拌した後、メタノール(7.8mL)を加え、室温で30分撹拌した。この混合物を、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、飽和重曹水(150mL)で洗浄後、有機層を分離した。この有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた未精製の残渣に、無水N,N-ジメチルホルムアミド(39mL)及びピペリジン(18.7mL、189mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、その混合液から、減圧下、室温で、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(商品名Wakogel C-300、展開溶媒 ジクロロメタン:メタノール=9:1、0.05%ピリジン含有)に供することにより、淡黄色油状物質としてDMTr-アミド-L-プロリンが得られた。DMTrは、4,4’-ジメトキシトリチル基である。
【0257】
(3)DMTr-ヒドロキシジアミド-L-プロリン(化合物3)
得られたDMTr-アミド-L-プロリン(6.01g、12.28mmol)、N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(2.83g、14.74mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.98g、29.47mmol)及びトリエチルアミン(4.47g、44.21mmol)の無水ジクロロメタン溶液(120mL)を混合した。この混合液に、さらに、アルゴン雰囲気下、室温で、6-ヒドロキシヘキサン酸(1.95g、14.47mmol)を加え、その後、アルゴン雰囲気下、室温で、1時間撹拌した。得られた混合液をジクロロメタン(600mL)で希釈し、飽和食塩水(800mL)で3回洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。これにより、淡黄色泡状物質としてDMTr-ヒドロキシジアミド-L-プロリンが得られた。
【0258】
(4)DMTr-ジアミド-L-プロリンアミダイト(化合物4)
得られたDMTr-ヒドロキシジアミド-L-プロリン(8.55g、14.18mmol)を無水アセトニトリルと混合し、室温で3回共沸乾燥した。得られた残留物に、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(2.91g、17.02mmol)を加え、減圧下で脱気し、アルゴンガスを充填した。その混合物に対し、無水アセトニトリル(10mL)を加え、さらに、2-シアノエトキシ-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(5.13g、17.02mmol)の無水アセトニトリル溶液(7mL)を加えた。この混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した。得られた混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和重曹水(200mL)で3回洗浄した後、飽和食塩水(200mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を、充填剤としてアミノシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=1:3、0.05%ピリジン含有)に供することにより、無色シロップ状物質としてDMTr-ジアミド-L-プロリンアミダイトが得られた。
【0259】
(実施例1)
1.プロリンエステル型アミダイトの合成(シアノエチル保護)
【0260】
【0261】
(1)Boc-L-プロリン-シアノエチルエステル(化合物5)
Boc-L-プロリン(10.00g、46.46mmol)、2-シアノエタノール(3.96g、55.75mmol)を混合し、その混合物に対し、ジクロロメタン(100mL)を室温で加え、氷浴にて冷却した。N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(9.80g、51.10mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.12g、9.29mmol)を添加した後、氷浴を外し、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。得られた混合液を蒸留水(100mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=19:1)に供することにより、油状物質としてBoc-L-プロリン-シアノエチルエステル(12.47g、収率100%)を得た。Bocは、ブトキシカルボニル基である。
【0262】
(2)N-アミド-L-プロリン-シアノエチルエステル(化合物6)
Boc-L-プロリン-シアノエチルエステル(12.47g、46.46mmol)をジオキサン(29mL)と混合した。得られた混合物に4M塩化水素ジオキサン溶液(44mL)を加え、この混合物を室温で2時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた未精製の残渣に、ジクロロメタン(90mL)を加えた。この混合物に6-ヒドロキシヘキサン酸(8.09g、61.20mmol)とトリエチルアミン(9.40g、92.91mmol)を加え、氷浴にて冷却した。EDCI塩酸塩(9.80g、51.10mmol)を添加した後、氷浴を外し、室温で4時間撹拌した。得られた混合液を蒸留水(100mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=9:1)に供することにより、油状物質としてN-アミド-L-プロリン-シアノエチルエステル(10.16g、収率77%)を得た。
【0263】
(3)シアノエチル-L-プロリンアミダイト(化合物7)
得られたN-アミド-L-プロリン-シアノエチルエステル(5.00g、17.71mmol)を無水アセトニトリル(40mL)と混合し、減圧下で脱気し、アルゴンガスを充填した。その混合物に対し、テトラゾール(1.49g、21.25mmol)とジイソプロピルアミン(2.15g、21.25mmol)を加え、さらに2-シアノエトキシ-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(6.41g、21.25mmol)の無水アセトニトリル溶液(10mL)を加えた。この混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。得られた混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を、充填剤としてアミノシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=1:4)に供することにより、油状物質としてシアノエチル-L-プロリンアミダイト(7.03g、収率82%)を得た。
【0264】
2.プロリンエステル型アミダイトの合成(2,4-ジメトキシベンジル保護)
【0265】
【0266】
(1)Fmoc-L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(化合物8)
Fmoc-L-プロリン(12.04g、35.67mmol)、2,4-ジメトキシベンジルアルコール(5.00g、29.73mmol)を混合し、その混合物に対し、ジクロロメタン(100mL)を室温で加えた。EDCI塩酸塩(6.84g、35.67mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.36g、2.97mmol)を添加した後、室温で3時間撹拌した。得られた混合液を蒸留水(100mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:2)に供することにより、Fmoc-L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(13.24g、収率91%)を得た。Fmocは、フルオレニルメチルオキシカルボニル基である。
【0267】
(2)L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(化合物9)
Fmoc-L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(13.24g、27.16mmol)をジクロロメタン(130mL)と混合した。得られた混合物にジアザビシクロウンデセン(4.96g、32.59mmol)を加え、この混合物を室温で1時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=9:1)に供することにより、油状物質としてL-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(6.39g、収率89%)を得た。
【0268】
(3)N-アミド-L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(化合物10)
L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(6.39g、24.09mmol)をジクロロメタン(120mL)と混合した。この混合物に6-ヒドロキシヘキサン酸(3.82g、28.90mmol)とトリエチルアミン(4.87g、48.17mmol)を加えた。EDCI塩酸塩(5.54g、28.90mmol)を添加した後、室温で16時間撹拌した。得られた混合液を蒸留水(100mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:メタノール=9:1)に供することにより、油状物質としてN-アミド-L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(5.22g、収率57%)を得た。
【0269】
(4)(2,4-ジメトキシ)ベンジル-L-プロリンアミダイト(化合物11)
N-アミド-L-プロリン-(2,4-ジメトキシ)ベンジルエステル(2.00g、5.27mmol)を無水アセトニトリル(27mL)と混合し、減圧下で脱気し、アルゴンガスを充填した。その混合物に対し、テトラゾール(0.44g、6.32mmol)とジイソプロピルアミン(0.64g、6.32mmol)を加え、さらに2-シアノエトキシ-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.91g、6.32mmol)を加えた。この混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で23時間撹拌した。得られた混合物をクロロホルム(60mL)で希釈し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(60mL)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を、充填剤としてアミノシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=1:4)に供することにより、油状物質として(2,4-ジメトキシ)ベンジル-L-プロリンアミダイト(2.27g、収率74%)を得た。
【0270】
(参考例2)
グリシンジアミド型アミダイトの合成
グリシンジアミド型アミダイトは、例えば、国際公開WO2013/103146の記載に従って合成することができる。具体的な合成例を以下に示すが、合成方法はそれにより限定されない。
【0271】
【0272】
(1)Fmoc-ヒドロキシアミド-グリシン(化合物12)
Fmoc-グリシン(4.00g、13.45mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.33g、16.15mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(4.94g、32.29mmol)の無水N,N-ジメチルホルムアミド溶液(100mL)に4-アミノブタノール(1.44g、16.15mmol)の無水N,N-ジメチルホルムアミド溶液(30mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で終夜撹拌した。生成した沈殿をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣にジクロロメタン(200mL)を加え、飽和重曹水で3回洗浄した。更に飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール(95:5)に付し、Fmoc-ヒドロキシアミド-グリシン(4.30g、87%)を得た。
【0273】
(2)Fmoc-DMTr-アミド-グリシン(化合物13)
化合物12(4.20g、11.40mmol)に対し無水ピリジンを用いて3回共沸乾燥した。その共沸残渣に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(5.80g、17.10mmol)及び無水ピリジン(80mL)を加え、室温下で終夜撹拌した。得られた反応混合物にメタノール(20mL)を加え室温で30分撹拌した後、減圧下で溶媒を留去した。その後、ジクロロメタン(200mL)を加え、飽和重曹水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。未精製のFmoc-DMTr-アミド-グリシン(11.40g)を得た。
【0274】
(3)DMTr-アミド-グリシン(化合物14)
未精製の化合物13(11.40g、16.99mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(45mL)及びピペリジン(11.7mL)を室温で加え、室温で終夜撹拌した。反応混合物を減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール(9:1)+0.05%ピリジン)に付し、DMTr-アミド-グリシン(4.90g、96%、 2steps)を得た。
【0275】
(4)DMTr-ヒドロキシジアミド-グリシン(化合物15)
化合物14(4.80g、10.70mmol)を無水ピリジンで3回共沸乾燥後、アルゴン雰囲気下で6-ヒドロキシヘキサン酸(1.70g、12.84mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.46g、12.84mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(3.93g、25.69mmol)、及び無水ジクロロメタン(60mL)を室温で加え、10分間撹拌した。このようにして得た混合物にトリエチルアミン(3.90g、38.53mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で終夜撹拌した。得られた反応混合物にジクロロメタン(200mL)を加え飽和重曹水で3回、更に飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を分取し硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ジクロロメタン-メタノール(95:5)+0.05%ピリジン)に付し、DMTr-ヒドロキシジアミド-グリシン(4.80g、80%)を得た。
【0276】
(5)DMTr-ジアミド-グリシンアミダイト(化合物16)
化合物15(4.70g、8.35mmol)を無水ピリジンで3回共沸乾燥した。次に、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(1.72g、10.02mmol)を加え、減圧下で脱気してアルゴンガスを充填し、無水アセトニトリル(5mL)を加えた。さらに、2-シアノエトキシ-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(3.02g、10.02mmol)の無水アセトニトリルジクロロメタン混合溶液(1:1)(4mL)を加え、混合物をアルゴン雰囲気下、室温で4時間撹拌した。得られた反応混合物にジクロロメタン(150mL)を加え、飽和重曹水で2回、更に飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を分取し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。アミノシリカを用いたカラムクロマトグラフ(展開溶媒:n-ヘキサン-アセトン(3:2)+0.1%トリエチルアミン)に残渣を付し、DMTr-ジアミド-グリシンアミダイト(4.50g、71%、HPLC98.2%)を得た。
【0277】
(実施例2)
グリシンエステル型アミダイトの合成(シアノエチル保護)
【0278】
【0279】
(1)Boc-グリシン-シアノエチルエステル(化合物17)
Boc-グリシン(5.00g、28.54mmol)、2-シアノエタノール(2.40g、33.76mmol)を混合し、その混合物に対し、ジクロロメタン(50mL)を室温で加え、氷浴にて冷却した。N-(3’-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(6.00g、31.30mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.70g、5.73mmol)を添加した後、氷浴を外し、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。得られた混合液を蒸留水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:2)に供することにより、Boc-グリシン-シアノエチルエステル(5.70g、収率88%)を得た。
【0280】
(2)グリシン-シアノエチルエステル(化合物18)
Boc-グリシン-シアノエチルエステル(2.80g、12.27mmol)をジオキサン(7.5mL)と混合した。得られた混合物に4M塩化水素ジオキサン溶液(20mL)を加え、この混合物を室温で3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた白色の固体を酢酸エチルで洗浄した。真空乾燥し、グリシン-シアノエチルエステル(1.90g)を得た。
【0281】
(3)6-(4,4’-ジメトキシトリチル)ヘキサン酸(化合物21)
共沸乾燥した6-ヒドロキシヘキサン酸(1.2g、9.08mmol)とDMAP(113mg、0.92mmol)のピリジン溶液(30mL)に4,4-ジメトキシトリチルクロリド(3.1g、9.15mmol)を加えて室温にて5時間撹拌した後、メタノール(5mL)を加えて30分撹拌した。混合液を減圧濃縮した後、ジクロロメタンを加えて溶液を希釈した。この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。減圧乾燥し、未精製の6-(4,4’-ジメトキシトリチル)ヘキサン酸(6.2g)を得た。
【0282】
(4)N-アミド-グリシン-シアノエチルエステル(化合物19)
グリシン-シアノエチルエステル(0.85g、6.70mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(15mL)に溶かした。この混合物に6-(4,4’-ジメトキシトリチル)ヘキサン酸(6.2g)とトリエチルアミン(1.35g、13.34mmol)を加え氷冷下で撹拌した。EDC(2.55g、13.30mmol)を添加した後、氷浴を外し室温で15時間撹拌した。得られた混合液を減圧濃縮し、ジクロロメタンを加えて溶液を希釈した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和食塩水で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=1:1、0.05%ピリジン含有)に供することにより、白色固体を得た(2.50g、収率69%)。得られた白色固体(2.50g、4.59mmol)を80%酢酸水溶液(30mL)に加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液を分液ロートに入れ、水層から脱保護した4,4-ジメトキシトリチル基が除去できるまでヘキサンにより洗浄した。水層にトルエンを加え、共沸を3回行った。真空乾燥することにより、白色固体としてN-アミド-グリシン-シアノエチルエステル(0.80g、収率72%)を得た。
【0283】
(5)シアノエチル-グリシンアミダイト(化合物20)
N-アミド-グリシン-シアノエチルエステル(0.80g、3.30mmol)を無水アセトニトリルで2回共沸した。ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(0.68g、3.97mmol)を加え、真空乾燥した。この混合物に無水アセトニトリル(3mL)を加えた。2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(1.20g、3.98mmol)の無水アセトニトリル溶液(1mL)を加えた。この混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。得られた混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。得られたろ液について、減圧下に溶媒を留去した。油状物質としてシアノエチル-グリシンアミダイト(1.4g)を得た。
【0284】
(実施例3)
後述の実施例4では、TGF-β1遺伝子発現抑制配列を有するヘアピン型一本鎖RNA分子(以下、ssTbRNAとも称する。)を、その2つの分割フラグメントである、末端にアミノ基を有する第1の一本鎖オリゴRNA分子(以下、ストランドA)と、末端にカルボキシル基を有する第2の一本鎖オリゴRNA分子(ストランドB)をアミド化反応により連結することで作製する(
図1参照)。
【0285】
そこで本実施例では、Ly、Lx1及びLx2が以下に示す構造のストランドA及びストランドB-1の合成を行った。
【0286】
【0287】
ストランドA及びストランドB-1は、ホスホロアミダイト法により、核酸自動合成装置(AKTA oligopilot plus 10、GE Healthcare Life Sciences)を使用して合成した。この合成には、RNAアミダイトとしてTBDMSアミダイトを用いた。ストランドB-1の3’末端には、保護グアノシンを結合した核酸合成用ポリマービーズNittoPhase(登録商標;日東電工株式会社) HL rG(ibu)を用い、Lyの連結のために、特殊アミダイトとしてDMTr-ジアミド-L-プロリンアミダイト(化合物4)を、Lx2の連結のために、シアノエチル-L-プロリンアミダイト(化合物7)又は(2,4-ジメトキシ)ベンジル-L-プロリンアミダイト(化合物11)を用いた。また、ストランドAの3’末端には、3’-PT Amino-Modifier C4 CPG(化合物名:N-(4-(4,4’-ジメトキシトリチルオキシ)-ブチル)-(2-カルボキシアミド)-フタルイミジル-lcaa-CPG;Link Technologies)を用いた。核酸の固相合成及び合成後の脱保護反応は常法に従い行った。ここで、シアノエチル基の脱保護は固相担体からの切り出し時に行われる。(2,4-ジメトキシ)ベンジル基の脱保護は合成終了後の固相担体を3%トリクロロ酢酸/トルエン溶液中で1時間静置した後、溶液を除去することで行った。化合物7又は化合物11のいずれを用いた場合でも同じストランドB-1が得られる。
【0288】
核酸合成後の反応溶液に塩化ナトリウム水溶液と2-プロパノールを加えて遠心分離し、上清を除去した。得られた沈殿物を注射用水に溶解させ、逆相クロマトグラフィー(Inertsil ODS-3,GL Sciences;移動相A :50mM TEAB緩衝液,5%アセトニトリル;移動相B:50mM TEAB緩衝液,50%アセトニトリル)にて精製した。目的のフラクションに塩化ナトリウム水溶液とエタノールを加えて遠心分離し、沈殿物を回収した。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。回収された目的物は、3’末端に、アミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx1を有するストランドAと、5’末端に、カルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx2を有するストランドB-1である。ストランドB-1のLy及びLx2はピロリジン骨格を有している。
【0289】
下記実施例において、ストランドAの末端のアミノ基と、ストランドB-1の末端のカルボキシル基をアミド結合により連結し、ヘアピン型一本鎖RNA分子(ssTbRNA)を作製する。
【0290】
(実施例4)
実施例3で合成したストランドA及びストランドB-1を用い、下記の操作A~Cのいずれかの方法を用いて各種反応条件下でアミド化反応を行い、ストランドA及びストランドB-1を連結し、反応収率をHPLC分析にて決定した。
・操作A:ストランドAの5.3mM水溶液380μLとストランドB-1の5.6mM水溶液360μLを混合し、水を加えて2mLに定容した溶液から、30μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、有機溶媒と、脱水縮合剤の0.4M水溶液を加え、室温で撹拌した。
・操作B:ストランドAの5.3mM水溶液380μLとストランドB-1の5.6mM水溶液360μLを混合し、水を加えて2mLに定容した溶液から、30μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、有機溶媒と、脱水縮合剤の0.4M有機溶媒溶液を加え、室温で撹拌した。なおこの脱水縮合剤溶液は、それと混合した有機溶媒(下記表に記載)と同じ種類の有機溶媒を用いて調製した。
・操作C:ストランドAの5.3mM水溶液380μLとストランドB-1の5.6mM水溶液360μLを混合し、水を加えて2mLに定容した溶液から、30μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、脱水縮合剤を固体として加え、室温で撹拌した。
・操作D:ストランドAの4.8mM水溶液170μLとストランドB-1の4.8mM水溶液170μLを混合し、水を加えて1mLに定容した溶液から、38μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶液を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、有機溶媒と、脱水縮合剤の0.4M有機溶媒溶液を加え、室温で撹拌した。なおこの脱水縮合剤溶液は、それと混合した有機溶媒(下記表に記載)と同じ種類の有機溶媒を用いて調製した。
・操作E:ストランドAの4.8mM水溶液170μLとストランドB-1の4.8mM水溶液170μLを混合し、水を加えて1mLに定容した溶液から、38μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶液を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、脱水縮合剤を固体として加え、室温で撹拌した。
・操作F:ストランドAの4.8mM水溶液170μLとストランドB-1の4.8mM水溶液170μLを混合し、水を加えて1mLに定容した溶液から、38μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶液を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、有機溶媒と、脱水縮合剤の1.6M有機溶媒溶液を加え、室温で撹拌した。なおこの脱水縮合剤溶液は、それと混合した有機溶媒(下記表に記載)と同じ種類の有機溶媒を用いて調製した。
・操作G:ストランドAの4.8mM水溶液170μLとストランドB-1の4.8mM水溶液170μLを混合し、水を加えて1mLに定容した溶液から、38μLを測り取り、減圧エバポレーター及び真空ポンプにて溶液を留去し乾燥させた。得られた残渣に室温で緩衝液を添加して溶解させた。その後、有機溶媒と、脱水縮合剤の0.2M溶液(注射用水とアセトニトリルの体積比にて1:1の混合溶液)を加え、室温で撹拌した。
【0291】
脱水縮合剤の添加から1、3、5、8、及び23時間後にサンプリングを行い、反応液のHPLC分析を行い、反応収率を決定した。HPLC分析条件は以下の通りである。
・カラム:XBridge Oligonucleotide BEH C18(Waters)4.6×50mm、2.5μm
・カラム温度:60℃
・移動相A:200mM TEAA水溶液(pH7.0)/アセトニトリル=95/5
・移動相B:200mM TEAA水溶液(pH7.0)/アセトニトリル=50/50
・展開条件:A/B=100/0(0-3min)、100/0→70/30(3-23min、リニアグラジエント)、70/30(23-33min)、70/30→100/0(33-33.1min、リニアグラジエント)、100/0(33.1-45min)
・流速:1.0mL/min
・検出:PDA検出器(254nm)
・注入量:10μL
【0292】
反応収率(%)は、HPLC解析結果に基づき、以下の式で算出した。
反応収率(%)=(ssTbRNAのピーク面積)/(クロマトグラム中の総ピーク面積)×100
【0293】
1)脱水縮合剤の検討
脱水縮合剤を検討するために、上記の方法により、試験例1~4、21~32及び比較例1~9、12~22についてアミド化反応を行った。試験例1~4、21~32及び比較例1~9、12~22における、操作、添加した緩衝液の種類及び添加量、添加した有機溶媒の種類及び添加量、並びに添加した脱水縮合剤の種類及び添加量を表1、表2、及び表3に示す。
【0294】
【0295】
MOPS、DMT-MM、HATU、EDCI、HOAtの意味については上述している。
【0296】
HBTUは、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートである。TSTUは、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレートである。TFFHは、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートである。COMU(登録商標;Luxembourg Bio Technologies Ltd.)は、1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノ)]ウロニウムヘキサフルオロホスファートである。PyBOPは、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファートである。DPPAは、ジフェニルホスホリルアジドである。CDIはカルボニルジイミダゾールである。
【0297】
【0298】
HCTUは、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートである。TPTUは、O-(1,2-ジヒドロ-2-オキソ-1-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートである。TDBTUは、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートである。HOBtは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである。HOPOは、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシドである。TCFHは、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファートである。NMIは、N-メチルイミダゾールである。化合物22は、1-ヒドロキシ-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチルである。化合物23は、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチルである。化合物24は、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジンである。化合物25は、4-(ジメチルアミノ)ピリジン-N-オキシドである。化合物26は、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージドである。
【0299】
【0300】
HOTTは、N,N,N’,N’-テトラメチル-S-(1-オキシド-2-ピリジル)チオウロニウムヘキサフルオロホスファートである。DEPBTはリン酸ジエチル3,4-ジヒドロ―4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イルである。DMAPは4-ジメチルアミノピリジンである。DICはジイソプロピルカルボジイミドである。化合物27は3-ニトロ-1-トシル-1,2,4-トリアゾールである。化合物28はN-tert-ブチル-5-メチルイソオキサゾリウムパークロレートである。化合物29は2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナンである。
【0301】
表4、表5、及び表6に脱水縮合剤による反応性の違いを示す。
【0302】
【0303】
表4に示されるように、脱水縮合剤としてDMT-MM、HATU、HBTU、又はEDCI塩酸塩とHOAtとを組み合わせて使用した場合に高い収率が得られた(試験例1~4)一方、HATU、HBTUと同じベンゾトリアゾリル構造を含む脱水縮合剤であっても、PyBOP等のホスホニウム型脱水縮合剤では高い収率は得られなかった(比較例5)。また、ウロニウム型脱水縮合剤においても、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造を含まないTSTU、TFFH、COMU(登録商標;Luxembourg Bio Technologies Ltd.)では高い収率は得られなかった(比較例2~4)。
【0304】
【0305】
また表5に示されるように、脱水縮合剤としてHCTU、TPTU又はTDBTU単独の場合、EDCI塩酸塩と、HOBt、化合物22、HOPO、化合物23、化合物24若しくは化合物25とを組み合わせた場合、TCFHと、HOAt若しくはNMIとを組み合わせた場合、又は、化合物26とHOAtとを組み合わせた場合に高い収率が得られた(試験例21~32)。
【0306】
【0307】
表6に示されるように緩衝液の代わりに注射用水を使ったところ、収率が低くなる結果が得られた(比較例21、22)。
【0308】
以上の結果から、N-ヒドロキシ含窒素芳香環構造(例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール構造)を含むウロニウム型脱水縮合剤(例えばベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤)又はEDCI塩酸塩とN-ヒドロキシ含窒素芳香族化合物とを組み合わせた場合において高い収率が得られることが示された。一方、脱水縮合剤としてDPPAやCDIを用いた場合では、それぞれ単独又はHOAtと組み合わせても高い収率は得られなかった(比較例6~9)。
【0309】
2)トリアジン型脱水縮合剤を用いたアミド化反応
トリアジン型脱水縮合剤を用いたアミド化反応の反応条件を検討するために、DMT-MMを脱水縮合剤に用いて上記の方法により、試験例1、5~14及び比較例10のアミド化反応を行った。試験例1、5~14及び比較例10における、操作、添加した緩衝液の種類及び添加量、添加した有機溶媒の種類及び添加量並びに脱水縮合剤の種類及び添加量を表7に示す。
【0310】
【0311】
表8~10に有機溶媒の添加効果、有機溶媒比率の影響、緩衝液pHの影響について示す。表中の有機溶媒比率は、アミド化に使用した脱水縮合剤溶液に含まれる有機溶媒の量も、有機溶媒の合計量に含めて算出した。
【0312】
【0313】
表8に示されるように、有機溶媒を添加しない場合(比較例10)と比べて、有機溶媒の添加により目的物の収率が向上する結果が得られた。特にDMSOを添加した場合に高い効果が得られた(試験例1)。
【0314】
【0315】
表9に示されるように、DMSOの比率を溶媒全体の35~60体積%としたとき、目的物が高い収率で得られた(試験例1、9~11)。
【0316】
【0317】
表10に示されるように、pH6.5~7.5の範囲で特に高い収率が得られた。pHが6.0まで低下すると、反応速度の低下により収率が低くなる傾向が見られた。
【0318】
3)ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤を用いたアミド化反応
ベンゾトリアゾリルウロニウム型脱水縮合剤を用いたアミド化反応の反応条件を検討するために、HATUを脱水縮合剤に用いて、上記の方法により、試験例2、15~20、33~38及び比較例11についてアミド化反応を行った。試験例2、15~20、33~38及び比較例11における、操作、添加した緩衝液の種類及び添加量、添加した有機溶媒の種類及び添加量並びに添加した脱水縮合剤の種類及び添加量を表11に示す。
【0319】
【0320】
表12、13に有機溶媒の添加効果、有機溶媒比率の影響について示す。
【0321】
【0322】
表12に示されるように、有機溶媒を添加しない場合(比較例11)と比べて、有機溶媒の添加により目的物の収率が向上する結果が得られた(試験例2、16~20、38)。特に非プロトン性の親水性有機溶媒を添加した場合に高い効果が得られた。
【0323】
【0324】
表13に示されるように、DMSOの比率を溶媒全体の20~65体積%としたとき、目的物が高い収率で得られた(試験例2、15、33、34)。また、DMF、DMEU、アセトニトリルの比率を溶媒全体の50~65体積%としたときも、目的物が高い収率で得られた(試験例16,17,19、35~37)。
【0325】
(実施例5)
ssTbRNAの単離精製
1)DMT-MMを用いたアミド化反応
ストランドA水溶液及びストランドB-1水溶液より各1μmolを測り取って混合し、遠心濃縮機にて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に1M MOPS緩衝液を80μL添加して溶解させ、溶液を95℃まで加熱後、室温まで放冷した。1M DMT-MM水溶液を80μL、DMSOを100μL添加し撹拌後、室温にて6時間静置した。上記反応溶液に2M塩化ナトリウム水溶液を20μLと、エタノール800μLを加えて撹拌し、-30℃にて静置後遠心分離し、上清を除去し、取得した沈殿物を乾燥させた。沈殿物を注射用水に溶解させ、強陰イオン交換クロマトグラフィー(DNAPac PA100、Thermo Fisher Scientific;移動相A:25mM Tris-HCl緩衝液、10%アセトニトリル;移動相B:25mM Tris-HCl緩衝液、10%アセトニトリル, 700mM NaClO4)にて精製し、目的物を分取した。目的のフラクションをエタノール沈殿にて回収し、白色固体11.7mg(RP-HPLC純度:90%、収率:69%)を得た。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。
【0326】
2)HATUを用いたアミド化反応
ストランドA水溶液及びストランドB-1水溶液より各1μmolを測り取って混合し、遠心濃縮機にて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に1M MOPS緩衝液を100μL添加して溶解させ、溶液を95℃まで加熱後、室温まで放冷した。HATUの0.2M DMSO溶液を100μL添加し撹拌後、室温にて4時間静置した。上記反応溶液に2M塩化ナトリウム水溶液を20μLと、エタノール800μLを加えて撹拌し、-30℃にて静置後遠心分離し、上清を除去し、取得した沈殿物を乾燥させた。沈殿物を注射用水に溶解させ、強陰イオン交換クロマトグラフィー(DNAPac PA100、Thermo Fisher Scientific;移動相A:25mM Tris-HCl緩衝液、10%アセトニトリル;移動相B:25mM Tris-HCl緩衝液、10%アセトニトリル,700mM NaClO4)にて精製し、目的物を分取した。目的のフラクションをエタノール沈殿にて回収し、白色固体14.1mg(AEX-HPLC純度:96%,収率83%)を得た。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。
【0327】
上記の方法で得られたssTbRNAの純度をRP-UPLC(reversed phase ultra performance liquid chromatography;逆相超高速液体クロマトグラフィー)により分析し、特許文献2に記載のホスホロアミダイト法を用いた固相合成により合成したssTbRNAと比較した結果を表14に示す。分析条件及び解析条件は下記の通りである。
分析条件:
・カラム:ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18 130Å(Waters)、2.1×100mm、1.7μm
・カラム温度:80℃
・移動相A:50mM TEAA・1mM EDTA水溶液(pH7.3)
・移動相B:50mM TEAA・1mM EDTA水溶液/メタノール=20/80
・展開条件:A/B=100/0→75/25(0-10min、リニアグラジエント)、75/25→0/100(10-10.5min、リニアグラジエント)、0/100(10.5-15min)、0/100→100/0(15-15.5min、リニアグラジエント)
・流速:0.2mL/min
・検出:PDA検出器(260nm)
・注入量:10μL
解析条件:
・Width:2sec
・Slope:4000μV/min
・Drift:0μV/min
・T.DBL:1000min
・最小面積:500カウント
【0328】
【0329】
表14中、ストランドA、ストランドB-1及びssTbRNA分子の値は、クロマトグラムに基づくそれぞれのピーク面積比率を表し、上記の解析条件を用いて算出した。また、ssTbRNA分子のピーク付近の核酸(主としてssTbRNA分子とその欠損体を含む)の相対量として、ssTbRNA分子のピークを含む、RRT(relative retention time;ここではssTbRNA分子のピークの保持時間を1とした場合の相対保持時間)=0.98~1.07の範囲についてピーク面積%の合計値を算出した。なおストランドAとストランドB-1のピーク保持時間はssTbRNA分子のピークとは十分に離れており、RRT=0.98~1.07の範囲には含まれない。
【0330】
表14に示すように本発明の方法で合成したssTbRNA分子に含まれる核酸不純物の量はわずかであり、ssTbRNA分子のピーク付近に現れる欠損体(ssTbRNA分子の配列の一部が欠けたもの)の量も少なかった。一方、ホスホロアミダイト法を用いた固相合成により合成した場合(特許文献2)、ssTbRNA分子以外の短鎖核酸不純物(合成が短鎖のうちに停止したRNA分子など)が比較的多く含まれており、ssTbRNA分子のピーク付近に現れる欠損体も多かった。本発明の方法では、目的のヘアピン型一本鎖RNA分子を高純度で製造できることが示された。
【0331】
(実施例6)
TGF-β1遺伝子発現抑制配列を有するヘアピン型一本鎖RNA分子の2つの分割フラグメントとして、Ly、Lx1及びLx2が以下に示す構造のストランドA及びストランドB-2の合成を行った。
【0332】
【0333】
ストランドA及びストランドB-2は、ホスホロアミダイト法により、核酸自動合成装置(ABI3900;Applied Biosystems)を使用して合成した。この合成には、RNAアミダイトとしてTBDMSアミダイトを用いた。ストランドB-2の3’末端には、2’-O-TBDMS-グアノシン(N-iBu)-3’-lcaa-CPG(ChemGenes)を用い、Lyの連結のために、特殊アミダイトとしてDMTr-ジアミド-L-プロリンアミダイト(化合物4)を、Lx2の連結のために、シアノエチル-グリシンアミダイト(化合物20)を用いた。また、ストランドAの3’末端には、3’-PT Amino-Modifier C4 CPG(化合物名:N-(4-(4,4’-ジメトキシトリチルオキシ)-ブチル)-(2-カルボキシアミド)-フタルイミジル-lcaa-CPG;ChemGenes)を用いた。核酸の固相合成及び合成後の脱保護反応は常法に従い行った。
【0334】
各ストランドの脱保護反応終了後の反応溶液に塩化ナトリウム水溶液と2-プロパノールを加えて遠心分離し、上清を除去した。得られた沈殿物を注射用水に溶解させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。回収された目的物は、3’末端にアミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx1を有するストランドA(質量分析測定値:7817.3、理論値:7816.8)と、5’末端にカルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx2を有するストランドB-2(質量分析測定値:9195.0、理論値:9194.6)である。
【0335】
ストランドA水溶液及びストランドB-2水溶液より各100nmolを測り取って混合し、遠心濃縮機にて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に1M MOPS緩衝液を10μL添加して溶解させ、溶液を95℃まで加熱後、室温まで放冷した。HATUの0.2M DMSO溶液を10μL添加し撹拌後、室温にて4時間静置した。上記反応溶液に2M塩化ナトリウム水溶液を2μLと、エタノール50μLを加えて撹拌し、-30℃にて静置後遠心分離し、上清を除去し、取得した沈殿物を乾燥させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した(測定値:16993.9、理論値16993.3)。
【0336】
(実施例7)
TGF-β1遺伝子発現抑制配列を有するヘアピン型一本鎖RNA分子の2つの分割フラグメントとして、Ly、Lx1及びLx2が以下に示す構造のストランドA及びストランドB-3の合成を行った。
【0337】
【0338】
ストランドA及びストランドB-3は、ホスホロアミダイト法により、核酸自動合成装置(ABI3900;Applied Biosystems)を使用して合成した。この合成には、RNAアミダイトとしてTBDMSアミダイトを用いた。ストランドB-3の3’末端には、2’-O-TBDMS-グアノシン(N-iBu)-3’-lcaa-CPG(ChemGenes)を用い、Lyの連結のために、特殊アミダイトとしてDMTr-ジアミド-グリシンアミダイト(化合物16)を、Lx2の連結のために、シアノエチル-グリシンアミダイト(化合物20)を用いた。また、ストランドAの3’末端には、3’-PT Amino-Modifier C4 CPG(化合物名:N-(4-(4,4’-ジメトキシトリチルオキシ)-ブチル)-(2-カルボキシアミド)-フタルイミジル-lcaa-CPG;ChemGenes)を用いた。核酸の固相合成及び合成後の脱保護反応は常法に従い行った。
【0339】
各ストランドの脱保護反応終了後の反応溶液に塩化ナトリウム水溶液と2-プロパノールを加えて遠心分離し、上清を除去した。得られた沈殿物を注射用水に溶解させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。回収された目的物は、3’末端にアミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx1を有するストランドA(質量分析測定値:7817.3、理論値:7816.8)と、5’末端にカルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx2を有するストランドB-3(質量分析測定値:9155.0、理論値:9154.5)である。
【0340】
ストランドA水溶液及びストランドB-3水溶液より各100nmolを測り取って混合し、遠心濃縮機にて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に1M MOPS緩衝液を10μL添加して溶解させ、溶液を95℃まで加熱後、室温まで放冷した。HATUの0.2M DMSO溶液を10μL添加し撹拌後、室温にて4時間静置した。上記反応溶液に2M塩化ナトリウム水溶液を2μLと、エタノール50μLを加えて撹拌し、-30℃にて静置後遠心分離し、上清を除去し、取得した沈殿物を乾燥させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した(測定値:16954.1、理論値:16953.3)。
【0341】
(実施例8)
本実施例では、GAPDH遺伝子発現抑制配列を有するヘアピン型一本鎖RNA分子を、その2つの分割フラグメントである、末端にアミノ基を有する第1の一本鎖オリゴRNA分子(以下、ストランドC)と、末端にカルボキシル基を有する第2の一本鎖オリゴRNA分子(ストランドD)をアミド化反応により連結することで作製した。
【0342】
まず、Ly、Lx1及びLx2が以下に示す構造のストランドC及びストランドD-1の合成を行った。
【0343】
【0344】
ストランドC及びストランドD-1は、ホスホロアミダイト法により、核酸自動合成装置(ABI3900;Applied Biosystems)を使用して合成した。この合成には、RNAアミダイトとしてTBDMSアミダイトを用いた。ストランドD-1の3’末端には、2’-O-TBDMS-アデノシン(N-Bz)-3’-lcaa-CPG(ChemGenes)を用い、Lyの連結のために、特殊アミダイトとしてDMTr-ジアミド-L-プロリンアミダイト(化合物4)を、Lx2の連結のために、シアノエチル-L-プロリンアミダイト(化合物7)を用いた。また、ストランドCの3’末端には、3’-PT Amino-Modifier C4 CPG(化合物名:N-(4-(4,4’-ジメトキシトリチルオキシ)-ブチル)-(2-カルボキシアミド)-フタルイミジル-lcaa-CPG;ChemGenes)を用いた。核酸の固相合成及び合成後の脱保護反応は常法に従い行った。
【0345】
各ストランドの脱保護反応終了後の反応溶液に塩化ナトリウム水溶液と2-プロパノールを加えて遠心分離し、上清を除去した。得られた沈殿物を注射用水に溶解させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。回収された目的物は、3’末端にアミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx1を有するストランドC(質量分析測定値:7222.9、理論値:7222.4)と、5’末端にカルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx2を有するストランドD-1(質量分析測定値:9853.5、理論値:9853.0)である。
【0346】
ストランドC水溶液及びストランドD-1水溶液より各100nmolを測り取って混合し、遠心濃縮機にて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に1M MOPS緩衝液を10μL添加して溶解させ、溶液を95℃まで加熱後、室温まで放冷した。HATUの0.2M DMSO溶液を10μL添加し撹拌後、室温にて4時間静置した。上記反応溶液に2M塩化ナトリウム水溶液を2μLと、エタノール50μLを加えて撹拌し、-30℃にて静置後遠心分離し、上清を除去し、取得した沈殿物を乾燥させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した(測定値17057.9、理論値:17057.4)。
【0347】
(実施例9)
GAPDH遺伝子発現抑制配列を有するヘアピン型一本鎖RNA分子の2つの分割フラグメントとして、Ly、Lx1及びLx2が以下に示す構造のストランドC及びストランドD-2の合成を行った。
【0348】
【0349】
ストランドC及びストランドD-2は、ホスホロアミダイト法により、核酸自動合成装置(ABI3900;Applied Biosystems)を使用して合成した。この合成には、RNAアミダイトとしてTBDMSアミダイトを用いた。ストランドD-2の3’末端には、2’-O-TBDMS-アデノシン(N-Bz)-3’-lcaa-CPG(ChemGenes)を用い、Lyの連結のために、特殊アミダイトとしてDMTr-ジアミド-グリシンアミダイト(化合物16)を、Lx2の連結のために、シアノエチルグリシンアミダイト(化合物20)を用いた。また、ストランドCの3’末端には、3’-PT Amino-Modifier C4 CPG(化合物名:N-(4-(4,4’-ジメトキシトリチルオキシ)-ブチル)-(2-カルボキシアミド)-フタルイミジル-lcaa-CPG;ChemGenes)を用いた。核酸の固相合成及び合成後の脱保護反応は常法に従い行った。
【0350】
各ストランドの脱保護反応終了後の反応溶液に塩化ナトリウム水溶液と2-プロパノールを加えて遠心分離し、上清を除去した。得られた沈殿物を注射用水に溶解させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した。回収された目的物は、3’末端にアミノ基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx1を有するストランドC(質量分析測定値:7222.9、理論値:7222.4)と、5’末端にカルボキシル基を有する非ヌクレオチド性リンカーLx2を有するストランドD-2(質量分析測定値:9773.3、理論値:9772.9)である。
【0351】
ストランドC水溶液及びストランドD-2水溶液より各100nmolを測り取って混合し、遠心濃縮機にて溶媒を留去し乾燥させた。得られた残渣に1M MOPS緩衝液を10μL添加して溶解させ、溶液を95℃まで加熱後、室温まで放冷した。HATUの0.2M DMSO溶液を10μL添加し撹拌後、室温にて4時間静置した。上記反応溶液に2M塩化ナトリウム水溶液を2μLと、エタノール50μLを加えて撹拌し、-30℃にて静置後遠心分離し、上清を除去し、取得した沈殿物を乾燥させた。質量分析により目的物の分子量と一致することを確認した(測定値:16977.6、理論値16977.3)。
【産業上の利用可能性】
【0352】
本発明は、標的遺伝子に対する発現抑制配列を含むヘアピン型一本鎖RNA分子の効率的な製造を可能にすることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0353】
配列番号1~6:合成RNA
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表】