(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20231219BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20231219BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M50/533
H01G11/70
H01M50/55 101
(21)【出願番号】P 2020553419
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041452
(87)【国際公開番号】W WO2020085357
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018201963
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】一ノ橋 裕典
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-067532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0040918(US,A1)
【文献】特開2014-107146(JP,A)
【文献】特開2018-137192(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185867(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50 - 50/598
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器及び前記容器に収容された電極体を備える蓄電素子であって、
第一方向において前記電極体と前記容器の壁部との間に配置された集電体と、
前記壁部に固定された電極端子とを備え、
前記集電体は、
前記電極端子と接続された端子接続部と、
前記電極体と接続された電極接続部と、を有し、
前記端子接続部及び前記電極接続部は、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置されており、
前記電極接続部の厚みは、前記端子接続部の厚みよりも小さ
く、
前記電極接続部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の幅は、前記端子接続部の前記第三方向の幅よりも大きい、
蓄電素子。
【請求項2】
容器及び前記容器に収容された電極体を備える蓄電素子であって、
第一方向において前記電極体と前記容器の壁部との間に配置された集電体と、
前記壁部に固定された電極端子とを備え、
前記集電体は、
前記電極端子と接続された端子接続部と、
前記電極体と接続された電極接続部と、を有し、
前記端子接続部及び前記電極接続部は、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置されており、
前記電極接続部の厚みは、前記端子接続部の厚みよりも小さく、
前記電極接続部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の端部は、前記電極体に向けて折り曲げられている、
蓄電素子。
【請求項3】
容器及び前記容器に収容された電極体を備える蓄電素子であって、
第一方向において前記電極体と前記容器の壁部との間に配置された集電体と、
前記壁部に固定された電極端子とを備え、
前記集電体は、
前記電極端子と接続された端子接続部と、
前記電極体と接続された電極接続部と、を有し、
前記端子接続部及び前記電極接続部は、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置されており、
前記電極接続部の厚みは、前記端子接続部の厚みよりも小さく、
前記集電体の、前記壁部に対向する面はフラットであり、
前記集電体の、前記電極体に対向する面には、前記端子接続部及び前記電極接続部の厚みが異なることによる段差が形成されている、
蓄電素子。
【請求項4】
前記電極接続部の、前記第二方向と直交する断面の面積は、前記端子接続部の、前記第二方向と直交する断面の面積以上である、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記集電体はさらに、前記端子接続部と前記電極接続部とを接続する中間部を有し、
前記中間部は、前記端子接続部から前記電極接続部に近づくに従って、厚みが小さくなり、かつ、前記
第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の幅が大きくなるよう形成されている、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器及び容器に収容された電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケース及びケースに収容された電極組立体を備える蓄電装置が開示されている。この蓄電装置では、電極組立体のタブ群と、ケースの蓋部材に固定された導電部材とが接続されている。導電部材は、蓋部材の内面に固定された固定片と、固定片に交差しかつ電極組立体に向けて突出する接続片とを含む。タブ群は、接続片と溶接によって接続され、その後、接続片が折り曲げられる。つまり、タブと接続片とは折り畳まれ、その状態で、電極組立体がケースに収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器及び容器に収容された電極体を備える蓄電素子において、容器の壁部に固定された集電体を、溶接等によって電極体と接続する場合、電極体と壁部との間に、集電体と電極体との接続部分を収容するための空間が必要となる。このことは、容器内における、電極体の収容空間を圧迫する要因となる。その結果、蓄電素子におけるエネルギー密度の向上が困難となる。特に、上記従来の蓄電装置のように、集電体(特許文献1における導電部材)の、電極体と接続される部分が、容器の内部で折り畳まれて配置される場合、この問題は顕著となる。
【0005】
本発明は、上記課題を考慮し、エネルギー密度を向上させることができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器及び前記容器に収容された電極体を備える蓄電素子であって、第一方向において前記電極体と前記容器の壁部との間に配置された集電体と、前記壁部に固定された電極端子とを備え、前記集電体は、前記電極端子と接続された端子接続部と、前記電極体と接続された電極接続部と、を有し、前記端子接続部及び前記電極接続部は、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置さてれおり、前記電極接続部の厚みは、前記端子接続部の厚みよりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る蓄電素子によれば、エネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電素子を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る集電体の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3における集電体のIV-IV断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図3における集電体のV-V断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図3における集電体のVI-VI断面を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る集電体が有する中間部を示す部分拡大図である。
【
図8】
図8は、
図7における中間部のVIII-VIII断面を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図7における中間部のIX-IX断面を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態の変形例1に係る集電体の外観を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施の形態の変形例2に係る集電体の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、容器及び前記容器に収容された電極体を備える蓄電素子であって、第一方向において前記電極体と前記容器の壁部との間に配置された集電体と、前記壁部に固定された電極端子とを備え、前記集電体は、前記電極端子と接続された端子接続部と、前記電極体と接続された電極接続部と、を有し、前記端子接続部及び前記電極接続部は、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置さてれおり、前記電極接続部の厚みは、前記端子接続部の厚みよりも小さい。
【0010】
この構成によれば、電極接続部が端子接続部よりも薄く形成されているため、例えば、電極接続部に接合される電極体のタブ部を、容器の壁部により近い位置に配置できる。つまり、本態様の蓄電素子では、比較的に厚い端子接続部により、集電体における電極端子との接続箇所の変形を抑制できる。比較的に薄い電極接続部により、容器内における電極体の体積占有率を向上させることができる。従って、本態様に係る蓄電素子によれば、エネルギー密度を向上させることができる。
【0011】
前記電極接続部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の幅は、前記端子接続部の前記第三方向の幅よりも大きい、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、集電体に形成される第二方向に沿った導通路において、電極接続部の断面積が、端子接続部の断面積よりも小さくなることが抑制される。これにより、例えば、エネルギー密度を向上させるために電極接続部が比較的に薄く形成された場合であっても、電極接続部が、蓄電素子の充放電時の導通の妨げとなる可能性が低減される。
【0013】
前記電極接続部の、前記第二方向と直交する断面の面積は、前記端子接続部の、前記第二方向と直交する断面の面積以上である、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、蓄電素子10内の導通路における電極接続部の抵抗値が、端子接続部の抵抗値と同等以下となる。電極接続部の溶断耐性が、端子接続部の溶断耐性と同等以上となる。これにより、例えば、エネルギー密度が向上された蓄電素子の信頼性を向上させることができる。
【0015】
前記集電体はさらに、前記端子接続部と前記電極接続部とを接続する中間部を有し、前記中間部は、前記端子接続部から前記電極接続部に近づくに従って、厚みが小さくなり、かつ、前記第三方向の幅が大きくなるよう形成されている、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、端子接続部と電極接続部とが接続される部分において、断面積がほぼ一定となるように断面形状を変化させる部分が設けられる。これにより、端子接続部と電極接続部との境界で、急激に断面積が小さくなる箇所が形成されない。そのため、充放電の効率の低下等の問題が生じ難い。このことは、例えば、エネルギー密度が向上された蓄電素子の信頼性の向上に寄与する。
【0017】
前記電極接続部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の端部は、前記電極体に向けて折り曲げられている、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、電極接続部は、折り曲げられた端部を有することで、比較的に薄いことによる断面積の減少を抑制し、かつ、第三方向の幅を、端子接続部と同じ程度の長さにできる。そのため、例えば、集電体と壁部との間に配置されるガスケットとして、既存のガスケットを流用することが可能となる。これにより、例えば、エネルギー密度が向上された蓄電素子の製造コストが抑制される。
【0019】
前記集電体の、前記壁部に対向する面はフラットであり、前記集電体の、前記電極体に対向する面には、前記端子接続部及び前記電極接続部の厚みが異なることによる段差が形成されている、としてもよい。
【0020】
この構成によれば、電極接続部を薄型化することで得られる空間のほぼ全てを、電極体を収容する空間として使用できる。つまり、電極接続部を薄型化することによる、エネルギー密度の向上効果の最大化がなされる。
【0021】
本発明は、このような蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子が備える集電体としても実現できる。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電素子について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示している。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示していない。
【0023】
以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、電極体が有する一対のタブ部の並び方向、一対のスペーサの並び方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向をY軸方向と定義する。電極端子と集電体と電極体との並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、容器の短側面の長手方向、電極体の巻回軸方向、スペーサの延設方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0024】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
【0025】
蓄電素子10は、電気を充電し、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)もしくはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電車、モノレールもしくはリニアモーターカー等の電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用のバッテリ等として用いられる。
【0026】
蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子10は、ラミネート型の蓄電素子であってもよい。本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状、円柱形状、または長円柱形状等であってもよい。
【0027】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対(正極側及び負極側)の電極端子200と、一対(正極側及び負極側)の上部ガスケット300とを備えている。
図2に示すように、容器100の内方には、一対(正極側及び負極側)の下部ガスケット400と、一対(正極側及び負極側)の集電体500と、電極体700とが収容されている。容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略されている。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なわなければその種類に特に制限はなく、様々な種類を選択できる。上記の構成要素の他、電極体700の上方もしくは側方に配置されるスペーサ、または、電極体700等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0028】
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の当該開口を閉塞する蓋体120とを有する直方体形状(箱形)のケースである。このような構成により、容器100は、電極体700等を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等されることにより、内部を密封できる構造となっている。容器本体110及び蓋体120の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0029】
容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、Z軸プラス方向側に開口が形成されている。蓋体120は、容器100の蓋部を構成する、X軸方向に長尺かつ矩形状の板状部材であり、容器本体110の開口を塞ぐ位置に配置されている。蓋体120には、容器100の内圧が過度に上昇した場合に容器100内部のガスを排出するガス排出弁122が配置されている。
【0030】
電極体700は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。具体的には、電極体700は、正極板と負極板との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成されている。これにより、正極板の複数のタブが積層されて正極側のタブ部720が形成され、負極板の複数のタブが積層されて負極側のタブ部730が形成されている。つまり、電極体700は、電極体本体部710と、電極体本体部710の一部からZ軸プラス方向に突出してY軸プラス方向に延びるタブ部720及び730とを有している。本実施の形態では、断面形状が長円形状の電極体700が採用されているが、電極体700の断面形状は楕円形状などでもよい。
【0031】
電極端子200は、集電体500を介して、電極体700に電気的に接続される電極端子である。電極端子200は、かしめ等によって、集電体500に接続され、かつ、蓋体120に取り付けられている。具体的には、電極端子200は、下方(Z軸マイナス方向)に延びる軸部201(リベット部)を有している。そして、軸部201が、上部ガスケット300の貫通孔301と、蓋体120の貫通孔123と、下部ガスケット400の貫通孔401と、集電体500の貫通孔501とに挿入されて、かしめられる。これにより、電極端子200は、上部ガスケット300、下部ガスケット400及び集電体500とともに、蓋体120に固定される。電極端子200は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属等の導電部材で形成されている。
【0032】
集電体500は、電極体700と電極端子200とを電気的に接続する矩形状かつ平板状の部材である。具体的には、正極側の集電体500は、正極側の電極端子200とかしめ等により接合される端子接続部510と、電極体700の正極側のタブ部720と溶接等により接続(接合)される電極接続部520とを有する。負極側の集電体500についても同様であり、負極側の電極端子200とかしめ等により接合される端子接続部510と、電極体700の負極側のタブ部730と溶接等により接続(接合)される電極接続部520とを有する。集電体500は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属で形成されている。集電体500と電極端子200とを接続(接合)する手法は、かしめ接合には限定されず、超音波接合、レーザ溶接、もしくは、抵抗溶接等の溶接、または、ねじ締結等のかしめ以外の機械的接合が用いられてもよい。集電体500とタブ部720または730とを接続(接合)する手法は、超音波接合、レーザ溶接、または抵抗溶接等、どのような溶接が用いられてもよいし、かしめ接合またはねじ締結等の機械的接合等が用いられてもよい。集電体500の詳細については、
図3~
図8を用いて後述する。
【0033】
上部ガスケット300は、容器100の蓋体120と電極端子200との間に配置された、平板状の絶縁性の封止部材である。下部ガスケット400は、蓋体120と集電体500との間に配置された、平板状の絶縁性の封止部材である。上部ガスケット300及び下部ガスケット400は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、もしくは、ポリエーテルサルフォン(PES)等の樹脂、または、これら樹脂を含む複合材料等の、絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0034】
[2.集電体の構成]
次に、集電体500の構成について、
図3~
図9を用いて詳細に説明する。まず、
図3~
図6を用いて、集電体500の基本構成について説明する。本実施の形態では、正極側及び負極側の集電体500は同一の構成を有しているため、以下では、正極側の集電体500に着目し、その説明を行う。
【0035】
図3は、実施の形態に係る集電体500の外観を示す斜視図である。具体的には、
図3は、正極側の集電体500を、斜め下方(電極体700の側)から見た場合の斜視図である。
図4は、
図3における集電体500のIV-IV断面を示す断面図である。
図5は、
図3における集電体500のV-V断面を示す断面図である。
図6は、
図3における集電体500のVI-VI断面を示す断面図である。
図4では、電極体700と集電体500とのおおまか位置関係を示すために、集電体500の断面に加え、電極体700の一部の側面図が模式的に図示されている。
【0036】
図3~
図6に示すように、本実施の形態に係る集電体500は、端子接続部510と、電極接続部520とを有する。端子接続部510には電極端子200の軸部201が貫通する貫通孔501が形成されている。貫通孔501には、上述のように電極端子200の軸部201が挿通され、貫通孔501から露出した軸部201の先端部がかしめられる。これにより、電極端子200と集電体500とが機械的及び電気的に接続される。
【0037】
電極接続部520は、電極体700が接続される部分であり、正極側の集電体500が有する電極接続部520には、
図4に示すように、電極体700の正極側のタブ部720が接続される。この接続には、上述のように超音波接合等の所定の手法が用いられる。
【0038】
このような構成を有する集電体500は、Z軸方向において、電極体700と蓋体120(
図2参照)との間に配置されている。端子接続部510及び電極接続部520は、X軸方向に並んで配置されている。Z軸方向は第一方向の一例であり、X軸方向は、第一方向に交差する第二方向の一例であり、蓋体120は容器の壁部の一例である。さらに、
図5及び
図6に示されるように、電極接続部520は、端子接続部510に比べて薄く形成されている。
【0039】
すなわち、本実施の形態に係る蓄電素子10は、容器100及び容器100に収容された電極体700と、Z軸方向において電極体700と容器100の蓋体120との間に配置された集電体500と、蓋体120に固定された電極端子200とを備える。集電体500は、電極端子200と接続された端子接続部510と、電極体700と接続された電極接続部520とを有する。端子接続部510及び電極接続部520は、Z軸方向と交差するX軸方向に並んで配置されており、電極接続部520の厚みD2は、端子接続部510の厚みD1よりも小さい。
【0040】
つまり、Z軸プラス方向を上方とした場合、電極体700の上方に位置する集電体500において、電極端子200と接続される部分(端子接続部510)と、電極体700と接続される部分(電極接続部520)とは、横方向(左右方向)に並べられている。そのため、例えば、電極接続部520の下面に形成されるかしめ部が、当該下面から比較的に大きく出っ張っている場合であっても、かしめ部を、電極体本体部710と干渉させずにタブ部720の側方の空間に収容できる。
【0041】
さらに、本実施の形態では、電極接続部520が端子接続部510よりも薄く形成されているため、例えば、電極接続部520に接合される電極体700のタブ部720を、蓋体120により近い位置に配置できる。電極接続部520は比較的に厚いため、上述のように、電極端子200の軸部201がかしめられた場合において、かしめ力による変形が抑制される。つまり、本実施の形態に係る蓄電素子10では、比較的に厚い端子接続部510により、集電体500における電極端子200との接続箇所の変形を抑制し、かつ、比較的に薄い電極接続部520により、容器100内における電極体700の体積占有率を向上させることができる。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、エネルギー密度を向上させることができる。
【0042】
集電体500における端子接続部510の厚みD1は、例えば1mm程度であり、電極接続部520の厚みD2は、例えば0.5mm程度である。これら数値は例示であり、端子接続部510及び電極接続部520それぞれの厚みD1及びD2は、D1>D2を満たす値であれば、集電体500の素材、電極体700の蓄電容量、または、容器100のサイズ等に応じて適宜決定してもよい。
【0043】
例えば
図3、
図5及び
図6に示されるように、電極接続部520の、Z軸方向及びX軸方向と交差するY軸方向の幅L2は、端子接続部510の前記Y軸方向の幅L1よりも大きい。
【0044】
この構成によれば、集電体500に形成される、X軸方向に沿った導通路において、電極接続部520の断面積が、端子接続部510の断面積よりも小さくなることが抑制される。簡単に言うと、電極接続部520を薄くすることによる断面積の減少分を、電極接続部520の幅を大きくすることで補うことができる。これにより、例えば、エネルギー密度を向上させるために電極接続部520が比較的に薄く形成された場合であっても、電極接続部520が、蓄電素子10の充放電時の導通の妨げとなる可能性が低減される。
【0045】
電極接続部520の断面積と、端子接続部510の断面積との関係に着目すると、電極接続部520の、X軸方向と直交する断面の面積S2は、端子接続部510の、X軸方向と直交する断面の面積S1以上である、とすることもできる。
【0046】
この構成によれば、蓄電素子10内の導通路における電極接続部520の抵抗値が、端子接続部510の抵抗値と同等以下となる。電極接続部520の溶断耐性が、端子接続部510の溶断耐性と同等以上となる。これにより、例えば、エネルギー密度が向上された蓄電素子10の信頼性を向上させることができる。
【0047】
本実施の形態に係る集電体500は、厚み及び幅が互いに異なる端子接続部510及び電極接続部520をなだらかに接続する中間部530を有している。この中間部530の特徴について、
図7~
図8を用いて説明する。
図7は、実施の形態に係る集電体500が有する中間部530を示す部分拡大図である。
図7では、集電体500における中間部530のおおよその領域を、ドットを付した領域によって表している。
図8は、
図7における中間部530のVIII-VIII断面を示す断面図である。
図9は、
図7における中間部530のIX-IX断面を示す断面図である。
【0048】
図7~
図9に示すように、本実施の形態に係る集電体500はさらに、端子接続部510と電極接続部520とを接続する中間部530を有する。中間部530は、端子接続部510から電極接続部520に近づくに従って、厚みが小さくなり、かつ、Y軸方向の幅が大きくなるよう形成されている。
【0049】
つまり、中間部530において、端子接続部510に近い位置のVIII-VIII断面では、厚みがT1であり、Y軸方向の幅はW1であるとする。端子接続部510から遠い位置(電極接続部520に近い位置)のIX-IX断面では、厚みがT2であり、Y軸方向の幅はW2であるとする。このとき、T2<T1であり、かつ、W2>W1である。従って、例えば、VIII-VIII断面の断面積(T1×W1)と、IX-IX断面の断面積(T2×W2)をほぼ同一にすることも可能である。さらに、T1×W1及びT2×W2を、端子接続部510の断面積S1及び電極接続部520の断面積S2とほぼ同一にすることも可能である。
【0050】
このように、本実施の形態に係る集電体500では、端子接続部510と電極接続部520とが接続される部分において、断面積がほぼ一定となるように断面形状を変化させる中間部530が設けられる。これにより、端子接続部510と電極接続部520との境界で、急激に断面積が小さくなる箇所が形成されない。
【0051】
つまり、仮に、
図5に示す断面形状の端子接続部510と、
図6に示す断面形状の電極接続部520とが直接的に接続されている場合、端子接続部510と電極接続部520との境界には、断面積が“L1×D2”で表される小断面積部が形成される。この小断面積部は、集電体500に形成される導通路において、他よりも高抵抗な部分となり、蓄電素子10の充放電の効率を低下させる要因となる。小断面積部において溶断等の問題も生じ得る。そこで、本実施の形態に係る集電体500では、X軸方向に並ぶ端子接続部510と電極接続部520との間において、X軸方向に直交する断面の面積の変化を抑制する形状の中間部530が設けられている。その結果、蓄電素子10の充放電の効率の低下、または、集電体500における溶断等の発生が抑制される。このことは、例えば、エネルギー密度が向上された蓄電素子10の信頼性の向上に寄与する。
【0052】
中間部530は、互いに厚みが異なる端子接続部510と電極接続部520との間の部分であるため、側面視において、段差535(
図4参照)を形成する部分である。この段差535は、電極体700側に向けられている。
【0053】
つまり、本実施の形態では、集電体500の、蓋体120に対向する面はフラットであり、集電体500の、電極体700に対向する面には、端子接続部510及び電極接続部520の厚みが異なることによる段差535が形成されている。
【0054】
この構成によれば、例えば、電極接続部520を薄型化することで得られる空間のほぼ全てを、電極体700を収容する空間として使用できる。つまり、電極接続部520を薄型化することによる、エネルギー密度の向上効果の最大化がなされる。
【0055】
以上、実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、蓄電素子10は、電極体700と電極端子200とを接続する集電体として、
図2~
図8に示す形状とは異なる形状の集電体を備えてもよい。そこで、以下に、蓄電素子10備える集電体についての変形例を、
図10を用いて、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0056】
(変形例1)
図10は、実施の形態の変形例1に係る集電体500aの外観を示す斜視図である。具体的には、
図10は、正極側の集電体500aを、斜め下方(電極体700の側)から見た場合の斜視図である。
図10に示す集電体500aは、上記実施の形態に係る集電体500に換えて蓄電素子10が備えることができる集電体である。
【0057】
図10に示す集電体500aは、電極端子200と接続された端子接続部510と、電極体700と接続された電極接続部525とを有する。端子接続部510及び電極接続部525は、X軸方向に並んで配置されており、電極接続部525の厚みは、端子接続部510の厚みよりも小さい。これらの特徴は、上記実施の形態に係る集電体500と共通する。
【0058】
本変形例に係る集電体500aでは、電極接続部525の、第三方向(Y軸方向)の端部525aは、電極体700に向けて折り曲げられている。つまり、電極接続部525は、電極体700に向けて折り曲げられた端部525aを有している。
【0059】
この構成によれば、電極接続部525は、折り曲げられた端部525aを有することで、比較的に薄いことによる断面積の減少を抑制し、かつ、Y軸方向の幅を、端子接続部510と同じ程度の長さにできる。そのため、例えば、集電体500aと蓋体120との間に配置される下部ガスケットとして、既存のガスケットを流用することが可能となる。これにより、例えば、エネルギー密度が向上された蓄電素子10の製造コストが抑制される。
【0060】
本変形例では、電極接続部525において、Y軸プラス方向の端部525aが、電極体700に向けて折り曲げられている。つまり、導通方向(X軸方向)に直交する断面はL字型である。従って、電極接続部525をタブ部720と接合した場合、例えば、
図2からわかるように、タブ部720の先端よりもY軸プラス方向側に端部525aが存在する。つまり、タブ部720を上から押さえない位置に端部525aが配置される。そのため、電極接続部525が比較的に薄いことによる、エネルギー密度の向上効果を得ることができ、かつ、断面をL字型にすることで、端子接続部510と同程度の断面積を電極接続部525に確保できる。電極接続部525の断面がL字型となることで、電極接続部525の構造上の強度が向上する。
【0061】
(変形例2)
図11は、実施の形態の変形例2に係る集電体500bの外観を示す斜視図である。具体的には、
図11は、正極側の集電体500bを、斜め下方(電極体700の側)から見た場合の斜視図である。
図11に示す集電体500bは、上記実施の形態に係る集電体500に換えて蓄電素子10が備えることができる集電体である。
【0062】
図11に示す集電体500bは、電極端子200と接続された端子接続部510と、電極体700と接続された電極接続部526とを有する。端子接続部510及び電極接続部526は、X軸方向に並んで配置されており、電極接続部526の厚みは、端子接続部510の厚みよりも小さい。これらの特徴は、上記実施の形態に係る集電体500と共通する。本変形例に係る集電体500bでは、端子接続部510のY軸方向の幅と、電極接続部526のY軸方向の幅が略同一である。つまり、本変形例に係る実施の形態に係る電極接続部526は、集電体500の電極接続部520のような、端子接続部510よりも明確に幅広な形状には形成されていない。
【0063】
すなわち、集電体500bは第一方向(Z軸方向)から見た場合に、略矩形状に形成されている。これにより、例えば、電極接続部526のY軸方向の幅が広いために、集電体500bを下部ガスケット400の範囲内に収容できない、または、電極接続部526と容器100の内面との距離が近すぎるというような、電極接続部526のサイズに起因する問題が生じ難い。集電体500bでは、X軸方向に沿った導通路において、電極接続部526の断面積は、端子接続部510の断面積よりも小さくなる。しかし、電極接続部526の断面積が、実質的に蓄電素子10の充放電時の導通の妨げとならない程度の値であれば、端子接続部510の断面積はその値以上である。従って、蓄電素子10が集電体500bを備える場合であっても、集電体500bが、蓄電素子10の性能または信頼性を低下させることはない。本変形例においても、電極接続部526の厚みが端子接続部510の厚みよりも小さため、蓄電素子10のエネルギー密度を向上させることができる。このように、端子接続部及び電極接続部は第二方向に並び、かつ、電極接続部の厚みは端子接続部の厚みよりも小さい、という条件を満たせば、電極接続部の幅は、端子接続部の幅以下であってもよい。
【0064】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であり、本発明の範囲には、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0065】
例えば、実施の形態に係る蓄電素子10では、正極側及び負極側の両方に、端子接続部510よりも薄い電極接続部520を有する集電体500が備えられているが、集電体500は、正極側及び負極側の少なくとも一方に配置されていればよい。例えば、正極側及び負極側のうちの一方の集電体の材料の剛性が高い等の理由により、当該一方の集電体を薄く形成できる場合、当該一方の集電体として、端子接続部及び電極接続部の厚みが均一な集電体を採用し、他方の集電体として集電体500を採用してもよい。例えば、容器100が、電極体700の正極及び負極の一方と電気的に接続されている場合、電極体700の正極及び負極の他方と電極端子200とを接続する部材として集電体500が採用されてもよい。
【0066】
実施の形態に係る集電体500は、第一方向(X軸方向)の外側に端子接続部510が位置する姿勢で蓄電素子10に配置されているが、X軸方向の内側(蓋体120のX軸方向の中央側)に端子接続部510が位置する姿勢で蓄電素子10に配置されてもよい。例えば、正極側及び負極側の電極端子200を、蓋体120の長手方向(X軸方向)の中央寄りに配置する場合、
図2における2つの集電体500の両方を、Z軸回りに180°回転した姿勢で配置してもよい。
【0067】
集電体500において、電極接続部520は、Y軸方向の両側に、端子接続部510よりも張り出した部分を有するが、電極接続部520は、当該両側のうちの一方のみに、端子接続部510よりも張り出した部分を有してもよい。つまり、集電体500における、端子接続部510に対する電極接続部520の第三方向(Y軸方向)の位置は、例えば、電極端子200と、電極接続部520に接続されるタブ部720または730との位置関係等に応じて適宜決定してもよい。
【0068】
蓄電素子10が備える電極体の種類は巻回型に限定されない。例えば、平板状極板を積層した積層型の電極体、または、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体が、蓄電素子10に備えられてもよい。
【0069】
上記の、実施の形態に係る集電体500についての各種の補足事項のそれぞれは、変形例に係る集電体500aに適用されてもよい。実施の形態及び変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
本発明は、このような蓄電素子として実現できるだけでなく、当該蓄電素子が備える集電体としても実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
10 蓄電素子
100 容器
120 蓋体
200 電極端子
500、500a 集電体
510 端子接続部
520、525 電極接続部
525a 端部
530 中間部
535 段差
700 電極体