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特許7405104液体注出用ノズルおよび液体注出用ノズル付き液体容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】液体注出用ノズルおよび液体注出用ノズル付き液体容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/40 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B65D47/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021012920
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116641
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】板倉 雅人
(72)【発明者】
【氏名】西田 修司
(72)【発明者】
【氏名】白阪 裕佳
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006475(JP,A)
【文献】特開2009-062091(JP,A)
【文献】特開2020-200103(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114101(WO,A1)
【文献】特開2007-297138(JP,A)
【文献】実開昭48-052758(JP,U)
【文献】特開2014-148355(JP,A)
【文献】特開2004-059090(JP,A)
【文献】実開昭56-075159(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器から液体を注出する液体注出用ノズルであって、
頭部平坦の管状体で、前記液体容器の口部に装着する基部と、前記基部から延在する先端部と、を備え、
前記基部の中空内部を前記液体容器からの液体が通過する内部通路とし、
前記先端部は、前記内部通路から延在しノズル出口まで連続する複数段の曲面からなる内部表面を有し、かつ前記複数段の曲面は、前記管状体の軸を含む断面で前記管状体の軸とのなす角度がそれぞれαi°となる直線状を呈する曲面とし、かつ前記複数段の曲面における前記管状体の軸とのなす角度αi°が前記内部通路側から前記ノズル出口側に向かって、順次、大きくなる角度を有し、さらに
前記基部には、該基部の外部表面の所定の位置に、全周にわたり所定高さの過挿入防止用突状部を配設してなることを特徴とする液体注出用ノズル。
【請求項2】
前記複数段の曲面が2段の曲面からなり、前記2段の曲面のうち、前記内部通路から延在する第1段の曲面の前記αi°がα1°:20~40°、該第1段の曲面に連続しノズル出口となる第2段の曲面の前記αi°がα2°:50~70°、であることを特徴とする請求項1に記載の液体注出用ノズル。
【請求項3】
前記複数段の曲面が3段の曲面からなり、前記3段の曲面のうち、前記内部通路から延在する第1段の曲面は前記αi°がα1°:20~40°、該第1段の曲面よりノズル出口側で前記第1段の曲面に連続する第2段の曲面は前記αi°がα2°:35~55°、前記第2段の曲面に連続し、ノズル出口となる第3段の曲面は前記αi°がα3°:55~75°、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の液体注出用ノズル。
【請求項4】
前記液体が、20℃で5mPa・s以上の粘度を有する液体であることを特徴とする請求項3に記載の液体注出用ノズル。
【請求項5】
前記基部が、該基部の外部表面で、前記過挿入防止用突状部の前記ノズル出口側に、キャップ取付け用ねじ部を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体注出用ノズル。
【請求項6】
請求項5に記載の液体注出用ノズルに着脱自在に装着されるノズル用キャップであって、前記液体注出用ノズルの先端部が収納可能なように中空形状を呈し、前記先端部の端部が当接可能なように天頂部を有し、かつ端部内側にねじ部を有することを特徴とするノズル用キャップ。
【請求項7】
液体容器と、液体注出用ノズルと、液体容器用蓋とを組付けてなる液体注出用ノズル付き液体容器であって、
前記液体容器は、口部端部外側にねじ部を有し、
前記液体注出用ノズルを、請求項1ないし5のいずれかに記載の液体注出用ノズルとし、
前記液体容器用蓋を、天頂部に、前記液体注出用ノズルの先端部及び基部が通過可能でかつ前記液体注出用ノズルの前記過挿入防止用突状部が通過できないように穿設されてなる穴部を有し、かつ端部に、前記液体容器口部端部外側に設けられたねじ部に螺合可能なねじ部を有する蓋とし、
前記液体注出用ノズルは、該液体注出用ノズルの基部を、前記液体容器の口部注入口に、該基部に配設された過装入防止用突状部の下面がパッキンを介して前記液体容器の口部端面に当接するように挿入されてなり、
前記液体容器用蓋は、該液体容器用蓋の穴部に前記液体注出用ノズルの先端部から通し、前記液体注出用ノズルの基部に配設された前記過挿入防止用突状部の上面に当接するように装着されてなり、
前記液体容器用蓋のねじ部と前記液体容器のねじ部との螺合により、前記液体注出用ノズルを前記液体容器に着脱自在に固定してなることを特徴とする液体注出用ノズル付き液体容器。
【請求項8】
前記液体注出用ノズルを請求項5に記載の液体注出用ノズルとし、該液体注出用ノズルに請求項6に記載のノズル用キャップを、着脱自在に装着してなることを特徴とする請求項7に記載の液体注出用ノズル付き液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器に装着して液体を注出するノズルに係り、とくに注出時のノズルからの残液の垂れ(液垂れ)を防止できる液体注出用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体を保管する液体容器(瓶)から液体を注出する際には、液体注出口の蓋(キャップ)を開け、正立した状態の液体容器を水平状態へと傾けて、内部の液体を液体注出口から注出する。通常、液体の注出を完了したのち、液体容器を水平状態から正立状態に戻すが、その際に、液体注出口の付近に液体が残留し、液体容器の外面に沿って液垂れすることがある。
【0003】
このような液体容器外面への液垂れの問題に対し、例えば、特許文献1には、「注出キャップ」が提案されている。特許文献1に記載された注出キャップは、容器本体の口部に組付き、頂壁から注出筒を立設したキャップ本体と、キャップ本体に開閉回動自在にヒンジ結合された上蓋と、を備え、注出筒を、頂壁から起立する円筒形状の筒片と、該筒片の外周面上端から外方に突周設した鰐片とで構成し、鰐片の幅を2mm以上としている。特許文献1に記載された注出キャップによれば、キャップ本体の注出筒を構成する鰐片の幅を2mm以上に設定することにより、内容液注出後の液切れ時に、鰐片外周端縁に滴状に残留しようとする内容液を確実に容器本体に流下復帰させることができる、としている。
【0004】
また、特許文献2には、「液体注出用の部材」が提案されている。特許文献1に記載された液体注出用の部材は、容器の口部に係合する基部と、該基部から延在するノズル部とを備える部材であり、ノズル部には、容器からの液体が通過する内部通路と、内部通路を通過した液体が流れ出る出口と、出口の外周囲に形成されたノズル先端部とを備え、さらに、ノズル先端部には、出口から延在する内側表面と、ノズル先端部の端縁を境界として内側表面と反対側の外側表面と、内側表面と外側表面の間を貫通する少なくとも1つの残留液防止用通路を備える、としている。このような残留液防止用通路の存在により、液体の注出を完了し、容器を水平状態から正立状態に戻す際に、ノズル先端部の注出位置で外側に形成された液滴は、この残留液防止用通路内部、内側表面および外側表面に接した液体部分の表面張力により内部通路内に引き込まれ、液体が外部に残留することを防止できる、としている。残留液防止用通路がない場合には、液滴は孤立し、容器内に引き込まれずに、外側に残留するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-226801号公報
【文献】特開2019-6475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された注出キャップや特許文献2に記載された液体注出用のノズル部は、複雑な製造工程を必要とし、製造コストの高騰を招くという問題がある。また、特許文献1、2に記載された技術によってもなお、内部の液体の種類によっては液垂れを完全には防止できていないという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、液体容器からの液垂れの発生を防止できる液体注出用ノズル、とくに硫酸等の化学薬品用として好適な液体注出用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した目的を達成するため、液体容器からの液垂れに及ぼす各種要因ついて鋭意検討した。その結果、液体容器の注出口に適正なノズルを装着して、液体を注出すれば、液垂れの発生は軽減できることを知見した。
【0009】
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
まず、液垂れに及ぼすノズル先端部形状の影響について、調査した。図1に模式的に示す、頭部平坦の管状体1を用い、先端部12の内部表面形状を種々変化させて、液垂れの状況を調査した。なお、ここでいう「頭部平坦」とは、頭部が管軸に垂直な平面に接する面あるいは線で構成される場合をいうものとする。
【0010】
用いた管状体1は、先端部12の内部表面121を、管状体の軸(以下、管軸ともいう)を含む断面で、図5に示す形状となるように加工した。すなわち、先端部の内部表面121は、管軸を含む断面で、管軸とのなす角度αがそれぞれ30°、45°、60°の直線状を呈する曲面とした。なお、基部11の外径(直径)は17.7mm、内径(直径)は13.7mmとした。
【0011】
そして、上記したように先端部を加工した管状体を液体注出用ノズル1とし、該ノズルの基部11を液体容器2の注出口211に挿入し、液体容器用蓋4により、液体注出用ノズル1と液体容器2とを着脱自在に固定し、液体注出用ノズル付き液体容器(図3(b)参照)とした。
【0012】
このような液体注出用ノズル付き液体容器を用い、実験開始前の液体容器内の液体量は一定として、液体容器を水平に傾けて、上記ノズルを介して液体を所定量(30ml目安)注出したのち、液体容器を正立する操作を行い、液垂れの有無を目視で調査した。なお、この操作は連続10回行い、液垂れ防止率を算出した。液垂れ防止率は、(液垂れが発生しなかった回数)を、操作回数(10)で除した値の百分率(%)で表示した。使用した液体は、硫酸、塩酸、硝酸の3種の化学薬品とした。使用した硫酸は98質量%硫酸で粘度は27cP(20℃)、塩酸は32質量%塩酸で粘度は2.4cP(20℃)、硝酸は60質量%硝酸で粘度は2.8cP(20℃)であった。
【0013】
得られた結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
図5に示す先端部の内部表面形状(ノズル形状)では、管軸とのなす角度αが30°~60°まで変化しても液垂れ防止率が50~60%であり、液垂れを完全に防止することはできなかった。
【0016】
そこで、ノズル先端部の内部表面形状を、管軸を含む断面で断面形状が少なくとも2段階の直線状を呈する、複数の曲面で構成することに思い至った。なお、少なくとも2段階の直線状を呈する複数の曲面は、管軸を含む断面で管軸となす角度αi°が、ノズル出口側に向かって順次、大きい角度αi°となる曲面となるように、構成した。このような内部表面を有する液体注出ノズルとすることにより、液体注出時に液体容器を水平状態から正立状態に戻す際に、注出される液体の液切れが良好となり、ノズル外部へまわる残留液体が減少し、液垂れが少なくなることを知見した。
【0017】
本発明は、かかる知見に基づきさらに、検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
[1]液体容器から液体を注出する液体注出用ノズルであって、頭部平坦の管状体で、前記液体容器の口部に装着する基部と、前記基部から延在する先端部と、を備え、前記基部の中空内部を前記液体容器からの液体が通過する内部通路とし、前記先端部は、前記内部通路から延在しノズル出口まで連続する複数段の曲面からなる内部表面を有し、かつ前記複数段の曲面は、前記管状体の軸を含む断面で前記管状体の軸とのなす角度がそれぞれαi°となる直線状を呈する曲面とし、かつ前記複数段の曲面における前記管状体の軸とのなす角度αi°が前記内部通路側から前記ノズル出口側に向かって、順次、大きくなる角度を有し、さらに前記基部には、該基部の外部表面の所定の位置に、全周にわたり所定高さの過挿入防止用突状部を配設してなることを特徴とする液体注出用ノズル。
[2]前記複数段の曲面が2段の曲面からなり、前記2段の曲面のうち、前記内部通路から延在する第1段の曲面の前記αi°がα1°:20~40°、該第1段の曲面に連続しノズル出口となる第2段の曲面の前記αi°がα2°:50~70°、であることを特徴とする[1]に記載の液体注出用ノズル。
[3]前記複数段の曲面が3段の曲面からなり、前記3段の曲面のうち、前記内部通路から延在する第1段の曲面は前記αi°がα1°:20~40°、該第1段の曲面よりノズル出口側で前記第1段の曲面に連続する第2段の曲面は前記αi°がα2°:35~55°、前記第2段の曲面に連続し、ノズル出口となる第3段の曲面は前記αi°がα3°:55~75°、を有する、ことを特徴とする[1]に記載の液体注出用ノズル。
[4]前記液体が、20℃で5mPa・s以上の粘度を有する液体であることを特徴とする[3]に記載の液体注出用ノズル。
[5]前記液体が化学薬品であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の液体注出用ノズル。
[6]前記基部が、該基部の外部表面で、前記過挿入防止用突状部の前記ノズル出口側に、キャップ取付け用ねじ部を有することを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の液体注出用ノズル。
[7]前記液体注出用ノズルがフッ素樹脂製であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の液体注出用ノズル。
[8][6]に記載の液体注出用ノズルに着脱自在に装着されるノズル用キャップであって、フッ素樹脂製であり、前記液体注出用ノズルの先端部が収納可能なように中空形状を呈し、前記先端部の端部が当接可能なように天頂部を有し、該天頂部の前記先端部の端部が当接する部位にフッ素ゴムを配設してなり、かつ端部内側にねじ部を有することを特徴とするノズル用キャップ。
[9]液体容器と、液体注出用ノズルと、液体容器用蓋とを組付けてなる液体注出用ノズル付き液体容器であって、
前記液体容器は、口部端部外側にねじ部を有し、
前記液体注出用ノズルを[1]ないし[7]のいずれかに記載の液体注出用ノズルとし、
前記液体容器用蓋を、天頂部に、前記液体注出用ノズルの先端部及び基部が通過可能でかつ前記液体注出用ノズルの前記過挿入防止用突状部が通過できないように穿設されてなる穴部を有し、かつ端部に、前記液体容器口部端部外側に設けられたねじ部に螺合可能なねじ部を有する蓋とし、
前記液体注出用ノズルは、該液体注出用ノズルの基部を、前記液体容器の口部注入口に、該基部に配設された過装入防止用突状部の下面がパッキンを介して前記液体容器の口部端面に当接するように挿入されてなり、
前記液体容器用蓋は、該液体容器用蓋の穴部に前記液体注出用ノズルの先端部から通し、前記液体注出用ノズルの基部に配設された前記過挿入防止用突状部の上面に当接するように装着されてなり、
前記液体容器用蓋のねじ部と前記液体容器のねじ部との螺合により、前記液体注出用ノズルを前記液体容器に着脱自在に固定してなることを特徴とする液体注出用ノズル付き液体容器。
[10]前記液体注出用ノズルを[6]に記載の液体注出用ノズルとし、該液体注出用ノズルに[8]に記載のノズル用キャップを、着脱自在に装着してなることを特徴とする[9]に記載の液体注出用ノズル付き液体容器。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液体容器からの液垂れの発生を抑制ないし防止でき、とくに化学薬品用として、薬品コストの低減、あるいは化学薬品等の液体注出作業の安全性の向上、作業環境の向上等、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、化学薬品等の液体容器の保管、液体容器の取り扱いや液体の取り出し等の液体注出作業の簡素化などの効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の液体注出用ノズルの概略を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の液体注出用ノズルの先端部断面形状を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の液体注出用ノズルを装着した液体容器の概略を示す説明図である。
図4】本発明の液体注出用ノズルを装着した液体容器の他の一例を示す説明図である。
図5】実験用として用いた液体注出用ノズルの先端部断面形状を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の液体注出用ノズル1は、液体容器2に取付けられ、液体容器2から液体を注出するためのノズルであり、とくに化学薬品等の液体注出用として好適である。化学薬品としては、硫酸、塩酸、硝酸等が例示できる。
【0021】
本発明の液体注出用ノズル1は、図1に示すように、基部11と、基部11から延在する先端部12と、を備える管状体とする。基部11では、管状の中空内部を液体容器2からの液体が通過可能な内部通路112とする。さらに、基部11には、外部表面の所定の位置に、全周にわたり所定高さを有する突状部111を配設する。突状部111は、液体注出用ノズル1の基部11を液体容器2の注出口211に挿入する際に、液体容器2内部に過度に挿入することを防止する、過挿入防止用突状部である。したがって、この突状部の大きさは、過挿入防止のために、液体容器2の注出口211の口径より大きな直径とする必要がある。
【0022】
また、突状部111は、基部11を液体容器2の注出口211に挿入した際に、液漏れがない程度の挿入深さを確保できるように、基部11の外部表面の所定の位置に設けることが好ましい。また、基部11の外径は、使用する材料に応じて、容器2の口部注出口211に挿入可能で、かつ液漏れがない程度に、基部11と液体容器2の内壁とが接触可能となる大きさとすることが好ましい。
【0023】
また、先端部12は、基部11から延在し、内部通路112からノズル出口まで、連続する複数段の曲面からなる内部表面121を有する。なお、ここでいう「複数段の曲面」は、2段以上好ましくは3段以下の曲面とすることが好ましい。先端部12における、連続する複数段の曲面は、管軸を含む断面で、それぞれ管軸と、αi°の角度をなす直線状を呈する曲面とする。すなわち、先端部12における内部表面121は、管軸を含む断面で、これら複数段の直線を順次連続させた断面形状を呈し、管軸周りに対称で全体としてラッパ状を呈する曲面となる。なお、ここで、連続する各曲面の境界は、通過する液体が円滑に流れるように円滑化仕上加工処理を施してもよい。また、複数段の曲面のうちのノズル出口となる曲面は、管状体の外部表面と交差する。
【0024】
そして、上記したαi°は、内部通路112側から前記ノズル出口側に向かって、例えば図2に示すように、順次、大きい角度(α1°<α2°、あるいはα1°<α2°<α3°)を有するように構成するものとする。先端部12の内部表面を、上記したような連続する複数段の曲面とすることにより、注出を中止し容器2を水平状態から正立状態に戻した際に、とくに液体の粘性が高い場合に、注出した液体の液切れがよくなり、残留液体が少なくなるとともに、残留液体を容器内に戻しやすく、液垂れを防止できるようになる。
【0025】
先端部内部表面における連続する複数段の曲面としては、管軸を含む断面で、管軸とのなす角度αi°が、内部通路112側からノズル出口側に向かって順に大きくなる、α1°:20°~40°の曲面と、α2°:50°~70°の曲面との2段の組合せ、あるいはα1°:35°~55°の曲面と、α2°:50°~70°の曲面との2段の組合せ、あるいはα1°:20°~40°の曲面と、α2°:35°~55°の曲面との2段の組合せとすることが好ましい。なお、液垂れの発生防止という観点からは、例えば、隣接する曲面の上記した角度の差が大きい、α1°:20°~40°の曲面と、α2°:50°~70°の曲面との2段の組合せとすることが好ましい。
【0026】
また、内部通路側からノズル出口側に向かって順に大きくなる、α1°:20°~40°の曲面と、α2°:35°~55°の曲面と、α3°:55°~75°の曲面との3段の組合せとすることがより好ましい。これにより、とくに粘度が20℃において5mPa・s以上となる高い粘度の液体(化学薬品等)を注出する際にも液垂れを防止できる。
【0027】
なお、ノズル出口となる曲面で、αi°が70°または75°を超えると、液垂れ防止効果が損なわれるという問題が生じる。また、内部通路側の曲面で、αi°が20°未満では、液垂れ防止効果が損なわれるという問題が生じる。
【0028】
なお、本発明では上記した組み合わせに限定されることはなく、上記したα1°<α2°、あるいはα1°<α2°<α3°を満足する条件であれば、各角度αi°は適宜選択することができる。
【0029】
なお、先端部12の複数段の曲面では、各段の曲面の幅はとくに限定する必要はないが、各段の曲面の幅は0.1mm以上とすることが好ましい。なお、ここでいう「各段の曲面の幅」は、管軸を含む断面で先端部の内部表面121における各段の長さ(曲面の長さ)をいうものとする。
【0030】
また、上記した本発明の液体注出用ノズル1を用いて、液体容器2から液体を注出する際には、図3(b)に示すように、液体注出用ノズル1を液体容器2に装着し、液体容器用蓋4により固定したノズル付き液体容器とすることが好ましい。
【0031】
液体注出用ノズル1を液体容器2に装着する際には、まず、液体注出用ノズル1の基部11を、液体容器2の注出口211に、突状部111の下面がパッキン3を介して液体容器2の口部21端面に当接するまで挿入する。突状部111の下面がパッキン3を介して液体容器2の口部端面に当接したのち、液体容器用蓋4を、ノズル1の先端部12側から穴部41を通して過装入防止用突状部111の上面に当接するように、装着する。液体容器用蓋4には、天頂部に、先端部12、基部11が通過可能でかつ過装入防止用突状部111が通過不能に穿設された穴部41と、端部内側にねじ部(雌ねじ部)42を有する。蓋端部内側に設けられたねじ部42は、液体容器2の口部21端部に設けられたねじ部(雄ねじ)22に螺合する。液体容器用蓋4が過装入防止用突状部111に当接したのち、さらに液体容器用蓋4のねじ部(雌ねじ部)42と液体容器2のねじ部(雄ねじ部)22とを螺合させ、液体注出用ノズル1を液体容器2に固定し、図3(b)に示すような液体注出用ノズル付き液体容器とする。これにより、液体容器を傾けて液体の注出を行う際に、安定した液体の注出を行うことができるようになる。
【0032】
また、保管等で、液体を注出しない場合には、ノズル出口の保護や、転倒等による液体漏れ等を防止するために、液体注出用ノズル1には、図4に示すように、ノズル用キャップ5を装着することが好ましい。
【0033】
ノズル用キャップ5を液体注出用ノズル1に取付けるには、基部11の外部表面で、過挿入防止用突起部111のノズル出口側の所定の位置に、キャップ5を取付けるためのねじ部(キャップ取付け用ねじ部)113を、設ける。キャップ取付け用ねじ部(雄ねじ)113は、キャップ5の端部に配設されたねじ部52と螺合可能なねじ部とすることは言うまでもない。
【0034】
ノズル用キャップ5は、図4(a)に示すように、先端部12が収納可能なように中空形状を呈し、先端部12の端部(ノズル出口)が当接可能なように天頂部51を有し、該天頂部51の先端部12の端部が当接する部位にはライナー6を配設することが好ましい。なお、キャップ5の端部内側には、ねじ部(雌ねじ)52を有する。これにより、先端部端部(ノズル出口)を保護するとともに、液体の漏れを防止することが可能となる。なお、キャップ5をノズル付き液体容器に装着した状態を図4(b)に示す。
【0035】
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
【実施例
【0036】
液体注出用ノズル1として、先端部の内部表面を2段または3段の複数段の曲面で形成した管状体(フッ素樹脂製)を作製した。なお、液体抽出用ノズル1の基部11の外径は17.7mm、内径は13.7mmとし、先端部内部表面の複数段の曲面は、管軸を含む断面で図2(a)、(b)に示すように、直線が連続した断面形状を有し、管軸とのなす角度αi(:α1、α2、α3)を、それぞれ表2に示す角度とした。ここで、各段の曲面の幅は、管軸を含む断面で先端部の内部表面における長さで2段の曲面の場合は、1.0~2.2mm、3段の曲面の場合は、0.3~2.0mmとした。
【0037】
上記した液体注出用ノズル1を、図3に示すように、液体容器2(容量:500ml)に装着し、液体容器用蓋4により固定して液体注出用ノズル付き液体容器とした。なお、実験開始前には、それぞれ液体容器内の液体量を一定とした。
【0038】
このような液体注出用ノズル付き液体容器を用いて、液体容器を水平まで傾けて、ノズルを介して液体(硫酸、塩酸、硝酸)を所定量(30ml目安)注出したのち、正立する操作を行い、液垂れの有無を目視で調査した。なお、この操作は連続10回行った。ここで、使用した硫酸は、98質量%硫酸で粘度が27cP(20℃)、塩酸は32質量%塩酸で粘度が2.4cP(20℃)、硝酸は60質量%硝酸で粘度が2.8cP(20℃)、であった。
【0039】
得られた結果を、液垂れ防止率で評価し、表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
先端部の内部表面を2段の曲面で形成した液体注出用ノズルを用いて液体注出を行うことにより、液体注出時の液垂れ防止率が70%以上と、液垂れを大幅に抑制することができることがわかる。先端部の内部表面を2段の曲面で形成した液体注出用ノズルのうちでは、α1、:30°、α2:60°からなる2段の曲面で形成した液体注出用ノズルが、最も高い液垂れ防止率を示した。なお、注出する液体が塩酸である場合には、実験した2段の曲面で形成した液体注出用ノズルではいずれも、液垂れ防止率:100%を達成できた。
【0042】
さらに、先端部の内部表面を3段の複数の曲面で形成した液体注出用ノズルを用いて液体注出を行うことにより、用いたすべての液体で液体注出時の液垂れ防止率を100%にすることができた。このことから、先端部の内部表面を3段の複数の曲面で形成した液体注出用ノズルは、粘度が20℃で5mPa・s以上となる高い粘度の液体を注出する際にも液垂れ防止に有効であることがわかる。
【符号の説明】
【0043】
1 液体注出用ノズル(管状体)
11 基部
111 過挿入防止用突状部(突状体)
112 内部通路
113 キャップ取付け用ねじ部
12 先端部
121 先端部内部表面
2 液体容器
21 口部
211 注出口(口部注出口)
22 蓋取付け用ねじ部
3 パッキン
4 液体容器用蓋
41 穴部
42 ねじ部
5 ノズル用キャップ(キャップ)
51 天頂部
52 ねじ部
6 ライナー
図1
図2
図3
図4
図5