(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ミラーモジュール及び測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20231219BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20231219BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20231219BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20231219BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G01S17/931
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
(21)【出願番号】P 2021025392
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 幸毅
(72)【発明者】
【氏名】林 邦彦
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-279442(JP,A)
【文献】特開2017-64749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0285489(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0039690(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G02B 26/10-26/12
G02B 6/35
26/00-26/08
G01C 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可視光のレーザ光を偏向して走査を行うためのミラーモジュール(21)であって、
可視光を透過させるとともに前記レーザ光を反射させる反射面を有する、偏向ミラー(211,212)と、
前記反射面の形状に対応する形状のミラー設置面(221,222)を有するミラー支持体(213)と、
前記ミラーモジュールに関する情報を視認可能な状態で表示する情報表示部(214,214a,214b,214c)と、
を備え、
前記情報表示部は、前記偏向ミラーと前記ミラー設置面との間に配置される、ミラーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のミラーモジュールであって、
前記情報表示部は、前記ミラー支持体の一部であって、前記ミラー設置面に前記情報がレーザ印字された部分(214c)である、ミラーモジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のミラーモジュールであって、
前記ミラー設置面は、前記偏向ミラーにおける前記反射面とは反対側の面に接して前記偏向ミラーを支持するための突出した部分である凸部(223,224)を有し、
前記ミラー支持体は、表面に反射防止層(225)が形成されており、
前記反射防止層は、少なくとも前記レーザ光の反射を抑制する層であり、
前記ミラー設置面は、前記反射防止層が形成されていない領域である非形成領域(226,227)を有し、
前記凸部は、前記非形成領域内に位置する、ミラーモジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のミラーモジュールであって、
前記反射防止層は、少なくとも前記レーザ光及び可視光の反射を抑制する層であり、
前記情報表示部は、前記ミラー支持体の一部であって、前記ミラー設置面に前記情報が刻印された部分(214b)及び前記ミラー設置面に前記情報が印字された部分(214c)の少なくとも一方であり、
前記情報表示部は、前記ミラー設置面における前記非形成領域に位置する、ミラーモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のミラーモジュールであって、
前記情報表示部については、可視光における反射率について、
前記偏向ミラーの前記反射面における反射率 < 前記情報表示部における反射率
の関係を有している、ミラーモジュール。
【請求項6】
レーザ光を偏向して走査を行うためのミラーモジュール(21)であって、
前記レーザ光を反射させる反射面を有する偏向ミラー(211,212)と、
前記反射面の形状に対応する形状のミラー設置面(221,222)を有するミラー支持体(213)と、
を備え、
前記ミラー設置面は、前記偏向ミラーにおける前記反射面とは反対側の面に接して前記偏向ミラーを支持するための突出した部分である凸部(223,224)を有し、
前記ミラー支持体は、表面に反射防止層(225)が形成されており、
前記反射防止層は、少なくとも前記レーザ光の反射を抑制する層であり、
前記ミラー設置面は、前記反射防止層が形成されていない領域である非形成領域(226,227)を有し、
前記凸部は、前記非形成領域内に位置する、ミラーモジュール。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載のミラーモジュールであって、
前記反射防止層は、少なくとも前記ミラー支持体の側面を覆うように形成される、ミラーモジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のミラーモジュールであって、
前記偏向ミラーは、誘電体多層膜ミラー又は金属ハーフミラーである、ミラーモジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のミラーモジュールであって、
車両に搭載される測距装置(1)に用いられる、ミラーモジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のミラーモジュールを備える測距装置であって、
前記ミラーモジュールを回転駆動させるように構成されるモータ(24)を更に備える、測距装置。
【請求項11】
請求項10に記載の測距装置であって、
前記モータはブラシレスDCモータである、測距装置。
【請求項12】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のミラーモジュールを備える、非可視光の前記レーザ光を偏向して走査を行う測距装置であって、
開口部を有し、内部空間に前記ミラーモジュールを収容する筐体(100)と、
前記筐体の前記開口部に設けられ、少なくとも前記レーザ光を透過可能な光学窓(200)と、
を備え、
前記光学窓は、可視光の透過を抑制する機能を有する、測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミラーモジュール及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射し、照射したレーザ光の物体からの反射光を検出して、その物体までの距離を検出する測距装置がある。この種の測距装置には、レーザ光を偏向して走査を行うために、回転駆動される偏向ミラーが用いられており、出力されたレーザ光は、偏向ミラーで反射され、偏向ミラーの回転角度に応じた方向に出射されることにより、あらかじめ設定された走査範囲内が走査される。
【0003】
特許文献1には、この種の測距装置において、発光部から出力され偏向ミラーで反射された光波が透過部材を透過して測距装置の外部に出射される際に、一部の光波が透過部材で反射され、反射された光波が再び偏向ミラーで反射されることにより、多重反射光(迷光、もしくは乱光という)が発生し得るという課題が記載されている。特許文献1に記載の装置は、偏向ミラーの反射面における透過部材側の端部に、光波の反射率が低い領域である低反射領域を備えることで、迷光の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ光を偏向走査する測距装置には、偏向ミラーと偏向ミラーが設置されるミラー支持体とを備えるミラーモジュールが用いられるものがある。発明者の詳細な検討の結果、このような測距装置において、以下の課題が見出された。
【0006】
ミラーモジュールの製造段階において、例えば識別番号や検査結果といったミラーモジュールに関する情報を視認可能なようにミラーモジュールに表示する必要が生じる場合がある。この場合、例えば当該情報を表示するラベルがミラーモジュールの外面に貼付されるなど、当該情報を表示する情報表示部がミラーモジュールの外面に配置される。しかしながら、ミラーモジュールの外面に情報表示部が配置されると、走査されるレーザ光が情報表示部で反射されることにより迷光が発生する可能性がある。また、ミラーモジュールの外面における偏向ミラー以外の部分に情報表示部を配置すると、ミラーモジュールが必要以上に大型化するという問題がある。したがって、ミラーモジュールが大型化することなく、視認可能な情報表示部をミラーモジュールに配置しつつ、迷光の発生を抑制することが求められる。
【0007】
本開示の一局面は、迷光の発生を抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、非可視光(約360nm未満、もしくは830nmよりも長い波長の光)のレーザ光を偏向して走査を行うためのミラーモジュール(21)であって、偏向ミラー(211,212)と、ミラー支持体(213)と、情報表示部(214,214a,214b,214c)と、を備える。偏向ミラーは、可視光(約360nm~約830nmの波長の光)を透過させるとともにレーザ光を反射させる反射面を有する。ミラー支持体は、反射面の形状に対応する形状のミラー設置面(221,222)を有する。情報表示部は、ミラーモジュールに関する情報を視認可能な状態で表示する。また、情報表示部は、偏向ミラーとミラー設置面との間に配置される。
【0009】
このような構成によれば、ミラーモジュールが大型化することなく、情報表示部を視認可能なようにミラーモジュールの内部に配置することができる。よって、視認可能な情報表示部をミラーモジュールに配置しつつ、迷光の発生を抑制できる。
【0010】
本開示の別の態様は、レーザ光を偏向して走査を行うためのミラーモジュール(21)であって、偏向ミラー(211,212)と、ミラー支持体(213)と、を備える。偏向ミラーは、レーザ光を反射させる反射面を有する。ミラー支持体は、反射面の形状に対応する形状のミラー設置面(221,222)を有する。ミラー設置面は、偏向ミラーにおける反射面とは反対側の面に接して偏向ミラーを支持するための突出した部分である凸部(223,224)を有する。ミラー支持体は、表面に反射防止層(225)が形成されている。反射防止層は、少なくともレーザ光の反射を抑制する層である。ミラー設置面は、反射防止層が形成されていない領域である非形成領域(226,227)を有する。凸部は、非形成領域内に位置する。
【0011】
レーザ光がミラー支持体で反射されることによる迷光の発生を抑制するためにミラー支持体の表面を反射防止層で覆うことが考えられるが、偏向ミラーと接する面に反射防止層が形成されるとミラー支持体への偏向ミラーの取付精度が悪化するという問題がある。これに対して、本開示の構成によれば、ミラー支持体への偏向ミラーの取付精度を大きく損なわないようにミラー支持体に反射防止層を設けることができるため、ミラー支持体への偏向ミラーの取付精度の悪化を防ぎつつ、迷光の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】ライダ装置の筐体内に収容される光検出モジュールの構成を示す斜視図である。
【
図4】スキャン部におけるミラーモジュール、仕切板及びクリップの部分の分解斜視図である。
【
図5】スキャン部におけるミラーモジュール、仕切板及びクリップの部分を、偏向ミラーの反射面に垂直かつ回転軸を通る面で切断した断面図である。
【
図6】偏向ミラーの反射面側からミラーモジュールを見た図である。
【
図7】
図6とは反対側に設置される偏向ミラーの反射面側からミラーモジュールを見た図である。
【
図9】戻り光が投光偏向部の反射面に入射した場合の光路を示す模式図である。
【
図10】戻り光が投光偏向部の側面に入射した場合の光路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示すライダ装置1は、レーザ光を出射し、出射したレーザ光の物体からの反射光を受光することによって、その物体との距離を測定する測距装置である。ライダ装置1は、車両に搭載して使用され、車両の前方に存在する様々な物体の検出に用いられる。ライダは、LiDARとも表記される。LiDARは、Light Detection and Rangingの略語である。本実施形態では、ライダ装置1は、非可視光のレーザ光を偏向して走査を行うように構成される。ライダ装置1は、レーザ光を走査することにより、距離だけでなく、位置も測定できる。以下、「レーザ光」と表記した場合、ライダ装置1で走査されるレーザ光を意味する。
【0014】
ライダ装置1は、
図1に示すように、筐体100と、光学窓200と、を備える。筐体100は、1面が開口された直方体状に形成された樹脂製の箱体である。
以下、筐体100の略長方形を有した開口部の長手方向に沿った方向をX軸方向、開口部の短手方向に沿った方向をY軸方向、X-Y平面に直交する方向をZ軸方向とする。なお、X-Z平面が水平となるようにライダ装置1を車両に設置した状態で筐体100の開口部側から見て、X軸方向における左右及びY軸方向における上下を定義する。また、Z軸方向における前後は、筐体100の開口部側を前、奥行き側を後と定義する。
【0015】
光学窓200は、筐体100の開口部に設けられ、少なくともレーザ光を透過可能に構成される。本実施形態では、光学窓200は、可視光の透過を抑制する機能を有する。具体的には、光学窓200は、可視光カットフィルタを有する。可視光カットフィルタは、非可視光を透過させるとともに可視光の透過を抑制する機能を有する光学フィルタである。可視光カットフィルタは、光学窓200の外面又は内面の全面を覆うように設けられる。あるいは、光学窓200自体が、上記光学フィルタの機能を有する部材で形成されていてもよい。
【0016】
図2に示すように、筐体100の内部空間には、光検出モジュール2が収容される。光検出モジュール2は、投光部10と、スキャン部20と、受光部30と、を備える。
以下、光検出モジュール2の構成について詳細に説明する。
【0017】
[2.スキャン部]
図3に示すように、スキャン部20は、ミラーモジュール21と、一対の仕切板22と、一対のクリップ23と、モータ24と、を備える。一対の仕切板22は、一対のクリップ23によりミラーモジュール21に固定される。ミラーモジュール21はモータ24上に立設される。
【0018】
モータ24は、ミラーモジュール21を回転駆動させるように構成される。本実施形態では、モータ24はブラシレスDCモータである。ミラーモジュール21、一対の仕切板22及び一対のクリップ23は、
図3において一点鎖線で示す回転軸を中心として、モータ24の駆動に従って回転運動をする。
【0019】
[3.ミラーモジュール]
図4に示すように、ミラーモジュール21は、一対の偏向ミラー211,212と、ミラー支持体213と、情報表示部214と、を備える。
【0020】
偏向ミラー211,212は、いずれも、レーザ光を反射させる反射面を有する平板状の部材である。本実施形態では、偏向ミラー211,212は、可視光を透過させるとともにレーザ光を反射させる反射面を有する。具体的には、偏向ミラー211,212は、少なくとも可視光を透過させる部材(例えば、ガラス等)で形成されたミラー基板をベースとし、可視光を透過させるとともにレーザ光を反射させる物質を反射面に蒸着することにより反射膜が形成されたものである。より具体的には、偏向ミラー211,212は、誘電体多層膜ミラーである。誘電体多層膜ミラーは、ガラス基板をベースとし、反射面に、可視光を透過させるとともに非可視光を反射させる誘電体多層膜が、蒸着により形成されたものである。あるいは、偏向ミラー211,212は、金属ハーフミラーであってもよい。金属ハーフミラーは、ガラス基板をベースとし、反射面に、非可視光よりも可視光の透過率が高い金属膜が、蒸着により形成されたものである。
【0021】
ミラー支持体213は、偏向ミラー211,212の反射面の形状に対応する形状のミラー設置面221,222を有している。偏向ミラー211,212は、反射面とは反対側の面がミラー支持体213により支持されるように、それぞれミラー設置面221,222に設置される。具体的には、
図3及び
図4に示すように、ミラー支持体213は、円板部213aと、被設置部213bと、を備える。円板部213aは、円形かつ板状の部位であり、その円の中心がモータ24の回転軸に固定される。被設置部213bは、両面に一対の偏向ミラー211,212が設置される板状の部位であり、円板部213aの円形面上に立設される。被設置部213bにおける一対の偏向ミラー211,212の設置面(すなわち、ミラー設置面221,222)の形状は、一対の偏向ミラー211,212の反射面の形状に対応する。
【0022】
なお、一対の偏向ミラー211,212は、長手方向の幅が異なる二つの長方形を一体化した形状を有する。具体的には、第1の長方形と、第1の長方形よりも長手方向の幅が長い第2の長方形とを、それぞれの長方形の短手方向に沿った中心軸を合わせて、その中心軸に沿って並べて一体化した形状を有する。以下、一対の偏向ミラー211,212において、第1の長方形に相当する部位を幅狭部、第2の長方形に相当する部位を幅広部という。
【0023】
被設置部213bを介して一体化された一対の偏向ミラー211,212は、幅広部を下にして、一体化された状態での中心軸の位置が円板部213aの円の中心と一致するようにして円板部213aに立設される。これにより、ミラーモジュール21は、モータ24の回転軸を中心とする回転運動をする。
【0024】
一対の仕切板22は、一対の偏向ミラー211,212の幅広部の長手方向の幅と同じ直径を有する円形かつ板状の部材を、半円状の2つの部位に分割したものである。一対の仕切板22は、一対の偏向ミラー211,212の幅狭部を両側から挟み込んだ状態、かつ、一対の偏向ミラー211,212の幅広部と幅狭部との段差部分に当接した状態で、ミラーモジュール21に固定される。
【0025】
以下、一対の偏向ミラー211,212のうち、一対の仕切板22よりも上側の部位、すなわち、幅狭部側の部位を投光偏向部20a、一対の仕切板22よりも下側の部位、すなわち、幅広部側の部位を受光偏向部20bという。
【0026】
クリップ23は、
図4に示すように、基部23aと、基部23aから延出する一対の把持部23bと、を有するU字状の形状をしている。
図3及び
図6~
図7に示すように、一対のクリップ23は、一対の偏向ミラー211,212の幅狭部における回転軸に直交する方向の両端部において、一対の把持部23bで、一対の偏向ミラー211,212及びミラー支持体213を把持する。一対の偏向ミラー211,212及びミラー支持体213は、一対のクリップ23により付勢され、一体化された状態で固定される。なお、一対の仕切板22は、
図4に示すようにクリップ23に把持される部分であるガイド部22aを有しており、一対の偏向ミラー211,212及びミラー支持体213がクリップ23に把持される際にガイド部22aも挟み込まれることにより、ミラーモジュール21に固定される。
【0027】
[3-1.凸部及び反射防止層]
図4及び
図5に示すように、ミラー設置面221は、偏向ミラー211における反射面とは反対側の面(以下、「裏面」という。)に接して偏向ミラー211を支持するための突出した部分である凸部223を有する。具体的には、凸部223は、ミラー設置面221から偏向ミラー211側に突出した部分であって、偏向ミラー211の裏面に接する上面を有する部分である。本実施形態では、凸部223は、ミラー設置面221から四角錐台状に偏向ミラー211側に突出する部分であり、ミラー設置面221に2つ設けられている。
【0028】
ミラー設置面222は、被設置部213bにおけるミラー設置面221とは反対側の面であり、偏向ミラー212の裏面に接して偏向ミラー212を支持するための突出した部分である凸部224を有する。ミラー設置面222は、ミラー設置面221と同一の形状である。すなわち、ミラー設置面222にも、ミラー設置面221と同様、2つの凸部224が設けられている。
【0029】
本実施形態では、
図5~
図7に示すように、凸部223,224は、ミラー設置面221,222における回転軸方向の中央部分に位置する。具体的には、凸部223,224は、クリップ23により付勢される部分に位置する。なお、
図6及び
図7は、それぞれ偏向ミラー211,212の反射面側からミラーモジュール21を見た図であり、偏向ミラー211,212越しに見えるミラー設置面221,222の構造も記載されている。
【0030】
図4、
図6~
図7において幅狭の斜線部分で示すように、ミラー支持体213は、表面に反射防止層225が形成されている。反射防止層225は、少なくともレーザ光の反射を抑制する層である。本実施形態では、反射防止層225は、非可視光及び可視光の全波長領域の反射を抑制する層である。具体的には、反射防止層225は、黒色の塗膜である。
【0031】
ミラー設置面221は、反射防止層225が形成されていない領域である非形成領域226を有する。また、ミラー設置面222は、反射防止層225が形成されていない領域である非形成領域227を有する。
【0032】
凸部223は、非形成領域226に位置する。また、凸部224は、非形成領域227に位置する。すなわち、反射防止層225が少なくとも凸部223,224の表面には形成されないようにして、ミラー支持体213の表面に反射防止層225が形成される。本実施形態では、ミラー設置面221,222における凸部223,224を含む所定の領域がマスキングされて黒色塗装が行われるため、ミラー設置面221,222における凸部223,224を含む所定の領域が非形成領域226,227となる。しかし、ミラー設置面221,222全体が非形成領域226,227となる構成でもよい。あるいは、凸部223,224の表面のみが非形成領域226,227となる構成でもよい。
【0033】
反射防止層225は、少なくともミラー支持体213の側面を覆うように形成される。換言すれば、ミラー支持体213の側面については、全面が反射防止層225で覆われている。ミラー支持体213の側面とは、ミラー支持体213の表面のうちミラー設置面221,222ではない部分である。すなわち、少なくともミラー支持体213の表面のうち偏向ミラー211,212で覆われていない部分、換言すれば、露出している部分については、反射防止層225が形成される。なお、図示しないが、一対の仕切板22及び一対のクリップ23の表面も、全面が反射防止層で覆われている。当該反射防止層は、具体的には、黒色の塗膜である。
【0034】
[3-2.情報表示部]
図4~
図7に示すように、ミラーモジュール21は、ミラーモジュール21に関する情報を視認可能な状態で表示する情報表示部214を有する。ミラーモジュール21に関する情報とは、例えば、識別番号等を示す識別情報、出荷日や組立日時等を示す日時情報、製品検査結果を示す検査情報、金型番号等の製造工程で必要となる情報を示す製造情報がある。
【0035】
情報表示部214は、偏向ミラー211,212とミラー設置面221,222との間に配置される。情報表示部214が偏向ミラー211,212とミラー設置面221,222との間に配置されるとは、次の(1)~(3)の場合を含む。
【0036】
(1)情報表示部が偏向ミラー及びミラー支持体とは別体として構成された部分であり、当該部分が偏向ミラーとミラー設置面との間に配置される場合
図5及び
図6に示すように、情報表示部214は、偏向ミラー211とミラー設置面221との間に配置される、偏向ミラー211及びミラー支持体213とは別体として構成された部分214aであってもよい。例えば、偏向ミラー211及びミラー支持体213とは別体として構成された部分214aは、偏向ミラー211とミラー設置面221との間に配置されるラベル214aである。本実施形態では、情報表示部214として偏向ミラー211とミラー設置面221との間にラベル214aが設けられており、ラベル214aはミラー設置面221に貼付されている。なお、ラベル214aは、偏向ミラー211の裏面に貼付されていてもよい。
【0037】
(2)ミラー設置面自体によって情報が表示され、ミラー設置面における情報が表示される部分が情報表示部である場合
図5及び
図7に示すように、ミラー設置面222自体によってミラーモジュール21に関する情報が表示されていてもよく、この場合、ミラー設置面222における当該情報が表示される部分214b,214cが情報表示部214となる。具体的には、情報表示部214は、ミラー支持体213の一部であって、ミラー設置面222に当該情報が刻印された部分214b及びミラー設置面222に当該情報が印字された部分214cの少なくとも一方であってもよい。ミラー支持体213の一部であって、ミラー設置面222に当該情報が刻印された部分214bとは、換言すれば、ミラー設置面222における刻印が施された部分214bである。また、ミラー支持体213の一部であって、ミラー設置面222に当該情報が印字された部分214cとは、換言すれば、ミラー設置面222における印字が施された部分214cである。本実施形態では、上述したラベル214aに加え、ミラー設置面222における刻印が施された部分214b及びミラー設置面222における印字が施された部分214cが、情報表示部214として設けられている。
【0038】
(3)偏向ミラーの裏面自体によって情報が表示され、偏向ミラーの裏面における情報が表示される部分が情報表示部である場合
偏向ミラーの裏面自体によってミラーモジュール21に関する情報が表示されていてもよく、この場合、偏向ミラーの裏面における当該情報が表示される部分が情報表示部214となる。具体的には、図示されないが、情報表示部214は、偏向ミラーの一部であって、偏向ミラーの裏面に当該情報が印字された部分であってもよい。換言すれば、情報表示部214は、偏向ミラーの裏面における印字が施された部分であってもよい。
【0039】
本実施形態では、情報表示部214(具体的には、ラベル214a、ミラー設置面222における刻印が施された部分214b及びミラー設置面222における印字が施された部分214c)は、すべて投光偏向部20a側に配置されている。しかし、情報表示部214は、受光偏向部20b側に配置されていてもよいし、投光偏向部20a側と受光偏向部20b側との両方に配置されていてもよい。
【0040】
ミラー設置面222における刻印が施された部分214b及びミラー設置面222における印字が施された部分214cは、ミラー設置面222における非形成領域227に位置する。なお、偏向ミラー211及びミラー支持体213とは別体として構成された部分214aは、本実施形態では非形成領域226に位置するが、偏向ミラー211とミラー設置面221との間であれば、任意の位置に配置できる。また、偏向ミラーの裏面における印字が施された部分は、偏向ミラーの裏面の任意の部分に位置することができる。
情報表示部214は、可視光における反射率について、以下の関係を有している。
偏向ミラー211,212の反射面における反射率 < 情報表示部214における反射率
情報表示部214における反射率は、情報表示部214のうちミラー設置面222における印字が施された部分214cについては、文字等の情報を表す部分及びその周辺の部分の少なくとも一方の反射率である。例えば、白の下地に黒の文字が印字されている場合や、黒の下地に白の文字が印字されている場合など、文字等の情報を表す部分及びその周辺の部分の一方のみの反射率が偏向ミラー211,212の反射面における反射率よりも大きい場合も含む。
【0041】
[3-3.ミラー設置面へのレーザ印字]
情報表示部214がミラー設置面222における印字が施された部分214cである場合、ミラー設置面222への印字はレーザ加工により行われてもよい。換言すれば、情報表示部214は、ミラー支持体213の一部であって、ミラー設置面222に当該情報がレーザ印字された部分214cであってもよい。
【0042】
レーザ印字は、ミラー支持体213に偏向ミラー212を設置した状態、すなわち、ミラーモジュール21を組み立てた状態で行うことができる。具体的には、ミラー支持体213に偏向ミラー212を設置した状態で、偏向ミラー212越しにミラー設置面222に可視光のレーザビームを照射することにより、ミラー設置面222に印字する。偏向ミラー212は可視光を透過させるため、可視光レーザを用いることにより、偏向ミラー212越しにミラー設置面222に印字することができる。
【0043】
本実施形態では、ミラー設置面222における印字が施された部分214cの印字は、上記の方法によるレーザ印字で行われる。
[4.投光部]
図3に示すように、投光部10は、一対の発光モジュール11,12を備える。投光部10は、投光折返ミラー15を備えてもよい。
【0044】
発光モジュール11は、光源111と、発光レンズ112と、を備え、両者は対向して配置される。光源111には、半導体レーザが用いられる。本実施形態では、光源111は、非可視光のレーザ光を発生させるように構成される。具体的には、光源111は、赤外光のレーザ光を発生させる赤外半導体レーザである。発光レンズ112は、光源111から発せられるレーザ光のビーム幅を絞るレンズである。同様に、発光モジュール12は、光源121と、発光レンズ122と、を有する。発光モジュール12は発光モジュール11と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
投光折返ミラー15は、レーザ光の進行方向を変化させるミラーである。
発光モジュール11は、当該発光モジュール11から出力されるレーザ光が、直接、投光偏向部20aに入射されるように配置される。
【0046】
発光モジュール12は、当該発光モジュール12から出力されるレーザ光が、投光折返ミラー15にて略90°進行方向が曲げられて、投光偏向部20aに入射されるように配置される。
【0047】
ここでは、発光モジュール11は、X軸方向の左から右に向けてレーザ光を出力するように配置され、発光モジュール12は、Z軸方向の後から前に向けてレーザ光を出力するように配置される。また、投光折返ミラー15は、発光モジュール11から投光偏向部20aに向かうレーザ光の経路を遮ることがないように配置される。
【0048】
[5.受光部]
受光部30は、受光素子31を備える。受光部30は、受光レンズ32と、受光折返ミラー33と、を備えてもよい。
【0049】
受光素子31は、投光部により出力されたレーザ光の物体からの反射光を受光するように構成される。具体的には、受光素子31は、複数のAPDを1列に配置したAPDアレイを有する。APDは、アバランシェフォトダイオードである。
【0050】
受光レンズ32は、受光偏向部20bから到来する光を絞るレンズである。
受光折返ミラー33は、受光レンズ32のX軸方向における左側に配置され、光の進行方向を変化させるミラーである。受光素子31は、受光折返ミラー33の下部に配置される。
【0051】
受光折返ミラー33は、受光偏向部20bから、受光レンズ32を介して入射する光が受光素子31に到達するように、光の経路を下方に略90°屈曲させるように配置される。
受光レンズ32は、受光偏向部20bと受光折返ミラー33との間に配置される。受光レンズ32は、受光素子31に入射する光ビームのビーム径が、APDの素子幅程度となるように絞る。
【0052】
[6.光検出モジュールの動作]
発光モジュール11から出力されたレーザ光は、投光偏向部20aに入射される。また、発光モジュール12から出力されたレーザ光は、投光折返ミラー15で進行方向が略90°曲げられて投光偏向部20aに入射される。投光偏向部20aに入射されたレーザ光は、光学窓200を介して、ミラーモジュール21の回転角度に応じた方向に向けて出射される。ミラーモジュール21を介してレーザ光が照射される範囲が走査範囲である。例えば、Z軸に沿った前方向を0度としてX軸方向に沿って広がる±60°の範囲を走査範囲とできる。
【0053】
ミラーモジュール21の回転位置に応じた所定方向、すなわち、投光偏向部20aからのレーザ光の出射方向に位置する被検物からの反射光は、光学窓200を透過し、受光偏向部20bで反射し、受光レンズ32及び受光折返ミラー33を介して受光素子31で受光される。
【0054】
[7.遮蔽部及び低反射部]
[7-1.遮蔽部]
上述のように、偏向ミラー211,212は、ガラス基板をベースとし、反射面にレーザ光を反射する物質を蒸着することにより反射膜が形成されたものである。偏向ミラー211,212の反射面は反射膜を有するためレーザ光を反射するが、側面は反射膜を有さないためレーザ光が透過する。
【0055】
図8において斜線部分で示すように、偏向ミラー211,212の一部の側面には、少なくともレーザ光を透過しにくい部分である遮蔽部215a,215bが形成される。遮蔽部215a,215bは、例えば、ミラー基板の表面に黒色のインクを印刷することで構成される。なお、
図8~
図10には、反射防止層225は示していない。
【0056】
遮蔽部215a,215bが形成される位置について
図9及び
図10を用いて説明する。
図9及び
図10は、筐体100の内部において光検出モジュール2が収容される空間をY軸方向における上側から見た模式図である。なお、
図9及び
図10では、当該空間のうちY軸方向における上側の空間に位置する投光部10及び投光偏向部20aが図示されており、下側の空間に位置する受光部30及び受光偏向部20bは図示されない。
図9及び
図10では、偏向ミラー211の反射面が投光部10及び受光部30が位置する方向に向いている状態である。
【0057】
遮蔽部215aは、偏向ミラー211,212のそれぞれにおいて、投光偏向部20aにおける回転軸を挟む両側の側面のうち反射面が投光部10に向いている状態で光学窓200に近い方の側面に形成される。
図9及び
図10において、偏向ミラー211,212のそれぞれにおける遮蔽部215aは、投光偏向部20aの側面における斜線部分で示される。
【0058】
遮蔽部215bは、偏向ミラー211,212のそれぞれにおいて、受光偏向部20bにおける回転軸を挟む両側の側面のうち反射面が受光部30に向いている状態で光学窓200から遠い方の側面に形成される。
図9及び
図10では図示されないが、偏向ミラー211,212のそれぞれにおける遮蔽部215bは、遮蔽部215aがある側面と反対側の受光偏向部20bの側面に位置する。
【0059】
[7-2.低反射部]
図6及び
図7において幅広の斜線部分で示すように、偏向ミラー211,212の反射面の一部には、少なくともレーザ光を反射しにくい部分である低反射部216が形成される。低反射部216は、例えば、遮蔽部215a,215bと同一の黒色のインクを反射膜上に印刷することで構成される。
【0060】
低反射部216が形成される位置について
図9及び
図10を用いて説明する。低反射部216は、偏向ミラー211,212のそれぞれにおいて、反射面が投光部10に向いている状態で光学窓200側となる投光偏向部20aにおける反射面の端部に形成される。
図9及び
図10において、偏向ミラー211,212のそれぞれにおける低反射部216は、投光偏向部20aの反射面における斜線部分で示される。すなわち、低反射部216は、投光偏向部20aにおいて遮蔽部215aがある側面と同じ側の端部に位置する。遮蔽部215a,215b及び低反射部216が同一の黒色のインクを用いて形成される場合、遮蔽部215a及び低反射部216は連続的に形成される。
【0061】
[7-3.戻り光の光路に対する遮蔽部及び低反射部の位置]
本実施形態のライダ装置1のように、光学窓200を備え、回転駆動される偏向ミラー211,212を用いてレーザ光を走査する構成では、
図9及び
図10に示すように、投光偏向部20aで反射されたレーザ光が光学窓200を通過する際に、レーザ光の一部が光学窓200で更に反射されて戻り光RLとなり、筐体100外に出射されずに投光偏向部20aへと戻ってくる場合がある。なお、偏向ミラー211の投光偏向部20aで反射されて出射されるレーザ光の本来の光路Bを実線で、戻り光RLの光路を破線で示す。
図10においては、発生する戻り光RLのうち偏向ミラー211の投光偏向部20aにおける光学窓200側の側面に入射する戻り光RLのみを破線で示しており、光学窓200で反射されて当該戻り光RLとなるレーザ光を二重線で示している。
【0062】
戻り光RLが偏向ミラー211の投光偏向部20aの反射面に入射した場合を
図9に示す。仮に低反射部216がない場合、戻り光RLは再び投光偏向部20aの反射面で反射され、破線で示すように、本来出射されるべき方向とは異なる方向に出射される光である迷光SLとなる。迷光SLは、物体で反射されると、出射された経路と同一の経路を逆方向に戻り、受光部30で受光される。これにより、実際には存在しないにもかかわらず検出される物体であるゴーストが発生する。投光部10から出力されたレーザ光は投光偏向部20aの反射面の中央付近で反射されるが、戻り光RLは当該レーザ光よりも光学窓200側で反射される。
【0063】
本実施形態では、投光偏向部20aの反射面における戻り光RLが反射される領域に低反射部216が形成されるため、戻り光RLの反射が抑制され、迷光SLの光量が低減される。よって、戻り光RLを原因とするゴーストの発生を低減できる。なお、低反射部216は、レーザ光が反射される領域である投光偏向部20aの反射面の中央部よりも光学窓200側に形成されるため、レーザ光の反射への影響は少ない。
【0064】
また、戻り光RLが偏向ミラー211の投光偏向部20aにおける光学窓200側の側面に入射した場合を
図10に示す。仮に遮蔽部215aがない場合、戻り光RLは当該側面から偏向ミラー211の内部へと入り込み、破線で示すように、反射を繰り返しながら偏向ミラー211の内部を投光偏向部20aから受光偏向部20bへと通り抜ける。偏向ミラー211の内部を通過して受光偏向部20bにおける受光部30側の側面に到達した戻り光RLは、仮に遮蔽部215bがない場合、当該側面から偏向ミラー211外に出て、受光部30で受光される。これにより、ゴーストが発生する。
【0065】
本実施形態では、戻り光RLが偏向ミラー211,212の内部へ入る際の入口となる投光偏向部20aの側面に遮蔽部215aが形成される。また、偏向ミラー211,212の内部を通過した戻り光RLの出口となる受光偏向部20bの側面に遮蔽部215bが形成される。これにより、偏向ミラー211,212の内部を通過して受光部30で受光される戻り光RLの光量が低減されるため、戻り光RLを原因とするゴーストの発生を低減できる。
【0066】
[8.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(8a)非可視光のレーザ光を偏向して走査を行うためのミラーモジュール21は、偏向ミラー211,212と、ミラー設置面221,222を有するミラー支持体213と、情報表示部214と、を備える。偏向ミラー211,212は、可視光を透過させるとともにレーザ光を反射させる反射面を有する。情報表示部214は、ミラーモジュール21に関する情報を視認可能な状態で表示する。また、情報表示部214は、偏向ミラー211,212とミラー設置面221,222との間に配置される。このような構成によれば、情報表示部214を視認可能なようにミラーモジュール21の内部に配置することができる。偏向ミラー211,212は可視光を透過させるため、情報表示部214を偏向ミラー211,212越しに視認できるが、非可視光のレーザ光は偏向ミラー211,212の反射面で反射される。すなわち、情報表示部214は、レーザ光を反射しない位置に配置されている。このため、情報表示部214がミラーモジュール21の外面に配置される場合と比較して、レーザ光が情報表示部214で反射されることにより迷光が発生することを抑制できる。したがって、視認可能な情報表示部214をミラーモジュール21に配置しつつ、迷光の発生を抑制できる。
【0067】
(8b)情報表示部214のうちミラー設置面222における印字が施された部分214cについては、ミラー設置面222への印字はレーザ印字で行われる。このような構成によれば、ミラーモジュール21を組み立てた状態でミラー設置面222にレーザ印字できるため、ミラーモジュール21の製造の最終段階で印字を行うことができる。これにより、例えば、ミラーモジュール21の組付工程後に行われる検査工程において基準を満たした製品のみにレーザ印字を行うといったことが可能となる。すなわち、例えば情報表示部214が連番の識別番号を表示する場合、ラベル等のように情報表示部214が組付工程以前に配置されると、組付工程後の検査工程で基準を満たさない製品がはじかれた場合、識別番号に欠番が生じてしまう。本実施形態のように、ミラーモジュール21の製造の最終段階でレーザ印字を行うと、識別番号に欠番が生じない。
【0068】
(8c)ミラー設置面221,222は、偏向ミラー211,212の裏面に接して偏向ミラー211,212を支持する凸部223,224を有する。ミラー支持体213は、表面に反射防止層225が形成されている。ミラー設置面221,222は、反射防止層225が形成されていない領域である非形成領域226,227を有しており、凸部223,224は非形成領域226,227内に位置する。このような構成によれば、ミラー支持体213への偏向ミラー211,212の取付精度の悪化を防ぎつつ、迷光の発生を抑制できる。より詳細に説明すると、本実施形態の構成により、以下の課題を解決できる。
【0069】
偏向ミラーとミラー支持体とを備えるミラーモジュールを用いてレーザ光を偏向走査する測距装置においては、レーザ光がミラー支持体で反射されることにより迷光が発生する可能性がある。迷光の発生を抑制するために、ミラー支持体の表面をレーザ光の反射を低減させる反射防止層で覆うことが考えられるが、偏向ミラーと接する面に反射防止層が形成されていると、ミラー支持体への偏向ミラーの取付精度が悪化するという問題がある。したがって、ミラー支持体への偏向ミラーの取付精度の悪化を防ぎつつ、迷光の発生を抑制することが求められる。
【0070】
本実施形態の構成によれば、ミラー支持体213への偏向ミラー211,212の取付精度を大きく損なわないようにミラー支持体213に反射防止層215を設けることができる。したがって、ミラー支持体213への偏向ミラー211,212の取付精度の悪化を防ぎつつ、ミラー支持体213に反射防止層225を設けない場合と比較して、迷光の発生を抑制できる。
【0071】
(8d)情報表示部214のうちミラー設置面222における刻印が施された部分214b及びミラー設置面222における印字が施された部分214cは、ミラー設置面222における非形成領域227に位置する。このような構成によれば、ミラー設置面222における刻印が施された部分214b及びミラー設置面222における印字が施された部分214cが反射防止層225と重ならないため、情報表示部214を視認しやすくなる。
【0072】
(8e)反射防止層225は、少なくともミラー支持体213の側面を覆うように形成される。このような構成によれば、レーザ光がミラー支持体213の側面で反射されることにより迷光が発生することを抑制できる。
【0073】
(8f)偏向ミラー211,212は、誘電体多層膜ミラー又は金属ハーフミラーである。このような構成によれば、可視光を透過させるとともにレーザ光を反射させる反射面を有する偏向ミラー211,212を容易に実現することができる。
【0074】
(8g)車両に搭載して使用されるライダ装置1は、上述した迷光の発生を抑制する機能を有するミラーモジュール21を備える。このような構成によれば、高い測距精度が求められる車載用の測距装置において、測距精度を向上させることができる。
【0075】
(8h)非可視光のレーザ光を偏向して走査を行うライダ装置1において、ミラーモジュール21を収容する筐体100の開口部には、少なくともレーザ光を透過可能な光学窓200が設けられ、光学窓200は可視光の透過を抑制する機能を有する。このような構成によれば、可視光が光学窓200を透過して筐体100内部に入り込むことを抑制できるため、特に近赤外線で測距を行う場合などに、測距の際の可視光による影響を抑制でき、測距精度を向上させることができる。
【0076】
[9.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0077】
(9a)上記実施形態では、情報表示部214として、偏向ミラー211及びミラー支持体213とは別体のもの(具体的には、ラベル214a)と、ミラー支持体213の一部であるもの(具体的には、ミラー設置面222における刻印が施された部分214b及びミラー設置面222における印字が施された部分214c)と、を例示したが、情報表示部214は偏向ミラーの一部(具体的には、偏向ミラーの裏面における印字が施された部分)であってもよい。また、情報表示部214として、偏向ミラー211及びミラー支持体213とは別体のもの、ミラー支持体213の一部であるもの、及び偏向ミラーの一部であるもののいずれかが単独で設けられてもよいし、これらが適宜組み合わされて設けられてもよい。
【0078】
(9b)上記実施形態では、ミラー設置面221,222それぞれに2つの凸部223,224が設けられているが、凸部の個数はこれに限定されない。例えば、ミラー設置面に3つ以上の凸部が設けられていてもよいし、ミラー設置面に1つの凸部が設けられていてもよい。なお、凸部の形状についても、偏向ミラーの裏面に接して偏向ミラーを支持するための突出した部分であれば、本実施形態に示す形状に限定されず、任意の形状とできる。
【0079】
(9c)上記実施形態では、ミラー設置面221,222は凸部223,224を有しており、ミラー支持体213の表面に反射防止層225が形成されているが、ミラー支持体213の構成はこれに限定されない。例えば、ミラー支持体は、凸部を有していなくてもよいし、表面に反射防止層が形成されていなくてもよい。
【0080】
(9d)上記実施形態では、偏向ミラー211,212として誘電体多層膜ミラー又は金属ハーフミラーを用いる構成を例示したが、誘電体多層膜ミラー又は金属ハーフミラー以外のミラーが用いられてもよい。
【0081】
(9e)上記実施形態では、ライダ装置1は車載用として使用されるが、ライダ装置1は車載用以外の用途で使用されてもよい。
(9f)上記実施形態では、モータ24としてブラシレスDCモータを用いる構成を例示したが、ブラシレスDCモータ以外のモータが用いられてもよい。
【0082】
(9g)上記実施形態では、光学窓200が可視光の透過を抑制する機能を有するが、光学窓がこのような機能を有しない構成でもよい。
(9h)上記実施形態では、ライダ装置1は非可視光のレーザ光を偏向して走査を行うように構成されるが、ライダ装置は可視光のレーザ光を偏向して走査を行う構成でもよい。
【0083】
(9i)上記実施形態では、偏向ミラー211,212は、可視光を透過させるとともに非可視光のレーザ光を反射させる反射面を有するが、偏向ミラーの構成はこれに限定されない。例えば、偏向ミラーは、レーザ光を反射させる反射面を有していれば、可視光を透過させない構成でもよい。
【0084】
(9j)上記実施形態では、偏向ミラー211,212とミラー設置面221,222との間に情報表示部214が配置されるが、ミラーモジュールは情報表示部を備えない構成でもよい。
【0085】
(9k)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0086】
21…ミラーモジュール、211,212…偏向ミラー、213…ミラー支持体、214,214a,214b,214c…情報表示部、221,222…ミラー設置面、223,224…凸部、225…反射防止層、226,227…非形成領域。