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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】インダクタ部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20231219BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231219BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F41/04 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021043687
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143260
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】生越 貴大
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-080550(JP,A)
【文献】特開2019-029372(JP,A)
【文献】特開2016-139786(JP,A)
【文献】特開2015-207574(JP,A)
【文献】特開2020-031118(JP,A)
【文献】特開平09-232760(JP,A)
【文献】特開平11-154612(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108862(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031842(WO,A1)
【文献】特開平11-054326(JP,A)
【文献】特開2006-237249(JP,A)
【文献】特開2020-021837(JP,A)
【文献】特開2017-011185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層された素体と、
前記素体内に設けられ、前記絶縁層の積層方向に進行する螺旋状に巻回されたコイルと、
前記素体の上面に設けられた基板と、を備え、
前記コイルは、前記積層方向に沿って複数配置され且つ前記積層方向に直交する平面に沿って巻回されたコイル配線と、複数の前記コイル配線の端部を互いに接続する接続配線と、を有し、
前記コイル配線は、前記平面上に巻回された巻回部と、前記巻回部の端部から前記接続配線に引き出された引出部と、を有し、
前記接続配線は、前記積層方向に複数配置され、
前記積層方向において、前記積層方向の最上層の前記接続配線の上面の最も低い位置は、最上層の前記コイル配線における前記巻回部の底面の位置よりも低く、
前記最上層のコイル配線の前記引出部は、前記最上層のコイル配線の前記巻回部が設けられた前記平面より前記積層方向の下側に引き出されて、前記最上層の接続配線に接続し、前記平面に対して傾斜しており、
前記最上層の接続配線の上面の最も低い位置は、前記積層方向における最上層の1層下の前記コイル配線における前記巻回部の底面の位置よりも高い、インダクタ部品。
【請求項2】
前記積層方向における最下層の前記コイル配線の前記引出部は、前記平面に対して平行であり、
前記コイル配線の前記引出部は、前記積層方向の上層に位置するものほど、前記平面に対する傾斜角度が大きくなる、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記積層方向において、隣り合う前記コイル配線の前記巻回部間の絶縁層の厚みは、当該巻回部の厚みよりも小さい、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記接続配線の幅は、前記巻回部の幅よりも大きい、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記コイルは、複数存在し、
前記積層方向に複数配置された前記接続配線は、互いに接続されて、積層体を構成し、
複数の前記コイルは、それぞれ前記積層体を有する、請求項1からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
複数の前記コイルは、互いに線路長が異なる第1コイルと第2コイルとを含み、
前記第1コイルの前記コイル配線の一部の幅は、前記第2コイルの前記コイル配線の幅と異なる、請求項に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
各々の前記積層体の厚みは、同じである、請求項またはに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記複数のコイルは、第1コイルと第2コイルとを含み、
前記第1コイルでは、前記コイル配線の前記巻回部は、渦巻状に巻回され、
前記第1コイルの前記巻回部と前記第2コイルの前記積層体との最短距離は、前記第1コイルの前記巻回部の隣り合うターン間の距離よりも大きい、請求項からの何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記コイルは、第1から第4コイル配線からなり、
前記第1から第4コイル配線は、積層方向に順に設けられており、それぞれ接続配線を有し、
各接続配線は、前記積層方向に積層されて前記積層体を形成する、請求項5から8のいずれか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記巻回部の端部に接続されたダミー配線をさらに備え、
前記ダミー配線は、前記巻回部の延在方向に沿って前記巻回部の端部から延在し、電流経路を構成しない、請求項1から9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記ダミー配線は、最上層のコイル配線には接続されていない、請求項10に記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記積層方向における最下層の前記コイル配線における前記巻回部の端部に接続された前記ダミー配線の線路長は、前記最下層のコイル配線以外の前記コイル配線における前記巻回部の端部に接続された前記ダミー配線の線路長よりも短い、請求項10または11に記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記基板は、磁性基板であり、
前記素体は、前記コイルより径方向内側の領域において、前記積層方向に貫通した貫通孔を有し、
前記貫通孔内に設けられ、内磁路を構成する内磁路部材をさらに備え、
前記内磁路部材は、前記基板とは異なる磁性材料を含む、請求項1から12の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記内磁路部材は、金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成され、
前記積層方向において、前記金属磁性粉の平均粒径の1/2以下の平均粒径を有する金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成される密着層を、前記最上層のコイル配線の前記巻回部と前記基板との間に備える、請求項13に記載のインダクタ部品。
【請求項15】
前記素体の下面に設けられ、厚みが前記基板よりも厚い基板をさらに備える、請求項13または14に記載のインダクタ部品。
【請求項16】
前記積層方向において上側に位置する巻回部の厚みの方が、下側に位置する巻回部の厚みよりも薄い、請求項1から15の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項17】
請求項1に記載のインダクタ部品の製造方法であって、
第1絶縁層上に第1コイル配線と第1接続配線とを積層する工程と、
前記第1接続配線の上面の少なくとも一部が露出するように、第2絶縁層を前記第1コイル配線および前記第1接続配線上に積層する工程と、
前記第1接続配線の上面に第2接続配線が接触するように、前記第2絶縁層上に第2コイル配線および第2接続配線を積層する工程と、を含み、
前記第2コイル配線を、前記第2接続配線に向かって引き出される引出部が、傾斜するように形成する、インダクタ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2016-139786号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、複数の絶縁層が積層された素体と、前記素体内に設けられ、前記絶縁層の積層方向に進行する螺旋状に巻回されたコイルと、を備える。前記コイルは、前記積層方向に沿って複数配置され且つ前記積層方向に直交する平面に沿って巻回されたコイル配線と、複数の前記コイル配線の端部を互いに接続する複数の接続配線と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-139786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインダクタ部品では、絶縁層の積層方向からみて、それぞれの接続配線が互いにずれて配置されている。そのため、積層方向に直交する平面において、コイル配線が配置されるスペースが小さくなる結果、コイル配線のターン数が減少し、または、コイル配線の径が小さくなり、インダクタンスの取得効率が低下する場合があった。
【0005】
そこで、本開示は、インダクタンスの取得効率を向上させることができるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
複数の絶縁層が積層された素体と、
前記素体内に設けられ、前記絶縁層の積層方向に進行する螺旋状に巻回されたコイルと、
前記素体の上面に設けられた基板と、を備え、
前記コイルは、前記積層方向に沿って複数配置され且つ前記積層方向に直交する平面に沿って巻回されたコイル配線と、複数の前記コイル配線の端部を互いに接続する接続配線と、を有し、
前記コイル配線は、前記平面上に巻回された巻回部と、前記巻回部の端部から前記接続配線に引き出された引出部と、を有し、
前記接続配線は、前記積層方向に複数配置され、
前記積層方向において、前記積層方向の最上層の前記接続配線の上面の最も低い位置は、最上層の前記コイル配線における前記巻回部の底面の位置よりも低く、
前記最上層のコイル配線の前記引出部は、前記最上層のコイル配線の前記巻回部が設けられた前記平面より前記積層方向の下側に引き出されて、前記最上層の接続配線に接続し、前記平面に対して傾斜している。
【0007】
前記実施形態によれば、複数の接続配線が積層方向に配置されているため、コイル配線が配置される前記平面上のスペースを大きくすることができる。このため、コイル配線のターン数を増加したり、コイル配線の径を大きくすることができ、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0008】
また、最上層の接続配線の上面の最も低い位置が、最上層のコイル配線における巻回部の底面の位置よりも低いため、最上層の接続配線上の絶縁層の厚みが、最上層のコイル配線における巻回部上の絶縁層の厚みよりも大きくなる。これにより、複数の接続配線が積層方向に配置された場合に発生し得る、素体と、素体上に設けられる基板と、の密着性の低下を抑制できる。
【0009】
また、コイル配線が配置される前記平面上の大きなスペースを活用して、コイル配線の巻回部のターン数を増大させ、コイル配線の前記平面上の大きさを最大限大きくした場合、引出部の線路長が短くなり、インダクタンスの取得効率が低下する場合がある。前記実施形態によれば、最上層のコイル配線の引出部が、前記平面に対して傾斜している。このため、引出部の線路長を確保でき、インダクタンスの取得効率の低下を抑制できる。
【0010】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記最上層の接続配線の前記上面の最も低い位置は、前記積層方向における最上層の1層下の前記コイル配線における前記巻回部の底面の位置よりも高い。
【0011】
前記実施形態によれば、最上層の接続配線と最上層のコイル配線の巻回部との段差を小さくし、接続配線および引出部の断線を抑制できる。
【0012】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記積層方向における最下層の前記コイル配線の前記引出部は、前記平面に対して平行であり、
前記コイル配線の前記引出部は、前記積層方向の上層に位置するものほど、前記平面に対する傾斜角度が大きくなる。
【0013】
ここで、「傾斜角度」とは、積層方向に平行な断面であって、積層方向に配置される全ての接続配線と、これらの接続配線に接続される全ての引出部と、に交差する断面において、引出部の中心線の両端を結ぶ線と前記平面とのなす角のうち、鋭角となる方を指す。
【0014】
前記実施形態によれば、最下層のコイル配線の巻回部は、最下層の接続配線と同一平面上に設けられているため、同一平面上に設けられていない場合と比較して、最下層のコイル配線の巻回部と最下層の接続配線とを同じ工程で製造することができ、全体の工程数を抑制できる。また、コイル配線の引出部は、積層方向の上層に位置するものほど傾斜角度が大きくなるため、引出部の線路長をより効果的に確保できる。
【0015】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記積層方向において、隣り合う前記コイル配線の前記巻回部間の絶縁層の厚みは、当該巻回部の厚みよりも小さい。
【0016】
接続配線は、絶縁層に設けられたビア開口に導体部が充填されることにより形成される。このとき、接続配線の上面に凹部が形成されるように制御する。凹部の深さが過剰に深くなると、接続配線およびコイル配線の断線の可能性が高まる。前記実施形態によれば、隣り合うコイル配線の巻回部間の絶縁層の厚みが比較的薄いため、ビア開口の深さも比較的小さくなる。そのため、接続配線の凹部の深さが過剰に深くなることを抑制できて、接続配線およびコイル配線の断線を抑制できる。
【0017】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記接続配線の幅は、前記巻回部の幅よりも大きい。
【0018】
ここで、接続配線の幅とは、積層方向からみて、接続配線の外周縁内に収まる内接円の直径を指す。巻回部の幅とは、積層方向からみて、巻回部の延在方向に直交する方向の幅を指す。
【0019】
前記実施形態によれば、接続配線の幅が、コイル配線の巻回部の幅よりも大きいため、接続配線間の接続強度を大きくできる。また、エレクトロマイグレーション耐性を向上させることができる。
【0020】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記コイルは、複数存在し、
前記積層方向に複数配置された前記接続配線は、互いに接続されて、積層体を構成し、
複数の前記コイルは、それぞれ前記積層体を有する。
【0021】
ここで、「コイルが複数存在する」とは、インダクタ部品内で互いに電気的に独立したコイルが複数存在することを意味する。前記実施形態によれば、コモンモードチョークコイルやトランス、インダクタアレイなどを構成することができる。
【0022】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
複数の前記コイルは、互いに線路長が異なる第1コイルと第2コイルとを含み、
前記第1コイルの前記コイル配線の一部の幅は、前記第2コイルの前記コイル配線の幅と異なる。
【0023】
前記実施形態によれば、前記第1コイルと前記第2コイルの特性を合わせることができる。
【0024】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
各々の前記積層体の厚みは、同じである。
【0025】
前記実施形態によれば、各々の積層体の厚みが同じになるため、インダクタ部品内の導体分布の偏りが低減し、インダクタ部品の残留応力を低減できる。これにより、インダクタ部品の強度を高めることができる。
【0026】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記複数のコイルは、第1コイルと第2コイルとを含み、
前記第1コイルでは、前記コイル配線の前記巻回部は、渦巻状に巻回され、
前記第1コイルの前記巻回部と前記第2コイルの前記積層体との最短距離は、前記第1コイルの前記巻回部の隣り合うターン間の距離よりも大きい。
【0027】
第1コイルの巻回部の隣り合うターン間の電圧差は一般に同電位と言える一方、第1コイルと第2コイルとの電圧差は異電圧が印加される場合がある。前記実施形態によれば、第1コイルの巻回部と積層体との最短距離は、前記第1コイルの巻回部の隣り合うターン間の距離よりも大きいため、コイル間の絶縁耐性を向上させることができる。
【0028】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記巻回部の端部に接続されたダミー配線をさらに備え、
前記ダミー配線は、前記巻回部の延在方向に沿って前記巻回部の端部から延在し、電流経路を構成しない。
【0029】
前記実施形態によれば、ダミー配線をさらに備えているため、ダミー配線上に積層される絶縁層の落ち込みを抑制し、ダミー配線よりも上側に設けられるコイル配線の断線を抑制できる。
【0030】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記ダミー配線は、最上層のコイル配線には接続されていない。
【0031】
前記実施形態によれば、最上層のコイル配線に対応するダミー配線を設けないことにより、磁路を広くとることができる。
【0032】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記積層方向における最下層の前記コイル配線における前記巻回部の端部に接続された前記ダミー配線の線路長は、前記最下層のコイル配線以外の前記コイル配線における前記巻回部の端部に接続された前記ダミー配線の線路長よりも短い。
【0033】
前記実施形態によれば、最下層のコイル配線に対応するダミー配線の線路長を相対的に短くすることにより、磁路を広くとることができる。
【0034】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記基板は、磁性基板であり、
前記素体は、前記コイルより径方向内側の領域において、前記積層方向に貫通した貫通孔を有し、
前記貫通孔内に設けられ、内磁路を構成する内磁路部材をさらに備え、
前記内磁路部材は、前記基板とは異なる磁性材料を含む。
【0035】
前記実施形態によれば、内磁路部材をさらに備えることにより、実効的な比透磁率が高くなり、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0036】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記内磁路部材は、金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成され、
前記積層方向において、前記金属磁性粉の平均粒径の1/2以下の平均粒径を有する金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成される密着層を、前記最上層のコイル配線の前記巻回部と前記基板との間に備える。
【0037】
前記実施形態によれば、内磁路部材が、金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成されているため、実効的な比透磁率が高くなり、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。また、前記密着層が樹脂を含むため、基板と素体との密着性を向上させることができる。
【0038】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記素体の下面に設けられ、厚みが前記基板よりも厚い基板をさらに備える。
【0039】
前記実施形態によれば、素体の上面および下面に設けられた基板が磁性基板の場合に、閉磁路を構成できる。
【0040】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記積層方向において上側に位置する巻回部の厚みの方が、下側に位置する巻回部の厚みよりも薄い。
【0041】
前記実施形態によれば、上層側の絶縁層の凹凸を抑制できる。
【0042】
インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、
第1絶縁層上に第1コイル配線と第1接続配線とを積層する工程と、
前記第1接続配線の上面の少なくとも一部が露出するように、第2絶縁層を前記第1コイル配線および前記第1接続配線上に積層する工程と、
前記第1接続配線の上面に第2接続配線が接触するように、前記第2絶縁層上に第2コイル配線および第2接続配線を積層する工程と、を含み、
前記第2コイル配線を、前記第2接続配線に向かって引き出される引出部が、傾斜するように形成する。
【0043】
前記実施形態によれば、本発明の実施形態に係るインダクタ部品を製造することができる。
【発明の効果】
【0044】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】インダクタ部品の第1実施形態の外観を示す斜視図である。
図2】インダクタ部品の透視平面図である。
図3】インダクタ部品の分解平面図である。
図4A図3のA領域の拡大図である。
図4B図3のB領域の拡大図である。
図5図2のA-A’断面図である。
図6図5のC領域の拡大図である。
図7図2のB-B’断面図である。
図8図2のC-C’断面図である。
図9A】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図9B】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図9C】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図9D】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図9E】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図9F】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図10】インダクタ部品の第2実施形態を示す透視平面図である。
図11】インダクタ部品の分解平面図である。
図12図10のD-D’断面図である。
図13】インダクタ部品の第3実施形態を示す透視平面図である。
図14図13のE-E’断面図である。
図15】インダクタ部品の第3実施形態の変形例を示す断面図である。
図16】インダクタ部品の第3実施形態の変形例を示す断面図である。
図17】インダクタ部品の第3実施形態の変形例を示す断面図である。
図18A】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18B】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18C】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18D】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18E】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18F】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18G】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18H】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18J】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18K】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図18L】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0047】
(第1実施形態)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。図2は、インダクタ部品の透視平面図である。図3は、インダクタ部品の分解平面図である。図示するように、絶縁層11の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)をZ方向と定義し、Z方向からみて、素体10の長辺が延在する方向をX方向、短辺が延在する方向をY方向と定義する。本明細書では、積層方向(Z方向)を上下方向とする。図3は、上層から下層を順に示す。なお、積層方向は、プロセス上の順序を示しているだけであり、インダクタ部品1としての上下は逆(外部電極が上側にある構成)であってもよい。
【0048】
図1図3に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10の下面に設けられた第1基板61と、素体10の上面に設けられた第2基板62と、素体10内に設けられた第1コイル28および第2コイル29と、素体10に設けられ、第1コイル28に電気的に接続された第1接続電極41および第4接続電極44と、素体10に設けられ、第2コイル29に電気的に接続された第2接続電極42および第3接続電極43と、第1基板61に設けられた第1外部電極51,第2外部電極52,第3外部電極53および第4外部電極54(第4外部電極54は図示しない)と、を有する。第1接続電極41は第1外部電極51に接続され、第2接続電極42は第2外部電極52に接続され、第3接続電極43は第3外部電極53に接続され、第4接続電極44は第4外部電極54に接続されている。
【0049】
インダクタ部品1は、第1から第4接続電極41~44および第1から第4外部電極51~54を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、コモンモードチョークコイルとして用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。
【0050】
素体10は、複数の絶縁層11を含み、複数の絶縁層11は、積層されている。絶縁層11は、例えば、樹脂、フェライト、ガラスなどを主成分とする絶縁性材料からなる。なお、素体10は、焼成などによって、複数の絶縁層11同士の界面が明確となっていない場合がある。素体10は、略直方体状に形成されている。
【0051】
第1基板61および第2基板62は、例えば、フェライト基板である。第1基板61および第2基板62は、積層方向からみて、四角形状である。好ましくは、第1基板61の厚みは、第2基板62の厚みよりも厚い。なお、第1基板61および第2基板62に用いるフェライト材料は、磁性体であっても非磁性体であってもよく、磁性体であれば実効的な比透磁率が高くなり、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。また、第1基板61および第2基板62が磁性体である場合、閉磁路を構成できる。第1基板61および第2基板62はアルミナやガラスなどフェライト以外の材料であってもよい。また、第1基板61および第2基板62は、インダクタ部品1の強度を高めることができる。
【0052】
第1から第4接続電極41~44および第1から第4外部電極51~54は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。第1から第4接続電極41~44は、それぞれ、素体10の角部に積層方向に沿って埋め込まれている。第1から第4外部電極51~54は、第1基板61の下面から側面にかけて設けられている。
【0053】
第1外部電極51および第4外部電極54の一方を入力端子とし他方を出力端子とし、第2外部電極52および第3外部電極53の一方を入力端子とし他方を出力端子として、インダクタ部品1の電気的接続を図ることができる。第1外部電極51および第4外部電極54は、積層方向からみて、第1基板61の四角形状の対向する2辺のそれぞれに配置され、第2外部電極52および第3外部電極53は、第1基板61の四角形状の対向する2辺のそれぞれに配置されている。これにより、入力端子と出力端子を対向する辺に配置でき、配線設計が容易となる。
【0054】
第1コイル28は、第1コイル配線21および第4コイル配線24と、第1接続配線251,第2接続配線252,第3接続配線253および第4接続配線254と、を有する。第1コイル配線21および第4コイル配線24は、積層方向に沿って配置され且つ積層方向に直交する平面に沿って巻回されている。第4コイル配線24は、第1コイル配線21の積層方向上側に配置されている。第1コイル配線21の第1端部は、第1接続電極41に接続され、第4コイル配線24の第1端部は、第4接続電極44に接続されている。第1から第4接続配線251~254は、この順に積層されて、互いに接続されている。第1接続配線251は、第1コイル配線21の第2端部に接続されている。第4接続配線254は、第4コイル配線24の第2端部に接続されている。以上の構成により、第1接続電極41と、第1コイル配線21と、第1から第4接続配線251~254と、第4コイル配線24と、第4接続電極44と、がこの順に接続されて、第1コイル28が第1接続電極41および第4接続電極44に電気的に接続される。なお、本明細書で述べる「平面」とは、完全に平坦な面だけではなく、僅かに湾曲した曲面も含む。また、「平面に沿って巻回され」とは、平面上に巻回されるだけではなく、平面を基準に上下動して巻回されてもよいことを意味する。
【0055】
第1コイル配線21は、例えば、第1から第4接続電極41~44および第1から第4外部電極51~54と同様の導電性材料から構成される。第1コイル配線21は、積層方向に直交する平面上に巻回された巻回部211と、巻回部211の第1端部から第1接続配線251に引き出された引出部212と、を有する。
【0056】
巻回部211は、平面上に渦巻状に巻回された、平面スパイラル形状である。巻回部211の巻回数は、1周以上であるが、1周未満であってもよい。巻回部211の第2端部は、第1接続電極41に接続されている。
【0057】
引出部212は、巻回部211の第1端部から第1接続配線251に接続される箇所までの部分である。引出部212と巻回部211は、一体に形成されている。
【0058】
第4コイル配線24は、第1コイル配線21と同様に、積層方向に直交する平面上に巻回された巻回部241と、巻回部241の第1端部から第4接続配線254に引き出された引出部242と、を有する。第4コイル配線24の巻回部241および引出部242は、第1コイル配線21の巻回部211および引出部212とそれぞれ同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0059】
第1から第4接続配線251~254は、例えば、第1から第4接続電極41~44および第1から第4外部電極51~54と同様の導電性材料から構成される。第1から第4接続配線251~254の各々は、積層方向に直交する平面上に設けられている。第1から第4接続配線251~254の形状は、特に限定されない。本実施形態では、第1から第4接続配線251~254の各々は、積層方向からみて、Y方向に延びる長円形である。
【0060】
第2コイル29は、第2コイル配線22および第3コイル配線23と、第6接続配線256および第7接続配線257と、を有する。第2コイル配線22および第3コイル配線23は、積層方向に沿って配置され且つ積層方向に直交する平面に沿って巻回されている。第2コイル配線22および第3コイル配線23は、積層方向において、第1コイル配線21と第4コイル配線24との間に配置されている。第3コイル配線23は、第2コイル配線22の積層方向上側に配置されている。第2コイル配線22の第1端部は、第2接続電極42に接続され、第3コイル配線23の第1端部は、第3接続電極43に接続されている。第6接続配線256と第7接続配線257は、この順に積層されて、互いに接続されている。第6接続配線256は、第2コイル配線22の第2端部に接続されている。第7接続配線257は、第3コイル配線23の第2端部に接続されている。以上の構成により、第2接続電極42と、第2コイル配線22と、第6接続配線256と、第7接続配線257と、第3コイル配線23と、第3接続電極43と、がこの順に接続されて、第2コイル29が第2接続電極42および第3接続電極43に電気的に接続される。第2コイル29は、第1コイル28と互いに電気的に独立し、コモンモードチョークコイルを構成する。なお、コイルは3つ以上存在してもよく、この場合、各コイルは互いに電気的に独立しているものとする。
【0061】
第2コイル配線22は、積層方向に直交する平面上に巻回された巻回部221と、巻回部221の第1端部から第6接続配線256に引き出された引出部222と、を有する。第3コイル配線23は、積層方向に直交する平面上に巻回された巻回部231と、巻回部231の第1端部から第7接続配線257に引き出された引出部232と、を有する。巻回部221および巻回部231は、第1コイル配線21の巻回部211とそれぞれ同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。引出部222および引出部232は、第1コイル配線21の引出部212とそれぞれ同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。第6接続配線256および第7接続配線257は、第1から第4接続配線251~254と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0062】
次に、コイル配線の巻回部および引出部と接続配線との平面内の位置関係などについて、第3コイル配線23を例にして説明する。なお、以下の説明は、第1コイル配線21、第2コイル配線22および第4コイル配線24についても同様である。図4Aは、図3のA領域の拡大図である。図4Aに示すように、第3コイル配線23の引出部232は、巻回部231の端部E(図4Aで斜線で示した部分)、すなわち第3コイル配線23のターンを構成する部分の端部Eから延在して第7接続配線257に接続される。引出部232と第7接続配線257とは、一体に形成されている。
【0063】
第7接続配線257は、ビアパッド2571とビア2572とを含む。ビアパッド2571は、第7接続配線257の本体部分である。ビアパッド2571は、積層方向からみて、Y方向に延びる長円形である。ビア2572は、積層方向からみて、Y方向に延びる長円形であり、径がビアパッド2571よりも小さい。ビア2572は、ビアパッド2571の下面の一部から積層方向下側に延在し、積層方向に隣り合うビアパッドを接続する部分である。ビアパッド2571とビア2572は、一体に形成されている。第7接続配線257では、ビアパッド2571が引出部232に接続する。なお、ビアとビアパッドは、一体に形成されているので、界面を確認できない場合がある。
【0064】
第7接続配線257の幅W2は、巻回部231の幅W1よりも大きいことが好ましい。これにより、接続配線間の接続強度を大きくできる。また、エレクトロマイグレーション耐性を向上させることができる。第7接続配線257の幅W2とは、積層方向からみて、第7接続配線257の外周縁内に収まる内接円Nの直径を指す。巻回部231の幅W1とは、積層方向からみて、巻回部231の延在方向に直交する方向の幅を指す。
【0065】
図4Bは、図3のB領域の拡大図である。巻回部231は、第3接続配線253と同一絶縁層11に設けられている。巻回部231は、第3接続配線253と電気的に独立している。図4Bに示すように、巻回部231と第3接続配線253との最短距離(すなわち、巻回部231と第1から第4接続配線251~254から構成される積層体との最短距離)D1は、巻回部231の隣り合うターン間の距離D2よりも大きいことが好ましい。第3接続配線253は、第1コイル28の一部であり、巻回部231は、第2コイル29の一部である。第1コイル28と第2コイル29は、電気的に独立し、異電圧が印加される場合がある。上記構成によれば、第1コイル28の巻回部231と第2コイル29の接続配線から構成される積層体との最短距離は、巻回部231の隣り合うターン間の距離よりも大きいため、第1コイル28と第2コイル29に異電圧が印加された場合でも、第1コイル28と第2コイル29との間の絶縁耐性を向上させることができる。
【0066】
次に、コイル配線の巻回部および引出部と接続配線との積層方向の位置関係などについて説明する。図5は、図2のA-A’断面図である。図5では、素体10の断面にハッチングを付していない。他の断面図においても同様である。図5に示すように、第1から第4接続配線251~254の各々は、積層方向の下側から上側に向かってこの順に積層されて、積層体L1を構成している。これにより、積層体L1が、第1コイル配線21と第4コイル配線24とを電気的に接続する。同様に第5から第8接続配線255~258の各々は、積層方向の下側から上側に向かってこの順に積層されて、積層体L2を構成している。これにより、積層体L2が、第2コイル配線22と第3コイル配線23とを電気的に接続する。積層体L1と積層体L2は、電気的に独立している。このように、積層体を設けることにより、複数のコイル配線を接続することができ、コモンモードチョークコイルやトランス、インダクタアレイなどを構成することができる。
【0067】
第1接続配線251と第5接続配線255は、同一層の絶縁層11に設けられている。第2接続配線252と第6接続配線256は、同一層の絶縁層11に設けられている。第3接続配線253と第7接続配線257は、同一層の絶縁層11に設けられている。第4接続配線254と第8接続配線258は、同一層の絶縁層11に設けられている。なお、第5接続配線255および第8接続配線258は、第2コイル29の電流経路を構成しない。すなわち、第5接続配線255および第8接続配線258は、第2コイル29の構成には含まれないが、好ましくは第5接続配線255および第8接続配線258を設けることにより、積層体L1の厚みと積層体L2の厚みを同じにすることができる。この構成により、インダクタ部品内の導体分布の偏りが低減し、インダクタ部品1の残留応力を低減できる。その結果、インダクタ部品1の強度を高めることができる。
【0068】
図6は、図5のC領域の拡大図である。第2から第4接続配線252~254は、絶縁層11に設けられたビア開口に導体部が充填されることにより形成される。具体的に述べると、第2から第4接続配線252~254は、ビア開口およびビア開口周辺の絶縁層11上に形成される。このとき、各接続配線において、ビア開口に対応する部分の上面に凹部が形成されるように制御する。具体的には、例えば、巻回部211~231内の配線間隔よりも巻回部211~231と第1から第3接続配線251~253との間隔を広くするか、または、第1から第3接続配線251~253の幅を、巻回部211~231の幅よりも大きくする。これにより、巻回部231および第3接続配線253を覆う絶縁層11にビア開口を形成する際の開口径を大きくできる。ここで、フォトリソグラフィー工法では露光面積(フォトレジストの開口径)と露光できる深さ(絶縁層11内の光の届く深さ)には正の相関があり、すなわち、ビアの開口径と開口深さには正の相関がある。したがって、ビア開口径が小さいと、ビアを深くできないため、厚みの薄い絶縁層11しか積層できない。一方、上記のように、ビアの開口径を大きくできると、絶縁層11の厚みを大きくしても、十分に深いビア開口を形成することができ、下層の第3接続配線253に接続可能となる。そのため、巻回部231および第3接続配線253を覆う絶縁層11の厚みを厚くすることできる。このように一定以上の厚みを有する絶縁層11にビア開口を形成すると絶縁層11の上面とビア開口の底面との段差を大きくすることができる。したがって、当該絶縁層11上およびビア開口内に印刷やめっきにて、同等の厚みを有する第2から第4コイル配線22~24および第2から第4接続配線252~254を形成した場合、第2から第4接続配線252~254に明確な凹部を形成できる。
【0069】
なお、凹部の形成方法としては、デスミアなどウェット処理によりビア開口から露出している下層の第1から第3接続配線251~253を上面側から部分的に溶解させてビア開口の底面の位置を低くすることで形成してもよい。図6に示すように、積層体L1を構成する第1から第4接続配線251~254のうち、最下層となる第1接続配線251を除く第2から第4接続配線252~254の各々の上面には、それぞれ凹部C1,C2,C3が設けられている。凹部の深さは、積層方向上側に存在する接続配線ほど深くなる。すなわち、凹部の深さは、凹部C1,C2,C3の順に深くなる。凹部C1,C2,C3が存在することにより、積層方向の最上層の第4接続配線254の上面254aの最も低い位置P1は、最上層の第4コイル配線24における巻回部241の底面241bの位置P2よりも低くなる。特に、最上層の第4接続配線254の上面に設けられた凹部C3によりアンカー効果が発揮され、第4接続配線254と、第4接続配線254上の絶縁層11と、の密着性を高めることができる。
【0070】
なお、「接続配線の上面の最も低い位置」とは、凹部の底面の位置を指す。また、好ましくは、最上層の第4接続配線254の上面254aの最も低い位置P1は、積層方向における最上層の1層下のコイル配線、すなわち第3コイル配線23における巻回部231の底面231bの位置P3よりも高い。この構成により、最上層の第4接続配線254と最上層のコイル配線、すなわち第4コイル配線24の巻回部241との段差を小さくし、第4接続配線254と第4コイル配線24の引出部242とに発生し得る断線を抑制できる。以上説明した接続配線の上面と巻回部の下面との位置関係は、積層体L2についても同様である。
【0071】
また、好ましくは、積層方向において、隣り合うコイル配線の巻回部間の絶縁層の厚みは、巻回部の厚みよりも小さい。具体的に述べると、図6に示すように、積層方向に隣り合う第1コイル配線21および第2コイル配線22において、巻回部211と巻回部221との間の絶縁層11の厚みt2は、巻回部211の厚みt1よりも小さい。凹部C1~C3の深さが過剰に深くなると、第2から第4接続配線252~254および第2から第4コイル配線22~24の断線の可能性が高まる。上記構成によれば、隣り合うコイル配線の巻回部間の絶縁層の厚みが比較的薄いため、ビア開口の深さも比較的小さくなる。そのため、接続配線の凹部の深さが過剰に深くなることを抑制できて、接続配線およびコイル配線の断線を抑制できる。
【0072】
図7は、図2のB-B’断面図である。図8は、図2のC-C’断面図である。上述したように、第1から第4接続配線251~254は、積層方向の下側から上側に向かってこの順に積層されて積層体L1を構成している。また、第5から第8接続配線255~258は、積層方向の下側から上側に向かってこの順に積層されて積層体L2を構成している。最上層の第4コイル配線24の引出部242は、第4コイル配線24の巻回部241が設けられた平面より積層方向の下側に引き出されて、最上層の第4接続配線254に接続し、当該平面に対して傾斜している。
【0073】
好ましくは、積層方向における最下層の第1コイル配線21の引出部212は、積層方向に直交する平面に対して平行である。また、好ましくは、コイル配線の引出部は、積層方向の上層に位置するものほど、積層方向に直交する平面に対する傾斜角度が大きくなる。「傾斜角度」とは、積層方向に平行な断面であって、積層方向に配置される全ての接続配線と、これらの接続配線に接続される全ての引出部と、に交差する断面において、引出部の中心線の両端を結ぶ線と前記平面とのなす角のうち、鋭角となる方を指す。
【0074】
図7および図8を参照して具体的に説明すると、好ましくは、第3コイル配線23の引出部232、および第4コイル配線24の引出部242のそれぞれの傾斜角度は、第3コイル配線23および第4コイル配線24よりも下層に位置する第2コイル配線22の引出部222の傾斜角度よりも大きい。好ましくは、第4コイル配線24の引出部242の傾斜角度は、第4コイル配線24よりも下層に位置する第3コイル配線23の引出部232の傾斜角度よりも大きい。上記構成によれば、最下層の第1コイル配線21の巻回部211は、最下層の第1接続配線251と同一平面上に設けられているため、同一平面上に設けられていない場合と比較して、巻回部211と第1接続配線251とを同じ工程で製造することができ、全体の工程数を抑制できる。また、引出部222,232,242は、積層方向の上層に位置するものほど傾斜角度が大きくなるため、引出部222,232,242の線路長をより効果的に確保できる。なお、引出部212,222,232,242の各々の傾斜角度は、積層方向下側から上側に向かうに従って(すなわち、引出部212,222,232,242の順に)段階的に大きくなってもよい。
【0075】
次に、図9A図9Fを参照して前記インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0076】
図9Aに示すように、第1基板61上に絶縁層11を設ける。この際、絶縁層11上に図示しない導電性のシード層をスパッタ法などで形成する。続いて、図9Bに示すように、シード層を含む絶縁層11上に、露光および現像により開口72aが形成されたフォトレジスト72を設ける。フォトレジスト72は、例えばネガ型レジストである。続いて、図9Cに示すように、フォトレジスト72の開口72aに第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とを設けつつ、フォトレジスト72を剥離し、シード層をエッチングにより除去する。すなわち、絶縁層11上に第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とを積層する。第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とは、例えばフォトレジスト72の開口72a内の給電されたシード層上に銅を電解めっきして形成される。なお、配線形成方法は上記方法に限られず、アディティブ法やサブトラクティブ法、スパッタ法や印刷法などで形成してもよい。
【0077】
続いて、図9Dに示すように、ビア開口11aが形成された絶縁層11を第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とに積層する。ビア開口11aは、第1接続配線251の上面の一部および第5接続配線255の上面の一部を露出させる。続いて、第1接続配線251および第5接続配線255の上面に第2接続配線252および第6接続配線256が接触するように、絶縁層11上に第2コイル配線22と第2接続配線252と第6接続配線256とを積層する。このとき、第2接続配線252および第6接続配線256は、ビア開口11aとビア開口11a周辺の絶縁層11上に設けられ、第2接続配線252および第6接続配線256のうちのビア開口11aに対応する部分の上面に凹部が形成されるように制御する。具体的に述べると、巻回部211内の配線間隔よりも巻回部211と第1,第5接続配線251,255との間隔を広くするか、または、第1,第5接続配線251,255の幅を、巻回部211の幅よりも大きくする。これにより、上述したように、巻回部211および第1,第5接続配線251,255を覆う絶縁層11の厚みを厚くすることできる。このように一定以上の厚みを有する絶縁層11にビア開口を形成すると絶縁層11の上面とビア開口の底面との段差を大きくすることができる。したがって、当該絶縁層11上およびビア開口内に印刷やめっきにて、同等の厚みを有する第2コイル配線22および第2,第6接続配線252,256を形成した場合、第2,第6接続配線252,256に明確な凹部を形成できる。なお、凹部の形成方法としては、デスミアなどウェット処理によりビア開口から露出している第1,第2,第5,第6接続配線251,252,255,256を上面側から部分的に溶解させてビア開口の底面の位置を低くすることで形成してもよい。第2接続配線252および第6接続配線256のうちのビア開口11aに対応する部分の上面に凹部が形成されることにより、第2接続配線252および第6接続配線256の下面が、第2コイル配線22の巻回部221の下面よりも積層方向下側に設けられる。そのため、巻回部221と第6接続配線256を接続する引出部は傾斜する。
【0078】
以上の工程を繰り返して、図9Eに示すように、第1から第4コイル配線21~24および第1から第8接続配線251~258を絶縁層11内に設ける。積層方向の最上層の第4接続配線254および第8接続配線258の上面の最も低い位置は、最上層の第4コイル配線24における巻回部241の底面の位置よりも低くなるように形成されている。このとき、積層方向上側に位置する接続配線ほど上面に設けられている凹部の深さが深くなるように制御して第1から第8接続配線251~258を形成する。これにより、積層方向におけるコイル配線の巻回部の位置と、当該コイル配線に接続される接続配線の積層方向の位置と、の高低差が、積層方向上側に位置するコイル配線ほど大きくなる。そのため、引出部の傾斜角度は、積層方向上側に位置する引出部ほど大きくなる。
【0079】
続いて、図9Fに示すように、絶縁層11上に第2基板62を積層して、インダクタ部品1を製造する。
【0080】
前記インダクタ部品1によれば、第1から第4接続配線251~254が積層方向に配置され(すなわち、第1から第4接続配線251~254が積層方向からみて同じ位置に配置され)、また、第5から第8接続配線255~258が積層方向に配置されているため(すなわち、第5から第8接続配線255~258が積層方向からみて同じ位置に配置されているため)、第1から第4コイル配線21~24が配置される平面上のスペースを大きくすることができる。このため、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0081】
また、最上層の第4接続配線254および第8接続配線258の上面の最も低い位置が、最上層の第4コイル配線24における巻回部241の底面の位置よりも低いため、最上層の第4接続配線254および第8接続配線258上の絶縁層11の厚みが、巻回部241上の絶縁層11の厚みよりも大きくなる。これにより、複数の接続配線が積層方向に配置された場合に発生し得る、素体10と、素体10上に設けられる第2基板62と、の密着性の低下を抑制できる。
【0082】
また、第1から第4コイル配線21~24が配置される平面上の大きなスペースを活用して、第1から第4コイル配線21~24の巻回部のターン数を増大させ、第1から第4コイル配線21~24の平面上の大きさを最大限大きくした場合、引出部の線路長が短くなり、インダクタンスの取得効率が低下する場合がある。前記インダクタ部品1によれば、最上層の第4コイル配線24の引出部242が、積層方向に直交する平面に対して傾斜している。このため、引出部242の線路長を確保できるため、インダクタンスの取得効率の低下を抑制できる。
【0083】
好ましくは、積層方向において上側に位置する巻回部の厚みの方が、下側に位置する巻回部の厚みよりも薄い。例えば、巻回部211,221,231,241の積層方向の厚みは、この順に従って薄くなる。
【0084】
上記構成によれば、上層側の絶縁層11の凹凸を抑制できる。
【0085】
図3および図4Aを再度参照して、好ましくは、インダクタ部品1は、巻回部の端部に接続された第1ダミー配線31と第2ダミー配線32と第3ダミー配線33とをさらに備える。具体的には、第1ダミー配線31が第1コイル配線21の巻回部211の端部に接続され、第2ダミー配線32が第2コイル配線22の巻回部221の端部に接続され、第3ダミー配線33が第3コイル配線の巻回部231の端部に接続されている。第1ダミー配線31は、巻回部211の延在方向に沿って巻回部211の端部から延在している。第2ダミー配線32は、巻回部221の延在方向に沿って巻回部221の端部から延在している。第3ダミー配線33は、巻回部231の延在方向に沿って巻回部231の端部から延在している。第1から第3ダミー配線31~33は、電流経路を構成しない。具体的に述べると、第1から第3ダミー配線31~33において、巻回部と接続されている側とは反対側の端部は、他の配線等に接続されていない。
【0086】
上記構成によれば、第1から第3ダミー配線31~33をさらに備えているため、第1から第3ダミー配線31~33上に積層される絶縁層11の落ち込みを抑制し、ダミー配線よりも上側に設けられるコイル配線の断線を抑制できる。
【0087】
好ましくは、ダミー配線は、最上層の第4コイル配線24には接続されていない。
【0088】
上記構成によれば、最上層の第4コイル配線24に対応するダミー配線を設けないことにより、磁路を広くとることができる。なお、最上層の第4コイル配線24より上側にはコイル配線等が設けられないため、第4コイル配線24に対応するダミー配線を設けなくても、コイル配線および接続配線の断線の可能性は低い。
【0089】
好ましくは、最下層の第1コイル配線21に対応する第1ダミー配線31の線路長は、第1コイル配線21以外の第2コイル配線22および第3コイル配線23に対応する第2ダミー配線32および第3ダミー配線33の線路長よりも短い。
【0090】
上記構成によれば、最下層の第1コイル配線21に対応する第1ダミー配線31の線路長を相対的に短くすることにより、磁路を広くとることができる。なお、最下層の第1コイル配線21上に積層される絶縁層11は、上層の絶縁層11と比較して落ち込み量が小さいため、最下層の第1コイル配線21に対応する第1ダミー配線31の線路長は最小限でよい。
【0091】
(第2実施形態)
図10は、本発明のインダクタ部品の第2実施形態を示す透視平面図である。図11は、本発明のインダクタ部品の第2実施形態を示す分解平面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、第1コイルおよび第2コイルの構成が異なる。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図10および図11に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aは、第1コイル28Aと第2コイル29Aを含む。
【0093】
第1コイル28Aは、第1コイル配線21および第6コイル配線26と、第1から第3接続配線251~253と、を含む。第1コイル配線21は、第6コイル配線26の積層方向下側に配置されている。第6コイル配線26の第1端部は第4接続電極44に接続され、第2端部は第3接続配線253に接続されている。第6コイル配線26は、巻回部261と引出部262とを含む。巻回部261のターン数は、1ターン未満であり、具体的には直線である。巻回部261の第1端部が第4接続電極44に接続され、第2端部が引出部262の第1端部に接続されている。引出部262の第2端部は、第3接続配線253に接続されている。以上の構成により、第1接続電極41と、第1コイル配線21と、第1から第3接続配線251~253と、第6コイル配線26と、第4接続電極44と、がこの順に接続されて、第1コイル28Aが第1接続電極41および第4接続電極44に電気的に接続される。
【0094】
第2コイル29Aは、第2コイル配線22および第7コイル配線27と、第6接続配線256および第7接続配線257と、を含む。第2コイル配線22は、第7コイル配線27の積層方向下側に配置されている。第7コイル配線27の第1端部は第3接続電極43に接続され、第2端部は第7接続配線257に接続されている。第7コイル配線27は、巻回部271と引出部272とを含む。巻回部271のターン数は、1ターン未満であり、具体的には直線である。巻回部271の第1端部が第3接続電極43に接続され、第2端部が引出部272の第1端部に接続されている。引出部272の第2端部は、第3接続配線253に接続されている。以上の構成により、第2接続電極42と、第2コイル配線22と、第6接続配線256および第7接続配線257と、第7コイル配線27と、第3接続電極43と、がこの順に接続されて、第2コイル29Aが第2接続電極42および第3接続電極43に電気的に接続される。第6コイル配線26の引出部262の幅は、第7コイル配線27の引出部272の幅よりも大きい。
【0095】
図12は、図10のD-D’断面図である。図12に示すように、第1から第3接続配線251~253は、積層方向の下側から上側に向かってこの順に積層されて、積層体L1Aを構成している。また、第6コイル配線26の引出部262は、巻回部261が設けられた平面より積層方向の下側に引き出されて、最上層の第3接続配線253に接続し、当該平面に対して傾斜している。なお、詳細な説明は省略するが、第1実施形態と同様に、最上層の第3接続配線253の上面の最も低い位置は、最上層の第6コイル配線26の巻回部261の底面の位置よりも低い。
【0096】
前記インダクタ部品1Aによれば、第6コイル配線26の引出部262の幅は、第7コイル配線27の引出部272の幅よりも大きい。これにより、第1コイル28Aのコイル配線の一部の幅が、第2コイル29Aのコイル配線の幅と異なる。そのため、第1コイル28Aと第2コイル29Aの線路長が異なる場合であっても、第1コイル28Aと第2コイル29Aの特性を合わせることができる。
【0097】
(第3実施形態)
図13は、本発明のインダクタ部品の第3実施形態を示す透視平面図である。図14は、図13のE-E’断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、内磁路部材が設けられていることが異なる。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0098】
図13および図14に示すように、インダクタ部品1Bの素体10は、第1コイル28および第2コイル29より径方向内側の領域において、積層方向に貫通した貫通孔10aを有する。径方向内側とは、積層方向からみて、第1コイル28および第2コイル29の内面より軸側のことを指す。そして、内磁路を構成する内磁路部材91が、貫通孔10a内に設けられている。内磁路部材91は、磁性材料を含む。具体的に述べると、内磁路部材91は、金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成されている。第1基板61および第2基板62が磁性基板の場合、内磁路部材91は、第1基板61および第2基板62の少なくとも1つとは異なる磁性材料を含む。「内磁路部材91が基板と異なる磁性材料を含む」とは、内磁路部材91の磁性材料そのものが基板とは異なる場合や、内磁路部材91と基板が同じ磁性材料でも、基板が例えばフェライトの焼結体であり、内磁路部材91が例えばフェライト粒子を含む樹脂体である場合や、内磁路部材91と基板が同じ例えばフェライト系の材料から構成されているが、組成が互いに異なる場合をいう。
【0099】
前記インダクタ部品1Bによれば、内磁路部材91をさらに備えることにより、実効的な比透磁率が高くなり、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0100】
<第1変形例>
図15は、インダクタ部品の第3実施形態の第1変形例を示す断面図である。図15に示すように、インダクタ部品1Cは、積層方向において、内磁路部材91に含まれる金属磁性粉の平均粒径の1/2以下の平均粒径を有する金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成される第1密着層81を、最上層の第4コイル配線24の巻回部241と第2基板62との間に備える。具体的に述べると、第1密着層81は、素体10の上面に設けられている。第1密着層81は、素体10と第2基板62とを接着する。第1密着層81に含まれる樹脂は、接着性を有する絶縁樹脂である。「平均粒径」とは、視野領域が200μm×200μmであるSEM画像を3つ取得した際の平均粒径D50(体積基準の累積百分率50%相当粒径)を指す。第2基板62は、第1密着層81の上面に設けられている。
【0101】
前記インダクタ部品1Cによれば、内磁路部材91が、金属磁性粉と樹脂のコンポジット材料から構成されているため、実効的な比透磁率が高くなり、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。また、第1密着層81が樹脂を含むため、第2基板62と素体10との密着性を向上させることができる。
【0102】
<第2変形例>
図16は、インダクタ部品の第3実施形態の第2変形例を示す断面図である。インダクタ部品1Dは、積層方向において、最上層の第4コイル配線24の巻回部241と第2基板62との間に第2密着層82を備える。具体的に述べると、第2密着層82は、素体10の上面に設けられている。第2基板62は、第2密着層82の上面に設けられている。第2密着層82は、素体10と第2基板62とを接着する。第2密着層82は、例えば接着性を有する絶縁樹脂である。
【0103】
前記インダクタ部品1Dによれば、第2基板62と素体10との密着性を向上させることができる。
【0104】
<第3変形例>
図17は、インダクタ部品の第3実施形態の第3変形例を示す断面図である。図17に示すように、インダクタ部品1Eの素体10の上面において、貫通孔10a周囲の所定範囲に窪み部10bが設けられている。そして、内磁路部材91Eの上部の一部は、窪み部10bに設けられている。積層方向に直交する方向からみて、内磁路部材91Eの形状は、略T字状である。素体10の上面であって、内磁路部材91Eが設けられている領域以外の領域の上面には、第1密着層81Eが設けられている。第1密着層81Eは、第1変形例の第1密着層81と同じである。また、内磁路部材91Eおよび第1密着層81Eの上面には、第2密着層82Eが設けられている。第2密着層82Eは、第2変形例の第2密着層82と同じである。第2密着層82Eの上面には、第2基板62が設けられている。
【0105】
前記インダクタ部品1Eによれば、第2基板62と素体10との密着性をさらに向上させることができる。
【0106】
次に、図18A図18Lを参照して前記インダクタ部品1Eの製造方法について説明する。
【0107】
図18Aに示すように、第1基板61上に絶縁層11を設ける。この際、絶縁層11上に図示しない導電性のシード層をスパッタ法などで形成する。続いて、図18Bに示すように、シード層を含む絶縁層11上に、露光および現像により開口72aが形成されたフォトレジスト72を設ける。フォトレジスト72は、例えばネガ型レジストである。続いて、図18Cに示すように、フォトレジスト72の開口72aに第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とを設けつつ、フォトレジスト72を剥離し、シード層をエッチングにより除去する。すなわち、絶縁層11上に第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とを積層する。第1コイル配線21と第1接続配線251と第5接続配線255とは、フォトレジスト72の開口72a内の給電されたシード層上に例えば銅を電解めっきして形成される。続いて、図18Dに示すように、ビア開口11aが形成された絶縁層11を、第1コイル配線21、第1接続配線251および第5接続配線255上に積層する。ビア開口11aは、第1接続配線251の上面の一部および第5接続配線255の上面の一部を露出させる。続いて、第1接続配線251および第5接続配線255の上面に第2接続配線252および第6接続配線256が接触するように、絶縁層11上に、第2コイル配線22、第6接続配線256および第2接続配線252を積層する。以上の工程を繰り返して、図18Eに示すように、第1から第4コイル配線21~24および第1から第8接続配線251~258を絶縁層11内に設ける。素体10の上面には、窪み部10bが形成されている。窪み部10bは、最上層の絶縁層11を設ける際に、積層方向に直交する平面内の中央部において、例えば、絶縁層11を形成する絶縁材料の塗布量を減少させることにより形成することができる。
【0108】
続いて、図18Fに示すように、サンドブラスト加工やレーザー加工などにより、素体10に貫通孔10aを形成する。続いて、図18Gに示すように、貫通孔10a内および窪み部10bに内磁路部材91Eを設ける。続いて、図18Hに示すように、素体10の上面であって、内磁路部材91Eが設けられている領域以外の領域の上面に第1密着層81Eを積層する。続いて、図18Jに示すように、研削等により、内磁路部材91Eおよび第1密着層81Eの上面を平坦化する。続いて、図18Kに示すように、第1密着層81E上および内磁路部材91E上に第2密着層82Eを積層する。続いて、図18Lに示すように、第2密着層82E上に第2基板62を積層して、インダクタ部品1Eを製造する。
【0109】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0110】
前記第1実施形態では、コイル配線の層数は、4つであるが、コイル配線の層数は、1つから3つでもよく、または、5つ以上でもよい。
【0111】
前記実施形態では、第1基板61が素体10の下面に設けられていたが、第1基板61を設けなくてもよい。
【0112】
前記実施形態では、最下層のコイル配線以外のコイル配線の引出部が、積層方向に直交する平面に対して傾斜するが、最上層のコイル配線の引出部のみが傾斜してもよい。
【符号の説明】
【0113】
1,1A,1B,1C,1D,1E インダクタ部品
10 素体
10a 貫通孔
11 絶縁層
11a ビア開口
21~24 第1~第4コイル配線
26~27 第6~第7コイル配線
28,28A 第1コイル
29,29A 第2コイル
211,221,231,241,261,271 巻回部
212,222,232,242,262,272 引出部
251~258 接続配線
31~33 ダミー配線
41~44 接続電極
51~54 外部電極
61 第1基板
62 第2基板
81,81E,82,82E 密着層
91,91E 内磁路部材
2571 ビアパッド
2572 ビア
L1,L2 積層体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図18G
図18H
図18J
図18K
図18L