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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231219BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651B
B60H1/22 611C
B60H1/00 102H
B60H1/22 671
B60H1/00 101L
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021044593
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143851
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 騎士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 幸久
(72)【発明者】
【氏名】一志 好則
(72)【発明者】
【氏名】林 芳生
(72)【発明者】
【氏名】平山 順基
(72)【発明者】
【氏名】横尾 康弘
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-237357(JP,A)
【文献】特開2009-184493(JP,A)
【文献】特開2020-75623(JP,A)
【文献】特開2012-197012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させることによって前記冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
前記放熱部で放熱された前記熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
前記熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
前記熱媒体回路に配置され、外気と前記熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体が前記第1ヒータコア側と前記ラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、前記第1ヒータコア側の前記熱媒体と前記ラジエータ側の前記熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間の前記熱媒体が前記第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、前記第2ヒータコア側の前記熱媒体と前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記ラジエータとの間、または前記ラジエータと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間、または前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、前記熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、前記少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
前記制御部は、前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち少なくとも一方の目標温度(THOF、THOR)が高くなると、前記ラジエータ側の前記熱媒体の流量比が下がるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御する空調装置。
【請求項2】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させることによって前記冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
前記放熱部で放熱された前記熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
前記熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
前記熱媒体回路に配置され、外気と前記熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体が前記第1ヒータコア側と前記ラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、前記第1ヒータコア側の前記熱媒体と前記ラジエータ側の前記熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間の前記熱媒体が前記第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、前記第2ヒータコア側の前記熱媒体と前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記ラジエータとの間、または前記ラジエータと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間、または前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、前記熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、前記少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
前記第1ヒータコアを流れる前記空気と、前記第1ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整することによって前記空調対象空間への吹出空気温度を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
前記第2ヒータコアを流れる前記空気と、前記第2ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整することによって前記空調対象空間への吹出空気温度を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
前記制御部は、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)の高い方のヒータコアの温度が前記目標温度となるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御し、
前記目標温度の低い方のヒータコア側の吹出空気温度が目標吹出温度(TAOF、TAOR)となるように前記第1エアミックスドアおよび前記第2エアミックスドアを制御する空調装置。
【請求項3】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させることによって前記冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
前記放熱部で放熱された前記熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
前記熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
前記熱媒体回路に配置され、外気と前記熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体が前記第1ヒータコア側と前記ラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、前記第1ヒータコア側の前記熱媒体と前記ラジエータ側の前記熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間の前記熱媒体が前記第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、前記第2ヒータコア側の前記熱媒体と前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記ラジエータとの間、または前記ラジエータと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間、または前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、前記熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、前記少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
前記第1ヒータコアを流れる前記空気と、前記第1ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
前記第2ヒータコアを流れる前記空気と、前記第2ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
前記制御部は、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)と前記熱媒体回路(20)での熱損失による熱媒体温度の低下量とを合算した温度が大きい方のヒータコアの温度が前記目標温度となるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御し、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち前記合算した温度が小さい方のヒータコア側からの吹出空気温度が目標吹出温度(TAOF、TAOR)となるように、前記第1エアミックスドアおよび前記第2エアミックスドアを制御する空調装置。
【請求項4】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させることによって前記冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
前記放熱部で放熱された前記熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
前記熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
前記熱媒体回路に配置され、外気と前記熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体が前記第1ヒータコア側と前記ラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、前記第1ヒータコア側の前記熱媒体と前記ラジエータ側の前記熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間の前記熱媒体が前記第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、前記第2ヒータコア側の前記熱媒体と前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記ラジエータとの間、または前記ラジエータと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間、または前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、前記熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、前記少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
前記第1ヒータコアを流れる前記空気と、前記第1ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
前記第2ヒータコアを流れる前記空気と、前記第2ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
前記制御部は、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)と現在の熱媒体温度との差が大きい方のヒータコアの温度が前記目標温度となるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御し、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち前記目標温度と現在の熱媒体温度との差が小さい方のヒータコア側の吹出空気温度が前記目標温度となるように前記第1エアミックスドアおよび前記第2エアミックスドアを制御する空調装置。
【請求項5】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させることによって前記冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
前記放熱部で放熱された前記熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
前記熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
前記熱媒体回路に配置され、外気と前記熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体が前記第1ヒータコア側と前記ラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、前記第1ヒータコア側の前記熱媒体と前記ラジエータ側の前記熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間の前記熱媒体が前記第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、前記第2ヒータコア側の前記熱媒体と前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記ラジエータとの間、または前記ラジエータと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間、または前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、前記熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、前記少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
前記第1ヒータコアを流れる前記空気と、前記第1ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整することによって前記空調対象空間への吹出空気温度を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
前記第2ヒータコアを流れる前記空気と、前記第2ヒータコアをバイパスして流れる前記空気との風量割合を調整することによって前記空調対象空間への吹出空気温度を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうちいずれか一方のヒータコアのみで熱交換が行われる場合、前記制御部は、前記一方のヒータコアの目標温度が高くなると、前記ラジエータ側の熱媒体の流量比が下がるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御し、
前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアの両方で熱交換が行われる場合、前記制御部は、前記第1ヒータコアおよび前記第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)の高い方のヒータコアの温度が前記目標温度となるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御し、前記目標温度の低い方のヒータコア側の吹出空気温度が目標吹出温度(TAOF、TAOR)となるように前記第1エアミックスドアおよび前記第2エアミックスドアを制御し、前記少なくとも1つの流量調整部を制御しても前記目標温度の高い方のヒータコアでの熱交換量が不足するときには前記目標温度の高い方のヒータコアの温度が前記目標温度となるように前記圧縮機を制御する空調装置。
【請求項6】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させることによって前記冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
前記放熱部で放熱された前記熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
前記熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と前記熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
前記熱媒体回路に配置され、外気と前記熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
前記熱媒体回路は、前記熱媒体が前記第1ヒータコア側と前記ラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、前記第1ヒータコア側の前記熱媒体と前記ラジエータ側の前記熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間の前記熱媒体が前記第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、前記第2ヒータコア側の前記熱媒体と前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記ラジエータとの間、または前記ラジエータと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアとの間、または前記第1ヒータコアと前記第1合流部との間に配置され、前記熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、前記熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、前記少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
前記制御部は、前記第1ヒータコア、前記第2ヒータコアおよび前記ラジエータのそれぞれにおける熱媒体流量の大小関係が前記第1ヒータコア>前記第2ヒータコア>前記ラジエータとなり、かつ前記第1ヒータコアにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と、前記第2ヒータコアにおける熱媒体流量と熱交換面積との積との和が、前記ラジエータにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と同一になるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御する空調装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1ヒータコア、前記第2ヒータコアおよび前記ラジエータのそれぞれにおける熱媒体流量の大小関係が前記第1ヒータコア>前記第2ヒータコア>前記ラジエータとなり、かつ前記第1ヒータコアにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と、前記第2ヒータコアにおける熱媒体流量と熱交換面積との積との和が、前記ラジエータにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と同一になるように前記少なくとも1つの流量調整部を制御する請求項1ないしのいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項8】
前記第1分岐部または前記第1合流部に配置された三方弁(26)を備え、
前記第1流量調整部(26a)および前記第2流量調整部(26b)は前記三方弁によって構成されている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項9】
前記第1ヒータコアに流入する前記熱媒体の温度を検出する第1温度検出部(66F)と、
前記第2ヒータコアに流入する前記熱媒体の温度を検出する第2温度検出部(66R)とを備える請求項1ないし8のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項10】
前記熱媒体回路のうち前記第2合流部から前記放熱部を経て前記第2分岐部に至る熱媒体流路における前記熱媒体を加熱する電気ヒータ(25)を備える請求項1ないし9のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項11】
前記電気ヒータは、前記熱媒体回路のうち前記放熱部と前記第2分岐部との間に配置されている請求項10に記載の空調装置。
【請求項12】
前記電気ヒータは、前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第2分岐部との間に配置されている請求項10に記載の空調装置。
【請求項13】
前記熱媒体回路のうち前記第1分岐部と前記第1ヒータコアまたは前記第2ヒータコアとの間には、前記熱媒体に圧力損失を生じさせる圧損体(27)が配置されている請求項1ないし12のいずれか1つに記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のヒータコアとラジエータとを有する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、凝縮器とヒータコアとラジエータとを有する車両用空調装置が記載されている。凝縮器は、冷凍サイクルの高圧冷媒と冷却水とを熱交換させて冷却水を加熱する。ヒータコアは、凝縮器で加熱された冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する。ラジエータは、冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-104841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術において、ヒータコアとして前席側ヒータコアと後席側ヒータコアとを設けて車室内空調の性能向上を図る場合、前席側ヒータコアと後席側ヒータコアとラジエータとで冷却水の流量を個別に適切に調整することが必要となる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みて、複数のヒータコアおよびラジエータに対して熱媒体の流量を適切に調整可能な空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の空調装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させることによって冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
放熱部で放熱された熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
熱媒体回路に配置され、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
熱媒体回路は、熱媒体が第1ヒータコア側とラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、第1ヒータコア側の熱媒体とラジエータ側の熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、第1分岐部と第1ヒータコアとの間の熱媒体が第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、第2ヒータコア側の熱媒体と第1ヒータコアと第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
熱媒体回路のうち第1分岐部とラジエータとの間、またはラジエータと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
熱媒体回路のうち第1分岐部と第1ヒータコアとの間、または第1ヒータコアと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
第1流量調整部および第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え
制御部は、第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち少なくとも一方の目標温度(THOF、THOR)が高くなると、ラジエータ側の熱媒体の流量比が下がるように少なくとも1つの流量調整部を制御する。
【0007】
これにより、前席側ヒータコアと後席側ータコアとラジエータとで冷却水の流量を適切に調整することができる。
上記目的を達成するため、請求項2に記載の空調装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させることによって冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
放熱部で放熱された熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
熱媒体回路に配置され、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
熱媒体回路は、熱媒体が第1ヒータコア側とラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、第1ヒータコア側の熱媒体とラジエータ側の熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、第1分岐部と第1ヒータコアとの間の熱媒体が第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、第2ヒータコア側の熱媒体と第1ヒータコアと第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
熱媒体回路のうち第1分岐部とラジエータとの間、またはラジエータと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
熱媒体回路のうち第1分岐部と第1ヒータコアとの間、または第1ヒータコアと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
第1流量調整部および第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え、
第1ヒータコアを流れる空気と、第1ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整することによって空調対象空間への吹出空気温度を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
第2ヒータコアを流れる空気と、第2ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整することによって空調対象空間への吹出空気温度を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
制御部は、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)の高い方のヒータコアの温度が目標温度となるように少なくとも1つの流量調整部を制御し、
目標温度の低い方のヒータコア側の吹出空気温度が目標吹出温度(TAOF、TAOR)となるように第1エアミックスドアおよび第2エアミックスドアを制御する。
これにより、請求項1に記載の空調装置と同様の作用効果を奏することができる。
上記目的を達成するため、請求項3に記載の空調装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させることによって冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
放熱部で放熱された熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
熱媒体回路に配置され、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
熱媒体回路は、熱媒体が第1ヒータコア側とラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、第1ヒータコア側の熱媒体とラジエータ側の熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、第1分岐部と第1ヒータコアとの間の熱媒体が第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、第2ヒータコア側の熱媒体と第1ヒータコアと第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
熱媒体回路のうち第1分岐部とラジエータとの間、またはラジエータと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
熱媒体回路のうち第1分岐部と第1ヒータコアとの間、または第1ヒータコアと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
第1流量調整部および第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え、
第1ヒータコアを流れる空気と、第1ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
第2ヒータコアを流れる空気と、第2ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
制御部は、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)と熱媒体回路(20)での熱損失による熱媒体温度の低下量とを合算した温度が大きい方のヒータコアの温度が目標温度となるように少なくとも1つの流量調整部を制御し、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち合算した温度が小さい方のヒータコア側からの吹出空気温度が目標吹出温度(TAOF、TAOR)となるように、第1エアミックスドアおよび第2エアミックスドアを制御する。
これにより、請求項1に記載の空調装置と同様の作用効果を奏することができる。
上記目的を達成するため、請求項4に記載の空調装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させることによって冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
放熱部で放熱された熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
熱媒体回路に配置され、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
熱媒体回路は、熱媒体が第1ヒータコア側とラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、第1ヒータコア側の熱媒体とラジエータ側の熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、第1分岐部と第1ヒータコアとの間の熱媒体が第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、第2ヒータコア側の熱媒体と第1ヒータコアと第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
熱媒体回路のうち第1分岐部とラジエータとの間、またはラジエータと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
熱媒体回路のうち第1分岐部と第1ヒータコアとの間、または第1ヒータコアと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
第1流量調整部および第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え、
第1ヒータコアを流れる空気と、第1ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
第2ヒータコアを流れる空気と、第2ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
制御部は、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)と現在の熱媒体温度との差が大きい方のヒータコアの温度が目標温度となるように少なくとも1つの流量調整部を制御し、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち目標温度と現在の熱媒体温度との差が小さい方のヒータコア側の吹出空気温度が目標温度となるように第1エアミックスドアおよび第2エアミックスドアを制御する。
これにより、請求項1に記載の空調装置と同様の作用効果を奏することができる。
上記目的を達成するため、請求項5に記載の空調装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させることによって冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
放熱部で放熱された熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
熱媒体回路に配置され、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
熱媒体回路は、熱媒体が第1ヒータコア側とラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、第1ヒータコア側の熱媒体とラジエータ側の熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、第1分岐部と第1ヒータコアとの間の熱媒体が第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、第2ヒータコア側の熱媒体と第1ヒータコアと第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
熱媒体回路のうち第1分岐部とラジエータとの間、またはラジエータと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
熱媒体回路のうち第1分岐部と第1ヒータコアとの間、または第1ヒータコアと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
第1流量調整部および第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え、
第1ヒータコアを流れる空気と、第1ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整することによって空調対象空間への吹出空気温度を調整する第1エアミックスドア(54F)と、
第2ヒータコアを流れる空気と、第2ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整することによって空調対象空間への吹出空気温度を調整する第2エアミックスドア(54R)とを備え、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうちいずれか一方のヒータコアのみで熱交換が行われる場合、制御部は、一方のヒータコアの目標温度が高くなると、ラジエータ側の熱媒体の流量比が下がるように少なくとも1つの流量調整部を制御し、
第1ヒータコアおよび第2ヒータコアの両方で熱交換が行われる場合、制御部は、第1ヒータコアおよび第2ヒータコアのうち目標温度(THOF、THOR)の高い方のヒータコアの温度が目標温度となるように少なくとも1つの流量調整部を制御し、目標温度の低い方のヒータコア側の吹出空気温度が目標吹出温度(TAOF、TAOR)となるように第1エアミックスドアおよび第2エアミックスドアを制御し、少なくとも1つの流量調整部を制御しても目標温度の高い方のヒータコアでの熱交換量が不足するときには目標温度の高い方のヒータコアの温度が目標温度となるように圧縮機を制御する。
これにより、請求項1に記載の空調装置と同様の作用効果を奏することができる。
上記目的を達成するため、請求項6に記載の空調装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(13F、13R、13C)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させることによって冷媒を蒸発させる蒸発部(14F、14R、14C)と、
放熱部で放熱された熱媒体が循環する熱媒体回路(20)と、
熱媒体回路に配置され、空調対象空間へ送風される空気と熱媒体とを熱交換させる第1ヒータコア(22F)および第2ヒータコア(22R)と、
熱媒体回路に配置され、外気と熱媒体とを熱交換させるラジエータ(23)とを備え、
熱媒体回路は、熱媒体が第1ヒータコア側とラジエータ側とに分岐する第1分岐部(20a)と、第1ヒータコア側の熱媒体とラジエータ側の熱媒体とが合流する第1合流部(20b)と、第1分岐部と第1ヒータコアとの間の熱媒体が第2ヒータコア側に分岐する第2分岐部(20c)と、第2ヒータコア側の熱媒体と第1ヒータコアと第1合流部との間に合流する第2合流部(20d)とを有し、
熱媒体回路のうち第1分岐部とラジエータとの間、またはラジエータと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第1流量調整部(26a、28)と、
熱媒体回路のうち第1分岐部と第1ヒータコアとの間、または第1ヒータコアと第1合流部との間に配置され、熱媒体の流量を調整する第2流量調整部(26b、29)とを備え、
第1流量調整部および第2流量調整部のうち少なくとも1つの流量調整部は、熱媒体の流量を任意に調整可能であり、
さらに、少なくとも1つの流量調整部を制御する制御部(60)を備え、
制御部は、第1ヒータコア、第2ヒータコアおよびラジエータのそれぞれにおける熱媒体流量の大小関係が第1ヒータコア>第2ヒータコア>ラジエータとなり、かつ第1ヒータコアにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と、第2ヒータコアにおける熱媒体流量と熱交換面積との積との和が、ラジエータにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と同一になるように少なくとも1つの流量調整部を制御する。
これにより、請求項1に記載の空調装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0008】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の空調装置を示す全体構成図である。
図2】第1実施形態の空調装置における前席側空調ユニットを示す構成図である。
図3】第1実施形態の空調装置における電気制御部を示すブロック図である。
図4】第2実施形態の空調装置を示す全体構成図である。
図5】第3実施形態の第1実施例における空調装置を示す全体構成図である。
図6】第3実施形態の第2実施例における空調装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、実施形態について図に基づいて説明する。図1~3に示す車両用空調装置1は、車室内空間(換言すれば、空調対象空間)を適切な温度に調整する空調装置である。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。
【0011】
図1に示すように、冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13F、前席側蒸発器14F、前席側定圧弁15F、第2膨張弁13R、後席側蒸発器14R、後席側定圧弁15R、第3膨張弁13Cおよび冷却用蒸発器14Cを備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0012】
第2膨張弁13Rおよび後席側蒸発器14Rは、冷媒流れにおいて、第1膨張弁13Fおよび前席側蒸発器14Fに対して並列に配置されている。第3膨張弁13Cおよび後席側蒸発器14Cは、冷媒流れにおいて、第1膨張弁13Fおよび前席側蒸発器14Fに対して並列に配置されている。第3膨張弁13Cおよび後席側蒸発器14Cは、冷媒流れにおいて、第2膨張弁13Rおよび後席側蒸発器14Rに対しても並列に配置されている。
【0013】
冷凍サイクル装置10には、第1冷媒循環回路と第2冷媒循環回路と第3冷媒循環回路とが形成される。第1冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13F、前席側蒸発器14F、前席側定圧弁15F、圧縮機11の順に循環する。第2冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第2膨張弁13R、後席側蒸発器14R、後席側定圧弁15R、圧縮機11の順に循環する。第3冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第3膨張弁13C、冷却用蒸発器14C、圧縮機11の順に循環する。
【0014】
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機11の電動モータは、制御装置60によって制御される。圧縮機11は、ベルトによって駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
【0015】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させる高圧側熱交換器である。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒を冷却水に放熱させる放熱部である。
【0016】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させるとともに高温冷却水回路20の冷却水を加熱する。
【0017】
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0018】
第1膨張弁13Fは、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第1減圧部である。第1膨張弁13Fは、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第1膨張弁13Fは冷媒流路を全閉可能になっている。
【0019】
第1膨張弁13Fは、前席側蒸発器14Fに冷媒が流れる状態と、前席側蒸発器14Fに冷媒が流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第1膨張弁13Fは、図3に示す制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。第1膨張弁13Fは機械式の温度膨張弁であってもよい。第1膨張弁13Fが機械式の温度膨張弁である場合、第1膨張弁13F側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第1膨張弁13Fとは別個に設けられている必要がある。
【0020】
前席側蒸発器14Fは、第1膨張弁13Fから流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる第1蒸発部である。前席側蒸発器14Fでは、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。前席側蒸発器14Fは、車室内へ送風される空気を冷却する空気冷却器である。
【0021】
前席側定圧弁15Fは、前席側蒸発器14Fの出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部である。前席側定圧弁15Fは、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、前席側定圧弁15Fは、前席側蒸発器14Fの出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、前席側蒸発器14Fの出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。前席側定圧弁15Fで圧力調整された気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0022】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、前席側定圧弁15Fに代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0023】
第2膨張弁13Rは、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第2減圧部である。第2膨張弁13Rは、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁13Rは冷媒流路を全閉可能になっている。
【0024】
第2膨張弁13Rは、後席側蒸発器14Rに冷媒が流れる状態と、後席側蒸発器14Rに冷媒が流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。
【0025】
第2膨張弁13Rは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。第2膨張弁13Rは機械式の温度膨張弁であってもよい。第2膨張弁13Rが機械式の温度膨張弁である場合、第2膨張弁13R側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第2膨張弁13Rとは別個に設けられている必要がある。
【0026】
後席側蒸発器14Rは、第2膨張弁13Rから流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる第2蒸発部である。後席側蒸発器14Rでは、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。後席側蒸発器14Rは、車室内へ送風される空気を冷却する空気冷却器である。
【0027】
後席側定圧弁15Rは、後席側蒸発器14Rの出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部である。後席側定圧弁15Rは、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、後席側定圧弁15Rは、後席側蒸発器14Rの出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、後席側蒸発器14Rの出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。後席側定圧弁15Rで圧力調整された気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0028】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、後席側定圧弁15Rに代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0029】
第3膨張弁13Cは、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第3減圧部である。第3膨張弁13Cは、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第3膨張弁13Cは冷媒流路を全閉可能になっている。
【0030】
第3膨張弁13Cは、冷却用蒸発器14Cに冷媒が流れる状態と、冷却用蒸発器14Cに冷媒が流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第3膨張弁13Cは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。第3膨張弁13Cは機械式の温度膨張弁であってもよい。第3膨張弁13Cが機械式の温度膨張弁である場合、第3膨張弁13C側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第3膨張弁13Cとは別個に設けられている必要がある。
【0031】
冷却用蒸発器14Cは、第3膨張弁13Cから流出した冷媒と温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させて冷媒を蒸発させる第3蒸発部である。冷却用蒸発器14Cで蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0032】
低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。
【0033】
高温冷却水回路20には、凝縮器12、高温側ポンプ21、前席側ヒータコア22F、後席側ヒータコア22R、高温側ラジエータ23、リザーブタンク24、電気ヒータ25、三方弁26および流量調整オリフィス27が配置されている。
【0034】
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、吐出流量が一定となる電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0035】
前席側ヒータコア22Fは、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器である。前席側ヒータコア22Fでは、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。前席側ヒータコア22Fは第1ヒータコアである。
【0036】
後席側ヒータコア22Rは、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器である。後席側ヒータコア22Rでは、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。後席側ヒータコア22Rは第2ヒータコアである。
【0037】
後席側ヒータコア22Rは、高温冷却水回路20の冷却水流れにおいて、前席側ヒータコア22Fと並列に配置されている。
【0038】
高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水流れにおいて、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rと並列に配置されている。
【0039】
高温冷却水回路20は、ラジエータ側分岐部20a、ラジエータ側合流部20b、ヒータコア側分岐部20cおよびヒータコア側合流部20dを有している。
【0040】
ラジエータ側分岐部20aは、高温冷却水回路20の冷却水をヒータコア22F、22R側と高温側ラジエータ23側とに分岐する。ラジエータ側分岐部20aは第1分岐部である。
【0041】
ラジエータ側合流部20bは、ヒータコア22F、22R側と高温側ラジエータ23側とから高温冷却水回路20の冷却水を合流させる。ラジエータ側合流部20bは第1合流部である。
【0042】
ヒータコア側分岐部20cは、高温冷却水回路20の冷却水を前席側ヒータコア22F側と後席側ヒータコア22R側とに分岐する。ヒータコア側分岐部20cは第2分岐部である。
【0043】
ヒータコア側合流部20dは、前席側ヒータコア22F側と後席側ヒータコア22R側とから高温冷却水回路20の冷却水を合流させる。ヒータコア側合流部20dは第2合流部である。
【0044】
高温冷却水回路20は、ラジエータ冷却水流路20e、分岐部間冷却水流路20f、前席側ヒータコア冷却水流路20g、後席側ヒータコア冷却水流路20h、合流部間冷却水流路20iおよび凝縮器冷却水流路20kを有している。
【0045】
ラジエータ冷却水流路20eは、ラジエータ側分岐部20aから高温側ラジエータ23を経てラジエータ側合流部20bに至る冷却水流路(換言すれば、熱媒体流路)である。
【0046】
分岐部間冷却水流路20fは、ラジエータ側分岐部20aとヒータコア側分岐部20cとの間の冷却水流路(換言すれば、熱媒体流路)である。
【0047】
前席側ヒータコア冷却水流路20gは、ヒータコア側分岐部20cから前席側ヒータコア22Fを経てヒータコア側合流部20dに至る冷却水流路(換言すれば、熱媒体流路)である。
【0048】
後席側ヒータコア冷却水流路20hは、ヒータコア側分岐部20cから後席側ヒータコア22Rを経てヒータコア側合流部20dに至る冷却水流路(換言すれば、熱媒体流路)である。
【0049】
合流部間冷却水流路20iは、ヒータコア側合流部20dとラジエータ側合流部20bとの間の冷却水流路(換言すれば、熱媒体流路)である。
【0050】
リザーブタンク24は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部(換言すれば、熱媒体貯留部)である。リザーブタンク24に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0051】
リザーブタンク24は、密閉式リザーブタンクまたは大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を所定圧力にするリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を大気圧にするリザーブタンクである。
【0052】
リザーブタンク24は、高温冷却水回路20のうちヒータコア側合流部20dとラジエータ側合流部20bとの間に配置されている。
【0053】
電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の冷却水を補助的に加熱する補助加熱部である。電気ヒータ25は、ヒータコア22F、22Rで空気を加熱するための補助的な熱源である。例えば、電気ヒータ25は、電力を供給されることによって発熱するPTCヒータである。電気ヒータ25は、ジュール熱を発生するジュール熱発生部である。電気ヒータ25の発熱量は、制御装置60から出力される制御電圧によって制御される。
【0054】
電気ヒータ25は、高温冷却水回路20のうちラジエータ側分岐部20aとヒータコア側分岐部20cとの間に配置されている。
【0055】
高温冷却水回路20には、三方弁26および流量調整オリフィス27が配置されている。
【0056】
三方弁26は、高温冷却水回路20のラジエータ側分岐部20aに配置されている。三方弁26は、高温側ラジエータ23側の冷却水流路とヒータコア22F、22R側の冷却水流路との開度比を調整する電磁式三方弁である。三方弁26は、高温側ラジエータ23側に流入する高温冷却水回路20の冷却水とヒータコア22F、22R側に流入する高温冷却水回路20の冷却水との流量比を任意に調整する。
【0057】
三方弁26は、ラジエータ側流量調整部26aとヒータコア側流量調整部26bとを有している。ラジエータ側流量調整部26aは、高温側ラジエータ23側の冷却水流路(すなわち、ラジエータ冷却水流路20e)の開度を調整する第1流量調整部である。ヒータコア側流量調整部26bは、ヒータコア22F、22R側の冷却水流路(すなわち、分岐部間冷却水流路20f)の開度を調整する第2流量調整部である。
【0058】
流量調整オリフィス27は、高温冷却水回路20のヒータコア側分岐部20cに配置されている。流量調整オリフィス27は、前席側ヒータコア22F側の冷却水流路および後席側ヒータコア22R側の冷却水流路のうち少なくとも一方を絞る固定絞りである。流量調整オリフィス27は、前席側ヒータコア22F側の冷却水流路および後席側ヒータコア22R側の冷却水流路のうち少なくとも一方において冷却水に圧力損失を生じさせる圧損体である。流量調整オリフィス27によって、前席側ヒータコア22Fに流入する高温冷却水回路20の冷却水と後席側ヒータコア22Rに流入する高温冷却水回路20の冷却水との流量比が所定の流量比に調整される。
【0059】
低温冷却水回路30には、冷却用蒸発器14C、低温側ポンプ31および低温側ラジエータ32が配置されている。
【0060】
低温側ポンプ31は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31は電動式のポンプである。低温側ポンプ31は、吐出流量が一定となる電動式のポンプである。低温側ポンプ31は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0061】
低温側ラジエータ32は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させて外気から冷却水に吸熱させる吸熱器である。
【0062】
室外送風機40は、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32へ向けて外気を送風する外気送風部である。室外送風機40は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室外送風機40の作動は、制御装置60によって制御される。
【0063】
高温側ラジエータ23、低温側ラジエータ32および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には高温側ラジエータ23に走行風を当てることができるようになっている。
【0064】
図2に示すように、前席側蒸発器14Fおよび前席側ヒータコア22Fは、前席側空調ユニット50Fの前席側空調ケーシング51Fに収容されている。前席側空調ユニット50Fは、車室内前部の図示しない計器盤の内側に配置されている。前席側空調ケーシング51Fは、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0065】
前席側ヒータコア22Fは、前席側空調ケーシング51F内の空気通路において、前席側蒸発器14Fの空気流れ下流側に配置されている。前席側空調ケーシング51Fには、前席側内外気切替箱52Fと前席側室内送風機53Fとが配置されている。
【0066】
前席側内外気切替箱52Fは、前席側空調ケーシング51F内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。前席側室内送風機53Fは、前席側内外気切替箱52Fを通して前席側空調ケーシング51F内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。前席側室内送風機53Fの作動は、制御装置60によって制御される。
【0067】
前席側空調ケーシング51F内の空気通路において前席側蒸発器14Fと前席側ヒータコア22Fとの間には、前席側エアミックスドア54Fが配置されている。前席側エアミックスドア54Fは、前席側蒸発器14Fを通過した冷風のうち前席側ヒータコア22Fに流入する冷風と前席側冷風バイパス通路55Fを流れる冷風との風量割合を調整する。前席側エアミックスドア54Fは第1エアミックスドアである。
【0068】
前席側冷風バイパス通路55Fは、前席側蒸発器14Fを通過した冷風が前席側ヒータコア22Fをバイパスして流れる空気通路である。
【0069】
前席側エアミックスドア54Fは、前席側空調ケーシング51Fに対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。前席側エアミックスドア54Fの開度位置を調整することによって、前席側空調ケーシング51Fから車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0070】
前席側エアミックスドア54Fの回転軸は、前席側サーボモータ56Fによって駆動される。前席側サーボモータ56Fの作動は、制御装置60によって制御される。
【0071】
前席側エアミックスドア54Fは、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0072】
前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風は、前席側空調ケーシング51Fに形成された前席側吹出口57Fから主に車室内前席側空間へ吹き出される。
【0073】
図2の括弧内の符号で示すように、後席側蒸発器14Rおよび後席側ヒータコア22Rは、後席側空調ユニット50Rの後席側空調ケーシング51Rに収容されている。後席側空調ユニット50Rの構成は前席側空調ユニット50Fの構成と同様であるので、後席側空調ユニット50Rに対応する符号を図2の括弧内に示し、後席側空調ユニット50Rの図示を省略する。
【0074】
後席側空調ユニット50Rは、車室内後部に配置されている。例えば、後席側空調ユニット50Rは後席の側方に配置されている。後席側空調ケーシング51Rは、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0075】
後席側ヒータコア22Rは、後席側空調ケーシング51R内の空気通路において、後席側蒸発器14Rの空気流れ下流側に配置されている。後席側空調ケーシング51Rには、後席側内外気切替箱52Rと後席側室内送風機53Rとが配置されている。
【0076】
後席側内外気切替箱52Rは、後席側空調ケーシング51R内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。後席側室内送風機53Rは、後席側内外気切替箱52Rを通して後席側空調ケーシング51R内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。後席側室内送風機53Rの作動は、制御装置60によって制御される。
【0077】
後席側空調ケーシング51R内の空気通路において後席側蒸発器14Rと後席側ヒータコア22Rとの間には、後席側エアミックスドア54Rが配置されている。後席側エアミックスドア54Rは、後席側蒸発器14Rを通過した冷風のうち後席側ヒータコア22Rに流入する冷風と後席側冷風バイパス通路55Rを流れる冷風との風量割合を調整する。後席側エアミックスドア54Rは第2エアミックスドアである。
【0078】
後席側冷風バイパス通路55Rは、後席側蒸発器14Rを通過した冷風が後席側ヒータコア22Rをバイパスして流れる空気通路である。
【0079】
後席側エアミックスドア54Rは、後席側空調ケーシング51Rに対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。後席側エアミックスドア54Rの開度位置を調整することによって、後席側空調ケーシング51Rから車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0080】
後席側エアミックスドア54Rの回転軸は、後席側サーボモータ56Rによって駆動される。エアミックスドア用後席側サーボモータ56Rの作動は、制御装置60によって制御される。
【0081】
後席側エアミックスドア54Rは、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0082】
後席側エアミックスドア54Rによって温度調整された空調風は、後席側空調ケーシング51Rに形成された後席側吹出口57Rから車室内後席側空間へ吹き出される。
【0083】
図3に示す制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置60の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置60は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0084】
制御装置60によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、第1膨張弁13F、第2膨張弁13R、第3膨張弁13C、電気ヒータ25、三方弁26、室外送風機40、前席側室内送風機53F、後席側室内送風機53R、前席側エアミックスドア用サーボモータ56Fおよび後席側エアミックスドア用サーボモータ56R等である。
【0085】
制御装置60のうち圧縮機11の電動モータを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、冷媒吐出能力制御部である。制御装置60のうち第1膨張弁13Fおよび第2膨張弁13Rを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、絞り制御部である。制御装置60のうち電気ヒータ25を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、補助加熱能力制御部である。
【0086】
制御装置60のうち三方弁26を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、高温熱媒体流れ制御部である。
【0087】
制御装置60のうち室外送風機40を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、外気送風能力制御部である。
【0088】
制御装置60のうち前席側室内送風機53Fおよび後席側室内送風機53Rを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、空気送風能力制御部である。
【0089】
制御装置60のうち前席側サーボモータ56Fおよび後席側サーボモータ56Rを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、風量割合制御部である。
【0090】
制御装置60の入力側には、前席側内気温度センサ61F、後席側内気温度センサ61R、外気温度センサ62、日射量センサ63、前席側吸込空気温度センサ64F、後席側吸込空気温度センサ64R、前席側蒸発器温度センサ65F、後席側蒸発器温度センサ65R、冷却用蒸発器センサ65C、前席側ヒータコア温度センサ66F、後席側ヒータコア温度センサ66R等の種々の制御用センサ群が接続されている。
【0091】
前席側内気温度センサ61Fは車室内前席側空間の車室内温度TrF(以下、前席側内気温と言う。)を検出する。後席側内気温度センサ61Rは車室内後席側空間の車室内温度TrR(以下、後席側内気温と言う。)を検出する。外気温度センサ62は車室害空気の温度Tam(以下、外気温と言う。)を検出する。日射量センサ63は車室内の日射量Tsを検出する。
【0092】
前席側吸込空気温度センサ64Fは、前席側蒸発器14Fに吸い込まれる空気の温度TEinFを検出する空気温度検出部である。後席側吸込空気温度センサ64Rは、後席側蒸発器14Rに吸い込まれる空気の温度TEinRを検出する空気温度検出部である。
【0093】
前席側蒸発器温度センサ65Fは、前席側蒸発器14Fの温度TEFを検出する蒸発器温度検出部である。前席側蒸発器温度センサ65Fは、例えば、前席側蒸発器14Fの熱交換フィンの温度を検出するフィンサーミスタや、前席側蒸発器14Fを流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ等である。
【0094】
後席側蒸発器温度センサ65Rは、後席側蒸発器14Rの温度TERを検出する蒸発器温度検出部である。後席側蒸発器温度センサ65Rは、例えば、後席側蒸発器14Rの熱交換フィンの温度を検出するフィンサーミスタや、後席側蒸発器14Rを流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ等である。
【0095】
冷却用蒸発器センサ65Cは、冷却蒸発器14Cの温度TECを検出する蒸発器温度検出部である。冷却用蒸発器センサ65Cは、例えば、冷却用蒸発器14Cを流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ等である。
【0096】
前席側ヒータコア温度センサ66Fは、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFを検出する第1温度検出部である。後席側ヒータコア温度センサ66Rは、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度THinRを検出する第2温度検出部である。
【0097】
図1に示すように、前席側ヒータコア温度センサ66Fは、高温冷却水回路20のうちヒータコア側分岐部20cと前席側ヒータコア22Fとの間に配置されている。図1に示すように、後席側ヒータコア温度センサ66Rは、高温冷却水回路20のうちヒータコア側分岐部20cと後席側ヒータコア22Rとの間に配置されている。
【0098】
制御装置60の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続されている。各種操作スイッチは、図3に示す操作パネル70に設けられており、乗員によって操作される。操作パネル70は車室内前部の計器盤付近に配置されている。制御装置60には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0099】
各種操作スイッチは、オートスイッチ、エアコンスイッチ、前席側温度設定スイッチ、前席側風量設定スイッチ、前席側吹出モード切替スイッチ、後席側空調スイッチ、後席側温度設定スイッチ、後席側風量設定スイッチ、後席側吹出モード切替スイッチ等である。
【0100】
オートスイッチは、車両用空調装置の自動制御運転を設定あるいは解除するスイッチである。エアコンスイッチは、前席側蒸発器14Fおよび後席側蒸発器14Rのうち少なくとも前席側蒸発器14Fで空気の冷却を行うことを要求するスイッチである。
【0101】
前席側温度設定スイッチは、車室内前席側空間の目標温度を設定するスイッチである。前席側風量設定スイッチは、前席側室内送風機53Fの風量をマニュアル設定するスイッチである。前席側吹出モード切替スイッチは、前席側空調ユニット50Fの吹出モードをマニュアル設定するスイッチである。
【0102】
後席側空調スイッチは、後席側空調ユニット50Rの作動および停止を切り替えるスイッチである。後席側温度設定スイッチは、車室内後席側空間の目標温度を設定するスイッチである。後席側風量設定スイッチは、後席側室内送風機53Rの風量をマニュアル設定するスイッチである。後席側吹出モード切替スイッチは、後席側空調ユニット50Rの吹出モードをマニュアル設定するスイッチである。
【0103】
次に、上記構成における作動を説明する。制御装置60は、操作パネル70のオートスイッチが乗員によってオンされている場合、エアコンスイッチおよび後席側空調スイッチ等の操作状態と、前席側目標吹出温度TAOF等と、制御マップとに基づいて運転モードを切り替える。運転モードとしては、少なくともシングル冷房モード、シングル第1除湿暖房モード、シングル第2除湿暖房モード、シングル第3除湿暖房モード、シングル第4除湿暖房モード、シングル暖房モード、デュアル冷房モード、デュアル第1除湿暖房モード、デュアル第2除湿暖房モード、デュアル第3除湿暖房モード、デュアル第4除湿暖房モードおよびデュアル暖房モードがある。
【0104】
前席側目標吹出温度TAOFは、前席側空調ユニット50Fが車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、前席側目標吹出温度TAOFを以下の数式に基づいて算出する。
【0105】
TAOF=Kset×TsetF-Kr×TrF-Kam×Tam-Ks×Ts+C
この数式において、TsetFは操作パネル70の前席側温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、TrFは前席側内気温度センサ61Fによって検出された前席側内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0106】
エアコンスイッチが乗員によってオンされており、且つ後席側空調スイッチが乗員によってオフされている場合、前席側目標吹出温度TAOFの低温域ではシングル冷房モードに切り替え、前席側目標吹出温度TAOFが高温になるにつれてシングル第1除湿暖房モード、シングル第2除湿暖房モード、シングル第3除湿暖房モード、シングル第4除湿暖房モードの順に切り替える。前席側目標吹出温度TAOFの閾値は、前席側蒸発器14Fの吸込空気温度TEinが高温であるほど大きくなる。
【0107】
エアコンスイッチが乗員によってオフされており、且つ後席側空調スイッチが乗員によってオフされている場合、前席側目標吹出温度TAOFの高温域ではシングル暖房モードに切り替える。
【0108】
エアコンスイッチが乗員によってオンされており、且つ後席側空調スイッチが乗員によってオンされている場合、前席側目標吹出温度TAOFの低温域ではデュアル冷房モードに切り替え、前席側目標吹出温度TAOFが高温になるにつれてデュアル第1除湿暖房モード、デュアル第2除湿暖房モード、デュアル第3除湿暖房モード、デュアル第4除湿暖房モードの順に切り替える。前席側目標吹出温度TAOFの閾値は、前席側蒸発器14Fの吸込空気温度TEinが高温であるほど大きくなる。
【0109】
エアコンスイッチが乗員によってオフされており、且つ後席側空調スイッチが乗員によってオンされている場合、前席側目標吹出温度TAOFの高温域ではデュアル暖房モードに切り替える。
【0110】
シングル冷房モードでは、車室内へ送風される空気を前席側蒸発器14Fで冷却することによって車室内を冷房する。
【0111】
シングル第1除湿暖房モード、シングル第2除湿暖房モード、シングル第3除湿暖房モードおよびシングル第4除湿暖房モードでは、車室内へ送風される空気を前席側蒸発器14Fで冷却除湿し、前席側蒸発器14Fで冷却除湿された空気を前席側ヒータコア22Fで加熱することによって車室内を除湿暖房する。シングル暖房モードでは、車室内へ送風される空気を前席側ヒータコア22Fで加熱することによって車室内を暖房する。
【0112】
デュアル冷房モードでは、車室内前席側空間へ送風される空気を前席側蒸発器14Fで冷却することによって車室内前席側空間を冷房し、車室内後席側空間へ送風される空気を後席側蒸発器14Rで冷却することによって車室内後席側空間を冷房する。
【0113】
デュアル第1除湿暖房モード、デュアル第2除湿暖房モード、デュアル第3除湿暖房モードおよびデュアル第4除湿暖房モードでは、車室内前席側空間へ送風される空気を前席側蒸発器14Fで冷却除湿し、前席側蒸発器14Fで冷却除湿された空気を前席側ヒータコア22Fで加熱することによって車室内前席側空間を除湿暖房し、車室内後席側空間へ送風される空気を後席側蒸発器14Rで冷却除湿し、後席側蒸発器14Rで冷却除湿された空気を後席側ヒータコア22Rで加熱することによって車室内後席側空間を除湿暖房しする。デュアル暖房モードでは、車室内前席側空間へ送風される空気を前席側ヒータコア22Fで加熱することによって車室内前席側空間を暖房し、車室内後席側空間へ送風される空気を後席側ヒータコア22Rで加熱することによって車室内後席側空間を暖房する。
【0114】
シングル第1除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の熱量が、前席側ヒータコア22Fに必要とされる熱量に対して余剰となることから、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を高温側ラジエータ23で外気に放熱させる。
【0115】
シングル第2除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32で外気から吸熱させることによって、シングル第1除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fでの放熱量を増加させる。
【0116】
シングル第3除湿暖房モードでは、シングル第2除湿暖房モードと比較して圧縮機11の回転数を高くすることによって低温側ラジエータ32で外気から吸熱する熱量を増加させて前席側ヒータコア22Fでの放熱量を増加させる。
【0117】
シングル第4除湿暖房モードでは、電気ヒータ25を発熱させることによって、シングル第3除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fでの放熱量を増加させる。
【0118】
デュアル第1除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の熱量が、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rに必要とされる熱量に対して余剰となることから、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を高温側ラジエータ23で外気に放熱させる。デュアル第1除湿暖房モードは、高温側ラジエータ23で外気に放熱する放熱モードである。
【0119】
デュアル第2除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32で外気から吸熱させることによって、デュアル第1除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rでの放熱量を増加させる。デュアル第2除湿暖房モードは、低温側ラジエータ32で外気から吸熱する吸熱モードである。
【0120】
デュアル第3除湿暖房モードでは、デュアル第2除湿暖房モードと比較して圧縮機11の回転数を高くすることによって低温側ラジエータ32で外気から吸熱する熱量を増加させて前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rでの放熱量を増加させる。
【0121】
デュアル第4除湿暖房モードでは、電気ヒータ25を発熱させることによって、デュアル第3除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rでの放熱量を増加させる。
【0122】
次に、シングル冷房モード、シングル第1除湿暖房モード、シングル第2除湿暖房モード、シングル第3除湿暖房モード、シングル第4除湿暖房モード、シングル暖房モード、デュアル冷房モード、デュアル第1除湿暖房モード、デュアル第2除湿暖房モード、デュアル第3除湿暖房モード、デュアル第4除湿暖房モードおよびデュアル暖房モードにおける作動について説明する。
【0123】
冷房モード、シングル冷房モード、シングル第1除湿暖房モード、シングル第2除湿暖房モード、シングル第3除湿暖房モード、シングル第4除湿暖房モード、シングル暖房モード、デュアル冷房モード、デュアル第1除湿暖房モード、デュアル第2除湿暖房モード、デュアル第3除湿暖房モード、デュアル第4除湿暖房モードおよびデュアル暖房モードでは、制御装置60は、前席側目標吹出温度TAOF、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(換言すれば、各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0124】
(1)シングル冷房モード
シングル冷房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させ、第1膨張弁13Fを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、第2膨張弁13Rを閉じ、第3膨張弁13Cを閉じる。
【0125】
シングル冷房モードでは、制御装置60は、前席側蒸発器温度センサ65Fによって検出された前席側蒸発器温度TEFが目標前席側蒸発器温度TEOFに近づくように圧縮機11の回転数Ncを制御する。目標前席側蒸発器温度TEOFは、前席側目標吹出温度TAOFに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。
【0126】
シングル冷房モードでは、制御装置60は、前席側室内送風機53Fを作動させ、後席側室内送風機53Rを停止させる。
【0127】
シングル冷房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の目標温度THOF(以下、目標前席側ヒータコア温度と言う。)が高くなるとラジエータ側流量比Rrが小さくなり、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなるとラジエータ側流量比Rrが大きくなるように三方弁26を制御する。本例では、目標前席側ヒータコア温度THOFは、前席側目標吹出温度TAOFと同じである。
【0128】
ラジエータ側流量比Rrとは、高温側ラジエータ23に流入する冷却水と、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水との流量比のことである。
【0129】
すなわち、シングル冷房モードでは、制御装置60は、前席側目標吹出温度TAOFが高くなると高温側ラジエータ23への冷却水の分配割合が小さくなり、前席側目標吹出温度TAOFが低くなると高温側ラジエータ23への冷却水の分配割合が大きくなるように三方弁26を制御する。
【0130】
これにより、シングル冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0131】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0132】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13Fへ流入して、第1膨張弁13Fにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13Fにて減圧された低圧冷媒は、前席側蒸発器14Fに流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0133】
そして、前席側蒸発器14Fから流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0134】
このように、シングル冷房モードでは、前席側蒸発器14Fにて低圧冷媒に空気から吸熱させて、冷却された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0135】
シングル冷房モード時の高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0136】
このとき、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、前席側ヒータコア22Fにおける冷却水から空気への放熱量は前席側エアミックスドア54Fによって調整される。
【0137】
前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風の温度が前席側目標吹出温度TAOFとなるように決定される。具体的には、前席側エアミックスドア54Fの開度が、前席側目標吹出温度TAOF、前席側蒸発器14Fの温度TEF、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinF等に基づいて決定される。
【0138】
このとき、図1の実線矢印に示すように、後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、後席側室内送風機53Rが停止しているので、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱はほとんど行われない。
【0139】
(2)シングル第1除湿暖房モード
シングル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させ、第1膨張弁13Fを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、第2膨張弁13Rを閉じ、第3膨張弁13Cを閉じる。
【0140】
シングル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル冷房モードと同様に圧縮機11の回転数Ncを制御する。
【0141】
シングル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル冷房モードと同様に、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなるとラジエータ側流量比Rrが小さくなり、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなるとラジエータ側流量比Rrが大きくなるように三方弁26を制御する。
【0142】
シングル第1除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0143】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0144】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13Fへ流入して、第1膨張弁13Fにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13Fにて減圧された低圧冷媒は、前席側蒸発器14Fに流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0145】
そして、前席側蒸発器14Fから流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0146】
シングル第1除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0147】
前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように決定される。
【0148】
これにより、前席側ヒータコア22Fで高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、前席側蒸発器14Fで冷却除湿された空気が前席側ヒータコア22Fで加熱されて車室内に吹き出される。
【0149】
このとき、図1の実線矢印に示すように、後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、後席側室内送風機53Rが停止しているので、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱はほとんど行われない。
【0150】
これと同時に、高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0151】
このように、シングル第1除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱を前席側ヒータコア22Fにて空気に放熱させ、前席側ヒータコア22Fで加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0152】
前席側ヒータコア22Fでは、前席側蒸発器14Fにて冷却除湿された空気を加熱する。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0153】
シングル第1除湿暖房モードでは、前席側目標吹出温度TAOFが比較的低温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度が比較的低くてよい。そのため、前席側ヒータコア22Fで必要とされる熱量に対して高温冷却水回路20の冷却水の熱量が余剰となる。
【0154】
高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱は、高温側ラジエータ23にて外気に放熱される。
【0155】
シングル第1除湿暖房モードでは、高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水の流量は、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を外気に放熱できるだけの流量でよい。
【0156】
そのため、第1除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を高温側ラジエータ23にて外気に放熱できるだけの開度とされる。
【0157】
上述のように、シングル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなるとラジエータ側流量比Rrが小さくなり、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなるとラジエータ側流量比Rrが大きくなるように三方弁26を制御する。これにより、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFに近づけられる。
【0158】
(3)シングル第2除湿暖房モード
シングル第2除湿暖房モードでは、シングル第1除湿暖房モードと比較して前席側目標吹出温度TAOFが高温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度をシングル第1除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0159】
シングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および低温側ポンプ31を作動させる。
【0160】
シングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル第1除湿暖房モードと同様に圧縮機11の回転数Ncを制御する。
【0161】
シングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13Fを絞り開度で開弁させ、第2膨張弁13Rを閉じ、第3膨張弁13Cを絞り開度で開弁させる。
【0162】
シングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル第1除湿暖房モードと同様に、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなるとラジエータ側流量比Rrが小さくなり、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなるとラジエータ側流量比Rrが大きくなるように三方弁26を制御する。
【0163】
第2除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印および実線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0164】
すなわち、冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0165】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13Fへ流入して、第1膨張弁13Fにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13Fにて減圧された低圧冷媒は、前席側蒸発器14Fに流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0166】
そして、前席側蒸発器14Fから流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0167】
これと同時に、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第3膨張弁13Cへ流入して、第3膨張弁13Cにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第3膨張弁13Cにて減圧された低圧冷媒は、冷却用蒸発器14Cに流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0168】
シングル第2除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0169】
前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した送風空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように決定される。
【0170】
これにより、前席側ヒータコア22Fで高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、前席側蒸発器14Fで冷却除湿された空気が前席側ヒータコア22Fで加熱されて車室内に吹き出される。
【0171】
このとき、図1の実線矢印に示すように、後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、後席側室内送風機53Rが停止しているので、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱はほとんど行われない。
【0172】
これと同時に、高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0173】
シングル第2除湿暖房モード時の低温冷却水回路30では、図1の実線矢印に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水が循環して低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0174】
このように、シングル第2除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱を前席側ヒータコア22Fにて空気に放熱させ、前席側ヒータコア22Fで加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0175】
前席側ヒータコア22Fでは、前席側蒸発器14Fにて冷却除湿された空気を加熱する。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0176】
シングル第2除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱されるので、シングル第1除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fで利用できる熱量を増加させることができ、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度を高めることができる。
【0177】
上述のように、シングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなるとラジエータ側流量比Rrが小さくなり、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなるとラジエータ側流量比Rrが大きくなるように三方弁26を制御する。これにより、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFに近づけられる。
【0178】
(4)シングル第3除湿暖房モード
シングル第3除湿暖房モードでは、シングル第2除湿暖房モードと比較して前席側目標吹出温度TAOFが高温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度をシングル第2除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0179】
シングル第3除湿暖房モードでは、制御装置60は、ラジエータ側流量比Rrが最小となるように三方弁26を制御する。すなわち、制御装置60は、高温側ラジエータ23に冷却水が流入しないように三方弁26を制御する。
【0180】
したがって、シングル第3除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0181】
前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した送風空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように決定される。
【0182】
これにより、前席側ヒータコア22Fで高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、前席側蒸発器14Fで冷却除湿された空気が前席側ヒータコア22Fで加熱されて車室内に吹き出される。
【0183】
このとき、図1の実線矢印に示すように、後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、後席側室内送風機53Rが停止しているので、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱はほとんど行われない。
【0184】
シングル第3除湿暖房モードでは、シングル第2除湿暖房モードと比較して、低温側ラジエータ32における外気からの吸熱量を多くする。具体的には、第2除湿暖房モードに対して圧縮機11の回転数Ncを高くする。すなわち、圧縮機11の回転数Ncを、目標前席側蒸発器温度TEOFに基づいて決定された回転数よりも高くする。
【0185】
これにより、シングル第2除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fで利用できる熱量を増加させることができ、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度を高めることができる。
【0186】
シングル第3除湿暖房モードでは、制御装置60は、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなると圧縮機11の回転数Ncが増加し、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなると圧縮機11の回転数Ncが減少するように三方弁26を制御する。これにより、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFに近づけられる。
【0187】
(5)シングル第4除湿暖房モード
シングル第4除湿暖房モードでは、シングル第3除湿暖房モードと比較して前席側目標吹出温度TAOFが高温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度をシングル第3除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0188】
シングル第4除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル第3除湿暖房モードと同様に三方弁26を制御する。すなわち、制御装置60は、高温側ラジエータ23に冷却水が流入しないように三方弁26を制御する。
【0189】
したがって、シングル第4除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0190】
前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した送風空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように決定される。
【0191】
これにより、前席側ヒータコア22Fで高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、前席側蒸発器14Fで冷却除湿された空気が前席側ヒータコア22Fで加熱されて車室内に吹き出される。
【0192】
このとき、図1の実線矢印に示すように、後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、後席側室内送風機53Rが停止しているので、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱はほとんど行われない。
【0193】
シングル第4除湿暖房モードでは、圧縮機11の回転数Ncを上限回転数にするとともに、シングル第3除湿暖房モードと比較して、電気ヒータ25を作動させることによって暖房用熱量を多くする。
【0194】
これにより、シングル第4除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fで利用できる熱量を増加させることができ、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度を高めることができる。
【0195】
シングル第4除湿暖房モードでは、制御装置60は、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなると電気ヒータ25の出力が増加し、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなると電気ヒータ25の出力が減少するように三方弁26を制御する。これにより、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFに近づけられる。
【0196】
(6)シングル暖房モード
シングル暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させ、第1膨張弁13Fを閉じ、第2膨張弁13Rを閉じ、第3膨張弁13Cを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にする。
【0197】
シングル暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア温度センサ66Fによって検出された冷却水の温度THinF(すなわち、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度)が目標前席側ヒータコア温度THOFに近づくように圧縮機11の回転数Ncを制御する。目標前席側ヒータコア温度THOFは、前席側目標吹出温度TAOFに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。
【0198】
シングル暖房モードでは、制御装置60は、前席側室内送風機53Fを作動させ、後席側室内送風機53Rを停止させる。
【0199】
シングル暖房モードでは、制御装置60は、ラジエータ側流量比Rrが最小となるように三方弁26を制御する。すなわち、制御装置60は、高温側ラジエータ23に冷却水が流入しないように三方弁26を制御する。
【0200】
これにより、シングル暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0201】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0202】
凝縮器12から流出した冷媒は、第3膨張弁13Cへ流入して、第3膨張弁13Cにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第3膨張弁13Cにて減圧された低圧冷媒は、冷却用蒸発器14Cに流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0203】
そして、冷却用蒸発器14Cから流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0204】
このように、シングル暖房モードでは、冷却用蒸発器14Cにて低圧冷媒に低温冷却水回路30の冷却水から吸熱させて、冷却された低温冷却水回路30の冷却水を低温側ラジエータ32に流入させることができる。これにより、低温側ラジエータ32にて外気から吸熱することができる。
【0205】
シングル暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した送風空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように決定される。これにより、前席側ヒータコア22Fで高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、車室内へ送風される空気が前席側ヒータコア22Fで加熱されて車室内の暖房を実現できる。
【0206】
このとき、図1の実線矢印に示すように、後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、後席側室内送風機53Rが停止しているので、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱はほとんど行われない。
【0207】
シングル暖房モードでは、制御装置60は、目標前席側ヒータコア温度THOFが高くなると圧縮機11の回転数Ncおよび電気ヒータ25の出力を増加させ、目標前席側ヒータコア温度THOFが低くなると圧縮機11の回転数Ncおよび電気ヒータ25の出力を減少させる。これにより、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFに近づけられる。
【0208】
(7)デュアル冷房モード
デュアル冷房モードでは、シングル冷房モードに対して、第2膨張弁13Rを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、後席側室内送風機53Rを作動させる。
【0209】
これにより、デュアル冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0210】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0211】
図1の破線矢印のように、凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13Fへ流入して、第1膨張弁13Fにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13Fにて減圧された低圧冷媒は、前席側蒸発器14Fに流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0212】
これと同時に、図1の一点鎖線矢印のように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁13Rへ流入して、第2膨張弁13Rにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される第2膨張弁13Rにて減圧された低圧冷媒は、後席側蒸発器14Rに流入し、車室内後席側空間へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内後席側空間へ送風される空気が冷却される。
【0213】
そして、図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように、前席側蒸発器14Fから流出した冷媒および後席側蒸発器14Rから流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0214】
デュアル冷房モードでは、制御装置60は、前席側蒸発器14Fおよび後席側蒸発器14Rのうち目標蒸発器温度が低い方の蒸発器の温度が目標蒸発器温度に近づくように圧縮機11の回転数Ncを制御する。
【0215】
具体的には、目標前席側蒸発器温度TEOFが目標後席側蒸発器温度TEORよりも低い場合、制御装置60は前席側蒸発器温度TEFが目標前席側蒸発器温度TEOFに近づくように圧縮機11の回転数Ncを制御する。目標後席側蒸発器温度TEORは、後席側目標吹出温度TAORに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。目標前席側蒸発器温度TEOFが目標後席側蒸発器温度TEORよりも低い場合、制御装置60は後席側蒸発器温度TERが目標後席側蒸発器温度TEORに近づくように圧縮機11の回転数Ncを制御する。
【0216】
デュアル冷房モード時の高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0217】
このとき、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、前席側ヒータコア22Fにおける冷却水から空気への放熱量は前席側エアミックスドア54Fによって調整され、後席側ヒータコア22Rにおける冷却水から空気への放熱量は後席側エアミックスドア54Rによって調整される。
【0218】
前席側エアミックスドア54Fのサーボモータへ出力される制御信号については、シングル冷房モードと同様に、前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風の温度が前席側目標吹出温度TAOFとなるように決定される。
【0219】
後席側エアミックスドア54Rのサーボモータへ出力される制御信号については、後席側エアミックスドア54Rによって温度調整された空調風の温度が後席側目標吹出温度TAORとなるように決定される。具体的には、後席側エアミックスドア54Rの開度が、後席側目標吹出温度TAOR、後席側蒸発器14Rの温度TER、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度THinR等に基づいて決定される。
【0220】
後席側目標吹出温度TAORは、後席側空調ユニット50Rが車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、後席側目標吹出温度TAORを以下の数式に基づいて算出する。
【0221】
TAOR=Kset×TsetR-Kr×TrR-Kam×Tam-Ks×Ts+C
この数式において、TsetRは操作パネル70の後席側温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、TrRは後席側内気温度センサ61Rによって検出された後席側内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0222】
このように、デュアル冷房モードでは、前席側空調ユニット50Fおよび後席側空調ユニット50Rの両方で車室内の冷房を実現することができる。
【0223】
(8)デュアル第1除湿暖房モード
デュアル第1除湿暖房モードでは、シングル第1除湿暖房モードに対して、第2膨張弁13Rを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、後席側室内送風機53Rを作動させる。
【0224】
デュアル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、デュアル冷房モードと同様に圧縮機11の回転数Ncを制御する。
【0225】
これにより、デュアル第1除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0226】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0227】
図1の破線矢印のように、凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13Fへ流入して、第1膨張弁13Fにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13Fにて減圧された低圧冷媒は、前席側蒸発器14Fに流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0228】
これと同時に、図1の一点鎖線矢印のように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁13Rへ流入して、第2膨張弁13Rにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される第2膨張弁13Rにて減圧された低圧冷媒は、後席側蒸発器14Rに流入し、車室内後席側空間へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内後席側空間へ送風される空気が冷却される。
【0229】
そして、図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように、前席側蒸発器14Fから流出した冷媒および後席側蒸発器14Rから流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0230】
デュアル第1除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0231】
このとき、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0232】
デュアル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに流入する冷却水の温度が目標ヒータコア温度となるように三方弁26を制御する。さらに、目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度が低い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0233】
例えば、目標前席側ヒータコア温度THOFが目標後席側ヒータコア温度THOR(すなわち、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の目標温度)よりも高い場合、制御装置60は、三方弁26、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFとなるように三方弁26を制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rによって温度調整された空調風の温度が後席側目標吹出温度TAORとなるように後席側エアミックスドア54Rを制御する。具体的には、後席側エアミックスドア54Rが、後席側目標吹出温度TAOR、後席側蒸発器14Rの温度TER、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度THinR等に基づいて決定される。本例では、目標後席側ヒータコア温度THORは、後席側目標吹出温度TAORと同じである。
【0234】
例えば、目標後席側ヒータコア温度THORが目標前席側ヒータコア温度THOFよりも高い場合、制御装置60は、三方弁26、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度が目標後席側ヒータコア温度THORとなるように三方弁26を制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rが図1の二点鎖線位置に位置して後席側ヒータコア22Rの空気通路を全開し、後席側蒸発器14Rを通過した空気の全流量が後席側ヒータコア22Rを通過するように制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風の温度が前席側目標吹出温度TAOFとなるように前席側エアミックスドア54Fを制御する。
【0235】
制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち前席側ヒータコア22Fに対して優先的に冷却水の流量が調整されるように三方弁26を制御するのが好ましい。前席側の防曇性を極力確保するためである。
【0236】
このように、デュアル第1除湿暖房モードでは、前席側空調ユニット50Fおよび後席側空調ユニット50Rの両方で車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0237】
(9)デュアル第2除湿暖房モード
デュアル第2除湿暖房モードでは、デュアル第1除湿暖房モードと比較して前席側目標吹出温度TAOFおよび後席側目標吹出温度TAORのうち少なくとも一方が高温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度をデュアル第1除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0238】
デュアル第2除湿暖房モードでは、シングル第2除湿暖房モードに対して、第2膨張弁13Rを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、後席側室内送風機53Rを作動させる。
【0239】
デュアル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、デュアル第1除湿暖房モードと同様に圧縮機11の回転数Ncを制御する。
【0240】
これにより、デュアル第2除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、デュアル第1除湿暖房モードと同様に図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように冷媒が流れ、車室内へ送風される空気が前席側蒸発器14Fにて冷却されるとともに、車室内後席側空間へ送風される空気が後席側蒸発器14Rにて冷却される。
【0241】
デュアル第2除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0242】
このとき、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rにも高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0243】
デュアル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、デュアル第1除湿暖房モードと同様に三方弁26、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを制御する。
【0244】
すなわち、デュアル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに流入する冷却水の温度が目標ヒータコア温度となるように三方弁26を制御する。さらに、目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度が低い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0245】
このように、デュアル第2除湿暖房モードでは、前席側空調ユニット50Fおよび後席側空調ユニット50Rの両方で車室内の除湿暖房を実現することができる。デュアル第2除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱されるので、デュアル第1除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rで利用できる熱量を増加させることができ、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度および後席側ヒータコア22Rの吹出空気温度を高めることができる。
【0246】
(10)デュアル第3除湿暖房モード
デュアル第3除湿暖房モードでは、デュアル第2除湿暖房モードと比較して前席側目標吹出温度TAOFおよび後席側目標吹出温度TAORのうち少なくとも一方が高温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度をデュアル第2除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0247】
デュアル第3除湿暖房モードでは、シングル第3除湿暖房モードに対して、第2膨張弁13Rを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、後席側室内送風機53Rを作動させる。
【0248】
これにより、デュアル第3除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、デュアル第2除湿暖房モードと同様に図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように冷媒が流れ、車室内へ送風される空気が前席側蒸発器14Fにて冷却されるとともに、車室内後席側空間へ送風される空気が後席側蒸発器14Rにて冷却される。
【0249】
デュアル第3除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル第3除湿暖房モードと同様に三方弁26を制御する。すなわち、制御装置60は、高温側ラジエータ23に冷却水が流入しないように三方弁26を制御する。
【0250】
したがって、デュアル第3除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0251】
デュアル第3除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに流入する冷却水の温度が目標ヒータコア温度となるように圧縮機11を制御する。さらに、目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度が低い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0252】
例えば、目標前席側ヒータコア温度THOFが目標後席側ヒータコア温度THORよりも高い場合、制御装置60は、圧縮機11、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFとなるように圧縮機11を制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rによって温度調整された空調風の温度が後席側目標吹出温度TAORとなるように後席側エアミックスドア54Rを制御する。
【0253】
例えば、目標後席側ヒータコア温度THORが目標前席側ヒータコア温度THOFよりも高い場合、制御装置60は、圧縮機11、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度が目標後席側ヒータコア温度THORとなるように圧縮機11を制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rが図1の二点鎖線位置に位置して後席側ヒータコア22Rの空気通路を全開し、後席側蒸発器14Rを通過した空気の全流量が後席側ヒータコア22Rを通過するように制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風の温度が前席側目標吹出温度TAOFとなるように前席側エアミックスドア54Fを制御する。
【0254】
このように、デュアル第3除湿暖房モードでは、前席側空調ユニット50Fおよび後席側空調ユニット50Rの両方で車室内の除湿暖房を実現することができる。デュアル第3除湿暖房モードでは、第2除湿暖房モードに対して圧縮機11の回転数Ncを高くするので、デュアル第2除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rで利用できる熱量を増加させることができ、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度および後席側ヒータコア22Rの吹出空気温度を高めることができる。
【0255】
(11)デュアル第4除湿暖房モード
デュアル第4除湿暖房モードでは、デュアル第3除湿暖房モードと比較して前席側目標吹出温度TAOFおよび後席側目標吹出温度TAORのうち少なくとも一方が高温の領域で実施されるため、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度をデュアル第3除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0256】
デュアル第4除湿暖房モードでは、シングル第4除湿暖房モードに対して、第2膨張弁13Rを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にし、後席側室内送風機53Rを作動させる。
【0257】
これにより、デュアル第4除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、デュアル第3除湿暖房モードと同様に図1の破線矢印および一点鎖線矢印のように冷媒が流れ、車室内へ送風される空気が前席側蒸発器14Fにて冷却されるとともに、車室内後席側空間へ送風される空気が後席側蒸発器14Rにて冷却される。
【0258】
デュアル第4除湿暖房モードでは、制御装置60は、シングル第4除湿暖房モードと同様に三方弁26および圧縮機11を制御する。すなわち、制御装置60は、高温側ラジエータ23に冷却水が流入しないように三方弁26を制御し、圧縮機11の回転数Ncを上限回転数にする。
【0259】
したがって、デュアル第4除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0260】
デュアル第4除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに流入する冷却水の温度が目標ヒータコア温度となるように電気ヒータ25を制御する。さらに、目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度が低い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0261】
例えば、目標前席側ヒータコア温度THOFが目標後席側ヒータコア温度THORよりも高い場合、制御装置60は、電気ヒータ25、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFとなるように電気ヒータ25を制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rによって温度調整された空調風の温度が後席側目標吹出温度TAORとなるように後席側エアミックスドア54Rを制御する。
【0262】
例えば、目標後席側ヒータコア温度THORが目標前席側ヒータコア温度THOFよりも高い場合、制御装置60は、電気ヒータ25、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度THinRが目標後席側ヒータコア温度THORとなるように電気ヒータ25を制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rが図1の二点鎖線位置に位置して後席側ヒータコア22Rの空気通路を全開し、後席側蒸発器14Rを通過した空気の全流量が後席側ヒータコア22Rを通過するように制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風の温度が前席側目標吹出温度TAOFとなるように前席側エアミックスドア54Fを制御する。
【0263】
このように、デュアル第4除湿暖房モードでは、前席側空調ユニット50Fおよび後席側空調ユニット50Rの両方で車室内の除湿暖房を実現することができる。デュアル第4除湿暖房モードでは、電気ヒータ25を作動させるので、デュアル第3除湿暖房モードと比較して前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rで利用できる熱量を増加させることができ、前席側ヒータコア22Fの吹出空気温度および後席側ヒータコア22Rの吹出空気温度を高めることができる。
【0264】
(12)デュアル暖房モード
デュアル暖房モードでは、制御装置60は、シングル暖房モードと同様に、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させ、第1膨張弁13Fを閉じ、第2膨張弁13Rを閉じ、第3膨張弁13Cを、冷媒減圧作用を発揮する絞り状態にする。
【0265】
これにより、デュアル暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、シングル暖房モードと同様に図1の実線矢印のように冷媒が流れ、冷却用蒸発器14Cにて低圧冷媒に低温冷却水回路30の冷却水から吸熱させて、冷却された低温冷却水回路30の冷却水を低温側ラジエータ32に流入させることができる。これにより、低温側ラジエータ32にて外気から吸熱することができる。
【0266】
デュアル暖房モードでは、制御装置60は、シングル暖房モードと同様に三方弁26を制御する。すなわち、制御装置60は、高温側ラジエータ23に冷却水が流入しないように三方弁26を制御する。
【0267】
したがって、デュアル暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rに高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0268】
デュアル暖房モードでは、後席側室内送風機53Rを作動させるので、後席側ヒータコア22Rにおいて冷却水から空気への放熱が行われる。
【0269】
デュアル暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに流入する冷却水の温度が目標ヒータコア温度となるように圧縮機11および電気ヒータ25を制御する。さらに、目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度が低い方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0270】
例えば、目標前席側ヒータコア温度THOFが目標後席側ヒータコア温度THORよりも高い場合、制御装置60は、圧縮機11、電気ヒータ25、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFが目標前席側ヒータコア温度THOFとなるように圧縮機11および電気ヒータ25を制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fが図1の二点鎖線位置に位置して前席側ヒータコア22Fの空気通路を全開し、前席側蒸発器14Fを通過した空気の全流量が前席側ヒータコア22Fを通過するように制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rによって温度調整された空調風の温度が後席側目標吹出温度TAORとなるように後席側エアミックスドア54Rを制御する。
【0271】
例えば、目標後席側ヒータコア温度THORが目標前席側ヒータコア温度THOFよりも高い場合、制御装置60は、圧縮機11、電気ヒータ25、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御する。制御装置60は、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度が目標後席側ヒータコア温度THORとなるように圧縮機11および電気ヒータ25を制御する。制御装置60は、後席側エアミックスドア54Rが図1の二点鎖線位置に位置して後席側ヒータコア22Rの空気通路を全開し、後席側蒸発器14Rを通過した空気の全流量が後席側ヒータコア22Rを通過するように制御する。制御装置60は、前席側エアミックスドア54Fによって温度調整された空調風の温度が前席側目標吹出温度TAOFとなるように前席側エアミックスドア54Fを制御する。
【0272】
このように、デュアル暖房モードでは、前席側空調ユニット50Fおよび後席側空調ユニット50Rの両方で車室内の暖房を実現することができる。
【0273】
本実施形態では、三方弁26のラジエータ側流量調整部26aおよびヒータコア側流量調整部26bは、高温冷却水回路20の第1分岐部20aに配置されていて、冷却水の流量を任意に調整可能である。制御装置60は、三方弁26のラジエータ側流量調整部26aおよびヒータコア側流量調整部26bを制御する。
【0274】
これにより、前席側ヒータコア22F、後席側ータコア22Rおよびラジエータ23に対して冷却水の流量を適切に調整することができる。
【0275】
本実施形態では、ラジエータ側流量調整部26aおよびヒータコア側流量調整部26bは三方弁26によって構成されているので、ラジエータ側流量調整部26aおよびヒータコア側流量調整部26bが別々の流量調整弁である場合と比較して構成を簡素化できる。
【0276】
本実施形態では、前席側ヒータコア温度センサ66Fは、前席側ヒータコア22Fに流入する冷却水の温度THinFを検出し、後席側ヒータコア温度センサ66Rは、後席側ヒータコア22Rに流入する冷却水の温度THinRを検出する。これにより、前席側ヒータコア22Fの温度および後席側ヒータコア22Rの温度を適切に把握できる。
【0277】
本実施形態のシングル第1除湿暖房モードおよびシングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fの目標温度THOFが高くなるとラジエータ側流量比Rrが下がるように三方弁26を制御する。これにより、前席側ヒータコア22Fの温度を適切に制御できる。
【0278】
本実施形態のデュアル第1除湿暖房モードおよびデュアル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアの温度が目標ヒータコア温度となるように三方弁26を制御し、目標ヒータコア温度の低い方のヒータコア側の吹出空気温度が目標吹出温度となるように前席側エアミックスドア54Fおよ後席側エアミックスドア54を制御する。
【0279】
これにより、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rの両方で吹出空気温度を適切に調整できる。
【0280】
本実施形態のデュアル第3除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアの温度が目標ヒータコア温度となるように圧縮機11を制御する。
【0281】
これにより、デュアル第2除湿暖房モードにて三方弁26を制御しても目標ヒータコア温度が高い方のヒータコアでの熱交換量が不足するようなときにはデュアル第3除湿暖房モードに切り替えることによって、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rの両方で吹出空気温度を適切に調整できる。
【0282】
本実施形態のシングル第1除湿暖房モードおよびシングル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22F、後席側ヒータコア22Rおよび高温側ラジエータ23のそれぞれにおける熱媒体流量の大小関係が前席側ヒータコア22F>後席側ヒータコア22R>高温側ラジエータ23となり、かつ前席側ヒータコア22Fにおける熱媒体流量と熱交換面積との積と、後席側ヒータコア22Rにおける熱媒体流量と熱交換面積との積との和が、高温側ラジエータ23における熱媒体流量と熱交換面積との積と同一になるように三方弁26を制御するのが好ましい。
【0283】
本実施形態では、電気ヒータ25は、高温冷却水回路20のうちラジエータ側分岐部20aとヒータコア側分岐部20cとの間の冷却水流路における冷却水を加熱する。これにより、電気ヒータ25によって、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rに流入する熱媒体の温度を効率的に上昇させることができる。
【0284】
本実施形態では、流量調整オリフィス27は、高温冷却水回路20のヒータコア側分岐部20cに配置されている。これにより、前席側ヒータコア22Fと後席側ヒータコア22Rとの冷却水流量比を簡素な構成で調整できる。
【0285】
(第2実施形態)
本実施形態では、上記第1実施形態の三方弁26の代わりにラジエータ側流量調整弁28およびヒータコア側流量調整弁29が高温冷却水回路20に配置されている。
【0286】
図4に示すように、ラジエータ側流量調整弁28は、高温冷却水回路20のうちラジエータ側分岐部20aと高温側ラジエータ23との間に配置されている。ヒータコア側流量調整弁29は、高温冷却水回路20のうちラジエータ側分岐部20aとヒータコア側分岐部20cとの間に配置されている。
【0287】
ラジエータ側流量調整弁28およびヒータコア側流量調整弁29は、冷却水流路の開度を調整する電磁式流量調整弁である。ラジエータ側流量調整弁28およびヒータコア側流量調整弁29の作動は、制御装置60によって制御される。ラジエータ側流量調整弁28は第1流量調整部である。ヒータコア側流量調整弁29は第2流量調整部である。
【0288】
ラジエータ側流量調整弁28およびヒータコア側流量調整弁29によって、高温側ラジエータ23側に流入する高温冷却水回路20の冷却水とヒータコア22F、22R側に流入する高温冷却水回路20の冷却水との流量比が任意に調整される。
【0289】
図示を省略しているが、ラジエータ側流量調整弁28は、高温冷却水回路20のうち高温側ラジエータ23とラジエータ側合流部20bとの間に配置されていてもよい。
【0290】
図示を省略しているが、ヒータコア側流量調整弁29は、高温冷却水回路20のうちヒータコア側合流部20dとラジエータ側合流部20bとの間に配置されていてもよい。
【0291】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0292】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、電気ヒータ25は、高温冷却水回路20のうちラジエータ側分岐部20aとヒータコア側分岐部20cとの間に配置されている。本実施形態では、電気ヒータ25の他の配置例を示す。
【0293】
図5に示すように、電気ヒータ25は、高温冷却水回路20のうちラジエータ側合流部20bと高温側ポンプ21との間に配置されていてもよい。
【0294】
図6に示すように、電気ヒータ25は、高温冷却水回路20のうち凝縮器12とラジエータ側分岐部20aとの間に配置されていてもよい。
【0295】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0296】
(他の実施形態)
上記実施形態を適宜組み合わせ可能である。上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
【0297】
(1)上記実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。熱媒体として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。
【0298】
(2)上記実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
【0299】
また、上記実施形態の冷凍サイクル装置10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0300】
(3)高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが、共通のフィンによって互いに接合されていてもよい。
【0301】
共通のフィンは、冷却水と空気との熱交換を促進する熱交換促進部材である。共通のフィンは、金属製(例えばアルミニウム製)の部材である。
【0302】
共通のフィンは、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とを金属で結合することによって、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32へ熱を移動させる結合部である。
【0303】
これにより、第2~4除湿暖房モード後の除霜を行うことができる。第2~4除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32で低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱するので、低温側ラジエータ32の温度が氷点下になると低温側ラジエータ32に着霜が生じる。そこで、第2~4除湿暖房モードを実行した後の停車時に、高温冷却水回路20の冷却水に残った熱を利用して低温側ラジエータ32を除霜することができる。
【0304】
すなわち、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32が共通のフィンで互いに熱移動可能に接続されていることによって、高温冷却水回路20の冷却水の熱が、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32に移動する。
【0305】
これにより、低温側ラジエータ32の温度が上昇して、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0306】
(4)高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0307】
例えば、高温側ラジエータ23の冷却水タンクと低温側ラジエータ32の冷却水タンクとが互いに一体化されていることによって、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0308】
(5)高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32が共通の1つのラジエータになっていて、共通の1つのラジエータに高温冷却水回路20の冷却水と低温冷却水回路30の冷却水とが切り替え導入されるようになっていてもよい。共通の1つのラジエータに高温冷却水回路20の冷却水と低温冷却水回路30の冷却水とが任意の流量割合で導入されるようになっていてもよい。
【0309】
導入される冷却水の切り替えや流量割合の調整は、冷却水流路の開閉弁や流量調整弁によって行うことができる。
【0310】
(6)上記第1実施形態の三方弁26および上記第2実施形態のラジエータ側流量調整弁28は、冷却水流路の開度を任意に調整可能な電磁弁である。これに対して、三方弁26および上記第2実施形態のラジエータ側流量調整弁28は、冷却水流路を単純に開閉するだけの電磁弁であってもよい。その場合、ラジエータ側流量調整弁28で冷却水流路を断続的に開閉して時間平均開度を任意に調整すれば、ラジエータ側流量調整弁28によって熱媒体の流量を任意に調整できる。
【0311】
(7)デュアル第1除湿暖房モードおよびデュアル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、三方弁26、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御してもよい。
【0312】
デュアル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度と高温冷却水回路20での熱損失による水温低下量とを合算した温度が大きい方のヒータコアの温度が目標ヒータコア温度となるように三方弁26を制御する。さらに、目標ヒータコア温度と高温冷却水回路20での熱損失による水温低下量とを合算した温度が大きい方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度と高温冷却水回路20での熱損失による水温低下量とを合算した温度が小さい方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0313】
後席側ヒータコア22Rにおける高温冷却水回路20での熱損失による水温低下量は、前席側ヒータコア22Fにおける高温冷却水回路20での熱損失による水温低下量よりも大きくなる。凝縮器12から後席側ヒータコア22Rまでの冷却水流路長が凝縮器12から前席側ヒータコア22Fまでの冷却水流路長よりも長くなっているからである。
【0314】
したがって、前席側ヒータコア22Fと後席側ヒータコア22Rとでの熱損失の違いを加味して、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rの両方で吹出空気温度を適切に調整できる。
【0315】
(8)デュアル第1除湿暖房モードおよびデュアル第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、三方弁26、前席側エアミックスドア54Fおよび後席側エアミックスドア54Rを次のように制御してもよい。
【0316】
デュアル第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、前席側ヒータコア22Fおよび後席側ヒータコア22Rのうち目標ヒータコア温度と現在の冷却水温度との差が大きい方のヒータコアの温度が目標ヒータコア温度となるように三方弁26を制御する。さらに、目標ヒータコア温度と現在の冷却水温度との差が大きい方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、ヒータコアの空気通路を全開し、蒸発器を通過した空気の全流量がヒータコアを通過するように決定される。一方、目標ヒータコア温度と現在の冷却水温度との差が小さい方のヒータコアに対応するエアミックスドアのサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドアによって温度調整された空調風の温度が目標吹出温度となるように決定される。
【0317】
(9)上記第1実施形態では、ラジエータ側分岐部20aに電磁式三方弁である三方弁26が配置され、ヒータコア側分岐部20cに固定絞り(換言すれば、圧損体)である流量調整オリフィス27が配置されているが、電磁式三方弁と固定絞りの配置を逆にしてもよい。
【0318】
すなわち、ラジエータ側分岐部20aに固定絞りが配置され、ヒータコア側分岐部20cに電磁式三方弁が配置されていてもよい。
【0319】
(10)上記実施形態では、シングル冷房モード、シングル第1~4除湿暖房モード、シングル暖房モードでは、前席側空調ユニット50Fで空調を行い、後席側空調ユニット50Rでの空調を停止させるが、後席側空調ユニット50Rで空調を行い、前席側空調ユニット50Fでの空調を停止させる運転モードに切替可能になっていてもよい。その場合、後席側空調ユニット50Rでの空調制御は、シングル冷房モード、シングル第1~4除湿暖房モード、シングル暖房モードにおける前席側空調ユニット50Fの制御と同様の制御を後席側空調ユニット50Rに対して行えばよい。
【符号の説明】
【0320】
11 圧縮機
12 凝縮器(放熱部)
13F 第1膨張弁(減圧部)
13R 第2膨張弁(減圧部)
13C 第3膨張弁(減圧部)
14F 前席側蒸発器(蒸発部)
14R 後席側蒸発器(蒸発部)
14C 冷却用蒸発器(蒸発部)
20 高温冷却水回路(熱媒体回路)
22F 前席側ヒータコア(第1ヒータコア)
22R 後席側ヒータコア(第2ヒータコア)
23 高温側ラジエータ(ラジエータ)
20a ラジエータ側分岐部(第1分岐部)
20b ラジエータ側合流部20b(第1合流部)
20c ヒータコア側分岐部(第2分岐部)
20d ヒータコア側合流部20d(第2合流部)
26a 第1流量調整部
26b 第2流量調整部
60 制御装置(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6