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特許7405112線材集積コイルの分割方法及び線材コイルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】線材集積コイルの分割方法及び線材コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/26 20060101AFI20231219BHJP
   B21C 47/24 20060101ALI20231219BHJP
   B21C 47/14 20060101ALI20231219BHJP
   B65H 54/76 20060101ALI20231219BHJP
   B21F 11/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B21C47/26 C
B21C47/24 B
B21C47/14
B65H54/76 Y
B21F11/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021051642
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149465
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小齋 達也
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 和則
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-112824(JP,A)
【文献】特開昭61-042423(JP,A)
【文献】特開昭59-045029(JP,A)
【文献】実開昭57-178049(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0009763(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 45/00 - 49/00
B65H 54/76
B21F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材コイル製造ラインの上流設備からリングの径を小径および大径の間で周期的に変動させつつ搬送されてくるリング状線材をコイル集束装置で集積する際に、前記リング状線材を任意の位置で切断して集積コイルを分割する方法であって、
前記コイル集束装置は、
搬送されてきた前記リング状線材のリングを上部から通すことで前記リングの位置決めをするノーズコーンと、
前記ノーズコーンの下部に向けて昇降自在に配置されて前記下部に連結するセイルリフトと、
前記ノーズコーンの外周に向けて前進・後退自在に配置されたアイリスと、
前記アイリスの下方に配置された線材コイルを切断する切断装置と、
前記切断装置下方に配置され、前記セイルリフトに支持されて前記線材コイルを集積するコイルプレートと、を備え、
前記切断装置による切断を行う前段階では、前記アイリスを後退状態として、前記コイルプレート上に前記上流設備から送られてくる前記リング状線材を貯え、
前記切断を行う段階では、前記切断装置の位置を通過する前記リング状線材のリング径が、前記ノーズコーンの下部と前記セイルリフトの上部との連結部に干渉しないリング径の最小値以上である時に、前記アイリスを前進させて、当該アイリスの前進以降に送られてくる前記リング状線材を前記アイリスの上に貯えるとともに、前記アイリスに貯えられた前記線材コイルから垂れ下がっている部位を前記切断装置で切断し、
前記切断を行った後段階では、前記セイルリフトの下降により前記コイルプレートの上に貯えた前記リング状線材を他所に移送し、移送が完了した前記コイルプレートを前記切断装置の下方に配置するために、前記セイルリフトの上昇により前記ノーズコーンの下部と前記セイルリフトの上部とを連結する、ことを特徴とする線材集積コイルの分割方法。
【請求項2】
少なくとも前記切断を行う段階までに、前記リング径を前記許容最小リング径以上となる状態として周期的に変動させることを停止し、その後に、前記切断を行うことを特徴とする、請求項1に記載の線材集積コイルの分割方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された線材集積コイルの分割方法により、連続して製造された線材から複数の集積コイルを製造することを特徴とする線材コイルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材集積コイルの分割方法及び線材コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材コイルの製造ラインは、鉄鋼からなるビレット等の素材が圧延機で線材として圧延され、この線材が送給されてきたレイングヘッドが回転することで、コイル状に巻かれた線材が成形される。レイングヘッドで成形されたコイル状の線材は、コンベア上で展開された状態で搬送され、コンベアの終端に配置したコイル集束装置にて集積される。コイル集束装置では、コンベアから搬送されてきたコイル状の線材が、一巻毎にノーズコーンとノーズコーンの下部に連結したセイルリフトに案内されてコイルプレート上に集積されていく。以下、コイル状の線材におけるコイルの一巻分をリングと称し、コンベア上でコイル状に展開されている線材をリング状線材と称し、コイル集束装置で集積された線材を線材コイルと称して説明する。
【0003】
ここで、二次加工業者の要望などから、一つの素材で製造した線材、すなわち、連続して製造された線材を集積することにより得られる線材コイルを二分割等の任意の重量比率に分割・切断して分割線材コイルを形成する場合がある(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1は、一つの素材で単体の線材コイルを製造した後に、この線材コイルを切断して分割線材コイルを製造する。また、特許文献2は、一つの素材で線材コイルを製造している途中において、線材コイルをコイル集束装置に搬送するコンベアを一時停止し、コンベア上で線材コイルの一部を切断して分割線材コイルを製造する。しかし、特許文献1、2は、線材コイルの製造工程とは別に、線材コイルを切断して分割線材コイルを製造する工程を新たに設けなければならず、分割線材コイルの製造効率の面で問題がある。
【0005】
そこで、コイル集束装置に切断装置を配置し、切断装置の上方にアイリスを配置し、コイルプレート上に集積している線材コイルが、二分割等の任意の重量比率となった時点で、コンベアから搬送されてくる線材コイルをアイリスで一時的に貯え、アイリスから垂れ下がる線材コイルの一部を切断装置で切断することで、コイルプレート上に分割線材コイルを製造することができる。この方法によると、線材コイルの集積中に分割線材コイルを製造することができるので、分割線材コイルの製造効率を高めることができる。
【0006】
一方、コイル集束装置に集積される線材コイルのコイル高さが高いと、線材コイルの結束時に疵が発生しやすいなど線材コイルの品質に悪影響を与えてしまう。そこで、レイングヘッドでコンベア上にリング状に展開する線材のリング径を小径および大径の間で周期的に変動させる制御を行い、大きな径のリングと小さな径のリングとを周期的に交互に成形してコイル集束装置に搬送させる技術が開発されている(例えば、特許文献3)。この特許文献3の技術を採用すると、コイル集束装置に、小さな径のリングが径方向内側に重ねられ、大きな径のリングが径方向外側内側に重ねられることで、コイル高さを低くした線材コイルを集積させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る線材集積コイルの分割方法は、線材コイル製造ラインの上流設備からリングの径を小径および大径の間で周期的に変動させつつ搬送されてくるリング状線材をコイル集束装置で集積する際に、リング状線材を任意の位置で切断して集積コイルを分割する方法であって、コイル集束装置は、搬送されてきたリング状線材のリングを上部から通すことでリングの位置決めをするノーズコーンと、ノーズコーンの下部に向けて昇降自在に配置されて下部に連結するセイルリフトと、ノーズコーンの外周に向けて前進・後退自在に配置されたアイリスと、アイリスの下方に配置された線材コイルを切断する切断装置と、切断装置下方に配置され、セイルリフトに支持されて前記線材コイルを集積するコイルプレートと、を備え、切断装置による切断を行う前段階では、アイリスを後退状態として、コイルプレート上に上流設備から送られてくるリング状線材を貯え、切断を行う段階では、切断装置の位置を通過する前記リング状線材のリング径が、ノーズコーンの下部とセイルリフトの上部との連結部に干渉しないリング径の最小値以上である時に、アイリスを前進させて、当該アイリスの前進以降に送られてくるリング状線材をアイリスの上に貯えるとともに、アイリスに貯えられた線材コイルから垂れ下がっている部位を前記切断装置で切断し、切断を行った後段階では、セイルリフトの下降によりコイルプレートの上に貯えたリング状線材を他所に移送し、移送が完了した前記コイルプレートを切断装置の下方に配置するために、セイルリフトの上昇によりノーズコーンの下部とセイルリフトの上部とを連結するようにしている。
ここで、上流設備から搬送されてくるリング状の線材をリング状線材と称し、リング状線材の一巻分をリングと称し、コイルプレートで集積された線材を線材コイルと称している。
また、本発明の一態様に係る線材コイルの製造方法は、前述した本発明の一態様に係る線材集積コイルの分割方法により、連続して製造された線材から複数の集積コイルを製造する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コイル集束装置において線材コイルの集積中に製造された分割線材コイルは、コイル内径部がセイルリフトにガイドされた状態で、セイルリフトとともに一時保管場所まで移送される。分割線材コイルの移送が完了したセイルリフトは、その上端部がノーズコーンの下部に連結するために上昇移動する。
【0009】
ところで、アイリスで一時的に貯えられている線材コイルは、大きな径のリングと小さな径のリングとが交互に集積されているが、アイリスから垂れ下がっている部分が小さな径のリングを切断した部分であると、垂れ下がっている部位の先端(切断装置で切断された部位)が、ノーズコーンの下部とセイルリフトの上部との連結部に干渉するおそれがあり、作業員によるノーズコーンとセイルリフトの連結動作の監視が不可欠であった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、アイリスから垂れ下がっている線材コイルの端部がノーズコーンとセイルリフトとの連結部に干渉するのを防止することができる線材集積コイルの分割方法と、高品質の分割線材コイルを製造することができるとともに、分割線材コイルの製造効率を向上させることができる線材コイルの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る線材集積コイルの分割方法は、線材コイル製造ラインの上流設備からリングの径を小径および大径の間で周期的に変動させつつ搬送されてくるリング状線材をコイル集束装置で集積する際に、リング状線材を任意の位置で切断して集積コイルを分割する方法であって、コイル集束装置は、搬送されてきたリング状線材のリングを上部から通すことでリングの位置決めをするノーズコーンと、ノーズコーンの下部に向けて昇降自在に配置されて下部に連結するセイルリフトと、ノーズコーンの外周に向けて前進・後退自在に配置されたアイリスと、アイリスの下方に配置された線材コイルを切断する切断装置と、切断装置に下方に配置され、線材コイルを集積するコイルプレートと、を備え、切断装置による切断を行う前段階では、アイリスを後退状態として、コイルプレート上に上流設備から送られてくるリング状線材を貯え、切断を行う段階では、切断装置の位置を通過するリング状線材のリング径が予め決めてある許容最小リング径以上である時に、アイリスを前進させて、アイリスの前進以降に送られてくるリング状線材をアイリスの上に貯えるとともに、アイリスに貯えられた線材コイルから垂れ下がっている部位を切断装置で切断する。
ここで、上流設備から搬送されてくるリング状の線材をリング状線材と称し、リング状線材の一巻分をリングと称し、コイルプレートで集積された線材を線材コイルと称している。
また、本発明の一態様に係る線材コイルの製造方法は、前述した本発明の一態様に係る線材集積コイルの分割方法により、連続して製造された線材から複数の集積コイルを製造する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の線材集積コイルの分割方法によれば、アイリスから垂れ下がっている線材コイルの端部がノーズコーンとセイルリフトとの連結部に干渉するのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の線材コイルの製造方法によれば、高品質の分割線材コイルを製造することができるとともに、分割線材コイルの製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る線材コイルの製造ラインを示す図である。
図2】本発明に係るコイル集束装置の概略を示す図である。
図3】本発明に係る上流設備に配置されているレイングヘッドのレイングパイプが一定周期で回転速度が増減する状態を示すグラフである。
図4】本発明に係る切断制御部の制御を示すフローチャートである。
図5】本発明に係るコイル集束装置の線材コイルの集積中に分割線材コイルを製造する工程を示す図である。
図6】本発明に係るコイル集束装置においてノーズコーンの上方から見た平面図であり、アイリスに一時的に貯えられている線材コイルの下端側がループしながら垂れ下がっている状態を示す図である。
図7】本発明に係る切断制御部の制御の別の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「底」、「前」、「後」、「長尺方向」、「短尺方向」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0018】
本発明に係る線材集積コイルの分割方法の一実施形態、およびこの一実施形態によって実施される線材集積コイルの分割により達成できる本発明に係る線材コイルの一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の線材コイル製造ライン1は、図1に示すように、ビレット等の素材(不図示)を線材3に圧延する線材圧延機4と、線材圧延機4で圧延された線材3をコイル状(以下、この段階のものをリング状とも云う)に成形して線材コイル(以下、この段階のものをリング状の線材とも云う)とするレイングヘッド5と、レイングヘッド5で成形された線材コイル(リング状の線材の複数のリング)を搬送方向に展開して搬送していくコンベア6と、コンベア6の終端に配置され、線材の各リングを集積して線材集積コイルとするコイル集束装置7と、を備えている。また、コイル集束装置7に隣接した位置にバケット8が配置されており、コイル集束装置7で集積した線材コイルがバケット8に移送されて保管場所に搬送されるようになっている。
【0020】
線材圧延機4には、熱塊検出器9(Hot Metal Detecter:HMD9と称する)が配置されている。このHMD9の検出値の変化は上位コンピュータ10に出力されている。
【0021】
レイングヘッド5は、モータ5aの駆動で回転するレイングパイプ(不図示)を備えており、回転するレイングパイプに線材圧延機4から線材3が挿入されることで線材がリング状に成形される。モータ5aは、上位コンピュータ10からの制御指令により所定の回転速度で駆動する。
【0022】
コイル集束装置7は、図2に示すように、上部が開口しているチャンバー11と、チャンバー11内を昇降自在に立設されているとともに、チャンバー11の外に配置したバケット8まで移動可能なセイルリフト12と、チャンバー11の上部に配置され、チャンバー11内を上昇したセイルリフト12の最上部が連結するノーズコーン13と、ノーズコーン13に向けて前進・後退するアイリス14と、アイリス14の下部に配置された切断装置16と、切断装置16よりも下方の領域まで下降可能にチャンバー11内を昇降するコイルプレート15と、を備えている。ここで、ノーズコーン13の下部には、セイルリフト12の上昇時に、セイルリフト12の最上部に設けた連結凸部12aが嵌まり込む連結凹部13aが形成されている。
【0023】
切断装置16は、コイルプレート15に所定重量の線材コイルが集積されたときに、切断制御部17から切断指令が入力することで線材コイルの一部を切断し、コイルプレート15上に分割線材コイルを製造する。
【0024】
上位コンピュータ10は、レイングヘッド5のレイングパイプの回転速度が一定周期で増減するようにモータ5aに対して回転速度の制御を行っている。
【0025】
上位コンピュータ10は、例えば図3に示すように、レイングパイプの回転速度Vが、最も低い回転速度である最低回転速度Vminから最も高い回転速度である最高回転速度Vmaxに周期的に変化するように、モータ5aの回転制御を行っている。レイングヘッド5は、レイングパイプが最低回転速度Vminで回転する場合には径が最大径Rmaxである大径リングCdを成形し、最高回転速度Vmaxで回転する場合には径が最小径Rminである小径リングCsを成形する。
【0026】
このように、レイングパイプの回転速度が一定周期で増減することで、図1に示すように、レイングヘッド5は、コンベア上に展開されるリング状線材の複数のリングについて、その径が最大径Rmax~最小径Rminの間で周期的に変動するように、リング状の線材を成形してコンベア6に搬送している。
【0027】
また、切断制御部17は、上位コンピュータ10からの演算情報に基づいて、切断装置16に切断指令を出力する。
【0028】
上位コンピュータ10は、HMD9の検出値の変化に基づいて線材3の先端位置の制御情報が入力し、線材圧延機4の送り速度、レイングヘッド5のモータ5aの回転速度及びコンベア6の搬送速度の制御情報が入力するとともに、予め素材の材料の制御情報が記憶されている。そして、上位コンピュータ10は、コイルプレート15上に製造する分割線材コイルの重量(設定重量Wcと称する)を切断制御部17に出力する。
【0029】
また、上位コンピュータ10は、上述した制御情報に基づいて、コイル集束装置7のコイルプレート15上に集積される線材コイルの重量(現在重量Wnと称する)を演算するとともに、切断装置16に切断される位置(図2に示す切断位置St)を通過するリングの径が許容最小リング径Ra以上である否かを判定する。
【0030】
次に、切断制御部17が行う切断制御処理を、図4で示すフローチャートで示す。
【0031】
切断制御部17は、先ず、ステップST1において、コイルプレート15上に集積される線材コイルの現在重量Wnが、分割線材コイルの設定重量Wcであるか否かを判断する。
【0032】
ステップST1において現在重量Wnが分割線材コイルの設定重量Wcを下回る場合には、ステップST1による判定を繰り返す。
【0033】
また、ステップST1において現在重量Wnが分割線材コイルの設定重量Wc以上の場合には、ステップST2に移行する。
【0034】
ステップST2では、切断装置16のある位置である切断位置Stを通過するリングの径が許容最小リング径Ra以上である否かを判定する。許容最小リング径Raは、切断後の線材がノーズコーンの下部とセイルリフトの上部との連結部に干渉しないリング径の最小値として、操業実績から予め求めておく。本実施形態においては、許容最小リング径は、最大リング径Rmaxと同じ値としている。
【0035】
ステップST2において切断位置Stに許容最小リング径Ra以上の径のリングが通過している場合、すなわち、ここでは大径リングCdが通過している場合には、ステップST3に移行する。
【0036】
また、ステップST2において切断位置Stに大径リングCdが通過していない場合には、ステップST2による判定を繰り返す。
なお、ステップST2における大径リングCdが通過したか否かの判定については、例えば、レイングヘッド5が大径のリングに成形するように最小回転速度で回転した時刻からの経過時間で判断することができる。レイングヘッド5が成形したリングが、切断位置Stまで搬送される時間を、コンベア6の搬送速度とレイングヘッド5からコイル集束装置7までの距離、さらには、コイル集束装置7の上部から切断位置Stまでの落下時間とから計算して予め求めておき、レイングヘッド5が最小回転速度で回転していた時刻から、この時間経過したか否かで判定すればよい。この他、切断位置Stにリング径を計測できるセンサを設けておき、切断位置Stにおけるリング径の実測値に基づいて、判断するようにしてもよい。
【0037】
ステップST3では、アイリス14に前進指令を出力する。
【0038】
次いで、ステップST3の後に移行するステップST4では、切断装置16に切断指令を出力する。
【0039】
上述した切断制御部17が行う切断制御処理は、コイル集束装置7にリング状の線材が集積されている間、繰り返し実行される。
【0040】
次に、コイル集束装置7において複数に分割した線材コイルを製造する動作について、図5から図6を参照して説明する。なお、本実施形態では、ビレット等の一つの素材から2つの分割線材コイルCV1、CV2を製造するものとする。
【0041】
レイングヘッド5で大径リングCd及び小径リングCsが一定周期で交互に成形されてコンベア6からコイル集束装置7に搬送されてくる。
【0042】
図5(a)に示すように、大径リングCd、小径リングCs、大径ングCd及び小径リングの間の径であるリング(図示を省略)は、ノーズコーン13を通過して位置決めされ、コイル内径部がセイルリフト12に案内されながら最上部まで上昇したコイルプレート15上に集積されていく。この段階は、後述する切断の前段階であり、アイリス14を後退状態としておき、下方に位置するコイルプレート15へとリングが落ち込んでいくようにしておく。ここで、コイルプレート15上に集積されたものを線材コイルCと称する。
【0043】
切断制御部17は、コイルプレート15上に集積されている線材コイルCの現在重量Wnが設定重量Wcに達し、且つ、切断位置Stに大径リングCdが通過するときに、アイリス14に対して前進指令を出力する。
【0044】
図5(b)に示すように、アイリス14が前進することで、コンベア6から引き続き搬送されてくる各リングは、アイリス14上に一時的に貯えられていく。
【0045】
そして、切断制御部17からの切断指令により切断装置16が大径リングCdを切断することで、コイルプレート15上に第1分割線材コイルCV1が製造され、アイリス14には、これから集積する第2分割線材コイルCV2が貯えられる。
【0046】
第1分割線材コイルCV1は、小径リングCsが径方向内側に位置し、大径リングCdが径方向外側に位置して重ねられているので、コイル高さHを低くしてコイルプレート15上に集積される。
【0047】
アイリス14上に一時的に貯えられている第2分割線材コイルCV2は、その下端側がループしながら垂れ下がっている。ここで、切断装置16が大径線材コイルCdを切断したことで、第2分割線材コイルCV2の下端側は大きな曲率でループしながら垂れ下がり、第2分割線材コイルCV2のコイル下端Cxは、図6に示すように、ノーズコーン13の外周側、すなわち、ノーズコーン13の連結凹部13aから離間した位置となる。
【0048】
図5(c)に示すように、セイルリフト12が下降してノーズコーン13との連結を解除し、チャンバー11の外に配置されているバケット8側に移動することで、コイルプレート15に製造された第1分割線材コイルCV1がバケット8に移送される。
【0049】
図5(d)に示すように、バケット8への第1分割線材コイルCV1の移送が完了したセイルリフト12は、チャンバー11内に移動して上昇し、最上部に設けた連結凸部12aがノーズコーン13の連結凹部13aに嵌まり込むことで元の位置に戻る。
【0050】
次いで、図示しないが、コイルプレート15が最上部まで上昇した時点で、切断制御部17がアイリス14に対して後進指令を出力する。アイリス14が後進することで、一時的に貯えられていた第2分割線材コイルCV2がコイルプレート15上に集積されていく。
【0051】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0052】
図5(d)及び図6に示すように、アイリス14上に一時的に貯えられている第2分割線材コイルCV2は、その下端側がループしながら垂れ下がっているが、この部分は、大径リングCdが切断されたことで大きな曲率でループしながら垂れ下がり、コイル下端Cxは、ノーズコーン13の連結凹部13aから離間したノーズコーン13の外周側に位置する。このため、図5(d)に示すように、バケット8への第1分割線材コイルCV1の移送が完了したセイルリフト12がチャンバー11内に移動して上昇し、セイルリフト12の連結凸部12aがノーズコーン13の連結凹部13aに連結する際に、コイル下端Cxが干渉するおそれがない。したがって、セイルリフト12及びノーズコーン13の連結の際の作業員の監視を不要とすることができる。
【0053】
また、本実施形態は、コイル集束装置で線材コイルCを集積している最中に、第1及び第2分割線材コイルCV1、CV2を製造しているので、分割線材コイルの製造効率を大幅に向上させることができる。
【0054】
さらに、レイングヘッド5は、大径リングCd及び小径リングCsを交互に成形してコンベア6に搬送しているので、集積される第2分割線材コイルCV1、CV2は、小径リングCsが径方向内側に位置し、大径リングCdが径方向外側に位置して重ねられてコイル高さを低くして集積され、結束時に疵が発生しにくいやすい高品質の分割線材コイルを製造することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、許容最小リング径Raを最大径Rmaxと同じ値としているが、必ずしも許容最小リング径Raを最大径Rmaxと等しい値である必要はない。許容最小リング径Raは、切断後の線材がノーズコーンの下部とセイルリフトの上部との連結部に干渉しない最低限のリング径として、予め操業経験や実験により求めておいた値であればよい。但し、許容最小径が最小径Rminより小さい場合は、本発明を適用する必要性はないということなので、許容最小径Raは最小径Rminよりも大きい値である場合に本発明を適用することが望ましい。
また、本実施形態では、一つの素材から2つの分割線材コイルCV1、CV2を製造するものとして説明したが、一つの素材から3以上の分割線材コイルを製造する場合にも、同様の効果を奏することができる。
【0056】
次に、本発明の別の実施形態に係る線材集積コイルの分割方法について説明する。本実施態様においては、用いられる線材コイル製造ラインは、図1に示した線材コイル製造ライン1と同様であり、また、用いられるコイル集束装置も、図2に示したコイル集束装置7と同様であるため、用いられる設備の詳細は省略する。
【0057】
この別の実施形態においては、切断制御部17の制御フローが図4を用いて前述した一実施形態における制御フローとは異なる。別の実施形態における制御フローを図7に示す。
【0058】
切断制御部17は、先ず、ステップST10において、コイルプレート15上に集積される線材コイルの現在重量Wnが、分割線材コイルの設定重量Wcであるか否かを判断する。
【0059】
ステップST10において現在重量Wnが分割線材コイルの設定重量Wcを下回る場合には、ステップST10による判定を繰り返す。
【0060】
また、ステップST10において現在重量Wnが分割線材コイルの設定重量Wc以上の場合には、ステップST11に移行する。
【0061】
ステップST11では、上位コンピュータ10に、リング径の変動制御の停止指令を送る。変動停止指令が入力された上位コンピュータ10は、モータ5aの回転速度をレイングパイプの回転速度が最低回転速度Vminとなるように調整し、この状態を継続する。レイングパイプの回転速度が最低回転速度Vminで維持されることにより、大径リングCdを成形する状態が継続されることとなる。
【0062】
ステップST20では、切断位置Stに径が許容最小リング径Ra以上であるリングが通過しているか否かを判定する。本実施形態においても、許容最小リング径Raは最大リング径Rmaxと同じ値としてあり、すなわち、切断位置Stを大径リングCdが通過しているかどうかの判定を行っていることになる。ステップST20で、切断位置Stに大径リングCdが通過していないと判定した場合はST20を繰り返し、ステップST20で、切断位置Stに大径リングCdが通過したと判定した時点で、ステップST30に移行する。なお、ステップST20における大径リングCdが通過したか否かの判定については、例えば、ステップST11でリング径の変動制御の停止指令を出してから、該指令が出た後の経過時間で判定することができる。ステップST11でリング径の変動制御の停止指令を出してからレイングヘッド5が成形したリングが、切断位置Stまで搬送される時間を、コンベア6の搬送速度とレイングヘッド5からコイル集束装置7までの距離、さらには、コイル集束装置7の上部から切断位置Stまでの落下時間とから計算して予め求めておき、ステップST11でリング径の変動制御の停止指令を出してから、この時間あるいはこの時間に余裕時間を足した時間を経過したか否かで判定すればよい。
【0063】
以上のステップST11の処理により、少なくとも切断を行う段階までに、リング径を許容最小リング径Ra以上となる状態とすることができる。
【0064】
ステップST30では、アイリス14に前進指令を出力する。
【0065】
次いで、ステップST30の後に移行するステップST40では、切断装置16に切断指令を出力する。
【0066】
次いで、ステップST40の後に移行するステップST41では、上位コンピュータにリングの変動制御の開始指令を送り、後続してレイングヘッド5により成形されるリングのリング径が周期的に変動するようにする。
【0067】
図4に示した制御フローでは、レイングヘッド5がリング径の変動制御を行っている状態を継続しつつ、切断を行うようにしている。このため、切断を行う時点においても、切断位置Stを通過するリング状の線材のリング径は刻々と変化している。レイングヘッド5を通過してから切断位置Stを通過するまでの時間の把握が正確にできれば、あるいは、切断位置に設けたリング径検出センサ等で切断位置Stを通過するリング状線材のリング径を正確に検知できれば、図4の制御フローにおけるステップST2において精度よくリング径が最大径であることを判定でき、リング径が最大径であるリング状線材を切断することができる。しかし、レイングヘッド5を通過してから切断位置Stを通過するまでの時間にばらつきがあったり、精度のよいリング径検出センサを設けることが困難である場合は、図7に示した制御フローのように、レイングヘッド5によるリング径の変動制御を、リング径が最大となる状態で停止(ステップST11)した後に、切断を行うようにすれば、確実にリング径が最大のリング状線材を切断することができる。
【0068】
なお、図7に示した制御フローを用いる実施形態においても、必ずしも許容最小リング径Raは最大径Rmaxと等しい値である必要はない。許容最小リング径Raは、切断後の線材がノーズコーンの下部とセイルリフトの上部との連結部に干渉しない最低限のリング径として、予め操業経験や実験により求めておいた値であればよい。但し、許容最小径が最小径Rminより小さい場合は、本発明を適用する必要性はないということなので、許容最小径Raは最小径Rminよりも大きい値である場合に本発明を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 線材コイル製造ライン
3 線材
4 線材圧延機
5 レイングヘッド
5a モータ
6 コンベア
7 コイル集束装置
8 バケット
9 熱塊検出器
10 上位コンピュータ
11 チャンバー
12 セイルリフト
12a 連結凸部
13 ノーズコーン
13a 連結凹部
14 アイリス
15 コイルプレート
16 切断装置
17 切断制御部
Cd 大径線材コイル
Cs 小径線材コイル
Cx コイル下端
Wc 分割線材コイルの設定重量
Wn 現在重量
St 切断位置
C 線材コイル
CV1 第1分割線材コイル
CV2 第2分割線材コイル


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7