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特許7405114電力供給システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電力供給システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/043 20160101AFI20231219BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20231219BHJP
   H02J 9/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M8/043
H01M8/00 A
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04664
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/04955
H01M8/04228
H02J9/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021058226
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154949
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177576(JP,A)
【文献】特開2006-344488(JP,A)
【文献】特開2002-83622(JP,A)
【文献】特開2009-87808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
H02J 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び酸素を反応させて発電し、電気負荷に電力を供給可能な発電装置と、
水素を貯蔵し、前記発電装置に水素を供給する水素貯蔵部と、
前記発電装置と並列に接続され、外部電源から電力を受けて充電可能であり、電気負荷に電力を供給可能な蓄電装置と、
前記発電装置の温度を検出する温度検出器と、
前記水素貯蔵部の内部の圧力を検出する圧力検出器と、
前記発電装置が前記電気負荷に供給する電力を制御する制御部とを備え、前記外部電源の電力低下あるいは喪失時に電力を供給する電力供給システムであって、
前記制御部は、
前記温度検出器で検出される温度が第1温度閾値未満の場合における前記発電装置が供給する電力の上限値を、前記温度検出器で検出される温度が前記第1温度閾値以上の場合における前記電力の上限値よりも高い値に設定し、
前記圧力検出器にて第1圧力閾値以上の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を高くし、
前記圧力検出器にて前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値以下の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を低くする
電力供給システム。
【請求項2】
前記発電装置の出力電圧を検出する電圧検出器をさらに備え、
前記制御部は、
前記圧力検出器で検出される圧力が前記第1圧力閾値以上、且つ、前記電圧検出器で検出される出力電圧が第1電圧閾値以上の場合に、前記発電装置が供給する電力の設定値を高くし、
前記圧力検出器で検出される圧力が前記第2圧力閾値以下、または前記電圧検出器で検出される出力電圧が、前記第1電圧閾値よりも小さい第2電圧閾値以下の場合に、前記発電装置が供給する電力の設定値を低くする
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記発電装置の出力電流を検出する電流検出器をさらに備え、
前記制御部は、
前記圧力検出器で検出される圧力が前記第1圧力閾値以上、且つ、前記電流検出器で検出される出力電流が第1電流閾値以下の場合に、前記発電装置が供給する電力の設定値を高くし、
前記圧力検出器で検出される圧力が前記第2圧力閾値以下、または前記電流検出器で検出される出力電流が、前記第1電流閾値より大きい第2電流閾値以上の場合に、前記発電装置が供給する電力の設定値を低くする
請求項1または2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記電力の設定値を低下させる場合の変化量が、前記電力の設定値を増加させる場合の変化量より大きい
請求項1から3のいずれか一つに記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記水素貯蔵部は第1水素ボンベと第2水素ボンベを備え、
前記制御部は、前記圧力検出器で検出される前記第1水素ボンベの圧力が、前記第2圧力閾値よりも低い第3圧力閾値以下の場合、前記第1水素ボンベから前記発電装置への水素の供給から、前記第2水素ボンベから前記発電装置への水素の供給に変更する
請求項1から4いずれか一つに記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記温度検出器で検出される温度が、前記第1温度閾値よりも大きい第2温度閾値以上の場合に、前記発電装置での発電を停止させる
請求項1から5のいずれか一つに記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記蓄電装置が放電を開始してから所定時間経過後、または前記蓄電装置の放電能力が所定値以下となった場合に前記発電装置の発電を開始させる
請求項1から6のいずれか一つに記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記発電装置が供給する電力の設定値を増加させる場合、予め設定される増加率で設定値を高くし、
前記発電装置が供給する電力の設定値を低下させる場合、予め設定される低下率で設定値を低くし、
前記増加率は、所定時間毎に、出力電力を所定の増加量で増加させる割合であり、
前記低下率は、所定時間毎に、出力電力を所定の低下量で低下させる割合である
請求項1から7のいずれか一つに記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記外部電源の駆動時に、前記外部電源から前記電気負荷に電力を供給させ且つ前記蓄電装置に充電させ、
前記外部電源の停止時に、前記蓄電装置から前記電気負荷に電力を供給させ、
前記蓄電装置による電力供給開始後、所定時間が経過した場合、または前記蓄電装置による電力供給開始後、前記蓄電装置の放電能力が所定値以下となった場合、前記発電装置から前記電気負荷に電力を供給させる
請求項1から8のいずれか一つに記載の電力供給システム。
【請求項10】
水素及び酸素を反応させて発電する発電装置が電気負荷に供給する電力を制御する制御部にて実行可能なコンピュータプログラムであって、
前記制御部に、
前記発電装置の温度が温度閾値未満の場合における前記発電装置が供給する電力の上限値を、前記発電装置の温度が前記温度閾値以上の場合における前記電力の上限値よりも高い値に設定し、
水素貯蔵部の内部の圧力を検出する圧力検出器にて、第1圧力閾値以上の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を高くし、前記圧力検出器にて前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値以下の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を低くする
処理を実行させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、水素及び酸素を反応させて発電する発電装置と蓄電装置とを備える電力供給システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池と、燃料電池と並列に接続される蓄電装置と、燃料電池の内部の温度を検出する温度検出器と、燃料電池の内部の圧力を検出する圧力検出器と、燃料電池と蓄電装置との電気負荷への出力電力の配分を決定する制御部とを備える電力供給システムが提案されている。制御部は、温度検出器で検出される燃料電池の温度によって、燃料電池の出電力の上限値を変更し、圧力検出器で検出される燃料電池の圧力によって、燃料電池の出力電力の下限値を変更する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4986932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池には、例えば水素タンクが接続される。上記電力供給システムは、燃料電池の温度又は圧力に基づき、燃料電池の発電を制御しているが、水素タンクの水素量を考慮していない。そのため、水素タンク内の水素が減少し、水素タンクの交換が必要な状態になっても、燃料電池が発電を続け、その結果、燃料電池による発電が異常停止するおそれがある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池による発電の異常停止を防止し、水素タンクから水素を可能な限り取り出し、電気負荷への電力供給時間を長くすることができる電力供給システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、水素及び酸素を反応させて発電し、電気負荷に電力を供給可能な発電装置と、水素を貯蔵し、前記発電装置に水素を供給する水素貯蔵部と、前記発電装置と並列に接続され、外部電源から電力を受けて充電可能であり、電気負荷に電力を供給可能な蓄電装置と、前記発電装置の温度を検出する温度検出器と、前記水素貯蔵部の内部の圧力を検出する圧力検出器と、前記発電装置が前記電気負荷に供給する電力を制御する制御部とを備え、前記外部電源の電力低下あるいは喪失時に電力を供給する電力供給システムであって、前記制御部は、前記温度検出器で検出される温度が第1温度閾値未満の場合における前記発電装置が供給する電力の上限値を、前記温度検出器で検出される温度が前記第1温度閾値以上の場合における前記電力の上限値よりも高い値に設定し、前記圧力検出器にて第1圧力閾値以上の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を高くし、前記圧力検出器にて前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値以下の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を低くする。
【0007】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、水素及び酸素を反応させて発電する発電装置が電気負荷に供給する電力を制御する制御部にて実行可能なコンピュータプログラムであって、前記制御部に、前記発電装置の温度が温度閾値未満の場合における前記発電装置が供給する電力の上限値を、前記発電装置の温度が前記温度閾値以上の場合における前記電力の上限値よりも高い値に設定し、水素貯蔵部の内部の圧力を検出する圧力検出器にて、第1圧力閾値以上の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を高くし、前記圧力検出器にて前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値以下の圧力が検出された場合、前記発電装置が供給する電力の設定値を低くする処理を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムにあっては、発電装置は、出力電力の設定値を水素貯蔵部の圧力によって変更するため、燃料電池による発電の異常停止を防止することができる。また水素貯蔵部から可能な限り水素を取り出し、電力供給システムは、電気負荷に電力を可能な限り長時間供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スイッチが開いた状態の電力供給システムのブロック図である。
図2】スイッチが閉じた状態の電力供給システムのブロック図である。
図3】スタックの内部温度及び収納庫内の温度と、発電装置の出力電力の上限値との関係を示す表の一例である。
図4】第1水素ボンベ又は第2水素ボンベの1次圧力、発電装置の出力電圧、及びスタックの出力電流と、DC/DCコンバータの出力電力の設定値との関係を示す表の一例である。
図5】第2制御装置による発電装置の出力電力の上限値及びDC/DCコンバータの出力電力を設定する処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を電力供給システムに係る図面に基づいて説明する。図1は、スイッチが開いた状態の電力供給システムのブロック図である。電力供給システムは、外部電源1と、蓄電装置2と、発電装置6とを備える。外部電源1は交流電源である。蓄電装置2はAC/DCコンバータ3と、蓄電池4と、第1制御装置5とを備える。第1制御装置5は、CPU、RAM、及び記憶部等を有し、記憶部に記憶した蓄電装置2の制御プログラムをRAMに読み出して実行する。記憶部は、例えばEPROM、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリである。
【0011】
外部電源1はAC/DCコンバータ3に接続され、AC/DCコンバータ3は交流電圧を直流電圧に変換し、電気負荷20に電力を供給する。AC/DCコンバータ3は蓄電池4に電力を供給する。第1制御装置5は蓄電池4の残容量を検出する。第1制御装置5は、例えばクーロン・カウンタ方式の残容量ICを使用して、蓄電池4の残容量を検出する。第1制御装置5は、AC/DCコンバータ3から電気負荷20への電力供給の有無を検出する。
【0012】
発電装置6は、スタック7と、第1温度検出器8と、電圧/電流検出器9と、DC/DCコンバータ10と、内部電源11と、スイッチ12と、第2温度検出器13と、第2制御装置14と、電力検出器22とを備える。第2制御装置14は、CPU、RAM、及び記憶部等を有し、記憶部に記憶した発電装置6の制御プログラムをRAMに読み出して実行する。記憶部は、例えばEPROM、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリである。制御プログラムは、例えば記録媒体21から記憶部にインストールされ、又はネットワークを介してサーバから記憶部にダウンロードされる。
【0013】
スタック7は水素及び酸素により発電する燃料電池である。スタック7はDC/DCコンバータ10に接続され、DC/DCコンバータ10はスイッチ12及び電力検出器22を介して電気負荷20に電力を供給する。電力検出器22はスイッチ12と電気負荷20の間に設けられている。電力検出器22は発電装置6の出力電力を検出する。第1温度検出器8はスタック7の温度を検出する。電圧/電流検出器9は、スタック7とDC/DCコンバータ10との間に設けられ、スタック7の出力電圧及び出力電流を検出する。内部電源11は第2制御装置14に電力を供給する。AC/DCコンバータ3は内部電源11に電力を供給する。DC/DCコンバータ10、内部電源11及びスイッチ12は、収納庫19に収納されている。第2温度検出器13は収納庫19内の温度を検出する。
【0014】
スタック7には水素貯蔵部15から水素が供給される。水素貯蔵部15は、第1水素ボンベ16及び第2水素ボンベ17を備える。圧力検出器18によって、第1水素ボンベ16及び第2水素ボンベ17の内部の圧力が検出される。初期状態において、第1水素ボンベ16から水素が供給される。
【0015】
外部電源1が駆動している場合、外部電源1から電気負荷20に電力が供給され、更に、蓄電池4及び内部電源11に電力が供給される。蓄電池4は定電流定電圧充電方式で充電される。外部電源1が停止した場合、即ち停電した場合、蓄電池4から電気負荷20に電力が供給され、更に、内部電源11に電力が供給される。すなわち、電力供給システムは無停電電源装置として機能する。
【0016】
図2は、スイッチ12が閉じた状態の電力供給システムのブロック図である。外部電源1の停止後、かつ所定時間が経過した場合、又は、外部電源1の停止後、かつ蓄電池4の残容量が所定の閾値以下である場合、第1制御装置5は、第2制御装置14にスイッチ12を閉じる閉指令を送信する。所定時間とは、停電後の蓄電池4からの給電時間であって、予め設定された時間である。なお、第1制御装置5はタイマを備え、AC/DCコンバータ3から電気負荷20への電力供給が無いことを検出した後、即ち外部電源1の停止後、停止してからの経過時間を計測する。閉指令を受信した第2制御装置14はスイッチ12を閉じる。スタック7から電気負荷20に電力が供給され、更に内部電源11に電力が供給される。つまり、外部電源1が停止すると無瞬断で蓄電池4から給電が行われ、その後に燃料電池のスタック7の給電が開始される。
【0017】
スイッチ12が閉じた後、第2制御装置14は、第1温度検出器8及び第2温度検出器13の検出結果に基づいて、発電装置6の出力電力の上限値を設定する。第2制御装置14は、設定された出力電力の上限値を超過しないように、発電装置6の発電量を制御する。スイッチ12が閉じてからのスタック7の発電初期時において、発電電力が安定しない場合であっても、不足する電力は、蓄電池4から電気負荷20に供給される。したがって、電気負荷20への供給電力が不安定になることはない。第2制御装置14は、発電装置6の出力電力の下限値を設定する。下限値は、発電装置6から内部電源11に電力が供給できる最低値である。すなわち、発電装置6の出力電力が下限値を下回ると、内部電源11に電力が供給できなくなる。
【0018】
図3は、スタック7の内部温度及び収納庫19内の温度と、発電装置6の出力電力の上限値との関係を示す表の一例である。図3の表は第2制御装置14の記憶部に記憶されている。図3において、Taは第1温度検出器8の検出結果、即ちスタック7の内部温度を示し、Tbは第2温度検出器13の検出結果、即ち収納庫19内の温度を示す。T1~T4は、スタック7の内部温度Taに対する温度閾値を示し、T1<T2<T3<T4である。T5~T8は、収納庫19内の温度Tbに対する温度閾値を示し、T5<T6<T7<T8である。A1~A4は、発電装置6の出力電力の上限値を示し、A1>A2>A3>A4である。温度の単位は℃である。
【0019】
温度Taが温度閾値T1未満であり、且つ温度Tbが温度閾値T5未満である場合、第2制御装置14はA1を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。温度Taが上昇し、温度Taが温度閾値T1以上となるか、又は温度Tbが上昇し、温度Tbが温度閾値T5以上となった場合、第2制御装置14はA2を発電装置6の出力電力における上限値として設定する。
【0020】
温度Taが上昇し、温度Taが温度閾値T2以上となるか、又は温度Tbが上昇し、温度Tbが温度閾値T6以上となった場合、第2制御装置14はA3を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。温度Taが上昇し、温度Taが温度閾値T3以上となるか、又は温度Tbが上昇し、温度Tbが温度閾値T7以上となった場合、第2制御装置14はA4を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。
【0021】
温度Taが上昇し、温度Taが温度閾値T4以上となるか、又は温度Tbが上昇し、温度Tbが温度閾値T8以上となった場合、第2制御装置14はスタック7を停止させて、警告を出力させる。温度閾値T1、T2、T3と、温度閾値T5、T6、T7とは第1温度閾値である。温度閾値T4及びT8は第2温度閾値である。
【0022】
温度閾値T1~T4には所定の大きさの不感帯が設けられている。例えば、3℃の幅の不感帯が設けられている。なお温度閾値T1とT2の差分、T2とT3の差分、T3とT4の差分は、いずれも3℃以上である。そのため、温度Taが温度T4以上から温度T4-3℃以下になったとき、停止が解除され、第2制御装置14はA4を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。温度Taが温度T3以上から温度T3-3℃以下になったとき、第2制御装置14はA3を発電装置6の出力電力の上限値として設定し、温度Taが温度T2以上から温度T2-3℃以下になったとき、第2制御装置14はA2を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。
【0023】
温度閾値T5~T8には所定の大きさの不感帯が設けられている。例えば、3℃の幅の不感帯が設けられている。なお温度閾値T5とT6の差分、T6とT7の差分、T7とT8の差分は、いずれも3℃以上である。そのため、温度Tbが温度T8以上から温度T8-3℃以下になったとき、停止が解除され、第2制御装置14はA4を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。温度Tbが温度T7以上から温度T7-3℃以下になったとき、第2制御装置14はA3を発電装置6の出力電力の上限値として設定し、温度Taが温度T6以上から温度T6-3℃以下になったとき、第2制御装置14はA2を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。
【0024】
温度Taが温度T1以上から温度T1-3℃以下になったとき、且つ、温度Tbが温度T5以上から温度T5-3℃以下になったとき、第2制御装置14はA1を発電装置6の出力電力の上限値として設定する。
【0025】
スイッチ12が閉じた後であって、現在の発電装置6の出力電力が、設定された前記出力電力の上限値と許容値(不感帯)との加算値を超えない場合に、第2制御装置14は、圧力検出器18及び電圧/電流検出器9の検出結果に基づいて、DC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を設定する。DC/DCコンバータ10は、設定値の電力を出力する。
【0026】
図4は、第1水素ボンベ16又は第2水素ボンベ17の1次圧力、発電装置6の出力電圧、及びスタック7の出力電流と、DC/DCコンバータ10の出力電力の設定値との関係を示す表の一例である。図4の表は第2制御装置14の記憶部に記憶されている。図4において、Pは圧力検出器18の検出結果、即ち使用中の第1水素ボンベ16又は第2水素ボンベ17の1次圧力(以下、単に水素の1次圧力という)を示し、Vは電圧/電流検出器9にて検出された電圧、即ちスタック7の出力電圧を示し、Iは電圧/電流検出器9にて検出された電流、即ちスタック7の出力電流を示す。圧力の単位はパスカルであり、電圧の単位はボルトであり、電流の単位はアンペアである。
【0027】
P1及びP2は水素の1次圧力Pに対する圧力閾値を示し、P1>P2である。P1は第1圧力閾値であり、P2は第2圧力閾値である。V1及びV2はスタック7の出力電圧Vに対する電圧閾値を示し、V1>V2である。V1は第1電圧閾値であり、V2は第2電圧閾値である。I1及びI2はスタック7の出力電流Iに対する電流閾値を示し、I1<I2である。I1は第1電流閾値であり、I2は第2電流閾値である。
【0028】
水素の1次圧力Pが第1圧力閾値P1以上であり、且つスタック7の出力電圧Vが第1電圧閾値V1以上であり、且つスタック7の出力電流Iが第1電流閾値I1以下である場合、第2制御装置14は、DC/DCコンバータ10の出力電力における現在設定された設定値から5W加算した値を、新たな設定値として設定する。なおDC/DCコンバータ10の出力電力の設定値は、設定された発電装置6の出力電力の上限値を超えないように、設定される。
【0029】
水素の1次圧力Pが第2圧力閾値P2を超過し、第1圧力閾値P1未満であるか、又はスタック7の出力電圧Vが第2電圧閾値V2を超過し、第1電圧閾値V1未満であるか、又はスタック7の出力電流Iが第1電流閾値I1を超過し、第2電流閾値I2未満である場合、第2制御装置14は、DC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を変更せず、維持する。
【0030】
水素の1次圧力Pが第2圧力閾値P2以下であるか、又はスタック7の出力電圧Vが第2電圧閾値V2以下であるか、又はスタック7の出力電流Iが第2電流閾値I2以上である場合、第2制御装置14は、DC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を、現在の設定値に10W減算した値にする。なおDC/DCコンバータ10の出力電力には最低値が設定されており、減算後の設定値が最低値以下となる場合、設定値は最低値となる。DC/DCコンバータ10の出力電力を設定する処理はリアルタイム処理であり、所定時間が経過する都度、実行される。
【0031】
なお。第2制御装置14は圧力検出器18から検出結果を取り込み、第1水素ボンベ16の圧力が第3圧力閾値P3以下である場合、スタック7への水素供給源を第1水素ボンベ16から第2水素ボンベ17に切り替える。第3圧力閾値P3は第2圧力閾値P2よりも低い。
【0032】
図5は、第2制御装置14による発電装置6の出力電力の上限値及びDC/DCコンバータ10の出力電力を設定する処理を説明するフローチャートである。第2制御装置14は、第1制御装置5がスイッチ12を閉じた後に以下の処理を実行する。
【0033】
第2制御装置14は、第1温度検出器8及び第2温度検出器13の検出結果を取得し(S1)、取得した温度Ta、Tbに基づいて、発電装置6の出力電力の上限値を設定する(S2、図3参照)。なお第2制御装置14はタイマを有し、ステップS1の処理を開始してからの経過時間を測定する。第2制御装置14は、電力検出器22の検出結果を取得し、発電装置6の現在の出力電力が、設定された出力電力の上限値と許容値との加算値よりも大きいか否か判定する(S3)。
【0034】
発電装置6の現在の出力電力が前記加算値よりも大きい場合(S3:YES)、即ち、発電装置6の現在の出力電力が過大である場合、第2制御装置14は、DC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を、現在の設定値から減算した値に設定する(S4)。具体的には、第2制御装置14は、発電装置6の現在の出力電力と設定された出力電力の上限値との差分を演算し、DC/DCコンバータ10の出力電力における現在の設定値から前記差分を減算した値を新たな設定値にする。
【0035】
第2制御装置14はステップS1の処理を開始してから所定時間、例えば2秒が経過したか否か判定する(S5)。所定時間が経過していない場合(S5:NO)、第2制御装置14はステップS5に処理を戻す。所定時間が経過した場合(S5:YES)、第2制御装置14はタイマをリセットし、ステップS1に処理を戻す。第2制御装置14は、所定時間毎に所定量の出力電力を増減させることができる。第2制御装置14は、予め設定される増加率、例えば2秒毎に5W増加させる割合でDC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を増加させるか、又は、予め設定される低下率、例えば2秒毎に10W減少させる割合でDC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を減少させる。なお、前記増加率と前記低下率の値はこの実施形態における一例である。低下率と増加率は変化速度で比べたときに低下率が増加率よりも早く変化するように予め設定してある。これは、出力電力の過剰な供給を早急に是正するためである。その必要がない場合には低下率の変化速度と増加率の変化速度とは同じ値に設定することも可能である。
【0036】
ステップS3において、発電装置6の現在の出力電力が前記加算値よりも大きくない場合(S3:NO)、第2制御装置14は、DC/DCコンバータ10の出力電力の設定値を更新する(S6)。具体的には、第2制御装置14は、圧力検出器18の検出結果、並びに、電圧/電流検出器9にて検出された電圧及び電流に基づいて、現在の設定値から10W減算した値、現在の設定値に5W加算した値、又は現在の設定値そのままの値を、新たな設定値として設定する(図4参照)。
【0037】
なおステップS2において、温度Taが温度閾値T4以上となるか、又は温度Tbが温度閾値T8以上となった場合、即ち、スタック7を停止させる場合、この処理を強制的に終了させる。
【0038】
以上のように、本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、水素及び酸素を反応させて発電し、電気負荷20に電力を供給可能な発電装置6と、水素を貯蔵し、前記発電装置6に水素を供給する水素貯蔵部15と、前記発電装置6と並列に接続され、外部電源1から電力を受けて充電可能であり、電気負荷20に電力を供給可能な蓄電装置2と、前記発電装置6の温度を検出する温度検出器と、前記水素貯蔵部15の内部の圧力を検出する圧力検出器18と、前記発電装置6が前記電気負荷20に供給する電力を制御する制御部とを備え、前記外部電源1の電力低下あるいは喪失時に電力を供給する電力供給システムであって、前記制御部は、前記温度検出器で検出される温度が第1温度閾値未満の場合における前記発電装置6が供給する電力の上限値を、前記温度検出器で検出される温度が前記第1温度閾値以上の場合における前記電力の上限値よりも高い値に設定し、前記圧力検出器18にて第1圧力閾値以上の圧力が検出される都度、前記発電装置6が供給する電力の設定値を高くし、前記圧力検出器18にて前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値以下の圧力が検出される都度、前記発電装置6が供給する電力の設定値を低くする。
【0039】
本開示の一実施形態にあっては、発電装置6は、出力電力の設定値を水素貯蔵部15の圧力によって変更するため、燃料電池による発電の異常停止を防止することができる。また水素貯蔵部15から可能な限り水素を取り出し、電力供給システムは、電気負荷20に電力を可能な限り長時間供給することができる。
【0040】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記発電装置6の出力電圧を検出する電圧検出器をさらに備え、前記制御部は、前記圧力検出器18で検出される圧力が前記第1圧力閾値以上、且つ、前記電圧検出器で検出される出力電圧が第1電圧閾値以上の場合に、前記発電装置6が供給する電力の設定値を増加させ、前記圧力検出器18で検出される圧力が前記第2圧力閾値以下、または前記電圧検出器で検出される出力電圧が、前記第1電圧閾値よりも小さい第2電圧閾値以下の場合に、前記発電装置6が供給する電力の設定値を低下させる。
【0041】
本開示の一実施形態にあっては、発電装置6の電力の設定値が発電装置6の出力電圧によっても変更されるため、発電装置6の出力電圧が過小になり、故障することを抑制することができる。
【0042】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記発電装置6の出力電流を検出する電流検出器をさらに備え、前記制御部は、前記圧力検出器18で検出される圧力が前記第1圧力閾値以上、且つ、前記電流検出器で検出される出力電流が第1電流閾値以下の場合に、前記発電装置6が供給する電力の設定値を増加させ、前記圧力検出器18で検出される圧力が前記第2圧力閾値以下、または前記電流検出器で検出される出力電流が、前記第1電流閾値より大きい第2電流閾値以上の場合に、前記発電装置6が供給する電力の設定値を低下させる。
【0043】
本開示の一実施形態にあっては、発電装置6の電力の設定値が発電装置6の出力電流によっても変更されるため、発電装置6の出力電流が過大になり、故障することを抑制することができる。
【0044】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記電力の設定値を低下させる場合の変化量が、前記電力の設定値を増加させる場合の変化量より大きい。
【0045】
本開示の一実施形態にあっては、出力電力を低下させる場合の変化量が大きいため、発電装置6が供給する電力が過大の場合に、出力電力を急激に抑えることができ、発電装置6が故障することを抑制することができる。
【0046】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記水素貯蔵部15は第1水素ボンベ16と第2水素ボンベ17を備え、前記制御部は、前記圧力検出器18で検出される前記第1水素ボンベ16の圧力が、前記第2圧力閾値よりも低い第3圧力閾値以下の場合、前記第1水素ボンベ16から前記発電装置6への水素の供給から、前記第2水素ボンベ17から前記発電装置6への水素の供給に変更する。
【0047】
本開示の一実施形態にあっては、第1水素ボンベ16が第3圧力閾値以下の場合に、発電装置6への水素の供給が第1水素ボンベ16から第2水素ボンベ17へと切り替わるため、発電装置6を異常停止させることなく、第1水素ボンベ16に貯蔵される水素を可能な限り取り出すことができる。
【0048】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記制御部は、前記温度検出器で検出される温度が、前記第1温度閾値よりも大きい第2温度閾値以上の場合に、前記発電装置6での発電を停止させる。
【0049】
本開示の一実施形態にあっては、発電装置6の高温による故障を抑制することができる。
【0050】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記制御部は、前記蓄電装置2が放電を開始してから所定時間経過後、または前記蓄電装置2の放電能力が所定値以下となった場合に前記発電装置6の発電を開始させる。
【0051】
本開示の一実施形態にあっては、蓄電装置2の放電を発電装置6の発電に先行させるので、長時間給電が可能となり、発電装置6の発電初期の低電力時であっても電気負荷20に所定電力を供給することができる。
【0052】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記制御部は、前記発電装置6が供給する電力の設定値を増加させる場合、予め設定される増加率で設定値を増加させ、前記発電装置6が供給する電力の設定値を低下させる場合、予め設定される低下率で設定値を低下させ、前記増加率は、所定時間毎に、出力電力を所定の増加量で増加させる割合であり、前記低下率は、所定時間毎に、出力電力を所定の低下量で低下させる割合である。
【0053】
本開示の一実施形態にあっては、所定時間毎に所定量の出力電力を増減させることで、出力電力を急激な増減を抑えることができ、発電装置6が故障することを抑制することができる。
【0054】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、前記制御部は、前記外部電源1の駆動時に、前記外部電源1から前記電気負荷20に電力を供給させ且つ前記蓄電装置2に充電させ、前記外部電源1の停止時に、前記蓄電装置2から前記電気負荷20に電力を供給させ、前記蓄電装置2による電力供給開始後、所定時間が経過した場合、または前記蓄電装置2による電力供給開始後、前記蓄電装置2の放電能力が所定値以下となった場合、前記発電装置6から前記電気負荷20に電力を供給させる。
【0055】
本開示の一実施形態にあっては、外部電源1の停止時に、蓄電装置2から電気負荷20に電力を供給する。その後、発電装置6から電気負荷20に電力を供給する。そのため、電力供給システムは、外部電源1の停止後、電気負荷20に電力を可能な限り長時間供給することができる。
【0056】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、水素及び酸素を反応させて発電する発電装置6が電気負荷に供給する電力を制御する制御部にて実行可能なコンピュータプログラムであって、前記制御部に、前記発電装置6の温度が第1温度閾値未満の場合における前記発電装置6が供給する電力の上限値を、前記発電装置6の温度が前記第1温度閾値以上の場合における前記電力の上限値よりも高い値に設定させ、水素貯蔵部15の内部の圧力を検出する圧力検出器18にて第1圧力閾値以上の圧力が検出される都度、前記発電装置6が供給する電力の設定値を高くし、前記圧力検出器18にて前記第1圧力閾値よりも小さい第2圧力閾値以下の圧力が検出される都度、前記発電装置6が供給する電力の設定値を低くする。
【0057】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 外部電源
2 蓄電装置
5 第1制御装置
6 発電装置
8 第1温度検出器
12 スイッチ
13 第2温度検出器
14 第2制御装置
15 水素貯蔵部
16 第1水素ボンベ
17 第2水素ボンベ
18 圧力検出器
20 電気負荷
図1
図2
図3
図4
図5