(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂、その製造方法、及び、光学レンズ
(51)【国際特許分類】
C08G 63/66 20060101AFI20231219BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20231219BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20231219BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20231219BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G63/66
C08G63/672
C08G63/78
C08G64/04
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2021502391
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008193
(87)【国際公開番号】W WO2020175663
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019034783
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
(72)【発明者】
【氏名】ロイター カール
(72)【発明者】
【氏名】アンドルシュコ ファシィル
(72)【発明者】
【氏名】カントル マルク
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツ フローリアン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332345(JP,A)
【文献】特開2017-179323(JP,A)
【文献】特開2014-221865(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08G 64/00-64/42
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位、
【化1】
(式(1)中のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、環原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の環原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていないか、または、CN、CH
3、OCH
3、O-フェニル、O-ナフチル、S-フェニル、S-ナフチル、及び、ハロゲンからなる群から選択される1個あるいは2個のR
a基を有していても良く、
但し、R
1及びR
2のい
ずれもが水素ではなく、
Xは、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)
、及び、
下記一般式(2)で表される構成単位をさらに含む、熱可塑性樹脂。
【化2】
(一般式(2)中、Qは下記式で表される。)
【化3】
(前記式中、R
C
は、それぞれ独立して、前記式(2)におけるCO基と結合する単結合、又は、置換基を有していても良く合計炭素数が1~10であり前記式(2)におけるCO基との結合点を末端に含むアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、又は、ポリエステルカーボネート樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項3】
前記Qが下記一般式(2
a)で表される構成単位をさらに含む、請求項1又は2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂
。
【化4】
(式(2a)中、R
Cは、それぞれ独立して、前記式(2)におけるCO基と結合する単結合、又は、置換基を有していても良く合計炭素数が1~10であり前記式(2)におけるCO基との結合点を末端に含むアルキレン基を表し
、
R
1
およびR
2
は、式(1)中のR
1
及びR
2
と同義であり、
aおよびbは、各々独立して0~6の整数である。)
【請求項4】
前記Qが、下記式(2b)で表される、請求項3に記載の熱可塑性樹脂。
【化5】
(式(2b)中、nおよびmは、各々独立して0~5の整数を表し、
pおよびkは、各々独立して1~5の整数を表し、
R
1およびR
2は、式(1)中のR
1及びR
2と同義であり、
aおよびbは、各々独立して0~6の整数を表し、
*は、前記式(2)におけるCO基との結合点を表す。)
【請求項5】
下記式(2c)で表される前記Qを含む構成単位を少なくとも有する、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂。
【化6】
(式(2c)中、*は、前記式(2)におけるCO基との結合点を表す。)
【請求項6】
前記一般式(1)で表される構成単位を50モル%よりも多く含む、請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
前記一般式(1)におけるR
1及びR
2のうち少なくとも1つが炭素数6~20のアリール基である、請求項1~6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
前記一般式(1)におけるR
1及びR
2のうち少なくとも2つが炭素数6~14のアリール基である、請求項7に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
前記一般式(1)で表される構成単位が、下記一般式(A-1)~(A-7)で表される構成単位の少なくともいずれかを含む、請求項1~8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項10】
下記一般式(1)で表される構成単位、
【化14】
(式(1)中のR
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、環原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の環原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていないか、または、CN、CH
3
、OCH
3
、O-フェニル、O-ナフチル、S-フェニル、S-ナフチル、及び、ハロゲンからなる群から選択される1個あるいは2個のR
a
基を有していても良く、
但し、R
1
及びR
2
のいずれもが水素ではなく、
Xは、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)、及び、
下記一般式(3)及び(4)で表される構成単位の少なくとも1つをさらに含む
、熱可塑性樹脂。
【化15】
(式(3)中のR’
1~R’
20は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Yは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
c及びdは、それぞれ1~10の整数である。)
【化16】
(式(4)中のR’’
1~R’’
16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Zは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
e及びfは、それぞれ1~10の整数である。)
【請求項11】
前記一般式(1)で表される構成単位と、前記一般式(3)で表される構成単位とを少なくとも含む共重合体を含む、請求項10に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項12】
前記共重合体が、下記一般式(3-1)で表される構成単位をさらに含む、請求項11に記載の熱可塑性樹脂。
【化17】
【請求項13】
前記一般式(1)で表される構成単位と、前記一般式(4)で表される構成単位とを少なくとも含む共重合体を含む、請求項10に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項14】
前記共重合体が、下記一般式(4-1)で表される構成単位をさらに含む、請求項13に記載の熱可塑性樹脂。
【化18】
【請求項15】
前記一般式(3)及び(4)で表される構成単位を合計で20~80モル%含む、請求項1~14のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項16】
下記一般式(5)で表される構成単位の少なくとも1つをさらに含む、請求項1~15のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【化19】
【請求項17】
少なくともBNEF(9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル)フルオレン)の構成単位を含む、請求項16に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項18】
少なくとも2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの構成単位を含む、請求項16に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項19】
少なくともBPPEF(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン)の構成単位をさらに含む、請求項16に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項20】
前記アリール基が、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数6~16のアリール基によって置換されていても良い、ピレニル基、フラニル基、ベンゾジオキサニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ピペロニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピロリジニル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、及び、カルバゾール基から選択される、請求項1~19のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項21】
前記熱可塑性樹脂の屈折率の値が1.655以上である、請求項1~20のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項22】
前記R
1と前記R
2が同一である、請求項1~21のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項23】
前記R
1と前記R
2が、同一であっても異なっていても良く、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還原子は炭素であるヘテロアリール基から選択され、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていない、請求項1~21のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項24】
前記R
1と前記R
2が、
アズレニル、
置換されていないか、フェニル、及び、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールからなる群から選択される、2個、3個、4個、あるいは5個の置換基によって置換されていても良い、インデ二ル、
置換されていないフェニル、
1個あるいは2個のCN基によって置換されているフェニル、
フェニル、及び、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールから選択される、2個、3個、4個、あるいは5個の置換基によって置換されているフェニル、
互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールであって、前記多環式アリールは、置換されていないか、あるいは、フェニル、及び、2個あるいは3個のフェニル環を有する多環式アリールから選択される1個あるいは2個の置換基によって置換されていても良く、2個あるいは3個の前記フェニル環は、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良く、多環式アリールの前記フェニル環は、置換されていないか、あるいは、1個あるいは2個の置換基R
aを有する、多環式アリール
からなる群から選択される、請求項1~23のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項25】
前記R
1と前記R
2が、
置換されていないか、1個、2個、3個、4個、あるいは5個のフェニル基によって置換されていても良い、フェニル、
1個あるいは2個のCN基によって置換されているフェニル、
ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントリル、及び、ピレニルから選択される1個あるいは2個の多環式アリール基によって置換され、及び、1個のフェニル基によってさらに置換されていても良いフェニル、
置換されていないか、CN、フェニル、及び、ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントリル及びピレニルから選択される多環式アリールから選択される1個あるいは2個の置換基によって置換されるナフチル、
ビフェニレニル、
トリフェニレニル、
テトラフェニレニル、
フェナントリル、
ピレニル、
9H-フルオレニル、
ジベンゾ[a,e][8] アヌレニル、
ペリレニル、及び、
9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]イル
からなる群から選択される、請求項1~24のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項26】
前記R
1と前記R
2が、フェニル、2-シアノフェニル、3-シアノフェニル、4-シアノフェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、及び、9-ナフチルからなる群から選択される、請求項25に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項27】
前記R
1と前記R
2が、
5あるいは6個の環原子を有するヘテロ芳香族単環基であって、1個、2個、3個、あるいは4個の窒素原子、または1個の酸素原子及び0個、1個、2個、あるいは3個の窒素原子、または1個の硫黄原子及び0個、1個、2個、あるいは3個の窒素原子を有し、
他の環原子は炭素原子である、ヘテロ芳香族単環基、
ヘテロ芳香族多環基であって、前記のヘテロ芳香族単環と、フェニル及びヘテロ芳香族単環から選択される1個、2個、3個、4個、あるいは5個のさらなる芳香環を有し、多環式ヘテロアリールの(ヘテロ)芳香環は、共有結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、ヘテロ芳香族多環基、及び、
ヘテロ芳香族多環基であって、還原子として酸素、硫黄、及び、窒素から選択される1個あるいは2個のヘテロ原子を有する少なくとも1個の飽和あるいは部分的に不飽和の5あるいは6員環のヘテロ環と、フェニル及び前記のヘテロ芳香族単環から選択される1個、2個、3個、4個、あるいは5個のさらなる芳香環を有し、少なくとも1個のさらなる前記芳香環は、飽和あるいは部分的に不飽和の5あるいは6員環のヘテロ環状基に直接縮合されていて、多環ヘテロアリール芳香環の他のさらなる芳香環は、共有結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、ヘテロ芳香族多環基、
からなる群から選択される、請求項1~23のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項28】
前記R
1と前記R
2が、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ベンゾフリル、ジベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、チアントレニル、ナフトフリル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、オキサトレニル(oxanthrenyl)、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェノキサジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチルジニル、シンノリニル、1、5-ナフチリジニル、1、8-ナフチリジニル、フェニルピロリル、ナフチルピロリル、ジピリジニル、フェニルピリジニル、ナフチルピリジニル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジリニル、ピテリジニル(pteridinyl)、プリ二ル(purinyl)、9H-キサンテニル(xanthenyl)、2H-クロメニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノキサリニル、ベンゾ[g]クロメニル、ピロロ[3、2,1-hi]インドリル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、及び、ベンゾ[h]イソキノリニル、
からなる群から選択される、請求項27に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項29】
前記Xがエチレン基である、請求項1~28のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項30】
JIS K 7105に準じたb値が10以下である、請求項1~29のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項31】
屈折率nDとアッベ数νとの間で、-0.0002ν+1.6718<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされる、請求項1~30のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項32】
屈折率nDとアッベ数νとの間で、-0.004v+1.744<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされる、請求項31に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項33】
屈折率nDとアッベ数νとの間で
、-0.02v+2.04<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされる、請求項32に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項34】
請求項1~33のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズ。
【請求項35】
請求項1~33のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、及び、カルボン酸とカルボン酸モノエステルとカルボン酸ジエステルとの少なくともいずれかを溶融重縮合する工程を含む、熱可塑性樹脂の製造方法。
【化20】
(一般式(6)中のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていないか、または、CN、CH
3、OCH
3、O-フェニル、O-ナフチル、S-フェニル、S-ナフチル、及び、ハロゲンからなる群から選択される1個あるいは2個のR
a基を有していても良く、
但し、R
1及びR
2のい
ずれもが水素ではなく、
Xは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂、特に、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、及び、その製造方法に関する。また、本発明は、熱可塑性樹脂を含む光学レンズにも関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
【0003】
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有している。例えば、カメラ用レンズにおいて、熱可塑性樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている(特許文献1~4)。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0004】
また、一般に、カメラの光学系で用いられるレンズには、高い屈折率に加えて、b値が高過ぎることなくある程度のレベルにおさまっていて、色収差を抑えられることが要求される。
しかしながら、十分に高い屈折率、及び、低いb値を有する熱可塑性樹脂、及び、光学レンズは、未だ提供されていなかった。
【0005】
さらに近年では、各種電子機器に耐水性及び耐熱性が求められている。そのような電子機器の耐水性及び耐熱性を評価する環境試験として、「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)が実施されている。この試験は、耐湿熱性試験であり、試料内部への水分の侵入を時間的に加速して評価する。従って、電子機器に使用される光学用樹脂からなる光学レンズには、高い屈折率、及び、低いb値を有するだけでなく、高い耐熱性、及び、耐過水分解性を有することも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-2893号公報
【文献】特開2018-2894号公報
【文献】特開2018-2895号公報
【文献】特開2018-59074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高屈折率、低いb値、及び、高耐湿熱性、特に高い屈折率を有する熱可塑性樹脂を提供することである。また、この樹脂を使用することにより、優れた光学レンズを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、下記熱可塑性樹脂及び光学レンズによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
本発明は、例えば以下の通りである。
[1]下記一般式(1)で表される構成単位を含む熱可塑性樹脂。
【化1】
(式(1)中のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、環原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の環原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていないか、または、CN、CH
3、OCH
3、O-フェニル、O-ナフチル、S-フェニル、S-ナフチル、及び、ハロゲンからなる群から選択される1個あるいは2個のR
a基を有していても良く、
但し、R
1及びR
2のいすれもが水素ではなく、
Xは、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)
[2]前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、又は、ポリエステルカーボネート樹脂である、上記[1]に記載の熱可塑性樹脂。
[3]下記一般式(2)で表される構成単位をさらに含む、上記[1]又は[2]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【化2】
(一般式(2)中、Qは下記式(2a)で表される。)
【化3】
(式(2a)中、R
Cは、それぞれ独立して、前記式(2)におけるCO基と結合する単結合、又は、置換基を有していても良く合計炭素数が1~10であり前記式(2)におけるCO基との結合点を末端に含むアルキレン基を表す。)
[4]前記Qが、下記式(2b)で表される、上記[3]に記載の熱可塑性樹脂。
【化4】
(式(2b)中、nおよびmは、各々独立して0~5の整数を表し、
pおよびkは、各々独立して1~5の整数を表し、
R
1およびR
2は、式(1)中のR
1及びR
2と同義であり、
aおよびbは、各々独立して0~6の整数を表し、
*は、前記式(2)におけるCO基との結合点を表す。)
[5]下記式(2c)で表される前記Qを含む構成単位を少なくとも有する、上記[4]に記載の熱可塑性樹脂。
【化5】
(式(2c)中、*は、前記式(2)におけるCO基との結合点を表す。)
[6]前記一般式(1)で表される構成単位を50モル%よりも多く含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[7]前記一般式(1)におけるR
1及びR
2のうち少なくとも1つが炭素数6~20のアリール基である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[8]前記一般式(1)におけるR
1及びR
2のうち少なくとも2つが炭素数6~14のアリール基である、上記[7]に記載の熱可塑性樹脂。
[9]前記一般式(1)で表される構成単位が、下記一般式(A-1)~(A-7)で表される構成単位の少なくともいずれかを含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
[10]下記一般式(3)及び(4)で表される構成単位の少なくとも1つをさらに含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【化13】
(式(3)中のR’
1~R’
20は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Yは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
c及びdは、それぞれ1~10の整数である。)
【化14】
(式(4)中のR’’
1~R’’
16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Zは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
e及びfは、それぞれ1~10の整数である。)
【0010】
[11]前記一般式(1)で表される構成単位と、前記一般式(3)で表される構成単位とを少なくとも含む共重合体を含む、上記[10]に記載の熱可塑性樹脂。
[12]前記共重合体が、下記一般式(3-1)で表される構成単位をさらに含む、上記[11]に記載の熱可塑性樹脂。
【化15】
[13]前記一般式(1)で表される構成単位と、前記一般式(4)で表される構成単位とを少なくとも含む共重合体を含む、上記[10]に記載の熱可塑性樹脂。
[14]前記共重合体が、下記一般式(4-1)で表される構成単位をさらに含む、上記[13]に記載の熱可塑性樹脂。
【化16】
[15]前記一般式(3)及び(4)で表される構成単位を合計で20~80モル%含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[16]下記一般式(5)で表される構成単位の少なくとも1つをさらに含む、上記[1]~[15]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【化17】
[17]少なくともBNEF(9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル)フルオレン)の構成単位を含む、上記[16]に記載の熱可塑性樹脂。
[18]少なくとも2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンの構成単位を含む、上記[16]に記載の熱可塑性樹脂。
[19]少なくともBPPEF(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン)の構成単位をさらに含む、上記[16]に記載の熱可塑性樹脂。
[20]前記アリール基が、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数6~16のアリール基によって置換されていても良い、ピレニル基、フラニル基、ベンゾジオキサニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ピペロニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピロリジニル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、及び、カルバゾール基から選択される、上記[1]~[19]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[21]前記熱可塑性樹脂の屈折率の値が1.655以上である、上記[1]~[20]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[22]前記R
1と前記R
2が同一である、上記[1]~[20]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[23]前記R
1と前記R
2が、同一であっても異なっていても良く、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還原子は炭素であるヘテロアリール基から選択され、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていない、上記[1]~[20]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[24]前記R
1と前記R
2が、
アズレニル、
置換されていないか、フェニル、及び、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールからなる群から選択される、2個、3個、4個、あるいは5個の置換基によって置換されていても良い、インデ二ル、
置換されていないフェニル、
1個あるいは2個のCN基によって置換されているフェニル、
フェニル、及び、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールから選択される、2個、3個、4個、あるいは5個の置換基によって置換されているフェニル、
互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールであって、前記多環式アリールは、置換されていないか、あるいは、フェニル、及び、2個あるいは3個のフェニル環を有する多環式アリールから選択される1個あるいは2個の置換基によって置換されていても良く、2個あるいは3個の前記フェニル環は、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良く、多環式アリールの前記フェニル環は、置換されていないか、あるいは、1個あるいは2個の置換基R
aを有する、多環式アリール
からなる群から選択される、上記[1]~[23]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[25]前記R
1と前記R
2が、
置換されていないか、1個、2個、3個、4個、あるいは5個のフェニル基によって置換されていても良い、フェニル、
1個あるいは2個のCN基によって置換されているフェニル、
ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントリル、及び、ピレニルから選択される1個あるいは2個の多環式アリール基によって置換され、及び、1個のフェニル基によってさらに置換されていても良いフェニル、
置換されていないか、CN、フェニル、及び、ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントリル及びピレニルから選択される多環式アリールから選択される1個あるいは2個の置換基によって置換されるナフチル、
ビフェニレニル、
トリフェニレニル、
テトラフェニレニル、
フェナントリル、
ピレニル、
9H-フルオレニル、
ジベンゾ[a,e][8] アヌレニル、
ペリレニル、及び、
9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]イル
からなる群から選択される、上記[1]~[24]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[26]前記R
1と前記R
2が、フェニル、2-シアノフェニル、3-シアノフェニル、4-シアノフェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、及び、9-ナフチルからなる群から選択される、上記[25]に記載の熱可塑性樹脂。
[27]前記R
1と前記R
2が、
5あるいは6個の環原子を有するヘテロ芳香族単環基であって、1個、2個、3個、あるいは4個の窒素原子、または1個の酸素原子及び0個、1個、2個、あるいは3個の窒素原子、または1個の硫黄原子及び0個、1個、2個、あるいは3個の窒素原子を有し、
他の環原子は炭素原子である、ヘテロ芳香族単環基、
ヘテロ芳香族多環基であって、前記のヘテロ芳香族単環と、フェニル及びヘテロ芳香族単環から選択される1個、2個、3個、4個、あるいは5個のさらなる芳香環を有し、多環式ヘテロアリールの(ヘテロ)芳香環は、共有結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、ヘテロ芳香族多環基、及び、
ヘテロ芳香族多環基であって、還原子として酸素、硫黄、及び、窒素から選択される1個あるいは2個のヘテロ原子を有する少なくとも1個の飽和あるいは部分的に不飽和の5あるいは6員環のヘテロ環と、フェニル及び前記のヘテロ芳香族単環から選択される1個、2個、3個、4個、あるいは5個のさらなる芳香環を有し、少なくとも1個のさらなる前記芳香環は、飽和あるいは部分的に不飽和の5あるいは6員環のヘテロ環状基に直接縮合されていて、多環ヘテロアリール芳香環の他のさらなる芳香環は、共有結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、ヘテロ芳香族多環基、
からなる群から選択される、上記[1]~[23]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[28]前記R
1と前記R
2が、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ベンゾフリル、ジベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、チアントレニル、ナフトフリル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、オキサトレニル(oxanthrenyl)、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェノキサジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチルジニル、シンノリニル、1、5-ナフチリジニル、1、8-ナフチリジニル、フェニルピロリル、ナフチルピロリル、ジピリジニル、フェニルピリジニル、ナフチルピリジニル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジリニル、ピテリジニル(pteridinyl)、プリ二ル(purinyl)、9H-キサンテニル(xanthenyl)、2H-クロメニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノキサリニル、ベンゾ[g]クロメニル、ピロロ[3、2,1-hi]インドリル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、及び、ベンゾ[h]イソキノリニル、
からなる群から選択される、上記[27]に記載の熱可塑性樹脂。
[29]前記Xがエチレン基である、上記[1]~[28]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[30]JIS K 7105に準じたb値が10以下である、上記[1]~[29]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[31]屈折率nDとアッベ数νとの間で、-0.0002ν+1.6718<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされる、上記[1]~[30]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[32]屈折率nDとアッベ数νとの間で、-0.004v+1.744<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされる、上記[31]に記載の熱可塑性樹脂。
[33]屈折率nDとアッベ数νとの間で、、-0.02v+2.04<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされる、上記[32]に記載の熱可塑性樹脂。
【0011】
[34]上記[1]~[33]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズ。
[35]上記[1~[33]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物、及び、カルボン酸とカルボン酸モノエステルとカルボン酸ジエステルとの少なくともいずれかを溶融重縮合する工程を含む、熱可塑性樹脂の製造方法。
【化18】
(一般式(6)中のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていないか、または、CN、CH
3、OCH
3、O-フェニル、O-ナフチル、S-フェニル、S-ナフチル、及び、ハロゲンからなる群から選択される1個あるいは2個のR
a基を有していても良く、
但し、R
1及びR
2のいすれもが水素ではなく、
Xは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)
[36]2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンの結晶性の溶媒和物の形態であって、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり0.3~1.2モルの有機溶媒をその結晶に含み、
前記有機溶媒が、メタノール、トルエン及びメチルエチルケトンから選択される、結晶性の溶媒和物の形態。
[37]前記有機溶媒が、メタノールである、上記[36]に記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[38]22℃におけるCu Kα1線の照射によるX線粉末回折図が、
2θ値としての下記3つの反射ピーク:13.0±0.2°,14.9±0.2°及び21.5±0.2°を示し、
2θ値としての下記反射ピーク:6.2±0.2°,9.0±0.2°,10.6±0.2°,16.9±0.2°,18.2±0.2°,18.5±0.2°,19.2±0.2°,19.6±0.2°,20.9±0.2°,22.7±0.2°,24.3±0.2°,24.9±0.2°,26.2±0.2°,28.7±0.2°及び30.5±0.2°のうち少なくとも3つを示す、上記[37]に記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[39]20K/分(または、20℃/分;以下同じ)の昇温速度におけるISO 11357-3:2018に沿って記録された示差走査熱量(DSC)が、97~101℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が108~115℃の範囲にある、上記[37]または[38]に記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[40]メタノールの量が、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり0.3~1.0モルである、上記[37]から[39]のいずれかに記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[41]前記有機溶媒が、トルエンである、上記[36]に記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[42]22℃におけるCu Kα1線の照射によるX線粉末回折図が、
2θ値としての下記3つの反射ピーク:5.2±0.2°,7.7±0.2°及び21.6±0.2°を示し、
2θ値としての下記反射ピーク:8.2±0.2°,9.1±0.2°,10.6±0.2°,10.8±0.2°,11.6±0.2°,12.6±0.2°,13.6±0.2°,14.7±0.2°,15.0±0.2°,15.7±0.2°,16.7±0.2°,17.1±0.2°,18.0±0.2°,18.5±0.2°,19.4±0.2°,19.9±0.2°,20.8±0.2°,21.0±0.2°,22.2±0.2°,22.7±0.2°,24.1±0.2°,25.0±0.2°,25.7±0.2°,26.5±0.2°,27.1±0.2°及び27.6±0.2°のうち少なくとも3つを示す、上記[41]に記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[43]20K/分の昇温速度におけるISO 11357-3:2018に沿って記録された示差走査熱量(DSC)が、105~108℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が112~115℃の範囲にある、上記[41]または[42]に記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[44]トルエンの量が、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり0.3~0.5モルである、上記[41]から[43]のいずれかに記載の結晶性の溶媒和物の形態。
[45]2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンの結晶性の形態Aであって、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり0.1モル未満の有機溶媒をその結晶に含み、
22℃におけるCu Kα1線の照射によるX線粉末回折図が、
2θ値としての下記3つの反射ピーク:20.9±0.2°,21.4±0.2°及び23.7±0.2°を示し、
2θ値としての下記反射ピーク:6.5±0.2°,8.6±0.2°,11.0±0.2°,13.2±0.2°,14.9±0.2°,16.2±0.2°,17.3±0.2°,17.8±0.2°,18.4±0.2°及び19.0±0.2°のうち少なくとも3つを示す、結晶性の形態A。
[46]20K/分の昇温速度におけるISO 11357-3:2018に沿って記録された示差走査熱量(DSC)が、112~114℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が124~126℃の範囲にある、上記[45]に記載の結晶性の形態。
[47]2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンの結晶性の形態Cであって、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり0.1モル未満の有機溶媒をその結晶に含み、
22℃におけるCu Kα1線の照射によるX線粉末回折図が、
2θ値としての下記3つの反射ピーク:5.1±0.2°,7.6±0.2°及び21.0±0.2°を示し、
2θ値としての下記反射ピーク:8.2±0.2°,9.2±0.2°,10.4±0.2°,10.8±0.2°,11.6±0.2°,12.8±0.2°,13.4±0.2°,14.5±0.2°,15.2±0.2°,15.6±0.2°,16.6±0.2°,17.4±0.2°,17,9±0.2°,18.5±0.2°,19.2±0.2°,19.9±0.2°,20.4±0.2°,21.8±0.2°,22.2±0.2°,22.6±0.2°,13.4±0.2°,24.0±0.2°,25.7±0.2°,27.3±0.2°及び27.9±0.2°のうち少なくとも3つを示す、結晶性の形態C。
[48]20K/分の昇温速度におけるISO 11357-3:2018に沿って記録された示差走査熱量(DSC)が、112~114℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が124~126℃の範囲にある、上記[47]に記載の結晶性の形態。
[49]前記結晶が最大で5:1のアスペクト比を有する、上記[33]から[48]のいずれかに記載の結晶性の形態。
[50]2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンの非晶性の形態Bであって、有機物質に基づく少なくとも99.0重量%の純度を有し、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり0.1モル未満の有機溶媒をその結晶に含み、
22℃におけるCu Kα1線の照射によるX線粉末回折図が、
5°~40°の範囲における複数の回折角にて2θ値としての反射ピークを示さず、
20K/分の昇温速度におけるISO 11357-3:2018に沿って記録された示差走査熱量(DSC)が、80~200℃の範囲で吸熱ピークを示さない、非晶性の形態B。
[51]2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン及び2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される不純物の合計量が、100重量%の2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンに基づき0.5重量%未満である、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン。
[52]以下の少なくとも1つの特徴を有する、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン。
i.ジクロロメタンにおける5w/w%の2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン溶液でASTM E 313に沿って測定された3.0未満の黄色度(Y.I.)、及び、
ii.ジクロロメタンにおける5w/w%の2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン溶液で測定された1.0ntu未満のヘーズ。
[53]上記[33]~[49]のいずれかに記載の一つの結晶性の形態、又は、上記[50]に記載の非晶性の形態で存在する、上記[51]又は上記[52]に記載の2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン。
[54]上記[33]~[49]に記載の結晶性の形態及び上記[50]に記載の非晶性の形態のいずれかに由来する構成単位を有する、上記[1]~[33]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[55]上記[51]又は上記[52]に記載の2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンに由来する構成単位を有する、上記[1]~[33]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
[56]上記[54]又は[55]に記載の熱可塑性樹脂を含む、光学レンズ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率、低いb値、及び、高耐湿熱性、特に高い屈折率を示す。また、このように優れた熱可塑性樹脂を使用することにより、優れた光学レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2-Bで製造した樹脂(BINOL-2EO/BNEF=50モル/50モル)のH1-NMRチャートである。
【
図2】実施例21から得られた6,6’-DPBHBNAの形態AのX線粉末回折パターンを示す。
【
図3】実施例21から得られた6,6’-DPBHBNAの形態AのNIRスペクトルを示す。
【
図4】実施例21から得られた6,6’-DPBHBNAの形態AのIRスペクトルを示す。
【
図5】実施例21から得られた6,6’-DPBHBNAの形態AのDSCを示す。
【
図6】実施例22から得られた6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和のX線粉末回折パターンを示す。
【
図7】実施例22から得られた6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和のNIRスペクトルを示す。
【
図8】実施例22から得られた6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和のNRスペクトルを示す。
【
図9】実施例22から得られた6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和のDSCを示す。
【
図10】実施例23から得られた結晶性物質のX線粉末回折パターンを示す。
【
図11】実施例23から得られた結晶性物質のNIRスペクトルを示す。
【
図12】実施例23から得られた結晶性物質のNRスペクトルを示す。
【
図13】実施例23から得られた結晶性物質のDSCを示す。
【
図14】実施例24から得られた6,6’-DPBHBNAのトルエン溶媒和のマイクロ写真を示す。
【
図15】実施例24から得られた6,6’-DPBHBNAのトルエン溶媒和のX線粉末回折パターンを示す。
【
図16】実施例24から得られた6,6’-DPBHBNAのトルエン溶媒和のNIRスペクトルを示す。
【
図17】実施例24から得られた6,6’-DPBHBNAのトルエン溶媒和のNRスペクトルを示す。
【
図18】実施例24から得られた6,6’-DPBHBNAのトルエン溶媒和のDSCを示す。
【
図19】実施例25から得られた6,6’-DPBHBNAのMEK溶媒和のマイクロ写真を示す。
【
図20】実施例25から得られた6,6’-DPBHBNAのMEK溶媒和のNIRスペクトルを示す。
【
図21】実施例25から得られた6,6’-DPBHBNAのMEK溶媒和のDSCを示す。
【
図22】実施例25から得られた6,6’-DPBHBNAのMEK溶媒和物のX線粉末回折パターンを示す。
【
図23】実施例26から得られた6,6’-DPBHBNAの非晶性の形態BのX線粉末回折パターンを示す。
【
図24】実施例26から得られた6,6’-DPBHBNAの非晶性の形態BのNIRスペクトルを示す。
【
図25】実施例26から得られた6,6’-DPBHBNAの非晶性の形態BのIRスペクトルを示す。
【
図26】実施例27から得られた6,6’-DPBHBNAの形態CのX線粉末回折パターンを示す。
【
図27】実施例27から得られた6,6’-DPBHBNAの形態CのNIRスペクトルを示す。
【
図28】実施例27から得られた6,6’-DPBHBNAの形態CのIRスペクトルを示す。
【
図29】実施例27から得られた6,6’-DPBHBNAの形態CのDSCを示す。
【
図30】実施例及び比較例の熱可塑性樹脂のアッベ数(v)を横軸、屈折率(nD)を縦軸にとった第1のグラフである。
【
図31】実施例及び比較例の熱可塑性樹脂のアッベ数(v)を横軸、屈折率(nD)を縦軸にとった第2のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)熱可塑性樹脂の成分(構成単位)
本発明の熱可塑性樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含む。熱可塑性樹脂の種類は、下記の構成単位を有する限り、特に限定されないが、好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂、又は、それらの少なくとも2つ以上の混合物である。
また、熱可塑性樹脂のうち、ポリエステル樹脂は、(-RCO-O-)部位を含むポリエステル構成単位(繰り返し単位)を有し、(-RO-CO-O-)部位を含むポリカーボネート構成単位(繰り返し単位)を含まないものであり、ポリカーボネート樹脂は、(-RO-CO-O-)部位を含むポリカーボネート構成単位(繰り返し単位)を有し、(-RCO-O-)部位を含むポリエステル構成単位(繰り返し単位)を含まないものであり、ポリエステルカーボネート樹脂は、(-RO-CO-)部位を含むポリエステル構成単位(繰り返し単位)、及び、(-RO-CO-O-)部位を含むポリカーボネート構成単位(繰り返し単位)のいずれも有するものである(Rはいずれも炭化水素基等)。
【化19】
(式(1)中のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子
、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6
~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であ
って、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還
原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアル
コキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
単環式あるいは多環式の前記アリール基、及び、単環式あるいは多環式の前記ヘテロアリール基は、置換されていないか、または、CN、CH
3、OCH
3、O-フェニル、O-ナフチル、S-フェニル、S-ナフチル、及び、ハロゲンからなる群から選択される1個あるいは2個のR
a基を有していても良く、
但し、R
1及びR
2のいずれもが水素ではなく、
Xは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)
【0015】
上記一般式(1)におけるR1及びR2は、それぞれ、好ましくは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は、炭素数7~12のアラルキル基であり、より好ましくは、炭素数6~20のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~14のアリール基である。また、一般式(1)におけるR1~R10のうち少なくとも1つが、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素数6~14のアリール基であることがさらに好ましく、特に、R1~R10のうち少なくとも2つが炭素数6~14、又は、炭素数6~12のアリール基であることがより好ましい。
【0016】
R1とR2とは、例えば、同一である。
また、R1とR2は、同一であっても異なっていても良く、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還原子は炭素であるヘテロアリール基から選択されても良い。なおここで、単環式あるいは多環式のアリール基、及び、単環式あるいは多環式のヘテロアリール基は、置換されていなくても良い。
【0017】
R1とR2は、それぞれ、以下の群から選択されても良い。すなわち、
アズレニル、
置換されていないか、フェニル、及び、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールからなる群から選択される、2個、3個、4個、あるいは5個の置換基によって置換されていても良い、インデ二ル、
置換されていないフェニル、
1個あるいは2個のCN基によって置換されているフェニル、
フェニル、及び、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールから選択される、2個、3個、4個、あるいは5個の置換基によって置換されているフェニル、
互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、2個、3個、あるいは4個のフェニル環を有する多環式アリールであって、前記多環式アリールは、置換されていないか、あるいは、フェニル、及び、2個あるいは3個のフェニル環を有する多環式アリールから選択される1個あるいは2個の置換基によって置換されていても良く、2個あるいは3個の前記フェニル環は、単結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良く、多環式アリールの前記フェニル環は、置換されていないか、あるいは、1個あるいは2個の置換基Raを有する、多環式アリール、からなる群である。
【0018】
また、R1とR2は、それぞれ、以下の群から選択されても良い。すなわち、
置換されていないか、1個、2個、3個、4個、あるいは5個のフェニル基によって置換されていても良い、フェニル、
1個あるいは2個のCN基によって置換されているフェニル、
ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントリル、及び、ピレニルから選択される1個あるいは2個の多環式アリール基によって置換され、及び、1個のフェニル基によってさらに置換されていても良いフェニル、
置換されていないか、CN、フェニル、及び、ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントリル及びピレニルから選択される多環式アリールから選択される1個あるいは2個の置換基によって置換されるナフチル、
ビフェニレニル、
トリフェニレニル、
テトラフェニレニル、
フェナントリル、
ピレニル、
9H-フルオレニル、
ジベンゾ[a,e][8] アヌレニル、
ペリレニル、及び、
9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]イルからなる群である。
ここで、R1とR2とは、、フェニル、2-シアノフェニル、3-シアノフェニル、4-シアノフェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、及び、9-ナフチルからなる群から選択されることが好ましい。
【0019】
また、R1とR2は、それぞれ、以下の群から選択されても良い。すなわち、
5あるいは6個の環原子を有するヘテロ芳香族単環基であって、1個、2個、3個、あるいは4個の窒素原子、または1個の酸素原子及び0個、1個、2個、あるいは3個の窒素原子、または1個の硫黄原子及び0個、1個、2個、あるいは3個の窒素原子を有し、他の環原子は炭素原子である、ヘテロ芳香族単環基、
ヘテロ芳香族多環基であって、前記のヘテロ芳香族単環と、フェニル及びヘテロ芳香族単環から選択される1個、2個、3個、4個、あるいは5個のさらなる芳香環を有し、多環式ヘテロアリールの(ヘテロ)芳香環は、共有結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、ヘテロ芳香族多環基、及び、
ヘテロ芳香族多環基であって、還原子として酸素、硫黄、及び、窒素から選択される1個あるいは2個のヘテロ原子を有する少なくとも1個の飽和あるいは部分的に不飽和の5あるいは6員環のヘテロ環と、フェニル及び前記のヘテロ芳香族単環から選択される1個、2個、3個、4個、あるいは5個のさらなる芳香環を有し、少なくとも1個のさらなる前記芳香環は、飽和あるいは部分的に不飽和の5あるいは6員環のヘテロ環状基に直接縮合されていて、多環ヘテロアリール芳香環の他のさらなる芳香環は、共有結合によって互いに結合されていても良く、互いに直接縮合されていても良く、及び/又は、飽和あるいは不飽和の4~10員環の単環式あるいは二環式の炭化水素環に縮合されていても良い、ヘテロ芳香族多環基、からなる群である。
【0020】
また、R1とR2は、それぞれ、以下の群から選択されても良い。すなわち、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ベンゾフリル、ジベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、チアントレニル、ナフトフリル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、オキサトレニル(oxanthrenyl)、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェノキサジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチルジニル、シンノリニル、1、5-ナフチリジニル、1、8-ナフチリジニル、フェニルピロリル、ナフチルピロリル、ジピリジニル、フェニルピリジニル、ナフチルピリジニル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジリニル、ピテリジニル(pteridinyl)、プリニル(purinyl)、9H-キサンテニル(xanthenyl)、2H-クロメニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノキサリニル、ベンゾ[g]クロメニル、ピロロ[3、2,1-hi]インドリル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、及び、ベンゾ[h]イソキノリニルからなる群である。
【0021】
上記一般式(1)におけるXは、好ましくは炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~8のシクロアルキレン基、または炭素数6~14のアリーレン基であり、より好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基、炭素数5~6のシクロアルキレン基、または炭素数6~10のアリーレン基であり、特に好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基、例えば、エチレン基である。
また、上記一般式(1)におけるa及びbは、それぞれ、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは1~4であり、特に好ましくは2または3である。
【0022】
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、又は、ポリエステルカーボネート樹脂である。そして、ポリエステル樹脂、又は、ポリエステルカーボネート樹脂は、下記一般式(2)で表される構成単位をさらに含むことが好ましい。
【化20】
一般式(2)において、Qは下記式(2a)で表される。
【化21】
式(2a)において、R
Cは、それぞれ独立して、式(2)におけるCO基と結合する単結合、又は、置換基を有していても良く合計炭素数が1~10であり式(2)におけるCO基との結合点を末端に含むアルキレン基である。R
Cは、好ましくは単結合、又は、合計炭素数が1~3のアルキレン基である。
式(2)におけるQは、下記式(2b)で表されることが好ましい。
【化22】
式(2b)において、nおよびmは、各々独立して0~5の整数であり、好ましくは、1~3の整数である。
pおよびkは、各々独立して1~5の整数であり、好ましくは、1~3の整数である。
R
1およびR
2は、式(1)中のR
1及びR
2と同義である。
aおよびbは、各々独立して0~6の整数であり、好ましくは、1~3の整数、より好ましくは1又は2の整数である。
また、*は、式(2)におけるCO基との結合点を表す。
式(2)におけるQは、下記式(2c)で表されることがより好ましい。
【化23】
式(2c)中、*は、式(2)におけるCO基との結合点である。
【0023】
上記一般式(1)で表される構成単位は、好ましくは、下記一般式(A-1)~(A-7)で表される構成単位の少なくともいずれかを含む。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0024】
すなわち、一般式(1)で表される構成単位は、一般式(A-1)で表される(BIN
L-2EO(2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,
1’-ビナフタレン)由来の構成単位、一般式(A-2)で表されるDNBINOL-2
EO(2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレン)由来の構成単位、一般式(A-3)で表される2DNBINOL-2EO(2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,1’-ビナフタレン)由来の構成単位、及び、一般式(A-4)で表される9DPNBINOL-2EO(2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1’-ビナフタレン)由来の構成単位、一般式(A-5)で表される(CN-BNA(6,6´-ジ-(3-シアノフェニル)-2,2´-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1´-ビナフタレン)由来の構成単位、一般式(A-6)で表される(FUR-BNA(6,6´-ジ-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)-2,2´-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1´-ビナフタレン)由来の構成単位、及び、一般式(A-7)で表される(THI-BNA(6,6´-ジ-(ジベンゾ[b,d]チエン-4-イル)-2,2´-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1´-ビナフタレン)由来の構成単位、の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位を50モル%よりも多く含むことが好ましく、より好ましくは60モル%、さらに好ましくは70モル%、特に好ましくは80モル%、または90モル%よりも多く含むことが好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位のみで形成されていても良い。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂は、上記一般式(1)で表される構成単位(構成単位(1))以外にも1種以上の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、フルオレン誘導体単位などが好ましい。
【0027】
具体的には、本発明の熱可塑性樹脂は、一般式(3)及び(4)で表される構成単位の少なくとも1つをさらに含むことが好ましい。
【化31】
(式(3)中のR’
1~R’
20は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Yは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
c及びdは、それぞれ1~10の整数である。)
【0028】
上記一般式(3)におけるR’1~R’’20は、それぞれ、好ましくは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は、炭素数7~12のアラルキル基であり、より好ましくは、水素である。
【0029】
上記一般式(3)におけるYは、好ましくは炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~8のシクロアルキレン基、または炭素数6~14のアリーレン基であり、より好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基、炭素数5~6のシクロアルキレン基、または炭素数6~10のアリーレン基であり、特に好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基である。
また、上記一般式(3)におけるc及びdは、それぞれ、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは1~4であり、特に好ましくは2または3である。
【0030】
【化32】
(式(4)中のR’’
1~R’’
16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Zは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
e及びfは、それぞれ1~10の整数である。)
【0031】
上記一般式(4)におけるR’’1~R’’16は、それぞれ、好ましくは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は、炭素数7~12のアラルキル基であり、より好ましくは、水素、または炭素数6~10のアリール基である。
【0032】
上記一般式(4)におけるZは、好ましくは炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~8のシクロアルキレン基、または炭素数6~14のアリーレン基であり、より好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基、炭素数5~6のシクロアルキレン基、または炭素数6~10のアリーレン基であり、特に好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基である。
また、上記一般式(4)におけるe及びfは、それぞれ、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは1~4であり、特に好ましくは2または3である。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂は、構成単位(1)、及び、上記一般式(3)または(4)で表わされる構成単位として、下記一般式(5)で表される構成単位の少なくとも1つをさらに含むことが好ましい。
【化33】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂は、構成単位(1)とともに、上記一般式(5)で表される、BNEF(9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル)フルオレン)に由来する構成単位、BNE(2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン)に由来する構成単位、およびBPPEF(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン)に由来する構成単位の少なくともいずれかをさらに含むことが好ましい。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂は、構成単位(1)以外の構成単位、好ましくは上記一般式(3)及び(4)で表される構成単位を合計で20~80モル%含んでいても良く、例えば、25~75モル%含んでいても良い。熱可塑性樹脂は、上記一般式(3)及び(4)で表される構成単位を、例えば、30~70モル%、35~65モル%、又は40~60モル%含む。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物に占める構成単位(1)と、一般式(3)で表される構成単位(3)とのモル比は、例えば、4:1~1:4、又は7:3~3:7である。さらに、上記モル比は、65:35~35:65であっても良く、3:2~2:3、又は1:1でも良い。ただし、熱可塑性樹脂組成物においては、上述のように構成単位(1)を50モル%よりも多く含むことが好ましいことから、構成単位(1)と構成単位(3)とのモル比として、好ましい具体例は、4:1~1:1、7:3~1:1、65:35~1:1、及び3:2~1:1等である。
なお、構成単位(1)と、一般式(4)で表される構成単位(4)とのモル比についても、上述の構成単位(1)と構成単位(3)のモル比と同様である。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂は、ランダム、ブロック及び交互共重合構造のいずれを含んでもよい。また、本発明の熱可塑性樹脂において、同一ポリマー分子内に上述の構成単位(1)、構成単位(3)、及び構成単位(4)が全て含まれていなくてもよい。すなわち、複数のポリマー分子全体において上述の構成単位が含まれるようであれば、本発明の熱可塑性樹脂は、ブレンド樹脂であってもよい。例えば、上述の構成単位(1)、構成単位(3)、及び構成単位(4)をいずれも含む熱可塑性樹脂としては、構成単位(1)、(3)及び(4)をいずれも含む共重合体であっても、構成単位(1)を含むホモポリマー又は共重合体と構成単位(2)を含むホモポリマー又は共重合体と構成単位(4)を含むホモポリマー又は共重合体の混合物であってもよく、また、構成単位(1)および(3)を含む共重合体と構成単位(1)および(4)を含む共重合体とのブレンド樹脂等であってもよい。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂に他の樹脂をブレンドして、成形体の製造に供することができる。例えば、熱可塑性樹脂がポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネートのいずれかである場合、その他の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、熱可塑性樹脂とは異なる種類のポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が例示される。
【0037】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、離型剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することが好ましい。
【0038】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。熱可塑性樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部であることが好ましい。
【0039】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0040】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸モノグリセリドおよびラウリン酸モノグリセリドが特に好ましい。これら離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0041】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。熱可塑性樹脂組成物中のリン系加工熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0042】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル等が挙げられる。
【0045】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0046】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0047】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’-ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(1,5-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-メチル-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-ニトロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)および2,2’-(2-クロロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが挙げられる。
【0048】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0049】
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~3.0重量部であり、より好ましくは0.02~1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05~0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂組成物に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0050】
熱可塑性樹脂の組成物、例えば、ポリカーボネート樹脂組成物には、製造時に生成するフェノールや、反応せずに残存した炭酸ジエステルが不純物として存在する。熱可塑性樹脂組成物中のフェノール含量は、0.1~3000ppmであることが好ましく、0.1~2000ppmであることがより好ましく、1~1000ppm、1~800ppm、1~500ppm、または1~300ppmであることが更に好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物中の炭酸ジエステル含量は、0.1~1000ppmであることが好ましく、0.1~500ppmであることがより好ましく、1~100ppmであることが特に好ましい。熱可塑性樹脂組成物中に含まれるフェノールおよび炭酸ジエステルの量を調節することにより、目的に応じた物性を有する樹脂を得ることができる。フェノールおよび炭酸ジエステルの含量の調節は、重縮合の条件や装置を変更することにより適宜行うことができる。また、重縮合後の押出工程の条件によっても調節可能である。
【0051】
フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を上回ると、得られる樹脂成形体の強度が落ちたり、臭気が発生する等の問題が生じ得る。一方、フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を下回ると、樹脂溶融時の可塑性が低下する虞がある。
【0052】
(2)熱可塑性樹脂の性状
本発明の熱可塑性樹脂の好ましい粘度平均分子量(Mv)は、8,000~20,000であり、9,000~15,000がより好ましく、10,000~14,000がさらに好ましい。
【0053】
Mvの値が8,000より小さいと、成形体が脆くなる可能性がある。また、Mvの値が20,000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の取り出しが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなる恐れがある。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂の23℃、波長589nmにおける屈折率(nD)は、好ましくは1.635以上、より好ましくは1.645以上、さらに好ましくは1.655以上、特に好ましくは1.665以上、またはこれらの値よりも大きい。例えば、本発明の熱可塑性樹脂の屈折率は、好ましくは1.640~1.710、より好ましくは1.645~1.700、さらに好ましくは1.650~1.697であり、特に好ましくは1.655~1.695である。本発明の熱可塑性樹脂は、屈折率(nD)が高く、光学レンズ材料に適している。屈折率は、厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用いて、JIS-K-7142の方法で測定することができる。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂のアッベ数(ν)は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。アッベ数は、23℃下での波長486nm、589nm及び656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂の好ましいガラス転移温度(Tg)は、射出成形に使用することを考慮すると、90~185℃であり、より好ましくは95~180℃であり、さらに好ましくは100~175℃である。Tgが90℃より低いと、使用温度範囲が狭くなる可能性がある。また185℃を越えると、樹脂の溶融温度が高くなり、樹脂の分解や着色が発生しやすくなる恐れがある。樹脂のガラス転移温度が高すぎると、汎用の金型温調機では、金型温度と樹脂ガラス転移温度の差が大きくなってしまう。そのため、製品に厳密な面精度が求められる用途においては、ガラス転移温度が高すぎる樹脂の使用が難しくなる可能性がある。また、成形流動性及び成形耐熱性の観点からは、Tgの下限値は130℃が好ましく、135℃がより好ましく、Tgの上限値は、185℃が好ましく、175℃がより好ましい。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂を用いて得られる光学成形体は、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、88%以上であることが特に好ましい。全光線透過率が85%以上であれば、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などと比べても遜色ない。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂は、高い耐湿熱性を有する。耐湿熱性は、熱可塑性樹脂を用いて得られる光学成形体に対して、「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)を行い、試験後の光学成形体の全光線透過率を測定することで評価することができる。PCT試験は、直径50mm、厚さ3mmの射出成形物を、120℃、0.2Mpa、100%RH、20時間の条件で保持することで行うことができる。本発明の熱可塑性樹脂は、PCT試験後の全光線透過率が60%以上であり、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらにより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。全光線透過率が60%以上であれば、従来の熱可塑性樹脂に対して高い耐湿熱性を有すると言える。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂の色相を示すb値は、好ましくは5以下である。b値が小さいほど黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。
【0060】
(3)熱可塑性樹脂の製造方法
上記一般式(1)で表される構成単位を有する熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、その製造方法は、例えば、下記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを溶融重縮合する工程を含む。
【化34】
(一般式(6)中のR
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数5~36のヘテロアリール基であって、還原子の1、2、3、または4個が窒素、硫黄、及び、酸素から選択されて他の還原子は炭素であるヘテロアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
但し、R
1及びR
2のいずれもが水素ではなく、
Xは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
但し、前記アルキレン基、及び、前記シクロアルキレン基は、それぞれベンゼン環を有するように置換されていても良く、
a及びbは、それぞれ1~10の整数である。)
すなわち、上記一般式(6)で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用し、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質と反応させて、ポリカーボネート樹脂を製造することができる。具体的には、一般式(6)で表される化合物及び炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を、塩基性化合物触媒もしくはエステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、又は無触媒下において、溶融重縮合法により反応させて製造することができる。
また、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物を原料(モノマー)として、ポリエステルカーボネート樹脂、及びポリエステル樹脂を得ることもできる。
ポリエステルカーボネート樹脂、又は、ポリエステル樹脂は、例えば、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物と、カルボン酸とカルボン酸モノエステルとカルボン酸ジエステルとの少なくともいずれかを溶融重縮合する工程によって、製造できる。
【0061】
例えば、カルボン酸、カルボン酸モノエステル、及び、カルボン酸ジエステルの具体例として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン(BINL-2EO)のジカルボン酸、モノカルボン酸モノエステル、ジエステル、9,9-フルオレン-ジプロピオン酸、9,9-フルオレン-ジプロピオン酸のモノエステル、ジエステルである9,9-フルオレン-ジプロピオン酸メチル(FDPM)等が挙げられる。
さらに、カルボン酸、カルボン酸モノエステル、及び、カルボン酸ジエステルの具体例として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレン(DNBINOL-2EO)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,1’-ビナフタレン(2DNBINOL-2EO)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1´-ビナフタレン(9DPNBINOL-2EO)、6,6’-di-(3-cyanophenyl)-2,2’-bis-(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl(CN-BNA)、6,6’-di-(dibenzo[b,d]furan-4-yl)-2,2’-bis-(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl(FUR-BNA)、6,6’-di-(3-cyanophenyl)-2,2’-bis-(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl(CN-BNA)、のジカルボン酸、モノカルボン酸モノエステル、ジエステル等も挙げられる。
【0062】
一般式(6)の化合物としては、2,2’-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)-ジアリール-1,1’-ビナフタレン類、2,2’-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)-ジナフチル-1,1’-ビナフタレン類が挙げられる。例えば、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシメトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシメトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシプロポキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシプロポキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いても良い。
【0063】
なお、熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーにおいて、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物とともに、上記一般式(6)におけるa、及びbの値がいずれも0であるジヒドロキシ化合物、又は、上記一般式(6)におけるa、及びbのいずれか一方が0であるジヒドロキシ化合物が、不純物として含まれていても良い。
このように、上記一般式(6)とはa及びbの少なくともいずれかの値が異なるジヒドロキシ化合物は、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物を主成分とするモノマー中、合計で、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、特に好ましくは100ppm以下の量で含まれる、さらに、上記一般式(6)とはa及びbの少なくともいずれかの値が異なるジヒドロキシ化合物の上記モノマー中の合計の含有量は、50ppm以下であることが望ましく、20ppm以下であることがより望ましい。
【0064】
一般式(6)の化合物は、種々の合成方法で製造することができる。例えば、特開2014-227387公報、特開2014-227388公報、特開2015-168658公報、及び特開2015-187098公報に記載のように、(a)1,1’-ビナフトールと、エチレングリコールモノトシレートとを反応させる方法、(b)ビナフトール類と、アルキレンオキサイド、ハロゲノアルカノール、またはアルキレンカーボネートとを反応させる方法、(c)1,1’-ビナフトールに対してエチレンカーボネートを反応させる方法、(d)1,1’-ビナフトールと、エチレンカーボネートとを反応させる方法等により製造することができる。
【0065】
一般式(6)のモノマーは、熱可塑性樹脂の性状、特に光学特性に悪影響を与え得る不純物を含んでもよい。特に、一般式(6)のモノマーは、それらの製造工程から生じる不純物としての一般式(6a)及び(6b)の以下の副生成物の1つ、または2以上を含んでいてもよい。
【化35】
【0066】
また、ある形態では、一般式(6)のモノマーは、式(6a)及び(6b)の不純物に加えて、あるいはそれらの代わりに、製造工程から生じる不純物として一般式(6c)の以下の副生成物を含んでいてもよい。
式(6a)、(6b)及び(6c)において、置換基R1、R2及びXは、式(6)のモノマーにおいて定義されたものと同じである。式(6)のモノマーと同様に式(6a)及び(6c)においても、aは1~10の範囲の整数であり、好ましくは1~4の範囲の整数であり、より好ましくは1、2又は3である。式(6c)において、変数b,c及びdは、1~10の範囲の整数であり、好ましくは1~4の範囲の整数であり、より好ましくは1、2又は3である。式(6)のモノマーと同様に式(6a)及び(6c)においても、置換基Xは、それぞれ、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、すなわち、1,2エタンジイルまたは-CH2CH2-である。
式(6)のモノマーと同様に式(6a)、(6b)及び(6c)においても、置換基R1及びR2は、好ましくは、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数6~36のヘテロアリール基であり、より好ましくは、単環式あるいは多環式の炭素数6~20のアリール基、さらに好ましくは、炭素数6~14であるアリール基であり、特に、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナンチル、4-ジベンゾ[b,d]フラニル及び4-ジベンゾ[b,d]チエニルからなる群から選択される。
【0067】
好ましくは、本発明の方法に用いられる式(6)のモノマーにおける式(6a)及び(6b)の不純物の合計重量は、式(6)のモノマー1重量部を基準として5000ppmを超えない。特に、式(6a)及び(6b)の不純物の合計重量は、式(6)のモノマー1重量部を基準として、最大でも4000ppm以下であり、さらには最大でも3000ppm以下であり、さらには最大でも2000ppm以下であることが好ましい。特に、式(6a)及び(6b)のそれぞれの不純物の重量が、式(6)のモノマー1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppm以下であることが好ましい。もし存在するならば、(6c)の不純物の量は、式(6)のモノマー1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0068】
本発明の方法で製造される熱可塑性樹脂に関する発明の具体的な形態群においては、式(6)のモノマーの変数(a)及び(b)が1であり、これを以下にモノマー(6-1)とする。モノマー(6-1)は、以下の式(6a-1)、(6-2)、及び(6b)の1つまたは2以上の副生成物を含んでもよく、場合によって(6c-1)を不純物として含んでもよい。
【化36】
【0069】
式(6-1)、(6a-1)、(6-2)及び(6c-1)において、置換基Xは、それぞれ、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基、すなわち、1,2-エタンジイルまたは-CH2CH2-である。式(6-2)において、変数eは、変数aとして定義されるものであり、特に、2又は3である。式(6-1)、(6a-1)、(6-2)、(6-b)及び(6c-1)において、置換基R1及びR2は、好ましくは、単環式あるいは多環式の炭素数6~36のアリール基、単環式あるいは多環式の環原子数6~36のヘテロアリール基であり、より好ましくは、単環式あるいは多環式の炭素数6~20のアリール基、さらに好ましくは、炭素数6~14であるアリール基であり、特に、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナンチル、4-ジベンゾ[b,d]フラニル及び4-ジベンゾ[b,d]チエニルからなる群から選択される。
【0070】
好ましくは、本発明の方法に用いられる式(6-1)のモノマーにおける式(6a-1)、(6-2)及び(6b)の不純物の合計重量は、式(6)のモノマー1重量部を基準として5000ppmを超えない。特に、式(6a-1)、(6-2)及び(6b)の不純物の合計重量は、式(6-1)のモノマー1重量部を基準として、最大でも4000ppm以下であり、さらには最大でも3000ppm以下であり、さらには最大でも2000ppm以下であることが好ましい。特に、式(6a-1)、(6-2)及び(6b)のそれぞれの不純物の重量が、式(6-1)のモノマー1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppm以下であることが好ましい。もし存在するならば、(6c-1)の不純物の量は、式(6-1)のモノマー1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0071】
本発明の方法で製造される熱可塑性樹脂に関する発明の具体的な形態群においては、式(6)のモノマーは、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(6,6’-diphenyl-2,2’-bis(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl)、すなわち、式(6)において変数(a)及び(b)がいずれも1であり、Xが1,2-エタンジイルであり、R1及びR2の置換基がいずれもフェニルであるものである。ここで、及び、本明細書の他の箇所において、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンは、6,6’-DPBHBNAとも略される。
【0072】
6,6’-DPBHBNAは、上述の式(6a-1)、(6-2)、(6b)及び(6c-1)にて、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、全てのR1及びR2の置換基がフェニルであり、式(6-2)の変数eが2又は3、特に2である、1つまたは2以上の不純物を含んでいてもよい。
式(6a-1)において、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、R1及びR2の置換基がいずれもフェニルである化合物の化学名は、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(6,6’-diphenyl-2-(2-hydroxyethoxy)-2’-hydroxy-1,1’-binaphthyl)、である。
式(6-2)において、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、eが2であり、R1及びR2の置換基がいずれもフェニルである化合物の化学名は、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(6,6’-diphenyl-2-(2-hydroxyethoxy)-2’-(2-(2-hydroxyethoxy)-ethoxy)-1,1’-binaphthyl)である。
式(6b)において、R1及びR2の置換基がいずれもフェニルである化合物の化学名は、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(6,6’-diphenyl-2,2’-bishydroxy-1,1’-binaphthyl)である。
式(6c-1)において、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、全てのR1及びR2の置換基がいずれもフェニルである化合物の化学名は、ビス[2-[[1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-6-フェニル-1-ナフチル]-6-フェニル-2-ナフチル]-オキシ]-エチル]カーボネート(bis[2-[[1-[2-(2-hydroxyethoxy)-6-phenyl-1-naphthyl]-6-phenyl-2-naphthyl]-oxy]-ethyl] carbonate)である。
【0073】
好ましくは、本発明の方法に用いられる6,6’-DPBHBNAにおける式(6a-1)、(6-2)及び(6b)の不純物であって、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、全てのR1及びR2の置換基がフェニルである不純物の合計重量は、6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として5000ppmを超えない。このように、少ない量の上述の不純物を含む6,6’-DPBHBNAは新規なものであり、よってこれもまた本発明の一部に含まれる。特に、式(6a-1)、(6-2)及び(6b)において、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、全てのR1及びR2の置換基がフェニルである不純純物の合計重量は、6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、最大でも4000ppm以下であり、さらには最大でも3000ppm以下であり、さらには最大でも2000ppm以下であることが好ましい。特に、式(6a-1)、(6-2)及び(6b)において、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、全てのR1及びR2の置換基がフェニルである不純物のそれぞれの重量が、6,6’-DPBHBNAのモノマー1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppm以下であることが好ましい。もし存在するならば、式(6c-1)において、置換基Xが1,2-エタンジイルであり、全てのR1及びR2の置換基がフェニルである不純物の量は、通常、6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0074】
6,6’-DPBHBNAは、ある種の有機溶媒と溶媒和物を形成する傾向にあり、特に、メタノール、トルエン、アニソール、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、及び、メチルエチルケトン(MEK)ともいわれる2-ブタノンやメチルイソブチルケトン(MIBK)ともいわれる4-メチル-2-ペンタノン等の脂肪族ケトンと溶媒和物を形成する傾向にある。これらの溶媒において、それぞれの有機溶媒の量は、通常、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、0.3~1.5モルの範囲である。ここで、及び本願明細書の他の箇所で、溶媒和物の用語は、結晶形態の結晶格子の中に溶媒を含む結晶形態として理解される。これらの溶媒和物は、しばしば、疑似多形("pseudo polymorphism ")と称され、基本的に溶媒を含まない多形("polymorphism ")と区別される。6,6’-DPBHBNAの結晶性の溶媒和物において、溶媒の量は、6,6’-DPBHBNAの量に対して化学量論的である必要はないものの、変化し得る。理論に固執しないものの、6,6’-DPBHBNAの結晶性の溶媒和物において存在する溶媒分子は、通常、6,6’-DPBHBNAの分子により形成される結晶格子において間隙あるいは孔を埋める。
【0075】
上述の溶媒のうち、メタノール、トルエン及びメチルエチルケトンが特に好ましく、これらが6,6’-DPBHBNAとともに形成する結晶性の溶媒和物は、通常、低いアスペクト比を有するコンパクトな結晶として得られる。このような結晶は、母液に着かず、6,6’-DPBHBNAを高い純度で有する傾向にある。よってこれらの結晶性の溶媒和物もまた、本発明の一部となり得る。
【0076】
メタノール、トルエン及びメチルエチルケトンからなる群から選択される有機溶媒との6,6’-DPBHBNAの溶媒和物は、6,6’-DPBHBNAを99%超(以上)、特に、少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上の純度とすべく、6,6’-DPBHBNAの純度向上を可能にする。
【0077】
特にさらに記載されない場合、ここで、あるいは6,6’-DPBHBNAの固体の形態の文脈において、99%超の純度とは、6,6’-DPBHBNAのそれぞれの固体の形態において含まれる、有機物の不純物の総量、すなわち、6,6’-DPBHBNA及び選択的に存在し得る溶媒以外の有機化合物の量が、1重量%未満であることを意味する。同様に、少なくとも99.5%、あるいは、少なくとも99.7%の純度とは、有機物の不純物の総量、すなわち、6,6’-DPBHBNAのそれぞれの固体の形態において含まれる、6,6’-DPBHBNA及び選択的に存在し得る溶媒以外の有機化合物の量が、最大でも0.5重量%、あるいは最大でも0.3重量%であることを意味する。
【0078】
本発明における6,6’-DPBHBNAの結晶性の溶媒和物においては、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、及び、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される、1,1´-ビナフチル部位を有する不純物の総量は、結晶性の溶媒和物の結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、しばしば、最大でも5000ppm(0.50重量%)以下であり、好ましくは、最大でも4000ppm(0.40重量%)以下であり、特に、最大でも3000ppm(0.30重量%)以下であり、さらには、最大でも2000ppm(0.20重量%)以下である。特に、これらの不純物のそれぞれの重量が、6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppm以下であることが好ましい。もし、それぞれの溶媒和物が、ビス[2-[[1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-6-フェニル-1-ナフチル]-6-フェニル-2-ナフチル]-オキシ]-エチル]カーボネートを含むならば、その量は、通常、6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0079】
本発明の結晶性溶媒和物において、溶媒の量は変化しるものの、通常、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、0.3~1.5モルの範囲であり、特に、0.3~1.2モルの範囲である。
【0080】
本発明の特定の形態は、6,6’-DPBHBNAとメタノールとの結晶性の溶媒和物であって、以下にメタノール溶媒和物というものに関する。
【0081】
メタノール溶媒和物において、メタノールの量は、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、通常、0.3~1.5モルの範囲にあり、特に、0.4~1.2モルの範囲にあり、さらには、0.6~1.1モルの範囲にある。
【0082】
22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、メタノール溶媒和物は、通常、2θ値としての下記3つの反射ピーク、すなわち、13.0±0.2°,14.9±0.2°及び21.5±0.2°;
2θ値としての以下のうち少なくとも3つ、特に、少なくとも5つ、少なくとも7つ、または全ての反射ピーク:6.2±0.2°,9.0±0.2°,10.6±0.2°,16.9±0.2°,18.2±0.2°,18.5±0.2°,19.2±0.2°,19.6±0.2°,20.9±0.2°,22.7±0.2°,24.3±0.2°,24.9±0.2°,26.2±0.2°,28.7±0.2°及び30.5±0.2°;及び、
任意選択的に、2θ値としての以下のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、あるいは10個の反射ピーク:8.4±0.2°,11.8±0.2°,12.5±0.2°,16.0±0.2°,17.7±0.2°,22.1±0.2°,26.6±0.2°,27.7±0.2°,31.6±0.2°及び32.5±0.2°を示す。
【0083】
メタノール溶媒和物は、また、その分解を示す吸熱ピークによっても特徴付けられる。メタノール溶媒和物が、20K/分の昇温速度によるISO 11357-3:2018に沿って記録される示差熱走査熱量分析計(differential scanning calorimetry;以下、DSCとも略す)によって分析されると、メタノール溶媒和物は、通常、97~101℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が108~115℃の範囲である。そして反応点(reaction point)は、通常、103~110℃の範囲にある。反応点は、DSC曲線における吸熱ピークの下側の変曲点であると理解される。上述の温度は、メタノールの含有量に応じて上記範囲内にて変動し得るといえ、メタノールの含有量が高いと温度が上昇する。
【0084】
メタノール溶媒和物は、6,6’-DPBHBNAの高温のメタノール溶液、あるいは、6,6’-DPBHBNAの高温のメタノールとトルエンの混合物の溶液からの6,6’-DPBHBNAの晶析(結晶化:crystallization)により得られる。所望のメタノール溶媒和物を得るためには、晶析の対象である6,6’-DPBHBNAは、溶媒以外の有機物に関する少なくとも97重量%の純度を有する。少なくとも97重量%の純度を有する6,6’-DPBHBNAは、高温のメタノール、あるいは高温のメタノールとトルエンの混合物に溶解されることが好ましい。混合物において、メタノールの含有量は、溶媒(混合物)の全重量に基づいて、好ましくは、少なくとも50w/w%であり90w/w%以下、すなわち、メタノールのトルエンに対する容積比で1:1~9:1であり、特に、6:4~8:2であり、例えば、7:3である。通常、6,6’-DPBHBNAの高温溶液の温度は、少なくとも45℃であり、特にメタノールの含有量が高い場合において還流温度まで高くてもよい。高温溶液における6,6’-DPBHBNAの濃度は、晶析に用いられるメタノールの量に応じて変化してもよい。メタノールの量が多い場合、通常、6,6’-DPBHBNAの低い濃度を許容する。6,6’-DPBHBNAの濃度は、通常、30重量%を超えず、通常、2~25重量%である。高温溶液からのメタノール溶媒和物の晶析は、通常、40℃未満の温度、例えば、-10から40℃未満、-5から30℃の範囲の温度への高温溶液の冷却によって達成される。40℃未満、例えば、-5から30℃の範囲の温度にて、種結晶が添加されてもよい。種結晶の量は、通常、メタノール溶媒和物として晶析させる6,6’-DPBHBNAの量に基づき、0.05~2重量%、特に、0.1~1重量%である。メタノール溶媒和物の晶析を完了させるための時間は、6,6’-DPBHBNAの濃度及び適用される温度に応じて変化し得るものの、典型的には4~24時間の範囲にある。メタノール溶媒和物の晶析は、高温溶液の濃縮、又は、濃縮と冷却の組み合わせによってもまた、達成され得る。溶液の濃縮は、溶媒の一部を留去させることによって達成され得る。
【0085】
メタノール溶媒和物は、晶析により、低いアスペクト比を有するコンパクトな結晶の形態として得られる。メタノール溶媒和物のアスペクト比は、通常、5未満であり、さらには1から4の範囲内にある。結晶のサイズは、通常、5~200μmの範囲内にある。ここで、溶媒和物の形態の結晶サイズは、非溶媒和の結晶形態と同様に、光学顕微鏡を介して100倍に拡大する黙視の検査によって得られる。ここで、与えられたサイズの範囲は、結晶の最長の寸法をさす。
【0086】
メタノール溶媒和物の結晶は、顕著な量の母液を閉じ込めない傾向にある。従って、6,6’-DPBHBNAのメタノールとの結晶性溶媒和物は、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上まで、6,6’-DPBHBNAの純度向上を可能にする。このことは、上述の通り、メタノール溶媒和物におけるメタノール以外の不純物の総量が1重量%を超えないこと、特に0.5重量%、さらには0.3重量%を超えないことを意味する。
【0087】
これとは別に、上述のメタノール溶媒和物の結晶は、長時間の乾燥によって非常に容易に分解し得るものであり、好ましくは高い温度での乾燥によるものの、メタノール溶媒和物の融点よりも低い温度で分解し得る。そこで、基本的に有機溶媒を含まず、6,6’-DPBHBNAの溶媒からの晶析によっては得られない、6,6’-DPBHBNAの新規な結晶多形体が得られた。この結晶多形体を以下、6,6’-DPBHBNAの結晶形態A、あるいは単に形態Aという。形態Aは、顕著な量の溶媒を含まないため、本発明における熱可塑性樹脂の製造に特に有用である。
【0088】
形態Aは、通常、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、0.1モルを超える裕樹溶媒、特に、0.05モルを超える溶媒を含まない。形態Aにおける有機溶媒の総量は、通常、1重量%未満である。また、形態Aにおけるメタノールの量は、通常、0.1重量%未満である。
【0089】
22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、形態Aは、通常、2θ値としての下記6つの反射ピーク、すなわち、13.0±0.2°,14.9±0.2°,20.9±0.2°,21.4±0.2°,21.5±0.2°及び23.7±0.2°;
2θ値としての以下のうち少なくとも5つ、特に、少なくとも7つ、少なくとも9つ、または全ての反射ピーク:6.5±0.2°,8.6±0.2°,11.0±0.2°,13.2±0.2°,14.9±0.2°,16.2±0.2°,17.3±0.2°,17.8±0.2°,18.4±0.2°及び19.0±0.2°;及び、
任意選択的に、2θ値としての以下のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、あるいは9つの反射ピーク:9.4±0.2°,10.4±0.2°,15.5±0.2°,22.5±0.2°,22.9±0.2°,24.5±0.2°,25.9±0.2°,27.8±0.2°及び30.8±0.2°を示す。
【0090】
形態Aは、また、その溶解を示す吸熱ピークによっても特徴付けられる。形態Aが、20K/分の昇温速度によるISO 11357-3:2018に沿って記録されるDSCによって分析されると、形態Aは、通常、112~114℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が124~126℃の範囲である。そして反応点(reaction point)は、通常、117~120℃の範囲にある。
【0091】
形態Aは、低いアスペクト比を有するコンパクトな結晶の形態であるメタノール溶媒和物の分解によって得られる。形態Aの結晶のアスペクト比は、通常、5未満であり、さらには1から4の範囲内にある。形態Aの結晶のサイズは、通常、5~200μmの範囲内にあり、溶媒和物の形態の結晶サイズは、光学顕微鏡を介して100倍に拡大する黙視の検査によって得られる。メタノール溶媒和物の分解は、通常、長時間の乾燥によって生じるものであり、好ましくは高い温度での乾燥によるものの、メタノール溶媒和物の融点よりも低い温度で生じる。通常、乾燥は、得られる6,6’-DPBHBNAにおけるメタノールの量が0.1重量%未満になるまで行われる。乾燥は、30℃から95℃の温度範囲、特に、30℃から70℃において行われてもよい。
【0092】
6,6’-DPBHBNAの形態Aの結晶は、通常、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上の純度を有する。上述の通り、このことは、形態Aにおける溶媒以外の不純物の総量が1重量%を超えないこと、特に0.5重量%、さらには0.3重量%を超えないことを意味する。特に、形態Aにおいて、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、及び、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される不純物の総量は、形態Aの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、しばしば、最大でも5000ppm以下であり、好ましくは、最大でも4000ppm以下であり、特に、最大でも3000ppm以下であり、さらには、最大でも2000ppm以下である。特に、これらの不純物のそれぞれの重量が、形態Aの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppm以下であることが好ましい。もし、形態Aが、ビス[2-[[1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-6-フェニル-1-ナフチル]-6-フェニル-2-ナフチル]-オキシ]-エチル]カーボネートを含むならば、その量は、通常、形態Aの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0093】
さらに、本発明の特定の形態は、6,6’-DPBHBNAの結晶性のメタノール溶媒和物と形態Aとの混合物である、結晶性の6,6’-DPBHBNAに関する。この混合物は、しばしば、メタノール溶媒和物の不完全な分解により得られる。この混合物は、メタノール溶媒和物と形態Aとの両方のX線粉末回折図の反射ピークを示すことにより、特徴付けられる。特に、その混合物は、22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、2θ値としての下記3つの反射ピーク、すなわち、20.9±0.2°,21.4±0.2°及び23.7±0.2°;及び、
2θ値としての以下のうち少なくとも3つ、特に、少なくとも5つ、少なくとも7つ、少なくとも9つの反射ピーク:6.2±0.2°,6.5±0.2°,8.6±0.2°,9.0±0.2°,10.6±0.2°,11.0±0.2°,13.2±0.2°,14.9±0.2°,16.2±0.2°,16.9±0.2°,17.3±0.2°,17.8±0.2°,18.2±0.2°,18.4±0.2°,18.5±0.2°,19.0±0.2°,19.2±0.2°,19.6±0.2°,20.9±0.2°,22.7±0.2°,24.3±0.2°,24.9±0.2°,26.2±0.2°,28.7±0.2°及び30.5±0.2°; を示し、
任意選択的に、メタノール溶媒和物と形態Aとについて観測された上述のさらなる反射ピークをさらに示し得る。
【0094】
メタノール溶媒和物と形態Aとの混合物が、20K/分の昇温速度によるISO 11357-3:2018に沿って記録されるDSCによって分析されると、通常、2つの吸熱ピークが観測される。一つのピークは、97~101℃の範囲で開始点を有し、ピークの最大値が108~115℃の範囲にあり、そして第二のピークは、112~114℃の範囲で開始点を有し、ピークの最大値が124~126℃の範囲である。
【0095】
メタノール溶媒和物と形態Aとの混合物は、通常、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上の純度を有する。この混合物において、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、及び、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される不純物の総量は、メタノール溶媒和物と形態Aとの混合物に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、しばしば、最大でも5000ppm以下であり、好ましくは、最大でも4000ppm以下であり、特に、最大でも3000ppm以下であり、さらには、最大でも2000ppm以下である。
【0096】
本発明のさらなる特定の形態は、6,6’-DPBHBNAとトルエンとの結晶性の溶媒和物であって、以下にトルエン溶媒和物というものに関する。
【0097】
トルエン溶媒和物において、トルエンの量は、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、通常、0.3~1.5モルの範囲にあり、特に、0.3~1.2モルの範囲にあり、さらには、0.3~0.5モルの範囲にある。
【0098】
22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、トルエン溶媒和物は、通常、2θ値としての下記3つの反射ピーク、すなわち、5.2±0.2°,7.7±0.2°及び21.6±0.2°;及び、
2θ値としての以下のうち少なくとも3つ、特に、少なくとも5つ、少なくとも7つ、または全ての反射ピーク:8.2±0.2°,9.1±0.2°,10.6±0.2°,10.8±0.2°,11.6±0.2°,12.6±0.2°,13.6±0.2°,14.7±0.2°,15.0±0.2°,15.7±0.2°,16.7±0.2°,17.1±0.2°,18.0±0.2°,18.5±0.2°,19.4±0.2°,19.9±0.2°,20.8±0.2°,21.0±0.2°,22.2±0.2°,22.7±0.2°,24.1±0.2°,25.0±0.2°,25.7±0.2°,26.5±0.2°,27.1±0.2°及び27.6±0.2°;を示す。
【0099】
トルエン溶媒和物は、また、その分解を示す吸熱ピークによっても特徴付けられる。トルエン溶媒和物が、20K/分の昇温速度によるISO 11357-3:2018に沿って記録されるDSCによって分析されると、トルエン溶媒和物は、通常、105~108℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が112~115℃の範囲である。そして反応点(reaction point)は、通常、109~112℃の範囲にある。
【0100】
トルエン溶媒和物は、6,6’-DPBHBNAの高温のトルエンであって、5重量%超の他の有機溶媒、特に1重量%超のメタノールを含まないトルエンの溶液からの6,6’-DPBHBNAの晶析により得られる。所望のトルエン溶媒和物を得るためには、晶析の対象である6,6’-DPBHBNAは、溶媒以外の有機物に関する少なくとも97重量%の純度を有する。少なくとも97重量%の純度を有する6,6’-DPBHBNAが、高温のトルエンに溶解されることが好ましい。通常、6,6’-DPBHBNAの高温溶液の温度は、少なくとも60℃であり、還流温度まで高くてもよい。高温溶液における6,6’-DPBHBNAの濃度は、通常、50重量%を超えず、通常、10~40重量%である。高温溶液からのトルエン溶媒和物の晶析は、通常、50℃未満の温度、例えば、-10から50℃未満、-5から40℃の範囲の温度への高温溶液の冷却によって達成される。50℃未満、例えば、-5から40℃の範囲の温度にて、種結晶が添加されてもよい。種結晶の量は、通常、トルエン溶媒和物として晶析させる6,6’-DPBHBNAの量に基づき、0.05~2重量%、特に、0.1~1重量%である。トルエン溶媒和物の晶析を完了させるための時間は、6,6’-DPBHBNAの濃度及び適用される温度に応じて変化し得るものの、典型的には4~24時間の範囲にある。トルエン溶媒和物の晶析は、高温溶液の濃縮、又は、濃縮と冷却の組み合わせによってもまた、達成され得る。溶液の濃縮は、トルエンの一部を留去させることによって達成され得る。
【0101】
トルエン溶媒和物は、晶析により、低いアスペクト比を有するコンパクトな結晶の形態として得られる。トルエン溶媒和物のアスペクト比は、通常、5未満であり、さらには1から4の範囲内にある。結晶のサイズは、通常、5~300μmの範囲内にある。トルエン溶媒和物の結晶は、顕著な量の母液を閉じ込めない傾向にある。従って、6,6’-DPBHBNAのトルエンとの結晶性溶媒和物は、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上まで、6,6’-DPBHBNAの純度向上を可能にする。
【0102】
本発明のさらなる特定の形態は、6,6’-DPBHBNAとメチルエチルケトン(MEK)との結晶性の溶媒和物であって、以下にMEK溶媒和物というものに関する。
【0103】
MEK溶媒和物において、MEKの量は、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、通常、0.3~1.5モルの範囲にあり、特に、0.4~1.0モルの範囲にあり、さらには、0.5~0.8モルの範囲にある。
【0104】
22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、MEK溶媒和物は、通常、2θ値としての下記3つの反射ピーク、すなわち、7.0±0.2°,16.8±0.2°及び23.4±0.2°;及び、
2θ値としての以下のうち少なくとも3つ、特に、少なくとも5つ、少なくとも7つ、または全ての反射ピーク:5.0±0.2°,7.5±0.2°,12.6±0.2°,13.4±0.2°,14.5±0.2°,15.4±0.2°,15.7±0.2°,18.3±0.2°,19.4±0.2°,20.6±0.2°,21.5±0.2°,22.7±0.2°,24.1±0.2°,25.6±0.2°,26.2±0.2°,26.6±0.2°及び30.8±0.2°;を示す。
【0105】
MEK溶媒和物は、また、その分解を示す吸熱ピークによっても特徴付けられる。MEK溶媒和物が、20K/分の昇温速度によるISO 11357-3:2018に沿って記録されるDSCによって分析されると、MEK溶媒和物は、通常、87~91℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が95~100℃の範囲である。そして反応点(reaction point)は、通常、94~98℃の範囲にある。
【0106】
MEK溶媒和物は、6,6’-DPBHBNAの高温のMEKであって、5重量%超の他の有機溶媒、特に0.5重量%超のメタノールを含まないMEKの溶液からの6,6’-DPBHBNAの晶析により得られる。所望のMEK溶媒和物を得るためには、晶析の対象である6,6’-DPBHBNAは、溶媒以外の有機物に関する少なくとも97重量%の純度を有する。少なくとも97重量%の純度を有する6,6’-DPBHBNAが、高温のMEKに溶解されることが好ましい。通常、6,6’-DPBHBNAの高温溶液の温度は、少なくとも60℃であり、還流温度まで高くてもよい。高温溶液における6,6’-DPBHBNAの濃度は、通常、50重量%を超えず、通常、10~40重量%である。高温溶液からのMEK溶媒和物の晶析は、通常、50℃未満の温度、例えば、-10から50℃未満、-5から40℃の範囲の温度への高温溶液の冷却によって達成される。50℃未満、例えば、-5から40℃の範囲の温度にて、種結晶が添加されてもよい。種結晶の量は、通常、MEK溶媒和物として晶析させる6,6’-DPBHBNAの量に基づき、0.05~2重量%、特に、0.1~1重量%である。MEK溶媒和物の晶析を完了させるための時間は、6,6’-DPBHBNAの濃度及び適用される温度に応じて変化し得るものの、典型的には4~24時間の範囲にある。MEK溶媒和物の晶析は、高温溶液の濃縮、又は、濃縮と冷却の組み合わせによってもまた、達成され得る。溶液の濃縮は、MEKの一部を留去させることによって達成され得る。
【0107】
MEK溶媒和物は、晶析により、低いアスペクト比を有するコンパクトな結晶の形態として得られる。MEK溶媒和物のアスペクト比は、通常、5未満であり、さらには1から4の範囲内にある。結晶のサイズは、通常、1~300μmの範囲内にある。MEK溶媒和物の結晶は、顕著な量の母液を閉じ込めない傾向にある。従って、6,6’-DPBHBNAのMEKとの結晶性溶媒和物は、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上まで、6,6’-DPBHBNAの純度向上を可能にする。
【0108】
上述の6,6’-DPBHBNAの結晶形態の高い純度にも関わらず、それらは非晶性(アモルファス)形態Bに変換され得る。非晶性の形態Bは安定であり、長期間保存により、あるいは粉砕(grinding)によって砕かれた後であっても、結晶化する傾向にない。非晶性の形態Bは、結晶性の形態のいずれかを溶解させ、その後で急速に冷却することによって調製される。好ましくは、それぞれの結晶性の形態は、完全に溶融されて清澄な溶液が得られるまで、その融点よりも少なくとも5K高い温度に加熱される。もし、溶液の調製のために溶媒和物が開始物質として用いられる場合には、好ましくは、いずれの溶媒も真空化にさらすことで除外される。そして溶液は、好ましくは、少なくとも5K/分の冷却独度、例えば5~50K/分の冷却独度で、急速に冷却される。それにより、形態Bが固体の非晶質(glass)として得られる。この非晶質は、粉末を得るために、例えば粉砕(grinding)等によって砕かれ得る。晶析を防ぐために、砕かれる作業(comminution)は、100℃よりも大幅に低く、例えば、5~40℃の範囲の温度において行われる。この粉末においても、粒子は、未だ非晶質の形態Bとして存在する。
【0109】
22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、形態Bは、通常、5°~40°の範囲における複数の回折角にて2θ値としての反射ピークを示さず、むしろ、実質的に結晶層が存在しないことを示す幅広いハロー(halo)が観察される。
【0110】
形態Bはまた、20K/分の昇温速度におけるISO 11357-3:2018に沿ったDSCによって分析されると、80~200℃の範囲で吸熱ピークを示さないことによっても、特徴付けられる。むしろ、このような条件下で、非晶性の形態Bは、105~125℃のガラス転移点を示し得る。
【0111】
6,6’-DPBHBNAの非晶性の形態Bは、通常、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには99.7%以上の純度を有する。上述の通り、このことは、形態Bにおける溶媒以外の不純物の総量が1重量%を超えないこと、特に0.5重量%、さらには0.3重量%を超えないことを意味する。特に、形態Bにおいて、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、及び、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される不純物の総量は、形態Bの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、しばしば、最大でも5000ppm以下であり、好ましくは、最大でも4000ppm以下であり、特に、最大でも3000ppm以下であり、さらには、最大でも2000ppm以下である。特に、これらの不純物のそれぞれの重量が、非晶性の形態Bの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppm以下であることが好ましい。もし、非晶性の形態Bが、ビス[2-[[1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-6-フェニル-1-ナフチル]-6-フェニル-2-ナフチル]-オキシ]-エチル]カーボネートを含むならば、その量は、通常、非晶性の形態Bの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0112】
驚くべきことに、2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンのエタノール溶液からの晶析は、6,6’-DPBHBNAのエタノール溶媒和物ではなく、さらに新規な6,6’-DPBHBNAの多形体であって、以下に形態Cという多形体を生じた。形態Cは、顕著な量の溶媒を含まないため、本発明における熱可塑性樹脂の製造に特に有用である。
【0113】
形態Cは、通常、6,6’-DPBHBNAの1モル当たり、0.1モルを超える裕樹溶媒、特に、0.05モルを超える溶媒を含まない。形態Cにおける有機溶媒の総量は、通常、1重量%未満であり、特に、最大でも0.5重量%、あるいは最大でも0.1重量%である。
【0114】
22℃におけるCu Kα1線の照射を用いて記録されたX線粉末回折図において、形態Cは、通常、2θ値としての下記3つの反射ピーク、すなわち、5.1±0.2°,7.6±0.2°及び21.0±0.2°;及び、
2θ値としての以下のうち少なくとも3つ、特に、少なくとも5つ、少なくとも7つ、または全ての反射ピーク:8.2±0.2°,9.2±0.2°,10.4±0.2°,10.8±0.2°,11.6±0.2°,12.8±0.2°,13.4±0.2°,14.5±0.2°,15.2±0.2°,15.6±0.2°,16.6±0.2°,17.4±0.2°,17,9±0.2°,18.5±0.2°,19.2±0.2°,19.9±0.2°,20.4±0.2°,21.8±0.2°,22.2±0.2°,22.6±0.2°,13.4±0.2°,24.0±0.2°,25.7±0.2°,27.3±0.2°及び27.9±0.2°;を示す。
【0115】
形態CのX線粉末回折におけるパターンは、トルエン溶媒和物のX線粉末回折におけるパターンと概ね同一であり、このことは、形態Cにおける6,6’-DPBHBNAの分子が、トルエン溶媒和物における結晶格子と同様に配置されていることを示す。
【0116】
形態Cはまた、その溶解を示す吸熱ピークによっても特徴付けられる。形態Cが、20K/分の昇温速度によるISO 11357-3:2018に沿って記録されるDSCによって分析されると、形態Cは、通常、115~118℃の範囲で開始点を有する吸熱ピークを示し、ピークの最大値が124~126℃の範囲にある。そして反応点(reaction point)は、通常、120~122℃の範囲にある。
【0117】
形態Cは、6,6’-DPBHBNAの高温のエタノールからの6,6’-DPBHBNAの晶析により得られる。所望の形態Cを得るためには、晶析の対象である6,6’-DPBHBNAは、通常、溶媒以外の有機物に関する少なくとも97重量%の純度を有する。少なくとも97重量%の純度を有する6,6’-DPBHBNAが、高温のエタノールに溶解されることが好ましい。通常、6,6’-DPBHBNAの高温溶液の温度は、少なくとも45℃であり、還流温度まで高くてもよい。高温溶液における6,6’-DPBHBNAの濃度は、通常、30重量%を超えず、通常、2~25重量%である。高温溶液からの形態Cの晶析は、通常、40℃未満の温度、例えば、-10から40℃未満、-5から30℃の範囲の温度への高温溶液の冷却によって達成される。40℃未満、例えば、-5から30℃の範囲の温度にて、種結晶が添加されてもよい。種結晶の量は、通常、形態Cとして晶析させる6,6’-DPBHBNAの量に基づき、0.05~2重量%、特に、0.1~1重量%である。形態Cの晶析を完了させるための時間は、6,6’-DPBHBNAの濃度及び適用される温度に応じて変化し得るものの、典型的には4~24時間の範囲にある。形態Cの晶析は、高温溶液の濃縮、又は、濃縮と冷却の組み合わせによってもまた、達成され得る。溶液の濃縮は、溶媒の一部を留去させることによって達成され得る。
【0118】
形態Cは、晶析により、低いアスペクト比を有するコンパクトな結晶の形態として得られる。形態Cのアスペクト比は、通常、5未満であり、さらには1から4の範囲内にある。結晶のサイズは、通常、2~250μmの範囲内にある。
【0119】
形態Cの結晶は、顕著な量の母液を閉じ込めない傾向にある。従って、6,6’-DPBHBNAの結晶性の形態Cは、少なくとも99%、さらには少なくとも99.5%あるいはそれ以上、さらには少なくとも99.7%あるいはそれ以上まで、6,6’-DPBHBNAの純度向上を可能にする。上述の通り、このことは、形態Cにおける溶媒以外の不純物の総量が1重量%を超えないこと、特に0.5重量%、さらには0.3重量%を超えないことを意味する。特に、形態Cにおいて、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、及び、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される不純物の総量は、形態Cの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、しばしば、最大でも5000ppm以下であり、好ましくは、最大でも4000ppm以下であり、特に、最大でも2000ppm以下であり、さらには、最大でも1000ppm以下である。特に、これらの不純物のそれぞれの重量が、形態Cの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として、最大でも2000ppm以下であり、さらには最大でも1500ppm以下であり、さらには最大でも1000ppmであることが好ましい。もし、形態Cが、ビス[2-[[1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-6-フェニル-1-ナフチル]-6-フェニル-2-ナフチル]-オキシ]-エチル]カーボネートを含むならば、その量は、通常、形態Cの結晶に含まれる6,6’-DPBHBNAの1重量部を基準として2000ppmを超えず、しばしば最大でも1500ppm以下である。
【0120】
本発明における6,6’-DPBHBNAの固体の形態、すなわち、非晶性の形態Bと同様に、メタノール溶媒和物、トルエン溶媒和物、メチルエチルケトン溶媒和物、および結晶性の形態A及びCも、通常、3.0未満、しばしば2.5未満あるいは2.0未満、特に、1.5未満、さらには1.0未満や0.75未満、さらに0.5未満ほどまで低い黄色度(Y.I.)を有する。ここでの全てのY.I.値は、ジクロロメタンにおける5w/w%の6,6’-DPBHBNA溶液でASTM E 313に沿って測定されたものである。
【0121】
本発明における6,6’-DPBHBNAの固体の形態は、ジクロロメタンにおける5w/w%の6,6’-DPBHBNA溶液で測定された1.0ntu未満、しばしば0.8ntu未満あるいは0.6ntu未満、といった低いヘーズを通常、有する。ここでの濁度(turbidity)は、ジクロロメタンにおける5w/w%の6,6’-DPBHBNA溶液で測定され、比濁法濁度単位(nephelometric turbidity units;ntu)として示されたものである。本発明における6,6’-DPBHBNAの結晶性の固体のヘーズは、例えば、0.4ntu、0.35ntu未満、あるいは0.30ntu未満等、さらには0.2ntu以下ほど等のようにさらに低くなり得る。
【0122】
本発明の熱可塑性樹脂、すなわち、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、及び、ポリカーボネート樹脂、又は、それらの少なくとも2つ以上の混合物は、所定の不純物量、純度等を有するモノマーによって製造されることが好ましい。
例えば、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物が結晶性の溶媒和物の形態であれば、ジヒドロキシ化合物1モル当たり、0.3~1.2モルの有機溶媒をその結晶に含むもののを用いて熱可塑性樹脂を製造することが好ましい。有機溶媒としては、メタノール、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0123】
式(6)のモノマーとして、上述のように適度な範囲の含有量の有機溶媒を含むものを用いると効率的な熱可塑性樹脂の製造が可能となり得る。例えば、ジヒドロキシ化合物1モル当たり、0.3~1.2モル、0.3~1.0モル、あるいは0.3~0.5モル程度の有機溶媒を含むもののを用いて熱可塑性樹脂を製造する場合、当該モノマーが飛散してしまうことが防止されつつ、高純度の熱可塑性樹脂を製造することが可能となり得る。
【0124】
上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物が結晶性の形態である場合において、0.1モル未満の有機溶媒をその結晶に含むものを用いて熱可塑性樹脂を製造してもよい。
結晶性の形態であるジヒドロキシ化合物においては、上述のアスペクト比が最大で5:1のもの、例えば、最大で3:1、あるいは最大で1:1のアスペクト比を有する結晶を用いてもよい。
【0125】
一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物として、有機物質に基づく少なくとも99.0重量%(あるいは99.0重量%以上)の純度を有するもの、好ましくは99.5重量%以上の純度を有するもの、特に好ましくは99.7重量%の純度を有するものを用いることが好ましい。また、0.1モル未満の有機溶媒、例えば、0.05モル未満の有機溶媒、好ましくは0.03モル未満の有機溶媒を含む一般式(6)のジヒドロキシ化合物を用いて熱可塑性樹脂を製造してもよい。
【0126】
一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物として、ジクロロメタンにおける5w/w%溶液でASTM E 313に沿って測定された黄色度(Y.I.)の値が、3.0未満のものが好ましく、より好ましくは、黄色度の値は2.0未満、さらに好ましくは1.0未満である。
また、一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物として、ジクロロメタンにおける5w/w%の溶液で測定されたヘーズが1.0ntu未満であることが好ましく、より好ましくは、0.7ntu未満であり、さらに好ましくは0.5ntu未満である。
【0127】
一般式(6)で表されるいずれかのジヒドロキシ化合物を用いて熱可塑性樹脂を製造する場合において、当該ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物等の不純物、例えば、類似の分子構造を有する不純物の合計量は、当該ジヒドロキシ化合物の重量を基準として0.5重量%未満であることが好ましく、より好ましくは、0.3重量%未満であり、さらに好ましくは0.1重量%未満である。
例えば、6-6’DPBHBNAをモノマーとして用いる場合における、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、及び、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンの不純物の合計量が、6-6’DPBHBNAの重量を基準として0.5重量%未満であることが好ましく、より好ましくは、0.3重量%未満であり、さらに好ましくは0.1重量%未満である。
【0128】
特定のジヒドロキシ化合物における不純物が、0.5質量%以上含まれる場合、反応効率が落ち、到達分子量が低下する場合がある。また、特にヒドロキシエトキシ基の繰り返しが多い不純物が多く含まれる場合には、得られる熱可塑性樹脂の屈折率が低下する傾向がある。
一方、特定のジヒドロキシ化合物における不純物が0.5質量%未満、含まれる場合、樹脂中に基本的構造に類似した構造が含まれることになり、溶融粘度が小さくなることにより成形性が向上し、即ち樹脂の流れが良くなり、さらに光学レンズなどの成形体の耐衝撃性が向上する傾向がある。
例えば、式(6)のモノマー1重量部を基準として1ppb~5000ppmを超えない範囲で不純物が含むことが好ましい。
また、不純物が0.5質量%未満である式(6)のモノマー、例えば、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン、2,2´-ビスヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン及び2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンからなる群から選択される不純物に由来する構成単位を0.5重量%未満含むモノマーを用いて、樹脂、樹脂組成物、光学レンズ、光学フィルム等を製造することが好ましい。
【0129】
また、熱可塑性樹脂は、光学用途に特に適した性状を有することが好ましく、例えば、屈折率とアッベ数とのバランスが良好であるものが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂において、屈折率が1.660より高く、より好ましくは1.668より高く、さらに、アッベ数が19未満、例えば、13以上19未満、あるいは15以上19未満であるものが好ましい。さらに、上述の屈折率とアッベ数の要件が満たされる上に、屈折率nDとアッベ数νとの間で、-0.0002ν+1.6718<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされることが好ましく、屈折率nDとアッベ数νとの間で、-0.004v+1.744<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされることがより好ましく、屈折率nDとアッベ数νとの間で、、-0.02v+2.04<nD<-0.024ν+2.124の関係が満たされることがさらに好ましい。
【0130】
本発明による一般式(1)で表される構成単位を有する熱可塑性樹脂は、一般式(6)の化合物に加えて、芳香族ジヒドロキシ化合物や脂肪族ジヒドロキシ化合物(例えば、フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物やビナフトール類)をジヒドロキシ成分として併用することができる。
【0131】
好ましくは、本発明の熱可塑性樹脂は、上記一般式(6)で表される化合物に加え、下記一般式(7)で示される化合物及び/又は下記一般式(8)で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用して製造することができる。
【化37】
なお、式(7)中のR’
1~R’
20は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Yは炭素数1~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
c及びdは、それぞれ1~10の整数である。
また、式(8)中のR’’
1~R’’
16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は、炭素数7~17のアラルキル基を示し、
Zは炭素数2~8のアルキレン基、炭素数5~12のシクロアルキレン基、または炭素数6~20のアリーレン基であり、
e及びfは、それぞれ1~10の整数である。
【0132】
式(7)で表されるジヒドロキシ化合物の例として、2,2’-ビス(1-ヒドロキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(3-ヒドロキシプロピルオキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(4-ヒドロキシブトキシ)-1,1’-ビナフチル等が挙げられる。なかでも2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’- ビナフチルが好ましい。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いても良い。
【0133】
式(8)で表されるジヒドロキシ化合物の例として、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン等が挙げられる。なかでも9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン及び9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いても良い。
【0134】
例えば、式(7)または(8)で表されるジヒドロキシ化合物の例として、以下の一般式(9)で表わされるものが挙げられる。
【化38】
【0135】
なお、熱可塑性樹脂を製造するためのモノマーにおいて、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物とともに、上記一般式(6)におけるc、及びdの値がいずれも0であるジヒドロキシ化合物、又は、上記一般式(6)におけるc、及びdのいずれか一方が0であるジヒドロキシ化合物が、不純物として含まれていても良い。
このように、上記一般式(6)とはc及びdの少なくともいずれかの値が異なるジヒドロキシ化合物は、上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物を主成分とするモノマー中、合計で、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、特に好ましくは100ppm以下の量で含まれる、さらに、上記一般式一般式(6)とはc及びdの少なくともいずれかの値が異なるジヒドロキシ化合物の上記モノマー中の合計の含有量は、50ppm以下であることが望ましく、20ppm以下であることがより望ましい。
上述の一般式(6)に関する不純物の含有量に関しては、一般式(7)又は(8)で表されるジヒドロキシ化合物においても同様である。すなわち、上記一般式(7)又は(8)で表されるジヒドロキシ化合物とともに、上記一般式(7)又は(8)におけるe、及びfの値がいずれも0であるジヒドロキシ化合物、又は、上記一般式(7)又は(8)におけるe、及びfのいずれか一方が0であるジヒドロキシ化合物が、不純物として含まれていても良い。
そしてこれらの不純物は、上記一般式(7)又は(8)で表されるジヒドロキシ化合物を主成分とするモノマー中、合計で、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下、特に好ましくは100ppm以下の量で含まれる、さらに、上記不純物の上記モノマー中の合計の含有量は、50ppm以下であることが望ましく、20ppm以下であることがより望ましい。
【0136】
一般式(7)及び(8)の化合物は、種々の合成方法で製造することができる。例えば、特許5442800号公報、及び、特開2014-028806公報に記載のように、(a)塩化水素ガス及びメルカプトカルボン酸の存在下、フルオレノン類とヒドロキシナフタレン類とを反応させる方法、(b)酸触媒(及びアルキルメルカプタン)の存在下、9-フルオレノンとヒドロキシナフタレン類とを反応させる方法、(c)塩酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とヒドロキシナフタレン類とを反応させる方法、(d)硫酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とヒドロキシナフタレン類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒で晶析させてビスナフトールフルオレンを製造する方法などを利用して9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類を得て、これに[XO]a基及び[XO]b基に対応する化合物(アルキレンオキサイドやハロアルカノールなど)を反応させることにより製造することができる。例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフチル]フルオレンは、9,9-ビス[6-ヒドロキシナフチル]フルオレンと2-クロロエタノールとをアルカリ条件下にて反応させることにより得てもよい。
【0137】
上記以外に併用することができる芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、及びビスフェノールZ等が例示される。
【0138】
(ビニル末端基量)
本発明の熱可塑性である、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、及び、ポリカーボネート樹脂は、上述の一般式(6)~(9)等で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用し、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質と反応させることで得られる。しかし、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を製造するためのポリマー化工程においては、上記一般式(6)~(9)の化合物における末端の-OROH基の一方、あるいは両方が、例えば-OC=CH基として表されるビニル末端基に変換された不純物が発生し得る。
例えば、下記式(v-1)に示されるビニル基を有する不純物が、本願明細書に記載のモノマー、樹脂、樹脂組成物、光学レンズ、光学フィルム中に存在し得る。
【化39】
上記ビニル基は、モノマー合成・精製段階で発生し、モノマー中に含まれ得る。また樹脂重合、添加剤の混練段階においても発生・増加し得る。該ビニル基は、ポリマーの着色原因の1つとして考え得るが、一方で含有量がわずかである場合、樹脂の曲げ強度や耐衝撃性が向上する場合がある。
このようなビニル末端構造を有する不純物の量は、通常わずかであり、製造されたポリマーは、精製することなしに熱可塑性樹脂として使用可能である。
例えば、ポリカーボネート樹脂中のビニル基量は、下記<9.ポリカーボネート樹脂のビニル末端基量>に記載の
1H-NMR測定を行い、下記式(A)の積分比により含有量を決定し得る。好ましいビニル末端基量は、0.0001~5.0であり、より好ましくは0.01~3.0であり、さらに好ましくは0.1~1.0である。
【数1】
なお、上記式(A)のHkとは、上記式(v-1)に対応する下記式(v-2)におけるHkをさす。
【化40】
その他、本願の樹脂には、分子量(Mw)1000以下のオリゴマーや、2つ以上のモノマーが互いにカーボネート結合して環状の構造体を形成する場合がある。このようなオリゴマーや環状体は、LC-MS等により分析でき、例えば合計で2.5質量%以下、含まれることが好ましく、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、含まれる。
【0139】
モノマーに含まれる金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で1000重量ppm以下の量であることが好ましい(例えば、100重量ppm、10重量ppm)。
得られる樹脂、樹脂組成物中の金属が、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、ZnおよびSnを合計で1000重量ppm以下であることが好ましい。
金属が1000重量ppm以下であると、得られる樹脂の着色が少なく、重合中に触媒活性が低下する恐れが少ない。また、好ましくは1重量ppb以上(さらに好ましくは1重量ppm以上)含まれることにより、触媒添加の手間が省け、触媒効果が発揮されることにより触媒添加量が低減できる可能性があり、製造コストの低下に繋がる場合もあり得る。このような金属濃度は、例えば、以下の方法で測定する。
<金属分析>
試料の硫酸炭化を行った後、ICP-MSにより金属濃度を測定した。
即ち、合成石英ビーカーに試料2gを秤量し、炭化する直前に2.5ml、炭化中に0.1mlの硫酸を加えホットプレート上で加熱し炭化した。引き続き、石英皿でフタをし、電気炉で500℃、10時間、加熱し、炭化した。さらに、硫酸を加え加熱し乾固、硝酸を加え加熱し乾固することにより、加熱酸分解を行った。硝酸水溶液を加え50mLとし、50℃に加温し、ICP-MSによる定量分析を行った。
ICP-MS装置:株式会社島津製作所:ICPE-9000
【0140】
ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂の製造に用いられる炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97~1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98~1.10モルの比率である。
【0141】
また、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂の製造に用いられ得るジカルボン酸、モノカルボン酸モノエステル、ジエステル化合物は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97~1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98~1.10モルの比率である。
【0142】
また、熱可塑性樹脂の製造に用いられる上述のエステル交換の触媒のうち、塩基性化合物触媒としては、特にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び含窒素化合物等が挙げられる。
【0143】
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩もしくは2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩もしくはリチウム塩等が用いられる。
【0144】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0145】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類;プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基もしくは塩基性塩等が用いられる。
【0146】
エステル交換触媒としては、チタン、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛等の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0147】
エステル交換触媒としては、具体的には、テトラブトキシチタン等のアルコキシチタン、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0148】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10-9~10-3モルの比率で、好ましくは10-7~10-4モルの比率で用いられる。
【0149】
溶融重縮合法は、前記の原料及び触媒を用いて、加熱下で、さらに常圧又は減圧下で、エステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。
【0150】
本組成系での溶融重縮合は、一般式(6)で表される化合物、及び、炭酸ジエステルを反応容器中で溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物を滞留させた状態で、反応を行うことが望ましい。滞留させるために、反応装置を閉塞したり、減圧したり加圧したりするなど圧力を制御することができる。この工程の反応時間は、20分以上240分以下であり、好ましくは40分以上180分以下、特に好ましくは60分以上150分以下である。この際、副生するモノヒドロキシ化合物を生成後すぐに留去すると、最終的に得られる熱可塑性樹脂は高分子量体の含有量が少ない。しかし、副生したモノヒドロキシ化合物を反応容器中に一定時間滞留させると、最終的に得られる熱可塑性樹脂は高分子量体の含有量が多いものが得られる。
【0151】
溶融重縮合反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であっても、スクリューを装備した押出機型であってもよい。また、重合物の粘度を勘案してこれらの反応装置を適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0152】
本発明に使用される熱可塑性樹脂の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性及び加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法を好適に実施できる。酸性物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類;亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類;ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類;トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類;ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類;ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物;ジメチル硫酸等のアルキル硫酸;塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01~50倍モル、好ましくは0.3~20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、樹脂の耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0153】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を、0.1~1mmHgの圧力、200~350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。この工程には、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0154】
本発明の熱可塑性樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過等が好適に実施される。フィルターのメッシュは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は、当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0155】
なお、ポリカーボネート樹脂の成形方法としては、射出成形の他、圧縮成形、注型、ロール加工、押出成形、延伸などが例示されるがこれに限らない。
【0156】
(4)光学成形体
本発明の熱可塑性樹脂を用いて光学成形体を製造できる。例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明の熱可塑性樹脂は、成形性及び耐熱性に優れているので、射出成形が必要となる光学レンズにおいて特に有利に使用することができる。成形の際には、本発明の熱可塑性樹脂を他のポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂などの他の樹脂と混合して使用することが出来る。また、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、離型剤、紫外線吸収剤、可塑剤、相溶化剤等の添加剤を混合しても構わない。
【0157】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及び3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂中の酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部であることが好ましい。
【0158】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。熱可塑性樹脂中のリン系加工熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0159】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。熱可塑性樹脂中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0160】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。
【0161】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステル又は部分エステル等が挙げられる。これら離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0162】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0163】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル等が挙げられる。
【0164】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0165】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0166】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’-ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(1,5-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-メチル-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-ニトロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)及び2,2’-(2-クロロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが挙げられる。
【0167】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、及び1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0168】
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~3.0重量部であり、より好ましくは0.02~1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05~0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0169】
本発明の熱可塑性樹脂は、高屈折率と低いアッベ数を有する。さらに、光学レンズの他に、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料又は機能材料用途に適した光学用成形体として有利に使用することができる。
【0170】
光学成形体の表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0171】
(5)光学レンズ
本発明の熱可塑性樹脂を用いて製造される光学レンズは、高屈折率であり、低アッベ数であり、高耐湿熱性であるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせによって球面収差を取り除く必要がなく、軽量化及び生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。本発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率低複屈折非球面レンズをより簡便に得ることができる。
【0172】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0173】
(6)光学フィルム
本発明の熱可塑性樹脂を用いて製造される光学フィルムは、透明性及び耐熱性に優れるため、液晶基板用フィルム、光メモリーカード等に好適に使用される。
【0174】
光学フィルムへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0175】
[略語]
6,6’-DPBHBNA:
2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(Bis-2,2’-(2-hydroxyethoxy)-6,6’-diphenyl-1,1‘-bisnaphthyl)
6,6’-DPMHBNA:
2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-ヒドロキシ-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(2-(2-hydroxyethoxy)-2’-hydroxy-6,6’-diphenyl-1,1‘-bisnaphthyl)
6,6’-DPTHBNA:
2-(2-ヒドロキシエトキシ)-2’-[2-ヒドロキシエトキシ(エトキシ)]-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(2-(2-hydroxyethoxy)-2’-[(2-hydroxyethoxy)ethoxy]-6,6’-diphenyl-1,1‘-bisnaphthyl)
% b.w.: 重量%(% by weight)
DSC : 示差走査熱量(differential scanning calorimetry)
LOD : 乾燥減量(Loss on drying)
m.p.: 融点(melting point)
MeOH: メタノール(Methanol)
NaOH: 水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)
NIR : 近赤外線(near infrared)
PXRD: 粉末X線回折(powder X-ray diffraction)
TLC : 薄層クロマトグラフィー(thin layer chromatography)
UPLC: 高速液体クロマトグラフィー(Ultra Performance Liquid Chromatography)
【0176】
[実施例]
<1.重量平均分子量(Mw)の測定方法>
JIS K 7252-3に基づき、予め作成した標準ポリスチレンの検量線からポリスチレン換算重量平均分子量を求めた。即ち、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、“PStQuick MP-M”)を用いて検量線を作成し、測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。Mwは、以下の計算式より求めた。
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
ここで、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Miはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。GPC装置として、東ソー株式会社製、HLC-8320GPCを用い、ガードカラムとして、TSKguardcolumn SuperMPHZ-Mを1本、分析カラムとしてTSKgel SuperMultiporeHZ-Mを3本直列に連結したものを用いた。その他の条件は以下の通りである。
溶媒:HPLCグレードテトラヒドロフラン
注入量:10μL
試料濃度:0.2w/v% HPLCグレードクロロホルム溶液
溶媒流速:0.35ml/min
測定温度:40℃
検出器:RI
<2.ガラス転移温度(Tg)>
JIS K7121-1987に基づき、示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。該分析計として、日立ハイテクサイエンスX-DSC7000を用いた。
<3.屈折率(nD)>
実施例で製造した樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、JIS-K-7142の方法で測定した。
<4.アッベ数(ν)>
実施例で製造した樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nm及び656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数を算出した。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
<5.b値>
製造した樹脂を120℃で4時間真空乾燥した後、射出成型機(FANUC ROBOSHOT α-S30iA)によりシリンダー温度270℃、金型温度Tg-10℃にて射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験プレート片を得た。このプレート片を用いて、JIS K7105に準じb値を測定した。b値が小さいほど黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。成形プレートの測定には、日本電色工業株式会社製 SE2000型分光式色差計を用いた。
<6.プレッシャークッカー試験(PCT試験)>
製造した樹脂を120℃で4時間、真空乾燥した後、射出成型機(FANUC ROBOSHOT α-S30iA)によりシリンダー温度270℃、金型温度を樹脂のTg-10℃に設定して射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験プレート片を得た。このプレート片を130℃、相対湿度85%rhにて48時間さらした。
<7.全光線透過率>
上記PCT試験前後のプレート片について、日本電色工業株式会社製 SE2000型分光式色差計を用い、JIS-K-7361-1の方法で測定した。
<8.全光線透過率保持率(%)>
上述の方法で測定した全光線透過率の値を用いて、下記式から求めた。
全光線透過率保持率(%)=PCT試験後の全光線透過率/PCT試験前の全光線透過率×100
【0177】
<9.ポリカーボネート樹脂のビニル末端基量>
1H-NMRの測定を、下記の条件で行った。
・1H-NMR測定条件
装置:ブルカー AVANZE III HD 500MHz
フリップ角:30度
待ち時間:1秒
積算回数:500回
測定温度:室温(298K)
濃度:5wt%
溶媒:重クロロホルム
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS) 0.05wt%
<10.ポリカーボネート樹脂中のフェノール、ジフェニルカーボネート(DPC)量の測定>
詳細を後述する実施例1の試料0.5gをテトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解し、試料溶液とした。標品として各化合物の純品より検量線を作成し、試料溶液2μLをLC-MSにより以下の測定条件で定量した。なお、この測定条件での検出限界値は0.01ppmである。
LC-MS測定条件:
測定装置(LC部分):Agilent Infinity 1260 LC System
カラム:ZORBAX Eclipse XDB-18、及びガードカートリッジ
移動相:
A: 0.01mol/L-酢酸アンモニウム水溶液
B:0.01mol/L-酢酸アンモニウムのメタノール溶液
C:THF
移動相のグラジエントプログラム:
表1に示すように、上記A~Cの混合物を移動相として使用し、移動相の組成を時間(分)欄に示す時間が経過したときに切り替えつつ、30分間カラムに移動相を流した。
【表1】
流速:0.3ml/分
カラム温度:45℃
検出器:UV(225nm)
測定装置(MS部分):Agilent 6120 single quad LCMS System
イオン化ソース: ESI
極性: Positive(DPC)&Negative(PhOH)
フラグメンタ:70V
ドライガス:10L/分、350℃
ネブライザ:50psi
キャピラリ電圧:3000V(Positive)、2500V(Negqative)
測定イオン:
【表2】
【0178】
モノマーの分析方法
<11.粉末X線回折(PXRD)>
粉末X線回折(PXRD)パターンは、ドイツのBruker AXS GmbHのD8 Discover X-ray回析測定器(D8 Discover X-ray diffractometer)により、X線源としてCu Kα1線(40kV,40ma)を用いた反射配置(Bragg Brentano)にて記録された。データは、室温で、2θ-5.0°から2θ-80.0°の範囲における解像度0.025°及び測定時間0.5秒/ステップで収集された。
【0179】
<12.DSC測定>
DSC測定は、Linseis Chip-DSC 10を用いて行った。昇温速度は20℃/分であった。
【0180】
<13.融点の測定>
融点は、1K/分の昇温速度にてBuchi Melting Point B-545 装置を用いて、キャピラリー法により測定した。
【0181】
<14.近赤外分析>
近赤外分析は、Bruker FT-NIR spectrometer Matrix F spectrometer, Bruker Opus 5.5 ソフトウェア,及び、反射浸漬プローブヘッド(reflection immersible probe head)を用いた手段により、記録された。
【0182】
<15.純度の決定>
純度は、以下のシステム及び操作条件を用いて、UPLCにより決定された。
Waters Acquity UPLC H-Class システム;カラム
Acquity UPLC BEH C18, 1.7μm, 2 x 100 mm;カラム温度:40℃,
グラジエント:アセトニトリル/水(アセトニトリル; ACN: 0 分48% , 21 分 50%, 26 分 100 %, 28 分 100 % , 28.1分 48 %, 32分 48 %);
注入量: 0.8 μl; フローレート0.6 ml/分; 210 nmにて検出。
【0183】
<16.揮発性溶媒の測定>
揮発性溶媒の量を、Shimadzu GC 14 B と Class VP 4.3 ソフトウェア, AOC-20i自動注入器,AOC-20s オートサンプラ,及び、FID検出器を用いたガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0184】
カラムとして、以下の寸法を有するPE 624 20 (Perkin Elmer)を用いた。ガスクロマトグラフィーは、以下の操作条件下で行われた。
キャリアガス: 水素
圧力 : 0.3 bar
注入温度: 250℃
検出温度: 300℃
カラム温度: 40°C(2分),20℃/分,200℃(2分)
濃度 :C=20mg/ml
注入量 :0.2~2μl
【0185】
内部標準として、100mgのナフタリンの10mlジメチルフォルムアミド溶液を用いた。サンプルは、20mgの化合物を0.1mmの内部標準溶液に溶解させ、0.9mlのジメチルフォルムアミドを添加して調製した。媒量は以下の式により算出した。
SSolv*MSt*100/(SSt*MSample*RRF)
MSt :サンプル溶液中の内部標準の量
MSample:サンプルの重量
SSolv :溶媒ピークの面積
SSt :標準の面積
RRF :溶媒の相対感度係数
【0186】
<17.黄色度の測定>
6,6’-DPBHBNAの黄色度であるYIは、ASTM E 313に準じて以下の要綱(protocol)に沿って測定された。
1gの6,6’-DPBHBNAを19gのジクロロメタンに溶解した。溶液を50mmのキュベットに移し、Shimadzu UV-Visible spectrophotometer UV-1650PC(分光光度計)を用いて、300~800nmの範囲で透過度を測定した。ジクロロメタンをリファレンスとして用いた。スペクトルから、黄色度(yellowness index)を、ASTM E308 (CIEシステムを使用してオブジェクトの色を計算するための標準プラクティス;Standard practice for computing the colors of objects by using the CIE System)、及び、ASTM E 313 (計器により測定された色座標から黄色度及び白色度を計算するための標準プラクティス;Standard practice for calculating yellowness and whiteness indices from instrumentally measured color coordinates)に沿って、ソフトウェアのRCA-software UV2DATを用いて算出される。
【0187】
<18.ヘーズの測定>
ヘーズは、標準的なネフェロメーター(比濁計;nephelometer)により、6,6’-DPBHBNAの5%ジクロロメタン溶液の860nmにおける透過度を測定することにより、決定された。
【0188】
<19.顕微鏡検査(microscopy)>
顕微鏡検査の画像は、Nikon 社の顕微鏡であるEclipse TS 100 を用いて、Nikon 社の撮影ユニットであるDigital Sight DS-U1に備えられた100倍の拡大率により、撮影された。これらの顕微鏡写真から、幅(W)、長さ(L)、及びアスペクト比(L/W比)が定められた。
【0189】
[ポリカーボネート樹脂の製造]
(実施例1)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン(以下“BINL-2EO”と省略することがある)31.6kg(60.0モル)、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)13.5kg(63.0モル)、及び炭酸水素ナトリウム0.074g(8.8×10-4モル)を攪拌機及び留出装置付きの50Lの反応器に入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始20分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で120分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、40分間200℃に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で240℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で245℃まで昇温し、さらに30分間攪拌を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂をペレット化しながら取り出した。得られたポリカーボネート樹脂中の不純物であるフェノール、及びジフェニルカーボネート(DPC)の量を上述のように測定したところ、樹脂中のフェノールは100質量ppm、DPCは300質量ppmであった。
得られた樹脂の物性値を下記表3に示す。
【0190】
(実施例2-A)
原料として、BINL-2EO7.9kg(15.0モル)、BNEF24.2kg(45.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(実施例2-B)
原料として、BINL-2EO15.8kg(30.0モル)、BNEF16.2kg(30.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(実施例2-C)
原料として、BINL-2EO23.7kg(45.0モル)、BNEF8.1kg(15.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0191】
得られた樹脂の物性値を表3に示す。また、実施例2-Bで得られた樹脂(BINOL-2EO/BNEF = 50mol/50mol)のNMRチャートを
図1に示す。
【0192】
(実施例3-A)
原料として、BINL-2EO 7.9kg(15.0モル)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)19.0kg(45.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例3-B)
原料として、BINL-2EO15.8kg(30.0モル)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)12.7kg(30.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例3-C)
原料として、BINL-2EO23.7kg(45.0モル)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)6.3kg(15.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0193】
(実施例4-A)
原料として、BINL-2EO 7.9kg(15.0モル)、BPPEF 25.9kg(45.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例4-B)
原料として、BINL-2EO 15.8kg(30.0モル)、BPPEF 17.2kg(30.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例4-C)
原料として、BINL-2EO 23.7kg(45.0モル)、BPPEF 8.6kg(15.0モル)、DPC13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0194】
(実施例5)
原料として、BPEF 7.6kg(18.0モル)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-1-イル)-1,1’-ビナフタレン(以下“DNBINOL-2EO”と省略することがある)26.3kg(42.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0195】
(実施例6-A)
原料として、BINL-2EO 7.9kg(15.0モル)、BNEF9.7kg(18.0モル)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(以下“BNEと省略することがある)10.1kg(27.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例6-B)
原料として、BINL-2EO 19.0kg(36.0モル)、BNE 4.5kg(12.0モル)、BPEF 5.1kg(12.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例6-C)
原料として、BINL-2EO 19.0kg(36.0モル)、BNE 4.5kg(12.0モル)、BPPEF 6.9kg(12.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
なお、上述の実施例1、実施例2-A~C、実施例3-A~C、実施例4-A~C及び実施例6-A~Cで用いたBINL-2EOは、詳細を後述する実施例21で得られた「形態A」である。
(実施例6-D)
原料として、BNEF 11.3kg(21.0モル)、BNE 11.2kg(30.0モル)、DNBINOL-2EO 5.6kg(9.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例6-E)
原料として、BNE 6.7kg(18.0モル)、BPPEF 17.2kg(30.0モル)、DNBINOL-2EO 7.5kg(12.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例6-F)
原料として、BNE 6.7kg(18.0モル)、BPEF 10.1kg(24.0モル)、DNBINOL-2EO 11.3kg(18.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0196】
(実施例7)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,1’-ビナフタレン(2DNBINOL-2EO) 32.0kg(51.0モル)、BPEF 3.8kg(9.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例7-A)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,1’-ビナフタレン(2DNBINOL-2EO) 18.8kg(30.0モル)、BPEF 12.7kg(30.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例7-B)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(ナフタレン-2-イル)-1,1’-ビナフタレン(2DNBINOL-2EO) 5.6kg(9.0モル)、BPEF 21.5kg(51.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0197】
(実施例8)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1´-ビナフタレン(9DPNBINOL-2EO) 37.1kg(51.0モル)、BPEF 3.8kg(9.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例8-A)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1´-ビナフタレン(9DPNBINOL-2EO) 21.8kg(30.0モル)、BPEF 12.7kg(30.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
(実施例8-B)
原料として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジ(フェナントレン-9-イル)-1,1´-ビナフタレン(9DPNBINOL-2EO) 6.5kg(9.0モル)、BPEF 21.5kg(51.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0198】
(実施例9)
原料として、6,6’-di-(3-cyanophenyl)-2,2’-bis-(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl(CN-BNA) 10.4kg(18.0モル)、BPEF 18.4kg(42.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0199】
(実施例10)
原料として、6,6’-di-(dibenzo[b,d]furan-4-yl)-2,2’-bis-(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl(FUR-BNA) 12.7kg(18.0モル)、BPEF 18.4kg(42.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0200】
(実施例11)
原料として、6,6’-di-(dibenzo[b,d]thien-4-yl)-2,2’-bis-(2-hydroxyethoxy)-1,1’-binaphthyl(THI-BNA) 13.3kg(18.0モル)、BPEF 18.4kg(42.0モル)、DPC 13.5kg(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0201】
(比較例1)
原料として、BNE22.5kg(60.0モル)、DPC13.5g(63.0モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表3に示す。
【0202】
【0203】
【0204】
[ポリエステル・ポリエステルカーボネート樹脂の製造]
(実施例12)
ジオール化合物として2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(BINL-2EO) 0.090mol、カルボン酸ジアルキルとして9,9-フルオレン-ジプロピオン酸メチル(FDPM) 0.010mol、エチレングリコール(EG) 0.120mol、及びエステル交換触媒としてのテトラブトキシチタン 0.001molを、半月型撹拌翼を具備した中村科学器械工業株式会社製の撹拌機シーリングミキサーUZUおよび留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気の常圧下、180℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、1時間かけて250℃まで昇温、かつ0.13kPaまで減圧し、重合反応を行った。引き続き、250℃、0.13kPaで1時間保持した後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表3に示す。
【0205】
(実施例13~18、比較例2)
ジオール化合物として表3に記載のジオール化合物を用いる以外は、実施例12と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表3に示す。
【0206】
(実施例19)
ジオール化合物として2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(BINL-2EO) 0.110mol、カルボン酸ジアルキルとして9,9-フルオレン-ジプロピオン酸メチル(FDPM) 0.100mol、ジフェニルカーボネート 0.010mol、及びエステル交換触媒としてのテトラブトキシチタン 0.001molを、半月型撹拌翼を具備した中村科学器械工業株式会社製の撹拌機シーリングミキサーUZUおよび留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気の常圧下、180℃に加熱し、60分間撹拌した。フェノールとメタノールの留出が確認された。その後、1時間かけて240℃まで昇温、かつ0.13kPaまで減圧し、重合反応を行った。引き続き、240℃、0.13kPaで1時間保持した後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。得られたポリエステルカーボネート樹脂の物性を表3に示す。
【0207】
(実施例20)
ジオール化合物として2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’ジフェニル-1,1’-ビナフタレン(BINL-2EO)0.10mol、エチレングリコール(EG) 0.06mol、ジカルボン酸として2,2’-ビス(ヒドロキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル(BINOL-DC) 0.12mol、及び触媒としてのテトラブトキシチタン0.001molを、撹拌器および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、255℃まで昇温、かつ0.13kPa以下まで減圧することにより重合反応を行った。引き続き、255℃、0.13kPaで1時間保持した後、内容物を反応器から取り出し、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の物性を表4に示す。
【0208】
【0209】
【0210】
[モノマーの製造]
(実施例21:形態Aの調製)
ステップ1:6,6´-ジブロモ-1,1´-ビス(2-ナフトール)(6,6'-dibromo-1,1'-bis(2-naphthol))のヒドロキシエチル化
窒素置換された容器に1053kgのアニソールを充填し、157.6kgの6,6´-ジブロモ-1,1´-ビス(2-ナフトール)(商業的に入手可能)、14.6kgの炭酸カリウム及び97kgのエチレンカーボネートを充填した。出発物質の添加が完了した後、内部温度が125-135℃となるように容器を加熱した。気体の発生により示されたように、約80~90℃にて反応が開始した。TLCが完全な変換を示すまで、反応混合物を125~135℃で40時間、維持した。内部温度が75℃になるように、反応混合物を冷却した。145kgの水をゆっくりと添加した。混合物を80℃まで加熱し、その温度でさらに30分間、攪拌した。攪拌停止後、25分で層分離が生じた。層分離が完全になった後、下側の水層を除去した。容器内に残る有機層に、164kgの水酸化ナトリウム溶液(20%(w/w))を添加し、この混合物を90℃で2時間、攪拌した(還流凝縮器)。2時間後、容器を80℃に冷却し、攪拌を停止し、25分で層分離が生じた。下側の実質的な水層を除去した。有機層をさらなる160kgの水と25kgの塩化ナトリウムで洗浄し(80℃、30分間)、そして20分間そう分離させた。水層を除去した。
【0211】
こうして得られた有機層である、目的の2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’ジブロモ-1,1’-ビナフタレンのアニソールの溶液を当該化合物の単離なしにそのまま次のステップに用いた。
【0212】
ステップ2:鈴木カップリング(Suzuki coupling)による6,6’-DPBHBNAの調製
84gのトリ-o-トリルホスフィン(tris-(o-tolyl)phosphine)及び15gのパラジウム(II)アセテートを1.5kgのアニソールに溶解させ、触媒溶液を調製した。
【0213】
第1の反応容器にて、ステップ1で得られた2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’ジブロモ-1,1’-ビナフタレンのアニソールの溶液を60℃に加熱し、93.4kgのフェニルボロン酸(phenylboronic acid)を添加した。この混合物を、フェニルボロン酸が完全に溶解するまで、15分間、攪拌した。そして、混合物を40℃~50℃に冷却した。
【0214】
第2の反応容器にて、520kgのリン酸三カリウム(tripotassium phosphate)の31%(w/w)水溶液を50℃に加熱した。そして、予め用意した触媒溶液を徐々に添加した。これにより、全体で約15℃の温度上昇が生じた。触媒が添加された後、混合物を60~70℃で1時間、攪拌した。そして、容器1からの残りの70%を、55~75℃でゆっくりと反応容器に添加した。添加が完了した後、混合物を60℃でさらに1時間、攪拌した。TLCが完全な変換を示した。50~60℃で30分間すると層分離した。下側の水層を除去した。有機層に、186kgの水と125kgの20重量%の水酸化ナトリウムの水溶液を添加した。この混合物を55℃で40分間、攪拌した。そして、混合物が層分離を生じ、下側の実質的な水層を除去した。
【0215】
さらに、182kgの2M塩酸を有機層に添加し、混合物を50~60℃で30分間、攪拌した。層分離を生じ、下側の酸性の水層を除去した。有機層をさらなる182kgの25重量%の塩水で50~60℃で洗浄した。残渣の有機層を60~70℃で90分間、10kgの活性炭(Norit(R) DX Ultra)と50kgの硫酸ナトリウムとで攪拌しながら処理した。そして生成物の沈殿を防ぐために60~70℃にて圧力ストレイナーを通して混合物をろ過した(6,6’-DPBHBNAはアニソールからの晶析で多面体の結晶が生じるものの、結晶は特定の組成を有さずその収率は低い)。
【0216】
そして、ろ過物(およそ2500L)を蒸留器に移した。アニソールを、約200Lの残渣が残るまで、80℃超の温度、90ミリバール(mbar)で留去した。アニソールは回収されて再利用可能である。真空の解放後、残渣を55℃に冷却した。この温度で、140kgのメタノールと60kgのトルエンを添加した。この混合物を、沈殿物を溶解させて溶液が均一になるまで、攪拌しながら60~65℃に加熱した。混合物が完全に金一になったら容器を20℃に冷却した。温度が約35~40℃のときに40gの6,6’-DPBHBNAを溶液に種添加し、晶析が開始した。混合物を20℃に冷却し、20℃で4時間、攪拌した。そして沈殿を遠心分離によって回収し、ろ過ケーキ(filter cake)を2つの10kgのメタノールで洗浄した。
【0217】
こうして、162kgの6,6’-DPBHBNA(乾燥減量:15%)が得られ、これは、137kgの乾燥6,6’-DPBHBNAと、両方のステップを通じての収率74%に相当した。得られた6,6’-DPBHBNAの化学純度は、UPLCにより98%と測定された。
【0218】
ステップ3:6,6’-DPBHBNAの精製/再結晶
ステップ2の手法で得られた6,6’-DPBHBNA(142kg,270モル;純度;98.0%)をメタノール/トルエン(7:3(v/v);827kg)の混合物に溶解させた。溶液を55℃にて活性炭(8kg)で2時間、処理した。ろ過により活性炭を除去して、ろ過物を攪拌しながら4時間で0℃に冷却し、さらに1時間、0℃で攪拌した。それにより、6,6’-DPBHBNAが晶析した。6,6’-DPBHBNAの結晶をろ過により集め、メタノールで洗浄したところ、154kgの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(Bis-2,2’-(2-hydroxyethoxy)-6,6’-diphenyl-1,1‘-bisnaphthyl)を得た(LOD:14%;252モル;UPLC化学純度;98.8%)。
【0219】
かくして得られた6,6’-DPBHBNAをメタノール/トルエン(7:3(v/v);772kg)の混合物に溶解させ、溶液を再び、55℃にて活性炭(7kg)で2時間、処理した。ろ過により活性炭を除去して、ろ過物を攪拌しながら5時間で0℃に冷却し、さらに1時間、0℃で攪拌した。ろ過により固体を集め、メタノールで洗浄したところ、131.4kgの6,6’-DPBHBNAを得た(LOD:14%;220モル;UPLC化学純度;99%)。生成物は、PXRDにより、メタノール溶媒和物であると同定された。
【0220】
ステップ4:6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和物の形態Aへの変換
得られた48kgの結晶性の6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和物を40℃で5日間、空気下に乾燥させて、5~200μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態として、41.3kgの結晶性の6,6’-DPBHBNAを得た。
【0221】
ステップ4で得られた生成物は、0.03% b.w.のメタノールと0.3% b.w.のトルエンの溶媒成分、すなわち、6,6’-DPBHBNA(2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン)の重量を基準として(6,6’-DPBHBNA100重量%に対して)、0.03重量%のメタノールと0.3重量%のトルエンの溶媒成分を含むことがGCにより測定された。
【0222】
ステップ4の生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図2に示されており、これが、結晶性の形態が形態Aであることを明らかにした。以下の反射ピークが観察された。
【表5】
【0223】
UPLCは、ステップ4の生成物が、99.1% b.w.の6,6’-DPBHBNA、0.06% b.w.(0.06重量%)の6,6’-DPMHBNA、及び、0.19% b.w.(0.19重量%)の6,6’-DPTHBNAを含むことを明らかにした。
【0224】
ステップ4の生成物の黄色度YIは、3.9であり、ヘーズは0.5ntuであった。
【0225】
ステップ4の生成物は、IR及びNIRで分析された。NIRは
図3に示され、IRは
図4に示される。NIRにおいて、約7000及び4500cm
-1の相(habit)が、形態Aに特徴的であり、溶媒和物との差異を明確に示す。
【0226】
ステップ4の生成物のDSCは、113.6℃に開始点、124.4℃にピーク最大値、及び、112.9℃の反応点を有する吸熱ピークを示した。融点は、直ちに測定され、示された融点は、127.0℃,126.5℃及び126.8℃であった。DSCは
図5に示される。
【0227】
(実施例22:6,6’-DPBHBNAのメタノール溶媒和物の調製)
実施例21のステップ4で得られた20gの6,6’-DPBHBNA(UPLC化学純度;>99%)を600mlの純粋なメタノールに溶解させ、還流にて加熱した。均一な溶液を徐々に22℃まで冷却したところで、6,6’-DPBHBNAは、10~200μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態としての6,6’-DPBHBNAを晶析した。結晶をろ過により集め、メタノールで洗浄し、2日間に渡り25℃で空気により乾燥させ、6,6’-DPBHBNA:メタノールのモル比が約1:1であるもの相当する、5.98%b.w.のメタノールを含む2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン(すなわち、6,6’-DPBHBNA(2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン)の重量を基準として(6,6’-DPBHBNA100重量%に対して)、5.98重量%のメタノールを含む6,6’-DPBHBNA))を得た。
【0228】
こうして得られた生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図6に示されており、これが、結晶性の形態が形態A及び形態Cとは異なるものであることを明らかにし、以下の反射ピークが観察された。
【0229】
【0230】
こうして得られた生成物は、IR及びNIRで分析された。NIRは
図7に示され、IRは
図8に示される。NIRにおいて、約4500及び4300cm
-1の相(habit)が、メタノール溶媒和物に特徴的であり、形態A及び他の溶媒和物との差異を明確に示す。
【0231】
こうして得られた生成物のDSCは、100.9℃に開始点、113.4℃にピーク最大値、及び、108.3℃に反応点を有する吸熱ピークを示した。融点は、直ちに測定され、示された融点は、107.4℃,108.7℃及び107.7℃であった。DSCは
図9に示される。
【0232】
(実施例23:形態Aとメタノール溶媒和物との混合物の調製)
ステップ1:6,6´-ジブロモ-1,1´-ビス(2-ナフトール)のヒドロキシエチル化
撹拌機、水分離器、還流凝縮器、温度計、及び、気泡計数器付きの2Lの3口フラスコに89.7gの6,6´-ジブロモ-1,1´-ビス(2-ナフトール)、573gのアニソール、8.3gのK2CO3及び52.8gのエチレンカーボネートを充填し、反応混合物を還流で加熱(内部温度が125-135℃)し、6時間、攪拌した。若干の気体の発生が確認された。反応の進行はTLCで監視した。反応が完了した後、反応混合物を70~80℃に冷却し、75gの水と25gの塩水を添加し、その温度で混合物をさらに20分間、攪拌した。層分離の後、15% b.w.の水溶液NaOH(110g)を有機層に添加し、混合物を95℃で3時間、攪拌した。層分離の後、有機層を、110gの水と25gの塩水から調製した水溶液で洗浄した。層分離の後で得られた有機層を、化合物の単離なしにそのまま次のステップに用いた。
【0233】
ステップ2:鈴木カップリング(Suzuki coupling)による6,6’-DPBHBNAの調製
撹拌機、還流凝縮器、及び、温度計付きの2Lの3口フラスコに、前のステップ1で得られた有機溶液を充填し、50.0gのフェニルボロン酸(phenylboronic acid)、K3PO4(93.4g)、及び水(210g)を添加し、この混合物を内部温度が60℃になるまで加熱した。そして、49mgのトリ-o-トリルホスフィン(tris-(o-tolyl)phosphine)及び9mgのパラジウム(II)アセテートを激しい攪拌下で添加した。反応混合物をゆっくりと還流まで加熱し、反応の進行をTLCで監視した。反応が完了した後(30分~1時間後)、混合物を70℃に冷却させ、水槽を分離除去した。有機層を、150mlの10%b.w.の水溶液NaOH、2MのHCl水溶液(87.5ml)、及び再び塩水(75ml)で連続して洗浄した。その後、有機層を2.5gの活性炭で処理し、硫酸ナトリウム(12.5g)で乾燥させた。ろ過後、溶媒を真空下で蒸発させ、残渣をメタノール(77g)及びトルエン(33g)の混合物から晶析させた。かくして、結晶性の生成物が得られ、ろ過で集められた。
【0234】
こうして、110gの湿った6,6’-DPBHBNA(乾燥減量:15%)が得られ、これは、93.5gの乾燥6,6’-DPBHBNAと、両方のステップを通じての収率89%に相当した。得られた6,6’-DPBHBNAの化学純度は、UPLCにより98%と測定された。
【0235】
ステップ3:6,6’-DPBHBNAの精製/再結晶
ステップ2の手法で得られた107gの6,6’-DPBHBNA(純度;98.0%)をメタノール/トルエン(7:3(v/v);535g)の混合物に溶解させた。溶液を55℃にて活性炭(5.4g)で2時間、処理した。ろ過により活性炭を除去して、ろ過物を攪拌しながら0℃に冷却し、1時間半、0℃で攪拌した。それにより、5~150μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態として、6,6’-DPBHBNAが晶析した。この固体をろ過により集め、メタノールで洗浄し、室温下で空気中にて一晩乾燥させたところ、99.89%の化学純度(UPLC)と2.1の黄色度YIを有する85.0gの6,6’-DPBHBNAを得た。
【0236】
ステップ3で得られた生成物は、2.4% b.w.のメタノール、0.1% b.w.のトルエン、及び、0.002% b.w.のアニソールの溶媒成分を含む(すなわち、6,6’-DPBHBNA(2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレン)の重量を基準として(6,6’-DPBHBNA100重量%に対して)、2.4重量%のメタノール、0.1重量%のトルエン、及び、0.002重量%のアニソールの溶媒成分を含む6,6’-DPBHBNA))ことがGCにより測定された。
【0237】
ステップ3の生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図10に示されており、これが、結晶性の形態が形態Aとメタノール溶媒和物との混合物であることを明らかにした。以下の反射ピークが観察された。
【0238】
【0239】
ステップ3の生成物は、IR及びNIRで分析された。NIRは
図11に示され、IRは
図12に示される。NIRにおいて、約4500及び4300cm
-1の相(habit)が、メタノール溶媒和物に特徴的である。
【0240】
ステップ3の生成物のDSCは、97.3℃に開始点、109.8℃のピーク最大値、及び109.8℃の反応点を有する第1の吸熱ピーク、及び、118.9℃に開始点、124.4℃のピーク最大値、及び121.4℃の反応点を有する第2のピークを示した。融点は、直ちに測定され、示された融点は、118.6℃,119.4℃及び116.7℃であった。DSCは
図13に示される。
【0241】
(実施例24:6,6’-DPBHBNAのトルエン溶媒和物の調製)
実施例21のステップ4で得られた20gの6,6’-DPBHBNA(UPLC化学純度;>99.0%)を60mlの純粋なトルエンに溶解させ、還流にて加熱した。均一な溶液を徐々に22℃まで冷却したところで、6,6’-DPBHBNAは、20~250μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態としての6,6’-DPBHBNAを晶析した。結晶をろ過により集め、メタノールで洗浄し、2日間に渡り25℃で空気により乾燥させ、6,6’-DPBHBNA:トルエンのモル比が約2.95:1であるもの相当する、5.6%b.w.のトルエンを含む2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンを得た。こうして得られた結晶の顕微鏡写真が
図14に示される。
【0242】
こうして得られた生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図15に示されており、これが、結晶性の形態が形態Aとは異なるものであることを明らかにし、以下の反射ピークが観察された。
【表8】
【0243】
こうして得られた生成物は、IR及びNIRで分析された。NIRは
図16に示され、IRは
図17に示される。NIRにおいて、約7000及び4700cm
-1の相(habit)が、トルエン溶媒和物に特徴的であり、形態A、形態B及び他の溶媒和物との差異を明確に示す。
【0244】
こうして得られた生成物のDSCは、106.5℃に開始点、113.6℃にピーク最大値、及び、110.7℃の反応点を有する吸熱ピークを示した。融点は、直ちに測定され、示された融点は、103~107.9℃,104.0~106.8℃及び104.8~107.6℃であった。DSCは
図18に示される。
【0245】
(実施例25:6,6’-DPBHBNAのMEK溶媒和物の調製)
実施例21のステップ4で得られた100gの6,6’-DPBHBNA(UPLC化学純度;>99.0%)を300mlの純粋なMEKに溶解させ、還流にて加熱した。均一な溶液を徐々に22℃まで冷却したところで、6,6’-DPBHBNAは、20~200μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態としての6,6’-DPBHBNAを晶析した。結晶をろ過により集め、MEKで洗浄し、2日間に渡り25℃で空気により乾燥させ、そして50℃で1時間、乾燥させ、6,6’-DPBHBNA:MEKのモル比が約1.5:1であるもの相当する、8.5%b.w.のMEKを含む2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンを得た。こうして得られた結晶の顕微鏡写真が
図19に示される。
【0246】
こうして得られた生成物は、NIRで分析された。NIRは
図20に示される。NIRにおいて、4600cm
-1の相(habit)が、MEK溶媒和物に特徴的であり、形態A及び他の溶媒和物との差異を明確に示す。
【0247】
こうして得られた生成物のDSCは、89.4℃に開始点、97.6℃にピーク最大値、及び、95.5℃の反応点を有する吸熱ピークを示した。融点は、直ちに測定され、示された融点は、105.9℃,及び105.8℃であった。DSCは
図21に示される。
【0248】
こうして得られた実施例25の生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図22に示されており、これが、結晶性の形態が形態A及び形態Bとは異なるものであることを明らかにし、以下の反射ピークが観察された。
【表9】
(実施例26:6,6’-DPBHBNAの非晶性の形態Bの調製)
実施例21のステップ4で得られた100gの6,6’-DPBHBNA(UPLC化学純度;>99.0%)を130℃に加熱し、清澄な溶融体を得た。この溶融体を直ちに22℃まで2分以内に冷却し、これにより、非晶性(glassy)の固体を得た。この非晶性の固体を、押しつぶして小片とし、すり鉢で押しつぶして粉末を得た。
【0249】
こうして得られた生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図23に示されており、これが、2θの5°~40°の範囲における反射ピークのないことにより証明されるように、結晶層が存在しないことを明らかにした。むしろ、この2θの範囲では、幅広いハロー(halo)が観察された。
【0250】
こうして得られた生成物は、IR及びNIRで分析された。NIRは
図24に示され、IRは
図25に示される。
【0251】
こうして得られた生成物のDSCは(図示せず)、80~200℃の温度範囲において吸熱ピークを示さなかった。むしろ、109~110℃の範囲におけるガラス転移点に対応する段差(step)が観察された。
【0252】
(実施例27:6,6’-DPBHBNAの形態Cの調製)
実施例27a
実施例21のステップ4で得られた20gの6,6’-DPBHBNA(UPLC化学純度;>99.0%)を300mlの96%エタノールに溶解させ、還流にて加熱した。均一な溶液を徐々に22℃まで冷却したところで、6,6’-DPBHBNAは、2~150μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態としての6,6’-DPBHBNAを晶析した。結晶をろ過により集め、MEKで洗浄し、2日間に渡り25℃で空気により乾燥させ、そして50℃で1時間乾燥させ、検出可能な量のエタノールを含まない15.8gの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンを得た。
【0253】
実施例27b
実施例21のステップ4で得られた30gの6,6’-DPBHBNA(UPLC化学純度;>99.0%)を250mlのアニソールに100℃で溶解させた。均一な溶液を非常にゆっくりと22℃まで冷却したところで、6,6’-DPBHBNAは、10~300μmの範囲のサイズを有するコンパクトな結晶の形態としての6,6’-DPBHBNAを晶析した。結晶をろ過により集め、冷却したアニソールで洗浄し、19時間に渡り80℃でロータリーエバポレーター内で乾燥させ、ごく少量のアニソール(約0.1重量%)を含み他の溶媒を含まない11.4gの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンを得た。
【0254】
実施例27aにて得られた生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは
図26に示されており、これは、その結晶性の形態がトルエン溶媒和物のPXRDと同様であるものの形態Aや他の溶媒和物のものとは異なり、以下の反射ピークを示すことを明らかにした。
【表10】
【0255】
実施例27bにて得られた生成物は、PXRDにより分析された。そのPXRDは、実施例27aにて得られた生成物と同じ反射ピーク及び相(habit)を示し、実施例27aと実施例27bとで得られた結晶が同じ結晶形態であることが確認された。
【0256】
実施例27aにて得られた生成物は、IR及びNIRで分析された。NIRは
図27に示され、IRは
図28に示される。NIRにおいて、約7000及び4700cm
-1の相(habit)が、形態Cに特徴的であり、これが、形態A及びB、及び、トルエン溶媒和物以外の溶媒和物との差異を明確に示す。実施例27bにて得られた生成物についてもまた、IR及びNIRで分析された。これらのスペクトルは、実施例27aにて得られた生成物の相と同じ相を示した。
【0257】
実施例27aにて得られた生成物のDSCは、116.6℃に開始点、125.0℃にピーク最大値、及び、121.0℃の反応点を有する吸熱ピークを示した。実施例27aにて得られた生成物のDSCは
図29に示される。実施例27bにて得られた生成物のDSCは、115.4℃に開始点、124.0℃にピーク最大値、及び、120.0℃の反応点を有する吸熱ピークを示した。
【0258】
[上記実施例のモノマーを用いたポリカーボネート樹脂組成物の製造]
(実施例28)
原料として、実施例21で得られた「形態A」であるBINL-2EO、即ち6,6’-DPBHBNA 7.9kg(15.0モル)、BNE16.8kg(45.0モル)、BNEF 21.5kg(40.0モル)、DPC 22.1kg(103.0モル)及び炭酸水素ナトリウム0.117g(13.9×10-4モル)を用い、攪拌機及び留出装置付きの50Lの反応器にホッパーを通してスコップで入れた。引き続き、反応器内に窒素を入れ、反応器内を780mmHgに加圧し、3分保持した後、排気口から窒素を排気し760mmHに戻した。再度窒素を反応器に入れ、3分保持した後、排気口から窒素を排気し760mmHに戻した。さらに、再度窒素を反応器に入れ、3分保持した後、排気口から窒素を排気し760mmHに戻した。その後、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始20分後に原料の完全溶解を確認し、その後、同条件で120分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、40分間200℃に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で240℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で245℃まで昇温し、さらに30分間攪拌を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂をペレット化しながら取り出した。このペレットのMwは27500であった。
【0259】
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを100℃で3時間乾燥し、ペレット中の含水率が、カールフィッシャー計により1%になったことを確認した。乾燥したペレットと、添加剤として、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](ADEKA社製AO-60:酸化防止剤)1000ppm、ステアリン酸モノグリセリド(理研ビタミン株式会社性S-100A:離型剤)1500ppm、及び3,9-ビス(2,6-di-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製PEP-36:酸化防止剤)300ppmとを混合し、乾燥したペレットに添加剤を添着させた。続いて、二軸押出機にて40mmHgで減圧しながら、溶融混練しペレット化した。
【0260】
得られたポリカーボネート樹脂組成物の屈折率は1.680、アッベ数は18.1、Tgは147℃、Mvは11900、Mwは27000、b値は3.9、成形性はA、全光線透過率は89%、PCT試験後の全光線透過率は89%であった。
実施例28で得られたポリカーボネート樹脂の物性を、他の実施例等の樹脂の物性とともに表11に示す。
【化44】
(BINL-2EO、即ち6,6’-DPBHBNA)
【0261】
(実施例29)
原料として、BINL-2EO 12.6kg(24.0mol)、BNE 11.1kg(30.0mol)、BNEF 17.8kg(33.0mol)、2DNBINOL-2EO 8.1kg(13.0mol)、DPC 22.1kg(103.0モル)及び炭酸水素ナトリウム0.117g(13.9×10-4モル)を用いる以外は実施例28と同様にして、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート組成物を得た。
【0262】
得られたポリカーボネート樹脂組成物の屈折率は1.690、アッベ数は16.7、Tgは155℃、Mvは11900、Mwは27000、b値は3.9、成形性はA、全光線透過率は89%、PCT試験後の全光線透過率は89%であった。
実施例29で得られたポリカーボネート樹脂の物性を、表11に示す。
【化45】
(2DNBINOL-2EO)
【表11】
【0263】
(実施例30~36)
原料として、下記表に示すBINL-2EO、即ち6,6’-DPBHBNA 78.99g(0.15モル)、BNE168.50g(0.45モル)、BNEF 215.45g(0.40モル)、DPC 220.64g(1.030モル)及び炭酸水素ナトリウム1.2mg(1.39×10
-5モル/水溶液にして添加)を用い、攪拌機及び留出装置付きの1Lの反応器に漏斗を通して入れた。引き続き、反応器内に窒素を入れ、反応器内を780mmHgに加圧し、3分保持した後、排気口から窒素を排気し760mmHに戻した。再度窒素を反応器に入れ、3分保持した後、排気口から窒素を排気し760mmHに戻した。さらに、再度窒素を反応器に入れ、3分保持した後、排気口から窒素を排気し760mmHに戻した。その後、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始20分後に原料の完全溶解を確認し、その後、同条件で120分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、40分間200℃に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で240℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で245℃まで昇温し、さらに30分間攪拌を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂取り出した。得られた樹脂の光学物性は実施例28と同様であったが、到達分子量に若干の差異があった。
【表12】
【0264】
(参考例)
実施例23のステップ3において、「メタノールで洗浄し、室温下で空気中にて一晩乾燥させたところ」、乾燥の時間を短縮して、1モルの2,2´-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6´-ジフェニル-1,1´-ビナフタレンあたり1.3モルのメタノールを含むBINL-2EO、即ち6,6’-DPBHBNAを得た。こうして得られたBINL-2EO(6,6’-DPBHBNA)に主原料を替える以外は、追加の実施例1と同様に反応を試みた。
その結果、原料を反応器にホッパーを通してスコップで投入する際に、スムーズに入れにくく、作業性が悪い上に、反応の進行が遅くなり、得られたペレットの実施例28と比較してMwは24500と低めであった。
【0265】
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂の性状のうち、アッベ数(v)を横軸、屈折率(nD)を縦軸にとったグラフを
図30及び31に示す。
これらのグラフで示される特定の範囲、例えば、
図30の直線nD=-0.02v+1.96と直線nD=-0.02v+2.04との間、あるいは、
図31の直線nD=-0.0002ν+1.6718と直線nD=-0.024ν+2.124との間、あるいは、直線nD=-0.004v+1.744と直線y=-0.02x+2.04との間に、実施例の点が多数、プロットされていることから、各実施例において、アッベ数と屈折率とのバランスが良好であり、光学用途に適した熱可塑性樹脂が実現されたことが確認された。
【0266】
例えば、
図31においては、屈折率が1.660より高く、アッベ数が19未満あるいは19以下、例えば、13~19あるいは15~19の領域内にあって、さらに、
直線nD=-0.0002ν+1.6718と直線nD=-0.024ν+2.124との間の領域にプロットされていて、-0.0002ν+1.6718<nD<-0.024ν+2.124の関係を満たすポリカーボネート樹脂が好ましい性状を有しており、
直線nD=-0.004v+1.744と直線nD=-0.024ν+2.124との間の領域にプロットされていて、-0.004v+1.744<nD<-0.024ν+2.124の関係を満たすポリカーボネート樹脂がより好ましい性状を有しており、
直線nD=-0.02v+2.04と直線nD=-0.024ν+2.124との間の領域にプロットされていて、-0.02v+2.04<nD<-0.024ν+2.124の関係を満たすポリカーボネート樹脂がさらに好ましい性状を有しているといえる。