(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20231219BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231219BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231219BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20231219BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20231219BHJP
A61P 37/06 20060101ALN20231219BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P37/06
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021512315
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015266
(87)【国際公開番号】W WO2020204152
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2019071840
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020022256
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 史朗
(72)【発明者】
【氏名】手塚 智也
(72)【発明者】
【氏名】スロスビー マーク
(72)【発明者】
【氏名】デ クルイフ コルネリス アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ロー ピーテル フォッコ
(72)【発明者】
【氏名】クロースター リンス
(72)【発明者】
【氏名】ローヴァーズ ロベルタス コルネリス
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106939050(CN,A)
【文献】特表2011-525808(JP,A)
【文献】特表2019-500405(JP,A)
【文献】国際公開第2019/070047(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/156199(WO,A1)
【文献】Frontiers in Oncology,2018年,Vol. 8, Article 285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗
体であって、
(A)
PD-1に特異的に結合する第一アームは、配列番号
5のアミノ酸配列からなるVH
および配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有
し、ならびに
(B)
CD19に特異的に結合する第二アームは、配列番号6
2のアミノ酸配列からなるVH
および配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する
、当該二重特異性抗
体。
【請求項2】
IgG
1
抗体である、請求項
1記載の二重特異性抗
体。
【請求項3】
PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖が、配列番号23のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を
有する、請求項1
または2記載の二重特異性抗
体。
【請求項4】
CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖が、配列番号2
4のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を
有する、請求項1~
3の何れか一項記載の二重特異性抗
体。
【請求項5】
PD-1に特異的に結合する第一アームのVLを有する軽鎖およ
びCD19に特異的に結合する第二アームのVLを有する軽鎖が、
各々、配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域を
有する、請求項1~
4の何れか一項記載の二重特異性抗
体。
【請求項6】
PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗
体であって、
(A)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重
鎖、
(B)PD-1に特異的に結合する第一アームのVLを有する軽
鎖、
(C)CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重
鎖、および
(D)CD19に特異的に結合する第二アームのVLを有する軽鎖
からなり、
(a)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖が、配列番号5のアミノ酸配列からなるVHおよび配列番号23のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を有し、
(b)PD-1に特異的に結合する第一アームのVLを有する軽鎖が、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLおよび配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域を有し、
(c)CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖が、配列番号62のアミノ酸配列からなるVHおよび配列番号24のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を有し、ならびに
(d)CD19に特異的に結合する第二アームのVLを有する軽鎖が、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLおよび配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域を有する、
当該二重特異性抗
体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-1およびCD19に各々特異的に結合することができる二重特異性抗体(以下、「PD-1/CD19二重特異性抗体」と略記することがある。)またはその抗体断片(以下、これらを「PD-1/CD19二重特異性抗体等」と略記することがある。)、これを有効成分として含む医薬組成物ならびにそれらの医薬治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1は免疫グロブリンファミリーに属する免疫抑制受容体であり、抗原レセプターからの刺激により活性化したB細胞の免疫活性化シグナルを抑制する機能を持つ分子である。PD-1ノックアウトマウスの解析等から、PD-1シグナルは、自己免疫性拡張型心筋症、ループス様症候群、自己免疫性脳脊髄炎、全身性ループスエリテマトーデス、移植片対宿主病、I型糖尿病およびリウマチ性関節炎などの自己免疫疾患の抑制に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、PD-1シグナルを増強する物質は自己免疫疾患等の予防または治療剤となり得ることが指摘されている。
【0003】
一方、CD19は、B細胞に発現する膜タンパクであり、B細胞受容体複合体と共にB細胞へ刺激を伝える分子である。
【0004】
自己免疫疾患の予防または治療を目的としたPD-1二重特異性抗体について、これまでに幾つかの報告はあるが(特許文献1ないし3)、その一方の標的はT細胞受容体複合体のメンバーであるCD3である。
【0005】
また、がん治療を目的とする、PD-1およびCD19を標的とする二重特異性抗体に関する報告もあるが(特許文献4)、自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制または治療を目的とする、PD-1/CD19二重特異性抗体に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2003/011911号
【文献】国際公開第2004/072286号
【文献】国際公開第2013/022091号
【文献】中国特許出願公開第106939050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自己免疫疾患等に対する予防、症状進展抑制、再発抑制または治療のための新たな薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、かかる課題を解決し得る物質として、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体に着目し、本発明を完成した。
【0009】
さらに、本発明の発明者らは、当該PD-1/CD19二重特異性抗体が、PD-1およびそのリガンドであるPD-L1との相互作用を許容する特徴を有することを確認した。くわえて、本発明の発明者らは、当該PD-1/CD19二重特異性抗体を構成するCD19に特異的に結合する第二アームの重鎖への所定の一つまたは複数のアミノ酸置換または付加により、その精製工程において、副産物との分離が容易なPD-1/CD19二重特異性抗体を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
[1] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗体断片であって、PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)(a)配列番号6のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域の相補性決定領域1(以下、「重鎖可変領域の相補性決定領域1」を、VH-CDR1と略記することがある。)、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域の相補性決定領域2(以下、「重鎖可変領域の相補性決定領域2」を、VH-CDR2と略記することがある。)および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域の相補性決定領域3(以下、「重鎖可変領域の相補性決定領域3」を、VH-CDR3と略記することがある。)を有する重鎖可変領域(以下、「重鎖可変領域」を、「VH」と略記することがある。)、
(B)(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有し、
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有し、ここで、PD-1に特異的に結合する第一アームにおける、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3から選択される何れか一つまたは複数のVH-CDRにおいて、各々その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されていてもよく、および/または、CD19に特異的に結合する第二アームにおける、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3から選択される何れか一つまたは複数のVH-CDRにおいて、各々その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されていてもよい、当該PD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[2] PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有し、
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有する、前項[1]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[3] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つである、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[4] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つである、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[5] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つである、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[6] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つである、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[7] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つである、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[8] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[9] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[10] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[11] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[12] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[13] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[14] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[15] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[16] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[17] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[18] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[19] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[20] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[21] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[22] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[23] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[24] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[25] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[26] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[27] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[28] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[29] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[30] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[31] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[32] (i)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、
(a)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有し、
(ii)CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、
(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有する、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[33] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHのフレームワーク(以下、「フレームワーク」を、FRと略記することがある。)領域のうち、フレームワーク1(以下、FR1と略記することがある。)、フレームワーク2(以下、FR2と略記することがある。)およびフレームワーク3(以下、FR3と略記することがある。)領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV7-4-1あるいはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるアミノ酸配列に各々対応する、前項[1]~[32]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[34] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHのフレームワーク4(以下、「フレームワーク4」を、FR4と略記することがある。)領域が、生殖細胞系列型J遺伝子JH6cあるいはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるアミノ酸配列(但し、VH-CDR3領域に含まれるアミノ酸配列を除く。)からなる、前項[33]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[35] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHのFR領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV7-4-1の体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子にコードされ、当該体細胞突然変異により、配列番号21のアミノ酸配列中の位置13のリシンがグルタミンに、位置16のアラニンがバリンに、または位置19のリシンがメチオニンに各々置換されるか、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせで置換されたあるいは置換されていてもよいFR1領域からなる、前項[33]または[34]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[36] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHのFR領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV7-4-1の体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子にコードされ、当該体細胞突然変異により、配列番号21のアミノ酸配列中の位置37のバリンがロイシンに置換されたあるいは置換されていてもよいFR2領域からなる、前項[33]~[35]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[37] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHのFR領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV7-4-1の体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子にコードされ、当該体細胞突然変異により、配列番号21のアミノ酸配列中の位置77のセリンがスレオニンに、または位置84のシステインがセリンもしくはアスパラギンに各々置換されるか、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせで置換されたあるいは置換されていてもよいFR3領域からなる、前項[33]~[36]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[38] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHのFR4領域が、生殖細胞系列型J遺伝子JH6cの体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子(但し、VH-CDR3領域をコードする遺伝子領域を除く。)にコードされ、そのFR4領域のアミノ酸配列(Trp-Gly-Lys-Gly-Thr-Thr*-Val-Thr-Val-Ser-Ser)(配列番号61)中のリシン(Lys)がグルタミンもしくはアスパラギンに、および/または*印のスレオニン(Thr)がロイシンに置換されたあるいは置換されていてもよい、前項[33]~[37]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[39] CD19に特異的に結合する第二アームのVHのFR領域のうち、FR1、FR2およびFR3領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV5-51あるいはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるアミノ酸配列に各々対応する、前項[1]~[38]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[40] CD19に特異的に結合する第二アームのVHのFR領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV5-51の体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子にコードされ、当該体細胞突然変異により、配列番号22のアミノ酸配列中の位置1のグルタミン酸がグルタミンに、位置14のプロリンがセリンに、位置27のチロシンがフェニルアラニンに、または位置30のスレオニンがイソロイシンに各々置換されるか、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせで置換されたあるいは置換されていてもよいFR1領域からなる、前項[39]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[41] CD19に特異的に結合する第二アームのVHのFR領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV5-51の体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子にコードされたFR2領域からなる、前項[39]または[40]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[42] CD19に特異的に結合する第二アームのVHのFR領域が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV5-51の体細胞突然変異を受けていてもよい当該遺伝子にコードされ、当該体細胞突然変異により、配列番号22のアミノ酸配列中の位置76のイソロイシンがフェニルアラニンに、位置77のセリンがスレオニンもしくはアスパラギンに、位置78のスレオニンがバリンに、位置84のセリンがアスパラギンに、位置93のメチオニンがイソロイシンもしくはロイシンに、または位置97のアラニンがバリンに各々置換されるか、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせで置換されたあるいは置換されていてもよいFR3領域からなる、前項[39]~[41]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[43] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%同一なアミノ酸配列からなる、前項[1]~[42]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[44] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]~[43]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[45] CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号34から選択される何れか一つのアミノ酸配列、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%同一なアミノ酸配列からなる、前項[1]~[44]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[46] CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号34から選択される何れか一つのアミノ酸配列であって、当該配列において114番目のグルタミンがアルギニンに置換された、または置換されていてもよいアミノ酸配列からなる、前項[1]~[45]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[47] CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]~[45]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[48] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[49] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有する二重特異性抗体またはその抗体断片であって、
PD-1に特異的に結合する第一アームのVHが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%同一なアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%同一なアミノ酸配列からなる、PD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[50] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[51] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号2のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[52] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号3のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[53] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号4のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[54] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号5のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[1]または[2]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[55] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30または配列番号62のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[8]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[56] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号31または配列番号63のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[9]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[57] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号32または配列番号64のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[10]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[58] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号33または配列番号65のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[11]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[59] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号34または配列番号66のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[12]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[60] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号2のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30または配列番号62のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[13]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[61] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号2のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号31または配列番号63のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[14]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[62] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号2のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号32または配列番号64のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[15]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[63] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号2のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号33または配列番号65のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[16]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[64] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号2のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号34または配列番号66のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[17]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[65] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号3のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30または配列番号62のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[18]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[66] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号3のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号31または配列番号63のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[19]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[67] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号3のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号32または配列番号64のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[20]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[68] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号3のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号33または配列番号65のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[21]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[69] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号3のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号34または配列番号66のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[22]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[70] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号4のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30または配列番号62のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[23]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[71] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号4のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号31または配列番号63のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[24]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[72] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号4のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号32または配列番号64のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[25]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[73] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号4のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号33または配列番号65のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[26]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[74] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号4のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号34または配列番号66のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[27]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[75] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号5のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号30または配列番号62のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[28]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[76] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号5のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号31または配列番号63のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[29]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[77] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号5のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号32または配列番号64のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[30]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[78] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号5のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号33または配列番号65のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[31]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[79] PD-1に特異的に結合する第一アームにおけるVHが、配列番号5のアミノ酸配列からなり、CD19に特異的に結合する第二アームにおけるVHが、配列番号34または配列番号66のアミノ酸配列からなる、前項[1]、[2]または[32]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[80] PD-1に特異的に結合する第一アームおよび/またはCD19に特異的に結合する第二アームが、各々、
(a)配列番号26のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域の相補性決定領域1(以下、「軽鎖可変領域の相補性決定領域1」を、VL-CDR1と略記することがある。)、
(b)配列番号27のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域の相補性決定領域2(以下、「軽鎖可変領域の相補性決定領域2」を、VL-CDR2と略記することがある。)、および
(c)配列番号28のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域の相補性決定領域3(以下、「軽鎖可変領域の相補性決定領域3」を、VL-CDR3と略記することがある。)を有する軽鎖可変領域(以下、「軽鎖可変領域」を、「VL」と略記することがある。)を有する、前項[1]~[79]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[81] PD-1に特異的に結合する第一アームおよび/またはCD19に特異的に結合する第二アームが、各々、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、前項[1]~[80]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[82] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗体断片であって、
(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、PD-1に特異的に結合する第一アーム、ならびに
(B)配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、CD19に特異的に結合する第二アームを含む、PD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[83] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗体断片であって、当該PD-1に特異的に結合する第一アームが、(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、PD-1に特異的に結合する第一アームのPD-1への結合もしくは(2)当該VHおよびVLからなるPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域のPD-1への結合に交差競合する、当該PD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[84] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗体断片であって、当該PD-1に特異的に結合する第一アームによるPD-1への結合が、(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、PD-1に特異的に結合する第一アームまたは(2)当該VHおよびVLからなるPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域によって交差競合される、当該PD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[85] さらに、当該CD19に特異的に結合する第二アームが、(1)配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、CD19に特異的に結合する第二アームのCD19への結合もしくは(2)当該VHおよびVLからなるCD19に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域のCD19への結合に交差競合する、前項[83]または[84]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[86] さらに、当該CD19に特異的に結合する第二アームによるCD19への結合が、(1)配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、CD19に特異的に結合する第二アームもしくは(2)当該VHおよびVLからなるCD19に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域によって交差競合される、前項[83]または[84]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[87] CD19に特異的に結合する第二アームが、
(A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有する、前項[83]または[84]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[88] CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%同一なアミノ酸配列からなる、前項[83]または[84]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[89] CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる、前項[83]または[84]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[90] PD-1に特異的に結合する第一アームおよび/またはCD19に特異的に結合する第二アームが、
(a)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、
(b)配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および
(c)配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を有するVLを有する、前項[83]~[89]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[91] PD-1に特異的に結合する第一アームおよび/またはCD19に特異的に結合する第二アームが、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、前項[83]~[89]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[92] PD-1/CD19二重特異性抗体が、IgG抗体である前項[1]~[91]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[93] 前項[92]記載のIgG抗体が、IgG1抗体またはIgG4抗体である前項[92]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[94] 前項[92]記載のIgG抗体が、IgG1抗体である前項[92]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[95] 前項[92]記載のIgG抗体が、IgG4抗体である前項[92]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[96] 前項[94」記載のIgG1抗体における2個の重鎖定常領域中のEUナンバリングシステムにおける235番目のロイシンが各々グリシンに置換され、および/または236番目のグリシンが各々アルギニンに置換された前項[94]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[97] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖における定常領域中のEUナンバリングシステムによる351番目のロイシンおよび366番目のスレオニンがともにリシンに置換され、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖における定常領域中の351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換された前項[94]または[96]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[98] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖における定常領域中のEUナンバリングシステムによる351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換され、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖における定常領域中の351番目のロイシンおよび366番目のスレオニンがともにリシンに置換された前項[94]または[96]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[99] 前項[94]および[96]~[98]の何れか一項記載のIgG1抗体の2個の重鎖定常領域中のEUナンバリングシステムによる447番目のリシンが各々欠如している前項[94]および[96]~[98]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[100] 前項[95]記載のIgG4抗体における2個の重鎖定常領域中のEUナンバリングシステムによる228番目のセリンが各々プロリンに置換された前項[95]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[101] CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖が、そのC末端に、さらに、Gly(グリシン)、Gly-Lys-Lys-Ala(配列番号67)、Gly-Lys-Ala-Lys-Ala(配列番号68)、Gly-Arg-Arg-Ala(配列番号69)またはGly-Arg-Ala-Arg-Ala(配列番号70)を有する前項[94]および[96]~[99]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[102] PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖が、配列番号23のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を含む、前項[1]~[94]、[96]、[98]、[99]および[101]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[103] CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖が、配列番号24、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74および配列番号75から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を含む、前項[1]~[94]、[96]、[98]、[99]、[101]および[102]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[104] PD-1に特異的に結合する第一アームのVLを有する軽鎖および/またはCD19に特異的に結合する第二アームのVLを有する軽鎖が、配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域を含む、前項[1]~[103]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[105] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD19に特異的に結合する第二アームを有し、PD-1およびCD19に各々特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗体断片であって、
(A)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号23のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を含み、
(B)PD-1に特異的に結合する第一アームのVLを有する軽鎖が、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLおよび配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域を含み、
(C)CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖が、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号24のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を含み、および
(D)CD19に特異的に結合する第二アームのVLを有する軽鎖が、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLおよび配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域を含む、当該PD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[106] PD-1に特異的に結合する第一アームが、PD-1およびPD-L1間の相互作用を許容する、前項[1]~[105]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[107] PD-1に特異的に結合する第一アームの重鎖および軽鎖からなる複合体の等電点が、約7.4~約7.7(好ましくは、約7.5~約7.6)である、前項[1]~[106]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[108] CD19に特異的に結合する第二アームの重鎖および軽鎖からなる複合体の等電点が、約8.3~約8.8(好ましくは、約8.4~約8.6)である、前項[1]~[107]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[109] 投与中あるいは投与後24時間以内において、血中あるいは組織中のサイトカイン産生が十分に低減された、前項[1]~[108]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[110] PD-1に特異的に結合する第一アームがPD-1およびPD-L1間の相互作用を許容し、かつ、サイトカイン産生が十分に低減された、前項[1]~[108]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[111] サイトカインが、少なくともIL-2、IFN-γまたはTNF-αである、前項[109]または[110]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[112] 同じB細胞上に各々発現するPD-1およびCD19に結合することにより、B細胞の活性化を抑制する、前項[1]~[111]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[113] T細胞(好ましくは、メモリーT細胞)の活性化を抑制する、前項[1]~[111]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[114] B細胞上に発現するCD19およびT細胞上に発現するPD-1に各々結合することにより、T細胞の活性化を抑制する、前項[113]記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[115] PD-1およびCD19が、各々ヒトPD-1およびヒトCD19である、前項[1]~[114]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[116] 当該PD-1/CD19二重特異性抗体が、モノクローナル抗体である前項[1]~[115]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[117] 当該PD-1/CD19二重特異性抗体が、単離抗体である、前項[1]~[116]の何れか一項記載のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[1-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む医薬組成物。
[1-2] さらに、少なくとも一つの薬学的に許容できる担体を含む、前項[1-1]記載の医薬組成物。
【0012】
[2-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-2] 自己免疫疾患が、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデス、多発性硬化症(全身性強皮症、進行性全身性硬化症)、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎)、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、悪性関節リウマチ、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、脊椎関節炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、成人スティル病、血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、過敏性血管炎、リウマトイド血管炎、大型血管炎、ANCA関連血管炎(例えば、多発血管炎性肉芽腫症および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、コーガン症候群、RS3PE症候群、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、抗リン脂質抗体症候群、好酸球性筋膜炎、IgG4関連疾患(例えば、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎など)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病(グレーブス病(甲状腺機能亢進症))、橋本病、自己免疫性副腎機能不全、原発性甲状腺機能低下症、アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)、特発性アジソン病、I型糖尿病、緩徐進行性I型糖尿病(成人潜在性自己免疫性糖尿病)、限局性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、白斑、尋常性白斑、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多巣性運動ニューロパチー、サルコイドーシス、巨細胞性動脈炎、筋委縮性側索硬化症、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、習慣性流産、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、セリアック病、強直性脊椎炎、重症喘息、慢性蕁麻疹、移植免疫、家族性地中海熱、好酸球性副鼻腔炎、拡張型心筋症、全身性肥満細胞症または封入体筋炎である前項[2-1]記載の剤。
[2-3] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、移植片対宿主病(GVHD)の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-4] インスリン製剤(例えば、ヒトインスリン、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンデテミル、インスリンアスパルト等)、スルホニルウレア剤(例えば、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド等)、速攻型インスリン分泌促進薬(例えば、ナテグリニド等)、ビグアナイド製剤(例えば、メトホルミン等)、インスリン抵抗性改善薬(例えば、ピオグリタゾン等)、α-グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボース、ボグリボース等)、糖尿病性神経症治療薬(例えば、エパルレスタット、メキシレチン、イミダプリル等)、GLP-1アナログ製剤(例えば、リラグルチド、エクセナチド、リキシセナチド等)およびDPP-4阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン等)から選択される何れか一以上の薬剤とともに投与されることを特徴とし、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、I型糖尿病の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-5] ステロイド薬(例えば、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸ハロプレドン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、酢酸パラメタゾン、ベタメタゾン等)、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、酢酸グラチラマー、ミトキサントロン、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、クラドリビン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチコトロピン、ミゾリビン、タクロリムス、フィンゴリモドおよびアレムツズマブから選択される何れか一以上の薬剤とともに投与されることを特徴とし、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、多発性硬化症の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-6] ステロイド薬(例えば、前項[2-5]記載のステロイド薬)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、フィンゴリモド等)およびべリムマブから選択される何れか一以上の薬剤とともに投与されることを特徴とし、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、全身性エリテマトーデスの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-7] ステロイド薬(例えば、前項[2-5]記載のステロイド薬)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、スルファサラジン、ブシラミン、レフルノミド、ミゾリビン、タクロリムス等)、抗サイトカイン薬(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、トシリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、セルトリズマブ)およびアバタセプトから選択される何れか一以上の薬剤とともに投与されることを特徴とし、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、関節リウマチの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-8] 前項[2-4]~[2-7]において挙げられる何れか一以上の薬剤とともに投与されることを特徴とし、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-9] 前項[2-4]~[2-7]において挙げられる何れか一以上の薬剤を投与される患者に投与されることを特徴とする、前項[2-4]~[2-8]記載の各疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-10] 前項[2-4]~[2-7]において挙げられる何れか一以上の薬剤の投与後に投与されることを特徴とする、前項[2-4]~[2-8]記載の各疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[2-11] 前項[2-4]~[2-7]において挙げられる何れか一以上の薬剤の投与前に投与されることを特徴とする、前項[2-4]~[2-8]記載の各疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
【0013】
[3-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片および少なくとも一つの薬学的に許容できる担体を含む、静脈内注射用製剤。
[3-2] 自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療のための前項[3-1]記載の静脈内注射用製剤。
[3-3] 点滴用である、前項[3-1]または[3-2]記載の静脈内注射用製剤。
[4-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体を構成する、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖をコードする単離ポリヌクレオチドまたはその断片。
[4-2] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体を構成する、CD19に特異的に結合する第二アームのVHをコードする単離ポリヌクレオチドまたはその断片。
[4-3] CD19に特異的に結合する第二アームのVHが、配列番号56~60および配列番号76~80から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされる、前項[4-1]または[4-2]記載の単離ポリヌクレオチドまたはその断片。
[4-4] 配列番号56~60および配列番号76~80から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチドまたはその断片。
[5-1] 前項[4-1]~[4-4]の何れかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[6-1] 前項[5-1]記載の発現ベクターが導入され、あるいは同ベクターの導入によって形質転換された動物細胞。
[7-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片の有効量を患者に投与することからなる、自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療方法。
[8-1] 自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に使用される、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[9-1] 自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療のための医薬の製造における、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片の使用。
【0014】
[10-1] 配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有するCD19に特異的に結合する抗体のCD19への結合に交差競合する、単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-2] 単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片であって、当該抗体またはその抗体断片のCD19への結合が、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有するCD19に特異的に結合する抗体によって交差競合される、当該抗体またはその抗体断片。
[10-3] (A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有し、
(a)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、
(b)配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および
(c)配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を有するVLを有する、単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-4] (A)(a)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(B)(a)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(C)(a)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、
(D)(a)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVH、ならびに
(E)(a)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、
(b)配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および
(c)配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を有するVHから選択される何れか一つのVHを有し、
(a)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、
(b)配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および
(c)配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を有するVLを有し、ここで、当該VHにおけるVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3から選択される何れか一つまたは複数のCDRにおいて、その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されていてもよい、単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-5] 配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、98%もしくは99%同一なアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、前項[10-1]~[10-4]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-6] 配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号34から選択される何れか一つのアミノ酸配列における114番目のグルタミンがアルギニンに置換された、または置換されていてもよいアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、前項[10-1]~[10-4]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-7] 配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65および配列番号66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHならびに配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する、前項[10-1]~[10-4]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-8] CD19が、ヒトCD19である、前項[10-1]~[10-7]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-9] 抗CD19抗体が、IgG抗体である前項[10-1]~[10-8]の何れか一項記載の単離CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-10] 前項[10-9]記載のIgG抗体が、IgG1抗体またはIgG4抗体である前項[10-9]記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-11] 前項[10-9]記載のIgG抗体が、IgG1抗体である前項[10-9]記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-12] 前項[10-9]記載のIgG抗体が、IgG4抗体である前項[10-9]記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-13] (1)当該重鎖定常領域中の351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換された、または(2)当該重鎖定常領域中の351番目のロイシンおよび366番目のスレオニンがともにリシンに置換された、前項[10-1]~[10-11]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-14] 当該重鎖のC末端に、さらに、Gly(グリシン)、Gly-Lys-Lys-Ala(配列番号67)、Gly-Lys-Ala-Lys-Ala(配列番号68)、Gly-Arg-Arg-Ala(配列番号69)またはGly-Arg-Ala-Arg-Ala(配列番号70)を有する、前項[10-1]~[10-13]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[10-15] 当該重鎖が、配列番号24、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74および配列番号75から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を含む、前項[10-1]~[10-14]の何れか一項記載の単離抗CD19モノクローナル抗体またはその抗体断片。
[11-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、自己反応性B細胞介在性疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[11-2] 自己反応性B細胞介在性疾患が、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、喘息、クリオグロブリン血症、原発性胆管硬化症または悪性貧血である前項[11-1]記載の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療剤。
[12-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、自己反応性B細胞抑制剤。
[12-2] 自己反応性B細胞抑制が、イムノグロブリン産生抑制である、前項[12-1]記載の自己反応性B細胞抑制剤。
[12-3] 当該イムノグロブリンが、IgGまたはIgMである前項[12-2]記載の自己反応性B細胞抑制剤。
[13-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片を有効成分として含む、T細胞活性化抑制剤。
[13-2] 当該T細胞活性化抑制が、サイトカイン産生抑制である、前項[13-1]記載のT細胞活性化抑制剤。
[13-3] 当該T細胞活性化抑制が、メモリーT細胞抑制である、前項[13-1]または[13-2]記載のT細胞活性化抑制剤。
[14-1] 前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片の有効量を患者に投与することを含む、自己反応性B細胞抑制またはT細胞活性化抑制方法。
[15-1] 自己反応性B細胞抑制またはT細胞活性化抑制に使用される、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片。
[16-1] 自己反応性B細胞抑制剤またはT細胞活性化抑制剤の製造における、前項[1]~[117]の何れか一項から選択されるPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片の使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体は、PD-1およびPD-L1間の相互作用を許容し、自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療の効果の増強あるいは持続が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】共通軽鎖のVLおよび定常領域のアミノ酸配列を示す。
【
図2】共通軽鎖のVLの各CDRのアミノ酸配列を示す。
【
図3】生殖細胞系列型V遺伝子IGHV7-4-1およびIGHV5-51によって各々コードされるアミノ酸配列を示す。
【
図4】PD-1に特異的に結合する抗体(以下、抗PD-1抗体と略記することがある。)の各クローンのVHと、生殖細胞系列型遺伝子IGHV7-4-1およびJH6cとの配列アラインメントを示す。図中、各クローンのアミノ酸配列中の“-”は、対応する生殖細胞系列型遺伝子IGHV7-4-1あるいはJH6cのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸を表わし、アミノ酸の略字が記載されている部分は、同生殖細胞系列型遺伝子のアミノ酸配列と相違するアミノ酸を表わす。
【
図5】CD19に特異的に結合する抗体(以下、「抗CD19抗体」と略記することがある。)の各クローンのVHと、生殖細胞系列型遺伝子IGHV5-51にコードされるアミノ酸配列との配列アラインメントを示す。図中の各表記は、
図4のものと同じ意味を表わす。
【
図6】抗PD-1抗体各クローンのVHのアミノ酸配列を示す。
【
図7】抗PD-1抗体各クローンのVH中の各CDRのアミノ酸配列を示す。
【
図8】抗CD19抗体各クローンのVHのアミノ酸配列を示す。
【
図9】抗CD19抗体各クローンのVH中の各CDRのアミノ酸配列を示す。
【
図10】PD-1/CD19二重特異性抗体の各重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
【
図11】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンのPD-1およびCD19に対する結合活性を各々確認したBiacore測定結果を示す。
【
図12】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンCD19-1(Bi)~CD19-3(Bi)のCD19に対する結合性を各々確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図13】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンCD19-4(Bi)およびCD19-5(Bi)のCD19に対する結合性を各々確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図14】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンCD19-1(Bi)~CD19-3(Bi)のPD-1に対する結合性を各々確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図15】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンCD19-4(Bi)およびCD19-5(Bi)のPD-1に対する結合性を各々確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図16】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンCD19-6(Bi)のPD-1およびCD19各々に対する結合性を確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図17】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンのPD-1およびCD19への同時結合性を各々確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図18】PD-1/CD19二重特異性抗体各クローンのPD-1/PD-L1相互作用への影響を各々確認したフローサイトメトリーを示す。
【
図19】インビトロにおけるヒトB細胞活性化時のIgM産生に対するPD-1/CD19二重特異性抗体各クローンの作用結果を各々示す。なお、図中の「Ctrl」はコントロール群を表わす。
【
図20】インビボにおけるヒトB細胞活性化時のIgG
2産生に対するPD-1/CD19二重特異性抗体各クローン(CD19-1(Bi)~CD19-4(Bi))の作用結果を各々示す。なお、図中の「Ctrl」はコントロール群を表わす。
【
図21】インビボにおけるヒトB細胞活性化時のIgG
2産生に対するPD-1/CD19二重特異性抗体クローンCD19-5(Bi)およびCD19-6(Bi)の作用結果を各々示す。なお、図中の「Ctrl」はコントロール群を表わす。
【
図22】ヒト末梢血単核細胞からのサイトカイン産生に対するPD-1/CD3二重特異性抗体クローンCD19-6(Bi)の作用結果を示す。なお、図中の「Medium」はコントロール群を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0017】
PD-1(Programmed Cell Death-1)は、ヒトにおいては、GenBank登録番号NP_005009で示されるアミノ酸配列から成る膜型タンパク質である。本明細書において「PD-1」と記載される場合、特に限定しない限り、そのすべてのアイソフォーム、および本発明にかかる「PD-1に特異的に結合する第一アーム」のエピトープが保存された、それら改変体をも含むものとして使用される場合がある。本発明において、PD-1として好ましくは、ヒトPD-1である。
【0018】
CD19は、ヒトにおいては、GenBank登録番号NP_001171569あるいはNP_001761で示されるアミノ酸配列から成る、B細胞に発現する膜タンパクであり、B細胞受容体複合体と共にB細胞へ刺激を伝える分子である。本明細書において「CD19」と記載される場合、特に限定しない限り、本発明にかかる「CD19に特異的に結合する第二アーム」のエピトープが保存された、それら改変体をも含むものとして使用される場合がある。本発明において、CD19として好ましくはヒトCD19である。
【0019】
本明細書において「単離」とは、宿主細胞から抽出された、複数ないし無数の成分が含まれる夾雑物の中から同定、分離および/または精製されることにより、実質的に単一の純粋な成分となることを意味する。
【0020】
本明細書において「モノクローナル抗体」とは、同一の特定の抗原に対して結合する、実質的に均一である抗体集団から得られた抗体を意味する。
【0021】
本明細書において「二重特異性抗体」とは、二つの異なる抗原分子あるいはエピトープに対する結合特異性を一分子に備え持つ抗体を意味し、「二重特異性モノクローナル抗体」とは、さらに、実質的に均一である抗体集団から得られた二重特異性抗体を意味する。
【0022】
本発明は、PD-1およびCD19に各々特異的に結合することができる二重特異性抗体(本明細書において、「PD-1/CD19二重特異性抗体」と略記することがある。)に関する。本発明において、PD-1/CD19二重特異性抗体として好ましくは、PD-1/CD19二重特異性モノクローナル抗体であり、より好ましくは、単離PD-1/CD19二重特異性モノクローナル抗体であり、さらに好ましくは、単離ヒトPD-1/ヒトCD19二重特異性モノクローナル抗体である。ここで、「単離ヒトPD-1/ヒトCD19二重特異性モノクローナル抗体」とは、ヒトPD-1とヒトCD19に対する、単離された二重特異性モノクローナル抗体を意味する。
【0023】
ここで、二重特異性抗体の形態には、例えば、ダイアボディ、二重特異性sc(Fv)2、二重特異性ミニボディ、二重特異性F(ab′)2、二重特異性ハイブリッド抗体、共有結合型ダイアボディ(二重特異性DART)、二重特異性(FvCys)2、二重特異性F(ab′-ジッパー)2、二重特異性(Fv-ジッパー)2、二重特異性三鎖抗体および二重特異性mAb2等がある。
【0024】
ダイアボディとは、異なる抗原を認識するVH、VL同士がペプチドリンカーで連結された一本鎖ペプチドの二量体である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993), Vol. 90, No.14: p.6444-6448参照)。
【0025】
二重特異性sc(Fv)2とは、異なる抗原を認識する2つの抗体の2組のVH/VLがペプチドリンカーを介して連続する一本鎖の形態で産生されるよう改変された低分子化抗体である(J. Biological Chemistry (1994), Vol. 269: p.199-206参照)。
【0026】
二重特異性F(ab′)2とは、異なる2つの抗原を認識する抗体のFab′断片が、ジスルフィド結合等により共有結合した低分子化抗体である。
【0027】
二重特異性ミニボディとは、各々異なる抗原を認識するscFvに抗体の定常領域CH3ドメインが連結されるよう改変された低分子抗体断片を、そのCH3ドメイン上のジスルフィド結合等によって共有結合した低分子化抗体である(Biochemistry (1992), Vo.31, No.6, p.1579-1584参照)。
【0028】
二重特異性ハイブリッド抗体とは、異なる2つの抗原を認識する抗体の重鎖/軽鎖複合体がジスルフィド結合等によって共有結合したインタクトな抗体である。
【0029】
本発明において、好ましい二重特異性抗体の形態としては、二重特異性ハイブリッド抗体である。
【0030】
二重特異性ハイブリッド抗体は、例えば、ハイブリッドハイブリドーマ法(US4474893参照)で作製されたハイブリドーマから産生させることができる。また、異なる抗原を認識する抗体の重鎖および軽鎖を各々コードする計4種類のcDNAを哺乳動物細胞に共発現ならびに分泌させて製造することができる。
【0031】
本発明において使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilsteinら, Natur (1975), Vol. 256, p.495-97、Hongoら, Hybridoma (1995), Vol. 14, No. 3, p.253-260、Harlowら, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988), Vol. 2)およびHammerlingら, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, p.563-681(Elsevier, N.Y., 1981)参照)、組換えDNA法(例えば、US4816567参照)、ファージディスプレイ方法(例えば、LadnerらのUS5223409、US5403484およびUS5571698、DowerらのUS5427908およびUS5580717、McCaffertyらのUS5969108およびUS6172197およびGriffithsらのUS5885793、US6521404、US6544731、US6555313、US6582915およびUS6593081参照)で作製することができる。
【0032】
抗体あるいはモノクローナル抗体は、ヒトに投与される場合には、その抗原性を低減あるいは消失させるために、キメラ抗体、ヒト化抗体あるいは完全ヒト型抗体の形態で作製することができる。
【0033】
「キメラ抗体」は、可変領域配列と定常領域配列が別々の哺乳動物に由来する抗体を意味し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来するものがある。キメラ抗体は、上記のハイブリドーマ法、組換えDNA法あるいはファージディスプレイ方法で単離された抗体産生ハイブリドーマから、公知の手法により単離された抗体可変領域をコードする遺伝子を、公知の方法を用いて、ヒト由来の抗体定常領域をコードする遺伝子に連結させ、作製することができる(例えば、CabillyらのUS4816567参照)。
【0034】
「ヒト化抗体」とは、マウスのような別の哺乳動物の生殖細胞型に由来する相補性決定領域(CDR)配列をヒトフレームワーク配列上に移植した抗体を意味する。ヒト化抗体の場合も、上記方法で単離された抗体産生ハイブリドーマから、公知の手法により単離された抗体CDR領域をコードする遺伝子を、公知の方法を用いて、ヒト由来の抗体フレームワーク領域をコードする遺伝子に連結させ、作製することができる(例えば、WinterのUS5225539およびUS5530101、QueenらのUS5585089号およびUS6180370参照)。
【0035】
「ヒト抗体」または「完全ヒト型抗体」とは、フレームワーク領域およびCDR領域からなる可変領域ならびに定常領域の両方ともにヒト生殖細胞型免疫グロブリン配列に由来する抗体を意味する。本発明において使用されるヒト抗体は、ヒト抗体を産生するように形質転換されたマウス、例えば、Humabマウス(例えば、LonbergとKayらによるUS5545806、US5569825、US5625126、US5633425、US5789650、US5877397、US5661016、US5814318、US5874299およびUS5770429参照)、KMマウス(例えば、IshidaらのWO2002/43478参照)、Xenoマウス(例えば、US5939598、US6075181、US6114598、US6150584およびUS6162963参照)またはTcマウス(例えば、Tomizukaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000), p.722-727参照)を用いた方法で作製することができる。また、免疫によりヒト抗体応答が起こるように、ヒト免疫細胞を再構築したSCIDマウス(例えば、WilsonらのUS5476996およびUS5698767参照)を用いても調製できる。さらに、本発明において使用されるヒト抗体は、上記したファージディスプレイ方法でも作製することができる。
【0036】
本明細書において、PD-1/CD19二重特異性抗体の「抗体断片」とは、全長抗体の一部であって、PD-1に対する抗原結合部分およびCD19に対する抗原結合部分を有する抗体であり、例えば、F(ab′)2などが挙げられる。ここで、抗原結合部分とは、抗体がその抗原に結合することができる最少単位を意味し、例えば、VHおよびVLにある各々3つずつのCDRとそれらCDRの組合せにより目的の抗原が認識できるようCDRを配置するフレームワーク領域から構成される。
【0037】
本明細書において、「共通軽鎖」とは、異なる2種以上の重鎖と会合し、各々の抗原に対して結合能を示し得る軽鎖を意味する(De Wildt RMら、J. Mol. Biol. (1999), Vol. 285, p.895-901、De Kruifら、J. Mol. Biol. (2009), Vol. 387, p.548-58、WO2004/009618、WO2009/157771およびWO2014/051433)。そのような共通軽鎖として好ましくは、例えば、ヒトκ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01(IMGTデータベースによる命名法)生殖細胞系列型遺伝子によりコードされる軽鎖(以下、IGVK1-39/JK1共通軽鎖と略記することがある。)であり、より好ましくは、例えば、配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有する当該軽鎖、さらに好ましくは、例えば、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する当該軽鎖である。また、共通軽鎖の定常領域として好ましくは、配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域が挙げられる。本発明において使用される共通軽鎖のVLおよび定常領域の各々アミノ酸配列を
図1に示し、その可変領域の各CDRのアミノ酸配列を
図2に示す。
【0038】
本明細書において「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG)を称するものとして使用される。本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましいアイソタイプは、IgGであり、より好ましくはIgG1またはIgG4である。ここで、IgG1としては、Fc受容体への結合が消失あるいは減弱したものが好ましい。具体的には、その重鎖定常領域の任意のアミノ酸を置換、欠損あるいは挿入することによって、Fc受容体への結合が消失あるいは減弱されたIgG1抗体を得ることができる。例えば、二重特異性抗体の各々二つの重鎖定常領域あるいはヒンジ領域上において、EUナンバリングシステムによる235番目のロイシンがグリシンに置換され、および/または236番目のグリシンがアルギニンに置換された抗体が挙げられる。また、抗体の不均一性を低減させるために、C末端のアミノ酸、例えば、EUナンバリングシステムによる447番目のリシンを欠損した抗体が好ましい。さらに、二重特異性抗体がIgG4である場合、抗体分子内におけるスワッピングを抑制するように、その重鎖定常領域の任意のアミノ酸が置換、欠損あるいは挿入した改変体がより好ましい。例えば、ヒンジ領域に位置する、EUナンバリングシステムによる228番目のセリンをプロリンに置換した抗体が好ましい。なお、本明細書において、抗体の可変領域のCDRとフレームワークに割り当てられるアミノ酸位置はKabatナンバリングシステムにしたがって規定される場合がある(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health, Bethesda, Md., (1987)および(1991)参照)。また、定常領域のアミノ酸はKabatのアミノ酸位置に準じたEUナンバリングシステム(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No. 91-3242参照)に従って表わされる。
【0039】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体のFc領域は、二つの異なる重鎖が会合し易いように、その領域の任意のアミノ酸が置換されていてもよい。好ましい態様としては、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖上の定常領域のEUナンバリングシステムによる351番目のロイシンがリシンに置換され、かつ366番目のスレオニンがリシンに置換され、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖における定常領域中の351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換されたPD-1/CD19二重特異性抗体が挙げられる。また、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖における定常領域中のEUナンバリングシステムによる351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換され、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖における定常領域中の351番目のロイシンがリシンに置換され、かつ366番目のスレオニンがリシンに置換されたPD-1/CD19二重特異性抗体も挙げられる。
【0040】
PD-1に特異的に結合する第一アーム
本明細書において、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」(以下、「第一アーム」と略記することがある。)は、抗体あるいは抗体断片の一部に含まれるか、あるいは一部ではなく、それ自体単体として存在するか否かにかかわらず、少なくとも、PD-1に特異的に結合する抗体のVHを含み、かつPD-1に特異的に結合することができる抗体部分を意味し、例えば、このような第一アームは、抗PD-1抗体のVHおよび当該抗PD-1抗体を構成する共通軽鎖のVLからなり、さらに、第一アームには、当該VHおよびVLを含む抗体のFab部も含まれる。ここで、「PD-1に特異的に結合する」とは、少なくとも、1x10-5M、好ましくは1x10-7M、より好ましくは1x10-9Mより高い親和性(解離定数(Kd値))を有する結合活性でPD-1に対して直接結合することができ、少なくとも、CD28、CTLA-4およびICOSなどの、所謂、CD28ファミリー受容体に属するほかの受容体メンバーには実質的に結合しない特徴として使用される。また、「PD-1に特異的に結合する抗体」あるいは「抗PD-1抗体」における「抗体」とは、全長抗体、すなわち、ジスルフィド結合で連結された2つの重鎖および2つの軽鎖からなる完全長の抗体を意味するが、好ましくは、そのモノクローナル抗体である。
【0041】
ここで、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」としては、例えば、(a)HYJ1LHで表わされるアミノ酸配列[配列中、J1は、G(グリシン)またはA(アラニン)を表わし、その他のアルファベットは、各々アミノ酸の一文字略号を表わす。]からなるVH-CDR1、(b)WJ2NTNTU2NPTX2AQGFTGで表わされるアミノ酸配列[配列中、J2は、L(ロイシン)またはI(イソロイシン)を表わし、U2は、E(グルタミン酸)またはG(グリシン)を表わし、X2は、F(フェニルアラニン)またはY(チロシン)を表わし、その他のアルファベットは、各々上記と同じ意味を表わす。]からなるVH-CDR2、ならびに(c)GDJ3VVPTTIWNYYU3X3MZ3Vで表わされるアミノ酸配列[配列中、J3は、M(メチオニン)またはL(ロイシン)を表わし、U3は、H(ヒスチジン)またはY(チロシン)を表わし、X3は、F(フェニルアラニン)またはY(チロシン)を表わし、Z3は、D(アスパラギン酸)またはE(グルタミン酸)を表わし、その他のアルファベットは、各々上記と同じ意味を表わす。]からなるVH-CDR3を有するVHを有するものが挙げられる。
【0042】
また、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」の別の態様としては、例えば、
(1b)配列番号6のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号7のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号8のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、
(2b)配列番号9のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号10のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号11のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、
(3b)配列番号12のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、
(4b)配列番号15のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、ならびに
(5b)配列番号18のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号19のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号20のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVHから選択される何れか一つのVHを有するものが挙げられる。
【0043】
さらに、本発明における、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」には、上記(1b)~(5b)から選択される何れか一つのVHにおける各々のVH-CDRにおいて、その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換され、かつ、当該アミノ酸に置換されていない元の第一アームによるPD-1への結合活性と実質的に同等の結合活性を有するものも含まれる。例えば、VH-CDR1の場合には、1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換され、VH-CDR2またはVH-CDR3の場合には、各々1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換されたものが挙げられる。また、
図4に示されるように、PD-1に特異的に結合する第一アームに各々対応する抗PD-1抗体クローンの各CDRにおいて、各クローン間で相違する各アミノ酸またはそれらの任意の複数の組み合わせは当該クローン間において相互に置換可能である。ここで、保存的アミノ酸による置換は、類似する側鎖を有する残基の可換性を意味し、例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群においては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群においては、セリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群においては、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群においては、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群においては、リシン、アルギニンおよびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群においては、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸による置換の例としては、バリン、ロイシンおよびイソロイシン間での置換、フェニルアラニンおよびチロシン間での置換、リシンおよびアルギニン間での置換、アラニンおよびバリン間での置換ならびにアスパラギンおよびグルタミン間での置換が挙げられる。また、ここで、上記の「当該アミノ酸に置換されていない元の第一アームによるPD-1への結合活性と実質的に同等の結合活性を有する」とは、当該アミノ酸に置換された第一アームのPD-1への結合活性が、当該アミノ酸に置換されていない元の第一アームの結合活性の95%以上であり、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上であることを意味する。
【0044】
さらに、本発明における「PD-1に特異的に結合する第一アーム」には、そのVHにおいて、上述の特定のアミノ酸配列を有する各VH-CDRを含み、そのVHのフレームワークのアミノ酸配列が、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものも含まれる。例えば、上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVHは、生殖細胞系列型V遺伝子がIGHV7-4-1であって、生殖細胞系列型J遺伝子がJH6cであるVDJ組換遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされ得る。ここで、生殖細胞系列型のV遺伝子IGHV7-4-1によって各々コードされるアミノ酸配列は、配列番号21のアミノ酸配列に対応する(
図3)。
【0045】
本発明のPD-1に特異的に結合する第一アームのVHのフレームワークは、生殖細胞系列型のVDJ組換遺伝子が体細胞突然変異を受けた当該遺伝子によってコードされる場合がある。例えば、生殖細胞系列型V遺伝子がIGHV7-4-1である、上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVHのFR1、FR2、FR3は、
図4に示すアミノ酸位置において、IGHV7-4-1遺伝子がコードするアミノ酸配列と相違するため、当該各位置において体細胞突然変異を受けている。例えば、FR1領域については、配列番号21のアミノ酸配列中の位置13のリシンがグルタミンに、位置16のアラニンがバリンに、または位置19のリシンがメチオニンに各々置換されるか、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせで置換されていてもよい。FR2領域については、配列番号21のアミノ酸配列中の位置37のバリンがロイシンに置換されてもよい。FR3領域については、配列番号21のアミノ酸配列中の位置77のセリンがスレオニンに、位置84のシステインがセリンもしくはアスパラギンに各々置換されるか、あるいは任意の複数の組み合わせで置換されてもよい。また、上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVHのFR4領域については、J遺伝子JH6cに由来するFR4領域アミノ酸配列(Trp-Gly-Lys-Gly-Thr-Thr*-Val-Thr-Val-Ser-Ser)(配列番号41)中のリシン(Lys)がグルタミンもしくはアスパラギンに、および/または*印のスレオニン(Thr)がロイシンに置換されていてもよい。上記何れかのアミノ酸置換の組み合わせを有する各々FR1、FR2、FR3およびFR4も、PD-1に特異的に結合する第一アームの機能に実質的な影響を与えず、フレームワークとして使用することができる。
【0046】
さらに、本発明における「PD-1に特異的に結合する第一アーム」には、上述の特定のアミノ酸配列を有する各CDRを含み、かつ、そのVHのFRのアミノ酸配列が、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるものも含まれる。例えば、そのような第一アームとして、配列番号1~5から選択されるアミノ酸配列からなるVHを有するものが挙げられる。
【0047】
さらに、そのような「PD-1に特異的に結合する第一アーム」には、例えば、配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であり、好ましくは少なくとも90%同一であり、より好ましくは少なくとも95%同一であり、さらに好ましくは少なくとも98%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列からなるVHを有し、かつ、元の第一アームのVHのアミノ酸配列との相違がPD-1への結合活性に実質的に影響しないもの(以下、相同第一アームと略記することがある。)も含まれる。ここで、アミノ酸配列に関する同一性の比較において使用される「%同一」とは、2つの配列を整列させ、参照するアミノ酸配列(ここで、最大のパーセントの同一性を達成するために必要な場合には、ギャップを導入した後の参照するアミノ酸配列)と同一であるアミノ酸配列の百分率と定義される。また、ここで、「元の第一アームのVHのアミノ酸配列との相違がPD-1への結合活性に実質的に影響しない」とは、相同第一アームのPD-1への結合活性が元の第一アームの当該結合活性の95%以上であり、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上であることを意味する。
【0048】
さらに別の態様において、本発明における「PD-1に特異的に結合する第一アーム」には、(1)上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVHあるいは配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび本明細書における共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有する第一アームのPD-1への結合または(2)当該VHおよびVLからなるPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域のPD-1への結合に交差競合する抗PD-1抗体の可変領域(ここで、当該可変領域は、それを構成するVHおよびVLを含む。)を有するものも含まれ、また、PD-1への結合が、(3)上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVHあるいは配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVLを有する第一アームまたは(4)当該VHおよびVLからなるPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域により交差競合される抗PD-1抗体の可変領域を有するものも含まれる。ここで、「PD-1への結合に交差競合する」とは、本明細書において例示された第一アームと同一のあるいは一部重複するエピトープに結合することによって、当該第一アームのPD-1への結合をその程度に関わらず阻害する、あるいは当該例示された第一アームと同一のあるいは一部重複するエピトープに結合する抗体によるPD-1への結合が、当該例示された第一アームによってその程度に関わらず阻害されることを意味し、交差競合するかどうかは競合結合アッセイによって評価することができる。例えば、ビアコア分析、ELISAアッセイ、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、蛍光エネルギー転移測定法(FRET)や蛍光微量測定技術(FMAT(登録商標))を用いて判断することができる。
【0049】
例えば、上記(5b)に示されるVHおよび当該共通軽鎖のVLを有する第一アームによるPD-1への結合に交差競合するものとして、例えば、上記(1b)~(4b)から選択される何れかで示されるVHおよび当該共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を有するVL)を有する第一アーム、さらには、配列番号1~4から選択されるアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有する第一アームが挙げられる。
【0050】
また、例えば、上記(1b)~(4b)から選択される何れかで示されるVHあるいは配列番号1~4から選択されるアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVLを有する第一アームによるPD-1への結合に交差競合するものとして、例えば、上記(5b)に示されるVHおよび当該共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を有するVL)を有する第一アーム、さらには、配列番号5のアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有する第一アームが挙げられる。
【0051】
ここで、本発明における「PD-1に特異的に結合する第一アーム」として好ましくは、上記(1b)~(5b)で示されるVHを有する第一アームが挙げられ、さらに、この好ましい第一アームには、上述したように、そのVHの各CDRにおいて、その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換され、かつ、そのアミノ酸置換がPD-1への結合活性に実質的に影響しないものも含まれ、また、さらに、上述したように、VHのフレームワークのアミノ酸配列が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV7-4-1もしくは同J遺伝子JH6cまたはそれらの体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものも含まれる。そして、当該第一アームとしてより好ましくは、配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有するものが挙げられる。
【0052】
さらに、本発明における「PD-1に特異的に結合する第一アーム」は、本明細書における共通軽鎖のVLを含むものが好ましく、そのような共通軽鎖として好ましくは、例えば、IGVK1-39/JK1共通軽鎖であり、より好ましくは、例えば、配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有する軽鎖であり、さらに好ましくは、例えば、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する軽鎖である。また、共通軽鎖の定常領域として好ましくは、配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域が挙げられる。
【0053】
また、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」は、PD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用、またはそれら両相互作用を許容するものがより好ましい。ここで、「PD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用、またはそれら両相互作用を許容する」とは、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体が可溶型PD-L1またはPD-L2の濃度の20倍過剰に存在する状況下においても、当該PD-L1とPD-1との相互作用、当該PD-L2とPD-1との相互作用、またはそれら両相互作用が、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体が存在しない時の当該相互作用に比べて50%以上維持され、好ましくは70%以上維持され、より好ましくは80%以上維持されることを意味する。また、「PD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用、またはそれら両相互作用を許容する」という定義は、「PD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用、またはそれら両相互作用を実質的に阻害しない」という意味と同義で使用されることがある。
【0054】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体を構築するために取得された抗PD-1モノクローナル抗体の各クローンと、それらのVHのアミノ酸配列およびその配列番号との対応関係を
図6に、ならびに当該抗PD-1モノクローナル抗体の各クローンのVH中の各CDRのアミノ酸配列とその配列番号との対応関係を
図7に示す。
【0055】
CD19に特異的に結合する第二アーム
本明細書において、「CD19に特異的に結合する第二アーム」(以下、「第二アーム」と略記することがある。)とは、抗体あるいは抗体断片の一部に含まれるか、あるいは一部ではなく、それ自体単体として存在するか否かにかかわらず、少なくとも、CD19に特異的に結合する抗体のVHを含み、かつCD19に特異的に結合することができる抗体部分を意味し、例えば、そのような第二アームは、抗CD19抗体のVHおよび当該抗CD19抗体を構成する共通軽鎖のVLからなり、さらに、第二アームには、当該VHおよびVLを含む抗体のFab部も含まれる。ここで、「CD19に特異的に結合する」とは、少なくとも、1x10-5M、好ましくは1x10-7M、より好ましくは1x10-9Mより高い親和性(解離定数(Kd値))を有する結合活性でCD19に対して直接結合することができ、他のタンパク質には実質的に結合しない特徴として使用される。また、「CD19に特異的に結合する抗体」あるいは「抗CD19抗体」における「抗体」とは、全長抗体、すなわち、ジスルフィド結合で連結された2つの重鎖および2つの軽鎖からなる完全長の抗体を意味するが、好ましくは、そのモノクローナル抗体である。
【0056】
ここで、「CD19に特異的に結合する第二アーム」としては、例えば、(a)SYWIJ4で表わされるアミノ酸配列[配列中、J4は、G(グリシン)またはA(アラニン)を表わし、その他のアルファベットは、各々アミノ酸の一文字略号を表わす。]からなるVH-CDR1、(b)IIU4PGDSDTRYSPSFQGで表わされるアミノ酸配列[配列中、U4は、W(トリプトファン)またはY(チロシン)を表わし、その他のアルファベットは、各々上記と同じ意味を表わす。]からなるVH-CDR2、および(c)X4TIVZ4J5U5X5Z5AJ6DU6で表わされるアミノ酸配列[配列中、X4は、K(リシン)、Q(グルタミン)、H(ヒスチジン)もしくはR(アルギニン)を表わし、Z4は、G(グリシン)もしくはA(アラニン)を表わし、J5は、T(スレオニン)もしくはV(バリン)を表わし、U5は、V(バリン)、I(イソロイシン)もしくはT(スレオニン)を表わし、X5は、M(メチオニン)、Y(チロシン)、G(グリシン)もしくはH(ヒスチジン)を表わし、Z5は、T(スレオニン)、N(アスパラギン)、L(ロイシン)もしくはW(トリプトファン)を表わし、J6は、F(フェニルアラニン)もしくはS(セリン)を表わし、U6は、I(イソロイシン)、F(フェニルアラニン)もしくはY(チロシン)を表わし、その他のアルファベットは、各々上記と同じ意味を表わす。]からなるVH-CDR3を有するVHを有するものが挙げられる。
【0057】
また、「CD19に特異的に結合する第二アーム」の別の態様としては、例えば、
(1d)配列番号35のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号36のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号37のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、
(2d)配列番号38のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号39のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号40のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、
(3d)配列番号41のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号42のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号43のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、
(4d)配列番号44のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号45のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号46のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVH、ならびに
(5d)配列番号47のアミノ酸配列からなるVH-CDR1、配列番号48のアミノ酸配列からなるVH-CDR2および配列番号49のアミノ酸配列からなるVH-CDR3を含むVHから選択される何れか一つのVHを有するものが挙げられる。
【0058】
さらに、本発明における、「CD19に特異的に結合する第二アーム」には、上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHにおける各々のVH-CDRにおいて、その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換され、かつ、当該アミノ酸に置換されていない元の第二アームによるCD19への結合活性と実質的に同等の結合活性を有するものも含まれる。例えば、VH-CDR1の場合には、1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換され、VH-CDR2またはVH-CDR3の場合には、各々1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換されたものが挙げられる。また、
図5に示されるように、CD19に特異的に結合する第二アームに各々対応する抗CD19抗体クローンの各CDRにおいて、各クローン間で相違する各アミノ酸またはそれらの任意の複数の組み合わせは、当該クローン間において相互に置換可能である。ここで、「当該アミノ酸に置換されていない元の第二アームによるCD19への結合活性と実質的に同等の結合活性を有する」とは、当該アミノ酸置換された第二アームのCD19への結合活性が、当該アミノ酸に置換されていない元の第二アームの結合活性の95%以上であり、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上であることを意味する。なお、第二アームの各VH-CDRにおける「保存的アミノ酸による置換」には、例えば、上述の第一アームにおけるアミノ酸置換の例が挙げられる。
【0059】
また、さらに、本発明における、「CD19に特異的に結合する第二アーム」には、そのVHにおいて、上述の特定のアミノ酸配列を有する各CDRを含み、そのVHのFRのアミノ酸配列が、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものも含まれる。例えば、上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHは、生殖細胞系列型V遺伝子がIGHV5-51であるVDJ組換え遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされ得る。ここで、生殖細胞系列型のV遺伝子IGHV5-51によってコードされるアミノ酸配列は、配列番号22で表わされるアミノ酸配列に対応する(
図3)。
【0060】
本発明のCD19に特異的に結合する第二アームのVHのフレームワークは、生殖細胞系列型のVDJ組換遺伝子が体細胞突然変異を受けた当該遺伝子によってコードされる場合がある。例えば、生殖細胞系列型V遺伝子がIGHV5-51である、上記(1d)~(5d)から選択される何れかで示されるVHのFR1およびFR3は、
図5に示すアミノ酸位置において、IGHV5-51遺伝子がコードするアミノ酸配列と相違するため、当該各位置において体細胞突然変異を受けている。例えば、FR1領域については、配列番号22のアミノ酸配列中の位置1のグルタミン酸がグルタミンに、位置14のプロリンがセリンに、位置27のチロシンがフェニルアラニンに、または位置30のスレオニンがイソロイシンに各々置換されるか、あるいはそれらの任意の複数の組み合わせで置換されていてもよい。FR3領域については、配列番号22のアミノ酸配列中の位置76のイソロイシンがフェニルアラニンに、位置77のセリンがスレオニンもしくはアスパラギンに、位置78のスレオニンがバリンに、位置84のセリンがアスパラギンに、位置93のメチオニンがイソロイシンもしくはロイシンに、または位置97のアラニンがバリンに各々置換されるか、あるいは任意の複数の組み合わせで置換されてもよい。上記何れかのアミノ酸置換の組み合わせを有する各々FR1およびFR3も、CD19に特異的に結合する第二アームの機能に実質的な影響を与えず、フレームワークとして使用することができる。
【0061】
さらに、本発明における「CD19に特異的に結合する第二アーム」には、上述の特定のアミノ酸配列を有する各CDRを含み、かつ、そのVHのFRのアミノ酸配列が、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものも含まれる。例えば、そのような第二アームとして、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有するものが挙げられる。
【0062】
さらに、そのような「CD19に特異的に結合する第二アーム」には、例えば、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であり、好ましくは少なくとも90%同一であり、より好ましくは少なくとも95%同一であり、さらに好ましくは少なくとも98%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列からなるVHを有し、かつ、元の第二アームのVHのアミノ酸配列との相違がCD19への結合活性に実質的に影響しないもの(以下、相同第二アームと略記することがある。)も含まれる。ここで、「元の第二アームのVHのアミノ酸配列との相違がCD19への結合活性に実質的に影響しない」とは、相同第二アームのCD19への結合活性が元の第二アームの当該結合活性の95%以上であり、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上であることを意味する。
【0063】
さらに別の態様において、本発明における「CD19に特異的に結合する第二アーム」には、(1)上記(1d)~(5d)から選択される何れかで示されるVHまたは配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび本明細書における共有軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有する第二アームのCD19への結合または(2)当該VHおよびVLからなるCD19に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域のCD19への結合に交差競合する抗CD19抗体の可変領域(ここで、当該可変領域は、それを構成するVHおよびVLを含む。)を有するものも含まれ、また、CD19への結合が、(3)上記(1d)~(5d)から選択される何れかで示されるVHあるいは配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび当該共有軽鎖のVLを有する第二アームまたは(4)当該VHおよびVLからなるCD19に特異的に結合するモノクローナル抗体の可変領域により交差競合される抗CD19抗体の可変領域を有するものも含まれる。ここで、「CD19への結合において交差競合する」とは、本明細書において例示された第二アームと同一のあるいは一部重複するエピトープに結合することによって、当該第二アームのCD19への結合を、その程度に関わらず阻害する、あるいは当該例示された第二アームと同一のあるいは一部重複するエピトープに結合する抗体によるCD19への結合が、当該例示された第二アームによってその程度に関わらず阻害されることを意味する。ここで、交差競合するかどうかは、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」に関する説明において記載された方法に準じて、同様に測定することができる。
【0064】
ここで、本発明における「CD19に特異的に結合する第二アーム」として好ましくは、上記(1d)~(5d)で示されるVHを有する第二アームが挙げられ、さらに、この好ましい第二アームには、上述したように、そのVHの各CDRにおいて、その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換され、かつ、そのアミノ酸置換がCD19への結合活性に実質的に影響しないものも含まれ、また、さらに、上述したように、VHのフレームワークのアミノ酸配列が、生殖細胞系列型V遺伝子IGHV5-51またはそれらの体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものも含まれる。そして、当該第二アームとしてより好ましくは、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有するものが挙げられる。
【0065】
さらに、別の態様において、本発明における「CD19に特異的に結合する第二アーム」として好ましくは、配列番号30~34の各アミノ酸配列における114番目のアミノ酸がアルギニンに置換された、または置換されていてもよい、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有する第二アームが挙げられ、より好ましくは、配列番号30~34の各アミノ酸配列における114番目のグルタミンがアルギニンに置換された、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有する第二アームであり、それらは各々配列番号62~66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有する第二アームに相当する。これらアミノ酸置換により、当該第二アームを有する重鎖および軽鎖からなる複合体(以下、第二アーム重鎖/軽鎖複合体)の等電点(pI値)を増加させることができ、それにより、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体の精製工程において、特に、第二アーム重鎖/軽鎖複合体のホモダイマーからの当該二重特異性抗体の分離が容易となる。なお、本発明において、第二アーム重鎖/軽鎖複合体の等電点として好ましくは、約8.3~約8.9であり、より好ましくは、約8.4~約8.8である。また、第一アームを有する重鎖および軽鎖からなる複合体(以下、第一アーム重鎖/軽鎖複合体)の等電点として好ましくは、約7.4~約7.7であり、より好ましくは、約7.5~約7.6である。
【0066】
さらに、本発明における「CD19に特異的に結合する第二アーム」は、本明細書における共通軽鎖のVLを含むものが好ましく、そのような共通軽鎖として好ましくは、例えば、IGVK1-39/JK1共通軽鎖であり、より好ましくは、例えば、配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有する軽鎖であり、さらに好ましくは、例えば、配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有する軽鎖である。また、共通軽鎖の定常領域として好ましくは、配列番号29のアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域が挙げられる。
【0067】
以下に、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体を構築するための抗CD19抗体の各クローンと、それらのVHのアミノ酸配列およびその配列番号との対応関係を
図8に、ならびに当該抗CD19抗体の各クローンのVH中の各CDRのアミノ酸配列とその配列番号との対応関係を
図9に示す。
【0068】
一方、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましい態様としては、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVHにおける、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3の何れか一つまたは複数のCDRにおいて、各々その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、その保存的アミノ酸)に置換されていてもよいVH、および
(B)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有し、ならびに
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(C)上記(1d)~(5d)から選択される何れかで示されるVHにおける、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3から選択される何れか一つまたは複数のCDRにおいて、各々その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、保存的アミノ酸)に置換されていてもよいVH、および
(D)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有することを特徴とする、PD-1/CD19二重特異性抗体が挙げられる。
【0069】
より好ましくは、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)上記(1b)~(5b)から選択される何れかで示されるVH、および
(B)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有し、ならびに
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(C)上記(1d)~(5d)から選択される何れかで示されるVH、および
(D)配列番号26のアミノ酸配列からなるVL-CDR1、配列番号27のアミノ酸配列からなるVL-CDR2および配列番号28のアミノ酸配列からなるVL-CDR3を含むVLを有することを特徴とする、PD-1/CD19二重特異性抗体が挙げられる。
【0070】
また、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましい別の態様としては、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなるVH、および
(B)配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有し、ならびに、
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(C)配列番号30~34および62~66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、または当該VHのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなるVH、および
(D)配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有することを特徴とする、PD-1/CD19二重特異性抗体が挙げられる。
【0071】
この別の態様としてより好ましくは、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、および
(B)配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有し、ならびに、
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(C)配列番号30~34および62~66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、および
(D)配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有することを特徴とする、PD-1/CD19二重特異性抗体が挙げられる。
【0072】
さらに、この別の態様としてさらに好ましくは、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームが、
(A)配列番号1~5から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、および
(B)配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有し、ならびに、
CD19に特異的に結合する第二アームが、
(C)配列番号62~66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVH、および
(D)配列番号25のアミノ酸配列からなるVLを有することを特徴とする、PD-1/CD19二重特異性抗体が挙げられる。
【0073】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましいアイソタイプとしてはIgG抗体であり、さらに好ましくは、IgG1もしくはIgG4抗体であり、さらにより好ましくはIgG1抗体である。同抗体がIgG1抗体である場合には、各々二つの重鎖定常領域あるいはヒンジ領域上において、EUナンバリングシステムによる235番目のロイシンがグリシンに置換され、および/または236番目のグリシンがアルギニンに置換されたIgG1抗体が好ましい。さらに、それら二重特異性抗体の重鎖C末端のアミノ酸、例えば、EUナンバリングシステムによる447番目のリシンを欠損した抗体がより好ましい。また、PD-1/CD19二重特異性抗体がIgG4抗体である場合には、そのヒンジ領域に位置する、EUナンバリングシステムによる228番目のセリンをプロリンに置換した抗体が好ましい。
【0074】
さらに、これらPD-1/CD19二重特異性抗体がIgG1抗体である場合に好ましい態様としては、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖における定常領域中のEUナンバリングシステムによる351番目のロイシンがリシンに置換され、かつ366番目のスレオニンがリシンに置換され、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖における定常領域中の351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換されたIgG1抗体が挙げられる。また、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖における定常領域中のEUナンバリングシステムによる351番目のロイシンがアスパラギン酸に置換され、かつ368番目のロイシンがグルタミン酸に置換され、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖における定常領域中の351番目のロイシンがリシンに置換され、かつ366番目のスレオニンがリシンに置換されたIgG1抗体も同様に好ましい。
【0075】
重鎖定常領域における上記したすべてのアミノ酸置換を取り入れたPD-1/CD19二重特異性IgG
1抗体の好ましい態様としては、例えば、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖が、配列番号23のアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を有し、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖が、配列番号24および配列番号71~75から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなる重鎖定常領域を有する抗体が挙げられる。それらのアミノ酸配列を
図10に例示する。
【0076】
ここで、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖は、そのC末端において、そのC末端アミノ酸とのアミド結合を介して、さらに、Gly(グリシン)、Gly-Lys-Lys-Ala(配列番号67)、Gly-Lys-Ala-Lys-Ala(配列番号68)、Gly-Arg-Arg-Ala(配列番号69)またはGly-Arg-Ala-Arg-Ala(配列番号70)を有していてもよい。これらアミノ酸またはペプチドの付加により、当該第二アーム重鎖/軽鎖複合体の等電点(pI値)を増加させることができ、それにより、上述した第二アームのVHにおけるアミノ酸置換の事例と同様に、特に、第二アーム重鎖/軽鎖複合体のホモダイマーからの当該二重特異性抗体の分離が容易となる。なお、そのC末端に当該アミノ酸またはペプチドが付加された第二アーム重鎖/軽鎖複合体についても、その等電点として好ましくは、約8.3~約8.9であり、より好ましくは、約8.4~約8.8である。
【0077】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体の態様として最も好ましくは、本明細書実施例12において作製された、クローンCD19-1(Bi)、クローンCD19-2(Bi)、クローンCD19-3(Bi)、クローンCD19-4(Bi)およびクローンCD19-5(Bi)ならびに実施例13において作製されたクローンCD19-6(Bi)が挙げられる。
【0078】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましい特徴としては、PD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用、またはそれら両相互作用を許容することが挙げられる。ここで、「PD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用、またはそれら両相互作用を許容する」とは、「PD-1に特異的に結合する第一アーム」に関する説明において記載された定義と同じ意味を表わす。
【0079】
さらに、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましい特徴としては、サイトカイン産生が十分に低減されたものが挙げられる。ここで、「サイトカイン産生が十分に低減された」とは、例えば、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体を点滴等により静脈内投与中、あるいは投与してから24時間以内において、例えば、血中あるいは組織中のIL-2、IFN-γおよび/またはTNF-αを含むサイトカインの濃度が増加しないか、増加しても、ステロイド投与により抑制可能な程度であることを意味する。
【0080】
さらに、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体として好ましい特徴としては、T細胞(例えば、メモリーT細胞)の活性化に対して抑制効果を有するものが挙げられる。同抑制効果は、T細胞を含む末梢血単核球からのサイトカイン(例えば、IL-2)産生抑制効果として評価することができる。
【0081】
PD-1/CD19二重特異性抗体の製造および精製方法
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体およびその抗体断片は、WO2014/051433、WO2013/157953あるいはWO2013/157954に開示された方法でも製造することができる。
【0082】
具体的には、(1)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖をコードするポリヌクレオチド、(2)CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖をコードするポリヌクレオチド、および(3)共通軽鎖をコードするポリヌクレオチドが各々挿入された発現ベクターを、哺乳動物細胞に遺伝子導入して形質転換させ、両重鎖および共有軽鎖を共に発現ならびに分泌させて製造することができる。
【0083】
ここで、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体を発現する宿主細胞は、発現ベクターを遺伝子導入でき、導入された発現ベクターを発現することができるいかなる宿主細胞でもよい。好ましくは、SF-9およびSF-21細胞のような昆虫細胞、より好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、SP2/0細胞およびNS-0ミエローマ細胞を含むマウス細胞、COSおよびVero細胞のような霊長類細胞、MDCK細胞、BRL 3A細胞、ハイブリドーマ、腫瘍細胞、不死化した初代細胞、W138、HepG2、HeLa、HEK293、HT1080またはPER.C6のような胚性の網膜細胞等の哺乳類細胞が挙げられる。なお、発現システムの選択においては、抗体が適切にグリコシル化されるように、哺乳類の細胞の発現ベクターおよび宿主を用いることがある。ヒト細胞株、好ましくはPER.C6は、ヒトにおけるグリコシル化パターンと一致する抗体を得るために有利に用いられる。
【0084】
発現ベクターの遺伝子導入によって形質転換された宿主細胞における蛋白質の産生は、例えば、Current Protocols in Protein Science (1995), Coligan JE, Dunn BM, Ploegh HL, Speicher DW, Wingfield PT, ISBN 0-471-11184-8,Bendig, 1988を参考に実施することができ、さらに、宿主細胞の培養の生産性を最大にするための一般的な指針、手順および実用的な方法は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach (M. Butler, ed., IRL Press, 1991)を参考に実施できる。宿主細胞での抗体の発現は、例えば、EP0120694、EP0314161、EP0481790、EP0523949、US4816567およびWO2000/63403などの公開公報に記述されている。
【0085】
ここで、宿主細胞の培養条件は、公知の方法により最適化でき、蛋白質の生産量を最適化することができる。培養は、例えば、培養シャーレ、ローラーボトルもしくは反応槽の中で、バッチ培養、流加培養、連続培養、中空糸による培養で実施できる。細胞培養により、大規模かつ連続的な組み換えタンパク質の生産を行うためには、細胞を懸濁液の中で増殖させることが好ましい。また、動物もしくはヒト由来血清または動物もしくはヒト由来の血清の構成要素がない条件下で細胞の培養をさせることが好ましい。
【0086】
宿主細胞で発現され、その細胞または細胞培地から公知の方法により回収された抗体は、公知の方法を用いて精製することができる。精製方法には、免疫沈降法、遠心分離法、ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、陽イオンおよび/または陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー等が含まれる。さらに、プロテインAまたはプロテインG親和性クロマトグラフィーが好適に用いられる場合がある(例えば、US4801687およびUS5151504参照)。
【0087】
抗CD19モノクローナル抗体
本発明は、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体を構築するための「CD19に特異的に結合するモノクローナル抗体」(以下、「抗CD19モノクローナル抗体」と略記することがある。)およびそれらの抗体断片を含む。
【0088】
本発明の抗CD19モノクローナル抗体の一態様としては、VHおよび本発明における共通軽鎖のVLが会合することによって、CD19に特異的に結合することができるモノクローナル抗体である。ここで、「CD19に特異的に結合する」とは、少なくとも、1x10-5M、好ましくは1x10-7M、より好ましくは1x10-9Mより高い親和性(解離定数(Kd値))を有する結合活性でCD19に対して直接結合することができ、ほかのタンパク質には実質的に結合しない特徴として使用される。ここで、「CD19に特異的に結合するモノクローナル抗体」における「抗体」とは、全長抗体、すなわち、ジスルフィド結合で連結された2つの重鎖および2つの軽鎖からなる完全長の抗体を意味する。また、「CD19に特異的に結合するモノクローナル抗体の断片」とは、全長抗体の一部であって、少なくとも抗原結合部分を含む抗体であり、例えば、Fab、Fab′、Fv、scFvおよびF(ab′)2などが挙げられる。
【0089】
本発明の抗CD19モノクローナル抗体としては、例えば、「CD19に特異的に結合する第二アーム」のVHを構成する上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHまたは配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび本明細書における共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有するものが挙げられる。
【0090】
さらに、本発明の抗CD19モノクローナル抗体には、上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHにおける各々のCDRにおいて、その任意の1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、保存的アミノ酸)に置換され、かつ、当該アミノ酸に置換されていない元のVHを有する抗CD19モノクローナル抗体によるCD19への結合活性と実質的に同等の結合活性を有するVHをもつものも含まれる。例えば、そのCDR1の場合には、1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、保存的アミノ酸)に置換され、CDR2またはCDR3の場合には、各々1~5個のアミノ酸残基が他のアミノ酸(好ましくは、保存的アミノ酸)に置換されたものが挙げられる。また、
図5に示されるように、抗CD19モノクローナル抗体クローンの各CDRにおいて、各クローン間で相違する各アミノ酸またはそれらの任意の複数の組み合わせは、当該クローン間において相互に置換可能である。ここで、「当該アミノ酸に置換されていない元のVHを有する抗CD19モノクローナル抗体によるCD19への結合活性と実質的に同等の結合活性を有する」とは、当該アミノ酸に置換された抗PD-1モノクローナル抗体のCD19への結合活性が、当該アミノ酸に置換されていない元のVHを有する抗PD-1モノクローナル抗体の結合活性の95%以上であり、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上であることを意味する。
【0091】
さらに、本発明の抗CD19モノクローナル抗体には、そのVHにおいて、上述の特定のアミノ酸配列を有する各CDRを含み、そのVHのフレームワークのアミノ酸配列が、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものも含まれ、例えば、上記の「CD19に特異的に結合する第二アーム」に関する説明において挙げられた、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされる特定のVHを有するものなどである。
【0092】
さらに、本発明の抗CD19モノクローナル抗体のうち、上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHにおける各々のCDRを含み、そのVHのFRのアミノ酸配列が、特定の生殖細胞系列型遺伝子もしくはその体細胞突然変異を受けた当該遺伝子にコードされるVHを有するものとしては、例えば、配列番号30~34から選択されるアミノ酸配列からなるVHを有するものが挙げられる。さらに、そのような抗CD19モノクローナル抗体には、例えば、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列と少なくとも80%同一であり、好ましくは少なくとも90%同一であり、より好ましくは少なくとも95%同一であり、さらに好ましくは少なくとも98%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列からなるVHを有し、かつ、元のVHを有する抗CD19モノクローナル抗体によるCD19への結合活性と実質的に同等の結合活性を有するものも含まれる。ここで、「元のVHを有する抗CD19モノクローナル抗体によるCD19への結合活性と実質的に同等の結合活性を有する」とは、当該何れか一つのアミノ酸配列からなるVHを有する抗CD19モノクローナル抗体のCD19への結合活性の95%以上であり、好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上であることを意味する。
【0093】
さらに別の態様において、本発明の抗CD19モノクローナル抗体には、(1)上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHまたは配列番号30~34から選択されるアミノ酸配列からなるVHおよび本明細書における共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有する抗CD19モノクローナル抗体のCD19への結合に交差競合する抗PD-1モノクローナル抗体、ならびに(2)CD19への結合が上記(1d)~(5d)から選択される何れか一つのVHまたは配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVLを有する抗CD19モノクローナル抗体により交差競合される抗CD19モノクローナル抗体も含まれる。
【0094】
また、さらに別の態様において、本発明の抗CD19モノクローナル抗体には、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列における114番目のアミノ酸がアルギニンに置換された、または置換されていてもよいアミノ酸配列からなるVHおよび本明細書における共通軽鎖のVL(好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列からなるVL)を有するものが挙げられ、より好ましくは、配列番号30~34から選択される何れか一つのアミノ酸配列における114番目のグルタミンがアルギニンに置換されたアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVLを有するものであり、それらは各々配列番号62~66から選択される何れか一つのアミノ酸配列からなるVHおよび当該共通軽鎖のVLを有する抗CD19モノクローナル抗体に相当する。
【0095】
PD-1/CD19二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド
PD-1/CD19二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドは、(1)PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖をコードするポリヌクレオチド、(2)CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖をコードするポリヌクレオチド、および(3)共通軽鎖をコードするポリヌクレオチドから構成される。ここで、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHを有する重鎖をコードするポリヌクレオチドは、PD-1に特異的に結合する第一アームのVHをコードするポリヌクレオチドおよび当該VHを有する重鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドから構成され、同様に、CD19に特異的に結合する第二アームのVHを有する重鎖をコードするポリヌクレオチドは、CD19に特異的に結合する第二アームのVHをコードするポリヌクレオチドおよび当該VHを有する重鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドから構成される。
【0096】
PD-1/CD19二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドとは、これらPD-1/CD19二重特異性抗体を構成する部分を各々コードするポリヌクレオチドを有するものであればいかなるものであってもよく、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、RNA、DNA-RNAハイブリッドのいずれでもよい。一つのアミノ酸をコードするコドンは1~6種類知られており、例えば、PheにはTTTまたはTTC、LeuにはTTA、TTG、CTT、CTC、CTAまたはCTG、IleにはATT、ATCまたはATA、MetにはATG、ValにはGTT、GTC、GTAまたはGTG、SerにはTCT、TCC、TCAまたはTCG、ProにはCCT、CCC、CCAまたはCCG、ThrにはACT、ACC、ACAまたはACG、AlaにはGCT、GCC、GCAまたはGCG、TyrにはTATまたはTAC、HisにはCATまたはCAC、GlnにはCAAまたはCAG、AsnにはAATまたはAAC、LysにはAAAまたはAAG、AspにはGATまたはGAC、GluにはGAAまたはGAG、CysにはTGTまたはTGC、TrpにはTGG、ArgにはCGT、CGC、CGAまたはCGG、SerにはAGTまたはAGC、ArgにはAGAまたはAGG、およびGlyにはGGT、GGC、GGAまたはGGGが各々対応しているので、PD-1/CD19二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドには、各アミノ酸に対応する各コドンが任意に組み合わされたポリヌクレオチドが含まれる。PD-1に特異的に結合する第一アームのVHをコードするポリヌクレオチドとして好ましくは、例えば、クローンPD1-1~PD1-5のVHを各々コードする配列番号50~54から選択される何れか一つの塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられ、CD19に特異的に結合する第二アームのVHをコードするポリヌクレオチドとして好ましくは、例えば、クローンCD19-5、CD19-1、CD19-4、CD19-2およびCD19-3のVHを各々コードする配列番号56~60および配列番号76~80から選択される何れか一つの塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。また、共通軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとして好ましくは、配列番号55の塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
【0097】
医薬的用途
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、自己免疫疾患または移植片対宿主病(GVHD)の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に有用である。
【0098】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等が予防、症状進展抑制および/または治療可能な自己免疫疾患としては、例えば、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデス、多発性硬化症(全身性強皮症、進行性全身性硬化症)、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎)、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、悪性関節リウマチ、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、脊椎関節炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、成人スティル病、血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、過敏性血管炎、リウマトイド血管炎、大型血管炎、ANCA関連血管炎(例えば、多発血管炎性肉芽腫症および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、コーガン症候群、RS3PE症候群、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、抗リン脂質抗体症候群、好酸球性筋膜炎、IgG4関連疾患(例えば、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎など)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病(グレーブス病(甲状腺機能亢進症))、橋本病、自己免疫性副腎機能不全、原発性甲状腺機能低下症、アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)、特発性アジソン病、I型糖尿病、緩徐進行性I型糖尿病(成人潜在性自己免疫性糖尿病)、限局性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、白斑、尋常性白斑、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多巣性運動ニューロパチー、サルコイドーシス、巨細胞性動脈炎、筋委縮性側索硬化症、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、習慣性流産、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、セリアック病、強直性脊椎炎、重症喘息、慢性蕁麻疹、移植免疫、家族性地中海熱、好酸球性副鼻腔炎、拡張型心筋症、全身性肥満細胞症および封入体筋炎などが挙げられる。
【0099】
本発明において「治療」とは、例えば、ある疾患もしくはその症状を治癒させることまたは改善させることを意味し、「予防」とは、ある疾患もしくは症状の発現を未然に防止するあるいは一定期間遅延させることを意味し、「症状進展抑制」とは症状の進展または悪化を抑制して病態の進行を止めることを意味する。なお、「予防」の意味には再発抑制も含まれる。「再発抑制」とは、ある疾患もしくは症状の再発を防止または再発の可能性を低減させることを意味する。
【0100】
また、別の態様において、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、自己反応性B細胞介在性疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に有用である。自己反応性B細胞介在性疾患としては、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、喘息、クリオグロブリン血症、原発性胆管硬化症および悪性貧血などが挙げられる。当該医薬的用途において、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、自己反応性B細胞に対する抑制作用を介する。ここで、自己反応性B細胞に対する抑制作用には、IgGおよびIgMなどのイムノグロブリン産生抑制作用が含まれる。さらに、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、メモリーT細胞活性化に対する抑制作用を有する。ここで、メモリーT細胞活性化に対する抑制作用には、サイトカイン産生抑制作用が含まれる。
【0101】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、通常、全身的または局所的に、非経口の形で投与される。かかる投与方法として、具体的には、注射投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられる。注射投与としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射などが挙げられ、静脈内注射の場合には、点滴による投与が好ましい。その投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、0.1μg/kgから300mg/kgの範囲で、特に好ましくは、0.1mg/kgから10mg/kgの範囲で、一日一回から数回非経口投与されるか、または一日30分から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0102】
製剤
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、注射剤または点滴のための輸液として製剤化されて用いられる場合、当該注射剤または輸液は、水溶液、懸濁液または乳濁液のいずれの形態であってもよく、また、用時に溶剤を加えることにより、溶解、懸濁または乳濁して使用されるように、薬学的に許容できる担体とともに、固形剤として製剤化されていてもよい。注射剤または点滴のための輸液に使用される溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖溶液および等張液(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、プロピレングリコール等の溶液)等を用いることができる。
【0103】
ここで、薬学的に許容できる担体としては、例えば、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、防腐剤、pH調整剤および抗酸化剤等が挙げられる。安定剤としては、例えば、各種アミノ酸、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。溶解補助剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20(登録商標)、ポリソルベート80(登録商標)、HCO-50等)等を用いることができる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等を用いることができる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等を用いることができる。防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等を用いることができる。抗酸化剤として、例えば、(1)アスコルビン酸、システインハイドロクロライド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤、(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ハイドロキシアニソール、ブチル化ハイドロキシトルエン、レシチン、プロピルガレート、α-トコフェロール等のような油溶性抗酸化剤および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤等を用いることができる。
【0104】
注射剤または点滴のための輸液は、その最終工程において滅菌するかあるいは無菌操作法、例えば、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することによって製造することができる。また、注射剤または点滴のための輸液は、真空乾燥および凍結乾燥による無菌粉末(薬学的に許容できる担体の粉末を含んでいてもよい。)を、適切な溶剤に用時溶解して使用することもできる。
【0105】
併用または配合剤
さらに、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等は、自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に使用される他の薬剤とともに組み合わせて使用してもよい。本発明において、他の薬剤とともに組み合わせて使用する場合(併用)の投与形態には、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態であっても、また別々の製剤としての投与形態であってもよい。その併用により、その他の薬剤の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療効果を補完したり、投与量あるいは投与回数を維持ないし低減することができる。本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等と他の薬剤を別々に投与する場合には、一定期間同時投与し、その後、PD-1/CD19二重特異性抗体等のみあるいは他の薬剤のみを投与してもよい。また、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等を先に投与し、その投与終了後に他の薬剤を投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、その投与終了後に本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等を後に投与してもよく、各々の投与方法は同じでも異なっていてもよい。本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等を含む製剤と他の薬剤を含む製剤のキットとして提供することもできる。ここで、他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、前記他の薬剤には、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0106】
例えば、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等をI型糖尿病の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に適用する場合、インスリン製剤(例えば、ヒトインスリン、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンデテミル、インスリンアスパルト等)、スルホニルウレア剤(例えば、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド等)、速攻型インスリン分泌促進薬(例えば、ナテグリニド等)、ビグアナイド製剤(例えば、メトホルミン等)、インスリン抵抗性改善薬(例えば、ピオグリタゾン等)、α-グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボース、ボグリボース等)、糖尿病性神経症治療薬(例えば、エパルレスタット、メキシレチン、イミダプリル等)、GLP-1アナログ製剤(例えば、リラグルチド、エクセナチド、リキシセナチド等)およびDPP-4阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン等)等から選択される何れか一以上の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0107】
また、例えば、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等を多発性硬化症の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に適用する場合、ステロイド薬(例えば、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸ハロプレドン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、酢酸パラメタゾン、ベタメタゾン等)、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、酢酸グラチラマー、ミトキサントロン、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、クラドリビン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチコトロピン、ミゾリビン、タクロリムス、フィンゴリモドおよびアレムツズマブ等から選択される何れか一以上の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0108】
また、例えば、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等を全身性エリテマトーデスの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に適用する場合、ステロイド薬(例えば、上記記載のステロイド薬)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、フィンゴリモド等)およびベリムマブから選択される何れか一以上の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0109】
例えば、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等を関節リウマチの予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に適用する場合、ステロイド薬(例えば、上記記載のステロイド薬)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、スルファサラジン、ブシラミン、レフルノミド、ミゾリビン、タクロリムス等)あるいは抗サイトカイン薬(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、トシリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブおよびセルトリズマブ等)およびアバタセプト等から選択される何れか一以上の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0110】
その他の自己免疫疾患の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に適用する場合、本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体等と、上記に記載した他の薬剤の何れか一以上と組み合わせて使用してもよい。
【0111】
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
【実施例】
【0112】
実施例1:組換えヒトPD-1-Fc融合タンパクを用いたMeMo(登録商標)マウスへの免疫
本発明のPD-1に特異的に結合する第一アームを取得する方法として、MeMo(登録商標)マウス(WO2009/157771参照)に組換ヒトPD-1タンパク質を免疫する方法を選択した。MeMo(登録商標)マウスは、非組換ヒト重鎖V遺伝子領域、D遺伝子領域およびJ遺伝子領域ならびに組換ヒトκ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01生殖細胞系列型遺伝子を含む遺伝子断片が、マウス定常領域遺伝子に連結されるように遺伝子改変されたマウスであり、抗体の標的タンパクを直接免疫することによって、多様性を有する重鎖と共通軽鎖からなる抗体を産生させることができる。
【0113】
12~16週齢の12匹のMeMo(登録商標)マウスに、Gerbu adjuvant MM(Gerbu Biotechnik、型番#3001)を用いてエマルジョン化した、組換ヒトPD-1-Fc融合タンパク質(R&D Systems、型番1086-PD)を14日間隔で各々免疫した。免疫0日目、14日目および28日目に同組換ヒトPD-1-Fc融合タンパク質を皮下投与し、以降のタイミングでは、PBSに溶解した同組換ヒトPD-1-Fc融合タンパク質を皮下投与した。免疫21日目、35日目、56日目、77日目および98日目にヒトPD-1強制発現HEK293T細胞株を用いたフローサイトメトリーにより、血清中抗体価を評価した。1000倍希釈した血清においてヒトPD-1強制発現HEK293T細胞株を染色した場合、コントロールとなるヒトPD-1非発現HEK293T細胞株と比較してMFI値が3倍以上増加したマウスのリンパ組織を、ファージディスプレイ・ライブラリーの構築に用いた。ライブラリー構築に進む基準を満たしたマウスは、抗体価の評価日から3日間、組換PD-1-Fc融合タンパク質で追加免疫し、脾臓およびそ径リンパ節を回収した。ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に対する血清中抗体価が1/100以上、かつ追加免疫によって抗体価が上昇しないマウスも脾臓およびそ径リンパ節を回収した。それらのリンパ組織からRNAを抽出したのち、cDNA合成を行った。
【0114】
実施例2:抗PD-1抗体取得のためのファージディスプレイ・ライブラリーの構築(タンパク免疫)
実施例1にて調製したDNAを使用して、イムノグロブリン重鎖可変領域ファミリーに特異的なプライマーを用いてPCR反応を行った。同PCR産物を制限酵素SfiIとXhoIで切断した後、同制限酵素を用いて切断したファージミドベクター[共通軽鎖をコードする遺伝子(ヒトκ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01生殖細胞系列型遺伝子)を含む]に挿入し、同ライブラリーを構築した。
【0115】
実施例3:抗PD-1抗体のスクリーニング
ヒトPD-1-Fc融合タンパク質、ヒトPD-1-Hisタグ融合タンパク質、カニクイザルPD-1-Hisタグ融合タンパク質またはマウスPD-1-Hisタグ融合タンパク質をコートさせたプレートを用いて、PD-1への結合性に基づいたファージセレクションを実施した。ヒトPD-1-Fc融合タンパク質を用いた場合、ファージとインキュベーションする間、ヒトIgG(SIGMA、型番I4506)を添加することによって、Fc反応性クローンを吸収した。ヒトPD-1、カニクイザルPD-1およびマウスPD-1に結合する結合ファージが濃縮された。カニクイザルPD-1強制発現HEK293T細胞株でのセレクションにより、カニクイザルPD-1に結合するファージが濃縮された。セレクションによって得られたファージで形質転換させた大腸菌株TG1のクローンを取得し、マスタープレートを作製した。
【0116】
さらに、ヒトPD-1-Fc融合タンパク質を吸着させたプレート上のPD-1への結合性に基づいて、上記セレクションから得られたクローンのペリプラズム抽出物から、ファージセレクションを実施した。なお、選択する基準として、陰性対照ウェル(PBS)で得られたシグナル(OD450値)に対して、3倍以上のシグナルが得られたものを陽性クローンとした。
【0117】
実施例4:抗PD-1抗体の候補クローンのDNAシークエンス
実施例3のスクリーニングによって取得された陽性クローンの重鎖可変領域遺伝子のDNAシークエンスを実施した。解析されたDNA配列はスーパークラスター(重鎖CDR3が同一の長さであって、同CDR3のアミノ酸配列が70%以上相同である一群)とクラスター(重鎖CDR3のアミノ酸配列が同一である一群)に分類した。数百個のクローンが取得され、それらはスーパークラスターおよびクラスターに分類された。
【0118】
実施例5:PD-1発現細胞に対する結合性評価によるスクリーニング
分類された各々スーパークラスターから、以下の条件を満たす抗PD-1モノクローナル抗体クローンを選別し、単離した。
(1)CDR領域に高頻度に体細胞突然変異が導入され、
(2)使用頻度の高いVHの生殖細胞系列型遺伝子を有し、および
(3)ヒトPD-1-Fc融合タンパク質に対する結合性スクリーニングにおいて高いシグナルが得られた。
【0119】
それらのペリプラズム抽出物に含まれるFabフラグメントを用いて、ヒトPD-1強制発現CHO-S細胞株、カニクイザルPD-1強制発現CHO-S細胞株に対する結合性を抗マウスIgGポリクローナル抗体で検出することにより評価した。評価した117個のクローン(105種のクラスター)のうち、抗PD-1モノクローナル抗体クローンPD1-1、PD1-2、PD1-3およびPD1-4を含む22個のクローンでヒトPD-1発現CHO-S細胞株に対する結合性が認められた。
【0120】
実施例6:抗PD-1モノクローナル抗体のアミノ酸置換体の作製
クローンPD1-1およびPD1-4は、その重鎖可変領域のフレームワーク4に脱アミド化モチーフ(Asn-Gly)を含む。脱アミド化のリスクを低減したPD-1アームの取得を目的として、この脱アミド化モチーフを変換した変異体を作製した。クローンPD1-4のEUナンバリングシステムによる119番目のアスパラギン(Asn)が、公知の部位特異的変異法により、グルタミンとなるよう改変されたクローンPD1-5を作製し、単離した。同クローンもヒトPD-1強制発現CHO-S細胞に対する結合性はクローンPD1-4と同等であった。
【0121】
実施例7:CD19発現プラスミドベクターを用いたMeMo(登録商標)マウスへの免疫
本発明のCD19に特異的に結合する第二アームを取得する方法として、MeMo(登録商標)マウス(WO2009/157771参照)にヒトCD19発現プラスミドベクターおよびカニクイザルCD19発現プラスミドベクターを免疫する方法を選択した。
【0122】
MeMo(登録商標)マウスは、非組換ヒト重鎖V遺伝子領域、D遺伝子領域およびJ遺伝子領域ならびに組換ヒトκ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01生殖細胞系列型遺伝子を含む遺伝子断片が、マウス定常領域遺伝子に連結されるように遺伝子改変されたマウスであり、抗体の標的タンパクを発現するプラスミドベクターをMeMo(登録商標)マウスに免疫することによって、多様性を有する重鎖と共通軽鎖からなる抗体を産生させることができる。
【0123】
12~16週齢の12匹のMeMo(登録商標)マウスに、ヒトCD19発現プラスミドベクターおよび/またはカニクイザルCD19発現プラスミドベクターを各々または交互に免疫した。発現プラスミドベクターは、免疫0日目、3日目、6日目、14日目、17日目、28日目、31日目、42日目、49日目、63日目および/または70日目に投与した。ヒトCD19発現細胞株を用いたフローサイトメトリーにより、血清中抗体価を評価した。100倍希釈した血清においてヒトCD19発現細胞株を染色した場合、コントロールとなるヒトCD19非発現細胞株と比較してMFI値が3倍以上増加したマウスのリンパ組織を、ファージディスプレイ・ライブラリーの構築に用いた。ライブラリー構築に進む基準を満たしたマウスは、追加免疫した後、脾臓およびそ径リンパ節を回収した。それらのリンパ組織からRNAを抽出したのち、IgG定常領域特異的プライマーを用いた逆転写反応によりcDNA合成を行った。
【0124】
実施例8:抗CD19抗体取得のためのファージディスプレイ・ライブラリーの構築
実施例7にて調製したDNAからイムノグロブリン重鎖可変領域ファミリーに特異的なプライマーを用いてPCR反応を行った。同PCR産物を制限酵素で切断した後、当該制限酵素を用いて切断したファージミドベクター[共通軽鎖をコードする遺伝子(ヒトκ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01生殖細胞系列型遺伝子)を含む]に挿入し、同ライブラリーを構築した。
【0125】
実施例9:抗CD19抗体のスクリーニング
ヒトCD19-Fc融合タンパク質(R&D systems、型番9269-CD)、カニクイザルCD19-Fc融合タンパク質(NovoPro Bioscience、型番504385)、ヒトB細胞株RajiまたはカニクイザルCD19強制発現HEK293T細胞株を用いて、CD19への結合性に基づいたファージセレクションを実施した。セレクションによって得られたファージで形質転換させた大腸菌株TG1のクローンを取得し、マスタープレートを作製した。なお、選択基準として、陰性対照で得られたシグナル(OD450値またはMFI)に対して、3倍以上のシグナルが得られたものを陽性クローンとした。
【0126】
実施例10:抗CD19抗体の候補クローンのDNAシークエンス
実施例9のスクリーニングによって取得された陽性クローンの重鎖可変領域遺伝子のDNAシークエンスを実施した。解析されたDNA配列はスーパークラスター(重鎖CDR3が同一の長さであって、重鎖可変領域のアミノ酸配列が相互に70%以上相同である一群)とクラスター(重鎖CDR3および重鎖可変領域のアミノ酸配列が各々相互に同一である一群)に分類した。
【0127】
初回のスクリーニングにおいて、数百個のクローンが取得され、それらはスーパークラスター、クラスターおよび4種の生殖細胞系列に分類された。2回目のスクリーニングにおいて、数百個のクローンが取得され、スーパークラスター、クラスターおよび8種の生殖細胞系列に分類された。その内、19種のスーパークラスターが初回のスクリーニングとは異なっていた。
【0128】
実施例11:CD19に対する結合性評価によるスクリーニング
分類された各スーパークラスターから、以下の条件を満たす抗CD19モノクローナル抗体クローンを選別し、単離した。
(1)CDR領域に高頻度に体細胞突然変異が導入され、
(2)使用頻度の高いVHの生殖細胞系列型遺伝子を有し、および
(3)CD19に対する結合性スクリーニングにおいて高いシグナルが得られた。
【0129】
それらのペリプラズム抽出物に含まれるFabフラグメントを用いて、CD19に対する結合性を評価した。
【0130】
評価したクローンのうち、抗CD19モノクローナル抗体クローンCD19-1、CD19-2、CD19-3、CD19-4およびCD19-5を含む複数のクローンにヒトCD19発現細胞株に対する結合性が認められた。
【0131】
実施例12:PD-1/CD19二重特異性抗体の調製
PD-1に特異的に結合する第一アームの各々の重鎖を発現する発現ベクターは、実施例5および実施例6にて選択した抗PD-1モノクローナル抗体クローンPD1-1~PD1-5の各々の重鎖可変領域をコードするDNAを、IgG1重鎖定常領域をコードするDNAに各々連結して作製した。一方、CD19に特異的に結合する第二アームの重鎖を発現する発現ベクターは、実施例11にて選択した抗CD19モノクローナル抗体クローンCD19-1~CD19-5の重鎖可変領域をコードするDNAを、IgG1重鎖定常領域をコードするDNAに連結して作製した。ここで、それらの重鎖定常領域を発現する遺伝子には、PD-1に特異的に結合する第一アームの場合には、L351D/L368E変異(DE変異)を有するFc領域を発現するものを使用し、CD19に特異的に結合する第二アームの場合には、L351K/T366K変異(KK変異)を有するFc領域を発現するものを使用した。これら発現ベクターには、IGVK1-39/JK1共通軽鎖もともに発現するように、これをコードする遺伝子を含むように構築された。さらに、これらの重鎖定常領域を発現する遺伝子には、各々、Fcエフェクター活性を消失させるため、重鎖定常領域の235番目ロイシンがグリシンに、236番目グリシンがアルギニンに置換されて発現するように改変されており、さらに、翻訳後のプロセシングを回避するため、重鎖定常領域C末端447番目のリジンが欠失するよう改変されたものを使用した。これら発現ベクターを、ともに、Free Style 293F細胞に遺伝子導入し、培養上清中に抗体を産生させた。培養上清を回収し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにて処理することにより、本発明のPD-1/CD19二重特異性モノクローナル抗体である、クローンCD19-1(Bi)、クローンCD19-2(Bi)、クローンCD19-3(Bi)、クローンCD19-4(Bi)およびクローンCD19-5(Bi)を各々精製した。
【0132】
なお、これらPD-1/CD19二重特異性抗体クローンは、その作製において使用された抗CD19モノクローナル抗体クローンCD19-1、CD19-2、CD19-3、CD19-4およびCD19-5に由来する、CD19に特異的に結合する第二アームを有する点において、それら抗CD19モノクローナル抗体クローンに各々対応している。また、これらPD-1/CD19二重特異性抗体クローンは、何れもPD1-5に由来する、PD-1に特異的に結合する第一アームを有する。
【0133】
実施例13:抗CD19モノクローナル抗体の変異体およびそれらに対応するPD-1/CD19二重特異性抗体の作製
実施例12において作製したPD-1/CD19二重特異性抗体クローンは、医薬品化のためにスケールアップされた生産工程においては、第一アーム重鎖/軽鎖複合体、第二アーム重鎖/軽鎖複合体および/またはそれらの各ホモダイマーである副産物との分離精製が十分に達成できないおそれがある。そのため、陽イオン交換クロマトグラフィー精製時において、当該副産物からの当該二重特異性抗体の分離向上を目的とし、等電点を高めた抗CD19モノクローナル抗体のアミノ酸変異体を作製した。
【0134】
クローンCD19-5のVHのアミノ酸配列を表す配列番号30における114番目のグルタミンを、公知の部位特異的変異法によりアルギニンに置換した変異体を作製した。なお、本発明において、その変異体を「CD19-6」と命名した。また、各抗体の等電点は、遺伝子およびアミノ酸配列解析ソフトウェアGenetyx(株式会社ゼネティクス)を用いて計算した。
【0135】
さらに、CD19-6のVHを有する重鎖のC末端(但し、C末端アミノ酸であるリシンを有する。)に、グリシンおよび配列番号67~70で表されるペプチドが各々付加された形態の各変異体(以下、これらをまとめて「CD19-6/C末端ペプチド付加体」と記載する。)を、公知の遺伝子改変手法により作製した。なお、本発明において、CD19-6の当該C末端に、配列番号67で表されるペプチドが付加された形態の変異体を、「CD19-7」と命名した。
【0136】
実施例12と同様の手法に従い、これら抗CD19モノクローナル抗体の変異体をコードする各DNAとクローンPD1-5をコードするDNAが各々挿入された同実施例記載の各発現ベクターを、Free Style 293F細胞に遺伝子導入して培養上清中に抗体を産生させた。培養上清を回収し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにて処理することにより、本実施例において作製された各変異体に由来する本発明の二重特異性抗体を各々精製した。これらのうち、CD19-6に由来する同二重特異性抗体を「CD19-6(Bi)」とし、CD19-7に由来する同二重特異性抗体クローンを「CD19-7(Bi)」と命名した。
【0137】
実施例14:PD-1/CD19二重特異性抗体と副産物との精製分離の検討
実施例12および13において各々作製されたPD-1/CD19二重特異性抗体について、それらの製造において生成されてくると懸念される副産物との精製分離の成否について検討した。
【0138】
実施例12および13において各々回収した同二重特異性抗体が含まれる培養上清を別途、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーにて処理することにより、同二重特異性抗体と副産物に相当する抗PD-1抗体および抗CD19抗体を各々精製した。
【0139】
これら各精製抗体が含まれる溶媒を、pH6.0となるように限外濾過法によりバッファー置換した。バッファーA(pH7.0)を用いて平衡化した陽イオン交換カラムTSKgel SP-STAT Column(東ソー、型番0021964)にバッファー置換後の各精製抗体をアプライした。1mol/L塩化ナトリウムを含むバッファーB(pH7.0)を用いた塩グラジエントによって、カラムに結合した各精製抗体を溶出した。なお、移動相の流速は0.5mL/分、溶出はバッファーAからバッファーBへのリニアグラジエントとし、各精製抗体をアプライ開始後0~10分はバッファーBを0%、10~40分にかけてバッファーBを0~100%に直線的に増やし、40~50分はバッファーBを100%とした。
【0140】
クローンCD19-2(等電点:8.32)、CD19-5(等電点:8.40)、CD19-6(等電点:8.49)およびCD19-7(等電点:8.75)の陽イオン交換カラムにおける保持時間(分)は、各々15.167、15.185、15.749および17.521であり、クローンCD19-6およびCD19-7については保持時間が延長した。一方、クローンPD1-3(等電点:7.67)およびPD1-5(等電点:7.52)は陽イオン交換カラムに結合せず溶出した。
【0141】
一方、PD-1/CD19二重特異性抗体クローンCD19-2(Bi)およびCD19-5(Bi)は陽イオン交換カラムに結合せず溶出したが、クローンCD19-6(Bi)およびCD19-7(Bi)は、その保持時間(分)13.715および14.955であった。
【0142】
以上のように、第二アームにおけるアミノ酸置換あるいはその重鎖C末端への特定のペプチドの付加により等電点を高めることで、陽イオン交換クロマトグラフィー精製時において、目的物である本発明の二重特異性抗体と副産物である抗PD-1抗体および抗CD19抗体との分離向上が図られ、当該副産物の混入が極めて低減された本発明の二重特異性抗体の提供が可能となった。
【0143】
実施例15:PD-1/CD19二重特異性抗体の結合性評価
ヒトIgG1-Fc融合ヒトPD-1細胞外領域組換タンパク質(R&D systems、型番1086-PD)を用いたBiacore測定にて、実施例12および13において取得したPD-1/CD19二重特異性モノクローナル抗体の第一アームのPD-1組換タンパク質への結合親和性を評価した。なお、当該組換タンパク質の固定化には、Series S Sensor Chip CM5センサーチップ(GEヘルスケア、型番29-1049-88)を使用した。
【0144】
同様に、ヒトIgG1-Fc融合ヒトCD19細胞外領域組換タンパク質(R&D systems、型番9269-CD)を用いたBiacore測定にて、同抗体の第二アームのCD19結合親和性を評価した。各クローンの第一アームのPD-1への結合親和性(Kd値)ならびに第二アームのCD19への結合親和性を
図11に示す。CD19-6(Bi)のPD-1およびCD19への各結合親和性は、実施例13のアミノ酸置換を受けていない構造のCD19-5(Bi)の活性に比べ向上していることが確認された。
【0145】
実施例16:PD-1/CD19二重特異性抗体の結合性確認
実施例12および13において取得したPD-1/CD19二重特異性抗体がヒトPD-1、カニクイザルPD-1、ヒトCD19およびカニクイザルCD19に各々特異的に結合することを確認した。ヒトPD-1強制発現CHO-S細胞株、カニクイザルPD-1強制発現CHO-S細胞株、CHO-S細胞株、ヒトCD19強制発現CHO-K1細胞株、カニクイザルCD19強制発現CHO-K1細胞株およびCHO-K1細胞株に対して、クローンCD19-1(Bi)~CD19-6(Bi)を各々添加し、氷上にて20分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、PE標識ヤギ抗ヒトIgG-Fc F(ab’)
2フラグメント抗体(ThermoFisher、型番H10104)100μLを添加して氷上にて20分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、フローサイトメトリーにて同抗体の第一アームのPD-1結合性および第二アームのCD19結合性を評価した。当該アッセイの結果を
図12~
図16に示す。
【0146】
いずれのクローンもヒトPD-1、カニクイザルPD-1、ヒトCD19およびカニクイザルCD19に結合した。なお、この実験系での非特異的結合は検出されなかった。
【0147】
実施例12において取得したPD-1/CD19二重特異性モノクローナル抗体がPD-1およびCD19に同時に各々特異的に結合することを確認した。まず、ヒトCD19強制発現CHO-K1細胞株およびCHO-K1細胞株に対して、クローンCD19-1(Bi)~CD19-5(Bi)を各々添加し、氷上にて20分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、6×Hisタグ融合ヒトPD-1細胞外領域組換タンパク質(R&D systems、型番8986-PD)100μLを添加して氷上にて20分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、AlexaFluor488標識マウス抗Hisタグ抗体(MBL、型番D291-A48)100μLを添加して氷上にて20分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、フローサイトメトリーにてヒトPD-1細胞外領域組換タンパク質の結合量を評価した。当該アッセイの結果を
図17に示す。
【0148】
いずれのクローンもPD-1およびCD19に同時に結合した。なお、この実験系での非特異的結合は検出されなかった。
【0149】
実施例17:PD-1/CD19二重特異性抗体の第一アームの結合特性評価
実施例12において取得したPD-1/CD19二重特異性抗体の第一アームのPD-1/PD-L1結合への影響を評価するため、同二重特異性抗体クローンと可溶性PD-L1組換タンパク質のPD-1への結合に関する競合結合アッセイを行った。まず、ヒトPD-1強制発現CHO-S細胞株に対してクローンCD19-1(Bi)~CD19-5(Bi)、ニボルマブおよび抗ヒトPD-1抗体J105(Immunology Letters, 2002, Vol.83, Issue 3, p.215-220)を氷上にて各々添加した。さらに、ビオチン標識用キット(同仁化学研究所、型番LK03)を用いてビオチン化した可溶性PD-L1組換タンパク質(R&D systems、型番156-B7)を氷上にて添加した。細胞を洗浄した後、APC標識ストレプトアビジン(BioLegend、型番405207)を氷上にて添加した。細胞を洗浄した後、フローサイトメトリーにて可溶性PD-L1組換タンパク質の結合量を評価した。その結果を
図18に示す。
【0150】
クローンCD19-1(Bi)~CD19-5(Bi)は、PD-1に対する可溶性PD-L1組換タンパク質の結合を許容した。一方、ニボルマブおよびJ105は、同条件でPD-1に対する可溶性PD-L1組換タンパク質の結合を完全に阻害した。
【0151】
また、実施例5において取得された抗PD-1モノクローナル抗体クローンPD1-1~PD1-4を各々第一アームとした二重特異性抗体も、同様の評価により、PD-1に対する可溶性PD-L1組換タンパク質の結合を許容することが確認された。
【0152】
実施例18:PD-1/CD19二重特異性抗体の活性化B細胞に対するインビトロ抑制作用
健常人由来末梢血単核細胞(LONZA、型番CC-2702)から、B Cell Isolation Kit II, human(Miltenyi Biotec、型番130-091-151)によって分離したB細胞を用いて、ヒトIgM産生に対する抑制作用を評価した。細胞培養プレートにヒトB細胞を播種し、抗ヒトCD79B抗体(LifeSpan Biosciences、型番LS-C134648)、ヒトCD40L組換タンパク質(Enzo Life Sciences、型番ALX-522-110)、ヒトIL-21組換タンパク質(R&D systems、型番8879-IL)を添加して、活性化処置を行った。クローンCD19-1(Bi)~CD19-5(Bi)またはコントロール抗体を処置し、活性化処置後の培養上清中に含まれるIgMをELISA法(ThermoFisher、型番BMS2098)にて定量した。その結果を
図19に示す。クローンCD19-1(Bi)~CD19-5(Bi)は、何れもIgM産生を抑制した。なお、図中のIgM産生量(ng/mL)は、平均値±標準誤差(N=4)で示した。
【0153】
実施例19:PD-1/CD19二重特異性抗体の活性化B細胞に対するインビボ抑制作用
健常人由来末梢血単核細胞(LONZA、型番CC-2702)を移植したNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJマウス(以下、NSGマウスと略記する。)を用いて、ヒトIgG
2産生に対する抑制作用を評価した。NSGマウス1匹当たり1×10
7個の健常人由来末梢血単核細胞を移植した。移植3日目、7日目、10日目、14日目および17日目に、クローンCD19-1(Bi)~CD19-4(Bi)またはコントロール抗体を3mg/kgの投与量で1日1回各々腹腔内投与した。移植21日目に尾静脈より採血を行い、血清を調製した。一方、クローンCD19-5(Bi)およびCD19-6(Bi)については、移植3日目、7日目および10日目に、同様の用法用量にて各々腹腔内投与した。この際も並行してコントロール抗体を腹腔内投与した。移植14日目に尾静脈より採血を行い、血清を調製した。血清中に含まれるヒトIgG
2をELISA法(ThermoFisher、型番BMS2093)にて定量した。
図20および21にその結果を示す。クローンCD19-1(Bi)~CD19-6(Bi)は、何れもIgG
2産生を抑制した。なお、図中のIgG
2産生量(μg/mL)は、平均値±標準誤差(N=4~8)で示した。
【0154】
実施例20:PD-1/CD19二重特異性抗体のPD-1への結合に対する交差競合性の評価
PD-1/CD19二重特異性抗体の作製に使用される抗PD-1モノクローナル抗体の各クローンPD1-1~PD1-5を第一アームとした二重特異性抗体のPD-1への結合に対する交差競合性を評価するため、競合結合アッセイを行った。
【0155】
まず、ヒトPD-1発現CHO-S細胞株に対して、クローンPD1-5を第一アームとした二重特異性抗体を氷上にて添加した。さらに、ビオチン標識したクローンPD1-1~PD1-5を各々第一アームとした二重特異性抗体を各々添加し、氷上にてインキュベートした。細胞を洗浄した後、PE標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen,型番554061)を添加して氷上にてインキュベートした。細胞を洗浄した後、フローサイトメトリーにてビオチン標識した同抗体の結合量を評価した。
【0156】
クローンPD1-5を第一アームとした二重特異性抗体は、クローンPD1-1~PD1-4を各々第一アームとした同抗体のPD-1への結合を阻害し、それらのPD-1への結合に対して交差競合することが確認された。
【0157】
実施例21:ヒト末梢血単核細からのサイトカイン放出に対する、PD-1/CD19二重特異性抗体のインビトロ作用の評価
PD-1/CD19二重特異性抗体のサイトカイン放出活性を解析することを目的として、本発明の二重特異性抗体クローンおよびマウス抗ヒトCD3抗体OKT3(BioLegend、型番317304)のヒト末梢血単核細胞(以下、ヒトPBMC)への添加実験を各々実施した。
【0158】
ヒトPBMC(LONZA、型番CC-2702)に、クローンCD19-6(Bi)およびOKT3を添加し、培養を行った。サイトメトリックビーズアレイ(BD Biosciences、型番551809)を用いたフローサイトメトリーにて培養上清中に含まれるIL-2を定量した。その結果を
図22に示す。なお、図中のIL-2産生量(pg/mL)は、平均値±標準誤差(N=3)で示した。
【0159】
OKT3はIL-2産生を顕著に誘導したのに比べ、CD19-6(Bi)によるIL-2産生は認められなかった。
【0160】
実施例22:PD-1/CD19二重特異性抗体の物理化学的安定性評価
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体は、示差走査カロリメトリー(DSC)による構造安定性評価、拡散係数変化率(DLS)測定によるコロイド安定性およびストレス条件下(例えば、pH3~4/5℃下またはpH7/5℃下/凍結融解5回)における化学的安定性(例えば、タンパク質濃度変化、分子構造変化、会合/凝集の有無、チャージバリアント生成の有無、構造変化およびCD19への結合性)の何れの物理化学的安定性評価において良好な性能を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明のPD-1/CD19二重特異性抗体またはその抗体断片は、自己免疫疾患または移植片対宿主病(GVHD)の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療に有用である。
【配列表】