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特許7405153検出装置、検出システム、検出方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】検出装置、検出システム、検出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021569646
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2020000293
(87)【国際公開番号】W WO2021140587
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】福司 謙一郎
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124164(JP,A)
【文献】特開2012-179114(JP,A)
【文献】特開2017-217033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0092572(US,A1)
【文献】澤田尚大 他,歩行周期抽出による歩行変化の可視化についての一検討,情報処理学会研究報告,日本,2010年02月11日,Vol.2010-CG-138 No.7,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の足弓の下側に設置されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを取得し、取得した前記センサデータの時系列データを用いて、前記歩行者の一歩行周期分の歩行に基づいた波形データである歩行波形データを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された前記歩行波形データのうち、進行方向加速度の前記歩行波形データの最大ピークに含まれる二つの山の間を含む区間から、爪先離地のタイミングを検出する検出手段と、を備える検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記歩行波形データのピークに基づいて歩行イベントを検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、
前記歩行者の進行方向加速度を前記センサデータとして取得し、
前記進行方向加速度の時系列データから前記歩行波形データを生成し、
前記検出手段は、
前記進行方向加速度の前記歩行波形データの最大ピークに含まれる二つの山の間に谷が検出されるタイミングを爪先離地のタイミングとして検出する、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、
前記歩行者の前記進行方向加速度を前記センサデータとして取得し、
前記進行方向加速度の時系列データから前記歩行波形データを生成し、
前記検出手段は、
前記進行方向加速度の前記歩行波形データの最小ピークが検出されるタイミングと、前記最小ピークの次に現れる極大ピークが検出されるタイミングとの中点のタイミングを踵接地のタイミングとして検出する、請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、
前記歩行者の前記進行方向加速度と重力方向加速度を前記センサデータとして取得し、
前記進行方向加速度の時系列データおよび前記重力方向加速度の時系列データから前記歩行波形データを生成し、
前記検出手段は、
前記重力方向加速度の最大ピークが検出されるタイミングと、前記進行方向加速度の前記歩行波形データの最小ピークの次に現れる極大ピークが検出されるタイミングとの中点のタイミングを踵接地のタイミングとして検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検出装置と、
空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度に基づいてセンサデータを生成し、生成した前記センサデータを前記検出装置に送信するデータ取得装置と、を備える検出システム。
【請求項7】
コンピュータが、
歩行者の足弓の下側に設置されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを取得し、
取得した前記センサデータの時系列データを用いて、前記歩行者の一歩行周期分の歩行に基づいた波形データである歩行波形データを抽出し、
抽出された前記歩行波形データのうち、進行方向加速度の前記歩行波形データの最大ピークに含まれる二つの山の間を含む区間から、爪先離地のタイミングを検出する、検出方法。
【請求項8】
歩行者の足弓の下側に設置されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを取得する処理と、
取得した前記センサデータの時系列データを用いて、前記歩行者の一歩行周期分の歩行に基づいた波形データである歩行波形データを抽出する処理と、
抽出された前記歩行波形データのうち、進行方向加速度の前記歩行波形データの最大ピークに含まれる二つの山の間を含む区間から、爪先離地のタイミングを検出する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の歩行イベントを検出する検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
体調管理を行うヘルスケアへの関心の高まりから、歩行者の歩行の特徴を含む歩容を計測し、その歩容に応じた情報をユーザに提供するサービスが注目されている。歩行者の歩容を計測するためには、歩行に関するデータから、足が地面に着く事象や、足が地面から離れる事象などの歩行イベントを検出する必要がある。
【0003】
特許文献1には、靴の中に設置されるインソールに設けられた圧力センサから足底圧のデータを取得し、取得したデータを解析して、歩行時や静止時における歩行に関するパラメータを取得する方法について開示されている。
【0004】
特許文献2には、被験者の足首に装着された加速度センサによって取得される3軸方向の加速度データを用いて、被験者の歩行評価値を算出する歩行評価システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/164157号
【文献】特開2019-150329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手法によれば、靴のインソールに圧力センサが設けられている場合、圧力センサによって取得されるデータを用いて、歩行者の歩行状態を解析できる。しかしながら、特許文献1の手法は、靴のインソールに圧力センサが設けられていない場合には適用できなかった。
【0007】
特許文献2の手法によれば、足首に加速度センサが装着されている場合、加速度センサによって取得されるデータを用いて、歩行者の歩行状態を解析できる。しかしながら、特許文献2の手法は、足首に加速度センサが装着されていない場合には適用できなかった。
【0008】
本発明の目的は、歩行者の足部に設置されたセンサによって取得されるデータに基づいて、その歩行者の歩行における歩行イベントを検出できる検出装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の検出装置は、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された波形データから歩行イベントを検出する検出部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様検出方法においては、コンピュータが、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出し、抽出された波形データから歩行イベントを検出する。
【0011】
本発明の一態様のプログラムは、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出処理と、抽出された波形データから歩行イベントを検出する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歩行者の足部に設置されたセンサによって取得されるデータに基づいて、その歩行者の歩行における歩行イベントを検出できる検出装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る検出システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る検出システムのデータ取得装置を履物の中に設置する一例を示す概念図である。
図3】第1の実施形態に係る検出システムのデータ取得装置のローカル座標系と世界座標系との関係について説明するための概念図である。
図4】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置が算出する足底角について説明するための概念図である。
図5】歩行イベントについて説明するための概念図である。
図6】第1の実施形態に係る検出システムのデータ取得装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8】被験者の歩容を計測する際に靴の周辺に取り付けられる目印の位置について説明するための概念図である。
図9】被験者の歩容を計測するためのカメラの配置について説明するための概念図である。
図10】第1の実施形態に係る検出システムによって計測される重力方向の高さ(Z方向高さ)の歩行周期依存性の一例を示すグラフである。
図11】第1の実施形態に係る検出システムが進行方向の加速度(Y方向加速度)の歩行波形データから爪先離地のタイミングを検出することについて説明するためのグラフである。
図12】第1の実施形態に係る検出システムによって爪先離地が検出されるタイミングと、モーションキャプチャーによって爪先離地が検出されるタイミングとの相関関係について検証するためのグラフである。
図13】第1の実施形態に係る検出システムが進行方向の加速度(Y方向加速度)の歩行波形データおよび重力方向の加速度(Z方向高さ)の歩行波形データから踵接地のタイミングを検出することについて説明するためのグラフである。
図14】第1の実施形態に係る検出システムによって踵接地が検出されるタイミングと、モーションキャプチャーによって踵接地が検出されるタイミングとの相関関係について検証するためのグラフである。
図15】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の抽出部の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図16】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の検出部の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図17】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の検出部が遊脚相開始のタイミングを検出する動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図18】第1の実施形態に係る検出システムの検出装置の検出部が立脚相開始のタイミングを検出する動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図19】第2の実施形態に係る検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図20】各実施形態に係る検出システムの検出装置を実現するハードウェア構成の一例について説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る検出システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出システムは、足部に設置されたセンサによって取得されたセンサデータを用いて、その歩行者の歩行イベントを検出する。歩行イベントは、足が地面に着く事象や、足が地面から離れる事象などの事象を含む。歩行イベントの詳細については後述する。
【0016】
(構成)
図1は、本実施形態の検出システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1のように、検出システム1は、データ取得装置11および検出装置12を備える。データ取得装置11と検出装置12は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、データ取得装置11と検出装置12は、単一の装置で構成してもよい。また、検出システム1の構成からデータ取得装置11を除き、検出装置12だけで検出システム1を構成してもよい。
【0017】
データ取得装置11は、足部に設置される。データ取得装置11は、空間加速度および空間角速度を計測する。データ取得装置11は、計測した空間加速度および空間角速度に基づいてセンサデータを生成する。データ取得装置11は、生成したセンサデータを検出装置12に送信する。
【0018】
検出装置12は、図7に示すように、抽出部121と検出部123と備える。抽出部121は、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出する。検出部123は、抽出部121によって抽出された波形データから歩行イベントを検出する。
【0019】
本実施形態の検出システム1は、歩行イベントの検出に適用することができる。続いて、歩行イベントの検出を可能とする検出システム1の構成の一例を詳細に説明する。
【0020】
データ取得装置11は、加速度センサおよび角速度センサを少なくとも有する。例えば、データ取得装置11は、履物の中に挿入されるインソールに設置される。例えば、データ取得装置11は、足弓の下側の位置に設置される。データ取得装置11は、加速度センサおよび角速度センサによって取得された加速度や角速度などの物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置11は、変換後のセンサデータを検出装置12に送信する。なお、データ取得装置11は、足弓の下側の位置と同様の波形データを得られるのであれば、履物の中や内部、表面のいずれに設置されてもよい。
【0021】
データ取得装置11は、例えば、加速度センサと角速度センサを含む慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)が挙げられる。IMUは、3軸の加速度センサと、3軸の角速度センサを含む。また、慣性計測装置の一例として、VG(Vertical Gyro)やAHRS(Attitude Heading)が挙げられる。また、慣性計測装置の一例として、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)が挙げられる。
【0022】
データ取得装置11によって取得される加速度や角速度などのセンサデータを歩行パラメータとも呼ぶ。また、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度、センサ高さなども歩行パラメータに含まれる。本実施形態においては、歩行者の横方向をX方向(右方が正)とし、歩行者の進行方向をY方向(前方が正)とし、重力方向をZ方向(上方が正)とする。また、本実施形態においては、X軸回りの回転をロールとし、Y軸回りの回転をピッチとし、Z軸回りの回転をヨーとする。
【0023】
図2は、データ取得装置11を靴100の中に設置する一例を示す概念図である。図2の例では、データ取得装置11は、足弓の裏側に当たる位置に設置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の中に挿入されるインソールに設置される。なお、データ取得装置11は、足弓の裏側と同様の波形データを得られるのであれば、足弓の裏側ではない位置に設置されてもよい。
【0024】
図3は、データ取得装置11を足弓の裏側に設置する場合に、データ取得装置11に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、歩行者が直立した状態で、歩行者の横方向がX軸方向(右向きが正)、歩行者の正面の方向(進行方向)がY軸方向(前向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。歩行者が直立した状態では、ローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)は一致する。歩行者が歩行すると、データ取得装置11の空間的な姿勢が変化する。すなわち、歩行者が歩行すると、ローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)に相違が生じる。そのため、検出装置12は、データ取得装置11によって取得されたセンサデータを、データ取得装置11のローカル座標系(x軸、y軸、z軸)から世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)に変換する。
【0025】
図4は、検出装置12が算出する足底角について説明するための概念図である。足底角は、地面(XY平面)に対する足底の角度である。足底角は、爪先が上を向いた状態(背屈)をマイナス、爪先が下を向いた状態(底屈)をプラスと定義する。
【0026】
例えば、検出装置12は、X軸とY軸の各々の軸方向の加速度の大きさを用いて足底角を計算する。また、例えば、検出装置12は、X軸、Y軸、およびZ軸の各々を中心軸とする角速度の値を積分することによって、それらの軸回りの足底角を計算できる。加速度データおよび角速度データには、色々な方向に変化する高周波および低周波のノイズが入る。そのため、加速度データおよび角速度データにローパスフィルタおよびハイパスフィルタをかけて高周波成分および低周波成分を除去すれば、ノイズが乗りやすい足部からのセンサデータの精度を向上できる。また、加速度データおよび角速度データの各々に相補フィルタをかけて重み付き平均を取れば、センサデータの精度を向上できる。
【0027】
検出装置12は、ローカル座標系のセンサデータをデータ取得装置11から取得する。検出装置12は、取得したローカル座標系のセンサデータを世界座標系に変換して時系列データを生成する。検出装置12は、生成した時系列データから一歩行周期分の波形データ(以下、歩行波形データとも呼ぶ)を抽出する。検出装置12は、抽出された歩行波形データから歩行イベントを検出する。例えば、検出装置12は、爪先が地面から離れるタイミングや、踵が地面に着地するタイミングなどの歩行イベントを歩行波形データから検出する。検出装置12によって検出される歩行イベントは、歩行者の歩容を計測する際の基準として用いられる。
【0028】
図5は、歩行イベントについて説明するための概念図である。図5は、右足の一歩行周期分である。図5の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期を100%として正規化された歩行周期である。一般に、片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、立脚初期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。
【0029】
図5において、(a)は、右足の踵が接地する状況を表す(踵接地)。(a)は、図5に示す一歩行周期の起点である。(b)は、右足の足裏の全面が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる状況を表す(反対足爪先離地)。(c)は、右足の足裏の全面が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる状況を表す(踵持ち上がり)。(d)は、左足の踵が接地した状況である(反対足踵接地)。(e)は、左足の足裏の全面が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる状況を表す(爪先離地)。(f)は、左足の足裏の全面が接地した状態で、左足と右足が交差する状況を表す(足交差)。(g)は、右足の踵が接地する状況を表す(踵接地)。(g)は、図5に示す一歩行周期の終点であり、次の歩行周期の起点である。
【0030】
検出装置12は、足底角の時系列データから、足底角が極小(背屈ピーク)となる時刻tdと、その背屈ピークの次に足底角が極大(底屈ピーク)となる時刻tbとを検出する。さらに、検出装置12は、その底屈ピークの次の背屈ピークの時刻td+1と、その背屈ピークの次の底屈ピークの時刻tb+1とを検出する。検出装置12は、時刻tdと時刻tbの中点の時刻tmを起点とし、時刻td+1と時刻tb+1の中点の時刻tm+1を終点とする一歩行周期分の波形データ(歩行波形データ)を切り出す。検出装置12が切り出した歩行波形データにおいては、時刻tbに極大(底屈ピーク)が現れ、時刻td+1に極小(背屈ピーク)が現れる。
【0031】
〔データ取得装置〕
次に、検出システム1が備えるデータ取得装置11の詳細について図面を参照しながら説明する。図6は、データ取得装置11の構成の一例を示すブロック図である。データ取得装置11は、加速度センサ111、角速度センサ112、信号処理部113、およびデータ送信部115を有する。
【0032】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度を計測するセンサである。加速度センサ111は、計測した加速度を信号処理部113に出力する。
【0033】
角速度センサ112は、3軸方向の角速度を計測するセンサである。角速度センサ112は、計測した角速度を信号処理部113に出力する。
【0034】
信号処理部113は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々から、加速度および角速度の各々を取得する。信号処理部113は、取得した加速度および角速度をデジタルデータに変換し、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)をデータ送信部115に出力する。センサデータには、アナログデータの加速度をデジタルデータに変換した加速度データ(3軸方向の加速度ベクトルを含む)と、アナログデータの角速度をデジタルデータに変換した角速度データ(3軸方向の角速度ベクトルを含む)とが少なくとも含まれる。なお、加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、信号処理部113は、取得した加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えたセンサデータを出力するように構成してもよい。
【0035】
データ送信部115は、信号処理部113からセンサデータを取得する。データ送信部115は、取得したセンサデータを検出装置12に送信する。データ送信部115は、ケーブルなどの有線を介してセンサデータを検出装置12に送信してもよいし、無線通信を介してセンサデータを検出装置12に送信してもよい。例えば、データ送信部115は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、センサデータを検出装置12に送信するように構成できる。なお、データ送信部115の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0036】
〔検出装置〕
次に、検出システム1が備える検出装置12の詳細について図面を参照しながら説明する。図7は、検出装置12の構成の一例を示すブロック図である。検出装置12は、抽出部121および検出部123を有する。
【0037】
抽出部121は、履物に設置されたデータ取得装置11(センサ)からセンサデータを取得する。抽出部121は、センサデータを用いて、データ取得装置11が設置された履物を履いた歩行者の歩行に伴う歩行波形データを抽出する。
【0038】
例えば、抽出部121は、データ取得装置11のローカル座標系における3次元の加速度データや角速度データを取得する。抽出部121は、取得したセンサデータを世界座標系に変換して時系列データを生成する。例えば、抽出部121は、世界座標系に変換された、3次元の加速度データの時系列データや、3次元の角速度データの時系列データを生成する。
【0039】
例えば、抽出部121は、空間加速度や空間角速度などの時系列データを生成する。また、抽出部121は、空間加速度や空間角速度を積分し、空間速度や空間角度(足底角)、センサ高さなどの時系列データを生成する。抽出部121は、一般的な歩行周期や、ユーザに固有の歩行周期に合わせて設定された所定のタイミングや時間間隔で時系列データを生成する。抽出部121が時系列データを生成するタイミングは任意に設定できる。例えば、抽出部121は、ユーザの歩行が継続されている期間、時系列データを生成し続ける。また、抽出部121は、特定の時刻において、時系列データを生成するように構成してもよい。
【0040】
例えば、抽出部121は、生成した時系列データから一歩行周期分の時系列データ(歩行波形データ)を抽出する。
【0041】
検出部123は、抽出部121によって生成された歩行波形データから、データ取得装置11が設置された履物を履いて歩行する歩行者の歩行イベントを検出する。例えば、検出部123は、歩行波形データにおいて、特徴的な極大値や極小値のタイミングを検出する。例えば、検出部123は、検出した歩行イベントを、図示しないシステムや装置に出力する。
【0042】
〔歩行イベント〕
次に、検出装置12が検出する歩行イベントについて図面を参照しながら説明する。以下においては、データ取得装置11が設置された履物を履いた被験者の歩容を検証する例について説明する。本検証においては、51名の被験者を母集団とし、データ取得装置11が設置された履物を履いた歩行者の歩容を、モーションキャプチャーと検出装置12によって計測した。そして、モーションキャプチャーによって計測された歩容と、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて検出装置12が計測した歩容とを比較した。
【0043】
図8は、モーションキャプチャーのための目印130および目印131を取り付けた靴110の概念図である。本検証においては、両足の靴110の各々に、5つの目印130と1つの目印131を取り付けた。靴の開口の周囲の側面に5つの目印130を配置した。5つの目印130は、踵の動きを検出するためのものである。5つの目印130を剛体とみなす剛体モデルの重心が、踵の位置として検出される。靴110の爪先の位置に目印131を配置した。目印131は、爪先の位置として検出される。また、足弓の裏側に当たる位置にデータ取得装置11を設置した。
【0044】
図9は、目印130および目印131を取り付けた靴110を履いた歩行者の歩容をモーションキャプチャーで検証する際の歩行線と、複数のカメラ150を配置した位置について説明するための概念図である。本検証では、歩行線を挟んだ両側に5台ずつ(計10台)のカメラ150を配置した。複数のカメラ150の各々は、歩行線から3mの位置に3m間隔で配置した。複数のカメラ150の各々の高さは、水平面(XY平面)から2mの高さに固定した。複数のカメラ150の各々の焦点は、歩行線の位置に合わせた。
【0045】
歩行線に沿って歩行する歩行者の靴110に設置された目印130および目印131の動きは、複数のカメラ150によって撮影された動画を用いて解析した。踵の動きは、複数の目印130を一つの剛体とみなし、それらの重心の動きを解析することで検証した。爪先の動きは、目印131の動きを解析することで検証した。本検証においては、踵と爪先の重力方向の高さ(以下、Z方向高さと呼ぶ)を計測した。
【0046】
図10は、モーションキャプチャーによって計測された爪先と踵のZ方向高さの歩行周期依存性を示すグラフである。図10においては、爪先のZ方向高さの変化を破線で示し、踵のZ方向高さの変化を実線で示す。爪先のZ方向高さが最小になるタイミングが、爪先離地のタイミングである。踵のZ方向高さが最小となるタイミングが、踵接地のタイミングである。
【0047】
<爪先離地>
図11は、モーションキャプチャーによって計測された爪先のZ方向高さと、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて検出装置12が計測したY方向加速度の歩行波形データとを対応させたグラフである。モーションキャプチャーによって計測された爪先のZ方向高さの変化を実線で示す。検出装置12が計測したY方向加速度の変化を破線で示す。
【0048】
図11のように、Y方向加速度においては、歩行周期が20~40%のあたりに検出される最大ピークに、二つの極大ピーク(ピークPT1、ピークPT2)と、一つの極小ピーク(ピークPTV)が検出された(点線で囲った範囲内)。爪先離地のタイミングは、ピークPT1が検出されるタイミングTT1と、ピークPT2が検出されるタイミングTT2との間のピークPTVが検出されるタイミングTTと一致する。
【0049】
図12は、51名の被験者を母集団とし、モーションキャプチャーで検出された爪先離地のタイミングと、データ取得装置11で検出された爪先離地のタイミングとの相関関係について検証するためのグラフである。図12には、モーションキャプチャーで検出された爪先離地のタイミングと、データ取得装置11で検出された爪先離地のタイミングとを線形回帰した回帰直線を示す。回帰直線の二乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Squared Error)は0.88%であった。すなわち、モーションキャプチャーで検出された爪先離地のタイミングと、データ取得装置11で検出された爪先離地のタイミングとの間には十分な相関がある。
【0050】
踵接地
図13は、モーションキャプチャーによって計測された踵のZ方向高さと、データ取得装置11によって生成されたセンサデータを用いて検出装置12が計測したY方向加速度およびZ方向加速度の歩行波形データとを対応させたグラフである。モーションキャプチャーで計測された踵のZ方向高さの変化を実線で示す。検出装置12が計測したY方向加速度の変化を破線で示す。検出装置12が計測したZ方向加速度の変化を一点鎖線で示す。
【0051】
図13のように、Y方向加速度においては、歩行周期が60%を超えたあたりに最小ピーク(ピークPH1)が検出された。このピークPH1は、遊脚終期における足の急減速のタイミングに相当する。また、Y方向加速度においては、歩行周期が70%のあたりに極大となるピークPH2が検出された。このピークPH2は、ヒールロッカーのタイミングに相当する。ヒールロッカーのタイミングは、踵接地後に、接地した踵の外周に沿った回転によって、重力方向(Z方向)の加速度を進行方向(Y方向)に変換する期間を含む。ピークPH1が検出されるタイミングTH1と、ピークPH2が検出されるタイミングTH2との中点のタイミングTHは、踵接地のタイミングと一致する。なお、Y方向加速度においてピークPH1が検出されるタイミングTH1の替わりに、Z方向加速度において歩行周期が60%を超えたあたりの最大ピーク(ピークPH3)が検出されるタイミングを用いてもよい。
【0052】
図14は、51名の被験者を母集団とし、モーションキャプチャーで検出された踵接地のタイミングと、データ取得装置11で検出された踵接地のタイミングとの相関関係について検証するためのグラフである。図14には、モーションキャプチャーで検出された踵接地のタイミングと、データ取得装置11で検出された踵接地のタイミングとを線形回帰した回帰直線を示す。回帰直線の二乗平均平方根誤差RMSEは1.62%であった。すなわち、モーションキャプチャーで検出された踵接地のタイミングと、データ取得装置11で検出された踵接地のタイミングとの間には十分な相関がある。
【0053】
例えば、検出部123は、爪先離地および踵接地のうち少なくともいずれかのタイミングを基準として、爪先離地や踵接地とは別の歩行イベントのタイミングを特定する。図5のように、歩行イベントは歩行周期に関連付けられる。踵接地(a)と爪先離地(e)を基準にして、立脚相と遊脚相の期間を特定できる。また、踵接地(a)や爪先離地(e)を基準にして、反対足爪先離地(b)や、踵持ち上がり(c)、反対足踵接地(d)、足交差(f)などの歩行イベントのタイミングを特定できる。また、踵接地(a)や爪先離地(e)を基準にして、反対足爪先離地(b)や、踵持ち上がり(c)、反対足踵接地(d)、足交差(f)などとは異なる歩行イベントのタイミングも特定できる。歩行イベントのタイミングを特定できれば、それぞれのタイミングにおける足の動きや、足の角度、足にかかる力などを検証することができる。なお、検出部123によって検出された歩行イベントのタイミングは、図示しない別のシステムや表示装置などに出力されてもよい。検出部123によって検出された歩行イベントのタイミングは、歩容を計測する種々の用途に用いることができる。
【0054】
(動作)
次に、本実施形態の検出システム1の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、検出システム1の抽出部121と検出部123を動作の主体とする。なお、以下に示す動作の主体は、検出システム1であってもよい。
【0055】
〔抽出部〕
まず、検出システム1の抽出部121の動作について図面を参照しながら説明する。図15は、抽出部121の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【0056】
図15において、まず、抽出部121は、データ取得装置11が設置された履物を履いて歩行する歩行者の足の動きに関するセンサデータをデータ取得装置11から取得する(ステップS11)。抽出部121は、データ取得装置11のローカル座標系のセンサデータを取得する。例えば、抽出部121は、足の動きに関するセンサデータとして、3次元の空間加速度や3次元の空間角速度をデータ取得装置11から取得する。
【0057】
次に、抽出部121は、取得したセンサデータの座標系をローカル座標系から世界座標系に変換し、センサデータの時系列データを生成する(ステップS12)。
【0058】
次に、抽出部121は、空間加速度および空間角速度のうち少なくともいずれかを用いて空間角度を計算し、空間角度の時系列データを生成する(ステップS13)。抽出部121は、必要に応じて、空間速度や空間軌跡の時系列データを生成する。なお、ステップS13は、ステップS12よりも前の段階で行われてもよい。
【0059】
次に、抽出部121は、空間角度の時系列データから、連続する立脚相の各々の真ん中の時刻(時刻tm、時刻tm+1)を検出する(ステップS14)。
【0060】
次に、抽出部121は、歩行イベントの検出対象の空間加速度および空間角速度の時系列データから、時刻tmと時刻tm+1の間の時間帯における一歩行周期分の波形データ(歩行波形データ)を抽出する(ステップS15)。
【0061】
〔検出部〕
次に、検出システム1の検出部123の動作について図面を参照しながら説明する。図16は、検出部123の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【0062】
図16において、まず、検出部123は、抽出部121によって生成された歩行波形データを取得する(ステップS21)。
【0063】
次に、検出部123は、歩行イベントの検出アルゴリズムを参照し、歩行波形データから歩行イベントを検出する(ステップS22)。例えば、検出部123は、図示しないデータベースに保存された、爪先離地や踵接地などの歩行イベントを検出するためのアルゴリズムを参照する。例えば、検出アルゴリズムは、遊脚相の開始のタイミングを検出するアルゴリズムと、立脚相の開始のタイミングを検出するアルゴリズムとを含む。
【0064】
<遊脚相>
次に、遊脚相の開始を検出するアルゴリズムについて図面を参照しながら説明する。図17は、遊脚相の開始のタイミングとして、爪先離地を検出するアルゴリズムの一例について説明するためのフローチャートである。以下においては、検出部123を動作の主体として説明するが、検出装置12を動作の主体としてもよい。
【0065】
図17において、まず、検出部123は、Y方向加速度の歩行波形データから、歩行周期が20~40%の範囲を切り出す(ステップS31)。
【0066】
次に、検出部123は、切り出した波形からタイミングTT1およびタイミングTT2を検出する(ステップS32)。
【0067】
そして、検出部123は、タイミングTT1とタイミングTT2の中点のタイミングを遊脚相の開始のタイミングTTに設定する(ステップS33)。
【0068】
<立脚相>
次に、立脚相の開始を検出するアルゴリズムについて図面を参照しながら説明する。図18は、立脚相の開始のタイミングとして、踵接地を検出するアルゴリズムの一例について説明するためのフローチャートである。以下においては、検出部123を動作の主体として説明するが、検出装置12を動作の主体としてもよい。
【0069】
図18において、まず、検出部123は、Y方向加速度の歩行波形データから、Y方向加速度が最小になるタイミングTH1を検出する(ステップS41)。
【0070】
次に、検出部123は、Y方向加速度の歩行波形データから、タイミングTH1以降において、Y方向加速度の値が1Gよりも小さくなる範囲を切り出す(ステップS42)。
【0071】
次に、検出部123は、切り出した波形からタイミングTH1およびタイミングTH2を検出する(ステップS43)。
【0072】
そして、検出部123は、タイミングTH1とタイミングTH2の中点のタイミングを立脚相の開始のタイミングTHに設定する(ステップS44)。
【0073】
以上が、検出システム1の動作についての説明である。なお、図15図18のフローチャートに沿った処理は、一例であって、検出システム1の動作を限定するものではない。
【0074】
以上のように、検出装置は、抽出部と検出部を備える。抽出部は、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出する。検出部は、抽出部によって抽出された波形データから歩行イベントを検出する。
【0075】
本実施形態によれば、歩行者の足部に設置されたデータ取得装置(センサ)によって取得されるデータに基づいて、その歩行者の歩行における歩行イベントを検出できる。例えば、検出装置は、歩行者の歩行に基づいて生成されたセンサデータの時系列データにおいて、爪先離地や踵接地などの歩行イベントのタイミングを検出する。
【0076】
本実施形態の一態様において、抽出部は、空間加速度および空間角速度のうち少なくともいずれかをセンサデータとして取得する。抽出部は、空間加速度および空間角速度のうち少なくともいずれかのセンサデータの時系列データから歩行者の一歩行周期分の波形データである歩行波形データを抽出する。
【0077】
本実施形態の一態様において、検出部は、歩行波形データのピークに基づいて歩行イベントを検出する。本態様によれば、歩行波形データのピークに基づいて歩行イベントを検出することによって、歩行者の歩容の計測の基準が明確になるため、より正確な歩容の計測が可能になる。
【0078】
本実施形態の一態様において、抽出部は、歩行者の進行方向加速度をセンサデータとして取得し、進行方向加速度の時系列データから歩行波形データを生成する。検出部は、進行方向加速度の歩行波形データの最大ピークに含まれる二つの山の間に谷が検出されるタイミングを爪先離地のタイミングとして検出する。本態様によれば、進行方向加速度に基づいて、爪先離地のタイミングを歩行イベントとして検出できる。
【0079】
本実施形態の一態様において、抽出部は、歩行者の進行方向加速度をセンサデータとして取得し、進行方向加速度の時系列データから歩行波形データを生成する。検出部は、進行方向加速度の歩行波形データの最小ピークが検出されるタイミングと、最小ピークの次に現れる極大ピークが検出されるタイミングとの中点のタイミングを踵接地のタイミングとして検出する。本態様によれば、進行方向加速度に基づいて、踵接地のタイミングを歩行イベントとして検出できる。
【0080】
本実施形態の一態様において、抽出部は、歩行者の進行方向加速度と重力方向加速度をセンサデータとして取得し、進行方向加速度の時系列データおよび重力方向加速度の時系列データから歩行波形データを生成する。検出部は、重力方向加速度の最小ピークが検出されるタイミングと、進行方向加速度の歩行波形データの最小ピークの次に現れる極大ピークが検出されるタイミングとの中点のタイミングを踵接地のタイミングとして検出する。本態様によれば、進行方向加速度および重力方向加速度に基づいて、踵接地のタイミングを歩行イベントとして検出できる。
【0081】
本実施形態の一態様において、検出部は、爪先離地および踵接地のうち少なくともいずれかのタイミングを基準として、爪先離地や踵接地とは別の歩行イベントのタイミングを特定する。本態様によれば、爪先離地や踵接地のタイミングを基準として、その他の歩行イベントのタイミングを正確に検出できる。
【0082】
本実施形態の一態様の検出システムは、データ取得装置と検出装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測する。データ取得装置は、計測した空間加速度および空間角速度に基づいてセンサデータを生成する。データ取得装置は、生成したセンサデータを検出装置に送信する。検出装置は、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出する。検出装置は、抽出された波形データから歩行イベントを検出する。本態様によれば、データ取得装置によって計測された空間加速度や空間角速度を用いて、歩行イベントのタイミングを検出できる。
【0083】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る検出装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の検出装置は、第1の実施形態の検出装置12を簡略化した構成である。
【0084】
図19は、本実施形態の検出装置22の構成の一例を示すブロック図である。検出装置22は、抽出部221と検出部223を備える。抽出部221は、歩行者の足部に設置されたセンサから取得したセンサデータを用いて、歩行者の歩行に基づいた波形データを抽出する。検出部223は、抽出部221によって抽出された波形データから歩行イベントを検出する。
【0085】
本実施形態の検出装置によれば、歩行者の足部に設置されたセンサによって取得されるデータに基づいて、その歩行者の歩行における歩行イベントを検出できる。例えば、本実施形態の検出装置は、歩行者の歩行に基づいて生成されたセンサデータの時系列データにおいて、爪先離地や踵接地などの歩行イベントのタイミングを検出する。
【0086】
(ハードウェア)
ここで、実施形態に係る検出装置の処理を実行するハードウェア構成について、図19の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図19の情報処理装置90は、各実施形態の検出装置の処理を実行するための構成例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0087】
図19のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図19においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス99を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0088】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る検出装置による処理を実行する。
【0089】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
【0090】
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0091】
入出力インターフェース95は、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0092】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0093】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0094】
以上が、本発明の各実施形態に係る検出装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図19のハードウェア構成は、各実施形態に係る検出装置の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る検出装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0095】
さらに、各実施形態に係るプログラムを記録した非一過性の記録媒体(プログラム記録媒体とも呼ぶ)も本発明の範囲に含まれる。例えば、記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。
【0096】
各実施形態の検出装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の検出装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0097】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 検出システム
11 データ取得装置
12、22 検出装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
113 信号処理部
115 データ送信部
121、221 抽出部
123、223 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20