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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231219BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/434 20210101ALN20231219BHJP
   H01M 10/054 20100101ALN20231219BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/466
H01M50/446
H01M50/463 B
H01M50/434
H01M10/054
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021570658
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2020042438
(87)【国際公開番号】W WO2021145059
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2020004502
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 貴昭
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-155779(JP,A)
【文献】特開2011-165660(JP,A)
【文献】特開2011-138762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/10-50/198
H01M50/40-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して互いに対向する正極および負極を含む電池素子と、
前記正極が前記負極に対向する側において前記正極に接続された正極端子と、
前記負極が前記正極に対向する側において前記負極に接続され、かつ、前記正極端子と対向しない位置に配置された負極端子と、
前記正極端子と前記負極端子とにより挟まれる領域に配置された多孔質部材と
を備え
前記正極および前記負極は、前記セパレータを介して巻回方向に巻回されており、
前記正極端子は、前記巻回方向における前記正極の巻内側の端部に接続されており、
前記負極端子は、前記巻回方向における前記負極の巻内側の端部に接続されており、
前記多孔質部材は、前記巻回方向において前記正極端子と前記負極端子とにより挟まれる第1領域に配置されており、
前記正極および前記負極は、巻回軸を中心として巻回されており、
前記巻回軸と交差する前記電池素子の断面の形状は、長軸および短軸により規定される扁平形状であり、
前記正極の巻内側の端部は、前記長軸の方向に延在する正極延在部を含み、前記正極端子は、前記正極延在部に接続されており、
前記負極の巻内側の端部は、前記長軸の方向に延在する負極延在部を含み、前記負極端子は、前記負極延在部に接続されており、
前記多孔質部材は、さらに、前記正極延在部および前記負極延在部のそれぞれが前記長軸の方向に延在している範囲内において、前記正極端子および前記負極端子のうちの一方よりも巻内側に位置する第2領域、ならびに前記正極端子および前記負極端子のうちの他方よりも巻外側に位置する第3領域のうちの少なくとも一方に配置されている、
二次電池。
【請求項2】
前記多孔質部材は、前記セパレータの一部であり、
前記正極端子と前記負極端子とにより挟まれる領域では、前記セパレータが部分的に折り畳まれている、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記多孔質部材は、前記セパレータの一部であり、
前記正極端子と前記負極端子とにより挟まれる領域では、前記セパレータの厚さが部分的に増加している、
請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記電池素子は、平坦部を含み、
前記正極端子は、前記平坦部において前記正極に接続されており、
前記負極端子は、前記平坦部において前記負極に接続されている、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1領域の面積に対する前記多孔質部材の面積の比は、20%以上80%以下である、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記セパレータは、
前記正極および前記負極のそれぞれに対向する一対の面を有する多孔質層と、
前記一対の面のうちの少なくとも一方に設けられ、かつ、複数の無機粒子を含む高分子化合物層と
を含む、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池である、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として、二次電池の開発が進められている。この二次電池は、正極および負極と共に、液状の電解質である電解液を備えている。
【0003】
二次電池の構成は、電池特性に影響を及ぼすため、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。具体的には、優れたサイクル特性を得るために、扁平な断面形状を有する巻回電極体を備えた二次電池において、正極端子および負極端子のそれぞれの近傍に段差緩和部材を設けている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-206514号公報
【発明の概要】
【0005】
二次電池の電池特性を改善するために様々な検討がなされているが、その二次電池のサイクル特性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0006】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れたサイクル特性を得ることが可能である二次電池を提供することにある。
【0007】
本技術の一実施形態の二次電池は、セパレータを介して互いに対向する正極および負極を含む電池素子と、その正極が負極に対向する側において正極に接続された正極端子と、その負極が正極に対向する側において負極に接続され、かつ、正極端子と対向しない位置に配置された負極端子と、正極端子と負極端子とにより挟まれる領域に配置された多孔質部材とを備えたものである。
【0008】
本技術の一実施形態の二次電池によれば、正極および負極がセパレータを介して互いに対向しており、その正極が負極に対向する側において正極端子が正極に接続されており、その負極が正極に対向する側における正極端子と対向しない位置において負極端子が負極に接続されており、正極端子と負極端子とにより挟まれる領域に多孔質部材が配置されているので、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0009】
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す斜視図である。
図2図1に示した電池素子の構成を表す断面図である。
図3図1に示した電池素子の構成を模式的に表す他の断面図である。
図4図2に示した電池素子の構成を拡大して表す断面図である。
図5図4に示したセパレータの構成を拡大して表す断面図である。
図6図2に示した電池素子の主要部の構成を拡大して表す断面図である。
図7】比較例の二次電池の構成を表す断面図である。
図8】変形例1の二次電池の構成を表す断面図である。
図9】変形例2の二次電池の構成を表す断面図である。
図10】変形例3の二次電池の構成を表す断面図である。
図11】二次電池の適用例(電池パック)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.二次電池
1-1.構成
1-2.動作
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
2.変形例
3.二次電池の用途
【0012】
<1.二次電池>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0013】
ここで説明する二次電池は、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池であり、正極および負極と共に電解液を備えている。この二次電池では、充電途中において負極の表面に電極反応物質が意図せずに析出することを防止するために、その負極の充電容量は、正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。
【0014】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0015】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0016】
<1-1.構成>
図1は、二次電池の斜視構成を表している。図2は、図1に示した電池素子10の断面構成を表していると共に、図3は、図1に示した電池素子10の断面構成を模式的に表している。ただし、図1では、電池素子10と外装フィルム20とが互いに分離された状態を示していると共に、図3では、Y軸方向に延在する巻回軸Jと交差する電池素子10の断面を示している。
【0017】
図4は、図2に示した電池素子10の断面構成を拡大して表しており、図5は、図4に示したセパレータ13の断面構成を拡大して表している。ただし、図4では、正極11、負極12およびセパレータ13のそれぞれの一部だけを示していると共に、図5では、セパレータ13の一部だけを示している。
【0018】
図6は、図2に示した電池素子10の主要部(多孔質膜16の設置場所の近傍部分)の断面構成を拡大して表している。ただし、図6では、セパレータ13の構成を見やすくするために、正極端部11T(正極延在部11TZ)とセパレータ13とが互いに離隔されていると共に負極端部12T(負極延在部12TZ)とセパレータ13とが互いに離隔されている状態を示している。
【0019】
この二次電池は、図1図6に示したように、電池素子10と、外装フィルム20と、正極リード14と、負極リード15と、多孔質膜16とを備えている。電池素子10は、外装フィルム20の内部に収納されていると共に、正極リード14および負極リード15のそれぞれは、外装フィルム20の内部から外部に向かって互いに共通する方向に導出されている。
【0020】
ここで説明する二次電池は、電池素子10を収納するための外装部材として、可撓性(または柔軟性)を有する外装部材(外装フィルム20)を用いたラミネートフィルム型の二次電池である。
【0021】
[外装フィルム]
外装フィルム20は、図1に示したように、1枚のフィルム状の部材であり、矢印R(一点鎖線)の方向に折り畳み可能である。この外装フィルム20は、上記したように、電池素子10を収納しているため、正極11、負極12および電解液を収納している。なお、外装フィルム20には、電池素子10を収容するための窪み部20U(いわゆる深絞り部)が設けられている。
【0022】
具体的には、外装フィルム20は、融着層、金属層および表面保護層が内側からこの順に積層された3層のラミネートフィルムであり、その外装フィルム20が折り畳まれた状態では、互いに対向する融着層のうちの外周縁部同士が互いに融着されている。融着層は、ポリプロピレンなどの高分子化合物を含んでいる。金属層は、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。表面保護層は、ナイロンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0023】
ただし、外装フィルム20の構成(層数)は、特に、限定されないため、1層または2層でもよいし、4層以上でもよい。
【0024】
外装フィルム20と正極リード14との間には、密着フィルム21が挿入されていると共に、外装フィルム20と負極リード15との間には、密着フィルム22が挿入されている。密着フィルム21,22のそれぞれは、外装フィルム20の内部に外気が意図せずに侵入することを防止する部材であり、正極リード14および負極リード15のそれぞれに対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。このポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンなどである。ただし、密着フィルム21,22のうちの一方または双方は、省略されてもよい。
【0025】
[電池素子]
電池素子10は、図1図5に示したように、正極11と、負極12と、セパレータ13と、液状の電解質である電解液(図示せず)とを備えており、その電解液は、正極11、負極12およびセパレータ13のそれぞれに含浸されている。
【0026】
この電池素子10は、図1図3に示したように、正極11および負極12がセパレータ13を介して巻回方向Dに巻回された構造体であり、いわゆる巻回電極体である。より具体的には、巻回電極体である電池素子10では、正極11および負極12がセパレータ13を介して互いに積層されていると共に、その正極11、負極12およびセパレータ13が巻回軸Jを中心として巻回方向Dに巻回されている。すなわち、正極11および負極12は、セパレータ13を介して互いに対向しながら、そのセパレータ13と一緒に巻回方向Dに巻回されている。
【0027】
巻回軸Jと交差する電池素子10の断面(XZ面に沿った断面)の形状は、図3に示したように、長軸K1および短軸K2により規定される扁平形状であり、より具体的には扁平な略楕円形である。この長軸K1は、X軸方向に延在すると共に相対的に大きい長さを有する軸(横軸)であると共に、短軸K2は、X軸方向と交差するY軸方向に延在すると共に相対的に小さい長さを有する軸(縦軸)である。
【0028】
すなわち、巻回電極体である電池素子10は、全体として、扁平状の立体的形状を有している。このため、電池素子10は、図3に示したように、一対の湾曲部10Aと、その一対の湾曲部10Aの間に位置する平坦部10Bとを含んでいる。湾曲部10Aは、正極11、負極12およびセパレータ13が曲線を描くように湾曲している部分である。これに対して、平坦部10Bは、正極11、負極12およびセパレータ13が湾曲しておらずにほぼ平坦な部分である。図3では、湾曲部10Aと平坦部10Bとの間に破線を付している。
【0029】
(正極)
正極11は、図2および図4に示したように、正極集電体11Aと、その正極集電体11Aの両面に形成された2個の正極活物質層11Bとを含んでいる。ただし、正極活物質層11Bは、正極集電体11Aの片面だけに形成されていてもよい。
【0030】
正極集電体11Aは、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料は、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどである。正極活物質層11Bは、リチウムを吸蔵放出することが可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層11Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。
【0031】
正極活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、リチウム含有遷移金属化合物などのリチウム含有化合物である。このリチウム含有遷移金属化合物は、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を含んでおり、さらに、1種類または2種類以上の他元素を含んでいてもよい。他元素の種類は、遷移金属元素以外の任意の元素であれば、特に限定されないが、具体的には、長周期型周期表中の2族~15族に属する元素である。リチウム含有遷移金属化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。
【0032】
酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 、LiCo0.98Al0.01Mg0.012 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 2 、LiNi0.8 Co0.15Al0.052 、LiNi0.33Co0.33Mn0.332 、Li1.2 Mn0.52Co0.175 Ni0.1 2 、Li1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.13)O2 およびLiMn2 4 などである。リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 、LiMnPO4 、LiFe0.5 Mn0.5 PO4 およびLiFe0.3 Mn0.7 PO4 などである。
【0033】
ここでは、図2に示したように、正極活物質層11Bは、巻回方向Dにおける正極集電体11Aの途中だけに設けられている。このため、正極11の巻内側の端部(正極端部11T)では、正極集電体11Aが正極活物質層11Bにより被覆されておらずに露出していると共に、正極11の巻外側の端部では、正極集電体11Aが正極活物質層11Bにより被覆されておらずに露出している。
【0034】
この正極端部11Tは、上記した長軸K1の方向(X軸方向)に延在する正極延在部11TZを含んでおり、その正極延在部11TZは、図6に示したように、正極端部11Tのうち、湾曲しておらずにX軸方向に延在しているほぼ直線状の部分である。
【0035】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびカルボキシメチルセルロースなどである。
【0036】
正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0037】
(負極)
負極12は、図2および図4に示したように、負極集電体12Aと、その負極集電体12Aの両面に形成された2個の負極活物質層12Bとを含んでいる。ただし、負極活物質層12Bは、負極集電体12Aの片面だけに形成されていてもよい。
【0038】
負極集電体12Aは、金属材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その金属材料は、銅、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどである。負極活物質層12Bは、リチウムを吸蔵放出することが可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層12Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤に関する詳細は、正極結着剤に関する詳細と同様であると共に、負極導電剤に関する詳細は、正極導電剤に関する詳細と同様である。
【0039】
負極活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、炭素材料および金属系材料などである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などであり、その黒鉛は、天然黒鉛および人造黒鉛などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成することが可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む材料であり、その金属元素および半金属元素は、ケイ素およびスズなどである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよい、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。
【0040】
金属系材料の具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、LiSiO、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOおよびMg2 Snなどである。ただし、SiOv のvは、0.2<v<1.4を満たしていてもよい。
【0041】
負極活物質層12Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0042】
ここでは、図2に示したように、負極活物質層12Bは、巻回方向Dにおける負極集電体12Aの途中だけに設けられている。このため、負極12の巻内側の端部(負極端部12T)では、負極集電体12Aが負極活物質層12Bにより被覆されておらずに露出していると共に、負極12の巻外側の端部では、負極集電体12Aが負極活物質層12Bにより被覆されておらずに露出している。
【0043】
この負極端部12Tは、上記した長軸K1の方向(X軸方向)に延在する負極延在部12TZを含んでおり、その負極延在部12TZは、図6に示したように、負極端部12Tのうち、湾曲しておらずにX軸方向に延在しているほぼ直線状の部分である。これにより、正極延在部11TZおよび負極延在部12TZは、セパレータ13を介して互いに対向しながら延在している。
【0044】
(セパレータ)
セパレータ13は、図2および図4に示したように、正極11と負極12との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極11と負極12との接触を防止しながらリチウムイオンを通過させる。図2では、図示内容を簡略化するために、セパレータ13を線状に示している。
【0045】
ここでは、セパレータ13は、後述する高分子化合物層13Bを含む多層構造を有している。具体的には、セパレータ13は、図5に示したように、多孔質層13Aと、その多孔質層13Aの両面に設けられた2個の高分子化合物層13Bとを含んでいる。正極11および負極12のそれぞれに対するセパレータ13の密着性が向上するため、電池素子10の位置ずれが発生しにくくなるからである。これにより、電解液の分解反応などが発生しても、二次電池が膨れにくくなる。
【0046】
多孔質層13Aは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、一対の面(対向面M1,M2)を有している。対向面M1は、正極11に対向する側における多孔質層13Aの表面であると共に、対向面M2は、負極12に対向する側における多孔質層13Aの表面である。なお、多孔質層13Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
【0047】
高分子化合物層13Bは、多孔質層13Aの両面に設けられているため、面M1,M2のそれぞれに設けられている。この高分子化合物層13Bは、高分子化合物と共に、複数の無機粒子を含んでいる。二次電池の発熱時において複数の無機粒子が放熱するため、その二次電池の耐熱性および安全性が向上するからである。なお、高分子化合物層13Bは、単層でもよいし、多層でもよい。
【0048】
高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。優れた物理的強度が得られると共に、電気化学的な安定性も得られるからである。複数の無機粒子は、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)および酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの無機材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0049】
なお、セパレータ13は、単層構造を有していてもよい。この単層構造を有するセパレータ13の構成は、上記した多孔質層13Aの構成と同様である。
【0050】
(電解液)
電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。
【0051】
溶媒は、非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。この非水溶媒は、エステル類およびエーテル類などであり、より具体的には、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などである。
【0052】
炭酸エステル系化合物は、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルなどである。環状炭酸エステルは、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどであると共に、鎖状炭酸エステルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸メチルエチルなどである。カルボン酸エステル系化合物は、酢酸エチル、プロピオン酸エチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ラクトン系化合物は、γ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトンなどである。エーテル類は、上記したラクトン系化合物の他、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよび1,4-ジオキサンなどである。
【0053】
また、非水溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、酸無水物、ニトリル化合物およびイソシアネート化合物などである。電解液の化学的安定性が向上するからである。
【0054】
具体的には、不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。ハロゲン化炭酸エステルは、モノフルオロ炭酸エチレンおよびジフルオロ炭酸エチレンなどである。スルホン酸エステルは、1,3-プロパンスルトンおよび1,3-プロペンスルトンなどである。リン酸エステルは、リン酸トリメチルなどである。酸無水物は、環状カルボン酸無水物、環状ジスルホン酸無水物および環状カルボン酸スルホン酸無水物などである。環状カルボン酸無水物は、コハク酸無水物、グルタル酸無水物およびマレイン酸無水物などである。環状ジスルホン酸無水物は、エタンジスルホン酸無水物およびプロパンジスルホン酸無水物などである。環状カルボン酸スルホン酸無水物は、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物およびスルホ酪無水物などである。ニトリル化合物は、アセトニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、セバコニトリルおよびフタロニトリルなどである。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートなどである。
【0055】
電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。このリチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(FSO2 2 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )およびビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2 4 2 )などである。電解質塩の含有量は、特に限定されないが、具体的には、溶媒に対して0.3mol/kg~3.0mol/kgである。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0056】
[正極リードおよび負極リード]
正極リード14は、正極11に接続された正極端子であり、その正極11が負極12に対向する側において正極11に接続されている。この正極リード14は、アルミニウムなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。負極リード15は、負極12に接続された負極端子であり、その負極12が正極11に対向する側において負極12に接続されている。この負極リード15は、銅、ニッケルおよびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。正極リード14および負極リード15のそれぞれの形状は、薄板状および網目状などである。
【0057】
ここでは、上記したように、電池素子10は、一対の湾曲部10Aと共に平坦部10Bを含んでいる。この場合において、正極リード14は、平坦部10Bにおいて正極11に接続されていると共に、負極リード15は、平坦部10Bにおいて負極12に接続されている。
【0058】
詳細には、上記したように、正極11は、巻回方向Dにおける巻内側の端部に、正極集電体11Aが露出している正極端部11Tを含んでいる。このため、正極リード14は、正極端部11Tに接続されており、より具体的には正極延在部11TZに接続されている。正極リード14と正極11との電気伝導性が向上するからである。
【0059】
また、上記したように、負極12は、巻回方向Dにおける巻内側の端部に、負極集電体12Aが露出している負極端部12Tを含んでいる。このため、負極リード15は、負極端部12Tに接続されており、より具体的には負極延在部12TZに接続されている。負極リード15と負極12との電気伝導性が向上するからである。
【0060】
ただし、負極リード15は、正極リード14と対向しない位置に配置されており、すなわちセパレータ13を介して正極リード14と重ならないように配置されている。このため、正極リード14の位置および負極リード15の位置は、図2に示したように、巻回方向Dにおいて互いにずれている。ここでは、負極リード15は、巻回方向Dにおいて正極リード14よりも巻内側に位置している。
【0061】
正極リード14および負極リード15のそれぞれの数は、特に限定されないため、1本でもよいし、2本以上でもよい。特に、正極リード14および負極リード15のそれぞれの数が2本以上であれば、二次電池の電気抵抗が低下する。なお、正極リード14および負極リード15のそれぞれの数が2本以上である場合には、後述するリード間領域R1が複数存在することになる。
【0062】
[多孔質膜]
多孔質膜16は、正極リード14および負極リード15のそれぞれの存在に起因して発生する段差が電池素子10(正極11および負極12)の巻回状態に影響を及ぼすことを抑制する多孔質部材である。
【0063】
この多孔質膜16が多孔質であるのは、主に、リチウムイオンの移動を担保すると共に、電解液を保持するためである。これにより、多孔質膜16が存在していてもリチウムイオンの移動が阻害されずに、その多孔質膜16を介して正極11および負極12のそれぞれに十分な量の電解液が含浸される。この場合には、特に、後述する余剰電解液が多孔質膜16により担保される。
【0064】
上記したように、正極リード14の位置および負極リード15の位置は、巻回方向Dにおいて互いにずれている。この場合において、多孔質膜16は、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に配置されている。
【0065】
ここでは、正極11および負極12は、セパレータ13を介して巻回されている。このため、多孔質膜16は、図6に示したように、リード間領域R1(第1領域)に配置されている。このリード間領域R1は、巻回方向Dにおいて正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域であり、すなわち巻回方向Dにおいて正極リード14と負極リード15との間に位置する領域である。
【0066】
この多孔質膜16は、リード間領域R1において局所的にセパレータ13の厚さを増加させる役割を果たす。これにより、正極リード14および負極リード15のそれぞれの存在に起因して発生する段差(高低差)が緩和されるため、正極11および負極12のそれぞれが段差に沿うように過剰に湾曲しにくくなる。よって、正極リード14および負極リード15のそれぞれが存在していても、多孔質膜16により正極11および負極12のそれぞれの平坦性が担保される。このため、上記したように、正極リード14および負極リード15のそれぞれの存在に起因する段差が電池素子10の巻回状態に影響を及ぼすことは抑制される。
【0067】
また、多孔質膜16は、セパレータ13(多孔質層13A)の形成材料と同様の材料を含んでいる。ただし、多孔質膜16の形成材料は、多孔質層13Aの形成材料と同じでもよいし、多孔質層13Aの形成材料と異なってもよい。
【0068】
ここでは、図6に示したように、リード間領域R1において、セパレータ13が部分的に折り畳まれているため、多孔質膜16は、セパレータ13の一部である。すなわち、多孔質膜16は、セパレータ13と一体化されている。この場合には、セパレータ13は、リード間領域R1において部分的に折り畳まれているため、そのセパレータ13の厚さは、リード間領域R1において局所的に増加している。また、多孔質膜16の形成材料は、多孔質層13Aの形成材料と同じである。
【0069】
セパレータ13が部分的に折り畳まれている場合には、その部分的に折り畳まれているセパレータ13のうち、局所的に厚さを増加させている部分が多孔質膜16である。図6では、多孔質膜16、言い換えればセパレータ13のうちの多孔質膜16に該当する部分に網掛けを施している。
【0070】
この場合には、セパレータ13は、一対の常厚部13Xと、増厚部13Yとを含んでいる。一対の常厚部13Xのそれぞれは、リード領域R1以外の領域に配置されていると共に、増厚部13Yは、リード間領域R1に配置されている。これにより、増厚部13Yは、一対の常厚部13Xの間に配置されていると共に、その一対の常厚部13Xのそれぞれに連結されている。
【0071】
常厚部13Xは、セパレータ13が部分的に折り畳まれていない部分であるため、そのセパレータ13自体の厚さ(部分的に折り畳まれていない状態の厚さ)に相当する厚さTXを有している。増厚部13Yは、セパレータ13が部分的に折り畳まれている部分であるため、上記した厚さTXよりも大きな厚さTYを有している。
【0072】
ここでは、セパレータ13は、巻回方向Dにおいて反対の方向に折り畳まれたのちにさらに反対の方向に折り畳まれているため、2回折り畳まれている。これにより、セパレータ13は、局所的に三重となるように折り畳まれているため、そのセパレータ13の厚さは、リード間領域R1において3倍に増加している。すなわち、増厚部13Yの厚さTYは、常厚部13Xの厚さTXの3倍である。この場合には、厚さTXの3倍である厚さTYを有する増厚部13Yのうち、その厚さTXの2倍の厚さを有する部分(網掛けが施された部分)が多孔質膜16である。
【0073】
ただし、セパレータ13の厚さを局所的に増加させることにより、そのセパレータ13の一部を利用してリード間領域R1に多孔質膜16を配置可能であれば、そのセパレータ13の構成は、特に限定されない。すなわち、折り畳み方向、折り畳み方式および折り畳み回数などは、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0074】
中でも、増厚部13Yは、正極11(正極端部11T)および負極12(負極端部12T)のうちの一方または双方に当接されていることが好ましい。正極11および負極12のうちの一方または双方が増厚部13Yにより支持されるからである。これにより、電池素子10の立体的形状(扁平な形状)が歪みにくくなるため、その電池素子10の立体的形状(成型状態)が維持されやすくなる。
【0075】
なお、上記したように、巻回軸Jと交差する電池素子10の断面の形状が扁平形状であるため、正極端部11Tは、長軸K1の方向に延在する正極延在部11TZを含んでいると共に、負極端部12Tは、同方向に延在する負極延在部12TZを含んでいる。この場合には、図6に示したように、正極延在部11TZおよび負極延在部12TZのそれぞれが延在している範囲内において、リード間領域R1を含む3つの領域、すなわちリード間領域R1、巻内側領域R2(第2領域)および巻外側領域R3(第3領域)が存在している。
【0076】
リード間領域R1は、上記したように、巻回方向Dにおいて正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域である。巻内側領域R2は、負極リード15が正極リード14よりも巻内側に位置している場合において、その負極リード15よりも巻内側(図5中の右側)に位置する領域である。巻外側領域R3は、負極リード15が正極リード14よりも巻内側に位置している場合において、その正極リード14よりも巻外側(図5中の左側)に位置する領域である。
【0077】
なお、正極リード14は、巻回方向Dにおいて負極リード15よりも巻内側に配置されていてもよい。この場合には、ここでは具体的に図示しないが、正極リード14よりも巻内側に位置する領域が巻内側領域R2になると共に、負極リード15よりも巻外側に位置する領域が巻外側領域R3になる。
【0078】
ここでは、上記したように、リード間領域R1においてセパレータ13が部分的に折り畳まれているため、そのリード間領域R1に多孔質膜16が配置されている。これに対して、巻内側領域R2および巻外側領域R3のそれぞれではセパレータ13が部分的に折り畳まれていないため、巻内側領域R2および巻外側領域R3のそれぞれに多孔質膜16が配置されていない。
【0079】
なお、リード間領域R1における多孔質膜16の設置範囲は、特に限定されない。ただし、多孔質膜16の面積は、リード間領域R1の面積に対してある程度小さいことが好ましい。正極リード14と負極リード15とにより挟まれる空間に多孔質膜16が収容されやすくなるため、その多孔質膜16により段差が緩和されやすくなるからである。なお、ここで説明した面積とは、XY面に沿った面の面積である。
【0080】
中でも、リード間領域R1の面積S1に対する多孔質膜16の面積S2の比(面積比S=S2/S1)は、20%~80%であることが好ましい。正極リード14と負極リード15とにより挟まれる空間に多孔質膜16が十分に収容されやすくなるため、その多孔質膜16により段差が十分に緩和されやすくなるからである。
【0081】
<1-2.動作>
二次電池の充電時には、正極11からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極12に吸蔵される。また、二次電池の放電時には、負極12からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極11に吸蔵される。この充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0082】
<1-3.製造方法>
二次電池を製造する場合には、以下で説明する手順により、正極11および負極12を作製すると共に電解液を調製したのち、その正極11、負極12および電解液を用いて二次電池を作製する。以下では、既に説明した図1図6のそれぞれの図示内容を随時引用する。
【0083】
[正極の作製]
最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合することにより、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などに正極合剤を投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。最後に、正極集電体11Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層11Bを形成する。この場合には、上記したように、正極活物質層11Bが正極集電体11Aの両面の一部に形成されるように、正極合剤スラリーの塗布範囲を調整する。こののち、ロールプレス機を用いて正極活物質層11Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層11Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極集電体11Aの両面に正極活物質層11Bが形成されるため、正極11が作製される。
【0084】
[負極の作製]
上記した正極11の作製手順と同様の手順により、負極集電体12Aの両面に負極活物質層12Bを形成する。具体的には、負極活物質と、必要に応じて負極結着剤および負極導電剤などとを混合することにより、負極合剤としたのち、有機溶剤などに負極合剤を投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。続いて、負極集電体12Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層12Bを形成する。この場合には、上記したように、負極活物質層12Bが負極集電体12Aの両面の一部に形成されるように、負極合剤スラリーの塗布範囲を調整する。こののち、負極活物質層12Bを圧縮成型してもよい。これにより、負極集電体12Aの両面に負極活物質層12Bが形成されるため、負極12が作製される。
【0085】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0086】
[セパレータの準備]
最初に、対向面M1,M2を有する多孔質層13Aを準備する。続いて、有機溶剤などに高分子化合物および複数の無機粒子を投入することにより、ペースト状のスラリーを調製する。続いて、多孔質層13Aの両面(対向面M1,M2)にスラリーを塗布することにより、高分子化合物層13Bを形成する。最後に、高分子化合物層13Bが形成された多孔質層13Aを部分的に折り畳むことにより、常厚部13Xおよび増厚部13Yを形成する。この場合には、後述する電池素子10の作製時(正極11、負極12およびセパレータ13の巻回時)において増厚部13Yがリード間領域R1に配置されるように、その増厚部13Yの形成位置を調整する。これにより、多孔質層13Aの両面に高分子化合物層13Bが形成されると共に、常厚部13Xおよび増厚部13Yが形成されるため、多孔質膜16を含むセパレータ13が作製される。
【0087】
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法などを用いて正極11(正極端部11T)に正極リード14を接続させると共に、溶接法などを用いて負極12(負極端部12T)に負極リード15を接続させる。続いて、多孔質膜16を含むセパレータ13を介して正極11および負極12を互いに積層させたのち、その正極11、負極12およびセパレータ13を巻回軸Jを中心として巻回方向Dに巻回させることにより、巻回体を作製する。この場合には、リード間領域R1に増厚部13Yが配置されるように、正極リード14および負極リード15に対して増厚部13Yを位置合わせする。続いて、プレス機などを用いて巻回体を押圧することにより、巻回軸Jと交差する断面の形状が扁平形状となるように巻回体を成型する。
【0088】
続いて、窪み部20Uの内部に巻回体を収容したのち、矢印Rの方向に外装フィルム20を折り畳む。続いて、熱融着法などを用いて外装フィルム20(融着層)のうちの2辺の外周縁部同士を互いに接着させることにより、袋状の外装フィルム20の内部に巻回体を収納する。
【0089】
最後に、袋状の外装フィルム20の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などを用いて外装フィルム20(融着層)のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに接着させる。この場合には、外装フィルム20と正極リード14との間に密着フィルム21を挿入すると共に、外装フィルム20と負極リード15との間に密着フィルム22を挿入する。これにより、巻回体に電解液が含浸されるため、電池素子10が作製される。よって、袋状の外装フィルム20の内部に電池素子10が封入されるため、二次電池が組み立てられる。
【0090】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、負極12などの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、外装フィルム20を用いた二次電池、すなわちラミネートフィルム型の二次電池が完成する。
【0091】
<1-4.作用および効果>
この二次電池によれば、正極11および負極12がセパレータ13を介して対向している場合において、負極12に対向する側において正極リード14が正極11に接続されていると共に、正極11に対向する側において正極リード14と対向しないように負極リード15が負極12に接続されている。また、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に、多孔質膜16が配置されている。よって、以下で説明する理由により、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0092】
図7は、比較例の二次電池の断面構成を表しており、図6に対応している。この比較例の二次電池は、図7に示したように、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に多孔質膜16が配置されていないことを除いて、本実施形態の二次電池の構成(図6)と同様の構成を有している。この場合には、セパレータ13が部分的に折り畳まれていないため、そのセパレータ13が増厚部13Yを含んでいない。これにより、セパレータ13は、一定の厚さTXを有している。
【0093】
二次電池の製造工程では、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域において、その正極リード14および負極リード15のそれぞれの存在に起因した段差が発生する。ここで説明する段差は、正極リード14の内側(負極リード15に近い側)の角部および負極リード15の内側(正極リード14に近い側)の角部に起因して形成される高低差である。
【0094】
比較例の二次電池では、図7に示したように、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に多孔質膜16が配置されていない。これにより、電池素子10の作製工程において正極11および負極12がセパレータ13を介して互いに積層されると、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に発生した段差に沿うように正極11および負極12のそれぞれが過剰に湾曲する。よって、正極11および負極12のそれぞれは、ほぼ平坦な状態で積層されにくくなる。
【0095】
この場合には、正極11と負極12との間の距離(電極間距離)がばらつくことに起因して、その電極間距離が部分的に増大しやすくなる。特に、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域が電池素子10の中心部の近傍に存在していると、張力の影響に起因して正極11および負極12のそれぞれが段差の影響を比較的強く受けるため、電極間距離が著しく増大しやすくなる。これにより、電極間距離が部分的に増大した箇所では、二次電池の充放電時において、リチウムイオンの拡散抵抗が局所的に増加するため、意図せずにリチウム金属が析出しやすくなる。
【0096】
よって、比較例の二次電池では、充放電を繰り返すと放電容量が減少しやすくなるため、優れたサイクル特性を得ることが困難である。
【0097】
ここで、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に発生した段差を緩和するために、その領域に緩和用の部材(非多孔質膜)を配置することが考えられる。しかしながら、単に非多孔質膜を配置しただけでは、その非多孔質膜の存在に起因して、電解液の流通が阻害されると共に、電池素子10の中心部における電解液の貯留空間の体積が減少する。これにより、放電容量の増加は限定的になるため、充放電を繰り返すと依然として放電容量が減少しやすくなる。
【0098】
これに対して、本実施形態の二次電池では、図6に示したように、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に多孔質膜16が配置されているため、その多孔質膜16を利用して段差が緩和される。
【0099】
この場合には、正極11および負極12がセパレータ13を介して互いに積層されても、正極11および負極12のそれぞれが段差に沿うように過剰に湾曲しにくくなるため、その正極11および負極12のそれぞれがほぼ平坦な状態で積層されやすくなる。これにより、電極間距離がほぼ一定になるため、その電極間距離が部分的に増大しにくくなる。よって、二次電池の充放電時において、リチウムイオンの拡散抵抗が局所的に増加しにくくなるため、意図せずにリチウム金属が析出することは抑制される。しかも、多孔質膜16は、リチウムイオンを通過させることが可能である多孔質であるため、その多孔質膜16を用いても、充放電時においてリチウムイオンの移動が阻害されない。また、多孔質膜16が存在していても、電解液が移動しやすくなるため、電解液の流通が担保されると共に、電池素子10の中心部における電解液の貯留空間の体積が増加するため、いわゆる余剰電解液の量が増加する。
【0100】
この「余剰電解液」とは、正極11と、負極12と、セパレータ13のうちの正極11と負極12とにより挟まれた部分(電極間部分)とのそれぞれに含浸されている電解液以外の過剰な電解液である。正極11、負極12および電極間部分のそれぞれに含浸されている電解液の量と、余剰電解液の量との和は、当然ながら、正極11、負極12および電極間部分のそれぞれに含浸されている電解液の量、すなわち正極11、負極12および電極間部分のそれぞれが有する細孔の総体積に相当する量よりも多くなる。このため、多孔質膜16を用いた二次電池中における電解液の総量は、非多孔質膜を用いた二次電池中における電解液の総量よりも多くなる。
【0101】
これらのことから、本実施形態の二次電池では、充放電を繰り返しても放電容量が減少しにくくなるため、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0102】
特に、多孔質膜16がセパレータ13の一部であり、正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域においてセパレータ13が部分的に折り畳まれていれば、多孔質であるセパレータ13の一部を利用して多孔質膜16が安定かつ容易に実現されるため、より高い効果を得ることができる。
【0103】
この場合には、特に、互いに重なるように折り畳まれているセパレータ13間の隙間に電解液が含浸されやすくなるため、そのセパレータ13による電解液の保持性が向上する。これにより、正極11および負極12のそれぞれに十分な量の電解液が含浸されやすくなるため、電池素子10において安定かつ継続的に充放電反応が進行しやすくなる。よって、優れた電池寿命を得ることもできる。
【0104】
また、電池素子10が平坦部10Bを含んでおり、正極リード14が平坦部10Bにおいて正極11に接続されていると共に負極リード15が平坦部10Bにおいて負極12に接続されていれば、多孔質膜16を利用して段差が緩和されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0105】
また、正極11および負極12がセパレータ13を介して巻回されており、多孔質膜16がリード間領域R1に配置されていれば、張力の影響に起因して正極11および負極12のそれぞれが段差の影響を著しく受けやすい電池素子10の巻芯部において、その段差の影響が効果的に緩和されるため、正極11および負極12のそれぞれがほぼ平坦な状態で巻回されやすくなる。よって、正極11および負極12が巻回されている場合においても電極間距離がほぼ一定になるため、より高い効果を得ることができる。
【0106】
この場合には、面積比Rが20%~80%であれば、多孔質膜16により段差が十分に緩和されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0107】
また、セパレータ13が多孔質層13Aおよび高分子化合物層13B(複数の無機粒子を含む。)を含む多層構造を有していれば、電池素子10の位置ずれが発生しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、特に、二次電池が膨れにくくなると共に、その二次電池の耐熱性が向上するため、優れた膨れ特性および安全性を得ることもできる。
【0108】
また、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵現象および放出現象を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0109】
<2.変形例>
次に、二次電池の変形例に関して説明する。上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例に関しては、任意の2種類以上が互いに組み合わされてもよい。
【0110】
[変形例1]
図6では、多孔質膜16を形成するために、セパレータ13を部分的に折り畳んでいる。しかしながら、セパレータ13を用いて多孔質膜16を形成可能であれば、その多孔質膜16の形成方法は、特に限定されない。
【0111】
具体的には、図6に対応する図8に示したように、セパレータ13を部分的に折り畳む代わりに、そのセパレータ13の厚さを部分的に増加させてもよい。この場合には、リード間領域R1において、セパレータ13の厚さが部分的に増加しているため、多孔質膜16は、セパレータ13の一部である。すなわち、多孔質膜16は、セパレータ13と一体化されている。
【0112】
ここでは、セパレータ13の一部が正極端部11T(正極延在部11TZ)および負極端部12T(負極延在部12TZ)のそれぞれに向かって突出しているため、そのセパレータ13は、相対的に小さい厚さTXを有する一対の常厚部13Xと、相対的に大きい厚さTYを有する増厚部13Yとを含んでいる。
【0113】
この場合においても、セパレータ13を用いて多孔質膜16が実現されると共に、その多孔質膜16を利用して段差が緩和されるため、同様の効果を得ることができる。
【0114】
なお、ここでは具体的に図示しないが、セパレータ13の一部は、正極端部11Tだけに向かって突出しており、負極端部12Tに向かって突出していなくてもよい。または、セパレータ13の一部は、負極端部12Tだけに向かって突出しており、正極端部11Tに向かって突出していなくてもよい。これらの場合においても、厚さTYを有する増厚部13Yが実現されるため、同様の効果を得ることができる。
【0115】
ただし、上記したように、電池素子10による電解液の保持性を向上させるためには、セパレータ13の厚さを部分的に増加させるよりも、そのセパレータ13を部分的に折り畳むことが好ましい。
【0116】
[変形例2]
図8では、多孔質膜16を形成するために、セパレータ13の厚さを部分的に増加させることにより、多孔質膜16をセパレータ13と一体化させている。しかしながら、多孔質膜16を実現可能であれば、その多孔質膜16の形成方法は、特に限定されない。
【0117】
具体的には、図8に対応する図9に示したように、セパレータ13の両面に一対の多孔質膜16を設けることにより、その一対の多孔質膜16をセパレータ13とは別体化してもよい。セパレータ13に対する多孔質膜16の固定方法は、特に限定されないため、接着剤および両面テープなどの接着部材を用いてセパレータ13に多孔質膜16を接着させてもよいし、それ以外の他の方法を用いてもよい。
【0118】
ここでは、セパレータ13の両面、すなわち正極端部11Tに対向する面および負極端部12Tに対向する面の双方に多孔質膜16が設けられている。これにより、一対の多孔質膜16が設けられたセパレータ13は、相対的に小さい厚さTXを有する一対の常厚部13Xと、相対的に大きい厚さTYを有する増厚部13Yとを含んでいる。
【0119】
この場合においても、多孔質膜16が実現されると共に、その多孔質膜16を利用して段差が緩和されるため、同様の効果を得ることができる。
【0120】
なお、ここでは具体的に図示しないが、多孔質膜16は、セパレータ13の一面、すなわち正極端部11Tに対向する面および負極端部12Tに対向する面のうちのいずれか一方だけに設けられていてもよい。この場合においても、厚さTYを有する増厚部13Yが実現されるため、同様の効果を得ることができる。
【0121】
[変形例3]
図6では、3つの領域(リード間領域R1、巻内側領域R2および巻外側領域R3)のうち、リード間領域R1だけに多孔質膜16を配置している。
【0122】
しかしながら、図6に対応する図10に示したように、巻内側領域R2においてもセパレータ13を部分的に折り畳むことにより、そのセパレータ13と一体化された多孔質膜16を巻内側領域R2に配置すると共に、巻外側領域R3においてもセパレータ13を部分的に折り畳むことにより、そのセパレータ13と一体化された多孔質膜16を巻外側領域R3に配置してもよい。
【0123】
以下では、3種類の多孔質膜16を互いに区別するために、リード間領域R1に配置される多孔質膜16を多孔質膜16A、巻内側領域R2に配置される多孔質膜16を多孔質膜16B、巻外側領域R3に配置される多孔質膜16を多孔質膜16Cと呼称する。
【0124】
この場合には、リード間領域R1において、正極リード14および負極リード15のそれぞれの内側の角部に起因する段差が多孔質膜16Aにより緩和される。また、巻内側領域R2において、負極リード15の外側の角部に起因する段差が多孔質膜16Bにより緩和される。さらに、巻外側領域R3において、正極リード14の外側の角部に起因する段差が多孔質膜16Cにより緩和される。
【0125】
よって、多孔質膜16A~16Cを用いることにより、多孔質膜16Aだけを用いる場合と比較して、電極間距離がより部分的に増大しにくくなる。これにより、リチウムイオンの拡散抵抗がより局所的に増加しにくくなると共に、リチウム金属がより析出しにくくなる。よって、充放電を繰り返しても放電容量がより減少にくくなるため、より優れたサイクル特性を得ることができる。
【0126】
[変形例4]
ここでは、具体的に図示しないが、多孔質膜16B,16Cを用いる場合には、その多孔質膜16B,16Cの双方を用いる場合だけに限られず、多孔質膜16Bだけを用いてもよいし、多孔質膜16Cだけを用いてもよい。これらの場合においても、多孔質膜16Aだけを用いる場合と比較して、充放電を繰り返しても放電容量がより減少にくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0127】
[変形例5]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
【0128】
電解質層を用いた電池素子10では、セパレータ13および電解質層を介して正極11および負極12が交互に積層されている。この電解質層は、正極11とセパレータ13との間に介在していると共に、負極12とセパレータ13との間に介在している。
【0129】
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解質層中では、電解液が高分子化合物により保持されている。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および有機溶剤などを含む前駆溶液を調製したのち、正極11および負極12のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
【0130】
この電解質層を用いた場合においても、正極11と負極12との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、電解質層を用いても、上記したように、多孔質膜16を利用して電解液の貯留空間が発生するため、余剰電解液が担保される。
【0131】
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の用途(適用例)に関して説明する。
【0132】
二次電池の用途は、主に、駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして二次電池を利用可能である機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、必要に応じて主電源から切り替えられる電源でもよい。二次電池を補助電源として用いる場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
【0133】
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む。)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。なお、二次電池の電池構造は、上記したラミネートフィルム型および円筒型でもよいし、それら以外の他の電池構造でもよい。また、電池パックおよび電池モジュールなどとして、複数の二次電池が用いられてもよい。
【0134】
中でも、電池パックおよび電池モジュールは、電動車両、電力貯蔵システムおよび電動工具などの比較的大型の機器などに適用されることが有効である。電池パックは、後述するように、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
【0135】
ここで、代表的な二次電池の適用例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
【0136】
図11は、電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
【0137】
この電池パックは、図11に示したように、電源41と、回路基板42とを備えている。この回路基板42は、電源41に接続されていると共に、正極端子43、負極端子44および温度検出端子45を含んでいる。この温度検出端子45は、いわゆるT端子である。
【0138】
電源41は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子43に接続されていると共に、負極リードが負極端子44に接続されている。この電源41は、正極端子43および負極端子44を介して外部と接続可能であるため、その正極端子43および負極端子44を介して充放電可能である。回路基板42は、制御部46と、スイッチ47と、熱感抵抗素子(PTC(Positive Temperature Coefficient)素子)48と、温度検出部49とを含んでいる。ただし、PTC素子48は省略されてもよい。
【0139】
制御部46は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit )およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部46は、必要に応じて電源41の使用状態の検出および制御を行う。
【0140】
なお、制御部46は、電源41(二次電池)の電池電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ47を切断することにより、電源41の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部46は、充電時または放電時において大電流が流れると、スイッチ47を切断することにより、充電電流を遮断する。過充電検出電圧および過放電検出電圧は、特に限定されない。一例を挙げると、過充電検出電圧は、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、2.4V±0.1Vである。
【0141】
スイッチ47は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部46の指示に応じて電源41と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ47は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ47のON抵抗に基づいて検出される。
【0142】
温度検出部49は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子45を用いて電源41の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部46に出力する。温度検出部49により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部46が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部46が補正処理を行う場合などに用いられる。
【実施例
【0143】
本技術の実施例に関して説明する。
【0144】
(実験例1~10)
以下で説明するように、図1図6図9および図10に示したラミネートフィルム型の二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製したのち、その二次電池のサイクル特性を評価した。
【0145】
[二次電池の作製]
以下の手順により、二次電池を作製した。
【0146】
(正極の作製)
最初に、正極活物質(コバルト酸リチウム(LiCoO2 ))91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合することにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体11A(アルミニウム箔,厚さ=12μm)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層11Bを形成した。この場合には、巻回方向Dにおける正極集電体11Aの両端部に正極活物質層11Bが形成されないように正極合剤スラリーの塗布範囲を調整することにより、正極端部11Tにおいて正極集電体11Aを露出させた。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層11Bを圧縮成型した。これにより、正極集電体11Aの両面に正極活物質層11Bが形成されたため、正極11が作製された。
【0147】
(負極の作製)
最初に、負極活物質(炭素材料である人造黒鉛)93質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)7質量部とを混合することにより、負極合剤とした。続いて、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に負極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体12A(銅箔,厚さ=15μm)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層12Bを形成した。この場合には、巻回方向Dにおける負極集電体12Aの両端部に負極活物質層12Bが形成されないように負極合剤スラリーの塗布範囲を調整することにより、負極端部12Tにおいて負極集電体12Aを露出させた。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層12Bを圧縮成型した。これにより、負極集電体12Aの両面に負極活物質層12Bが形成されたため、負極12が作製された。
【0148】
(電解液の調製)
溶媒(炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチルおよびプロピオン酸プロピル)に電解質塩(六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ))を添加したのち、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸プロピレン:炭酸ジエチル:プロピオン酸プロピル=30:10:40:20としたと共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。これにより、溶媒中において電解質塩が溶解されたため、電解液が調製された。
【0149】
(二次電池の組み立て)
最初に、正極端部11T(正極延在部11TZ)にアルミニウム製の正極リード14を溶接したと共に、負極端部12T(負極延在部12TZ)に銅製の負極リード15を溶接した。
【0150】
続いて、セパレータ13を介して正極11および負極12を互いに積層させたのち、その正極11、負極12およびセパレータ13を巻回軸Jを中心として巻回方向Dに巻回させることにより、巻回体を作製した。続いて、プレス機を用いて巻回体を押圧することにより、巻回軸Jと交差する断面の形状が扁平形状となるように巻回体を成型した。この場合には、表1に示したように、あらかじめ多孔質膜16が形成されているセパレータ13を用いた。多孔質膜16の構成、場所および面積比Rと、セパレータ13の構成(単層構造または多層構造)とは、表1に示した通りである。
【0151】
単層構造を有するセパレータ13としては、微多孔性ポリエチレンフィルム(厚さ=15μm)を用いた。
【0152】
多層構造を有するセパレータ13を作製する場合には、最初に、有機溶剤(N-メチル-2-ピロリドン)に高分子化合物(ポリフッ化ビニリデン)および複数の無機粒子(酸化アルミニウム,メジアン径D50=0.3μm)を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、分散液を調製した。この場合には、混合比(重量比)を高分子化合物:複数の無機粒子=20:80とした。続いて、分散液中に多孔質層13A(微多孔性ポリエチレンフィルム,厚さ=15μm)を浸漬させた。続いて、分散液中から多孔質層13Aを取り出したのち、その多孔質層13Aを乾燥させることにより、高分子化合物層13Bを形成した。続いて、水性溶媒(純水)を用いて基材層を洗浄することにより、有機溶剤を除去した。最後に、熱風(温度=80℃)を用いて多孔質層13Aを乾燥させた。これにより、高分子化合物および複数の無機粒子を含む高分子化合物層13B(総厚=30μm)が多孔質層13Aの両面に形成されたため、多層構造を有するセパレータ13が作製された。
【0153】
多孔質膜16の構成としては、表1に示したように、2種類の構成を用いた。1種類目の構成(一体化(折り畳み))では、セパレータ13を部分的に折り畳むことにより、多孔質膜16をセパレータ13と一体化した。2種類目の構成(別体化(貼り付け))では、接着剤を用いてセパレータ13の両面に一対の多孔質膜16(微多孔性ポリエチレンフィルム,厚さ=15μm)を貼り付けることにより、多孔質膜16をセパレータ13と別体化した。面積比Rを調整するためには、多孔質膜16の大きさ(平面サイズ)を変更した。
【0154】
なお、比較のために、あらかじめ多孔質膜16が形成されていないセパレータ13を用いて巻回体を作製した。また、比較のために、一対の多孔質膜16の代わりに一対の非多孔質膜(非多孔質のビニールテープ,厚さ=15μm)が貼り付けられたセパレータ13を用いて巻回体を作製した。
【0155】
続いて、窪み部20Uに収容された巻回体を挟むように外装フィルム20を折り畳んだのち、その外装フィルム20のうちの2辺の外周縁部同士を互いに熱融着することにより、袋状の外装フィルム20の内部に巻回体を収納した。外装フィルム20としては、融着層(ポリプロピレンフィルム,厚さ=30μm)と、金属層(アルミニウム箔,厚さ=40μm)と、表面保護層(ナイロンフィルム,厚さ=25μm)とが内側からこの順に積層されたアルミラミネートフィルムを用いた。
【0156】
続いて、袋状の外装フィルム20の内部に電解液を注入したのち、減圧環境中において外装フィルム20のうちの残りの1辺の外周縁部同士を熱融着した。この場合には、外装フィルム20と正極リード14との間に密着フィルム21(ポリプロピレンフィルム,厚さ=5μm)を挿入したと共に、外装フィルム20と負極リード15との間に密着フィルム22(ポリプロピレンフィルム,厚さ=5μm)を挿入した。これにより、巻回体に電解液が含浸されたため、電池素子10が作製された。よって、外装フィルム20の内部に電池素子が封入されたため、二次電池が組み立てられた。
【0157】
(二次電池の安定化)
常温環境中(温度=25℃)において二次電池を充放電させた。充電時には、0.1Cの電流で電池電圧が4.35Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.35Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.1Cの電流で電池電圧が3.0Vに到達するまで定電流放電した。0.1Cとは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値であると共に、0.05Cとは、電池容量を20時間で放電しきる電流値である。
【0158】
これにより、負極12などの表面に被膜が形成されたため、二次電池の状態が安定化した。よって、ラミネートフィルム型の二次電池が完成した。
【0159】
[サイクル特性の評価]
二次電池のサイクル特性を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
【0160】
サイクル特性を調べる場合には、最初に、常温環境(温度=25℃)において二次電池を充放電させることにより、放電容量(1サイクル目の放電容量)を測定した。続いて、同環境中において総サイクル数が500サイクルに到達するまで二次電池を繰り返して充放電させることにより、放電容量(500サイクル目の放電容量)を測定した。最後に、容量維持率(%)=(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100を算出した。
【0161】
充放電条件は、充電時の電流および放電時の電流のそれぞれを1Cに変更したことを除いて、上記した二次電池の安定化時の充放電条件と同様にした。1Cとは、電池容量を1時間で放電しきる電流値である。
【0162】
【表1】
【0163】
[考察]
表1に示したように、二次電池のサイクル特性は、多孔質膜16の有無および構成などに応じて大きく変動した。
【0164】
具体的には、多孔質膜16の代わりに非多孔質膜を用いた場合(実験例10)には、多孔質膜16も非多孔質膜も用いなかった場合(実験例9)と比較して、容量維持率は僅かしか増加しなかった。このため、容量維持率が十分に増加しなかった。
【0165】
これに対して、多孔質膜16を用いた場合(実験例1~8)には、多孔質膜16も非多孔質膜も用いなかった場合(実験例9)と比較して、容量維持率が大幅に増加した。このため、容量維持率が十分に増加した。
【0166】
特に、多孔質膜16を用いた場合には、以下の傾向が得られた。第1に、セパレータ13と一体化された多孔質膜16を用いた場合(実験例4)には、セパレータ13と別体化された多孔質膜16を用いた場合(実験例8)と比較して、容量維持率がより増加した。第2に、リード間領域R1だけでなく巻内側領域R2および巻外側領域R3のそれぞれにも多孔質膜16を配置した場合(実験例4)には、リード間領域R1だけに多孔質膜16を配置した場合(実験例6)と比較して、容量維持率がより増加した。第3に、面積比Rが20%~80%である場合(実験例2~4)には、面積比Rが20%未満または80%超である場合(実験例1,5)と比較して、容量維持率がより増加した。第4に、多層構造を有するセパレータ13を用いた場合(実験例4)には、単層構造を有するセパレータ13を用いた場合(実験例7)と比較して、容量維持率がより増加した。
【0167】
[まとめ]
表1に示した結果から、正極11および負極12がセパレータ13を介して互いに対向している場合において、その正極11に正極リード14が接続されていると共に負極12に負極リード15が接続されており、その正極リード14と負極リード15とにより挟まれる領域に多孔質膜16が配置されていると、高い容量維持率が得られた。よって、二次電池において優れたサイクル特性が得られた。
【0168】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
【0169】
具体的には、二次電池の電池構造がラミネートフィルム型である場合に関して説明したが、その電池構造は、特に限定されないため、円筒型、角型、コイン型およびボタン型などの他の電池構造でもよい。これに伴い、外装部材の種類は、特に限定されないため、可撓性を有するフィルムを用いてもよいし、剛性を有する金属缶を用いてもよい。
【0170】
また、電池素子の断面の形状が扁平形状である場合に関して説明したが、その断面の形状は、特に限定されないため、円形などの非扁平形状でもよい。
【0171】
また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明したが、その電池素子の素子構造は、特に限定されないため、電極(正極および負極)が積層された積層型および電極(正極および負極)がジグザグに折り畳まれた九十九折り型などの他の素子構造でもよい。
【0172】
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0173】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11